明 細 書
エレベータ制御システム 技術分野
[0001] この発明は、ビルにおける火災発生時にエレベータに対する避難運転制御を実施 するエレベータ制御システムに関するものである。 背景技術
[0002] 従来のエレベータ制御システムでは、ビル内で火災が発生すると、力ごを避難階に 移動させた後にエレベータの運転を停止させていた。しかし、近年のビルでは、防火 区画技術等が向上しているため、火災発生階やその 1階上の階を除く階では、火災 の影響を受けることが少なく、エレベータの運転を継続することが可能となって 、る。 このため、火災時に火災発生階と避難階との間で救出運転を実施する避難用エレべ ータが提案されている (例えば、特許文献 1参照)。
[0003] 特許文献 1 :特開平 6— 16357号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 上記のような従来のエレベータ制御システムでは、管理者が火災状況やエレべ一 タの状況を確認した上でエレベータの避難運転を開始するので、避難運転の開始ま でに時間がカゝかってしまう。また、避難運転中も、管理者が状況を確認し続ける必要 があり、手間がかかってしまう。
[0005] この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、避難運転の 可否を効率的に判断することができるエレベータ制御システムを得ることを目的とす る。
課題を解決するための手段
[0006] この発明によるエレベータ制御システムは、火災発生時に、火災及びエレベータに 関する情報に基づいてエレベータの避難運転の可否を判定し、避難運転が可能で あると判定されると避難運転の指令をエレベータ制御装置に出力する避難運転制御 部を備えている。
図面の簡単な説明
[0007] [図 1]この発明の実施の形態 1によるエレベータ制御システムを示すブロック図である
[図 2]図 1の救出階設定手段による救出階の設定方法の一例を示す説明図である。
[図 3]図 1の避難運転制御部の火災発生時の動作を示すフローチャートである。
[図 4]図 1の開始判定手段の動作の一例を示すフローチャートである。
[図 5]図 1の継続判定手段の動作の一例を示すフローチャートである。
発明を実施するための最良の形態
[0008] 以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態 1.
図 1はこの発明の実施の形態 1によるエレベータ制御システムを示すブロック図であ る。ビル内には、多数の火災感知器が設置されている。これらの火災感知器には、例 えばエレベータ乗場 (乗降ロビー)に設置された乗場火災感知器 1、エレベータ乗場 に近接する廊下に設置された廊下火災感知器 2、エレベータ機械室に設置された機 械室火災感知器 3、エレベータ昇降路に設置された昇降路火災感知器 4、電気室に 設置された電気室火災感知器 5、及びケーブル配線用の EPS (Electric Pipe Space) に設置された EPS火災感知器 6が含まれて 、る。
[0009] また、各階のエレベータ乗場には、エレベータ乗場をその周囲の領域から防火上 遮断する複数の防火戸が設けられている。各防火戸には、防火戸が閉鎖されたこと を検出するための閉鎖確認スィッチ 7が設けられている。
[0010] ビル内の防災センタには、防災管理装置 8及びエレベータ管理装置 9が設けられて いる。火災感知器 1〜6及び閉鎖確認スィッチ 7からの信号は、防災管理装置 8に入 力される。防災管理装置 8は、火災感知器 1〜6からの信号に基づいて火災発生階 を特定し、火災発生階から昇降路への煙の進入を防ぐために火災発生階及びその 上方階のエレベータ乗場の防火戸を自動的に閉鎖させる。
[0011] エレベータ管理装置 9は、防災管理装置 8に接続されている。エレベータ管理装置
9は、防災管理装置 8からの情報に基づいて群管理装置 10a〜10cを制御する。各 群管理装置 10a〜10cは、対応する複数(図 1では 1つずつ示す)の各台制御装置、
即ち低層エレベータ制御装置 11、中層エレベータ制御装置 12及び高層エレベータ 制御装置 13を制御する。各エレベータのピットには、ピット内の冠水を検出するため のピット冠水検出器 14が設置されている。ピット冠水検出器 14力もの信号は、エレべ ータ制御装置 11〜13及び群管理装置 10a〜: LOcを介してエレベータ管理装置 9〖こ 入力される。
