明細書
軟質缶用鋼板およびその製造方法 技術分野
本発明は、 連続焼鈍法で製造される軟質の缶用鋼板に係り、 パッチ焼鈍法で製造ざれたも のとほぼ同等の非時効性、 加工性、 溶接性を有する調質度 T 2〜T 3 . 5の軟質缶用鋼板に 関する。 背景技術
ブリキやティンフリー鋼 (T F S ) 等の缶用鋼板の内、 調質度 Τ 4から Τ 6までの硬質材 は殆どが連続焼鈍で製造されているものの、 軟質材は主にパッチ焼鈍で製造されている。 ノ ツチ焼鈍は、 連続焼鈍と比較して処理時間が長いことから生産性に劣り、 また、 鋼板形状や 機械特性の均一性の面でも不利である。 そのため、 連続焼鈍法による軟質材の製造方法が検 討されている。
例えば、 特許文献 1には、 低炭素鋼に対して過時効処理帯を設けた連続焼鈍ラインで焼鈍 する方法が提案されている。 連続焼鈍において均熱後急冷することで固溶 Cを過飽和な状態 にし、 急冷後過時効処理帯を通過する際に、 固溶 Cの大半を析出させることにより軟質化、 非時効化する方法が提案されている。 しかし、 この方法では、 完全に Cを析出させることは できず、 若干量の固溶 cが残存するために非時効性が十分とは言えなかった。 · 製缶加工前に加熱工程のない ¾ ^には、 時効は問題とならないレベルであるが、 製缶加工 前に塗装焼付け等の加熱工程が行なわれる場合には、 時効が促進され、 製缶加工においてス トレツチヤストレイン (リューダース伸びに起因する引きつりシヮ) やフルーティング (座 屈に起因する腰折れシヮ) 等の不良が生じることがあった。
特許文献 2には、 極低炭素鋼に対して N bを添加する方法が提案されている。 この方法に おいては、 Cと親和力の強い N により、 鋼中 Cの全量を N b Cとして析出させるため、 固 溶 Cが残存せず、 完全非時効化が達成されている。 しかし、 用途に使用した に、 溶 接後の加工条件によっては溶接熱影響部 (HA Z部) に割れが生じることがあった。 これは、 極低炭素鋼であるために焼入れ性が劣り、 HA Z部の強度不足が生じるためであると考えら れる。 また、 N b添加の極低炭素鋼においては、 ランクフォード値が高すぎることから、 溶 接後にエキスパンド加ェやビード加ェ等の缶胴加工を施された^^、 缶高の減少量が大きい
という欠点があった。 このように、 Nb添加の極低炭素鋼では、 主に溶接用途に用いられた 場合、 H A Z部割れや缶高の減少等の問題があった。
特許文献 3には、 極低炭素鋼に対して Bを添加する方法が提案されている。 この方法にお いては、 Bの存在により極低炭素鋼でありながら溶接性に優れることを特徴とする。 しかし、 この従来方法では、 固溶 Nは BNとして析出させることができるが、 固溶 Cを固定すること はできない。 よって、 非時効性は十分ではなく、 製缶業者において塗装焼付け等の加熱工程 が行なわれる場合には、 時効が促進され、 加熱工程後の製缶加工においてストレツチヤスト レインゃフルーティング等の成形不良が生じることがあった。
特許文献 4には、 極低炭素鋼に対して、 Nb、 T i、 Bの一種以上を添加する方法が提案 されている。 この方法においては、 Nbや Bの効果により非時効性に優れることを特徴とす る。 しかし、 この従来方法では、 Cを 0. 0015%以下に制限する必要があり、 現在の技 術では、 Cを 0. 0015 %以下の鋼板を低コストで安定的に製造することは困難である。 特許文献 5には、 極低炭素鋼に対して Nbと Bの両方を添加する方法が提案されている。 この方法により、 溶接性、 加工性、 最適結晶粒径、 耐食性等、 缶用鋼板に求められる種々の 要求特性を満たすという内容が記載されている。 しかし、 Nb: 0. 001〜0. 1%、 B: 0. 0001〜0. 005%と成分範囲が非常に広いため、 各要求特性に対して最適な 範囲を見出したとは言えなかった。
また、 特許文献 6には N, Nb, T iを含有せしめた炭素鋼の成分組成において、 成分組 成を特定すると共に、 N, Nb, T iを特定の関係式に満足せしめ、 または、 前記関係式に 加えて N bと Nの関係についても他の特定の式を満足するように調整したことを特徴とする 粒界割れ欠陥の生じない連続鎳造鎳片について提案されている。 しかし、 この铸片では T i : 0. 004〜0. 1%が含まれており、 T iが鋼板表面に濃化して、 めっき性 (表面外 観おょぴ品質) を劣化させる問題があるため、 この铸片を用いることは困難である。
このように従来の技術では、 溶接性、 非時効性に優れ、 溶接後の缶胴加工における缶高減 少量も小さい軟質缶用鋼板は連続焼鈍法では得られていない。 そのため、 一部の製缶業者、 一部の缶種においては連続焼鈍法により製造された軟質缶用鋼板が用いられているが、 大半 の製缶業者、 大半の缶種においてはパッチ焼鈍法により製造された鋼板が用いられていた。
特許文献 1 : ^昭 63-10213号公報
特許文献 2 : ^平 1— 52450号公報
