JP5239331B2 - 面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルカリ、ニッケル水素、リチウムイオンなど円筒形乾電池の缶体として好適な、面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板とその製造方法に関する。
近年、携帯型電機製品の増加や、地球環境問題への関心の高まりを受けて、乾電池の高寿命化に対する要望が大きくなっている。乾電池の高寿命化には充填物の量を増加させることが有効であるが、そのためには、規格でサイズが決められている乾電池の缶体を薄肉化することが必要である。
一般に、乾電池の缶体は、冷延鋼板を円形に打ち抜いたブランクを、絞り加工や絞り加工としごき加工が複合した絞りしごき加工、あるいは、さらにしごき加工を行うことにより円筒形に製造される。そのため、缶体の薄肉化は、素材の鋼板を薄肉化するか、打ち抜き時のブランク径を小さくし、しごき加工時のしごき量を大きくするかなどの方法で行える。しかし、いずれの方法も、加工が厳しくなる方向であり、乾電池の缶体用の鋼板には、より優れた加工性が要求される。さらに、円筒形に加工されるので、鋼板には、r値の面内異方性が小さいことも要求される。
r値の面内異方性が小さい冷延鋼板として、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.002%以下、Si:0.08%以下、Mn:0.2%以下、P:0.015%以下、S:0.005〜0.012%、Al:0.005〜0.1%、N:0.003%以下、さらに(48C/12+48S/32+48N/14)+0.01<Ti%<0.08を満足するTiを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を、連続鋳造後1100〜1400℃において平均冷却速度5〜50℃/minで冷却して熱間圧延用のスラブとし、その後、該スラブを1080〜1200℃で60min以上加熱して980〜1050℃で粗圧延を完了し、さらに890〜950℃で仕上げ圧延を完了した後に、600〜700℃の温度で巻取り、脱スケール処理後、冷間圧延、連続焼鈍する深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法が開示されている。特許文献2には、質量%で、C:0.0005%以上0.0020%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.08〜0.25%、P:0.015〜0.15%、S:0.004〜0.015%、Al:0.015〜0.10%、N:0.003%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼のスラブを、加熱温度≧1220℃、1000〜1100℃での圧下率が50%以上、最終仕上温度をAr3以上、巻取温度を600℃以上とする熱間圧延の後、デスケーリングを行い、60%以上の圧下率の冷間圧延を施し、次いで再結晶温度以上780℃未満の焼鈍を施すr値の面内異方性の小さい深絞り用冷延鋼板の製造方法が開示されている。特許文献3には、質量%で、C≦0.0030%、Si≦0.02%、Mn:0.15〜0.25%、P≦0.020%、S≦0.015%、N≦0.0040%、Al:0.020〜0.070%、Nb:1.0≦Nb/C(原子等量比)≦5.0、B:1ppm≦B-(11/14)N≦15pmm(式中BおよびNは各々の元素の含有量)を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、r値の面内異方性Δrが-0.10≦Δr≦0.10である異方性の小さい鋼板が開示されている。特許文献4には、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.02%以下、Mn:0.15〜0.25%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.004%以下、Al:0.020〜0.070%、1.0≦Nb/C(原子等量比)≦5.0を満たすNb量(%)を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、熱間圧延して歪時効指数AIが9.8MPa以上の熱延板とし、次いで該熱延板を圧下率65〜88%で冷間圧延を施して冷延板とした後、該冷延板を700〜820℃で連続焼鈍する耐歪時効性に優れ、面内異方性の小さい冷延鋼板の製造方法が開示されている。
特開平7-18382号公報 特開平10-287929号公報 特開2007-9271号公報 特開2007-162082号公報 「International Material Reviews」、vol.39、No.4 (1994) p.129
