生体物質構造体及びその製造方法、 生体物質担持体、 対象物質の精製方法、 ァフィ二ティークロマトグラフィー用容器、 分離用チップ、 対象物質の解析方 法、 対象物質の解析用分離装置、 生体物質複合体、 生体物質複合体担持体、 セ ンサーチップ、 生体物質が固定化された固相担体及びその製造方法、 生体物質 固定化キット、 新規固相担体及びその製造方法、 並びに、 その利用 明 技術分野
生体物質構造体及びその製造方法、 生体物質担持体、 対象物質の精製方法、 ァフィ二ティ一クロマトグラフィー用容器、 書分離用チップ、 対象物質の解析方 法、 対象物質の解析用分離装置、 生体物質複合体、 生体物質複合体担持体、 セ ンサーチップ、 生体物質が固定化された固相担体及びその製造方法、 生体物質 固定化キット、 新規固相担体及びその製造方法、 並びに、 その利用に関する。 背景技術
生体物質構造体は、 例えば、 医療,診断、 遺伝子解析、 プロテオミクスに用 いることができ、 特に、 ァフィ二ティー精製及び医薬作用解析ツールなどとし て用いて好適である。 このようなァフィ二ティー精製及び医薬作用解析ツール へ用いられる構造物はこれまでにいくつか報告がなされている。
従来から用いられているァフィ二ティ一クロマトグラフィー用担体は、 例え ば、無機系材料では、多孔質シリカゲル粒子等が挙げられ、天然高分子系では、 ァガ口一ス、 デキストラン、 セルロース等の多糖類からなる粒子などが挙げら れ、 合成高分子では、 ポリスチレン、 ポリアクリルアミド等からなる粒子など が用いられている。
しかしながら、 これらの従来のァフィ二ティークロマトグラフィー担体を用 いてァフィ二ティー精製等を行なった場合には、 ァフィ二ティ一クロマトダラ フィ一用担体への非特異吸着の抑制が困難である場合が多く、 さらに精製純度
を上げる場合には回収効率が低くなつていた。
近年、 これらを解決する方法として、 特許文献 1に記載のように、 ラテック ス微粒子を用いたァフィ二ティー精製方法が提案されている。 この方法は、 ラ テックス粒子のブラウン運動を利用するため、 目的精製物のラテックス微粒子 表面への特異的吸着が効率よく行なわれ、 さらに、 遠心分離により目的物が吸 着したラテックスを回収するため、 サンプル量が少なくてすむという利点を有 する。
一方、 遠心操作を行わず、 磁力で分離を行なう技術も提案されていて、 これ を実現するために、 磁性体を内包したラテックスの開発も行われている (特許 文献 2、 非特許文献 1 )。
さらに、 特許文献 3では、 ダルタルアルデヒドでアルブミンを不溶化した凝 集塊に、 抗体又は抗原類を結合させた生化学用微粒子が報告されている。 また、 生体物質が固定化された固相担体も知られていて、 例えば、 医療 ·診 断、 遺伝子解析、 プロテオミクス、 マイクロエレクトロニクス、 膜分離等の分 野、 特に、 D N Aチップ、 蛋白チップ等のバイオチップやバイオセンサーチッ プの分野へ応用されている。
このように生体物質が固定化された固相担体を製造する方法、 即ち、 固相担 体表面に生体物質を固定化する方法についても、 これまでに幾つかの報告がさ れている。
例えば、 生体物質を固相担体に固定化するにあたって、 まず親水性高分子化 合物で固相担体の表面を被覆することで固相担体表面に高分子膜を形成し、 そ の高分子膜を構成する高分子鎖にリガンド等となる生体物質を結合させる方法 がある。 これにより、 固相担体表面を親水性高分子化合物で被覆しない場合よ りも、 単位面積あたりの生体物質の導入量 (固定化量) を向上させることがで きるという利点から、 この方法は、 上記のような広範囲の分野に応用されてい る。
また、 例えば、 特許文献 4には、 電荷を有する官能基を導入した親水性高分 子膜による被覆方法が記載されている。 上述したような固相担体上の高分子膜 内にリガンド等の生体物質を固定化する方法では、 生体物質の高分子膜に対す
る浸透のために、 高密度に固定化することが困難であった。 しかし、 特許文献
4記載の方法においては、 生体物質の表面電荷を高分子膜の電荷を有する官能 基の反対電荷になるように溶液の pHを制御することで、 静電的相互作用によ り生体物質の高分子膜への固定化反応を促進させることができ、 生体物質を高 密度に固定化することが可能になる。
特許文献 4記載の方法を利用した製品としては、 金で被覆したガラスプレー ト上に CM—デキストラン膜で表面処理を施したものが市販されている (B I ACORE社製 S e n s o r Ch i p CM5)。
また、 固相担体であるスライドガラスを、 ポリアクリルアミドの膜で被覆し たものも市販されている (パーキングエルマ一社製 Hyd r oGe l Co a t e d S I i d e )。 この製品は、水分を含有し膨潤したポリアクリルアミ ドゲルを使用するため、 乾燥が懸念されるナノリットルオーダーのサンプルを 滴下することに適しており、 さらにポリアクリルアミドに生体物質を吸着する ため活性化を不要とする利点を有する。
さらに、 例えば、 特許文献 5には、 ポリウレタンべ一スのポリマ一と生体物 質とを有機溶媒中で混合し、 さらに縮合剤を混合することによりポリマ一を重 合させた上で、 基板の表面にそれを結合させる方法が記載されている。 この方 法は、 従来の煩雑な方法を使用せず、 簡便に生体物質を含有した膜を固相担体 表面に形成することができるため、 生体物質を簡単に固相担体に固定化するこ とができるという利点を有する。
また、 例えば、 特許文献 6には、 固相担体上から活性エステル基を有するモ ノマーを重合することで、 高分子鎖を伸長させることにより、 固相担体上にブ ラシ状の高分子鎖を構築し、 その高分子鎖に生体物質を結合する方法が記載さ れている。本方法によれば、リガンド等の生体物質を固定化できることに加え、 高分子鎖を活性化することなく、 固相担体上に導入 (固定化) することが可能 になる。
以上のように、 固相担体上に親水性高分子膜を構築するという従来技術は、 個々に利点を有している。
一方、 例えば、 非特許文献 2には、 生体物質を固相担体に固定化するにあた つて、 予め多孔性の形状を持つ固相担体 (マイクロチャンネルウェハ) を利用 し、 表面積を増大させることにより、 より多くの生体物質を結合させる方法が 記載されている。 本方法によれば、 固相担体表面が平坦な場合よりも、 単位面 積あたりの生体物質の導入量 (固定化量) を向上させることができるという利 点から、 この方法は上記と同様、 広範囲な分野に応用されている。
[特許文献 1 ] 特開平 10— 195099号公報
[特許文献 2] 特開 2003-327784号公報
[特許文献 3 ] 特許第 2836009号公報
[特許文献 4 ] 米国特許第 5242828号明細書
[特許文献 5 ] 米国特許第 6174683号明細書
[特許文献 6] 国際公開第 02/056021号パンフレツト
[非特許文献 1] 阿部正紀, 半田宏, B I O I NDUSTRY, Vo l . 21, No. 8, p. 7.
[非特許文献 2] B r andy J . Ch e e k, e t a 1. , A n a 1. C h em. , 2001, 73, 5777- 5783 発明の開示
[発明が解決しょうとする課題]
しかしながら、 特許文献 1に記載の技術においては、 遠心分離操作等が煩雑 となり、 自動化および無人化するのが困難であり、 近年のハイスル一プットを 要求される創薬分野においては、 非合理的となりうる。
また、 特許文献 2及び非特許文献 1に記載の技術においては、 磁性体を完全 にカプセル化し、 タンパク質の非特異吸着を抑制する必要があり、 また、 酸化 鉄などを磁性体として利用する場合、鉄イオンなどの溶出を抑える必要がある。 加えて、 比表面積の大きな磁性体内包ラテックス粒子であるために、 分散安定 性を保つのが困難となる。 また、 ラテックス粒子及び磁性体ラテックス粒子と も作製が難しく、 工業化に向けた大量生産、 品質保持に対して課題が残る。 また、特許文献 3の技術においては、 ダルタルアルデヒド等の低分子化合物を
使用することにより、 タンパク質が変性してしまう虞、 さらに変性したタンパク 質への非特異吸着の虞、構造体が緻密に結合することにより、内部に有効な空間 ができず、反応性が低下する虞、 ダルタルアルデヒドなどの疎水性化合物による 非特異吸着の虞などがある。
さらに、 生体物質や特定物質などを固相担体に固定化する場合に関して言え ば、 上述した特許文献 4〜6や非特許文献 2等に記載の従来の技術では、 固相 担体上に固定化できる生体物質の導入量が未だ充分ではなかったり、 固定化ム ラができ、 精度良く一様に固定化できなかったりして、 バイオセンサー等にお いて充分な性能を得ることができなかった。 また、 固定化に際し高価で特殊な 固相担体が必要であったり、 固定化のために特別な機器や固定化方法が必要で あった。
特に、 生体物質と検出対象物質の組み合わせとして、 抗原と抗体、 タンパク 質とリガンド等を用いる場合には、 これらの間に生じる抗原抗体反応等は微弱 な生物学的反応であるので、 固定化量が十分なだけでなく、 固定化された物質 の生物学的活性が維持されていて、 さらに反応にあずかれるように表面に露出 していることが望まれる。 しかし、 従来用いられている固相担体では、 多量の 生体物質が固定化されて十分な膜厚を確保できたとしても、 膜中に埋没して含 まれる生体物質の反応性は十分でなく、 前記抗原抗体反応のような微弱な反応 の検出が必要とされるバイオセンサーや診断デバイス等に利用可能なものでは なかった。
そのため、 医療や診断、 遺伝子解析、 プロテオミクスの分野、 特に、 ァフィ 二ティー精製若しくは医薬作用解析ツールの開発においては、 非特異吸着が少 なく、 高効率、 短時間で処理ができるァフィ二ティークロマトグラフィー用担 体として使用できる部材の開発が要望されていた。
また、 特に何らかの固相担体に生体物質や特定物質を固定化する場合に関し ていえば、 固相担体上への生体物質や特定物質の導入量を、 生体物質や特定物 質の反応性 (活性) を損なわずに、 更に増加させる技術が要望されていた。 さ らに、 この際には、 安価に精度良く固相担体を作製できる技術が要望されてい た。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、 本発明の第 1の課題は、 生 体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生体物質を含有できるように した生体物質構造体及びその生体物質構造体の製造方法、 並びにそれを有する 生体物質担持体を提供し、 これにより、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分 離が容易な対象物質の精製方法及び対象物質の解析方法、 並びに、 それに用い るァフィユティークロマトグラフィー用容器、 分離用チップ、 対象物質の解析 用分離装置、 及び、 センサーチップを提供することを目的とする。
また、 本発明の第 2の課題は、 固相担体上に、 生体物質の反応性を保ったま ま、 従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体、 及び、 固相担体上に 従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体の製造方法、 それを製造す るための生体物質固定化キット、 並びに、 センサーチップを提供することを目 的とする。
さらに、 本発明の第 3の課題は、 所望の特定物質を従来よりも多量に含有で きるようにした生体物質複合体及びそれを有する生体物質複合体担持体を提供 し、 これにより、 非特異的吸着を抑制して、 対象物質を高効率且つ容易に分離 又は分析できるようにした、 対象物質の精製方法、 ァフィユティークロマトグ ラフィー用容器、 分離用チップ、 対象物質の解析方法、 対象物質の解析用分離 装置及びセンサーチップを提供することを目的とする。
また、 本発明の第 4の課題は、 固相担体上に、 生体関連物質の反応性を保つ たまま、 従来よりも多量の生体関連物質が精度良く固定化された固相担体であ つて、 安価で簡便に作製できるものを提供することを目的とする。 また、 該固 相担体の製造方法、 該固相担体を含むバイオセンサー、 診断デバイス、 生体関 連物質固定化キット、 並びに該固相担体を利用したィムノアッセィ等の測定方 法を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明の発明者らは、 上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、 生体物質 と、 該生体物質に結合可能な化合物とが結合した生体物質構造体を用いること により、 上記の課題を解決することが可能であることを見出し、 本発明を完成
させた。
具体的には、 本発明の発明者らは、 上記第 1の課題を解決するべく鋭意検討 した結果、 生体物質と、 該生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる粒子 状塊が結合することによって形成してなる生体物質構造体であって、 該生体物 質構造体を形成する粒子状塊 1つの粒径が 1 0 m以下である生体物質構造体 を用いることにより、 生体物質が失活することなく、 非特異吸着が抑制された 生体物質構造体を得ることができること、 また、 この生体物質構造体を用いれ ば、高効率なァフィ二ティー分離を容易に行なうことができるとの知見を得た。 また、 本発明の発明者らは、 上記第 2の課題を解決するべく鋭意検討した結 果、 生体物質を含有する溶液と、 生体物質と結合可能な官能基を有する化合物 を含有する溶液とを含む混合物を固相担体に供給して、 固相担体の表面に生体 物質及び化合物が結合し、 鎖状及び/又は網目状に結合したマトリックスを形 成させることにより、 生体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生体 物質が固定化された固相担体を得ることができるとの知見を得た。
さらに、 本発明の発明者らは、 上記第 3の課題を解決するべく鋭意検討した 結果、 生体物質と、 該生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる粒子状塊 が互いに結合してなる生体物質構造体に、 検体と相互作用しうる所望の特定物 質を結合させることにより、 非特異吸着を抑制し、 高効率な反応性、 高効率な ァフィ二ティー分離をすることができるとの知見を得た。
また、 本発明の発明者らは、 上記第 4の課題を解決するべく鋭意検討した結 果、 溶媒の存在下、 支持体、 生体関連物質、 及び該生体関連物質及び Z又は支 持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、 該 溶媒を除去することによりマトリックスを形成させれば、 生体関連物質の反応 性を保ったまま、 従来よりも多量の生体関連物質が精度良く固定化された固相 担体を得ることができるとの知見を得た。
即ち、 上記の第 1の課題を解決する本発明の要旨は、 生体物質、 及び、 該生 体物質と結合可能な化合物が結合してなる粒子状塊が互いに結合してなり、 該 粒子状塊の粒径が 1 0 m以下であることを特徴とする生体物質構造体に存す る (請求項 1 )。 これにより、 生体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量
の生体物質を含有した構造体を提供することができる。また、これを用いれば、 溶媒や分散媒などの媒体中で、 効率的にァフィ二ティー精製をすることもでき る。
また、 該粒子状塊同士の間には、 空間が形成されていることが好ましい (請 求項 2 )。これにより、この生体物質構造体の比表面積を大きくすることができ、 さらに、 この空間を、 生体物質を有効に作用させることができる反応場として 用いることが可能となる。
さらに、 該生体物質構造体の重量に対する該生体物質の重量の比率は、 0 . 1以上であることが好ましい (請求項 3 )。 これにより、 該生体物質構造体中の 生体物質含有比をより大きくすることができるようになり、 限られた空間の中 で、 効率よく生体物質と特異的に吸着や相互作用をする物質 (対象物質等) と を分離することが可能となる。
また、 該生体物質構造体は、 乾燥状態で 3 0 n m以上の径を有することが好 ましい (請求項 4 )。 該生体物質構造体の大きさを上記範囲とすることにより、 より多くの対象物質などを分離することが可能となる。
さらに、 該化合物の少なくとも 1種は、 該生体物質と結合可能な官能基を 2 点以上有することが好ましい (請求項 5 )。 これにより、 容易に該生体物質構造 体を形成させることができるようになる。
また、 該化合物は、 無電荷であることが好ましい (請求項 6 )。 これにより、 生体物質構造体が、 対象物質などの物質と非特異的相互作用を生じることを抑 制することができる。ここで、非特異相互作用とは、生体物質構造体を用いて、 生体物質と対象物質などとの間に所定の吸着や相互作用を生じさせようとする 場合に、 目的とする吸着や相互作用以外に生じる相互作用のことをいう。
さらに、 該化合物は、 水に混和しうると共に、 少なくとも 1種の有機溶媒に 混和しうることが好ましい (請求項 7 )。 これにより、 該生体物質構造体の製造 時に用いることのできる溶媒の幅を広げることができ、 該生体物質構造体を 様々に設計することができる。 また、 該生体物質構造体を使用する際に何らか の溶媒や分散媒等を用いる場合には、 その用いることができる溶媒や分散媒の 種類を増やすことができるため、 該生体物質構造体の用途を広げることができ
るようになる。
また、 該化合物の分子量は 1 0 0 0以上であることが好ましい (請求項 8 )。 これにより、 生体物質構造体の作製時に、 該生体物質に対する内部架橋を防止 することが可能となり、 効率的に生体物質構造体を作製することができるよう になる。
さらに、 該生体物質構造体は、 液体中に混和した状態での該化合物の怪が、 1 n m以上であることが好ましい (請求項 9 )。 これによつても、 生体物質構造 体の作製時に、 該生体物質に対する内部架橋を防止することが可能となり、 効 率的に生体物質構造体を作製することができるようになる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の別の要旨は、 上記の生体物質構造体の 製造方法であって、 上記生体物質と上記化合物とを混合する工程を有すること を特徴とする、生体物質構造体の製造方法に存する(請求項 1 2 )。これにより、 該生体物質構造体を確実に製造することが可能となる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質構造 体が固相担体に固定されてなることを特徴とする、生体物質担持体に存する(請 求項 1 3 )。 これにより、該生体物質構造体について、チップ(基板)、 ビーズ、 分離膜等へ、 その利用形態を広げることが可能となる。
また、 上記の生体物質担持体においては、 該生体物質構造体の厚みが 5 n m 以上であることが好ましい(請求項 1 4 )。該生体物質構造体の大きさを上記範 囲とすることにより、 この生体物質担持担体を用いて分離を行なう際に、 より 多くの対象物質などを分離することが可能となる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質構造 体と、上記生体物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、 上記生体物質構造体と上記試料液とを分離し、 上記生体物質構造体に結合した 上記対象物質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法に存する(請 求項 1 5 )。 これにより、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行な えるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作 用等の解析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質構造