特許文献 3 :特許 3377155号公報 (特開平 9— 227947号公報),
特許文献 4 特許 3135656号公報 (特開平 5— 263143号公報) 特許文献 5 特開平 6—41683号公報
特許文献 6 特開 2Q03— 166038号公報 発明の開示
前述したように、 従来の技術では、 連続焼鈍法による軟質缶用鋼板においては、 パッチ焼 鈍法によるものと同等の特性は得られていない。 そのため、 これまで、 大半の軟質缶用鋼板 はパッチ焼鈍法で製造されている。 本発明は、 軟質缶用鋼板のうち調質度 T 2〜T 3. 5の ものに対して、 上記の問題を解決することを目的とする。 なお、 ここで 「調質度」'とは缶用 鋼板として用いられるプリキゃティンフリー鋼の硬さを示す指標であり、 J I S
G3303および J I S G3315では、 ロックウェブレ硬度 (HR 30 T) で T2が 5 3±3、 T2. 5が 55±3、 T3が 57±3、 T 4が 61 ± 3と規定されている。 T3. 5とは、 J I Sでは特に規定されていないが、 一般的には、' T 3と T4の中間レベルのロッ クウエル硬度 (HR30T) で 59± 3として通用することから、 本願発明においても 59 ± 3として定義する。
以下に本発明で解決しようとする課題について述べる。
(1) 溶換性
製缶業者では、 缶の種類によって、 スポット溶接、 プロジェクシヨン溶接、 シーム溶接等 の様々な溶接が行なわれる。 また、 溶接後にさらに加工されることも多く、 また製缶後の缶 はいろいろな用途に使用されるため溶接部に過大な荷重がかかることもある。 よって、 様々 な溶接に対して溶接熱影響部の強度が十分に確保され、 溶接後の加工の際、 及び、 客先で缶 が使用される際に、 溶接熱影響部に割れが生じないことが必要である。
(2) 非時効性
製缶業者においては、 製缶加工前に塗装焼付けが施されることが多い。 塗装焼付けでの加 熱により時効が促進されると、 塗装焼付け後の製缶加工時にフルーティングゃストレツチ ャ ·ストレイン等の不良を生じる。 よって、 非時効性に優れることが必要である。
(3) 缶高の変化
軟質缶用鋼板はペール缶等の溶接缶用途に使用されることがある。 これらの缶においては、 シーム溶接を行なった後にビード加ェ、 エキスパンド加工を施されることが多い。 その場合、 ビード加工、 エキスパンド加工による缶高の減少量が大きいと、 缶高の減少しない溶接部と
の間に段差が生じることがある。 よって、 缶高があまり減少しないことが重要である。 その ためには、 ランクフォード値が低いことが必要である。
(4) 加工性
詳細な調査を行なったところ、 従来の連続焼鈍法による軟質缶用鋼板は、 パッチ焼鈍法の 軟質缶用鋼板と比較して、 同一の調質度の でも加工性が劣ることが分かった。 これは、 パッチ焼鈍鋼板と比較して連続焼鈍鋼板は、 同一の調質度であっても降伏強度が高めである ことに起因すると考えられる。 製缶業者でパッチ焼鈍鋼板と同一の製缶条件で加工する際に 混乱を生じないためには、 降伏強度を低減し、 パッチ焼鈍鋼板と同等レベルの加工性を確保 することが必要である。
本発明は.上記の課題を解決するためになされたものであり、 溶接性、 非時効性、加工性に 優れ、 缶高の減少が小さい軟質缶用鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
(5) 熱間延性
N, B, Nb, Al , Cが添加されている鋼は、 鋼が y (オーステナイト) から ct (フエ ライト) に変態するときに、 BN, Nb (N, C) , A INなどの窒化物および炭窒化物が 大量にオーステナイト粒界に析出することで脆化が起こり、 連続鎳造時にスラブ割れが発生 することがわかった。 スラブ割れが発生すると、 スラブ割れの部分についてコーナー部の切 断ゃグラインダ一での研削作業の工程が必要となり、 多くの労力とコストがかかるために生 産性を大きく阻害する。 このため、 N, B, Nb, Al, C量、 特に N量を最適化してスラ プ割れを生じさせないことが必要である。
本発明者らは、 鋼成分、 結晶粒形態、 製造方法等に関して種々検討を行ない、 軟質缶用鋼 板のうち調質度 T2〜T3. 5のものに対して解決方法を見出したものである。
(1) 本発明に係る軟質缶用鋼板は、 鋼成分が、 質量0 /0で、 C : 0. 0015〜0. 00 50 %、 Mn: 0. 1〜 0. 8 %、 A 1 : 0. 01 ~ 0. 10 %、 N: 0. 0015 ~ 0. 0070%、 Nb : 4XC〜20XC (原子比では、 0. 52Xp〜2. 58XC).、 B: 0. 15XN〜0. 75XN (原子比では、 0. 20XN~0. 97XN) を含み、 残部が F eおよび不可避的不純物からなり、 連続焼鈍法により製造され、 平均のランクフォード値 が1. 3~1. 8の範囲にあり、 かつ、 r Oく r 45— 0. 2、 r 90<r 45-0. 2、 I r 0-r 90 I >0. 3からなる 3つの関係式のうち少なぐとも 1つを満たし、 調質 度が T2〜T3. 5の範囲にあることを特徴とする。
