WO2006049280A1

WO2006049280A1 - 振動対応グリース組成物及びこれを用いた案内装置

Info

Publication number: WO2006049280A1
Application number: PCT/JP2005/020374
Authority: WO
Inventors: Hidekazu Michioka; Yoshio Taki; Hiroshi Niwa
Original assignee: Thk Co., Ltd.
Priority date: 2004-11-08
Filing date: 2005-11-07
Publication date: 2006-05-11
Also published as: TW200624549A; KR20070085918A; CN101061205B; JPWO2006049280A1; US20070265177A1; EP1811012A1; CN101061205A; EP1811012A4

Description

振動対応グリース組成物及びこれを用いた案内装置

技術分野

[0001] この発明は、種々の装置の軸受部、摺動部、接合部等の案内装置において潤滑性を付与するために用いられるグリース組成物に係り、特に、例えば直線案内装置、曲線案内装置、ボールねじ、ボールスプライン等の案内装置ように、軸 (軌道レールやねじ軸等）とスライド部材 (摺動台やナット部材等）とが転動体 (ボール又はローラ）を介して相対的に移動自在に係合し、これら軸とスライド部材とが振動を伴う駆動条件を含む案内装置に用いるのに好適な振動対応ダリース組成物及びこれを用 V、た案内装置に関する。

背景技術

[0002] 軸とスライド部材とが転動体を介して荷重を負荷しながら相対的に移動自在に係合する案内装置は、その運動の基本が転がり運動に基づくため、摺動抵抗が低いという利点があり、工作機械や搬送装置を始めとして、半導体製造装置、医療装置等の多くの用途に用いられて、る。

[0003] そして、このような案内装置においては、軸とスライド部材との間の摺動抵抗を軽減し、転動体それ自体の摩耗やこれが転走する軌道レールやねじ軸等の軸側の転走面や摺動台やナット部材等のスライド部材側の負荷転走面の摩耗を抑制し、軸とスライド部材との間の高精度の運動を長期に亘つて維持する必要から、係る転動体の表面や上記軸側の転走面及びスライド部材側の負荷転走面をその使用条件に応じて適切な潤滑を施すことが必要であり、従来においても多くの潤滑方法が採用されており、その代表的なものとして種々のグリース組成物が提案されている。

[0004] 例えば、特開平 10-169,657号公報には、ワイヤーボンダ用装置や工作機械等で使用される転動装置において、増ちよう剤としてウレァ化合物 5〜25重量％と、基油として 40°C動粘度 20〜300mm2/sの合成炭化水素油、エステル油、及び鉱油から選ばれた少なくとも 1種 55〜94重量％とを含有するグリースに、有機モリブデン 0. 5〜10 重量％とカルシウムスルフォネート及び Z又はバリウムスルフォネート 0. 5〜10重量％とを添加して得られたグリース組成物を封入し、微少ストロークの搖動運動での耐フレツチング性能を改善することが提案されて、る。

[0005] また、特開 2002-053,884号公報には、 (a )基油、（b)所定の構造式を有するジウレァ系増ちよう剤、（c)塩基性金属スルフォネート、塩基性金属サリチレート、及び塩基性金属フエネートから選ばれた少なくとも 1種の金属塩ィ匕合物、及び (d)ァルケ-ルコハク酸無水物を含むグリース組成物が、圧送性や含水時のせん断安定性及び防鲭性に優れ、製鉄所の連続铸造設備軸受ゃ圧延機軸受等の用途に好適であることが記載されている。

[0006] 更に、特開 2002-053,889号公報には、チォ硫酸ソーダ 0. 05〜30重量％を含むグリース組成物にカルシウムサリシレート、マグネシウムサリシレート、カルシウムフエネート及びカルシウムスルフォネートから選ばれた少なくとも 1種の添加剤 0. 1〜5重量％を配合し、防鲭性ゃ耐摩耗性に優れていて、特に多量の水と接触する条件下で使用される鉄鋼設備や食品機械等の軸受、歯車等に好適なグリース組成物が提案されている。

