JP2009155692A - 面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.0010〜0.0030%、Si:0.03%以下、Mn:0.1〜0.3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.05%、N:0.005%以下、Nb:0.010〜0.020%を含み、かつC、Nbの含有量が下記の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30、AI≦30MPaであることを特徴とする面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板;(Nb/92.9)/(C/12)≧0.8・・(1)、ただし、式(1)中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を、|ΔYP|、|Δr|はそれぞれ降伏強度YP、r値の面内異方性の絶対値を、AIは歪時効指数を表す。
【選択図】図1
Description
(Nb/92.9)/(C/12)≧0.8 ・・・(1)
ただし、式(1)中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を、|ΔYP|、|Δr|はそれぞれ降伏強度YP、r値の面内異方性の絶対値を、AIは歪時効指数を表す。
ΔYP=(YPL-2YPD+YPC)/2
Δr=(rL-2rD+rC)/2
本発明の冷延鋼板は、例えば、上記の組成を有する鋼のスラブを、1200℃以上の加熱温度に加熱し、880〜950℃の仕上温度で熱間圧延を行い、620〜720℃の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、80〜90%の圧下率で冷間圧延を行った後、500〜700℃の温度域を5〜20℃/sの平均加熱速度で700〜800℃の均熱温度に加熱し、10〜100s均熱後、少なくとも600℃までの平均冷却速度を3℃/s以上として冷却する条件で焼鈍を行うことによって製造できる。
C:0.0010〜0.0030%
CはNbと微細な炭化物を形成し、冷間圧延後の焼鈍時にフェライト粒の成長を抑制するとともに、集合組織を制御し、YPおよびr値の面内異方性を小さくする作用を有する。このような作用を発揮させるには、C量は0.0010%以上にする必要がある。一方、C量が0.0030%を超えると、熱間圧延後に固溶Cが多量に残留し、冷間圧延時にフェライト粒内へ剪断歪が導入され、焼鈍時に特定方位の再結晶粒の形成が促進されることから、r値やYPの面内異方性が大きくなる。また、固溶Cや炭化物の増大は、硬質化や時効硬化によって加工性の劣化を招く。したがって、C量は0.0010〜0.0030%、好ましくは0.0010〜0.0020%とする。
Si量が0.03%を超えると、硬質化により加工性が劣化したり、焼鈍時のSi酸化皮膜の生成によりメッキ性が阻害される。また、熱間圧延時には、オーステナイトからフェライトに変態する温度が上昇し、オーステナイト域で圧延を終了させるのが困難になって硬質化やメッキ性の劣化を招く。したがって、Si量は0.03%以下とする。
Mnは熱間での延性に有害なSをMnSとして無害化するため、その量を0.1%以上にする必要がある。一方、Mn量が0.3%を超えると、硬質化による加工性の劣化や、焼鈍時のフェライトの再結晶が抑制され、未再結晶組織が残りやすくなり、さらなる硬質化を招く。したがって、Mn量は0.1〜0.3%、好ましくは0.1〜0.2%とする。
Pは粒界に偏析して延性や靭性を劣化させるため、その量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下とする。
S量が0.01%を超えると、熱間での延性を著しく低下させ、熱間割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させたり、粗大なMnSを形成することにより鋼板の延性を低下させる。したがって、S量は0.01%以下とするが、少ないほど好ましい。
AlはNを窒化物として固定することで、固溶Nによる時効硬化を抑制する効果を有する。このような効果を得るためには、Al量は0.01%以上にする必要がある。一方、Al量が0.05%を超えると、熱間圧延時にオーステナイトからフェライトに変態する温度を上昇させ、オーステナイト域で圧延を終了させるのが困難になる。したがって、Al量は0.01〜0.05%とする。
N量が0.005%を超えると、熱間圧延中にスラブ割れを伴い、表面疵が発生する恐れがあったり、冷間圧延・焼鈍後に固溶Nとして存在する場合には、時効硬化を引き起こす。したがって、N量は0.005%以下とする。
上述したように、NbはCと微細な炭化物を形成し、YPおよびr値の面内異方性を小さくする作用を有する。このような作用を発揮させるには、Nb量は0.010%以上にする必要がある。一方、Nb量が0.020%を超えると、Nbの炭窒化物や固溶Nbの過度の増大を招き、焼鈍時のフェライトの再結晶が抑制され、未再結晶組織が残りやすくなり、鋼板が硬質化して加工性が低下する。したがって、Nb量は0.010〜0.020%、好ましくは0.010〜0.015%とする。
上記のようにCとNb量を制御しても、NbとCの原子比である(Nb/92.9)/(C/12)が0.8未満だと、固溶Cが多量に残留し、時効硬化を引き起こす。したがって、(Nb/92.9)/(C/12)は0.8以上、好ましくは1.0以上とする。
肉厚の薄い円筒形の缶を絞りしごき加工により製造するには、絞り加工後しごき加工前の缶壁部の板厚分布が均一であることが重要である。これは、この板厚分布に不均一があると、板厚の大きい部分に加工時の歪が集中し、加工できなくなるためである。缶壁部の板厚偏差を小さくして板厚分布を均一にするためには、缶絞り時のフランジの流入を円周方向で均一にする必要があるが、r値の面内異方性を小さくしても、YPの面内異方性が大きい場合には、フランジ部の流入抵抗が周方向で異なり、YPの大きい方向での流入が抑制されるため、その方向の壁部の板厚が小さくなる。したがって、フランジの流入を均一にし、缶壁部の板厚分布を均一にするには、後述する図1、2に示すように、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30となるように、YPとr値の面内異方性を小さくする必要がある。
AIが0.30MPaを超えると、時効硬化により加工性が劣化する。したがって、AIは30MPa以下とする。
スラブの加熱温度:1200℃以上
