明 細 書
モータ
技術分野
[0001] 本発明は、外側に卷線が卷回され、且つ、内側にヨークが備えられたボビンの内側 に、所定の間隙をおいてロータが回転自在に組み込まれたモータに関するものであ る。
背景技術
[0002] 従来より、この種のモータとして、例えば、図 5に示すようなステッピングモータが知 られている。このステッピングモータは、ロータ 31と、内部に間隙を介してロータ 31を 回転自在に収納するステータ 32と、ロータ 31が収納されたステータ 32を収納する金 属製の有底筒状のケース 33と、この金属製ケース 33の開口部を封口する取付板 34 とから概略構成されている。
上記ロータ 31は、中心部にシャフト 35を有する円筒状の回転体であって、その周 囲には永久磁石 36がー体的に固定されており、さらに、この永久磁石 36の外周面 3 6aは周方向に異極となるように着磁されて 、る。
[0003] また、上記ステータ 32は、 2組のヨーク 41の外周に合成樹脂から成るボビン 40を設 け、このボビン 40の外周に卷線 39が卷回されたものであり、各ヨーク 41の内周面に は、複数の極歯 41aが交互に、且つ等間隔に配列されている。上記ヨーク 41の外形 寸法は、その外周面とケース 33の内周面とが密着するように設定されており、ステー タ 32をケース 33内に収納した時にヨーク 41がケース 33の内周面と接触して、当ョー ク 41とケース 33との間で磁気回路が形成されるようになっている。
[0004] また、有底円筒状のケース 33の底部中央には、ロータ 31のシャフト 35を軸支する ための一方の軸受 47が固定されている。他方、取付板 34の中央には、ロータ 31の シャフト 35の他端を軸支するための軸受 48が固定されている。さらに、このステツピ ングモータの外周部には、ケース 33の内部に収容されるステータ 32へ外部より電流 を供給するための端子ピン 49a、 49bが突設されている。
[0005] 尚、このような構成を備えたモータの先行技術として、特許文献 1が開示されている
[0006] ところで、従来、上記構成のモータの組立においては、卷線 39、ボビン 40、ヨーク 4 1等、各ステータ構成部材の取り付けが別個に行われており、よって、組立精度にバ ラツキが生じ易ぐ組み立て作業の効率も悪力つた。カロえて、モータの取り付け基準と なる取付板 34とステータ 32とが別体に構成されて 、ることから、モータの取付位置や 姿勢を正確に規制するには、これらを高精度に組み付ける必要があった。し力しなが ら、組み立てに際しては、それら個々の寸法公差や組み付け公差が加算されるため 、それらの位置関係を高精度に設定することが難しぐ組立作業に熟練を要するとい う問題があった。
[0007] 特に、ステータ 32と両軸受 47、 48との位置合わせ (芯合わせ)に誤差が生じると、 これら軸受 47、 48により回転位置が決定されるロータ 31と極歯 41aとのクリアランス が不均一になり、その結果、モータのステップ駆動制御が不正確になったり、駆動効 率が低下すると 、つた弊害が生じることになる。
このため、取付板 34をケース 33に固定する際には、しばしば治具が用いられてい る力 この場合は、治具の取り付けや取り外しを含む複数の工程が必要となり、これも また、組立作業性を低下させる一因となっていた。
特許文献 1:特開平 9 - 289752号公報
発明の開示
[0008] 本発明は、このような従来のモータが有する課題に鑑みて成されたもので、組立精 度が高ぐ且つ、生産性に優れる安価で高性能なモータを提供することを目的として いる。
[0009] すなわち、本発明に係るモータは、複数の極歯が形成されたヨークを榭脂モールド して一体成形型のボビンを構成し、当該ボビンに卷線を施して励磁コイルを構成する と共に、筒状の金属ケース内に収納してステータ部を構成し、当該ステータ部の一端 部を榭脂製のキャップにて蓋をすると共に、当該キャップおよび前記ケースの外周部 を榭脂モールドし、前記ステータ部の他端開口部より内部空間にロータを組み込むと 共に、当該ロータを前記ボビンの両端に一体成形された係止部に軸受を介して回転 自在に支持して構成したことを特徴として 、る。
