明 細 書
ォキシ水酸化鉄の製造方法及びォキシ水酸化鉄吸着材
技術分野
[0001] 本発明は、ォキシ水酸化鉄の製造方法及びォキシ水酸化鉄吸着材に関する。さら に詳しくは、本発明は、工場廃水、排ガス中等のリン成分等の有害物質に対して優 れた吸着能を有するォキシ水酸化鉄複合体を有利に製造する方法、及びその方法 により得られたォキシ水酸ィ匕鉄を主成分とする吸着材に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、科学技術の発展に伴って、多種多様な化学物質が製造、使用されている。
このような化学物質は、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものも数多く存在 している。例えば、水処理の場合、有機もしくは無機のリン、フッ素、ヒ素、モリブデン 、クロム、アンチモン、セレン、ホウ素、テルル、ベリリウム、シアン等が有害物質として 知られている。また、気体処理の場合、排ガス中の硫ィ匕水素、メルカブタン、青酸、フ ッ化水素、塩化水素、 SO、 NO、その他、リン、ヒ素、アンチモン、硫黄、セレン、テ ルル化合物、シァノ化合物等が有害物質として知られて!/ヽる。
[0003] 上記有害物質は、飲料水、水道水、ミネラルウォーター、治療用水、農業用水、ェ 業廃水、及び土壌中、空気中、排ガス中等に溶解、懸濁、乳化、固化もしくは浮遊し た状態で含まれている場合があり、これらの有害物質を分離、除去することが試みら れている。
[0004] 特に、公共用水域としての、湖沼や内湾の閉鎖性水域における富栄養価が大きな 社会問題となっている。その理由は、 BOD (生物化学的酸素要求量)成分としての 有機物を除去しても、窒素、リン等の栄養塩類が未処理のまま湖沼などに流入すると 、藻類の異常発生により水域の有機物濃度が高まるためである。このため湖沼などか ら窒素、リンを除去することが必要とされている。中でも、リンについてはその資源枯 渴化が懸念され、かかる水域や生活排水からの除去、回収を可能とするシステムの 構築が要請されている。
[0005] 従来、工業廃水等力 有害な化学物質を吸着するための鉄系吸着材について、種
々の提案がなされている。例えば、粒度 50 μ m以下の含水酸化鉄を 200〜500°C で加熱し、含水酸化鉄中の結晶水を蒸発させ、細孔を 0. l〜50nm、比表面積 15 〜200m2 Zgの含水酸化鉄 (特許文献 1参照)が提案されている。しカゝしながら、特 許文献 1では、廃燃焼ガス雰囲気下、 200〜500°Cで加熱処理しているため、リン成 分等の有害物質の吸着に必要な鉄系吸着材の吸着サイトの比表面積及び細孔容 量の面積分布 (dVZdR)が減少しており、吸着力が十分でないという問題点があつ た。
[0006] また、鉄イオン溶液にアルカリをカ卩えて pHを 3に調整し、 60°Cで乾燥することによつ て得られた、非晶質の水酸ィヒ鉄系の沈殿生成物からなる陰イオン吸着材 (特許文献 2参照)が知られている。しかしながら、 pH3では 1 X 10— 3molZdm3の 3価の鉄イオン が残存し、水酸化鉄が安定に沈殿できない。しかも、特許文献 2の方法では、得られ る吸着材は、比表面積が小さく吸着力も十分でないという問題点があった。
[0007] また、 BET比表面積 50〜500m2/gの微粒子状ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集物の製造 方法 (特許文献 3参照)も提案されている。しかしながら、特許文献 3のォキシ水酸ィ匕 鉄は、粒子系がナノサイズで小さいため、反応性は優れている力 粒子の飛散や摩 擦による発火等の恐れがあり、取り扱いに不便であり、さらに吸着物質の回収も困難 であるという問題点があった。
[0008] また、ダイォキシン抑制用鉄化合物触媒として、水酸ィ匕ナトリウム水溶液と硝酸第一 鉄水溶液を 47°Cで攪拌混合した後、空気を通気して平均粒径 0. 01〜2. 0 mの ォキシ水酸化鉄粉末を得る方法 (特許文献 4参照)も提案されて 、る。しかしながら、 特許文献 4のォキシ水酸化鉄は、粒子系が μサイズで小さいため、特許文献 3と同 様に取り扱いに不便であり、さらに吸着物質の回収も困難であるという問題点があつ た。
[0009] このため、有害物質の吸着能が十分であり、かつナノサイズで細孔容量の面積分 布 (dVZdR)、細孔半径を制御することができるォキシ水酸ィヒ鉄の製造方法、及び 取り扱!/、の容易な吸着材の開発が望まれて 、た。
特許文献 1 :特開 2003— 154234号公報
特許文献 2:特開 2003 - 334542号公報
特許文献 3:特開 2004— 509752号公報
特許文献 4:特開平 11― 267507号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明は、上記の現状に鑑み、工場廃水、排ガス中等の有害成分、環境ホルモン 等の有害物質に対して優れた吸着能を有する細孔半径を制御したォキシ水酸ィ匕鉄 を有利に製造する方法、及びその方法により得られた吸着材を提供することを目的と する。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の工程を経てォキ シ水酸化鉄を製造することにより、上記目的を達成し得ることを見出した。かかる知見 に基づいて更に検討をカ卩えることにより、本発明を完成するに至った。
[0012] すなわち、本発明は、以下のォキシ水酸化鉄の製造方法及びォキシ水酸化鉄吸 着材 (以下「第 I発明」と表記する)を提供する。
(1) (I a)鉄イオン含有水溶液に塩基を加え、 pH9以下とすることにより、ォキシ水 酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、
(I b)該沈殿物を 100°C以下の温度で乾燥することによってォキシ水酸ィ匕鉄を得る 工程、
(I c)得られたォキシ水酸化鉄を水に接触させる工程、及び
(I— d)得られたォキシ水酸ィ匕鉄を、不活性ガス濃度が 80%以上のガス雰囲気下、 1
00〜280°Cの温度で加熱処理する工程、
を有することを特徴とするォキシ水酸化鉄の製造方法、及び
(2)前記(1)の方法により得られたォキシ水酸化鉄を主成分とするォキシ水酸化鉄 吸着材。
[0013] また、本発明は、以下のォキシ水酸化鉄の製造方法及びォキシ水酸化鉄吸着材( 以下「第 Π発明」と表記する)を提供する。
(3) (Π— a)鉄イオン含有水溶液に塩基を加え、 pH7以下とすることにより、ォキシ水 酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、及び
(II b)該沈殿物を酸素濃度が 20%以下の不活性ガス雰囲気下で、 100°C以下の 温度で加熱することによってォキシ水酸化鉄を得る工程、
を有することを特徴とするォキシ水酸化鉄の製造方法、及び
(4)前記(3)の方法により得られたォキシ水酸化鉄を主成分とするォキシ水酸化鉄 吸着材。
[0014] さらに、本発明は、ォキシ水酸化鉄吸着材に一定の処理を施すことにより、該吸着 材が特定の陰イオン種に対する高い吸着選択性を有することを見出し、さらにこれを 利用して 2種以上の陰イオン種を含む水力ゝら特定の陰イオン種を選択的に吸着及び 脱着して、該陰イオン種に含まれる元素を効率的に回収できることを見出した。かか る知見に基づき、本発明を完成するに至った。
[0015] 即ち、本発明は、以下のォキシ水酸化鉄吸着材の製造方法、及び陰イオン種含有 水から該ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材を用いた陰イオン種の選択的分離回収方法 (以下「 第 III発明」と表記する)を提供する。
(5) (III— a)鉄イオン含有水溶液に塩基を加え、 pH9以下とすることにより、ォキシ水 酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、及び (ΠΙ— b)該沈殿物を 100°C以下の温 度で乾燥することによってォキシ水酸ィ匕鉄を得る工程、を含む製造方法により製造さ れるォキシ水酸化鉄を、塩基の水溶液で処理した後に水で処理して得られるォキシ 水酸化鉄吸着材 (以下「ォキシ水酸化鉄吸着材 と表記する)、
(6)リン酸イオン及び他の陰イオン種を含む水を、該「ォキシ水酸化鉄吸着材八」と接 触させることを特徴とするリン酸イオンの選択的分離回収方法、及び (7)リン酸イオン 及び硝酸イオンを含む水を、「ォキシ水酸化鉄吸着材八」、及び、ォキシ水酸化鉄を 塩基の水溶液で処理した後に塩酸処理して得られるォキシ水酸化鉄吸着材等 (以 下「ォキシ水酸化鉄吸着材 B」と表記する)の順に接触させることを特徴とするリン酸ィ オン及び硝酸イオンの選択的分離回収方法。
[0016] なお、本明細書中、特に断らない限り、「%」は「mol%」を意味する。
[0017] 以下、本発明を詳述する。
[0018] 第 I発明
第 I発明のォキシ水酸化鉄の製造方法は、
(I a)鉄イオン含有水溶液に塩基を加え、 pH9以下とすることにより、ォキシ水酸ィ匕 鉄を含む沈殿物を生成させる工程、
(I b)該沈殿物を 100°C以下の温度で乾燥することによってォキシ水酸ィ匕鉄を得る 工程、
(I c)得られたォキシ水酸化鉄を水に接触させる工程、及び
(I— d)得られたォキシ水酸ィ匕鉄を、不活性ガス濃度が 80%以上のガス雰囲気下、 1
00〜280°Cの温度で加熱処理する工程、
を順次行うが、中でも (I— c)及び (I d)工程が大きな特徴である。
[0019] 本発明方法の (I— a)工程にぉ ヽて、原料溶液である鉄イオン含有水溶液としては 、 3価又は 2価の鉄イオン含有水溶液が挙げられる。 3価の鉄イオン含有水溶液とし ては、塩化第二鉄〔FeCl〕、硫酸第二鉄〔Fe (SO )〕、硝酸第二鉄〔Fe (NO )〕、
3 2 4 3 3 3 蓚酸第二鉄〔Fe (C O )〕等の第二鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。 2価
2 2 4 2
の鉄イオン含有水溶液としては、塩化第一鉄〔FeCl〕、硫酸第一鉄〔FeSO〕、硝酸
2 4 第一鉄〔Fe (NO )〕、酢酸第一鉄〔Fe (CH CO )〕、蓚酸第一鉄〔FeC O〕等の第
3 2 3 2 2 2 4 一鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。これらの中では、反応性等の観点から
、 3価の鉄イオン含有水溶液が好ましぐ特に塩ィ匕第二鉄〔FeCl〕の水溶液が好まし
3
い。
[0020] 塩基は、鉄イオン含有水溶液を中和し、 pHを 9以下に調整して、ォキシ水酸化鉄を 含む沈殿生成物を生成させるために使用する。塩基としては、 NaOH、 KOH、 Na