[0007] 更にまた、特開 2003-147,378号公報には、基油としての合成エステル油と、 Li石けん系増ちよう剤と、カルシウムスルフォネートとを含み、かつ、前記カルシウムスルフォネートがカルシウム含有量 0. 2〜20重量 %であると共に基油と増ちよう剤の合計量 10 0重量部に対して 0. 5〜： LO重量部の割合で含まれており、これによつて転がり軸受の音響性能と耐フレツチング性とが同時に改善されたグリース組成物が提案されている。

[0008] 更に、特表 2004-518,014号公報には、基油及び増粘剤を含むグリース組成物に、チォ硫酸ナトリウム 0. 05〜30重量％と、サリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシゥム、カルシウムフエネート及びスルホン酸カルシウム力なる群力選ばれた 1種以上の添加剤 0. 1重量 %以上とを含有せしめ、極圧性、防鲭性及び耐摩耗性に優れていて各種工業の機械装置で用いられるベアリング及びギアにお!、て好適に用いられるグリース組成物が提案されて！、る。

[0009] そして、特開 2004-043,781号公報には、グリース組成物に関するものではなくて潤滑油組成物に関するものではある力極性促進剤の存在下に酸性モリブデンィ匕合物と所定の塩基性窒素化合物とを反応させて得られた油溶性ォキシモリブデン錯体と、所定のモリブデンジチォ力ルバメートとを含み、摩擦低減性能が改善され、自動車製造業等で用いるエンジン油等として有用な潤滑油組成物が提案されている。

[0010] しかるに、近年、例えばマシユングセンター、 NC旋盤、ドリルセンター等の工作機械ゃ、例えばチップマウンター、ボンダ一等の実装機等の分野においては、より一層の生産効率の向上や高タクトな加工 Z実装等が求められており、例えば往復運動についても、大リードのボールねじやリニアモータ等が使用されるようになり、これまでの速度 60m/分程度まで及び加減速度 1G程度までの使用条件力も速度 90m/分以上、場合によっては 200m/分以上で加減速度 1G以上、場合によっては 4G以上での使用条件が求められるようになってきて、る。

[0011] 例えば、射出成形機等の分野で用いられる取出しロボット用の案内装置 (例えば、 LMガイド等）においては最大 480m/分の高速度及び最大 10Gの高加減速度で、また生産設備等の分野で用いられてリニアモータ Zベルトで駆動される搬送装置等においては最大 240〜300m/分の高速度及び最大 6Gの高加減速度でそれぞれ使用される等、案内装置がこれまでに経験したことがないような高速度及び高加減速度の使用条件下で使用される場合がある。

[0012] そして、案内装置がこのような高速度（120m/分以上)及び高加減速度（2G以上）の使用条件下で使用された場合、本発明者らの検討によれば、これまでに観察されたことのな!、新たな摩耗の問題が発生して、る。

[0013] すなわち、軸とスライド部材とが転動体を介して相対的に移動する案内装置においては、例えば輸送中等に、接触する 2面間（軸の転走面と転動体の間及びスライド部材の転走面と転動体の間）に相対的な繰返し微小滑りが生じると、この接触する 2面間、すなわち潤滑性能が要求される転動体の表面や軸やスライド部材の転走面 (以下、これらを「潤滑面」ということがある）に油膜切れが生じ、これらの潤滑面が潤滑不充分になって異常摩耗が発生する、いわば疑似フレツチング現象が観察される。

[0014] ところで、従来のフレツチング現象については、軸とスライド部材との間に相対的な移動がない場合や移動があっても極めて低速である場合、潤滑面に油膜切れが生じ、これが原因で摩耗が発生して腐食が生じると考えられており、これまでは、軸とスライド部材とが転動体を介して相対的に移動している場合には、周辺力潤滑面に潤滑油やグリース等の潤滑剤が供給され、そこに油膜が形成されて油膜切れが発生することがなぐフレツチング現象に基づく摩耗も発生することはないと考えられていた。