体を保持した流路に、 上記生体物質に特異的に相互作用する対象物質を含む試 料液を流通させ、 上記流路から流出する溶出液のうち、 上記対象物質を含む分 画を回収することを特徴とする、 対象物質の精製方法に存する (請求項 1 6 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよ うになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の 解析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流体を収納しうる容 器本体と、 該容器本体内に保持された上記の生体物質構造体とを備えたことを 特徴とする、ァフィ二ティ一クロマトグラフィー用容器に存する(請求項 1 7 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよ うになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の 解析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板と、該基板に保持された上記の生体物質構造体とを備えたことを特徴とする、 分離用チップに存する (請求項 1 8 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制し て、 高効率で分離を容易に行なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフ ィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解析ツールを実現することができる。 上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質構造 体であって、 特定の構造を有する物質を特異的に吸着させうる生体物質を用い た生体物質構造体と、 対象物質を含有する試料液とを接触させ、 上記生体物質 構造体と上記試料液とを分離し、 上記生体物質に吸着した上記対象物質の量を 測定して、 上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、 対象物質の解析 方法に存する (請求項 1 9 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効 率で分離を容易に行なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ 一精製若しくは医薬作用等の解析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質構造 体であって、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる生体物質を用 いた生体物質構造体を保持した流路に、 対象物質を含む試料液を流通させ、 上 記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定して、 上記対象
物質の構造を解析することを特徴とする、 対象物質の解析方法に存する (請求 項 2 0 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行 なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティー精製若しくは医薬 作用等の解析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板、 及び、 該流路に保持され、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用し うる生体物質を用いた上記の生体物質構造体を備える分離用チップと、 該分離 用チップの該流路に、 対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、 該 流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備 えることを特徴とする、 対象物質の解析用分離装置に存する (請求項 2 1 )。 こ れによっても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよう になり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解 析ツールを実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板、 及び、 上記流路に保持され、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用 しうる生体物質を用いた上記の生体物質構造体を備える分離用チップを装着す るチップ装着部と、 該チップ装着部に上記分離用チップを装着した場合に、 上 記流路に、 対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、 上記流路から 流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えること を特徴とする、 対象物質の解析用分離装置に存する (請求項 2 2 )。 これによつ ても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解析ツール を実現することができる。
上記の第 1の課題を解決する本発明のさらに別の要旨は、 該生体物質構造体 を備えた、 センサーチップに存する (請求項 2 3 )。 これにより、 非特異的吸着 を抑制し、 なおかつ高感度のセンサ一チップを実現することができる。
また、 上記の第 2の課題を解決する本発明の要旨は、 固相担体と、 該固相担 体表面に形成され、 生体物質、 及び、 該生体物質と結合可能な化合物からなる 主鎖を有するマトリックス (即ち、 生体物質構造体) とを有することを特徴と
する、 生体物質が固定化された固相担体に存する (請求項 2 4 )。 これにより、 生体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生体物質が固定化された固 相担体を提供することができる。 また、 形成されたマトリックスではリガンド などの生体物質が三次元的に固定化されているため、 該マトリックスは、 生体 物質を有効に作用させることができる反応場として用いることが可能である。 なお、 ここで 「主鎖」 とはマトリックスの骨格を構成するもので、 該生体物 質と該化合物とが結合し、 鎖状及び/又は網目状に結合してなるものであり、 即ち、 該生体物質に対して該化合物が結合官能基によつて結合することで形成 されたものである。 したがって、 マトリックスは該化合物同士の間には該生体 物質が存在し、 また、 該生体物質同士の間には該化合物が存在する橋架け構造 を (少なくとも一部には) 有しており、 該生体物質及び該化合物の両方によつ て、 マトリックスの主鎖が構成されている。
このとき、 該マトリックスは、 溶媒の存在下、 該生体物質及び該化合物を共 存させた混合物を該固相担体表面に供給して形成されたものであることが好ま しい (請求項 2 5 )。 これにより、 マトリックスを極めて簡単に製造することが 可能となる。
上記の第 2の課題を解決する本発明の別の要旨は、水中で、生体物質、及び、 上記生体物質と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体に供給してな るマトリックスを固相担体表面に有することを特徴とする、 生体物質が固定化 された固相担体に存する (請求項 2 6 )。 これによつても、従来よりも多量の生 体物質が固定化された固相担体を提供することができる。 また、 形成されたマ トリックスではリガンドなどの生体物質が三次元的に固定化されているため、 該マトリックスは、 生体物質を有効に作用させることができる反応場として用 いることが可能である。
このとき、 該化合物は、 該生体物質と結合可能な官能基を少なくとも 2点有 するものを少なくとも 1種含むことが好ましい (請求項 2 9 )。 これにより、 該 マトリックスを容易に形成することが可能となる。
また、該混合物中における、 「該生体物質の重量 Z (該化合物の重量 +該生体 物質の重量)」 の値は、 0 . 1以上であることが好ましい (請求項 2 7 )。 これ
により、 該生体物質をより多く固定化することが可能になる。
さらに、 該マトリックスの重量に対する該生体物質の重量の割合も、 0 . 1 以上であることが好ましい (請求項 2 8 )。 これにより、 該化合物への非特異的 吸着を抑制することができる。
さらに、 該マトリックスの膜厚は、 乾燥状態で 5 n m以上であることが好ま しい (請求項 3 0 )。該マトリックスの膜厚を上記の範囲とすることにより、 固 相担体上により多くの生体物質を固定化することができる。
また、 該化合物は無電荷であることが好ましい (請求項 3 1 )。 これにより、 生体物質が非特異的相互作用を生じることを抑制することができる。 ここで、 非特異的相互作用とは、 マトリックスを用いて固相担体に固定化された生体物 質の所定の相互作用を生じさせようとする場合に、 目的とする相互作用以外に 生じる相互作用のことをいう。
さらに、 該化合物は、 水に混和しうると共に、 少なくとも 1種の有機溶媒に 混和しうることが好ましい (請求項 3 2 )。 これにより、 本発明の固相担体の製 造時に用いる溶媒の選択の幅を広げることができ、 該マトリックスの構造を 様々に設計することができる。 また、 本発明の生体物質が固定化された固相担 体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合には、 その用いることができる溶 媒の種類を増やすことができるため、 用途を広げることができる。
また、 該マトリックスに、 該生体物質に対して特異的に相互作用することが できる作用物質を含む溶液を接触させたときに、 該マトリックス中の該生体物 質の数に対する該生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比が 0 . 5以上 であることが好ましい (請求項 3 3 )。 これにより、 生体物質と作用物質との相 互作用を従来よりも効率よく生じさせることができる。
上記の第 2の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 固相担体の表面に、 生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなるマトリックスを有し、 該マトリックスの膜厚が、 乾燥状態で 5 n m以上であり、 且つ、 該マトリック スに、 該生体物質に対して特異的に相互作用することができる作用物質を含む 溶液を接触させたときに、 該マトリックス中の該生体物質の数に対する該生体 物質と相互作用した上記作用物質の数の比が 0 . 5以上であることを特徴とす
る、 生体物質が固定化された固相担体に存する (請求項 3 4 )。 これにより、 生 体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生体物質が固定化された固相 担体を得ることができる。 また、 得られた固相担体を用いれば、 生体物質と作 用物質との相互作用を従来よりも効率よぐ生じさせることができる。
さらに、 この特徴を生かすことにより、 上記の生体物質が固定化された固相 担体をセンサーチップに適用することができる。 即ち、 上記の第 2の課題を解 決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質が固定化された固相担体を有 するセンサ一チップに存する (請求項 3 8 )。
上記の第 2の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 溶媒の存在下、 生体 物質、 及び、 上記生体物質と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体 に供給し、 上記固相担体表面に、 上記生体物質及び上記化合物からなる主鎖を 有するマ.トリックスを形成させることを特徴とする、 生体物質が固定化された 固相担体の製造方法に存する (請求項 3 5 )。 これにより、 生体物質の反応性を 保ったまま、 従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体を得ることが できる。 また、 この製造方法は、 固定化したい生体物質と化合物とを混合し、 固相担体に接触させるだけで、 上述の効能を有するマトリックスで被覆された 固相担体が得られるという極めて簡便な方法である。
なお、 このとき、 上記の溶媒は水であることが好ましい (請求項 3 6 )。 上記の第 2の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質が固 定化された固相担体を製造するための生体物質固定化キットであって、 上記生 体物質と結合可能な化合物と、 上記生体物質及び該化合物を混和させうる溶媒 とを備えることを特徴とする、 生体物質固定化キットに存する (請求項 3 7 )。 これを用いれば、 上記の生体物質が固定化された固相担体を簡単に製造するこ とができる。
さらに、 上記の第 3の課題を解決する本発明の要旨は、 上記の生体物質構造 体に、 該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結合していることを特徴とす る、 生体物質複合体に存する (請求項 3 9 )。 即ち、 生体物質と、 該生体物質に 結合可能な化合物とが結合してなる、 粒径が 1 0 /z m以下の粒子状塊が互いに 結合してなる生体物質構造体に、 該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結
合していることを特徴とする、 生体物質複合体に存する。. これにより、 特定物 質の特性を保ったまま、 従来よりも多量の特定物質を担持した生体物質複合体 を提供することができる。 また、 比表面積を増大させ、 高効率な反応性を実現 できるようになる。
また、 該粒子状塊同士の間には空間が形成されていることが好ましい。 これ により、 この空間を、 特定物質を有効に作用させることができる反応場として 用いることが可能となる。
さらに、 生体物質複合体の重量に対する、 該生体物質の重量の比率が 0 . 1 以上であることが好ましい。 これにより、 該生体物質複合体中の生体物質含有 比をより大きくすることができるようになり、 これに伴って特定物質の含有比 率も大きくさせることが可能となるため、 特定物質の特定を十分に活用するこ とが可能となる。
また、 本発明の生体物質複合体は、 乾燥状態で 3 0 n m以上の径を有するこ とが好ましい。 該生体物質複合体の大きさを上記範囲とすることにより、 より 多くの対象物質などを相互作用させ、 分離することが可能となる。
さらに、 該化合物の少なくとも 1種が、 該生体物質と結合可能な官能基を 2 点以上有することが好ましい。 これにより、 容易に該生体物質複合体を形成さ せることができるようになる。
また、 該化合物は無電荷であることが好ましい。 これにより、 生体物質複合 体が、 対象物質などの物質と非特異的相互作用を生じることを抑制することが できる。 ここで、 非特異相互作用とは、 生体物質複合体を用いて、 特定物質と 対象物質などとの間に所定の吸着や相互作用を生じさせようとする場合に、 目 的とする吸着や相互作用以外に生じる相互作用のことをいう。
さらに、 該化合物は、 水に混和しうると共に、 少なくとも 1種の有機溶媒に 混和しうるものが好ましい。 これにより、 生体物質複合体の製造時に用いるこ とのできる溶媒の蝎を広げることができ、 生体物質複合体を様々に設計するこ とができる。 また、 生体物質複合体を使用する際に何らかの溶媒や分散媒等を 用いる場合には、 その用いることができる溶媒や分散媒の種類を増やすことが できるため、 生体物質複合体の用途を広げることができるようになる。
また、該化合物の分子量は 1 0 0 0以上であることが好ましい。これにより、 生体物質複合体の作製時に、 生体物質に対する内部架橋を防止することが可能 となり、 効率的に生体物質複合体を作製することができるようになる。
さらに、 液体中に混和した状態での該化合物の怪が 1 n m以上であることが 好ましい。 これによつても、 生体物質複合体の作製時に、 生体物質に対する内 部架橋を防止することが可能となり、 効率的に生体物質複合体を作製すること ができるようになる。
また、 該生体物質は生体分子であることが好ましく (請求項 1 0 )、 特に、 夕 ンパク質であることがより好ましい (請求項 1 1 )。 これにより、 本発明の生体 物質複合体にタンパク質の特性を利用することができる。 具体的には、 例えば 該生体物質にアルブミンを用いた場合、非特異的吸着を抑制することができる。 また別の側面では、 該生体物質にアビジンを用いれば、 ピオチン化した特定物 質を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。 さらに別の側面では、 該 生体物質にプロテイン Aを用いれば、 特定物質に抗体を用いた場合、 抗体を容 易に且つ多量に固定化することが可能となる。
さらに、 該特定物質は、 金属キレ一ト、 ビタミン、 糖、 ダル夕チオン、 ポロ ン酸、.タンパク質、 抗原、 核酸、 生理活性物質、 脂質、 ホルモン、 環境ホルモ ン及びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであること が好ましい (請求項 4 0 )。 中でも、 特定物質としては、 金属キレート、 ビォチ ン、 糖、 ダル夕チオン、 ボロン酸、 抗体、 抗原、 レセプター、 生理活性物質及 びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることがよ り好ましい。 特定物質として金属キレート、 ダルタチオン、 糖を用いれば、 ァ フィニティータグ融合タンパク質の精製において、ァフィ二ティータグとして、 ポリヒスチジン(H i s—タグ)、 ダル夕チオン一 s —トランスフェラ一ゼ(G S T)、マルト一ス結合タンパク質を用いた場合、有効に相互作用させて精製や 分離を行なうことができる。 さらに、 特定物質として糖を用いれば、 ウィルス を特異的に相互作用させることができる。 また、 特定物質としてボロン酸を用 いることにより、 糖鎖及び糖を含む化合物、 例えば、 糖鎖を有するタンパク質 を有効に精製もしくは相互作用させることができる。 さらに、 特定物質として
酵素を用いた場合、 基質を相互作用させることができ、 有効な固定化酵素を提 供することができる。 また、 特定物質として脂質を用いることにより、 脂質結 合タンパク質のスクリーニング若しくは分離 ·精製を行なうことができる。 さ らに、 特定物質として、 ホルモンや環境ホルモンを用いた場合、 それに結合す る生体物質をスクリーニングすることができる。 さらに、 特定物質としてピオ チン等のビタミンを用いれば、 作用物質にアビジン、 ストレプトアビジン、 も しくはアビジン誘導体を用いることで、 ピオチン一アビジン結合により、 効果 的に精製もしくは相互作用させることができる。 また、 特定物質として抗体も しくは抗原を用いれば、 特定物質を抗体とした場合には抗原を、 特定物質を抗 原とした場合には抗体を、 有効に精製もしくは相互作用させることができる。 さらに、 特定物質として核酸 (例えば、 D N AゃR N A等の核酸分子ゃP N A などのペプチド核酸) を用いれば、 本発明の生体物質複合体を遺伝子相互作用 解析のために用いることができる。 また、 特定物質として生理活性物質を用い るか、 もしくは、 疾患に寄与するレセプタ一などのタンパク質を用いれば、 本 発明の生体物質複合体を医薬候補化合物のスクリ一ニングもしくは医薬の作用 機構解明ツールとして用いることができる。 さらに、 特定物質としてキレート 形成基を用いれば、 金属イオンの分離等に用いることができる。
さらに、該特定物質と該生体物質とは、親水性分子を介して結合していること が好ましい (請求項 4 1 )。 また、 親水性分子は、 エチレンオキサイドを含有し ていることが好ましい (請求項 4 2 )。 これにより、 本発明の生体物質複合体を 用いてァフィ二ティー分離を行なう際に、効果的に検体と特定物質との相互作用 をさせることができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の別の要旨は、上記の生体物質複合体が固 相担体に固定されてなることを特徴とする、生体物質複合体担持体に存する (請 求項 4 3 )。 これにより、 該生体物質複合体について、 チップ (基板)、 ビーズ、 分離膜等へ、 その利用形態を広げることが可能となる。