2
CO、 K CO、 CaO、 Ca (OH)、 CaCO、 NH、 NH OH、 MgO、 MgCO等の無
3 2 3 2 3 3 4 3 機塩基を使用することができる。これらの中では、特に水酸ィ匕ナトリウム (NaOH)が 好ましい。該塩基は、通常水溶液として鉄イオン含有水溶液に加えられる。
[0021] 用いる鉄イオン含有水溶液及び塩基の濃度に特に制限はな 、。塩基の反応制御 の容易さの観点から、鉄イオン含有水溶液の濃度は 0. 01〜5molZLが好ましぐ 0 . 05〜3molZLが更に好ましい。また、塩基の水溶液の濃度は 0. 1〜: LOmolZLが 好ましぐ l〜5molZLが更に好ましい。
[0022] 鉄イオン含有水溶液に塩基の水溶液を加える条件は特に限定はなぐ例えば、室 温で撹拌しながらカ卩えればょ 、。
[0023] (I -a)工程では pHが重要である。 Fe (III)の水酸化物は溶解度積の関係上、 pH3 から生成し始める。一方、 pH3では、ォキシ水酸化鉄の結晶生成の初期段階なので 、 1 X 10—3molZdm3の 3価の鉄イオンが残存するため、ォキシ水酸ィ匕鉄が安定状態 で沈殿物を生成することが困難になる場合がある。従って、陰イオンの吸着サイトを 多量に有するォキシ水酸ィ匕鉄を高純度で安定に生成させる観点から、 pHは 3. 3〜 9、好ましくは 3. 4〜7、更に好ましくは 3. 5〜6、特に好ましくは 3. 5〜5. 5とする。
[0024] (i-a)工程で得られた沈殿物は吸引濾過等により濾別し、 (i-b)工程に供する。
沈殿物の濾別は吸引濾過等により行うことができる力 不純物除去のためデカンテー シヨンを行うことが好まし!/、。
[0025] (I-b)工程においては、高温乾燥による酸ィ匕を抑制するため、その沈殿物を 100 °C以下の温度で乾燥する。温度が 100°Cを超えると乾燥は速いが、酸化の悪影響が でて、ォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積、細孔容量の面積分布 (dVZdR)が減少す るおそれがある。また、温度が低すぎると乾燥に時間が力かりすぎ、実用的でない場 合がある。このため、乾燥温度は、好ましくは 20〜80°C、更に好ましくは 30〜70°C、 特に好ましくは 40〜60°Cである。乾燥は、空気中、真空中、不活性ガス中のいずれ でもよい。乾燥時間は特に制限はなぐ通常 2時間〜 3日間、好ましくは 5時間〜 24 時間である。
[0026] (I-b)工程により得られるォキシ水酸ィ匕鉄は針状体であり、該針状体の幅 (D)は 通常 10〜500nm、好ましくは 50〜200nmであり、該針状体の長さ Z幅の比(LZD
)は、通常 5Zl〜50Zl、好ましくは 5Zl〜20Zlである。
[0027] 得られるォキシ水酸化鉄は針状体であるが、凝集して凝集体粒子を形成している。
ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集体粒子としての平均粒子径は、通常80〜300 111、好ましく は 100〜200 μ mである。
[0028] ここで、平均粒子径とは、レーザー回折 Z散乱式粒度分布計 (例えば、株式会社 堀場製作所、 LA— 920)を用いて、レーザー回折 Z散乱法で測定された体積基準 粒度分布力も算出されるメジアン径を意味する。
[0029] 本発明方法の(I— c)工程においては、比表面積の低下の原因となる NaOHや Na
C1等を除去するため、(I—b)工程で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を水と接触させる。 (I
—c)工程の水処理により、ォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積は、(I— b)工程で得ら れたォキシ水酸化鉄に対して、 1. 2倍以上、好適条件では 2. 5〜3倍増大する。そ の結果、 BET法による比表面積は、好ましくは 70〜250m2/g、更に好ましくは 80 〜210m2/g、特に好ましくは 140〜200m2/gとなる。
[0030] (I c)工程の水処理により比表面積が増大するのは、 3価の鉄イオン含有水溶液 に NaOH等の塩基を添加するので、 FeOOH凝集体中に不純物として NaCl等の水 溶性塩の結晶がナノサイズで生成し、これが水と接触することによって溶解し、該水 溶性塩が溶解した部分が細孔になるためと考えられる。
[0031] (I c)工程においては、水との接触処理の後、必要に応じて乾燥することができる 。乾燥温度は特に制限はないが、 100°C以下が好ましぐ 30〜70°Cが更に好ましい
[0032] (i-d)工程では、得られたォキシ水酸化鉄を、不活性ガス濃度が 80%以上のガス 雰囲気下 (好ましくは、窒素濃度が 80%以上のガス雰囲気下)で 100〜280°Cの温 度で加熱処理する。吸着サイトとなる細孔〔細孔容量の面積分布 (dVZdR)、比表面 積〕が加熱処理により減少するのを防止するため、及び粒子間の焼結を防止するた め、酸化の影響の少ない雰囲気下で加熱することが必要である。そのため、本発明 においては、不活性ガス濃度が 80%以上のガス雰囲気下で加熱処理することにより 、ォキシ水酸ィ匕鉄の結晶水を蒸発させ、吸着の対象となるイオンの半径に応じて、最 適な細孔径となるよう比表面積の制御(増大)と細孔分布の制御を行う。
[0033] (I-d)工程における好ましい雰囲気は、窒素濃度が 80%以上、酸素濃度が 20% 以下のガス雰囲気であり、さらに好ましくは窒素濃度が 90%以上、酸素濃度が 10% 以下のガス雰囲気であり、特に好ましくは窒素濃度が 98%以上、酸素濃度が 2%以 下のガス雰囲気である。
[0034] 加熱温度が低すぎると加熱処理に時間が力かりすぎ、実用的でない場合がある。ま た、温度が 280°Cを超えると加熱処理の時間は短縮できる力 陰イオンの吸着サイト を適切に残すよう制御することが困難となる。このため、加熱処理の温度は、好ましく は 120〜260。C、より好ましくは 130〜230。Cである。
[0035] 加熱処理時間は特に制限はなぐ通常 0. 5時間〜 2日間、好ましくは 1時間〜 24
時間である。
[0036] (I d)工程における処理により、得られるォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積は、(I c)工程で得られたォキシ水酸ィ匕鉄に対して、 1. 2倍以上、好適条件では 1. 5〜1 . 8倍増大する。その結果、 BET法による比表面積は、好ましくは 100〜450m2/g、 更に好ましくは 120〜380m2Zg、特に好ましくは 200〜360m2Zgとなり、前記有害 物質の分離'除去効果も増大する。
[0037] また、 BJH法(Barrett— Joyner—Halenda法)による細孔容量の面積分布 (dV/ dR) (dVは細孔容積を表し、 dRは細孔半径を表す。)は、好ましくは 100〜 300mm3 /g/nm、更に好ましくは 110〜280mm3/g/nm、特に好ましくは 120〜250mm 3ZgZnmの範囲で制御することができる。
[0038] さらに、加熱処理時間を調整することによって細孔半径の分布幅を 7nm以下、好ま しくは 0. 5〜4. 5nm、更に好ましくは 0. 8〜3. 9nmにすること力 Sでき、均一な糸田孑し 半径を持つォキシ水酸ィ匕鉄が製造できる。
[0039] 本発明方法においては、(I a)〜(1 d)の各工程の条件を適宜調整することによ り、 BET比表面積、細孔容積 (dVZdR)、細孔径、粒子径の異なるォキシ水酸ィ匕鉄 を製造することができる。
[0040] ォキシ水酸化鉄には、 α— FeOOH (ゲータイト)、 β FeOOH (ァカゲナイト)及 び γ—FeOOH (レビドク口サイト)の 3種類がある力 本発明方法によるォキシ水酸 化鉄は、結晶性の低い j8— FeOOHの微粒子と考えられ、これが大きな凝集体とな つており、光沢のある黒色粒子の形態となっている。その凝集体は無数の細孔を保 有する。凝集体粒子としての平均粒子径は、 80〜300 /ζ πι、好ましくは 100〜200 μ mであ 。
[0041] 本発明方法で得られたォキシ水酸化鉄は、比表面積が 100〜450m2/gと大きぐ 例えば、リン酸イオン等の陰イオン種の吸着'補足に適した 100〜300mm3ZgZnm の細孔容量の面積分布 (dVZdR)をもつ吸着サイトを多量に有する。し力も、細孔半 径のピークを 0. 8〜3nmの範囲で任意に制御することができるため、捕捉、吸着しよ うとする元素のイオン半径に応じて、最適の細孔半径とすることにより、種々のサイズ の有害物質を選択的かつ効果的に除去することができる。また、細孔半径の分布幅
を 7nm以下に制御することができる。これによりゼォライト等の分子ふる!/、と同様の機 能を付与することができる。
[0042] 本発明のォキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材は、単独で用いてもよぐまた他の 複合金属水酸ィ匕物を混合して用いてもよい。形状としては、粉末のまま用いることも 可能であるが、浄化施設の処理槽内に充填使用することを考慮して造粒体及び濾剤 とするのが好ましい。造粒する場合は、本発明のォキシ水酸化鉄に対して、公知のバ インダーを 1〜40重量%程度配合し、必要量の水を添加して、ニーダ一等で混練し た後、造粒機にて造粒体とすることができる。 本発明のォキシ水酸化鉄を主成分と する吸着材を用いて、水中のリン成分、環境ホルモン等の有害物質を除去する場合 、この吸着材を充填塔 (槽)に充填し、通水する方法で行うことができる。この場合、ォ キシ水酸ィ匕鉄粒子の BET比表面積、細孔容積等は、吸着除去しょうとする有害物質 の捕捉に適した値のものを使用する。
[0043] 本発明の吸着材は、再使用が容易であるため実用性が高ぐ吸着した陰イオン種 を溶離させることにより、陰イオン種を効率的に回収することができるという特徴を有し ている。具体的には、リン酸イオン、硝酸イオン及びノヽロゲンィ匕物イオン力もなる群よ り選ばれる少なくとも 1種の陰イオン種を含有する水を、本発明のォキシ水酸化鉄吸 着材に接触させて該陰イオン種を吸着させた後、該陰イオン種を脱着 (溶離)させる ことにより、該陰イオン種を効率的に回収することができる。なお、脱着 (溶離)は、 0. l〜5molZL程度の NaOH水溶液をォキシ水酸ィ匕鉄と接触することにより行える。
[0044] 第 Π発明
第 II発明のォキシ水酸化鉄の製造方法は、
(II a)鉄イオン含有水溶液に塩基を加え、 pH7以下とすることにより、ォキシ水酸 化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、及び
