JP5930144B1 - 絞り缶用鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

この絞り缶用の鋼板は、化学成分として、C、Sol.Al、Bを含み、ミクロ組織として、平均粒径が2.7〜4.0μmであるフェライトと粒状セメンタイトとを含む。この鋼板に100℃で1時間の時効処理を実施した後に引張試験を行った時、降伏強度が360〜430MPa、全伸びが25〜32%、降伏点伸びが0%、降伏比が80〜87%である。

Description

本発明は、絞り缶用鋼板及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、絞り缶用の高強度冷延鋼板及びその製造方法に関する。
本願は、2014年10月17日に、日本に出願された特願2014−213239号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
単1〜単5電池(国際規格サイズ20〜1の電池)、ボタン電池、大型ハイブリッド電池等の電池缶や、各種容器は、冷延鋼板や必要に応じてめっき処理を施しためっき鋼板(以降、冷延鋼板と呼ぶ)を絞り加工(プレス成形)して製造される。
この絞り加工では、寸法精度が高く、プレス金型の摩耗が抑制され、かつ、生産性が高いことが要求される。したがって、絞り加工に供される冷延鋼板としては、絞り加工性及び深絞り性といったプレス成形性に優れた、軟質の冷延鋼板が利用されてきた。
一方、近年、絞り加工に供される冷延鋼板は、絞り缶の薄肉化を実現するために、強度のさらなる向上も求められている。例えば、近年、電子機器の発展に伴って、電池の容量をさらに増大させることが要求されている。しかし、電池の外形は、規格上、寸法が既に定められている。そのため、電池の活物質の充填量を増やすためには、電池内部の容積(絞り缶の内容積)を増やす必要がある。そして、絞り缶の内容積を増やすためには、絞り缶用の冷延鋼板を薄肉化(ゲージダウン)する必要がある。ただ、冷延鋼板がゲージダウンされた場合、絞り缶の強度が不足することがある。特に、絞り缶の缶底は、絞り加工時の加工ひずみ量が少ないので、加工硬化が期待できない。したがって、絞り缶の強度、特に缶底の耐内外圧強度を高めるためには、冷延鋼板の強度を高める必要がある。
絞り缶用の冷延鋼板は、上述のように、プレス成形性に優れるとともに、高強度であることが要求される。しかし、プレス成形性を高めることと、強度を高めることとは、互いに相反する技術課題であると言える。冷延鋼板の強度を高めて冷延鋼板を薄肉化できたとしても、この冷延鋼板では、全伸びELの低下、すなわち、プレス成形性の低下が予想される。例えば、冷延鋼板の強度を高めたとしても、絞り加工として多段の加工を行う場合、絞り缶の胴上部では加工ひずみ量が多大となるため、この冷延鋼板ではプレス加工を好ましく行えない可能性がある。このように、絞り缶用冷延鋼板に関して、高強度と、優れたプレス成形性とを両立させることは容易でない。
上記に加えて、絞り缶用冷延鋼板では、絞り加工時にストレッチャーストレイン(縞模様の表面欠陥)が発生するのを抑制しなければならない。ストレッチャーストレインが発生すれば、缶周面及び缶底には、板厚の厚い部分(ストレッチャーストレインが発生していない部分)と薄い部分(ストレッチャーストレインが発生した部分)とが形成される。つまり、缶周面及び缶底に凹凸が形成される。電池缶(絞り缶)がこのような凹凸形状を有すれば、電池缶と電池活物質との接触電気抵抗が大きくなるので好ましくない。また、絞り缶がこのような凹凸形状を有すれば、絞り缶の張り剛性が低下し、絞り缶の耐内外圧強度も低下する恐れがある。そのため、絞り缶用冷延鋼板では、高強度でかつプレス成形性に優れることに加えて、絞り加工後にストレッチャーストレインが発生しないことも要求される。なお、以降の説明で、絞り加工後にストレッチャーストレインが発生しないことを、「非St−St性に優れる」と称する。
なお、ストレッチャーストレインは、鋼板が変形する際の降伏点伸び(降伏直後に降伏点よりも小さい変形抵抗で進行する定常変形)に起因して発生する。このストレッチャーストレインは、鋼板を軽圧下率で圧延する調質圧延(スキンパス圧延)を行うことによって抑制できる。しかし、鋼板に調質圧延を施したとしても、ひずみ時効硬化が生じる鋼板では、時間の経過と共にストレッチャーストレインの抑制効果が低減する。
従来、ストレッチャーストレインを抑制するために、絞り缶用冷延鋼板として、ニオブ(Nb)添加極低炭素鋼や、ホウ素(B)添加低炭素鋼が用いられてきた。例えば、Nb添加極低炭素鋼(Nb−SULC)等に代表されるIF(Interstitial Free)鋼では、時効硬化が生じ難いので、ストレッチャーストレインの発生を防止できる。しかし、Nb添加極低炭素鋼では、その鋼成分が制限されるので、鋼の強度を高めることが困難である。一方、B添加低炭素鋼では、鋼中でBが窒素(N)と結合するので、Nに起因する時効硬化が抑制される。ただ、このB添加低炭素鋼では、鋼中の固溶炭素(C)に起因する時効硬化も抑制する必要がある。そのため、B添加低炭素鋼では、鋼板を連続焼鈍した後、箱焼鈍による過時効処理を実施し、鋼中の固溶Cを低減することによって、ストレッチャーストレインの発生を防止する。例えば、上記の箱焼鈍による過時効処理では、鋼板を400℃程度の低温で均熱した後、鋼板を徐冷する必要がある。なお、以降の説明で、連続焼鈍ラインによる焼鈍を「CAL(Continuous Annealing Line)」と称する。また、箱焼鈍による過時効処理を「BAF−OA(Box Annealing Furnace−Over Aging)」と称する。
このBAF−OAでは、上記の均熱及び徐冷を行うために、1週間程度の処理時間が必要となる。そのため、BAF−OAを行うと、絞り缶用冷延鋼板の生産性が著しく低下する。したがって、BAF−OAを実施することなしに、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる絞り缶用冷延鋼板が製造できれば、産業上で非常に有益である。
例えば、特許文献1は、絞り缶用鋼板を開示している。特許文献1に開示された絞り缶用鋼板は、Bを含有する低炭素のアルミキルド鋼であって、C含有量が0.045〜0.100%である。この特許文献1には、鋼板が硬質化して絞り加工性が低下するのを抑制するため、C含有量の上限を0.100%に制限する、と記載されている。
日本国特許第4374126号公報