また、 生体物質複合体担持体においては、 該生体物質複合体の厚みが 5 n m 以上であることが好ましい(請求項 4 4 )。該生体物質複合体の大きさを上記範 囲とすることにより、 この生体物質複合体担持体を用いて分離を行なう際に、
より多くの対象物質などを分離することが可能となる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体 と、上記特定物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、上 記生体物質複合体と上記試料液とを分離し、上記特定物質に結合した上記対象物 質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法に存する(請求項 4 5 )。 これにより、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようにな り、非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解析ッ一 ルを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質複合 体を保持した流路に、 上記特定物質に特異的に相互作用する対象物質を含む試 料液を流通させ、 上記流路から流出する溶出液のうち、 上記対象物質を含む分 画を回収することを特徴とする、 対象物質の精製方法に存する (請求項 4 6 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよ うになり、 非特異的吸着を抑制したァフィニティ一精製若しくは医薬作用等の 解析ツールを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流体を収納しうる容 器本体と、 該容器本体内に保持された、 上記の生体物質複合体とを備えたこと を特徴とするァフィ二ティ一クロマトグラフィー用容器に存する(請求項 4 7 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよ うになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティー精製若しくは医薬作用等の 解析ツールを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板と、 該流路に保持された、 上記の生体物質複合体とを備えたことを特徴とす る、 分離用チップに存する (請求項 4 8 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑 制して、 高効率で分離を容易に行なえるようになり、 非特異的吸着を抑制した ァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解析ツールを実現することができる。 . 上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質複合 体であって、 特定の構造を有する物質を特異的に吸着させうる特定物質を用い た生体物質複合体と、 対象物質を含有する試料液とを接触させ、 上記生体物質
複合体と上記試料液とを分離し、 上記特定物質に吸着した上記対象物質の量を 測定して、 上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、 対象物質の解析 方法に存する (請求項 4 9 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効 率で分離を容易に行なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ 一精製若しくは医薬作用等の解析ツールを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質複合 体であって、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用 いた生体物質複合体を保持した流路に、 対象物質を含む試料液を流通させ、 上 記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定して、 上記対象 物質の構造を解析することを特徴とする、 対象物質の解析方法に存する (請求 項 5 0 )。 これによつても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行 なえるようになり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬 作用等の解析ツールを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板、 及び、 該流路に保持され、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用し うる特定物質を用いた上記の生体物質複合体を備える分離用チップと、 該分離 用チップの該流路に、 対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、 該 流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備 えることを特徴とする、 対象物質の解析用分離装置に存する (請求項 5 1 )。 こ れによっても、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるよう になり、 非特異的吸着を抑制したァフィ二ティ一精製若しくは医薬作用等の解 析ツールを実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 流路を形成された基 板、 及び、 上記流路に保持され、 特定の構造を有する物質と特異的に相互作用 しうる特定物質を用いた上記の生体物質複合体を備える分離用チップを装着す るチップ装着部と、 該チップ装着部に上記分離用チップを装着した場合に、 上 記流路に、 対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、 上記流路から 流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えること を特徴とする、 対象物質の解析分離装置に存する (請求項 5 2 )。 これによつて
も、 非特異的吸着を抑制して、 高効率で分離を容易に行なえるようになり、 非 特異的吸着を抑制したァフィ二ティー精製若しくは医薬作用等の解析ツールを 実現することができる。
上記の第 3の課題を解決する本発明の更に別の要旨は、 上記の生体物質複合 体を備えたことを特徴とする、 センサ一チップに存する (請求項 53)。 生体物 質複合体を D N Aチップ、蛋白チップ等のセンサ一チップに用いることにより、 非特異的吸着の抑制が可能、 且つ、 高反応性のセンサーチップを実現すること ができる。
また、 上記の第 4の課題を解決するための本発明によれば、
(1) 生体関連物質、 該生体関連物質及び Z又は支持体と結合可能な化合物、 及び支持体を含むマトリックスが表面に形成されていることを特徴とする固相 担体 (請求項 54)
が提供される。
また、 この発明の好ましい態様によれば、
(2) 生体関連物質が、 該生体関連物質と結合可能な化合物によって架橋され ていることを特徴とする上記 (1) に記載の固相担体 (請求項 55) 、
(3) .マトリックス中に空隙を有することを特徴とする上記 1) 又は (2) に記載の固相担体 (請求項 56) 、
(4) マトリックスが、 溶媒の存在下、 支持体、 生体関連物質、 及び該生体関 連物質及び Z又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表 面に供給した後、 該溶媒を除去することにより形成されるものであることを特 徵とする、 上記 (1) 〜 (3) のいずれかに記載の固相担体 (請求項 58) 、
(5) 溶媒が水であることを特徴とする上記 (4) に記載の固相担体 (請求項 59) 、
(6) マトリックスの空隙率が 5%以上であることを特徴とする上記 (1) 〜
(5) のいずれかに記載の固相担体 (請求項 57) 、
( 7 )マトリックスの膜厚が乾燥状態で 20n m以上であることを特徴とする、 上記 (1) 〜 (6) のいずれかに記載の固相担体 (請求項 60) 、
(8) 化合物が、 1分子中に 2箇所以上の結合官能基を有するものであること を特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の固相担体(請求項 61)、
(9) 化合物が高分子化合物であることを特徴とする上記 (1) 〜 (8) のい ずれかに記載の固相担体 (請求項 62) 、
(10) 化合物が、 水に混和しうると共に、 少なくとも 1種の有機溶媒に混和 しうることを特徴とする、 上記(1) 〜 (9) のいずれかに記載の固相担体(請 求項 63) 、
(1 1) 支持体が、 約 10 nm〜 100 /xmの平均径を有する粒子であること を特徴とする上記 (1) 〜 (10) のいずれかに記載の固相担体 (請求項 64) が提供される。
また、 本発明の別の態様によれば、
(12) 溶媒の存在下、 支持体、 生体関連物質、 及び該生体関連物質及び Z又 は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、 該溶媒を除去することによりマトリックスを形成することを特徴とする、 上記 (1) 〜 (1 1) のいずれかに記載の固相担体の製造方法 (請求項 65) が提供される。 さらに別の態様によれば、
(1 3) 上記 (1) 〜 (1 1) のいずれかに記載の固相担体を製造するための 生体関連物質固定化キットであって、 少なくとも支持体と、 該生体関連物質及 び Z又は支持体と結合可能な化合物とを含むことを特徴とするキット (請求項 66) 、
( 14)生体関連物質、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物、 及び支持体を含むマトリックスが、 少なくとも 2種以上、 固相担体上の別々の 領域に配置されていることを特徴とする生体関連物質のアレイ(請求項 67)、 '
(1 5) 上記(1)〜(1 1) のいずれかに記載の固相担体及び/又は上記(1 4) に記載のアレイを含むバイオセンサー (請求項 68) 、
(16)上記(1)〜 (1 1) のいずれかに記載の固相担体及び 又は上記(1 4) に記載のアレイを含む診断デバイス (請求項 69)
が提供される。 また、
( 17)検体中の少なくとも 1種の分析物についてアツセィする方法であって、 以下の工程 (a) 及び (b) :
(a) 該検体を、 該分析物と反応し得る生体関連物質を少なくとも 1種含む上 記 (1) 〜 (1 1) のいずれかに記載の固相担体及び Z又は上記 (14) に記 載のアレイに送達する工程;および
(b) 該生体関連物質と該分析物との相互作用、 又は、 該分析物と反応する標 識物質を加えることにより生じる反応を検出することにより、 該分析物の存在 もしくは量について検出する工程
を有することを特徴とする方法 (請求項 70) 、
(18) 少なくとも検体が流体であって、 該検体の送達がフロ一により行われ ることを特徴とする上記 (17) に記載の方法 (請求項 71) 、
(1 9)上記(1)〜(1 1) のいずれかに記載の固相担体及びノ又は上記(1
4) に記載のアレイ上に設けられた参照領域における反応を検出し、 アツセィ の成否判定、 又は、 検出された分析物の存在もしくは量の校正を行う工程をさ らに有することを特徴とする上記 (17) 又は (18) に記載の方法 (請求項
72) 、
(20) 2種以上の分析物を並行してアツセィするために、 さらに以下の工程
(c) :
(c) 少なくとも 2種以上の分析物の存在もしくは量と、 特定の症状とを関連 づける工程を有することを特徴とする上記 (17) 〜 (19) のいずれかに記 載の方法 (請求項 73)
が提供される。
[発明の効果]
本発明の生体物質構造体及び生体物質構造体の製造方法並びに生体物質担持 体によれば、 生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有する構造体 を得ることができる。 また、 本発明の対象物質の精製方法、 ァフィ二ティーク 口マトグラフィー用容器、 分離用チップ、 対象物質の解析方法、 及び、 対象物 質の解析用分離装置によれば、 非特異的吸着を抑制して、 高効率な分離を容易 に行なうことが可能となり、 精製や解析を容易且つ高精度に行なうことが可能
となる。 また、 本発明の生体物質構造体を備えたセンサーチップによれば、 高 感度のセンサーチップを提供することができる。
さらに、 本発明の生体物質が固定化された固相担体、 及び、 生体物質が固定 化された固相担体の製造方法、 並びに生体物質固定化キットによれば、 固相担 体上への生体物質の導入量を、 生体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも飛 躍的に増加させることができる。
また、 本発明の生体物質が固定化された固相担体をセンサーチップとして利 用すれば、 高感度のセンサーチップを提供することができる。
また、 本発明の生体物質複合体及び生体物質複合体担持体によれば、 特定物 質の反応性を保ったまま多量の特定物質を含有する構造体を得ることができる。 さらに、 本発明の対象物質の精製方法、 ァフィ二ティークロマトグラフィー用 容器、 分離用チップ、 対象物質の解析方法、 及び、 対象物質の解析用分離装置 によれば、 非特異的吸着を抑制して、 高効率な分離を容易に行なうことが可能 となり、 精製や解析を容易且つ高精度に行なうことが可能となる。 また、 本発 明のセンサーチップによれば、 非特異的吸着の抑制が可能になると共に分析を 高感度に行なうことが可能となる。
さらに、 本発明の固相担体及び該固相担体の製造方法によれば、 固相担体上 に、 生体関連物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生体関連物質が精 度良く固定化された固相担体であって、 安価で簡便に作製でき、 保存安定性に も優れたものが提供される。 これにより、 医療 '診断、 遺伝子解析、 プロテオ ミタスの分野で使用可能な、 従来よりも精度の良い高感度な診断デバイスゃバ ィォセンサーを作製することができる。 図面の簡単な説明
[図 1 ] 図 1 ( a ) , 図 1 ( b ) は共に、 本発明の一実施形態について説明 するため、 生体物質構造体の構造の例を模式的に示す図である。
[図 2 ] 図 2 ( a ) , 図 2 ( b ) は共に本発明の一実施形態について説明す るための図で、 図 2 ( a ) は生体物質及び結合用化合物を模式的に示す図、 図 2 ( b ) は粒子状塊を模式的に示す図である。
[図 3] 図 3 (a) 〜図 3 (c) はいずれも、 本発明のマトリ ックスの構 造を説明するため、 本発明の生体物質担持体の一例の表面近傍を拡大して示す 模式図である。
[図 4] 図 4は、 本発明のマトリ ックスの構造を説明するため、 本発明の 生体物質担持体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。
[図 5] 図 5は、 本発明の一実施形態としてのァフィ二ティークロマトグ ラフィ一用容器を模式的に示す断面図である。
[図 6] 図 6は、 本発明の一実施形態としてのァフイエティークロマトグ ラフィ一装置の概要を模式的に示す図である。
[図 7] 図 7は、 本発明の一実施形態としてのァフイエティークロマトグ ラフィ一装置の概要を模式的に示す図である。
[図 8] 図 8は、 本発明のマトリ ックスの構造の一例の断面図を拡大して 示す模式図である。
[図 9] 図 9 (a) は固相担体表面が凹部であるゥュル状担体の模式図、 図 9 (b) は凸部であるパイル状担体の模式図である。
[図 10] 図 10 (a) 〜図 10 (c) は、 いずれも、 本発明のマトリツ クス構造の形成過程を示す模式図である。
[図 1 1] 図 1 1は、 本発明の実施例 1一 1の操作 (3) において、 マウ ス I gGを生体物質として作製した生体物質構造体を用いて、 ゥサギ血清とゥ サギ血清アンチマウス一 F a b ' との混合物からアンチマウス F a b ' をァフ ィユティー精製した時の各画分の SDS電気泳動パターンを示した図である。
[図 12] 図 1 2は、 本発明の実施例 1一 2の操作 (5) において、 マウ ス I gGを生体物質として作製した生体物質構造体基板 1を用いて、 ゥサギ血 清とゥサギ血清アンチマウス _F a b ' との混合物からアンチマウス F a b ' をァフィ二ティ一精製した時の各画分の S D S電気泳動パターンを示した図で ある。
[図 1 3] 図 1 3は、 本発明の実施例 1一 2の操作 (6) において、 マウ ス I gGを生体物質として作製した生体物質構造体基板 1の断面を S EMによ り観察した様子を示した図面代用写真である。
[図 14] 図 14は、 本発明の実施例 1一 2の操作 (6) において、 マウ ス I gGを生体物質として作製した生体物質構造体基板 1の表面を AFMによ り観察した様子を示した図面代用写真である。
[図 15] 図 1 5は、 本発明の実施例 1一 3の操作 (9) において、 プロ ティン Aを生体物質として作製した生体物質構造体基板 2を用いて、 ゥサギ血 清からゥサギ I g Gをァフィ二ティ一精製した時の各画分の S D S電気泳動パ ターンを示した図である。
[図 16] 図 16 (a) 〜図 16 (c) はいずれも本発明の実施例 1— 5 の操作(14)においての A FMによる観察結果を表わす図面代用写真であり、 図 16 (a)は生体物質構造体基板 3の表面を観察したものであり、図 16 (b) は生体物質構造体基板 4の表面を観察したものであり、 図 16 (c) は参照用 基板の表面を観察したものである。
[図 17] 図 17 (a)、 図 17 (b) は本発明の実施例 2— 1において観 察された蛍光観察写真を表わす図面代用写真であり、 図 17 (a) は蛍光測定 用バイオセンサチップ Aを写したもの、 図 17 (b) は蛍光測定用バイオセン サチップ Bを映したものである。
[図 18] 図 18は、 本発明の実施例 2— 3において、 S PRバイオセン サチップ 1及び比較バイォセンサチップ 2 Dを用いて S P R測定を行なった結 果を示すグラフである。
[図 19] 図 19は、 本発明の実施例 2— 3において、 SPRバイオセン サチップ 2及び比較バイォセンサチップ 2 Dを用いて S P R測定を行なつた結 果を示すグラフである。
[図 20] 図 20は、 本発明の実施例 2— 4において、 S PRバイオセン サチップ 1, 3を用いて S PR測定を行なった結果を示すグラフである。
[図 21]図 21は、本発明の実施例 2— 5において、 S PRシフト量と、 濃度依存 S P Rバイォセンサチップの作製に用いた混合液の濃度との関係、 及 び、 S PRシフト量と、 濃度比較 S PRバイオセンサチップの作製に用いたマ ウス I gG水溶液の濃度との関係を表わすグラフである。
[図 22] 図 22は、 比較例 2— 1において、 ポリアクリル酸 S PRバイ
ォセンサチップを用いて S P R測定を行なった結果を示すグラフである。
[図 23] 図 23は、 本発明の実施例 2— 7において観察された S EM断 面写真を表わす図面代用写真である。
[図 24] 図 24は、 本発明の実施例 2— 8において、 マトリックス構造 確認用チップの酵素分解前後及びバックグラウンドについて S P R測定を行な つた結果を示すグラフである。
[図 25] 図 25は、 本発明の実施例 2— 10において S PRにより測定 した抗体抗原反応の測定結果を表わすグラフである。