[0015] し力しながら、本発明者らが直線案内装置 (リニアガイド)を用いて速度 90m/分以上及び加減速度 1G以上という高速 ·高加減速下の使用条件で往復運動させた場合における摩耗について詳細に検討したところ、意外にも、これまでの使用条件 (速度 60m/分以下及び加減速度 1G以下)では観察されたことのない、し力も、フレツチング現象に類似した摩耗が、ストロークエンドだけでなぐ加減速域や等速域においても観察された。

[0016] また、本発明者らは、この高速'高加減速下の使用条件での摩耗について更に詳細に検討した結果、直線案内装置の往復運動中にそのストロークエンドや加減速域、特にストロークエンドにおいて微振動が発生し、また、この際の微振動は、これまでの通常の使用条件 (速度 60m/分以下及び加減速度 1G以下)ではその振幅が高々 5 m程度であったもの力速度 90m/分以上及び加減速度 1G以上という高速 ·高加減速下の使用条件になると 5〜20 mにまで高まり、この強い微振動が原因して先ずストロークエンドにフレツチング現象に類似した摩耗が発生し、次第に加減速域から等速域へと広がっていき、更にこの際に、ストロークエンドでの摩耗により発生した摩耗粉が加減速域から等速域へと拡散し、加減速域や等速域での摩耗を促進することを突き止めた。

[0017] 更に、これまでの通常の使用条件 (速度 60m/分以下及び加減速度 1G以下)であつても、振幅 10 m異常の振動が伴うと、ストロークエンドでの摩耗により発生した摩耗粉が加減速域から等速域へと拡散し、加減速域や等速域での摩耗を促進することを確認した。

[0018] 特許文献 1：特開平 10-169,657号公報

特許文献 2：特開 2002-053,884号公報

特許文献 3：特開 2002-053,889号公報

特許文献 4：特開 2003-147,378号公報

特許文献 5：特表 2004-518,014号公報特許文献 6：特開 2004-043,781号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0019] そこで、本発明者らは、使用途中に不可避的に振幅の大きい振動が発生するような駆動条件を含む案内装置に用いられても、確実に優れた耐摩耗性を発揮し得る振動対応グリース組成物について鋭意検討した結果、意外なことには、グリース性能を改善するための添加剤として有機モリブデン、金属スルフォネート及び金属フエネートの 3成分を同時に併用することにより、この問題を確実に解決できることを見い出し、本発明を完成した。

[0020] 従って、本発明の目的は、振動を伴う駆動条件を含むような案内装置に使用しても、優れた耐摩耗性を発揮する振動対応グリース組成物を提供することにある。

また、本発明の他の目的は、このような振動対応グリース組成物が封入され、優れた耐摩耗性を発揮する案内装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0021] すなわち、本発明は、鉱油系及び Z又は合成油系の潤滑基油に増ちよう剤とダリース性能を改善するための添加剤とを配合してなるグリース組成物にぉ、て、前記添加剤として有機モリブデンと、金属スルフォネートと、金属フエネートとを配合したことを特徴とする振動対応グリース組成物である。

また、本発明は、このような振動対応グリース組成物が封入されていることを特徴とする案内装置である。

[0022] 本発明において、使用される潤滑基油は、それが鉱油系であっても、また、合成系であってもよいが、その動粘度（JIS K2220.23 ;40°C)については 5mm²/s以上 25mm²/ s以下、好ましくは 9mm²/s以上 21mm²/s以下であるのがよい。この動粘度 (JIS K2220. 23 ;40°C)が 5mm²/sより低いと、潤滑性能が低下するという問題が生じ、反対に、 25m m²/sより高くなると、フレツチング特性が低下するという問題が生じる場合がある。

[0023] このような条件を満足する潤滑基油としては、具体的には、鉱油系の潤滑基油として、例えば、石油精製業の潤滑油製造プロセスで通常行われている方法により得られるものであり、例えば原油を常圧蒸留又は減圧蒸留して得られた潤滑油留分に、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の処理のいずれか 1つ以上の処理を施して精製したものが挙げられる。

