JP2019076863A - 陰イオン処理方法、及びアカガネイト再生方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明者らはより優れた吸着効率を示す鉱物を種々検討したところ、アカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、目的の陰イオンに対して優れた吸着効率を示すことを見出した。
[2] 前記溶出液の体積が前記処理溶液の体積よりも小さいことを特徴とする[1]に記載の陰イオン処理方法。
[3] 前記陰イオンは、無機化合物のオキソ酸イオンであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の陰イオン処理方法。
[4] 前記陰イオンは、セレン酸イオン又は亜セレン酸イオンであることを特徴とする[3]に記載の陰イオン処理方法。
[5] 無機化合物の陰イオンが吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させて、前記陰イオンを前記アカガネイトから前記溶出液に溶出させる工程を有することを特徴とするアカガネイト再生方法。
[6] 前記陰イオンを溶出した前記アカガネイトをpH8以下の溶液に接触させることにより、前記アカガネイトの前記陰イオンに対する吸着力を再生する工程を有することを特徴とする[5]に記載のアカガネイト再生方法。
本発明のアカガネイト再生方法によれば、アカガネイトに吸着した陰イオンを溶出液へ容易に溶出させて、陰イオンに対するアカガネイトの吸着力を再生することができる。
本発明の第一態様の陰イオン処理方法は、無機化合物の陰イオンを含み、且つpH8以下である処理溶液をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる工程(吸着工程)と、前記陰イオンが吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させて、前記アカガネイトから前記陰イオンを前記溶出液に溶出させる工程(溶出工程)と、を有する。
以下、吸着工程と溶出工程を順に説明する。
処理溶液は、無機化合物の陰イオンを含み、且つpH8以下の水溶液である。
前記無機化合物としては、例えば、セレン、ヒ素、クロム、フッ素、硫黄、リン等の無機元素を含む無機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、セレン、ヒ素、クロムのオキソ酸、フッ化水素酸(フッ酸)、硫酸、リン酸等が挙げられる。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
処理溶液のpHが1以上8以下であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理溶液のpHが2以上8以下であると、前記吸着力が高まる。
処理溶液のpHが3以上7以下であると、前記吸着力がより高まる。
処理溶液のpHが4以上6以下であると、前記吸着力がさらに高まるとともに、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる。
処理溶液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、後述する1種以上の塩(S)等を添加する方法が挙げられる。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、処理溶液中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
通常、アカガネイトの添加量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
処理溶液からアカガネイトを回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、処理溶液を静置して沈殿させる方法、処理溶液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、処理溶液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。
陰イオンを吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させことにより、アカガネイトから陰イオンを溶出液に溶出させることができる。その溶出効率(溶出した陰イオン量/吸着した陰イオン量)は、通常90%以上を期待することができる。
溶出液のpHが8超であると、アカガネイトから陰イオンを溶出させることができる。溶出液のpHが9以上であると前記溶出の効率を高めることができる。溶出液のpHが10以上であると前記溶出の効率をより一層高めることができる。
溶出液のpH13以下であると、より好ましくは12以下であるとアカガネイトの分解や変性を抑制することができる。溶出液のpHが11以下であるとアルカリ強度が減るので溶出液の取り扱いが容易となる。
溶出液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、後述する1種以上の塩(S)等を添加する方法が挙げられる。
溶出液からアカガネイトを回収する方法としては、例えば、前述した沈殿法、濾過法等が挙げられる。
