明 細 書
NTCサーミスタ磁器とそれを用いた NTCサーミスタ
技術分野
[0001] この発明は、一般的には NTCサーミスタ磁器に関し、特定的には電源スィッチの O N— OFF時に発生する突入電流を抑制するための NTCサーミスタに好適な NTCサ 一ミスタ磁器と NTCサーミスタに関するものである。
背景技術
[0002] 従来から、 NTCサーミスタには、大別して二種類の用途が存在し、温度補償用サ 一ミスタと、突入電流抑制用サーミスタが知られている。中でも、突入電流抑制用 NT Cサーミスタは、主に電源回路に組み込まれ、電源を入れた際に回路中に組み込ま れたコンデンサが電荷蓄積し始めるときに、瞬間的に流れる大きな突入電流を抑制 するために用いられるものである。
[0003] 上記のような NTCサーミスタとして、たとえば、図 3に示されるような積層型 NTCサ 一ミスタが知られている。この積層型 NTCサーミスタは、たとえば、負の抵抗温度特 性を有するセラミック素体 20の内部に、セラミック素体 20の両端面に交互に引き出さ れるように内部電極層 11が埋設されている。そして、セラミック素体 20の両端面には 、引き出された内部電極層 11と電気的に接続されるように外部電極 12が形成されて いる。
[0004] このようなセラミック素体の材料として、たとえば、マンガン(Mn)とニッケル(Ni)を 主成分とした金属酸化物を含む種々のサーミスタ用磁器組成物が知られている。
[0005] たとえば、特開昭 62— 11202号公報(特許文献 1)では、マンガン、ニッケルおよび アルミニウムの 3種の元素を含む酸化物よりなる組成物であって、これら元素の割合 がマンガン 20〜85モル0 /。、ニッケル 5〜70モル0 /。、アルミニウム 0. ;!〜 9モル0 /0の 範囲内にあり、かつその合計が 100モル%となるようにしたサーミスタ用組成物が記 載されている。
[0006] また、たとえば、特許第 3430023号公報(特許文献 2)では、金属だけの比率が、 マンガン 50〜90モル%、ニッケル 10〜50モル%でその合計が 100モル%からなる
金属酸化物に、酸化コバルト: 0. 01~20wt%,酸化銅: 5〜20wt%、酸化鉄: 0. 0 ;!〜 20wt%、酸化ジルコニウム: 0. 01— 5. 0wt%を添加したサーミスタ用組成物が 記載されている。
[0007] さらに、たとえば、特開 2005— 150289号公報(特許文献 3)では、マンガン酸化物 、ニッケル酸化物、鉄酸化物およびジルコニウム酸化物を含むサーミスタ用組成物で あって、 Mn換算で &モル% (ただし、 aは 45〜95であって 45と 95を除く)のマンガン 酸化物と、 Ni換算で(100— a)モル%のニッケル酸化物とを主成分とし、この主成分 を 100重量%としたときの各成分の比率力 S、鉄酸化物: Fe O換算で 0〜55重量%(
2 3
ただし、 0重量%と 55重量%を除く)、ジルコニウム酸化物: Zr〇2換算で 0〜; 15重量 % (ただし、 0重量%と 15重量%を除く)であるものが記載されている。
[0008] 一方、 COUDERC J. J., BRIEU M., FRITSCH S. and ROUSSET Α·、「DOMAIN MI CROSTRUCTURE IN HAUSMANNITE Mn O AND IN NICKEL MANGAMTE」、 THI
3 4
RD EURO-CERAMICS VOL 1 (1993) p.763-768 (非特許文献 1)には、サーミスタ用 磁器組成物として、 Mn Oを高温力、ら徐冷 (冷却速度: 6°C/hr)すると、板状析出
3 4
物が生成し、高温から空気中にて急冷すると、板状析出物が生成しないが、ラメラ組 織(lamella structure:すじ状コントラスト組織)が現れることが報告されている。また、こ の文献では、 NiO Mn Oを高温から徐冷(冷却速度: 6°C/hr)すると、スピネ
0. 75 2. 25 4
ノレ単相になり、板状析出物またはラメラ組織が観察されず、高温から空気中にて急冷 すると、板状析出物が生成しないが、ラメラ組織が現れることが報告されている。
特許文献 1:特開昭 62— 11202号公報
特許文献 2:特許第 3430023号公報
特許文献 3:特開 2005— 150289号公報
非特許文献 1: COUDERC J. J., BRIEU Μ·, FRITSCH S. and ROUSSET A.著、「DO MAIN MICROSTRUCTURE IN HAUSMANNITE Mn304 AND IN NICKEL MANGA NITEJ、 THIRD EURO-CERAMICS VOL 1 (1993) p.763-768
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] しかしながら、従来、上記の公報で提案された従来のサーミスタ用磁器組成物を用
V、て突入電流抑制用 NTCサーミスタを構成した場合、原料の分散が不十分であつ たりするとセラミックを形成する化合物の分散が不均一となり、また原料のセラミック粒 径にばらつきがあったりすると、得られる NTCサーミスタのサ一ミスタ素体には部分的 に低抵抗な領域が形成されてしまう。このような NTCサーミスタ素体に突入電流等の 突入電流が流れると、突入電流が NTCサーミスタ素体のうち、低抵抗な部分に集中 し、電流が集中した部分の温度が上昇し、熱溶解する恐れがある。すなわち、セラミツ ク粒径にばらつきがあったり、原料の分散が不十分である等の製造方法の条件によ つては、従来のサーミスタ磁器は耐圧性が不十分になる恐れがある。
[0010] 一方、上記の文献では、サーミスタ用組成物として、 Mn Oと NiO Mn Oと
3 4 0. 75 2. 25 4 において、高温からの冷却速度を変えることにより結晶構造が異なることが報告され ている。しかし、これらのいずれの組成物も結晶構造も耐圧性が不十分であることを 本発明者は見出した。
[0011] そこで、この発明の目的は、さらに耐圧性に優れた NTCサーミスタ磁器と NTCサ 一ミスタを提供することである。
課題を解決するための手段
[0012] 上述の課題を解決するために、本発明者は、突入電流による破壊モードが NTCサ 一ミスタ素体の熱溶解とクラックに起因するものであると推定し、種々の組成と結晶構 造について検討した結果、母相中に板状結晶からなり、かつ、相対的に電気抵抗の 高い別の相を分散させると、耐圧性が高くなることを見出した。この知見に基づいて 本発明はなされたものである。
[0013] この発明に従った NTCサーミスタ磁器は、母相である第 1の相と、この第 1の相の 中に分散された第 2の相とを含み、第 2の相は板状結晶からなり、かつ、第 1の相より も相対的に高い電気抵抗を示す。
[0014] この発明の NTCサーミスタ磁器においては、母相である第 1の相中に第 1の相より も相対的に高い電気抵抗を有する板状結晶からなる第 2の相が存在する。本発明者 らは鋭意検討を重ねた結果、 Mnを主成分とする NTCサーミスタ用磁器中に、たとえ ば、部分的に低抵抗な領域が形成されたとしても、板状結晶からなり、母相よりも相 対的に抵抗が高い高抵抗相が分散した状態で形成されることによって、突入電流が
印加された場合であっても、低抵抗な領域に電流が集中することによって生じる母相 の電位勾配を緩和することができることを見出した。これにより、低抵抗な領域におけ る電界集中を弱めることができ、サーミスタ素体の熱溶解に起因する破壊を抑制する こと力 Sできるものと考えられる。したがって、本発明の NTCサーミスタ磁器を用いた N TCサーミスタの耐圧性をより高めることができる。
[0015] この発明の NTCサーミスタ磁器は、第 1の相と第 2の相がマンガンを含み、第 2の相 におけるマンガンの含有量は第 1の相よりも高!/、ことが好まし!/、。
[0016] このようにすることにより、第 2の相の電気抵抗を第 1の相よりもより高くすることがで きる。これにより、熱溶解に起因する破壊を抑制することができ、 NTCサーミスタ磁器 の耐圧性を高めることができる。また、第 1の相と第 2の相との主成分が同じであるた め、板状結晶の析出の際に複雑な合成処理を必要とせず、また、第 1の相と第 2の相 とが接合しやす!/、ため、歪みやクラックが生じにくい。
[0017] また、この発明の一つの局面に従った NTCサーミスタ磁器は、第 1の相はスピネル 構造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとニッケルとを含み、 NTCサーミスタ 磁器全体としての(マンガンの含有量) / (ニッケルの含有量)の比率が 87/13以上 96/4以下であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子%以上 15原子%以下、ァ ルミユウムが 0原子%以上 10原子%以下、鉄が 0原子%以上 10原子%以下、コバル トが 0原子%以上 15原子%以下、チタンが 0原子%以上 5原子%以下、ジノレコユウム 力 0原子%以上 1. 5原子%以下の範囲で含まれることが好ましい。
[0018] このようにすることにより、母相中に母相よりも相対的に抵抗が高い高抵抗相が存在 する組織を実現することができるとともに、 NTCサーミスタ磁器の硬度をも高くするこ とができ、靭性を高めることができる。これにより、熱溶解に起因する破壊を抑制する こと力 Sできるだけでなく、クラックに起因する破壊を ί卬制すること力 Sできるものと考免ら れる。したがって、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性をさらに高めることができる。
[0019] また、銅を 15原子%以下の範囲で含んでもよい。
[0020] また、アルミニウムは 10原子%以下、鉄は 10原子%以下、コバルトは 15原子%以 下、および、チタンは 5原子%以下の範囲で含むと、 NTCサーミスタ磁器の硬度また は破壊靭性をさらに高めることができるので、クラックに起因する破壊をさらに抑制す
ること力 Sでき、その結果、耐圧性をさらに高めることができる。
[0021] さらに、ジルコニウムを 1. 5原子%以下の範囲で含むと、酸化ジルコニウムをセラミ ック結晶粒子の粒界に偏析させることができるので、 NTCサーミスタ磁器からなるセ ラミック結晶粒子の粒界の機械的特性を高めることができ、クラックに起因する破壊を 抑制することができ、その結果、耐圧性をさらに高めることができるものと考えられる。
[0022] この発明のもう一つの局面に従った NTCサーミスタ磁器は、第 1の相はスピネル構 造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとコバルトとを含み、 NTCサーミスタ磁 器全体としての(マンガンの含有量) / (コバルトの含有量)の比率が 60/40以上 90 /10以下であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子%以上 22原子%以下、アル ミニゥムが 0原子%以上 15原子%以下、鉄が 0原子%以上 15原子%以下、ニッケノレ 力 0原子%以上 15原子%以下、ジルコニウムが 0原子%以上 1. 5原子%以下の範 囲で含まれることが好まし!/、。
[0023] このようにすることにより、母相中に母相よりも相対的に抵抗が高い高抵抗相が存在 する組織を実現することができるとともに、 NTCサーミスタ磁器の硬度をも高くするこ とができ、靭性を高めることができる。これにより、熱溶解に起因する破壊を抑制する こと力 Sできるだけでなく、クラックに起因する破壊を ί卬制すること力 Sできるものと考免ら れる。したがって、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性をさらに高めることができる。
[0024] また、銅を 22原子%以下の範囲で含んでもよい。
[0025] また、アルミニウムは 15原子%以下、鉄は 15原子%以下、および、ニッケルは 15 原子%以下の範囲で含むと、 NTCサーミスタ磁器の硬度または破壊靭性をさらに高 めることができるので、クラックに起因する破壊をさらに抑制することができ、その結果 、耐圧性をさらに高めることができる。
[0026] さらに、ジルコニウムを 1. 5原子%以下の範囲で含むと、酸化ジルコニウムをセラミ ック結晶粒子の粒界に偏析させることができるので、 NTCサーミスタ磁器からなるセ ラミック結晶粒子の粒界の機械的特性を高めることができ、クラックに起因する破壊を 抑制することができ、その結果、耐圧性をさらに高めることができるものと考えられる。
[0027] 上述の特徴の少なくともいずれかを有する本発明の NTCサーミスタ磁器は、第 1の 相の中に分散された第 2の相とは別の第 3の相をさらに含み、第 3の相は第 1の相より
も相対的に高!/、電気抵抗を示すことが好まし!/、。
[0028] このように構成することにより、母相である第 1の相中に、板状結晶からなり、第 1の 相に対して相対的に高い電気抵抗を有する第 2の相とは別に、第 1の相に対して相 対的に高い電気抵抗を有する第 3の相が存在する。これにより、母相中に板状結晶 力、らなる第 1の高抵抗相とは別の高抵抗相が存在することになり、過剰な突入電流が 印加された場合、母相における電位勾配が小さくなると同時に、部分的な電界集中 を弱めることができ、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるものと考えられる 。したがって、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性を高めることができる。
[0029] また、耐圧の向上を求め、銅の含有量が多いと、焼成時にクラック等が生じることが ある力 銅の含有量を低減すると、室温における材料の抵抗率が大きくなる傾向があ る。本発明の上記の構成を有することにより、高い耐圧を維持しながらも、室温にお ける抵抗率を低くすることができる。