[0024] また、上記の合成系の潤滑基油として、例えば、ポリブテン、 1-オタテンオリゴマー、 1-デセンオリゴマー等のポリ a -ォレフイン又はこれらの水素化物等の合成炭化水素油や、ジトリデシルグルタレート、ジ 2-ェチルへキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ 3-ェチルへキシルセパケート等のジエステル類、トリメチローノレプロパンカプリレート、トリメチローノレプロパンペラノレゴネート、ペンタエリスリトール 2-ェチルへキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオ一ルエステル類等のエステル系合成油や、ポリオキシアルキレングリコール等のポリダリコール系合成油や、ポリフエ-ルエーテル、ジアルキルジフエ-ルエーテル等のフエ -ルエーテル合成油や、シリコーン油等のシリコーン系合成油や、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の芳香族系合成油や、フッ素系合成油、又はこれらの混合物からなる混合油等が挙げられる。これらの鉱油系や合成系の潤滑基油は、その 1 種のみを単独で用いることができるほか、 2種以上の混合物としても用いることもできる。

[0025] また、本発明の振動対応グリース組成物を構成する増ちよう剤については、従来より案内装置やその他の軸受等に用いるグリースにお、て通常使用されて、るものを用いることができ、例えば、牛脂系カルシウム石けん、ひまし油系カルシウム石けん、アルミニウム石けん、ナトリウム石けん、牛脂系リチウム石けん、ひまし油系リチウム石けん等の金属石けん系のものや、カルシウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス、リチウムコンプレックス等の複合型石けん系のものや、芳香族ジゥレア、脂肪族ジゥレア、脂環式ジゥレア、トリウレア、ポリウレァ等のウレァ系のものや、ナトリウムテレフタラメート、 PTFE等の有機系のものや、有機化ベントナイト、シリカゲル等の無機系のもの等を挙げることができ、好ましくは脂肪族ジゥレアであり、これらはその 1種のみを単独で用いることができるほか、 2種以上の混合物としても用いることができる。

[0026] 本発明にお、ては、グリース性能を改善するための添加剤として、有機モリブデン、金属スルフォネート及び金属フエネートの 3成分が併用使用される。

ここで、有機モリブデンとしては、例えばジチォ力ルバミン酸モリブデン、ジチォリン酸モリブデン、モリブデンジチォカーバメイト等を挙げることができ、これらはその 1種のみを単独で用いることができるほか、 2種以上を組み合わせて用いることもできる。この有機モリブデンは、金属接触防止剤としての作用を発揮すると考えられる。

[0027] また、本発明で添加剤として用いる金属スルフォネートは、例えば亜鉛スルフォネート、ナトリウムスルフォネート等の金属スルフォネートや、カルシウムスルフォネート、ノリウムスルフォネート等のアルカリ土類金属スルフォネート等を挙げることができ、好ましくは亜鉛スルフォネートやアルカリ土類金属スルフォネートであり、より好ましくは亜鉛スルフォネート、カルシウムスルフォネート、及びバリウムスルフォネートである。これらの金属スルフォネートは、その 1種のみを単独で用いることができるほか、 2種以上を組み合わせて用いることもできる。この金属スルフォネートは、転がり寿命向上剤としての作用を発揮すると考えられる。

[0028] この金属スルフォネートの特に好ましい使用の態様は、亜鉛スルフォネートとカルシゥムスルフォネートとを重量比 1： 3〜3： 1の割合、好ましくは 1： 2〜2： 1の割合で併用使用することであり、このように亜鉛スルフォネートとカルシウムスルフォネートとを併用することにより、寿命向上と摩耗低減の効果がより一層向上するという利点が生じる

[0029] 更に、本発明で添加剤として用いる金属フエネートは、炭素数 8以上、好ましくは 9 〜22の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有するアルキルフエノール、硫化アルキルフェノール及びアルキルフエノール—アルデヒド縮合物のアルカリ土類金属塩を含むものであり、アルキルフエノールカ誘導される通常の金属フエネートの他に、硫化アルキルフエノールから誘導される硫化フエネート、及びアルキルフエノールーアルデヒド縮合物から誘導されるメチレン結合フエネートが含まれる。