[0010] 上記モータにおいて、一方の軸受は、前記榭脂製ボビンの端部を熱加締めで座屈 することにより、若しくは前記金属製のケースの端部を加締めで座屈することにより、 前記ステータ部に固定されている。
[0011] また、上記モータにおいては、前記ボビンに端子ピンが一体成形されている。この 場合、前記端子ピンの一端部に前記卷線の端部を電気溶接により接続することが好 ましい。
[0012] 本発明に係るモータによれば、ステータは、ボビンとヨークとがボビンを構成する榭 脂により一体に成形されて構成されているため、ボビンとヨークを高い寸法精度で一 体ィ匕することができる。
また、ヨークの中空円板部を利用してステータをボビン状に形成できるため、ヨーク と一体ィ匕した後のボビンに直ちにコイルを巻き付けることができ、よって、コイルの卷 き付け精度も容易に確保することができる。
[0013] また、ロータのシャフトを支持する一方の軸受は射出成形により形成したステータの ボビンの係止部(凹部)に嵌着 ·固定されており、且つ、他方の軸受も同じ成形体に 形成された係止部(開口段部)に固定される構造であるため、ステータの中心軸線と ロータのシャフトとの芯合わせを正確に、且つ、容易に行うことができ、組立工数を低 減することができる。
[0014] さらに、各モータ端子ピンと卷線の各端部とをアーク溶接によって接合することによ つて、モータ端子ピンの短縮ィ匕を図ることができ、その分、モータの小型化が図れる。 図面の簡単な説明
[0015] [図 1]図 1は、本発明に係るステッピングモータの内部構造を示す断面図である。
[図 2]図 2は、本発明に係る図 1とは別のステッピングモータの内部構造を示す断面 図である。
[図 3]図 3は、本発明に係るステッピングモータのボビンの一例を示す外形図で、(a) は上面図、(b)は側面図である。
[図 4]図 4は、本発明に係るステッピングモータのヨークの一例を示す外形図で、(a) は正面図、(b)は側断面図である。
[図 5]図 5は、従来のモータの内部構造を示す断面図である。
符号の説明
1 ロータ
3 ケース
3a 端部
4 ボビン
4a 端部
7、 8 軸受
9 卷線
10 ステータ部
11 ヨーク
l id 極.困
15 係止部 (段部)
16 係止部(凹部)
18 キャップ
19 端子ピン
発明を実施するための最良の形態
[0017] 以下、図 1〜図 4に基づいて本発明に係るステッピングモータの実施の形態を説明 する。図 1および図 2は本実施形態のステッピングモータの内部構造を示し、図 3はス テツビングモータのボビンの一例を示し、図 4はステッピングモータのヨークの一例を 示している。
[0018] 図 1および図 2に示すように、本実施形態のステッピングモータは、ロータ 1と、内部 に間隙を介してロータ 1を回転自在に収納するステータ 2と、ロータ 1を収納したステ ータ 2を内部に収納する両端開放の円筒状の金属製ケース 3 (この金属製ケース 3と 上記ステータ 2とでステータ部 10が構成されている)と、ステータ 2の両端に軸線方向 に配置されて、ロータ 1のシャフト 5を回転自在に支持する軸受 7、 8等力も概略構成 されている。
尚、上記シャフト 5の先端側には、リードスクリュー 25が形成されており、シャフト 5の 回転方向に応じて当リードスクリュー 25に連結された図示しない移動体を軸線方向
に移動できるようになって 、る。
[0019] ここで、上記ロータ 1は、中心部にシャフト 5を有する円筒状の回転体であって、そ の周囲には永久磁石 6がー体的に固定されており、且つ、この永久磁石 6の外周面 6 aは周方向に異極となるように着磁されて 、る。
[0020] また、上記ステータ 2は、磁気回路を構成するための複数のヨーク 11と、これらのョ ーク 11を一体的に保持する榭脂製のボビン 4と、このボビン 4に卷回される卷線 9と、 ボビン 4の一端部に配設された給電用のコネクタ 20とを備えている。
コネクタ 20は、ボビン 4に卷回された卷線 9を図示しない外部リード線のコンタクトに 接続するための複数の端子ピン 19と、これらの端子ピン 19を一体的に保持する榭脂 製のコネクタハウジング 21とで構成されて 、る。