[図 26] 図 26 (a), 図 26 (b) はいずれも本発明の実施例 3 _ 1、 比較例 3— 1, 3— 2で測定した Q C M測定の測定結果を表わすグラフである。 なお、 図 26 (b) は、 図 26 (a) の要部を拡大して示したものである。
[図 27 ] 図 27は、 本発明の実施例 3— 2及び比較例 3 _ 3で測定した S P R測定の測定結果を表わすグラフである。
[図 28 ] 図 28は、 参考例 3— 1, 3— 2で測定した S P R測定の測定 結果を表わすグラフである。
[図 29] 図 29は、 本発明の実施例 3— 3で生体物質複合体を観察した 結果を表わす図面代用写真である。
[図 30] 図 30 (a) 、 図 30 (b) は化学発光測定結果 1において得 られた化学発光測定時の CCDカメラによる画像を示す。 図 30 (a) はバイ ォセンサチップ 1を写したもの、 図 30 (b) は比較用バイオセンサチップ 2 を写したものである。
[図 31] 図 31 (a) 、 図 31 (b) は製造例 4— 5で作製した本発明 のバイオセンサチップ 1のマトリックスの表面を S E Mにより観察した写真を 示す。 図 31 (a) は倍率 4000倍、 図 31 (b) は 60000倍の時の写 真である。
[図 32] 図 32は、 本発明の製造例 4一 5で作製した本発明のバイオセ ンサチップ 1のマトリックスの断面を S E Mにより観察した写真を示す。 倍率 は 50000倍である。
[図 33] 図 33は、 本発明の製造例 4— 5で作製した本発明のバイオセ ンサチップ 1のマトリックスの断面を S EMにより観察した写真を示す。 倍率 は 5000倍である。
[図 34] 図 34は、 本発明の製造例 4一 8で作製した本発明のバイオセ ンサチップ 4のマトリックスの断面を S EMにより観察した写真を示す。 倍率 は 5000倍である。
[図 35] 図 35は、 本発明の製造例 4一 7で作製した本発明のバイオセ ンサチップ 3 ( b )のマトリックスの断面を S E Mにより観察した写真を示す。 倍率は 50000倍である。
[符号の説明]
1 容 ¾本体
2 生体物質構造体 (生体物質複合体)
3 ァフィ二ティ一クロマトグラフィー用容器
10, 20 ァフィ二ティーク口マトグラフィ一装置
1 1 タンク
12 ポンプ
13 ォートインジェクタ
14 ァフィ二ティー分離用チップ
14 A 基板
14B 流路
14C チップ装着部
15 流路切替弁
16, 17 回収瓶
18 制御部
19 試料液供給部 ·
21 測定部 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明について詳細に説明するが、 本発明は以下に示す実施形態や例
示物などに限定されるものではなく、 本発明の要旨を逸脱しない範囲において 任意に変形して実施することができる。
本発明の生体物質構造体 (マトリックス) は、 生体物質、 及び、 この生体物 質と結合可能な化合物(固定化用化合物;以下適宜、 「結合用化合物」 という。) を含んで構成される構造体である。 そして、 この生体物質構造体は、 何らかの 固相担体に固定して生体物質担持体 (生体物質が固定化された固相担体) とし て用いることができ、 また、 生体物質及び Z又は結合用化合物に特定物質を結 合させて生体物質複合体や生体物質複合体担持体として用いることもでき、 さ らに、 何らかの支持体に結合させて本発明の生体関連物質固定担体として用い ることもできる。
[ I . 生体物質構造体]
本発明の生体物質構造体は、 生体物質、 及び、 結合用化合物を含んで構成さ れる構造体である。 そして、 この生体物質構造体は、 通常、 生体物質と結合用 化合物とが結合してなる粒子状塊が互いに結合してなるものとなっている。 ま た、 この生体物質構造体を微視的に見た場合、 これらの生体物質と結合用化合 物とからなる主鎖を有するマトリックスとなっている。
[ 1 - 1 . 生体物質]
生体物質は、 本発明の生体物質構造体を構成する要素であり、 その目的に応 じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。 中でも、 本発明の生体物質構造体を対象物質の精製や解析用途に用いる場合 には、 通常は、 生体物質は、 所定の物質 (以下適宜、 生体物質と相互作用する 物質を 「作用物質」 という) と相互作用しうるものを用いるようにする。
例えば、 本発明の生体物質構造体を対象物質の精製などの用途で用いる場合 には、生体物質として作用物質と相互作用できるものを用いるようにし、また、 当該作用物質に該当する物質 (即ち、 生体物質と相互作用しうる物質) を対象 物質として用いる。 そして、 上記の相互作用を利用して、 対象物質の分離精製 を行なうようにする。
また、 例えば、 本発明の生体物質構造体を対象物質の解析用途に用いる場合 にも、 生体物質としては上記の作用物質と相苴作用できるものを用いる。 そし
て、 対象物質と生体物質とが相互作用するかどうかを試し、 対象物質と生体物 質とが相互作用を生じるようであれば、 上記の対象物質は作用物質のうちの 1 種に該当する。 即ち、 対象物質が生体物質と相互作用を生じるような特定の構 造を有している、と解析することができる。これを利用し、対象物質の構造や、 作用物質の構造を解析することが可能である。
ここで、 生体物質と作用物質との 「相互作用」 とは、 特に限定されるもので はないが、 通常は、 共有結合、 イオン結合、 キレート結合、 配位結合、 疎水結 合、 水素結合、 ファンデルワールス結合、 及び静電力による結合のうち少なく とも 1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。 ただし、 本明細書に言 う 「相互作用」 との用語は最も広義に解釈すべきであり、 いかなる意味におい ても限定的に解釈してはならない。また静電力による結合とは、静電結合の他、 電気的反発も含有する。 また、 上記作用の結果生じる結合反応、 合成反応、 分 解反応も相互作用に含有される。
さらに、 本発明の生体物質構造体を精製や解析用途に用いる場合には、 上記 の相互作用は精製や解析が可能である限り任意である。 その場合の相互作用の 具体例としては、 抗原と抗体との間の結合及び解離、 タンパク質レセプ夕一と リガンドとの間の結合及び解離、接着分子と相手方分子との間の結合及び解離、 酵素と基質との間の結合及び解離、 アポ酵素と補酵素との間の結合及び解離、 核酸とそれに結合する核酸又はタンパク質との間の結合及び解離、 情報伝達系 におけるタンパク質同士の間の結合及び解離、 糖タンパク質とタンパク質との 間の結合及び解離、糖鎖と夕ンパク質との間の結合及び解離などが挙げられる。 なお、 精製や解析の方法によっては、 対象物質に対して、 相互作用の中でも 特に吸着が可能であるものを用いるようにする場合もある。
生体物質の具体例を挙げれば、 酵素、 抗体、 レクチン、 レセプター、 プロテ イン A、 プロテイン G、 プロテイン AZ G、 アビジン、 ストレプトアビジン、 ニュートラアビジン、 ダル夕チオン一 S—トランスフェラ一ゼ、 糖タンパク質 等のタンパク質、 ペプチド、 アミノ酸、 サイト力イン、 ホルモン、 ヌクレオチ ド、 オリゴヌクレオチド、 核酸 (D N A, R N A, P NA)、 糖、 オリゴ糖、 多 糖、 シアル酸誘導体、 シアル化糖鎖等の糖鎖、 脂質、 上述以外の生体物質由来
の高分子有機物質、 低分子化合物、 無機物質、 若しくはこれらの融合体、 また は、ウィルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子などが挙げられる。 また、 このほか、 例えば、 細胞等の生体分子以外の物質を生体物質として用 いることもできる。
さらに、 ィムノグロブリンやその派生物である F ( a b ' ) 2、 F a b '、 F a b、 レセプ夕一や酵素とその派生物、 核酸、 天然あるいは人工のペプチド、 人工ポリマー、 糖質、 脂質、 無機物質あるいは有機配位子、 ウィルス、 細胞等 も、 生体物質の例として挙げられる。
また、 上記の生体物質の例の中でも、 タンパク質としては、 タンパク質の全 長であっても、 結合活性部位を含む部分ペプチドであってもよい。 また、 アミ ノ酸配列、及びその機能が既知のタンパク質でも、未知のタンパク質でもよい。 これらは、 合成されたペプチド鎖、 生体より精製されたタンパク質、 あるいは c D NAライブラリ一等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、 精製したタンパク 質等でも標的物質として用いることができる。また、合成されたペプチド鎖は、 これに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。これらのうち好ましくは、 精製されたタンパク質である。
夕ンパク質を使用することにより、本発明の生体物質複合体にタンパク質の特 性を利用することができる。具体的には、例えば該生体物質にアルブミンを用い た場合、 非特異的吸着を抑制することができる。 また別の側面では、 該生体物質 にアビジンを用いれば、ピオチン化した特定物質を容易に且つ多量に固定化する ことが可能となる。さらに別の側面では、該生体物質にプロテイン Aを用いれば、 特定物質に抗体を用いた場合、抗体を容易に且つ多量に固定化することが可能と なる。
さらに、 上記の生体物質の例の中でも、 核酸としては、 特に制限はなく、 D N A、 R N Aの他、 アブタマ一等の核酸塩基、 P N A等のペプチド核酸を用い ることもできる。 また、 塩基配列あるいは機能が、 既知の核酸でも、 未知の核 酸でもよい。 中でも好ましくは、 タンパク質に結合能力を有する、 核酸として の機能及び塩基配列が既知のものか、 あるいは、 ゲノムライブラリ一等から制 限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いることができる。
また、 上記の生体物質の例の中でも、 糖鎖としては、 その糖配列あるいは機 能が、 既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。 好ましくは、 既に分離解析され、 糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
さらに、 上記の生体物質の例の中でも、 低分子化合物としては、 上記の生体 物質に要求される条件を満たす (例えば、 上記のように相互作用する能力を有 する) 限り、 特に制限はない。 機能が未知のものでも、 あるいはタンパク質に 結合する能力が既に知られているものでも用いることができるが、 医薬候補化 合物等が好適に用いられる。
なお、 本発明の生体物質構造体を、 ァフィ二ティ一精製や解析などのァフィ 二ティ一分離技術を利用した分離精製に用いた場合、 上記の生体物質が、 分離 精製対象である対象物質の標的物質となる。 さらに、 本発明の生体物質を分析 に用いた場合には、 これら生体物質は、 検体中の検出対象物質と生体物質との 相互作用 (結合性等) を測定する際の標的物質となる。
また、 生体物質は 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組み合わせ 及び比率で併用してもよい。
[ 1 - 2 . 結合用化合物 (固定化用化合物)]
結合用化合物は、 上記生体物質と結合しうる化合物であれば、 任意の化合物 を用いることができる。 したがって、 結合用化合物としては、 上記生体物質と 結合可能な官能基(以下適宜、 「結合官能基」 という) を有する化合物を任意に 用いることができる。
ここで、 結合とは、 通常、共有結合、 イオン結合、 キレート結合、配位結合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルワールス結合、 静電力による結合のうち一つ 以上の結合から成り立つものを指す。 ここで、 好ましくは共有結合である。 結合官能基としては、 上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限 はなく、 任意の官能基を用いることができる。 通常は、 生体物質の種類や本発 明の生体物質構造体の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。 なお、 結合官能基は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合 わせ及び比率で用いても良い。
結合官能基は、 通常、 反応性基として共有結合を介して生体物質と結合する
ものと、 非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。
共有結合により結合する場合、 結合官能基の具体例としては、 スクシンイミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒド基、 マレイミド基等が挙げられる。
この場合、 結合官能基と共有結合によって結合する生体物質としては、 例え ば、 タンパク質、 核酸、 糖等が挙げられる。
生体物質がタンパク質である場合、 通常は、 タンパク質の表層に存在するァ ミノ基、 ヒドロキシル基、 チオール基等の基と、 結合用化合物の結合官能基と が結合する。 この際、 例えばァミノ基が結合官能基と結合する場合には、 結合 官能基の具体例としてはスクシンイミド基、 エポキシ基、 アルデヒド基等が挙 げられる。 また、 例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、 結 合官能基の具体例の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。 さらに、 例え ばチオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはマレ イミド基等が挙げられる。
また、 生体物質が核酸である場合、 通常は、 核酸の末端に導入されるァミノ 基、 ヒドロキシル基、 チオール基等の基と、 結合用化合物の結合官能基とが結 合する。 この際、 例えばァミノ基が結合官能基と結合する場合には、 結合官能 基の具体例としてはスクシンイミド基、 エポキシ基、 アルデヒド基等が挙げら れる。 また、 例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、 結合官 能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。 さらに、 例えばチオール基 が結合官能基と結合する場合には、 結合官能基の具体例としてはマレイミド基 等が挙げられる。
さらに、 生体物質が糖である場合、 通常は、 糖の側鎖に存在するァミノ基、 ヒドロキシル基、 チオール基等の基と、 結合用化合物の結合官能基とが結合す る。 この際、 例えばァミノ基が結合官能基と結合する場合には、 結合官能基の 具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。 また、 例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、 結合官能基の 具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。 さらに、 例えばチオール基が結合 官能基と結合する場合には、 結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙 げられる。
一方、生体物質と結合用化合物とが非共有結合により結合する場合、例えば、 錯体形成、 生体物質間相互作用などにより結合をさせることができる。
生体物質と結合用化合物とで錯体を形成させて結合させる場合、 結合官能基 の具体例としては、 ボロン酸基等が挙げられる。
また、 例えば生体物質間相互作用の中でもアビジン—ビォチン相互作用によ り結合させる場合には、 結合官能基の具体例としては、 ピオチン基等が挙げら れる。
ボロン酸基 ピオチン基 さらに、 例えば生体物質としてウィルスを用いる場合、 結合官能基の具体例 としては糖や多糖が挙げられる。
また、 例えば生体物質が疎液領域を有している場合には、 疎液相互作用によ る物理吸着により結合させるようにしても良い。
また、 結合用化合物が結合官能基を有する場合、 結合用化合物は、 1分子中 に通常 2点以上、 好ましくは 3点以上の結合官能基を有しているものを少なく とも 1種以上含むことが好ましい。 これは、 本発明の構造を形成しやすくする ためである。 具体例を挙げると、 1分子中に 2点以上の結合官能基を有してい ' れば、 容易に生体物質と結合用化合物が結合した粒子状塊を形成させ、 さらに それら粒子状塊同士を結合させることにより、 その高次構造である生体物質構 造体を形成できるようになる。 また、 特に.、 1分子中に 2点以上の結合官能基 を有していれば、 濃縮を行なった場合などに生体物質構造体を容易に形成する ことができるようになる。
ただし、本発明の生体物質構造体が、後述する粒子状塊を形成させやすくなる ためには、結合用化合物同士の結合が無く、生体物質ど結合用化合物との結合が
主であることが好ましい。結合用化合物同士の結合がある場合、結合用化合物同 士の凝集が形成されやすく、粒子状塊の粒径が大きくなる傾向があり、粒子状塊 の粒径を制御し難くなるためである。また、結合用化合物同士の結合がある場合、 効率よく生体物質を結合させられず、 さらに、検体を本発明の生体物質構造体と 反応させる際に、 望ましい反応効率が得られない虞があるためである。
また、結合用化合物の結合があるときに、高分子を結合用化合物に用いた場合、 結合用化合物の内部架橋が起こってしまい、さらに生体物質を固定化しにくくな る。 ここで、 結合用化合物同士の結合とは、 分子間引力、 疎液相互作用、 電気的 相互作用を除く結合を示す。
このように結合用化合物同士の結合が無い生体物質構造体を形成させるため には、 結合用化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、 さらに、 結合 用化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は具 体的には前述したように、 スクシンイミド基、 エポキシ基、 アルデヒド基、 マレ イミド基、 ボロン酸基、 ピオチン基などが挙げられる。結合用官能基同士が結合 する状況とは、 過度の熱を加えることや、 強力な紫外線を照射することを示す。 また、生体物質構造体に含まれる結合用化合物同士の結合を調べる方法として は、生^:物質構造体中の生体物質を後述の方法で分解した時に、不溶物が形成さ れることで判断される。若しくは、生体物質構造体を熱分解性ガスクロマトダラ フィ一で分析することにより、結合用化合物同士の結合を示唆する化合物を検出 することで判断される。具体的には、 例えば、 紫外線照射により生体物質と光反 応性基とを有する結合用化合物を結合させる工程において、結合用化合物内の光 反応性基 (例えば、 アジド基) により、 結合用化合物同士が結合した場合、 光反 応性基が関与した結合、若しくは残存光反応性基の存在により、結合用化合物同 士の結合を推測することができる(ァフィ二ティークロマトグラフィー:東京化 学同人、 著者:松本勲武、 別府正敏 P 2 3 8〜参照)。
さらに、生体物質の特定を生かすために、生体物質の活性を維持するためには、 生体物質が失活しないよう前述した生体物質の官能基及び結合用化合物の官能 基を選択することが好ましい。例えば、 タンパク質を固定化するとき、 タンパク 質の活性部分にチオール基を有している場合には、チオール基以外の基(例えば、
アミノ基) を生体物質の結合官能基として選択し、 このアミノ基と結合するため に、結合用化合物の結合官能基は、スクシンイミド基、エポキシ基が選択される。 さらに、 結合用化合物としては、 通常は、 水と混和しうるものを用いること が望ましい。 生体物質構造体の製造時に用いる媒質は任意であるが、 通常は、 溶媒や分散媒等の媒質として水を用いるためである。 詳しくは、 生体物質構造 体の製造時には、 通常、 水の存在下で結合用化合物を生体物質と混合し、 結合 用化合物と生体物質とを結合させて粒子状塊を作製する工程を経ることになる が、 そのような場合に生体物質と結合用化合物とを均一に混合し、 結合反応を スムーズに行なわせるためである。 なお、 本明細書においては、 混和の形態と しては、 溶解していても良いし分散していても良い。