[0030] この金属フエネートの具体例としては、好適にはカルシウムフエネート、バリウムフエネート、マグネシウムフエネート等を挙げることができ、より好ましくはカルシウムフエネートである。これらの金属フエネートは、その 1種のみを単独で用いることができるほか、 2種以上を組み合わせて用いることもできる。この金属フエネートは、固体潤滑剤の性能向上の作用を発揮すると考えられる。

[0031] 本発明の振動対応グリース組成物において、上記の増ちよう剤、有機モリブデン、金属スルフォネート、及び金属フエネートの添加量については、増ちよう剤が 5重量％以上 20重量％以下、好ましくは 6重量％以上 12重量％以下であり、有機モリブデンが 2 重量％以上 8重量％以下、好ましくは 4重量％以上 6重量％以下であり、また、金属スルフォネートが 1重量％以上 7重量％以下、好ましくは 3重量％以上 5重量％以下であり、更に、金属フエネートが 0. 2重量％以上 3重量％以下、好ましくは 0. 5重量％以上 1. 5重量 %以下である。

[0032] 増ちよう剤の添加量が 5重量 %より少ないと、軟ィ匕による油の流出の問題が生じ、反対に、 20重量 %より多くなると、硬化による抵抗増大の問題が生じる。また、有機モリブデンの添加量が 2重量 %より少ないと、金属接触による摩耗の問題が生じ、反対に、 8重量 %より多くなると、攪拌抵抗が増大するという問題が生じる。また、金属スルフォネートの添加量が 1重量 %より少ないと、転がり寿命の低下という問題が生じ、反対に、 7重量 %より多くしても効果が飽和してコストが嵩むだけになる。更に、金属フエネートの添加量が 0. 2重量 %より少ないと、摩耗低減効果が減少するという問題が生じ、反対に、 3重量 %より多くしても効果が飽和してコストが嵩むだけになる。

[0033] 上記の潤滑基油、増ちよう剤、及び 3成分からなる添加剤を含む本発明の振動対応グリース組成物は、その使用目的や使用対象によって異なるが、例えば案内装置に封入して用いる場合には、その混和ちよう度 (JIS K2220.7 ;25°C)が好ましくは 250 以上であるのがよぐ圧送性の観点からより好ましくは 310〜350である。案内装置に用いる場合においてこの混和ちよう度 (J IS K2220.7 ;25°C)が 250より低いと、攪拌抵抗が増大するという問題があり、また、 385を超えて大きくなると高速運動により飛散してしま、、結果的に潤滑不良になる場合がある。

[0034] 本発明の振動対応グリース組成物中には、従来この種のグリースに配合される種々の第三成分、例えば、脂肪酸 Zグリセロール等のような混和ちよう度調整剤、アミノ酸化物 Zフノール等のような酸ィ匕防止剤、コハク酸無水物等のような防鲭剤、リン酸エステル等のような極圧添加剤、脂肪酸 Zエステル等のような油性向上剤、リン酸ェステル等のような摩耗低減剤等のような金属不活性剤等を必要により必要な範囲で添カロしてちょい。

[0035] 本発明の振動対応グリース組成物は、特に制限されるものではないが、好ましくは種々の装置の軸受部、摺動部、接合部等の案内装置において潤滑性を付与するために用いられ、より具体的には、転動体 (ボール又はローラ）の転走面を有する軸 (軌道レールやねじ軸等）と、上記転走面に相対する転動体の転走面を有し、上記転動体を介して上記軸に係合すると共にこの軸に沿って相対的に移動するスライド部材（摺動台やナット部材等)と、これら軸とスライド部材との間に介装される転動体とを備え、上記軸とスライド部材とが相対運動をした時に振動を伴う使用条件を含む、例えば直線案内装置、曲線案内装置、ボールねじ、ボールスプライン等の案内用装置に好適に用いられる。

