以下、本発明による加熱調理器の一実施形態であるスチームコンベクションオーブンを添付図面を参照して説明する。このスチームコンベクションオーブン10は、食材をその内部に収容して調理する調理庫11と、同調理庫11の内部を加熱するヒータ20と、同調理庫内の空気を対流させる電動ファン30と、同調理庫内の温度を検出する庫内温度センサ13と、同調理庫内に収容した食材に適した調理温度を設定する調理温度設定手段と、食材が前記調理庫11内に投入される前に庫内温度が前記設定された調理温度になるように庫内温度センサ13の検出値に応じてヒータ20への給電を制御して調理庫11の内部を予備加熱する予熱処理を実行し、この予熱処理の実行後に食材が調理庫11内に投入されて庫内温度が下降したとき同庫内温度が前記設定された調理温度に上昇して維持されるように庫内温度センサ13の検出値に応じてヒータ20への給電を制御する主加熱処理を実行するコントローラ70とを備えている。このスチームコンベクションオーブン10におけるコントローラ70は、食材が調理庫11内に投入されて庫内温度が下降したとき、予め定めた初期加熱時間に基づいて設定した初期加熱開始温度から同初期加熱時間が経過したとき前記設定された調理温度に達する温度上昇率を規定する温度上昇線に沿って庫内温度が上昇するように庫内温度センサ13の検出値に応じてヒータ20への給電を制御する初期加熱処理を前記主加熱処理に移行する前に実行する制御手段を備えている。
この実施形態における加熱調理器10は、オーブン調理モード、スチーム調理モード及び複合調理モードを有しており、オーブン調理モードではヒータ20と電動ファン30とにより生成される熱風により調理庫11内の食材を加熱し、スチーム調理モードでは電動ファン30と蒸気発生装置40により送られる蒸気により調理庫11内の食材を加熱し、複合調理モードではヒータ20と電動ファン30と蒸気発生装置40とにより生成される熱風と蒸気とにより調理庫11内の食材を加熱する。また、この加熱調理器10は、マニュアルモードとプログラムモードとを有しており、マニュアルモードでは上記各調理モードの選択、調理温度、蒸気濃度及び主加熱時間が食材の調理の仕方に応じて自由に設定可能であり、プログラムモードでは上記各調理モード、調理温度、蒸気濃度及び主加熱時間が食材の調理の仕方に応じて予め適宜に設定される。
図1及び図2に示すように、調理庫11は、食材をその内部に収容して加熱調理するためのものであり、箱形をした前面の一部の開口を開閉する断熱扉12の開放により食材を収容する。調理庫11内には、調理庫11内の温度を検出する熱電対よりなる庫内温度センサ13が設けられている。また、図2及び図3に示すように、調理庫11には、蒸気発生装置40による蒸気を導入する蒸気導入口11aと、調理庫11内の空気を給気及び排気する給排気口11bと、調理庫11内の水を排出する排水口11cとが設けられている。調理庫11の排水口11cには、調理庫11内の水を排出するための排水管14が接続されており、この排水管14は、蒸気発生装置40の排水経路を兼ねた排水タンク15に接続されている。調理庫11内の蒸気を含んだ空気は排水管14から排水タンク15を通って外部に排出される。排水管14内には、調理庫11から水とともに排出される排気の温度を検出する排気温度センサ16が設けられている。
図2及び図3に示すように、ヒータ20は、給電により調理庫11内を加熱するシーズヒータ等の周知の電気式ヒータであり、調理庫11の左側壁に環状に配置されている。
図2及び図3に示すように、電動ファン30は、給電により調理庫11内の空気を対流させるシロッコファン等の遠心ファンであって、調理庫11の左側壁に環状に配置されたヒータ20の内側に取付けられている。電動ファン30は、ファンモータ31により駆動されると、調理庫11内の空気をヒータ20に吹き付けて熱風として調理庫11内を対流させる。
図2及び図4に示すように、蒸気発生装置40は、給電により調理庫11内に蒸気を供給するものであり、ケーシング10a内で調理庫11の左側となる位置に設けられている。蒸気発生装置40は、筒形状の蒸気発生容器41と、この蒸気発生容器41に収容された金属製棒状部材よりなる導電性の加熱体と、蒸気発生容器41の外周に巻回された誘導加熱コイル42とにより構成した誘導加熱式の蒸気発生装置である。この蒸気発生装置40は、誘導加熱コイル42に高周波電流を供給することで加熱体を発熱させ、発熱する加熱体により蒸気発生容器41内の水を蒸発させることで蒸気を発生させている。蒸気発生容器41の上端には、調理庫11内の蒸気導入口11aに接続する蒸気供給管43が取付けられており、蒸気発生容器41内で発生した蒸気は蒸気供給管43により調理庫11内に送られる。蒸気発生容器41の下端は、調理庫11内の水を排出するための排水タンク15に取付けられており、蒸気発生容器41内の水は排水タンク15を通って外部に排出される。