特許文献1は絞り缶用鋼板を開示しているが、特許文献1に開示された絞り缶用鋼板は、軟質な冷延鋼板である。そのため、この鋼板をゲージダウンした場合、絞り缶の耐内外圧強度が低下する可能性がある。また、特許文献1に開示された絞り缶用鋼板では、BAF−OAを省略した場合、ストレッチャーストレインを抑制することが困難になる。このように、特許文献1は、ゲージダウンを達成するために冷延鋼板を高強度化すること、並びに、この高強度化に加えてプレス成形性及び非St−St性を同時に向上させること、について開示も示唆もしていない。即ち、従来技術では、0.15%超の高いC含有量を有する事で強度を確保しつつ、箱焼鈍をせずに、絞り缶用鋼板において時効処理後にストレッチャーストレインを抑制することは出来なかった。尚、JIS G3303で規定されたブリキ成分は、C含有量が0.13%以下である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、BAF−OAを実施することなしに、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる絞り缶用冷延鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様にかかる絞り缶用の鋼板は、化学成分として、質量%で、C:0.150超〜0.260%、Sol.Al:0.005〜0.100%、B:0.0005〜0.02%、Si:0.50%以下、Mn:0.70%以下、P:0.070%以下、S:0.05%以下、N:0.0080%以下、Nb:0.003%以下、Ti:0.003%以下、を含有し、残部がFe及び不純物からなり、前記化学成分中のホウ素含有量と窒素含有量とが、質量%で、0.4≦B/N≦2.5を満足し、前記鋼板が、ミクロ組織として、平均粒径が2.7〜4.0μmであるフェライトと、粒状セメンタイトとを含み、前記鋼板の板厚が0.15〜0.50mmであり、前記鋼板を100℃で1時間の時効処理を実施した後に行う引張方向が圧延方向と平行となる引張試験から得られる降伏強度を単位MPaでYPとし、全伸びを単位%でELとし、降伏点伸びを単位%でYP−ELとし、及び降伏比を単位%でYRとしたとき、前記YPが360〜430MPaであり、前記ELが25〜32%であり、前記YP−ELが0%であり、前記YRが80〜87%である。
(2)上記(1)に記載の絞り缶用鋼板では、前記板厚が0.20超〜0.50mmのときの前記ELが27〜32%であってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の絞り缶用鋼板では、前記鋼板の表面上に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Snめっき層、及びTFSめっき層のうちの少なくとも1つが配されてもよい。
(4)上記(1)または(2)に記載の絞り缶用鋼板の製造方法では、前記化学成分を有する鋳片を得る製鋼工程と、前記鋳片を、1000℃以上に加熱し、840〜950℃で仕上げ圧延し、仕上げ圧延後冷却し、500〜720℃で巻取って、熱延鋼板を得る熱延工程と、前記熱延鋼板に対して累積圧下率が80%超の一次冷間圧延を実施して、一次冷延鋼板を得る一次冷延工程と、前記一次冷延鋼板を、平均昇温速度10〜40℃/秒で昇温し、650〜715℃の温度範囲内で均熱し、その後、500〜400℃の間を平均冷却速度5〜80℃/秒で冷却する連続焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、前記焼鈍工程後に、過時効処理を施していない前記焼鈍鋼板を0.5〜5.0%の累積圧下率で調質圧延して、調質圧延鋼板を得る調質圧延工程と、を備える。
(5)上記(4)に記載の絞り缶用鋼板の製造方法では、前記調質圧延工程後に、前記調質圧延鋼板に対して、Niめっき処理、Ni拡散めっき処理、Snめっき処理、及びTFSめっき処理のうちの少なくとも1つを実施するめっき工程をさらに備えてもよい。
本発明の上記態様によれば、BAF−OAを実施することなしに、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる絞り缶用鋼板を提供できる。この鋼板は、プレス成形性に優れ、ストレッチャーストレインの発生を抑制でき、ゲージダウンが可能である。
従来の絞り缶用鋼板の促進時効処理後の引張試験結果であり、降伏点近傍を拡大して示す応力−ひずみ曲線である。 本発明の一実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板の促進時効処理後の引張試験結果であり、降伏点近傍を拡大して示す応力−ひずみ曲線である。 従来の絞り缶用冷延鋼板のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。 本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。 冷延鋼板のC含有量(%)と降伏点伸びYP−EL(%)との関係を示すグラフである。 冷延鋼板のC含有量(%)と全伸びEL(%)との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。ただ、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。各元素の含有量に関する「%」は、「質量%」を意味する。
本発明者らは、絞り缶用の鋼板(以降、冷延鋼板と呼ぶ)の特性について調査及び検討を行い、次の知見(i)〜(iv)を得た。まず、知見(i)及び(ii)について説明する。
(i)本実施形態に係る冷延鋼板では、C含有量を0.150超とすれば、鋼中の固溶Cによって鋼が固溶強化し、冷延鋼板の降伏強度YPが高まる。自然時効後の圧延方向(L方向)の降伏強度YPは、従来の絞り缶用冷延鋼板の降伏強度よりも高い360MPa以上になる。したがって、この冷延鋼板を用いれば、ゲージダウンしても耐内外圧強度に優れた絞り缶が得られる。
(ii)本実施形態に係る冷延鋼板では、C含有量を0.150超に高めても、CAL(連続焼鈍)の平均昇温速度を10〜40℃/秒とし、焼鈍温度(均熱温度)を再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度(例えば、650〜715℃)とし、その後の500〜400℃の間の平均冷却速度を5〜80℃/秒とすれば、鋼中に固溶Cが存在しても、非St−St性に優れた冷延鋼板が得られる。
図1に、従来の絞り缶用冷延鋼板の降伏点近傍の応力−ひずみ線図を示す。図2に、本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板の降伏点(0.2%耐力)近傍の応力−ひずみ線図を示す。図1の引張試験に供された冷延鋼板のC含有量は、0.056質量%であり、図2の引張試験に供された冷延鋼板のC含有量は、0.153質量%である。図1及び図2の冷延鋼板は、後述する本実施形態に係る冷延鋼板の製造方法を満足する条件で製造された。具体的には、上記条件でCALを実施後、BAF−OAを実施せずに、図1及び図2の冷延鋼板を製造した。製造された冷延鋼板から、L方向(圧延方向)に平行な平行部を有するJIS5号引張試験片を作製した。作製された引張試験片に対して、促進時効処理を実施した。具体的には、促進時効処理として、各引張試験片に対して、100℃で1時間の時効処理を実施した。この促進時効処理は、自然時効がほぼ飽和する時効に相当する。促進時効処理後の引張試験片を用いて、室温(25℃)かつ大気中で引張試験を実施して、図1及び図2の応力−ひずみ線図を得た。