また、 結合用化合物は、 少なくとも 1種の有機溶媒に混和しうることが好ま しい。 これにより、 結合用化合物の合成時に用いる溶媒の選択の幅を広げるこ とができ、 生体物質構造体の構造を様々に設計することができるようになるた めである。 例えば、 結合用化合物が有機溶媒に混和できれば、 結合用化合物の 合成時に結合官能基を保護することを目的として、 合成を有機溶媒中で行なう ことができるようになる。
さらに、 結合用化合物は、 水と有機溶媒との両方に混和できるものを用いる ことがより好ましい。 即ち、 水に混和しうると共に、 少なくとも 1種の有機溶 媒に混和しうることがより好ましい。 結合用化合物が水と有機溶媒との両方に 混和できれば、 本発明の生体物質構造体を使用する際に何らかの溶媒を用いる 場合に、 その用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、 用途 を広げることができる。
また、 結合用化合物は無電荷であることが望ましい。 結合用化合物が生体物 質と同じ電荷 (同符号の電荷) を有していると、 静電的反発力により、 結合用 化合物と生体物質との結合が妨げられる虞がある。 一方、 結合用化合物が生体 物質と反対の電荷 (逆符号の電荷) を有していると、 生体物質と結合用化合物 内の電荷を有する部分とが静電的引力により結合してしまい、 結合用化合物が 有している結合官能基に生体物質が効果的に結合することを妨げる虞がある。 また、 結合用化合物と生体物質との静電的引力による結合は、 本発明の生体物
質構造体を分離精製に用いる場合、 使用時に用いる溶液の p Hや塩などの添加 物により、 容易に結合が壊れてしまうことが予想され、 好ましくない。
さらに、 本発明の生体物質構造体を用いて対象物質の分離を行なおうとした 時に、 対象物質が結合用化合物と同じ電荷を有している場合には、 生体物質構 造体に含まれる生体物質との特異的な相互作用が妨げられる虞があり、 また、 対象物質と結合用化合物とが反対の電荷を有していた場合には、 対象物質と結 合用化合物とが電気的引力により非特異吸着等の非特異的相互作用を生じるこ とが推測されるためである。
また、 本発明の生体物質担持体を用いて、 選択的生体物質間相互作用を検出 しょうとする時にも同様に、 アナライトである作用物質が結合用化合物と同じ 電荷を有している場合には、 リガンドである生体物質との特異的な相互作用が 妨げられる虞があり、 また、 アナライトと結合用化合物とが反対の電荷を有し ていた場合、 アナライトと結合用化合物とが非特異吸着等の非特異的相互作用 を生じることが推測されるためである。
なお、結合用化合物が無電荷であるとは、 当該結合用化合物が、少なくとも構 造式上、 非イオン性であれば、 当該結合用化合物は無電荷である。 ただし、 本発 明の生体物質複合体の製造過程において、結合官能基の加水分解等により、結合 用化合物が電荷をもったとしても、本発明の効果を損なわない限り、 このような 結合用化合物は好適に用いることができる。
結合用化合物の他の例としては、 例えば、 有機化合物、 無機化合物、 有機無 機ハイブリツド材料などが挙げられる。
また、 結合用化合物は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み 合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、 結合用化合物として用いられる有機化合物は、 低分子化合物でも、 高分子化合物でもよいが、 好ましくは高分子化合物である。
結合用化合物として使用できる低分子化合物の具体例としては、 グルタルァ ノレデヒ ド、 ジエポキシブタン、 ジエポキシへキサン、 ジエポキシオクタン、 ビ スマレイミ ドへキサン、 ビススノレホスクシミジノレスべレイ ト、 ジスクシミジノレ グノレタレイ ド、 ェチレングリコ一ノレビススクシミジノレスクシネィ ト - スノレホェ
チレングリコールビススクシミジルスクシネィト、 スクシミジル 4一 N—マレ ィミドメチルシクロへキサン 1一力ルポキシレイト、 スクシミジル 4— N—マ レイミドメチルシクロへキサン 1一力ルポキシレイト、 スルホスルホスクシミ ジル 4一 p—マレイミドフエ二ルブチレイト、 スクシミジル 4一 p—マレイミ ドフエニルブチレイト、 スルホー m—マレイミドベンゾィル—N—ヒドロキシ スルホスクシミドエステルなどが挙げられる。
一方、 結合用化合物として高分子化合物を用いる場合、 高分子化合物は合成 高分子化合物であつても良く、 天然高分子化合物であつても良い。
結合用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、 上記の条件を満たす合 成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。 ただし、 通常は、 生体物質と結合することのできるモノマ一を有していることが望ましい。また、 通常は、 合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、 親水性モノマ —を有していることが好ましい。 さらに、 好ましくは、 上記の生体物質と結合 することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合 物を用いることが望ましい。
即ち、 結合用化合物として使用する合成高分子化合物の合成には、 少なくと もモノマー種として、 生体物質と結合して粒子状塊を形成することができるモ ノマー (これは、 生体物質と反応してできるコンジュゲートを形成することが できるモノマーの一種 (一部) である) と、 粒子状塊同士で結合し、 鎖状及び /又は網目状に結合した構造 (即ち、 生体物質構造体の構造) を構築するため の結合官能基を有するモノマー (これは、 コンジュゲート間で結合し、 鎖状及 び/又は網目状に結合した構造を構築するための結合官能基を有するモノマー の一種 (一部) である) とを有することが好ましく、 さらに、 親水性又は両親 媒性の官能基を有するモノマーを用いることがより好ましい。 これに加えて、 合成高分子化合物が溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する 目的で、 疎水性モノマ一を含有させるようにすることも、 好ましい。 なお、 こ こで挙げたモノマーは、 それぞれ異なるモノマ一であってもよいが、 一つのモ ノマーが上記の機能のうちの 2以上を兼ね備えていてもよい。
結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物を構成するモノマーの具体 例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレン、 ク口ルスチレン、 α—メチルスチレン、 ジビニルベンゼン、 ビニルトルエン等 の重合性不飽和芳香族類; (メタ) アクリル酸、 ィタコン酸、 マレイン酸、 フタ ル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、 スチレンスルホン酸 ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸; (メタ) アクリル酸メチル、 (メタ) アクリル酸ェチル、 (メタ) アクリル酸—η—プチル、 (メタ) アクリル酸— 2 —ヒドロキシェチル、 (メタ) アクリル酸ヒドロキシプロピル、 (メタ) ァクリ ル酸グリシジル、 Ν - (メタ) ァクリロイロキシスクシンイミド、 エチレング リコール—ジ— (メタ) アクリル酸エステル、 (メタ) アクリル酸トリプロモフ ェニル、 2一 (メタ) ァクリル酸グリコシロキシェチル、 2—メタクリロイ口 キシェチルホスホリルコリン、 等の重合性カルボン酸エステル;(メタ) ァクリ ロニトリル、 (メタ) ァクロレイン、 (メタ) アクリルアミド、 Ν, Ν—ジメチ ルァクリルアミド、 Ν—イソプロピル (メタ) ァクリルアミド、 Ν—ビニルホ ルムアミド、 3—ァクリルアミドフエ二ルポロン酸、 Ν—ァクリロイル— N ' 一ビォチ二ルー 3, 6—ジォキサオクタン一 1, 9—ジァミン、 ブタジエン、 イソプレン、 酢酸ビニル、 ビニルピリジン、 Ν—ビニルピロリドン、 Ν— (メ タ) ァクリロイルモルフアリン、 塩化ビエル、 塩化ビニリデン、 臭化ビニル等 の不飽和力ルポン酸ァミド類;重合性不飽和二トリル類;ハロゲン化ビニル類; 共役ジェン類;ポリエチレングリコールモノ (メタ) ァクリレート、 ポリプロ ピレングリコールモノ (メタ) ァクリレ一ト等のマクロモノマー類、 などが挙 げられる。
また、結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物のモノマ一としては、 例えば、 付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。 この付加重合に 用いられるモノマーの具体例としては、 ジフエニルメタンジイソシアナ一ト、 ナフタレンジイソシアナ一ト、 トリレンジイソシアナ一卜、 テトラメチルキシ レンジイソシアナ一卜、 キシレンジイソシアナ一卜、 ジシクロへキサンジイソ シアナ一卜、 ジシクロへキシルメタンジイソシアナ一ト、 へキサメチレンジィ ソシアナート、 イソホロンジイソシアナート等の脂肪族又は芳香族ィソシアナ
—ト類、 ケテン類、 エポキシ基含有化合物類、 ビニル基含有化合物類などが挙 げられる。
また、 上記化合物群には、 活性化水素を有する官能基を備えたモノマーを反 応させることも可能である。 その具体例としては水酸基又はアミノ基を有する 化合物などが挙げられ、 具体的には、 エチレングリコール、 ジエチレングリコ ール、 プロピレングリコ一ル、 1 , 4—ブタンジオール、 1 , 6—へキサンジ オール、 グリセリン、 トリメチロールプロパン、 ペンタエリスリ ] ル、 ソル ビトール、 メチレングリコシド、 ショ糖、 ビス (ヒドロキシェチル) ベンゼン のようなポリオ一ル類;エチレンジァミン、 へキサメチレンジァミン、 N, N ' —ジイソプロピルメチレンジァミン、 N, N, —ジー s e c—ブチル— p —フ ェニレンジァミン、 1 , 3 , 5 —トリアミノベンゼン等のポリアミン類;ォキ シム類などが挙げられる。
さらに、 結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物には、 上述したモ ノマーの他、 架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させても良い。 多官能性 化合物としては、 例えば、 N—メチロールアクリルアミド、 N—エタノールァ クリルアミド、 N—プロパノールァクリルアミド、 N—メチ口一ルマレイミド、 N—ェチロールマレイミド、 N—メチロールマレインアミド酸、 N—メチ口一 ルマレインアミド酸エステル、 ビニル芳香族酸の N—アルキロールアミド (例 えば N—メチロ一ルー p—ビニルベンズァミド等)、 N—(イソブトキシメチル) アクリルアミド等が挙げられる。
さらに、上述したモノマーのうち、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、 ジビニルシクロへキサン、 1, 3—ジプロぺニルベンゼン、 エチレングリコ一 ルジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ブチレングリコール、 トリメ チロールェタントリ (メタ) ァクリレート、 ペンタエリスリト一ルテトラ (メ タ) ァクリレート等の多官能性モノマー類は、 架橋剤としても使用することが できる。
架橋剤となりうる多官能性化合物をモノマーとして使用することにより、 結 合用化合物の媒質中での広がりや硬さを制御することができる。
また、 前述の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマ一としては、 スクシンイミド基、 エポキシ基、 アルデヒド基、 マレイミド基等を有するモノ マーの例として、 N— (メタ) ァクリロイロキシスクシンィミド、 (メタ) ァク リル酸グリシジル、 ァクロレイン、 マレイミドアクリレート等が挙げられる。 また、 結合官能基としてボロン酸基を有するモノマーの例としては、 3—ァ クリルアミドフエ二ルポロン酸等が挙げられる。
さらに、 結合官能基としてピオチン基を有するモノマーの例としては、 N— ァクリロイルー N ' —ピオチニル _ 3, 6 —ジォキサオクタン一 1, 9ージァ ミン等が挙げられる。
また、 結合官能基として糖や多糖を有するモノマーの例としては、 2— (メ 夕) アクリル酸グリコシロキシェチル等が挙げられる。
さらに、親水性モノマーの具体例としては、 (メタ)ァクリル酸、ィタコン酸、 (メタ)アクリル酸 2—ヒドロキシェチル、 (メタ)アクリル酸 2—ヒドロキシ プロピル、 マレイン酸、 スルホン酸、 スルホン酸ソーダ、 (メタ) アクリルアミ ド、 N, N—ジメチル (メタ) ァクリルアミド、 N—イソプロピルァクリルァ ミド、 N—ビニルホルムアミド、 (メタ) アクリロニトリル、 N— (メタ) ァク リロイルモルファリン、 N—ビニルピロリドン、 N—ビニルァセトアミド、 N —ビニル一N _ァセ卜アミド、 ポリエチレングリコールモノー (メタ) ァクリ レート、 (メタ)アクリル酸グリシジル、 2—メタクリロォキシェチルホスホリ ルコリン等が挙げられる。
また、結合用化合物は、前述のとおり無電荷のものが好ましい。したがって、 結合用化合物として用いる合成高分子化合物を無電荷にする場合、 この無電荷 の合成高分子化合物に使用するモノマーは無電荷であれば特に限定されないが、 具体例を挙げると、 (メタ) アクリル酸 2—ヒドロキシェチル、 (メタ) ァクリ ル酸 2—ヒドロキシプロピル、 (メタ) アクリルアミド、 N, N—ジメチル(メ 夕) アクリルアミド、 N—イソプロピルアクリルアミド、 N—ビエルホルムァ ミド、 (メタ) アクリロニトリル、 N— (メタ) ァクリロイルモルフアリン、 N -ビニルピロリドン、 N _ビニルァセトアミド、 N—ビニル—N—ァセトアミ
ド、 ポリエチレンダリコールモノー (メタ) ァクリレート、 (メタ) アクリル酸 グリシジル等が挙げられる。
ところで、モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、 通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、 その際 に用いるラジカル重合開始剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のも のを用いることができる。使用できるラジカル系重合開始剤の例としては、 2, 2, —ァゾビスイソプチロニトリル、 2 , 2 ' —ァゾビス— (2—メチルプロ パンニトリル)、 2 , 2 ' —ァゾビス一 (2, 4—ジメチルペン夕ンニトリル)、 2 , 2 ' ーァゾビス— (2—メチルブタン二トリル)、 1 , 1 ' —ァゾビス— (シ クロへキサン力ルポ二トリル)、 2 , 2 ' —ァゾビス一 (2 , 4—ジメチル— 4 ーメトキシバレロ二トリル)、 2 , 2, ーァゾビス— (2, 4—ジメチルバレロ 二トリル)、 2 , 2, ーァゾビス一 ( 2—アミジノプロパン) ヒドロクロリド等 のァゾ (ァゾビス二トリル) タイプの開始剤、 過酸化べンゾィル、 クメンヒド 口ペルォキシド、 過酸化水素、 過酸化ァセチル、 過酸化ラウロイル、 過硫酸塩 (例えば過硫酸アンモニゥム)、過酸エステル(例えば t 一ブチルペルォクテ一 ト、 a—クミルベルォキシピパレート及び t —ブチルペルォクテ一ト) 等の過 酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。
さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。 レドックス系開始剤も、 本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用 いることができ、 その例としては、 ァスコルビン酸 Z硫酸鉄 (I I) Zペルォキ シニ硫酸ナトリウム、 第三プチルヒドロペルォキシド 二亜硫酸ナトリウム、 第三プチルヒドロペルォキシド ZN aヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げら れる。 なお、 個々の成分、 例えば還元成分は、 混合物、 例えばヒドロキシメタ ンスルフィン酸のナトリゥム塩と二亜硫酸ナトリゥムとの混合物であってもよ い。
また、 結合用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、 この合成高分子 化合物は、 開環重合等で合成される高分子を使用してもよい。 その具体例とし ては、 ポリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、 上述した合成高分子化合物は、 加水分解等により合成される高分子
を使用しても良い。 その具体例としては、 ポリ酢酸ビニルを加水分解等するこ とにより合成されるポリビエルアルコールなどが挙げられる。
また、 上述した合成高分子化合物は、 化学修飾により、 前述の生体物質と結 合する官能基を修飾することにより合成してもよい。
さらに、 この他、 結合用化合物として、 市販の合成高分子化合物を用いるこ とができる。 その具体例を挙げると、 日本油脂社製の SUNBR I Tシリーズ DE - 030AS、 DE— 030 CS、 DE - 030 GS、 PTE - 100 GS、 PTE— 200GS、 HGEO— 100 GS、 HGEO— 200GSな どが挙げられる。
一方、 結合用化合物として天然高分子化合物を用いる場合、 その具体例とし ては、 デキストラン、 力ルポキシメチル—デキストラン、 でんぷん、 セル口一 ス等の多糖類、アルブミン、 コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク質、 DNA、
RNAなどの核酸等が挙げられる。 これらの天然化合物は、 そのまま使用して も良いし、 また、 化学修飾してから使用しても良い。
なお、 合成高分子化合物及び天然高分子化合物などの高分子化合物を結合用 化合物として用いる場合、 その高分子化合物の形態は任意である。 例えば、 水 溶液中で溶解していても良いし、 ミセルゃエマルシヨンのような会合体や高分 子ラテックスのような微粒子状のものでもかまわない。
また、 結合用化合物として用いられる無機化合物としては、 例えば、 金コロ イド等の金属粒子、 シリカ等の無機微粒子などが挙げられる。 さらに、 これら の無機化合物を化学修飾することによって、 生体物質と結合する官能基を有す る結合用化合物とじても良い。
さらに、 結合用化合物として用いられる有機無機ハイブリッドとしては、 例 えば、 コロイダルシリカに高分子を被覆したもの、 金属コロイドを高分子で被 覆したもの (例えば、 金、 銀、 白金等の粒子を保護コロイドで被覆したもの)、 クレイ等の多孔質基体に高分子を吸着させたものなどが挙げられる。 なお、 こ れらの有機無機ハイブリツドは公知の方法で合成することが可能である (ポリ マ一系ナノコンポジット, 工業調査会, 中條 澄 著などを参照)。
さらに、 これらの有機無機ハイプリッドに結合官能基を修飾することによつ
て、 結合用化合物として用いることもできる。
また、 結合用化合物の分子量や構造等は特に制限は無く任意である。 したが つて、 結合用化合物として例えば低分子量の化合物を用いても良いが、 その場 合、 固定化しようとする一つの生体物質内で架橋してしまい、 効率的に主鎖を 形成できなくなって、 本発明の生体物質構造体を形成できなくなる虞がある。 また、 生体物質内で架橋すると、 該生体物質の活性が保持されない虞もある。 これを防止する観点からは、 結合用化合物の分子量としては、 通常 1 0 0 0以 上、 好ましくは 1 0 0 0 0以上、 また、 通常 1 0 0万以下、 好ましくは 5 0万 以下が望ましい。 なお、 結合用化合物として合成又は天然の高分子化合物を用 いる場合、 重量平均分子量が上記範囲に収まることが好ましい。 この範囲を下 回ると効果的に粒子状塊が集合した生体物質構造が形成できなくなる虞がある ためである。
なお、 これら分子量の測定には種種の方法が使えるが、 例えば、 G P C (ゲ ルパ一ミネ一シヨンクロマトグラフィー)、 S E C (サイズ排除クロマトグラフ ィ一)、静的光散乱測定、 粘度測定など一般的な測定により、 調べることができ る。
