WO2010125856A1 - 複筒型液圧緩衝器 - Google Patents
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Abstract
Description
シリンダの内側にはピストンが収装され、ピストンに結合するピストンロッドがシリンダから軸方向に摺動自由に突出する。シリンダの内側はピストンによりふたつの作動室が画成される。各作動室には非圧縮性流体からなる作動流体が充填される。ピストンがシリンダ内を摺動すると一方の作動室が拡大し、もう一方の作動室が縮小する。このとき、収縮する作動室から拡大する作動室へと通路を介して作動油が流通し、通路に設けた減衰弁の流通抵抗により減衰力を発生させる。
緩衝器のストローク距離を確保するためには、緩衝器はシリンダから軸方向両側にピストンロッドを突出させた両ロッド式よりも、シリンダから一方向にのみピストンロッドを突出させた片ロッド式であることが好ましく、この複筒型液圧緩衝器も片ロッド式である。
片ロッド式の緩衝器においては、2つの作動室の合計容積は、ピストンロッドのシリンダへの侵入体積に応じて変動する。片ロッド式の緩衝器では、そのために、シリンダ内で余剰となった作動流体を貯留し、シリンダ内の作動流体が不足するとシリンダ内に作動流体を供給するリザーバを備える必要がある。
そのために、この複筒式液圧緩衝器はシリンダを同軸的に覆うアウタチューブを備え、アウタチューブとシリンダとの間の環状隙間をリザーバとして用いている。リザーバ内の作動流体の体積変動を補償するために、リザーバには作動流体とともにガスが封入される。
すなわち、圧縮性流体であるガスがシリンダ内の流体室に侵入すると、緩衝器は適正な減衰力を発生できなくなるため、リザーバ内の液面はリザーバとシリンダ内の流体室とを接続する通路より常に高い位置になければならない。
また、リザーバ内のガスはリザーバ内の液量に応じて収縮する。シリンダ内のふたつの油室の合計容積は、緩衝器の最収縮時に最小となり、この状態でリザーバ内の液量は最大となる。したがって、緩衝器の最収縮時に、リザーバ内のガスは最も圧縮される。圧縮されたガスの圧力は作動流体を介してピストンロッドの外周をシールする、シリンダヘッドに装着されたシール部材に作用する。
高いガス圧に対してピストンロッドの良好なシール性を維持するにはシール部材に大きな締め付け力を付与する必要がある。しかし、シール部材に大きな締め付け力を付与することは、ピストンロッドの摺動抵抗を増大させるとともに、シール部材の耐久性にも好ましくない影響を与える。したがって、緩衝器の最収縮時のガス圧力が過大とならないように、リザーバ内のガス封入容積を大きく設定することが望ましい。
リザーバのガス封入容積を大きくすると、リザーバ全体の所要容積も増大する。また前述のように、リザーバ内の液面をリザーバとシリンダ内の流体室とを接続する通路より常に高い位置に設定しなければならない。これらの要件を満たすには、アウタチューブの外径を大きくせざるを得ない。結果として、リザーバ内に大量の作動流体とガスを貯留することになる。このような理由から、横置き用の液圧緩衝器は外径寸法が大きく、かつ重量も重くなりがちである。
この発明の目的は、したがって、横置きに適した小径の片ロッド式複筒型液圧緩衝器を提供することである。
以上の目的を達成するために、この発明は、複筒型液圧緩衝器において、中心軸を水平方向に向けて配置されるシリンダと、シリンダに対して中心軸方向に伸縮するピストンロッドと、ピストンロッドの伸縮に応じてシリンダ内で拡縮する、非圧縮性の作動流体を封入した作動室と、シリンダの外周を覆うアウタチューブと、作動室に接続された、作動流体を貯留するリザーバとを備えている。リザーバはアウタチューブとシリンダの間のスペースと、アウタチューブの上端から上向きに突設され、内側にガスを封入したガス室ハウジングとを含む。
この発明の詳細並びに他の特徴や利点は、明細書の以下の記載の中で説明されるとともに、添付された図面に示される。
ピストンロッド3の突出端と、シリンダ1の基端にはそれぞれアイ部材が固定される。液圧緩衝器Dはこれらのアイ部材を介してシリンダ1の中心軸が水平をなすように、例えば車両の車体とキャビンのような、相対振動を緩衝すべき2つの部材に連結される。