図2及び図4に示すように、給排気装置50は、調理庫11内に空気を供給及び排出するためのものであり、給排気筒51と、この給排気筒51内に設けたバタフライ弁よりなる給気弁52と、給気弁52を回転させる給気弁用モータ53とにより構成されている。給排気筒51は、調理庫11の左側壁で電動ファン30の背面側となる位置に形成された給排気口11bに接続されている。給気弁52は、給排気筒51の中間部に回転可能に設けられており、給気弁用モータ53の作動により開度を変化させることで給排気筒51内の空気の通過量を調整する。この給排気装置50においては、電動ファン30を作動させた状態で給気弁52を開放すると、調理庫11外の空気が電動ファン30の回転により給排気筒51を通って調理庫11内に導入され、電動ファン30を作動させてない状態で給気弁52を開放すると、調理庫11内の空気が蒸気発生装置40により供給された蒸気または食材から発生する蒸気により給排気筒51を通って調理庫11外に排出される。
図1及び図5に示すように、操作パネル60は、主として調理モード、調理温度及び調理時間(主加熱時間)の設定をするものである。操作パネル60は、「スチーム」、「ホットエアー」及び「コンビ」のボタンを備えており、これらのボタンは、マニュアルモードのときにスチーム調理モード、オーブン調理モード及び複合調理モードを選択するために操作される。操作パネル60は、「調理時間」及び「調理温度」のボタンを備えており、マニュアルモードのときの調理時間(主加熱時間)及び調理温度を設定する。さらに、操作パネル60は「切替」及び「メニュー」のボタンを備えており、プログラムモードのときにこれらのボタンを押すことで、上記の各調理モード、調理温度及び調理時間(主加熱時間)が予め決められた調理プログラムが選択される。
図6に示すように、加熱調理器10は庫内温度センサ13、排気温度センサ16、ヒータ20、ファンモータ31、蒸気発生装置40、給排気装置50及び操作パネル60に接続したマイクロコンピュータ71を有するコントローラ70を備えている。また、コントローラ70はメモリ72とタイマ73を備えており、このメモリ72はプログラムモードにおける調理プログラムと初期加熱処理における温度上昇線を記憶している。タイマ73は主として初期加熱処理における初期加熱時間と主加熱処理における主加熱時間を計測するものである。この実施例において、上記の初期加熱処理における温度上昇線は、予め定めた初期加熱時間に基づいて設定した初期加熱開始温度から同初期加熱時間が経過したとき主加熱処理における所定の調理温度に達する温度上昇率を規定するように定められている。
コントローラ70は、ヒータ20、ファンモータ31及び蒸気発生装置40に各々接続した駆動回路74~76を備えている。駆動回路74は位相制御回路であり、電圧の位相を変えることでヒータ20の入力電力を変えるものである。駆動回路75、76はインバータ回路であり、スイッチング素子の駆動時間を増減させることでファンモータ31、蒸気発生装置40の入力電力を変えるものである。コントローラ70はヒータ20、ファンモータ31及び蒸気発生装置40に入力する電力を各駆動回路74~76により可変制御して、ヒータ20の出力、ファンモータ31の回転数及び蒸気発生装置40の蒸気量を制御する。なお、駆動回路74~76は本実施形態では位相制御回路またはインバータ回路を用いたが、本発明はこれに限られるものでなく、他の回路を用いて各機器20、31、40に入力される電力を可変制御するようにしてもよい。
コントローラ70は、予熱処理として調理庫11内の温度が食材の調理に適した設定調理温度となるように庫内温度センサ13の検出温度に基づきヒータ20を作動させて加熱し、この予熱処理終了後に調理庫11内に食材を収容して調理庫11内の温度が下降すると初期加熱処理として調理庫11内の温度が再び設定調理温度となるように庫内温度センサ13の検出温度に基づきヒータ20を作動させて加熱し、この初期加熱処理の終了後に主加熱処理として調理庫11内の温度が所定の主加熱時間設定調理温度となるように庫内温度センサ13の検出温度に基づきでヒータ20を作動させて加熱するように制御する制御手段を備えている。
コントローラ70は、上記の初期加熱処理において調理庫11内の温度を所定の初期加熱開始温度から設定調理温度に所定の初期加熱時間で上昇させる温度上昇線上の温度となるようにヒータ20の作動を制御する制御手段を備えている。なお、コントローラ70はプログラムモードを選択したときに上記の初期加熱処理を実行し、マニュアルモードを選択したときに上記の初期加熱処理を実行しないようにプログラムされている。
