WO2012008340A1 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

 有機アミド溶媒中で、アルカリ金属(水)硫化物である硫黄源とジハロ芳香族化合物とからポリアリーレンスルフィド(PAS)を生成する重合工程;PAS粒子の分離工程;PAS粒子の水及び/又は有機溶媒による洗浄工程であって、PAS粒子含有水性スラリーの下方流と洗浄液の上方流を連続的に向流接触させる向流洗浄工程;洗浄排液を、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子再分離手段で捕捉し、次いで、好ましくは逆洗手段を用いて、該マイクロスリットフィルターから、PAS粒子を再分離し排出するPAS粒子の再分離工程;及び、排出されたPAS粒子の回収工程を含むPASの製造方法、並びに、ポリアリーレンスルフィドの製造装置。

Description

ポリアリーレンスルフィドの製造方法及び製造装置
 本発明は、重合工程、分離工程、洗浄工程、及び回収工程を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法において、特有の向流洗浄工程及び粒子の再分離工程を含むものとすることにより、高品質のポリアリーレンスルフィドの安定的な生産と製品収率の向上を図るとともに、洗浄排液の環境に対する負荷を低減することができるポリアリーレンスルフィドの製造方法及び、これに用いる製造装置に関する。
 ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と略記することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」と略記することがある。)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、押出成形、射出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であるため、電気機器、電子機器、自動車機器、包装材料などの広範な技術分野において汎用されている。
 PASの代表的な製造方法としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」と略記することがある。)などの有機アミド溶媒中で、硫黄源と、パラジクロルベンゼン(以下、「pDCB」と略記することがある。)などのジハロ芳香族化合物(以下、「DHA」と略記することがある。)とを加熱条件下に反応させる方法が知られている。硫黄源としては、一般に、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、またはこれらの混合物が用いられている。硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合は、アルカリ金属水硫化物をアルカリ金属水酸化物と組み合わせて使用する。
 硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応は、脱塩重縮合反応であり、反応後に多量のNaClなどの塩(すなわち、アルカリ金属ハロゲン化物)が生成する。また、含硫黄化合物の反応であるために、硫化水素が生成または副生する。そのため、従来より、重合反応により生成したPASを反応液から分離して回収した後、回収したポリマーを、水、有機溶媒、または水と有機溶媒との混合物などの洗浄液を用いて洗浄し、有機アミド溶媒を除去するとともに、NaClなどの塩や硫化水素を除去している。
 洗浄方法としては、大別して、バッチ洗浄と連続洗浄とがある。
 バッチ洗浄は、回収したポリマーを、一括してまたは分割して、洗浄槽において、洗浄液で所定時間撹拌洗浄する方法であって、通常、これを、数回繰り返して行う方法である。例えば、特許文献1(特開平6-192423号公報;欧州特許出願公開第0594189号対応)として、PASを洗浄容器及び洗浄タンクで洗浄する方法が提案されているが、洗浄槽が1個または複数個必要であるため、設備が複雑となり、建設費が嵩むとともに、洗浄液の消費量の増加、排液の処理量の増加、撹拌動力の増大を招き、運転コストの上昇が避けられなかった。
 これに対して、連続洗浄として、湿潤状態の重合体と、洗浄液である有機溶媒または水とを、向流接触させる方法が提案されている。例えば、特許文献2(国際公開第2003/048231号;米国特許出願公開第2005/0087215号対応)には、下向管部と上向管部とを備える概ねV字状の管装置を用いて、重合体を含有する重合スラリーと洗浄液とを向流接触させることが提案されており、特許文献3(特開平3-86287号公報;米国特許第5,143,554号対応)には、直列に連続配置したスタティックミキシングエレメントを有する垂直に立設された管状体内で、PPSなどの粉粒状樹脂と洗浄液とを向流接触させることが提案されている。また、特許文献4(特表2003-516846号公報;米国特許出願公開第2003/0150804号対応)には、PASを含有する第一の液相と水等の第二の液相とを、PASを重力下で沈降させながら向流で接触させて、PASを第二の液相に転移させる方法が提案されている。更に、特許文献5(特表2008-513186号公報;米国特許出願公開第2008/0025143号対応)には、複数の攪拌室を備える縦型固液接触装置を、PAS樹脂粒子の洗浄装置として使用することが提案されており、PAS含有スラリーの下降流と水等の洗浄液の上昇流とを向流接触させることが開示されている。
 更に、連続洗浄を繰り返すことや、連続洗浄に先立ってバッチ洗浄と連続洗浄を組み合わせて行うことも従来知られている。
 湿潤状態の重合体と、洗浄液である有機溶媒または水とを、向流接触させる連続洗浄によると、洗浄効率が高く、設備も簡便で運転コストも安いという利点がある。特に、PAS粒子を含有する水性スラリーの下降流と洗浄液の上昇流とを向流接触させ、洗浄されたPASを洗浄装置の下方から排出し、洗浄排液を洗浄装置の上方から排出する方法は、水より比重が大きいPAS粒子が、重力により洗浄液中を自然に落下するので、より効率的であり、設備もより簡便である。また、この方法では、PAS粒子を含有する水性スラリーの供給量と洗浄液の供給量を調整することにより、洗浄速度を容易に制御することができる。
 PASは本来、洗浄液より比重が大きいものであるが、PAS粒子を含有する水性スラリーや洗浄液の組成や温度条件等により、PAS粒子の沈降が妨げられることがあり、特に、比較的粒径が小さいPAS粒子は、沈降しにくいのみならず、洗浄液の液面に向けて浮上することがある。洗浄液の液面近傍に浮上しているPAS粒子は、洗浄排液の排出に随伴して向流洗浄装置の外部に流出する場合があり、しかも、洗浄排液の排出に随伴して向流洗浄装置の外部に流出するPAS粒子の粒径や粒径分布、更には、流出量などは、確実には予測できない。これら流出するPAS粒子には、粒径が著しく小さなPASなど、PASの製品用途に使用しにくいものも一部含まれているが、多くの粒子は、回収すれば製品用途に使用し得るものである。したがって、向流洗浄装置において、洗浄排液の排出に随伴して流出するPASがあると、製品ロット間で、粒径や粒径分布が異なる場合があったり、PASの製品収率が低下するとともに、洗浄排液を清浄化するための処理に手間がかかることになり、高品質のPASを安定的に製造することができず、その改善が求められていた。極めて小さな目開き径のフィルターで洗浄排液をろ過すれば、PAS粒子の流出を防止することができるのはいうまでもないが、1)PAS粒子を再分離するために高いコストを要する、2)長期間運転するとフィルターが目詰まりする、3)微細なPAS粒子も再分離されてしまうので、PAS全体の品質が規格値に維持管理されにくい、などの問題が避けられなかった。
 更に、洗浄排液をろ過して再分離したPAS粒子は、フィルターを含めた分離装置が原因と考えられる金属粒子やろ材の切断片などの異物混入による汚染が著しく、製品として回収することは当業者が想定しないことであった。
特開平6-192423号公報 国際公開第2003/048231号 特開平3-86287号公報 特表2003-516846号公報 特表2008-513186号公報
 本発明の課題は、PAS粒子の向流洗浄において、洗浄液の排出に随伴して排出されてしまうPAS粒子を確実に再分離し、製品として回収することで、長期間にわたって効率的に高品質のPASを高収率で製造することができ、洗浄排液の清浄化に要するコストを軽減できるPASの製造方法、及び、これに適するPASの製造装置を提供することにある。
 本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を進めた結果、PAS粒子の向流洗浄方法及び洗浄装置において、洗浄液の排出に随伴して排出されてしまうPAS粒子を、マイクロスリットフィルターを用いて捕捉し、次いで、逆洗等によって、マイクロスリットフィルターからPAS粒子を再分離し排出して回収することを繰り返すことにより、長期間にわたって効率的に高品質のPAS粒子を高収率で得ることができることを見いだした。
 かくして、本発明によれば、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させてPASを生成する重合工程;生成したPASを含有する反応液からPAS粒子を分離する分離工程;分離したPAS粒子を、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液を用いて洗浄する工程であって、洗浄槽内において、PAS粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、PAS粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄工程;洗浄槽から排出される洗浄排液を、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子再分離手段に供給して、PAS粒子を捕捉し、次いで、マイクロスリットフィルターから、PAS粒子を再分離し排出する、PAS粒子の再分離工程;及び、排出されたPAS粒子を回収する回収工程;を含むPASの製造方法が提供される。
 また、本発明によれば、以下の実施態様が提供される。
(1)前記向流洗浄工程及びPAS粒子の再分離工程を複数含む前記のPASの製造方法。
(2)前記洗浄槽が、洗浄塔である前記のPASの製造方法。
(3)前記PAS粒子を含有する水性スラリーが、酸性化合物を含む前記のPASの製造方法。
(4)前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、相分離剤の存在下に、170~290℃の温度で重合反応させるものである、前記のPASの製造方法。
(5)前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、170~270℃の温度で重合反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が30%以上となった時点で、重合反応系内に相分離剤を存在させ、245~290℃の温度で重合反応を継続させるものである、前記のPASの製造方法。
