明 細 書
核酸配列の増幅方法
技術分野
[0001] 本発明は、核酸の合成方法として有用な、標的核酸を選択的に増幅する方法およ び該方法による核酸の検出方法に関する。
背景技術
[0002] 標的核酸を増幅する技術は、近年のバイオテクノロジーにおける極めて重要な技 術の 1つであり、生物学、医学、農学、法医学、および考古学などを含む多様な分野 において、基礎研究ならびに応用のために広く用いられている。
[0003] 1. PCR
核酸増幅の最も代表的な技術として、 Polymerase Chain Reaction (PCR)法 力はく知られている(例えば特許文献 1〜3、非特許文献 1)。この方法は、標的とする 2本鎖 DNA領域の両端で、それぞれ別の DNA鎖にハイブリダィズする 2つのオリゴ ヌクレオチドプライマーを用い、 DNAポリメラーゼ活性の作用によって標的配列を in vitroで合成するものである。また、 RNA中の標的配列を増幅するため、 PCRに逆 転写酵素活性を組合せた逆転写 PCR (RT-PCR)法も知られてレ、る(例えば非特 許文献 2)。これは RNAから逆転写反応によって生成された cDNAに対して PCRを 行う方法である。
[0004] これらの PCR法では、錡型となる 2本鎖 DNAの 1本鎖 DNAへの解離 (変性)、 1本 鎖核酸へのプライマーのハイブリダィゼーシヨン (アニーリング)、およびプライマーから の錡型依存的な相補鎖の合成 (伸長)の 3つの段階からなる反応を繰り返すことにより 、 2つのプライマーの 5'端で規定された特定の DNA断片が増幅産物として指数関 数的に蓄積される。よって、 PCR法では、反応溶液を上記 3段階のそれぞれに適し た温度に調節する計 3工程の繰り返し (サーマルサイクル)が必要とされる。
[0005] PCR法の有用な点の 1つとして、 2つのプライマー(一般的にはそれぞれ約 20塩基 前後の長さである)の配列によって標的核酸の増幅範囲が規定されれば、増幅反応 が進行することから、必ずしも標的核酸の配列の全てが既知である必要はないとレ、う
点が挙げられる。このことは、既知の限られた配列情報から、 PCR法によって未知の 核酸配列を得ることを可能にする。これはすなわち、 PCR法が、未知遺伝子のクロー ニングゃ変異遺伝子の取得、次工程で未知配列を分析することを目的とした核酸の 調製法としての使用などを含む、広い分野における様々な目的に利用されてきた理 由の 1つの側面である。
[0006] 最も初期の PCR法では、ァニールしたプライマーの伸長に大腸菌の DNAポリメラ ーゼ Iの Klenow断片が用いられていた。 PCRのサーマルサイクルの 1工程である変 性ステップは 100°Cに近い高温が必要とされ、当該温度では Klenow断片が失活し てしまうため、新しい酵素を各サイクル毎に加える必要があった。このため、当初の P CR法の実施は極めて煩雑な作業を伴った。この問題は、伸長に耐熱性 DNAポリメ ラーゼを用いることによって解決され (例えば特許文献 4および 5、非特許文献 3)、温 度サイクリング装置により反応が自動化されたことによって (例えば特許文献 6)、 PC Rは利用しやすレ、一般的な方法となった。
[0007] このように PCR法の作業の煩雑さは改善されたが、一方で、反応温度と時間を繰り 返し正確に制御する温度サイクリング装置が高価なものになるという問題点が残され た。またサーマルサイクル中には、反応液の温度を多数回にわたって上昇/下降さ せる必要があり、その温度変化に要する時間の繰り返しが、全反応工程終了までの 所要時間を長引かせる原因となっていた。ガラスキヤピラリーを反応容器として用レ、、 反応液量を最小限とし、高速な温度変化を可能とした温度サイクリング装置が開発さ れた (例えば非特許文献 4)。この装置の使用は PCRの所要時間を大きく短縮させた 力、それと引き替えに装置はより高価なものとなった。
[0008] 2. SDA
このような問題を解決するため、等温状態で実施可能な標的核酸の増幅法がいく つか開発されてきた。その 1つとして Strand Displacement Amplification (S DA)法が知られる(例えば特許文献 7および 8、非特許文献 5および 6)。この方法で は、反応に必要な酵素として、 5'→3'ェキソヌクレアーゼ活性を欠損した DNAポリ メラーゼほたは鎖置換型 DNAポリメラーゼ)を用レ、、さらに制限酵素も使用する。 SD Aの反応中、制限酵素は 2本鎖を形成した DNAの一方の鎖を切断して(ニッキング )
、伸長反応の起点となる 3'末端を提供し、鎖置換型 DNAポリメラーゼは該 3'末端を 伸長して、その下流の DNA鎖を置換する。
[0009] SDA法で制限酵素によるニッキングを可能とするためには、プライマーをァニール させた配列に使用する制限酵素認識配列が存在するように、反応をデザインしておく 必要がある。さらに、通常の制限酵素は核酸の 2本の鎖を切断するので、該酵素に 1 本鎖のみを切断させるために、その認識部位は、一方の鎖が酵素消化に耐性を持 つような半修飾された(hemi— modified)部位として提供される必要がある。そのた めには、 DNA合成用の基質として、修飾された dNTP、例えばひ位のリン酸基の酸 素原子が硫黄原子に置換されたひ _ S_dNTPなど、を大量に用いる必要がある。 修飾 dNTPの必要性は、 SDA反応組成のコスト上昇をもたらす。また修飾 dNTPは、 DNAポリメラーゼによって取り込まれる効率が通常の dNTPとは異なる場合がある。
SDA法によって生成した標的の増幅産物は修飾ヌクレオチドを含むため、増幅産物 の次工程での使用(例えば産物を制限酵素処理してその消化の有無や断片長を解 析することや、産物を用いた遺伝子クローニングなど)は制限される。
[0010] 初期の SDA法は約 37〜42°Cの一定の温度で反応が進行するものであった力 バ ックグラウンド反応が起こりやすいなどの問題があった。このような問題を改善するた め、耐熱性酵素を使用し、約 50〜70°Cの一定温度で好適に反応が進行する、いわ ゆる好熱 SDA法が開発された (例えば特許文献 9および 10)。一方で、このことは使 用可能な制限酵素の選択肢を狭めた。 SDA法の利点の 1つは、それが単一温度で 進行するため、高価な温度サイクリング装置の必要性を回避できることである。しかし ながら、 SDA法は長い標的配列の増幅には不向きである。また標的核酸の配列が その内部に SDAで用いる制限酵素の認識配列を含む場合には、 SDAの原理の性 質上、そのような標的配列の増幅は干渉を受ける。この問題は、使用する制限酵素 の種類を変えることで回避できるが、使用可能な制限酵素の選択肢は限られている。 さらに、標的核酸が未知の配列を含む場合には、この問題の発生を予測することは 困難である。
[0011] SDA法の欠点を改善するレ、くつかの方法が開示されている。例えば TspRIのよう な 5'突出末端を生じさせる制限酵素の使用(例えば特許文献 11)や、 N. BstNBI
のようなニッキングエンドヌクレアーゼの使用(例えば特許文献 12)は、修飾ヌクレオ チドの使用に関係する制限から SDAを解放する。し力しながら、このような改良 SDA 法においても、上述の問題点の全てを回避できるわけではない。
[0012] 3. RCA
別の等温標的核酸増幅法として、バタテリオファージなどでみられるローリングサー クル型の DNA複製に類似した反応を利用する Rolling Circle Amplification (R CA)法が公知である(例えば非特許文献 7)。この方法では、鎖置換型 DNAポリメラ ーゼが、環状の錡型核酸上でプライマーを伸長し、铸型の相補鎖が連続的に結合し たコピーを生成させる。また、該生成物に対してさらにプライマーをァニールさせてそ の相補鎖を伸長させることによって、高度な増幅を可能としている。し力、しながら、 RC A法では連続的な相補鎖合成反応のために、環状の铸型核酸が提供される必要が あり、そのためには、例えばリガーゼを用いたライゲーシヨンなどの付加的な工程が 必要となる。また RCA法の増幅産物は、同じ配列からなる領域が繰り返し連続した異 なる長さの核酸断片の混合物となる。よって RCA法によって得られた増幅産物を次 工程に利用するためには、例えば制限酵素によって増幅産物を切断するなどの付カロ 的な工程が必要となる場合がある。このような付加的な工程の必要性は、 RCA法の 汎用性や利便性を制限してレ、る。
[0013] 4. LAMP
別の等温標的核酸増幅法として、 Loop— mediated Isothermal Amplificatio n (LAMP)法が知られる(例えば特許文献 13、非特許文献 8および 9)。この方法で は、標的核酸の末端領域に、配列が自己相補的となるような領域を導入してループ 構造を形成させる。伸長反応の起点となる 3'末端は、このループ構造形成の際の自 己相補的なハイブリダィゼーシヨンよつて、またループ構造形成によって生じた 1本鎖 ループ領域へのプライマーのアニーリングによって提供され、鎖置換型 DNAポリメラ ーゼの働きによって該 3'末端が伸長され、その下流の DNA鎖が置換される。
[0014] ループ構造を介した連鎖的な DNA合成反応を可能とするためには、その起点構 造として、両末端にループ構造を有する、いわゆるダンベル型構造を形成しうる錡型 が提供される必要がある。そのためには、標的の核酸配列の中の 6つの領域を認識
する適切に設計された 4つのプライマーを用いる必要がある。このようなプライマーセ ットの設計は、 PCR用のプライマーセット(2つの領域を認識する 1対のプライマー)の 設計に比べると、格段に複雑性が増す。 LAMP法のためのプライマー設計を、専用 のプライマー設計支援ソフトウェアの助けなしに行うのは極めて煩雑な作業であり、間 違いを起こしやすい。 LAMP法のプライマー設計の複雑性は、該増幅反応の標的に 対する特異性の高さという利点と表裏一体でもある。
[0015] LAMP法の他の主な利点は、それが高価な温度サイクリング装置が不要な単一温 度で進行する反応であることと、増幅効率が極めて高いという点である。しかしながら 、 LAMP法は長い標的配列の増幅に制限がある。一般的に LAMP法の好適な標的 となりうる錡型の長さは、 2つのインナープライマーによって規定される領域として、約 130〜300bp程度である。ただし当該铸型領域の中の、約 80塩基程度はインナー プライマーを設計するために配列が既知でなければならなレ、。また反応効率を向上 させるためにループプライマーを併用する方法 (例えば非特許文献 9)では、当該铸 型領域の中の約 120塩基程度分の配列力 インナープライマーとループプライマー を設計するために既知でなければならない。従って、未知の配列を含む標的核酸を 増幅するための LAMP法の利用は大きく制限されている。さらに LAMP法は短い標 的配列の増幅にも制限がある。標的とする配列の長さが約 120bpよりも短い場合は、 連鎖反応に好適なダンベル構造を形成させることが困難なためである。
[0016] LAMP法によって得られる標的核酸の増幅産物は、同一鎖上で互いに相補的な 配列を持つ繰り返し構造からなる、異なる長さの核酸断片の混合物となる。よって LA MP法によって得られた増幅産物を次工程に利用するためには、例えば制限酵素に よって増幅産物を切断するなどの付加的な工程が必要となる。このような付加的なェ 程の必要性は、 LAMP法の汎用性や利便性を制限してレ、る。
[0017] 5. ICAN
別の等温標的核酸増幅法として、 Isothermal and Chimeric Primer -initiat ed Amplification of Nucleic Acids (ICAN)法が知られる(例えば特許文献 14、非特許文献 10)。この方法では、 DNAで構成される領域と RNAで構成される 領域の両方を含有するキメラプライマーを使用し、リボヌクレアーゼ Hと鎖置換型 DN
Aポリメラーゼの作用によって反応が進行する。該反応において、リボヌクレアーゼ H はキメラプライマーのアニーリングに由来して形成された 2本鎖核酸の DNA/RNAハ イブリツド部分の RNA鎖を切断してニックを生じさせ、伸長反応の起点となる 3'末端 を提供する。一方、鎖置換型 DNAポリメラーゼは提供された 3'末端を伸長し、その 下流の DNA鎖を置換する。 ICAN法も、高価な温度サイクリング装置の必要性を排 除しているという点で、優れた核酸増幅法である。また、キメラプライマーを用いる別 の核酸増幅法として、例えば特許文献 15および 16などの方法も開示されている。
[0018] キメラプライマーを用いる増幅法では、 RNAが DNAに比べて非常に不安定で分 解されやすいという困難に直面する。 RNAを分解する酵素は、生物由来試料ゃヒト の汗、唾液、皮膚、および実験室環境、野外環境中の様々なところに普遍的に存在 し、また熱に対する安定性も高ぐ例えば 121°Cでオートクレープ処理してもその活 性は残る。 RNA分子は、その取扱いおよび保存において、前記のような分解酵素の 汚染から注意深く保護されなければならない。またキメラプライマーの合成は、一般 的な DNAプライマーの合成よりも高いコストが要求されるという問題がある。
[0019] 6. HDAおよび RPA
別の等温標的核酸増幅法として、 Helicase- dependent Amplification (HDA )法が知られる(例えば特許文献 17、非特許文献 11および 12)。この方法は、 DNA ポリメラーゼと DNAヘリカーゼおよびその他のアクセサリータンパク質によって進行さ れる生体内の DNA複製のメカニズムを、試験管内で模倣したものである。 HDA法で は、プライマーの铸型 DNAへのアニーリングとそれに続く DNAポリメラーゼによる伸 長を可能とするために、 DNAヘリカーゼ(例えば UvrD)が 2本鎖 DNAを分離して 1 本鎖の錡型を生成させる。
[0020] また別の等温標的核酸増幅法として、 Recombinase Polymerase Amplificati on (RPA)法が知られる(例えば特許文献 18、非特許文献 13)。この方法では、リコ ンビナーゼ (例えば uvsX)をプライマーと結合させて複合体を形成させる。該複合体 (ヌクレオプロテインプライマー)が、铸型の 2本鎖 DNAに侵入して、プライマーの铸 型へのアニーリングを可能にし、鎖置換型 DNAポリメラーゼが該プライマーを伸長し 、その下流の DNA鎖を置換する。
[0021] HDA法も RPA法も、高価な温度サイクリング装置を必要としないとレ、う点で、優れ た核酸増幅法である。し力しながら HDA法では、ヘリカーゼ活性のためのエネルギ 一供給物質として、 ATPや dATPなどのコファクターが反応中に大量に提供される 必要がある。またさらに、 HDA法において反応を効率的に進行させるためには、 gp 32などの 1本鎖 DNA結合タンパク質(SSB)と、 MutLなどのアクセサリータンパク質 力 ヘリカーゼ活性を支援するために反応組成中に提供されることが必要な場合が ある(例えば非特許文献 11)。一方、 RPA法においても、反応液中にはリコンビナー ゼが機能するためのエネルギー源として大量の ATPが必要であり、加えて、 gp32な どの SSB、 uvsYなどのリコンビナーゼ ローデイング タンパク質(recombinase lo ading protein)、およびポリエチレングリコーノレなどのクラウディング(crowding)剤 の存在が、増幅反応の実現に必須である。さらに、 RPA法では、十分な増幅効率を 実現するためには、 ATP再生系(例えばクレアチンキナーゼとホスホクレアチン)を反 応中に共存させる必要がある(例えば非特許文献 13)。このような付加的な試薬ゃタ ンパク質の必要性は、反応組成を複雑にし、このことは反応の至適化を困難にしたり 、反応のコストを上昇させる原因となる。
[0022] 以上のように、等温状態で実施可能ないくつかの標的核酸増幅法が考案されてお り、それらはいずれも温度サイクリング装置が不要で、 PCR法に比して利点を有して いる。また上に例示した以外にも、レ、くつか標的核酸を等温で増幅する方法が開示 されている。し力 ながらこれらの方法にも、それぞれ一長一短がある。またいくつか の核酸増幅法では、その原理の性質上、プライマーの設計において、 PCR用プライ マーの設計に比してより大きな制約があり、ある種の核酸配列を標的とした場合には 、該配列を好適に増幅するプライマーを設計することが不可能または困難であるとい う場合がある。このような背景のもと、新しい等温標的核酸増幅法の開発が求められ ていた。
[0023] 特許文献 1 :特許第 2093730号明細書
特許文献 2:特許第 2093731号明細書
特許文献 3:特許第 2622327号明細書
特許文献 4 :特許第 1814713号明細書
特許文献 5:特許第 2502041号明細書
特許文献 6 :特許第 2613877号明細書
特許文献 7:米国特許第 5455166号明細書
特許文献 8 :米国特許第 5712124号明細書
特許文献 9:米国特許第 5648211号明細書
特許文献 10:米国特許第 5744311号明細書
特許文献 11 :国際公開第 99/09211号パンフレット
特許文献 12:国際公開第 01/94544号パンフレット
特許文献 13:国際公開第 00/28082号パンフレット
特許文献 14:国際公開第 00/56877号パンフレット
特許文献 15:米国特許第 5916777号明細書
特許文献 16 :国際公開第 97/04126号パンフレット
特許文献 17:国際公開第 04/027025号パンフレット
特許文献 18 :国際公開第 05/118853号パンフレット
非特許文献 l : Saiki RK, Scharf S, Faloona F, Mullis KB, Horn GT, Erlich HA, Arnh eim N: Enzymatic amplification of β - globin genomic sequences and restriction site analysis for diagnosis of sickle cell anemia. Science, 230, p.1350-1354 (1985) 非特許文献 2 :木下朝博、下遠野邦忠: PCR法による RNAの解析、蛋白質核酸酵素 、 35、 p.2992-3002 (1990)
非特許文献 3 : Saiki RK, Gelfand DH, Stoffel S, Scharf SJ, Higuchi R, Horn GT, Mulli s KB, Erlich HA: Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermosta ble DNA polymerase. Science, 29, p.487-491 (1989)
非特許文献 4 : Wittwer CT, Ririe KM, Andrew RV, David DA, Gundry RA, Balis UJ: The LightCycler, a microvolume multisample fluorimeter with rapid temperature con trol. Biotechniques, 22, p.176—181 (1997)
非特許文献 5 : Walker GT, Little MC, Nadeau JG, Shank DD: Isothermal in vitro am plification of DNA by a restriction enzyme/DNA polymerase system. Proc Natl Acad Sci USA, 89, p.392-396 (1992)
非特許文献 6 : Walker GT, Fraiser MS, Schram JL, Little MC, Nadeau JG, Malinows ki DP: Strand displacement amplification― an isothermal, in vitro DNA amplification technique. Nucleic Acids Res, 20, p.1691— 1696 (1992)
非特許文献 7 : Lizardi PM, Huang X, Zhu Z, Bray-Ward P, Thomas DC, Ward DC: Mutation detection and single-molecule counting using isothermal rolling-circle amp lification. Nat Genet, 19, p.225—232 (1998)
非特許文献 8 : Notomi T, Okayama H, Masubuchi H, Yonekawa T, Watanabe K, Ami no N, Hase T: Loop-mediated isothermal amplification of DNA. Nucleic Acids Res, 28, E63, (2000)
非特許文献 9: Nagamine K, Hase Τ, Notomi Τ: Accelerated reaction by loop-media ted isothermal amplification using loop primers. Mol Cell Probes, 16, p.223-229 (20 02)
非特許文献 10 :窵田雅光、 日野文嗣、佐川裕章、向井博之、浅田起代蔵、加藤郁之 進:等温遺伝子増幅法 (ICAN)による結核菌検出試薬の開発、臨床病理、 50、 p.528 -532 (2002)
非特午文献 11: Vincent M, Xu Y, Kong H: Helicase-dependent isothermal DNA am plification. EMBO Rep, 5, p.795-800 (2004)
非特許文献 12 : An L, Tang W, Ranalli TA, Kim HJ, Wytiaz J, Kong H: Characteriz ation of a thermostaole UvrD helicase and its participation in helicase-dependent am plification. J Biol Chem, 280, p.28952-28958 (2005)
非特許文献 13 : P penburg O, Williams CH, Stemple DL, Armes NA: DNA detectio n using recombination proteins. PLoS Biol, 4, e204 (2006)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0024] 本発明の課題は、核酸の合成方法として有用な、標的核酸を選択的に増幅する方 法および該方法による核酸の検出方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0025] 本発明者らは、鋭意検討した結果、エンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩基
を含有するオリゴヌクレオチドプライマー、エンドヌクレア一ゼ 、および鎖置換活性を 有する DNAポリメラーゼの存在下において、標的とする核酸配列領域の DNAを合 成する方法を見出し、核酸の増幅反応系を構築し、本発明を完成するに至った。な お本発明の方法は、エンドヌクレアーゼ Vの核酸切断活性に依存した核酸増幅方法 であり、本明細書中で EVA (Endonuclease V- dependent Amplification)法 と呼ぶ場合がある。
すなわち、本願は以下の発明を提供するものである。
1.以下の工程 (I)および (II)を含む、核酸配列の増幅方法。
(I)少なくとも以下を含有する反応混合物を調製する工程
G)铸型核酸
(ii)デォキシリボヌクレオチド 3リン酸
(iii)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼ
(iv)エンドヌクレアーゼ V
(V)少なくとも 1種類のプライマー(ここで該プライマーは、铸型核酸の塩基配列に実 質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩 基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライマーである。 )
(II)工程 (I)で調製された反応混合物を、以下の反応が行える温度条件で増幅産物 を生成するのに充分な時間インキュベートする工程
G)プライマーの铸型核酸への特異的なアニーリング
(ii) DNAポリメラーゼによる伸長鎖合成反応および鎖置換反応
(iii)エンドヌクレアーゼ Vによる塩基 Xを含む核酸鎖中の塩基 Xの認識および該塩 基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジエステル結合の切断反応
2.反応混合物中に少なくとも 2種類のプライマーが含まれる、前項 1に記載の核酸配 列の増幅方法。
3.以下の工程(a)〜(f)を含む、前項 1または 2に記載の核酸配列の増幅方法 [ここ で工程 (c)〜(f)は連続的に反復される。 ]。
(a)少なくとも 1種類のプライマーを铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで該プラ イマ一は、铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌ
クレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチド プライマーである)
(b) DNAポリメラーゼによって、工程(a)で铸型核酸にアニーリングさせたプライマー から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させるェ 程
(c)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (b)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジ エステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3 '末端を提供するェ 程
(d)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (c)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(e)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程(d)で生成された 2本鎖核酸のプライマー伸 長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3,側)に位置するホスホジエステ ル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供する工程
(f)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程(e)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
4.以下の工程(a)〜(l)を含む、前項:!〜 3のいずれか 1項に記載の核酸配列の増 幅方法 [ここで工程 (c)〜(f)、および工程 (i)〜(l)は連続的に反復される。 ]。
(a)少なくとも 1種類の第 1のプライマーを铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで 該プライマーは、錡型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつ エンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌタレ ォチドプライマ一である)
(b) DNAポリメラーゼによって、工程 (a)で錡型核酸にアニーリングさせた第 1のブラ イマ一から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成さ せる工程
(c)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (b)で生成された 2本鎖核酸における第 1の
プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(d)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (c)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(e)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程(d)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(f)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程(e)で新たに提供された第 1のプライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(g)工程 (d)または (f)で鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、少なくとも 1種 類の第 2のプライマーを該铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで該プライマーは 、該铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレア ーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライ マーである)
