JP6738534B2 - アカガネイトの製造方法、及び陰イオン吸着方法 - Google Patents
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Description
また、アカガネイトは陰イオンを吸着しやすいため、処理対象とする陰イオン以外に硫酸イオンが共存する水溶液中にアカガネイトを投入した場合、硫酸イオン以外の処理対象の陰イオンのアカガネイトに対する吸着が、硫酸イオンによって妨げられる問題があった。
[2] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする[1]に記載のアカガネイトの製造方法。
[3] 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、水酸化バリウムによって生成されるOH−とのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアカガネイトの製造方法。
[4] 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程、を有することを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。
[5] [1]〜[3]の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法によって得た前記第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることを特徴とする陰イオン吸着方法。
[第一工程]
本発明の第一態様のアカガネイトの製造方法は、塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有する。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は水酸化バリウムが取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
前記水溶液を調製する際に、塩化鉄(III)と水酸化バリウムを溶解させる順序は特に限定されないが、水溶液のpHを酸性に維持するために、塩化鉄(III)を先に溶解することが望ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、第一反応液中のFe3+が有する正電荷量と、OH−が有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
上記モル比の範囲であると、第一反応液中のFe3+とOH−の電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
前記第一工程において、前記水溶液のpHを4未満とすることによりアカガネイトを生成し、次いで、第一工程で得た第一反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイト同士を凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程を行うことが好ましい。
ここで上記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整する方法としては、反応液に水酸化バリウムを追加して添加する方法が好ましい。水酸化バリウムを用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が反応液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
第二工程は、凝集を妨げない温度範囲で、例えば10〜40℃で行うことが好ましい。
第一工程におけるアカガネイトの生成反応の終了は、前記水溶液(第一反応液)が暗褐色から赤褐色に変化したことを目安にして経験的に判断することができる。また、第二工程においてアカガネイト同士が凝集すると、前記第一反応液の粘性が上昇するので、粘性の程度を凝集の程度として判断することができる。
通常、各工程に要する所要時間の目安は以下の通りである。
第一工程の反応開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は10〜25℃において例えば3〜5分程度である。次いで、第二工程で水酸化バリウムを添加し、pHを調整してアカガネイトが凝集するまでに要する時間は10〜25℃において例えば5〜10分程度である。
回収したアカガネイトは、乾燥して使用時まで保存することができる。
濾過により得た乾燥後のアカガネイトの形態は、通常は粘土状の塊であり、乳鉢等で粉砕して粉末状にすることができる。
図2は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
(第一実施形態)
陰イオン吸着方法の第一実施形態は、無機化合物の陰イオンを含む溶液(以下、処理対象液と呼ぶことがある。)をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる方法である。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
処理中の処理対象液のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の処理対象液のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、処理中の処理対象液のpHは、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の処理対象液のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
処理対象液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウムを添加する方法が挙げられる。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、処理対象液中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
通常、アカガネイトの添加量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
処理対象液からアカガネイトの粉末を回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、処理対象液を静置して沈殿させる方法、処理対象液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、処理対象液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。
本発明にかかる陰イオン吸着方法の第二実施形態は、前述した第一態様のアカガネイトの製造方法によって得た第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる方法である。
その一方、混合液中のアカガネイトは、濃度が低減した硫酸イオンに妨げられることなく、硫酸イオン以外の陰イオンを容易に吸着することができる。
上記範囲の下限値以上であると、硫酸バリウムを容易に形成し、混合液中の硫酸イオン濃度を充分に低減することができる。上記範囲の上限値は特に限定されず、例えば200モル部程度とすればよい。
前記混合液のpHを上記の好適な範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、(1)被処理液と第一反応液を混合した後で、その混合液に塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を添加する方法;(2)被処理液と第一反応液のうち少なくとも一方に塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を添加し、そのpHを混合前に予め上記の好適な範囲に調整しておく方法、等が挙げられる。
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液(pH9)を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
(1)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
(2)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
(3)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図1)。
図1に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
1.05mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、1.05mol/Lの水酸化バリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、1.05mol/Lの水酸化バリウムをさらに添加して、塩化鉄(III)が残らないようにほぼ完全に反応させ、生成したアカガネイトが分散した反応液を得た。
合成したアカガネイトの一部を分取してXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
セレン酸ナトリウム0.21mg/L、及び硫酸1200mg/Lを含む被処理液を調製し、pH9に調整した。
この被処理液2.5Lを3つ準備し、各被処理液に対して、上記(アカガネイトの合成2)で得た反応液45ml、67ml、89 mlのそれぞれを添加して混合液(pH6)を得た。この混合液を穏やかに振とうしたところ、硫酸バリウムと考えられる濁りが直ぐに発生した。
続けて5分振とうした後、0.45μmのフィルターで混合液をろ過した。その結果、各濾過液中の硫酸イオン濃度は、アカガネイトを含む前記反応液を添加したすべての混合液に関して0.5mg/Lまで低減し、セレン酸イオン濃度も、0.001mg/Lまで低減していた。各イオン濃度は前述と同様のICP発光分光分析法によって測定した。
以上の結果から、反応液に含まれていたバリウムイオンが硫酸イオンと反応して硫酸バリウムの沈殿を発生するとともに、残った硫酸イオン及びセレン酸イオンは、アカガネイトによって吸着されたことを確認できた。
上記の(アカガネイトの合成1)と同様に、アカガネイトを含む懸濁液を得た。この際、アカガネイトの生成に用いられた水酸化ナトリウム/塩化鉄(III)で表される最終的なモル比は2.5であった。
バリウムイオンを含まない上記の懸濁液を用いて、実施例1と同様に、各被処理液に添加したところ、硫酸塩に由来する濁りは発生しなかった。
続けて5分振とうした後、0.45μmのフィルターで混合液(pH6)をろ過した。その結果、ICP発光分光分析法で測定したところ、各濾過液中の硫酸イオン濃度は、アカガネイトを含む前記懸濁液を添加したすべての混合液に関して、1100〜1150mg/Lであり、セレン酸イオン濃度は、0.17〜0.20mg/Lであった。
このように各イオンの低減の程度が実施例1よりも小さかった理由として、上記の懸濁液はバリウムイオンを含んでおらず、アカガネイトの殆どが硫酸イオンによって消費され、アカガネイトがセレン酸イオンを吸着できなった、と考えられる。
Claims (5)
- 塩化鉄(III)と水酸化バリウムを水に溶解させ、得られた水溶液中でアカガネイトを生成し、そのアカガネイトを含む第一反応液を得る第一工程、を有することを特徴とするアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、前記水溶液のpHを7未満とすることにより、アカガネイトを生成することを特徴とする請求項1に記載のアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、水酸化バリウムによって生成されるOH−とのモル比が、1:1〜1:3となる工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアカガネイトの製造方法。
- 前記第一工程は、前記水溶液のpHを4未満とすることにより、アカガネイトを生成する工程であり、
次いで、前記第一反応液のpHをpH4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイトを凝集させて、アカガネイトを回収する第二工程、を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載のアカガネイトの製造方法によって得た前記第一反応液を、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む被処理液に混合し、その混合液を得ることにより、前記混合液中に硫酸バリウムを生成させるとともに、前記硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることを特徴とする陰イオン吸着方法。
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