[0030] この場合、第 3の相はアルカリ土類金属を含むことが好ましい。
[0031] 上記のように構成された本発明の NTCサーミスタ磁器を構成する組成物は、第 1の 相はスピネル構造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとニッケルとを含み、 N TCサーミスタ磁器全体としての(マンガンの含有量) / (ニッケルの含有量)の比率が 87/13以上 96/4以下であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子%以上 15原 子%以下、アルミニウムが 0原子%以上 10原子%以下、鉄が 0原子%以上 10原子 %以下、コバルトが 0原子%以上 15原子%以下、チタンが 0原子%以上 5原子%以 下で含まれており、さらにカルシウムおよびストロンチウムの少なくとも一方として、力 ルシゥムが 10原子%以下(0原子%を除く)、ストロンチウムが 5原子%以下(0原子% を除く)の範囲で含有されることが好ましレ、。
[0032] また、上記のように構成された本発明の NTCサーミスタ磁器を構成する組成物は、 第 1の相はスピネル構造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとコバルトとを含 み、 NTCサーミスタ磁器全体としての(マンガンの含有量) / (コバルトの含有量)の 比率が 60/40以上 90/10以下であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子%以 上 22原子%以下、アルミニウムが 0原子%以上 15原子%以下、鉄が 0原子%以上 1 5原子%以下、ニッケルが 0原子%以上 15原子%以下で含まれており、さらにカルシ
ゥムおよびストロンチウムの少なくとも一方として、カルシウムが 5原子0 /0以下(0原子 %を除く)、ストロンチウムが 5原子%以下(0原子%を除く)の範囲で含有されることが 好ましい。
[0033] このように構成することにより、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性をさらに高めることが可 能であり、かつ、室温における電気抵抗率の低い組織を実現することができる。
[0034] この発明に従った NTCサーミスタは、上述の特徴の少なくともいずれかを有する N TCサーミスタ磁器からなるサーミスタ素体と、このサーミスタ素体の表面に形成され た電極とを備える。
[0035] このように構成することにより、耐圧性の高い突入電流抑制に好適な NTCサーミス タを実現すること力できる。
発明の効果
[0036] 以上のようにこの発明によれば、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性を高めることができ、 この NTCサーミスタ磁器を用いて耐圧性の高い突入電流抑制用 NTCサーミスタを 実現すること力 Sでさる。
図面の簡単な説明
[0037] [図 1]実施例において比抵抗の算出方法を説明するために用いた図である。
[図 2]走査イオン顕微鏡によって本発明の一つの実施例としての NTCサーミスタ磁器 におけるセラミック結晶粒子を観察した写真である。
[図 3]実施例において作製された積層型の NTCサーミスタの構造を示す断面図であ
[図 4]実施例 1Bと実施例 2Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTC サーミスタの突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 5]実施例 3Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタの 突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 6]実施例 4Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタの 突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 7]実施例 4Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタの 突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 8]実施例 4Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタの 突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 9]実施例 4Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタの 突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 10]実施例 4Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 11]実施例 5Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 12]実施例 5Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 13]実施例 5Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 14]実施例 5Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 15]実施例 6Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 16]実施例 6Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 17]実施例 6Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 18]実施例 6Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 19]実施例 7Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 20]実施例 8Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 21]実施例 9Aのいくつかの組成物を用いて作製された積層型の NTCサーミスタ の突入電流値と電気抵抗変化率 A R25との関係を示す図である。
[図 22]走査イオン顕微鏡によって本発明のもう一つの実施例としての NTCサーミスタ 磁器におけるセラミック結晶粒子を観察した写真である。
符号の説明
[0038] 1 : NTCサーミスタ、 11 :内部電極層、 12 :外部電極層、 20 :セラミック素体。
発明を実施するための最良の形態
[0039] 本発明者は、従来の NTCサーミスタ磁器の耐圧性が不十分である理由につ!/、て、 以下のとおり考察した。
[0040] (1)まず、耐圧性が不十分である理由の一つとして、過大な突入電流による破壊モ 一ドが熱溶解に起因するものと推定する。 NTCサーミスタは、その温度が上昇すると 電気抵抗値が低くなる。たとえば、 NTCサーミスタ磁器において、原料の粉砕が不 十分でセラミックを形成する化合物の分散が不均一となり、また原料のセラミック粒径 にばらつきがあったりすると、部分的に電気抵抗が低い箇所が生じてしまうことがある 。このような NTCサーミスタに突入電流が印加されると、電気抵抗の低い箇所に集中 し、温度が上昇する。そうすると、その箇所の電気抵抗値が他の箇所の電気抵抗値 より低くなるため、電流がさらに集中する。その結果、一箇所に電流が集中し、さらに 高温になるので、サーミスタ素体を構成するセラミックスが溶解し、その部分が破壊の 起点になると考えた。
[0041] 本発明の NTCサーミスタ磁器においては、母相中に、板状結晶からなり、かつ、母 相に対して相対的に高い電気抵抗の相が存在する。このような構成にすると、突入 電流が印加された場合、母相における電位勾配が小さくなることが有限要素法解析 によるシミュレーション結果から判明した。この結果に基づいて、母相中に、板状結晶 力、らなり、かつ、母相に対して相対的に高い抵抗を有する高抵抗相が存在すると、母 相における部分的な電界集中を弱めることができ、熱溶解に起因する破壊を抑制す ること力 Sでさることを見出した。
[0042] (2)続いて、耐圧性が不十分である別の理由として、突入電流による破壊モードが クラックに起因するものと推定する。 NTCサーミスタ磁器を構成するセラミックスは、そ の温度が上昇すると、熱膨張する。このため、耐圧性を高めるためには、熱膨張に耐 え得る強度がセラミックスに求められる。
[0043] 本発明の一つの実施の形態では、第 1の相がスピネル構造であり、第 1の相および 第 2の相がマンガンとニッケルとを含み、 NTCサーミスタ磁器全体としての(マンガン の含有量)/ (ニッケルの含有量)の比率が 87/13以上 96/4以下である。このよう に、(マンガンの含有量) / (ニッケルの含有量)の比率が高いほど、高い硬度または 高い破壊靱性の組成物を得ることが可能であることが発明者の実験により判明した。 この結果に基づいて、マンガンの含有量の比率を高めると、高い硬度または高い破 壊靱性を得ることができ、クラックに起因する破壊を抑制することができるものと推定さ れる。
[0044] 第 1の相はスピネル構造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとニッケルとを 含み、 NTCサーミスタ磁器全体としての(マンガンの含有量) / (ニッケルの含有量) の比率が 87/13以上 96/4以下であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子% 以上 15原子%以下、アルミニウムが 0原子%以上 10原子%以下、鉄が 0原子%以 上 10原子%以下、コバルトが 0原子%以上 15原子%以下、チタンが 0原子%以上 5 原子%以下、ジルコニウムが 0原子%以上 1. 5原子%以下の範囲であり、第 2相に おけるマンガンの含有量は、第 1の相よりも高いものである。
[0045] 本発明の好ましいもう一つの実施の形態としての NTCサーミスタ磁器の基本的な 構成は、スピネル構造を有する母相である第 1の相と、この第 1の相の中に分散され た複数の板状結晶からなる第 2の相とを含み、第 2の相は第 1の相よりも相対的に高 い電気抵抗を示すものであり、第 1相および第 2の相はマンガンとコバルトとを含み、 NTCサーミスタ磁器全体として(マンガンの含有量) / (コバルトの含有量)の比率が 60/40以上 90/10以下であり、第 2の相におけるマンガンの含有量は、第 1の相よ りも高いものである。
[0046] 第 1の相はスピネル構造であり、第 1の相および第 2の相がマンガンとコバルトとを含 み、 NTCサーミスタ磁器全体としての(マンガンの含有量) / (コバルトの含有量)の 比率が 60/40以上 90/10であり、 NTCサーミスタ磁器中に、銅が 0原子%以上 22 原子%以下、アルミニウムが 0原子%以上 15原子%以下、鉄が 0原子%以上 15原 子%以下、ニッケルが 0原子%以上 15原子%以下、ジルコニウムが 0原子%以上 1. 5原子%以下の範囲であり、第 2相におけるマンガンの含有量は、第 1の相よりも高い
ものである。
[0047] また、本発明の一つの実施の形態、または、もう一つの実施の形態としての NTCサ 一ミスタ磁器は、第 1の相の中に分散された第 2の相とは別の第 3の相をさらに含み、 第 3の相は第 1の相よりも相対的に高い電気抵抗を示し、第 3の相はアルカリ土類金 属を含むのが好ましい。この場合、 NTCサーミスタ磁器は、アルカリ土類金属として、 カルシウムおよびストロンチウムからなる群より選ばれた少なくとも 1種の元素を含み、 カルシウムは、マンガンおよびニッケルを主成分とする系では 10原子%以下(0原子 %を除く)、またマンガンおよびコバルトを主成分とする系では 5原子%以下(0原子 %を除く)、および、ストロンチウムは 5原子%以下(0原子%を除く)の範囲で含有さ れるのが好ましい。
[0048] なお、本発明の実施の形態の NTCサーミスタ磁器では、第 1の相がスピネル構造 を有するものを示した力 スピネル構造以外の構造を示す組成物においても、上述し た耐圧性の高い組織を示す可能性があり、第 1の相がスピネル構造を有するものに 限定されるものではない。また、本発明の実施の形態の NTCサーミスタ磁器では、第 2の相が板状結晶からなるものを示したが、結晶の形態が限定されるものではなぐ 第 2の相は第 1の相に対して板状、針状など、所定のアスペクト比を有する結晶が分 散した状態で存在しており、第 1の相よりも相対的に高い電気抵抗を示すものであれ ば、耐圧性を高める作用をする。さらに、本発明の NTCサーミスタ磁器は、ナトリウム 等の不可避的不純物を含んでもよ!/、。
実施例
[0049] 以下、この発明の NTCサーミスタを作製した実施例について説明する。
[0050] (実施例 1A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)とニッケル(Ni)の原子比率(atom%)が表 1に示す 所定の値になるように酸化マンガン(Mn O )と酸化ニッケル(NiO)とを秤量して調
3 4
合した。この混合物に分散剤としてのポリカルボン酸アンモニゥム塩と純水とを加えて 、混合 ·粉砕機としてのボールミルにて数時間湿式混合し粉砕した。得られた混合粉 を乾燥した後、 650〜; 1000°Cの温度で 2時間仮焼した。この仮焼粉に、再度、分散 剤と純水とを加えて、ボールミルにて数時間湿式混合し粉砕した。得られた混合粉に