しかしながら、上記した従来技術によるr値の面内異方性が小さい冷延鋼板では、絞りしごき加工により肉厚の薄い円筒形の缶を製造しようとすると、缶壁部の板厚不均一に起因して加工できなくなる場合があった。
本発明は、絞りしごき加工により肉厚の薄い円筒形の缶に加工が可能な、面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが、絞りしごき加工により肉厚の薄い円筒形の缶に加工が可能な冷延鋼板について鋭意検討した結果、r値の面内異方性Δrを小さくすることや歪時効指数AIを低下させることに加えて、YPの面内異方性ΔYPを小さくすることが効果的であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.0010〜0.0030%、Si:0.03%以下、Mn:0.1〜0.3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.05%、N:0.005%以下、Nb:0.010〜0.020%を含み、かつC、Nbの含有量が下記の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30、AI≦30MPa(ただしAIが0MPa以下を除く)であることを特徴とする面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板を提供する。
(Nb/92.9)/(C/12)≧0.8 ・・・(1)
ただし、式(1)中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を、|ΔYP|、|Δr|はそれぞれ降伏強度YP、r値の面内異方性の絶対値を、AIは歪時効指数を表す。
また、ΔYP、Δrは、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、圧延方向に対して90°方向のYP、r値をそれぞれYPL、YPD、YPC、rL、rD、rCとしたとき、次のように定義される。
ΔYP=(YPL-2YPD+YPC)/2
Δr=(rL-2rD+rC)/2
本発明の冷延鋼板は、例えば、上記の組成を有する鋼のスラブを、1200℃以上の加熱温度に加熱し、880〜950℃の仕上温度で熱間圧延を行い、620〜720℃の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、80〜90%の圧下率で冷間圧延を行った後、500〜700℃の温度域を5〜20℃/sの平均加熱速度で700〜800℃の均熱温度に加熱し、10〜100s均熱後、少なくとも600℃までの平均冷却速度を3℃/s以上として冷却する条件で焼鈍を行うことによって製造できる。
本発明により、絞りしごき加工により肉厚の薄い円筒形の缶に加工が可能な、面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板を製造できるようになった。本発明の冷延鋼板を乾電池の缶体に適用することにより、缶体を薄肉化でき、乾電池の高寿命化を図ることができるようになった。
以下に、本発明である面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法の詳細を説明する。
1)成分組成(以下の「%」は、「質量%」を表す。)
C:0.0010〜0.0030%
CはNbと微細な炭化物を形成し、冷間圧延後の焼鈍時にフェライト粒の成長を抑制するとともに、集合組織を制御し、YPおよびr値の面内異方性を小さくする作用を有する。このような作用を発揮させるには、C量は0.0010%以上にする必要がある。一方、C量が0.0030%を超えると、熱間圧延後に固溶Cが多量に残留し、冷間圧延時にフェライト粒内へ剪断歪が導入され、焼鈍時に特定方位の再結晶粒の形成が促進されることから、r値やYPの面内異方性が大きくなる。また、固溶Cや炭化物の増大は、硬質化や時効硬化によって加工性の劣化を招く。したがって、C量は0.0010〜0.0030%、好ましくは0.0010〜0.0020%とする。
Si:0.03%以下
Si量が0.03%を超えると、硬質化により加工性が劣化したり、焼鈍時のSi酸化皮膜の生成によりメッキ性が阻害される。また、熱間圧延時には、オーステナイトからフェライトに変態する温度が上昇し、オーステナイト域で圧延を終了させるのが困難になって硬質化やメッキ性の劣化を招く。したがって、Si量は0.03%以下とする。
Mn:0.1〜0.3%
