JP2007284783A - 高強度冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】各規定量の化学成分組成を有し、面積分率で1%以上25%以下のパーライト、ベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種以上を含み、残部が再結晶率80%以上のフェライトからなる複合組織鋼であり、1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0以上であり、且つこれらの方位群の中で{100}<011>方位のX線ランダム強度比が最大且つ5.0以上を満足し、更に{554}<225>、{111}<112>及び{111}<110>の結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が6.0以下として構成されている。
【選択図】無し
Description
しかしながら、鋼板の成形性は強度が高いほど低下するため、高強度鋼板の自動車用部材への適用は、現実的には限られたものとなっている。
このような課題を解決する方法として、集合組織を制御し、形状凍結性を向上させた鋼板やその製造方法が本出願人によって提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
特許文献1の鋼板は、上記構成によって優れた形状凍結性が得られるものの、曲げ成形時の成形余裕度が十分ではないという問題があった。
しかしながら、特許文献5に記載の鋼板は、形状凍結性と塗装焼付硬化性を両立しているものの、特許文献1〜4に記載の鋼板と同様、曲げ成形時の成形余裕度が充分ではないという問題があった。
しかしながら、特許文献6に記載の鋼板は、形状凍結性と伸びフランジ加工性は良好であるものの、上述のような塗装焼付硬化性については考慮されていないため、曲げ成形性と耐衝突特性の両立が難しいという問題があった。
さらに、本発明者らは、フェライトの再結晶と形状凍結性に好ましい集合組織の発達を両立させる方法について検討した。その結果、Ti、Nb及びBと、Mo、Wのうち1種又は2種とを複合添加し、熱延条件を制御することにより熱延板の集合組織を発達させた上で、更にTi、Nb量の最適化と焼鈍条件の最適化により再結晶挙動を適切に制御することで、従来鋼と比較して形状凍結性を劣化させることなく優れた延性を得ることが出来ることを見出した。
さらに、形状凍結性と延性に加えてBH性を向上させるため、Alの添加量を極力抑えることにより、AlNの析出を抑制して固溶N量を増加させた。その結果、形状凍結性と延性を劣化させることなく優れたBH性を得ることが出来ることを見出した。
本発明は上述の知見に基づいて構成されており、その主旨とするところは以下の通りである。
(2) 前記Alの含有量が、質量%で、0.0005%以上0.02%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の高強度冷延鋼板。
(3) 更に、質量%で、V:0.20%以下、Cr:1.5%以下、Cu:2.0%以下、Ni:1.0%以下、Sn:0.20%以下の内、少なくとも1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の形状凍結性及び延性に優れた高強度冷延鋼板。
(4) Al含有量とN含有量が、次式Al/N=2以下を満足することを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板。
(5) 引張強度TS[MPa]と全伸びEL[%]との積TS×EL[MPa・%]が、17000[MPa・%]以上であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の形状凍結性及び延性に優れた高強度冷延鋼板。
(6) 上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板にめっきを施したことを特徴とする形状凍結性及び延性に優れた高強度冷延鋼板。
(8) 上記(7)に記載の製造方法によって製造した高強度冷延鋼板に、0.1%以上5%以下のスキンパス圧延を施すことを特徴とする形状凍結性及び延性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
本発明では、上記X線ランダム強度比の平均値は特に重要な特性値である。
