JPH10280089A - 2ピース変形缶用鋼板および2ピース変形缶体、ならびにそれらの製造方法 - Google Patents
2ピース変形缶用鋼板および2ピース変形缶体、ならびにそれらの製造方法Info
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- JPH10280089A JPH10280089A JP9085033A JP8503397A JPH10280089A JP H10280089 A JPH10280089 A JP H10280089A JP 9085033 A JP9085033 A JP 9085033A JP 8503397 A JP8503397 A JP 8503397A JP H10280089 A JPH10280089 A JP H10280089A
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Abstract
の張出し成形が可能な、2ピース変形缶体の製造技術を
提供する。 【構成】 C:0.0020wt%以下、Si:0.05wt%以下、M
n:0.7 wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.010 wt%
以下、Al:0.100 wt%以下、N:0.0030wt%、Nb:0.00
3 〜0.03wt%以下を含有する鋼スラブを、仕上圧延温度
850 ℃以上で熱間圧延し、650 ℃以上で巻き取り、圧下
率85%以上で冷間圧延した後、再結晶温度〜850 ℃の温
度範囲で焼鈍し、次いで圧下率5%以下で調質圧延する
ことにより、結晶粒径15μm以下のフェライト組織から
なり、平均r値が 1.8以上、r値の異方性(Δr)が−
0.10〜0.10、圧延方向、圧延直角方向、圧延45度方向の
延びがいずれも40%以上、時効指数(AI)が0.0 kgf/
mm2 以下の鋼板とする。
Description
鋼板および2ピース変形缶体に関し、特に、鋼板の深絞
り成形により、円筒状の中間缶体(以下、単に「円筒缶
体」と略記する)とし、この円筒缶体の缶胴部をさらに
張出す成形(バルジング成形)を行う際に、割れ等の欠
陥が発生することのない、成形性に優れた2ピース変形
缶用鋼板(表面にめっき、樹脂皮膜を形成したものも含
む)とこの鋼板で加工した缶体、ならびにこれらの製造
方法に関するものである。
の部品構成から、缶胴と上蓋からなる2ピース缶、缶胴
と上蓋と底蓋からなる3ピース缶に大別できる。なかで
も、2ピース缶は、製造工程が短いという点と、継目が
なく、均一で高い精度の巻締めが可能である点で、3ピ
ース缶より有利である。最近、この2ピース缶におい
て、より缶の意匠性を高めるために、缶胴部を円周方向
に部分的に膨らました、変形缶(コンタード缶:Contou
red can )が用いられる傾向がでてきた。変形缶とは、
缶胴がいわゆる単純な円筒形状でなく、意匠性をもたせ
るために、缶胴部の一部あるいは複数部を円周方向に張
出す加工、いわゆるバルジング加工して、変形させたも
のである。
での張出しあるいは絞り加工を伴うバルジング成形が必
須である。2ピース缶を、この張出し加工等の観点から
みると、2ピース缶の缶胴部は円周方向に連続した厚み
分布を有することから、接合部があるために円周方向に
板厚みの不連続を不可避的に伴う3ピース缶よりも、張
出し変形に対して有利であるといえる。しかし、一方、
2ピース缶は、張出し変形等に先立って、深絞りという
厳しい加工を受けるので、単純な曲げ変形しか受けてい
ない3ピース缶に比して加工上の不利を内在している。
これまで、主として、3ピース溶接缶で製造されてい
た。しかし、この3ピース変形缶におけるバルジング加
工では、円周方向の歪量が10%以下、通常は5〜6%と
いった低い値にとどまっており、この程度の歪み量では
十分な意匠性を実現することができないという問題があ
った。一方、2ピース缶でも、これまでに変形缶の製造
がいくつか試みられてきた。しかし、素材としてアルミ
を用いる場合と同様に、鉄を使うと、深絞り成形(一部
しごき成形を含む)による素材の成形性の低下が大き
く、バルジング成形前に、加工組織を再結晶させるよう
な高温(絶対温度で表示した溶融点の1/2以上の温
度)での中間焼鈍処理が必須であった。このような付加
的な処理は、製造コストの大幅な増大を招くのみでな
く、品質管理を困難にするという新たな問題を生ずるこ
ととなり、実現するまでにはいたっていない。中間焼鈍
を省略する手段として、バルジング成形時の破断抵抗を
増加させるうえから、素材の板厚を増加させることが考
えられるものの、この場合には、缶体重量がいたずらに