以下に、上記のように構成した加熱調理器10のプログラムモードでのオーブン調理モード及び複合調理モードの作動について説明する。プログラムモードのオーブン調理モードでは、図7に示すように、コントローラ70は、予熱処理では調理庫11内に設けた庫内温度センサ13の検出温度に基づき調理庫11内を設定調理温度(本実施形態では250℃)となるようにヒータ20への給電を制御する。調理庫内11の温度が設定調理温度となると、コントローラ70は、設定調理温度を維持するために、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度高い上限温度(本実施形態では255℃)になるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により下げるよう制御し、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度低い下限温度(本実施形態では245℃)になるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により上げるよう制御することで、調理庫11内の温度を設定調理温度に維持するように制御する。
予熱処理後、調理庫11内に食材を収容すると調理庫11内の温度が初期加熱開始温度(本実施形態では150℃)付近まで低下する。コントローラ70は、上記の初期加熱処理を実行して、調理庫11内の温度がメモリ72に記憶された温度上昇線に沿って上昇するようにヒータ20への給電を制御する。すなわち、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度より低くなるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により上げるよう制御し、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度より高くなるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により下げるよう制御することで、調理庫11内の温度が温度上昇線上の温度となるように制御する。
図8に示すように、この初期加熱処理において、調理庫11内に収容した食材が少量であったり、収容した食材の温度が高いときには、調理庫11内の温度が初期加熱開始温度まで下がらないときがある。このようなときには、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度となるまでヒータ20を作動させないように制御し、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度となると、上述したように、庫内温度センサ13の検出温度が温度上昇線上の温度となるようにヒータ20の作動を制御する。
初期加熱処理後、コントローラ70は、主加熱処理では調理庫11内を設定調理温度で主加熱時間加熱するようにヒータ20の作動を制御する。すなわち、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度高い上限温度になったときヒータ20の入力電力を駆動回路74により下げるよう制御し、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度低い下限温度になったときヒータ20の入力電力を駆動回路74により上げるよう制御することで、調理庫11内の調理温度を設定温度に主加熱時間の間維持する。
次に、プログラムモードの複合調理モードでは、図9に示すように、コントローラ70は、オーブン調理モードで説明したのと同様に、予熱処理では調理庫11内に設けた庫内温度センサ13の検出温度に基づき調理庫11内を設定調理温度(本実施形態では250℃)になるようにヒータ20を作動させる。この予熱処理終了後に調理庫11内に食材を収容すると調理庫11内の温度が所定の初期加熱開始温度(本実施形態では150℃)付近まで低下する。コントローラ70は、初期加熱時間の間に初期加熱処理を実行して、調理庫11内の温度がメモリ72に記憶された温度上昇線上の温度となるようにヒータ20の作動を制御する。すなわち、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度より低くなるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により上げるよう制御し、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度より高くなるとヒータ20の入力電力を駆動回路74により下げるよう制御することで、調理庫11内の温度を温度上昇線上の温度となるように制御する。また、コントローラ70は、初期加熱処理の開始時において、ヒータ20を作動させるとともに当該加熱調理器10に規定された電力容量の範囲内で蒸気発生装置40を一時的に作動させるよう制御する。なお、この複合調理モードの初期加熱処理においても、上述したオーブン調理モードにおける初期加熱処理と同様に、調理庫11内に収容した食材が少量であったり、収容した食材の温度が高いときには、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度になるまでヒータ20を作動させないように制御する。
