JP2008208218A - 高速軸受用グリースおよびスピンドル用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基油とウレア系増ちょう剤とを含み、上記基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、上記ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、上記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満含有するグリースであり、スピンドル用転がり軸受1は内輪2および外輪3と、この内輪2および外輪3間に介在する複数の転動体4と、シール部材6とを備え、この転動体4の周囲にグリースを封入する。
【選択図】図1
Description
しかし、このような潤滑方法は、圧縮空気や給油装置などの付帯設備が必要なものであり、工作機械のイニシャルコストおよびランニングコストを高める原因の一つであり、これらに対してグリース潤滑は、メンテナンスの必要が少なくて好ましい潤滑方法であるといえる。例えば、2000〜8000 rpm またはそれ以上の高速で回転する回転軸を支持する高速転がり軸受としては、工作機械主軸(スピンドル)などを支持するアンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などが挙げられる。
アンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などからなる高速転がり軸受に使用される潤滑剤としては、給油などのメンテナンスが必要でなく、周囲の環境を汚染しないちょう度に調整された潤滑グリースを採用することが好ましい。
(a)長寿命性転がり軸受の潤滑寿命を可及的に延長するためには、以下の(i) 〜(iii) に説明するように、転がり軸受から潤滑剤(グリースまたはその基油)が漏れにくいこと、グリースの耐熱性に優れること、潤滑に必要な油膜厚さを形成できることが必要である。
高速運転されない転がり軸受の場合、転動体や保持器の運動により摩擦部分から押し出されてしまう余分なグリースは、回転条件によっては軸受内部をある程度還流して再び潤滑に寄与することが考えられる。しかし、高速で回転する工作機械などの回転軸支持用転がり軸受では、軸受内部に発生する風圧がこの還流を妨げるため潤滑不良を起こしやすくなる。このため、高速で回転する転がり軸受では、僅かな量のグリースしか潤滑に寄与しておらず、グリースの性状は特に重要となる。また、高速転がり軸受用グリースは、少量のグリースでも潤滑性能を維持する必要がある。
(iii) 潤滑性(油膜厚さ)を向上させた従来のグリースは、基油粘度を高くすると剪断摩擦抵抗が上昇して回転トルクが増加し、発熱量が増大するので、これらを抑制するために基油粘度は低く抑えている。そのため、高速に伴う温度上昇で低粘度となった潤滑油の油膜は薄くなって摺動摩耗を起こす場合があった。
例えば、特許文献3には、40 ℃における動粘度が 15 mm2/sec 以上 40 mm2/sec 以下である基油と、含有量がグリース組成物全体の 9 質量%以上 14 質量%以下であるジウレア化合物の増ちょう剤とを含有し、混和ちょう度が 220 以上 320 以下であるグリース組成物が開示されている。
しかし、上記グリース組成物においても、増ちょう剤の配合量を減らし、グリース封入量を少なくすることが困難であり、軸受の高速回転に十分に対応でき、工作機械のコンパクト化や運転経費の削減を可能にすることは困難である。
また、近年ますます転がり軸受の使用状態が過酷になり、ピッチ円径dm( mm )と回転数N( rpm )との積であるdmN値が 170 万以上という高速回転で使用されるスピンドル用転がり軸受なども多くなってきている。このような軸受の回転速度の高速化に伴って、既存のグリースで軸受に要求される性能を全て満足させることは困難である。
また、上記基油は表面張力が 25 mN/m 以上で、かつ密度が 0.95 g/cm3以下であることを特徴とする。
また、上記基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つの油であることを特徴とする。
また、上記スピンドル用転がり軸受がアンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受であることを特徴とする。
モノアミン成分は、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するので、増ちょう剤の高速下でのせん断力に容易に破壊されず、増ちょう剤繊維の毛細管現象により、転走面に安定的にグリース中の油分を供給することができる。
このアンギュラ軸受は、図1に示すように、内輪2と外輪3との間に転動体4が保持器5に保持された軸受空間を、外輪3の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材6で密封したアンギュラ玉軸受である。少なくとも転動体4の周囲にグリースが封入され、外輪3の内径面に周溝状のグリースポケット7を形成して、グリースの漏洩を物理的に防止している。転動体4と、内輪2および外輪3との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して接触角βを有しており、ラジアル荷重と一方向のアキシャル荷重を負荷することができる。また、転動体4は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミック製とすることもできる。本発明においては、内輪2と外輪3と転動体4とで形成される軸受空間に、下記に示す本発明の高速転がり軸受用グリースが封入される。