上述したように、本発明では、冷間圧延後の焼鈍時にNbCの微細析出物を活用して集合組織や粒成長の制御し、YPとr値の面内異方性を小さくしているが、そのためには、熱間圧延する前にスラブ中のNbの炭化物を一旦固溶させ、熱間圧延、巻取り後に微細に再析出させる必要がある。したがって、スラブの加熱温度は1200℃以上とする。
熱間圧延は、粗圧延と仕上圧延で行われる。仕上圧延中にオーステナイト域からフェライト域に変態が起こると、圧延荷重が急激に低下し、圧延機の荷重制御が困難になるため、破断などが起こる危険が生じる。また、仕上圧延をフェライト域で行えば、このような危険は回避できるものの、圧延温度の低下により熱間圧延後の組織が未再結晶となるため、冷間圧延時の荷重が増大する。したがって、仕上圧延はオーステナイト域で終了させることが必要であり、仕上温度を880℃以上にする必要がある。一方、仕上温度が950℃を超えると、熱間圧延後の結晶粒が粗大化し、冷間圧延時の結晶回転が不十分となり、焼鈍後の鋼板においてr値の面内異方性を小さくさせるために必要な{111}<110>と{111}<112>の方位を有する結晶粒の発達が困難となる。したがって、仕上温度は880〜950℃とする。
本発明では、前述したように、冷間圧延後の焼鈍時にNbCの微細析出物を活用するが、該微細析出物は冷間圧延前の段階で極力析出させる必要がある。巻取温度が620℃未満だと、NbCの析出が抑制され、一方、巻取温度が720℃を超えると、NbCが粗大化し、冷間圧延後の焼鈍時において微細析出物を活用した集合組織や粒成長の制御ができなくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、巻取温度は620〜720℃、好ましくは650〜680℃とする。
巻取り後の鋼板は酸洗後の冷間圧延されるが、そのとき、圧下率が80%未満では、圧延による結晶回転が不十分となるため、r値やYPの面内異方性を小さくするために必要な{111}<110>と{111}<112>の方位を有する結晶粒の発達が困難となる。一方、圧下率が90%を超えると、別の方位を有する結晶粒が発達するため、r値やYPの面内異方性は大きくなる。したがって、圧下率は80〜90%とする。
焼鈍時、500〜700℃の温度域における平均加熱速度が5℃/s未満では、微細な析出物が粗大化するため、集合組織や粒成長の制御ができなくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。一方、この温度域における平均加熱速度が20℃/sを超えると、加熱途中における{111}<110>の方位の再結晶が抑制され、その後の均熱時に{111}<110>と{111}<112>の方位の再結晶が同時に起こるので、再結晶しやすい{111}<110>の方位を有する結晶粒が発達しやすくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。そのため、平均加熱速度を20℃/s以下にして、加熱途中で{111}<110>の方位の再結晶をさせながら粒成長を抑制するとともに、均熱時に{111}<112>の方位の再結晶を起こさせる必要がある。したがって、この温度域における平均加熱速度は5〜20℃/sとする。
再結晶を完了させる必要があるため、均熱温度は700℃以上にする必要がある。一方、均熱温度が800℃を超えると、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値の面内異方性が大きくなるとともに、結晶粒も等軸粒ではなくなるため、YPの面内異方性も大きくなる。したがって、均熱温度は700~800℃、好ましくは740~800℃とする。
均熱時間が10s未満だと、再結晶が完了しないため、均熱時間は10s以上とする必要がある。一方、均熱時間が100sを超えると、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、均熱時間は10〜100s とする。
均熱後は、均熱温度から少なくとも600℃までの平均冷却速度が3℃/s未満だと、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、均熱温度から少なくとも600℃まで、好ましくは100℃までの平均冷却速度は3℃/s以上とする。なお、上限は特に定めないが、特別な冷却設備を必要としない30℃/s程度が好ましい。
平均YP=(YPL+2YPD+YPC)/4
平均El=(ElL+2ElD+ElC)/4
平均r値=(rL+2rD+rC)/4
ただし、YPL、YPD、YPC、ElL、ElD、ElC、rL、rD、rCは、それぞれ圧延方向に対して45°方向、圧延方向に対して90°方向のYP、El、r値である。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.0010〜0.0030%、Si:0.03%以下、Mn:0.1〜0.3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.05%、N:0.005%以下、Nb:0.010〜0.020%を含み、かつC、Nbの含有量が下記の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30、AI≦30MPaであることを特徴とする面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板;
(Nb/92.9)/(C/12)≧0.8 ・・・(1)
ただし、式(1)中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を、|ΔYP|、|Δr|はそれぞれ降伏強度YP、r値の面内異方性の絶対値を、AIは歪時効指数を表す。 - 請求項1に記載の組成を有する鋼のスラブを、1200℃以上の加熱温度に加熱し、880〜950℃の仕上温度で熱間圧延を行い、620〜720℃の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、80〜90%の圧下率で冷間圧延を行った後、500〜700℃の温度域を5〜20℃/sの平均加熱速度で700〜800℃の均熱温度に加熱し、10〜100s均熱後、少なくとも600℃までの平均冷却速度を3℃/s以上として冷却する条件で焼鈍を行うことを特徴とする面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板の製造方法。
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