シリンダ1内にはピストン2により、ピストンロッド3の周囲に位置する作動室R1と、ピストンロッド3と反対側に位置する作動室R2とが画成される。作動室R1とR2には作動油のような非圧縮性流体からなる作動流体が充填される。作動室R1とR2はピストン2を貫通して形成された通路2aを介して連通する。通路2aには作動流体の流通に抵抗を与えて減衰力を発生させる伸縮両方向の減衰力発生要素であるオリフィス2bが設けられる。
ピストンロッド3は、シリンダ1の図中左端の端部に固定された環状のロッドガイド7を貫通する。ロッドガイド7の内周にはピストンロッド3の外周を摺動自由に支持するベアリンク11が設けられる。
アウタチューブ4の図中左端の端部の内周にはロッドガイド7を覆うように、筒状のシールケース12が取り付けられる。ピストンロッド3はロッドガイド7から突出した後、さらにシールケース12を貫通して軸方向に突出する。シールケース12の内側にはピストンロッド3の外周に摺接する環状のシール部材13が保持される。
シリンダ1の外周とその外側に位置するアウタチューブ4とがなす環状断面のスペースは作動流体を貯留するリザーバ5として用いられる。
ロッドガイド7の周縁部を軸方向に貫通して連通孔7aが形成される。連通孔7aはシールケース12の内側とリザーバ5とを連通する。連通孔7aはピストンロッド3とベアリング11との隙間を通過して、シリンダ1からシールケース12へ流出した作動流体をリザーバ5に還流させるために設けられる。すなわち、シールケース12内の圧力がリザーバ5の圧力を上まわると、これにより、シールケース12内の作動流体が連通孔7aを介してリザーバ5に還流する。連通孔7aはシールケース12内の作動流体圧力が過度に上昇するのを防止する機能を持つ。
シリンダ1の図中右端に位置する基端は隔壁9により閉塞される。アウタチューブ4の図中右端の端部の内周には、隔壁9を覆うキャップ8が固定される。前述のアイ部材はキャップ8に固定される。
キャップ8と隔壁9の間にはスペース15が形成される。スペース15は隔壁9の下端に形成した切欠9eを介して常時リザーバ5に連通する。隔壁9を貫通して作動室R2とスペース15を連通する2本の通路9aと9bが形成される。通路9aにはスペース15から作動室R2への作動流体の流入を抵抗なく許容し、逆向きの作動流体の流れを遮断するチェック弁9cが設けられる。通路9bには作動室R2からスペース15へ所定の流通抵抗のもとで作動流体を流出させる一方、逆向きの作動流体の流れを遮断する、縮側減衰力発生要素としての縮側減衰弁9dが設けられる。
ガス室ハウジング10は筒部10bと筒部10bの一端を閉塞する底10aとからなる。ガス室ハウジング10は、横置きにした液圧緩衝器Dのアウタチューブ4の上に筒部10bが位置し、ガス室ハウジング10の中心軸がアウタチューブ4の中心軸と略直交するよう、アウタチューブ4の上端から上向きに突設される。アウタチューブ4の外周の該当位置にはあらかじめ開口部4aが形成される。開口部4aのまわりのアウタチューブ4の壁面4bはあらかじめ略円筒形状をなすように上向きに折り曲げられる。ガス室ハウジング10は底10aを上向きにした状態で筒部10bの先端を壁面4bの内側に侵入させ、溶接によりアウタチューブ4に固定される。
ガス室ハウジング10の内側にはガスを封入したガス室6が設けられる。ガス室6は開口部4aを介してアウタチューブ4の内側に連通し、リザーバ5の一部をなす。液圧緩衝器Dに封入する作動流体の量は、作動流体のガス室6に臨む液面Sが、リザーバ5内の作動流体の増減に対して、すなわち液圧緩衝器Dの伸縮に対して、常に通路9aと9bの上方に位置するように設定する。これはガス室6のガスがシリンダ1内に侵入するのを防止するために必要である。
より好ましくは、液面Sが常にガス室6内で上昇あるいは下降するように、液圧緩衝器Dに封入する作動流体の量を設定する。これにより、液面Sが波打ったり傾斜した場合でも、ガス室6のガスがシリンダ1内に侵入するのを防止することができる。