(2) 本発明に係る軟質缶用鋼板は、 鋼成分が、 質量0 /0で、 C : 0. 0015~0. 00 50%, Mn : 0. 1〜 0. 8 %、 A 1 : 0. 01〜 0. 10 %、 N: 0. 0015〜 0. 0070%、 Nb : 4XC〜20XC (原子比では、 0. 52XC〜2. 58 X C) 、 B: 0. 15 XN~0. 75XN (原子比では、 0. 20XN~0. 97 XN) を含み、 残部が
F eおよぴ不可避的不純物からなり、 連続焼鈍法により製造され、 フェライト結晶粒の L方 向長さに関して、 表層での平均値 Ls_ave、 表層での最大値 Lsiax、 板厚中心での平均値 L c - ave、 板厚中心での最大値 Lc-max力 Ls-ave/Lc~ave< 0. 9の関係を満たし、 力、つ、 Ls-max/ Lc-max< 0. 8の関係を満たし、 調質度が T2〜T3. 5の範囲にあることを特 徴とする。
(3) 上記 (1) 又は (2) 記載の鋼板において、 連続焼鈍後の未再結晶粒を、 圧延方向 断面での面積比で、 0. 5~5%残存させる。
(4) 本突明に係る軟質缶用鋼板の製造方法は、 上記 (1) 乃至 (3) のいずれか 1記載 の成分の鋼帯に関して、 冷間圧延条件として圧延率を 70〜 90%の範囲とし、 連続焼鈍条 . 件として均熱時間 tを 20〜 90秒、 均熱温度 Tを 700〜780°Cとし、 力つ、 前記均熱 時間 t (秒) 、 均熱温度 T (。C) 、 鋼成分 (質量0 /。) の関係が 770≤ t,3 + T_l 4. 8XLo ge (Nb) _32 40を満たし、 圧延率: 0. 5〜5%の調質圧延 を行なつて調質度 T 2〜 T 3. 5の範囲とすることを特徴とする。
本発明により、 パッチ焼鈍法より品質の均一性、 生産コスト等 面で有利な連続焼鈍法を 用いて、 パッチ焼鈍法で製造される軟質缶用鋼板とほぼ同等の特性を確保できるようになつ た。 図面の簡単な説明
図 1は、 tノ 3+T— 14. 8XLo ge (Nb) — 32XBZNと、 未再結晶率との 関係を示す特性図である。 '
図 2は、 tZ3+T— 14. 8XLo ge (Nb) —32XB/Nと、 ランクフォード 値 r aveとの関係を示す特性図である。
図 3は、 t 3+T— 14. 8 X L o g e (Nb) —32XB//Nと、 Ls - ave^Lc-ave (表層での結晶粒 L方向長さ平均値 L s-aveと板厚中心での結晶粒 L方向長さ平均値 L c-ave との比) との関係を示す特性図である。
図 4は、 t/3+Τ— 14. 8XLo ge (Nb) 一 32XB/Nと、 Ls-max/Lc— max (表層での結晶粒 L方向長さ最大値 L s-maxと板厚中心での結晶粒 L方向長さ最大値 L c-max との比) との関係を示す特性図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明者らは、 連続焼鈍法により製造される軟質缶用鋼板について種々の検討を行い、 鋭 意研究した結果、 本発明を完成させるに至った。 以下に本発明を詳細に説明する。
まず、 ランクフォード値の限定理由について述べる。 2ピース缶を深絞り成形する場合に はランクフォード値は高い方が有利である。 平均のランクフォード値 raveが 1. 3未満では、 深絞り成形時に破断等の問題を生じることがある。 よって、 本発明ではランクフォード値 r aveを 1. 3以上に限定する。
一方、 軟質缶用鋼板は、 2ピース缶の他にも' 3ピース缶の缶胴にも使用されることがある。 3ピース缶の缶胴においては、 シーム溶接により円筒形状とした後に、 エキスパンド加工、 ビード加ェ等の缶胴加工を施すことが多い。 その 、 缶胴は周方向に伸ぴ歪みが与えられ るが、 ランクフォード値が大きいと板厚が減少せずに缶高が減少しやすい。 反対にランクフ ォード値が小さいと板厚が減少しやすいため缶高の減少量は小さくなる。 缶高の減少量が大 きいと、 缶高があまり変化しな!/、溶接部との間に段差が生じることがある。
これまでの調査により、 ランクフォード値 raveが 1. 8を超えると缶高減少量も顕著になる ことが判明した。 よって、 ランクフォード値を 1. 8以下に限定する。
また、 3ピース缶の缶胴においては、 缶胴の周方向のランクフォード値が小さい必要があ るが、 鋼板の圧延方向またはコイル幅方向が缶胴周方向になるように板取りされるため、 圧 延方向またはコイル幅方向のランクフォード値が小さいこと力 S望ましい。
具体的には圧延方向、 コイル幅方向、 45度方向のランクフォード値をそれぞれ r 0、 r 90、 r 45とした場合に、 (i) r Oく r 45— 0. 2、 (ii) r 90く r 45— 0. 2、