板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強度比を求めた際の、{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値は、3.0以上である必要がある。この平均値が3.0未満だと、形状凍結性が劣悪となる。この観点から、X線ランダム強度比の平均値は、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4.0以上である。この方位群に含まれる主な方位は、{100}<011>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>及び{223}<110>である。これら各方位のX線ランダム強度比は{110}極点図に基づきベクトル法により計算した3次元集合組織や{110}、{100}、{211}、{310}極点図のうち複数の極点図(好ましくは3つ以上)を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。なお、極点図はX線回折法によって得ることができる。
本発明では、上記X線ランダム強度比は特に重要な特性値である。
この方位は、形状凍結性の向上に最も効果を発揮する方位である。従って、{100}<011>は5.0以上である必要がある。これが5.0未満だと、高形状凍結性の確保が困難になる。この観点から、{100}<011>方位のX線ランダム強度比は5.0以上であることが好ましい。更に好ましくは6.0以上である。
なお、ここで述べる{100}<011>方位とは、同様の効果を有する方位の範囲として、圧延方向に対して直角な方向(Transverse Direction)を回転軸として、12°を許容する。好ましくは6°とする。
1/2板厚における板面の{554}<225>、{111}<112>及び{111}<110>の結晶方位のX線ランダム強度比の平均値は6.0以下である必要がある。これが6.0超であると、良好な形状凍結性を得ることが困難となる。
なお、上述のX線強度は、X線回折法によって測定することができ、これらの限定を満足するX線強度が板厚1/2位置だけでなく、なるべく多くの厚みについて得られれば、より一層形状凍結性が良好になる。
少なくとも2つの測定面でのX線ランダム強度比の平均値が上述の値を満足していれば、優れた形状凍結性が得られる。
本発明で規定した結晶方位に関する指標は、引張強度レベルの低い軟鋼板から高強度鋼板にいたる全ての冷延鋼板に適用できるものであり、上記の限定が満たされれば、冷延鋼板の曲げ加工性は飛躍的に向上する。換言すれば、冷延鋼板の機械的強度レベルの制約を越えた、曲げ加工変形に関する基本的材料指標であるということができる。
以下に、本発明の高強度冷延鋼板の化学成分組成の限定条件について詳述する。
C量が0.005%未満であると、面積分率で1%以上のパーライト、ベイナイト又はマルテンサイトを鋼中に分散させることが難しく、一方、C量が0.25%超になると、延性が劣化する。このため、Cの含有量の適正範囲を0.005%〜0.25%の範囲内に限定した。なお、440MPa超の引張強度を安定的に得るためのより好ましい添加量は0.01%以上である。
Siは、鋼板の機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、2.5%超となると化成処理性が劣化したり、表面疵が発生したりするので、これを上限とした。一方、実用鋼でSiを0.001%未満とするのは困難であるので、これを下限とした。
Mnも、Siと同様、鋼板の機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、2.5%超になると加工性が劣化するのでこれを上限とした。一方、実用鋼でMnを0.01%未満とするのは困難であるので、これを下限とした。なお、高強度化のためには、0.5%以上のMnを含有することが好ましい。
なお、Mn以外に、Sによる熱間割れの発生を抑制する元素が十分に添加されていない場合には、質量%でMn/S≧20となるMn量を添加することが好ましい。
P及びSは不純物であり、それぞれ0.15%以下、0.03%以下とする。これは、2次加工性の劣化や熱間圧延時又は冷間圧延時の割れを防ぐためである。
Alは、以下の2点の理由から、本発明において非常に重要な元素である。
Nは不純物であり、加工性を悪くさせないように、上限を0.01%とする。一方、Nは、塗装焼付処理により降伏強度を上昇させ、部材の耐衝突特性を向上させる元素である。したがって、固溶N量を確保してBH性を向上させるため、Nを0.001%以上含有していることが望ましい。
本発明において、固溶N量を確保するためには、上述のように、AlNの生成を極力抑えることが好ましい。したがって、BH性を更に向上させるために、Al/Nが2以下であることが好ましい。