(6)前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、相分離剤の存在下、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程である、前記のPASの製造方法。
(7)前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モルの水が存在する状態で、170~270℃の温度で重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、仕込み硫黄源1モル当たり2.0モル超過10モル以下の水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、245~290℃の温度で、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程である、前記のPASの製造方法。
(8)前記後段重合工程において、仕込み硫黄源1モル当たり2.0モル超過10モル以下の水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及びパラフィン系炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種の相分離剤を、仕込み硫黄源1モルに対して0.01~3モルの範囲内で存在させる、前記のPASの製造方法。
(9)前記重合工程に先立って、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物を含有する硫黄源、及び該アルカリ金属水硫化物1モル当たり0.95~1.05モルのアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して反応させ、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程;並びに、脱水工程の後、系内に残存する混合物に、必要に応じてアルカリ金属水酸化物及び水を添加して、脱水時に生成した硫化水素に伴い生成するアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水前に添加したアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水後に添加するアルカリ金属水酸化物のモル数との総モル数が、仕込み硫黄源1モル当たり1.00~1.09モルとなり、かつ、水のモル数が仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モルとなるように調整する仕込み工程;を配置する、前記のPASの製造方法。
(10)前記分離工程に先立って、相分離剤を添加する前記のPASの製造方法。
(11)前記相分離剤が、水、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及びパラフィン系炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種である、前記のPASの製造方法。
(12)前記相分離剤が、仕込み硫黄源1モル当たり0.5~10モルの水、及び、有機カルボン酸金属塩0.001~0.7モルである、前記のPASの製造方法。
 さらに、本発明によれば、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させてPASを生成する重合装置;生成したPASを含有する反応液からPAS粒子を分離する分離装置;分離したPAS粒子を、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液を用いて洗浄する装置であって、洗浄槽内において、PAS粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、PAS粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄装置;洗浄槽から排出される洗浄排液が供給されて、PAS粒子を捕捉する、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子捕捉手段、及び、マイクロスリットフィルターから、PAS粒子を再分離し排出する逆洗手段を有する、PAS粒子の再分離装置;並びに、排出されたPAS粒子を回収する回収装置;を備えるPASの製造装置が提供される。
 また、本発明によれば、PASの製造装置として以下の実施態様が提供される。
(1)前記向流洗浄装置及び前記PAS粒子の再分離装置を複数備える前記のPASの製造装置。
(2)前記洗浄槽が、洗浄塔である前記のPASの製造装置。
 本発明は、重合工程、分離工程、向流洗浄工程、PAS粒子の再分離工程、及び回収工程を含むPASの製造方法であるので、洗浄液の排出に随伴して排出されてしまうPAS粒子をほぼすべて再分離して回収することができ、長期間にわたって効率的に高品質のPASを高収率で製造することができる、という効果を奏する。
 また、本発明は、重合装置、分離装置、向流洗浄装置、PAS粒子の再分離装置、及び回収装置を備えるPASの製造装置であるので、洗浄液の排出に随伴して排出されてしまうPAS粒子をほぼすべて再分離することができ、長期間にわたって効率的に高品質のPASを高収率で製造することができる、という効果を奏する。
 その結果、本発明のPASの製造方法及び製造装置により得られたPASは、押出成形、射出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法の適用に適したものであり、電子部品の封止材や被覆材をはじめ、電気・電子機器、自動車機器等の広範な分野において好適に利用することができる。
本発明の向流洗浄装置、PAS粒子の再分離装置及び回収装置の具体例の概念図である。 本発明の向流洗浄装置の具体例の概略図である。
I.重合反応成分
1.硫黄源
 本発明では、硫黄源としてアルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源を使用する。アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
 アルカリ金属硫化物は、無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよい。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、硫化ナトリウム及び硫化リチウムが好ましい。アルカリ金属硫化物は、水溶液などの水性混合物(すなわち、流動性のある水との混合物)として用いることが、処理操作や計量などの観点から好ましい。
 アルカリ金属水硫化物は、無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよい。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、水硫化ナトリウム及び水硫化リチウムが好ましい。アルカリ金属水硫化物は、水溶液または水性混合物(すなわち、流動性のある水との混合物)として用いることが、処理操作や計量などの観点から好ましい。
 本発明で使用するアルカリ金属硫化物の中には、少量のアルカリ金属水硫化物が含有されていてもよい。この場合、アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物との総モル量が、必要により配置する脱水工程後の、重合工程で重合反応に供される硫黄源、すなわち「仕込み硫黄源」になる。
 本発明で使用するアルカリ金属水硫化物の中には、少量のアルカリ金属硫化物が含有されていてもよい。この場合、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との総モル量が、仕込み硫黄源になる。アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物とを混合して用いる場合には、当然、両者が混在したものが仕込み硫黄源となる。
 硫黄源がアルカリ金属水硫化物を含有するものである場合、アルカリ金属水酸化物を併用する。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は、水溶液または水性混合物として用いることが好ましい。
 本発明のPASの製造方法において、脱水工程で脱水されるべき水分とは、水和水、水溶液の水媒体、及びアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応などにより副生する水などである。
2.ジハロ芳香族化合物
 本発明で使用するジハロ芳香族化合物(DHA)は、芳香環に直接結合した2個のハロゲン原子を有するジハロゲン化芳香族化合物である。ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指し、同一ジハロ芳香族化合物において、2つのハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。これらのジハロ芳香族化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ジハロ芳香族化合物の具体例としては、例えば、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、ジハロジフェニルケトン等が挙げられる。これらの中でも、p-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、及びこれら両者の混合物が好ましく、p-ジハロベンゼンがより好ましく、p-ジクロロベンゼン(pDCB)が、特に好ましく用いられる。
 重合反応で使用するジハロ芳香族化合物の仕込み量は、重合工程での重合反応開始時、すなわち、必要により配置する脱水工程後の仕込み工程において存在し、重合工程で重合反応に供される硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という。ここでは、アルカリ金属硫化物及び/またはアルカリ金属水硫化物である。)1モルに対し、通常0.90~1.50モル、好ましくは1.00~1.10モル、より好ましくは1.00~1.09モル、特に好ましくは1.00モル超過1.09モル以下である。多くの場合、該ジハロ芳香族化合物の仕込み量が1.01~1.09モルの範囲内で、良好な結果を得ることができる。硫黄源に対するジハロ芳香族化合物の仕込みモル比が大きくなりすぎると、高分子量ポリマーを生成させることが困難になる。他方、硫黄源に対するジハロ芳香族化合物の仕込みモル比が小さくなりすぎると、分解反応が生じ易くなり、安定的な重合反応の実施が困難となる。
3.分岐・架橋剤
 生成PASに分岐または架橋構造を導入するために、3個以上のハロゲン原子が結合したポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物等を併用することができる。分岐・架橋剤としてのポリハロ化合物として、好ましくはトリハロベンゼンが挙げられる。また、生成PAS樹脂に特定構造の末端を形成したり、あるいは重合反応や分子量を調節したりするために、モノハロ化合物を併用することができる。モノハロ化合物は、モノハロ芳香族化合物だけではなく、モノハロ脂肪族化合物も使用することができる。