(h) DNAポリメラーゼによって、工程 (g)で铸型核酸にアニーリングさせた第 2のブラ イマ一鎖から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成 させる工程
(i)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (f )で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
0)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (i)で第 2のプライマー伸長 鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(k)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (j)で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
(1)工程 (k)でプライマー伸長鎖に新たに提供された 3'末端から、鎖置換活性を有 する DNAポリメラーゼによって、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成によ る 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
5.さらに以下の工程 (m)〜(y)を含む、前項 4に記載の核酸配列の増幅方法 [ここ で工程 (m)〜(y)は連続的に反復される。 ]。
(m)工程 (j)または (1)で鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、工程 (a)に記 載の第 1のプライマーを該錡型核酸にアニーリングさせる工程
(n) DNAポリメラーゼによって、工程 (m)で錡型核酸にアニーリングした第 1のプライ マーから、铸型核酸に相補的な伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させる工程 (o)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (n)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(P)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (o)で第 1のプライマー伸 長鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合 成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(q)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (p)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(r)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (q)で第 1のプライマー伸 長鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合 成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(s)工程 (p)または ωで鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、工程 (g)に記
載の第 2のプライマーを該铸型核酸にアニーリングさせる工程
(t) DNAポリメラーゼによって、工程 (s)で铸型核酸にアニーリングした第 2のプライ マーから、铸型核酸に相補的な伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させる工程
(u)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (t)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジ エステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3 '末端を提供するェ 程
(V)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (u)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(w)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (V)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジ エステル結合を切断することによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供するェ 程
(X)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (w)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(y)工程 (V)または (X)で鎖置換によって遊離した核酸力 铸型核酸として工程 (m) に利用される工程
6.以下の (i)〜(iii)のいずれ力 2または 3が同一の铸型核酸分子上で行われる、前項 :!〜 5のいずれ力 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
(i)プライマーの铸型核酸への特異的なアニーリング
(ii) DNAポリメラーゼによる伸長鎖合成反応および鎖置換反応
(iii)エンドヌクレアーゼ Vによる塩基 Xを含む核酸鎖中の塩基 Xの認識および該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジエステル結合の切断反応
7.鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによる、第 1のプライマー鎖の 3'末端から の錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成、および第 2のプライマー鎖の 3'末 端からの铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成が、同一铸型核酸分子上で
互いに向かい合う方向で行われる、前項 4または 5に記載の核酸配列の増幅方法。
8.铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成が铸型交換反応を伴う、前項 7に 記載の核酸配列の増幅方法。
9.各工程が等温で行われる、前項:!〜 8のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅 方法。
10.铸型核酸が、 1本鎖 DNA、 2本鎖 DNAまたは部分的に 1本鎖領域を有する 2本 鎖 DNAである、前項:!〜 9のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
11.铸型核酸が 2本鎖 DNAであり、 2本鎖 DNAを 1本鎖 DNAにする工程の後に実 施される、前項 10に記載の核酸配列の増幅方法。
12. 2本鎖 DNAを 1本鎖 DNAにする工程が熱変性によって行われる、前項 11に記 載の核酸配列の増幅方法。
13.铸型核酸カ;!^!八を錡型とする逆転写反応によって得られた cDNAである、前 項 10〜: 12のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
14. RNAを铸型とする逆転写反応によって cDNAを合成する工程の後に実施され る、前項 13に記載の核酸配列の増幅方法。
15.逆転写酵素活性を有する DNAポリメラーゼを逆転写酵素として逆転写反応に 使用する、前項 13または 14に記載の核酸配列の増幅方法。
16.铸型核酸中の増幅する領域かつプライマーがアニーリングしない領域に、 1塩 基以上からなる未知の塩基配列領域が含まれる、前項:!〜 15のいずれか 1項に記載 の方法による未知の核酸配列の増幅方法。
17.反応混合物中に融解温度調整試薬が含まれる、前項 1〜: 16のいずれ力 1項に 記載の核酸配列の増幅方法。
18.融解温度調整試薬がベタインである、前項 17に記載の核酸配列の増幅方法。
19.反応混合物中に 1本鎖核酸安定化剤が含まれる、前項:!〜 18のいずれか 1項に 記載の核酸配列の増幅方法。
20.反応混合物に塩基 Xを含有するプライマーがアニーリングする領域より上流側( 5'側)の領域にアニーリングするアウタープライマーがさらに含まれる、前項:!〜 19の いずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
21.塩基 Xが、ヒポキサンチン、キサンチン、ゥラシル、ォキサニンおよび APサイト(a purinic/apyrimidinic siteまたは abasic site)からなる群より選択されるものであ る、前項 1〜20のいずれ力 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
22.塩基 Xがヒポキサンチンまたはゥラシルである、前項 21に記載の核酸配列の増 幅方法。
23.塩基 Xの 5'側に隣接する塩基がアデニンまたはチミンである、前項:!〜 22のい ずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
24.塩基 Xの 3'側に隣接する塩基がアデニンまたはチミンである、前項:!〜 23のい ずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
25.プライマーにおいて塩基 Xより下流側(3'側)の塩基が存在しなレ、か、またはブラ イマ一の塩基 Xより下流側(3'側)の塩基数が:!〜 50塩基である、前項 1〜24のいず れか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
26.プライマーにぉレ、て塩基 Xより上流側(5'側)の塩基数が 10〜: 100塩基である、 前項:!〜 25のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
27.プライマーに 1以上のヌクレアーゼ耐性を示す修飾ヌクレオチドが含まれる、前 項:!〜 26のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
28.プライマーの塩基 Xの上流側(5Ί則)の全ヌクレオチド中のヌクレアーゼ耐性を 示す修飾ヌクレオチドの含有量が 60%以下である前項 27に記載の核酸配列の増幅 方法。
29.修飾ヌクレオチドが、ヌクレオチドの α位のリン原子に結合している酸素原子が 硫黄原子に置換された(α — S)ヌクレオチドである、前項 27または 28に記載の核酸 配列の増幅方法。
30.鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼ力 大腸菌由来の DNAポリメラーゼ Iのク レノウ断片、バタテリオファージ Φ 29由来の phi29 DNAポリメラーゼ、バチルス ス テアロサーモフィラス (Bacillus stearothermophilus)由来の 5'→3'ェキソヌクレ ァーゼ欠損 Bst DNAポリメラーゼおよびバチルス カルドテナックス (Bacillus cal dotenax)由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bca DNAポリメラーゼのいずれか 1である、前項 1〜 29のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
31.エンドヌクレアーゼ V力 非特異的な核酸切断活性を示さず、かつ、特異的な核 酸切断活性を示す変異型の特異的エンドヌクレアーゼ Vである、前項:!〜 30のいず れか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
32.特異的な核酸切断活性がデォキシイノシン特異的な核酸切断活性である、前項 31に記載の核酸配列の増幅方法。
33.変異型の特異的エンドヌクレアーゼ V力 野生型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸 配列における、
(a) 80位のアミノ酸、またはサーモトガ'マリチマ (Thermotoga maritima)エンドヌ クレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸力 他のアミノ酸 Zに変異されており、かつ
1
(b) 105位のアミノ酸、またはサーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配 列における 105位と同等位置のアミノ酸力 他のアミノ酸 Zに変異されている、前項 3
2
1または 32に記載の核酸配列の増幅方法。
34.アミノ酸 Zがァラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フエ二ルァラニン およびメチォニンのいずれか 1である前項 33に記載の核酸配列の増幅方法。
35.アミノ酸 Zがァラニン、グノレタミン酸、ァスパラギン、グノレタミン、アルギニン、ダリ
2
シン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンのいずれ力 1である、前項 33または 34に記 載の核酸配列の増幅方法。
36.アミノ酸 Zおよび Zがともにァラニンである、前項 33〜35のいずれか 1項に記載
1 2
の核酸配列の増幅方法。
37.野生型エンドヌクレアーゼ Vが好熱性細菌または好熱性古細菌由来である、前 項 33〜 36のいずれ力 4項に記載の核酸配列の増幅方法。
38.野生型エンドヌクレアーゼ Vがサーモトガ.マリチマ由来である、前項 33〜37の いずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
39.野生型エンドヌクレアーゼ Vが配列番号 1に示すアミノ酸配列を有する、前項 33 〜38のいずれ力 4項に記載の核酸配列の増幅方法。
40.エンドヌクレアーゼ Vが耐熱性を有する、前項 3:!〜 39のいずれか 1項に記載の 核酸配列の増幅方法。
41.変異型の特異的エンドヌクレアーゼ Vが配列番号 2に示すアミノ酸配列を有する 、前項 31〜 36のレ、ずれ力 1項に記載の核酸配列の増幅方法。
42.試料中の標的核酸を検出するための方法であって、前項 1〜41のいずれ力 1項 に記載の核酸配列の増幅方法により標的核酸を増幅する工程、該工程により増幅産 物が生成したか否かを検知する工程を含む、標的核酸の検出方法。
43.核酸の検出剤存在下で前項:!〜 41のいずれか 1項に記載の核酸配列の増幅方 法により標的核酸を増幅する工程、該工程により増幅産物が生成したか否かを検出 剤由来のシグナル変化に基づいて検知する工程を含む、前項 42に記載の標的核酸 の検出方法。
44.エンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼの使用を指示する 指示書を記録した媒体を含んでなる、前項 1〜41のいずれ力、 1項に記載の核酸配列 の増幅方法に使用される、核酸増幅用試薬キット。
45.少なくともエンドヌクレア一ゼ 、または少なくともエンドヌクレアーゼ Vと鎖置換 活性を有する DNAポリメラーゼを含有する、前項 44に記載の核酸増幅キット。
46.エンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼの使用を指示する 指示書を記録した媒体を含んでなる、前項 42または 43に記載の標的核酸の検出方 法に使用される、核酸検出用試薬キット。
47.少なくともエンドヌクレア一ゼ 、または少なくともエンドヌクレアーゼ Vと鎖置換 活性を有する DNAポリメラーゼを含有する、前項 46に記載の核酸検出用試薬キット
48.エンドヌクレアーゼ Vが変異型エンドヌクレアーゼ Vである前項 44〜47のいずれ 力、 1項に記載の核酸増幅用試薬キット。
発明の効果
[0027] 本発明の核酸増幅方法によれば、高価な温度サイクリング装置が不要な等温反応 条件の下で核酸の合成と増幅を達成することができる。また、本発明の核酸増幅方 法に使用するプライマーは、その設計上の制約が少ないという利点がある。
[0028] また、本発明の核酸増幅方法によれば、 DNA合成用の基質として、コスト高につな 力 ¾修飾 dNTP (例えば α— S— dNTPなど)を大量に用いる必要がなレ、。また、修
飾ヌクレオチドを多量に含む核酸断片や、標的配列が何度も繰り返した異なる長さの 核酸断片の混合物とレ、つた、次工程での利用に制約のあるような増幅産物を与えな レ、、という利点がある。また、本発明の核酸増幅方法によれば、標的配列中に特定の 制限酵素認識部位が存在するか否かに依存しないで、任意の配列領域を標的とす ること力 Sできる。
[0029] さらに、本発明の核酸増幅方法において、環状の铸型核酸を調製するための付加 的な前工程は必須ではなぐまたある 1つの標的配列の増幅を達成するのに多数の 領域に対して複雑かつ制約の多いプライマー配列の設計をするような必要がない。 また、本発明の核酸増幅方法によれば、不安定で分解されやすい RNA成分をブラ イマ一分子中に含有せしめる必要がない。また、本発明の核酸増幅方法によれば、 反応に酵素活性のためのエネルギー供給物質としての ATPや dATPなどのコファタ ターを反応中に大量に存在させる必要がなく、また反応中に ATP再生系を共存させ る必要がない。
図面の簡単な説明
[0030] [図 1]本発明の一態様である、少なくとも 1つのプライマーを用いる核酸配列の増幅方 法を説明するための模式図を示す。
[図 2]本発明の一態様である、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる核酸配列 の増幅方法を説明するための模式図を示す。
[図 3]本発明の一態様である、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる核酸配列 の増幅方法を説明するための模式図を示す。
[図 4]本発明の一態様である、プライマーの錡型核酸への特異的なアニーリング、 D NAポリメラーゼによる伸長鎖合成反応若しくは鎖置換反応およびエンドヌクレア一 ゼ Vによるホスホジエステル結合の切断反応のレ、ずれか 2または 3が、同一の錡型核 酸上で行われる核酸配列の増幅方法を説明するための模式図を示す。
[図 5]本発明の核酸の増幅方法の一態様における铸型交換反応を説明するための 模式図を示す。
[図 6]本発明に使用する塩基 Xおよび塩基 Xを有するヌクレオチド残基(デォキシリボ ヌクレオチドの場合)の例を示す図である。
[図 7]線状 DNA断片を铸型として、本発明の核酸増幅方法により得られた増幅産物 のァガロース電気泳動像を示す図である。
[図 8]本発明の核酸増幅方法により得られた増幅産物の制限酵素消化物のァガロー スゲル電気泳動像を示す図である。
[図 9]環状プラスミド DNAを錡型として、本発明の核酸増幅方法により得られた増幅 産物のァガロース電気泳動像を示す図である。
[図 10]環状プラスミド DNAを錡型として、本発明の核酸増幅方法により得られた増幅 産物のァガロース電気泳動像を示す図である。
[図 11]環状プラスミド DNAを錡型として、本発明の核酸増幅方法により得られた増幅 産物のァガロース電気泳動像を示す図である。
[図 12]铸型の熱変性段階を含む本発明の核酸増幅方法により得られた増幅産物の ァガロースゲル電気泳動の写真を示す。
[図 13]本発明の核酸増幅方法による増幅産物の制限酵素消化物のァガロースゲル 電気泳動像を示す図である。
[図 14]本発明の核酸増幅方法における反応組成の必須成分を検討し、ァガロース電 気泳動像により解析した結果を示す図である。
[図 15]1種類のプライマーを用いて、本発明の核酸増幅方法により得られた増幅産 物のァガロース電気泳動像を示す図である。
[図 16]本発明の方法により増幅された増幅産物をァガロース電気泳動像により解析 した結果を示す図である。
[図 17]本発明の方法により増幅された増幅産物をァガロース電気泳動像により解析 した結果を示す図である。
[図 18]本発明の方法により増幅された増幅産物をァガロース電気泳動像により解析 した結果を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0031] 以下に本発明を詳細に説明する。
[0032] 本発明は、「エンドヌクレアーゼ V依存性増幅」(EVA; Endonuclease V— depe ndent Amplification)と呼ぶ新しい増幅方法について記載する。本発明の EVA
ではエンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼの 2種類の酵素の 活性に基づいて反応が進行する。また EVAの反応は、エンドヌクレアーゼ Vによって 認識されうる塩基を少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライマーの存在下で 実施される。
[0033] 本明細書にぉレ、て「エンドヌクレア一ゼ 」とは、国際生化学分子生物学連合 (IUB MB)の酵素命名法において酵素番号 EC 3. 1. 21. 7として分類される酵素を示 す。本酵素はデォキシイノシン 3'エンドヌクレアーゼと呼ばれることもある。また本酵 素は過去の分類において、 EC 3. 1. 22. 3 あるいは EC 3. 1. - . —と記されて いたこともある。なお、バタテリオファージ T4由来の DNA修復酵素である T4エンドヌ クレアーゼ Vは、類似した名前で呼ばれている力 S、これは E. C. 3. 1. 25. 1に分類 される酵素であり、本発明で記述するエンドヌクレアーゼ Vとは異なる活性を有する酵 素である。
[0034] 本明細書にぉレ、て「鎖置換活性」とは、铸型となる核酸の塩基配列に従って新たな 相補鎖の合成を行う場合に、合成の進行方向に存在する既に铸型鎖と 2本鎖を形成 している古い相補鎖を、新生相補鎖に置き換えながら進行して、古い相補鎖を遊離 させること、すなわち「鎖置換」、を行うことができる活性のことをいう。該活性による反 応を「鎖置換反応」といい、該活性を有する DNAポリメラーゼを「鎖置換型」 DNAポ リメラーゼともいう。
[0035] 本明細書における「核酸」とは、 2本鎖または 1本鎖の DNA、 RNA分子を表し、さら に DNA/RNAハイブリッドも表す。「2本鎖」とは、全体または一部が 2本鎖であるよう な核酸分子のことをいう。 2本鎖核酸分子は、ニックが入ったもの、無傷(intact)のも ののいずれであってもよレ、。 2本鎖は、平滑末端を持つものであってもよいし、 1本鎖 ティル部分を有していてもよレ、。 1本鎖核酸分子は、ヘアピンやループおよびステム の形状の二次構造を有してレ、てもよレ、。
[0036] 本発明に使用する核酸は、どのような供給源力 調製または分離されたものでもよ ぐ例えば、環境資源、食物、農産物、発酵物、生体の体液や組織、または細胞ゃゥ ィルスなどの供給源から単離したものであってよレ、。生体の体液や組織とは、例えば 、血液、乳、脳脊髄液、痰、唾液、便、肺吸引液、粘膜組織や組織試料のスヮブなど
が含まれる。核酸試料は、染色体 DNA、プラスミド DNAを含む染色体外 DNA、組 換え DNA、 DNA断片、メッセンジャー RNA、トランスファー RNA、リボソーム RNA、 2本鎖 RNA、または細胞やウィルス内に見られる他の RNAのいずれかを含む。
[0037] また、本発明に使用する核酸は、単離したものでも、クローユングしたものでも、また は化学的手法によって合成したものでもよレ、。上述の核酸のいずれかが、その核酸 内の個々のヌクレオチドに化学的な変化 (例えばメチル化)といった修飾を受けたも のでもよレ、。該修飾は、 自然に起こるものであっても、 in vitro合成によって起こるも のであってもよい。
[0038] 本明細書において「実質的に相補的な」塩基配列とは、使用される反応条件にお いて錡型となる DNAにアニーリングすることのできる塩基配列を意味する。すなわち 、実質的に相補的な塩基配列とは、対象となる塩基配列領域の全体に対して少数の 非相補的な部分を有してもよいことを意味し、好ましくは、完全に相補的である力、 1個 〜数個の非相補的な塩基を有するものである。
[0039] 本明細書において「3'末端側」および「3Ί則」とは、核酸鎖中のある領域もしくは位 置から^→3 'の方向に見た場合に、該核酸鎖の 3'末端に近い側あるいは方向を指 す。また、核酸鎖の全体から見た場合には、該核酸鎖の中央より 3'末端にかけての 部分あるいは方向を指す。同義の用語として「下流側」も用いる。
[0040] 本明細書において「^末端側」および「5Ί則」とは、核酸鎖中のある領域もしくは位 置から^→3 'の方向に見た場合に、該核酸鎖の^末端に近い側あるいは方向を指 す。また、核酸鎖の全体から見た場合には、該核酸鎖の中央より^末端にかけての 部分あるいは方向を指す。同義の用語として「上流側」も用いる。
[0041] 本明細書にぉレ、て、酵素が「活性を示す」とは、ある特定のまたはある特定の範囲 内の反応組成および反応条件の下で酵素が作用しうることを含み、また当該反応組 成および反応条件の下においてのみ酵素が作用しうることも含む。これには至適な 反応組成および反応条件の下において酵素が作用しうることも含まれる。
[0042] 本明細書において、酵素が「活性を示さない」とは、酵素に完全に活性が無いこと のみに限定されるものではなぐ使用される条件の下で活性が検出されないこと、あ るいは実質的に無視できるほど活性が小さいことも含まれる。
[0043] 1.本発明の核酸配列の増幅方法
本発明は「エンドヌクレアーゼ V依存性増幅」(EVA)と呼ぶ本発明の増幅方法を提 供する。 EVAではエンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼの 2 種類の酵素の活性に基づいて反応が進行する。また、 EVAの反応は、エンドヌクレ ァーゼ Vによって認識されうる塩基を少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライ マーの存在下で実施される。
[0044] エンドヌクレアーゼ V[EC 3. 1. 21. 7]は、デォキシイノシン 3'エンドヌクレアーゼ とも呼ばれ、 DNA鎖中のデォキシイノシンの塩基(ヒポキサンチン)を認識し、その近 傍のホスホジエステル結合(主には認識塩基の 3'側の第 2番目のホスホジエステル 結合)を加水分解する酵素である。
[0045] また、エンドヌクレアーゼ Vはこのデォキシイノシン特異的な切断活性に加えて、 D NA鎖中のデォキシゥリジンの塩基(ゥラシル)、デォキシキサントシンの塩基(キサン チン)、デォキシォキサノシンの塩基 (ォキサニン)、および APサイト(apurinic/apyr imidinic siteまたは abasic site)などを認識して DNA鎖を切断する活性も有して いる。
[0046] さらに、エンドヌクレアーゼ Vは、塩基のミスマッチ、塩基の挿入/欠損、フラップ構 造、偽 Y構造(pseudo—Y structure)などを含む多様な DNA構造を認識して DN A鎖を切断する活性も有している。エンドヌクレアーゼ Vあるいはそれをコードする遺 伝子は、多くの生物種において見出され、あるいは単離されており、特に Escherichi a coliおよび Thermotoga maritima由来のものについては、その性質が比較的 良く調べられている。
[0047] 上記のようなエンドヌクレアーゼ Vの性質については、例えば下記の文献 [ 1]〜[ 1 1]に詳しく述べられている。
[ 1 ] Yao M, Hatanet L, Melamede RJ, Kow YW: Purification and characterization of a novel deoxyinosine-specific enzyme, deoxyinosine 3 ' endonuclease, from Escheric hia coli. J Biol Chem, 269, p.16260-8 (1994).