C含有量が低い従来の冷延鋼板(図1)では、降伏点降下が起き、降伏点伸びYP−ELが発生した。これは、外部から応力が付加されても、固溶Cによるコットレル効果により、降伏点までは転位が移動せず(固着され)、降伏点で転位が一気に固溶Cから解放されて移動することに起因する。そして、従来の冷延鋼板(図1)では、降伏後もコットレル効果による転位の固着と解放とが繰り返されるため、降伏点伸びYP−ELが発生する。
これに対して、C含有量が高い本実施形態に係る冷延鋼板(図2)では、降伏点降下が確認されず、降伏点伸びYP−ELが生じなかった。図2の応力−ひずみ線図を観察すると、図1の応力−ひずみ線図とは異なり、降伏点到達前にプロット間隔が顕著に短くなっている(単位時間当たりの応力変化とひずみ変化とが小さくなっている)。すなわち、本実施形態に係る冷延鋼板(図2)では、外部から応力が付加されると、降伏点前でも局所的に塑性変形が開始し、図1に示されるような降伏点伸びYP−ELが観察されないという特異な現象が生じた。
そこで、図1及び図2の冷延鋼板について、L断面(圧延方向に平行な断面)でのミクロ組織を光学顕微鏡により観察した。図3は、図1の引張試験に供された冷延鋼板のL断面のミクロ組織画像であり、図4は、図2の引張試験に供された冷延鋼板のL断面のミクロ組織画像である。
図3及び図4中、白色の組織はフェライト10であり、黒色の組織は粒状セメンタイト20である。図3及び図4から観察されるように、図3及び図4の冷延鋼板のミクロ組織は、フェライト及び粒状セメンタイトを主に含む組織であった。しかしながら、C含有量が高い図4の冷延鋼板のフェライト平均粒径は、図3の冷延鋼板のフェライト平均粒径よりも小さい4.0μm以下であった。また、図4の冷延鋼板のフェライト組織は、図3の冷延鋼板と比較して、粗大粒及び微細粒を含む混粒であるように見受けられる。
以上の引張試験及び組織観察の結果を考慮すると、本実施形態に係る冷延鋼板(C含有量が高い冷延鋼板)が示す降伏点近傍での特異な現象は、次のように推察される。本実施形態に係る冷延鋼板(C含有量が高い冷延鋼板)では、C含有量が低い冷延鋼板と比較して、フェライト粒の平均粒径が小さくなり、フェライト粒が混粒となりやすい。すなわち、本実施形態に特有のミクロ組織を有する冷延鋼板が変形する場合、混粒であるフェライト粒のうち、粗大なフェライト粒から先行して降伏点前に変形が開始し、粗大なフェライト粒に遅れて、微細なフェライト粒の変形が開始する。このように、本実施形態に係る冷延鋼板では、外部から応力を受けたときに、粒径の大きいフェライトから順次変形が開始するため、鋼中に固溶Cが存在したとしても、降伏点伸びYP−ELが応力−ひずみ線図に現れないと考えられる。その結果、ストレッチャーストレインの発生が抑制されると考えられる。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、C含有量と降伏点伸びYP−ELとの関係についてさらに調査した。図5に、冷延鋼板のC含有量(質量%)と降伏点伸びYP−EL(%)との関係を示す。なお、この図5は、フェライト及び粒状セメンタイトを主に含むミクロ組織に制御された冷延鋼板を調査して得た。
図5に示すとおり、C含有量の増加に伴い、降伏点伸びYP−ELは急速に減少する。具体的には、C含有量が0.150超になると、降伏点伸びYP−ELは0%になる。また、上述のように、C含有量が0.150超で、促進時効処理後のL方向の降伏強度YPが360MPa以上となる。すなわち、ミクロ組織等の制御に加えてC含有量を0.150超とすれば、絞り缶用冷延鋼板として要求される特性のうち、強度と非St−St性とが満足される。
具体的には、C含有量が0.150超であって、CALの平均昇温速度が10〜40℃/秒、焼鈍温度が再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度(例えば、650〜715℃)、500〜400℃の間の平均冷却速度が5〜80℃/秒である場合、上記のとおり本実施形態に特有のフェライト組織が形成される。したがって、C含有量が0.150超であり、かつ上記条件のCALを実施すれば、ミクロ組織がフェライト及び粒状セメンタイトを主に含み、フェライト粒の平均粒径が4.0μm以下となり、降伏強度YPが360MPa以上となり、かつ、降伏点伸びYP−ELが0%となる。
なお、上述したように、ストレッチャーストレインの発生を防止するために、従来の鋼板では、BAF−OA等を実施していた。しかし、従来の鋼板では、C含有量が低いことを技術特徴としている。C含有量が0.150超であるような高C含有量の鋼板の場合、たとえBAF−OA等を実施したとしても、鋼中の固溶Cを十分に低減することが困難であるので、YP−ELを0%に制御することが実質的に困難であった。本実施形態に係る鋼板では、C含有量を0.150超としても、製造条件を制御して上記のフェライト組織を形成することによって、YP−ELを0%に制御することが可能となる。
一方で、C含有量が高すぎれば、冷延鋼板が過剰に硬化して、全伸びEL(%)が低下し、その結果、プレス成形性が低下する。本発明者らは、C含有量と全伸びELとの関係について調査した。そして、知見(iii)を得た。
(iii)本実施形態に係る冷延鋼板では、C含有量を0.260%以下とし、かつ組織制御すれば、自然時効後のL方向(圧延方向)の全伸びELが、従来の絞り缶用冷延鋼板の全伸びと同程度以上である25%以上となる。したがって、プレス成形性に優れた冷延鋼板が得られる。
図6に、冷延鋼板のC含有量(質量%)と全伸びEL(%)との関係を示す。なお、この図6は、フェライト及び粒状セメンタイトを主に含むミクロ組織に制御された冷延鋼板を調査して得た。
図6に示すとおり、C含有量が0.150超〜0.260%のとき、C含有量の増加に対して全伸びELが略一定となる。しかしながら、C含有量が0.260%を超えると、全伸びELが急速に低下する。したがって、C含有量が0.260%以下であれば、優れた全伸びELが維持される。具体的には、C含有量が0.260%以下であれば、全伸びELが25%以上となる。また、上述のとおり、強度と非St−St性とを満足させるためには、C含有量の下限を0.150超とする。すなわち、本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板では、C含有量を0.150超〜0.260%とする。
さらに、本発明者らは、上記したCに起因するストレッチャーストレインの抑制に加えて、Nに起因するストレッチャーストレインの抑制についても調査した。そして、知見(iv)を得た。
(iv)C含有量を0.150超〜0.260%とした上で、B含有量とN含有量とを0.4≦B/N≦2.5に制御すれば、Cに起因するストレッチャーストレインの発生と、Nに起因するストレッチャーストレインの発生との両方を抑制できる。