(II b)該沈殿物を酸素濃度が 20%以下の不活性ガス雰囲気下で、 100°C以下の 温度で加熱することによりォキシ水酸化鉄を得る工程、
を順次行うが、特に (Π— b)工程が大きな特徴である。
[0045] 本発明方法の (II— a)工程にぉ ヽて、原料溶液である鉄イオン含有水溶液としては 、 3価又は 2価の鉄イオン含有水溶液が挙げられる。 3価の鉄イオン含有水溶液とし
ては、塩化第二鉄〔FeCl〕、硫酸第二鉄〔Fe (SO )〕、硝酸第二鉄〔Fe (NO )〕、
3 2 4 3 3 3 蓚酸第二鉄〔Fe (C O )〕等の第二鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。 2価
2 2 4 2
の鉄イオン含有水溶液としては、塩化第一鉄〔FeCl〕、硫酸第一鉄〔FeSO〕、硝酸
2 4 第一鉄〔Fe (NO )〕、酢酸第一鉄〔Fe (CH CO )〕、蓚酸第一鉄〔FeC O〕等の第
3 2 3 2 2 2 4 一鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。これらの中では、反応性等の観点から
、 3価の鉄イオン含有水溶液が好ましぐ特に塩ィ匕第二鉄〔FeCl〕の水溶液が好まし
3
い。
[0046] 塩基は、鉄イオン含有水溶液を中和し、 pHを 7以下に調整して、ォキシ水酸化鉄を 含む沈殿生成物を生成させるために使用する。塩基としては、 NaOH、 KOH、 Na
2
CO、 K CO、 CaO、 Ca (OH)、 CaCO、 NH、 NH OH、 MgO、 MgCO等の無
3 2 3 2 3 3 4 3 機塩基を使用することができる。これらの中では、特に水酸ィ匕ナトリウム (NaOH)が 好ましい。該塩基は、通常水溶液として鉄イオン含有水溶液に加えられる。
[0047] 用いる鉄イオン含有水溶液及び塩基の濃度に特に制限はな 、。塩基の反応制御 の容易さの観点から、鉄イオン含有水溶液の濃度は 0. 01〜5molZLが好ましぐ 0 . 05〜3molZLが更に好ましい。また、塩基の水溶液の濃度は 0. 1〜: LOmolZLが 好ましぐ l〜5molZLが更に好ましい。 鉄イオン含有水溶液に塩基 (又は塩基の 水溶液)を加える条件は特に限定はなぐ室温で撹拌しながら加えればよい。
[0048] (II -a)工程では pHが重要である。 Fe (III)の水酸化物は溶解度積の関係上、 pH 3から生成し始める。一方、 pH3では、ォキシ水酸化鉄の結晶生成の初期段階なの で、 1 X 10—3molZdm3の 3価の鉄イオンが残存するため、ォキシ水酸化鉄が安定状 態で沈殿物を生成することが困難になる場合がある。従って、陰イオンの吸着サイト を多量に有するォキシ水酸ィ匕鉄を高純度で安定に生成させる観点から、 pHは好ま しくは 3. 3〜7、更に好ましくは 3. 9〜6とする。
[0049] (II -a)工程の処理における雰囲気に特に制限はないが、 Fe O化を防ぐため不
2 3
活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気としては、窒素、二酸化炭素、へリウ ム、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン等を含有する雰囲気が例示される。
[0050] (II -a)工程で得られた沈殿物は濾別し、(II b)工程に供する。沈殿物の濾別は 吸引濾過等により行うことができる力 不純物除去のためデカンテーシヨンを行うこと
が好ましい。
[0051] (II b)工程においては、高温加熱による酸化を抑制するため、その沈殿物を酸素 濃度が 20%以下の不活性ガス雰囲気下で、 100°C以下の温度で加熱処理する。該 ガス雰囲気下で加熱処理すると、比較的低温で細孔制御が可能となり、ォキシ水酸 化鉄の凝集体を大きくできる。
[0052] 酸素濃度が 20%以下の不活性ガス雰囲気とは、不活性ガス中に酸素濃度が 0〜2 0%の範囲で含まれるガス雰囲気を意味する。不活性ガス濃度は、好ましくは不活性 ガスを 90%以上、より好ましくは 95%以上、特に好ましくは 98%以上である。不活性 ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素、ヘリウム等力 選ばれる少なくとも 1種が 挙げられ、特に二酸ィ匕炭素が好ましい。酸素濃度が 20%以下の不活性ガス雰囲気 中、二酸化炭素を 50%以上、さらに 90%以上、特に 95%以上含有していることが好 ましい。なお、酸素濃度はできるだけ小さいことが好ましぐ通常 20%以下、好ましく は 10%以下、より好ましくは 5%以下である。酸素濃度が大きすぎると、 Fe Oの生成
2 3 により、比表面積および吸着性能が低下してしまうからである。
[0053] 例えば、(Π— b)工程を二酸ィ匕炭素雰囲気下で行うと、空気中で行った場合に比べ 、ォキシ水酸化鉄の凝集体粒子の中心粒子径が、 4倍程度大きくできる。その結果、 比表面積が増大し、粒子径を大きくしても吸着効果が低下せず、むしろ吸着能が増 大する。さらに、粒子径が大きいと、カラム吸着の際に圧力損失を減少することができ 、また、必要に応じて行う粉砕処理等により、より最適な粒度に調整することが可能と なる。
[0054] 加熱温度が 100°Cを超えると熱分解の悪影響がでて、ォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表 面積、細孔容量の面積分布 (dVZdR)が減少するおそれがある。また、温度が低す ぎると凝集体生成に時間が力かりすぎ、実用的でない場合がある。このため、加熱温 度は、好ましくは 30〜100°C、更に好ましくは 40〜80°Cである。加熱時間は特に制 限はなぐ通常 2時間〜 3日間、好ましくは 5時間〜 24時間である。
[0055] (II -b)工程により得られるォキシ水酸ィ匕鉄は針状体であり、該針状体の幅 (D)は 通常 10〜500nm、好ましくは 50〜200nmであり、該針状体の長さ Z幅の比(LZD )は、通常 5Zl〜50Zl、好ましくは 5Zl〜20Zlである。
[0056] ここで得られるォキシ水酸ィ匕鉄は針状体であるが、凝集して凝集体粒子を形成して いる。ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集体粒子としての中心粒子径は、通常 0. 1〜5. Omm, 好ましくは 0. 15〜3. Ommである。
[0057] ここで、ォキシ水酸化鉄の凝集体粒子の「中心粒子径」とは、ロータップ氏標準篩 振とう機を用いて、乾式篩法で測定した中心粒子径 (D50 :累積 50%の値)を意味す る。
[0058] 本発明方法においては、(Π— b)工程の後に、更に
(II c)得られたォキシ水酸ィ匕鉄を水と接触させる工程、及び
(II d)前記 (Π c)工程で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を酸素濃度が 20%以下の不活 性ガス雰囲気下、 100〜250°Cの温度で加熱処理する工程、を行うことが好ましい。
[0059] (Π— c)工程において、(Π—b)工程で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を水と接触させるこ とにより、比表面積の低下の原因となる NaOHや NaCl等の不純物を除去することが できる。(Π— c)工程の水処理により、ォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積は、(Π— b) 工程で得られた水酸ィ匕鉄に対して、 1. 2倍以上、好適条件では 2. 5〜3倍増大する 。その結果、 BET法による比表面積は、好ましくは 70〜300m2/g、更に好ましくは 80〜290m2/g、特に好ましくは 140〜280m2/gとなる。
[0060] (Π— c)工程の水処理により比表面積が増大するのは、(Π— a)工程で 3価又は 2価 の鉄イオン含有水溶液に NaOH等の塩基を添加するので、 FeOOH凝集体中に不 純物として NaCl等の水溶性塩の結晶がナノサイズで生成し細孔に入り込んでいると 考えられ、これが水と接触することによって溶解し、該水溶性塩が溶解した部分が細 孔になるためと考えられる。
[0061] (II -c)工程においては、水との接触処理の後、必要に応じて乾燥することができ る。乾燥温度は特に制限はないが、 100°C以下が好ましぐ 30〜70°Cが更に好まし い。また、乾燥雰囲気は特に制限はないが、 Fe O化を防ぐため酸素濃度が 20%以
2 3
下の不活性ガス雰囲気下が好ましぐ二酸ィ匕炭素雰囲気下が更に好ましい。
[0062] (II d)工程では、得られたォキシ水酸化鉄を、酸素濃度が 20%以下の不活性ガ ス雰囲気下で 100〜250°Cの温度で加熱処理する。また、吸着サイトとなる細孔〔細 孔容量の面積分布 (dV/dR)、比表面積〕が加熱処理により減少するのを防止する
ため、及び粒子間の焼結を防止するため、酸素の影響の少ない雰囲気下で加熱す ることが必要である。そのため、本発明においては、酸素濃度が 20%以下の不活性 ガス雰囲気下で加熱処理することにより、ォキシ水酸化鉄の結晶水を蒸発させ、吸着 の対象となるイオンの半径に応じて、最適な細孔径となるよう比表面積の制御 (増大) と細孔分布の制御を行うことができる。
[0063] (Π— d)工程における好ましい雰囲気は、窒素濃度が 80%以上及び酸素濃度が 2 0%以下のガス雰囲気であり、さらに好ましくは窒素濃度が 90%以上、酸素濃度が 1 0%以下のガス雰囲気であり、特に好ましくは窒素濃度が 98%以上、酸素濃度が 2 %以下のガス雰囲気である。
[0064] 加熱温度が低すぎると加熱処理に時間が力かりすぎ、実用的でない場合がある。ま た、温度が 280°Cを超えると加熱処理の時間は短縮できる力 陰イオンの吸着サイト を適切に残すよう制御することが困難となる。このため、加熱処理の温度は、好ましく は 110〜200。C、ょり好ましくは120〜180。。でぁる。
[0065] 加熱処理時間は特に制限はなぐ通常 0. 5時間〜 2日間、好ましくは 1時間〜 24 時間である。
[0066] (Π— d)工程における処理により、得られるォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積は、(II c)工程で得られた水酸ィ匕鉄に対して、 1. 2倍以上、好適条件では 1. 5〜1. 8倍 増大する。その結果、 BET法による比表面積は、好ましくは 100〜450m2/g、更に 好ましくは 120〜350m2Zg、特に好ましくは 200〜300m2Zgとなり、前記有害物質 の分離'除去効果も増大する。