増大し、コストの上昇をも招くという問題があり、同様
に実現していない。
供しうる素材に対しては、従来になく過酷な成形に耐え
うる加工性が要求される。それにもかかわらず、この加
工性を支配する必要特性がいかなるものかは、今までま
ったく明らかにされていなかった。はっきりと言えるこ
とは、深絞りと張出し加工を伴う成形時に生ずる現象
は、単純にr値や伸びでは整理できないという程度でし
かなかった。
した技術については、これまでにもいくつか提案されて
きた。その一つは、低炭素アルミキルド鋼を素材とし、
徐加熱、長時間均熱、徐冷を行う箱焼鈍法で製造するも
のである。しかし、この従来技術で得られるr値は、高
々1.5 程度であり、延性も板厚によって変動はあるもの
35%程度であった。なお、箱焼鈍法自体が、生産性、材
質均一性、表面品質性の面で慢性的な問題点を抱えてい
ることは言うまでもないところである。また、軟質缶用
鋼板を連続焼鈍法で製造する方法としては、例えば、川
鉄技報Vol.14(1982)4 ,62などに記載されているよう
に、低炭素アルミキルド鋼を素材とし、連続焼鈍時の冷
却を制御することにより、T3以下の軟質な缶用鋼板を
製造する方法がある。しかし、本法では,軟質化は達成
できるものの、鋼板自体の加工性、例えば、伸び、r値
を高くすることが依然としてできていなかった。
昭61−207520号公報に提案されているように、従来鋼よ
りもC含有量を低減させた極低炭素鋼の適用が提案され
た。このような手段をとれば、伸び、r値は改善される
が、単純な極低炭素鋼を使用した場合に、結晶粒径が顕
著に粗大化し、r値の面内異方性が増大するという問題
が生ずることとなった。これに対しては、特開平2−11
8026に例示されるように、Nbの微量添加が提案されてい
る。しかし、このように特性が優れた鋼板を2ピース変
形缶に適用しても、十分な成形性を安定して得ることが
できなかった。このことは、2ピース変形缶における変
形挙動が、従来から成形性の目安に用いられてきたr値
や伸び(El)だけでは表現できない、別の因子の存在を
うかがわせるものであるが、明らかにされてはいなかっ
た。このほか、軟質な容器用材料の製造法に関する方法
として、特開平2−277722号公報に示すような、セミ極
低炭素鋼を素材とし、連続焼鈍時に急冷、過時効処理を
適用する技術が開示されている。しかし、この技術で
は、硬度以外の機械的特性については、触れられていな
い。当然ながら、この技術における過時効処理は生産性
の阻害要因の一つとなるので好ましくない。
(Drawn & Ironed )缶用途で優れたネックドイン成形
性を有する鋼板に関する技術が開示されている。例え
ば、特開平5−287443号公報、特開平5一287444号公報
および特開平5一287445号公報などがある。これらの技
術は、DI成形後にネックドイン成形と呼ばれる縮径加
工を行なう際の成形性を改善するものであり、極低炭素
鋼にNb、Tiを添加することにより、硬度、引張り特性
(降伏応力YS、引張り強度TS)の改善に関して、これら
の元素の添加が有効であることが開示されている。しか
し、このネックドイン成形は圧縮成形に近いものであ
り、成形時に生ずる欠陥はしわ発生現象に限定され、深
絞り加工後の2次成形ではあっても、本発明で対象とす
るような、引張り、張り出しに相当する変形に対して、
何の寄与も知見も与えるものではなかった。
ている上記問題点を解決し、徒に素材の板厚を増すこと
なく、また深絞り加工後の中間焼鈍を施すことなく、円
周方向の引張歪み10%以上のバルジング成形が可能な、
2ピース変形缶体の製造技術を提供することにある。本
発明の他の目的は、上記缶体の製造を可能にするに必要
な材料特性を見いだすことにある。また、本発明の他の
目的は、上記材料特性を満たし、優れた成形加工性を有
する2ピース変形缶用鋼板およびその製造方法を提供す
ることにある。さらにまた、本発明の他の目的は、過時
効処理を施すことなく、上記材料特性を満たし、優れた
成形加工性を有する2ピース変形缶用鋼板の製造方法を
提供することにある。
解決するため、2ピース変形缶の成形に必要な材料の特
性、この特性を満たす鋼板の製造条件等について、鋭意
実験、研究を重ね、本発明を完成するに至った。すなわ
ち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
からなり、平均r値が 1.8以上、r値の異方性(Δr)
が−0.10〜0.10、圧延方向、圧延直角方向、圧延45度方
向の延びがいずれも40%以上、時効指数(AI)が0.0
kgf/mm2 以下の特性を有することを特徴とする、板厚0.