[0036] そして、この振動対応グリース組成物の使用に際しては、案内装置の軸とスライド部材との間に形成されて転動体が介在する潤滑領域に封入されるが、この際にダリース組成物を案内装置に封入する方法及び手段については、特に制限されるものではないが、グリース組成物の混和ちよう度が 250以上であって給脂経路目詰まりの問題もない。

[0037] これを、例えば直線案内装置について、直線摺動用ボールベアリングを例にして説明すると、以下の通りである。

すなわち、直線摺動用ボールベアリング (直線案内装置) Bは、図 1に示されているように、軌道レール (軌道軸） 1と、この軌道レール 1に沿って摺動する摺動台 (スライド部材） 2と、これら軌道レール 1と摺動台 2との間で荷重を負荷しながら転走するボール 3とで構成されており、上記軌道レール 1にはその左右両肩部にそれぞれ対の転走溝 (潤滑面） la,lbが形成され、また、上記摺動台 2にはその左右両隅部に上記軌道レール 1の転走溝 la,lbと相俟ってボール 3の負荷ボール転走路を形成する左右対の負荷転走溝 (潤滑面) 2a,2bが形成されていると共にボール 3の無負荷ボール転走路を形成する無負荷ボール転走孔 4a,4bが形成されており、更に、上記摺動台 2 の前後両端部には上記負荷ボール転走路と無負荷ボール転走路との間を連通連結してボール 3の無限軌道を構成する図示外のボール方向転換路を有するエンドプレート 5が設けられている。

[0038] そして、上記各エンドプレート 5の外側面にはそれぞれ先端が軌道レール 1に摺接するエンドシール 6が設けられており、また、上記摺動台 2には先端が軌道レール 1の上面に当接するインナーシール 7と先端が軌道レール 1の側面に当接するサイドシール 8とが設けられており、これらエンドシール 6、インナーシール 7及びサイドシール 8により軌道レール 1の左右両肩部とこれに対応する摺動台 2の左右両隅部との間にグリースを封入する密閉空間が形成されており、更に、いずれか一方のエンドプレート 5にはこのエンドプレート 5に形成されたボール方向転換路カも上記各密閉空間内にグリースを分配して充填するグリースニップル 9が設けられている。

[0039] この直線摺動用ボールベアリング Bへの振動対応グリース組成物の封入は、例えば、グリースガンに当該グリースを装填し、直線摺動用ボールベアリング Bのグリース -ップル 9から軌道レール 1の左右両肩部と摺動台 2の左右両隅部との間に形成された密閉空間内に充填することにより行われる。

発明の効果

[0040] 本発明の振動対応グリース組成物は、振動を伴う駆動での使用条件においても優れた耐摩耗性を発揮するものであり、種々の案内装置、特にボール又はローラ (転動体)を介して軸 (軌道レールやねじ軸等)とスライド部材 (摺動台やナット部材等)とが相対運動をした時に振動を伴う使用条件を含む、例えば直線案内装置、曲線案内装置、ボールねじ、ボールスプライン等の案内装置に用いるのに好適なグリース組成物である。

[0041] また、本発明の案内装置によれば、上記の振動対応グリース組成物がその潤滑領域に封入されているので、たとえ振動を伴う使用条件下 (速度 90m/分以上の高速度及び 1G以上)で使用されても異常摩耗の発生を可及的に抑制することができ、長期に亘つて摺動安定性を維持することができる。

図面の簡単な説明

[0042] [図 1]図 1は、本発明の振動対応グリース組成物が使用される直線摺動用ボールベアリング (直線案内装置)を示す部分切欠き斜視説明図である。

[0043] [図 2]図 2は、摩耗評価試験で用いた試験機の正面及び側面を示す説明図である。

[0044] [図 3]図 3は、図 2の試験機にセットされた状態の供試体を示す部分拡大説明図である。

[0045] [図 4]図 4は、図 2の試験機にセットされた供試体 Mにおける試験条件での移動速度と振動との関係を示すグラフ図である。

[0046] [図 5]図 5は、本発明の実施例 1に係るグリース組成物が封入された供試体 Mについて測定された摩耗状況 (長さ mm—深さ μ m)を示すグラフ図である。