本発明の第二態様のアカガネイト再生方法は、無機化合物の陰イオンを吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させて、前記陰イオンを前記アカガネイトから前記溶出液に溶出させる工程を有する。この溶出により、前記陰イオンがアカガネイトに吸着していた箇所から溶出されるため、その箇所が空いた状態になると考えられる。次いで、このアカガネイトをpH8以下の溶液に接触させることにより、先ほど空いた箇所が前記陰イオンの吸着に適した状態となり、前記アカガネイトの吸着力が発揮される状態となる。よって、本態様のアカガネイト再生方法は、第一工程としてpH8超の溶液にアカガネイトを接触させて、予め吸着していた陰イオンを溶出させた後、第二工程として、前記陰イオンを溶出した前記アカガネイトをpH8以下の溶液に接触させることにより、前記アカガネイトの前記陰イオンに対する吸着力を再生する工程を有することが好ましい。
前記陰イオンを溶出させる工程は、前述した溶出工程と同様であるので、その説明を省略する。前記アカガネイトをpH8以下の溶液に接触させる方法としては、前述した吸着工程においてアカガネイトに処理溶液を接触させる方法と同様の方法が適用できる。ここで、アカガネイトの吸着力を再生させる目的で接触させるpH8以下の溶液は、前記陰イオンを含む前記処理溶液であってもよいし、前記陰イオンを含まない溶液であってもよい。
再生溶液のpHが1以上8以下であると、アカガネイトの陰イオンに対する吸着力を再生することができる。
再生溶液のpHが2以上8以下であると、再生後の前記吸着力が高まる。
再生溶液のpHが3以上7以下であると、再生後の前記吸着力がより高まる。
再生溶液のpHが4以上6以下であると、再生後の前記吸着力がさらに高まる。
再生溶液を調製する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、後述の1種以上の塩(S)等をイオン交換水や公知のpH緩衝液に添加して、再生溶液を得ることができる。
本発明において陰イオン吸着剤として使用するアカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、化学組成β−Fe3+(O(OH,Cl))で表される酸化鉄鉱物である。その結晶系は単斜晶系で、空間群I2/m、単位格子:a=10.600,b=3.0339,c=10.513,β=90.24°という結晶学的データが学術論文“Post J E, Buchwald V F, American Mineralogist, 76 (1991) p.272-277, Crystal structure refinement of akaganeite”に記載されている。この論文で明らかにされたアカガネイトの結晶構造には塩化物イオンを保持するトンネル構造が存在し、そのトンネルの壁から中心に向けて水酸基が差し出されていることも記載されている。
図1は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
一方、溶出工程で用いる溶出液のpHは8超に調整されているので、溶出液に接触したアカガネイトにおいて、そのトンネル構造の中心を向く水酸基がプロトンを脱離して負電荷を帯びる。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びるので、吸着していた陰イオンを静電的反発によってアカガネイトから脱離させることができる。
本発明で用いるアカガネイトは公知の方法で化学合成されたものであってもよいし、天然に産出されたものであってもよいが、以下に説明する方法で合成したアカガネイトは高品質であり、吸着力が優れているので好ましい。
アカガネイトを高収率で合成する観点から、前記1種以上の塩(S)は水に易溶性であることが好ましく、例えば、下記のカチオンを含む塩が好ましい。
前記アルカリ金属は周期表の第1族元素であり、ナトリウム、カリウムが好ましい。
前記アルカリ土類金属は周期表の第2族元素であり、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。
アカガネイトの生成反応を促進するために、前記水溶液(反応液)を例えば40〜100℃程度に加熱してもよい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は塩(S)が取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
前記水溶液を調製する際に、塩化鉄(III)と前記1種以上の塩(S)を溶解させる順序は特に限定されないが、水溶液のpHを酸性に維持するために、塩化鉄(III)を先に溶解することが望ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、前記水溶液中のFe3+が有する正電荷量と、OH−が有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
また、例えば、0.1モルの炭酸ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸の酸解離定数pKa2=10.3及び上記みかけの酸解離定数pKa1=6.3を考慮して、溶液pHが5.3以下において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.18〜0.2モル/L程度と考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.18〜0.2モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの水酸化ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その酸解離定数pKa=13を考慮して、溶液pHが7以下の酸性域において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度はほぼ0.1モル/Lと考えられる。これに基づき、塩化鉄(III)の濃度は、0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