[2] Yao M, Kow YW: Strand-specific cleavage of mismatch-containing DNA by deo xyinosine 3 ' -endonuclease from Escherichia coli. J Biol Chem, 269, p.31390-6 (199
4).
[3] Yao M, Kow YW: Interaction of deoxyinosine 3 ' -endonuclease from Escherichi a coli with DNA containing deoxyinosine. J Biol Chem, 270, p.28609-16 (1995).
[4] Yao M, Kow YW: Cleavage of insertion/ deletion mismatches, flap and pseudo -
Y DNA structures by deoxyinosine 3 '—endonuclease from Escherichia coli. J Biol Ch em, 271, p.30672-6 (1996).
[5] Yao M, Kow YW: Further characterization of Eschericnia coli endonuclease V. Mechanism of recognition for deoxyinosine, deoxyuridine, and base mismatches in D NA. J Biol Chem, 272, p.30774-9 (1997).
[6] Zvonimir Siljkovic: Crystal structure of the DNA repair enzyme endonuclease V from Thermotoga maritima. Master's Thesis, Purdue University, Thesis p.46615 MS (2000).
[7] Huang J, Lu J, Bar any F, Cao W: Multiple cleavage activities of endonuclease
V from Thermotoga maritima: recognition and strand nicking mechanism. Biochemist ry, 40, p.8738-48. (2001).
[8] Huang J, Lu J, Bar any F, Cao W: Mutational analysis of endonuclease V from T hermotoga maritima. Biochemistry, 41, .8342-50 (2002).
[9] Liu J, He B, Qing H, Kow YW: A deoxyinosine specific endonuclease from hype rthermophile, Archaeoglobus fulgidus: a homolog of Escherichia coli endonuclease V . Mutat Res, 461, p.169-77 (2000).
[10] HitchcocK Μ, Gao H, Cao W: Cleavage of deoxyoxanosine-containing oligod eoxyribonucleotides by bacterial endonuclease V. Nucleic Acids Res, 32, p.4071-80 (2004).
[11] Feng H, Klutz AM, Cao W: Active Site Plasticity of Endonuclease V from Sal monella typhimurium. Biochemistry, 44, p.675- 83 (2005).
本発明の核酸増幅方法を好ましく実施するには、反応に必要な物質が含まれる反 応混合物を調製する工程と、該反応混合物を増幅産物を生成するのに充分な時間 インキュベートする工程とを、実施すればよい。すなわち、本発明の好ましい 1実施形
態は、以下の(I)と(II)の 2つの工程を包含することによりなる核酸配列の増幅方法で ある;
(I)少なくとも以下を含有する反応混合物を調製する工程
G)铸型核酸
(ii)デォキシリボヌクレオチド 3リン酸
(iii)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼ
(iv)エンドヌクレアーゼ V
(V)少なくとも 1種類のプライマー(ここで該プライマーは、铸型核酸の塩基配列に実 質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩 基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライマーである)
(II)工程 (I)で調製された反応混合物を、以下の反応が行える温度条件で増幅産物 を生成するのに充分な時間インキュベートする工程
G)プライマーの铸型核酸への特異的なアニーリング
(ii) DNAポリメラーゼによる伸長鎖合成反応および鎖置換反応
(iii)エンドヌクレアーゼ Vによる塩基 Xを含む核酸鎖中の塩基 Xの認識および該塩 基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホスホジエステル結合の切断反応。
[0049] また、本発明の 1つの好ましい実施形態は、前記反応混合物中のプライマーが少 なくとも 2種類のプライマーであることを特徴とする方法である。
[0050] 以下に本発明の核酸増幅方法によって核酸が増幅される反応の様式の例につい て、理解を助けるための模式図をもって説明する。なお本発明はこれらの様式によつ て限定されるものではない。
[0051] (1)実施形態 1 :少なくとも 1つのプライマーを用いる場合
本発明の好ましい 1実施形態は、以下の工程 (a)〜(f)を含む核酸増幅方法である
[ここで工程 (c)〜(f)は連続的に反復される。 ]。
(a)少なくとも 1種類のプライマーを铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで該プラ イマ一は、铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌ クレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチド プライマーである)
(b) DNAポリメラーゼによって、工程(a)で铸型核酸にアニーリングさせたプライマー から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させるェ 程
(c)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (b)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジ エステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3 '末端を提供するェ 程
(d)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (c)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(e)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程(d)で生成された 2本鎖核酸のプライマー伸 長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジエステ ル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供する工程
(f)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程(e)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
[0052] 本実施形態の反応様式を説明するための模式図の一例を図 1に表す。図 1に示し たように、本実施形態の核酸増幅反応の進行に伴い、プライマーを起点とした核酸 鎖の合成が繰り返し行われ、標的核酸配列の増幅が達成される。本反応では、ェン ドヌクレアーゼ Vの活性によってプライマー鎖の切断がなされる場合、塩基 Xの下流 側の近傍位置(主には塩基 Xの 3 則の第 2番目のホスホジエステル結合)が切断さ れるため、該切断によって塩基 Xはプライマー鎖中から除去されない。
[0053] 本発明の核酸増幅方法において、エンドヌクレアーゼ Vは塩基 X近傍の相補鎖に 存在するホスホジエステル結合は切断しないことが好ましい。当該エンドヌクレアーゼ Vの能力のため、核酸増幅反応中に DNAポリメラーゼの伸長の起点となる 3'末端を 何度でも提供することが可能となる。このことから、本実施形態では、理論的には錡 型となる核酸少なくとも 1分子から、プライマー少なくとも 1分子を介して、反応時間の 経過に伴って増幅産物が蓄積される。理想的には反応は停止することなく継続され、
実際的には核酸増幅反応中の各種成分 (例えば DNA合成基質など)の濃度低下や 枯渴、酵素の活性の低下または失活などの要因によってやがて停止する。
[0054] PCRや他のレ、くつかの増幅方法では起こり得るプライマーの枯渴は、本発明の核 酸増幅方法では理論的には起こらない。本発明の好ましい実施形態においては、核 酸増幅反応が停止するまで継続する必要は必ずしもなぐ所望する増幅が達成され るのに充分な時間反応を実施すればよい。図 1より、本実施形態においては、増幅 産物が一次関数的に蓄積されることが理解できる。なお図 1には、铸型核酸が 1本鎖 の場合を表したが、実際には錡型核酸は 2本鎖であってもよい。
[0055] (2)実施形態 2:第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる場合
本発明の好ましい 1実施形態は、以下の工程 (a)〜(1)を含む核酸増幅方法である [ここで工程 (c)〜(f)、および工程 (i)〜(l)は連続的に反復される。 ]。
(a)少なくとも 1種類の第 1のプライマーを铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで 該プライマーは、铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつ エンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌタレ ォチドプライマ一である)
(b) DNAポリメラーゼによって、工程(a)で铸型核酸にアニーリングさせた第 1のプラ イマ一から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成さ せる工程
(c)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (b)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(d)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (c)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(e)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程(d)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供
する工程
(f)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程(e)で新たに提供された第 1のプライマー伸長鎖の 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(g)工程 (d)または (f)で鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、少なくとも 1種 類の第 2のプライマーを該錡型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで該プライマーは 、該铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレア ーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライ マーである)
(h) DNAポリメラーゼによって、工程 (g)で錡型核酸にアニーリングさせた第 2のブラ イマ一鎖から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成 させる工程
(i)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (f )で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
0)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (i)で第 2のプライマー伸長 鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(k)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (j)で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
(1)工程 (k)でプライマー伸長鎖に新たに提供された 3'末端から、鎖置換活性を有 する DNAポリメラーゼによって、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成によ る 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
本実施形態の反応様式を説明するための模式図の一例を図 2に表す。図 2に示し たように、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる場合、核酸増幅反応の進行に
ともなって、プライマーを起点とした核酸鎖の合成が繰り返し行われ、標的核酸配列 の増幅が達成される。また、本実施形態では、第 1のプライマーを起点とした核酸鎖 の合成と、第 2のプライマーを起点とした核酸鎖の合成力 それぞれ繰り返し行われ 、標的核酸配列の増幅が達成される。本実施形態では、理論的には铸型核酸少なく とも 1分子から、第 1のプライマー少なくとも 1分子と第 2のプライマー少なくとも 1分子 を介して、反応時間の経過に伴って増幅産物が蓄積される。
[0057] 本実施形態の場合も、理想的には核酸増幅反応は停止することなく継続される。ま た、第 1のプライマーと、第 2のプライマーのいずれについても、理論的には核酸増幅 反応の進行よつてプライマーの枯渴が起こることはない。
[0058] 図 2より、本実施形態では、第 1のプライマーを合成の起点として生じた増幅産物と 、第 2のプライマーを合成の起点として生じた増幅産物は、互いに相補的な核酸配列 を有することが理解できる。従って、核酸増幅反応中にそれらの増幅産物の互いに 相補的な核酸配列が 2本鎖を形成することが可能であることは容易に理解でき、すな わち本実施形態では、増幅産物が 2本鎖核酸として存在し得ることが理解できる。
[0059] (3)実施形態 3:第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる場合
本発明の好ましい 1実施形態は、以下の工程 (a)〜(y)を含む核酸増幅方法である [ここで工程 (c)〜 )、(i)〜(l)、および (m)〜(y)は連続的に反復される。コ。本実 施形態では、第 2のプライマー鎖が伸長される下記工程 (j)および (1)において、鎖置 換反応によって遊離される核酸鎖に、再び第 1のプライマーの核酸配列がァニーリン グ可能である。
(a)少なくとも 1種類の第 1のプライマーを铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで 該プライマーは、錡型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつ エンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌタレ ォチドプライマ一である)
(b) DNAポリメラーゼによって、工程 (a)で錡型核酸にアニーリングさせた第 1のブラ イマ一から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成さ せる工程
(c)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (b)で生成された 2本鎖核酸における第 1の
プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(d)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (c)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(e)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程(d)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(f)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程(e)で新たに提供された第 1のプライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(g)工程 (d)または (f)で鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、少なくとも 1種 類の第 2のプライマーを該铸型核酸にアニーリングさせる工程 (ここで該プライマーは 、該铸型核酸の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレア ーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライ マーである)
(h) DNAポリメラーゼによって、工程 (g)で铸型核酸にアニーリングさせた第 2のブラ イマ一鎖から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成 させる工程
(i)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (f )で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
0)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (i)で第 2のプライマー伸長 鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成 による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(k)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (j)で生成された 2本鎖核酸における第 2のプ ライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホス ホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供す る工程
(1)工程 (k)でプライマー伸長鎖に新たに提供された 3'末端から、鎖置換活性を有 する DNAポリメラーゼによって、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成によ る 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(m)工程 (j)または (1)で鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、工程 (a)に記 載の第 1のプライマーを該錡型核酸にアニーリングさせる工程
(n) DNAポリメラーゼによって、工程 (m)で錡型核酸にアニーリングした第 1のプライ マーから、铸型核酸に相補的な伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させる工程 (o)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (n)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(P)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (o)で第 1のプライマー伸 長鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合 成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(q)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (p)で生成された 2本鎖核酸における第 1の プライマー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3 則)に位置するホ スホジエステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供 する工程
(r)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (q)で第 1のプライマー伸 長鎖に新たに提供された 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合 成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(s)工程 (p)または ωで鎖置換によって遊離した核酸を铸型核酸とし、工程 (g)に記 載の第 2のプライマーを該錡型核酸にアニーリングさせる工程
(t) DNAポリメラーゼによって、工程 (s)で錡型核酸にアニーリングした第 2のプライ
マーから、铸型核酸に相補的な伸長鎖を合成して 2本鎖核酸を生成させる工程 (u)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (t)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3Ί則)に位置するホスホジ エステル結合が切断されることによりプライマー伸長鎖に新しい 3 '末端を提供するェ 程
(V)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (u)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、錡型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による
2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(w)エンドヌクレアーゼ Vによって、工程 (V)で生成された 2本鎖核酸におけるプライ マー伸長鎖中の塩基 Xが認識され、該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジ エステル結合を切断することによりプライマー伸長鎖に新しい 3'末端を提供するェ 程
(X)鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼによって、工程 (w)で新たに提供されたプ ライマー伸長鎖の 3'末端から、铸型核酸に相補的なプライマー伸長鎖の合成による 2本鎖核酸の生成と、鎖置換を行う工程
(y)工程 (V)または (X)で鎖置換によって遊離した核酸力 铸型核酸として工程 (m) に利用される工程
[0060] 本実施形態の反応様式を説明するための模式図の一例を図 3に表す。図 3におい ては、エンドヌクレアーゼ Vおよび鎖置換型 DNAポリメラーゼを表す図形は省略して いる。本実施形態では、先に図 2とともに説明した実施形態と同じ様式の増幅反応( すなわち工程(a)〜(1) )が起こるばかりでなぐさらに付加的な核酸鎖の合成の連鎖 的サイクル (すなわち工程 (m)〜 (y) )がもたらされる。本実施形態による標的核酸配 列の増幅は、理論的には、铸型核酸少なくとも 1分子から、少なくとも 2分子以上の第 1のプライマーと少なくとも 2分子以上の第 2のプライマーのアニーリングを介して達成 されること力 図 3から理解される。
[0061] 本実施形態の場合も、理想的には反応は停止することなく継続される。また、第 1の プライマーと、第 2のプライマーのいずれについても、理論的には反応の進行よつて プライマーの枯渴が起こることはない。さらに、本実施形態においても、第 1のプライ
マーを合成の起点として生じた増幅産物と、第 2のプライマーを合成の起点として生 じた増幅産物は、互いに相補的な核酸配列を有する。従って、反応中にそれらの増 幅産物の互いに相補的な核酸配列が 2本鎖を形成することが可能であり、増幅産物 力 ¾本鎖核酸として存在し得る。
[0062] なお図 2および図 3は、反応様式を簡便に説明する都合上、铸型核酸が 1本鎖の 場合を表したが、実際には錡型核酸は 2本鎖であってもよい。錡型核酸が 2本鎖の場 合には、該 2本鎖を構成する各鎖について、図 2および図 3により説明したような増幅 反応が起こる。すなわち、該 2本鎖の錡型の一方の鎖については、図 2および図 3を 用いて説明したような増幅反応が起こることは既述したとおりだが、該铸型のもう一方 の鎖については、前記の図 2および図 3による説明において、前記第 1のプライマー を新たに第 2のプライマーと読み替え、かつ前記第 2のプライマーを新たに第 1のブラ イマ一と読み替えれば、同じように増幅反応が起こることが理解できる。したがって、 2 種類のプライマーのどちらを第 1のプライマーと見なしてもよぐ 2本鎖の铸型のいず れの鎖において起こる増幅反応も、本発明の核酸増幅方法の実施形態に含まれるも のである。
[0063] 図:!〜 3は、本発明の実施形態の反応様式を簡便に説明する都合上、各工程を段 階的に示した模式図である力 現実の反応においては、各工程が同時多発的に起こ り得ることは自明である。そのような場合の例を模式的に図 4に表した。図 4 (a)は同 ー铸型分子上で、エンドヌクレアーゼ Vによる切断と 2以上の DNAポリメラーゼの伸 長反応が起きている様子を模式的に表したものである。また、図 4 (b)は铸型より置換 されている相補鎖に対して、プライマーのアニーリング、エンドヌクレアーゼ Vによる切 断、および DNAポリメラーゼによる伸長反応と鎖置換反応が起きてレ、る様子を模式 的に表したものである。本発明の範囲は図 4に示した例に限定されるものではなぐま たここで可能性のある全ての例を示すことはしなレ、が、本発明の好ましい実施形態に おいては、核酸増幅反応中に、プライマーのアニーリング、エンドヌクレアーゼ Vによ る切断、および DNAポリメラーゼによる伸長と鎖置換などの複数の工程の、いずれ かの 2以上の工程が、同一の铸型分子上で起こり得る。
[0064] また、図 2および図 3により示した、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる実
施形態においては、第 1のプライマー鎖を起点とした DNAポリメラーゼによる伸長お よび鎖置換と、第 2のプライマー鎖を起点とした DNAポリメラーゼによる伸長および 鎖置換が、同一铸型分子上で同時あるいはほぼ同時に互いに向かい合う方向で起 こり得る。そのような場合の例を模式的に図 5に示した(なお図 5中、鎖置換型 DNA ポリメラーゼを表す図形は省略してレ、る)。