15〜0.40mmの2ピース変形缶用鋼板。
下、Mn:0.7 wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.010
wt%以下、Al:0.100 wt%以下、N:0.0030wt%以下、
Nb:0.003 〜0.03wt%、残部がFe及び不可避的不純物の
鋼組成であって、結晶粒径15μm以下のフェライト組織
からなり、平均r値が 1.8以上、r値の異方性(Δr)
が−0.10〜0.10、圧延方向、圧延直角方向、圧延45度方
向の延びがいずれも40%以上、時効指数(AI)が0.0
kgf/mm2 以下の特性を有することを特徴とする、板厚0.
15〜0.40mmの2ピース変形缶用鋼板。
らにTi:0.003 〜0.03wt%、B:0.0005〜0.0020wt%の
1種または2種を含有させることを特徴とする、2ピー
ス変形缶用鋼板。
ものに、さらにCu:0.5 wt%以下、Ni:0.5 wt%以下、
Cr:0.5 wt%以下、Mo:0.5 wt%以下から選ばれる1種
または2種以上をを含有させることを特徴とする、2ピ
ース変形缶用鋼板。
(4) のいずれか1つに記載の、2ピース変形缶用鋼板。
の2ピース変形缶用鋼板で加工された缶体であって、該
缶体の缶胴部には、円周方向の伸び歪み10%以上のバル
ジング成形部を有することを特徴とする、2ピース変形
缶体。
下、Mn:0.7 wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.010
wt%以下、Al:0.100 wt%以下、N:0.0030wt%、Nb:
0.003〜0.03wt%以下を含有する鋼スラブを、仕上圧延
温度850 ℃以上で熱間圧延し、650 ℃以上で巻き取り、
圧下率85%以上で冷間圧延した後、再結晶温度〜850 ℃
の温度範囲で60秒間以下均熱する焼鈍を行い、次いで圧
下率5%以下で調質圧延することを特徴とする、上記
(2) 〜(4) のいずれか1つに記載の2ピース変形缶用鋼
板の製造方法。
(4) のいずれか1つに記載の鋼板を、合計絞り比 2.0以
上で2ピース円筒缶体に深絞り成形し、次いで、該円筒
缶体の缶胴部の円周方向に、伸び歪み10%以上でバルジ
ング成形することを特徴とする、2ピース変形缶体の製
造方法。ここで、合計絞り比とは、ブランキング径/最
終径をさす。また、実製缶における上記バルジング成形
の伸び歪みは、成形前後の缶胴部の円周長の変化で求め
るものとする。
(4) のいずれか1つに記載の鋼板を、合計絞り比 2.0以
上で2ピース円筒缶体に深絞り成形し、次いで、塗装、
焼付の処理を行い、その後、該円筒缶体の缶胴部の円周
方向に、伸び歪み10%以上でバルジング成形することを
特徴とする、2ピース変形缶体の製造方法。
について説明する。 (1) 材料特性 平均r値:1.8 以上 平均r値が1.8 を下回ると、1次成形の深絞り成形でで
きた円筒缶体の壁厚みの高さ方向の不均一性が顕著に増
加するとともに、2次成形の張出し加工等においても、
割れを発生しやすくなることが明らかとなった。ただ
し、面内におけるもっとも低い方向のr値でも1.6 以上
あることが望ましい。なお、本発明でいうr値は、通常
の引張法で15%の塑性歪を付与して評価することとす
る。平均r値は、 平均r値=(rL +rC +2×rD )/4 で算出する。ただし、rL 、rC およびrD は、それぞ
れ、L(圧延)方向、C(圧延方向直角)方向、D(圧
延方向45°) 方向のr値を表す。
て用いられていた。発明者らは、さらに詳細な検討を重
ねた結果、単にフランジ縁部の高さ不均一(いわゆるイ