Mnは熱間での延性に有害なSをMnSとして無害化するため、その量を0.1%以上にする必要がある。一方、Mn量が0.3%を超えると、硬質化による加工性の劣化や、焼鈍時のフェライトの再結晶が抑制され、未再結晶組織が残りやすくなり、さらなる硬質化を招く。したがって、Mn量は0.1〜0.3%、好ましくは0.1〜0.2%とする。
P:0.03%以下
Pは粒界に偏析して延性や靭性を劣化させるため、その量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下とする。
S:0.01%以下
S量が0.01%を超えると、熱間での延性を著しく低下させ、熱間割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させたり、粗大なMnSを形成することにより鋼板の延性を低下させる。したがって、S量は0.01%以下とするが、少ないほど好ましい。
Al:0.01〜0.05%
AlはNを窒化物として固定することで、固溶Nによる時効硬化を抑制する効果を有する。このような効果を得るためには、Al量は0.01%以上にする必要がある。一方、Al量が0.05%を超えると、熱間圧延時にオーステナイトからフェライトに変態する温度を上昇させ、オーステナイト域で圧延を終了させるのが困難になる。したがって、Al量は0.01〜0.05%とする。
N:0.005%以下
N量が0.005%を超えると、熱間圧延中にスラブ割れを伴い、表面疵が発生する恐れがあったり、冷間圧延・焼鈍後に固溶Nとして存在する場合には、時効硬化を引き起こす。したがって、N量は0.005%以下とする。
Nb:0.010〜0.020%
上述したように、NbはCと微細な炭化物を形成し、YPおよびr値の面内異方性を小さくする作用を有する。このような作用を発揮させるには、Nb量は0.010%以上にする必要がある。一方、Nb量が0.020%を超えると、Nbの炭窒化物や固溶Nbの過度の増大を招き、焼鈍時のフェライトの再結晶が抑制され、未再結晶組織が残りやすくなり、鋼板が硬質化して加工性が低下する。したがって、Nb量は0.010〜0.020%、好ましくは0.010〜0.015%とする。
(Nb/92.9)/(C/12)≧0.8
上記のようにCとNb量を制御しても、NbとCの原子比である(Nb/92.9)/(C/12)が0.8未満だと、固溶Cが多量に残留し、時効硬化を引き起こす。したがって、(Nb/92.9)/(C/12)は0.8以上、好ましくは1.0以上とする。
残部は、Feおよび不可避的不純物である。
2)|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30
肉厚の薄い円筒形の缶を絞りしごき加工により製造するには、絞り加工後しごき加工前の缶壁部の板厚分布が均一であることが重要である。これは、この板厚分布に不均一があると、板厚の大きい部分に加工時の歪が集中し、加工できなくなるためである。缶壁部の板厚偏差を小さくして板厚分布を均一にするためには、缶絞り時のフランジの流入を円周方向で均一にする必要があるが、r値の面内異方性を小さくしても、YPの面内異方性が大きい場合には、フランジ部の流入抵抗が周方向で異なり、YPの大きい方向での流入が抑制されるため、その方向の壁部の板厚が小さくなる。したがって、フランジの流入を均一にし、缶壁部の板厚分布を均一にするには、後述する図1、2に示すように、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30となるように、YPとr値の面内異方性を小さくする必要がある。
3)AI≦30MPa
AIが30MPaを超えると、時効硬化により加工性が劣化する。したがって、AIは30MPa以下とする。
なお、本発明の冷延鋼板は、Niメッキなどの表面処理を施した鋼板とすることもできる。
4)製造条件
スラブの加熱温度:1200℃以上
上述したように、本発明では、冷間圧延後の焼鈍時にNbCの微細析出物を活用して集合組織や粒成長の制御し、YPとr値の面内異方性を小さくしているが、そのためには、熱間圧延する前にスラブ中のNbの炭化物を一旦固溶させ、熱間圧延、巻取り後に微細に再析出させる必要がある。したがって、スラブの加熱温度は1200℃以上とする。
熱間圧延の仕上温度:880〜950℃
熱間圧延は、粗圧延と仕上圧延で行われる。仕上圧延中にオーステナイト域からフェライト域に変態が起こると、圧延荷重が急激に低下し、圧延機の荷重制御が困難になるため、破断などが起こる危険が生じる。また、仕上圧延をフェライト域で行えば、このような危険は回避できるものの、圧延温度の低下により熱間圧延後の組織が未再結晶となるため、冷間圧延時の荷重が増大する。したがって、仕上圧延はオーステナイト域で終了させることが必要であり、仕上温度を880℃以上にする必要がある。一方、仕上温度が950℃を超えると、熱間圧延後の結晶粒が粗大化し、冷間圧延時の結晶回転が不十分となり、焼鈍後の鋼板においてr値の面内異方性を小さくさせるために必要な{111}<110>と{111}<112>の方位を有する結晶粒の発達が困難となる。したがって、仕上温度は880〜950℃とする。