水系のバインダ樹脂としてのアクリル樹脂を加えて、 500〜; !OOOmHgの低真空圧下 にて脱泡処理を施すことにより、スラリーを作製した。このスラリーをポリエチレンテレ フタレート(PET)フィルムからなるキヤリャフィルムの上でドクタブレード法により成形 した後、乾燥することによってキヤリャフィルムの上に厚みが 20〜50 H mのグリーン シートを作製した。
[0051] なお、上記の実施例では、混合 '粉砕機としてボールミルを用いた力 S、アトライター、 ジェットミル等の種々の粉砕機を用いてもよい。また、グリーンシートの成形方法として 、ドクターブレード法以外にリップコータ、ロールコータ等の引き上げ方法などを用い てもよい。
[0052] 得られたグリーンシートを所定の寸法に切断した後、所定の厚みで複数のシートを 積層した。その後、複数のシートを約 106Paで圧着することにより、積層グリーンシー ト圧着体を作製した。
[0053] この圧着体を所定の形状に切断し、 300〜600°Cの温度で 1時間加熱することによ り、脱バインダー処理した。その後、圧着体を下記の焼成工程により焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。
[0054] 焼成工程は、昇温過程と高温保持過程と降温過程とからなり、高温保持過程は 10 00〜; 1200°Cの温度で 2時間保持、昇温速度と降温速度は 200°C/時間であり、特 に 500〜800°Cの間の降温速度は上記の降温速度の約 1/2にした。このように焼 成工程における 500〜800°Cの間の降温速度を他の温度域に比べて低くすることに より、本発明の NTCサーミスタ磁器における高抵抗の第 2の相としての主にマンガン 酸化物からなる板状結晶を生成することができる。 X線回折 (XRD)分析の結果、主 にマンガン酸化物からなる板状結晶は、降温過程における 700〜800°Cの温度域に て生成し始め、 500°Cまでの降温過程において生成する結晶の数は増加することが わかった。また、本発明では、先行技術文献で示されるような徐冷 ½°C /時間、約 8 . 3日程度を要する)を必要とせず、降温時間は数時間程度であるので、効率的であ る。焼成雰囲気は、大気中とした。なお、焼成雰囲気は酸素ガス中でもよい。
[0055] 上記のようにして形成された NTCサーミスタ素体の両表面に銀 (Ag)電極を塗布し 、 700〜800°Cで焼き付けた。その後、 1mm2の大きさにダイシングカットし、評価試
料となる図 1で示される単板型 NTCサーミスタを作製した。
[0056] 以上のようにして作製された、電極が形成された単板型 NTCサーミスタの各試料の 電気特性は、直流 4端子法(Hewlett Packard 3458A multimeter)で測定した。
[0057] 表 1中、「p25」は、温度 25°Cでの抵抗率 [Qcm]を示し、図 1に示すように幅 W[c m]、長さ L[cm]、厚み T[cm]の試料の長さ方向に電流 I[A]が流れたときの温度 25
°Cでの電気抵抗値を R25[ Ω ]としたときに次の式で算出されるものとした。
[0058] p =R25XWX T/L
「B25/50」 [K]は、温度 25°Cでの電気抵抗値を R25[Q]、温度 50°Cでの電気 抵抗値を R50 [ Ω ]としたときに次の式で算出されるものとした。
[0059] B25/50= (logR25-logR50) / (1/ (273.15 + 25) -1/(273. 15 + 50))
マンガンとニッケルとを含むセラミック素体を有する NTCサーミスタについて測定し た結果を表 1に示す。
[0060] また、主要金属元素としてマンガンとニッケルを含むセラミック素体を有する NTCサ 一ミスタの各試料の耐圧性を次のようにして評価した。単板として形成されたセラミツ ク素体を基板に実装した後、セラミック素体の電極にリード線を付けて所定の電圧を 印加することにより突入電流を流した。そのときの電気抵抗値の変化を測定した。測 定機器として、 ISYS 低温耐圧試験装置 (モデル: IS— 062)を用いた。
[0061] NTCサーミスタに突入電流を流すと、ある電流値から電気抵抗値が急激に増加し 始める。耐圧性が高いということは、高い電流値まで電気抵抗値が変化しない特性を 示すことをいう。この実施例では、厚みが 0· 65±0.05mmの NTCサーミスタに 10 Aの電流を流したときの電気抵抗変化率 AR25を算出して耐圧性を評価した。
[0062] 表 1中、「耐圧性」 [%]は、突入電流を流す前の温度 25°Cでの電気抵抗値を R 25
0
[Ω]、 10Aの突入電流を流した後の温度 25°Cでの電気抵抗値を R 25[Ω]としたと きに次の式で算出されるものとした。
[0063] AR25=(R 25/R 25-1) X 100
1 0
[0064] [表 1]
No. Mn atom % Ni atom % p 25 Q cnr B25/50 K 耐圧性 % 結日日 判定
101 80 20 1920 3960 39 無 X
102 84 16 2334 3920 29 無 X
103 87 13 17600 4215 -1 有 Ο
104 90 10 26890 4243 - 0.5 有 Ο
105 93 7 80473 4375 0.4 有 Ο
106 96 4 269383 4583 -0.5 有 Ο
[0065] 表 1に示すように、主要金属元素としてマンガンとニッケルとを含むセラミック素体を 有する単板型 NTCサーミスタの各試料にお!/、て(マンガンの含有量) Ζ (ニッケルの 含有量)の原子比率が 87/13以上 96/4以下の範囲であれば、高い電気抵抗を 示す第 2の相としての主成分がマンガン酸化物からなる板状結晶力 S、低い電気抵抗 を示す母相としての第 1の相中の分散していることが認められた。表 1の「判定」の欄 においては、上記の第 2の相の生成が認められた試料に「〇」、第 2の相の生成が認 められなかった試料に「X」を示している。また、第 2の相の生成が認められた資料 Ν ο103〜; 106については、耐圧性を示す指標であり、測定された「突入電流印加後の A R25」の電気抵抗変化率が 10%以内と高い耐圧性を示すことがわかった。
[0066] (実施例 1B)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)、の原子比率(atom %)が表 2に示す所定の値になるように、酸化マンガン (Mn O )、酸化ニッケル (Ni
3 4
O)および酸化銅(CuO)を秤量して調合した。その後、実施例 1Aと同様にして、ダリ ーンシートを作製した。
[0067] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、 NTCサーミスタを得 た。
[0068] 以上のようにして作製された主要金属元素としてマンガンとニッケルと銅とを含むセ ラミック素体を有する単板型 NTCサーミスタの各試料の耐圧性を次のようにして評価 した。単板として形成されたセラミック素体を基板に実装した後、セラミック素体の電 極にリード線を付けて所定の電圧を印加することにより突入電流を流した。そのときの 電気抵抗値の変化を測定した。測定機器として、 ISYS 低温耐圧試験装置 (モデル
: IS— 062)を用いた。
[0069] NTCサーミスタに突入電流を流すと、ある電流値から電気抵抗値が急激に増加し 始める。耐圧性が高いということは、高い電流値まで電気抵抗値が変化しない特性を 示すことをいう。この実施例では、厚みが 0· 65±0.05mmの NTCサーミスタに 10 Aの電流を流したときの電気抵抗変化率 AR25を算出して耐圧性を評価した。
[0070] 表 2中、「突入電流印加後の AR25」 [%]は、突入電流を流す前の温度 25°Cでの 電気抵抗値を R 25[Ω]、 10Aの突入電流を流した後の温度 25°Cでの電気抵抗値
0
を R 25 [ Ω ]としたときに次の式で算出されるものとした。
[0071] AR25=(R 25/R 25-1) X 100
1 0
また、電気抵抗値の信頼性を評価するために、上記と同様の NTCサーミスタを用 V、て、温度— 55°Cで 30分間保持した状態と温度 125°Cで 30分間保持した状態との 間で熱サイクル試験を 100サイクル繰り返した後の電気抵抗変化率 AR25も測定し た。この電気抵抗変化率 AR25は、表中、「信頼性 AR25」[%]と示されている。「信 頼性 AR25」 [%]は、熱サイクル試験を行う前の温度 25°Cでの電気抵抗値を R 25[
0
Ω]、熱サイクル試験を行った後の温度 25°Cでの電気抵抗値を R 25[Ω]としたとき
2
に次の式で算出されるものとした。
[0072] AR25=(R 25/R 25-1) X100
2 0
表 2の「判定」の欄にお!/、ては、上記の「突入電流印加後の AR25」が 10%以内で 、「信頼性 AR25」が 20%以内であれば、試料に「〇」、そうでない試料に「X」を示し ている。
[0073] ビッカース硬度は、 AKASHI MICRO HARDNESS TESTER (モデノレ: MVK— E)を 用いて測定した。表 2において、ビッカース硬度 Hvと破壊靱性 KIcを示す。
[0075] 表 2に示すように、耐圧性の評価として「突入電流印加後の A R25」が 10%以内と V、う高!/、耐圧性を示した試料は、(マンガンの含有量) / (エッケノレの含有量)の原子 比率が 87/13以上 96/4以下の範囲であることがわかる。
[0076] 以上のことから、 NTCサーミスタ磁器力 マンガンとニッケルとを含み、(マンガンの 含有量) / (ニッケルの含有量)の比率を 87/13以上 96/4以下にすることにより、 母相中に母相に対して相対的に高い抵抗を有する高抵抗相が存在する組織を実現 すること力 Sできるとともに、組成物の硬度を高くすることができ、または破壊靭性をさら に高めること力 Sできること力 Sわ力、る。これにより、第 1の相中における電流集中を緩和 し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるだけでなぐクラックに起因する破 壊を ί卬制すること力 Sできるものと考えられる。したがって、 NTCサーミスタ磁器の耐圧 性をさらに高めることができる。また、 NTCサーミスタ磁器は、銅を 15原子%以下含 むように構成することにより、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性を高めることが可能な組 織を実現すること力できること力ゎカゝる。
[0077] 次に、組成 No. 116について、走査イオン顕微鏡(SIM Scanning Ion Microscope )と走査透過電子顕微鏡(STEM Scanning Transmission Electron Microscope)とを 用いて、セラミック粒子の観察とエネルギー分散型蛍光 X線分析 (EDX)とを行った。
[0078] 図 2は、走査イオン顕微鏡によってセラミック粒子を観察した写真である。図 2にお V、てように、黒!/、線状の形態で分散して!/、るものが第 2の相としての板状結晶である
〇
[0079] また、エネルギー分散型蛍光 X線分析の結果によれば、母相である第 1の相におい てはマンガンが 68. 8— 75. 5原子%、ニッケルが 11. 3—13. 7原子%、銅が 13. 1 〜19. 9原子%であり、板状結晶である高抵抗の第 2の相においてはマンガンが 95 . 9-97. 2原子%、ニッケルが 0. 6〜; 1. 2原子%、銅が 2·;!〜 3. 0原子%であった 。このこと力、ら、第 2の相におけるマンガンの含有量は、第 1の相よりも高いことがわか る。これらについては、他の添加物の含有量によって若干変わってくる力 第 2の相 は第 1の相よりもマンガンを原子%で約 1. 2倍以上多く含有していることがわかる。
[0080] さらに、走査プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Probe Microscope)を用いた分析に より、第 1の相と第 2の相の電気抵抗値を直接測定した。その結果、第 2の相の電気
抵抗値は、第 1の相よりも高ぐ第 1の相の電気抵抗値の少なくとも 10倍以上であるこ とがわかった。
[0081] (実施例 2A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe )、コバルト(Co)およびチタン (Ti)の原子比率(atom%)が表 3に示す所定の値にな るように、酸化マンガン(Mn O )、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化アルミ
3 4
ニゥム(Al O )、酸化鉄(Fe O )、酸化コバルト(Co O )および酸化チタン (TiO )
2 3 2 3 3 4 2 を秤量して調合した。その後、実施例 1Aと同様にして、グリーンシートを作製した。
[0082] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、 NTCサーミスタを得 た。
[0083] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 3に示す。
[0084] [表 3]
[0085] 表 3に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 123〜; 124は(マ ンガンの含有量)/ (ニッケルの含有量)の原子比率が 85/15で、 87/13未満であ るので、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主成分がマンガン酸化物からなる板 状結晶の存在が認められな力、つた。組成 No. 125〜; 146では、上記の原子比率が 9 0/10で、糸且成 No. 147では、上記の原子比率が 96/4で、 87/13以上 96/4以 下の範囲で銅を 15原子%以下含み、かつ、 10原子%以下のアルミニウム、 10原子 %以下の鉄、 15原子%以下のコバルト、または、 5原子%以下のチタンを含む場合、 高い電気抵抗を示す第 2の相としての板状のマンガン酸化物結晶が、低い電気抵抗 を示す母相としての第 1の相中に分散していることが認められるので、第 1の相中に おける電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるだけでなく 、 NTCサーミスタ磁器の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起 因する破壊を抑制することができ、その結果、耐圧性を高めることができることがわか