ヤリング)のみならず、缶胴部のわずかな板厚変動にこ
のパラメータが影響していることを明らかにした。この
ような微小な変動は、通常の2ピース缶ではまったく問
題にならない範囲のものであるが、本発明のごとく、深
絞り加工後さらに2次のバルジング成形を行う用途にお
いては、成形の成否を決定する重要な因子であることが
明らかとなったのである。△rの絶対値が0.10を超える
と、張出し成形等における破断の危険性は急激に増大す
るので、△rは−0.10〜0.10の範囲におさめる必要があ
る。なお、△rは、△r=(rL +rC −2×rD )/
2で算出する。
であるが、発明者等の検討の結果、原板の状態で40%以
上の伸びを有していれば、問題なく2次成形できること
が明らかとなった。この値は、鋼板の圧延方向に対し
て、少なくともL、C、D方向の3方向から採取した試
片の最小値を意味する。
わち、時効指数が0.0kgf/mm2 以下、望ましくは負の値
をとることにより、2次成形における破断の危険性が顕
著に低減する。このことは、深絞り成形に先だって、塗
装・焼付けが行なわれた際の材質変化、材質劣化がな
く、深絞り成形が高い均一性のもとで行われることを意
味しており、その後の2次成形をも安定化させると考え
られる。ここで、時効指数は、鋼板の圧延方向に試験片
(JIS 13号または5号試験片)を採取し、7.5 %の予歪
みを付与した後、除荷し、100 ℃にて30分の時効を施し
た後、再度引張り行ない、時効前の変形応力と時効後の
降伏応力の差から求めたものである。引張りの速度は1.
0 〜10mm/分が推奨される。この値が負であることは、
時効により軟化を生じていることを意味する。実用的な
必要強度を考慮した場合には、−2.0 〜0.0 kgf/mm2 の
範囲が望ましい。なお、本来、時効指数は、時効性を有
する鋼板のひずみ時効による硬化能を評価する方法であ
る。しかし、本発明のように、顕著に時効性を低減した
場合には、負の値になる。これは、予ひずみ付与後の試
料に時効を施しても、時効硬化が起こらず、逆に転位の
再配列、消滅による回復いいかえれば内部応力の緩和が
進んだためであると思われる。
結晶粒径が大きくなり過ぎると、肌あれに起因して、逆
に延性は低下する。特に、本発明のごとく、1次成形で
深絞り成形を行なった後に、2次の張出し成形等を行な
う場合に、この現象が顕著にあらわれる。平均の結晶粒
径を15μm以下にすれば、これらの不具合の発生を抑制
することが可能となる。さらに高い品質レベルが要求さ
れる場合には、10μm以下にすることが望ましい。な
お、結晶粒径は、表面をナイタールでエッチングし、通
常の光学顕微鏡で観察して求めるが、その際、出現しに
くくなっている粒界も確実に考慮して平均粒径を算出す
る必要がある。このとき、比較法、切断法、面積法のい
ずれの決定法も適用できるが後2者の方がより安定性が
高い。
板の平均r値、伸び値が向上する。特に、0.0020wt%以
下にすることにより、1次の深絞り成形に続く2次の張
出し成形等の成形性が著しく向上する。Cの低減手段と
して、連続焼鈍時に雰囲気制御して脱炭反応により、鋼
中C量を低減することは、さらに有効である。C量の下
限は特に定めないが、C量の低下にともなって、組織の
粗大化し、かえって肌あれ現象による外観美麗性や成形
性を招きやすくなるので、0.0005wt%程度とするのが好
ましい。材質の安定性などを考慮すれば、0.0005wt%〜
0.0015wt%がさらに望ましい。
ともに、表面性状の悪化を招き易いので、低減すること
が望ましい。0.05wt%以下とすることにより、これらの
悪影響を回避することができる。なお、さらなる強度の