[0065] 図 5 (a)および (b)は同一铸型分子上で、両側から DNAポリメラーゼによる伸長と 鎖置換が、互いに向かい合う方向に起こっている様子を模式的に表したものである。 このような場合、伸長鎖の合成の途中において、該伸長鎖のそれぞれの铸型からもう 一方の伸長鎖への铸型の交換が行われる、いわゆる「铸型交換反応」 (template s witching reaction)力 ある確率で起こり得る。図 5 (c)は铸型交換反応を模式的 に表し、図 5 (d)は錡型交換反応の後に DNAポリメラーゼによる伸長が進行した様 子を模式的に表す。本発明の 1つの実施形態は、増幅反応中に铸型交換反応を伴 うことを特徴とする核酸配列の増幅方法である。
[0066] 前記「铸型交換反応」とは、 2本鎖核酸の両側からの鎖置換反応による相補鎖の合 成が行われる際に、 DNAポリメラーゼがその铸型を交換し、もう一方の DNAポリメラ ーゼが新規に合成してきた相補鎖をそれぞれ铸型として、以降の相補鎖合成を行う 反応を言う。すなわち、铸型となる 2本鎖核酸をそれぞれのプライマーおよび鎖置換 活性を有する DNAポリメラーゼで処理し、該铸型核酸に相補的な伸長鎖を生成せし める反応において、該伸長鎖を合成中に、 DNAポリメラーゼがプライマー伸長鎖を、 当初の铸型から、他方のプライマー伸長鎖へと能動的に铸型をスイッチングせしめる 反応を言う。ある条件下でこのような反応が起こり得ることは公知であり、例えば国際 公開 02/16639号パンフレットや「革新的な等温遺伝子増幅法 (ICAN法)の開発」 (宝酒造株式会社ニュースリリース、 2000年 9月 25日)などに開示されている。
[0067] 上記のような、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる実施形態では、図 2に 示した反応様式に加えて、さらに付加的な核酸鎖の合成の連鎖的サイクル (すなわ ち工程 (m)〜(y) )が起こり得ること、および Zまたは、図 5に示した錡型交換反応が 起こり得ること、力 好ましい実施形態において指数関数的な増幅産物の蓄積が可 能であることが理解される。また、第 1のプライマーと第 2のプライマーを用いる本発明
の好ましい実施形態においては、主たる増幅産物は、 2つのプライマーが铸型核酸 にァニールする位置に基づいて予測可能な長さの DNA断片となる。
[0068] 以下に本発明に使用される各反応構成物および反応条件について、さらに詳しく 説明する。
[0069] 2.エンドヌクレアーゼ V
本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、どのような生物あるいはウィルス由来の ものであってもよレ、が、例えば細菌由来のものや古細菌由来のものが選択でき、例え は Escnerichia coli^ salmonella typhimurium^ 1 ermotoga marrtima、 T hermus thermophilus^ Thermoplasma acidophilum、 Thermoplasma vole anium、 Aeropyrum pemix、 Pyrococcus abyssi、 Pyrococcus horikoshii、 Sulfolobus tokodaii, Archaeoglobus fulgidus由来のものなどが挙げられる。 また本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、その本来の起源より精製して取得さ れたもの、あるいは遺伝子工学的に生産された組換えタンパク質のいずれであっても よい。
[0070] 本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、広く一般に市販されているものを用いる こと力 Sできる。例えば、 Escherichia coliエンドヌクレアーゼ Vは、 Trevigen社や Ne w England Biolabs社によって巾販 れてレヽる。また、 Tnermotoga mantima エンドヌクレアーゼ Vは Fermentas社によって市販されている。
[0071] V また、本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、遺伝子工学的あるいはその他 の手法によって置換、欠失、付加、挿入等の改変をカ卩えたものであってもよぐこのよ うなエンドヌクレアーゼ Vの例としては特開 2007— 111017号公報に開示された変 異型エンドヌクレアーゼ Vなどがある。
[0072] 本発明におけるエンドヌクレアーゼ Vの「特異的な核酸切断活性」とは、核酸分子に 含まれる特定のヌクレオチドや塩基あるいは特定の構造、例えばデォキシイノシンま たはその塩基(ヒポキサンチン)、デォキシゥリジンまたはその塩基(ゥラシル)、デォキ シキサントシンの塩基(キサンチン)、デォキシォキサノシンの塩基(ォキサニン)、 AP サイト apurinicz apyrimidinic site た fま abasic site)、 のミスマッチ、塩 の揷入 Z欠損、フラップ構造、偽 Y構造(pseudo_Y structure)、あるいは天然の
DNA中に見られる無傷の塩基(アデニン、チミン、グァニン、シトシン)のいずれかの 誘導体またはその誘導体を含むヌクレオチド残基など、を当該酵素が認識し、その認 識部位近傍のホスホジエステル結合を切断する活性を指す。例えば、エンドヌクレア ーゼ Vの「デォキシイノシン特異的な核酸切断活性」と言う場合は、前記の特異的な 核酸切断活性の中の、デォキシイノシンまたはその塩基(ヒポキサンチン)に対する当 該酵素の特異的な認識を伴う核酸切断活性を指す。
[0073] 本発明におけるエンドヌクレアーゼ Vの「非特異的な核酸切断活性」とは、前述の「 特異的な核酸切断活性」に含まれない、当該酵素の核酸切断活性を指す。例えば D NA鎖のランダムニッキング活性などがこれに含まれる。エンドヌクレアーゼ Vのその ような活性は、例えば、国際公開公報 2004/046383号パンフレットに開示されて いる。
[0074] 本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、エンドヌクレアーゼ Vの特異的な核酸切 断活性のうち、少なくとも 1種類の塩基に対する特異的な核酸切断活性を有していれ ばよレ、。例えば、デォキシイノシンの塩基(ヒポキサンチン)、デォキシゥリジンの塩基 (ゥラシル)、デォキシキサントシンの塩基(キサンチン)、デォキシォキサノシンの塩基 ォキサニン)、およ Ό、ΑΡサイト、 apurmic/ apyrimidimc siteまたは abasic site) のうちの、少なくとも 1種類に対する特異的な核酸切断活性を有していればよい。
[0075] 本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vの好ましい特異的活性の例は、デォキシィ ノシン特異的またはデォキシゥリジン特異的な核酸切断活性である。従って、本発明 に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、前記の少なくとも 1種類の特異的な核酸切断活 性を有していれば、それ以外の活性が、遺伝子工学的あるいはその他の手法による 置換、欠失、付加、揷入等の改変によって、あるいは天然の性質として、消失してい るものでもよレ、。
[0076] 本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは、非特異的な核酸切断活性を有していて もよいが、好ましくは、非特異的な核酸切断活性を示さず、かつ特異的な核酸切断 活性を示すエンドヌクレアーゼ Vがよレ、。そのようなエンドヌクレアーゼ Vの例としては 特願 2005— 308533に開示された変異型エンドヌクレアーゼ Vなどがある。本発明 に使用する 1つの好ましい変異型エンドヌクレアーゼ Vの例は、特異的な核酸切断活
性として、デォキシイノシン特異的な核酸切断活性を有する変異型エンドヌクレア一 ゼ Vである。
[0077] また、本発明に使用する特異的エンドヌクレアーゼ Vの好適な例は、野生型エンド ヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列における(a) 80位のアミノ酸またはサーモトガ.マリチマ (Thermotoga maritima)エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸が他 のアミノ酸 Zに変異されており、かつ(b) 105位のアミノ酸またはサーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸が他のアミノ酸 Zに変異されてい
2
ること、を特徴とする変異型の特異的エンドヌクレアーゼ Vである。
[0078] 本発明において、「サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置 のアミノ酸」および「サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置の アミノ酸」とは、本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列を、サーモトガマリチマ エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 IJ (例えば GenBank Accession AA D36927)と比較した場合に、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位およ び 105位のアミノ酸に対応するアミノ酸を意味するものである。
[0079] 前記アミノ酸の位置は、それぞれのエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列と、サーモト ガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列の相同性を比較することによって容 易に求められる。これには、例えば既製のソフトウェア(例えば GENETYX (ソフトゥェ ァ開発社製) )などのアミノ酸配列相同性解析機能などを使用することができる。野生 型エンドヌクレアーゼ Vにおいて、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位 と同等位置のアミノ酸としては例えばチロシン力 サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレ ァーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸としては例えばァスパラギン酸が挙げられる が、これらに限定されるものではない。
[0080] 例えば、 Escherichia coliエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 [J (GenBank Acce ssion AAC76972)においては、サーモトガ 'マリチマエンドヌクレアーゼ Vの 80位 と同等位置のアミノ酸は 75位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレア ーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 100位のァスパラギン酸である。
[0081] 例えば、 Salmonella typhimuriumエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 [J (GenBa nk Accession AAL22996)においては、サーモトガ'マリチマ エンドヌクレア一
ゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 73位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ ェ ンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 98位のァスパラギン酸である。
[0082] 例えば、 Thermus thermophilusエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 lj (GenBank
Accession BAD71170)においては、サーモトガ'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸はのチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 105位のグルタミン酸である。
[0083] 例えば、 Thermoplasma acidophilumエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 !KGen Bank Accession CAC11602)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレア ーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸はサーモトガ.マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 8 0位と同等位置のアミノ酸は 183位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 204位のァスパラギン酸である。
[0084] 例えば、 Thermoplasma volcaniumエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 !KGenB ank Accession NP— 111300)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレア ーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 178位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 199位のトレォニンである。
[0085] 例えば、 Aeropyrum pernixエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 lj (GenBank Ac cession NP— 147286)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 43位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 68位のァスパラギン酸である。
[0086] 例えば、 Pyrococcus abyssiエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 lj (GenBank Ac cession NP— 127057)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 67位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 90位のァスパラギン酸である。
[0087] 例えば、 Pyrococcus horikoshiiエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 [J (GenBank
Accession 〇58394)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 67位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 90位のァスパラギン酸である。
[0088] 例えば、 Sulfolobus tokodaiiエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配歹 (GenBank A
ccession Q974T1)においては、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80 位と同等位置のアミノ酸は 70位のチロシンであり、サーモトガ 'マリチマ エンドヌクレ ァーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 93位のァスパラギン酸である。
[0089] 例えば、 Magnetospirillum magnetotacticumエンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸 配歹 !KGenBank Accession ZP_00051831)においては、サーモトガ'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸は 81位のチロシンであり、サーモ トガ'マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸は 106位のァスパ ラギン酸が当該位置のアミノ酸である。
[0090] 野生型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列における(a) 80位のアミノ酸またはサー モトガ 'マリチマ(Thermotoga maritima)エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置 のアミノ酸、および(b) 105位のアミノ酸またはサーモトガ.マリチマ エンドヌクレア一 ゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸に変異を与える場合、置換後のアミノ酸はどのよう なアミノ酸であってもよい。
[0091] 野生型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列における 80位のアミノ酸またはサーモト ガ.マリチマ エンドヌクレアーゼ Vの 80位と同等位置のアミノ酸と置換されるアミノ酸 Zとしては、例えばァラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フエニノレアラニ
1
ン、メチォニン等が好ましぐァラニンがより好ましい。野生型エンドヌクレアーゼ Vの アミノ酸配列における 105位のアミノ酸またはサーモトガ'マリチマエンドヌクレアーゼ Vの 105位と同等位置のアミノ酸と置換されるアミノ酸 Zとしては、例えばァラニン、グ
2
ノレタミン酸、ァスパラギン、グノレタミン、ァノレギニン、グリシン、セリン、トレオニン、ヒス チジン等が好ましぐァラニン、グノレタミン酸、ァスパラギン、グノレタミンがより好ましレヽ
[0092] 本発明に使用する変異型エンドヌクレアーゼ Vの元となる野生型エンドヌクレア一 ゼ Vは、どのような生物あるいはウィルス由来のものでもよぐ例えば細菌由来のもの や古細菌由来のものが挙げらる。細菌由来のものや古細菌由来のエンドヌクレア一 ゼ Vとし飞は、 f列えば Escherichia co丄 i、 Salmonella typhimurium^ Thermoto ga mantima^ I hermus thermophilus^ Thermoplasma acidophilum、 fher moplasma volcanium、 Aeropyrum pemix、 Pyrococcus abyssi、 Pyrococc
us horikoshii^ Sulfolobus tokodaii^ Archaeoglobus fulgidus由来のエンド ヌクレアーゼ Vなどが挙げられる。細菌由来のものや古細菌由来の野生型エンドヌク レアーゼ Vの好ましい例としては、好熱性細菌または好熱性古細菌由来のものが挙 げられ、さらに好ましい例としては Thermotoga maritima由来のものが挙げられる 。また、変異型エンドヌクレアーゼ Vの元となる野生型エンドヌクレアーゼ Vの常温性 細菌の由来の好ましい例としては、 Escherichia coli由来のものが挙げられる。
[0093] 本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vの特異的活性のいかなる至適温度はいか なる温度であってもよぐ本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vは例えば耐熱性を 有するエンドヌクレアーゼ Vであってもよい。本発明において酵素が「耐熱性」を有す るとは、酵素が活性を示す至適温度が常温域(20〜40°C)よりも高い温度であること を示し、例えば酵素が活性を示す至適温度が中高温域 (45〜65°C)、高温域(60〜 80°C)、あるいは超高温域(80°C以上または 90°C以上)の温度であることを示す。
[0094] 本発明に使用する変異型の特異的エンドヌクレアーゼ Vの好適な一例は、配列番 号 2に示すアミノ酸配列を有するエンドヌクレアーゼ Vである。
[0095] 3.塩基 X
本発明の核酸増幅方法に使用するプライマーは、エンドヌクレアーゼ Vによって認 識され得る塩基 Xを少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライマーである。本発 明における塩基 Xは、使用するエンドヌクレアーゼ Vによって認識されうるものであれ ばどの様なものであってもかまわなレ、が、例えばヒポキサンチン(デォキシイノシンの 塩基)、ゥラシル (デォキシゥリジンの塩基)、キサンチン (デォキシキサントシンの塩基 )、ォキサニン(デォキシォキサノシンの塩基)、 APサイト(apurinic/apyrimidinic siteまたは abasic site)、または天然の DNA中に見られる無傷の塩基(アデニン、 チミン、グァニン、シトシン)のいずれかの誘導体などが挙げられる。本発明における 塩基 Xのレ、くつかの好適な例について、その構造を図 6に示した。
[0096] 本発明における塩基 Xは、酵素学的手法、化学的手法、またはその他の公知の手 法を適宜用いることによりオリゴヌクレオチドプライマー中に好適に存在させることが できる。特に、ヒポキサンチンおよびゥラシルは、当業者が通常行う化学的なプライマ 一合成の手法 (例えばホスホアミダイト法など)において、他の通常の塩基(アデニン
、チミン、グァニン、シトシンなど)と同様に、プライマー中の任意の位置に存在させる ことが可能である。
[0097] 本発明における塩基 Xは、铸型核酸と相補的な塩基であってもよい。また、本発明 に使用するオリゴヌクレオチドプライマーが錡型核酸に実質的に相補的であれば、本 発明における塩基 Xは、錡型核酸と相補的でなくてもよぐミスマッチを形成し得るも のでもよレ、。ヒポキサンチンは、どのような塩基ともミスマッチを形成しないことが知ら れており、本発明における塩基 Xとして好適に使用できる。
[0098] 4.オリゴヌクレオチドプライマー
本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、铸型核酸の塩基配列に実質的 に相補的な塩基配列を有し、かつエンドヌクレアーゼ Vによって認識されうる塩基 Xを 少なくとも 1つ含有するオリゴヌクレオチドプライマーである。本発明に使用するオリゴ ヌクレオチドプライマーは、好ましくはデォキシリボヌクレオチドで構成される。また、 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、 1以上のリボヌクレオチドを含有し ていてもよい。本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくはその 3 末端からの DNA鎖の伸長が可能であるように、該 3'末端に 3'— OH基を有している ものがよレ、。し力し該 3'— OH基は、本発明の好ましい実施形態において、エンドヌ クレアーゼ Vの核酸切断活性はプライマー鎖に新たな 3'— OH基を有する 3'末端を 提供する能力があるため必須ではない。
[0099] 本発明に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、例えば市販の自動 DNA合成 装置を用いて、例えばホスホアミダイト法、リン酸トリエステル法、 H—ホスホネート法、 チォホスホネート法等により合成できる。
[0100] 本発明に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、通常、該プライマーから向か つて下流側に増幅しょうとする領域があるような位置関係で铸型核酸にアニーリング できるように設計される。該プライマーは、アニーリングさせようとする領域の塩基配列 に対して実質的に相補的であるように設計される。該プライマーの設計は、当業者で あれば、 PCR用のプライマー(および他の増幅方法のプライマー)の設計とほぼ同様 な手法で設計することができる。一般的に、プライマーの塩基配列中に、使用される 条件下においてプライマー間およびプライマー内で塩基対を形成しうる塩基配列を
有するプライマーが好ましくない場合があることは当業者に公知である。また、そのよ うな好ましくない塩基配列を避けたり最小限となるようにするなどして、好ましい塩基 配列を有するプライマーを設計する手法は、当業者に公知である。
[0101] また本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、錡型核酸の塩基配列に実 質的に相補的な塩基配列が、使用される条件下で好ましく铸型核酸にアニーリング できるような塩基配列であることが好ましい。そのような塩基配列は、例えば、使用さ れる条件下における該配列の融解温度、 GC含量、塩基配列情報や長さなどに基づ レ、て設計することができ、当該手法は当業者に公知である。好ましいプライマー塩基 配列の設計には、例えば、「バイオ実験イラストレイテッド第 3卷」(須磨春樹編、細胞 工学別冊、須磨春樹編、秀潤社発行、 1996年、 p. 13〜59)などを参考に設計す ること力 Sでき、また、例えば市販のプライマー設計ソフトウェア、例えば、 OLIGO Pri mer Analysis Software (宝酒造社製)などを使用することができる。
[0102] 本発明に使用するプライマーの設計に際して、铸型核酸上のプライマーがァニーリ ングする領域の塩基配列は既知であることが好ましレ、が、铸型核酸上の該領域以外 の領域の塩基配列は必ずしも既知でなくてもよい。さらに、铸型核酸上のプライマー 力 Sアニーリングする領域の塩基配列が完全に明らかでなくても、該領域に実質的に 相補的なプライマーの設計に必要とされる情報があればよい。例えば、該領域の塩 基配列に、未知の置換、欠失、付加、挿入等の変異の可能性があってもよぐまたは 、類推、予測される、若しくは推定される配列であってもよい場合がある。すなわち、 本発明の好ましい実施形態においては、標的核酸の配列の全てが既知である必要 はない。
[0103] 本発明の核酸増幅方法によれば、既知の配列情報から、未知の核酸配列を含む 増幅産物を得ることが可能となる。例えば、既知の配列情報力 設計した少なくとも 1 種類のプライマーを用いることで、当該プライマーのァニールする領域から伸長反応 が進行する方向に存在する未知の核酸配列を含む核酸を、増幅させることが可能で ある。また例えば、既知の配列情報力 設計した少なくとも 2種類のプライマーを用い ることで、当該プライマーのァニールする領域によって規定される領域内の未知の塩 基配列を含む核酸を増幅することが可能である。
[0104] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、使用するエンドヌクレアーゼ V によって認識されうる少なくとも 1つの塩基 Xを含有していればよい。本発明に使用す るオリゴヌクレオチドプライマーにおいて複数の塩基 Xを含有する場合、該塩基 Xは 1 種類の塩基に限定されず、プライマーの配列中に連続して存在または散在してもよ レ、。