C含有量が0.150超〜0.260%であり、B/Nが0.4〜2.5を満たすアルミキルド鋼の冷延鋼板に対して、CAL(連続焼鈍)を実施する。このとき、上述のとおり、平均昇温速度を10〜40℃/秒とし、焼鈍温度を再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度(例えば、650〜715℃)とし、その後の500〜400℃の間の平均冷却速度を5〜80℃/秒にする。この場合、冷延鋼板の強度とプレス成形性とCに起因する非St−St性とが向上することに加えて、BがNと結合して窒化物を形成するので、固溶Nに起因する時効硬化が抑制され、その結果、Nに起因するストレッチャーストレインの発生も抑制される。
以下、本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板について詳述する。
[化学組成]
本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板は、化学成分として、基本元素であるC、Sol.Al、及びBを含み、残部がFe及び不純物からなる。
なお、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から混入するものを指す。これら不純物のうち、Si、Mn、P、S、及びNは、本実施形態の効果を十分に発揮させるために、以下のように制限することが好ましい。また、不純物の含有量は少ないことが好ましいので、下限値を制限する必要がなく、不純物の下限値が0%でもよい。
C:0.150超〜0.260%
炭素(C)は固溶して鋼の強度を高める。鋼の強度が高まれば、冷延鋼板をゲージダウンすることができる。C含有量が0.150超であれば、促進時効処理後のL方向の降伏強度YPを360MPa以上にすることができる。さらに、後述の条件のCALを実施することにより、フェライト組織の平均粒径が4.0μm以下となり、フェライト粒が粗大粒と微細粒とを含む混粒となりやすい。その結果、促進時効処理後の降伏点伸びYP−ELを0%にすることができる。C含有量が0.15以下であれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が0.260%超であれば、冷延鋼板の硬度が高くなりすぎ、図6に示すとおり、自然時効が飽和した後(促進時効処理後)の全伸びELが低下する。この場合、冷延鋼板のプレス成形性が低くなる。したがって、C含有量は0.150超〜0.260%である。なお、Cは、オーステナイト形成元素である。本実施形態に係る冷延鋼板ではミクロ組織を制御するために、C含有量の下限が、0.153%、0.155%、または0.160%であることが好ましい。C含有量の好ましい上限は0.260%未満であり、さらに好ましくは0.250%である。フェライト粒が混粒となりやすい。
Si:0.50%以下
シリコン(Si)は、不可避的に含有される不純物である。Siは、冷延鋼板のめっき密着性、及び、製缶後の冷延鋼板の塗装密着性を低下させる。したがって、Si含有量は0.50%以下に制限する。Si含有量の好ましい上限は0.50%未満である。Si含有量はなるべく低い値が好ましい。ただ、工業的に安定してSi含有量を0%にすることは難しいので、Si含有量の下限を0.0001%としてもよい。
Mn:0.70%以下
マンガン(Mn)は、不可避的に含有される不純物である。Mnは、冷延鋼板を硬質化し、冷延鋼板の全伸びELを低下させる。そのため、プレス成形性(絞り加工性)が低下する。また、Mnは、オーステナイト形成元素であり、本実施形態に係る冷延鋼板ではミクロ組織を制御するために鋼に添加しない。Mn含有量が0.70%超の場合、本実施形態に係る鋼板に特有の機械特性を得にくくなる。したがって、Mn含有量は0.70%以下に制限する。Mn含有量の好ましい上限は0.70%未満である。Mn含有量はなるべく低い値が好ましい。ただ、工業的に安定してMn含有量を0%にすることは難しいので、Mn含有量の下限を0.0001%としてもよい。
P:0.070%以下
燐(P)は、不可避的に含有される不純物である。Pは、一般的に、冷延鋼板の強度を高める。しかしながら、P含有量が高すぎれば、プレス成形性が低下する。具体的には、絞り缶に成形した後の耐二次加工脆性が低下する。深絞り加工された絞り缶では、たとえば、−10℃のような低温で、落下時の衝撃により脆性破断する場合があり、また曲げ加工歪みにより缶側壁端部が脆性破断する場合がある。このような破断を二次加工脆性割れと称する。P含有量が過剰な場合、二次加工脆性割れが生じやすくなる。したがって、P含有量は0.070%以下に制限する。ただ、工業的に安定してP含有量を0%にすることは難しいので、P含有量の下限を0.0001%としてもよい。
S:0.05%以下
硫黄(S)は、不可避的に含有される不純物である。Sは、熱間圧延時の鋼板表層で脆性割れを発生させ、熱延鋼帯に耳荒れを生じさせる。したがって、S含有量は0.05%以下に制限する。S含有量はなるべく低い値が好ましい。ただ、工業的に安定してS含有量を0%にすることは難しいので、S含有量の下限を0.0001%としてもよい。
Sol.Al:0.005〜0.100%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、連続鋳造時に鋳片の表面品質を高める。Al含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、上記効果が飽和して製造コストが高くなる。したがって、Al含有量は0.005〜0.100%である。本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板でのAl含有量は、Sol.Al(酸可溶性アルミニウム)の含有量を意味する。
N:0.0080%以下
窒素(N)は、不可避的に含有される不純物である。Nは、鋼を時効硬化させる元素であり、そのため、冷延鋼板のプレス成形性を低下させ、ストレッチャーストレインを発生させる。本実施形態に係る冷延鋼板では、鋼中に後述のBを含有させ、NをBと結合させて窒化物を形成させることにより、固溶Nによる時効硬化を抑制する。しかしながら、N含有量が高すぎれば、固溶Nによる時効硬化が生じやすくなる。したがって、N含有量は0.0080%以下に制限する。N含有量はなるべく低い値が好ましい。ただ、工業的に安定してN含有量を0%にすることは難しいので、N含有量の下限を0.0005%としてもよい。
B:0.0005〜0.02%
ボロン(B)は、Nと結合してBN(窒化ホウ素)を形成し、固溶Nを低減する。これにより、固溶Nによる時効硬化が抑制される。Bはさらに、冷延鋼板の集合組織をランダム化して、塑性ひずみ比であるr値(ランクフォード値)を1に近づける。これにより、イヤリング特性(絞り缶の成形後に発生する缶円周方向の缶高さの不均一の程度)が向上する。また、Bは、フェライト形成元素であり、本実施形態に係る冷延鋼板ではミクロ組織を制御するために添加する。B含有量が0.0005%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、B含有量が0.02%超であれば、上記効果が飽和する。したがって、B含有量は0.0005〜0.02%である。B含有量の下限は、0.0010%、または0.0015%であることが好ましい。
