JP2010255021A - 缶用鋼板用冷延鋼板と缶用鋼板およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.001〜0.01mass%、Si:0.1mass%以下、Mn:0.1〜1.2mass%、P:0.05mass%以下、S:0.05mass%以下、Al:0.001〜0.10mass%、N:0.03mass%以下、Nb:0.02mass%以下、Sn:0.02mass%超0.10mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、r値が1.0±0.2である缶用鋼板用冷延鋼板の表面に電気錫めっき、クロムめっきおよびニッケルめっきのいずれか1以上のめっき処理または塗油が施されてなる缶用鋼板。
【選択図】図4
Description
しかしながら、特許文献1のように、極低炭素鋼を連続焼鈍することによって製造した缶用鋼板は、拡缶用の3ピース缶に用いた場合には、上述した溶接部以外の部分が変形を起こして、上述した「Aタイプ」の不具合を起こしやすいという問題点がある。
この問題に対しては、特許文献2に、熱間圧延工程および冷間圧延後の焼鈍工程において鋼中のSnを鋼板表面に濃化させることによって、すなわち、鋼中に不可避的に混入するSnを逆に利用することによって、耐食性を向上した表面処理用冷延鋼板が提案されている。
r値=εw/εt
で表されるように、引張試験片に所定の引張変形を付与したときの、試験片の板厚方向の歪量εtと、試験片幅方向の歪量εwとの比で定義される。したがって、r値が1より大きい場合とは、試験片に引張変形を付与したときに、板厚よりも板幅の方が大きく減少することを、一方、r値が1より小さい場合とは、試験片に引張変形を付与したときに、板幅よりも板厚の方が大きく減少することを意味している。
本発明は、上記知見に、さらに検討を加えて開発したものである。
C:0.01mass%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、加工性を低下させる元素でもある。特に、連続焼鈍法で鋼板を製造する場合、良好な加工性を確保するためには、Cは低い方が望ましい。また、Cが高いと、缶胴溶接部が硬質化するため、拡缶加工により溶接部が突起したり、溶接部の近傍でフランジ割れを生じたりしやすくなる。よって、本発明では、Cは0.01mass%以下とする。なお、Cの下限は特に限定しないが、Cが低くなり過ぎると、缶強度を確保するための二次冷延圧下率を高くすることが必要となるほか、製造コストの上昇を招くため好ましくない。よって、Cは好ましくは0.0010〜0.0050mass%の範囲であり、より好ましくは0.0010〜0.0030mass%の範囲である。
Siは、通常、脱酸元素として添加される元素であり、また鋼を高強度化するために添加される元素でもある。しかし、缶用鋼板の場合、Siを多量に含有するとスケールに起因した表面性状の劣化やめっき不良による耐食性の低下を招くおそれがある。よって、Siは0.1mass%以下とする。好ましくは、0.04mass%以下である。
Mnは、Sに起因した熱間割れを防止するのに有効な元素であり、Sの量に応じて添加する必要がある。また、Mnは、結晶粒を微細化し、鋼を高強度化する作用も有する。これらの効果を得るためには、0.1mass%以上の添加が必要である。一方、Mnの過剰な添加は、耐食性の低下をもたらすとともに、鋼板を硬質化させて、フランジ加工性を低下させる。よって、本発明では、Mnを0.1〜1.2mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.1〜0.5mass%の範囲である。
Pは、不可避的不純物であり、鋼を硬質化させ、加工性を低下させるほか、耐食性を低下させる有害な元素である。したがって、Pは低いほど好ましく、本発明では、0.05mass%以下に制限する。好ましくは、0.02mass%以下である。
Sは、不可避的不純物であり、鋼中に介在物として存在し、鋼板の延性を低下させると共に、耐食性を低下する有害な元素であり、できる限り低減するのが望ましい。よって、本発明においては、Sは0.05mass%以下に制限する。好ましくは、0.01mass%以下である。
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、0.001mass%未満では、脱酸が不十分となり、酸化物系介在物によるフランジ加工性の低下を招く。一方、0.10mass%を超える添加は、アルミナ系介在物が増加し、表面品質や内部品質を低下させるので、上限は0.10mass%とする。好ましくは、0.030〜0.050mass%の範囲である。
Nは、溶接部の硬さの上昇を招くことなく強度を高めるのに有効な元素である。しかし、Nの含有量が0.03mass%を超えると、鋼板が著しく硬質化し、また、スラブ内部に気泡が発生して素材の健全性も低下し、却って製缶工程でのフランジ加工において割れを生じやすくする。よって、本発明では、Nの上限を0.03mass%とする。好ましくは、0.0050mass%以下である。
Nbは、固溶Cや固溶Nを固定する作用があるあが、添加量が多いと再結晶温度が上昇するため、焼鈍温度が高温となって製造コストが増大したり、安定した焼鈍を行い難くなったりする。よって、本発明においては、Nbの添加量は0.02mass%以下に制限する。好ましくは、0.005mass%以下である。