液圧緩衝器Dが伸長すると、シリンダ1内でピストン2が図の左方向へ移動し、作動室R1が縮小し、作動室R2が拡大する。これに伴い、作動室R1から作動室R2へと通路2aを介して作動流体が移動し、オリフィス2bの流通抵抗に伴う圧力損失により減衰力を発生させる。また、ピストンロッド3がシリンダ1の外側へと退出することで、作動室R1と作動室R2の合計容積が増大する。容積増大によりシリンダ1内で不足する作動流体は、隔壁9の通路9aとチェック弁9cを介して、リザーバ5からシリンダ1内に抵抗なく流入し、シリンダ1内の容積変動を補償する。これに伴い、リザーバ5の作動流体の液面Sが下降し、ガス室6が拡大する。このようにして、液圧緩衝器Dが伸長する場合にはオリフィス2bが伸長速度に応じた伸側減衰力を発生させる。
液圧緩衝器Dが収縮すると、シリンダ1内でピストン2が図の右方向へ移動し、作動室R1が拡大し、作動室R2が縮小する。これに伴い、作動室R2から作動室R1へと通路2aを介して作動流体が移動し、オリフィス2bの流通抵抗に伴う圧力損失により減衰力を発生させる。また、ピストンロッド3がシリンダ1の内側へ侵入することで、作動室R1と作動室R2の合計容積が減少する。容積減少によるシリンダ1内の余剰作動流体は、隔壁9の通路9bと縮側減衰弁9d、及びスペース15を介してリザーバ5へと所定の流通抵抗のもとで流出し、シリンダ1内の容積変動を補償する。これに伴い、リザーバ5の作動流体の液面Sが上昇し、ガス室6が収縮する。液圧緩衝器Dが収縮する場合は、このようにオリフィス2bと縮側減衰弁9dが収縮速度に応じた縮側減衰力を発生させる。
この液圧緩衝器Dにおいては、収縮時に縮側減衰弁9dが減衰力を発生させるので、縮側減衰力は必ずしもオリフィス2bで発生させなくても良い。例えば、ピストン2に一方通行の通路を2本設け、一方の通路には伸側減衰力発生要素としてオリフィスまたは他の減衰力発生要素を設け、もう一方の通路に作動室R2から作動室R1への作動流体の流通を抵抗なく許容し、逆向きの作動流体の流通を遮断するチェック弁を設けても良い。
この液圧緩衝器Dにおいては、ガス室ハウジング10をリザーバ5の一部として利用することができるので、リザーバ5が必要とする作動流体の貯留容量をアウタチューブ4の径を大きくせずに確保することができる。
ガス室ハウジング10の形状は任意であるが、有底の筒状ないしカップ状とすることでアウタチューブ4への溶接が容易になる。
この液圧緩衝器Dにおいては、ガス室ハウジング10をアウタチューブ4の上端から上向きに突設したことで、アウタチューブ4の径を大きくせずに、ガス室6の容量を十分に確保することができる。そのため、液圧緩衝器Dが最収縮状態となった場合でも、ガス室6は過度の圧力上昇を起こさず、ガス室6の圧力に起因してピストンロッド3のシール部材13に作用する圧力も過度に上昇しない。したがって、圧縮されたガスの圧力がもたらす、ピストンロッド3の摺動抵抗の過度の増大を防止でき、液圧緩衝器Dは全ストローク位置に渡ってスムーズに作動する。また、シール部材13の耐久性の低下も防止できる。
以上のように、この発明によれば、全長が短いという片ロッド型液圧緩衝器の利点を行かしつつ、緩衝器の外径寸法や重量の増加を抑えることができる。
また、作動流体の液面Sが常にガス室ハウジング10内で変動するように、液圧緩衝器Dの作動流体の封入量を設定すれば、シリンダ1へのガスの混入を確実に防止でき、液圧緩衝器Dの作動流体の封入量も増やすことができる。
この液圧緩衝器Dは、横置き状態でアウタチューブ4の上端となる位置にガス室ハウジング10を突設しているので、車両に取り付ける前の状態でも、液圧緩衝器Dの各部位と配置方向とを容易に関連づけることができる。結果として、液圧緩衝器Dの取り付け作業が容易になり、取り付け時の誤操作の防止にも好ましい効果が得られる。
以上の説明に関して2009年4月28日を出願日とする日本国における特願2009−109348号、の内容をここに引用により合体する。
以上、この発明をいくつかの特定の実施例を通じて説明してきたが、この発明は上記の各実施例に限定されるものではない。当業者にとっては、クレームの技術範囲でこれらの実施例にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