また、 結合用化合物の大きさに制限は無く、 本発明の効果を著しく損なわな い限り任意である。 ただし、 効果的に生体物質と'結合用化合物とを結合させる ためには、 溶媒や分散媒などの液体 (ここでは、 媒質) 中に混和した状態にお いて、 結合用化合物の径は、 通常 l n m以上、 好ましくは 2 n m以上、 より好 ましくは、 3 n m以上であることが望ましい。 なお、 この条件を満たすには、 本発明の生体物質構造体の製造前に結合用化合物を用意する場合に上記の粒径 範囲に収まる結合用化合物を用意し、 それを使用して本発明の生体物質構造体 を製造するようにすることが望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 5 m以下である。
これらの結合用化合物の大きさの測定には、 種種の方法が使用できるが、 液 体に分散している金属コロイド、 無機粒子、 ポリマー微粒子などを結合用化合 物として用いた場合は、 静的光散乱測定法、 動的光散乱測定法、 光回折法など の一般的な手法により、 調べることができる。 また、 これら金コロイド、 無機
粒子、 ポリマー微粒子などが分散した分散液から反応媒等の液体を取り除いた ものを S EM (走査型電子顕微鏡) や TEM (透過型電子顕微鏡) などの電子 顕微鏡で観察した場合も、 液体中での結合用化合物の径として取り扱っても良 レ、。
一方、 溶液に溶解している高分子またはミセルなどの会合体を結合用化合物 に用いた場合は、 静的光散乱測定法、 動的光散乱測定法、 光回折法などの一般 的な手法により、 調べることができる。 一般に、 溶液に溶解している高分子や ミセルなどは、 測定手段及び解析方法で粒子径に相違が見られるが、 いずれか の手段や方法で得られた測定値により、 その粒子径を評価することができる。 なお、 光学的手法により液中の結合用化合物の径を測定する場合には、 結合 用化合物の平均粒子径が上記の範囲内に収まるようにすることが、 効果的に生 体物質と結合用化合物とを結合させるためには望ましい。
さらに、 結合用化合物が有する結合官能基の量は、 特に限定されず、 また結 合用化合物の種類によって一概には規定できないが、 例えば結合用化合物とし て高分子を用いた場合、結合用化合物に対して、モル%で、通常 0. 1%以上、 好ましくは 0. 5 %以上、より好ましくは 1 %以上、更に好ましくは 5 %以上、 また、 .通常 90 %以下、 好ましくは 80 %以下、 より好ましくは 70 %以下で ある。 この範囲を下回ると結合用化合物が生体物質と効率よく結合できない虞 があり、 上回ると溶媒や分散媒などに混和できなくなる虞があるためである。
[ 1 - 3. 生体物質構造体の構造]
本発明の生体物質構造体は、 生体物質、 及び、 該生体物質と結合可能な化合 物が結合してなる粒子状塊が互いに結合してなる構造体である。 さらに、 本発 明の生体物質構造体においては、 上記の粒子状塊の粒径は 10 μ m以下となつ ている。
具体的には、 本発明の生体物質構造体は、 図 2 (a), 図 2 (b) に模式的に 示すように、 生体物質と結合用化合物とが結合した、 10 zm以下の粒径を有 する粒子状塊が単一ユニットとして、 図 1 (a), 図 1 (b) に模式的に示すよ うに、 互いに鎖状及び Z又は網目状に結合した構造体となっている。 また、 こ の粒子状塊は、 通常、 図 2 (a) に示すような生体物質と結合用化合物とが複
数結合して図 2 ( b ) のように粒子状になったものであり、 必ずしも完全な円 形となっているとは限らないが、 図 1 ( a ), 図 1 ( b ) においては粒子状塊を 模式的に円で示してある。
本発明の生体物質構造体は、 このように生体物質及び結合用化合物の両方に よつて形成された粒子状塊が集合及び/または結合することによつて形成する 構造を有している。 このため、 生体物質の比率を高めることが可能であり、 し たがって、 本発明の生体物質構造体では、 従来よりも多量の生体物質を保持す ることができる。 なお、 従来の生体物質を固相担体等に固定する技術では、 ァ フィニティ一精製などに用いられる場合、 樹脂微粒子などの固相担体の表面に 結合させるために、 生体物質の固定化量は所定の上限値で制限され (通常、 タ ンパク質の単層吸着は、 せいぜい 0 . 3〜1 . 0 g Z c m 2 )、 多量の生体物 質を保持することができなかった。
また、 多量の生体物質を保持できるようになるため、 本発明の生体物質構造 体によれば、 結合用化合物 (及び、 後述する固相担体等) が生じる非特異的な 相互作用を抑制できるという利点を得ることができる。 即ち、 生体物質として 上記の非特異的相互作用を生じないものを用いれば、 非特異的相互作用を生じ うる結合用化合物等を多量の生体物質で覆うことができる。 この際、 生体物質 構造体では生体物質が多量に存在するため、 非特異的相互作用を効果的に抑制 することが可能となる。したがって、非特異的相互作用の影響を排除しながら、 生体物質と作用物質との相互作用を用いた分析ゃァフィニティ一分離を実施す ることができるようになる。
さらに、 生体物質構造体を構成する粒子状塊は、 集合して、 粒子状塊同士の 引力によって接触しあったり、 その炭素鎖が絡まりあったりすることなどによ り、 互いに結合して生体物質構造体を構成している。 例えば、 ただ分子間引力 により粒子状塊同士が結合して生体物質構造体が形成されたり、 粒子状塊が結 合用化合物の官能基と生体物質との結合により結合して生体物質構造体を形成 したり、 或いは、 上記の両方の要因が組み合わさって粒子状塊同士が結合して 生体物質構造体が形成されたりしている。 ここで、結合とは、通常、共有結合、 イオン結合、 キレート結合、 配位結合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルヮー
ルス結合、 静電力による結合のうち一つ以上の結合から成り立つものを指し、 中でも好ましくは共有結合である。 この場合、 粒子状塊の一部のみが結合しあ つている状態でもよいが、 できるだけ多くの粒子状塊が結合しあっていること が好ましく、 全ての粒子状塊が結合しあって生体物質構造体が構成されること がより好ましい。
なお、 通常は、 粒子状塊は、 絡まりあいや結合など、 複数の要因により集合 して生体物質構造体を構成しているものと推察される。
また、生体物質構造体を構成する粒子状塊は、その粒径が通常 1 0 μ πι以下、 好ましくは 5 i m以下、 より好ましくは 1 m以下である。 粒子状塊の粒径が 大きいと、 分離精製に用いた時、 十分な比表面積が得られず、 ァフィ二ティー 分離などに用いた場合に高効率な分離精製結果が得られない虞がある。 なお、 下限に特に制限は無いが、 通常 1 . 5 n m以上である。
さらに、 粒子状塊の粒径を個別に測定する場合には、 生体物質構造体中の粒 子状塊のうち、 少なくとも一部の粒子状塊が上記の範囲の粒径を有していれば よいが、 できるだけ多くの粒子状塊が上記範囲の粒径を有していることが好ま しく、 全ての粒子状塊が上記範囲の粒径を有していることがより好ましい。 ここで粒子状塊の粒径は、 光学顕微鏡、 S E Mや T E M等の電子顕微鏡、 A F M (原子間力顕微鏡)などの顕微鏡で観察することにより測定できる。なお、 顕微鏡で観察した場合、 粒子状塊の形状は、 粒子状のほか、 生体物質構造体か ら房状に張り出した形状として観察される場合もある力 この房状の塊部分 (房 状塊) は生体物質構造体から粒子状塊が張り出して形成されたものと推察され るため、 この房状の塊部分の径(通常は、短径)が上記の範囲内であればよい。 また、 粒子状塊の粒径は、 光散乱、 X線、 中性子散乱等の分光学的手法によ り確認することもできる。 この場合、 測定される平均粒径が上記の範囲内にあ ればよい。 粒子状塊の平均粒径が上記範囲内にある場合も、 粒径が上記範囲内 にある場合と同様の利点を得ることができる。
また、本発明の生体物質構造体では、通常は粒子状塊同士は完全に密着せず、 各粒子状塊同士の間には空間 (空隙) が形成される。 この空間には、 生体物質 構造体を用いてァフィ二ティー分離などを行なう際に、 生体物質と相互作用さ
せる対象物質が侵入することが可能であり、 通常はこの空間において生体物質 と対象物質との相互作用が生じることになる。 したがって、 3次元的な構造を 有する本発明の生体物質構造体であっても、 その中 (内部) に含まれる生体物 質は対象物質等と相互作用することが可能である。 即ち、 本発明の生体物質構 造体は、 3次元的に多くの生体物質を備えることができるにもかかわらず、 そ の生体物質は活性を失わず相互作用をすることが可能であり、 このため、 本発 明の生体物質構造体は、 生体物質の反応性を保ったまま、 従来よりも多量の生 体物質を含有させることが可能となっている。
本発明の生体物質構造体が、 粒子状塊同士の間に空間を有しているかを調べ る方法に制限はないが、例えば、光学顕微鏡、 S E Mや T E M等の電子顕微鏡、 A F Mなどの顕微鏡によって確認することができる。また、このほカ 光散乱、 X線、 中性子散乱等の分光学的手法によっても確認することができる。
さらに、 本発明の生体物質構造体を乾燥状態における体積と、 液体を含ませ た時の体積とを比較して、 その体積が増加した場合には、 上記の空間に液体が 侵入したことにより体積が増加したものとして、 本発明の生体物質構造体が空 間を有していると認識してもよい。 なお、 これらの体積変化はいかなる方法で 確認しても良いが、 例えば生体物質構造体が膜状に形成されている場合、 乾燥 状態の膜厚とそれを液体に浸した時の膜厚とをそれぞれ A F M等で測定し、 両 者を比較して確認することができる。
また、 本発明の生体物質構造体の大きさに制限は無く任意であるが、 何らか の固相担体に結合していない場合には、 生体物質構造体が乾燥した状態におい て、 その径が、 通常 3 0 n m以上、 好ましくは 4 0 n m以上、 より好ましくは 5 0 n m以上であることが望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常は 1 0 c m以下である。 ここで、 生体物質構造体の径は、 S E M、 T E M等の電 子顕微鏡、 A F Mなどの顕微鏡により測定することができる。 生体物質構造体 の大きさが小さすぎると、 ァフイエティー分離等に用いた場合に精製分離にお いて生体物質構造体を遠心分離操作等で回収しにくくなるなどの虞がある。 さらに、 本発明の生体物質構造体は、 固相担体に固定して、 ァフィ二ティー 精製や医薬機能解析ツール、 又は、 センサーチップとして用いることもでき、
さらに、 DD S (ドラッグデリバリーシステム) のための薬剤の表面処理、 再 生医療担体の表面処理、 人工臓器の表面処理、 カテーテルなどの表面処理等に 適用可能である。 これら表面処理などに本発明の生体物質構造体を使用する場 合、 所望の固相担体に、 任意の手法によって本発明の生体物質構造体を固定し た生体物質担持体を形成し、 それを用いることになる。
ところで、 本発明の生体物質構造体は、 微視的に見た場合、 これらの生体物 質と結合用化合物とからなる主鎖を有するマトリックス構造を有するもの (マ トリックス) となっている。 即ち、 本発明の生体物質構造体は、 図 3 (a) 〜 図 3 (c ) に模式的に示すように、 生体物質と結合用化合物とを含み、 その骨 格が、 生体物質と結合用化合物とが結合し、 鎖状及び/又は網目状に結合した 構造を有するマトリックスである。 そして、 このマトリックスは、 通常は、 図 2 (a) に示すように粒子状塊を形成している。
なお、 図 3 (a) 〜図 3 (c) は、 本発明の生体物質構造体のマトリックス 構造を説明するため、 固相担体に固定化した本発明の生体物質構造体の一例の 表面近傍を拡大して示す模式図である。 また、 図 3 (a) 〜図 3 (c ) におい て、円形部分が生体物質を表わし、線状部分が結合用化合物を表わす。ただし、 図 3 (a) 〜図 3 (c ) は生体物質と結合用化合物とからなる主鎖の構成を説 明するべく、 粒子状塊を構成しているか否かに係わらず主鎖の構造を 2次元的 に描画したものである。 したがって、 生体物質構造体が粒子状塊を有する場合 には、 図 3 (a) 〜図 3 (c) は生体物質構造体の粒子状塊の主鎖を 2次元的 に広げたものと認識すべきである。
また、 本発明の生体物質構造体は、 生体物質と結合用化合物とが結合したコ ンジュゲートが多数結合して構成されたものであり、 通常は、 生体物質と結合 用化合物とが鎖状及び 又は網目状に結合したゲル状構造体である (図 3 (a) 〜図 3 (c), 図 4参照)。 このコンジュゲートは、 生体物質と結合用化合物と が結合したもので、 生体物質と結合用化合物とを溶媒や分散媒等の媒質中で混 合し、 互いの分子を接触させるだけで作製することができる。
さらに、 本発明の生体物質構造体は、 上記の生体物質及び結合用化合物から なる主鎖を有する構造体である。 なお、 ここで本発明の生体物質構造体の主鎖
はマトリックス構造の骨格を構成するもので、 具体的には生体物質と結^:用化 合物とが互いに結合してなるものである。 詳しくは、 生体物質に対して結合用 化合物が結合官能基によつて結合し、 その構造の繰り返しによつて鎖状及び Z 又は網目状の構造を形成されたものである。
よって、 本発明の生体物質構造体は、 通常、 下記式 (A) で表わされる部分 構造を 2以上有する。
R J - R 2 式 (A)
{上記式 (A) において、 R 1は生体物質を表わし、 R 2は結合用化合物を表 わす。 ただし、 生体物質構造体が何らかの固相担体に結合している場合、 R 2 は固相担体に直接結合していない結合用化合物を表わす。 また、 各 R 1 , R 2は それぞれ同じであっても異なっていても良い。)
即ち、 本発明の生体物質構造体は、 上記式 (A) のように生体物質と結合用 化合物とが結合した部分構造が、 直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体で ある。 具体的には、 上記式 (A) の R 1はそれぞれ独立に他の 1又は 2以上の R 2に結合し、 R 2はそれぞれ独立に他の 1又は 2以上の R 1に結合している。 ただし、 本発明の生体物質構造体は、 例えば生体物質 R 1同士や結合用化合物 R 2同士が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。 ここで、 R 1同士や R 2同士の結合とは、 分子間引力、 疎液相互作用、 電気的相互作用等の物理的相 互作用による結合を示す。
したがって、 本発明の生体物質構造体は、 結合用化合物同士の間には生体物 質が存在し、 また、 生体物質同士の間には結合用化合物が存在する橋架け構造 を少なくとも一部に有しており、 生体物質及ぴ化合物の両方によって、 マトリ ックス構造の主鎖が構成されている。 よって、 本発明の生体物質構造体は、 そ の作製時に系内に生体物質及び結合用化合物の両方が存辛する際に形成される。 このように、 本発明の生体物質構造体は、 生体物質及び化合物の両方によつ て形成されたマトリックス骨格を有しているため、 生体物質の比率を高めるこ とが可能である。
生体物質構造体が生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を有していること は、 例えば、 以下の方法により確認することができる。
本発明の生体物質構造体は、 上述したような生体物質と結合用化合物とから なる主鎖を有しているため、 その構成要素である生体物質の結合を分解するこ とにより構造が崩壌する。 これを利用し、 生体物質構造体の生体物質のみを分 解するようにすれば、 生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を確認すること ができる。例えば、生体物質構造体を何らかの固相担体に固定化した場合には、 結合用化合物の少なくとも一部は生体物質を介して固相担体に固定化されてい るため、 結合用化合物を分解しないようにしながら生体物質を分解した場合、 本発明の生体物質構造体では、 結合用化合物のうち、 固相担体に対して生体物 質を介して固定化されていた部分は固相担体から脱離する。
したがって、 具体的には、 結合用化合物が分解されず生体物質のみが分解を 受ける酵素やその他の薬品により生体物質を分解し、 この処理により固相担体 から脱離した物質を調べること、 又は、 固相担体表面に残留している物質を調 ベることにより、 生体物質構成要素以外の生体物質構造体を構成する化合物を 特定できる。 生体物質構造体が生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を有し ていれば、 脱離した物質のなかに結合用化合物が検出される。 また、 固相担体 表面には、 結合用化合物は検出されないか、 検出されたとしてもその量は減少 している。
一方、生体物質構造体が従来の方法による高分子膜を利用したものであれば、 主鎖が高分子鎖であるため、生体物質が分解されても高分子膜(即ち高分子鎖) は全て固相担体に残り、 脱離した物質のなかには生体物質構成要素は検出され るが、 結合用化合物に相当する高分子鎖は検出されないことになる。 この違い により、生体物質と結合用化合物とからなる主鎖の有無を確認することができ、 本発明の生体物質構造体であるか否かを特定することができる。
上記の方法で用いる、 生体物質を分解するための酵素や薬品は、 用いた生体 物質や結合用化合物の種類に応じて任意のものを適当に用いればよい。 その具 体例を挙げると、 生体物質が核酸である場合、 例えば、 リポヌクレアーゼ、 デ ォキシリボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素などが挙げられる。
また、 生体物質がタンパク質である場合、 例えば、 微生物プロテアーゼ、 ト リプシン、 キモトリブシン、 パパイン、 レンネット、 V 8プロテアーゼ等のタ
ンパク質分解酵素、臭化シアン、 2—二トロー 5—チオシアン安息香酸、塩酸、 硫酸、 水酸化ナトリゥム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げら れる。
さらに、 生体物質が脂質である場合、 例えば、 リパーゼ、 ホスホリパーゼ A 2等の脂質分解酵素などが挙げられる。
また、 生体物質が糖である場合、 α—アミラーゼ、 ]3—アミラーゼ、 ダルコ アミラーゼ、 プルラナーゼ、 セルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。 なお、生体物質を分解するための酵素や薬品は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、 例示物の中でも、 生体物質だけでなく結合用化合物も分解する虞が あるものは、 上記の主鎖の確認が正確に行なえなくなる虞があるため、 使用は 避けるべきである。
また、 生体物質の分解、 及び、 分解後に固相担体上に残留している物質を確 認する場合、 その具体的な確認方法は任意であるが、 例えば、 表面プラズモン 共鳴 (S P R )、 水晶振動子マイクロバランス (Q C'M)、 電子顕微鏡、 エリプ ソメ トリーなどによる測定によって確認することができる。
さらに、 生体物質分解後に固相担体から脱離した物質の分析する場合、 その 具体的な分析方法は任意であるが、 例えば、 液体クロマトグラフィー、 ガスク 口マトグラフィー、 質量分析 (M S )、 赤外分光法、 核磁気共鳴法 (NMR )、 高速液体ク口マトグラフィー(H P L C )、 ゲル電気泳動、 キヤビラリ一電気泳 動、吸光度測定、蛍光測定、元素分析、アミノ酸定量などが挙げられる。 また、 分析に際しては、 各測定手法を単独で用いても良く、 2種以上を任意に組み合 わせて行なってもよい。
[ I 一 4 . 生体物質構造体の組成]
[ I - 4 - 1 . 生体物質の含有比率]
本発明の生体物質構造体において、 含有される生体物質の比率に制限は無い 力 通常は、 より多量の生体物質が含有されていることが望ましい。 具体的に は、 「 (生体物質の重量) Z (生体物質構造体の重量)」 で表される生体物質構 造体の重量に対する生体物質の重量の比率が、通常 0 . 1以上、好ましくは 0 .