[0021] また、上記ヨーク 11は、金属製の円板状部材で構成され、図 4に示すように、円形 状の内周縁 11aおよび外周縁 l ibが同軸状に形成された中空円板部 11cを有し、こ の中空円板部 1 lcの内周縁 1 laから軸線方向に等間隔に屈曲成形された複数 (本 実施形態では 6個)の極歯 l idを有すると共に、外周縁部 l ibの一部を直線状に切 り欠 、て成る切欠部 1 leを有して 、る。
そして、同形同寸法であって、極歯 l idの内周縁 11aに沿う形成位置が異なる一対 のヨーク 11を、この切欠部 l ieを一致させて向き合わせた時に、一対のヨーク 11の 極歯 l id同士が向き合うと共に、それらが交互に、且つ、等間隔に配列するように形 成されている。
[0022] 上記構成のヨーク 11は、図 1、図 2に示すように、対状の 2組がボビン 4によって保 持されて、極歯 l idの内周面がボビン 4の内周面を構成すべく内方に露出した状態 となっている。また、 2組のヨーク 11は、同一軸線上に配置されて、その内、中間部に 位置する一対が中空円板部 11cを背中合わせにした状態となっており、各中空円板 部 11cの周囲および各極歯 l idの内周面を除く部分がボビン 4を構成する榭脂によ つて覆われることにより、固定的に保持されている。
[0023] 次に、上記構成力も成るステッピングモータの組立手順を図 1〜図 3を参照して説 明する。
[0024] 先ず、ボビン 4を成形するための図示しない金型に上記した複数のヨーク 11および
端子ピン 19をインサートした状態で、この金型内に榭脂を連続して注入することによ り、図 3に示すような各ョーク 11と端子ピン 19を一体的に保持した状態のボビン 4を 作製する(射出成形)。また、この時、同時にボビン 4内側の一端に上記した一方の軸 受 7が係止される凹部 16が形成されると共に、他端の開口内周部に他方の軸受 8が 係止される段部 15が形成され、且つ、これらの凹部 16及び段部 15が同一軸線上に 位置するように配設されて 、る。
[0025] 尚、図 3に示すボビン 4では、端子ピン 19の両端部 19a、 19bが筒状ボビン 4の側 部より突出した状態でモールドされている力 図 1、図 2に示すように、端子ピン 19を L型に曲成して、その一端部 19aをボビン 4の上部に突出するようにしても勿論構わ ない。何れにしても、端子ピン 19の端部 19aは後述する卷線 9の端部が接続される モータ端子ピンとなり、端部 19bは上記した外部リード線のコンタクトが接続される給 電ピンとなる。複数の給電ピン 19bは、図 3に示すように、一定の間隔で一列状態で 配設されている。
[0026] 上記した一体成形型のボビン 4は、各ヨーク 11の中空円板部 11cを覆う部分がフラ ンジ部 22を構成し、各フランジ部 22間に卷線 9 (図示せず)が施されて励磁コイルが 形成されると共に、各卷線 9の端部が上記したモータ端子ピン 19aに螺旋状に卷回さ れた後、各卷回部分が電気溶接 (例えば、アーク溶接)により接合される。各モータ 端子ピン 19aに対応する各給電ピン 19bは、アーク溶接の際のアース電極の接続用 に利用することが可能となっている。
[0027] 次に、この励磁コイル (即ち、ステータ 2)を上記円筒状の金属製ケース 3収納し、ス テータ部 10を構成する。ヨーク 11の外形寸法は、その外周面とこのケース 3の内周 面とが密着するように設定されており、ステータ 2をケース 3内に収納した時、各ヨーク 11の中空円板部 11cの外周面がケース 3の内周面と接触し、当ヨーク 11とケース 3と の間で磁気回路が形成されるようになって ヽる。
[0028] 次に、端子ピン 19が配置されているケース 3の一端開口部を榭脂製の椀状キヤッ プ 18にて蓋をする(この時、キャップ 18とボビン 4の間には、卷線 9が通る隙間 26が 確保されている)と共に、このキャップ 18とケース 3の外周全面を榭脂にてモールドし 、有底円筒状のモータカバー 23を形成する。
この場合も、モータカバー 23を成形するための図示しない金型に、キャップ 18にて 一端開口部を蓋したステータ部 10をインサートした状態で、この金型内に榭脂を注 入することにより、モータカバー 23を形成する(射出成形)。