Oは不純物であり、加工性の悪化を防止するために、上限を0.01%とする。
Bは、本発明において非常に重要である。Bは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効であるだけでなく、本発明においては形状凍結性に有利な熱延板の集合組織を発達させていると推測され、0.0003%以上を添加することが好ましい。なお、その添加量が0.007%を超えると、上記効果が飽和するばかりでなく、延性を低下させるので、上限を0.007%とした。
これらの元素は、本発明において非常に重要である。従来、これらの元素を添加する主たる目的は、冷延後の焼鈍中の再結晶及び粒成長を抑制し、形状凍結性に有利な集合組織を破壊することなく保存するためであった。本発明では、Ti及びNbの添加量の上限を制限し、再結晶を完了させ、これにより優れた形状凍結性を得、且つ従来よりも延性を向上させるものである。
従って、Ti及びNbの過度の添加は再結晶及び粒成長を抑制し、延性を損なうので、Ti、Nbの添加量の上限をそれぞれ0.04%以下、0.04%以下、且つ双方の合計を0.04%以下と設定した。また、Ti、Nbの添加量が極端に少ないと、形状凍結性に有利な{100}<011>方位が発達しないため、Ti、Nbの添加量の下限をそれぞれ0.005%、0.005%、且つ双方の合計を0.01%以上と設定した。なお、再結晶フェライトの分率をより高めて延性を向上させる観点から、Ti及びNbの合計のより好ましい上限は、0.03%以下である。
Mo、Wは、本発明において非常に重要であり、焼鈍後に形状凍結性に有利な集合組織を発達させるために必須の元素である。両者の内の何れか1種又は2種の合計量で0.001%未満では上記効果が発現せず、また、両者の内の何れか1種又は2種の合計で1.0%超の添加は逆に加工性を劣化させるので、その範囲を0.001%から1.0%に限定した。
V及びCrは、C、Nの固定、析出強化、組織制御、細粒強化などの機構を通じて材質を改善するので、それぞれ0.0001%以上添加することが好ましい。但し、過度に添加しても格段の効果はなく、むしろ加工性や表面性状を劣化させるので、上限はそれぞれ0.20%、1.5%とすることが好ましい。
Cu、Ni及びSnは、機械的強度を高めたり、材質を改善する効果があるので、各成分とも0.001%以上を添加することが好ましく、また、過度の添加は逆に加工性を劣化させるので、上限をそれぞれ2.0%、1.0%、0.20%とすることが好ましい。
鋼板のミクロ組織は、フェライトを面積率で最大の相としてその他にパーライト、ベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種を含む組織とする。
パーライトとベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種以上の合計の面積分率が1%未満であると、440MPa超のTSを得ることが難しく、25%を超えると必要以上に強度が上昇するとともに延性が著しく低下する。このため、パーライト、ベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種以上の合計量を、面積分率で1〜25%の範囲に制限した。
ミクロ組織は、圧延方向に平行な板厚断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨、ナイタールエッチ、必要に応じてレペラーエッチし、光学顕微鏡で観察すれば良い。光学顕微鏡によって得られたミクロ組織写真を画像解析することによって、パーライト、ベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種以上の面積分率の合計量を求めることができる。
EBSPの結晶方位測定は、焼鈍後の試料の平均結晶粒径の10分の1の測定間隔で、任意の板断面の板厚方向の1/4厚の位置で100×100μmの範囲において行い、測定点はピクセルとして出力される。EBSPの結晶方位測定に供する試料は、機械研磨などによって鋼板を所定の板厚まで減厚し、次いで電解研磨などによって歪みを除去すると同時に板厚1/4面が測定面となるように作製する。冷延直後の結晶粒(未再結晶粒)内では、塑性変形により生じた比較的連続的な結晶方位変化が粒内に存在するのに対して、再結晶が完了した粒内の結晶方位変化は極めて小さくなる。KAM法では、隣接したピクセル(測定点)との結晶方位差を定量的に示すことが出来るので、ここでは隣接測定点との平均結晶方位差が1°以内である領域を再結晶フェライトと定義する。