[0086] (実施例 2B)
実施例 2Aで得られたグリーンシートを所定の寸法に打ち抜き、または切断した後、 所定の枚数のシートの上に内部電極パターン層をスクリーン印刷法により形成した。 このとき用いられる内部電極パターン層となる電極形成用ペーストは、銀、銀-パラジ ゥム、金、白金等の貴金属、またはニッケル等の卑金属を主成分とする導電性ペース トであるが、この実施例では、銀:パラジウムの含有比率が 3 : 7の銀-パラジウム導電 性ペーストを用いた。
[0087] 内部電極パターン層が形成されたグリーンシートと、内部電極パターン層が交互に 引き出されるように積層し、最外層に内部電極パターン層が形成されていないダリー ンシートを形成して圧着し、積層グリーンシート圧着体を作製した。
[0088] この積層グリーンシート圧着体を用いて、実施例 1Aと同様にして焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタの構成部材としてのセラミック素体を作製した。
[0089] その後、バレル研磨によりセラミック素体の外形状を整えた後、セラミック素体の両 端面に外部電極形成用ペーストを塗布した。このとき用いられる電極形成用ペースト は、銀、銀-パラジウム、金、白金等の貴金属を主成分にするペーストである力 この
実施例では銀ペーストを用いた。 700〜850°Cの温度で銀ペーストを塗布して焼き 付けることにより、外部電極を形成した。最後に、ニッケルと錫のめっきを外部電極の 表面に施すことにより、積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0090] 図 3は、上記の実施例で作製された積層型の NTCサーミスタの構造を示す断面図 である。図 3に示すように、具体的には、 NTCサーミスタ 1は、その内部に形成された 内部電極層 11と、その外部に形成された外部電極層 12と、基材としてのセラミック素 体 20とから構成されている。上記の実施例では内部電極層 11は 13層積層され、内 部電極層 11間の距離を 130〃 mにした。なお、 NTCサーミスタの寸法としては種々 ある力 s、今回は 3225サイズ(L寸 3. 2mm XW寸 2· 5mm XT寸 1 · 6mm)のものを 作製し、評価した。
[0091] また、図 3で示される積層型の NTCサーミスタの実施例として、内部電極として、銀 とパラジウムとの重量比率が 30: 70のものを用いて!/、る力 0: 100—60: 40のものが 好ましい。このとき、内部電極を含むセラミック素体を同時焼成で作製する際に、内部 電極のカバレッジを高めることができる。これにより、内部電極への電界集中を防ぐこ とができ、積層型の NTCサーミスタとして、よりいつそうの耐電圧の向上を図ることが できる。
[0092] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施列 1Bと同様にして fiつた。表 3中の糸且成 No. 126、 137、 139、 145 について積層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、その突入電 流値における電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算出した。比 較のため、表 2中の組成 No. 109、 116について積層型の NTCサーミスタを作製し 、同様に各突入電流値における電気抵抗変化率 A R25を算出した。その結果を図 4 に示す。
[0093] 図 4から、高い電気抵抗を示す第 2の相としての板状結晶を生成しない組成 No. 1 09に対して、第 2の相としての板状結晶を生成する組成 No. 116は高い耐圧性を示 すこと力 Sわ力、る。また、高抵抗の第 2の相を生成するだけでなぐ高い硬度または高い 破壊靱性を示す組成 No. 126、 137、 139、 145は、第 2の相を生成する組成 No. 1
16に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、 さらに耐圧性を高めることができることがわかる。
[0094] (実施例 3A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe )およびニッケル (Ni)の原子比率(atom%)が表 4と表 5に示す所定の値になるよう に、酸化マンガン(Mn O )、酸化コバルト(Co O )、酸化銅(CuO)、酸化アルミ二
3 4 3 4
ゥム(Al O )、酸化鉄(Fe O )および酸化ニッケル (NiO)を秤量して調合した。その
2 3 2 3
後、実施例 1Aと同様にして、グリーンシートを作製した。
[0095] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0096] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 4と表 5に示す。
[0097] [表 4]
電気特性 突入電流 組成 Mn/Co n Co Cu Al Fe Ni P 25 B25/50 印加後の 板状 判
No. 比率 atom atom% atom% atom% atom% atom% Ω cm K lR25% i|<口日曰 定
201 25/75 24.6 73.9 1.5 - - - 434 3839 33 無 X
202 24.3 72.7 3.0 - 一 - 347 3753 58 無 X
203 23.5 70.5 6.0 一 ― - 228 3577 20 無 X
204 35/65 34.5 64.0 1.5 - - - 193 3840 57 無 X
205 34.0 63.0 3.0 - - 一 135 3664 40 無 X
206 32.9 61.1 6.0 - - - 133 3493 92 無 X
207 45/55 44.3 54.2 1.5 - - - 197 3908 71 無 X
208 43.7 53.3 3.0 - - - 128 3694 20 無 X
209 42.3 51.7 6.0 - - - 62 3432 130 無 X
210 40.5 49.5 5.0 5.0 ― - 151 3626 27 無 X
21 1 38.3 46.7 8.0 7.0 - - 90 3427 67 無 X
212 34.7 42.3 12.0 1 1.0 - - 81 3303 39 無 X
213 40.1 48.9 6.0 - 5.0 - 89 3417 60 無 X
214 36.9 45.1 8.0 - 10.0 - 77 3283 41 無 X
215 34.7 42.3 8.0 一 15.0 - 97 3216 54 無 X
216 60/40 57.0 38.0 5.0 - - - 453 3684 6 有 〇
217 55.8 37.2 7.0 - - - 181 3421 7 有 〇
218 54.0 36.0 5.0 5.0 - - 289 3522 3 有 o
219 52.8 35.2 7.0 5.0 一 - 1 18 3279 4 有 Q
220 51.0 34.0 10.0 5.0 一 - 45 2950 2 有 〇
221 48.0 32.0 15.0 5.0 - - 23 2747 5 有 〇
222 49.8 33.2 7.0 10.0 - - 93 3391 4 有 o
223 46.8 31.2 7.0 15.0 - - 42 3204 1 有 〇
224 43.8 29.2 7.0 20.0 一 - 130 3489 36 無 X
225 54.0 36.0 5.0 - 5.0 - 454 3535 2 有 〇
226 52.8 35.2 7.0 - 5.0 - 150 3284 1 有 〇
227 49.8 33.2 7.0 - 10.0 - 332 3429 3 有 〇
228 46.8 31.2 7.0 - 15.0 - 138 3307 5 有 o
229 43.8 29.2 7.0 - 20.0 ― 251 3496 42 無 X
230 54.0 36.0 5.0 - ― 5.0 87 3279 4 有 o
231 52.8 35.2 7.0 一 - 5.0 46 3148 4 有 O
232 49.8 33.2 7.0 - - 10.0 38 2998 3 有 〇
233 46.8 31.2 7.0 - - 15.0 36 2851 5 有 O
234 43.8 29.2 7.0 - - 20.0 63 2974 29 無 X
235 70/30 63.0 27.0 10.0 - 一 - 290 3250 7 有 O
236 60.9 26.1 8.0 5.0 - 一 640 3405 4 有 〇
237 59.5 25.5 10.0 5.0 - - 283 3194 3 有 〇 5]
電気特性 突入電流 組成 Mn/Co Mn Co Cu Al Fe Ni p 25 B25/50印加後の 板状 判
No. 比率 atom% atom% atom% atom% atom% atom Q cm K 日 Θ 定
238 80/20 66.6 16.7 16.7 - 一 - 129 2783 8 有 〇
239 66.8 16.7 1 1.5 5.0 - - 523 3005 3 有 〇
240 64.8 16.2 14.0 5.0 - - 294 2873 3 有 O
241 62.8 15.7 1 1.5 10.0 - - 358 2914 4 有 〇
242 60.8 15.2 1 .0 10.0 ― - 86 2757 5 有 〇
243 58.8 14.7 1 1.5 15.0 - - 121 2795 2 有 〇
244 54.8 13.7 1 1.5 20.0 - - 280 3102 18 無 X
245 66.8 16.7 1 1.5 - 5.0 - 682 3019 2 有 O
246 62.8 15.7 1 1.5 - 10.0 一 342 2936 4 有 〇
247 58.8 14.7 1 1.5 - 15.0 - 190 2864 1 有 o
248 54.8 13.7 1 1.5 - 20.0 - 532 2971 25 無 X
249 66.8 16.7 1 1.5 - - 5.0 157 2759 3 有 〇
250 62.8 15.7 1 1.5 - - 10.0 1 13 2710 4 有 〇
251 58.8 14.7 1 1.5 - - 15.0 53 2657 6 有 〇
252 54.8 13.7 1 1.5 - - 20.0 69 2639 21 無 X
253 90/10 70.2 7.8 22.0 - - - 312 2512 7 有 〇
254 70.2 7.8 17.0 5.0 - - 217 2758 1 有 〇
255 65.7 7.3 22.0 5.0 - - 47 2574 4 有 〇
256 61.2 6.8 22.0 10.0 - - 36 2566 3 有 o
257 56.7 6.3 22.0 15.0 - - 22 2503 5 有 o
258 52.2 5.8 22.0 20.0 - - 33 2597 34 無 X
259 65.7 7.3 22.0 - 5.0 - 74 2612 2 有 〇
260 61.2 6.8 22.0 - 10.0 - 52 2591 6 有 〇
261 56.7 6.3 22.0 - 15.0 一 29 2533 2 有 〇
262 52.2 5.8 22.0 - 20.0 - 47 2605 31 無 X
263 65.7 7.3 22.0 - - 5.0 24 2486 5 有 〇
264 61.2 6.8 22.0 - - 10.0 20 2415 1 有 〇
265 56.7 6.3 22.0 - - 15.0 25 2430 2 有 o
266 52.2 5.8 22.0 - - 20.0 30 2458 19 無 X
267 100/0 66.7 - 33.3 - - - 229 2889 24 無 X
[0099] 表 4と表 5に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 201— 215 は(マンガンの含有量)/ (コバルトの含有量)の原子比率が 60/40未満であるので 、高レ、電気抵抗を示す第 2の相としての主にマンガン酸化物を主成分とする板状結 晶の存在が認められなかった。組成 No. 216 266では、上記の原子比率が 60Z 40以上 90Z10以下の範囲で銅を 22原子%以下含み、かつ、アルミニウム、鉄、ま たは、ニッケルを 15原子%以下含む場合、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主 にマンガン酸化物を主成分とする板状結晶力 低レ、電気抵抗を示す母相としての第 1の相中に分散していることが認められるので、第 1の相中における電流集中を緩和 し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるだけでなぐ NTCサーミスタ磁器 の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起因する破壊を抑制す ること力 Sでき、その結果、耐圧性を高めることができることがわかる。
[0100] (実施例 3B)
