JP6796823B2 - 水処理方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明者らはより優れた吸着効率を示す鉱物を種々検討したところ、アカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、目的の陰イオンに対して優れた吸着効率を示すことを見出した。
[2] 前記アカガネイトを生成する際の前記被処理水のpHを1〜3に調整することを特徴とする[1]に記載の水処理方法。
[3] 前記被処理水に添加する前記塩化鉄(III)と前記S成分とのモル比は、2:1〜1:3であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の水処理方法。
[4] 前記S成分は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上であることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載の水処理方法。
[5] 前記陰イオンは、無機化合物のオキソ酸イオンであることを特徴とする[1]〜[4]の何れか一項に記載の水処理方法。
[6] 前記陰イオンは、セレン酸イオン又は亜セレン酸イオンであることを特徴とする[5]に記載の水処理方法。
本発明にかかる水処理方法は、被処理水に、塩化鉄(III)と、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)とを添加して、前記被処理水中でアカガネイトを生成し、前記被処理水中に予め含まれている、前記S成分以外の無機化合物の陰イオンと、前記アカガネイトとを接触させることによって、前記アカガネイトに前記無機化合物の陰イオンを吸着させる方法である。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
図2は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
被処理水に予め含まれる目的の陰イオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
上記範囲であると、被処理水中でアカガネイトが充分に生成され、目的の陰イオンがアカガネイトの生成を妨げることを抑制できる。上記範囲の下限値は特に限定されず、例えば、1nm(ナノモル)/Lとすることができる。
前記S成分は、アカガネイトを高収率で合成する観点から、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムの何れかのカチオンを含む、炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上が好ましい。
アカガネイトの生成反応を促進するために、被処理水を例えば40〜100℃程度に加熱してもよい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は塩(S)が取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、前記被処理水中のFe3+が有する正電荷量と、OH−が有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
また、例えば、0.1モルの炭酸ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸の酸解離定数pKa2=10.3及び上記みかけの酸解離定数pKa1=6.3を考慮して、溶液pHが5.3以下において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.18〜0.2モル/L程度と考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.18〜0.2モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの水酸化ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その酸解離定数pKa=13を考慮して、溶液pHが7以下の酸性域において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度はほぼ0.1モル/Lと考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
上記モル比の範囲であると、前記被処理水中のFe3+とOH−の電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
アカガネイトに目的の陰イオンを吸着させる際の被処理水(アカガネイト分散液)のpHは、10以下が好ましく、2以上9以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
処理中の前記被処理水のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の前記被処理水のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、処理中の前記被処理水のpHは、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の前記被処理水のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
前記被処理水のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、後述する前記S成分を添加する方法が挙げられる。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、被処理水中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
通常、アカガネイトの生成量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液(pH9)を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
(1)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
(2)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
(3)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図1)。
図1に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
硫酸を約1200mg/L(約12.5mmol/L)で含む水溶液(pH10)に、上記で合成したアカガネイトを、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pHを6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、硫酸イオンと、塩化物イオンの濃度をそれぞれイオンクロマトグラフ法によって測定した。
その結果、図3のグラフに示すように、アカガネイトの添加量に比例して、水溶液中の塩化物イオン濃度が増加し、それに伴って硫酸イオン濃度が低下した。増加した塩化物イオン濃度は、低下した硫酸イオン濃度の約2倍であった。この結果は、アカガネイトから脱離した塩化物イオンの電荷量と、アカガネイトに吸着した硫酸イオンの電荷量とがほぼ同じであることを意味する。
以上の結果から、アカガネイトを構成する塩化物イオンは、別の陰イオンを吸着する際に置換されると考えられる。
セレン酸イオンを0.0038 mmol/L(0.3mg/L)で含む被処理水(pH9,20℃)を調製した。この被処理水1Lに、塩化鉄(III)31.5 mmol、水酸化ナトリウム63 mmolを順次添加したところ、被処理水はpH1〜3となり、アカガネイトと考えられる沈殿が生成した。生成したアカガネイトを含む、pH1〜3の水溶液を20℃で1時間撹拌した後、被処理水の上澄みに含まれるセレン酸イオンを上記と同様のICP発光分光分析法で測定した。その結果、セレン酸イオンの濃度は0.0085mg/Lに低下していた。
また、被処理水に生成した沈殿を濾過法で回収して分析したところ、セレン酸イオンを含むアカガネイトであることが分かった。
Claims (4)
- 被処理水に、塩化鉄(III)と、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)とを添加して、前記被処理水中でアカガネイトを生成し、
前記被処理水中に予め含まれている、前記S成分以外の無機化合物の陰イオンと、前記アカガネイトとを接触させることによって、
前記アカガネイトに前記無機化合物の陰イオンを吸着させる水処理方法であって、
前記陰イオンは、セレン酸イオン又は亜セレン酸イオンであることを特徴とする水処理方法。 - 前記アカガネイトを生成する際の前記被処理水のpHを1〜3に調整することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
- 前記被処理水に添加する前記塩化鉄(III)と前記S成分とのモル比は、2:1〜1:3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
- 前記S成分は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の水処理方法。
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