フェライト相の総面積と再結晶フェライト相の総面積は、次のようにして求めることができる。フェライト相の総面積は、EBSPの結晶方位測定に使用した試料をナイタールエッチし、該測定を行った視野の光学顕微鏡写真を同一の倍率で撮影し、得られた組織写真を画像解析して求めれば良い。更に、光学顕微鏡写真とEBSPの結晶方位測定とを照合し、画像解析することによって、再結晶フェライトの総面積を求めることができる。
なお、フェライト相の総面積は、再結晶フェライト相の総面積と未再結晶フェライト相の総面積の和である。
本発明の冷延鋼板は、上述のような結晶方位、組織を満足するものであり、形状凍結性に優れるだけでなく、延性にも極めて優れている。さらに、成形性の観点から、延性の指標である引張強度TS(MPa)と全伸び×EL(%)の積、すなわちTS×EL(MPa・%)が、17000(MPa・%)以上であることが好ましい。また、TS×ELは、成形性の観点から17500(MPa・%)以上であることがより好ましい。
以下に、本発明の形状凍結性及び延性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法について詳述する。
なお、原料にはスクラップを使用しても構わない。
熱間圧延の開始温度は特に限定しないが、熱延中にAr3変態温度〜900℃の温度範囲における熱延圧下率の合計は25%以上とすることが必要である。これは、該温度範囲における熱延圧下率の合計が25%未満であると、圧延されたオーステナイトの集合組織が十分に発達しにくくなり、この後、如何様な冷却を施しても{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値が低下し、本発明の効果が得られない場合があるためである。Ar3変態温度〜900℃の温度範囲における熱延圧下率の合計の上限は、高いほど好ましく、パススケジュールに応じて決めれば良い。
なお、Ar3変態温度〜900℃の温度範囲における熱延圧下率の合計とは、900℃における板厚とAr3変態温度における板厚との差を、900℃における板厚で除した値を百分率で表したものである。本発明の製造方法において、Ar3変態温度における板厚は、仕上圧延後の板厚と同じである。
Ar3=901−325×C%+33×Si%+287×P%+40×Al%−92(Mn%+Mo%+Cu%)−46×(Cr%+Ni%) ・・・(1)
熱間圧延を終了する温度、すなわち仕上圧延温度(FT)はAr3変態温度以上とする。これは、仕上圧延温度がAr3変態温度よりも低いと、焼鈍後の{100}<011>方位が発達しなくなって、{100}<011>〜{223}<110>方位群の他の方位よりもX線ランダム強度比が低下し、又は{100}<011>方位のX線ランダム強度比が5.0未満となり、形状凍結性が劣化し、圧延中に析出したフェライトに加工組織が残留して延性が低下することがあるためである。一方、熱間圧延の仕上圧延温度が900℃を超えると、本発明の効果が得られず、鋼板の表面に生成する酸化物層により表面品位も低下してしまう。
なお、900℃で熱間圧延を終了する場合は、900℃で圧下率を25%以上とする1パスの圧延を行えば良い。
巻取温度(CT)は700℃以下とする。巻取温度が700℃超になると、焼鈍後において形状凍結性に有利な{100}<011>〜{223}<110>方位群の集合組織が発達しないため、700℃を巻取温度の上限値とした。また、より優れた形状凍結性と延性の両立を得るために、630℃以下であることが好ましい。
巻取温度の下限は特に規定することなく、本発明の効果を得ることができるが、鋼板の加工性を劣化させる恐れがあるため、300℃以上とすることが好ましい。
上記で得られた熱延鋼板の冷間圧延は、圧下率2〜80%の範囲で行う。冷間圧延の圧下率(冷延率)が2%未満では、形状凍結性に有効な{100}<011>方位が強く発達しないため、2%を下限とした。なお、板厚精度確保の観点から下限は5%以上であることがより好ましい。一方、冷間圧下率が80%を超えると、{111}方位が急激に発達し、{554}<225>、{111}<112>及び{111}<110>の結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が6.0超となって、形状凍結性が劣化することから、80%を上限とした。また、形状凍結性を高めるためには、冷間圧下率を70%以下に制限することが好ましい。更に好ましくは60%以下である。
冷間圧延後、冷延鋼板に、以下に述べるような加熱保持を行なう焼鈍を施し、冷却する。
