JP6738534B2 - アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法 - Google Patents

アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6738534B2
JP6738534B2 JP2016162837A JP2016162837A JP6738534B2 JP 6738534 B2 JP6738534 B2 JP 6738534B2 JP 2016162837 A JP2016162837 A JP 2016162837A JP 2016162837 A JP2016162837 A JP 2016162837A JP 6738534 B2 JP6738534 B2 JP 6738534B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acaganate
akaganate
liquid
treated
anion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016162837A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018030748A (ja
Inventor
光博 隅倉
光博 隅倉
田▲崎▼ 雅晴
雅晴 田▲崎▼
啓輔 小島
啓輔 小島
光男 毛利
光男 毛利
和彦 設樂
和彦 設樂
誠一 石鍋
誠一 石鍋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimizu Corp
Original Assignee
Shimizu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimizu Corp filed Critical Shimizu Corp
Priority to JP2016162837A priority Critical patent/JP6738534B2/ja
Publication of JP2018030748A publication Critical patent/JP2018030748A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6738534B2 publication Critical patent/JP6738534B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Water Treatment By Sorption (AREA)
  • Compounds Of Iron (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)

Description

本発明は、酸化鉄鉱物であるアカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法に関する。より詳しくは、水溶液中に含まれる陰イオンの吸着に有用な酸化鉄鉱物であるアカガネイトの製造方法、及びこのアカガネイトを利用した陰イオン吸着方法に関する。
化学事業所や工事現場の排水にはセレン、ヒ素、クロム等のオキソ酸イオンが含まれることがある。これらの陰イオンは溶解性が高く、従来の一般的な排水処理に使用される硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、PAC(ポリ塩化アルミニウム)等の無機凝集剤や、高分子ポリマーを含む有機凝集剤によって沈殿して除去することは困難である。そこで、特許文献1では、シュベルトマナイト[組成式:Fe(OH)8−2x(SO;1≦x≦1.75]と呼ばれる酸化鉄鉱物にセレン、ヒ素、クロムを吸着させる方法が提案されている。
特開2005−95732号公報
本発明者らが鋭意検討したところ、特許文献1に記載のシュベルトマナイトは硫酸イオンを本来的に含んでいるため、目的の陰イオンが充分に吸着するためには硫酸イオンを置換する必要があると考えられた。また、硫酸イオンの結合力は比較的強いため、目的の陰イオンがシュベルトマナイトに吸着する効率は必ずしも高いとはいえないことを見出した。
そこで、本発明者らはより優れた吸着効率を示す鉱物を種々検討したところ、アカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)が有用であることを見出した。しかしながら、アカガネイトを工業的な規模で収率良く合成する方法が未だ知られていないという問題があった。
また、アカガネイトは陰イオンを吸着しやすいため、処理対象とする陰イオン以外に硫酸イオンが共存する水溶液中にアカガネイトを投入した場合、硫酸イオン以外の処理対象の陰イオンのアカガネイトに対する吸着が、硫酸イオンによって妨げられる問題があった。
本発明は、アカガネイトを簡便に高収率で合成することが可能なアカガネイトの製造方法、及びこのアカガネイトを利用した陰イオン吸着方法を提供する。
[1] 塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有することを特徴とするアカガネイトの製造方法。
[2] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする[1]に記載のアカガネイトの製造方法。
[3] 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、水酸化バリウムによって生成されるOHとのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアカガネイトの製造方法。