[0012] エレベータ管理装置 9は、マイクロコンピュータによって構成されて!、る。また、エレ ベータ管理装置 9は、火災発生時にエレベータによる避難運転を実施するための避 難運転制御部 15を有している。避難運転制御部 15は、通信手段 16、開始判定手 段 17、継続判定手段 18、救出階設定手段 (避難計画立案手段) 19及び避難運転 指令手段 20を有している。
[0013] 各手段 16〜20の機能は、エレベータ管理装置 9を構成するマイクロコンピュータに よって実現される。即ち、マイクロコンピュータには、各手段 16〜20の機能を実現す るためのプログラムが格納されている。
[0014] 通信手段 16は、外部との通信を行うための手段である。開始判定手段 17は、火災 及びエレベータに関する情報に基づいて、避難運転開始の可否を判定する。避難 運転制御部 15には、避難運転の開始の可否を判定するための開始条件が設定され ている。
[0015] 継続判定手段 18は、火災及びエレベータに関する情報に基づいて、避難運転継 続の可否を判定する。避難運転制御部 15には、避難運転の継続の可否を判定する ための継続条件が設定されて!ヽる。
[0016] 救出階設定手段 19は、避難運転の方法を火災の状況に応じて設定する。具体的 には、救出階設定手段 19は、防災管理装置 8からの火災発生階を特定する情報に 基づいて、救出階を設定するとともに、閉鎖すべき防火戸を決定し閉鎖指令を生成 する。
[0017] 避難運転指令手段 20は、開始判定手段 17及び継続判定手段 18により避難運転 が可能であると判定されると、救出階設定手段 19で作成された避難計画に基づいて 、エレベータ制御装置である群管理装置 10a〜10cに対して運転指令を出力する。 また、避難運転指令手段 20は、開始判定手段 17又は継続判定手段 18により避難
運転が不可であると判定されると、避難運転の中止指令を群管理装置 10a〜10cに 対して出力する。
[0018] なお、防災管理装置 8、群管理装置 10a〜10c及びエレベータ制御装置 11〜13 についても、それぞれ独立したコンピュータにより構成されている。
[0019] ここで、避難運転の開始条件及び継続条件としては、例えば以下の条件を挙げる ことができる。
(1)全サービス階の乗場火災感知器 1が火災非検出である。即ち、サービス階のェ レベータ乗場のうち 1箇所でも火災が検出されたら、そのエレベータによる避難運転 は実施しない。
(2)全サービス階の廊下火災感知器 2が火災非検出である。
(3)機械室火災感知器 3及び昇降路火災感知器 4が火災非検出である。
(4)救出階及び救出階直下階の火災感知器が火災非検出である。
(5)電気室火災感知器 5及び EPS火災感知器 6が火災非検出である。
(6)火災発生階及びその 1階上の階の防火戸 (煙進入防止装置)の正常な動作が 確認されている。
(7)火災発生直後に火災時管制運転が実施されたことが確認されて 、る。
(8)ピット冠水検出器 14が冠水非検出である。
開始条件及び継続条件は、上記(1)〜 (8)の全ての条件が成立した場合に避難運 転を許可するように設定することができる。また、(1)〜(8)のうちから選択された 1つ 又は複数の条件が成立した場合に避難運転を許可するように設定することもできる。
[0020] 次に、図 2は図 1の救出階設定手段 19による救出階の設定方法の一例を示す説明 図である。図において、低層エレベータのサービス階は、 16階〜 1階である。中層ェ レベータのサービス階は、 31階〜 16階及び 1階である。高層エレベータのサービス 階は、 45階〜 31階及び 1階である。
[0021] 図 2の例では、中層エレベータのサービス階で火災が発生しており、低層エレべ一 タによる避難運転の救出階が 13階に、中層エレベータによる避難運転の救出階が 2 4階に、高層エレベータによる避難運転の救出階が 35階にそれぞれ設定されて 、る 。また、全てのエレベータによる避難運転の避難階が 1階に設定されている。利用者
は、救出階まで階段で避難した後、救出階力 避難階までエレベータにより避難する ことができる。
[0022] 図 3は図 1の避難運転制御部 15の火災発生時の動作を示すフローチャートである 。防災管理装置 8で火災が確定されると、その情報が避難運転制御部 15に入力され る。これにより、避難運転制御部 15は、全てのエレベータについて火災時管制運転 を実施するための指令を出力する (ステップ Sl)。火災時管制運転では、力ごが避難 階に帰着され休止される。