[0067] また、 BJH法(Barrett— Joyner—Halenda法)による細孔容量の面積分布 (dV/ dR) (dVは細孔容積を表し、 dRは細孔半径を表す。)は、好ましくは 100〜 300mm3 /g/nm、更【こ好ましく ίま 110〜280mm3/g/nm、特【こ好ましく ίま 120〜250m m3ZgZnmの範囲で制御することができる。
[0068] さらに、加熱処理時間を調整することによって、ォキシ水酸化鉄の細孔半径の分布 幅を 7nm以下、好ましくは 0. 5〜4. 5nm、更に好ましくは 0. 8〜3. 9nmにすること ができ、均一な細孔半径を持つォキシ水酸化鉄が製造できる。
[0069] 本発明方法においては、(Π a)〜(Π— d)の各工程の条件を適宜調整することに
より、 BET比表面積、細孔容積 (dVZdR)、細孔径、粒子径の異なるォキシ水酸ィ匕 鉄を製造することができる。
[0070] ォキシ水酸化鉄には、 α— FeOOH (ゲータイト)、 β FeOOH (ァカゲナイト)及 び γ—FeOOH (レビドク口サイト)の 3種類がある力 本発明方法によるォキシ水酸 化鉄は、結晶性の低い j8— FeOOHの微粒子と考えられ、これが大きな凝集体とな つており、光沢のある黒色粒子の形態となっている。その凝集体は無数の細孔を保 有する。凝集体粒子としての中心粒子径は、通常 0. 3〜4. Omm、好ましくは 0. 5〜 2. Ommである。
[0071] 本発明方法で得られたォキシ水酸化鉄は、 BET比表面積が 100〜450m2/gと大 きぐ例えば、リン酸イオン等の陰イオン種の吸着'補足に適した 100〜300mm3/g Znmの細孔容量の面積分布 (dV/dR)をもつ吸着サイトを多量に有する。しカゝも、 細孔半径のピークを 0. 8〜3nmの範囲で任意に制御することができるため、捕捉、 吸着しょうとする元素のイオン半径に応じて、最適の細孔半径とすることにより、種々 のサイズの有害物質を選択的かつ効果的に除去することができる。また、細孔半径 の分布幅を 7nm以下に制御することができる。これによりゼォライト等の分子ふるいと 同様の機能を付与することができる。
[0072] 本発明のォキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材は、単独で用いてもよぐまた他の 複合金属水酸ィ匕物を混合して用いてもよい。形状としては、粉末のまま用いることも 可能であるが、浄化施設の処理槽内に充填使用することを考慮して造粒体及び濾剤 とするのが好ましい。造粒する場合は、本発明のォキシ水酸化鉄に対して、公知のバ インダーを 1〜40重量%程度配合し、必要量の水を添加して、ニーダ一等で混練し た後、造粒機にて造粒体とすることができる。
[0073] 本発明のォキシ水酸ィ匕鉄を主成分とする吸着材を用いて、水中のリン成分、環境 ホルモン等の有害物質を除去する場合、ォキシ水酸化鉄粒子の BET比表面積、細 孔容積等は、吸着除去しょうとする有害物質の捕捉に適した値のものを使用する。
[0074] 本発明の吸着材は、低温での細孔制御が可能な、省エネタイプの吸着材である。
また、再使用が容易であるため実用性が高ぐ吸着した陰イオン種を溶離させること により、陰イオン種を効率的に回収することができる。具体的には、リン酸イオン、硝
酸イオン及びハロゲンィ匕物イオン力もなる群より選ばれる少なくとも 1種の陰イオン種 を含有する水を、本発明のォキシ水酸化鉄吸着材に接触させて該陰イオン種を吸着 させた後、該陰イオン種を脱着 (溶離)させることにより、該陰イオン種を効率的に回 収することができる。なお、脱着 (溶離)は、 0. l〜5molZL程度の NaOH水溶液を ォキシ水酸化鉄と接触することにより行える。
[0075] 第 ΙΠ発明
ォキシ 7k酸化 材 A
第 III発明の「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」は、ォキシ水酸化鉄を塩基の水溶液で処 理した後に水で処理して調製される。 「ォキシ水酸化鉄吸着材八」の調製に用いら れる原料のォキシ水酸化鉄は、典型的には、
(III— a)鉄イオン含有水溶液に塩基をカ卩え、 pH9以下とすることにより、ォキシ水酸 化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、及び
(III— b)該沈殿物を 100°C以下の温度で乾燥することによってォキシ水酸ィ匕鉄を得 る工程、
を含む製造方法により製造できる。
[0076] (III -a)工程において、原料溶液である鉄イオン含有水溶液としては、 3価又は 2 価の鉄イオン含有水溶液が挙げられる。 3価の鉄イオン含有水溶液としては、塩化第 二鉄〔FeCl〕、硫酸第二鉄〔Fe (SO )〕、硝酸第二鉄〔Fe (NO )〕、蓚酸第二鉄〔F
3 2 4 3 3 3
e (C O )〕等の第二鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。 2価の鉄イオン含有
2 2 4 2
水溶液としては、塩化第一鉄〔FeCl〕、硫酸第一鉄〔FeSO〕、硝酸第一鉄〔Fe (NO
2 4
)〕、酢酸第一鉄〔Fe (CH CO )〕、蓚酸第一鉄〔FeC O〕等の第一鉄化合物を含
3 2 3 2 2 2 4
有する水溶液が挙げられる。これらの中では、反応性等の観点から、 3価の鉄イオン 含有水溶液が好ましぐ特に塩ィ匕第二鉄〔FeCl〕の水溶液が好ましい。 塩基は、鉄
3
イオン含有水溶液を中和し、 pHを 9以下に調整して、ォキシ水酸ィ匕鉄を含む沈殿生 成物を生成させるために使用する。塩基としては、 NaOH、 KOH、 Na CO、 K CO
2 3 2 3
、 CaO、 Ca (OH) 、 CaCO、 NH、 NH OH、 MgO、 MgCO等の無機塩基を使用
2 3 3 4 3
することができる。これらの中では、特に水酸ィ匕ナトリウム(NaOH)が好ましい。該塩 基は、通常水溶液として鉄イオン含有水溶液に加えられる。
[0077] 用いる鉄イオン含有水溶液及び塩基の濃度に特に制限はな 、。塩基の反応制御 の容易さの観点から、鉄イオン含有水溶液の濃度は 0. 01〜5molZLが好ましぐ 0 . 05〜3molZLが更に好ましい。また、塩基の水溶液の濃度は 0. 1〜: LOmolZLが 好ましぐ l〜5molZLが更に好ましい。
[0078] 鉄イオン含有水溶液に塩基 (又は塩基の水溶液)を加える条件は特に限定はなぐ 例えば、室温で撹拌しながらカ卩えればょ 、。
[0079] (ΙΠ— a)工程では pH9以下とし、好ましくは 3. 3〜9である。(III— a)工程で得られ た沈殿物は吸引濾過等により濾別し、(III b)工程に供する。沈殿物の濾別は吸引 濾過等により行うことができる力 不純物除去のためデカンテーシヨンを行うことが好 ましい。
[0080] (III -b)工程においては、高温乾燥による酸ィ匕を抑制するため、その沈殿物を 10 0°C以下の温度で乾燥すればよい。乾燥温度は、好ましくは 20〜80°Cである。乾燥 は、空気中、真空中、不活性ガス中のいずれでもよい。乾燥時間は特に制限はなぐ 通常 2時間〜 4日間程度である。 (Ill-b)工程により針状体のォキシ水酸ィ匕鉄を得る 。得られるォキシ水酸化鉄は針状体であるが、凝集して凝集体粒子を形成している。 ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集体粒子としての平均粒子径は、通常 0. 08〜5mm、好ましく は 0. 01〜2mmである。
[0081] 原料となるォキシ水酸化鉄は、通常上記のようにして製造されたものでよいが、好ま しくは「第 I発明」又は「第 Π発明」に記載された製造方法により得られるォキシ水酸ィ匕 鉄が推奨される。
[0082] 得られたォキシ水酸化鉄は、塩基の水溶液に接触させて処理される。塩基の水溶 液としては、 NaOHゝ KOH、 Na CO、 K CO、 CaO、 Ca (OH) 、 CaCO、 NH、 N
2 3 2 3 2 3 3
H OH、 MgO、 MgCO等の無機塩基の水溶液が挙げられる。好ましくは、 NaOHの
4 3
水溶液である。塩基の水溶液の濃度は、例えば、 0. l〜5molZL程度であればよい 。処理温度は 10〜50°C程度であり、処理時間は 0. 1〜2時間程度であればよい。
[0083] 塩基処理されたォキシ水酸化鉄は、続ヽて水と接触させて、ォキシ水酸化鉄の吸 着サイトから脱陰イオン処理される。使用する水は特に限定はなぐ水道水等を用い ることができるが、陰イオン種を含まな ヽ脱イオン水(純水)を用いることが好ま 、。
[0084] 上記の塩基及び水の処理は、例えば、ノ ツチ式の場合、常温でォキシ水酸化鉄が 浸る程度に塩基の水溶液に浸漬するなどして処理し、次 、で水で処理しても良 、し 、或いは、流通式の場合、ォキシ水酸ィ匕鉄をカラム等に充填して常温で塩基の水溶 液を流通し、次いで排出される水の pHが 6〜9になる程度にまで水を流通して処理し ても良い。
[0085] 力べして得られる「ォキシ水酸化鉄吸着材八」は、リン酸イオンに対して高 、吸着選 択性を有している。つまり、リン酸イオン及び他の陰イオン種を含む水 (被処理水)を 、該「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」と接触させた場合、選択的にリン酸イオンを吸着する ことができる。リン酸イオンの選択的吸着の挙動については、試験例 ΠΙ— 1 (1)及び 図 6を参照すれば容易に理解できる。 続、て「ォキシ水酸化鉄吸着材八」に吸着し たリン酸イオンを脱着させることにより、リン酸イオンを選択的に分離回収できる。脱着 は、 0. l〜5molZL程度の NaOH水溶液をォキシ水酸ィ匕鉄と接触することにより行 える。
[0086] 具体的には、「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」を充填した吸着塔に、リン酸イオンを含む 水を流通させて、リン酸イオンを吸着させることができる。被処理水であるリン酸イオン を含む水中のリン酸イオンの濃度は特に限定はなぐ例えば、 0. l〜5mmolZL程 度の範囲であればよい。リン酸イオンを含む水の温度は、吸着性能及び選択性の点 力も 10〜30°C程度、 pHは 3〜9程度であることが好ましい。続いて、リン酸イオンの 脱着は、吸着塔に 0. l〜5molZL程度の NaOH水溶液を流通させて行える。この 操作を繰り返すことにより、リン酸イオン及び他の陰イオン種を含む水からリン酸ィォ ンを効率的に分離回収することができる。
[0087] さらに、上記の「ォキシ水酸化鉄吸着材八」に加えて、後述の「ォキシ水酸化鉄吸着 材 」とを組み合わせて、リン酸イオン及び硝酸イオンの混合陰イオン種を含む水か ら、リン酸イオンと硝酸イオンをそれぞれ選択的に分離回収することもできる。