3以上、 より好ましくは 0. 5以上、 更に好ましくは◦. 7以上、 特に好まし くは 0. 9以上が望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 0. 9 99 以下である。 生体物質の比率がこの範囲を下回る場合、 構成される生体物質構 造体中の結合用化合物を十分に生体物質で覆うことができなくなり、 結合用化 合物への非特異吸着を起こす虞がある。 また、 この生体物質構造体を用いて分 離精製を行なう場合に、 その分離精製の効率が低下する虞もある。
[1 -4-2. 生体物質の含有比率の測定法]
上記の生体物質の比率を測定する方法は特に限定されないが、 例えば、 本発 明の生体物質構造体に含まれる生体物質を酵素や薬品等を用いて分解し、 生体 物質及び結合用化合物由来の物質をそれぞれ各種の方法で定量すればよい。 以下、 この方法により生体物質の含有比率を測定する方法を説明する。
(1) 生体物質の分解方法
この方法により生体物質の比率を測定する場合には、 生体物質を分解するた めの酵素や薬品等は、 用いた生体物質や結合用化合物の種類に応じて任意のも のを適当に用いればよい。 その具体例を挙げると、 生体物質と結合用化合物と からなる主鎖の有無を確認する方法において用いる生体物質を分解するための 酵素や薬品として例示したものと同様のものが挙げられる。
なお、 生体物質を分解するための上記の酵素や薬品等は、 1種を単独で用い ても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(2) 生体物質および結合用化合物由来の物質の定量方法
生体物質構造体の分解後、 生体物質及び結合用化合物由来の物質を定量する 方法に制限は無く任意であるが、 具体的な手法としては、 例えば、 液体クロマ トグラフィー、 ガスクロマトグラフィー、 質量分析 (MS)、 赤外分光法、核磁 気共鳴法 — NMR、 13C— NMR、 29 S i— NMR)、 高速液体クロマト グラフィー (HP LC)、 ゲル電気泳動、 キヤピラリー電気泳動、 吸光度測定、 蛍光測定、元素分析、アミノ酸定量などが挙げられる。また、分析に際しては、 各測定手法を単独で用いても良く、 2種以上を任意に組み合わせて行なつても よい。
[1 -4-3. 生体物質の反応数比率]
本発明の生体物質構造体においては、 生体物質構造体中の生体物質の大部分 は活性を失っていない。 具体的には、 生体物質構造体に、 生体物質に対して特 異的に相互作用することができる作用物質を含む溶液を接触させたときに、 生 体物質構造体中の生体物質の数に対する、 生体物質と相互作用した上記作用物 質の数の比 (以下適宜、 「反応数比率」 という) は、 通常 0. 5以上、 好ましく は 0. 6以上、 より好ましくは 0. 7以上である。 また、 上限に特に制限は無 いが、 通常 1. 0以下である。 上述したように、 本発明の生体物質構造体は空 隙を有しながら多くの生体物質を含有することができるため、 反応数比率を前 記範囲のように高くすることができる。 これにより、 生体物質を有効に用いる ことができる。 なお、 この反応数比率は、 生体物質及び作用物質がそれぞれ生 体分子及び作用分子等の分子である場合、 それぞれの分子数の比として求める ことができる。 また、 反応数比率は、 例えば S PR (表面プラズモン共鳴) 法 あるいは Q CM (水晶発振子マイクロバランス) 法などにより測定することが できる。
なお、 この利点は、 生体物質構造体を固相担体に固定化し、 生体物質担持体 を形成した場合であっても同様に得られる。
― [1 -5. 生体物質構造体の製造方法]
本発明の生体物質構造体は、 通常、 生体物質と結合用化合物とを混合するェ 程 (以下適宜、 「混合工程」 という) を経て製造される。 この混合工程において は、 生体物質及び結合用化合物は、 溶媒又は分散媒などの媒質中において混合 され、 同一系内に共存するようになることによって生体物質と結合用化合物と • が結合し、 本発明の生体物質構造体が形成されるのである。
また、 生体物質構造体を効率的に得るため、 混合工程の後、 媒質を除去する 濃縮工程や乾燥工程などを行なうようにしても良い。
さらに、 生体物質構造体の製造工程のいずれかの工程において、 適宜、 添加 剤を系内に共存させるようにしてもよい。
[1 - 5- 1. 混合工程]
混合工程では、 生体物質と結合用化合物との混合を行なう。
[1 -5- 1 - 1. 生体物質構造体の製造に用いる生体物質]
生体物質は、 上述したとおりである。 なお、 生体物質を用意する際、 通常は何 らかの溶媒に生体物質を溶解又は分散させた溶液や分散液として生体物質を用 意する。 この場合に生体物質を希釈させる溶媒や分散媒は、生体物質の活性や構 造の安定性等を考慮して調製することが好ましい。
[ 1 - 5 - 1 - 2 . 生体物質構造体の製造に用いる結合用化合物]
結合用化合物は、 上述したとおりである。
[ 1 - 5 - 1 - 3 . 生体物質構造体の製造に用いる媒質]
生体物質と結合用化合物とを混合する際には、 溶媒や分散媒等の媒質 (反応 媒) を共存させ、 その媒質の存在下において生体物質と結合用化合物とを結合 させることが好ましい。 なお、 上記の通り、 生体物質と結合用化合物とは必ず しも化学反応を生じて結合するわけではないが、 本明細書においては、 生体物 質と結合用化合物とが結合する際の場を形成する物質を 「媒質」 と広義に呼ぶ ものとする。
媒質としては、 本発明の生体物質構造体の製造が可能な限り任意のものを用 いることができるが、 通常は、 生体物質及び結合用化合物並びに適宜用いられ る添加剤が混和しうるものを用いることが望ましい。 この際、 生体物質、 結合 用化合物及び添加剤の混和状態は任意であり、 溶解状態であっても分散状態で あってもよいが、 生体物質と結合用化合物とを安定して結合させるためには、 生体物質及び結合用化合物が媒質中において溶解状態で存在していることが好 ましい。
媒質としては、 通常は液体を用いる。 この際、 媒質は、 生体物質と結合用化 合物とが結合する場を形成することになり、 生体物質や結合用化合物等の活性 や構造の安定性などに影響を与えることがあるため、 その影響を考慮して選択 することが好ましい。 通常は、 媒質として水を用いる。
また、 媒質としては水以外の液体を用いても良く、 例えば、 有機溶媒を用い ることができる。 さらに、 有機溶媒の中でも、 両親媒性溶媒、 即ち、 水に混和 しうる有機溶媒が好ましい。 水以外の媒質の具体例としては、 メタノール、 ェ タノール、 1—ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、 T H F (テトラヒ ドロフラン)、 D M F (N , N—ジメチルホルムアミ ド)、 NM P (N—メチル
ピロリ ドン)、 DMSO (ジメチルスルホォキシド)、 ジォキサン、 ァセトニト リル、 ピリジン、 アセトン、 グリセリンなどが挙げられる。
また、 これらの媒質として液体を用いる際には、 この媒質に塩を加えても良 い。 塩の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、 具体例と しては、 N a C 1、 KC 1、 リン酸ナトリゥム、 酢酸ナトリゥム、 塩化カルシ ゥム、 炭酸水素ナトリウム、 炭酸アンモ-ゥムなどが挙げられる。 また、 用い る塩の量に制限は無く、 用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。 さらに、 媒質として水を用いている場合、 水としては、 純水のほか、 生体物 質や結合用化合物以外の溶質を溶解した水溶液を用いることもできる。 その例 としては、 各種緩衝液を挙げることができ、 その具体例としては、 炭酸バッフ ァー、 リン酸バッファー、 酢酸バッファー、 HEPESバッファー、 TR I S バッファ一などが挙げられる。
なお、 媒質は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及 ぴ比率で併用しても良い。
[I - 5 - 1 -4. 生体物質構造体の製造に用いる添加剤]
生体物質構造体の製造工程のいずれかの工程においては、 生体物質、 結合用 化合物及び媒質、 並びに、 これらを混合した混合物などに対して、 本発明の効 果を著しく妨げない限り、 任意の添加剤を共存させてもよい。 添加剤の例とし ては、 上記の塩の他、 酸、 塩基、 バッファー、 グリセリン等の保湿剤、 生体物 質の安定剤としての亜鉛等の金属ィオン、 消泡剤、 変性剤などを挙げることが できる。
また、 添加剤は 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組み合わせ及 び比率で併用してもよい。
[1 -5-1 -5. 生体物質構造体の製造時の混合の操作]
本発明の生体物質構造体を製造する際には、 媒質の存在下、 上述した生体物 質と結合用化合物とを混合し、 媒質中に少なくとも生体物質と結合用化合物と を含有する混合物を調製する。 これにより得られる混合物は、 媒質の存在下、 生体物質、 及び、 上記生体物質と結合可能な結合用化合物とを共存させたもの であり、 この混合物中において、 生体物質と結合用化合物とが結合して生体物
質構造体が調製される。 また、 混合物中において、 生体物質及び結合用化合物 は溶媒に混和していることが好ましい。
混合に際し、 生体物質、 結合用化合物、 媒質、 添加剤等は、 本発明の生体物 質構造体の製造が可能である限りどのような状態で用意をしてもよい。ただし、 生体物質に関しては、 通常は、 何らかの溶媒や分散媒に生体物質を溶解又は分 散させた溶液や分散液として用意する。 この場合、 生体物質を希釈させる溶媒 や分散媒は、 生体物質の活性や構造の安定性等を考慮して調整することが好ま しく、 例えば、 混合に用いる上記の媒質と同様のものを溶媒や分散媒として用 いることができる。
用意した生体物質、 結合用化合物、 媒質、 添加剤等を混合する際の具体的な 操作も任意である。 例えば、 生体物質の溶液 (水溶液など) 又は分散液と結合 用化合物の溶液 (水溶液など) 又は分散液とを混合してもよく、 生体物質の溶 液又は分散液と固体状の結合用化合物とを混合してもよく、 固体状の生体物質 と結合用化合物の溶液又は分散液とを混合してもよく、 固体状の生体物質及び 結合用化合物と溶媒とを混合してもよい。 また、 後述する固相担体に本発明の 生体物質構造体を固定する目的で、 固相担体上でこの混合物を調製することが できる。
[ I - 5 - 1 - 6 . 生体物質構造体の製造にための混合時の組成]
混合する際の生体物質、 結合用化合物、 媒質、 添加剤等の混合比率は、 本発 明の生体物質構造体を得ることができる限り任意である。ただし、 「(生体物質 の重量) / K生体物質の重量) + (結合用化合物の重量) }」 で表される混合比 率の値は、 通常 0 . 1以上、 好ましくは 0 . 3以上、 より好ましくは 0 . 5以 上、更に好ましくは 0 . 7以上、特に好ましくは 0 . 9以上が望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 0 . 9 9 9以下である。 これを下回る混合比で は、 形成される生体物質構造体中の生体物質の組成が低くなり、 十分に結合用 化合物を生体物質で覆うことができなくなって、 非特異吸着を引き起こす虞が ある。
即ち、 生体物質の混合比率が高い場合、 図 3 ( a ) に示したような結合用化 合物が結合点となった主鎖を有する生体物質構造体が形成され、 逆に、 結合用
化合物の混合比率が高い場合には、 図 4に示すように、 生体物質が結合点とな つた主鎖を有する生体物質構造体が形成される。 したがって、 この際、 生体物 質の比率を上記範囲のように大きくすることにより、 結合用化合物への非特異 吸着を抑制することが可能となる。 なお、 図 4は、 本発明の生体物質構造体の 構造を説明するため、 固相担体に固定化した本発明の生体物質構造体の一例の 表面近傍を拡大して示す模式図である。 また、 図 4において、 円形部分が生体 物質を表わし、 線状部分が結合用化合物を表わす。 ただし、 図 4は生体物質と 結合用化合物とからなる主鎖の構成を説明するべく、 粒子状塊を構成している か否かに係わらず主鎖の構造を 2次元的に描画したものである。 したがって、 生体物質構造体が粒子状塊を有する場合には、 図 4は生体物質構造体の粒子状 塊の主鎖を 2次元的に広げたものと認識すべきである。
また、 媒質中における生体物質及び結合用化合物の割合 (濃度) も本発明の 生体物質構造体を得ることができる限り任意であるが、 生体物質及び結合用化 合物の合計濃度が、 通常 0. l g/L以上、 好ましくは l g/L以上、 より好 ましくは 10 g/L以上とすることが望ましい。 この範囲を下回ると、 粒子状 塊及び生体物質構造体が生成しにくくなる虞があるためである。
[1 -5- 1 -7. 生体物質構造体の形成メカニズム]
生体物質と結合用化合物とを混合することによつて粒子状塊が形成され、 こ の粒子状塊が集合することにより、 本発明の生体物質構造体が構成される。 本発明の生体物質構造体の形成過程は明らかではないが、 以下のように推測 できる。 即ち、 生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物を調製すると、 混合物中において生体物質と結合用化合物とが結合し (図 2 (a) 参照)、 図 2 (b) に示すような粒子状塊が生成される。 この粒子状塊は、 さらに粒子状塊 同士が集合することによって、 図 1 (a), (b) に示すように、 粒子状塊が鎖 状及び Z又は網目状に集合した構造を有する生体物質構造体を形成するものと 推測される。
また、 この際には、 結合する粒子状塊は、 互いに有する生体物質及び結合用 化合物が結合することによって、 粒子状塊同士が互いに結合して生体物質構造
体を形成することもあるものと推測される。 この場合、 生体物質構造体はより 安定になるため、 広い環境や用途への適用が可能となり、 好ましい。
さらに、 生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物を調製すると、 通常 は、 混合物中において生体物質と結合用化合物とが結合し、 コンジュゲートが 生成される。 このコンジュゲートは、 生体物質と結合用化合物とが結合したも のである。 また、 粒子状塊とは、 該コンジュゲートの一形態である。
さらに、 コンジュゲートは、 コンジュゲート同士 (通常は、 粒子状塊同士) が集合し、 互いが有する生体物質及び結合用化合物が結合することにより、 鎖 状及び Z又は網目状に結合した構造を有する、 より大きなマトリックス構造の 生体物質構造体を構成することができる。この時、本発明の生体物質構造体は、 通常、 粒子状塊が結合したマトリックスとなる。
