JP5000452B2 - 高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板およびその製造方法に関する。
具体的には、高強度な鋼板であっても、3ピース缶のエキスパンド成形性に優れた容器用鋼板およびその製造方法にに関するものである。
飲料缶、食品缶などに使用される容器用金属板は、缶胴、缶蓋、缶底から形成されるいわゆる3ピース缶の胴材として使用され、鋼板表面に樹脂皮膜を形成したフィルムラミネート鋼板が主に使用される。この缶胴に用いられる鋼板は、缶胴の円周方向が鋼板のL方向もしくはC方向と一致する方向(L方向とは鋼板の圧延方向を、C方向とは圧延方向と直角な鋼板の幅方向を指す)から切り出され、円筒状に成形した後、溶接あるいははんだ付け等の方法で接合される。更にその後、異匠性を持たせる等の理由で、缶胴の円周方向にエキスパンド成形を加える場合もある。
異匠性を持たせる目的でエキスパンド成形を加える場合、より形状が複雑になることが考えられ、高い拡缶率((円周方向の伸び/成形前の円周長さ)×100(%))に対しても割れの発生なく成形可能なエキスパンド成形性に優れた鋼板が求められる。
一般にエキスパンド成形を加えた場合、鋼板の全伸びに対して、割れが発生せずにエキスパンド成形可能な、限界の拡缶率の値は相対的に小さくなる。この理由は、成形中エキスパンド工具と鋼板の間の摩擦により、工具と工具の間の部分の鋼板に変形が集中すること、更に缶の高さ方向の鋼板の流入が摩擦により抑制され、単純な引張り試験のように摩擦がゼロの場合に比べ、板厚方向の歪が増加するためである。また、溶接部やフィルムラミネート部に比べ、相対的に強度の低い溶接近傍の鋼板のみの部分に歪が集中することも、鋼板の全伸びに対して、限界拡缶率が小さくなる原因の一つである。
従って、工具やフィルムを見直すことで摩擦係数を下げる対策も考えられるが、新たな投資が必要となり、コスト増を招く問題がある。
また、単純に成形性に優れた、伸びの大きい鋼板を用いた場合、一般的に強度は低下するため、缶強度が保てなくなる可能性がある。このように、缶強度は維持しつつ、複雑かつ高い拡缶率でエキスパンド成形を行うことは困難であった。
3ピース缶用鋼板に関しては従来から種々の提案がなされている。
溶接近傍での割れに対して、下記特許文献1では、成分、焼鈍条件を規定し、溶接部近傍での溶接による材質変化を抑制し、歪の集中を回避する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、鋼板を軟質化し、素材の成形性を上げることで複雑な成形を可能とした、成形性に優れた3ピース缶に関する技術が開示されている。
しかし、特許文献1は、フランジ成形に関する技術であり、エキスパンド成形に対しても有効であるかは検証されていない。また、ラミネートフィルムの存在により顕著となる溶接部近傍での歪の集中を回避する方法については何ら開示されていない。
また、特許文献2に開示されている鋼板は軟質であるため、更なるゲージダウンの要求があった場合に、必要な缶強度を確保することが困難となり、コストダウンに寄与することができないという問題点があった。
特開平2−118028号公報 特許第3695048号公報
そこで、本発明は、前述のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、薄手化、高強度化によって、伸びが低下した鋼板であっても、エキスパンド成形時にその成形性を最大限引き出すことにより、従来よりも優れたエキスパンド成形性を発揮する3ピース缶用鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、成分含有量、熱延条件、一次冷延条件、BAF焼鈍条件、二次冷延条件について総合的に検討し、高強度かつ高r値の鋼板を得ることによって本発明を知見したものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)質量%で、C:0.018〜0.060%、Si:0.02%以下、Mn:0.20〜0.30%、P :0.025%以下、S :0.025%以下、Al:0.020〜0.080%、N :0.003〜0.013%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、ロックウェル硬さ(HR30T)が52以上の鋼板であって、鋼板面上の圧延方向に平行な方向をL方向とし、L方向に垂直な方向をC方向としたとき、L方向およびC方向のいずれか一方、もしくは双方のr値が1.0以上であり、該r値が1.0以上である方向を拡缶方向としてエキスパンド成形を行った際に12%拡管したときに割れが発生せず、優れたエキスパンド成形性を示すことを特徴とする、高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板。
(2)質量%で、C :0.018〜0.060%、Si:0.02%以下、Mn:0.20〜0.30%、P :0.025%以下、S :0.025%以下、Al:0.020〜0.080%、N :0.003〜0.013%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる連続鋳造鋼片(スラブ)を仕上げ出口温度:850〜950℃で熱間圧延した後、500〜650℃の範囲で捲取り、酸洗後、一次冷延率を85〜95%とした冷間圧延を施し、300℃〜550℃の間の昇温速度を10〜50℃/時間とし、再結晶温度以上となる600〜700℃の温度範囲で2〜8時間保定するバッチ焼なまし炉による焼鈍(BAF焼鈍)をし、1〜20%の二次冷延を行うことを特徴とする、(1)に記載の高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板の製造方法。
本発明によれば、薄手化、高強度化によって、伸びが低下した鋼板であっても、エキスパンド成形時にその成形性を最大限引き出すことにより、従来よりも優れたエキスパンド成形性を発揮する3ピース缶用鋼板およびその製造方法を提供することができる 一般に高強度化に伴って、鋼板の伸びは低下するため、高強度の鋼板を用いた場合、エキスパンド成形性の低下は避けられなかった。しかし、本発明による鋼板を用いることで、同一強度、同一伸びの鋼板であっても、従来よりも高いエキスパンド成形性を実現することができ、高強度でエキスパンド成形性に優れるといった、相反する特性を同時に満足することができ、缶の薄手化などに寄与することができる。特に、拡缶率[={(成形後の缶周長−成形前缶周長)/成形前缶周長}×100%]が3%を超える場合に本発明の効果を享受することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。 本発明は、エキスパンド成形性と材質特性との関係を検討するうち、全伸びが同じ鋼板であっても、r値の増加に伴って、エキスパンド成形時の限界拡缶率が大幅に向上することを知見したものである。
従来行われていた、軟質化を図り、鋼板の全伸びを向上させることでエキスパンド成形性を向上させる方法では、鋼板が軟質になって強度が低下するため、必要な缶強度が保てなくなるといった問題があったが、本発明ではこれを克服し、r値を向上させることで、エキスパンド成形性と必要缶強度を両立することができる。
図1にr値と限界拡缶率の関係(全伸びは一定)を、図2に全伸びと限界拡缶率の関係(r値は一定)を示す。これらの図から、全伸びの向上による限界拡缶率の向上代に比べ、r値向上による限界拡缶率の向上代がはるかに大きいことが判る。高r値化により、エキスパンド成形性が向上する理由は明らかではないが、エキスパンド成形特有の成形方法と、r値の変化による鋼板の伸び特性の変化に関係があると考えられる。