[0105] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、塩基 Xが、铸型核酸に実質的 に相補的なプライマーの塩基配列における 5'側領域以外の部分に存在するものが 好ましぐ中央周辺ないし 3'側領域に存在するものが好ましい。
[0106] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーの長さは、特に制限はないが、約 1 :!〜 100塩基が好ましぐ約 15〜50塩基がより好ましい。また本発明に使用するオリ ゴヌクレオチドプライマーにおける塩基 Xより下流側(3'側)に塩基が存在しないか、 または塩基 Xより下流側(3'側)の長さの塩基数が約 1〜50塩基であることが好まし レ、。また、塩基 Xより上流側(5'側)の長さは約 10〜100塩基が好ましぐ約 10〜50 塩基がより好ましい。
[0107] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーの好適な例としては、塩基 Xより下 流側の長さが 1〜3塩基で、塩基 Xより上流側の長さが約 12〜30塩基である、全長 が 14〜34塩基程度のプライマーである。また別の好適な例は、塩基 Xより下流側の 長さが約 15〜30塩基で、塩基 Xより上流側の長さが約 15〜30塩基である、全長が 3 :!〜 61塩基程度のプライマーである。
[0108] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、铸型核酸に実質的に相補的な 塩基配列の他に、該配列の上流側および/または下流側に铸型核酸にァニーリン グしない付カ卩的な配列を、当該プライマーの機能を失わない範囲であれば有してい てもよレ、。例えば铸型核酸に実質的に相補的なプライマーの塩基配列の上流側に、 当該付加的な配列を有していてもよい。該付加的な配列としては、例えば、制限酵素 の認識配列、 DNA結合タンパク質の認識配列、他のタンパク質や核酸、または化学 試薬に認識されうる配歹 1J、 自己アニーリングによってヘアピン構造ゃステム'ループ 構造を形成しうる配歹 IJ、あるいは任意の塩基配列や無意味な塩基配列などが挙げら れる。
[0109] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、塩基 Xの 5 則の隣の塩基がァ デニンまたはチミンである力、塩基 Xの 3Ί則の隣の塩基がアデニンまたはチミンであ るカ あるいはその両方であるものが好ましい。そのようなプライマーを用いると、好適 にエンドヌクレアーゼ Vにより切断され、より好適に核酸配列が増幅される。
[0110] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、当該プライマーの機能を失わな い範囲で 1以上の修飾ヌクレオチドを含んでもよレ、。プライマーの塩基 Xの上流(5') 側における全ヌクレオチドのうち、該修飾ヌクレオチドの含有量は 60%以下とすること が好ましぐ 1個から 60%の範囲内とすることがより好ましい。該修飾ヌクレオチドとし ては、特に限定されないが、例えばヌクレアーゼ活性による切断に耐性を付与するよ うな性質のヌクレアーゼ耐性修飾ヌクレオチドが挙げられる。該ヌクレアーゼ耐性修 飾ヌクレオチドの例としては、ヌクレオチドのひ位のリン原子に結合している酸素原子 を硫黄原子に置換した(ひ一S)ヌクレオチドなどが挙げられる。当該修飾ヌクレオチ ドは、化学的な合成手法、例えばホスホアミダイト法などの公知の方法を適宜使用す ることにより、プライマー中の任意の位置に存在させることができる。当該修飾ヌクレ ォチドは、プライマーの配列中に複数連続して存在または散在してもよい。
[0111] 本発明に使用するプライマーとして、 1以上のヌクレアーゼ耐性を示す修飾ヌクレオ チドを含有するプライマーを使用することは、エンドヌクレアーゼ Vによるプライマーの 非特異的な切断や、アニーリングしていないプライマーの切断を制御し得る点におい て有用である。該ヌクレアーゼ耐性修飾ヌクレオチド含有プライマーは、塩基 Xの上 流側と下流側の両方あるいは一方の領域に 1以上の該修飾ヌクレオチドを含有して もよレ、。該ヌクレアーゼ耐性修飾ヌクレオチド含有プライマーの一例としては、塩基 X の上流側の領域に 1以上の該修飾ヌクレオチドを含有したプライマーが挙げられる。 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、当該プライマーの機能を失わな い限り、ランダムプライマーまたは縮重プライマーであってもよい。
[0112] 本発明の核酸増幅方法に使用するオリゴヌクレオチドプライマーの種類は特に限 定されなレ、が、好ましくは少なくとも 1種類または 2種類のオリゴヌクレオチドプライマ 一が使用される。本発明の核酸増幅方法においては、 3種類以上のプライマーを用 いてもよぐ例えば異なる標的領域にアニーリングする 3種類以上のプライマーを用
いてもよい。また、例えば少なくとも 2種類のプライマーからなる群を 1つのプライマー セットとし、第 1のプライマーセットと第 2のプライマーセットを反応混合物中に共存さ せてもよぐ 3以上のプライマーセットを用いてもよい。このように、本発明の核酸増幅 方法によれば、多重 (multiplex)増幅を行うことも可能である。
[0113] 本発明の核酸増幅方法においては、本発明に使用する塩基 Xを含有するプライマ 一のアニーリングする領域よりも、該プライマーから見て上流側の領域にアニーリング する、付カ卩的なプライマーをさら使用してもよい。本発明において、該付カ卩的なプライ マーを「アウタープライマー」という。アウタープライマーは、前記上流領域の核酸配 列に対して実質的に相補的であり、その 3' 末端からの DNA鎖の伸長が可能であ るように、該 3'末端に: T OH基を有しているものがよい。アウタープライマーの設計 において、該プライマーの塩基配歹 1J、長さ、および融解温度は、該プライマーが使用 される条件で好適にアニーリングできるようなものであれば、特に制限はない。本発 明に使用される好ましいアウタープライマーの例は、該アウタープライマー使用のさ れる条件下の融解温度が、本発明に使用される塩基 Xを含有するプライマーの使用 される条件下の融解温度の約 + 5°C〜約— 10°Cの範囲、より好ましくは、ほぼ同じ温 度〜約 5°Cの範囲のものである。
[0114] 本発明の核酸増幅方法に使用されるアウタープライマーの好ましいアニーリング位 置は、塩基 Xを含有するプライマーのアニーリング位置よりも上流であれば特に制限 されなレ、が、好ましくは該塩基 Xを含有するプライマーのアニーリング位置から 0塩基 〜約 100塩基、好ましくは 0塩基〜約 60塩基離れた位置が好ましい。
[0115] 本発明の核酸増幅方法において、アウタープライマーは必須ではないが、アウター プライマーの使用がより良好な増幅産物の産生をもたらす場合がある。
[0116] 本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、当該プライマーの機能を失わな い範囲で、蛍光または化学発光標識、およびピオチン標識などで修飾されていても よい。また他の標識の例としては、放射性同位体元素や発色団などが挙げられる。ま た他の標識の例としては、直接は検出できないが標識物質と特異的に結合する物質 (例えばアビジンなど)との反応によって間接的に検出可能となるような物質、例えば ハプテンや抗体などが挙げられる。
[0117] また本発明に使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、当該プライマーの機能を失 わない範囲で、それ自身を固相に結合させてもよい。該プライマーは、直接的に固相 に結合させてもよいし、また、直接は固定されないがその特異的結合相手 (例えばァ ビジンなど)を介して固定化可能な、ハプテンや抗体などによって、間接的に固相に 結合させてもよい。
[0118] 5.鎖置換型 DNAポリメラーゼ
本発明には、 DNAの鎖置換活性を有する鎖置換型 DNAポリメラーゼを使用する こと力 Sできる。また、該鎖置換型 DNAポリメラーゼは、実質的に 5'→3'ェキソヌクレ ァーゼ活性を有してレヽなレ、ものが特に好ましレ、。
[0119] 本発明に使用される DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有するものであれば特に 限定されず、例えば以下のようなものが挙げられる:
大腸菌由来の DNAポリメラーゼ Iのタレノウ断片、
バタテリオファージ φ 29由来の phi29 DNAポリメラーゼ、
バタテリオファージ T7由来の^→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ(例え ば s>equenaseなど)、
Bacillus stearothermophilus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bst DNA ポリメラーゼ、
Bacillus caldotenax由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bca DNAポリメラー ゼ(例えば BcaBEST DNAポリメラーゼなど)、
Pyrococcus sp. GB— D由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ (例えば Deep VentR DNAポリメラーゼゃ Deep VentR (exo— ) DNAポリメラ ーゼなど)、
Pyrococcus furiosus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ(例 えば Pfu DNAポリメラーゼゃ Pfu Turbo DNAポリメラーゼなど)、
Thermus aquaticus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ(例 えば Z_Taq DNAポリメラーゼゃ TopoTaq DNAポリメラーゼなど)、
Thermus thermophilus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ
(例えば、 Δ ΤΛ DNAポリメラーゼなど)、
Thermococcus sp. 9° N— 7由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラ ーゼ (例えば 9° Nm DNA Polymeraseや Therminator DNA Polymerase など)、
Thermococcus litoralis由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ (例えば Tli DNAポリメラーゼ、 VentR DNAポリメラーゼ、 VentR (exo - ) DN Aポリメラーゼなど)および、
Thermococcus kodakaraensis K〇D1株由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠 損 DNAポリメラーゼ(例えば、 K〇D DNAポリメラーゼ、 KOD Dash DNAポリメ ラーゼ、 KOD— Plus— DNAポリメラーゼなど)。
[0120] 本発明に使用する DNAポリメラーゼは、常温性から耐熱性のいずれのものも好適 に使用できる。また本発明に使用される DNAポリメラーゼは、逆転写反応を行う能力 を有していてもよい。
[0121] 本発明に使用する鎖置換型 DNAポリメラーゼは、天然資源より精製して取得され たもの、あるいは遺伝子工学的に生産された組換えタンパク質のいずれであってもよ レ、。また、該酵素は、遺伝子工学的あるいはその他の手法によって置換、欠失、付加 、挿入等の改変を加えたものであってもよい。
[0122] 本発明に使用する鎖置換型 DNAポリメラーゼの特に好ましい例として、古くから使 用されてレ、る大腸菌由来の DNAポリメラーゼ Iのタレノウ断片や、鎖置換活性が特に 高いことが知られるバタテリオファージ φ 29由来の phi29 DNAポリメラーゼ、 Bacill us stearothermophilus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bst DNAポリメラ ーゼ、 Bacillus caldotenax由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bca DNAポリ メラーゼなどが挙げられる。
[0123] 6.铸型核酸
本発明の核酸増幅方法における錡型核酸は、該核酸を含む可能性があるレ、かな る供給源から調製または単離したものでもよい。このような核酸を含む供給源は、例 えば、環境資源、食物、農産物、発酵物、生体の体液や組織、または細胞やウィルス などが挙げられる。生体の体液や組織とは、例えば、血液、乳、脳脊髄液、痰、唾液 、便、肺吸引液、粘膜組織や組織試料のスヮブなどが含まれる。また、これらの試料
等を公知の方法で処理することによって得られる核酸含有調製物であってもよい。ま た铸型核酸は、前記の試料等または核酸含有調製物より、公知の方法で増幅した D NAや RNA等の核酸でもよい。また、制限酵素や他の核酸切断または分解酵素など によって、完全にまたは部分的に処理されたものでもよい。
[0124] 本発明の錡型核酸として特に限定されないが例えば、ゲノム DNA、プラスミド DNA 、あるいは PCRや他の増幅方法による増幅産物のような 2本鎖 DNA、およびトータ ル RNAやメッセンジャー RNAなどから逆転写反応で調製された cDNAのような 1本 鎖 DNA等が、本発明の方法における铸型となる核酸として好適に使用できる。また 2 本鎖 DNAを完全にあるいは部分的に 1本鎖 DNAとなるように変性または不安定化 させたものも好適に使用できる。
[0125] 本発明の核酸増幅方法により、 RNA由来の配列を有する核酸を増幅する場合に は、当該 RNAを錡型とした逆転写反応によって調製した cDNAを、本発明の方法に おける铸型核酸として好適に用ることができる。そのような逆転写による cDNAの調 製方法は公知である。
[0126] 7.デォキシリボヌクレオチド 3リン酸
本発明の核酸増幅方法に使用するデォキシヌクレオチド 3リン酸(dNTP)としては 、 DNAポリメラーゼによる一般的な DNA合成反応において通常使用する基質、す なわち dATP、 dCTP、 dGTP、 dTTPの混合物が好適に使用できる。また、該 dNTP は、 dATP、 dCTP、 dGTP、 dTTPのいずれ力 1以上の dNTPを含まない dNTPで あってもよい場合もある。
[0127] また本発明に使用する dNTPは、 DNAポリメラーゼの基質となり得るものであれば 、他の dNTPまたは dNTPの誘導体を含んでいてもよレ、。他の dNTPまたは dNTPの 誘導体の例としては、、 dUTP、 dITP、 7-deaza-dGTP, ひ位のリン酸基の酸素 原子が硫黄原子に置換されたひ _ S _dNTP、放射性同位体元素や蛍光物質など で標識された dNTP等が挙げられる。
[0128] 8.エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼの組合せ
本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼの組合せは、上述の好 ましいエンドヌクレアーゼ Vと、上述の好ましい DNAポリメラーゼとで、好適な組合せ
を選択すればよい。すなわち、核酸増幅反応の反応混合物中において、エンドヌク レアーゼ Vと DNAポリメラーゼがそれぞれ好適に作用し得るような組合せが好ましい 。好ましくは、同じ温度条件下で、エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼがそれぞ れ好適に作用し得るような組合せがよレ、。例えば、エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメ ラーゼがともに常温性の酵素である組合せや、エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラー ゼがともに耐熱性の酵素である組合せが好ましい。
[0129] 好ましい組合せの例としては、これに限定されないが、エンドヌクレアーゼ V力 大 腸菌由来のエンドヌクレアーゼ Vまたはそれに置換、欠失、付加、揷入等の改変を加 えたものであって、 DNAポリメラーゼカ 大腸菌由来の DNAポリメラーゼ Iのタレノウ 断片若しくはバタテリオファージ φ 29由来の phi29 DNAポリメラーゼ、またはそれ らのいずれかに置換、欠失、付加、揷入等の改変を加えたものである組合せが挙げ られる。また別の好ましい組合せの例としては、エンドヌクレアーゼ V力 Thermotog a maritima由来のエンドヌクレアーゼ Vまたはそれに置換、欠失、付カロ、挿入等の 改変を加えたもの、例えば特願 2005— 308533に開示された丁1½1:111010§& marit ima由来の変異型エンドヌクレアーゼ Vであって、 DNAポリメラーゼ力 Bacillus st earothermophilus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bst DNAポリメラーゼ、 または Bacillus caldotenax由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bca DNAポリ メラーゼ、あるいはそのいずれかに置換、欠失、付加、挿入等の改変を加えたもので ある組合せが挙げられる。また、 2種類以上のエンドヌクレアーゼ Vまたは 2種類以上 の DNAポリメラーゼを含む組合せであってもよレ、。
[0130] また本発明に使用するエンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼは、それぞれの酵 素活性を失わない限りにおいて、両酵素が結合した形で提供されてもよい。例えば、 エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼを融合タンパク質として提供してもよレ、。当 該融合タンパク質は、例えば公知の遺伝子工学的手法によって、両酵素をコードす る遺伝子から融合遺伝子を作製し、該融合遺伝子を用レ、て組換えタンパク質として 調製すること力 Sできる。
[0131] 9.反応混合物の組成
本発明の核酸増幅方法における反応混合物は、酵素活性に好適な条件 (例えば p
H、金属イオン濃度、塩濃度など)を与える緩衝剤、金属イオン供給物質、塩類など を含有することが好ましい。緩衝剤としては、特に限定されないが、当業者が通常使 用する公知の緩衝剤、例えば、トリス(Tris)、トリシン (Tricine)、ビシン(Bicine)、へ ぺス(HEPES)、モプス(MOPS)、テス(TES)、タプス(TAPS)、ピぺス(PIPES)、 キヤブス(CAPS)、リン酸塩 (リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)などが挙げられる。
[0132] 前記金属イオン供給物質としては、当業者が通常使用する公知の物質でよぐ特に 限定されないが、例えば所望する金属イオンが Mg2+の場合は、例えば塩化マグネ シゥム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。また塩類も当業者が 通常使用する公知の物質でよぐ特に限定されないが、例えば塩化カリウム、酢酸力 リウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニゥム、塩化アンモニゥム、酢酸アンモニゥムなどを 用いることができる。なお当然であるが、これらの物質の好適な選択および好適な濃 度は、使用する酵素の種類と組合せに応じて変わり得る。さらに、これらの物質が核 酸の融解温度に影響を及ぼし得ることや、 dNTPが金属イオンをキレートし遊離の金 属イオン濃度に影響を及ぼし得ることなどが公知であり、当業者であればこれらの事 実も勘案して至適な反応組成を選択することができる。
[0133] 前記反応混合物における緩衝剤の濃度は、:!〜 lOOmMが好ましぐ 5〜50mMが より好ましレヽ。また、緩種 ί斉 IJの ρΗίま、 ρΗ6. 0〜9· 5力 S好ましく、 ρΗ7· 0〜8· 8力 Sより 好ましい。塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのマグネシゥ ム塩の濃度は、 0. 2〜20mMが好ましぐ 2〜: 12mMがより好ましい。また、塩化カリ ゥム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニゥム、塩化アンモニゥム、酢酸アンモ ニゥムなどの塩の濃度は l〜200mMが好ましぐ 2〜: 125mMがより好ましい。
[0134] 例えば、エンドヌクレアーゼ Vとして特願 2005— 308533に開示された Thermoto ga maritima由来の変異型エンドヌクレアーゼ Vを、 DNAポリメラーゼとして Bacill us stearothermophilus由来の 5'→3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bst DNAポリメラ ーゼを使用する場合、好ましい緩衝剤の例としてはへぺスなどが挙げられ、該緩衝 剤の濃度は 5〜30mMが好ましぐ pHは pH7. 0〜8. 8が好ましい。
[0135] 前記反応混合物における各デォキシリボヌクレオチド 3リン酸 (dNTP)の濃度は、 0 . 1~3. OmMカ好ましく、 0. 2〜: 1. 2mM力 Sより好ましレヽ。
[0136] 前記反応混合物における各プライマーの量は、反応混合物 50 μ ΐあたり 10〜: 100 Opmolが好ましぐ:!〜 200pmolがより好ましレ、。アウタープライマーを使用する場合 、アウタープライマーの量は対応する塩基 X含有プライマーの量に対して、等〜 1/1 00モノレ量カ好ましく、 1/4〜: 1/50モル量がより好ましい。
[0137] 前記反応混合物における酵素の量は、反応混合物 50 μ 1あたりエンドヌクレアーゼ Vは l〜1000pmolが好ましぐ DNAポリメラーゼは 0. 2〜32Uが好ましレ、。ただし、 酵素の量は、使用する酵素の種類や性質、および組合せによって適宜変化し得る。 また酵素の活性を表す単位 U (ユニット)は、酵素の種類や酵素標品の調製者によつ て定義が異なる場合があることは当業者には周知である。また、好適な増幅を達成す るための酵素の至適量は、使用条件、プライマーの量、錡型核酸の量、およびその 他の反応組成などによっても変化し得る。
[0138] さらに、前記反応混合物中には、添加剤を共存させてもよい。該添加剤としては、 特に限定されないが、例えば 10%以下のジメチルスルホキシド(DMSO)、 3M以下 のべタイン(N, N, N—トリメチルグリシン)、 5%以下のホルムアミド、 lOOmM以下の 塩化テトラメチルアンモニゥム (TMAC)、 1%以下の界面活性剤(例えば NP— 40、 Tween—20、TritonX—100など)、 10%以下のグリセロール、 10%以下の糖類( デキストランなど)、 10%以下のポリエチレングリコール(PEG)、 10mM以下のジチ オトレイトール(DTT)、 0.1 %以下のゥシ血清アルブミン(BSA)、 SSBタンパク質(1 本鎖結合タンパク質)などが挙げられる。
[0139] 前記反応混合物中に融解温度調整剤を添加して、核酸の融解温度を調節してもよ レ、。該融解温度調整剤としては、例えばべタイン、ジメチルダリシン、トリェチルァミン N -ォキシド、 DMSOなどが挙げられ、特に好ましくはべタインが挙げられる。反応混 合物中におけるベタインの濃度は、その等安定化 (isostabilizing)濃度である約 5. 2Mを超えない範囲が好ましぐ 0. 3〜: 1. 5Mがより好ましい。
[0140] 反応混合物中に共存させる該添加剤として 1本鎖核酸安定化剤を用いてもよい。 1 本鎖核酸安定化剤の例としては 1本鎖核酸結合タンパク質が挙げられる。 1本鎖核 酸結合タンパク質の例としては、大腸菌 SSBタンパク質(1本鎖結合タンパク質)、大 腸菌 RecAタンパク質、 T4ファージ gp32、あるいは他の生物'ウィルス由来のこれら
に相当するタンパク質などが挙げられる。これらの 1本鎖核酸結合タンパク質の反応 混合物中の濃度は、当業者が適宜選択することが可能であるが、例えば、反応混合 物 50 /i lあたり大腸菌 SSBタンパク質を 0. 5〜: 1. 5 /i g、大腸菌 RecAタンパク質お よび T4ファージ gp32を 0. 5〜3 x gの範囲内とすることが好ましレ、。また、必要に応 じてこれらの 1本鎖核酸結合タンパク質とともにその補助因子 (例えば ATPやその誘 導体など)を共存させてもよい。
[0141] 10.インキュベーション工程
本発明の核酸増幅方法において、反応混合物をインキュベートする工程は、(i)錡 型核酸へのプライマーの特異的なアニーリング、(ii) DNAポリメラーゼによる伸長鎖 合成反応および鎖置換反応および (iii)エンドヌクレアーゼ Vによる塩基 Xを含む核 酸鎖中の塩基 Xの認識および該塩基 Xより下流側(3'側)に位置するホスホジエステ ル結合の切断反応、が行える条件であれば特に限定はなレ、。当該インキュベーショ ン工程の温度条件は、変温あるいは等温のいずれであってもよぐ等温がより好まし レ、。
[0142] 本発明において「変温」とは、各反応の段階を好適に実施できるように反応温度を 変化させることを意味する。例えば、前記 (i)〜(iii)の各工程に適した温度に変化さ せることをいう。また変温のインキュベーション工程には、 2本鎖核酸を 1本鎖に変性 させる温度条件を含んでもよい。また、本発明において「等温」とは、各反応の段階を 実施する温度を変化させず、インキュベーション工程を実質的に一定の温度で実施 することを意味する。
[0143] 本発明の核酸増幅方法の利点として、インキュベーション工程における温度の上下 、すなわち温度サイクリングが不要であるという点が挙げられる。したがって、本発明 によれば等温核酸増幅法が可能となる。該等温核酸増幅法は高価な温度サイクリン グ装置を用いる必要とせず、反応混合物を実質的に一定の温度に保持すればよい。 該反応混合物を実質的に一定の温度に保持する方法としては、特に限定されない が、例えば温度制御のための装置 (例えばブロックインキュベータ)の使用、保温若し くは発熱の状態にある物体または物質と反応混合物との接触(例えば湯浴中に反応 混合物の入った容器を存在させる、あるいは温石や懐炉などと反応混合物若しくは
反応混合物の入った容器とを接触させるなど)が挙げられる。
[0144] 前記等温核酸増幅法の温度条件は、エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼが共 に好適に活性を発揮し得る温度が好ましぐ例えば約 20〜80°Cの範囲から選択され る。例えば、エンドヌクレアーゼ Vと DNAポリメラーゼがともに常温性の酵素である場 合は、 20〜40°Cが好ましレ、。また、例えば、エンドヌクレアーゼ Vが大腸菌由来のェ ンドヌクレアーゼ Vまたはそれに置換、欠失、付カロ、揷入等の改変を加えたものであ つて、 DNAポリメラーゼが大腸菌由来の DNAポリメラーゼ Iのタレノウ断片若しくはバ クテリオファージ Φ 29由来の phi29 DNAポリメラーゼ、またはそれらのいずれかに 置換、欠失、付加、揷入等の改変をカ卩えたものであるには、 30〜40°Cが好ましぐ 3 0°Cまたは 37°Cがより好ましレ、。
[0145] また、前記等温核酸増幅法の温度条件は、例えばエンドヌクレアーゼ Vと DNAポリ メラーゼがともに耐熱性の酵素である組合せの場合は、 50〜80°Cが好ましい。また、 例えばエンドヌクレアーゼ V力 Thermotoga maritima由来のエンドヌクレアーゼ Vまたはそれに置換、欠失、付加、挿入等の改変をカ卩えたもの(例えば特願 2005— 308533に開示された Thermotoga maritima由来の変異型エンドヌクレアーゼ V )であって、 DNAポリメラーゼが Bacillus stearothermophilus由来の 5'→3 'ェキ ソヌクレアーゼ欠損 Bst DNAポリメラーゼ若しくは Bacillus caldotenax由来の 5' →3 'ェキソヌクレアーゼ欠損 Bca DNAポリメラーゼ、またはそのいずれかに置換、 欠失、付力 0、挿入等の改変をカ卩えたものである場合には、 50〜70°Cが好ましぐ 55 〜65°Cがより好ましい。