4.有機アミド溶媒
 本発明では、脱水反応及び重合反応の溶媒として、非プロトン性極性有機溶媒である有機アミド溶媒を用いる。有機アミド溶媒は、高温でアルカリに対して安定なものが好ましい。有機アミド溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N-メチル-ε-カプロラクタム等のN-アルキルカプロラクタム化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン等のN-アルキルピロリドン化合物またはN-シクロアルキルピロリドン化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン等のN,N-ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。これらの有機アミド溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
 これらの有機アミド溶媒の中でも、N-アルキルピロリドン化合物、N-シクロアルキルピロリドン化合物、N-アルキルカプロラクタム化合物、及びN,N-ジアルキルイミダゾリジノン化合物が好ましく、特に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-メチル-ε-カプロラクタム、及び1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンが好ましく用いられる。本発明の重合反応に用いられる有機アミド溶媒の使用量は、硫黄源1モル当たり、通常0.1~10kgの範囲である。
5.重合助剤
 本発明では、重合反応を促進させるために、必要に応じて、各種重合助剤を用いることができる。重合助剤の具体例としては、一般にPASの重合助剤として公知の水、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類、及びこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、アルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。アルカリ金属カルボン酸塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウム、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。アルカリ金属カルボン酸塩としては、安価で入手しやすいことから、酢酸ナトリウムが特に好ましい。重合助剤の使用量は、化合物の種類により異なるが、仕込み硫黄源1モルに対し、通常0.01~10モル、好ましくは0.1~2モル、より好ましくは0.2~1.8モル、特に好ましくは0.3~1.7モルの範囲内である。重合助剤が、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸塩、及びアルカリ金属ハライドである場合には、その使用量の上限は、仕込み硫黄源1モルに対し、好ましくは1モル以下、より好ましくは0.8モル以下であることが望ましい。
6.相分離剤
 本発明では、重合反応を促進させ、高重合度のPASを短時間で得るために、各種相分離剤を用いることが好ましい。相分離剤とは、それ自身でまたは少量の水の共存下に、有機アミド溶媒に溶解し、PASの有機アミド溶媒に対する溶解性を低下させる作用を有する化合物である。相分離剤自体は、PASの溶媒ではない化合物である。また、本発明では、分離工程に先だって、すなわち重合工程の末期、重合工程の終了直後、または、重合工程の終了後に、相分離剤を添加して、粒状のPASを形成させ、分離工程において、該粒状のPAS粒子を分離してもよい。
 相分離剤としては、一般にPASの技術分野において、相分離剤として機能することが知られている化合物を用いることができる。相分離剤には、前記の重合助剤として使用される化合物も含まれるが、ここでは、相分離剤とは、相分離状態で重合反応を行う工程、すなわち相分離重合工程で相分離剤として機能し得る量比で用いられる化合物を意味する。相分離剤の具体例としては、水、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類などが挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。これらの相分離剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの相分離剤の中でも、コストが安価で、後処理が容易な水、または水とアルカリ金属カルボン酸塩などの有機カルボン酸金属塩との組み合わせが、特に好ましい。
 相分離剤の使用量は、用いる化合物の種類により異なるが、仕込み硫黄源1モルに対し、通常0.01~10モル、好ましくは0.01~9.5モル、より好ましくは0.02~9モルの範囲内である。相分離剤が、仕込み硫黄源1モルに対して、0.01モル未満または10モル超過であると、相分離状態を十分起こすことができず、高重合度のPASが得られない。
 本発明の製造方法が、相分離剤を添加し、相分離剤の存在下で行う重合工程を含む場合、水を、仕込み硫黄源1モルに対し、2.0モル超過10モル以下、好ましくは2.2~7モル、より好ましくは2.5~5モルの割合で重合反応系内に存在する状態となるように水量を調整することが好ましい。更に上記した有機カルボン酸金属塩などの水以外の他の相分離剤を、仕込み硫黄源1モルに対し、好ましくは0.01~3モル、より好ましくは0.02~2モル、特に好ましくは0.03~1モルの範囲内で使用することが好ましい。
 相分離剤として水を使用する場合でも、相分離重合を効率的に行う観点から、水以外の他の相分離剤を重合助剤として併用することができる。相分離重合工程において、水と他の相分離剤とを併用する場合、その合計量は、相分離を起こすことができる量であればよい。相分離重合工程において、仕込み硫黄源1モルに対し、水を2.0モル超過10モル以下、好ましくは2.2~7モル、より好ましくは2.5~5モルの割合で重合反応系内に存在させるとともに、他の相分離剤を好ましくは0.01~3モル、より好ましくは0.02~2モル、特に好ましくは0.03~1モルの範囲内で併用することができる。また、水と他の相分離剤とを併用する場合、少量の相分離剤で相分離重合を実施するために、仕込み硫黄源1モルに対して、水を0.5~10モル、好ましくは0.6~7モル、特に好ましくは0.8~5モルの範囲内で使用するとともに、有機カルボン酸金属塩などの他の相分離剤、更に好ましくは有機カルボン酸金属塩、特に好ましくはアルカリ金属カルボン酸塩を0.001~0.7モル、好ましくは0.02~0.6モル、特に好ましくは0.05~0.5モルの範囲内で併用してもよい。
 相分離剤は、少なくとも一部は、重合反応成分の仕込み時から共存していてもかまわないが、重合反応の途中で相分離剤を添加して、相分離を形成するのに十分な量に調整することが望ましい。
II.重合反応工程
1.脱水工程
 重合工程の前工程として、脱水工程を配置して反応系内の水分量を調節することが好ましい。脱水工程は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で、有機アミド溶媒とアルカリ金属硫化物とを含む混合物を加熱して反応させ、蒸留により水を系外へ排出する方法により実施する。硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを含む混合物を加熱して反応させ、蒸留により水を系外へ排出する方法により実施する。
 脱水工程では、水和水(結晶水)や水媒体、副生水などからなる水分を必要量の範囲内になるまで脱水する。脱水工程では、重合反応系の共存水分量が、仕込み硫黄源1モルに対して、通常0.02~2.0モル、好ましくは0.05~1.8モル、より好ましくは0.5~1.6モルになるまで脱水する。先に述べたように、脱水工程後の硫黄源を「仕込み硫黄源」と呼ぶ。脱水工程で水分量が少なくなり過ぎた場合は、重合工程の前に水を添加して所望の水分量に調節してもよい。
 硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合、脱水工程において、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物、及び該アルカリ金属水硫化物1モル当たり0.95~1.05モルのアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、反応させ、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出することが好ましい。
 脱水工程でのアルカリ金属水硫化物1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル比が小さすぎると、脱水工程で揮散する硫黄成分(硫化水素)の量が多くなりすぎて、硫黄源量の低下による生産性の低下を招いたり、脱水後に残存する仕込み硫黄源に多硫化成分が増加することによる異常反応、生成PASの品質低下が起こり易くなる。アルカリ金属水硫化物1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル比が大きすぎると、有機アミド溶媒の変質が増大したり、重合反応を安定して実施することが困難になったり、生成PASの収率や品質が低下することがある。脱水工程でのアルカリ金属水硫化物1モル当たりのアルカリ金属水酸化物の好ましいモル比は、0.97~1.04、より好ましくは0.98~1.03である。
 アルカリ金属水硫化物には、多くの場合、少量のアルカリ金属硫化物が含まれており、硫黄源の量は、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との合計量になる。また、少量のアルカリ金属硫化物が混入していても、本発明では、アルカリ金属水硫化物の含有量(分析値)を基準に、アルカリ金属水酸化物とのモル比を算出し、そのモル比を調整する。
 脱水工程での各原料の反応槽への投入は、一般的には、常温(5~35℃)から300℃、好ましくは常温から200℃の温度範囲内で行われる。原料の投入順序は、任意に設定することができ、さらには、脱水操作途中で各原料を追加投入してもかまわない。脱水工程に使用される溶媒としては、有機アミド溶媒を用いる。この溶媒は、重合工程に使用される有機アミド溶媒と同一であることが好ましく、NMPが特に好ましい。有機アミド溶媒の使用量は、反応槽に投入する硫黄源1モル当たり、通常0.1~10kg程度である。
 脱水操作は、反応槽内へ原料を投入後の混合物を、通常、300℃以下、好ましくは100~250℃の温度範囲で、通常、15分間から24時間、好ましくは30分間~10時間、加熱して行われる。加熱方法は、一定温度を保持する方法、段階的または連続的な昇温方法、または両者を組み合わせた方法がある。脱水工程は、バッチ式、連続式、または両方式の組み合わせ方式などにより行われる。