さらに、本実施形態に係る冷延鋼板では、B及びNの含有量を、互いに関連させて規定する。上述のように、鋼中で固溶Nが過剰であると、鋼が時効硬化する。そのため、鋼中にBを含有させてBNを形成させる。一方、鋼中で固溶Bが過剰であると、冷延鋼板が硬質化したり、イヤリング性が低下したりする。そのため、B及びNの含有量を互いに関連させて規定する必要がある。具体的には、化学成分中のB含有量とN含有量とが、質量%で、0.4≦B/N≦2.5を満足する必要がある。B及びNの含有量が上記条件を満足するとき、固溶Bに起因する上記特性の低下を抑制すると同時に、固溶Nに起因するストレッチャーストレインの発生を好ましく抑制することができる。B/Nの値の下限は、0.8であることが好ましい。
本実施形態に係る冷延鋼板では、上記した不純物に加えて、ニオブ(Nb)、チタニウム(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、及びスズ(Sn)も制限することが好ましい。具体的には、本実施形態の効果を十分に発揮させるために、Nb:0.003%以下、Ti:0.003%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.3%以下、及びSn:0.05%以下に制限することが好ましい。特に、Tiは、TiNを形成してミクロ組織の形成に影響を与えるので、上記のように制限することが好ましい。これら不純物の含有量はなるべく低い値が好ましい。ただ、工業的に安定してこれら不純物の含有量を0%にすることは難しいので、これら不純物の含有量の下限をそれぞれ0.0001%としてもよい。
上記した化学成分は、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、上記した化学成分は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、鋼板の中央の位置から粒状の試験片を採取し、予め作成した検量線に基づいた条件で化学分析することにより特定できる。なお、CおよびSは燃焼−赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法を用いて測定すればよい。
[ミクロ組織]
本実施形態に係る冷延鋼板は、ミクロ組織として、平均粒径(平均直径)が2.7〜4.0μmであるフェライトと、粒状セメンタイトと、を主に含む。また、上述したBNは微細析出物であるので低倍率の場合には観察できないが、ミクロ組織として、このBNを含んでもよい。本実施形態に係る冷延鋼板では、上記した化学成分に制御することに加えて、上記のミクロ組織に制御することによって、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる冷延鋼板を得ることが可能となる。
上記したフェライト、粒状セメンタイト、及びBNは、ミクロ組織中、合計で、95〜100面積%であることが好ましい。すなわち、フェライト、粒状セメンタイト、及びBN以外の組織であるパーライト、マルテンサイト、残留オーステナイトなどは、合計で、5面積%未満に制限されることが好ましい。または、含まない事が好ましい。フェライト、粒状セメンタイト、及びBN以外の組織の合計の面積分率は、なるべく低い値が好ましい。したがって、本実施形態に係る冷延鋼板は、ミクロ組織として、フェライト、粒状セメンタイト、及びBNのみからなることがさらに好ましい。
また、上記したように、本実施形態に係る冷延鋼板では、フェライト粒が粗大粒及び微細粒を含む混粒となる傾向にある。この混粒を定量的に規定することは困難であるが、このミクロ組織が、本実施形態に係る鋼板に特有の機械特性に影響を及ぼしていると考えられる。
なお、本実施形態に係る冷延鋼板では、ミクロ組織に含まれる各構成相を次のように定義する。フェライト及びフェライト粒は、拡散変態に起因する体心立方構造(bcc)を有し、結晶方位角度差が0以上15°未満となる領域と定義する。マルテンサイト及びマルテンサイト粒は、無拡散変態に起因する体心立方構造(bcc)または体心正方構造(bct)を有し、結晶方位角度差が0以上15°未満となる領域と定義する。セメンタイトは、斜方晶構造を有するFeとCとの化合物(FeC)と定義する。パーライト及びパーライトブロックは、フェライトとセメンタイトとからなる層状組織を有し、このパーライト中のフェライトの結晶方位角度差が0以上9°未満となる領域と定義する。粒状セメンタイトは、パーライトブロック中に含まれないセメンタイトと定義する。BNは、六方晶構造または立方晶構造を有するBとNとの化合物と定義する。
上記のミクロ組織は、冷延鋼板のL断面(圧延方向に平行な断面)を光学顕微鏡にて観察すればよい。また、フェライトの平均粒径は、JIS G0551(2013)の切断法に基づいて求めればよい。また、各構成相の面積分率などは、ミクロ組織写真を画像解析することで求めればよい。
[機械特性]
本実施形態に係る冷延鋼板は、板厚が0.15〜0.50mmであり、冷延鋼板を100℃で1時間の時効処理(促進時効処理)を実施した後に行う引張試験から得られる降伏強度を単位MPaでYPとし、全伸びを単位%でELとし、降伏点伸びを単位%でYP−ELとし、及び、降伏比を単位%でYRとしたとき、
YPが360〜430MPaであり、
ELが25〜32%であり、
YP−ELが0%であり、
YRが80〜87%である。
ここで、引張試験は、平行部がL方向(圧延方向)に平行な引張試験片を用いて室温(25℃)大気中でJIS Z2241(2011)に準拠して実施する。
YP:360〜430MPa
降伏強度YPが360MPa以上であれば、冷延鋼板を薄肉化(ゲージダウン)しても、耐内外圧強度に優れた絞り缶が得られる。一方、降伏強度YPの上限は、特に制限されない。ただ、降伏強度YPが高すぎると、プレス成形が困難となるので、降伏強度YPを430MPa以下としてもよい。なお、本実施形態に係る冷延鋼板では、上述のように明確な降伏点を示さないことを技術特徴とするので、降伏強度YPは0.2%耐力のことを意味する。
EL:25〜32%
全伸びELが25%以上であれば、絞り缶用冷延鋼板としてのプレス成形性(絞り加工性)を満足できる。一方、全伸びELの上限は、値が大きいほど好ましいので、特に制限されない。ただ、工業的に安定して全伸びELを32%超とすることは難しいので、全伸びELの上限を32%とし、より好ましくは30%としてもよい。なお、全伸びELとは、弾性伸びと永久伸びとの和のことを意味する。
なお、前述のように、冷延鋼板は薄肉化することが好ましい。そのため、本実施形態に係る冷延鋼板では、板厚を0.15〜0.50mmとする。しかし、この板厚の範囲内で板厚が厚くなるほど、全伸びELの値が大きくなる。したがって、プレス成形性(絞り加工性)の向上を優先させる場合には、板厚を0.20超〜0.50mmとして、全伸びELを27〜32%としてもよい。