[0146] また、前記等温核酸増幅法の温度条件は、反応混合物中におけるプライマーの非 特異的アニーリングが低減され、かつ錡型核酸配列にプライマーが特異的にァニー リングするような温度としてもよレ、。当該温度は、プライマーの使用する反応混合物中 における融解温度を参考にして決めることができ、例えば約 20〜80°Cの範囲から選 択される。勿論、先にインキュベーション温度を決めておき、当該温度の下で反応を 好適に実施できるようにプライマー設計をしてもよぐあるいは融解温度調整剤やそ の他の反応構成物の種類や濃度を選択してもよレ、。
[0147] 本発明の核酸増幅方法において、反応混合物をインキュベートする時間は、所望
する増幅反応を達成するのに充分な時間であれば、特に制限はない。好ましいイン キュベーシヨン時間は、例えば 4時間以内であり、より好ましくは 20分〜 2時間である
[0148] 本発明の核酸増幅方法において、インキュベーション工程中の反応は理想的には 継続されるが、実際には反応混合物中の各種成分の濃度低下や枯渴、酵素活性の 低下または失活などの要因によって、反応が停滞または停止する場合がある。そのよ うな理由によって、所望する増幅反応を達成することが困難な場合には、インキュべ ーシヨン工程において、反応を継続するために必要な物質を、継続的または断続的 に反応混合物中に供給してもよレ、。
[0149] 本発明の核酸増幅方法においては、実質的に等温で増幅反応させる場合であつ ても、より好ましい増幅反応を達成するために熱変性段階(2本鎖核酸が完全あるい は部分的に 1本鎖核酸となるように変性または不安定化させるようなインキュベーショ ン段階)を最初に 1回経る方がょレ、場合がある。例えば铸型核酸が 2本鎖 DNAであ る場合には、該熱変性段階を経る方がよい場合がある。該熱変性段階としては、これ に限定されないが、例えば 95°Cで 1〜: 10分間程度インキュベーションする。また、変 性段階を通じて酵素活性が完全にあるいは有意に失われる場合には、変性段階を 実施した後に、該酵素活性が失活されない温度に調節した該反応混合物に、該酵 素を添加し、続レ、て単一の温度でインキュベーションするのが好ましレ、。
[0150] し力 ながら、本発明の核酸増幅方法においては、铸型核酸が 2本鎖 DNAであつ ても、前記熱変性段階は必ずしも必要なわけではなレ、。例えばべタインなどの融解 温度調整剤が好適な濃度で反応混合物中に含まれていれば、铸型核酸が 2本鎖 D NAであっても、熱変性段階を含まない工程で、好適な増幅反応が達成される場合 力 Sある。さらに、本発明の核酸増幅方法によれば、錡型核酸が 2本鎖 DNAであって も、融解温度調整剤を使用することなぐかつ熱変性段階を含まない工程で、好適な 増幅反応を達成することができる。従って、必要に応じてべタインなどの融解温度調 整剤の使用、および熱変性段階の実施の有無を選択すればよい。
[0151] また、本発明の核酸増幅方法にぉレ、ては、前記熱変性段階の後で、増幅産物の蓄 積を与える単一温度のインキュベーション前に、プライマーを錡型核酸に好適にァニ
一リングさせるインキュベーション段階をさらに経ることが効果的な場合がある。ただし 該アニーリング段階も必須ではなぐ好ましくは不要であるから、当業者は必要に応じ て該アニーリング段階の実施の有無を選択すればよい。
[0152] 11.標的核酸の検出方法
さらに本発明は、本発明の核酸増幅方法 (EVA)によって標的核酸を増幅するェ 程と、該工程により増幅産物が生成したか否かを検知する工程、を含むことを特徴と する標的核酸の検出方法を提供する。本発明の検出方法は、様々な試料における 標的核酸の存在あるいは不在の検出に用いることができる。
[0153] 本発明の検出方法の使用は特に限定されないが、例えば、標的核酸が特定の核 酸または特定の集団に属する生物またはウィルス由来の核酸である場合には、本発 明の検出方法により被検試料中の該生物またはウィルスを検出することができる。該 生物が病原体である場合には、被検試料中の病原体を検出することができる。また、 生物の遺伝子型の判別や遺伝子の発現状態の解析、疾病関連遺伝子や薬剤反応 性関連遺伝子等の検出などに本発明の方法を使用することもできる。
[0154] 本発明の検出方法では、増幅された核酸を様々な方法で検出することができ、核 酸結合剤(例えば臭化工チジゥムゃ SYBR Greenなど)を用いる染色、および、放 射性物質、蛍光物質、蛍光消光物質または酵素などの種々の標識によって検出する こと力 Sできる。本発明の検出方法において、増幅産物が生成したか否かを検知する ための手段は、特に限定されず、例えば電気泳動やハイブリダィゼーシヨンアツセィ 、あるいはそれらの組合せなどの常套的な手段を用いることができる。また PCRや他 の増幅方法の産物の検出に用いられる当業者に公知の種々の手段も本発明の核酸 増幅方法による産物の検出に好適に使用できる。
[0155] 例えば、増幅産物に実質的に相補的な配列を有する核酸をプローブとして用い、 該プローブの増幅産物へのハイブリダィゼーシヨンに基づくシグナルまたはシグナル の変化を検知してもよレ、。該プローブは固相に固定化されていても、されていなくても よい。例えば、蛍光物質で標識した核酸プローブを用いて、その蛍光偏光の解消度 の変化に基づいて増幅産物を検出する方法、すなわち蛍光偏光法 [例えば「食品産 業のための高機能バイオセンサー」(社団法人農林水産先端技術産業振興センター
高機能バイオセンサー事業部会編、化学工業日報社発行、 2003年、 p. 73〜82 よび 2り 1〜292、 Tsuruoka M, Karube I: Rapid hybridization at hign salt concentr ation and detection of bacterial DNA using fluorescence polarization. Comb Chem H igh Throughput Screen, 6, p. 225-34 (2003) ]によって検出してもよい。また、例えば 、プローブのハイブリダィゼーシヨンを、表面プラズモン共鳴による検出 [例えば、 Kai E, Sawata S, Ikebukuro K, Iida T, Honada T, Karube i: Detection of Pし R products in solution using surface plasmon resonance. Anal Chem, 71, p.796 - 800 (1999)]や、 水晶発振子マイクロバランス(quartz crystal microbalance)による検出 [例えば 、宫本敬久: PCR法および DNA固定化水晶振動子によるサルモネラ迅速検出法、 日本食品微生物学会誌、 17、 2000年、 p. 217— 224]などで行ってもよレヽ。
[0156] また本発明の検出方法では、核酸の増幅に伴って副次的に生成する物質を検知 することによって、増幅産物が生成したか否力、を検知してもよい。例えば核酸鎖の合 成に伴って dNTPから遊離されるピロリン酸またはその塩、例えばピロリン酸マグネシ ゥムを、例えば濁度の測定や沈殿物の観察、あるいは酵素的方法 [例えば、遠藤美 砂子、齋藤紀行、丸山昇:食品病原微生物の簡易迅速検出方法の開発、平成 14年 度宮城県産業技術総合センター研究報告、 1、 2002年、 10— 14]により検出しても よい。
[0157] 本発明の検出方法において、増幅産物が生成したか否かを検知する工程は、本発 明の核酸増幅方法における増幅工程の後に実施してもよいが、該増幅工程の実施 中に行ってもよぐ例えば標的核酸の増幅をリアルタイムにモニタリングしてもよレ、。そ のような好ましい 1つの実施形態としては、反応混合物中に核酸の検出剤を存在させ ておき、検出剤由来のシグナル変化に基づいて増幅産物を検知することが挙げられ る。該核酸の検出剤の例としては、核酸結合剤(臭化工チジゥムゃ SYBR Greenな ど)、標識核酸プローブ (例えば蛍光標識プローブや蛍光エネルギー転移プローブ など)等が挙げられる。また、核酸の検出剤は dNTPであってもよぐこの場合、核酸 鎖の合成に伴って dNTPから遊離されるピロリン酸またはその塩、例えばピロリン酸マ グネシゥム、に基づくシグナルを、例えば濁度の測定などにより検出することができる
[0158] 12.キット
本発明の 1つの実施形態は、本発明の核酸配列の増幅方法に使用される試薬キッ ト、すなわち核酸増幅試薬キットである。該キットは、エンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活 性を有する DNAポリメラーゼの使用を指示した指示書を記録した媒体を含んでなる ことが好ましい。該キットはさらに、少なくともエンドヌクレア一ゼ 、または少なくともェ ンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼを含有することがより好ま しい。
[0159] また別の本発明の実施形態は、本発明の核酸配列の検出方法に使用される試薬 キット、すなわち核酸検出試薬キットである。該キットはエンドヌクレアーゼ Vと鎖置換 活性を有する DNAポリメラーゼの使用を指示した指示書を記録した媒体を含んでな ることが好ましい。該キットはさらに、少なくともエンドヌクレア一ゼ 、または少なくとも エンドヌクレアーゼ Vと鎖置換活性を有する DNAポリメラーゼを含有することがより好 ましい。
[0160] 本発明の核酸増幅キットおよび核酸検出キットには、使用する酵素の他に、使用者 が本発明の方法を実施しやすいように、使用する酵素のためのあらかじめ調製され た反応液、あるいは当該反応液を調製する材料となる緩衝液、基質または基質溶液 、プライマー、およびマグネシウムイオンなどの金属イオンの供給物質などを必要に 応じて構成要素としてもよい。また必要に応じて、核酸の検出剤を構成要素としても よい。当該構成要素は、本発明の方法が好ましく実施できる濃度あるいは当該濃度 の一定倍の濃度 (例えば当該濃度の 10倍の濃度)の溶液として提供することができ る。また当該構成要素は、 1回あるいは複数回の反応に使用する量を、 1つの容器中 に存在させてもよい。また、本発明の方法を行うための手順や、その実施例などを記 録した媒体なども、必要に応じて本発明のキットの構成要素としてもよい。
実施例
[0161] 以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。なお本発明は下記の実施 例に限定されるものではない。
[0162] <実施例 1 >野生型および変異型エンドヌクレアーゼ Vの調製
(1)野生型エンドヌクレアーゼ V遺伝子の作製
以下の手順で野生型エンドヌクレアーゼ V遺伝子を取得した。まず、サーモトガ 'マ リチマ ATCC 43589株を、理化学研究所微生物系統保存施設 iapan Collectio n of Microorganisms、 JCM)より購入した iCM No. 10099)。該菌株液 lml を所定の培地 100mlに植菌して、嫌気条件下 80°Cにて 48時間静置培養した。その 培養液 20mlを 13000 X gで、 5分間遠心分離し、沈殿した菌体を lmlの超純水に懸 濁した。懸濁液を超音波破砕処理した後、 13000 X gで 5分間遠心分離して上清を 回収し、サーモトガ'マリチマの染色体 DNAが含まれる破砕上清液を取得した。
[0163] 次に以下の手順に示す PCRにより、サーモトガ.マリチマのエンドヌクレアーゼ V遺 伝子(GenBank Accession AAD36927)を増幅した。サーモトガ'マリチマの破 砕上清液 1 μ 1を錡型として、反応液 (全量 50 μ 1)に添加した。 DNAポリメラーゼとし て、 K〇D plus (東洋紡社製) 1. 0Uを反応液に添加した。緩衝液として、 KOD pi us製品に添付された 10倍濃度の緩衝液(10 X KOD— PCR buffer)を 5 μ 1添加し た。プライマーとして、配列番号 3および 4で表されるオリゴヌクレオチドをそれぞれ終 濃度 0. 3 / Mとなるように反応液に添加した。 dNTP混合物は終濃度が 0. 2mM、 MgSOは終濃度が ImMとなるようにそれぞれ反応液に添カ卩した。
4
[0164] サーマルサイクラ一は、 GeneAmp PCR System 9600 (Perkin Elmer社製 )を使用し、 94°Cで 2分間を 1回、続いて 94°Cで 15秒間、 57°Cで 30秒間、 68°Cで 1 分間の温度サイクルを 35回繰り返した。増幅産物を、 QIAquick PCR Purificati on Kit (キアゲン社製)を用いて精製し、超純水 50 μ ΐで溶出した。精製操作の手順 は、当該キットに付属の仕様書に従った。
[0165] 得られた増幅産物を常法に従って、 His— tag配列を有する大腸菌組換えタンパク 質発現用ベクター pET16b (Novogen社製)へ揷入した。得られた組換え体 DNA ( 以下 pET16 TmaEVという)のエンドヌクレアーゼ V遺伝子の塩基配列を DNAシー ケンサ一によつて解読した。解読した配列は、既知のサーモトガ 'マリチマ エンドヌク レアーゼ V遺伝子の塩基配歹 1J (GenBank Accession AE001823)と一致した。
[0166] (2)変異型エンドヌクレアーゼ V遺伝子の作製
以下の手順で野生型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列に 2重の部位特異的変異 を導入した。まず、 1つ目の変異導入として、野生型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配
列の 80位に位置するチロシンをコードする塩基配列を、ァラニンをコードする塩基配 列に置換 (Y80A変異)したエンドヌクレアーゼ V遺伝子を作製した。 Quikchangell Site Directed Mutagenesis Kit (Stratagene社製)を用いて、 目的の塩基配 列に部位特異的変異を導入した。錡型として pET16 TmaEVを 50ng、 Y80A変異 導入用のプライマーとして配列番号 5および 6で示したオリゴヌクレオチドを用レ、、反 応液の全量を 51 μ 1とした。反応液組成および操作手順は、キットに付属された仕様 書に準じた。このようにして Υ80Α変異を導入した変異型エンドヌクレアーゼ V遺伝子 を含む組換え体 DNA (以下、 pET16 TmaEVMlという)を得た。
[0167] 次に 2つ目の変異導入として、上記の方法と同様に、 pET16 TmaEVMlにコー ドされたエンドヌクレアーゼ V (Y80A)のアミノ酸配列の 105位に位置するァスパラギ ン酸をコードする塩基配列を、ァラニンをコードする塩基配列に置換 (D105A変異) した。铸型として pET16TmaEVMlを、 D105A変異導入用プライマーとして配列 番号 7および 8で表されるオリゴヌクレオチドを用いた。このようにして、 Y80Aおよび D105Aの 2重のアミノ酸変異が導入された変異型エンドヌクレアーゼ V遺伝子を有 する組換え体 DNA (以下、 pET16 TmaEVM2という)を得た。 pET16 TmaEV M2のエンドヌクレアーゼ V遺伝子の塩基配列を DNAシーケンサーによって解読し、 目的とする塩基の置換が存在することを確認した。また変異を導入した部分以外の 塩基配列は、既知のサーモトガ'マリチマ エンドヌクレアーゼ V遺伝子の塩基配列( GenBank Accession No. AE001823)と一致した。以上のようにして変異型ェ ンドヌクレアーゼ Vの遺伝子を取得した。
[0168] (3)野生型および変異型エンドヌクレアーゼ Vの発現と精製
大腸菌組換えタンパク質発現系を利用し、以下の手順で野生型エンドヌクレアーゼ Vおよび変異型エンドヌクレアーゼ Vを発現させた。野性型サーモトガ 'マリチマ ェ ンドヌクレアーゼ V遺伝子を有する pET16TmaEV、または変異型サーモトガ 'マリチ マ エンドヌクレアーゼ V遺伝子を有する pET16TmaEVM2を用いて、宿主大腸菌 株 BL21 (DE3) (Novogen社製)を常法によって形質転換した。得られた形質転換 体を、アンピシリン(終濃度 50 μ gZml)を含む LB培地 8ml (ペプトン 10g/l、酵母 エキス 5g/l、NaCl lOgZDに接種し、培地の OD600力 O. 6になるまで 37°Cに
て振とう培養を行った。続いて、その培養液をアンピシリン (終濃度 50 g/ml)を含 む LB培地 800mlに接種し、培地の OD600力 6になるまで 37°Cで振とう培養を 行った。その後、イソプロピノレ一 β—チォガラクトピラノシド(終濃度力 SlmM)を培養 液に添加することによって目的タンパク質の発現を誘導し、 30°Cにて 5時間振とう培 養を行った。その培養液を 13000 X gで 10分間遠心分離した。沈殿した菌体を、プ 口テアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社製)を含む緩衝液 [20mM HEPES (pH7. 4 )、 lmM EDTA(pH8. 0)、 0. ImM DTT、 50mM NaCl] 30mlに懸濁した。 その懸濁液 30mlを超音波破砕処理した後、 13000 X gで 10分間遠心分離し上清を 回収した。得られた上清を 75°Cにて 15分間熱処理することによって、上清中に含ま れる宿主大腸菌由来のタンパク質を変性させた。
[0169] その後、熱処理した液を 13000 X gで 10分間遠心分離し、上清を回収した。得ら れた上清を孔径 0. 2 x mのフィルターでろ過した後、 His— tag融合タンパク質精製 用カラム HisTrap HP (Amersham Biosciences社製)を用いて、野生型エンドヌ クレアーゼ Vまたは変異型エンドヌクレアーゼ Vを精製した。このとき緩衝液として、真 空脱気した緩衝液 A[50mM HEPES (ρΗ7· 4)、 ImM EDTA (pH8. 0)、 0. ImM DTT、 ] 50mM NaCl、 20mM imidazole]および緩衝液 B[50mM HE PES (pH7. 4)、 ImM EDTA (pH8. 0)、 0. ImM DTT、 50mM NaCl、 5 OOmM imidazole]を用いて、ステップワイズ溶出を行った。得られた溶出画分につ いて SDS— PAGEを行い、予測される分子量に単一のタンパク質バンドが観測され 、野生型エンドヌクレアーゼ Vまたは変異型エンドヌクレアーゼ Vが精製されたことを 確認した。
[0170] 以上の様にして調製した 2重変異 (Y80Aおよび D105A変異)サーモトガ.マリチ マ エンドヌクレアーゼ V (以下、これを変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vという)を以 下に示す実施例で使用した。
[0171] <実施例 2 >線状 DNA断片を铸型とする増幅
(1)铸型 DNAの調製
EVAの铸型として用いる DNA断片を PCRによって調製した。 PCRのための铸型 としてプラスミド pUC 18 (GenBank Accession No. L09136)を 20ng、プライ
マーとして配列番号 9および 10で示したオリゴヌクレオチドを 20pmol用いた。これら のプライマーは、 pUC18のマルチクローニングサイトを含む 243bpの DNA断片が 増幅されるように設計したもので、かつデォキシイノシンをそれぞれ 1つ含んでいる。 DNAポリメラーゼとして、 TaKaRa Taq (タカラバイオ社製) 2. 5Uを使用し、反応バ ッファーおよび dNTP混合物は同製品に付属されたものを用いた。
[0172] 全量 100 μ 1の PCR反応液を調製し、 PCRを行った。サーマルサイクラ一は Gene Amp PCR System 9600 (Perkin Elmer社製)を使用し、 94°Cで 1分間を 1回 、続いて 94°Cで 30秒間、 63°Cで 30秒間、 72°Cで 30秒間の温度サイクルを 35回繰 り返した。反応終了後、得られた PCR産物を、 QIAquick PCR Purification Kit (キアゲン社製)を用いて精製し、超純水 50 μ ΐで溶出した。精製操作は、当該精製 キットに添付された取扱説明書に従った。精製された試料を 1.5% ァガロースゲル 電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色した後、 UV照射下で、約 240bpの 長さの DNA断片の存在を確認した。
[0173] (2) EVAによる増幅反応
実施例 2 (1)に記載の方法で調製した DNA断片を铸型として用い、 EVA法による 核酸増幅を実施した。プライマーとして配列番号 9および 10で示したオリゴヌクレオ チドを用いた。これらはそれぞれデォキシイノシンを 1つ含む。エンドヌクレアーゼ Vは 、実施例 1において取得した 2重変異 (Y80Aおよび D105A変異)を有するサーモト ガ.マリチマ エンドヌクレアーゼ V (以下、変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vという) を使用した。
[0174] EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 5mM 塩化マグネ シゥム、 ImM ジチオトレイトール、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPお よび dTTP)、 2pmol、 200fmolまたは 20fmolの各プライマー、 lOfmolの铸型 DN A、 8Uの Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 19pmolの変異 型 Tma エンドヌクレア一ゼ 、超純水]を、全量 25 μ 1となるように調製した。また対 照として、铸型 DNAを含まない同様の反応液も調製した。
[0175] 調製した上記 EVA反応液を、 65°Cにて 2時間保温して反応させた。反応終了後、 反応液 5 を分取し、 1.5% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムで染
色後、 UV照射下で増幅産物の有無、およびその濃淡を確認した。その結果を図 7 に示す。
[0176] 図 7において、レーン 1およびレーン 8は分子量サイズマーカー lOObp DNA La dder (東洋紡社製)であり、レーン 2、 3および 4は、プライマーをそれぞれ 2pmol、 20 Ofmolおよび 20fmol使用した EVA反応液を用いた結果である。また、レーン 5、 6お よび 7は、それぞれ、プライマーを 2pmol、 200fmolおよび 20fmol使用した铸型 DN Aを含まなレ、 EVA反応液を用いた結果である。図 7のレーン 2および 3において、増 幅産物の予想されるサイズ付近に単一なバンドが検出され、 目的とする DNA断片の 増幅が確認された。一方、レーン 5〜7 (錡型 DNAを含まない反応)からは、増幅産 物は検出されなかった。
[0177] (3)増幅産物の制限酵素消化
実施例 2 (2)で得られた増幅産物が、 目的とする核酸配列を有する DNA断片であ るかどうか確認するため、制限酵素による消化を行った。前記のプライマーを 2pmol 使用した EVA反応液(図 7、レーン 2)を 20 μ 1用いて、 QIAquick PCR Purificat ion Kit (キアゲン社製)を用いて増幅産物を精製し、超純水 35 μ 1で溶出した。精 製操作は、当該キットに添付された取扱説明書に従った。
[0178] 精製した増幅産物を 8 /i l用い、制限酵素 BamHI 10Uまたは Hindlll 10U (ニッ ボンジーン社製)による制限酵素処理を行った。反応バッファ一は酵素製品に付属さ れたバッファー溶液を使用した。 20 μ ΐの反応液を調製し、 37°Cにて 1時間保温した 。反応終了後、試料を 10 / l分取し、 1.5% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化 ェチジゥムでゲルを染色した後、 UV照射下で DNA断片のサイズを観測した結果を 図 8に示す。
[0179] 図 8において、レーン 1は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder (東洋紡 社製)、レーン 2は制限酵素で処理していない増幅産物、レーン 3は BamHI消化物、 レーン 4は Hindlll消化物である。増幅産物が特異的な増幅によって生成したもので あれば、その塩基配列中には BamHIおよび Hindlll認識サイトがそれぞれ 1ケ所存 在し、各酵素で消化したとき 2つの DNA断片が生じる。予測される消化断片の長さ は、 Bamm肖ィ匕の場合は 109bpおよび 134bp、 Hindlll肖ィ匕の場合は 79bpと 164
bpであった。レーン 3および 4に示したように、増幅産物を BamHIまたは Hindlllで 消化した結果、元の増幅産物のバンドは消失し、消化物の予測された分子量付近に バンドが検出された。このこと力ら、実施例 2 (2)で得られた EVAの増幅産物は、 目 的とする核酸配列を有する特異的な増幅産物であることがわかった。
[0180] <実施例 3 >環状プラスミド DNAを錡型とする増幅(1)
環状プラスミド PUC18を錡型として用レ、、 EVA法により核酸を増幅した。プライマ 一として、配列番号 9および 10に示したオリゴヌクレオチドを用いた。これらのプライ マーを用いた場合の予測される増幅範囲は、 pUC18のマルチクローニングサイトを 含む約 240bpの領域であった。
[0181] EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 5mM 塩化マグネ シゥム、 ImM ジチオトレイト一ノレ、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP (d ATP、 dCTP、 dGTP、および dTTP)、 4pmolの各プライマー、 2fmolまたは 20fmo 1の pUC18、 16Uの Bst DNA ポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 38 pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一ゼ 、超純水]を、全量 50 μ 1となるように調製 した。
[0182] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 2時間保温して反応させた。反応終了後、反応液 5
/i lを分取し、 1.5% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムで染色した後 、 UV照射下で増幅産物の有無、およびその濃淡を確認した結果を図 9に示す。
[0183] 図 9において、レーン 1は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder (東洋紡 社製)であり、レーン 2および 3は、それぞれ 2fmolおよび 20fmolの pUC18を铸型と して EVAを行った場合の結果である。レーン 3に示したように、予測されるサイズの増 幅産物の存在が検出された。
[0184] <実施例 4 >環状プラスミド DNAを錡型とする増幅(2)
铸型として環状プラスミド pUC18、プライマーとして、配列番号 11および 12に示し たオリゴヌクレオチドを用いて、 EVA法による核酸増幅を実施した。これらのプライマ 一を用いた場合の予測される増幅範囲は、 PUC18のマルチクローニングサイトを含 む約 240bpの領域であった。