[0088] ォキシ水酸化鉄吸着材 B
「ォキシ水酸化鉄吸着材 は、ォキシ水酸化鉄を塩基の水溶液で処理した後に塩 酸処理して得られる。
[0089] 原料のォキシ水酸化鉄の調製、及び該ォキシ水酸化鉄を塩基の水溶液で処理す
る操作は、上記の「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」と同様に行うことができる。塩基処理さ れたォキシ水酸化鉄は、続いて塩酸と接触させて処理される。塩酸の濃度は、 0. 00 01〜10molZL程度、好ましくは 0. 0001〜0. OlmolZL程度であればよい。処理 温度は 10〜50°C程度で、処理時間は 0. 1〜2時間程度であればよい。
[0090] 上記の塩基及び塩酸の処理は、例えば、ノ ツチ式の場合、常温でォキシ水酸化鉄 が浸る程度に塩基の水溶液に浸漬するなどして処理し、次 、で塩酸で処理しても良 いし、或いは、流通式の場合、ォキシ水酸ィ匕鉄をカラム等に充填して常温で塩基の 水溶液を流通し、次 、で塩酸を流通して処理しても良 ヽ。
[0091] 力べして得られる「ォキシ水酸化鉄吸着材 は、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸ィ オン、フッ化物イオン等の陰イオン種に対して高い吸着性を有している。これら陰ィォ ン種の吸着の挙動にっ 、ては、試験例 ΠΙ— 2及び図 8〜9を参照すれば容易に理解 できる。
[0092] ォキシ 7k酸化鉄吸羞材 A及び Bの構诰
ォキシ水酸ィ匕鉄の正確な構造は明らかではないが、結晶性の低い j8— FeOOHの 構造をしていると考えられる(図 11を参照)。そして、ォキシ水酸ィ匕鉄の吸着サイトに は、結晶性の低い空孔 (空孔サイズは約 5.56〜7.2lA)と、結晶性の高い空孔 (空孔 サイズは約 3.4〜3.7 A)の 2種類が存在して 、ると考えられる。
[0093] 結晶性の低 、空孔では、イオン半径の大き!/、リン酸イオンが吸着すると考えられる
[0094] また、結晶性の高い空孔は、いわゆる「トンネルサイト」と呼ばれる部分であり、図 11 の結晶性の高い部分 (空孔)に相当し、塩ィ匕物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン等 が吸着すると考えられる。この「トンネルサイト」では、陰イオン種同士がイオン交換を 伴って吸着が起きると考えられる。
[0095] ここで、「ォキシ水酸化鉄吸着材八」では、製造工程にて水処理されて 、るため、結 晶性の低 ヽ空孔及び結晶性の高 ヽ空孔(トンネルサイト)の 、ずれの吸着サイトにも 、陰イオン種がほとんど存在していないと考えられる。吸着の挙動は、次のように推測 される。イオン径が約 4.76 Aのリン酸イオンは、結晶性の低いルーズな空孔に入れる ため吸着されるが、リン酸イオンは結晶性の高い空孔(トンネルサイト)には入れない
ため吸着されない。また、結晶性の高い空孔内には塩ィ匕物イオンが存在しない。そ のため、イオン径が 3.7 A程度以下の陰イオン種 (硝酸イオン、フッ化物イオン、硫酸 イオン等)は、結晶性の高い空孔でイオン交換はできず吸着されに《なる。
[0096] 一方、「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 」では、製造工程にて塩酸処理されているため、 塩化物イオン (CDのイオン半径に近 、結晶性の高 、空孔(トンネルサイト)には塩 化物イオンが存在しており、結晶性の低 ヽ空孔には塩ィ匕物イオンが存在して 、な ヽ と考えられる。吸着の挙動は、次のように推測される。イオン径が約 4.76 Aのリン酸ィ オンは、結晶性の低いルーズな空孔に入れるため吸着されるが、リン酸イオンは結晶 性の高い空孔(トンネルサイト)には入れないため吸着されない。イオン径が 3.7 A程 度以下の陰イオン種 (硝酸イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン等)は、結晶性の高い 空孔内に存在する塩ィ匕物イオンとイオン交換して空孔内に吸着される。
[0097] ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bのトンネルサイトの模式図を、図 13に示す。図 13におい て、連続した塩ィ匕物イオンを内包する空孔が「トンネルサイト」となる。
[0098] ォキシ 7k酸化鉄吸羞材 A及び B 用いたリン酸イオン及び砲酴イオンの分離冋収
上記のォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 A及び Bを用いて、リン酸イオン及び硝酸イオンを含 む水 (被処理水)から、効率的かつ選択的にリン酸イオン及び硝酸イオンを分離回収 することができる。
[0099] 具体的には、リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水を、ォキシ水酸化鉄吸着材 A及 びォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bの順に接触させることにより、リン酸イオンを選択的にォ キシ水酸化鉄吸着材 Aで吸着し、硝酸イオンを選択的にォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bで 吸着して、リン酸イオン及び硝酸イオンをそれぞれ選択的に分離回収することができ る。
[0100] より具体的には、リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水を、ォキシ水酸化鉄吸着材 Aを充填した吸着塔、及び、ォキシ水酸化鉄吸着材 Bを充填した吸着塔に、この順で 通水する。吸着材 Aを充填した吸着塔では、硝酸イオンは吸着されずに通過するがリ ン酸イオンは選択的にほぼ 100%吸着される。通過した硝酸イオンを含む水は、吸 着材 Bを充填した吸着塔に導入され、硝酸イオンがォキシ水酸化鉄吸着材 Bの空孔 に存在する C1—とイオン交換して、ほぼ 100%吸着される。
[0101] 上記処理後、リン酸イオンを吸着した吸着塔は、 0. l〜5molZL程度の水酸化ナ トリウム水溶液で吸着成分 (リン酸イオン)を脱着回収でき、更に水洗することにより吸 着材 Aを再生できる。
[0102] 硝酸イオンを吸着した吸着塔も、 0. l〜5molZL程度の水酸ィ匕ナトリウム水溶液で 吸着成分 (硝酸イオン)を脱着回収でき、更に 0. 0001〜: LOmolZL程度の塩酸で 処理することにより吸着材 Bを再生できる。
[0103] なお、被処理水の量が多 、場合には、上記の吸着材 Aを充填した吸着塔は並列的 に 2個以上を設けても良い。同様に、上記の吸着材 Bを充填した吸着塔も並列的に 2 個以上を設けても良い。
[0104] 一般に、ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Aにおけるリン酸イオンの吸着量に対し、ォキシ水 酸ィ匕鉄吸着材 Bの硝酸イオンの吸着量が比較的小さいため、例えば、図 12に示すよ うに、ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bを充填した吸着塔を 2個以上設けることが好ま 、。
[0105] 図 12の装置は、陰イオン種の回収装置、より具体的にはリン酸イオン及び硝酸ィォ ンを含む水 (被処理水)をリン酸イオンと硝酸イオンとに選択的に分離回収できる装 置である。該装置は、ォキシ水酸化鉄吸着材 Aが充填された吸着塔 I、及び、ォキシ 水酸ィ匕鉄吸着材 Bが充填された 2個の吸着塔 II及び ΠΙを備えている。該吸着塔 Iに は被処理水の入口及び通過水の出口を有し、該吸着塔 Iは該出口からの通過水を 吸着塔 II及び吸着塔 IIIに導く配管で吸着塔 II及び ΠΙにつながれて 、る。該吸着塔 II 及び吸着塔 ΠΙには、通過水が排出される出口を有している。また、該配管には、該 吸着塔 Iからの通過水を該吸着塔 II又は IIIへ切り替え可能なバルブ (弁)を有して 、 る(図示せず)。
[0106] 上記の装置を用いた具体的な処理操作を次に示す。例えば、リン酸イオン及び硝 酸イオンを含む水 (被処理水)を、まず吸着塔 Iに通してリン酸イオンを吸着処理した 後、その通過水を吸着塔 Πに通して硝酸イオンを吸着処理する。一定時間後に、バ ルブを吸着塔 Π側から吸着塔 in側に切り替えて、通過水を吸着塔 mに導入して硝酸 イオンを吸着処理する。このとき、硝酸イオンが吸着された吸着塔 IIでは硝酸イオン の脱着処理を行う。脱着処理は、吸着塔 IIの通過水の出口側から 0. l〜5molZL 程度の水酸ィ匕ナトリウム水溶液を導入して、吸着成分 (硝酸イオン)を脱着回収する。
そして、さらに 0. 0001〜10molZL程度の塩酸を導入して、吸着材 Bを再生する。
[0107] 更に一定時間後に、バルブを吸着塔 III側から吸着塔 II側に切り替えて、通過水を 吸着塔 IIに導入して硝酸イオンを吸着処理する。このとき、硝酸イオンが吸着された 吸着塔 IIIでは硝酸イオンの脱着処理を行う。脱着処理は上記吸着塔 IIの場合と同じ である。
[0108] 吸着塔 Iからのリン酸イオンの脱着は、吸着塔 Iでの処理を停止して、吸着塔 Iの通 過水の出口側から 0. l〜5molZL程度の水酸ィ匕ナトリウム水溶液を導入して、吸着 成分 (リン酸イオン)を脱着回収する。
[0109] この様な操作を繰り返すことにより、リン酸イオン及び硝酸イオンを効率的に分離回 収することが可能となる。
[0110] なお、上記の図 12の装置及びそれを用いた操作は例示であり、ォキシ水酸化鉄吸 着材 Aが充填された吸着塔は、吸着塔 Iを 1個だけでなく並列的に複数本設けること もでき、また、ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bが充填された吸着塔は、吸着塔 II及び ΠΙの 2 個に限定されず 3個以上設けても良い。これにより被処理水の通液を停止することな くリン酸イオン及び硝酸イオンの吸着処理が可能となる。
[0111] より具体的な処理操作を実施例 III— 3及び図 14〜17に示す。 なお、第 III発明に おいては、「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 に代えて、前述の「第 I発明」又は「第 II発明」 に記載された製造方法により得られるォキシ水酸ィ匕鉄そのものを用いても同様の効 果が奏される。
発明の効果
[0112] 第 I発明の製造方法によれば、リン成分、環境ホルモン等の有害物質に対して優れ た吸着能を有するォキシ水酸ィ匕鉄を効率的に製造することができる。
