JP2018038964A - 水処理システム及び水処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明者らはより優れた吸着効率を示す鉱物を種々検討したところ、アカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、目的の陰イオンに対して優れた吸着効率を示すことを見出した。
[2] 前記薬品調合槽に供給する塩化鉄(III)が含まれる第一水溶液を貯留する第一貯留槽と、前記薬品調合槽に供給する、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)が含まれる第二水溶液を貯留する第二貯留槽と、前記第一水溶液を前記第一貯留槽から前記薬品調合槽へ供給する第一水溶液供給部と、前記第二水溶液を前記第二貯留槽から前記薬品調合槽へ供給する第二水溶液供給部と、を備えることを特徴とする[1]に記載の水処理システム。
[3] 前記原水槽に導入された前記原水と、これに混合された前記薬液との混合液が導入され、前記混合液に含まれるアカガネイトと上澄み液とを分離する濁水処理装置と、前記混合液を前記原水槽から前記濁水処理装置へ送液する混合液送液部と、を備えることを特徴とする[1]又は[2]に記載の水処理システム。
[4] 前記アカガネイトを凝集させる凝集剤を保持する第三貯留槽と、前記凝集剤を前記第三貯留槽から前記濁水処理装置へ供給する凝集剤供給部と、を備えることを特徴とする[3]に記載の水処理システム。
[5] 前記上澄み液を受け入れて一時的に貯留する放流槽と、前記上澄み液を前記濁水処理装置から前記放流槽へ送液する上澄み液送液部と、を備えることを特徴とする[3]又は[4]に記載の水処理システム。
[6] 前記濁水処理装置から前記アカガネイトを含む沈殿物を受け入れる貯泥槽と、前記沈殿物を前記濁水処理装置から前記貯泥槽へ移送する沈殿物第一移送部と、を備えることを特徴とする[3]〜[5]の何れか一項に記載の水処理システム。
[7] 前記沈殿物を脱水する脱水装置と、前記沈殿物を前記貯泥槽から前記脱水装置へ移送する沈殿物第二移送部と、を備えることを特徴とする[6]に記載の水処理システム。
[8] [2]に記載の水処理システムを用いた水処理方法であって、無機化合物の陰イオンが含まれる原水を前記原水槽へ導入する工程と、前記第一貯留槽と前記第二貯留槽から、塩化鉄(III)を含む第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)を含む第二水溶液をそれぞれ前記薬品調合槽へ供給し、前記薬品調合槽において前記第一水溶液と前記第二水溶液を混合することにより、得られた薬液の中でアカガネイトを生成する工程と、前記アカガネイトが含まれる前記薬液を前記原水槽へ導入し、前記原水と前記薬液とを混合する工程と、を有することを特徴とする水処理方法。
本発明の第一態様の水処理システムは、無機化合物の陰イオンを含む原水が導入される原水槽と、前記原水に混合して用いる、アカガネイトが含まれる薬液を保持する薬品調合槽と、前記薬液を前記薬品調合槽から前記原水槽へ供給する薬液供給部と、を備える。この水処理システムの一例を図1に示す。
薬液供給部2aは、薬品調合槽2と原水槽1を接続する配管、ポンプ及びバルブによって構成されている。
薬品調合槽2には、前記第二水溶液を第二貯留槽4から薬品調合槽2へ供給する第二水溶液供給部4aが接続されている。
濁水処理装置5には、前記混合液を原水槽1から濁水処理装置5へ送液する混合液送液部1aが接続されている。
濁水処理装置5には、前記凝集剤を第三貯留槽6から濁水処理装置5へ供給する凝集剤供給部6aが接続されている。
放流槽7には、前記上澄み液を濁水処理装置5から放流槽7へ送液する上澄み液送液部5aが接続されている。
貯泥槽8には、前記沈殿物を濁水処理装置5から貯泥槽8へ移送する沈殿物第一移送部5bが接続されている。
脱水装置9には、前記沈殿物を貯泥槽8から脱水装置9へ移送する沈殿物第二移送部8aが接続されている。
上記の接続を行う各部は、配管、バルブ、ポンプ等の公知の接続部材によって構成されている。
本発明の第二態様の水処理方法は、前述した第一態様の水処理システムを利用して、原水(被処理水)に含まれる無機化合物の陰イオンを低減する方法である。この水処理方法によって清浄な処理水が得られる。以下に、水処理システム10を利用した方法を説明する。
次いで、第一貯留槽3と第二貯留槽4から薬品調合槽2へ、第一水溶液供給部3a及び第二水溶液供給部4aを介して、塩化鉄(III)を含む第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)を含む第二水溶液とをそれぞれ供給する。薬品調合槽2において第一水溶液及び第二水溶液を混合することにより、薬液中でアカガネイトが生成する(生成工程)。この際、必要に応じて水道水を薬品調合槽2へ供給してもよい。
続いて、薬液供給部2aを介して薬品調合槽2から原水槽1へ、アカガネイトが含まれた薬液を導入し、原水と薬液とを混合する(混合工程)。この混合液においてアカガネイトに前記無機化合物の陰イオンが接触し、吸着する。その後、混合液送液部1aを介して原水槽1から濁水処理装置5へ、アカガネイトを含む混合液を移送する。
原水槽1において、無機化合物の陰イオンを含む原水をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることができる。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
原水にアカガネイトを添加し、目的の陰イオンをアカガネイトに吸着させる際の処理中の原水(アカガネイト分散液)のpHは、10以下が好ましく、2以上9以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
処理中の原水のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の原水のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の原水のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
原水のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、前記1種以上の塩(S)を添加する方法が挙げられる。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、原水中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
通常、接触させるアカガネイトの量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
薬品調合槽2において、塩化鉄(III)が含まれる第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)が含まれる第二水溶液とを混合することによりアカガネイトを生成する方法は、吸着力が優れた高品質のアカガネイトが得られるので好ましい。
前記アルカリ金属は周期表の第1族元素であり、ナトリウム、カリウムが好ましい。
前記アルカリ土類金属は周期表の第2族元素であり、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。
アカガネイトの生成反応を促進するために、上記水溶液(反応液)を例えば40〜100℃程度に加熱してもよい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は塩(S)が取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