(iii) I r 0-r 90 I >0. 3の 3つのうち少なくとも 1つの関係を満たす ¾ ^に、 击胴カロ ェでの缶高減少量が小さい 3ピース缶が得られる。 このことから本突明では、 これら 3つの 不等式のいずれか 1つ以上を満たすこととした。
次に、 圧延方向結晶粒長さについて述べる。
パッチ焼鈍法による軟質缶用鋼板は、 長時間の焼鈍により、 結晶粒が十分に成長し、 カゝつ、 固溶 Cの存在しない状態となるため、 引張強度に対する降伏強度の比 (YR) の小さい鋼板
が得られる。 一方、 従来の連続焼鈍法による軟質缶用鋼板は、 焼鈍時間が極めて短いため、
Y Rが大きくなりやすい。 缶用鋼板の一般的な管理指標である調質度は、 ロックゥエル硬度 (HR 3 0 T) で区分されており、 ロックウェル硬度 (HR 3 0 T) は引張強度と降伏強度 の平均値と比較的よい相関が認められる。 よって、 従来の連続焼鈍鋼板はパッチ焼鈍鋼板と 比較して、 同一調質度であっても降伏強度は高めとなり、 従って、 降伏強度に対応すると考 えられる製缶加工性についても不利であった。 本発明者らは詳細な検討を行なった結果、 連 続焼鈍鋼板において、 調質度を変えずに加工性を向上させるためには、 鋼板の表層部と板厚 中心部でフェライト結晶粒径に差を生じさせることが有効であることを見出した。
これは次のように考えられる。 ロックウェル硬度 (HR 3 0 T) は鋼板表面に圧子を押込 んで測定するため鋼板表面の結晶粒径に影響されるが、 実際の製缶加工性は鋼板の降伏強度 に対応するため鋼板全体の結晶粒径に影響される。 よって、 連続焼鈍鋼板において鋼板の表 層部よりも板厚中心部でフェライト結晶粒径を大きくすることで、 調質度の等しいパッチ焼 鈍鋼板と同等レベルの製缶加工性が得られる。 具体的には、 フェライト結晶粒の圧延方向長 さに関して、 表層での平均値 Ls-ave、 表層での最大値 Ls-max、 板厚中心での平均値 Lc_ave、 板厚中心での最大値 L c-max力 L s-ave/ L c-ave< 0 . 9、 L s- max L c-maxく 0 . 8を 満たす場合に、 上記効果が発揮される。 よって、 同一調質度のパッチ焼鈍鋼板と同等の製缶 加工性が必要な には、 圧延方向結晶粒長さをこの範囲に限定する。 なお、 さらに望まし くは、 L s-ave/ Lc-ave< 0 . 8、 L s-max/ L c-ma < 0 . 7である。
次に、 未再結晶粒の残存率について述べる。
詳細な検討を行なった結果、 本宪明鋼においては、 若干量の未再結晶粒が残存していても、 鋼板強度は上昇するものの、 その他の特性はあまり変化しないことが判明した。 よって、 鋼 板強度を調整するために未再結晶粒を残存させることができる。 圧延方向断面における未再 結晶粒の存在面積率が 0 . 5 %未満では、 鋼板強度上昇の効果は認められない。 一方、 5 % を超えると鋼板強度が過度に上昇し、 製缶加工性劣ィ匕等の弊害が発現する。 よって、 本発明 において未再結晶粒を残存させる場合は、 0 . 5〜5 %の範囲とする。
次に、 鋼成分の限定理由についてそれぞれ述べる。
( 1 ) C: 0 . 0 0 1 5〜0 . 0 0 5 0質量%
炭素は、 以下に述べるように本発明において鋼板の特性に対して 2つの大きな影響力をも つ重要な元素である。
第 1に、 非時効性への影響である。 鋼中に固溶 cが存在すると、 製缶業者での塗装焼付け で時効が促進され、 その後の製缶加工でストレツチヤストレィンゃフルーティング等の欠陥 を生じる。 本発明においては、 Nbを添加して Nb Cを形成させるため、 固溶 Cの存在量は 低く抑えられているが、 C量が 0. 0050%を超えると、 必要な Nb量も増加する。 Nb は高価な元素であるため生産コストの面で不利であり、 Nb Cによる析出強化作用により鋼 板が過度に硬化すること力 ら、 C量は 0 · 0050 %以下に制限する。
第 2に、 缶高減少量への影響である。 焼鈍工程で固溶 Cが全く存在しない状態で再結晶が 進展すると、 ランクフォード値が向上することが知られている。 ランクフォード値が大きい と、 溶接缶に対してビード加ェ、 エキスパンド加工等の缶胴加工を施した場合、 缶高の減少 量が大きくなる。 よって、 汎用用途の場合、 ランクフォード値の極端な上昇は避けることが 望ましく、 したがって焼鈍途中で若干の固溶 Cを存在させる必要がある。 C量が 0. 001 5 %未満では、 熱延で析出した Cが連続焼鈍の途中で殆ど再固溶しない。 このため C量を 0 0015%以上にする必要がある。 よって、 C量は質量比で 0. 0015〜0. 0050% の範囲とする。
(2) Mn: 0. 1— 0. 8質量0 /0
Mn量が 0. 1%未満では、 熱間脆性を生じることがある。 また、 0. 8%を超えると鋼 板が過剰に硬質化して製缶加工性を損ねる。 よって、 Mn量は質量比で 0. :!〜 0. 8%の 範囲とする。
(3) A 1 : 0. 01〜0. 12質量0 /0