低下、延性の向上を必要とする用途では0.03wt%以下に
低減することが望ましい。
効な元素である。またMnは、大きな材質の低下を伴うこ
となく、熱間圧延時の変態点を低下させ、熱間圧延工程
を容易にさせる有用な効果があるため、0.05wt%以上添
加することが望ましい。しかし、0.7 wt%を超えて多量
に添加すると、r値の低下が顕著となり、また鋼板を過
度に硬質化させ、冷間圧延性を低下させるために、その
上限を0.7 wt%とした。より良好な耐食性と成形性が要
求される用途では0.3 wt%以下とするのが望ましい。
ンジ加工性やネック加工性を悪化させ、また耐食性をも
悪化させるので、その上限を0.02%とした。これらの特
性が特に重要視される場合には0.01%以下とするのが好
ましい。
の劣化をもたらす有害な元素であるので、0.010 wt%以
下に制限する。加工性を特に必要とする場合には、0.00
5 wt%以下の範囲に抑制するのが望ましい。
有量が多過ぎると、表面性状の悪化につながるので、0.
100 wt%以下の範囲で添加する。なお、材質の安定性と
いう観点からすれば、0.008 〜0.080 wt%の範囲が望ま
しい。
を低下させる。また、熱延の初期段階の加工時に割れを
発生する危険性を増大させる元素でもある。そのため、
その上限を0.0030wt%とした。製造工程全体を考慮した
材質の安定性、歩留まり向上という観点では、0.0025wt
%以下の範囲が好適である。
材質を大きく改善する極めて重要な添加元素である。す
なわち、Nbの添加により、固溶状態のC量が減少し、同
時に鋼の組織微細化が達成され、これにより、深絞り性
に関係するr値が顕著に向上し、△rの絶対値が低下す
る。さらに、特に重要な深絞り成形後の2次成形性が顕
著に改善される。このような効果は、0.003 wt%以上の
添加により発揮される。しかし、0.03wt%を越えて添加
すると、Nbの添加効果が飽和することに加え、鋼が硬質
化して、スラブ状態での割れ発生率が増加するととも
に、熱間−冷間圧延性が劣化する。さらに、再結晶温度
が上昇する結果、より高温の連続焼鈍が必要となり、焼
鈍の操業が極めて困難なものとなる。従って、Nb添加量
は0.003 〜0.03wt%とした。材質上好ましいのは、0.00
3 〜0.025 wt%、さらに好ましくは 0.003〜0.020 wt%
である。
らにTi:0.003 〜0.030 wt%、B:0.0005〜0.0020wt%
の群、Cu:0.5 wt%以下、Ni:0.5 wt%以下、Cr:0.5
wt%以下、Mo:0.5 wt%以下からなる群のいずれか1群
または2群から選ばれる1種以上の元素を添加すること
ができる。
20wt% Ti、Bは、組織の微細化効果と時効性の調整制御に有用
な元素である。また、Al単独添加に比べて、より安定に
鋼中のNを固定できる。すなわち、最終製品の段階で残
存する固溶Nを容易に0にすることができる。このよう
な効果はTi,Bそれぞれ0.003 wt%、0.0005wt%から得
られるが、それぞれ0.03wt%、0.0020wt%を超えて添加
すると、これらの添加効果が飽和するほか、鋼板の面内
異方性が増加するため好ましくない。なお、これらの両
元素を複合添加した場合でも上記効果は相殺されること
はない。
r:0.5 wt%以下、Mo:0.5 wt%以下 Cu、Ni、CrおよびMoは、材質の悪化を伴うことなく、鋼
板強度を高めるのに有用な元素であるが、これらの元素
を0.5 wt%を超えて添加すると、冷間圧延性が悪化する
ので、いずれの元素とも0.5 wt%以下の範囲で添加す
る。なお、これらの元素の効果は互いに相殺されること