前記混合液(反応液)を調製する際に、第一水溶液と第二水溶液を混合する順序は、混合液のpHを酸性に維持するために、第一水溶液に対して第二水溶液を添加する順序が望ましい。また、酸性の第一水溶液とアルカリ性の第二水溶液を混合した際に、前述した好適なpHとなるように両方の溶液を混合することが好ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、前記反応液中のFe3+が有する正電荷量と、OH−が有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
また、例えば、0.1モルの炭酸ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸の酸解離定数pKa2=10.3及び上記みかけの酸解離定数pKa1=6.3を考慮して、溶液pHが5.3以下において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.18〜0.2モル/L程度と考えられる。これに基づき、前記反応液中の塩化鉄(III)の濃度は、0.18〜0.2モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの水酸化ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その酸解離定数pKa=13を考慮して、溶液pHが7以下の酸性域において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度はほぼ0.1モル/Lと考えられる。これに基づき、前記反応液中の塩化鉄(III)の濃度は、0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
上記モル比の範囲であると、前記反応液中のFe3+とOH−の電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
アカガネイトの生成反応の開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は、生成するアカガネイトの濃度にもよるが、10〜25℃において例えば3〜5分程度である。
ここで前記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整する方法としては、前記反応液に前記1種以上の塩(S)を追加して添加する方法が好ましい。前記1種以上の塩(S)を用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が前記反応液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH−=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すブロードなピークが確認された。
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、20℃で0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、pH9となった上記水溶液を20℃で0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図3)。
図3に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液(原水)を調製した。
塩化鉄(III)水溶液に、水酸化ナトリウムを添加して、塩化鉄(III)0.1mol/L、水酸化ナトリウム0.2mol/Lとなるように混合し、約pH2の水溶液中でアカガネイトを生成した。このアカガネイトが含まれた薬液(pH2)を、アカガネイトの濃度が0.15w/w%〜1.0w/wとなるように、原水に添加した。
原水に薬液を添加した混合液を数時間撹拌した後、pH4.5に調整してアカガネイトを凝集及び沈降させ、上澄み液を回収した。回収した上澄み液に含まれる溶存セレン(mg/L)と混合液中のアカガネイトの濃度の関係を図4に示す。
図4の結果から、アカガネイトを約0.5w/w%で添加すると、溶存セレン濃度が環境基準(0.01mg/L)未満に低減できることが分かった。工事現場の排水中に含まれるセレン濃度は0.03〜0.1mg/L程度であることを考慮すると、本発明によってセレンを含む排水を充分に処理できることが理解される。
Claims (8)
- 無機化合物の陰イオンを含む原水が導入される原水槽と、
アカガネイトが含まれる薬液を保持する薬品調合槽と、
前記薬液を前記薬品調合槽から前記原水槽へ供給する薬液供給部と、
を備えることを特徴とする水処理システム。 - 前記薬品調合槽に供給する塩化鉄(III)が含まれる第一水溶液を貯留する第一貯留槽と、
前記薬品調合槽に供給する、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)が含まれる第二水溶液を貯留する第二貯留槽と、
前記第一水溶液を前記第一貯留槽から前記薬品調合槽へ供給する第一水溶液供給部と、
前記第二水溶液を前記第二貯留槽から前記薬品調合槽へ供給する第二水溶液供給部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。 - 前記原水槽に導入された前記原水と、これに混合された前記薬液との混合液が導入され、前記混合液に含まれるアカガネイトと上澄み液とを分離する濁水処理装置と、
前記混合液を前記原水槽から前記濁水処理装置へ送液する混合液送液部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理システム。 - 前記アカガネイトを凝集させる凝集剤を保持する第三貯留槽と、
前記凝集剤を前記第三貯留槽から前記濁水処理装置へ供給する凝集剤供給部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の水処理システム。 - 前記上澄み液を受け入れて一時的に貯留する放流槽と、
前記上澄み液を前記濁水処理装置から前記放流槽へ送液する上澄み液送液部と、
を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の水処理システム。 - 前記濁水処理装置から前記アカガネイトを含む沈殿物を受け入れる貯泥槽と、
前記沈殿物を前記濁水処理装置から前記貯泥槽へ移送する沈殿物第一移送部と、
を備えることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の水処理システム。 - 前記沈殿物を脱水する脱水装置と、
前記沈殿物を前記貯泥槽から前記脱水装置へ移送する沈殿物第二移送部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の水処理システム。 - 請求項2に記載の水処理システムを用いた水処理方法であって、
無機化合物の陰イオンが含まれる原水を前記原水槽へ導入する工程と、
前記第一貯留槽と前記第二貯留槽から、塩化鉄(III)を含む第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)を含む第二水溶液をそれぞれ前記薬品調合槽へ供給し、前記薬品調合槽において前記第一水溶液と前記第二水溶液を混合することにより、得られた薬液の中でアカガネイトを生成する工程と、
前記アカガネイトが含まれる前記薬液を前記原水槽へ導入し、前記原水と前記薬液とを混合する工程と、
を有することを特徴とする水処理方法。
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