[0113] 第 I発明方法により得られたォキシ水酸ィ匕鉄は、比表面積が 100〜450m2Zg、細 孔容量の面積分布(dVZdR)が 100〜300mm3ZgZnmと大きいため、リン酸ィォ ン等の陰イオン種をはじめとする有害物質に対して優れた吸着力を発揮する。
[0114] さらに、細孔半径のピークを 0. 8〜3nm、細孔半径の分布幅を 7nm以下の範囲で 任意に制御することができるため、吸着しょうとするイオン半径に応じた細孔半径とす ることにより、目的とするイオンを選択的に吸着することができ、また分子ふるいの効
果が期待できる。
[0115] 第 I発明の吸着材は、再使用が容易であるため実用性が高ぐ吸着した陰イオン種 を溶離させることにより、陰イオン種に含まれる元素を効率的に回収することができる
[0116] 第 II発明の製造方法によれば、リン成分、環境ホルモン等の有害物質に対して優 れた吸着能を有するォキシ水酸ィ匕鉄を効率的に製造することができる。
[0117] 第 II発明方法により得られたォキシ水酸ィ匕鉄は、その凝集体粒子の中心粒子径が 0. 3〜4. Ommと大きいため取り扱いやすぐ粉砕等による粒子径制御が容易になる 。さらに、 BET比表面積が 100〜450m2Zg、 BJH法により算出した細孔容量の面積 分布(dVZdR)が 100〜300mm3ZgZnmと大きいため、リン酸イオン等の陰イオン 種をはじめとする有害物質に対して優れた吸着力を発揮する。
[0118] さらに、細孔半径のピークを 0. 8〜3nm、細孔半径の分布幅を 7nm以下の範囲で 任意に制御することができるため、吸着しょうとするイオン半径に応じた細孔半径とす ることにより、目的とするイオンを選択的に吸着することができ、また分子ふるいの効 果が期待できる。
[0119] 第 II発明の吸着材は、低温での細孔制御が可能な、省エネタイプの吸着材である 。また、再使用が容易であるため実用性が高ぐ吸着した陰イオン種を溶離させること により、陰イオン種に含まれる元素を効率的に回収することができる。
[0120] 第 III発明の「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」は、リン酸イオンに対して高 、吸着選択性 を有して!/、る。この吸着材 Aを用 、てリン酸イオンを効率的かつ選択的に回収するこ とがでさる。
[0121] また、「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材八」と「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 を組み合わせること により、リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水 (被処理水)から、リン酸イオン及び硝酸 イオンを効率的かつ選択的に分離回収が可能となる。
図面の簡単な説明
[0122] [図 1]実施例 I 1〜1 4及び比較例 I 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を 示すグラフである。
[図 2]実施例 I 3及び I 5〜1 7で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を示すダラ
フである。
[図 3]実施例 II 1と II 3で得られたォキシ水酸化鉄の粒度分布を示すグラフである
[図 4]実施例 II 1〜Π— 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を示すグラフであ る。
[図 5]実施例 II 4〜Π— 6で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を示すグラフであ る。
[図 6]リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水をォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Αで処理した場 合の、排出される水中の各イオンの経時変化を示すグラフである。
[図 7]リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水をォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bで処理した場 合の、排出される水中の各イオンの経時変化を示すグラフである。
[図 8]フッ化物イオン及び硝酸イオンを含む水をォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bで処理した 場合の、排出される水中の各イオンの経時変化を示すグラフである。
[図 9]フッ化物イオン及び硫酸イオンを含む水をォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bで処理した 場合の、排出される水中の各イオンの経時変化を示すグラフである。
[図 10]硝酸イオン及び硝酸イオンを含む水をォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bで処理した場 合の、排出される水中の各イオンの経時変化を示すグラフである。
[図 11]想定されるォキシ水酸化鉄の構造及びォキシ水酸化鉄に対する各種陰イオン 種の吸着の挙動を模式的に示した図である。
[図 12]リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水からリン酸イオン及び硝酸イオンを分離 回収する装置の模式図である。
圆 13]ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bのトンネルサイトの模式図を示す。
[図 14]リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水からリン酸イオン及び硝酸イオンを分離 回収する装置の概略図である。
圆 15]図 14の装置を用いた第 1処理操作を示す図である。
圆 16]図 14の装置を用いた第 2処理操作を示す図である。
圆 17]図 14の装置を用いた第 3処理操作を示す図である。
符号の説明
[0123] 1:被処理水(リン酸イオン及び硝酸イオンを含む水)タンク
2:水酸化ナトリウム水溶液タンク
3 :硝酸イオン回収タンク
4 :処理水タンク
I— a〜ト f、 II— a〜II— f及び ΠΙ - a〜III - d:バルブ
発明を実施するための最良の形態
[0124] 次に、本発明(第 I発明〜第 III発明)を実施例によってさらに詳細に説明するが、本 発明はこれによりなんら限定されるものではない。
[0125] 第 I発明
例ト 1
塩ィ匕第二鉄 (FeCl · 6Η Ο)を 0. lmol/Lとなるように水に溶解し、室温で撹拌し
3 2
ながら、濃度 2molZLの NaOH溶液を添カ卩して溶液全体の pHを 4に調整した。溶 液中に生じた沈殿生成物を 24時間静置し、吸引濾過して、沈殿物を得た。この沈殿 物を 50°Cで 48時間、定温乾燥器中で乾燥して FeOOHを得た。
[0126] 得られた FeOOHの BET比表面積は 50. 6m2/g,凝集体粒子としての平均粒子 径は、 200 mであった。このォキシ水酸化鉄を、パルプ濃度(水の重量に対する乾 燥ォキシ水酸ィ匕鉄の重量の百分率)が 5%となるように純水中に投入し、室温で 5分 間撹拌した。撹拌後に吸引濾過して、ォキシ水酸化鉄を得た。得られたォキシ水酸 化鉄を 55°Cで 24時間乾燥処理した。乾燥後、細孔半径制御の為、窒素 99%以上 の雰囲気下、 200°Cで 1時間加熱処理をした。得られたォキシ水酸化鉄の BET比表 面積は 260. 19m2Zg、細孔容量の面積分布(dVZdR)は 194. 34mmVg/nm 、細孔半径ピークは 1. 28nm、細孔半径の分布幅が 2. 5nm以下、凝集体粒子とし ての平均粒子径は 150 μ mであった。
[0127] なお、測定条件は次のとおりである。
(1) BET比表面積
日本ベル株式会社製、 BET比表面積測定装置、型式 BELSORP-miniを用いて測 定した。(2)細孔容量の面積分布 (dVZdR)、細孔半径ピーク、細孔半径の分布幅 日本ベル株式会社製、 BET比表面積測定装置、型式 BELSORP-miniを用いて測
定し、 BJH法にて算出した。
(3)平均粒子径
株式会社堀場製作所製、レーザー回折 Z散乱式粒度分布計、型式 LA— 920を 用いて測定された体積基準粒度分布からメジアン径を算出した。
[0128] 実施例 I 2〜1 7
実施例 I 1にお 、て、 (i-d)工程の乾燥温度及び乾燥時間を表 1に示す条件に 変えた以外は、実施例 I 1と同様に処理してォキシ水酸化鉄を得た。その物性を第 1表に示す。
[0129] 比較例 I 1及び I 2
巿販試薬のォキシ水酸化鉄(ひ FeOOH、ナカライテスタ株式会社製、 BET比表 面積 10. 8m2/g)を用いて、第 1表に示す条件で加熱処理した。その物性を第 1表 に示す。
[0130] 比較例 I 3
実施例 1—1において、(I d)工程の乾燥を 300°Cで行った以外は、実施例 1—1と 同様に処理してォキシ水酸ィ匕鉄を得た。その物性を第 1表に示す。
[0131] 比較例 I 4及び I 5
実施例 1—1において、(I— d)工程の乾燥を、窒素 99%以上の雰囲気ではなぐ空 気中で、 200°C又は 250°Cで行った以外は、実施例 1—1と同様に処理して、酸ィ匕鉄 (Fe O )を得た。その物性を第 1表に示す。
2 3
[0132] [表 1]
(ォキシ水酸ィ匕鉄のリン吸着能評価)
実施法 I 1〜1 4及び比較例 I 3で得られたォキシ水酸化鉄、比較例 I 4及び I - 5で得られた酸ィ匕鉄を、リンとして 50mg/Lのリン酸水溶液に lg/Lになるように 添加し、 12時間後のリン濃度からリン除去率を算出した。結果を第 1表に示す。
(ォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布)
図 1は、実施法 I 1〜1 4及び比較例 I 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分 布を示すグラフである。本発明の多孔質ォキシ水酸ィ匕鉄は、窒素雰囲気下で加熱す ることによって細孔分布を制御できることを示している。
[0134] また、図 2は、実施例 I 3及び I 5〜1 7で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布 を示すグラフである。加熱時間を変化することによって、細孔分布幅をより均一化する ことが可能である。
[0135] このように、本発明によればォキシ水酸ィ匕鉄粒子の BET比表面積、細孔容量の面 積分布 (dVZdR)、細孔半径ピーク、細孔半径の分布幅、平均粒子径等を、吸着除 去しょうとする有害物質の捕捉に適した値のものに制御することができる。