YP−EL:0%
降伏点伸びYP−ELが0%であれば、降伏直後に降伏点よりも小さい変形抵抗で進行する定常変形を抑制できるので、ストレッチャーストレインの発生を抑制できる。なお、本実施形態に係る冷延鋼板にて、降伏点伸びYP−ELが0%であるとは、降伏直後に降伏点(0.2%耐力)よりも小さい変形抵抗(応力)で変形(ひずみ)が進行しないことを意味する。すなわち、本実施形態に係る冷延鋼板にて、降伏点伸びYP−ELが0%であるとは、降伏点降下することなく、降伏直後から(0.2%耐力到達直後から)応力−ひずみ曲線が加工硬化を示すことを意味する。
YR:80〜87%
降伏比YRが80%以上であれば、引張強度TSに対して降伏強度YPが十分に高い値であることを意味する。そのため、冷延鋼板を薄肉化(ゲージダウン)することが可能となり、耐内外圧強度に優れた絞り缶が得られる。すなわち、絞り加工時の加工ひずみ量が小さい缶底と絞り加工時の加工ひずみ量が大きい胴上部とを比較したとき、成形後の絞り缶にて缶底と胴上部との強度差が小さくなり、機械的品質が均一な絞り缶を得ることが可能となる。一方、降伏比YRの上限は、特に制限されない。ただ、降伏比YRが高すぎると、プレス成形が困難となるので、降伏比YRを87%以下としてもよい。なお、降伏比YRは、単位MPaでの降伏強度YPを、単位MPaでの引張強度TSで割った値の百分率を意味する。
[めっき層]
本実施形態に係る冷延鋼板は、冷延鋼板の表面上(板面上)に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Snめっき層、及びティンフリースチール(TFS)めっき層(金属Cr層とCr水和酸化物層との2層からなるめっき層)のうちの少なくとも1つが配されてもよい。冷延鋼板の板面上に、上記のめっき層が配されることにより、表面外観が向上し、耐食性、耐薬品性、耐応力割れ性などが向上する。
以下、本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板の製造方法について詳述する。
本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係る絞り缶用冷延鋼板の製造方法は、鋳片を得る工程(製鋼工程)と、熱延鋼板を得る工程(熱延工程)と、一次冷延鋼板を得る工程(一次冷延工程)と、焼鈍鋼板を得る工程(焼鈍工程)と、調質圧延鋼板を得る工程(調質圧延工程)とを備える。
[製鋼工程]
製鋼工程では、C:0.150超〜0.260%、Sol.Al:0.005〜0.100%、B:0.0005〜0.02%、Si:0.50%以下、Mn:0.70%以下、P:0.070%以下、S:0.05%以下、N:0.0080%以下、Nb:0.003%以下、Ti:0.003%以下、を含有し、残部がFe及び不純物からなり、化学成分中のホウ素含有量と窒素含有量とが、質量%で、0.4≦B/N≦2.5を満足する溶鋼を製造する。製造された溶鋼から鋳片(スラブ)を製造する。例えば、通常の連続鋳造法、インゴット法、薄スラブ鋳造法などの鋳造方法でスラブを鋳造すればよい。なお、連続鋳造の場合には、鋼を一度低温(例えば、室温)まで冷却し、再加熱した後、この鋼を熱間圧延してもよいし、鋳造された直後の鋼(鋳造スラブ)を連続的に熱間圧延してもよい。
[熱延工程]
熱延工程では、製鋼工程後の鋳片を、1000℃以上(例えば、1000〜1280℃)に加熱し、840〜950℃で仕上げ圧延し、仕上げ圧延後冷却し、500〜720℃で巻取って、熱延鋼板を製造する。
巻取り温度CTが720℃を超えると、熱延鋼板中のセメンタイト(FeC)が塊状に粗大化する。この場合、冷延鋼板の全伸びELが低下し得る。巻取り温度CTが500℃未満であれば、熱延鋼板中のセメンタイトが硬質な組織になる。そのため、冷延鋼板の全伸びELが低下し得る。従って、好ましい巻取り温度CTは500〜720℃である。なお、ミクロ組織を好ましく制御するために、巻取り温度CTの下限が600℃であることがさらに好ましい。
[一次冷延工程]
一次冷延工程では、熱延工程後の熱延鋼板に対して累積圧下率が80%超の一次冷間圧延を実施して、0.15〜0.50mmの板厚を有する一次冷延鋼板を製造する。
一次冷間圧延では、冷間圧延率を変化させて絞り缶用冷延鋼板の最適な冷間圧延率を検討し、鋼板の面内異方性Δrが略0(具体的には、Δrが+0.15〜−0.08の範囲)となるように、冷間圧延率を設定する。また、一次冷延鋼板が後工程に供することが適したミクロ組織(加工組織)となるように、冷間圧延率を設定する。一次冷間圧延では、累積圧下率を80%超とする。累積圧下率の下限は84%であることが好ましい。一方、累積圧下率の上限は、特に制限されない。ただ、工業的に安定して累積圧下率を90%超とすることは難しいので、累積圧下率の上限を90%としてもよい。なお、累積圧下率とは、一次冷間圧延における第1パス直前の入口板厚と最終パス直後の出口板厚との差から計算される圧下率である。
一次冷延鋼板の板厚は0.151〜0.526mmであることが好ましい。板厚が0.526mmを超えれば、優れたイヤリング性が得られにくくなる。板厚が0.151mm未満であれば、熱延鋼板の板厚を薄くしなければならず、この場合、上述の熱間圧延時の仕上げ温度を確保できない。したがって、一次冷延鋼板の板厚は0.151〜0.526mmであることが好ましい。
[焼鈍工程(CAL工程)]
焼鈍工程では、一次冷延工程後の一次冷延鋼板を、平均昇温速度:10〜40℃/秒で昇温し、再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度(例えば、650〜715℃)で均熱し、その後、500〜400℃の間の平均冷却速度が5〜80℃/秒となる条件で冷却する連続焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を製造する。
焼鈍工程の昇温過程で、一次冷延鋼板を、平均昇温速度HR:10〜40℃/秒で昇温すれば、ミクロ組織が好ましく制御される。焼鈍工程の昇温過程では、一次冷延鋼板の加工組織が回復し、加工組織中に再結晶核が生成される。一次冷延鋼板を上記条件で昇温することにより、加工組織の再結晶過程が好ましく制御されるので、本実施形態に特有のミクロ組織を好ましく得ることが可能となる。なお、この昇温過程では、一次冷延鋼板を、500〜700℃の間の平均昇温速度を10〜20℃/秒で昇温することがさらに好ましい。
焼鈍温度(均熱温度)STは、再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度とする。本実施形態に係る絞り缶用鋼板の上記した化学成分の場合、650〜715℃の温度範囲が、再結晶完了温度以上でかつフェライト単相域温度に相当する。この温度範囲内で均熱することにより、ミクロ組織が好ましく制御される。なお、焼鈍温度STの上限は、710℃、または705℃であることが好ましい。