つまり、図3に示すように、エキスパンド成形では、円周方向に分割された工具が用いられ、これら工具が缶の半径方向に移動することによって、拡缶成形がなされる。この時、摩擦の影響で主に成形を受ける(伸びる)のは、各工具と工具の間の鋼板であり、この各工具間では標点間距離の短い引張り成形を行っているのと同義と考えることができる。また、溶接部近傍のフィルムがラミネートされていない、鋼板のみの部分でも、溶接やラミネートフィルムの影響で、同様に標点間距離の短い引張り成形を行っているのと同義と考えることができる。通常引張り試験を行うと、試験片の平行部は最初は均一に伸びる(いわゆる均一伸び)が、ある部分でネッキングが始まる。一旦ネッキングが始まると、そのネッキングした部分が主に伸びるため、それ以外の部位はそれ以降ほとんど変形しない。そのため、破断するまでの伸びを試験片の長手方向で比較すると、分布が生じており、破断位置に近い部位ほど多く伸びている。即ち、伸びを測定する標点間の距離を小さくするほど、破断伸び(材料が破断したときの特定の標点間の伸び)が大きくなっている。この破断伸びと標点間距離の関係について、本発明者らが数値成形シミュレーションと多くの実験により、様々なr値の材料について鋭意研究した結果、標点間の距離が短い場合の破断伸び(即ち破断部に近い部分の破断伸び)は、r値が向上するほど大きくなること、更にr値が1.0以上になるとその向上代が非常に大きくなることを見出した。このことを図4に示す。以上の理由から、高r値化によって、エキスパンド成形性が向上するものと考えられる。
高r値化のための製造上のポイントとしては、r値に影響を与える鋼成分を適切な範囲に制御すること及び、適切な熱延低温巻取りと箱焼鈍を行うことによって、r値に有効な結晶方位を得ること、及び粒成長を促進することである。
以下に各成分(質量%)の限定理由を示す。
C:0.018〜0.060%
Cはエキスパンド成形性に大きな影響を与える元素で、その量が少ないほどBAF焼鈍時の粒成長が促進して高r値が得やすくなる。
一方、エキスパンド缶において溶接軟化に起因した応力集中による破壊を回避するにはC量の下限を限定する必要がある。C量が0.018%未満では溶接部に焼入れ組織がなくなり著しい溶接部軟化が生じる。また鋼組織を均一かつ細粒にし難くなって高強度化に不向きであり、かつ固溶Cが特異的に多くなる。この固溶Cはエキスパンド加工後の缶にストレッチャーストレイン模様の欠陥を生じる。これらの害を回避するには下限を0.018%としなければならない。望ましい下限値は、0.020%である。
また、C量が0.060%を越えると破壊の起点となる粗大なセメンタイト粒子が多数析出し、特にゲージダウン化した鋼板ではエキスパンド加工割れの危険性が高まる。加えて焼鈍時の粒成長が抑制されて高r値とならずエキスパンド成形性が低下するのでC上限を0.060%とする。望ましい上限値は、0.050%、更に望ましくは0.040%である。
Si:0.02%以下
Siは食缶として耐食性を劣化させる元素で、過剰に含有させることで介在物を形成しフランジ加工性を劣化させるため上限を0.02%に限定する。なお特に優れた耐食性を必要とする場合には上限を0.01%とすることが望ましく、本発明の容器用鋼板には不要な元素であることから下限を定めない。
Mn:0.20〜0.30%
Mnもエキスパンド成形性に大きく影響を与える元素であり0.30%超では焼鈍時の粒成長が抑制されて高r値が得られない。加えて鋼板表層にMn酸化物が濃化して、耐食性が劣化するので、Mn上限は0.30%とする。一方、Mnは熱延鋼板のS起因の耳割れを防止するために添加される。Sを固定し耳割れを防止するにはMn/Sの比が8以上必要なのでMn下限は0.20%とする。
P:0.025%以下
Pは過度に含有すると結晶粒界に偏析しフランジ加工割れの原因になるほか、食缶としての耐食性も劣化させる元素である。従って実用上支障のない上限を0.025%とするが、好ましくは0.01%以下であって、本発明において不要な元素であることから下限を定めない。
S:0.025%以下
Sは連続鋳造時にMnSとなって粒界に析出しスラブ割れを起こし、また熱間圧延時には地鉄と結合して低融点化合物のFeSを作り、熱間圧延温度で融解して鋼板に割れを起こすなど美麗な鋼板を製造する上で極めて有害であるため、0.025%以下とする。