[4] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程、を有することを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。
[5] [1]〜[3]の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法によって得た前記第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることを特徴とする陰イオン吸着方法。
本発明のアカガネイトの製造方法によれば、簡便に収率良くアカガネイトを製造することができる。また、本発明の陰イオン吸着方法によれば、硫酸イオンと硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが共存する水溶液において、アカガネイトに対する硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンの吸着量を高めることができる。
3種の酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンの吸着等温線である。 アカガネイトのトンネル構造を表す模式図である。
《アカガネイトの製造方法》
[第一工程]
本発明の第一態様のアカガネイトの製造方法は、塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有する。
塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水中に溶解させることにより、水溶液中で電離したイオン同士が自然に反応してアカガネイトが生成される。より詳しくは、水酸化バリウムを水中に溶解させると水酸化物イオンが生成される。この水酸化物イオンと鉄イオンが、塩化物イオンが多く溶存する酸性水溶液中で反応することにより、アカガネイトが生成される。
アカガネイトの生成反応を促進するために、前記水溶液(第一反応液)を40〜100℃程度に加熱してもよい。
第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することが好ましい。前記水溶液のpHは、7未満が好ましく、4未満がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は水酸化バリウムが取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
アカガネイトを生成する際の第一反応液のpHの調整は、塩化鉄(III)及び水酸化バリウムのうち少なくとも一方を反応液に添加する前に行ってもよいし、両方を反応液に溶解した後で行ってもよい。ただし、両方を溶解した第一反応液のpHがアルカリ性の状態で放置すると、アカガネイト以外の酸化鉄鉱物が生成される恐れがある。したがって、前記両方を溶解した後で速やかに、或いは前記少なくとも一方を溶解する前又は溶解中に、第一反応液のpHを酸性に調整し、酸性のpHを維持することが好ましい。
第一反応液のpHを調整する方法は、塩酸を滴下する方法が好ましい。塩酸を用いればアカガネイトの生成に有用な塩化物イオン以外の余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)を反応液に投入することを防ぎ、その余計な陰イオンがアカガネイトに吸着することを防止できる。また、水酸化ナトリウムを用いて第一反応液のpHを調整して維持することも好ましい。
前記水溶液を調製する際に溶解する塩化鉄(III)の量は特に限定されず、例えば0.01〜3モル/Lとすることができる。同様に、前記水溶液を調製する際に溶解する水酸化バリウムの量は特に限定されず、例えば0.01〜3モル/Lとすることができる。
前記水溶液を調製する際に、塩化鉄(III)と水酸化バリウムを溶解させる順序は特に限定されないが、水溶液のpHを酸性に維持するために、塩化鉄(III)を先に溶解することが望ましい。
第一工程の第一反応液中において、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、水酸化バリウムによって生成されるOHとのモル比は、1:1〜1:3であることが好ましく、1:1.5〜1:2.5であることがより好ましく、1:1.8〜1:2.2であることがさらに好ましい。理論的には、1:2のモル比が最も好ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、第一反応液中のFe3+が有する正電荷量と、OHが有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
具体的には、例えば、0.1モルの水酸化バリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その電離度≒0.8を考慮して、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度は0.08〜0.1モル/L程度と考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.08〜0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
上記を総合的に考慮して、第一工程の第一反応液において、塩化鉄(III)と水酸化バリウムとのモル比は2:1〜2:3であることが好ましい。
上記モル比の範囲であると、第一反応液中のFe3+とOHの電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
[第二工程]