 脱水工程を行う装置は、後続する重合工程に用いられる反応槽(反応缶)と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。装置の材質は、チタンのような耐食性材料が好ましい。脱水工程では、通常、有機アミド溶媒の一部が水と同伴して反応槽外に排出される。その際、硫化水素は、ガスとして系外に排出される。
2.仕込み工程
 本発明では、脱水工程後、系内に残存する混合物に、必要に応じてアルカリ金属水酸化物及び水を添加することができる。特に、硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、脱水時に生成した硫化水素に伴い生成するアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水前に添加したアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水後に添加するアルカリ金属水酸化物のモル数との総モル数が、脱水工程後に系内に存在する硫黄源、すなわち仕込み硫黄源1モル当たり1.00~1.09モル、より好ましくは1.00超過1.09モル以下、より好ましくは1.001~1.085モルとなり、かつ、水のモル数が仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モル、好ましくは0.05~1.8モル、より好ましくは0.5~1.6モルとなるように調整することが望ましい。仕込み硫黄源の量は、〔仕込み硫黄源〕=〔総仕込み硫黄モル〕-〔脱水後の揮散硫黄モル〕の式により算出される。
 脱水工程で硫化水素が揮散すると、平衡反応により、アルカリ金属水酸化物が生成し、系内に残存することになる。したがって、揮散する硫化水素量を正確に把握して、仕込み工程でのアルカリ金属水酸化物の硫黄源に対するモル比を決定する必要がある。
 仕込み硫黄源1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル比が大きすぎると、有機アミド溶媒の変質を増大させたり、重合時の異常反応や分解反応を引き起こしやすい。また、生成PASの収率の低下や品質の低下を引き起こすことが多くなる。仕込み硫黄源1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル比は、好ましくは1.005~1.085モル、より好ましくは1.01~1.08モル、特に好ましくは1.015~1.075モルである。アルカリ金属水酸化物が少過剰の状態で重合反応を行うことが、重合反応を安定的に実施し、高品質のPASを得る上で好ましい。
 本発明では、脱水工程で使用する硫黄源と区別するために、仕込み工程での硫黄源を「仕込み硫黄源」と呼んでいる。その理由は、脱水工程で反応槽内に投入する硫黄源の量は、脱水工程で変動するからである。仕込み硫黄源は、重合工程でのジハロ芳香族化合物との反応により消費されるが、仕込み硫黄源のモル量は、仕込み工程でのモル量を基準とする。
3.重合工程
 重合工程は、脱水工程終了後の混合物にジハロ芳香族化合物を仕込み、有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物を加熱することにより行われる。脱水工程で用いた反応槽とは異なる重合槽を使用する場合には、重合槽に脱水工程後の混合物とジハロ芳香族化合物を投入する。脱水工程後、重合工程前には、必要に応じて、有機アミド溶媒量や共存水分量などの調整を行ってもよい。また、重合工程前または重合工程中に、重合助剤、相分離剤その他の添加物を混合してもよい。
 脱水工程終了後に得られた混合物とジハロ芳香族化合物との混合は、通常、100~350℃、好ましくは120~330℃の温度範囲内で行われる。重合槽に各成分を投入する場合、投入順序は、特に制限なく、両成分を部分的に少量ずつ、あるいは一時に投入することにより行われる。
 重合工程では、一般的には、仕込み混合物を、170~290℃、好ましくは180~280℃、より好ましくは190~275℃の温度に加熱して、重合反応を開始させ、重合を進行させる。加熱方法は、一定温度を保持する方法、段階的または連続的な昇温方法、または両方法の組み合わせが用いられる。重合反応時間は、一般に10分間~72時間の範囲であり、望ましくは30分間~48時間である。重合反応は、前段重合工程と後段重合工程の2段階工程で行うことが好ましく、その場合の重合時間は前段重合工程と後段重合工程との合計時間である。
 重合工程に使用される有機アミド溶媒は、重合工程中に存在する仕込み硫黄源1モル当たり、通常、0.1~10kg、好ましくは0.15~5kgである。この範囲であれば、重合反応途中でその量を変化させてもかまわない。重合反応開始時の共存水分量は、仕込み硫黄源1モルに対して、通常0.02~2.0モル、好ましくは0.05~1.8モル、より好ましくは0.5~1.6モルの範囲内とすることが望ましい。重合反応の途中で共存水分量を増加させることが好ましい。
 本発明のPASの製造方法では、重合工程において、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、相分離剤の存在下に、170~290℃の温度で重合反応させることが好ましい。相分離剤としては、先に述べた化合物等が好ましく用いられる。
 本発明のPASの製造方法では、重合工程において、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、170~270℃の温度で重合反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が30%以上となった時点で、重合反応混合物中に、相分離剤を添加して、重合反応系内に相分離剤を存在させ、次いで、重合反応混合物を昇温し、245~290℃の温度で相分離剤の存在下で重合反応を継続させることが、より好ましい。
 本発明のPASの製造方法では、重合工程において、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、相分離剤の存在下、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程により重合反応を行うことが好ましい。
 本発明のPASの製造方法では、重合工程において、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モルの水が存在する状態で、170~270℃の温度で重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、仕込み硫黄源1モル当たり2.0モル超過10モル以下の水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、245~290℃の温度に加熱することにより、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程により重合反応を行うことがより好ましい。
 前段重合工程とは、先に述べたとおり、重合反応開始後、ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%、好ましくは85~98%、より好ましくは90~97%に達した段階であって、前段重合工程において、重合温度を高くしすぎると、副反応や分解反応が生じ易くなる。
 ジハロ芳香族化合物の転化率は、以下の式により算出した値である。ジハロ芳香族化合物(以下、「DHA」と略記することがある。)を硫黄源よりモル比で過剰に添加した場合は、下記式
 転化率=〔〔DHA仕込み量(モル)-DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)-DHA過剰量(モル)〕〕×100
によって転化率を算出する。それ以外の場合には、下記式
 転化率=〔〔DHA仕込み量(モル)-DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕〕×100
によって転化率を算出する。
 前段重合工程における反応系の共存水量は、仕込み硫黄源1モル当たり、通常0.02~2.0モル、好ましくは0.05~1.8モル、より好ましくは0.5~1.6モル、特に好ましくは0.8~1.5モルの範囲である。前段重合工程での共存水量は、少なくてもよいが、過度に少なすぎると、生成PASの分解等の望ましくない反応が起こり易くなることがある。共存水分量が2.0モルを超過すると、重合速度が著しく小さくなったり、有機アミド溶媒や生成PASの分解が生じ易くなるので、いずれも好ましくない。重合は、170~270℃、好ましくは180~265℃の温度範囲内で行われる。重合温度が低すぎると、重合速度が遅くなり過ぎ、逆に、270℃を越える高温になると、生成PASと有機アミド溶媒が分解を起こし易く、生成するPASの重合度が極めて低くなる。
 前段重合工程において、温度310℃、剪断速度1,216sec-1で測定した溶融粘度が、通常0.5~30Pa・sのポリマー(「プレポリマー」ということがある。)を生成させることが望ましい。
 本発明における後段重合工程は、前段重合工程で生成したポリマー(プレポリマー)の単なる分別・造粒の工程ではなく、該ポリマーの重合度の上昇を起こさせるためのものである。
 後段重合工程では、重合反応系に相分離剤(重合助剤)を存在させて、生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続することが好ましい。
 後段重合工程では、相分離剤として、水を使用することが特に好ましく、仕込み硫黄源1モルに対して、2.0モル超過10モル以下、好ましくは、2.0モル超過9モル以下、より好ましくは2.1~8モル、特に好ましくは2.2~7モルの水が存在する状態となるように重合反応系内の水の量を調整することが好ましい。後段重合工程において、重合反応系中の共存水分量が仕込み硫黄源1モル当り2.0モル以下または10モル超過になると、生成PASの重合度が低下することがある。特に、共存水分量が2.2~7モルの範囲で後段重合を行うと、高重合度のPASが得られやすいので好ましい。
 本発明のより好ましい製造方法においては、少量の相分離剤で重合を実施するために、相分離剤として、水と水以外の他の相分離剤を併用することができる。この態様においては、重合反応系内の水量を、仕込み硫黄源1モル当り0.1~10モル、好ましくは0.3~10モル、更に好ましくは0.4~9モル、特に好ましくは0.5~8モルの範囲内に調整するとともに、水以外の他の相分離剤を、仕込み硫黄源1モル当り0.01~3モルの範囲内で存在させることが好ましい。後段重合工程で使用する、水以外の他の相分離剤としては、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及びパラフィン系炭化水素類からなる群より選ぶことができる。水と併用することが特に好ましい他の相分離剤は、有機カルボン酸金属塩、中でも、アルカリ金属カルボン酸塩であり、その場合は、仕込み硫黄源1モルに対して、水を0.5~10モル、好ましくは0.6~7モル、特に好ましくは0.8~5モルの範囲内で使用するとともに、アルカリ金属カルボン酸塩を0.001~0.7モル、好ましくは0.02~0.6モル、特に好ましくは0.05~0.5モルの範囲内で使用すればよい。