焼鈍温度STがフェライト単相域温度超(例えば、715℃超)になると、フェライト及びオーステナイトの2相域温度での焼鈍となるため、均熱後の冷却時にパーライトが形成される。そのため、上述のミクロ組織が得られない。パーライトを含むミクロ組織の場合、降伏比YRが低下する。さらに、フェライトの平均粒径が4.0μmよりも大きくなる。焼鈍温度STが650〜715℃であれば、ミクロ組織が好ましく制御される。また、焼鈍温度STでの保持時間は、15〜30秒とすればよい。
上記焼鈍温度STで均熱後、鋼板を冷却する。このとき、500〜400℃の間の平均冷却速度CRを5〜80℃/秒にする。平均冷却速度CRが80℃/秒を超えれば、固溶C量が高くなりすぎる。この場合、促進時効処理後の降伏点伸びYP−ELが0%よりも大きくなる。一方、平均冷却速度CRが5℃/秒未満であれば、固溶C量が低くなりすぎる。この場合、降伏強度YPが360MPa未満になる。500〜400℃の間の平均冷却速度CRが5〜80℃/秒であれば、固溶C量が5〜50ppm程度確保される。そのため、促進時効処理後の降伏強度YPが360MPa以上になり、降伏点伸びYP−ELが0%になる。さらに、優れた全伸びEL及び高い降伏比YRが得られる。また、500〜400℃の間の平均冷却速度CRが5〜80℃/秒であれば、ミクロ組織が好ましく制御される。
[箱焼鈍による過時効処理工程(BAF−OA工程)]
本実施形態に係る冷延鋼板の製造方法では、BAF−OAを実施しない。上述のとおり、BAF−OAを実施しなくても、本実施形態の冷延鋼板は、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる。本実施形態に係る冷延鋼板の製造方法でBAF−OAを実施すれば、鋼中の固溶Cが低減して、降伏強度YPが360MPa未満になる。したがって、本実施形態に係る冷延鋼板の製造方法では、BAF−OAを実施しない。本実施形態ではBAF−OAを実施しないため、絞り缶用冷延鋼板の生産性が著しく高まる。
[調質圧延工程]
調質圧延工程では、焼鈍工程後に過時効処理を施していない焼鈍鋼板を、0.5〜5.0%の累積圧下率で調質圧延(スキンパス圧延)して、調質圧延鋼板を製造する。圧下率が0.5%未満であれば、促進時効処理後の鋼板において、降伏点伸びYP−ELが0%超となる場合がある。圧下率が5.0%を超えれば、全伸びELが25%未満となり、プレス成形性が低下する。圧下率が0.5〜5.0%であれば、絞り等の加工までに発生する時効硬化後においても優れた非St−St性及びプレス成形性が得られる。調質圧延工程後の調質圧延鋼板は、板厚が0.15〜0.50mmとなる。
[めっき工程]
本実施形態に係る冷延鋼板の製造方法では、調質圧延工程後に、調質圧延鋼板の表面上(板面上)に、Niめっき処理、Ni拡散めっき処理、Snめっき処理、及びTFSめっき処理のうちの少なくとも1つを実施してもよい。この場合、調質圧延鋼板の板面上に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Snめっき層、及びTFSめっき層(金属Cr層とCr水和酸化物層との2層からなるめっき層)のうちの少なくとも1つが形成される。なお、Ni拡散めっき層は、Niめっき処理を施した鋼板に拡散熱処理を施すことによって形成される。
上記した各工程での各製造条件を緻密にかつ複合的に制御することによって、本実施形態に係る冷延鋼板に特有のミクロ組織を得ることが可能となる。具体的には、熱延工程後の熱延鋼板のミクロ組織、一次冷延工程後の一次冷延鋼板のミクロ組織、焼鈍工程後の焼鈍鋼板のミクロ組織、および調質圧延工程後の調質圧延鋼板のミクロ組織を工程毎に制御することによってのみ、本実施形態に特有のミクロ組織を得ることができる。その結果、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる絞り缶用冷延鋼板を得ることが可能となる。
次に、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に詳細に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
製鋼工程として、鋼種A〜Mのスラブを製造した。
熱延工程として、これらのスラブを1200℃に加熱して、熱間圧延を実施し、2.1mmの板厚の熱延鋼板を製造した。熱延の仕上げ温度はいずれも925℃であった。熱延鋼板の巻取り温度CTは、表1に示すとおりであった。
一次冷延工程として、熱延鋼板を酸洗した後、一次冷間圧延を実施した。試験番号1〜19では、板厚0.25mmの一次冷延鋼板を製造した。試験番号20では、板厚0.45mmの一次冷延鋼板を製造した。一次冷間圧延の累積圧下率は、表1に示すとおりであった。
焼鈍工程として、一次冷延工程後の鋼板に対して、CAL(連続焼鈍)を実施した。平均昇温速度HR、焼鈍温度ST、500〜400℃の間の平均冷却速度CRは、表1に示すとおりであった。焼鈍温度STでは鋼板を25秒間均熱した。均熱後、窒素ガスによるガス冷却を実施した。この際、焼鈍温度STから50℃に至るまで2段階冷却を行うことなく(中間温度で鋼板を保持することなく)鋼板を冷却した。ガス冷却において、500℃から400℃に至るまでの平均冷却速度CRは表1に示すとおりであり、400℃から50℃に至るまでの平均冷却速度は25℃/秒であった。
試験番号1の鋼板ではさらに、CAL後、BAF−OA(箱焼鈍による過時効処理)を実施した。BAF−OAでは、鋼板を450℃で5時間均熱した後、72時間かけて徐冷した。なお、試験番号1以外の鋼板では、BAF−OAを実施しなかった。
調質圧延工程として、焼鈍工程後の鋼板に対して、調質圧延を実施した。調質圧延での圧下率は、いずれも、1.8%であった。
めっき工程として、表1に示す試験番号8の鋼板に対して、Niめっき処理を実施した。具体的には、調質圧延工程後に、鋼板の表裏面に電気メッキ法によりNiめっき層を形成した。表面及び裏面のNiめっき層の膜厚は、いずれも2μmであった。この試験番号8の鋼板は、両面Niめっき層を有する冷延鋼板となった。
上記のように製造した冷延鋼板に関して、化学成分の測定結果を表2に示し、ミクロ組織の観察結果および機械特性の測定結果を表3に示す。
ミクロ組織は、製造した冷延鋼板のL断面にて、光学顕微鏡で観察を行った。組織観察用の試料は、製造した冷延鋼板の幅方向の中央部から採取した。ミクロ組織写真は、研磨してナイタールエッチングを行った試料のL断面の厚み方向の1/4厚み間の部位を撮影した。ミクロ組織写真を用いて、JIS G0551(2013)の切断法によりフェライトの平均粒径を求めた。
表2中で、「F+C」は、ミクロ組織が主にフェライト及び粒状セメンタイトを含むことを示す。「F+P」は、ミクロ組織が主にフェライト及びパーライトを含むことを示す。「××」は未再結晶組織が観察されたことを示す。未再結晶組織が観察された場合、フェライト平均粒径は測定しなかった(測定不能なため)。