実施例 3Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0101] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施列 1Bと同様にして fiつた。表 4と表 5中の糸且成 No. 210、 238、 242 、 246、 250について積層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、 その突入電流値における電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算 出した。その結果を図 5に示す。
[0102] 図 5から、高い電気抵抗を示す第 2の相としての板状結晶を生成しない組成 No. 2 10に対して、第 2の相を生成する組成 No. 238は高い耐圧性を示すことがわかる。 また、第 2の相を生成するだけでなぐ高い硬度または高い破壊靱性を示す組成 No . 242、 246、 250 (ま、第 2の申目を生成する糸且成 No. 238ίこ対して、申目対白勺 ίこ高レヽ突 入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、さらに耐圧性を高めることがで さること力 sわ力、る。
[0103] (実施例 4A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe )、コバルト(Co)、チタン (Ti)およびジルコニウム(Zr)の原子比率(atom%)が表 6と 表 7に示す所定の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化ニッケル(NiO)、酸
3 4
化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al O )、酸化鉄、酸化コバルト(Co O )、酸化チタ
2 3 3 4
ン (TiO )および酸化ジルコニウム(ZrO )を秤量して調合した。その後、実施例 1Aと
2 2
同様にして、グリーンシートを作製した。
[0104] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0105] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 6と表 7に示す。
CT890/.00Zdf/X3d LZ Ϊ8 讀 OOZ OAV
[0108] 表 6と表 7に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 301— 337 では、(マンガンの含有量)/ (ニッケルの含有量)の原子比率が 87/13以上 96/4 以下の範囲で銅を 15原子%以下含み、かつ、 10原子%以下のアルミニウム、 10原 子%以下の鉄、 15原子%以下のコバルト、または、 5原子%以下のチタンを少なくと も 1種含み、さらに、 1 · 5原子0 /0以下のジルコニウムを含む場合、高い電気抵抗を示 す第 2の相としての主にマンガン酸化物からなる板状結晶力 S、低い電気抵抗を示す 母相としての第 1の相中に分散していることが認められるので、第 1の相中における電 流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるだけでなぐ NTCサ 一ミスタ磁器の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起因する破 壊を抑制することができるとともに、酸化ジルコニウムがセラミック結晶粒界に偏析して いることが認められるので、 NTCサーミスタ磁器の硬度または破壊靭性を高い値に ほぼ維持することができ、その結果、耐圧性を高めることができることがわかる。
[0109] なお、ジルコニウムの含有量が 1. 5原子0 /0を超えると、たとえば、 3原子0 /0になると 、耐圧性が劣化した。この原因は、ジルコニウムを多く含ませると、ジルコニウムがセラ ミックスの焼結性を阻害するため、セラミックス素体中でのポア率が高くなることに起 因するものと考えられる。
[0110] (実施例 4B)
実施例 4Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0111] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施列 1と同様にして fiつた。表 6と表 7中の糸且成 No. 306、 307、 310、 318、 319、 320、 323、 324、 325、 328、 329、 330、 333、 334、 335ίこつ!/ヽて積 層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、その突入電流値におけ る電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算出した。その結果を図 6 〜図 10に示す。
[0112] 図 6力、ら、 1. 5原子%以下のジルコニウムを含む組成 No. 307、 310は、ジルコ二 ゥムを添加して!/、な!/、が高レ、電気抵抗を示す第 2の相を生成する組成 No. 306に対
して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、ジルコ 二ゥムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることができることがわかる。
[0113] また、同様に、図 7から、 1. 5原子%以下のジルコニウムを含む組成 No. 319、 32 0は、ジノレコニゥムを添加して!/、な!/、が高!/、電気抵抗を示す第 2の相を生成する組成 No. 318に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさない ので、ジルコニウムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることができることがわ かる。
[0114] さらに、同様に、図 8力、ら、 1. 5原子0 /0以下のジルコニウムを含む組成 No. 324、 3 25は、ジルコニウムを添加して!/、な!/、が高!/、電気抵抗を示す第 2の相を生成する組 成 No. 323に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさな いので、ジルコニウムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることができることが ゎカゝる。
[0115] 同様に、図 9力、ら、 1. 5原子0 /0以下のジルコニウムを含む組成 No. 329、 330は、 ジルコニウムを添加してレ、なレ、が高レ、電気抵抗を示す第 2の相を生成する組成 No. 328に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので 、ジノレコニゥムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることカできることカゎ力、る。
[0116] 同様に、図 10から、 1. 5原子%以下のジルコニウムを含む組成 No. 334、 335は、 ジルコニウムを添加してレ、なレ、が高レ、電気抵抗を示す第 2の相を生成する組成 No. 333に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので 、ジノレコニゥムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることカできることカゎ力、る。
[0117] (実施例 5A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、アルミ ニゥム(A1)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびチタン (Ti)の原子比率(atom%)が表 8 〜表 10に示す所定の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化ニッケル(NiO)
3 4
、酸化銅(CuO)、炭酸カルシウム(CaCO )、酸化アルミニウム (Al O )、酸化鉄(F
3 2 3
e O )、酸化コバルト(Co O )および酸化チタン (TiO )を秤量して調合した。その後
2 3 3 4 2
、実施例 1Aと同様にして、グリーンシートを作製した。
[0118] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ
り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0119] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1と同様にして評価した。その結果を表 8〜表 10に示す。
[0120] [表 8]
原料仕込み量 竈気特性 耐圧性
Μη/Νί Μη Ni Cu Ca 25 B25/50突入電流 板状 判 組成
印加後の
No. 比率 atom% atom atom% atom% Q cm K 曰 定 口日日
401 85/15 85.0 15.0 0.0 0.0 3243 3694 61 無 X
402 76.9 13.6 4.5 5.0 147 3283 55 無 X
403 75.7 13.3 6.0 5.0 75 3055 37 無 X
404 87/13 87.0 13.0 0.0 0.0 17600 4215 2 有 〇
405 82.7 12.3 0.0 5.0 3961 4099 6 有 〇
406 78.3 1 1.7 0.0 10.0 3158 4085 4 有 〇
407 74.0 1 1.0 0.0 15.0 2257 3947 51 無 X
408 78.3 1 1.7 10.0 0.0 337 3149 3 有 〇
409 74.0 1 1.0 10.0 5.0 123 2987 4 有 〇
410 69.6 10.4 10.0 10.0 98 2968 7 有 〇
41 1 65.2 9.8 10.0 15.0 57 2864 48 無 X
412 74.0 1 1.0 15.0 0.0 102 2766 4 有 〇
413 69.6 10.4 15.0 5.0 42 2715 1 有 Ο
414 65.2 9.8 15.0 10.0 33 2694 5 Ο
415 60.9 9.1 15.0 15.0 21 2659 42 無 X
416 90/10 90.0 10.0 0.0 0.0 26890 4243 2 有 〇
417 85.5 9.5 0.0 5.0 6397 4056 5 有 〇
418 81.0 9.0 0.0 10.0 5008 3989 3 有 〇
419 76.5 8.5 0.0 15.0 3255 3874 24 無 X
420 81.0 9.0 10.0 0.0 206 2805 3 有 〇
421 76.5 8.5 10.0 5.0 68 2798 2 有 〇
422 72.0 8.0 10.0 10.0 54 2769 3 有 〇
423 67.5 7.5 10.0 15.0 30 2755 17 無 X
424 76.5 8.5 15.0 0.0 67 2809 7 有 〇
425 72.0 8.0 15.0 5.0 33 2802 3 有 〇
426 67.5 7.5 15.0 10.0 27 2769 5 有 Ο
427 63.0 7.0 15.0 15.0 20 2775 36 無 X
428 96/4 96.0 4.0 0.0 0.0 269383 4583 5 有 Ο
429 91.2 3.8 0.0 5.0 53861 4493 6 有 Ο
430 86.4 3.6 0.0 10.0 40416 4386 1 有 〇
431 81.6 3.4 0.0 15.0 24250 4310 38 無 X
432 86.4 3.6 10.0 0.0 1671 2952 6 有 Ο
433 81.6 3.4 10.0 5.0 393 2846 4 有 ο
434 76.8 3.2 10.0 10.0 287 2812 4 有 ο
435 72.0 3.0 10.0 15.0 217 2779 45 無 X
436 81.6 3.4 15.0 0.0 513 2768 6 有 〇
437 76.8 3.2 15.0 5.0 126 2733 6 有 〇
438 72.0 3.0 15.0 10.0 95 2685 4 有 〇
439 67.2 2.8 15.0 15.0 52 2691 31 無 X
440 100/0 66.7 0 33.3 5.0 210 2871 39 無 X 9]
表 8に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 401〜440では、 (マンガンの含有量) Z (ニッケルの含有量)の原子比率が 87/13以上 96Z4以下 の範囲で銅を 15原子%以下含み、さらに 10原子%以下(0原子。 /0を除く)のカルシ ゥムを含む場合、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主成分がマンガン酸化物か
らなる板状結晶だけでなぐ高い電気抵抗を示す第 3の相としての CaMn Oまたは
2 4
CaMnO 1 、低い電気抵抗を示す母相としての第 1の相中に分散していることが認
3
められるので、さらに第 1の相中における電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊 を抑制することができ、耐圧性を高めることができることがわかる。
[0124] また、表 9と表 10に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 441 〜482では、(マンガンの含有量)/ (ニッケルの含有量)の原子比率が 87/13以上 96/4以下の範囲で銅を 15原子%以下含み、 10原子%以下のアルミニウム、 10原 子%以下の鉄、 15原子%以下のコバルト、または、 5原子%以下のチタンを含み、さ らに 10原子%以下(0原子%を除く)のカルシウムを含む場合、高い電気抵抗を示す 第 2の相としての主成分がマンガン酸化物からなる板状結晶だけでなぐ高い電気抵 抗を示す第 3の相としての CaMn Oまたは CaMnO 1 低い電気抵抗を示す母相