なく、複合添加して用いることができる。また、上記各
元素の添加効果は、0.03wt%以上の添加により、顕れる
ので、それぞれ0.03wt%以上添加することが望ましい。
絞り成形の際に破断を生じることに加え、缶胴部のバル
ジング加工時に破断を生じる危険性が増加する。一方、
板厚が0.40mmを超えると、缶体成形時に厳しいしごき加
工等を付与しないかぎり、缶胴部の板厚が大きく、素材
重量が大きい不経済な缶となる。したがって、本発明鋼
板の板厚は0.15〜0.40mmの範囲とする。
工程は、連続鋳造−粗熱間圧延またはシートバーキャス
ターにより、シートバーとしたのち、仕上げ熱間圧延−
酸洗−冷間圧延−再結晶焼鈍−調質圧延により鋼板とす
る。
がある。仕上げ圧延温度が850 ℃を下回ると、組織の均
一性が低下することに加え、△rが著しく負の方向に変
化する結果、△rの絶対値が大きくなり好ましくない。
すなわち1次の深絞り成形での耳の発生、2次の張出し
成形での割れ発生頻度の増大などの問題が顕在化する。
なお、熱間圧延時に摩擦係数が0.2 以下、好ましくは0.
15以下の潤滑圧延を行うことは、熱延コイルの先端部及
び後端部の最終的な材質変動を軽減できるので望まし
い。この潤滑圧延は、仕上げ圧延機入り側で、先行する
シートバーと後行するシートバーとを接合して圧延す
る、いわゆる連続圧延と組み合わせ実施することにより
特に効果が大きい。また、熱間圧延後、直ちに水冷を開
始して次項に述べる温度で巻き取ることは、組織の均一
かつ微細化の観点から有効である。
の絶対値の低減、さらには材質均一性の向上も達成され
る。650 ℃を下回ると、上記の特性が悪化することに加
え、伸びの面内異方性が増加し好ましくない。酸洗につ
いては特に限定をする必要はなく、通常の塩酸、ないし
は硫酸で酸化層を除去すればよい。
である。圧下率を85%以上とする冷間圧延の後に、短時
間均熱の焼鈍を行うことにより、均一な組織が形成さ
れ、その結果、高r値、低△r値(絶対値)、高延性と
いう優れた特性を得ることができる。なかでも、特に高
い材質均一性が必要となる場合には88%以上の冷間圧下
率が望ましい。
が不可欠である。しかし、焼鈍温度が850 ℃を超える
と、組織の混粒化の傾向が顕著となる。また、焼鈍時間
は60秒間以下均熱することが望ましい。
には、表面の粗度調整、形状調整などのために好ましく
は1%以上の軽スキンパス圧延を行う。しかし、この圧
下率が5%を超えると、均一伸びの低下が無視できなく
なるので、調質圧延は5%以下の範囲で行う。
用鋼板に適用されるいずれの処理も適用可能である。す
なわち、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき、ニ
ッケル・クロムめっきおよびニッケル・錫めっきなどで
ある。また、これらのめっきの後に、樹脂皮膜(塗装あ
るいは有機樹脂フィルム)を施して製缶するような、や
や特殊な用途においてもなんら問題なく適用可能であ
る。あるいは、鋼板を焼鈍する前にNiめっきを行い、焼
鈍によりNi拡散層を形成させてから、錫めっきを行う用
途でも問題なく適用可能である。
(初期ブランク径/最終絞りのパンチ径)が少なくとも
2.0 以上にならないと、缶の高さが十分ではなく、用途
が極めて限定される。
上の円周方向伸び歪みを加えないと十分な意匠性を付与
することができない。なお、バルジング成形としては、
管軸方向へのメタルフローを許す「絞り」、許さない
「張出し」のいずれも可能である。
鋼を転炉で溶製し、この鋼スラブを、表2に示す条件
で、熱間圧延、酸洗、冷間圧延ののち、焼鈍温度と焼鈍
時間とを変化させて連続焼鈍を行った。その後圧下率1.