冷間圧延後の焼鈍における加熱速度を15℃/s超とすると、十分にフェライトの再結晶が進行する前に二相域に加熱されてしまうため、再結晶フェライトの分率が80%未満となる。このため、できるだけゆっくり加熱することが好ましい。従って、昇温速度の上限を15℃/secとした。更に、再結晶フェライトの分率を90%以上とするために、昇温速度の上限は、より好ましくは10℃/secである。
加熱温度が700℃未満の場合には、未再結晶フェライト組織が残存することから延性が劣化する。従って、再結晶フェライトの分率を80%以上とするために、加熱温度の下限を700℃とする。再結晶フェライトの分率を90%以上とするために、好ましい加熱温度の下限は750℃である。一方、加熱温度が過度に高い場合には、再結晶によって生成したフェライトの集合組織が、オーステナイトへ変態後、オーステナイトの粒成長によってランダム化され、最終的に得られるフェライトの集合組織もランダム化される。特に、加熱温度が900℃を越える場合には、そのような傾向が顕著となる。従って、加熱温度は900℃以下とする。また、より優れた形状凍結性を確保する観点から、加熱温度の上限は860℃とすることがより好ましい。
700〜900℃の温度範囲における保持時間が3sec未満の場合、組織の不均一が生じ易く、鋼板の長手方向あるいは幅方向での形状凍結性及び延性のバラツキに繋がる。このため、保持時間の下限は3secとする。
焼鈍後の冷却条件は、焼鈍工程に応じて適宜決定すればよいが、通常は空冷である。
なお、焼鈍工程は、連続焼鈍工程、BAF工程、及び連続焼鈍−めっき(−合金化)工程の何れのプロセスを用いても構わない。連続焼鈍工程後の冷却条件、過時効条件は、必要とするTSレベルに応じて選択すればよい。
また、溶融めっき、あるいはめっき合金化条件についても特に限定する必要はなく、常法に従えばよい。なお、めっきの種類も特に限定するものではない。
以上の方法で製造された冷延鋼板にスキンパス圧延を施してもよい。スキンパス圧延における圧下率が0.1%未満では鋼板の形状制御効果が小さいので、0.1%を下限とすることが好ましい。また、圧下率が5.0%超になると、鋼板の延性を著しく劣化させるので、5.0%を上限とすることが好ましい。
下記表1に示す化学成分組成を有する符号AからNまでの鋼を用い、鋳造後そのまま、もしくは一旦室温まで冷却して再加熱した後に、下記表2に示す条件で熱間圧延を施し、No.1〜29に示すような種々の厚みの熱延鋼板とした。
そして、この熱延鋼板に、下記表2に示す冷延率の冷間圧延を施して1.4mm厚とし、その後、連続焼鈍ライン(No.1、3〜20)、BAF焼鈍工程(No.2)及び連続焼鈍―亜鉛めっき−合金化ライン(No.21〜29)にて、下記表2に示した昇温速度、加熱温度、保持時間で焼鈍した後、冷却した。
これら1.4mm厚の各鋼板から、25mm幅、130mm長さの試験片を作製し、ポンチ幅40mm、ポンチ肩R5、ダイス幅43.4mm、ダイ肩R3の金型を用いて、種々のしわ押さえ圧で、40mm高さのハット型に成形した後、壁部の反り量を曲率半径ρ(mm)として測定し、その逆数1000/ρを求めた。ここで、1000/ρが小さいほど形状凍結性は良好となる。
その後、以下に説明する評価試験において諸性質を調査した。
上記方法によって製造された1.4mm厚の冷延鋼板のミクロ組織、集合組織、機械的特性値及び形状凍結性の評価を下記方法で行い、結果を下記表3に示した。
ミクロ組織の観察は光学顕微鏡で行い、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの面積率の合計は、光学顕微鏡による組織写真を画像解析して求めた。また、フェライト再結晶率は、EBSPの結晶方位測定と光学顕微鏡組織写真を照合し、画像解析によってフェライト相及び再結晶フェライト相の総面積を求めて計算した。また、集合組織はX線回折法によって測定した。
また、引張試験は、JIS Z 2201に準拠し、長手方向が圧延方向と平行になるように5号試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して行った。なお、表3に示すTS(MPa)は引張強度、EL(%)は全伸びであり、YRは降伏強度YS(MPa)と引張強度の比YS/TSである。
本実施例(実施例1)の各鋼の化学成分組成を表1に示し、また、鋼板の製造条件を表2に示すとともに、評価結果を表3に示す。
下記表4に示す化学成分組成を有する符号AAからANまでの鋼を用い、鋳造後そのまま、もしくは一旦室温まで冷却して再加熱した後に、下記表5に示す条件で熱間圧延を施し、No.100〜133に示すような種々の厚みの熱延鋼板とした。なお、表5において、圧下率は、Ar3〜900℃における圧下率の合計であり、仕上圧延温度がAr3以上の場合は、900℃における板厚と仕上圧延後の板厚によって求めた。なお、仕上圧延温度が900℃を超えるものは、該圧下率を求めることができないことを、表中に「−」で示した。