上記モル比の範囲であると、前記水溶液中のFe3+とOH−の電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
アカガネイトの生成反応の開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は、生成するアカガネイトの濃度にもよるが、10〜25℃において例えば3〜5分程度である。
ここで前記水溶液のpHを4以上pH6以下に調整する方法としては、前記水溶液に前記1種以上の塩(S)を追加して添加する方法が好ましい。前記1種以上の塩(S)を用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が前記水溶液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
回収したアカガネイトは、乾燥して使用時まで保存することができる。
濾過により得た乾燥後のアカガネイトの形態は、通常は粘土状の塊であり、乳鉢等で粉砕して粉末状にすることができる。
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4.5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
<1> セレンを0.0538mg含むセレン酸ナトリウム水溶液100 mLに、合成したアカガネイトの懸濁液(8.9 g/L:pH4.5)を100mL添加し、pHを6に調整した後、5分間撹拌した。攪拌後、遠心分離(5000rpm、5分)し、上澄み液を回収して、そのセレン濃度を測定したところ、0.0005mg/L以下(検出限界以下)であった。
<2> 上記<1>の遠心分離で沈殿したアカガネイトを回収し、水酸化ナトリウム水溶液50mlに懸濁して、pHを10に調整した後、5分間撹拌した。攪拌後、遠心分離(5000rpm、5分)し、上澄み液を少量回収してセレン濃度を測定したところ、0.991mg/Lであり、0.0496mgのセレンが上澄み液中に溶出されたことを確認した。
<3> 上記<2>の遠心分離で沈殿したアカガネイトを回収し、塩酸水溶液50mlに懸濁して、pH4.5に調整した後、5分間撹拌した。攪拌後、上記<1>と同じ様に、セレンを0.0538mg含むセレン酸ナトリウム水溶液100 mLを加え、pH6に調整した後、5分間撹拌した。攪拌後、遠心分離(5000rpm、5分)し、上澄み液を回収してセレン濃度を測定したところ、0.0005mg/L以下(検出限界以下)であった。以上の結果を表1に示す。
以上の結果から、アカガネイトは低pH条件においてセレン酸を吸着し、高pH条件でセレン酸を脱離すること、及びアカガネイトの吸着力を、高pH処理した後で低pH処理することによって再生できることを確認できた。さらに、大量の溶液に含まれていたセレンをアカガネイトに吸着させた後、少量の溶液に溶出させることにより、セレンを濃縮できることが分かった。
硫酸を約1200mg/L(約12.5mmol/L)で含む水溶液(pH10)に、上記で合成したアカガネイトを、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pHを6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、硫酸イオンと、塩化物イオンの濃度をそれぞれイオンクロマトグラフ法によって測定した。
その結果、図2のグラフに示すように、アカガネイトの添加量に比例して、水溶液中の塩化物イオン濃度が増加し、それに伴って硫酸イオン濃度が低下した。増加した塩化物イオン濃度は、低下した硫酸イオン濃度の約2倍であった。この結果は、アカガネイトから脱離した塩化物イオンの電荷量と、アカガネイトに吸着した硫酸イオンの電荷量とがほぼ同じであることを意味する。
以上の結果から、アカガネイトを構成する塩化物イオンは、別の陰イオンを吸着する際に置換されると考えられる。
Claims (6)
- 無機化合物の陰イオンを含み、且つpH8以下である処理溶液をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させる工程と、
前記陰イオンが吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させて、前記アカガネイトから前記陰イオンを前記溶出液に溶出させる工程と、
を有することを特徴とする陰イオン処理方法。 - 前記溶出液の体積が前記処理溶液の体積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の陰イオン処理方法。
- 前記陰イオンは、無機化合物のオキソ酸イオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰イオン処理方法。
- 前記陰イオンは、セレン酸イオン又は亜セレン酸イオンであることを特徴とする請求項3に記載の陰イオン処理方法。
- 無機化合物の陰イオンが吸着したアカガネイトをpH8超の溶出液に接触させて、前記陰イオンを前記アカガネイトから前記溶出液に溶出させる工程を有することを特徴とするアカガネイト再生方法。
- 前記陰イオンを溶出した前記アカガネイトをpH8以下の溶液に接触させることにより、前記アカガネイトの前記陰イオンに対する吸着力を再生する工程を有することを特徴とする請求項5に記載のアカガネイト再生方法。
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