初期加熱処理後、コントローラ70は、主加熱処理にて調理庫11内を設定調理温度及び設定蒸気濃度に主加熱時間の間維持するようにヒータ20と蒸気発生装置40の作動を制御する。すなわち、コントローラ70は、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度高い上限温度になったときヒータ20の入力電力を駆動回路74により下げるよう制御し、庫内温度センサ13による検出温度が設定調理温度より所定温度低い下限温度になったときヒータ20の入力電力を駆動回路74により上げるよう制御することで、調理庫11内を設定調理温度に所定の主加熱時間の間維持する。また、コントローラ70は、加熱調理装置10の電力容量の範囲内で排気温度センサ16による検出温度に基づき蒸気発生装置40の入力電力を駆動回路76により制御することで、調理庫11内を設定蒸気濃度となるように制御する。
上記のように構成した加熱調理器10においては、コントローラ70は、初期加熱処理において調理庫11内の温度を所定の初期加熱開始温度から設定調理温度に所定の初期加熱時間で上昇させる温度上昇線上の温度となるようにヒータ20の作動を制御する制御手段を備えたので、調理庫11内に収容した食材は、その量及び温度に関わらず初期加熱処理と主加熱処理により加熱調理時間を一定とすることができ、調理後の食材の品質を常に一定とすることができる。これにより、専任の調理人が調理庫11内の食材の出来具合を常に確認しなくても、安定した品質の調理が可能となる。
上記の加熱調理器10においては、コントローラ70はヒータ20の入力電力を可変する駆動回路74を備え、この駆動回路74によりヒータ20の入力電力を可変制御しているので、調理庫11内の温度を温度上昇線上の温度とするときの精度を高く制御することができる。また、コントローラ70は駆動回路76により蒸気発生装置40の入力電力を可変制御しているので、蒸気発生装置40は調理庫11内に蒸気量を制御して供給することができる。さらに、ヒータ20と蒸気発生装置40との各入力電力を可変にすれば、加熱調理器10に規定された電力容量の範囲内でヒータ20と蒸気発生装置40とを同時に作動させることができるようになり(図9に示す斜線部分が蒸気発生装置40の出力可能範囲である)、これらを交互に作動させるものに比べて精度良く温度及び蒸気濃度を制御することができる。
上記のように構成した加熱調理器10においては、調理庫11内に食材を収容したときに庫内温度センサ13による検出温度が初期加熱開始温度より高いと、庫内温度センサ13による検出温度が温度上昇線上の温度となるまでヒータ20を作動させないように制御しているので、調理庫11内に収容した食材の量が少ないかその温度が高くて調理庫11内の温度が初期加熱開始温度まで下がらなくても、調理庫11内の温度が温度上昇線上の温度となるまでヒータ20を作動させないように制御することで一定の初期加熱時間にて調理することができる。
上記のように構成した加熱調理器10においては、初期加熱処理を実行するか否かが選択可能であるので、初期加熱処理を実行したときには調理後の食材の品質が常に一定となり、初期加熱処理を実行しないときには調理人が出来具合を確認しながら調理をする従来の調理をすることができ、一つの加熱調理器で初期加熱処理を実行するか否かの2つの調理をすることができる。
上記のように構成した加熱調理器10においては、コントローラ70は設定調理温度と主加熱時間とを自由に設定可能なマニュアルモードと、設定調理温度と主加熱時間とを予め設定したプログラムモードとのうち、プログラムモードを実行したときに初期加熱処理を実行するようにしているので、マニュアルモードでは調理人が食材の出来具合を確認しながら調理する従来の調理をすることができ、プログラムモードでは初期加熱処理を実行して調理後の食材の品質が常に一定となる調理をすることができる。なお、コントローラ70が初期加熱処理を実行するか否かは、上記のようにマニュアルモードとプログラムモードとの選択により決定しているが、操作パネル60のボタンの操作により初期加熱処理を実行するか否かを選択可能とするようにしてもよい。
上記の実施形態において、コントローラ70は、調理庫11内の温度が温度上昇線上の温度となるようにヒータ20の各入力電力を駆動回路74により可変制御しているが、本発明はこれに限られるものでなく、コントローラ70はヒータ20をオンオフ制御するようにしてもよく、この場合にはヒータ20の入力電力を各駆動回路74により可変制御したときと比べて調理庫11内の温度を温度上昇線上の温度とするときの精度が低くなるが温度上昇線上の温度に制御することができる。