前記第一工程において、前記水溶液のpHを4未満とすることによりアカガネイトを生成し、次いで、第一工程で得た第一反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイト同士を凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程を行うことが好ましい。
ここで上記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整する方法としては、反応液に水酸化バリウムを追加して添加する方法が好ましい。水酸化バリウムを用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が反応液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
第二工程は、凝集を妨げない温度範囲で、例えば10〜40℃で行うことが好ましい。
(反応時間の目安)
第一工程におけるアカガネイトの生成反応の終了は、前記水溶液(第一反応液)が暗褐色から赤褐色に変化したことを目安にして経験的に判断することができる。また、第二工程においてアカガネイト同士が凝集すると、前記第一反応液の粘性が上昇するので、粘性の程度を凝集の程度として判断することができる。
通常、各工程に要する所要時間の目安は以下の通りである。
第一工程の反応開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は10〜25℃において例えば3〜5分程度である。次いで、第二工程で水酸化バリウムを添加し、pHを調整してアカガネイトが凝集するまでに要する時間は10〜25℃において例えば5〜10分程度である。
アカガネイトを回収する方法としては、例えば、公知の沈殿法、濾過法等が挙げられる。アカガネイトを予め凝集させておくと、回収が容易になるので好ましい。
回収したアカガネイトは、乾燥して使用時まで保存することができる。
濾過により得た乾燥後のアカガネイトの形態は、通常は粘土状の塊であり、乳鉢等で粉砕して粉末状にすることができる。
本発明のアカガネイトの製造方法によれば、塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、例えば収率90〜99%でアカガネイトを回収して得ることができる。
以上で説明した製造方法によって得たアカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、化学組成β−Fe3+(O(OH,Cl))で表される酸化鉄鉱物である。その結晶系は単斜晶系で、空間群I2/m、単位格子:a=10.600,b=3.0339,c=10.513,β=90.24°という結晶学的データが学術論文“Post J E, Buchwald V F, American Mineralogist, 76 (1991) p.272-277, Crystal structure refinement of akaganeite”に記載されている。この論文で明らかにされたアカガネイトの結晶構造には塩化物イオンを保持するトンネル構造が存在し、そのトンネルの壁から中心に向けて水酸基が差し出されていることも記載されている。
図2は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
以上の製造方法で得たアカガネイトは、水溶液中の陰イオンを吸着する吸着剤としての用途に好適である。以下、陰イオン吸着方法の一例を説明する。
《陰イオン吸着方法》
(第一実施形態)
陰イオン吸着方法の第一実施形態は、無機化合物の陰イオンを含む溶液(以下、処理対象液と呼ぶことがある。)をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる方法である。
前記無機化合物としては、例えば、セレン、ヒ素、クロム、フッ素、硫黄、リン等の無機元素を含む無機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、セレン、ヒ素、クロムのオキソ酸、フッ化水素酸(フッ酸)、硫酸、リン酸等が挙げられる。
前記無機化合物としては、アカガネイトに高い吸着力を示す観点から、オキソ酸が好ましく、前記無機元素のオキソ酸がより好ましい。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
前記オキソ酸としては、アカガネイトに高い吸着力を示す観点から、セレンのオキソ酸が好ましく、セレンのオキソ酸イオンとしては、セレン酸イオン(SeO 2−)、セレン酸水素イオン(HSeO )、亜セレン酸イオン(SeO 2−)、亜セレン酸水素イオン(HSeO )が挙げられる。
処理対象液に含まれる無機化合物の陰イオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
処理対象液にアカガネイトを接触させる方法は特に限定されず、例えば、処理対象液にアカガネイトの粉末を投入して撹拌する方法、処理対象液にアカガネイトを含む懸濁液を投入して撹拌する方法、保持部材に保持されたアカガネイトに処理対象液を掛けて流す方法等が挙げられる。
本実施形態においては、処理対象液をアカガネイトに接触させると、処理対象液に含まれる陰イオンがアカガネイトの上記トンネル構造にトラップされて吸着すると考えられる。この吸着によってトンネル構造に予め存在する塩化物イオンが前記陰イオンに置換されて脱離する必要があるか否かは未解明であるが、何れにせよ、前記陰イオンがアカガネイトに充分に吸着されることは後述する実験から明らかである。
処理対象液とアカガネイトを接触させる際の処理対象液のpHは、10以下が好ましく、2以上9以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