さらにMnを含む鋼板において含有量に応じて大きなMnS析出物を生成する。このMnSは圧延により圧延方向に長く伸びる性質を有しており、大きい析出物ほど鋼中に広く分散して鋼板の伸びを減少してエキスパンド加工性を劣化させる。従ってエキスパンド加工性を良好に保ち、特に缶胴フランジ部の加工を割れなく容易に進めるにはSは微量であっても存在しないことが望ましく下限は不要である、容器となった後においてもSが極微量であれば耐食性向上に望ましく、0.009%以下であることが好ましい。
Al:0.020〜0.080%
Alは本発明の重要な化学成分であって、エキスパンド成型性に大きな影響を与える元素である。BAF焼鈍において再結晶温度域でAlNを形成することによって、高r値に寄与する結晶方位を持つ結晶粒の成長を助ける役割を果たす。この効果を得るには、Alを0.020%以上添加する必要がある。Al量が0.020%未満になると溶製時の十分な脱酸が期待できなくなり鋼中に粗大な介在物が増加しエキスパンド加工割れが多発するようになる。この介在物発生を少なくするためAl量の下限を0.020%とする。
一方、Al含有量が0.080%を超えると、連続鋳造時にAlNとなって粒界に析出しスラブ割れを起こし、また熱延捲取りや焼鈍加熱時にAlNの析出サイズが大きくなりフランジ加工の割れ原因となる。さらには熱延低温捲取り条件においても固溶N量を減じてBAF焼鈍時に必要なAlN形成を阻害するようになる。高r値を確保するにはAl量の上限を0.080%に抑える必要がある。材質の安定性という観点からAl量の範囲は0.020〜0.040%とすることが望ましい。
N:0.003〜0.013%
Nは本発明の重要な化学成分であって、Alと結合しAlNを形成することによって、高r値に寄与する元素である。しかし、多量に添加すると鋳造時に欠陥となる可能性があると共に、窒化鉄を形成して加工性を劣化させるので、Nは0.013%以下とする。一方、Nの0.003%未満にするには精錬コストが高くなる。よって、Nは0.003〜0.013%とする。
その他の化学成分
本発明の高強度薄鋼板の成分としては質量%でC :0.018〜0.060%、Si:0.02%以下、Mn:0.20〜0.30%、P :0.025%以下、S :0.025%以下、Al:0.020〜0.080%、N :0.003〜0.013%を含有することが必要であるが、公知の容器用薄鋼板中に一般的に存在する成分元素を含有してもよい。例えばCr:0.10%以下、Cu:0.20%以下、Ni:0.15%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0020%以下、Ti、Nb、Zr、Vなどの1種または2種以上を0.3%以下、あるいはCa:0.01%以下などの成分元素を目的に応じて含有させることができる。
以下に製造条件の限定理由を示す。
本発明の成分を有するスラブを圧延、熱処理する製造工程は通常の薄板製造プロセスのままで好適である。スラブは連続鋳造後に速やかに熱間圧延挿入するダイレクト圧延でも、一旦常温まで冷却して1100℃以上に再加熱し熱間圧延することも可能であり、その手段を問わない。ただし一次冷延率での高圧下およびBAF焼鈍による熱処理は高強度化とエキスパンド加工性の両立を図るために必ず適用されなければならない。
熱間圧延温度:850〜950℃
圧延可能な温度に有るスラブを出口温度が850〜950℃で仕上圧延する。850℃下限はA3変態点を確保するためで、変態点以下圧延となった部分の鋼板は軟質化して均一材質が失われ、ひいては一次冷延での破断、形状不良の原因となる。一方、950℃を超えた圧延は著しいスケール生成と圧延ロールの表面劣化を伴うため鋼板にスケール疵を多発させる危険性が極めて高い。
捲取り温度:500〜650℃