 後段重合工程での重合温度は、245~290℃の範囲であり、重合温度が245℃未満では、高重合度のPASが得られにくく、290℃を越えると、生成PASや有機アミド溶媒が分解するおそれがある。特に、250~270℃の温度範囲が高重合度のPASが得られやすいので好ましい。
 生成ポリマー中の副生アルカリ金属塩(例えば、NaCl)や不純物の含有量を低下させたり、ポリマーを粒状で回収する目的で、重合反応後期あるいは終了時に水を添加し、水分を増加させることができる。重合反応方式は、バッチ式、連続式、あるいは両方式の組み合わせでもよい。バッチ式重合では、重合サイクル時間を短縮する目的のために、所望により2つ以上の反応槽を用いる方式を用いることができる。
III.分離工程
 本発明のPASの製造方法において、重合反応後の生成PASの分離回収処理は、通常の重合反応後の生成PASの分離工程と同様の方法により行うことができる。分離工程としては、重合反応終了後、生成したPASを含有する反応液である生成物スラリーを冷却した後、必要により水などで生成物スラリーを希釈してから、ろ別することにより、該反応液からPAS粒子を分離して回収することができる。
 また、相分離重合工程を含むPASの製造方法によれば、粒状PASを生成させることができるため、スクリーンを用いて篩分けする方法によりPAS粒子を反応液から分離することで、副生物やオリゴマーなどから容易に分離することができるので好ましい。室温程度まで冷却することなく、生成物スラリーから高温状態でPAS粒子を篩分けすることもできる。さらに、分離工程に先だって、すなわち重合工程の末期、重合工程の終了直後、または、重合工程の終了後に、相分離剤を添加して、粒状のPASを形成させ、分離工程において、該粒状のPAS粒子を分離することもできる。その際、重合工程は、相分離剤の存在下で行ってもよいし、相分離剤の不存在下で行ってもよい。相分離剤の添加量は、既に述べたとおりでよい。
IV.洗浄工程
 PASの製造方法においては、通常、副生アルカリ金属塩やオリゴマーをできるだけ少なくするために、分離工程により分離回収したPAS粒子は、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液によって洗浄処理を行う。本発明のPASの製造方法における向流洗浄工程もまた、洗浄処理を行う。
 洗浄処理に使用する有機溶媒としては、重合溶媒と同じ有機アミド溶媒や、ケトン類(例えば、アセトン)、アルコール類(例えば、メタノールまたはエタノール)等の有機溶媒で洗浄することが好ましく、これらの1種類を使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。オリゴマーや分解生成物などの不純物(低分子量成分)の除去効果に優れているとともに、経済性や安全性の観点からも、アセトンが好ましい。複数種類の有機溶媒を混合して使用する場合は、該有機溶媒がアセトンを含むものであることが好ましく、有機溶媒におけるアセトンの割合が、50質量%以上、好ましくは70質量%以上である有機溶媒を使用するとよい。
 洗浄処理に使用する水としては、イオン交換水などの脱イオン水、蒸留水、超純水などを使用することができる。
 洗浄液としては、水とアセトンの混合溶液を使用することが、より好ましい。混合溶液としては、水の割合が、好ましくは1~60質量%、より好ましくは1~30質量%、特に好ましくは1~20質量%の混合液を用いることが、オリゴマーや分解生成物などの有機不純物の除去効率を高める上で好ましい。
 洗浄液による洗浄処理は、一般に、分離工程を経て回収されたPASと洗浄液とを混合し、攪拌することにより実施し、1回に限らず、複数回実施することが好ましく、通常は2~4回程度実施する。各洗浄回での洗浄液の使用量は、理論PASポリマー(水や有機溶媒を乾燥などにより除去したPASポリマー量)に対して通常1~15倍容量、好ましくは2~10倍容量、より好ましくは3~8倍容量である。洗浄時間は、通常1~120分間、好ましくは3~100分間、より好ましくは5~60分間である。有機溶剤を用いる洗浄処理を行う場合は、該洗浄処理の後に、有機不純物の除去効率を高めるとともに、NaCl等の無機塩を除去するために、更に、水による洗浄処理を1回または複数回実施することが好ましい。
 洗浄処理は、一般に、常温(10~40℃)で行うが、洗浄液が液体状態である限り、それより低い温度または高い温度で行うこともできる。例えば、水の洗浄力を高めるために、洗浄液として高温水を用いることができる。
 洗浄処理の方法としては、先に述べたように、バッチ洗浄と連続洗浄とがある。バッチ洗浄は、回収したポリマーを、所定容積の洗浄槽において、洗浄液で撹拌洗浄する方法である。連続洗浄は、湿潤状態の重合体と、洗浄液である有機溶媒または水とを、洗浄槽内において連続的に向流接触させる方法である。向流接触を伴う連続洗浄は、湿潤状態(スラリー状であってもよい。)の重合体の流れと洗浄液の流れとが反対方向であることが必須であるので、洗浄液の流れが、上方に進行する方法と、下方に進行する方法とがある。所望により、洗浄液の進行方向が異なる複数の連続洗浄を組み合わせることもできる。また、連続洗浄に先立ってバッチ洗浄を行ってもよい。
 本発明は、洗浄工程として、以下V.で述べる向流洗浄工程を含むものである。
V.向流洗浄工程
 本発明は、洗浄工程として、好ましくは前記のバッチ洗浄による洗浄処理後に、分離したPAS粒子を、更に、水性スラリー状態で、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液を用いて洗浄する工程であって、洗浄槽内において、PAS粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、PAS粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄工程を含むものである点に特徴を有する。
 本発明の向流洗浄工程は、通常、図1の向流洗浄装置、PAS粒子の再分離装置及び回収装置の具体例の概念図に略記したように、洗浄槽内において、PAS粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、PAS粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄装置によって行われる。
 本発明においては、かかる向流洗浄工程を、PAS粒子を洗浄する工程において、1工程のみ設けてもよいし、複数工程設けてもよい。したがって、本発明においては、かかる向流洗浄装置を、1または複数設けることができる。
 PAS粒子を洗浄する工程において、洗浄液とPAS粒子を含有する水性スラリーとを向流接触させて向流洗浄する向流洗浄工程を複数設ける場合、すべての向流洗浄工程について、後述するPAS粒子の再分離工程を行うものとしてもよいが、その内の1つの向流洗浄工程のみについて、本発明におけるPAS粒子の再分離工程を行ってもよい。また、いくつかの向流洗浄工程について、それぞれ、または、複数の向流洗浄工程を組み合わせて、本発明におけるPAS粒子の再分離工程を行ってもよい。
 いくつかの向流洗浄工程について、本発明におけるPAS粒子の再分離工程を行う場合は、PAS粒子の流出が多いと想定される向流洗浄工程について、本発明におけるPAS粒子の再分離工程を行うことが好ましく、洗浄液の供給量や供給速度などを考慮して、選定すればよい。
 向流洗浄工程に用いる向流洗浄装置の洗浄槽は、PAS粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行うことができるものであれば、形状や大きさは限定されない。PAS粒子を含有する水性スラリーと洗浄液の移動を円滑に行い、向流洗浄を効率的に進めるために、鉛直に立設された略円筒状の形状を有する洗浄槽、すなわち洗浄塔を採用することが好ましい。洗浄槽または洗浄塔の大きさは、所望の処理量により適宜選択することができる。後述の具体例においては、内径が、通常5~50cm程度、好ましくは10~40cm、より好ましくは15~35cmであり、長さ(洗浄塔の場合は、高さ)が、通常50~300cm程度、好ましくは80~250cm、より好ましくは100~200cmである装置を用いている。処理量、すなわち、PAS粒子を含有する水性スラリーと洗浄液の時間当たり供給量に比例して、洗浄槽または洗浄塔の大きさを変更することができる。
 洗浄槽の内部には、PAS粒子を含有する水性スラリーと洗浄液との向流接触を十分行わせるために、スタティックミキサー、撹拌翼、または搬送スクリューなどを設けることが好ましく、これらの大きさ及び数は、所望の処理量により適宜選択することができる。
 向流洗浄工程に用いる洗浄槽には、頂部にPAS粒子を含有する水性スラリーを供給する水性スラリー供給口を設け、底部の下端に洗浄処理されたPAS粒子を含むスラリーを排出するポリマー粒子排出口を設けるとともに、底部に洗浄液を供給する洗浄液供給口を設け、頂部の上端または上端近くに、洗浄によってPAS粒子を含有する水性スラリーから除去された水溶性の金属塩や残留硫化水素等を溶かし込んだ洗浄排液を排出する洗浄排液排出口を設ける。先に述べたとおり、洗浄排液排出口からは、洗浄排液に随伴してPAS粒子が排出されることがあり、製品収率の向上や環境負荷の軽減の観点から、解決が求められている。
 図2に向流洗浄装置の具体例の概略図として、向流洗浄工程に用いる洗浄塔の一例の模式縦断面図を示す。図2の洗浄塔は、塔頂部1、本体部2及び塔底部3からなる。本体部2は、5つの攪拌室21~25に分割され、各攪拌室間は中央に開口を設けた仕切板5により区画されている。また各攪拌室21~25には、平パドル攪拌翼6が配置されている。平パドル攪拌翼6は、塔頂部1及び本体部2を貫通する共通攪拌軸7に回転可能に固着されている。
 塔頂部1には、水性スラリー供給口91及び洗浄排液排出口94が、塔底部3には洗浄液供給口92及びポリマー粒子排出口93が設けられている。本例では、塔頂部1は、水性スラリー供給口91から導入されたPAS粒子を含有する水性スラリーが洗浄排液排出口94から排出される液体流による軸方向逆混合を受けにくいように、本体部2に比べて約1~4倍に拡大された流路面積とされている。
 このような構成の装置において、水性スラリー供給口91から塔頂部1に導入されたPAS粒子を含有する水性スラリーは、第1の攪拌室21に導入され、攪拌室21に設けた平パドル攪拌翼6により攪拌されながら下降する。他方、洗浄液供給口92から導入された洗浄液の上昇流は攪拌翼6に吸引されて、攪拌翼上方から導入された水性スラリーとの攪拌混合を受ける。これら一連の流体作用により、攪拌室21内において、水性スラリーと洗浄液との向流接触が進行する。同様に、撹拌室22~25においても、順次撹拌混合を受けながら、向流洗浄が進行する。
 水性スラリー供給口91から供給される水性スラリーの調製方法は、前記の洗浄処理後に分離したPAS粒子を、再度、水性スラリーとして供給してもよいし、該分離したPAS粒子を一定量集めた後に、水性スラリーとして供給してもよい。