[0136] 第 Π発明
例 Π - ί
塩ィ匕第二鉄 (FeCl · 6Η Ο)を 0. lmol/Lとなるように水に溶解し、室温で撹拌し
3 2
ながら、濃度 2molZLの NaOH溶液を添カ卩して溶液全体の pHを 4に調整した。溶 液中に生じた沈殿生成物を 24時間静置し、吸引濾過して、沈殿物を得た。この沈殿 物を二酸ィ匕炭素 100%の雰囲気下、 50°Cで 48時間、恒温器中で加熱乾燥して Fe OOHを得た。
[0137] このォキシ水酸化鉄を、パルプ濃度 (水の重量に対する乾燥ォキシ水酸ィ匕鉄の重 量の百分率)が 5%となるように純水中に投入し、室温で 5分間撹拌した。撹拌後に 吸引濾過して、ォキシ水酸化鉄を得た。得られたォキシ水酸ィ匕鉄を 55°Cで 24時間 乾燥処理した。乾燥後、細孔半径制御のため、窒素 99%以上の雰囲気下、 160°C で 1時間加熱処理をした。得られたォキシ水酸ィ匕鉄の BET比表面積は 262. 7m2/ g、凝集体粒子としての中心粒子径 (D50 :下記乾式篩法における累積 50%の値)は 0. 9mm、細孔容量の面積分布(dVZdR)は 199. 9mm3ZgZnm、細孔半径ピー クは 1. 52nm、細孔半径の分布幅が 3. 5nm以下であった。
[0138] なお、測定条件は次のとおりである。
(1) BET比表面積
日本ベル株式会社製、 BET比表面積測定装置、型式 BELSORP-miniを用いて測
定した。
(2)細孔容量の面積分布 (dVZdR)、細孔半径ピーク、細孔半径の分布幅
日本ベル株式会社製、 BET比表面積測定装置、型式 BELSORP-miniを用いて測 定し、 BJH法にて算出した。
(3)ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集体粒子の中心粒子径
ロータップ氏標準篩振とう機を用いて、乾式篩法で、ォキシ水酸化鉄凝集体粒子の 中心粒子径を測定した。
[0139] 実施例 II 2〜Π— 6
実施例 II 1において、(Π— d)工程の乾燥温度及び乾燥時間を第 2表に示す条 件に変えた以外は、実施例 II 1と同様に処理してォキシ水酸化鉄を得た。その物 性を第 2表に示す。
[0140] 実飾 III— 7
実施例 Π— 5において、(Π—b)工程を窒素 100%の雰囲気下で行った以外は、実 施例 Π— 5と同様に処理してォキシ水酸ィ匕鉄を得た。その物性を第 2表に示す。
[0141] 比較例 II 1
実施例 Π— 1において、(Π— b)工程の加熱処理を行わず、(Π— d)工程を第 2表に 示す条件で行った以外は、実施例 II 1と同様に処理してォキシ水酸化鉄を得た。 その物性を第 2表に示す。
[0142] 比較例 II 2
実施例 Π— 1において、(Π— b)工程の加熱処理を空気雰囲気下で行い、 (II -d) 工程を第 2表に示す条件で行った以外は、実施例 Π— 1と同様に処理してォキシ水 酸化鉄を得た。その物性を第 2表に示す。
[0143] 比較例 II 3
実施例 Π— 1において、(Π— b)工程の加熱処理を空気雰囲気下で行い、 (II -d) 工程は行わなカゝつた以外は、実施例 II— 1と同様に処理してォキシ水酸化鉄を得た 。その物性を第 2表に示す。
[0144] 比較例 II 4
実施例 Π—1において、(Π—b)工程の加熱処理を空気雰囲気下、 200°Cで行い、
(II -d)工程は行わな力つた以外は、実施例 Π—1と同様に処理して、酸化鉄 (Fe O
2 :
)を得た。その物性を第 2表に示す。
[0145] 比較例 II 5
実施例 Π—1において、(Π—b)工程を窒素雰囲気下、 200°Cで行い、(Π— d)ェ 程は行わな力つた以外は、実施例 Π—1と同様に処理して、酸化鉄 (Fe O )を得た。
2 3 その物性を第 2表に示す。
[0146] [表 2]
第 2表
(11-1))ェ程 (ΙΙ-d)工程 評 価 結 果
雰 温 雰 温 時 BET 細孔容量の 細孔半径 吸着試験 凝集体の 囲 度 囲 度 間 比表面積 面積分布 ピーク 分布幅 中心粒子径 気 (で) (hr) (rf/g) (.mm3/gnm) (nnu (nm) (%) ^mm) 実施例 II-1 co2 50 2 160 1 262.7 199.9 1.52 3.5以下 74.5 0.9 実施例 II-2 co2 50 N2 130 1 255.3 160.6 0.83 3.5以下 71.8 0.9 実施例 【1-3 C02 50 N2 70 1 240.2 141.6 0.83 3.5以下 68.8 0.9 実施例 【1-4 co2 50 N2 160 2 253.3 177.9 1.28 3.5以下 75.7 1.0 実施例 [1-5 co2 50 N2 160 4 262.8 197.9 1.39 3.5以下 77.2 0.9 実施例 II - 6 co2 50 N2 160 24 289.8 233.8 1.52 3.5以下 81.7 0.9 実施例 II- 7 N2 50 N2 160 2 264.5 198.8 1.52 3.5以下 74.2 0.9 比較例 [1-1 ― 一 N2 160 1 150.4 ― ― ― 40.1 —— 比較例 II-2 Air 50 N2 140 1 254.6 125.3 0.83 3.5以下 58.1 0.2 比較例 II - 3 Air 50 ― ― ― 218.6 121.5 0.83 3.5以下 45.0 0.2 比較例 II - 4 Air 200 一 一 一 20.5 ― —一 -— 0 ― 比較例 II-5 N2 200 ― ― 32.1 ― 一 一 0 ―
[0147] (ォキシ水酸ィ匕鉄のリン吸着能評価)
実施例 II 1〜11 7及び比較例 II 1〜11 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を、リン として 50mgZLのリン酸水溶液に lgZLになるように添加し、 12時間後のリン濃度 からリン吸着除去率を算出した。結果を第 2表に示す。
[0148] 第 2表から明らかなように、実施例ではリン吸着除去率が 65%以上であるのに対し
、比較例では 60%以下であることが分る。
(ォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布)
図 3は、実施例 II 1と比較例 II 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の粒度分布を示す グラフである。(II b)工程を二酸ィ匕炭素雰囲気下で行うと、空気中で行った場合に 比べ、ォキシ水酸ィ匕鉄の凝集体粒子の中心粒子径カ 倍程度大きくなることが分る。
[0149] 図 4は、実施例 II 1〜Π— 3で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を示すグラフ である。本発明の多孔質ォキシ水酸ィ匕鉄は、窒素雰囲気下で加熱することによって 細孔分布を制御できることを示して 、る。
[0150] また、図 5は、実施例 II 4〜Π— 6で得られたォキシ水酸ィ匕鉄の細孔分布を示す グラフである。加熱時間を変化することによって、細孔分布幅をより均一化することが 可能である。
[0151] このように、本発明によればォキシ水酸ィ匕鉄粒子の BET比表面積、細孔容量の面 積分布 (dVZdR)、細孔半径ピーク、細孔半径の分布幅、平均粒子径等を、吸着除 去しょうとする有害物質の捕捉に適した値のものに制御することができる。
(ォキシ水酸化鉄の硝酸イオン吸着能評価)
実施例 II 1で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を用いて、下記条件で硝酸イオン (NO ")
3 の吸着実験を行った結果、硝酸イオンをぼぼ 100%除去できた。
(1)条件:ォキシ水酸化鉄の使用量 1 lg
硝酸イオン (NO―)濃度 88ppmの模擬廃水
3
使用カラム:内径 10mm、長さ 100mm、容量 7. 9ml
常温、空間速度 38h 通水速度 5mlZ分
(2)条件:ォキシ水酸化鉄の使用量 23g
琵琶湖 (瀬田地区)の湖水、硝酸イオン (NO―)濃度 6mgZl
使用カラム:内径 10mm、長さ 200mm、容量 15. 7ml
常温、空間速度 19h 通水速度 5mlZ分
(ォキシ水酸ィ匕鉄のフッ素イオン吸着能評価)
実施例 II 1で得られたォキシ水酸ィ匕鉄を用いて、下記条件でフッ素イオンの吸着 実験を行った結果、フッ素イオンをぼぼ 100%除去できた。
(1)条件:ォキシ水酸化鉄の使用量 23g
電子産業廃水、フッ素イオン濃度 107mgZl
使用カラム:内径 10mm、長さ 200mm、容量 15. 7ml 常温、空間速度 19h 通水速度 5mlZ分
[0152] 第 ΙΠ発明
「ォキシ水酸化鉄吸着材八」及び「ォキシ水酸化鉄吸着材 」を、次のようにして調 製し、各種陰イオン種との吸着性能の評価を行った。
[0153] mm- i (ォキシ水酸化鉄吸羞材 A)
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Aは、純水 8Lを撹拌羽根で撹拌した溶液に塩ィ匕第 2鉄 6水 和物を O.lmol/1の濃度になるように加え溶解した。次に、撹拌している塩ィ匕第 2鉄溶 液に 4mol/lの水酸化ナトリウム溶液をペリスタポンプにより流速 2ml/minで滴下し、 pH コントローラにより pH5に調整し、ゲル状のォキシ水酸ィ匕鉄を得た。 pH調整後は撹拌 を止め、 24時間静置し、濾過した。濾過は、静置したゲル状のォキシ水酸化鉄をブ フナーロートに 5C濾紙をセットし、吸引濾過を行い、乾燥した。乾燥は、濾過により脱 水されたゲル状のォキシ水酸ィ匕鉄を濾紙とともに恒温乾燥器に入れ、 50°Cで 24時間 力も 72時間乾燥した。
[0154] 乾燥で得られた黒色のォキシ水酸ィ匕鉄を篩にかけた後、 0.5〜1.7mmのォキシ水酸 化鉄をカラムに 23g詰め、流速 5ml/minで 2.5mol/Lの NaOH水溶液を 500ml通液した。 通液後、 4Lの純水を流速 5ml/minで通液し、ォキシ水酸化鉄吸着材 Aを製造した。
[0155] 実窗列 III 2 (ォキシ 7k酸化 木ォ B)
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bは、純水 8Lを撹拌羽根で撹拌した溶液に塩ィ匕第 2鉄 6水 和物を O.lmol/1の濃度になるように加え溶解した。次に、撹拌している塩ィ匕第 2鉄溶 液に 4mol/lの水酸化ナトリウム溶液をペリスタポンプにより流速 2ml/minで滴下し、 pH