また、この時、同時にモータカバー 23の底部には、端子ピン 19の給電ピン 19bが 保持'収納されるコネクタハウジング 21が形成されると共に、他端開口縁部にモータ 取り付けのためのフランジ 17が形成される。
[0029] 次に、このステータ部 10 (即ち、ボビン 4)の開口端部より中心部空間に筒状のロー タ 1を組み込み、ロータ 1のシャフト 5の一端を予めボビン 4内の凹部 16に固定してお V、た一方の軸受 7に軸支する。
[0030] 次に、ロータ 1のシャフト 5の他端をボビン 4の開口段部 15に係止した他方の軸受 8 に支軸すると共に、この軸受 8にてステータ部 10の開口部を封口する。尚、この際、 軸受 8とロータ 1の端面の間には、ロータ 1を軸線方向に付勢する皿パネ 13と皿パネ 座金 14とが介装される。
[0031] そして、この軸受 8は、図 1に示すように、榭脂製ボビン 4の開口縁部 4aを熱加締め で内側方向に座屈することにより、ステータ部 10の開口部に固定される。或いは、別 の方法として、図 2に示すように、金属製ケース 3の開口縁部 3aを加締めで内側方向 に座屈することにより、ステータ部 10の開口部に固定される。これらの方法によれば、 固定のための特別な部材を用いることなぐ軸受 8をステータ部 10に確実に、且つ容 易に固定することができる。
[0032] 以上の工程を経て、ロータ 1はステータ部 10に回転自在に組み込まれ、ステツピン グモータの^ aみ立ては完了する。
[0033] 上記のように組み立てられたステッピングモータにおいては、ボビン 4とヨーク 11と 力 当ボビン 4を構成する榭脂により一体に成形されてステータ 2が構成されるため、 ボビン 4とヨーク 11を高い寸法精度で一体ィ匕することができる。また、ヨーク 11の中空 円板部 11cを利用してフランジ部 22を形成することにより、ステータ 2自体をボビン状 に形成できるため、ヨーク 11と一体ィ匕した後のボビン 4に直ちに卷線 9を卷回すること ができ、よって、励磁コイルの巻き付け精度も容易に確保することができる。
[0034] さらに、ロータ 1のシャフト 5を支持する一方の軸受 7は、射出成形により形成された
ステータ 2のボビン 4の凹部 16に嵌着 '固定され、且つ、他方の軸受 8も同じ成形体 の開口段部 15に直接係止 ·固定される構造であることから、ステータ 2の中心軸線と ロータ 1のシャフト 5 (即ち、回転軸)との芯合わせを正確に、且つ、容易に行うことが でき、よって、組立工数は少なくて済み、組み立てに熟練を要することもない。
[0035] また、各モータ端子ピン 19aと卷線 9の各端部とをアーク溶接によって接合すること によって、モータ端子ピン 19aの短縮ィ匕を図ることができる。
すなわち、モータ端子ピン 19aを先端側力もアーク溶接によって溶融すると、先端 部がほぼ球状に膨らむように溶融した後に固まることになるので、この溶融によって モータ端子ピン 19aの径が球状に増加した分だけモータ端子ピン 19aの長さを短く することができ、その分、キャップ 18内のスペースを狭くすることができ、その結果、ス テツビングモータの小型化が図れることになる。尚、溶融によって球状に膨らんだ溶 融固化部、すなわち、接合部を図 1、図 2において符号 24で示す。
[0036] さらに、溶接であれば、鉛を含有する半田を使用する必要がなくなるので、鉛による 環境汚染を防止する効果もある。
[0037] また、コネクタハウジング 21内の給電ピン 19bをアーク溶接の際のアース電極の接 続用に利用することにより、アース電極の接続作業が容易になり、卷線 9の端部とモ ータ端子ピン 19aの接合作業を容易に行えるようになり、組立作業性を向上できる。
[0038] 以上、本実施形態では、電気溶接の一例としてアーク溶接を用いた例を示したが、 このアーク溶接以外の、例えば、プラズマ溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等を用い ても良い。これらの電気溶接においても、端子ピン 19の給電ピン 19bに溶接用の電 極を接続することにより、電気溶接を能率良く実施することができる。
産業上の利用可能性
[0039] 本発明によれば、組立精度が高ぐ且つ、生産性に優れる安価で高性能なモータ を提供することができる。