JP2018020920A - アカガネイトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[2] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする[1]に記載のアカガネイトの製造方法。
[3] 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、前記1種以上の塩(S)によって生成されるOH−とのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアカガネイトの製造方法。
[4] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程を有することを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。
[第一工程]
本発明の第一態様のアカガネイトの製造方法は、塩化鉄(III)と、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)と、を水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有する。
前記アルカリ金属は周期表の第1族元素であり、ナトリウム、カリウムが好ましい。
前記アルカリ土類金属は周期表の第2族元素であり、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は塩(S)が取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
前記水溶液を調製する際に、塩化鉄(III)と前記1種以上の塩(S)を溶解させる順序は特に限定されないが、水溶液のpHを酸性に維持するために、塩化鉄(III)を先に溶解することが望ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、前記水溶液中のFe3+が有する正電荷量と、OH−が有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
また、例えば、0.1モルの炭酸ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸の酸解離定数pKa2=10.3及び上記みかけの酸解離定数pKa1=6.3を考慮して、溶液pHが5.3以下において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.18〜0.2モル/L程度と考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.18〜0.2モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの水酸化ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その酸解離定数pKa=13を考慮して、溶液pHが7以下の酸性域において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度はほぼ0.1モル/Lと考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
上記モル比の範囲であると、前記水溶液中のFe3+とOH−の電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
前記第一工程においてアカガネイトを生成し、次いで、第一工程で得た第一反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイト同士を凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程を行うことが好ましい。
ここで上記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整する方法としては、反応液に前記1種以上の塩(S)を追加して添加する方法が好ましい。前記1種以上の塩(S)を用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が反応液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
第二工程は、凝集を妨げない温度範囲で、例えば10〜40℃で行うことが好ましい。
第一工程におけるアカガネイトの生成反応の終了は、前記水溶液(第一反応液)が暗褐色から赤褐色に変化したことを目安にして経験的に判断することができる。また、第二工程においてアカガネイト同士が凝集すると、前記第一反応液の粘性が上昇するので、粘性の程度を凝集の程度として判断することができる。
通常、各工程に要する所要時間の目安は以下の通りである。
第一工程の反応開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は10〜25℃において例えば3〜5分程度である。次いで、第二工程で塩(S)を添加し、pHを調整してアカガネイトが凝集するまでに要する時間は10〜25℃において例えば5〜10分程度である。
回収したアカガネイトは、乾燥して使用時まで保存することができる。
濾過により得た乾燥後のアカガネイトの形態は、通常は粘土状の塊であり、乳鉢等で粉砕して粉末状にすることができる。
図2は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
陰イオン吸着方法の第一実施形態は、無機化合物の陰イオンを含む溶液(以下、処理対象液と呼ぶことがある。)をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる方法である。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
処理対象液にアカガネイトを添加し、目的の陰イオンをアカガネイトに吸着させる際の処理中の処理対象液(アカガネイト分散液)のpHは、2以上9以下が好ましく、3以上7以下がより好ましく、4以上6以下がさらに好ましい。
処理中の処理対象液のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の処理対象液のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、処理中の処理対象液のpHは、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の処理対象液のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
処理対象液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、後述する1種以上の塩(S)を添加する方法が挙げられる。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、処理対象液中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
通常、アカガネイトの添加量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
処理対象液からアカガネイトの粉末を回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、処理対象液を静置して沈殿させる方法、処理対象液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、処理対象液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。
陰イオン吸着体の第一実施形態は、無機化合物の陰イオンを吸着する吸着剤の主要な成分としてアカガネイトを有する。ここで「主要な成分」とは、吸着剤の各成分間における目的の陰イオンの吸着量を比較した場合、最も吸着量の多い成分ということを意味する。前記吸着体は、前記吸着剤を保持する保持部材をさらに有していてもよい。
(アカガネイトの合成)
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液(pH9)を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
(1)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
(2)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
(3)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図1)。
図1に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
硫酸を約1200mg/L(約12.5mmol/L)で含む水溶液(pH10)に、上記で合成したアカガネイトを、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pHを6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、硫酸イオンと、塩化物イオンの濃度をそれぞれイオンクロマトグラフ法によって測定した。
その結果、図3のグラフに示すように、アカガネイトの添加量に比例して、水溶液中の塩化物イオン濃度が増加し、それに伴って硫酸イオン濃度が低下した。増加した塩化物イオン濃度は、低下した硫酸イオン濃度の約2倍であった。この結果は、アカガネイトから脱離した塩化物イオンの電荷量と、アカガネイトに吸着した硫酸イオンの電荷量とがほぼ同じであることを意味する。
以上の結果から、アカガネイトを構成する塩化物イオンは、別の陰イオンを吸着する際に置換されると考えられる。
(アカガネイト(酸化鉄鉱物)を合成する際のpHと、吸着能力との関係)
アカガネイト(酸化鉄鉱物)を合成する際の反応液のpHを2〜10で1刻みずつ変更した後一昼夜静置し、酸化鉄鉱物を含む懸濁液を得た。
上記の合成で得た酸化鉄鉱物をXRDで分析した結果、pH2,pH3で合成した酸化鉄鉱物はアカガネイトであることを示すピークが確認された。一方、pH4以上で合成した酸化鉄鉱物は明確なピークを示さず、非結晶性の酸化鉄鉱物であった。
何れのpHで合成した場合においても、アカガネイト又はその他の酸化鉄鉱物の収率は90%以上であった。
図4において、「○」のプロットは上記のpH2〜3で合成したアカガネイトを吸着剤として使用したことを示し、「◇」のプロットは上記のpH4〜10で合成したその他の酸化鉄鉱物を吸着剤として使用したことを示す。
図4の結果から、合成時のpHが低いほど、セレン(セレン酸イオン)の吸着力が高いことが理解される。つまり、pH2〜3で合成されたアカガネイトは優れた陰イオン吸着力を示すことが明らかである。
Claims (4)
- 塩化鉄(III)と、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)と、を水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有することを特徴とするアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする請求項1に記載のアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、前記1種以上の塩(S)によって生成されるOH−とのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、
次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。
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