コントローラにより pH5に調整し、ゲル状のォキシ水酸ィ匕鉄を得た。 pH調整後は撹拌 を止め、 24時間静置し、濾過した。濾過は、静置したゲル状のォキシ水酸化鉄をブ フナーロートに 5C濾紙をセットし、吸引濾過を行い、乾燥した。乾燥は、濾過により脱 水されたゲル状のォキシ水酸ィ匕鉄を濾紙とともに恒温乾燥器に入れ、 50°Cで 24時間 力も 72時間乾燥した。
[0156] 乾燥で得られた黒色のォキシ水酸ィ匕鉄を篩にかけた後、 0.5〜1.7mmのォキシ水酸 化鉄をカラムに 23g詰め、流速 5ml/minで 2.5mol/Lの NaOH水溶液を 500ml通液した。 通液後、 2Lの純水に 30%〜37% (9〜12mol/l)塩酸を 2ml添カ卩した溶液(約 0.0001〜0. Olmol/1塩酸)を流速 5ml/minで通液し、ォキシ水酸化鉄吸着材 Bを製造した。
[0157] 試験例 III 1
実施例 III— 1で得られる「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 A (水処理)」及び実施例 III 2 で得られるォキシ「水酸ィ匕鉄吸着材 B (塩酸処理)」について、次のような流通式吸着 実験を行った。
[0158] 実験装置は、中容量並列ダブルタイプ送液ユニット、カラム(1/16インチへジョイント するカラムエンド用継ぎ手を付属した長さ 200mm、内径 10mmの 1/2インチ SUSチュ ーブ)、フラクションコレクター、及び 1/16インチ SUSチューブを用いた。
[0159] 実験は、上記の実験装置を用いて、各イオンを含有する溶液を中容量並列ダブル タイプ送液ユニット (株式会社島津製作所 LC— 6AD)を用いて各流速で送液し、ォ キシ水酸ィ匕鉄を詰めたカラムを通し、フラクションコレクター (東洋株式会社 CHF12 2SB)で各時間の定量用サンプルを得て定量した。定量は ICP発光分光分析装置( 株式会社島津製作所 ICPS— 7000 ver. 2)及びサブレッサ方式イオンクロマトダラ フ (株式会社島津製作所 個々の製品の集合体なので装置の型番はな!、)で行った
(1)ォキシ水酸化鉄吸着材 A (水処理)
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Aを用いて、下記の条件で、リン酸イオン及び硝酸イオンの 両方含む溶液に対して吸着実験を行った。吸着操作時間に対する、排出されるリン 酸イオン、硝酸イオン及び塩ィ匕物イオンの濃度の経時変化を、図 6に示す。
[0160] 該吸着材 Aでは、ォキシ水酸ィ匕鉄のトンネルサイトに塩ィ匕物イオンがほとんど存在
しておらず、塩ィ匕物イオンとイオン交換する硝酸イオンの吸着が観測されて 、な 、。 また、リン酸イオンはトンネルサイトの塩ィ匕物イオンと関係なく吸着されており、吸着操 作時間 110時間までほぼ 100%吸着された。
[0161] [実験条件]
ォキシ水酸化鉄吸着材 Aの使用量: 23g
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Aの粒子径 0.5〜1.7mm
使用カラム:内径 10mm、長さ 200mm
容量: 15.7ml
常温
通水流速: lml/ min
空間速度 SV(l/h):3.8
廃水成分 (初期濃度):
リン酸イオン 54.28mg/l
硝酸イオン 46.90mg/l
(2)ォキシ水酸化鉄吸着材 B (塩酸処理)
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bを用いて、下記の条件で、リン酸イオン及び硝酸イオンの 両方含む溶液に対して吸着実験を行った。吸着操作時間に対する、排出されるリン 酸イオン、硝酸イオン及び塩ィ匕物イオンの濃度の経時変化を、図 7に示す。
[0162] 該吸着材 Bでは、吸着操作時間 3時間までは硝酸イオンが吸着し、それと共に塩ィ匕 物イオン濃度が急激に増大し、放出されている。これは、硝酸イオンがトンネルサイト の塩ィ匕物イオンと交換 (置換)する形で吸着していることを示唆している。リン酸イオン は 23時間まで吸着を続けており、塩ィ匕物イオンとは無関係な吸着をして 、る。
[0163] [実験条件]
ォキシ水酸化鉄吸着材 Bの使用量: 23g
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bの粒子径 0.5〜1.7mm
使用カラム:内径 10mm、長さ 200mm
容量: 15.7ml
常温
通水流速: 2ml/min
空間速度 SV(l/h):7.6
廃水成分 (初期濃度):
リン酸イオン 137.44mg/l
硝酸イオン 95.00mg/l
試験例 III 2
次の条件下で、 2元系の流通式吸着実験を行った。
[0164] 実験装置は、中容量並列ダブルタイプ送液ユニット、カラム(1/16インチへジョイント するカラムエンド用継ぎ手を付属した長さ 200mm、内径 10mmの 1/2インチ SUSチュ ーブ)、フラクションコレクター、及び 1/16インチ SUSチューブを用いた。
[0165] 実験は、上記の実験装置を用いて、各イオンを含有する溶液を中容量並列ダブル タイプ送液ユニット (株式会社島津製作所 LC— 6AD)を用いて各流速で送液し、ォ キシ水酸化鉄 A 23gを詰めたカラムを通し、フラクションコレクター (東洋株式会社 C HF122SB)で各時間の定量用サンプルを得て定量した。定量は ICP発光分光分析 装置 (株式会社島津製作所 ICPS— 7000 ver. 2)及びサブレッサ方式イオンクロマ トグラフ (株式会社島津製作所 個々の製品の集合体なので装置の型番はな!、)で 行った。
[0166] [共通実験条件]
ォキシ水酸化鉄吸着材 Bの使用量: 23g
ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 Bの粒子径 0.5〜1.7mm
使用カラム:内径 10mm、長さ 200mm
容量: 15.7ml
常温
通水流速: 5 ml/ min
空間速度 SV(l/h):19
(1) F—及び NO—の混合液
3
ォキシ水酸ィヒ鉄吸着材 Bを用いてフッ素、硝酸を両方含む溶液に対して吸着実験 を行った。結果を図 8に示す。吸着操作時間に対して、フッ化物イオン、硝酸イオン
及び塩ィ匕物イオンの濃度の経時変化を示して 、る。吸着操作時間 3時間までは硝酸 イオンが吸着し、それと共に塩ィ匕物イオン濃度が急激に増大、放出されている。これ はトンネルサイトで塩ィ匕物イオンと硝酸イオンとが交換する形で吸着していることを示 唆して 、る。フッ化物イオンは 7時間まで吸着をして!/、る。
[0167] 初期濃度:
F":111.17mg/1
NO ":541.77mg/l
3
(2) F—及び SO 2の混合液
4
ォキシ水酸ィヒ鉄吸着材 Bを用いてフッ素、硫酸を両方含む溶液に対して吸着実験 を行った。結果を図 9に示す。吸着操作時間に対して、フッ化物イオン、硫酸イオン 及び塩ィ匕物イオンの濃度の経時変化を示して 、る。吸着操作時間 3時間ではフツイ匕 物イオンと硫酸イオンが吸着し、それと共に塩ィ匕物イオン濃度が急激に増大、放出さ れて 、る。これはトンネルサイトで塩ィ匕物イオンとフッ化物イオン及び硫酸イオンとが 交換する形で吸着して 、ることを示唆して 、る。
[0168] 初期濃度:
F":94.60mg/1
SO 2— :316.14mg/l
4
(3) NO—及び SO 2の混合液
3 4
ォキシ水酸化鉄吸着材 Bを用いて硫酸、硝酸を両方含む溶液に対して吸着実験を 行った。結果を図 10に示す。吸着操作時間に対して、硫酸イオン、硝酸イオン及び 塩ィ匕物イオンの濃度の経時変化を示して 、る。吸着操作時間 3時間までは硝酸が吸 着し、それと共に塩ィ匕物イオン濃度が急激に増大、放出されている。これはトンネル サイトで塩ィ匕物イオンと硝酸イオンとが交換する形で吸着して 、ることを示唆して 、る 。硫酸イオンは 8時間まで吸着をしている。
[0169] 初期濃度:
NO ":661.75mg/l
3
SO 2":361.7mg/l
4
実施例 m— 3
実施例 m— lで得られる「ォキシ水酸ィ匕鉄吸着材 A (水処理)」を充填した吸収塔 I、 及び実施例 III 2で得られるォキシ「水酸化鉄吸着材 B (塩酸処理)」を充填した吸 収塔 II及び IIIを備えた図 14で示される装置を用いて、リン酸イオン及び硝酸イオン を含む処理水の吸着及び脱着処理を行った。
[0170] なお、図 15〜17における配管の点線部分は、水が流通していることを示す。
[0171] [第 1処理操作] (図 15)
バルブ I a、 I f、 Π a及び Π— dを開き、被処理水タンク 1からリン酸イオンおよび 硝酸イオンを含む被処理水を流通した。吸着塔 Iではリン酸イオンが吸着され硝酸ィ オンは吸着されない。吸着塔 Πでは硝酸イオンが吸着された。吸着塔 II力 排出され る処理水は、処理水タンク 4に導かれた。
[0172] [第 2処理操作] (図 16)
一定時間経過後、バルブ II e、 III— a及び III dを開き、バルブ Π— a及び Π d を閉じて、引き続き吸着塔 Iではリン酸イオンが吸着され、吸着塔 ΠΙで硝酸イオンが 吸着された。
[0173] また、バルブ Π— c及び Π— bを開いて、 NaOH水溶液タンク 2から 2. 5mol/LNa OH水溶液を吸着塔 IIに通液して吸着した硝酸イオンを回収し、次 、で 0.001〜0.01 molZL塩酸を通液して(図示せず)ォキシ水酸化鉄吸着材 Bを再生した。
[0174] [第 3処理操作] (図 17)
さらに、一定時間経過後、バルブ Π— a、 Π dを開き、バルブ Π— e及び III— aを閉 じて、引き続き吸着塔 Iではリン酸イオンが吸着され、吸着塔 Πで硝酸イオンが吸着さ れた。
[0175] また、バルブ III— c及び III— bを開いて、 NaOH水溶液タンク 2から 2. 5mol/LN aOH水溶液を吸着塔 IIIに通液して吸着した硝酸イオンを回収し、次 、で 0.001〜0.0 ImolZL塩酸を通液して(図示せず)ォキシ水酸化鉄吸着材 Bを再生した。
[0176] 上記の第 2処理操作及び第 3処理操作を繰り返して、吸着塔 II及び IIIにおいて硝 酸イオンの吸着及び脱着を行い、硝酸イオンを分離回収した。
[0177] なお、吸着塔 Iでは、比較的長時間リン酸イオンの吸着が行われるが (例えば、試験 例 III 1及び図 6を参照)、リン酸イオンの吸着能が飽和する前に、被処理水の通液
を停止して、バルブ I— c及び I— bを開いて、 NaOH水溶液タンク 2から 2. 5mol/L NaOH水溶液を吸着塔 Iに通液して吸着したリン酸イオンを回収し、次 、で水を通液 してォキシ水酸化鉄吸着材 Aを再生した (図示せず)。
上記の操作を繰り返すことにより、効率的かつ選択的にリン酸イオンと硝酸イオンを 分離、回収することができた。