 向流洗浄工程で使用する洗浄液としては、水、または、アセトン若しくはアルコールなど水に親和性がある液体と水との混合溶媒が使用されるが、回収後の洗浄排液に対して成分の分離処理を必要としないため、水を主たる成分とする水性洗浄液を使用することが好ましく、水を50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する水性洗浄液を使用するとよい。水としては、脱イオン水、蒸留水、超純水などを使用することができる。
 所望により、洗浄液を供給する洗浄液供給口を2箇所以上設けることもできる。
 なお、PASの製造方法においては、PASの結晶化度を高めるために、塩酸やリン酸等の無機酸や酢酸等の有機酸などの酸性化合物の水溶液と接触させる酸処理を行うことがある。本発明における向流洗浄工程または向流洗浄装置は、この酸処理またはそのための装置に適用することもできる。酸処理に適用する場合は、PAS粒子を含有する水性スラリーに酸性化合物を添加する。
 PAS粒子を含有する水性スラリーの供給量及び洗浄液の供給量は、洗浄槽の大きさ、撹拌翼の撹拌速度、洗浄液と水性スラリー中のPAS粒子の質量比で定まる洗浄浴比、想定される不純物等の含有量、PAS粒子を含有する水性スラリー及び洗浄液の温度や粘度、PAS粒子を含有する水性スラリーと洗浄液との平均的な接触時間などを勘案して、適宜調整することができる。
 本発明者らの知見によれば、PAS粒子の沈降速度及びPAS粒子の向流洗浄効率は、各攪拌室における液相の粘度に依存することが分かった。そして、該液相の粘度は、PAS粒子を含有する水性スラリー中の有機溶剤や洗浄液として用いる有機溶剤の種類や濃度と、温度によって定まる。したがって、固体粒子の沈降速度の均一化及び前記した固体粒子の浮き上がりや排液流路を通した流出を制御するには、洗浄槽に供給されるPAS粒子を含有する水性スラリーの温度や洗浄液の温度を制御する必要がある。PAS粒子を含有する水性スラリーの温度は、通常30~70℃の範囲であり、洗浄液の温度は、通常15~40℃の範囲である。そのため、水性スラリー供給口91または洗浄液供給口92に、直接またはその近傍に温度制御手段を設けるなどして、水性スラリーまたは洗浄液の温度を調整することが好ましい。
 本発明の処理方法または処理装置、すなわち、向流洗浄工程または向流洗浄装置は、洗浄液の供給量として、通常1~800kg/hrの範囲、好ましくは3~700kg/hr、より好ましくは5~600kg/hrの範囲という、広い範囲の供給量に適用することができるので、効率的である。また、洗浄液の供給量は、先に述べた洗浄浴比が、通常1~15の範囲、好ましくは1~10、より好ましくは1~7、特に好ましくは1~5程度とすればよい。洗浄液の供給量が多すぎると、PAS粒子を含有する水性スラリー中のPAS粒子の下降が妨げられ、洗浄排液に随伴して排出されるPAS粒子が増加することがあり、結果的に洗浄効率が不十分となる。洗浄液の供給量が少なすぎると、十分な洗浄が行われない。
VI.再分離工程
 本発明は、洗浄槽から排出される洗浄排液を、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子再分離手段に供給して、PAS粒子を捕捉し、次いで、PAS粒子を捕捉したマイクロスリットフィルターに、好ましくは前記洗浄液と圧縮気体を吹き付けて、マイクロスリットフィルターから、PAS粒子を再分離し排出する、PAS粒子の再分離工程を含むものである点に特徴を有する。
 マイクロスリットフィルターは、ステンレス製の波打多角管にワイヤを強力に巻き付けることにより管の周囲にスリット状の透孔を巻付け配置した形態を持つフィルターであり、MSフィルター(東京特殊電線株式会社製)などが知られている。マイクロスリットフィルターは、従来、比較的少量の固体粒子を含む排水を内部に導入し、固体粒子を除いたろ液を前記スリット状透孔を通して外側へと排出させ排水の浄化を図るべく開発されたフィルター要素として知られている。マイクロスリットフィルターは、ろ過する粒子の大きさに合せてスリットを選定できるので、医薬、超純水、バイオなどの精密ろ過から海水用マイクロストレナーなどの大量ろ過まで幅広い分野に対応できる。更に、マイクロスリットフィルターは、逆洗、すなわち、少量の液体と圧縮気体の混合体を逆噴射することによって、フィルターに捕捉された粒子が除去されて、フィルターが初期の状態に復帰し、ろ過する粒子の捕捉能力が再生されることが知られている。
 本発明は、図1に略記したように、向流洗浄装置の洗浄槽から排出される洗浄排液が供給されて、PAS粒子を捕捉する、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子捕捉手段、及び、PAS粒子を捕捉したマイクロスリットフィルターに、好ましくは前記洗浄液と圧縮気体を吹き付けて、マイクロスリットフィルターから、PAS粒子を再分離し排出する逆洗手段を有する、PAS粒子の再分離装置によって、PAS粒子の再分離工程を行うものである。PAS粒子捕捉手段への洗浄排液の供給は、向流洗浄装置の洗浄槽から排出される洗浄排液をそのまま供給してもよい。また、図1に略記したように、該向流洗浄装置の洗浄槽から排出される洗浄排液を、所望の容積を有する容器に貯留し、攪拌を行って洗浄排液の組成を均一化してから、PAS粒子捕捉手段に供給してもよい。また、圧縮気体としては、圧縮空気または圧縮窒素などを用いることができ、簡便さから圧縮空気を用いることが好ましい。
 本発明のPAS粒子の再分離工程によれば、洗浄排液排出口から洗浄排液に随伴して排出されたPAS粒子の全量に対して、通常90~99.5%、好ましくは92~99.5%、特に好ましくは95~99.5%の収率で回収することができる。すなわち、洗浄排液に随伴して排出されたPAS粒子をほぼ完全に製品として回収することができるので、製品収率が向上する。なお、定期的に逆洗操作を行うことによって、マイクロスリットフィルターはほぼ完全にPAS粒子の捕捉能力が再生されるので、長期間に亘ってフィルターの目詰まり等が生じることがなく、設備の維持管理のコストは大幅に低減される。
 マイクロスリットフィルターのスリットの大きさは、洗浄排液に随伴して排出されたPAS粒子をほぼ完全に捕捉することができ、同時に、逆洗操作によって該PAS粒子がすべてフィルターから離脱して回収されるものであれば、特に限定されないが、通常30~200μm、好ましくは40~120μm、より好ましくは45~100μm、特に好ましくは50~80μmの範囲の目開き径とすればよい。
 向流洗浄装置の洗浄槽の頂部の洗浄排液排出口から排出される洗浄排液は、洗浄塔に隣接して設けられたPAS粒子の再分離装置に供給される。PAS粒子の再分離装置は、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子再分離手段であって、具体的には、PAS粒子捕捉手段に装填されたマイクロスリットフィルターは、下部に洗浄排液供給口が設けられ、上部にろ液排出口が設けられており、該ろ液排出口には、洗浄液と圧縮気体とから成る逆洗流体を吹き付けて、該マイクロスリットフィルターを再生する逆洗手段が、バルブの開閉により切替接続可能に取り付けられている。また、洗浄排液供給口には、逆洗手段により、逆洗が行われるときに、フィルターによって捕捉されたPAS粒子と逆洗流体を排出するための逆洗流体流出口が、バルブの開閉により切替接続可能に取り付けられている。
 洗浄排液は、洗浄槽の洗浄排液排出口からマイクロスリットフィルターに直接供給してもよいが、マイクロスリットフィルターに隣接して設けた撹拌槽に、洗浄排液を供給して、所定量貯量した後に、撹拌を行って洗浄排液の組成を均一化してから、マイクロスリットフィルターに供給することが好ましい。
 洗浄排液には、先に述べたように、PAS粒子を含有する水性スラリー中のPAS粒子を洗浄した後の洗浄液の排液、水溶性の無機物質及び酸性化合物などとともに、洗浄液の上昇流によって、沈降することができなかったPAS粒子が随伴して含まれている。このPAS粒子は、マイクロスリットフィルターによって、ほぼ完全に捕捉されるので、ろ液排出口からは、洗浄液、水溶性の無機物質及び酸性化合物などからなる洗浄排液が排出される。
 次いで、バルブを切り替えて、ろ液排出口に逆洗手段を接続し、洗浄排液供給口に逆洗流体流出口を接続した後、逆洗手段から、洗浄液と圧縮気体から成る逆洗流体を供給することによって、マイクロスリットフィルターに捕捉されたPAS粒子は、マイクロスリットフィルターから離脱し、逆洗後の逆洗流体とともに、逆洗流体流出口から排出される。逆洗流体流出口から排出された逆洗流体とPAS粒子は、必要に応じて容器に貯留させた後に、スクリーンや遠心分離機などを用いて、PAS粒子を再分離する。スクリーンを用いてろ過を行うと、含液率が通常30~75質量%、多くの場合40~65質量%程度のPASのウエットケーキが得られる。遠心分離機を用いて、含液率の低いウエットケーキとしてもよい。ウエットケーキは、更に、水等による洗浄を行い、または行わずに、ろ別によってPAS粒子を分離し再分離する。
 再分離され排出されたPAS粒子は、回収装置に供給し、所望により、更に水による洗浄を行い、または行わずに、その後、乾燥を行って、PAS粒子を回収することができる。洗浄排液から再分離され排出されて回収された、このPAS粒子は、単独で製品とすることもできる。このPAS粒子は、向流洗浄工程において洗浄槽の下方のポリマー粒子排出口から排出され、所望により、更に水による洗浄を行い、または行わずに、その後、乾燥を行って、回収したPAS粒子に混合して、製品とすることもできる。
 また、洗浄排液から再分離され排出されたPAS粒子を、向流洗浄工程において洗浄槽の下方のポリマー粒子排出口から排出されたPAS粒子と混合した後に、所望により、更に水による洗浄を行い、または行わずに、その後、乾燥を行って、PAS粒子を回収してもよい。
 こうして、従来、洗浄排液に随伴して排出されていたPAS粒子を、高率で再分離し、製品として回収することができるので、製品収率が向上し、洗浄排液の清浄化処理も不要となる。
 本発明のマイクロスリットフィルターを装填したPAS粒子の再分離装置は、(i)マイクロスリットフィルターのスリットの大きさを適宜選択することにより、PASの微粒子をほぼ完全に洗浄排液から再分離することができる、(ii)マイクロスリットフィルターを逆洗操作することにより、粒子の捕捉能力をほぼ完全に再生することができ、しかも、該逆洗を繰り返し実施することができる、(iii)長期間運転しても、PAS粒子の再分離装置からの金属粒子やろ材材料などの異物の発生がほとんどない、(iv)洗浄液による腐食がない、などの特徴を有する。
 本発明のマイクロスリットフィルターを装填したPAS粒子の再分離装置によって洗浄排液から再分離され排出されたPAS粒子は、金属粒子やろ材材料などの異物による汚染がないので、従来のろ過装置では、非製品として回収されたものが、製品として回収することができる点に大きな特徴がある。
VII.PAS粒子の回収工程
 洗浄処理を行ったPAS粒子は、スクリーンや遠心分離機などを用いて、洗浄液から分離する。スクリーンとしては、目開き径が63μm(250メッシュ)~500μm(32メッシュ)の範囲、好ましくは75μm(200メッシュ)~250μm(60メッシュ)の範囲のものを使用することができる。スクリーンを用いてろ過を行うと、含液率が通常30~75質量%、多くの場合40~65質量%程度のPASのウエットケーキが得られる。遠心分離機を用いて、含液率の低いウエットケーキとしてもよい。ウエットケーキは、更に、水等による洗浄を行い、または行わずに、ろ別によってPAS粒子を分離回収する。