[0047] [図 6]図 6は、比較例 1に係るグリース組成物が封入された供試体 Mについて測定された摩耗状況 (長さ mm—深さ μ m)を示すグラフ図である。

[0048] [図 7]図 7は、比較例 2に係るグリース組成物が封入された供試体 Mについて測定された摩耗状況 (長さ mm—深さ μ m)を示すグラフ図である。

符号の説明

[0049] B…直線摺動用ボールベアリング (直線案内装置）、 M…供試体、 1…軌道レール（軌道軸)、 la, lb…転走溝 (潤滑面)、 2· ··摺動台 (スライド部材)、 2a,2b…負荷転走溝 (潤滑面）、 3…ボール、 4a,4b…無負荷ボール転走孔、 5…エンドプレート、 6…ェンドシール、 7…インナーシール、 8…サイドシール、 9…グリースニップル、 10…プレート、 11…ロードセル、 12…皿パネ、 13…荷重負荷用軸、 14…加速度振動センサー。発明を実施するための最良の形態

[0050] 以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。

なお、以下の各実施例及び比較例においては、各実施例及び比較例で調製したグリース組成物を直線摺動用ボールベアリング (以下、単に「直線ガイド」という）に充填して供試体 Mを構成し、この供試体 Mを下記の摩耗評価試験のための試験機に搭載して試験を行ヽ、各グリース組成物の性能を調べて評価した。

[0051] 〔摩耗評価試験〕

図 2に示す直線ガイド荷重耐久試験機 (大東製機社製）に、図 2及び図 3に示すように、一群の直線ガイド (THK社製商品名： SHS25R1UU + 580LP) 1台当り封入量 2. 5 cm³のグリース組成物（初期給脂のみ）を封入して構成した供試体 Mを組み込み、この供試体 Mにはプレート 10、ロードセル 11、皿パネ 12及び荷重負荷用軸 13を配設すると共に上記プレート 10には加速度振動センサー 14を取り付け、試験装置を構成した。

[0052] このように構成した試験装置を用い、供試体 Mに対して上記荷重負荷用軸 13を介して荷重負荷用軸 14から 11. 05kNの荷重を負荷せしめ、供試体 Mを最高速度 60m /s、ストローク 350mm、加速度 9. 8m/s²に 94Hzの振動を伴う駆動条件で走行させ、供試体 Mを構成する軌道レール 1のストローク中の転動体転走面の摩耗を評価した

[0053] また、この際に、加速度振動センサー 14を通して、供試体 Mを構成する軌道レール 1と摺動台 2との間の相対的な移動速度と振動とを同時に測定し、この供試体 Mにおける移動速度 (b)と振動 (a)との関係を調べた。結果は図 4に示す通りであり、往復運動のうちの往路のみのデータが示されて、るが、復路のデータはこの往路のデータと対称的であり、移動速度 (b)はグラフ左軸に示され、最高移動速度が 60m/分を示しており、また、振動 (a)はグラフ右軸に示され、加速域、等速域及び減速域の何れにも振動の発生が観測された。

[0054] 〔実施例 1及び比較例 1〕

表 1に示す動粘度 (JIS K2220.23; 40°C)を有する潤滑基油にジフヱニルメタン- 4,4' -ジイソシァネートとォクチルァミン及びステアリルァミンとをモル比 1： 1の割合で添カロし、反応させて表 1に示す割合で脂肪族ゥレア (増ちよう剤）を含むベースグリースを調製し、このベースグリースに有機モリブデン〔有機モリブデン B (旭電ィ匕工業社製商品名：サクラルーブ 600)と、金属スルフォネート〔亜鉛スルフォネート（KING INDUSTR IES社製商品名： NA-SUL ZS)及びカルシウムスルフォネート〕と、カルシウムフエネートとを表 1に示す割合で添加して均一に混合し、表 1に示す混和ちよう度 (JIS K2220.7 ； 25°C)、及び滴点 (JIS K2220.8)を有する実施例 1及び比較例 1のグリース組成物を調製した。