仕上げ圧延後、500〜650℃の範囲で捲きとる。500℃以上とするのは捲取り後の自己焼鈍により圧延組織の残留がないようにするためで、一次冷延性が向上しBAF焼鈍にとって焼付きなどの生じない望ましい鋼板形状が得られるためである。一方、650℃以下としたのは、これ以上の温度では鋼中に大量のAlNが析出してBAF焼鈍において高r値化に必要な固溶Nが減少し、かつ酸洗での脱スケール性にとって好ましくないスケールが生成するためである。固溶N確保および脱スケール性に配慮した望ましい捲取り温度範囲は500〜600℃である。
酸洗
上記の捲取り温度により製造されれば酸洗条件に格別の規制はなく、通常条件としての塩酸または硫酸による酸洗が可能である。
冷間圧延:85〜95%
BAF焼鈍前に施される冷間圧延を一次冷延として、その範囲を85〜95%とする。この冷延率は一般の冷延鋼板に施される60〜80%に比べて高い値である。本発明のような細粒化を必要とする高強度鋼板においては冷延率が高いほど好ましく、その効果は鋼板中に歪みが多量に導入されることで得られる。85%未満ではその効果が不足して再結晶焼鈍後の結晶粒径が粗大になり本発明に必要な高強度が得られないので下限を85%とする。一方、冷延率は高くとるほど細粒化を促進させる効果を有するが、冷間圧延に使用されるタンデム式冷間圧延機には冷延率適用に限界があり、一般に95%を超えると鋼板が破断しやすくなり生産性を害するようになるので上限を95%とする。
BAF焼鈍:600〜700℃
BAF焼鈍は本発明の最も重要な製造因子である。本発明が対象としている成分系の鋼板に、現在主流となっている連続焼鈍を施した場合、加熱時の昇温速度が速すぎてAlN析出が間に合わず、目的とする高r値特性を得ることが困難になる。連続焼鈍法に比べて加熱昇温速度の遅いBAF焼鈍においては10〜50℃/時間という極めてゆっくりとした昇温が可能であり、AlN析出と再結晶核の生成を同期させることが可能となる。この再結晶核は高r値に最も望ましい組織を作る核であって、AlNが同時に析出することで他の再結晶核の生成、成長が抑制される。この昇温速度は冷間加工によって繊維状組織となった鋼が回復し再結晶核が生成し、さらに粒成長段階に至る300℃から550℃に適用されることで充分な効果を発揮する。これにより初めて高強度かつエキスパンド成形性に優れた高r値鋼板を得ることができる。昇温速度の上限を50℃/時間としたのは、これ以上になると再結晶核の生成にAlN析出が間に合わないためである。より望ましくは30℃/時間未満である。下限は特に定める必要はないが、生産性・コストの面から10℃/時間以上とした。このBAF焼鈍を行う際の焼鈍温度は700℃超では、セメンタイトが粗大化し、エキスパンド成形時に割れが発生するため700℃以下とする。一方、600℃未満では保定時間が2〜8時間の焼鈍条件において十分粒成長せず高r値が得られないことから焼鈍温度は600〜700℃とする。
二次冷延:1〜20%
BAF焼鈍後の調圧率も本発明の重要な製造因子であって、調圧率が1%未満では不均一な調圧による材質バラツキと形状不良およびストレッチャーストレイン模様発生の危険性が高まるので下限を1%とする。一方、調圧率が20%を超えると材質が硬く脆くなりエキスパンド加工割れしやすくなる。また冷延組織が生成することによりr値劣化が進むので上限を20%とする。
以下に実施例を示す。表1に示す成分のスラブを、表2に示す熱延条件で、熱間圧延を行い熱延板とした後、酸洗を行い、表2に示す条件で冷延、BAF焼鈍、二次冷延を行い、板厚0.19mmの冷延鋼板とした後、表面処理を施した。このようにして得た鋼板の硬度(HR30T)を測定すると共に、L方向及びC方向のr値を測定した。また、この鋼板にフィルムをラミネートし、L方向及びC方向が拡缶方向となるように、ブランクを切り出し、スードロニック溶接を行うことによって、3ピース缶の胴部分を作成した。この胴部分の内径は52.6mm、高さは108mmである。エキスパンド成形は、およそ3%以上拡缶されるのが一般的であり、十数%以上の拡缶を行う場合もある。本研究では、より高い拡缶が可能な鋼板を対象としているため、エキスパンド成形性の良否は、エキスパンド試験機を用いて、12%拡缶した時の、割れの発生有無で判定した。拡缶率は{(成形後の缶周長−成形前缶周長)/成形前缶周長}×100%で定義した。また、エキスパンド成形後、ストレッチャーストレインの発生有無も調査し、発生無きものを合格としている。これら結果を表3に示す。