[0023] また、避難運転制御部 15は、火災確定の情報を受けると、救出階の設定を行う (ス テツプ S2)。火災時管制運転指令の出力及び救出階の設定の後、避難運転制御部 15は、エレベータによる避難運転の開始が可能であるかどうかを上記のような開始条 件に基づいて判定する (ステップ S3)。避難運転の開始が不可であれば、全てのェ レベータのかごを避難階で休止させたまま (ステップ S7)、処理を終了する。
[0024] 避難運転の開始が可能であれば、避難運転を実施する (ステップ S4)。避難運転 実施中は、避難運転を継続するかどうかの判定を繰り返し実施する (ステップ S5)。そ して、避難運転を継続すべきでないと判定されると、避難運転を終了し (ステップ S6) 、全てのかごを避難階に帰着させ休止させ (ステップ S7)、処理を終了する。
[0025] 図 4は図 1の開始判定手段 17の動作の一例を示すフローチャートであり、図 3のス テツプ S3の動作の具体例を示している。開始判定手段 17は、まず所定の防火戸、 即ち火災発生階及びその 1階上の階のエレベータ乗場の防火戸が閉鎖されたかどう 力を閉鎖確認スィッチ 7からの信号に基づいて判定する (ステップ S8)。そして、これ らの防火戸の閉鎖が確認できな 、場合、全バンクのエレベータの避難運転は不可と 判定する (ステップ S 14)。
[0026] また、開始判定手段 17は、電気設備で火災が検出されたかどうかを電気室火災感 知器 5及び EPS火災感知器 6からの信号に基づいて判定する (ステップ S9)。そして 、電気設備の一部ででも火災が検出された場合、全バンクのエレベータの避難運転 は不可と判定する(ステップ S 14)。
[0027] さらに、開始判定手段 17は、救出階又はその 1階下の階のどこかで火災が検出さ れた力どうかを各階の火災感知器力 の信号に基づいてエレベータバンク毎に判定
する (ステップ S10)。そして、救出階又はその 1階下の階で火災が検出された場合、 当該バンクのエレベータの避難運転は不可と判定する。
[0028] さらにまた、開始判定手段 17は、サービス階の乗場火災感知器 1により火災が検出 されたかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S 11)。そして、サービス階 の乗場火災感知器 1により火災が検出された場合、当該バンクのエレベータの避難 運転は不可と判定する。
[0029] また、開始判定手段 17は、サービス階の廊下火災感知器 2により火災が検出され たかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S12)。そして、サービス階の廊 下火災感知器 2により火災が検出された場合、当該バンクのエレベータの避難運転 は不可と判定する。
[0030] さらに、開始判定手段 17は、機械室火災感知器 3又は昇降路火災感知器 4により 火災が検出されたかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S13)。そして、 機械室火災感知器 3又は昇降路火災感知器 4により火災が検出された場合、当該バ ンクのエレベータの避難運転は不可と判定する。
[0031] 上記の判定のうち、エレベータバンク毎の判定 (ステップ S10〜 13)のいずれかで 火災が検出された場合、開始判定手段 17は、当該バンク以外のエレベータのみに ついて避難運転が可能であると判定する (ステップ S15)。また、全ての判定条件 (ス テツプ S8〜13)を満たした場合のみ、全バンクのエレベータによる避難運転が可能 であると判定する(ステップ S 16)。
[0032] 図 5は図 1の継続判定手段 18の動作の一例を示すフローチャートであり、図 3のス テツプ S5の動作の具体例を示している。継続判定手段 18は、電気設備で火災が検 出された力どうかを電気室火災感知器 5及び EPS火災感知器 6からの信号に基づい て判定する (ステップ S21)。そして、電気設備の一部ででも火災が検出された場合、 全バンクのエレベータの避難運転の継続は不可と判定する (ステップ S 28)。
[0033] また、継続判定手段 18は、ピット冠水検出器 14からの信号に基づいてピットが冠水 したかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S22)。そして、ピット冠水が 検出された場合、当該バンクのエレベータの避難運転の継続は不可と判定する。