2 4 3
としての第 1の相中に分散していることが認められるので、さらに第 1の相中における 電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるとともに、 NTCサ 一ミスタ磁器の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起因する破 壊を抑制することができ、その結果、耐圧性をさらに高めることができることがわかる。
[0125] 次に、組成 No. 421について、走査イオン顕微鏡(SIM: Scanning Ion Microscope )と走査透過電子顕微鏡(STEM Scanning Transmission Electron Microscope)とを 用いて、セラミック粒子の観察とエネルギー分散型蛍光 X線分析 (EDX)とを行った。
[0126] 図 22は、走査イオン顕微鏡によってセラミック粒子を観察した写真である。図 22に おいて、黒い線上の形態で分散しているものが第 2の相としての板状結晶である。ま た、黒い粒子状で分散しているものが第 3の相としてのマンガン 'カルシウム化合物で ある。 CaMn Oまたは CaMnOの形態で存在している。
2 4 3
[0127] さらに、走査プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Prode Microscope)を用いた分析に より、第 1の相、第 2の相、及び第 3の相の電気抵抗値を直接測定した。その結果、第 2の相及び第 3の相の電気抵抗値は第 1の相よりも高ぐ第 2の相は第 1の相の電気 抵抗値の少なくとも 10倍、第 3の相は第 1の相の少なくとも 100倍であることがわかつ た。
[0128] (実施例 5B)
実施例 5Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0129] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施列 1Bと同様にして fiつた。表 8〜表 10中の糸且成 No. 420、 441、 44 2、 453、 454、 465、 466、 477、 478 ίこつレヽて積層型の NTCサーミスタを作製し、 突入電流値を変化させて、その突入電流値における電気抵抗値の変化を測定し、電 気抵抗変化率 A R25を算出した。その結果を図 11〜図 14に示す。
[0130] 図 11力、ら、アルミニウムとカルシウムを含む組成 No. 442は、アルミニウムもカルシ ゥムも添加していない組成 No. 420に対して、さらに、アルミニウムを添加しているが カルシウムを添加していない組成 No. 441に対して、相対的に高い突入電流値まで 電気抵抗の変化を引き起こさないので、アルミニウムを添加することにより耐圧性を高 めること力 Sでき、さらにカルシウムを添加することによって耐圧性をより高めることがで さること力 sわ力、る。
[0131] また、同様にして、図 12から、鉄とカルシウムを含む組成 No. 454は、鉄もカルシゥ ムも添加していない組成 No. 420に対して、さらに、鉄を添加しているがカルシウム を添加していない組成 No. 453に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗 の変化を引き起こさないので、鉄を添加することにより耐圧性を高めることができ、さら にカルシウムを添加することによって耐圧性をより高めることができることがわかる。
[0132] さらに、同様にして、図 13から、コバルトとカルシウムを含む組成 No. 466は、コバ ルトもカルシウムも添加していない組成 No. 420に対して、さらに、コバルトを添加し ているがコバルトを添加していない組成 No. 465に対して、相対的に高い突入電流 値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、コバルトを添加することにより耐圧性を 高めることができ、さらにカルシウムを添加することによって耐圧性をより高めることが でさること力 Sゎカゝる。
[0133] 同様にして、図 14力、ら、チタンとカルシウムを含む組成 No. 478は、チタンもカルシ ゥムも添加していない組成 No. 420に対して、さらに、チタンを添加しているがカルシ ゥムを添加していない組成 No. 477に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵
抗の変化を引き起こさないので、チタンを添加することにより耐圧性を高めることがで き、さらにカルシウムを添加することによって耐圧性をより高めることができることがわ かる。
[0134] (実施例 6A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、アル ミニゥム(A1)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびチタン (Ti)の原子比率(atom%)が表 1 1〜表 13に示す所定の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化ニッケル(NiO
3 4
)、酸化銅(CuO)、炭酸ストロンチウム(SrCO )、酸化アルミニウム (Al O )、酸化鉄
3 2 3
(Fe O )、酸化コバルト(Co O )および酸化チタン (TiO )を秤量して調合した。そ
2 3 3 4 2
の後、実施例 1Aと同様にして、グリーンシートを作製した。
[0135] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0136] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 11〜表 13に示す。
[0137] [表 11]
原料仕込み量 電気特性 耐圧性
Mn/Ni Mn Ni Cu Sr p 25 B25/50突入電流板状 判 組成
印加後の
No. 定 比率 atom% atom atom atom Q cm K 口
501 85/15 85.0 15.0 0.0 0.0 3243 3964 61 無 X
502 76.9 13.6 4.5 5.0 184 3292 55 無 X
503 75.7 13.3 6.0 5.0 88 3084 37 無 X
504 87/13 87.0 13.0 0.0 0.0 17600 4215 2 有 o
505 85.3 12.7 0.0 2.0 3961 4099 8 有 〇
506 82.7 12.3 0.0 5.0 3158 4085 6 有 〇
507 78.3 1 1.7 0.0 10.0 2257 3947 68 無 X
508 78.3 1 1.7 10.0 0.0 337 3149 3 有 〇
509 76.6 1 1 .4 10.0 2.0 155 3078 4 有 〇
510 74.0 1 1 .0 10.0 5.0 1 12 2944 1 有 〇
51 1 69.6 10.4 10.0 10.0 65 2876 32 無 X
512 74.0 1 1 .0 15.0 0.0 102 2766 4 有 〇
513 72.2 10.8 15.0 2.0 49 2709 3 有 〇
514 69.6 10.4 15.0 5.0 37 2681 5 有 〇
515 65.2 9.8 15.0 10.0 25 2653 42 無 X
516 90/10 90.0 10.0 0.0 0.0 26890 4243 2 有 o
51 7 88.2 9.8 0.0 2.0 16932 4186 7 有 〇
518 85.5 9.5 0.0 5.0 6196 4081 5 有 〇
519 81.0 9.0 0.0 10.0 4106 3889 41 無 X
520 81.0 9.0 10.0 0.0 206 2805 3 有 〇
521 79.2 8.8 10.0 2.0 84 2801 7 有 〇
522 76.5 8.5 10.0 5.0 74 2788 5 有 O
523 72.0 8.0 10.0 10.0 66 2775 23 無 X
524 76.5 8.5 15.0 0.0 67 2809 7 有 〇
525 74.7 8.3 15.0 2.0 55 2799 8 有 O
526 72.0 8.0 15.0 5.0 42 2762 5 有 O
527 67.5 7.5 15.0 10.0 30 2757 31 無 X
528 96/4 96.0 4.0 0.0 0.0 269383 4583 5 有 〇
529 94.1 3.9 0.0 2.0 8451 7 4512 7 有 〇
530 91 .2 3.8 0.0 5.0 65363 4393 4 有 O
531 86.4 3.6 0.0 10.0 48502 4300 8Θ 無 X
532 86.4 3.6 10.0 0.0 1671 2952 6 有 〇
533 84.5 3.5 10.0 2.0 889 2916 2 有 〇
534 81.6 3.4 10.0 5.0 487 2831 6 有 〇
535 76.8 3.2 10.0 10.0 373 2767 76 無 X
536 81 .6 3.4 15.0 0.0 513 2768 6 有 〇
537 79.7 3.3 15.0 2.0 338 2741 4 有 〇
538 76.8 3.2 15.0 5.0 171 2708 8 有 O
539 72.0 3.0 15.0 10.0 105 2704 64 無 X
540 100/0 66.7 0 33.3 5.0 295 2855 58 無 X 12]
¾¾039l1
表 11に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 50;!〜 540では 、 (マンガンの含有量)/ (ニッケルの含有量)の原子比率が 87Z13以上 96Z4以下 の範囲で銅を 15原子%以下含み、さらに 5原子%以下(0原子%を除く)のストロンチ ゥムを含む場合、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主にマンガン酸化物からなる
板状結晶だけでなぐ高い電気抵抗を示す第 3の相としての SrMnO 、低い電気
3
抵抗を示す母相としての第 1の相中に分散していることが認められるので、さらに第 1 の相中における電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができ、 耐圧性を高めることができることがわかる。
[0141] また、表 12と表 13に示すように、セラミック素体の各試料において、組成 No. 541 〜582では、(マンガンの含有量)/ (ニッケルの含有量)の原子比率が 87/13以上 96/4以下の範囲で銅を 15原子%以下含み、 10原子%以下のアルミニウム、 10原 子%以下の鉄、 15原子%以下のコバルト、または、 5原子%以下のチタンを含み、さ らに 5原子%以下(0原子%を除く)のストロンチウムを含む場合、高い電気抵抗を示 す第 2の相としての主成分がマンガン酸化物からなる板状結晶だけでなぐ高い電気 抵抗を示す第 3の相としての SrMnO 1 低い電気抵抗を示す母相としての第 1の
3
相中に分散していることが認められるので、さらに第 1の相中における電流集中を緩 和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるとともに、 NTCサーミスタ磁器 の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起因する破壊を抑制す ること力 Sでき、その結果、耐圧性をさらに高めることができることがわかる。
[0142] (実施例 6B)
実施例 6Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0143] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施例 1Bと同様にして行った。表 11〜表 13中の組成 No. 520、 541、 5 42、 553、 554、 565、 566、 577、 578ίこつレヽて積層型の NTCサーミスタを作製し、 突入電流値を変化させて、その突入電流値における電気抵抗値の変化を測定し、電 気抵抗変化率 Δ R25を算出した。その結果を図 15〜図 18に示す。
[0144] 図 15から、アルミニウムとストロンチウムを含む組成 No. 542は、ァノレミニゥムもスト ロンチウムも添加していない組成 No. 520に対して、さらに、アルミニウムを添加して いるがストロンチウムを添加していない組成 No. 541に対して、相対的に高い突入電 流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、アルミニウムを添加することにより耐
圧性を高めることができ、さらにストロンチウムを添加することによって耐圧性をより高 めること力 Sでさること力 Sゎカゝる。
[0145] また、同様にして、図 16から、鉄とストロンチウムを含む組成 No. 554は、鉄もスト口 ンチウムも添加していない組成 No. 520に対して、さらに、鉄を添加しているがスト口 ンチウムを添加していない組成 No. 553に対して、相対的に高い突入電流値まで電 気抵抗の変化を引き起こさないので、鉄を添加することにより耐圧性を高めることがで き、さらにストロンチウムを添加することによって耐圧性をより高めることができることが ゎカゝる。
[0146] さらに、同様にして、図 17力、ら、コバルトとストロンチウムを含む組成 No. 566は、コ バルトもストロンチウムも添加していない組成 No. 520に対して、さらに、コバルトを添 加しているがストロンチウムを添加していない組成 No. 565に対して、相対的に高い 突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、コバルトを添加することによ り耐圧性を高めることができ、さらにストロンチウムを添加することによって耐圧性をよ り高めること力 Sでさること力 Sゎカゝる。