Snは、製鉄原料であるスクラップ等から不可避的に混入してくる元素であり、また、一旦混入すると、製鋼において除去するのが難しい元素である。そのため、Snを0.02mass%以下に低減するには、使用するスクラップを厳選したり、溶銑率を高めたりする必要があることから、製造コストの上昇を招く。一方、Snは、r値を低下する元素であり、Snを適正量含有させることで、鋼板のr値を適正範囲に制御するのに有効な元素である。そこで、本発明においては、r値が高過ぎる極低炭素鋼素材の連続焼鈍材にSnを0.02mass%超添加し、r値を適正範囲に制御する。一方、Snの含有量が、0.10mass%を超えると、r値が熱間加工性を害して表面品質の低下を招く。よって、本発明においては、Snを0.02mass%超0.10mass%以下の範囲で添加する。なお、制御対象であるr値は、調質圧延の圧下率や二次冷延圧下率によっても変化するため、それらの圧下率に応じてSnの添加量は上記組成範囲内で適宜決定するのが好ましい。
本発明の缶用鋼板は、上記適正範囲に調整された成分組成を有する鋼スラブを常法にしたがって製造したのち、この鋼スラブを好ましくは1050〜1300℃の温度に再加熱し、仕上圧延終了温度を(Ar3変態点−30℃)以上とする熱間圧延し、400〜800℃の温度でコイルに巻取り、冷間圧延し、連続焼鈍した後、1〜40%の圧下率の調質圧延または2次冷間圧延を施すことにより製造することができる。以下、上記製造条件について説明する。
なお、加熱炉でスラブを再加熱する場合の加熱温度は、1050〜1300℃の範囲とするのが好ましい。1050℃以上とすると、後述する熱間圧延における仕上圧延終了温度を確保することが容易となる。一方、1300℃以下とすると、鋼板表面にスケール起因の表面欠陥が発生することがなく、表面品質に優れる鋼板が得られるからである。
終了温度が(Ar3変態点−30℃)未満では、最終製品における金属組織が粗粒化して、製缶時に肌荒れが起こり易くなったり、リジング現象が発生し、成形加工後の外観不良が生じやすくなったりするため好ましくない。
なお、熱間圧延の仕上圧延終了温度の上限は、特に限定しないが、表面品質を確保するためおよび熱エネルギーコストを低減するためには、1000℃以下であるのが好ましい。より好ましい熱間仕上圧延終了温度は950〜1000℃の範囲である。
なお、上記温度に保持する均熱時間は、5〜60secの範囲とするのが好ましい。5sec以上とすると、再結晶が十分進行する。一方、60sec以下とすると、生産性に優れるからである。
平均r値=(rL+rC+2rD)/4
ここで、rL、rCおよびrDは、L,CおよびD方向のr値
を用いて平均r値を求めた。
次いで、上記冷延鋼板を、ラインに通板して、電気錫めっき処理(目付量:#25/#25)を施して、板厚が0.17mmの缶用鋼板とした。この缶用鋼板から試験用シートサンプルを採取し、圧延方向165.2mm×幅方向132.8mmにブランク後、圧延方向を缶胴円周方向として円筒状に丸め、スードロニック溶接機で溶接し、高さ130mm、直径52.3mmφ、容量250gの3ピース缶用缶胴を各100個ずつ製造し、以下の拡缶試験に供した。
<拡缶試験>
上記のようにして得た円筒缶胴内に特殊な割り型構造からなるエキスパンド加工用治具を挿入して、拡缶率7%のエキスパンド成型を施した。この時、エキスパンドの引張歪み方向は圧延方向となり、上記拡缶率は、その方向の引張歪み量に相当する。
上記拡缶後の缶胴について、円周方向の缶胴高さの変化、溶接部およびその近傍のフランジ割れ発生の有無、およびストレッチャーストレインに類する外観不良の有無を調査し、図2のように溶接部以外の収縮量が大きいAタイプの不具合、および、図3のように溶接部近傍にフランジ割れが発生するBタイプの不具合による不良率を調査した。なお、Aタイプの不具合は、缶胴高さの変動量が1.0mmを超えるものを、また、Bタイプの不具合は、割れの深さが1.0mmを超えるものを不良と判定した。
2:溶接部
3:溶接部に生じた突起部
4:溶接部近傍に生じたフランジ割れ
Claims (4)
- C:0.01mass%以下、Si:0.1mass%以下、Mn:0.1〜1.2mass%、P:0.05mass%以下、S:0.05mass%以下、Al:0.001〜0.10mass%、N:0.03mass%以下、Nb:0.02mass%以下、Sn:0.02mass%超0.10mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、r値が1.0±0.2である缶用鋼板用冷延鋼板。
- 請求項1に記載の冷延鋼板の表面に、錫めっき、クロムめっきおよびニッケルめっきのいずれか1以上のめっき層を有することを特徴とする缶用鋼板。
- C:0.01mass%以下、Si:0.1mass%以下、Mn:0.1〜1.2mass%、P:0.05mass%以下、S:0.05mass%以下、Al:0.001〜0.10mass%、N:0.03mass%以下、Nb:0.02mass%以下、Sn:0.02mass%超0.10mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、仕上圧延終了温度を(Ar3変態点−30℃)以上とする熱間圧延し、400〜800℃の温度でコイルに巻取り、その後、冷間圧延し、再結晶温度以上800℃以下の温度で連続焼鈍後、圧下率が1〜40%の調質圧延または2次冷間圧延する缶用鋼板用冷延鋼板の製造方法。
- 請求項3に記載の調質圧延後または2次冷間圧延後の冷延鋼板表面に、錫めっき、クロムめっきおよびニッケルめっきのいずれか1以上のめっき処理または塗油を施すことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
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