 PAS粒子を分離回収する前に、PAS粒子の結晶化度を高めるために、PAS粒子と、塩酸等の無機酸や酢酸等の有機酸とを接触させる酸処理を行ってもよい。
 PAS粒子は、必要に応じて、更に水による洗浄を行い、または行わずに、その後、乾燥を行って、生成したPAS粒子を回収する。
VIII.ポリアリーレンスルフィド
 本発明のPASの製造方法によれば、温度310℃、剪断速度1,216sec-1で測定した溶融粘度が、通常1~100Pa・s、好ましくは2~80Pa・s、特に好ましくは3~70Pa・sのPASを得ることができる。本発明のPASの製造方法によれば、質量平均分子量が、通常10,000~300,000、好ましくは13,000~200,000、特に好ましくは14,000~100,000のPASを得ることができる。
 本発明のPASの製造方法によって得られるPASが、DHAとして、pDCBを使用するものである場合、ポリマー中に残存するpDCBの含有量を、通常500ppm(mg/kg-PAS)以下、好ましくは400ppm以下、より好ましくは350ppm以下とすることができる。
 本発明のPASの製造方法によれば、平均粒径(レーザー回折/散乱法による)が50~1,000μm、好ましくは70~800μm、より好ましくは200~700μmの粒状PASを得ることができる。また、本発明のPASの製造方法によれば、窒素吸着によるBET法による比表面積が、0.1~500m/g、好ましくは1~200m/g、より好ましくは3~80m/gの粒状PASを得ることができるので、顆粒状で取扱い性に優れた粒状PASが得られる。
 本発明について、実施例、比較例、及び対照例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明は、以下の具体例のみに限定されるものではない。
[実施例]
(脱水工程)
 20リットルのオートクレーブに、NMP6,004gと水硫化ナトリウム水溶液(NaSH:濃度62質量%、NaSを28g含む)2,000g、水酸化ナトリウム(NaOH:濃度74質量%)1,191gを仕込んだ。水酸化ナトリウム/硫黄源(NaOH/S)のモル比は0.997であり、NaOH/NaSHのモル比は1.012であった。これらの各濃度の水硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムは、残余の成分として、水和水などの水分を含有するものである。
 オートクレーブ内を窒素ガスで置換後、撹拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、約4時間かけて徐々に200℃まで昇温し、水(HO)1,006g、NMP1,287g、及び硫化水素(HS)12gを留出させた。
(重合工程)
 脱水工程後、オートクレーブの内容物を150℃まで冷却し、pDCB3,380g、NMP3,456g、水酸化ナトリウム(高純度品)19.29g、及びイオン交換水149gを加えた。缶内のNMP/仕込み硫黄源(以下、「仕込みS」と略記する。)の比率(g/モル)は375、pDCB/仕込みS(モル/モル)は1.060、HO/仕込みS(モル/モル)は1.50、NaOH/仕込みS(モル/モル)は1.060であった。
 オートクレーブの内容物を撹拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、220℃の温度で3時間反応させて、前段重合を行った。
 前段重合終了後、撹拌機の回転数を400rpmに上げ、オートクレーブの内容物を撹拌しながらイオン交換水444gを圧入した。HO/仕込みS(モル/モル)は2.63であった。イオン交換水の圧入後、255℃まで昇温し、4時間反応させて後段重合を行った。pDCBの転化率は、95%であった。
(分離工程)
 後段重合終了後、室温付近まで冷却してから、内容物を目開き径150μmのスクリーンで篩分けしPPSの粒状ポリマーを分離・回収しウェットケーキ(含水率60%)を得た。
(洗浄工程)
 分離したPPSのウェットケーキに、洗浄液としてイオン交換水とアセトンの混合溶液を加えて撹拌槽内で30分間攪拌洗浄した。洗浄液の量は、理論ポリマー回収量(前記ウエットケーキ中のPPSポリマー量)に対して5倍量であり、また、洗浄液の含水率は、5質量%である。この洗浄を3回行った。各洗浄においては、洗浄液の液温を室温として行った。洗浄後、ポリマーを分離・回収しウェットケーキを得た。
(向流洗浄工程)
 先の脱水工程から洗浄工程までを繰り返し行って、PPSポリマーのウエットケーキを多量に製造し、以下の向流洗浄工程に供した。
 図2に示す洗浄塔を用いて、向流洗浄処理を行った。洗浄塔は、内径25cm、高さ150cmの円筒状であり、高さ81cmの本体部には、5つの攪拌室(径25cm、高さ16cm)が、仕切板で区画され縦方向に連接されている。各攪拌室には、4枚の平パドル翼を、互いに90°の間隔でそれぞれ仕切板の上方22~42mmに亘って攪拌軸に固着してある。上記洗浄塔において、攪拌軸を攪拌回転数200rpmで回転させた。
 洗浄塔に、水性スラリー供給口91から、イオン交換水とアセトンの混合溶液(質量比率3:1)を用いた液温40℃のPPSスラリー(PPS濃度30.0質量%)を5.0kg/hrの割合で、洗浄液供給口92から水温25℃のイオン交換水を7.0kg/hrの割合で、それぞれ供給した。洗浄排液排出口94から洗浄排液を7.0kg/hrで排出し、底部のポリマー粒子排出口93から洗浄済スラリーを5.0kg/hrで排出した。ポリマー粒子排出口93から排出された洗浄済スラリーを、目開き径75μmのスクリーンで篩分けして回収したPPSの濃度は、29.5質量%であり、アセトン濃度は、0.3質量%であった。
(再分離工程)
 洗浄排液排出口94から、7.0kg/hrの割合で排出された洗浄排液を、撹拌槽とMSフィルター(東京特殊電線株式会社製)とを備えるPAS粒子再分離手段に供給した。すなわち、前記洗浄排液を、撹拌槽に供給して撹拌処理し、組成を均一化した後に、目開き径75μm(200メッシュ)のマイクロスリットフィルターの洗浄排液供給口に同じく7.0kg/hrで供給した。PPS粒子はフィルターに捕捉され、ろ液排出口からは約7.0kg/hrでろ液が排出され、該ろ液中に、PPS粒子は観察されなかった。洗浄排液を1日間(24hr)流し続けた後、バルブを切り替えて、逆洗手段から、イオン交換水と圧縮空気とから成る逆洗流体を供給し、マイクロスリットフィルターに捕捉されていたPPS粒子を、フィルターから再分離して離脱させ、逆洗流体とともに、逆洗流体流出口から排出させ、再分離容器(図示しない。)に回収した。再度、バルブを切り替えて、PPS粒子の捕捉と、逆洗流体を用いたPPS粒子の再分離による回収の操作を、24時間毎に10回繰り返し、10日間(240hr)で貯まったPPS粒子を目開き径75μm(200メッシュ)のスクリーンでろ別し、その後イオン交換水で洗浄した後、乾燥して、PPS粒子を得た。1回目のPPS粒子の再分離工程により得られたPPS粒子は、5.94kgであった。
 同様に、PPS粒子の捕捉と、逆洗流体を用いたPPS粒子の再分離による回収の操作を、24時間毎に10回繰り返す、合計10日間(240hr)のPPS粒子の再分離工程を、更に4回繰り返したところ、最後までろ液中に、PPS粒子は観察されなかった。1回目~5回目までの各々について、PPS粒子の再分離工程による回収結果、すなわち、10日間(240hr)経過後の再回収PPS(単位:kg)の量を、表1に示す。
 さらに、この10日間(240hr)単位のPPS粒子の再分離工程による回収操作を、10回繰り返した(合計100日間)ところ、PPS粒子の再分離により回収されたPPS粒子から、金属等の異物の痕跡が観察されなかった。
[比較例1]
 目開き径75μm(200メッシュ)のMSフィルター(東京特殊電線株式会社製)に代えて、目開き径75μm(200メッシュ)のステンレス製の溶接金網を装着したフィルター装置を用いたこと以外は、実施例と同様にして再分離工程を実施した。ろ液排出口からは約7.0kg/hrでろ液が排出され、該ろ液中に、PPS粒子は観察されなかった。洗浄排液を24時間流し続けた後、溶接金網をフィルター装置から取り外した。該取り外した溶接金網に、高圧洗浄水を吹き付けて、PPS粒子を離脱させ、洗浄水とともに、逆洗流体流出口から排出させ、再分離容器に回収した。PPS粒子を離脱させた後の溶接金網をフィルター装置に装着し、洗浄排液の供給とPPS粒子の再分離容器への回収の操作を、24時間毎に10回繰り返し、10日間(240hr)で貯まったPPS粒子を、目開き径38μm(400メッシュ)のスクリーンでろ別し、その後イオン交換水で洗浄した後、乾燥して、1回目の回収によるPPS粒子を得た。得られたPPS粒子は、5.88kgであった。
 実施例と同様に、合計10日間(240hr)のPPS粒子の再分離工程を、更に4回繰り返し、5回目の再分離工程までのPPS粒子の回収結果を、表1に示す。なお、4回目の再分離工程からは、溶接金網に捕捉されず、フィルター装置内に浮遊しているPPS粒子が観察された。
 さらに、この10日間(240hr)単位のPPS粒子の再分離工程による回収操作を、10回繰り返した(合計100日間)ところ、PPS粒子の再分離により回収されたPPS粒子から、金属等の異物の痕跡が観察された。
[比較例2]
 目開き径75μm(200メッシュ)のステンレス製の溶接金網に代えて、目開き径38μm(400メッシュ)のステンレス製の溶接金網を装着したフィルター装置を用いたこと以外は、比較例1と同様にして1回目~5回目の再分離工程を実施した。5回目の再分離工程までのPPS粒子の回収結果を、表1に示す。なお、3回目の再分離工程からは、溶接金網に捕捉されず、フィルタ装置内に浮遊しているPPS粒子が観察され、5回目の再分離工程には、溶接金網に目詰まりが発生していることが確認された。
 さらに、この10日間(240hr)単位のPPS粒子の再分離工程による回収操作を、10回繰り返した(合計100日間)ところ、PPS粒子の再分離により回収されたPPS粒子から、金属等の異物の痕跡が観察された。
[対照例]
 洗浄塔の洗浄排液排出口94から排出される洗浄排液を、PPS粒子の再分離工程を行うことなく、目開き径75μm(200メッシュ)のスクリーンで篩分けして回収したPPSは、10日間(240hr)分で、5.87kgであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1から分かるように、マイクロスリットフィルターが装填されたPAS粒子再分離手段を備える向流洗浄装置を使用する向流洗浄工程を含む本発明の実施例においては、PPS粒子を再分離する効果が優れていることが分かる。しかも、本発明の実施例においては、マイクロスリットフィルターを逆洗して再生することができるので、長期間使用しても、フィルターの目詰まりが生ずることもなく、優れた再分離効果が維持される。
 これに対して、PAS粒子の再分離工程において、ろ別装置として、マイクロスリットフィルターを使用しない比較例1及び2においては、捕捉した洗浄スラリー中のPPS粒子を、溶接金網から十分離脱させることができず、再分離効果がやや劣る結果が得られた。しかも、長期間、繰り返し使用すると、再分離効果が低下し、PPS粒子を捕捉することができなくなることが分かった。