そして、この熱延鋼板に、下記表5に示す冷延率の冷間圧延を施して1.4mm厚とし、その後、連続焼鈍ライン(No.101〜103、105〜120、127〜133)、BAF焼鈍工程(No.104)及び連続焼鈍―亜鉛めっき−合金化ライン(No.121〜126)にて、下記表5に示した昇温速度、加熱温度、保持時間で焼鈍した後、冷却した。
更に、JIS G 3135の附属書に記載された塗装焼付硬化試験方法に準拠してBH量を評価した。なお、表6に示すTS(MPa)は引張強度、EL(%)は全伸び、YRは降伏強度YS(MPa)と引張強度の比YS/TSであり、UBH(MPa)はBH量である。
本実施例(実施例2)の各鋼の化学成分組成を表4に示し、また、鋼板の製造条件を表5に示すとともに、評価結果を表6に示す。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.005%以上0.25%以下、
Si:0.001%以上2.5%以下、
Mn:0.01%以上2.5%以下、
P:0.15%以下、
S:0.03%以下、
Al:2.0%以下、
N:0.01%以下、
O:0.01%以下、
B:0.0003%以上0.007%以下
をそれぞれ含有し、更に、
Ti:0.005%以上0.04%以下、
Nb:0.005%以上0.04%以下
の双方を合計で0.01%以上0.04%以下の量で含有し、更に、Mo、Wの内の何れか1種又は2種の合計を0.001%以上1.0%以下の量で含有し、
残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
面積分率で1%以上25%以下のパーライト、ベイナイト又はマルテンサイトの内の何れか1種又は2種以上を含み、残部が再結晶率80%以上のフェライトからなる複合組織鋼であり、
1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0以上であり、且つこれらの方位群の中で{100}<011>方位のX線ランダム強度比が最大且つ5.0以上を満足し、更に{554}<225>、{111}<112>及び{111}<110>の結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が6.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。 - 前記Alの含有量が、質量%で、0.0005%以上0.02%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
- 更に、質量%で、
V:0.20%以下、
Cr:1.5%以下、
Cu:2.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Sn:0.20%以下
の内、少なくとも1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度冷延鋼板。 - Al含有量とN含有量が、次式
Al/N=2以下
を満足することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板。 - 引張強度TS[MPa]と全伸びEL[%]との積TS×EL[MPa・%]が、17000[MPa・%]以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の高強度冷延鋼板にめっきを施したことを特徴とする高強度冷延鋼板。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の化学成分を有するスラブを、Ar3変態温度〜900℃の温度範囲における圧下率の合計を25%以上、仕上圧延温度をAr3変態温度以上として熱間圧延し、次いで700℃以下の温度で巻き取り、酸洗後、2〜80%の冷間圧延を施し、更に15℃/sec以下の昇温速度で700℃〜900℃の温度範囲に加熱した後、当該温度で3sec以上保持した後に冷却することを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法によって製造した高強度冷延鋼板に、0.1%以上5%以下のスキンパス圧延を施すことを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。
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