ここで、焼鈍後の冷延鋼板において{111}<110>と{111}<112>の方位を有する結晶粒を発達させると、r値の面内異方性が小さくなる理由は、非特許文献1に記載されているように、{111}<110>の方位は圧延方向に対して30°および90°方向のr値を向上させ、{111}<112>の方位は圧延方向に対して0°および60°方向のr値を向上させるためである。なお、本発明では巻取温度を制御してNbCを微細析出させることで、{111}<110>および{111}<112>の方位を有する結晶粒の成長を抑制し、結晶粒を等軸化する。これにより、YPの面内異方性も小さくなる。
熱間圧延後の巻取温度:620~720℃
本発明では、前述したように、冷間圧延後の焼鈍時にNbCの微細析出物を活用するが、該微細析出物は冷間圧延前の段階で極力析出させる必要がある。巻取温度が620℃未満だと、NbCの析出が抑制され、一方、巻取温度が720℃を超えると、NbCが粗大化し、冷間圧延後の焼鈍時において微細析出物を活用した集合組織や粒成長の制御ができなくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、巻取温度は620〜720℃、好ましくは650〜680℃とする。
冷間圧延の圧下率:80〜90%
巻取り後の鋼板は酸洗後の冷間圧延されるが、そのとき、圧下率が80%未満では、圧延による結晶回転が不十分となるため、r値やYPの面内異方性を小さくするために必要な{111}<110>と{111}<112>の方位を有する結晶粒の発達が困難となる。一方、圧下率が90%を超えると、別の方位を有する結晶粒が発達するため、r値やYPの面内異方性は大きくなる。したがって、圧下率は80〜90%とする。
焼鈍時の平均加熱速度:500〜700℃の温度域を5〜20℃/s
焼鈍時、500〜700℃の温度域における平均加熱速度が5℃/s未満では、微細な析出物が粗大化するため、集合組織や粒成長の制御ができなくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。一方、この温度域における平均加熱速度が20℃/sを超えると、加熱途中における{111}<110>の方位の再結晶が抑制され、その後の均熱時に{111}<110>と{111}<112>の方位の再結晶が同時に起こるので、再結晶しやすい{111}<110>の方位を有する結晶粒が発達しやすくなり、r値やYPの面内異方性が大きくなる。そのため、平均加熱速度を20℃/s以下にして、加熱途中で{111}<110>の方位の再結晶をさせながら粒成長を抑制するとともに、均熱時に{111}<112>の方位の再結晶を起こさせる必要がある。したがって、この温度域における平均加熱速度は5〜20℃/sとする。
均熱温度:700~800℃
再結晶を完了させる必要があるため、均熱温度は700℃以上にする必要がある。一方、均熱温度が800℃を超えると、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値の面内異方性が大きくなるとともに、結晶粒も等軸粒ではなくなるため、YPの面内異方性も大きくなる。したがって、均熱温度は700~800℃、好ましくは740~800℃とする。
均熱時間:10〜100s
均熱時間が10s未満だと、再結晶が完了しないため、均熱時間は10s以上とする必要がある。一方、均熱時間が100sを超えると、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、均熱時間は10〜100s とする。
焼鈍時の平均冷却速度:均熱温度から少なくとも600℃までを3℃/s以上
均熱後は、均熱温度から少なくとも600℃までの平均冷却速度が3℃/s未満だと、{111}<110>の方位を有する結晶粒の成長が促進されるため、r値やYPの面内異方性が大きくなる。したがって、均熱温度から少なくとも600℃まで、好ましくは100℃までの平均冷却速度は3℃/s以上とする。なお、上限は特に定めないが、特別な冷却設備を必要としない30℃/s程度が好ましい。
発明の実施に当たり、鋼の溶製方法は、通常の転炉法、電炉法等、適宜適用することができる。溶製された鋼は、スラブに鋳造後、熱間圧延されるが、熱間圧延後巻取りまでの冷却速度は、空冷以上の速度があれば十分である。必要に応じて、100℃/s以上の急冷を行うこともできる。焼鈍後は、必要に応じて伸張率0.5〜2%程度の調質圧延を行ってもよい。また、耐腐食性を向上させるために電解などによるNiメッキなどの表面処理を施すこともできる。