5 %で調質圧延を行い、最終仕上げ板厚0.25mmの鋼板を
製造した。得られた鋼板についてのr値、板面各方向の
伸び、時効特性を測定(JIS 13号−B 試験片を使用)し
た。また、これらの鋼板に、25番相当(約2.8g/m2の目
付け)の錫めっきを行ない、リフロー処理で鏡面状態と
したのち、クロム酸を主体としためっき浴で金属Cr量15
mg/m2、酸化Cr量7 mg/m2 のめっきを行なった。その
後、板の表裏面にクリアラッカーを塗付, 乾燥させた。
この状態で以下の成形を行なった。鋼板を198 mmφにブ
ランキングし、まず90mmφのパンチで深絞り成形で円筒
缶体(絞り比2.2 )とし、次いで図1に示すように、ゴ
ムを利用したバルジング成形(円周方向の最大伸び歪み
15%)により、2ピース変形缶体を製造した。この缶体
について、表面の美麓性、割れ発生の有無などを調査し
た。
は全ての鋼板が材料特性を満足しており、成形後の2ピ
ース変形缶体も割れ発生を招くことなく製造でき極めて
優れた成形性を有することがわかった。しかも、発明例
による缶体の表面は美麗であった。これらの諸特性は比
較例として用いた箱焼鈍材よりも優れていた。
12分割した構造)を用い、円周方向の最大歪み量を15%
とした方法で成形し、同様の調査を行った。成形法の違
いはあるもの、ほぼ同様の結果が得られ、本発明法によ
る鋼板は極めて優れたバルジング成形性を有していた。
また、鋼板の表面処理条件を以下のように変化させて供
試材とした。すなわち、連続焼鈍後に、まず錫を1.0 g/
m2をめっきし、つづいて全Cr量を15 mg/m2、そのうち金
属Cr量を7 mg/m2 析出させた。その鋼板上に30μm厚み
のPETフィルムを熱融着させ、試験に供した。その結
果、通常の塗装・焼付けを行なった場合とほほ同等の加
工特性がえられ、本発明鋼板を素材とした場合には、極
めて安定した製缶特性が得られることが明らかとなっ
た。
し、焼鈍温度を幅広く変化させて、上記実施例2に準じ
てサンプルを作製し、3工程の絞り加工により、最終的
に絞り比2.6 で円筒缶体に成形した後に、破断を生じる
ことなく成形可能な、バルジング歪みの最大値を求め、
このバルジング歪みに及ぼす平均r値と時効指数との関
係を整理して図2に示す。同様に、破断を生じることな
く成形可能な、バルジング歪みの最大値に及ぼす、伸び
値と結晶粒径の関係を図3に示す。図2、図3から、本
発明範囲を満たす特性の鋼板であれば、高いバルジング
成形が可能であることがわかる。
ば、1次の深絞り成形に続く、2次のバルジング成形に
おいて、円周方向の引張歪み10%以上の成形が容易に行
えるという、極めて優れた成形性を有する2ピース変形
缶用鋼板が製造可能となる。また、この鋼板を用いれ
ば、素材の板厚をさほど増すことなく、また深絞り加工
後の中間焼鈍を施すことなく、円周方向の引張歪み10%
以上を付与した2ピース変形缶体を製造することが可能
となる。したがって、本発明によれば、従来の鋼板では
実現できなかった高い意匠性を有する缶体を安定した条
件で製造することができるようになる。
の断面模式図である。
を生じることなく成形可能なバルジング歪みの最大値に
及ぼす、平均r値と時効指数の関係をを示すグラフであ
る。
を生じることなく成形可能なバルジング歪みの最大値に
及ぼす、伸び値と結晶粒径の関係をを示すグラフであ
る。
Claims (9)
- 【請求項1】 結晶粒径15μm以下のフェライト組織か
らなり、平均r値が1.8以上、r値の異方性(Δr)が
−0.10〜0.10、圧延方向、圧延直角方向、圧延45度方向
の延びがいずれも40%以上、時効指数(AI)が0.0 kg
f/mm2 以下の特性を有することを特徴とする、板厚0.15
〜0.40mmの2ピース変形缶用鋼板。 - 【請求項2】 C:0.0020wt%以下、Si:0.05wt%以
下、Mn:0.7 wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.010