A 1量が 0. 01 %未満では脱酸効果が十分に得られない。 また、 Nと A 1 Nを形成する ことにより、 鋼中の固溶 Nを 少させる効果も十分に得られなくなる。 一方、 0. 10%を 超えるとこれらの効果が飽和するのに対して、 アルミナ等の介在物を生じやすくなる。 よつ て、 A 1量は質量比で 0. 01〜0. 12%の範囲とする。
(4) N: 0. 0010〜0. 0070質量0 /0
Nを 0. 0010%未満〖こすると、 鋼板の製造コストが上昇し、 安定的な製造も困難にな る。 また、 本発明では、 Bと Nの比が重要であるが、 N量が少ないと、 Bと Nの比を一定範 囲に保っための B量の制御が難しくなる。 一方、 Nが 0. 0070%を超えると、 溶接性を 確保するために必要な B量が増加する。 すなわち、 結晶粒内の BN析出量が増加し、 析出強 化作用により鋼板が過度に硬化するおそれがある。 よって、 N量は質量比で 0. 0010〜 0. 0070%の範囲とする。
また、 熱間延性の観点からも、 N量は 0. 0070%以下とする。 さらに望ましい N量は 0. 0044%以下の範囲である。 これは、 N量が 0. 0070%より大きくなると、 鋼の 組織が yから aに変態するときに . (成分によって変化するが、 この鋼では約 850〜10 00°C) 、 BN, Nb (N, C) , A 1 Nなどの窒ィヒ物および炭窒ィ匕物が大量にオーステナ ィト粒界に析出することで脆化が起こり、 連続铸造時にスラブ割れが発生するためである。 スラブ割れが発生すると、 スラブ割れの部分についてコーナー部の切断ゃグラインダ一での 研削作業の工程が必要となり、 多くの労力とコストがかかるために生産性を大きく阻害する。
(5) 4XC≤Nb≤20 XC
- N bは非時効性を確保するために重要な元素である。 N bは N b Cを形成することで鋼中 の固溶 Cを減少させる働きがあるが、 その効果を十分に発揮させるために、 質量比で 4XC 以上の添加量が必要である。 一方、 Nb添加量が多すぎると、 固溶 Cを減少させる働きは飽 和するのに対して、 再結晶温度を上昇させる欠点が生じる。 また、 Nbは高価であること力 ら生産コストも上昇する。 したがって、 Nb量を 20 XC以下に抑える必要がある。 よって、 Nb量は質量比で 4XC〜20XC (原子比では 0. 52XC≤Nb≤2. 58 X C) の範 囲とする。
(6) 0. 15 XN≤B≤ 0. 75 XN
Bは、 以下に述べるように本 明において鋼板の特性に対して 2つの大きな影響力をもつ 重要な元素である。
第 1に、 溶接性への影響である。 Bの一部は鋼中で固溶状態で存在するが、 この固溶 Bが 結晶粒界に偏祈することにより、 溶接を行なった # ^に H A Z部での異常な粒成長とそれに よる軟化を抑制する。 Bは BNを形成しやすいため、 Bの一部を固溶状態で存在させるため には、 N量に応じた B量を添力!]する必要がある。 詳細な調査を実施したところ、 B量が質量 比で 0. 15 XN未満では HAZ部が軟化し、 溶接後に加工を行なった場合に H A Z部に割 れを生じることがあった。
第 2に、 缶高減少量への影響である。 Nb添加の極低炭素鋼は極めて高いランクフォード 値を示すが、 さらに Bを添加するとランクフォード値は低下する。 その機構は明らかではな いが、 適量の Bの添加によりランクフォード値が低下し、 特に圧延方向、 及ぴ、 コイル幅方 向のランクフォード値がそれぞれ低下することが判明した。 この効果は、 0. 15 X N以上 の B添加で発揮されることが判明した。 ''
また、 前述のように、 B添加によりランクフォード値、 特に L方向、 及ぴ、 C方向の ン クフォード値が下がり、 その効果を十分に発揮させる観点からも 0. 15XN以上とする必 要がある。 一方、 B量が 0. 5 XNを超えると、 これらの効果が飽和傾向となる。 また、 0 75 XNを超えると、 再結晶 が上昇するという弊害が生じる。 よって、 B量は質量比で 0. 15XN〜0. 75XN (原子比では 0. 20XN≤B≤0. 97 XN) 、 さらに望ま しくは 0. 15XN〜0. 5 XNとする。 また、 均熱時間 30秒以上、 均熱温度 700°C以 上 730 °C以下の焼鈍条件で、 未再結晶部を 1 %以下にするためには、 B量は 0. 15 X N 〜0. 60 XNとするのが好ましい。
なお、 Bを適 むと、 鋼板の表層部よりも板厚中心部でフェライト結晶粒径が大きくな ることが分かつた。 前述したように、 表層部よりも板厚中心部の結晶粒径が大きいと、 調質 度の割に加工性に優れる。 Bにより表層と板厚中心部で結晶粒径に差が生じる原因について は明らかではないが、 Bが少なすぎても多すぎてもこの現象は見られなかったことから、 B の粒成長抑制効果が不安定なため表層と板厚中心部での結晶粒径に差が生じているものと推 定される。 鋼板の表層部よりも板厚中心部でフェライト結晶粒径が大きくなる現象は、 0. 15XN以上で認められ、 0. 5 XNを超えると徐々に低下し、 0. 75 XNを超えると認 められなくなった。