 なお、PPS粒子の再分離工程を実施しない対照例の結果から、洗浄排液中には、目開き径75μmのスクリーンを通過する微細なPPS粒子が含まれていることが推察されるが、本発明のPPS粒子の再分離工程により、これら微細なPPS粒子も捕捉され、再回収されていることが分かる。
 本発明の実施例においては、PPS粒子の再分離工程において再分離され排出されたPPS粒子をそのまま回収したが、該再分離工程において再分離され排出されたPPS粒子を向流洗浄工程で洗浄塔の下方のポリマー粒子排出口93から排出されたPAS粒子に供給して、回収を行った場合にも、PPSの品質を損ねることなく同程度の製品収率の向上があった。
 本発明は、特有の向流洗浄工程を含むPASの製造方法、または、特有の向流洗浄装置を備えるPASの製造装置であることにより、洗浄液の排出に随伴して排出されてしまうPAS粒子をほぼすべて再分離し、製品として回収することができ、長期間にわたって効率的に高品質のPASを高収率で製造することができる。
 その結果、本発明のPASの製造方法または製造装置により得られたPASは、押出成形、射出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法の適用に適したものであり、電子部品の封止剤や被覆剤をはじめ、電気・電子機器、自動車機器等の広範な分野において好適に利用することができ、産業上の利用可能性が高い。
1 塔頂部
2 本体部
3 塔底部
5 仕切板
6 攪拌翼
7 攪拌軸
21~25 攪拌室
91 水性スラリー供給口
92 洗浄液供給口
93 ポリマー粒子排出口
94 洗浄排液排出口

Claims (16)

  1.  有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させてポリアリーレンスルフィドを生成する重合工程;
    生成したポリアリーレンスルフィドを含有する反応液からポリアリーレンスルフィド粒子を分離する分離工程;
    分離したポリアリーレンスルフィド粒子を、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液を用いて洗浄する工程であって、洗浄槽内において、ポリアリーレンスルフィド粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、ポリアリーレンスルフィド粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄工程;
    洗浄槽から排出される洗浄排液を、マイクロスリットフィルターが装填されたポリアリーレンスルフィド粒子再分離手段に供給して、ポリアリーレンスルフィド粒子を捕捉し、次いで、マイクロスリットフィルターから、ポリアリーレンスルフィド粒子を再分離し排出する、ポリアリーレンスルフィド粒子の再分離工程;及び、
    排出されたポリアリーレンスルフィド粒子を回収する回収工程;
    を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2.  前記向流洗浄工程及びポリアリーレンスルフィド粒子の再分離工程を複数含む請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3.  前記洗浄槽が、洗浄塔である請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4.  前記ポリアリーレンスルフィド粒子を含有する水性スラリーが、酸性化合物を含む請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5.  前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、相分離剤の存在下に、170~290℃の温度で重合反応させるものである請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6.  前記重合工程が、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、170~270℃の温度で重合反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が30%以上となった時点で、重合反応系内に相分離剤を存在させ、245~290℃の温度で重合反応を継続させるものである請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7.  前記重合工程が、
    有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、
    相分離剤の存在下、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;
    を含む少なくとも2段階の重合工程である請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8.  前記重合工程が、
    有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを、仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モルの水が存在する状態で、170~270℃の温度で重合反応させて、該ジハロ芳香族化合物の転化率が80~99%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、
    仕込み硫黄源1モル当たり2.0モル超過10モル以下の水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、245~290℃の温度で、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で重合反応を継続させる後段重合工程;
    を含む少なくとも2段階の重合工程である請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  9.  前記後段重合工程において、
    仕込み硫黄源1モル当たり2.0モル超過10モル以下の水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、
    有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及びパラフィン系炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種の相分離剤を、仕込み硫黄源1モルに対して0.01~3モルの範囲内で存在させる請求項7記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  10.  前記重合工程に先立って、
    有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物を含有する硫黄源、及び該アルカリ金属水硫化物1モル当たり0.95~1.05モルのアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して反応させ、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程;並びに、
    脱水工程の後、系内に残存する混合物に、必要に応じてアルカリ金属水酸化物及び水を添加して、脱水時に生成した硫化水素に伴い生成するアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水前に添加したアルカリ金属水酸化物のモル数と脱水後に添加するアルカリ金属水酸化物のモル数との総モル数が、仕込み硫黄源1モル当たり1.00~1.09モルとなり、かつ、水のモル数が仕込み硫黄源1モル当たり0.02~2.0モルとなるように調整する仕込み工程;
    を配置する請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  11.  前記分離工程に先立って、相分離剤を添加する請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  12.  前記相分離剤が、水、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及びパラフィン系炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項5乃至11のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  13.  前記相分離剤が、仕込み硫黄源1モル当たり0.5~10モルの水、及び、有機カルボン酸金属塩0.001~0.7モルである請求項12記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  14.  有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させてポリアリーレンスルフィドを生成する重合装置;
    生成したポリアリーレンスルフィドを含有する反応液からポリアリーレンスルフィド粒子を分離する分離装置;
    分離したポリアリーレンスルフィド粒子を、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒との混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種の洗浄液を用いて洗浄する装置であって、洗浄槽内において、ポリアリーレンスルフィド粒子を含有する水性スラリーを下方に進行させるとともに、洗浄液を上方に進行させて該水性スラリーと連続的に向流接触させて向流洗浄を行い、ポリアリーレンスルフィド粒子を下方から排出し、洗浄排液を上方から排出する、向流洗浄装置;
    洗浄槽から排出される洗浄排液が供給されて、ポリアリーレンスルフィド粒子を捕捉する、マイクロスリットフィルターが装填されたポリアリーレンスルフィド粒子捕捉手段、及び、マイクロスリットフィルターから、ポリアリーレンスルフィド粒子を再分離し排出する逆洗手段を有する、ポリアリーレンスルフィド粒子の再分離装置;並びに、
    排出されたポリアリーレンスルフィド粒子を回収する回収装置;
    を備えるポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  15.  前記向流洗浄装置及び前記ポリアリーレンスルフィド粒子の再分離装置を複数備える請求項14記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  16.  前記洗浄槽が、洗浄塔である請求項14記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
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