[0147] 同様にして、図 18から、チタンとストロンチウムを含む組成 No. 578は、チタンもスト ロンチウムも添加していない組成 No. 520に対して、さらに、チタンを添加しているが ストロンチウムを添加していない組成 No. 577に対して、相対的に高い突入電流値 まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、チタンを添加することにより耐圧性を高 めること力 Sでき、さらにストロンチウムを添加することによって耐圧性をより高めることが でさること力 Sゎカゝる。
[0148] (実施例 7A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe )、ニッケル(Ni)およびジルコニウム(Zr)の原子比率(atom%)が表 15に示す所定 の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化コバルト(Co O )、酸化銅(CuO)、
3 4 3 4
酸化アルミニウム(Al O )、酸化鉄(Fe O )、酸化ニッケル(NiO)および酸化ジルコ
2 3 2 3
ニゥム(ZrO )を秤量して調合した。その後、実施例 1Aと同様にして、グリーンシート
2
を作製した。
[0149] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ
2007/068136
り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0150] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 14に示す。
[0151] [表 14] 突入電 電気特性 流印加 板 組 後の 状 成 Mn/Co Mn Co Cu Al Fe Ni Zr P 25 B25/50 R25% 結 判
No. 比率 atom% atom% atom% atom% atom% atom% atom% Ω cm K 晶 定
601 60/40 57.0 38.0 5.0 - - - - 453 3684 6 有 〇
602 55.6 37.1 7.0 ― - - 0.3 183 3460 4 有 〇
603 55.4 37.0 7.0 - 一 - 0.6 163 3329 1 有 〇
604 55.2 36.8 7.0 - - - 1.0 154 3274 3 有 〇
605 54.9 36.6 7.0 - - - 1.5 220 3364 3 有 〇
606 70/30 63.0 27.0 10.0 - 一 - - 290 3250 7 有 〇
607 63.7 27.3 9.0 - - - - 500 331 1 2 有 〇
608 63.5 27.2 9.0 - - - 0.3 517 3354 0 有 〇
609 63.3 27.1 9.0 - - 一 0.6 452 3275 -1 有 〇
610 63.0 27.0 9.0 - - - 1.0 419 3266 1 有 o
61 1 62.7 26.8 9.0 一 - - 1.5 595 3345 1 有 o
612 80/20 66.6 16.7 16.7 - - - - 129 2783 8 有 〇
613 70.8 17.7 1 1.5 - - - - 278 2959 5 有 o
614 70.7 17.7 1 1.5 - - 一 0.1 336 2964 一 3 有 o
615 70.6 17.7 1 1.5 - - 一 0.2 316 2938 1 有 o
616 70.6 17.6 1 1.5 - - - 0.3 255 2883 0 有 o
61 7 70.3 17.6 1 1.5 一 - - 0.6 230 2846 一 2 有 o
618 70.0 17.5 1 1.5 - - - 1.0 235 2822 3 有 o
619 69.6 17.4 1 1.5 ― - - 1.5 386 2839 2 有 o
620 66.8 16.7 1 1.5 5.0 一 - - 523 3005 3 有 o
621 66.6 16.6 1 1.5 5.0 - - 0.3 510 2971 2 有 o
622 65.6 16.4 1 1.5 5.0 - - 1 .5 636 3124 2 有 〇
623 58.8 14.7 1 1.5 15.0 - - - 121 2795 2 有 o
624 58.6 14.6 1 1.5 15.0 - ― 0.3 109 2777 1 有 〇
625 57.6 14.4 1 1.5 15.0 - - 1.5 156 2855 -1 有 o
626 66.8 16.7 1 1.5 - 5.0 - - 682 3019 2 有 〇
627 66.6 16.6 1 1.5 - 5.0 - 0.3 61 1 3007 -1 有 〇
628 65.6 16.4 1 1.5 - 5.0 - 1.5 866 3085 1 有 〇
629 56.8 14.2 14.0 - 15.0 - - 320 2912 2 有 〇
630 56.6 14.1 14.0 - 15.0 - 0.3 298 2902 0 有 〇
631 55.6 13.9 14.0 - 15.0 - 1.5 400 2936 -1 有 〇
632 68.8 17.2 9.0 - - 5.0 - 331 3080 1 有 〇
633 68.6 17.1 9.0 一 一 5.0 0.3 31 1 3044 0 有 〇
634 67.6 16.9 9.0 一 - 5.0 1.5 410 31 16 0 有 o
635 60.8 15.2 9.0 - - 15.0 - 72 3014 6 有 〇
636 60.6 15.1 9.0 一 - 15.0 0.3 66 2985 3 有 〇
637 59.6 14.9 9.0 - - 15.0 1.5 94 3125 4 有 〇
638 90/10 70.2 7.8 22.0 - - - - 312 2512 7 有 〇
639 74.7 8.3 17.0 - - 一 一 237 2732 5 有 o
640 74.4 8.3 17.0 - - 一 0.3 214 2712 3 有 o
641 74.2 8.2 17.0 - - - 0.6 208 2688 -2 有 o
642 73.8 8.2 17.0 - - - 1.0 202 2701 1 有 o
643 73.4 8.1 17.0 ― - - 1.5 280 2756 4 有 o
644 100/0 66.7 - 33.0 - - - 229 2889 24 無 X
[0152] 表 14に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 601— 637, 63 9〜643では、(マンガンの含有量) Z (コバルトの含有量)の比率が 60/40以上 90 /10以下の範囲で、銅を 17原子%以下含み、かつ、 15原子%以下のアルミニウム 、 15原子%以下の鉄、 15原子%以下のニッケノレを少なくとも 1種含み、さらに、 1 · 5 原子%以下 (0原子%を除く)のジルコニウムを含む場合、高い電気抵抗を示す第 2 の相としての主にマンガン酸化物からなる板状結晶力 S、低い電気抵抗を示す母相と しての第 1の相中に分散していることが認められるので、第 1の相中における電流集 中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができるだけでなぐ NTCサーミ スタ磁器の硬度または破壊靭性を高めることができるので、クラックに起因する破壊を 抑制すること力 Sできるとともに、酸化ジルコニウムがセラミック結晶粒界に偏析している ことが認められるので、 NTCサーミスタ磁器の硬度または破壊靭性を高い値にほぼ 維持すること力 Sでき、その結果、耐圧性を高めることができることがわかる。
[0153] (実施例 7B)
実施例 7Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0154] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施例 1Bと同様にして行った。表 14中の組成 No. 613、 616について 積層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、その突入電流値にお ける電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算出した。その結果を図 19に示す。
[0155] 図 19から、ジルコニウムを 0. 3原子0 /0添加している組成 No. 613は、ジルコニウム を添加していないが高い電気抵抗を示す第 2の相を生成する組成 No. 616に対して 、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こさないので、ジルコユウ ムを添加することにより、さらに耐圧性を高めることができることがわかる。
[0156] (実施例 8A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、ストロン チウム(Sr)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)の原子比率(atom%)
が表 14〜表 15に示す所定の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化コバルト
3 4
(Co O )、酸化銅(CuO)、炭酸カルシウム(CaCO )、酸化アルミニウム (Al O )、
3 4 3 2 3 酸化鉄 (Fe O )、酸化ニッケル (NiO)およびを秤量して調合した。その後、実施例 1
2 3
Aと同様にして、グリーンシートを作製した。
[0157] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0158] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 15〜表 17に示す。
[0159] [表 15]
[0160] [表 16]
突入電
電気特性 流印加 板 組
後の 状 成 Mn/Co Mn Co Cu Al Fe Ni Ca P 25 B25/50 R25% 糸。 判
No. 比率 atom% atom atom% atom% atom atom% atom% Q cm K B 定
716 80/20 66.6 16.7 16.7 - - - - 129 2783 8 有 O
717 70.0 17.5 1 1.5 - - - 1.0 136 2828 2 有 O
718 68.8 17.2 1 1.5 - - - 2.5 202 2886 3 有 〇
719 66.8 16.7 1 1.5 - - - 5.0 78 2799 1 有 〇
720 66.8 16.7 1 1.5 5.0 - 一 一 523 3005 3 有 〇
721 66.0 16.5 1 1.5 5.0 - - 1.0 68 2717 1 有 〇
722 64.8 16.2 1 1.5 5.0 - 一 2.5 73 2713 2 有 o
723 62.8 15.7 1 1.5 5.0 - 一 5.0 42 2596 2 有 o
724 58.8 14.7 1 1.5 5.0 - - 10.0 22 2525 21 無 X
725 62.8 15.7 1 1.5 10.0 - - - 358 2914 4 有 O
726 62.0 15.5 1 1.5 10.0 - - 1.0 82 2702 0 有 o
727 60.8 15.2 1 1.5 10.0 - - 2.5 197 2884 3 有 o
728 58.8 14.7 1 1.5 10.0 - 一 5.0 1 17 3008 2 有 o
729 58.8 14.7 1 1.5 15.0 - - ― 121 2795 2 有 〇
730 56.8 14.2 1 1.5 15.0 - - 2.5 216 31 16 0 有 〇
731 54.8 13.7 1 1.5 15.0 - - 5.0 328 3204 1 有 o
732 66.8 16.7 1 1.5 - 5.0 - - 682 3019 2 有 o
733 66.0 16.5 1 1.5 - 5.0 一 1 .0 229 2777 -1 有 〇
734 64.8 16.2 1 1.5 - 5.0 - 2.5 124 2742 0 有 〇
735 62.8 15.7 1 1.5 - 5.0 - 5.0 104 2784 1 有 〇
736 58.8 14.7 1 1.5 - 5.0 10.0 17 2524 35 無 X
737 64.0 16.0 14.0 - 5.0 - 1.0 43 2600 一 2 有 〇
738 62.8 15.7 14.0 - 5.0 - 2.5 39 2535 1 有 o
739 62.8 15.7 1 1.5 一 10.0 - - 342 2936 4 有 o
740 60.0 15.0 14.0 - 10.0 一 1.0 82 2588 0 有 〇
741 58.8 14.7 14.0 - 10.0 - 2.5 75 2564 2 有 〇
742 56.8 14.2 14.0 - 10.0 - 5.0 91 2888 2 有 〇
743 56.8 14.2 14.0 - 15.0 - - 320 2912 2 有 〇
744 54.8 13.7 14.0 一 15.0 - 2.5 92 2812 -1 有 〇
745 52.8 13.2 14.0 - 15.0 - 5.0 204 3023 1 有 〇
746 66.8 16.7 1 1 .5 - - 5.0 - 157 2759 3 有 〇
747 66.0 16.5 1 1 .5 - - 5.0 1.0 62 2723 -2 有 〇
748 64.8 16.2 1 1.5 - 一 5.0 2.5 49 2695 1 有 〇