(7) S: 0. 008質量%以下
Sは特に本発明の鋼板特性に影響を及ぼすことはないが、 S量が 0. 008 %より大きく なると、 N量が 0. 0044%を超えて添加される:^、 多量に発生した MnSを析出核に して窒ィヒ物および炭窒化物である BN, Nb (C, N) , A 1 Nが析出するために熱間延性 を低下させる。 したがって、 S量は 0. 008%以下とすることが望ましい。
(8) 不可避的不純物
上記成分の他に、 鋼には S i、 P等の不可避的不純物が含まれるが、 これらの成分は特に 本発明の鋼板特性に影響を及ぼすことがないため、 その他の特性に影響がない範囲で適宜含 むことができる。 また、 鋼板の特性に悪影響を及ぼさない範囲で、 上記以外の元素の添加を 行なうこともできる。
以下に、 本突明の鋼板の製造条件について述べる。
製鋼条件は、 本発明に規定する鋼成分が得られる方法であれば如何なる方法でもよく、 特 に限定的に規定されるものではない。 但し、 铸片の製造は、 铸片の均一性から、 連続鎵造で 行なうことが望ましい。 鎳片の再加熱条件も特に限定的に規定されるものではないが、 ¾
が高すぎると表面欠陥やエネルギーコストの面で不利であり、 温度が低すぎると熱延仕上温 度の確保が難しくなることから、 1050〜1300°Cの温度範囲とすることが望ましい。 熱延条件も特に限定的に規定されるものではないが、 熱延鋼板の均一性、 表面性状、 機械 特性、 及ぴ生産コストの観点から、 仕上 は 860〜950°Cとすることが望ましい。 ま た、 コイル卷取温度は同様の理由から 550〜720°Cが望ましい。
酸洗については、 表面のスケールが除去されればよく、 特に方法を規定しない。 一次冷間 圧延については、 適正な圧延方向結晶粒長さ、 及ぴ、 適正なランクフォード値を得るために は、 70〜90%の範囲とする必要がある。
連続焼鈍条件は、 本発明では重要な項目であるので次に詳しく述べる。
連続焼鈍の均熱時間が短すぎたり、 均熱温度が低すぎたりした場合、 十分に再結晶が進展 しない。 また、 再結晶の進展の程度は、 鋼成分 Nb、 B、 N量によっても変化する。 種々の 成分の鋼を試作して実験を行った結果、 再結晶の進展の程度は、 Nb量 (質量%) に関して は Lo ge (Nb) の値とよい相関が認められ、 B量、 N量 (質量%) に関しては BZNの 値とよい相関が認められた。 再結晶の進展の程度に影響を与える均熱時間 t (秒) 、 均熱温 度 T (°C) 、 鋼成分 (質量0 /o) Nb、 B、 Nの各パラメータに関して下式 (1) の関係が成 立し、 Aの値が再結晶の進展の程度とよい相関が認められることが、 本願宪明者らが行った 実験からも分かった。
A= t/3+T-l 4. 8XLo ge (Nb) -32 ΧΒ/Ν··· (1)
図 1に示すように、 Α< 770の場合に未再結晶粒残存率が 5 %を超え、 製缶加工性が劣 ィ匕した。 一方、 反対に、 Α値が大きすぎると再結晶完了後の粒成長が促進されて弊害を生じ ることが判明した。
A〉 840の場合に、 図 2に示すように、 平均のランクフォード値 raveが 1. 8を超える 場合があった。 また、 A〉840の場合には、 図 3およぴ図 4に示すように、 不等式 Ls- ave <Lc-aveX 0. 9、 Ls-max< Lc-maxX 0. 8の関係を満たさなくなったりすることもあつ た。 .
これらの知見から下記 (2) の範囲に限定する。
770≤ t/3+T-l 4. 8 X L o g e (Nb) -32XB/N +≤840
… (2)
均熱時間が 20秒未満になると、 上式 (2) の関係を満たしている場合であっても目標の 組織を得られないことがある。 一方、 均熱時間が 90秒を超えると、 生産性が低下する。 こ のため均熱時間は 20秒以上 90秒以下の範囲とすることが好ましい。
また、 均熱温度 700°C未満の場合も、 上式 (2) の関係を満たしている場合であっても 目標の組織を得られないことがある。 一方、 780°Cを超えると缶用鋼板のような極^ #で は炉内破断や形状不良が発生する懸念が生じる。 このため、 本努明では均熱温度を 700〜 780°Cの範囲に限定する。
また、 固溶 Cを低減するために、 上記均熱温度に保持した後に過時効処理を行なってもよ い。 ここで、 過時効処理の方法については特に規定しないが、 固溶 Cを +分に低減するため には、 350〜 450 °Cで 30〜 90秒間保持することが望ましレ、。 調質圧延については、 圧延率が低すぎると鋼板形状の矯正、 表面粗度の調整ができなくなるため、 その効果を発揮 させるために 0. 5%以上とする。 一方、 圧延率が 5%を超えると、 加工硬化により製缶加 ェ性を損ねるため、 5%以下とする。
なお、 表面処理については、 耐食性が必要な場合には、 錫めつき、 ティンフリースチール めっき等を行なうものとする。 また、 必要に応じてポリエステル等の有機樹脂皮膜等を形成 してもよい。