表1に示す成分組成の鋼No.1〜28を溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらのスラブを、表2、3に示す熱間圧延条件(加熱温度RT、仕上温度FT、巻取温度CT)で熱間圧延して2.5mmの熱延板とした後、酸洗し、表2に示す圧下率で冷間圧延し、表2、3に示す焼鈍条件で焼鈍し、伸張率1.5%の調質圧延を施して鋼板No.1〜28を作製した。ここで、焼鈍時の加熱速度は500〜700℃の温度域の平均加熱速度であり、冷却速度は均熱温度から600℃までの平均冷却速度である。
そして、鋼板の圧延方向、圧延方向に対して45°方向、圧延方向に対して90°方向から、JIS 5号引張試験片を採取し、引張速度10mm/分で引張試験を行い、平均YP、平均Elおよび上記のΔYPを求めた。なお、ここで、降伏強度YPは、0.2%耐力であり、降伏点が認められる場合は下降伏応力である。また、Elは伸びである。JIS Z 2254にしたがって平均r値および上記のΔrを、7.5%の予歪み後100℃で30分の時効処理を行い、7.5%の予歪み付与後の応力に対する時効処理後の降伏応力の増加量からAIを求めた。ここで、平均YP、平均El、平均r値は次の式から計算した。
平均YP=(YPL+2YPD+YPC)/4
平均El=(ElL+2ElD+ElC)/4
平均r値=(rL+2rD+rC)/4
ただし、YPL、YPD、YPC、ElL、ElD、ElC、rL、rD、rCは、それぞれ圧延方向に対して45°方向、圧延方向に対して90°方向のYP、El、r値である。
さらに、各鋼板から45mmφのブランクを打ち抜き、ポンチ径を25mm→18mm→15mmとする3段の絞り加工により合計の絞り比3の条件で円筒状の缶体を作製し、缶壁周方向に10°ピッチでマイクロメータを用いて缶壁部の板厚分布を測定し、板厚分布の均一度を(最大板厚-最小板厚)/(最小板厚)×100(%)で評価した。なお、板厚分布の均一度が3%以下であれば、破断なくしごき加工できることを確認している。
結果を図1、2および表2、3に示す。
ここで、図1、2は|ΔYP|、|Δr|と缶壁部の板厚分布の均一度との関係を示すものであり、図1では|Δr|≦0.30、図2では|ΔYP|≦15MPaである。図1、2より、缶壁部の板厚分布の均一度≦3.0%、すなわち良好なしごき加工性を確保するためには、|ΔYP|≦15MPaおよび|Δr|≦0.30をともに満足する必要があることがわかる。
また、表2、3より、本発明例では、缶壁部の板厚分布が均一であり、薄い円筒形の缶に絞りしごき加工ができることがわかる。
Figure 0005239331
Figure 0005239331
Figure 0005239331
|ΔYP|と缶壁部の板厚分布の均一度との関係を示す図である。 |Δr|と缶壁部の板厚分布の均一度との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.0010〜0.0030%、Si:0.03%以下、Mn:0.1〜0.3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.05%、N:0.005%以下、Nb:0.010〜0.020%を含み、かつC、Nbの含有量が下記の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、|ΔYP|≦15MPa、|Δr|≦0.30、AI≦30MPa(ただしAIが0MPa以下を除く)であることを特徴とする面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板;
    (Nb/92.9)/(C/12)≧0.8 ・・・(1)
    ただし、式(1)中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を、|ΔYP|、|Δr|はそれぞれ降伏強度YP、r値の面内異方性の絶対値を、AIは歪時効指数を表す。
  2. 請求項1に記載の組成を有する鋼のスラブを、1200℃以上の加熱温度に加熱し、880〜950℃の仕上温度で熱間圧延を行い、620〜720℃の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、80〜90%の圧下率で冷間圧延を行った後、500〜700℃の温度域を5〜20℃/sの平均加熱速度で700〜800℃の均熱温度に加熱し、10〜100s均熱後、少なくとも600℃までの平均冷却速度を3℃/s以上として冷却する条件で焼鈍を行うことを特徴とする請求項1に記載の面内異方性が小さく、歪時効特性に優れた冷延鋼板の製造方法。
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