表3において、鋼板No.1及び2は本発明例であり、成分及び製造条件を適正な範囲とすることで、高強度かつ、エキスパンド成形性に優れた鋼板が得られている。鋼板No.3は、成分が本発明範囲外であるため、r値が低く、エキスパンド成形時に割れが発生する。鋼板No.4は成分が本発明範囲外であるため、r値は高くエキスパンド成形時に割れは発生しないが、強度が不足している。鋼板No.5は、巻取り温度が高く、本発明範囲外であるため、巻取り中にAlNが析出してしまい、BAF焼鈍時の固溶Nが不足し、高いr値が得られず、エキスパンド成形時に割れが発生する。鋼板No.6は、冷延率が低く本発明範囲外であるため、冷延時に必要な歪が導入されておらずBAF焼鈍後に高rが得られない。そのため、エキスパンド成形時に割れが発生する。鋼板No.7は、BAF昇温速度が速く本発明範囲外であるため、BAF焼鈍時に高r値化に必要な結晶粒の成長が阻害され、高いr値が得られず、エキスパンド成形時に割れが発生する。鋼板No.8は、BAF焼鈍温度が低く、本発明範囲外であるため、BAF焼鈍時に十分な粒成長が起きず、高いr値が得られないため、エキスパンド成形時に割れが発生する。鋼板No.9は、成分が本発明範囲外であり、C量が不足しているため、エキスパンド成形時に割れは発生しないが、ストレッチャーストレインが発生する。
以上の実施例により、本発明の効果が確認された。
Figure 0005000452
Figure 0005000452
Figure 0005000452
r値と限界拡缶率の関係(全伸びは一定)を示す図である。 全伸びと限界拡缶率の関係(r値は一定)を示す図である。 エキスパンド成形を説明する模式図である。 評点間距離と破断伸びとの関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.018〜0.060%、
    Si:0.02%以下、
    Mn:0.20〜0.30%、
    P :0.025%以下、
    S :0.025%以下、
    Al:0.020〜0.080%、
    N :0.003〜0.013%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    ロックウェル硬さ(HR30T)が52以上の鋼板であって、鋼板面上の圧延方向に平行な方向をL方向とし、L方向に垂直な方向をC方向としたとき、L方向およびC方向のいずれか一方、もしくは双方のr値が1.0以上であり、該r値が1.0以上である方向を拡缶方向としてエキスパンド成形を行った際に12%拡管したときに割れが発生せず、優れたエキスパンド成形性を示すことを特徴とする、高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板。
  2. 質量%で、
    C :0.018〜0.060%、
    Si:0.02%以下、
    Mn:0.20〜0.30%、
    P :0.025%以下、
    S :0.025%以下、
    Al:0.020〜0.080%、
    N :0.003〜0.013%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる連続鋳造鋼片(スラブ)を仕上げ出口温度:850〜950℃で熱間圧延した後、500〜650℃の範囲で捲取り、酸洗後、一次冷延率を85〜95%とした冷間圧延を施し、300℃〜550℃の間の昇温速度を10〜50℃/時間とし、再結晶温度以上となる600〜700℃の温度範囲で2〜8時間保定するバッチ焼なまし炉による焼鈍(BAF焼鈍)をし、1〜20%の二次冷延を行うことを特徴とする、請求項1に記載の高強度かつエキスパンド成形性に優れた3ピース缶用鋼板の製造方法。
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