749 62.8 15.7 1 1.5 - - 5.0 5.0 45 2598 2 有 〇
750 58.8 14.7 1 1.5 - - 5.0 10.0 14 261 1 29 無 X
751 72.8 18.2 9.0 - - - - 477 3039 4 有 〇
752 68.8 17.2 9.0 - - 5.0 - 331 3080 1 有 〇
753 64.8 16.2 9.0 - - 5.0 5.0 48 2665 3 有 〇
754 60.8 15.2 9.0 - - 5.0 10.0 20 2723 60 無 X
755 64.8 16.2 9.0 - - 10.0 - 156 2866 3 有 〇
756 62.8 15.7 1 1.5 一 - 10.0 - 1 13 2710 4 有 〇
757 64.0 16.0 9.0 - 一 10.0 1.0 93 2792 1 有 〇
758 62.8 15.7 9.0 一 - 10.0 2.5 87 2860 0 有 〇
759 60.8 15.2 9.0 - 一 10.0 5.0 84 2892 2 有 O
760 60.8 15.2 9.0 - - 15.0 - 72 3014 6 有 〇
761 58.8 14.7 9.0 - - 15.0 2.5 54 2837 3 有 o
762 56.8 14.2 9.0 - - 15.0 5.0 50 2750 4 有 〇 17]
突入電
板 電気特性 流印加 組 後の 状 成 Co Cu Al Fe i Ca 25 Β25/50 R25% 結 判 曰
No. atom% atom% atom% atom% atom% atom% Ω οιη Κ 定
763 90/10 70.2 7.8 22.0 - - - 一 312 2512 7 有 O
764 74.7 8.3 17.0 - - - - 237 2732 5 有 〇
765 72.4 8.1 17.0 一 - - 2.5 137 2688 2 有 〇
766 70.2 7.8 17.0 - - 5.0 48 2538 3 有 〇
767 100/0 66.7 - 33.3 - - 一 229 2889 24 無 X
[0162] 表 15〜表 17に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 701— 7 03、 705—723, 725—735, 737〜749、 751— 753, 755〜766では、 (マンガン の含有量)/ (コバルトの含有量)の原子比率が 60/40以上 90/10以下の範囲で 銅を 17原子%以下含み、かつ、 15原子%以下のアルミニウム、 15原子%以下の鉄 、 15原子%以下のニッケルを少なくとも1種含み、さらに、 5原子0 /0以下(0原子0 /0を 除く)のカルシウムを含む場合、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主にマンガン 酸化物からなる板状結晶だけでなぐ高レ、電気抵抗を示す第 3の相としての CaMn
2
Oまたは CaMnO力';、低い電気抵抗を示す母相としての第 1の相中に分散している
4 3
ことが認められるので、第 1の相中における電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破 壊を抑制することができ、耐圧性を高めることができることがわかる。
[0163] (実施例 8B)
実施例 8Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0164] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施列 1Bと同様にして fiつた。表 16中の糸且成 No. 716、 717、 718、 71 9について、積層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、その突入 電流値における電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算出した。 その結果を図 20に示す。
[0165] 図 20力、ら、カノレシゥムを含む糸且成 No. 717、 718、 719は、カノレシゥムを添カロして いない組成 No. 716に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引 き起こさないので、カルシウムを添カロすることにより耐圧性を高めることができ、さらに
カルシウムを添加することによって耐圧性をより高めることができることがわかる。
[0166] (実施例 9A)
まず、焼成後のマンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、ストロン チウム(Sr)、アルミニウム(A1)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)の原子比率(atom%) が表 17に示す所定の値になるように、酸化マンガン(Mn O )、酸化コバルト(Co O
3 4 3 4
)、酸化銅(CuO)、炭酸ストロンチウム(SrCO )、酸化アルミニウム (Al O )、酸化鉄
3 2 3
(Fe O )、酸化ニッケル (NiO)およびを秤量して調合した。その後、実施例 1Aと同
2 3
様にして、グリーンシートを作製した。
[0167] 得られたグリーンシートを用いて、実施例 1Aと同様に積層、圧着、焼成することによ り、本発明の NTCサーミスタ磁器としてのセラミック素体を作製した。以上のように作 製したセラミック素体に、実施例 1Aと同様にして電極を形成し、単板型 NTCサーミス タを得た。
[0168] 以上のようにして作製された単板型 NTCサーミスタの各試料の電気特性、耐圧性 および信頼性を実施例 1Bと同様にして評価した。その結果を表 18に示す。
[0169] [表 18]
突入電
電気特性 流印加 板 組 後の^ d 状 成 Mn/Co Co Cu Al Fe Ni Sr P 25 B25/50
R25% 判
No. 比率 atom% atom% atom% atom% atom% atom% Ω 曰 cm K ββ 定
801 60/40 57.0 38.0 5.0 - - - - 453 3684 6 有 Ο
802 55.8 37.2 7.0 - - - - 1 81 3421 7 有 〇
803 52.8 35.2 7.0 - 一 - 5.0 109 3228 3 有 Ο
804 49.8 33.2 7.0 - 一 - 10.0 121 3304 41 無 X
805 70/30 63.0 27.0 10.0 - - - - 290 3250 7 有 Ο
806 64.8 27.7 7.5 - - - - 604 3407 3 有 Ο
807 60.5 26.0 7.5 - - 5.0 1.0 83 3052 -1 有 Ο
808 59.5 25.5 7.5 一 - 5.0 2.5 83 3010 0 有 〇
809 57.7 24.8 フ.5 一 - 5.0 5.0 67 2966 0 有 〇
810 54.2 23.3 7.5 - 一 5.0 10.0 102 3024 33 無 X
81 1 60.5 26.0 7.5 5.0 - - 1.0 105 3109 -1 有 〇
812 57.7 24.8 7.5 5.0 - - 5.0 89 3004 0 有 〇
813 54.2 23.3 7.5 5.0 - - 10.0 129 3018 41 無 X
814 57.7 24.8 7.5 - 5.0 - 5.0 154 3127 1 有 ο
815 54.2 23.3 7.5 - 5.0 - 10.0 166 3144 53 無 X
816 80/20 66.6 16.7 16.7 - - - - 129 2783 8 有 〇
81 7 70.8 17.7 1 1 .5 - - - - 278 2959 5 有 Ο
818 70.0 17.5 1 1.5 - - 一 1.0 184 2947 2 有 Ο
819 66.8 16.7 1 1 .5 - - - 5.0 1 19 2963 - 2 有 Ο
820 62.8 1 5.7 1 1 .5 - 一 - 10.0 133 3005 26 無 X
821 66.8 16.7 1 1.5 5.0 - 一 - 523 3005 3 有 Ο
822 66.0 16.5 1 1 .5 5.0 ― - 1 .0 322 2820 0 有 〇
823 64.8 16.2 1 1.5 5.0 - - 2.5 231 2803 2 有 Ο
824 62.8 15.7 1 1.5 5.0 - - 5.0 282 2823 1 有 〇
825 58.8 14.7 1 1 .5 5.0 - - 10.0 96 2845 24 無 X
826 58.8 14.7 1 1.5 15.0 - - - 121 2795 2 有 〇
827 54.8 13.フ 1 1 .5 15,0 一 - 5.0 65 2803 -1 有 Ο
828 50.8 12.7 1 1.5 15.0 - - 10.0 74 2855 37 無 X
829 66.8 16.7 1 1 .5 - 5.0 - - 682 3019 2 有 〇
830 62.8 15.7 1 1 .5 一 5.0 - 5.0 364 2929 1 有 〇
831 58.8 14.7 1 1.5 ― 5.0 - 10.0 523 2932 19 無 X
832 56.8 14.2 14.0 - 15.0 - - 320 2912 2 有 ο
833 52.8 13.2 14.0 一 15.0 - 5.0 190 2876 1 有 ο
834 48.8 1 2.2 1 .0 ― 15.0 - 10.0 214 2881 52 無 X
835 66.8 16.7 1 1.5 - - 5.0 - 157 2759 3 有 Ο
836 66.0 16.5 1 1.5 一 - 5.0 1 .0 201 3007 1 有 〇
837 64.8 1 6.2 1 1.5 - ― 5.0 2.5 21 7 3058 -1 有 0
838 62.8 15.7 1 1.5 - ― 5.0 5.0 148 2929 2 有 Ο
839 58.8 14.7 1 1.5 - - 5.0 10.0 121 2689 22 無 X
840 60.8 15.2 9.0 - - 15.0 一 72 3014 6 有 Ο
841 56.8 14.2 9.0 - - 15.0 5.0 41 2982 2 有 Ο
842 52.8 13.2 9.0 ― - 15.0 10.0 52 2994 44 無 X
843 90/10 70.2 7.8 22.0 - - - - 312 2512 7 有 Ο
844 74.7 8.3 17.0 一 ― - - 237 2732 5 有 0
845 70.2 7.8 1 7.0 - - - 5.0 109 2766 3 有 Ο
846 65.7 7.3 17.0 - - - 10.0 127 2745 36 無 X
847 100/0 66.7 - 33.3 - - ― 229 2889 24 無 X 表 18に示すように、 NTCサーミスタの各試料において、組成 No. 801〜803、 80 5〜809、 811、 812、 814、 816-819, 821〜824、 826、 827、 829、 830. 832 、 833、 835〜838、 840、 841、 843〜845では、 (マンガンの含有量) / (コバルト の含有量)の原子比率が 60/40以上 90Z10以下の範囲で銅を 22原子%以下含
み、かつ、 15原子%以下のアルミニウム、 15原子%以下の鉄、 15原子%以下のニッ ケルを少なくとも 1種含み、さらに、 5原子%以下(0原子%を除く)のストロンチウムを 含む場合、高い電気抵抗を示す第 2の相としての主にマンガン酸化物からなる板状 結晶だけでなぐ高い電気抵抗を示す第 3の相としての SrMnO 、低い電気抵抗
3
を示す母相としての第 1の相中に分散していることが認められるので、第 1の相中に おける電流集中を緩和し、熱溶解に起因する破壊を抑制することができ、耐圧性を 高めること力 Sでさること力 Sゎカゝる。
[0171] (実施例 9B)
実施例 9Aで得られたグリーンシートを用いて、実施例 2Bと同様にして、図 3に示す ように積層型の NTCサーミスタを作製した。
[0172] 以上のようにして作製された積層型の NTCサーミスタに突入電流を流して耐圧性 を評価した。突入電流印加後の電気抵抗値の変化の測定と電気抵抗変化率 A R25 の算出は、実施例 1Bと同様にして行った。表 18中の組成 No. 817、 819について、 積層型の NTCサーミスタを作製し、突入電流値を変化させて、その突入電流値にお ける電気抵抗値の変化を測定し、電気抵抗変化率 A R25を算出した。その結果を図 21に示す。
[0173] 図 21から、ストロンチウムを含む組成 No. 819は、ストロンチウムを添加していない 組成 No. 817に対して、相対的に高い突入電流値まで電気抵抗の変化を引き起こ さないので、ストロンチウムを添加することにより耐圧性を高めることができ、さらにスト ロンチウムを添加することによって耐圧性をより高めることができることがわかる。
[0174] 今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なもので はないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではな ぐ請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべて の修正や変形を含むものであることが意図される。
産業上の利用可能性
[0175] この発明は、電源スィッチの ON— OFF時に発生する突入電流を抑制するための NTCサーミスタに好適な NTCサーミスタ磁器と NTCサーミスタに適用することができ 、 NTCサーミスタ磁器の耐圧性を高めることができ、この NTCサーミスタ磁器を用い
て耐圧性の高い突入電流抑制用 NTCサーミスタを実現することができる。