[0185] EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 5mM塩化マグネ
シゥム、 ImMジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP、 4p molの各プライマー、 2fmolまたは 20fmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラー ゼ(New England Biolabs社製)、 38pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一ゼ 、 超純水]を全量 50 μ 1となるように調製した。
[0186] 上記 EVA反応液を 65°Cにて 90分間保温して反応させた。反応終了後、反応液 5
μ 1を検体として 1.5% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを 染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 10に示す。
[0187] 図 10において、レーン 1は分子量サイズマーカー 100 bp DNA Ladder (東 洋紡社製)、レーン 2および 3は、それぞれ 2fmolおよび 20fmolの pUC18を铸型と して EVAを行った場合の結果である。図 10に示したように、レーン 2および 3におい て予測されるサイズの増幅産物の存在が検出された。
[0188] <実施例 5 >環状プラスミド DNAを錡型とする増幅(3)
铸型として環状プラスミド pUC18、プライマーとして配列番号 13および 14に示した オリゴヌクレオチドを用いて、 EVA法により核酸を増幅した。これらのプライマーを用 レ、た場合の予測される増幅範囲は、約 63 Obpの領域であつた。
[0189] EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 5mM 塩化マグネ シゥム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP、 4 pmolの各プライマー、 2fmolまたは 20fmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラー ゼ(New England Biolabs社製)、 38pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一ゼ 、 超純水]を全量 50 μ 1となるように調製した。
[0190] 上記 EVA反応液を 65°Cにて 90分間保温して反応させた。反応終了後、 5 β 1の反 応液を検体として 1.5% ァガロースゲル電気泳動かけて臭化工チジゥムでゲルを染 色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 11に示す。
[0191] 図 11において、レーン 1および 2はそれぞれ、 2fmolおよび 20fmolの pUC18を錡 型として EVAを行った場合の結果である。レーン 3は分子量サイズマーカー 100 bp
DNA Ladder (東洋紡社製)である。レーン 1および 2に示したように、予測される 増幅産物のサイズである 630bp付近の位置に DNA断片のバンドが検出された。
[0192] <実施例 6 >铸型の熱変性段階を含む EVA
铸型として環状プラスミド pUC18、プライマーとして配列番号 13および 14に示した オリゴヌクレオチドを用いて、 EVA法により核酸を増幅した。これらのプライマーを用 レ、た場合の予測される増幅範囲は、約 63 Obpの領域であつた。
[0193] 以下の手順で反応液を調製した。まず、 2種類の酵素(Bst DNAポリメラーゼおよ び変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 46 μ 1 となるように調製した。次に铸型の熱変性のために、この反応液を 95°Cにて 5分間保 持し、その後氷上で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼおよび 変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添カ卩して混合し、最終的に全量 50 μ 1となるよう に EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 5mM 塩化マグ ネシゥム、 ImM ジチオトレイト一ノレ、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP ( dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 4pmolの各プライマー、 20fmol pUC18、 1 6U Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 3. 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純水]を調製した。
[0194] 上記 EVA反応液を 65°Cにて 1時間保温し反応させた。反応終了後、反応液 5 μ 1 を検体として、 1.5% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染 色した後、 UV照射下で増幅産物の有無およびその濃淡を確認した結果を図 12に 示す。
[0195] 図 12において、レーン 1は上記の方法による増幅産物、レーン 2は分子量サイズマ 一力一 100 bp DNA Ladder (東洋紡社製)である。レーン 1において、増幅産物 の予測されるサイズである 630bp付近にバンドを検出した。
[0196] <実施例 7 >プラスミド増幅産物の制限酵素消化
铸型として環状プラスミド pUC18、プライマーとして配列番号 11および 12に示した オリゴヌクレオチドを用レ、、 EVA法により核酸を増幅した。これらのプライマーを用い た場合の予測される増幅範囲は、 pUCl 8のマルチクローニングサイトを含む約 240 bpの領域であった。
[0197] 以下の手順で反応液を調製した。まず、使用する 2種類の酵素(Bst DNAポリメラ ーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 92 μ ΐとなるように調製した。次にこの反応液を 95°Cで 5分間保持し、その後氷上で急冷
した。続いて、反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V を添加して混合し、最終的に全量 100 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺス バッファー(ρΗ7· 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイト一ノレ、 100m M 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 0. 5 mM ベタイン、 32pmolの各プライマー、 4fmolの pUC18、 32Uの Bst DNAポリ メラーゼ(New England Biolabs社製)、 7. 6pmolの変異型 Tma エンドヌクレア — i V,超純水]を調製した。
[0198] 上記 EVA反応液を 65°Cで 75分間保温して反応させた。反応終了後、反応液 5 μ 1 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染 色した後、 UV照射下で、約 240bpの増幅産物が得られたことを確認した。
[0199] 上記反応で得られた増幅産物を制限酵素により消化して、 目的とする核酸配列を 有する DNA断片であるかどうか確認した。増幅反応後の反応液を 90 μ ΐとり、 QIAq uick PCR Purification Kit (キアゲン社製)を用いて増幅産物を精製し、超純水 50 / lで溶出した。精製操作は、当該精製キットに添付された取扱説明書に従った。 得られた溶出液 ΙΟ μ Ιを、制限酵素 BamHI 20U、 Hindlll 20Uまたは Xhol 15 U (二ツボンジーン社製)でそれぞれ消化した。緩衝液は各酵素製品に付属されたも のを使用し、反応液は超純水で全量 20 μ ΐに調製し、 37°Cにて 2時間保温して制限 酵素により消化した。その後 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて、臭化工チジ ゥムでゲルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 13に示 す。
[0200] 図 13において、レーン 1および 6は分子量サイズマーカー 100bp DNA Ladder
(東洋紡社製)、レーン 2は制限酵素処理していない増幅産物、レーン 3は Hindlll消 化物、レーン 4は BamHI消化物、レーン 5は Xhol消化物である。増幅産物が特異的 な増幅によって生成したものであれば、その塩基配列中には、 Hindlllおよび BamH Iの認識サイトがそれぞれ 1ケ所存在し、各酵素で消化したとき 2つの DNA断片が生 じると予測された。 Hindlllで消化したときに生じる断片は 79bpおよび 164bpの長さ であり、 BamHIで消化したときに生じる断片は 109bpおよび 134bpの長さであった。 一方、 Xhol認識サイトは増幅領域内の核酸配列中に存在しないため、増幅産物は
該酵素によって切断されないと予測された。レーン 3および 4に示したように、増幅産 物を Hindlllまたは BamHIで消化した結果、元の増幅産物のバンドは消失し、予測 される消化物の分子量付近にバンドが検出された。レーン 5において、 Xholで処理 した場合には、増幅産物が切断されなかったことを確認した。このこと力ら、上記 EV A法により、 目的とする特異的な増幅産物が得られたことがわかった。
[0201] <実施例 8 >本発明の核酸増幅方法の反応に必要な成分を示す対照試験
EVAのための反応液 1を次の手順で調製した。まず、使用する 2種類の酵素(Bst DNA ポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む 反応液を全量 46 となるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、そ の後氷上で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添カ卩して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組 成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチォ トレィトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0· 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTP および dTTP)、 0. 5mM ベタイン、 16pmolの配列番号 11のプライマー、 16pmol の配列番号 12のプライマー、 2fmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(Ne w England Biolabs社製)、 3. 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純 水]を調製した。
[0202] さらに上記 EVA反応液 1と同様である力 S、 DNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ V 、プライマーセット、 dNTP、および铸型 DNAのいずれかを含まない反応液 2〜6を それぞれ調製した。調製したこれらの EVA反応液を、 65°Cにて 75分間保温して反 応させた。反応終了後、各反応液から 5 μ ΐを分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気 泳動にかけて、臭化工チジゥムでゲルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無 を確認した結果を図 14に示す。
[0203] 図 14において、レーン Μは、分子量サイズマーカー 100 bp DNA Ladder (東 洋紡社製)であり、レーン 1は全ての成分を含む EVA反応液 1、レーン 2〜6はいず れかの成分を含まない反応液 2〜6による結果である。各 EVA反応液に含まれる成 分を表 1に示した。
[0204] [表 1]
表 1 実施例 8の各 E V A反応液に含まれる成分 (+ ) と含まれない成分 (―)
E VA反応液 B s t D N エンドヌク プライマ一 d N T P 铸型 D NA
(レーン番 Aポリメラー レア—ゼ V セッ
号) ゼ
1 + + + + +
2 - + + + +
3 + - + + +
4 + + - + +
5 + + + 一 +
6 + + + + ―
[0205] この結果、全ての成分が含まれる EVA反応液 1 (レーン 1)では予想されるサイズ付 近にバンドが検出され、 目的とする増幅産物が得られたことがわかった。一方、いず れかの成分を含まない反応液 2〜6 (レーン 2〜6)においては、増幅産物は検出され なかった。従って、 EVAの反応によって増幅産物を生成するためには、反応液中に DNAポリメラーゼ、エンドヌクレア一ゼ 、プライマー、 dNTP,および錡型 DNAの存 在が必要であることがわ力、つた。
[0206] く実施例 9 > 1種類のプライマーを用いた増幅
1種類のプライマーを用いた EVAを実施した。プライマーは、配列番号 11または 1 2で示したオリゴヌクレオチドを用いた。
[0207] EVA反応液を次の手順で調製した。まず、使用する 2種類の酵素(Bst DNAポリ メラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 46 / lとなるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上で冷 却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレア ーゼ Vを添加して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0· 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP) 、 0. 5mM ベタイン、 16pmolのプライマー(配列番号 11または 12のプライマー)、 2 Ofmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製) 、 3. 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純水]を調製した。
[0208] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 3時間保温して反応させた。反応終了後、各反応液 力、ら 5 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲ
ルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 15レーン 1〜4 に示す。
[0209] 図 15において、レーン 1は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder (東洋紡 社製)、レーン 2は配列番号 11のプライマーを用いた EVA増幅産物、レーン 3は配 列番号 12のプライマーを用いた EVA増幅産物、レーン 4はプライマーを反応液に加 えなかったサンプルである。レーン 2および 3において、レーン全体にわたって増幅 産物が検出され、 1種類のプライマーを用いた EVAによる核酸の増幅が示された。
[0210] また、上記と同様の手順で、 2fmol pUC18を錡型とした EVA反応を実施した。そ のときの電気泳動結果を図 15レーン 5〜8に示した。図 15において、レーン 5は分子 量サイズマーカー lOObp DNA Ladder、レーン 6は配列番号 11のプライマーを 用いた EVA増幅産物、レーン 7は配列番号 12のプライマーを用いた EVA増幅産物 、レーン 8はプライマーを反応液に加えな力、つたサンプルである。この場合も同様に、 レーン 6およびレーン 7において、レーン全体にわたって増幅産物が検出され、 1種 類のプライマーを用いた EVAによる核酸の増幅が示された。さらに、配列番号 11の プライマーを用いた同様な EVA反応において、反応液に铸型をカ卩えなかった陰性コ ントロール (反応時間 2時間)の電気泳動結果を図 15のレーン 9〜: 11に示した。
[0211] 図 15において、レーン 9は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder、レーン
10は铸型 20fmolを反応液に添加したサンプル、レーン 11は铸型を添加しなかった サンプルである。レーン 10において増幅産物が検出されたのに対して、レーン 11に おいて反応中に铸型が存在しないときには増幅産物が生成しないことを確認した。
[0212] く実施例 10 >種々の反応組成.条件における EVA
(1)エンドヌクレアーゼ Vの量
EVA反応液中のエンドヌクレアーゼ Vの量を 3. 8〜77pmolの範囲として EVAを 実施した。まず、反応液を次の手順で調製した。酵素(Bst DNAポリメラーゼと変異 型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 44 μ 1となるよ うに調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上で冷却した。続いて 、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添加し て混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファ
一(pH7. 4)、 5mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸 カリウム、各 0· 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 4pmolの各プ ライマー(配列番号 11および 12のプライマー)、 20fmolの pUC18、 16Uの Bst D NAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 19〜77pmolの範囲の一定量の 変異型 Tma エンドヌクレア一ゼ 、超純水]を調製した。調製したこれらの EVA反 応液を、 65°Cにて 1時間保温して反応させた。
[0213] また上記と同様の手順で、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 4mM 塩ィ匕マグネシウム、 ImM ジチオトレイト一ノレ 、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTT P)、 16pmolの各プライマー、 20fmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(N ew England Biolabs社製)、 0または 3. 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一 i V,超純水]を調製した。調製したこれらの EVA反応液を、 65°Cにて 90分間保温 して反応させた。
[0214] 反応終了後、各 EVA反応液から 5 μ ΐを分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳 動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確 認した。そのときの電気泳動の結果を図 16に示す。
[0215] 図 16において、レーン 1および 7は、分子量サイズマーカー 100bp DNA Ladde r (東洋紡社製)、レーン 2〜6はエンドヌクレアーゼ Vの量を、それぞれ 19、 29、 38、 58および 77pmolとした場合の結果である。またレーン 8はエンドヌクレアーゼ Vを加 えなかった場合、レーン 9はエンドヌクレアーゼ Vの量を 3. 8pmolとした場合の結果 である。ここで実施した条件においては、エンドヌクレアーゼ Vの量が 3. 8〜38pmol の範囲の場合に、特異的な単一バンド(約 240bp)の増幅産物が生成された(レーン 2、 3、 4および 9)。また、エンドヌクレアーゼ Vをカ卩えなかった場合は、全く増幅が観 測されなかった(レーン 8)。
[0216] (2)プライマーの量および錡型の量
プライマーの量が異なる EVA反応液を調製し、 EVAを実施した。まず、酵素を除く 全ての成分を含む反応液を全量 46 μ 1となるように調製した。次に反応液を 95°Cに て 5分間保持し、その後氷上で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラ
ーゼと変異型 Tmaエンドヌクレアーゼ Vを添加して混合し、最終的に全量 50 μ 1の Ε VA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 5mM 塩化マグネシ ゥム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0· 4mMの dNTP (dA TP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 2、 4または 8pmolの各プライマー(配列番号 11 および 12のプライマー)、 2fmolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 19pmolまたは 29pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一 i V,超純水]を調製した。
[0217] また、上記と同様の手順で、錡型の量が異なる EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP) 、 16pmolの各プライマー、 200amolまたは 20amolの pUC18、 16Uの Bst DNA ポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 19pmolの変異型 Tma エンドヌクレ ァーゼ V、超純水]を調製した。
[0218] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 1時間保温して反応させた。反応終了後、各反応液 力ら 5 μ ΐを分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲ ルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 17に示す。
[0219] 図 17において、レーン 1および 7は、分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladde rである。レーン 2〜4は、 19pmolのエンドヌクレア一ゼ 、それぞれ 8、 4、 2pmolの プライマーを使用した場合の結果である。また、 19pmolのエンドヌクレア一ゼ 、 16 pmolのプライマー、 200amolおよび 20amolの铸型を用いた場合の結果はそれぞ れレーン 5および 6である。レーン 8〜10は、 29pmolのエンドヌクレア一ゼ 、それぞ れ 8、 4、 2pmolのプライマーを用いた場合の結果である。これらの結果から、上記条 件においては、 4〜: 16pmolのプライマー、また 20amol、 200amol、 2fmolの铸型 量を使用した場合、特異的な単一バンド (約 240bp)の増幅産物が得られることがわ かった。
[0220] (3)塩化マグネシウム濃度および dNTP濃度
反応液中の塩化マグネシウム濃度を 2〜: 12mMの範囲として EVAにより核酸を増 幅した。まず、 EVA反応液を次の手順で調製した。酵素(Bst DNAポリメラーゼと
変異型 Tmaエンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 47 μ 1とな るように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上で冷却した。続 いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添 加して混合し、最終的に全量 50 μ ΐの EVA反応液 [最終組成: 1 OmM へぺスバッ ファー(pH7. 4)、 2、 4、 5、 6、 7、 8または 12mMの塩化マグネシウム、 ImM ジチ オトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGT Pおよび dTTP)、 16pmolの各プライマー(配列番号 11および 12のプライマー)、 20 Oamolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製) 、 19pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純水]を調製した。
[0221] 上記 EVA反応液を、 65°Cで 1時間保温して反応させた。反応終了後、各反応液か ら 5 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけた。泳動後のァガロース ゲルを臭化工チジゥムで染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した。そ の結果、上記条件においては、塩ィ匕マグネシウムが終濃度 4mMの場合に最も明瞭 に目的とする増幅産物が検出されることがわかった。
[0222] 次に、反応液中の dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)濃度を 0· 2〜: ί · 0 mMとして EVAにより核酸を増幅した。まず、上記と同様の手順で、 EVA反応液 [最 終組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジ チ才トレイト一ノレ、 lOOmM 酢酸カリウム、 0. 2、 0. 4、 0. 6、 0. 8また ίま 1. OmMの 各 dNTP、 16pmolの各プライマー、 200amolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメ ラーゼ(New England Biolabs社製)、 19pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一 ゼ 、超純水]を調製した。
[0223] 調製したこれらの EVA反応液を、 65°Cで 1時間保温して反応させた。反応終了後 、各反応液から 5 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけた。泳動後 のァガロースゲルを臭化工チジゥムで染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を 確認した。その結果、上記条件においては、各 dNTPが終濃度 0. 2〜0. 4mMのと き、明瞭に目的とする増幅産物が得られることがわかった。