処理中の処理対象液のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の処理対象液のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、処理中の処理対象液のpHは、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の処理対象液のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
処理対象液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウムを添加する方法が挙げられる。
処理対象液とアカガネイトを接触させる際の処理対象液の温度は特に限定されず、例えば、4〜60℃が好ましく、15〜50℃がより好ましく、30〜40℃がさらに好ましい。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、処理対象液中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
処理対象液に含まれる目的の陰イオンの含有量に対して、この処理対象液に接触するアカガネイトの量は特に限定されず、予備実験を行って経験的に目的の陰イオンを充分に吸着できることを確認した量に設定すればよい。
通常、アカガネイトの添加量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
処理対象液にアカガネイトの粉末を投入して撹拌する吸着方法を採用した場合には、前記陰イオンを吸着したアカガネイトを処理対象液から回収することができる。
処理対象液からアカガネイトの粉末を回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、処理対象液を静置して沈殿させる方法、処理対象液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、処理対象液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。
アカガネイトの粉末をカラムに充填し、このカラムに目的の陰イオンを含む処理対象液を流入させる吸着方法も採用することができる。この場合、アカガネイトが目的の陰イオンを吸着し、目的の陰イオンが除去された処理対象液をカラムから流出させて得ることができる。
以上の第一実施形態の陰イオン吸着方法において、吸着剤の主要な成分としてとしてアカガネイトを有する陰イオン吸着体を使用することができる。ここで「主要な成分」とは、吸着剤の各成分間における目的の陰イオンの吸着量を比較した場合、最も吸着量の多い成分ということを意味する。この陰イオン吸着体は、吸着剤(アカガネイト)を保持する保持部材をさらに有していてもよい。
吸着剤としてのアカガネイトの形状は、例えば、粉末状、礫状、塊状、板状等の取り扱いが容易な形状を採用できる。化学的に合成して得られた粉末状のアカガネイトはそのまま吸着剤として使用してもよいし、この粉末を結着させてより大きな形状に成形してもよい。粉末状のアカガネイトを結着する方法としては、例えば、炭素粒子を高分子ポリマーによって結着して多孔質体(例えば、電極、消臭剤)を形成する場合に使用される公知の方法を採用することができる。また、押し固めたり、焼結したりして得た塊をそのまま使用してもよいし、その塊を適当な大きさに砕いたり切断したりして成形してもよい。これらの形状のアカガネイトを水などの溶媒に分散させたアカガネイト懸濁液を吸着剤とすることもできる。
前記保持部材としては、内部にアカガネイトを入れて保持する容器、カラム(筒)、笊、網等が挙げられる。また、外部表面にアカガネイトを固定することが可能な保持部材も採用でき、例えば、板材の表面にアカガネイトを固定した形態が挙げられる。
(第二実施形態)
本発明にかかる陰イオン吸着方法の第二実施形態は、前述した第一態様のアカガネイトの製造方法によって得た第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる方法である。
第一反応液には、アカガネイトの生成に使用されたバリウム塩に由来するバリウムイオンが溶存している。したがって、前記混合液にはアカガネイト及びバリウムイオンが少なくとも含まれている。アカガネイトの形態は小さくとも数nm程度の粒子状であると考えられる。
この混合液を前記被処理液に混合すると、粒子状のアカガネイトよりも拡散速度の速いバリウムイオンと硫酸イオンが先に結合し、硫酸バリウムが生成する。硫酸バリウムの水に対する溶解性は極めて低いため、硫酸バリウムは前記混合液において沈殿し、混合液が濁る。この結果、混合液中の硫酸イオン濃度は低減する。
その一方、混合液中のアカガネイトは、濃度が低減した硫酸イオンに妨げられることなく、硫酸イオン以外の陰イオンを容易に吸着することができる。
硫酸イオン以外の前記無機化合物としては、第一実施形態の陰イオン吸着方法で例示した無機化合物が挙げられる。
前記被処理液に含まれる硫酸イオンの物質量100モル部に対して、混合する前記第一反応液に含まれるバリウムイオンの物質量は、80モル部以上が好ましく、100モル部以上がより好ましく、150モル部モル部以上がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、硫酸バリウムを容易に形成し、混合液中の硫酸イオン濃度を充分に低減することができる。上記範囲の上限値は特に限定されず、例えば200モル部程度とすればよい。
前記被処理液と前記第一反応液を混合する方法は特に限定されず、被処理液に対して第一反応液を徐々に又は一気に添加してもよいし、逆に第一反応液に対して被処理液を徐々に又は一気に添加してもよい。