[0034] さらに、 «続判定手段 18は、救出階又はその 1階下の階のどこかで火災が検出さ
れた力どうかを各階の火災感知器力 の信号に基づいてエレベータバンク毎に判定 する (ステップ S23)。そして、救出階又はその 1階下の階で火災が検出された場合、 当該バンクのエレベータの避難運転の継続は不可と判定する。
[0035] さらにまた、継続判定手段 18は、サービス階の乗場火災感知器 1により火災が検出 されたかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S 24)。そして、サービス階 の乗場火災感知器 1により火災が検出された場合、当該バンクのエレベータの避難 運転の継続は不可と判定する。
[0036] また、継続判定手段 18は、サービス階の廊下火災感知器 2により火災が検出され たかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S25)。そして、サービス階の廊 下火災感知器 2により火災が検出された場合、当該バンクのエレベータの避難運転 の継続
は不可と判定する。
[0037] さらに、継続判定手段 18は、機械室火災感知器 3又は昇降路火災感知器 4により 火災が検出されたかどうかをエレベータバンク毎に判定する (ステップ S26)。そして、 機械室火災感知器 3又は昇降路火災感知器 4により火災が検出された場合、当該バ ンクのエレベータの避難運転の継続は不可と判定する。
[0038] さらにまた、継続判定手段 18は、救出階力もの避難が完了したかどうかをエレべ一 タバンク毎に判定する (ステップ S27)。そして、救出階力もの避難が完了したと判定 された場合、当該バンクのエレベータの避難運転の継続は不可 (不要)と判定する。
[0039] 上記の判定のうち、エレベータバンク毎の判定 (ステップ S22〜27)のいずれかで 避難運転が不可と判定された場合、継続判定手段 18は、当該バンク以外のエレべ ータのみについて避難運転を継続すると判定する (ステップ S29)。また、全ての判定 条件 (ステップ S21〜26)を満たし、かつ救出階力もの避難が全バンクのエレベータ で未完了である場合のみ、全バンクのエレベータによる避難運転を継続すると判定 する(ステップ S 30)。
[0040] このようなエレベータ制御システムでは、避難運転制御部 15が、火災及びエレべ一 タに関する情報に基づいて避難運転の可否を判定し、避難運転が可能であると判定 されると避難運転の指令を群管理装置 10a〜10cに出力するので、避難運転の可否
を効率的に判断することができる。
[0041] また、避難運転制御部 15には、避難運転の開始条件と継続条件とがそれぞれ設 定されているので、避難運転の可否を避難運転開始前と避難運転実施中とで効率 的に判断することができる。
[0042] なお、上記の例では、救出階からの避難が完了したと判定された順にエレベータの 避難運転を終了したが、火災が鎮火されたことを検出した場合に避難運転を終了す るようにしてちょい。
また、上記の例では、救出階又はその 1階下の階で火災が検出されると避難運転 を禁止したが、この条件に加えて、救出階の 2階下の階で火災が検出された場合に も避難運転を禁止するようにしてもょ 、。
[0043] さらに、上記の例では、火災発生階及びその 1階上の階の防火戸の正常な動作を 確認した上で避難運転を許可したが、この条件に加えて、火災発生階の 2階上の階 の防火戸の正常な動作を確認した上で避難運転を許可するようにしてもょ 、。
さらにまた、避難運転の可否の判定条件は、上記の例に限定されるものではなぐ 例えばエレベータを運転するために必要な電源容量が確保されて 、るかどうかを判 定条件に加えてもよい。
[0044] また、上記の防火戸とは、火災による炎や煙を遮断する装置であり、例えば防火シ ャッタ等を含むものである。
さらに、上記の例では、エレベータ管理装置 9とビルに設置された機器との間の信 号の送受信は、防災管理装置 8を介して行ったが、防災管理装置 8を介さずに直接 行ってもよい。
さらに、上記の例では、避難運転制御部の機能を 1つのコンピュータにより実現した 力 機能を複数のコンピュータに分散して実行させてもよい。また、避難運転制御部 は、エレベータ管理装置ではなぐ例えば防災管理装置又は群管理装置に設けるこ とも可能である。
さらにまた、避難運転計画の内容は上記の例に限定されるものではなぐビルの構 造やエレベータの配置等に応じて種々の変更が可能である。例えば、避難階は玄関 階に限定されるものではない。