[0224] 図 17のレーン 5および 6に、 4mM 塩化マグネシウム、 0. 4mMの各 dNTP、 200 および 20amolの錡型を用いた場合の結果をそれぞれ示した (他の反応組成、反応
条件は上記と同様)。
[0225] (4)塩類の種類と濃度およびべタインの濃度
反応液中に共存させる塩類として酢酸カリウムを用い、その濃度を 50〜: 150mMと して EVAにより核酸を増幅した。まず、 EVA反応液を次の手順で調製した。酵素(B st DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む 反応液を全量 46 となるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、そ の後氷上で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添カ卩して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組 成: 10mM へぺスバッファー(pH7. 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチォ 卜レイ卜一ノレ、 50、 75、 100、 125または 150mMの酢酸カリウム、各 0. 4mMの dNT P (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 16pmolの各プライマー(配列番号 11およ び 12のプライマー)、 200amolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(New E ngland Biolabs社製)、 3· 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純水]を 調製した。
[0226] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 90分間または 2時間保温して反応させた。反応終 了後、各反応液から 5 μ ΐを分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけた。泳 動後のァガロースゲルを臭化工チジゥムで染色した後、 UV照射下で増幅産物の有 無を確認した。その結果、上記条件においては、酢酸カリウムが終濃度 100〜125m Mの範囲で目的とする増幅産物が得られることがわかった。
[0227] また、上記と同様の手順で、反応液中に共存させる塩類として塩ィ匕カリウム(10〜1 30mM)を用いて EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー (pH7. 4)、 4 mM 塩ィ匕マグネシウム、 ImM ジチォ卜レイ卜一ノレ、 10、 30、 50、 70、 90、 110ま たは 130mMの塩化カリウム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび d TTP)、 16pmolの各プライマー(配列番号 11および 12のプライマー)、 200amolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ、 7. 7pmolの変異型 Tmaエンドヌクレア一 i V,超純水]を調製した。
[0228] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 2時間保温した。反応終了後、各反応液から 5 μ 1を 分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色し
た後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した。その結果、上記条件においては、 塩化カリウムが終濃度 70〜90mMとした場合、 目的とする増幅産物が確認された。
[0229] さらに、上記と同様の手順で EVA反応液中のベタイン(N、 N、 N—トリメチルダリシ ン)の濃度を 0. 5〜: 1. 5Mとして EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー (pH7. 4)、4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸力 リウム、 0. 5、 1. 0または 1. 5Mのべタイン、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 d GTPおよび dTTP)、 16pmolの各プライマー(配列番号 11および 12のプライマー) 、 200amolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ、 3. 8pmolの変異型 Tmaェ ンドヌクレア一ゼ 、超純水]を調製した。
[0230] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 90分間保温して反応させた。反応終了後、各反応 液から 5 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムで ゲルを染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 18に示す。
[0231] 図 18において、レーン 1は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder (東洋紡 社製)であり、レーン 2は終濃度 1 · 5M ベタイン、レーン 3は終濃度 1 · 0M ベタイン 、レーン 4は終濃度 0. 5M ベタインを用いた場合の結果である。この結果から、上 記条件においては、ベタインの終濃度が 0. 5〜: 1. 0Mの場合に目的とする増幅産 物が得られることがわ力 た。
[0232] (5)インキュベーションの温度
反応のインキュベーションの温度を 48〜70°Cの範囲として EVAにより核酸を増幅 した。まず、反応液を次の手順で調製した。酵素(Bst DNAポリメラーゼと変異型 T ma エンドヌクレアーゼ V)を除く全ての成分を含む反応液を全量 46 μ 1となるように 調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上で冷却した。続いて、そ の反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌクレアーゼ Vを添加して 混合し、最終的に全量 50 μ ΐの EVA反応液 [最終組成: 10mM へぺスバッファー( pH7. 4)、4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイトール、 lOOmM 酢酸カリ ゥム、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGTPおよび dTTP)、 16pmolの各プラ イマ一(配列番号 11および 12のプライマー)、 20amolの pUC18、 16Uの Bst DN Aポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 19pmolの変異型 Tma エンドヌク
レアーゼ¥、超純水]を調製した。
[0233] 上記 EVA反応液を複数調製し、グラジェントサーマルサイクラ一 MJ Opticon (ェ ムジヱイジャパン社製)上でそれぞれを 48〜70°Cの範囲の異なる一定温度に保持し 、 1時間インキュベートすることにより反応させた。反応終了後、各反応液から 5 を 分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色し た後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した。その結果、上記条件においては、 インキュベーション温度が 64°Cのときに、良好な増幅が確認された。
[0234] <実施例 11 > Bacillus caldotenax由来の DNAポリメラーゼを使用した EVA
鎖置換型 DNAポリメラーゼとして、 Bacillus caldotenax由来の 5'→3 'ェキソヌ クレアーゼ欠損 DNAポリメラーゼ(Bca DNAポリメラーゼ)を使用し、 EVAにより核 酸を増幅した。反応液を次の手順で調製した。まず、酵素を除く全ての成分を含む 反応液を全量 45. 5 となるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、 その後氷上で冷却した。続いて、その反応液に Bca DNAポリメラーゼと変異型 Tm aエンドヌクレアーゼ Vを添加して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終 組成: 10mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチ オトレイトール、 lOOmM 酢酸カリウム、各 0· 4mMの dNTP (dATP、 dCTP、 dGT Pおよび dTTP)、 16pmolの各プライマー(配列番号 11および 12のプライマー)、 2f molの pUC18、 5Uの Bca DNAポリメラーゼ(BcaBEST DNAポリメラーゼ、タカ ラバイオ社製)、 3· 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレアーゼ V、超純水]を調製した
[0235] 上記 EVA反応液を、 60°Cにて 1時間保温して反応させた。反応終了後、反応液か ら 5 を分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけた。泳動後のァガロース ゲルを臭化工チジゥムで染色した後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した。そ のときの電気泳動像を図 18のレーン 5に示した。この結果、予測される長さの特異的 なバンド (約 240bp)が確認され、増幅産物が得られたことがわかった。
[0236] <実施例 12 >アウタープライマーを用いた EVA
アウタープライマーを用いて EVAにより核酸を増幅した。錡型として環状プラスミド p UC18を、プライマーとして配列番号 11および 12に示したオリゴヌクレオチドを、ァゥ
タープライマーとして配列番号 15および 16に示したオリゴヌクレオチドを使用した。 配列番号 15のアウタープライマーは、 pUC18铸型上において、配列番号 11のプラ イマ一がアニーリングする領域の 17塩基ほど上流の位置にアニーリングするように設 計した。また、配列番号 16のアウタープライマーは、 pUC18铸型上において、配列 番号 12のプライマーがアニーリングする位置の 17塩基ほど上流の位置にァユーリン グするように設計した。
[0237] EVA反応液を次の手順で調製した。まず、酵素を除く全ての成分を含む反応液を 全量 46 となるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上 で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNAポリメラーゼと変異型 Tmaエンドヌク レアーゼ Vを添加して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10m M へぺスバッファー(pH7. 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImMジチオトレイト一 ノレ、 lOOmM 酢酸カリウム、 0. 5mM ベタイン、各 0. 4mMの dNTP (dATP、 dCT P、 dGTPおよび dTTP)、 16pmolの配列番号 11のプライマー、 16pmolの配列番 号 12のプライマー、 4pmolの配列番号 15のアウタープライマー、 4pmolの配列番号 16のアウタープライマー、 20amolの pUC18、 16Uの Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)、 3· 8pmolの変異型 Tmaエンドヌクレアーゼ V、超純水] を調製した。
[0238] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 90分間保温した。反応終了後、反応液から 5 β 1を 分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色し た後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 18のレーン 6に示す。この 結果から、予測される長さの特異的なバンド (約 240bp)が確認され、増幅産物が得 られたことがわかった。
[0239] ぐ実施例 13 >非標的核酸の共存下における標的核酸の増幅
標的核酸配列を有する錡型として環状プラスミド PUC18を用レ、、標的ではない核 酸 (非標的核酸)が大量に存在する条件下で、 EVAにより核酸を増幅した。
[0240] EVA反応液を次の手順で調製した。まず、酵素を除く全ての成分を含む反応液を 全量 46 となるように調製した。次に反応液を 95°Cにて 5分間保持し、その後氷上 で冷却した。続いて、その反応液に Bst DNA ポリメラーゼと変異型 Tma エンドヌ
クレアーゼ Vを添カ卩して混合し、最終的に全量 50 μ 1の EVA反応液 [最終組成: 10 mM へぺスバッファー(ρΗ7· 4)、 4mM 塩化マグネシウム、 ImM ジチオトレイト ール、 lOOmM 酢酸カリウム、 0· 5mM ベタイン、各 0· 4mMの dNTP (dATP、 d CTP、 dGTPおよび dTTP)、 16pmolの配列番号 11のプライマー、 16pmolの配列 番号 12のプライマー、 2fmolの pUC18、 l z gの pET16b、 16Uの Bst DNAポリメ ラーゼ(New England Biolabs社製)、 3. 8pmolの変異型 Tma エンドヌクレア一 i V,超純水]を調製した。ここで使用した環状プラスミド pET16bは、使用したプライ マーの標的となる核酸配列を持っていなレ、。また使用した pET16bの量は、増幅なし に電気泳動で観測可能なほど大量である。
[0241] 上記 EVA反応液を、 65°Cにて 90分間保温した。反応終了後、反応液から 5 μ 1を 分取して、 2. 0% ァガロースゲル電気泳動にかけて臭化工チジゥムでゲルを染色し た後、 UV照射下で増幅産物の有無を確認した結果を図 18のレーン 8に示す。なお 、図 18のレーン 7は分子量サイズマーカー lOObp DNA Ladder (東洋紡社製)で ある。この結果、レーン 8において、分子量の大きな大量の pET16bに由来するバン ドとは別に、予測される長さの特異的なバンド (約 240bp)が増幅産物として確認され た。このことから、 EVA反応液中において、微量の標的核酸核酸配列の存在に対し て、非標的核酸配列が大過剰に共存する場合でも、標的核酸配列のみが特異的に 増幅されることがわ力つた。
[0242] <実施例 14 >様々な変異型エンドヌクレアーゼ Vを用いた増幅
実施例 1 (2)で作製した Y80Aおよび D105A変異を導入した変異型エンドヌクレア ーゼ V遺伝子を有する組換え体 DNA(pET16 TmaEVM2)を铸型として用い、実 施例 1 (2)と同様の方法で、アミノ酸 Zをさらに別のアミノ酸に変えた変異型エンドヌ
2
クレアーゼ Vの遺伝子を作製した。
[0243] 表 2に示すオリゴヌクレオチドを変異導入用プライマーとして用レ、、アミノ酸 Z力 グ
2 リシン、アルギニン、ヒスチジン、グノレタミン酸、ァスパラギン、およびグルタミンの変異 型エンドヌクレアーゼ V遺伝子を有する組換え体 DNAを作製した(それぞれ、 pETl 6 TmaEVM2— 2、 pET16 TmaEVM2— 3、 pET16 TmaEVM2— 4、 pET16 TmaEVM2— 5、 pET16 TmaEVM2— 6、 pET16 TmaEVM2_ 7と呼ぶ)。
[0244] [表 2]
表 2 変異導入用プライマー配列
[0245] さらに実施例 1 (3)と同様の方法で、各々の変異型エンドヌクレアーゼ Vの発現と精 製を行った。このようにして、アミノ酸 Z力 グリシン、アルギニン、ヒスチジン、グノレタミ
2
ン酸、ァスパラギン、およびグルタミンの変異型エンドヌクレアーゼ V酵素標品を得た (それぞれ、 TmaEVM2— 2、 TmaEVM2— 3、 TmaEVM2— 4、 TmaEVM2— 5 、 TmaEVM2— 6、 TmaEVM2— 7と呼ぶ)。これらの酵素はいずれも特願 2005— 308533に開示されたエンドヌクレアーゼ Vの切断活性測定法と同様の方法によって 、野生型エンドヌクレアーゼ Vよりも高い特異性を有し、実施例 1で作製した Y80Aお よび D 105A変異を導入した変異型エンドヌクレアーゼ Vと同等またはそれ以上の高 い特異性を有することが確認された。これらの酵素を用い、実施例 8と同様の方法で EVAを実施したところ、いずれの酵素も EVAに使用できることが示された。さらに、ァ ミノ酸 Zがグルタミン酸、ァスパラギン、およびグルタミンの変異型エンドヌクレアーゼ
2
V (TmaEVM2 _ 5、 TmaEVM2 _ 6、および TmaEVM2 _ 7)は、実施例 1で作製 した変異型エンドヌクレアーゼ Vよりもさらに特異性が高ぐより好ましく EVAに使用 することができるエンドヌクレアーゼ Vの例であることが示された。
[0246] く実施例 15 > (ひ一 S)ヌクレオチド含有プライマーの使用
( _ S)ヌクレオチドを様々な位置および割合で含有するプライマーセットを用い て、実施例 8と同様の EVA反応を実施した。使用したプライマーセットおよびその増 幅結果を表 3に示す。
[0247] [表 3]
表 3 (α-S) ヌクレオチド含有プライマーを用いた増幅
a ホスホロチ才 ト基 (*)
b塩基 Xより上流側の —( α— S ) ヌクレオチドの割合 «)
c EVAによる堉幅の結果: +、"增幅ぁ ·り ; ― 增幅なし
[0248] 表 3から分かるように、プライ セット S01 S05を使用した反応では増幅産物が 得られた。すなわち、プライマーの塩基 Xの上流側の領域の全ヌクレオチドのうち、少 なくとも 1つ以上、約 60%以下のヌクレオチド力 S S)ヌクレオチドであるプライマ セットでは増幅産物が得られた。一方、プライマーの塩基 Xの上流側の領域の全ヌ クレオチドが( α S)ヌクレオチドであるプライ (プライ セット S06)では増幅 が起こらなかった。
[0249] <実施例 16 > 1本鎖核酸結合タンパク質の使用
実施例 8と同様の反応組成の EVA反応液 50 l中に、さらに 0. 5 3μ §の大腸菌 SSBタンパク質(SIGMA)、大腸菌 RecAタンパク質(NEB)、または T4ファージ gp 32 (NEB)をそれぞれ添加し、実施例 8と同様の反応条件で EVAを実施した。この 結果、大腸菌 RecAタンパク質および T4ファージ gp32について、試験をした範囲に おいて増幅反応が起きた。大腸菌 SSBタンパク質では 1. 5 z gより多く添加した場合 に増幅反応が起こらず、 EVA反応が阻害されることが示された。従って、 EVAに用 いる 1本鎖核酸結合タンパク質の好ましい量は、反応混合物 50 μ冲に大腸菌 SSB タンパク質は約 0. 5〜: 1. 5 g 大腸菌 RecAタンパク質および T4ファージ gp32は 約 0. 5 3 gの範囲内であることが分力 た。
産業上の利用可能性
[0250] 本発明の核酸増幅方法は、次の(1) (9)の利点を有しており、産業上非常に有 用である。
(1)高価な温度サイクリング装置が不要な等温反応条件の下で核酸の合成と増幅を 達成する核酸配列の増幅方法を提供できる。
(2)使用するプライマーが少なくとも 1つの塩基 Xを含んでいればよいことから、プライ マー設計における制約が少なレ、。
(3) DNA合成用の基質として、コスト高につながる修飾 dNTP [例えばひ _ S _dNT Pなど)を大量に用いる必要のなレ、、核酸配列の増幅方法を提供できる。
[0251] (4)修飾ヌクレオチドを多量に含む核酸断片や、標的配列が何度も繰り返した異なる 長さの核酸断片の混合物とレ、つた、次工程での利用に制約のあるような増幅産物を 与えない、核酸配列の増幅方法を提供できる。
(5)標的配列中に特定の制限酵素認識部位が存在するか否かに依存しないで、任 意の配列領域を標的とすることのできる、核酸配列の増幅方法を提供できる。
(6)環状の錡型核酸を調製するための付加的な前工程を必須としない、核酸配列の 増幅方法を提供できる。
(7)ある 1つの標的配列の増幅を達成するのに多数の領域に対して複雑かつ制約の 多レ、プライマー配列の設計をするような必要のなレ、、核酸配列の増幅方法を提供で きる。
[0252] (8)不安定で分解されやすレ、RNA成分をプライマー分子中に含有せしめる必要の なレ、、核酸配列の増幅方法を提供できる。
(9)反応に酵素活性のためのエネルギー供給物質としての ATPや dATPなどのコフ アクターを反応中に大量に存在させる必要がなぐまた反応中に ATP再生系を共存 させる必要のない、核酸配列の増幅方法を提供できる。
(10)必ずしも標的核酸の配列の全てが既知である必要はなぐ既知の限られた配列 情報に基づレ、て設計したプライマーを用レ、、未知の核酸配列を含む増幅産物を得る ことが可能である。
配列表フリーテキスト
[0253] 配列番号 1:エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列。
配列番号 2:変異型エンドヌクレアーゼ Vのアミノ酸配列。
配列番号 3:エンドヌクレアーゼ V遺伝子増幅用上流側プライマーとして設計された D
配列番号 4:エンドヌクレアーゼ V遺伝子増幅用下流側プライマーとして設計された D 配列番号 5 : Y80A変異導入用オリゴヌクレオチド 1として設計された DNA。
配列番号 6: Y80A変異導入用オリゴヌクレオチド 2として設計された DNA。
配列番号 7: D105A変異導入用オリゴヌクレオチド 1として設計された DNA。
配列番号 8: D105A変異導入用オリゴヌクレオチド 2として設計された DNA。
配列番号 9:デォキシイノシン含有プライマー PIT321— 01として設計された DNA
。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 10:デォキシイノシン含有プライマー PIT541— 01として設計された DN A。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 11:デォキシイノシン含有プライマー PIT321—04として設計された DN A。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 12:デォキシイノシン含有プライマー PIT541— 04として設計されたDN A。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 13 :デォキシイノシン含有プライマー PIT1849— 02として設計された DN A。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 14 :デォキシイノシン含有プライマー PIT2454— 02として設計された DN
A。ヌクレオチド配列中の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 15:アウタープライマー PIT321— OP1として設計された DNA。
配列番号 16:アウタープライマー PIT541— OP1として設計された DNA。
配列番号 17:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 18:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 19:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 20:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 21:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 22:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 23:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 24:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 25:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 26:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 27:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 28:変異導入用プライマーの塩基配列。
配列番号 29: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 30: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 31: ( a _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 32: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 33: (α— S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 1 ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 34: (α— S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 1 ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 35: (α— S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 1 ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 36: (α— S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 1 ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 37: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 lj。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 38: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 39: (ひ _S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基配歹 IJ。ヌクレオチド配列中 の iはデォキシイノシンを示す。
配列番号 40: (ひ一S)ヌクレオチド含有プライマーの塩基酉己列。ヌクレオチド配列中
の iはデォキシイノシンを示す。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れるこ となく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。 なお、本出願は、 2006年 7月 26日付けで出願された日本特許出願(特願 2006— 203414)および 2007年 5月 23日付けで出願された日本特許出願(特願 2007— 1 36392)に基づいており、その全体が引用により援用される。