前記混合液のpHは、前述した第一実施形態の陰イオン吸着方法の場合と同様の理由から、10以下が好ましく、2以上9以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
前記混合液のpHを上記の好適な範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、(1)被処理液と第一反応液を混合した後で、その混合液に塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を添加する方法;(2)被処理液と第一反応液のうち少なくとも一方に塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を添加し、そのpHを混合前に予め上記の好適な範囲に調整しておく方法、等が挙げられる。
前記混合液の温度は、前述した第一実施形態の陰イオン吸着方法の場合と同様の理由から、例えば、4〜60℃が好ましく、15〜50℃がより好ましく、30〜40℃がさらに好ましい。
前記被処理液に含まれる前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンの含有量に対して、この被処理液に接触するアカガネイトの量は特に限定されず、予備実験を行って経験的に前記陰イオンを充分に吸着できることを確認した量に設定すればよい。
前記混合液において前記陰イオンを吸着したアカガネイトは、硫酸バリウムの沈殿とともに前記混合液から回収することができる。具体的な方法としては、前述した第一実施形態の陰イオン吸着方法で例示した、沈殿法、濾過法等が挙げられる。
(アカガネイトの合成)
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
[試験例1]
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液(pH9)を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
(1)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
(2)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
(3)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図1)。
図1に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
(アカガネイトの合成2)
1.05mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、1.05mol/Lの水酸化バリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、1.05mol/Lの水酸化バリウムをさらに添加して、塩化鉄(III)が残らないようにほぼ完全に反応させ、生成したアカガネイトが分散した反応液を得た。
合成したアカガネイトの一部を分取してXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
[実施例1]
セレン酸ナトリウム0.21mg/L、及び硫酸1200mg/Lを含む被処理液を調製し、pH9に調整した。
この被処理液2.5Lを3つ準備し、各被処理液に対して、上記(アカガネイトの合成2)で得た反応液45ml、67ml、89 mlのそれぞれを添加して混合液(pH6)を得た。この混合液を穏やかに振とうしたところ、硫酸バリウムと考えられる濁りが直ぐに発生した。
続けて5分振とうした後、0.45μmのフィルターで混合液をろ過した。その結果、各濾過液中の硫酸イオン濃度は、アカガネイトを含む前記反応液を添加したすべての混合液に関して0.5mg/Lまで低減し、セレン酸イオン濃度も、0.001mg/Lまで低減していた。各イオン濃度は前述と同様のICP発光分光分析法によって測定した。
以上の結果から、反応液に含まれていたバリウムイオンが硫酸イオンと反応して硫酸バリウムの沈殿を発生するとともに、残った硫酸イオン及びセレン酸イオンは、アカガネイトによって吸着されたことを確認できた。
[比較例1]
上記の(アカガネイトの合成1)と同様に、アカガネイトを含む懸濁液を得た。この際、アカガネイトの生成に用いられた水酸化ナトリウム/塩化鉄(III)で表される最終的なモル比は2.5であった。
バリウムイオンを含まない上記の懸濁液を用いて、実施例1と同様に、各被処理液に添加したところ、硫酸塩に由来する濁りは発生しなかった。
続けて5分振とうした後、0.45μmのフィルターで混合液(pH6)をろ過した。その結果、ICP発光分光分析法で測定したところ、各濾過液中の硫酸イオン濃度は、アカガネイトを含む前記懸濁液を添加したすべての混合液に関して、1100〜1150mg/Lであり、セレン酸イオン濃度は、0.17〜0.20mg/Lであった。
このように各イオンの低減の程度が実施例1よりも小さかった理由として、上記の懸濁液はバリウムイオンを含んでおらず、アカガネイトの殆どが硫酸イオンによって消費され、アカガネイトがセレン酸イオンを吸着できなった、と考えられる。
実施例1及び比較例1の結果から、水酸化バリウムを用いて生成したアカガネイトの反応液を、硫酸イオンとセレン酸イオンを含む被処理液に混合することにより、硫酸イオンに妨げられることなく目的のセレン酸イオンをアカガネイトに吸着させて回収できることが明らかである。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本発明は、セレン、ヒ素、クロム等の重金属類が含まれる汚染水を浄化する用途に広く適用できる。