機械特性は、製造した冷延鋼板を用いて引張試験を行って測定した。各試験番号の冷延鋼板から、JIS5号引張試験片を作製した。引張試験片の平行部は、冷延鋼板のL方向(圧延方向)と平行であった。作成された引張試験片に対して、促進時効処理を実施した。具体的には、各引張試験片に対して、100℃で1時間の時効処理を実施した。
促進時効処理後の引張試験片に対して、JIS Z2241(2011)に準拠して、室温(25℃)大気中にて、引張試験を実施して、降伏強度YP、引張強度TS、全伸びEL、降伏点伸びYP−EL、降伏比YRを求めた。
本発明例である試験番号5、7、8、11、13、及び15の冷延鋼板は、製造条件、化学成分、ミクロ組織、機械特性の何れもが本発明の範囲を満足していた。その結果、これらの冷延鋼板は、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる。
一方、比較例である1〜4、6、9、10、12、14、16〜20の冷延鋼板は、製造条件、化学成分、ミクロ組織、機械特性の何れかが本発明の範囲を満足しなかった。その結果、これらの冷延鋼板は、強度、プレス成形性、及び非St−St性を同時に達成できなかった。
試験番号1はCAL後にBAF−OAを実施した従来例であるが、C含有量が低すぎた。さらに、巻取り温度CTが高すぎた。さらに、CALの焼鈍温度STが高すぎ、2相域温度であった。そのため、ミクロ組織はフェライトとパーライトとからなり、フェライトの平均粒径が4.0μmを超え、降伏強度YPが360MPa未満であった。さらに降伏比YRが80%未満であった。
試験番号2〜4、及び18では、製造条件は適切であったものの、C含有量が低すぎた。そのため、フェライトの平均粒径が4.0μmを超え、降伏強度YPが360MPa未満であった。さらに、降伏点伸びYP−ELが0%よりも高く、ストレッチャーストレインが発生した。
試験番号6及び14では、化学組成は適切であったものの、CALでの焼鈍温度STが高すぎ、2相域温度であった。そのため、ミクロ組織がフェライトとパーライトとからなり、フェライトの平均粒径が4.0μmを超えた。そのため、全伸びEL及び/又は降伏比YRが低く、プレス成形性が低かった。さらに、試験番号6の降伏強度YPは360MPa未満であった。
試験番号9では、化学組成は適切であったものの、CALにおける500〜400℃の間の平均冷却速度CRが遅すぎた。そのため、降伏強度YPが360MPa未満であり、降伏比YRが80%未満であった。冷却速度が遅すぎ、固溶C量が低下しすぎたためと考えられる。
試験番号10では、化学組成は適切であったものの、CALにおける500〜400℃の間の平均冷却速度CRが速すぎた。そのため、降伏点伸びYP−ELが0%よりも高かった。さらに、全伸びELが25%未満であった。
試験番号12では、化学組成は適切であったものの、CALでの焼鈍温度STが低すぎた。そのため、ミクロ組織の一部に未再結晶組織が残存した。その結果、全伸びELが25%未満と低く、プレス成形性が低かった。
試験番号16、17、及び19では、C含有量が高すぎた。そのため、全伸びELが25%未満と低すぎ、プレス成形性が低かった。
試験番号20では、化学組成は適切であったものの、一次冷延での累積圧下率が低すぎた。そのため、フェライトの平均粒径が4.0μmを超え、降伏強度YPが360MPa未満であった。さらに、降伏点伸びYP−ELが0%よりも高く、ストレッチャーストレインが発生した。
本発明の上記態様によれば、BAF−OAを実施することなしに、高強度で、プレス成形性に優れ、非St−St性にも優れる絞り缶用冷延鋼板を提供できる。この冷延鋼板は、プレス成形性に優れ、ストレッチャーストレインの発生を抑制でき、ゲージダウンが可能である。そのため、産業上の利用可能性が高い。
10: フェライト
20: 粒状セメンタイト

Claims (5)

  1. 絞り缶用の鋼板であって、
    前記鋼板が、化学成分として、質量%で、
    C:0.150超〜0.260%、
    Sol.Al:0.005〜0.100%、
    B:0.0005〜0.02%、
    Si:0.50%以下、
    Mn:0.70%以下、
    P:0.070%以下、
    S:0.05%以下、
    N:0.0080%以下、
    Nb:0.003%以下、
    Ti:0.003%以下、
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    前記化学成分中のホウ素含有量と窒素含有量とが、質量%で、0.4≦B/N≦2.5を満足し、
    前記鋼板が、ミクロ組織として、
    平均粒径が2.7〜4.0μmであるフェライトと、
    粒状セメンタイトと
    を含み、
    前記鋼板を100℃で1時間の時効処理を実施した後に行う引張方向が圧延方向と平行となる引張試験から得られる降伏強度を単位MPaでYPとし、全伸びを単位%でELとし、降伏点伸びを単位%でYP−ELとし、及び降伏比を単位%でYRとしたとき、
    前記YPが360〜430MPaであり、
    前記ELが25〜32%であり、
    前記YP−ELが0%であり、
    前記YRが80〜87%である
    ことを特徴とする絞り缶用鋼板。
  2. 前記ELが27〜32%であることを特徴とする請求項1に記載の絞り缶用鋼板。
  3. 前記鋼板の表面上に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Snめっき層、及びTFSめっき層のうちの少なくとも1つが配される
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の絞り缶用鋼板。
  4. 請求項1または2に記載の絞り缶用鋼板の製造方法であって、
    前記化学成分を有する鋳片を得る製鋼工程と、
    前記鋳片を、1000℃以上に加熱し、840〜950℃で仕上げ圧延し、仕上げ圧延後冷却し、500〜720℃で巻取って、熱延鋼板を得る熱延工程と、
    前記熱延鋼板に対して累積圧下率が80%超の一次冷間圧延を実施して、一次冷延鋼板を得る一次冷延工程と、
    前記一次冷延鋼板を、平均昇温速度10〜40℃/秒で昇温し、650〜715℃の温度範囲内で均熱し、その後、500〜400℃の間を平均冷却速度5〜80℃/秒で冷却する連続焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、
    前記焼鈍工程後に、過時効処理を施していない前記焼鈍鋼板を0.5〜5.0%の累積圧下率で調質圧延して、調質圧延鋼板を得る調質圧延工程と、を備える
    ことを特徴とする絞り缶用鋼板の製造方法。
  5. 前記調質圧延工程後に、前記調質圧延鋼板に対して、Niめっき処理、Ni拡散めっき処理、Snめっき処理、及びTFSめっき処理のうちの少なくとも1つを実施するめっき工程をさらに備える
    ことを特徴とする請求項4に記載の絞り缶用鋼板の製造方法。
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