また、合成炭化水素油、エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、それぞれの動粘度が 15〜30 mm2/sec であることが好ましい。この範囲であると混合油とした場合であっても、動粘度の範囲を 15〜30 mm2/sec とすることができる。
混合油とする場合、合成炭化水素油およびエステル油の混合油とすることが好ましい。混合比率としては、合成炭化水素油/エステル油(重量比)=8/2〜2/8が好ましく、特に合成炭化水素油はエステル油よりも重量割合で同量以上であることが好ましい。
また、アルキルジフェニルエーテル油は単独でも使用できる。
エステル油としては、例えばジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、炭酸エステル油等が挙げられる。
アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリアルキルジフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネートが好ましい。
また、ジアミンと該ジアミンに対してモル比で過剰のジイソシアネートとの反応で得られるポリイソシアネートを使用することができる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミン以外のモノアミンとしては芳香族モノアミンが挙げられる。
脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンが挙げられ、これらの中でもオクチルアミンが好ましい。
脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンが挙げられ、これらの中でp-トルイジンが好ましい。
表1に示した基油の半量に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながら、これにモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させグリース試料を得た。用いた基油の密度、動粘度、表面張力測定結果を表1に示す。また、得られたグリース試料のちょう度を測定した。また、以下に示す遠心油分離試験および常温高速グリース試験に供し、遠心離油度および常温高速グリース寿命時間を測定した。測定結果を表1に併記する。
遠心分離機を用い、50 g のグリース試料を遠心分離管に入れ、40℃で 23000 G の加速度を 7 時間かけたときの遠心離油度を次式により求めた。
(遠心離油度、%)=(1−試験前の増ちょう剤濃度/試験後の増ちょう剤濃度)×100
深溝玉軸受(6204)に、グリース試料を転走面狙いで 0.14 g (軸受全空間容積の約 3 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受に、アキシャル荷重 670 N とラジアル荷重 67 N とを負荷し、常温環境下で 15000 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 52 万である。
基油と、ステアリン酸リチウムとを表1に示す割合で配合させてグリース試料を得た。用いた基油とグリース試料について実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
アンギュラ玉軸受(外径 150 mm×内径 100 mm、内外輪SUJ2、転動体 13/32インチ窒化珪素球)に、実施例1〜実施例2、実施例5、比較例1〜比較例3および比較例5のグリース試料を転走面狙いで 3.0 g (軸受全空間容積の約 10 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受を、1.8 GPa 定圧与圧下で、外筒冷却により軸受を冷却し、軸受外輪を 50℃以下に保ちつつ 14500 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 185 万である。測定結果を表1に併記する。
2、12 内輪
3、13 外輪
4、14 転動体(鋼球)
5 保持器
6 シール部材
7 グリースポケット
Claims (5)
- 基油とウレア系増ちょう剤とを含む高速転がり軸受用グリースであって、
前記基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、
前記ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、
グリース全体に対して、前記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合することを特徴とする高速転がり軸受用グリース。 - 前記基油は表面張力が 25 mN/m 以上で、かつ密度が 0.95 g/cm3以下であることを特徴とする請求項1記載の高速転がり軸受用グリース。
- 前記基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つの油であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高速転がり軸受用グリース。
- 内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、前記内輪および外輪間の隙間の開口を覆うシール部材とを備え、前記転動体の周囲にグリースを封入してなるスピンドル用転がり軸受であって、
前記グリースは請求項1、請求項2または請求項3記載のグリースであることを特徴とするスピンドル用転がり軸受。 - 前記スピンドル用転がり軸受がアンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受であることを特徴とする請求項4記載のスピンドル用転がり軸受。
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