Claims (5)

  1. 塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有することを特徴とするアカガネイトの製造方法。
  2. 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする請求項1に記載のアカガネイトの製造方法。
  3. 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、水酸化バリウムによって生成されるOHとのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアカガネイトの製造方法。
  4. 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、
    次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程、を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。
  5. 請求項1〜3の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法によって得た前記第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることを特徴とする陰イオン吸着方法。
JP2016162837A 2016-08-23 2016-08-23 アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法 Active JP6738534B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016162837A JP6738534B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016162837A JP6738534B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018030748A JP2018030748A (ja) 2018-03-01
JP6738534B2 true JP6738534B2 (ja) 2020-08-12

Family

ID=61304633

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016162837A Active JP6738534B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6738534B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018030748A (ja) 2018-03-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gupta et al. Microscopic, spectroscopic, and experimental approach towards understanding the phosphate adsorption onto Zn–Fe layered double hydroxide
Shen et al. Superior adsorption capacity of g-C3N4 for heavy metal ions from aqueous solutions
Chen et al. Selective adsorption and efficient removal of phosphate from aqueous medium with graphene–lanthanum composite
Li et al. Surfactant modified zeolite as adsorbent for removal of humic acid from water
Shahid et al. Magnetite synthesis using iron oxide waste and its application for phosphate adsorption with column and batch reactors
Li et al. Fulvic acid anchored layered double hydroxides: A multifunctional composite adsorbent for the removal of anionic dye and toxic metal
Li et al. A composite adsorbent of ZnS nanoclusters grown in zeolite NaA synthesized from fly ash with a high mercury ion removal efficiency in solution
Zhang et al. High-performance removal of phosphate from water by graphene nanosheets supported lanthanum hydroxide nanoparticles
JP5352853B1 (ja) 放射性Cs汚染水の処理方法
JP6448820B2 (ja) 吸着材粒子
CN103303996A (zh) 具有不同表面特征的活性铝氧化物除氟吸附材料的应用
Chowdhury et al. Single-pot green synthesis of novel thiol-engineered iron thiomalate (Fe-TA) metal organic framework for selective adsorption of mercury in water
JP2009034564A (ja) アルカリ溶液中でイオン化する物質xの吸着剤および分離方法
Yuan et al. Facile synthesis and characterization of ZnS polymorphs/Halloysite composite for efficiently selective adsorption of Al (III) from acidic rare earth ions solution
JP6738534B2 (ja) アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法
JP6853677B2 (ja) 水処理システム及び水処理方法
Li et al. Efficient recovery of lithium from spent lithium-ion battery raffinate by Mn and Al-based adsorbents: pretreatment, adsorption mechanism, and performance comparison
JP6855187B2 (ja) 陰イオン吸着方法
JP6853629B2 (ja) 無機オキソ酸イオンの吸着方法
JP6820510B2 (ja) 水処理システム及び水処理方法
JP6796823B2 (ja) 水処理方法
JP2015108606A (ja) 放射性Cs汚染水の処理方法
JP2018015703A (ja) 陰イオン吸着方法及び陰イオン吸着体
JP2018020920A (ja) アカガネイトの製造方法
Yang et al. Facile synthesis of la2 (co3) 3-diatomite composites for the continuous removal of low-concentration phosphate

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20181005

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190626

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200427

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200602

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6738534

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150