実施例
表 1— 1および表 1— 2に示す各種成分の銅種 A〜Uを溶製し、 垂直曲げ型連続鎊造機 (垂直部 3. 5m、 曲げ^ Si 0m、 鎵片サイズ幅 1000 mmで厚み 23 Omm) 、 また は、 ラポ顯 (14 OmmX 14 OmmX 37 Omm, 容量 5 Okg) に鏡造した後に、 ス ラブ加熱温度 1250°C、 仕上温度 890°C、 卷取温度 620°Cの条件でそれぞれ熱間圧延 した。 これらの熱延板を塩酸酸洗した後、 冷間圧延、 連続焼鈍、 調質圧延を行った。
表 2—1および表 2— 2に、 冷間圧延率 (%) 、 連続焼鈍での均熱温度 T (°C) 、 均熱時 間 t (秒) 、 式 (1) の A値 (=tZ3+T— 14. 8 XLo ge (Nb) 一 32 XB/N (表 2— 1, 表 2— 2, 表 3では Aと表示) ) および調質圧延率 (%) をそれぞれ示す。 そ の後、 電解クロメート処理を施すことによりティンフリー鋼とした。 さらに、 製缶業者で塗 装焼付け後に製缶加工されることを考慮して、 210 °C X 10分の時効熱処理を施した。 また、 作製した鋼板について、 ロックウェル硬度 (HR30T) を測定して調質度を求め、 J I S 5号引張試験片を採取して圧延方向の降伏強度、 圧延方向、 幅方向、 45度方向のラ ンクフォード値 r O、 r 90、 r 45を測定した。 三方向のランクフォード値 r 0、 r 90、
r 4 5から、 算出式 r ave= ( r O + r 9 0 + 2 X r 4 5 ) /4を用いて平均値 r aveを求めた。 これらの結果も表 2— 1およぴ表 2— 2に示した。
さらに、 ,製缶時の特性を見るために、 これらの鋼板に対して、 3ピース缶の缶胴成形、 及 ぴ、 2ピース缶成形.を行なった。 3ピース缶の缶胴成形に関しては、 4 0 0 X 8 5 0 nimの 長方形プランクに対して卷き幅 (ロールフォーミング後の両端のラップ量) が 0〜3 mmになるような条件でロールフォーミング加工を施し、 チリの発生しない上限の溶接電流 でシーム溶接を行なうことにより両端を接合し、 直径が約 2 7 0 mmの円筒状の缶胴を得た。 次に直径増加率が最大で約 6 %のエキスパンド加ェを施し、 さらにビード高が 6〜 8 mmの ビードを加工し、 最後にフランジ幅 6 mmとなるようにフランジ加ェを行ない、 3ピース缶 の缶胴を得た。 このようにして得た 3ピース缶の缶胴について下記の評価基準を用いて評価 した。
( 3ピース缶の非時効性の評価)
非時効性を口ールフォーミング加工でのフル ティング発生で評価した。 下記の評価基準 により判定し、 その結果を表 2—1と表 2— 2にそれぞれ示した。
肉眼による目視検査でフルーティングの発生がまつたく認められなかつたものを二重丸
(◎) 、 フルーティングの発生が僅カゝに認められるが実用上問題ないものを一重丸 (〇)-、 フルーティングが発生したものをパッ (X ) でそれぞれ表示した。
( 3ピース缶の溶接性の評価)
溶接性の評価としてシーム溶接後にフランジ加工を行なった場合の H A Z割れ発生率を調 ベた。 下記の評価基準により判定し、 その結果を表 2— 1と表 2— 2にそれぞれ示した。 溶接部から採取した試料の研磨面を顕微鏡観察して、 H A Z割れ発生率が 0 . 5 %以下の ものを二重丸 (◎) 、 HA Z割れ発生率が 0 . 5 %超 1 %以下のものを一重丸 (〇) 、 HA Z割れ発生率が 1 %超えたものをパッ (X ) でそれぞれ表示した。
( 3ピース缶の缶高変化の評価)
缶高変化の評価としてエキスパンド加工、 ビード加工後の缶高減少量を求めた。 下記の評 価基準により判定し、 その結果を表 2— 1と表 2— 2にそれぞれ示した。 . 街高減少量が l mm以下のものを二重丸 (◎) 、 缶高減少量が 1 mm超 1 . 5 mm以下の ものを一重丸 (〇) 、 缶高減少量が 1 . 5 mmを超えたものをパッ (X ) でそれぞれ表示し た。
2ピース缶成形に関しては、 直径 1 0 Onmiの円形プランクを打ち抜き、 絞り率約 0. 6 の絞り加工、 絞り率約 0. 7 5の再絞り加工を行なつた。
( 2ピース缶の非時効性の評価)
非時効性の評価として缶胴下部から缶底にかけての部位でのストレツチヤストレインの有 無で評価した。 下記の評価基準により判定し、 その結果を表 2— 1と表 2— 2にそれぞれ示 した。
目視検査または顕微鏡観察でストレッチヤストレィンの発生がまったく認められなかった ものを二重丸 (◎) 、 ストレッチヤストレインが僅かに認められるものの実用上は問題がな いものを一重丸 (〇) 、 ストレッチヤストレインが発生したものをバッ (X) でそれぞれ表 示した。
( 2ピース缶の深絞り性の評価)