[0055] 〔比較例 2〕

また、動粘度 (JIS K2220.23; 40°C) 28のエステル系合成油に、ジゥレア系増ちよう剤 15重量 %と、酸化防止剤、防鲭剤、耐摩耗剤及び金属不活性剤を合計で 10重量 %含み、表 1に示す混和ちよう度 (JIS K2220.7; 25°C)、高速四球式耐荷重性能 (AST M D 2596)、滴点 (JIS K2220.8)、及び使用温度範囲を有する市販のグリース (THK 社商品名： AFC)を比較例 2のグリース組成物とした。

[0056] 上記実施例 1及び比較例 1〜2のグリース組成物について、それぞれ同じ条件で摩耗評価試験を行い、走行距離 (km)と転走面の摩耗状態を調べた。

結果を表 1に示すと共に、この摩耗評価試験で測定された摩耗状況 (長さ mm—深さ； z m)を図 5 (実施例 1)、図 6 (比較例 1)、及び図 7 (比較例 2)にそれぞれに示す。

[0058] 表 1に示す結果から明らかなように、実施例 1のグリース組成物は、摩耗評価試験での走行距離カ 434kmであって、図 5に示されているように転走面の摩耗量がほとんど 0 μ mであって優れた耐摩耗性を有して V、る。

これに対して、比較例 1〜2の各グリース組成物は、摩耗評価試験での走行距離がそれぞれ 117km及び 26 lkmであって、図 6及び図 7に示されて!/、るように転走面の摩耗量がそれぞれ 6 μ m及び 2 IX mであり、上記実施例 1のグリース組成物に比べて耐摩耗性が劣っている。

産業上の利用可能性

[0059] 本発明の振動対応グリース組成物は、種々の装置の軸受部、摺動部、接合部等の案内装置、特に軸とスライド部材とが相対運動した時に振動を伴う使用条件を含む直線案内装置、曲線案内装置、ボールねじ、ボールスプライン等の案内装置のような案内装置において、優れた耐摩耗性を発揮するものであり、このような案内装置に封入して使用した場合、異常摩耗の発生を可及的に抑制することができ、長期に亘って摺動安定性を維持することができ、その実用的価値の高いものである。

Claims

請求の範囲

[1] 鉱油系及び Z又は合成油系の潤滑基油に増ちよう剤とグリース性能を改善するための添加剤とを配合してなるグリース組成物にぉヽて、前記添加剤として有機モリブデンと、金属スルフォネートと、金属フエネートとを配合したことを特徴とする振動対応グリース組成物。

[2] 潤滑基油は、その動粘度 (JIS K2220.23 ;40°C)が 5〜25mm²/sの範囲である請求項 1に記載の振動対応グリース組成物。

[3] 増ちよう剤が、脂肪族ジゥレアである請求項 1又は 2に記載の振動対応グリース組成物。

[4] 金属スルフォネート力亜鉛スルフォネート、カルシウムスルフォネート、バリウムスルフォネート、及びナトリウムスルフォネートから選ばれた 1種又は 2種以上の混合物である請求項 1〜3のいずれかに記載の振動対応グリース組成物。

[5] 金属フエネートが、アルカリ土類金属フエネートから選ばれた 1種又は 2種以上の混合物である請求項 1〜4のいずれかに記載の振動対応グリース組成物。

[6] アルカリ土類金属フエネートが、カルシウムフエネートである請求項 5に記載の振動対応グリース組成物。

[7] 潤滑基油に、増ちよう剤 5〜20重量％と、有機モリブデン 2〜8重量％と、金属スルフォネート 1〜7重量％と、金属フエネート 0. 2〜3重量％とが添加されている請求項 1〜6 の!、ずれかに記載の振動対応グリース組成物。

[8] 混和ちよう度 (JIS K2220.7 ;25°C)が 250以上である請求項 1〜7のいずれかに記載の振動対応グリース組成物。

[9] 請求項 1〜8のいずれか〖こ記載された振動対応グリース組成物が封入されていることを特徴とする案内装置。