wt%以下、Al:0.100 wt%以下、N:0.0030wt%以下、
Nb:0.003 〜0.03wt%を含有し、残部がFe及び不可避的
不純物の鋼組成であって、結晶粒径15μm以下のフェラ
イト組織からなり、平均r値が 1.8以上、r値の異方性
(Δr)が−0.10〜0.10、圧延方向、圧延直角方向、圧
延45度方向の延びがいずれも40%以上、時効指数(A
I)が0.0 kgf/mm2 以下の特性を有することを特徴とす
る、板厚0.15〜0.40mmの2ピース変形缶用鋼板。 - 【請求項3】 請求項2に記載の鋼組成のものに、さら
にTi:0.003 〜0.03wt%、B:0.0005〜0.0020wt%の1
種または2種を含有させることを特徴とする、2ピース
変形缶用鋼板。 - 【請求項4】 請求項2または3に記載の鋼組成のもの
に、さらにCu:0.5wt%以下、Ni:0.5 wt%以下、Cr:
0.5 wt%以下、Mo:0.5 wt%以下から選ばれる1種また
は2種以上を含有させることを特徴とする、2ピース変
形缶用鋼板。 - 【請求項5】 表面に樹脂皮膜を有する、請求項1〜4
のいずれか1項に記載の、2ピース変形缶用鋼板。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の2
ピース変形缶用鋼板で加工された缶体であって、該缶体
の缶胴部には、円周方向の伸び歪み10%以上のバルジン
グ成形部を有することを特徴とする、2ピース変形缶
体。 - 【請求項7】 C:0.0020wt%以下、Si:0.05wt%以
下、Mn:0.7 wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.010
wt%以下、Al:0.100 wt%以下、N:0.0030wt%以下、
Nb:0.003 〜0.03wt%を含有する鋼スラブを、仕上圧延
温度850 ℃以上で熱間圧延し、650 ℃以上で巻き取り、
圧下率85%以上で冷間圧延した後、再結晶温度〜850 ℃
の温度範囲で60秒間以下均熱する焼鈍を行い、次いで圧
下率5%以下で調質圧延することを特徴とする、請求項
2〜4のいずれか1項に記載の2ピース変形缶用鋼板の
製造方法。 - 【請求項8】 表面に樹脂皮膜を有する、請求項1〜4
のいずれか1項に記載の鋼板を、合計絞り比 2.0以上で
2ピース円筒缶体に深絞り成形し、次いで、該円筒缶体
の缶胴部の円周方向に、伸び歪み10%以上でバルジング
成形することを特徴とする、2ピース変形缶体の製造方
法。 - 【請求項9】 表面に樹脂皮膜を有する、請求項1〜4
のいずれか1項に記載の鋼板を、合計絞り比 2.0以上で
2ピース円筒缶体に深絞り成形し、次いで、塗装、焼付
の処理を行い、その後、該円筒缶体の缶胴部の円周方向
に、伸び歪み10%以上でバルジング成形することを特徴
とする、2ピース変形缶体の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9085033A JPH10280089A (ja) | 1997-04-03 | 1997-04-03 | 2ピース変形缶用鋼板および2ピース変形缶体、ならびにそれらの製造方法 |
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JP2005179102A Division JP4265574B2 (ja) | 2005-06-20 | 2005-06-20 | 2ピース変形缶用鋼板およびその製造方法 |
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JP9085033A Pending JPH10280089A (ja) | 1997-04-03 | 1997-04-03 | 2ピース変形缶用鋼板および2ピース変形缶体、ならびにそれらの製造方法 |
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