2ピース缶の深絞り性については絞り加工及ぴ再絞り加工で破断した缶体の割合で評価し た。 下記の評価基準により判定し、 その結果を表 2— 1と表 2— 2にそれぞれ示した。 破断発生率が 0. 3%以下のものを二重丸 (◎) 、 破断発生率が 0. 3%超0. 5%以下 のものを一重丸 (〇) 、破断宪生率が 0. 5%を超えたものをパッ (X) でそれぞれ表示し た。
実施例は、,いずれの評価項目に関しても合翻定 (◎または O) であった。 一方、 比較例 は、 不合格判定 (X) の評価項目が 1つ以上存在した。
作製した鋼板の一部については、 圧延方向断面のフェライト組織を出した。 板厚中心とし て板厚の, 1 2深さ位置、 及ぴ、 表層として深さ 1 5 /xm位置において、 圧延方向の長さ 3 0 0 /ίπιの線上を横切るフェライト結晶粒界の数を測定し、 3 0 0 (粒界の数) を平 均結晶粒長さとした。 また、 3 0 0 /i mの範囲で最長の結晶粒界の間隔を最大結晶粒長さと した。 表層での平均結晶粒長さ Ls_aveと板厚中心での平均結晶粒長さ Lc_aveとの比 Ls - ave/Lc-ave, 及ぴ、 表層での最大結晶粒長さ Ls-maxと板厚中心での最大結晶粒長さ Lc- maxの比 L s- ax/ L c- maxを、 表 3にそれぞれ示す。
(加工性の評価)
加工性をスプリングパックテストで評価した。 スプリングパックテストでは、 直径 1イン チ (25. 4mm) のマンドレルで 1 8 0° 曲げを与えた後のスプリングパック角度を測定 した。 下記の評価基準により判定し、 その結果を表 3にそれぞれ表示した。
同一調質度、 同一板厚のパッチ焼鈍鋼板のスプリングパック角度の 1 . 0 3倍未満のもの を二重丸 (◎) 、 同一調質度、 同一板厚のパッチ焼鈍鋼板のスプリングパック角度の 1 . 0 3倍以上 1 . 0 5倍未満のものを一重丸 (〇) 、 同一調質度、 同一板厚のパッチ焼鈍鋼板の スプリングパック角度の 1 . 0 5倍以上のものをパッ (X) でそれぞれ表示した。 その結果 も併せて表 3に示した。
実施例においては、 Ls- aveZ Lc- ave> 0 . 9、 かつ、 Ls- max/Lc-max> 0 . 8を満た し、 スプリングパック評価結果も合格判定 (◎または〇) であった。 一方、 比較例において は、 Ls-aveZ Lc - ave> 0 . 9、 と Ls - maxZ Lc- max> 0 . 8のいずれかを満たさず、 スプ リングパック評価結果も不合格判定 (X ) であった。
(スラブの表面割れの評価)
連続鎵造機で錶造したスラプの表面割れにつ!/ヽて目視で評価を行つた。 下記の評価基準に より判定し、 その結果を表 1—1及ぴ表 1—2にそれぞれ示した。 スラブの表面割れが目視 で観察されなかったものを二重丸 (◎) 、 スラブのコーナー部に 1 0 O mm以下の割れが目 視で され、 スラブの表面をグラインダ一で研削する工程で対応できるものを一重丸
(〇) 、 スラブの長辺側で 1 0 0 mm以上の長さにわたって割れが発生しているためにスラ プのコーナー部を切断せざるを得なかったものをパッ (X ) でそれぞれ表示した。
(熱間延性の評価) , スラブの表面割れは、 おもに鋼が yから αに変態する温度 (約 8 5 0〜: L 0 0 0 °C) で 発生するため、 9 5 0 °Cでの熱間延性について、 連続鎵造時の温度履歴と引 力をシミュ レートした高温引張試験で評価を行った。 評価方法は 9 5 0 °Cにおける高温引張試験での破 断面の絞り値 (断面減少率) を求めて判定した。 サンプルはラボスラブより直接切り出し、 TO部直径 8 nmi、 長さ 1 5 mmの丸棒試験片を加工して作製した。 高温引張試験は高周波 誘導方式の熱間加工再現試験機を用いて真空中で実施し、 1 4 2 0。Cで 6 0秒均熱後、 試験 温度まで急冷して、 9 5 0 °Cで 6 0秒の保持時間を取った後、 引張試験を行った。 力!]熱およ ぴ冷却速度は 1 0 °C_ sおよび 51 s、 ひずみ速度は 2 X 1 0 3/ sで行つた。 絞り値が 小さくなるほど、 熱間延性は低下し、 スラブの表面割れが発生しやすくなる。 下記の評価基 準により判定し、 その結果を表 1—1及ぴ表 1—2にそれぞれ示した。 引張試験破断後の破 断面の絞り値が 3 5 %以上で連続鎳造時にスラプ割れが発生しないと判断できるものを二重 丸 (◎) 、 絞り値が 1 0 %以上 3 5 %より小さくスラブのコーナ一部に 1 0 0 mm以下の割 れが目視で βされ、 スラプの表面をグラインダ一で研削する工程で対応できると判断でき
るものを一重丸 (〇) 、 絞り値が 1 0 %より小さく、 スラブの長辺側で 1 0 O mm以上の長 さにわたつて割れが発生しているためにスラブのコーナ一部を切 8 ^ざるを得な ヽと判断で きるものをバッ (X ) でそれぞれ表示した。 産業上の利用の可能性
本努明によれば、 溶接性、 非時効性、 加工性に優れ、 缶高の減少が小さい軟質缶用鋼板及ぴ その製造方法を提供することができる。
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