例えば、以上説明した液圧緩衝器Dにおいては、減衰力発生要素としてオリフィス2bと縮側減衰弁9dを設けているが、この発明は液圧緩衝器Dが備える減衰力発生要素の形式や配置には依存しない。オリフィス、チョーク、リーフバルブなど作動流体の流通に対して減衰力を発生可能ないかなる抵抗要素をも用いることができる。
通路2aは1個に限らず、複数設けても良い。さらに、作動室R1から作動室R2への液体の流れのみを許容する一方通行の通路と、作動室R2から作動室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路とを並列に設けても良い。
ガス室ハウジング10については、上記に説明した以外の構成も可能である。例えばアウタチューブ4の上端を上方へ膨らませることでガス室ハウジングを形成し、その内側にガス室6を設けることが可能である。ただし、有底の筒状ないしカップ状のガス室ハウジング10をアウタチューブ4に溶接する方が加工が容易であり、かつアウタチューブ4の径も小さく抑えることができる。
この液圧緩衝器Dにおいては、伸縮に応じて通路2aを作動流体が作動室R1とR2の間を双方向に流通する。しかしながら、この発明は、伸縮いずれの動作に関しても、作動流体が作動室R2から作動室R1を介してリザーバタンクRへと流れ、必要に応じてリザーバタンクRから作動室R2に流入する一方通行型の、いわゆるユニフロータイプの液圧緩衝器にも適用可能である。
この発明の実施例が包含する排他的性質あるいは特長は以下のようにクレームされる。
Claims (5)
- 複筒型液圧緩衝器(D)において:
中心軸を水平方向に向けて配置されるシリンダ(1)と;
シリンダ(1)に対して中心軸方向に伸縮するピストンロッド(3)と;
ピストンロッド(3)の伸縮に応じてシリンダ(1)内で拡縮する、非圧縮性の作動流体を封入した作動室(R1,R2)と;
シリンダ(1)の外周を覆うアウタチューブ(4)と;
作動室(R1,R2)に接続された、作動流体を貯留するリザーバ(5)、リザーバ(5)はアウタチューブ(4)とシリンダ(1)の間のスペースと、アウタチューブ(4)の上端から上向きに突設され、内側にガスを封入したガス室ハウジング(10)とを含む、と;
を備える。 - 請求項1の複筒型液圧緩衝器(D)において、リザーバ(5)と作動室(R1,R2)とを連通する通路(9a,9b)をさらに備え、リザーバ(5)内のガスと作動流体との境界をなす液面(S)は複筒型液圧緩衝器(D)の伸縮状態によらず常に通路(9a,9b)の上方に位置する。
- 請求項2の複筒型液圧緩衝器(D)において、液面(S)は常にガス室ハウジング(10)の内側に存在する。
- 請求項1から3のいずれかの複筒型液圧緩衝器(D)において、ピストンロッド(3)に結合し、シリンダ(1)の内側を中心軸方向に摺動するピストン(2)をさらに備え、作動室(R1,R2)はピストン(2)によってピストンロッド(3)の周りに画成された第1の作動室(R1)と、ピストン(2)を挟んでピストンロッド(3)の反対側に画成された第2の作動室(R2)とを備え、ピストン(2)は第1の作動室(R1)と第2の作動室(R2)の間で双方向の作動流体の流れを抵抗を与えつつ許容する減衰力発生要素(2b)を備え、複筒型液圧緩衝器(D)は、第2の作動室(R2)からリザーバ(5)へと作動流体の流出を抵抗を与えつつ許容する減衰力発生要素(9d)と、逆向きの作動流体の流れを抵抗なく許容するチェック弁(9c)とをさらに備える。
- 請求項1から4のいずれかの複筒型液圧緩衝器(D)において、ガス室ハウジング(10)は有底の筒状に形成され、アウタチューブ(4)の上端に上向きに形成された開口部(4a)の周囲に溶接により固定される。
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NENP | Non-entry into the national phase |
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