[ 1 - 5 - 2 . 濃縮工程及び乾燥工程]
混合工程の最中や混合工程の後において、 適宜、 上記の混合物から媒質を除 去する濃縮工程や乾燥工程を行なうようにしても良い。
上記の混合物中の溶媒の量が多い場合などにおいては、 混合物中にコンジュ ゲート (通常は粒子状塊) 又は生体物質構造体が生成しにくい場合や、 生成し ない場合がある。 これらの場合には、 混合物を濃縮することで、 コンジユゲー ト (通常は粒子状塊) を効率的に形成させ、 生体物質構造体を効率的に製造す ることができる。
さらに、 上記の混合物がコンジュゲート (通常は粒子状塊) 又は生体物質構 造体の断片を含んでいる場合においても、 濃縮により、 コンジュゲート (通常 は粒子状塊)又は生体物質構造体を更に形成させ'ることができる。したがって、 このようなコンジュゲート (通常は粒子状塊) や生体物質構造体の成長のため に、 濃縮を行なってもよい。
ただし、 均一な生体物質構造体を形成するためには、 混合物調製の初期の段 階においては、 媒質中で生体物質と結合用化合物とを均一に 合することが好 ましい。 したがって、 一旦比較的大量の媒質中に生体物質及び結合用化合物を 共存させ、 それを濃縮することにより粒子状塊を生成させて、 生体物質構造体 を製造することが好ましい。
また、生体物質構造体の形成後、媒質を乾燥除去してもよい。なお、通常は、 混合物を乾燥させる過程において混合物は濃縮されるので、 濃縮と乾燥とは一 連の操作として行なうことができる。
混合物を乾燥、 濃縮する方法は任意であるが、 例えば、 限外濾過、 減圧乾燥 などが挙げられる。 また、 このほか、 単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を 行なうようにしてもかまわない。
上記混合物を乾燥、 濃縮する際の温度条件は任意であるが、 生体物質の変性 等を避ける観点から、 通常 2 5 °C以下、 好ましくは 1 0 °C以下で行なうことが 望ましい。
また、 混合物を乾燥、 濃縮する際の圧力条件も任意であるが、 通常.は、 常圧 以下に減圧して行なうことが望ましい。
さらに、 混合物の濃縮は、 生体物質と結合用化合物とが接触する確率を上げ てコンジュゲート (通常は粒子状塊) を形成させやすくすること、 または、 そ れらコンジュゲート同士又は粒子状塊同士が接触する確率を上げて本発明の生 体物質構造体を構成させやすくすることを目的とする。 そのため、 濃縮の前、 最中又は後において、 遠心分離によって混合物を沈殿させたり、 貧溶媒を添加 したり.、 硫酸アンモン等の添加物を加えたりして、 コンジュゲート (通常は粒 子状塊) 及ぴ生体物質構造体を沈殿させるようにしてもよい。
[ I一 5 _ 3 . その他の工程]
また、 本発明の生体物質構造体の製造方法においては、 上述した以外の工程 を行なっても良い。
例えば、 生体物質構造体の製造後、 その生体物質構造体中の生体物質に対し て、 所望の官能基を修飾するようにしてもよい。
また、 例えば、 本発明の生体物質構造体を何らかの固相担体に固定させ、 生 体物質担持体(生体物質が固定された固相担体)を作製するようにしてもよい。
[ 1 - 6 . 生体物質構造体を用いたァフイエティー分離の説明]
本発明の生体物質構造体は、 ァフィ二ティー分離に用いて好適である。 した がって、 本発明の生体物質構造体は、 例えば、 ァフィ二ティー精製や医薬機能 解析ツールとして用いることができる。
具体的には、 例えば、 生体物質として生理活性物質を用いて、 ァフィ二ティ 一精製や医薬作用機構解析ツールを目的とした場合、 血清などの中に含まれる 微量なタンパク質などの生体物質が精製すべき対象物質となり、 生体物質と対 象物質との相互作用により、 それを夾雑物の中から得ることができる。 また、 例えば生体物質構造体に含まれる生体物質に対する医薬候補化合物の作用機構 の分析を目的とした場合、 生体物質としてレセプターなどの疾患に寄与するタ ンパク質を用いることにより、 複数の医薬候補化合物が分析すべき対象物質と なり、 それを生体物質構造体に接触させ、 特異的に結合した医薬候補化合物を 分析することにより、 その医薬候補化合物の選抜もしくは作用機構の解明を行 なうことができる。
上記のようにァフィ二ティ一分離を行なう場合には、 生体物質構造体に含ま れる生体物質と対象物質との上述した特異な相互作用を用いることにより、 分 離精製、 構造や機能の解析などを行なう。 このとき、 まず、 生体物質構造体に 対象物質を含む試料液 (検体) を接触させ、 試料液中の対象物質とその他の物 質とを分離させることになる。
[ 1 - 6 - 1 . 分離精製の対象となる対象物質]
分離精製の対象となる対象物質とは、 生体物質と特異的に相互作用する (ァ フイエティー結合する) 作用物質を示す。 このような対象物質の例としては、 上述の生体物質構造体が有している生体物質と同様のものが使用できる。 具体例としては、 医薬の候補となりうる物質 (医薬候補物質) を分離する場 合には、 生体物質として当該医薬候補物質に生じさせたい所望の相互作用を生 じうるものを用い、 医薬候補物質を含有する可能性がある検体から、 上記の医 薬候補物質となりうる化合物を対象物質として分離するようにすることができ る。
[ 1 - 6 - 2 . 対象物質を含む試料液]
対象物質は、通常は、組成物である検体中に、他の物質と共に共存している。 また、 検体は気体であることもあるが、 通常は、 液体として用意される。 この 際、 検体は、 何らかの溶媒中に対象物質が含有された溶液や分散液となってい ることが多い。 なお、 以下適宜、 溶液や分散液として存在する液体状の検体を
「試料液」 という。
試料液の溶媒や分散媒としては、 本発明の効果を著しく損なわない限り任意 であるが、 例えば、 生体物質構造体製造時の媒質として上述したものを用いる ことができる。
また、 試料液中の対象物質の濃度も任意であるが、 通常 1 μ g Z L以上、 好 ましくは S g Z L以上、 より好ましくは 1 Ο μ g / L以上が望ましい。 この 範囲を下回る濃度であると、 精製の効率が低下し、 本発明の利点を十分に発揮 できなくなる虞がある。
さらに、 対象物質以外の物質は、 試料液中の濃度として、 通常 5 0重量%以 下、好ましくは 4 0重量%以下、さらに好ましくは 3 0重量%以下が望ましい。 この範囲を上回ると試料液の粘度が高くなりすぎ、 生体物質構造体の内部まで 十分に対象物質が侵入して生体物質と接触することができなくなる虞がある。
[ 1 - 6 - 3 . 生体物質構造体と試料液との接触方法]
本発明の生体物質構造体に対象物質を含む試料液を接触させる方法は、 特に 限定されないが、 例えば、 生体物質構造体を充填したカラムの中に、 対象物質 を含む試料液を移動相とともに流すことにより接触させる方法が挙げられる。 この時、 生体物質構造体は乾燥した状態でもかまわないが、 試料液を接触させ る前に、 移動相となる液体で湿潤させることが好ましい。 .
また、 別の方法では、 例えば、 対象物質を含む試料液をマイクロチューブな どの容器に入れ、その中に生体物質構造体を加えることによつて接触させたり、 逆に、 生体物質構造体を入れた容器に対象物質を含む試料液を加えることによ つて接触させたりすることも可能である。
さらに、 本発明の生体物質構造体を固相担体に固定化することにより、 さら に分離精製の効率を向上させることも可能である。 例えば、 微小流路の表面に 本発明の生体物質構造体を固定化し、 その流路に対象物質を含む試料液を送り 込むことにより、 小型で高効率な分離精製装置を構成することができる。
また、 生体物質構造体に対象物質を含む試料液を接触させるときは、 適宜、 如何なる条件に設定するようにしてもよいが、 このましくは 2 5 °C以下、 さら に好ましくは 1 0 °C以下で行なうことが望ましい。
さらに、 接触させる前、 最中、 後に適宜、 試料液を乾燥、 濃縮することも可 能である。 その際の圧力条件も任意であるが、 通常常圧以下が望ましい。
[ I - 6 - 4 . 対象物質の分離]
本発明の生体物質構造体と試料液との接触後にどのようにして対象物質の分 離を行なうかは、 生体物質や対象物質の種類などに応じて任意である。
例えば、 生体物質と対象物質とが特異的に相互作用することにより、 対象物 質とその他の物質との間でリテンションタイム (保持時間) に違いが生じる場 合には、 このリテンションタイムの違いを利用して、 分画精製し、 対象物質を その他の物質から分離することができる(ァフイエティークロマトグラフィー)。 また、 相互作用の中でも特に、 対象物質が生体物質に特異的な相互作用によ つて吸着する場合には、 生体物質に対象物質を吸着させ、 その状態で試料液を 生体物質構造体から分離し、 その後対象物質を生体物質から遊離させて回収す ることにより、 対象物質をその他の物質から分離することもできる。 対象物質 を生体物質から遊離させる方法は特に限定されないが、例えば、添加塩、 p H、 昇温等のほか、 生体物質構造体に分離精製対象物よりも吸着力の強い既知の化 学物質や、 同等もしくは弱い吸着力だとしても高濃度の化学物質を添加するこ となどによって、 対象物質を生体物質構造体から遊離させ、 回収することがで きる。
これら、 分離させた対象物質は、 目的に応じて、 希釈もしくは濃縮すること が可能である。 例えば、 希釈する場合は目的に応じた溶媒を添カ卩すればよく、 濃縮する場合は減圧もしくは加温またはその両方を用いて溶媒を蒸発させたり、 限外ろ過フィルターを用いたり、 凍結乾燥法を用いて溶媒を完全に取り除いた りするようにすればよい。
また、本発明の生体物質構造体によって分離された対象物質を分析する場合、 その方法は限定されないが、 一般的には、 例えば、 液体クロマトグラフィー、 ガスクロマトグラフィー、 質量分析 (M S )、 赤外分光法、 核磁気共鳴法 一 NMR、 1 3 C _ NMR、 2 9 S i _ NM R)、高速液体クロマトグラフィー(H P L C ) , ゲル電気泳動、 キヤピラリー電気泳動、 吸光度測定、 蛍光測定などが 挙げられる。 また、 分析に際しては、 各測定手法を単独で用いても良く、 2種
以上を任意に組み合わせて行なってもよい。 後述する第 2実施形態で生体物質 に吸着した対象物質の量を測定したり、 第 4実施形態で測定部 2 1による分画 中の対象物質の量の測定を行なったりする場合には、 ここで例示した方法を用 いる測定機器を用いることが可能である。
[ 1 - 6 - 5 . 生体物質構造体を用いたァフィ二ティー分離の利点] 従来技術によるァフィ二ティー分離では、 その分離に用いるァフィユティー クロマトグラフィー用担体の表面に生体物質を固定するため、 生体物質の導入 量は制限されていた (通常、 タンパク質の単層吸着は、 0 . 3〜1 . 0 μ g , c m 2)。 したがって、従来は、ァフィ二ティークロマトグラフィー用担体では、 生体物質と対象物質とを相互作用させる場合に、 単位体積における相互作用可 能な対象物質の量が少なかった。
さらに、 従来はそのァフィ二ティークロマトグラフィ一用担体を完全に生体 物質で覆うことができなかったため、 ァフィ-ティークロマトグラフィー用担 体への非特異的な相互作用が生じやすく、分離精製効率が低かった。そのため、 精製純度を高めるためには、 複数回の精製を必要とし、 分離精製に時間と手間 がかかっていた。
これに対して、 本 明の生体物質構造体では、 生体物質構造体に導入された 生体物質の反応性を保つことができる。 また、 生体物質構造体中の生体物質の 比率を高めることにより、 生体物質構造体の単位体積における生体物質と特異 的に相互作用する対象物質の量を高めることが可能である。 さらに、 生体物質 構造体中に占める生体物質の比率を高めることにより、 結合用化合物の比率を 低く抑えることが可能であるため、 結合用化合物に基づく非特異吸着を抑制す ることができる。 これらにより、 従来よりも、 非特異吸着が抑制でき、 さらに 分離精製にかかる所要時間を短縮することが可能となる。
また、 本発明の生体物質構造体は、 任意の固相単体の表面に形成することが でき、 近年盛んに研究が進められているマイクロチップおよびマイクロ流路等 への応用が可能である。 したがって、 広範な用途へ適用しうることも、 本発明 の生体物質構造体を用いた場合の利点の一つである。
[ 1 - 6 - 6 . 実施形態]
以下、 生体物質構造体を用いて、 試料液から対象物質を分離する実施形態に ついて説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[ 1 - 6 - 6 - 1 . 第 1実施形態]
本実施形態は、 液中に、 対象物質 (分離対象物質) と、 その他の物質とが共 存する試料液から、 対象物質を分離精製するものである。
また、 図 5は、 本実施形態に用いるァフイエティークロマトグラフィー用容 器を模式的に示す断面図である。
この実施形態においては、 図 5に示すような、 容器本体 1内に生体物質構造 体 2を保持したァフィ-ティーク口マトグラフィ一用容器 (以下適宜、 「ァフィ ユティー用容器」 という) 3を用いる。 ここで、 容器本体 1の形状に制限は無 く、 試料液等の流体を収納しうるものであれば任意である。
また、 本実施形態のァフィユティー用容器 3では、 容器本体 1の内部表面に 生体物質構造体 2を固定してあり、 これにより、 容器本体 1の外部に生体物質 構造体 2が出ないよう、 容器本体 1内に保持されている。 ただし、 生体物質構 造体 2は容器本体 1に固定せず、 単に容器本体 1内に収納するのみであっても 構わない。
さら.に、 本実施形態に用いる生体物質構造体 2の生体物質と、 精製の対象で ある対象物質とは、 特異的に相互作用することにより、 対象物質は生体物質に 特異的に吸着できるようになっているものとする。
このァフィ二ティー用容器 3を用いて試料液から対象物質を分離する場合、 まず、 ァフィユティー容器 3内に試料液を注入する。 これにより、 生体物質構 造体 2が試料液と接触し、 生体物質に対象物質が吸着する。
次に、 試料液と生体物質構造体 2とを分離すべく、 試料液をァフィ二ティー 用容器 3の外へ排出する。 これにより、 試料液内に含まれていた対象物質以外 の成分は排出される。 一方、 対象物質は生体物質構造体 2の生体物質に吸着す ることにより、 ァフィ二ティー用容器 3内に保持される。
そして、 例えば対象物質と生体物質との相互作用を弱めうる所定の p Hに調 整した回収用溶液をァフィニティ一用容器 3に注入することなどにより対象物 質を生体物質構造体 2から遊離させ、 遊離した対象物質を上記の回収用溶液と
共に回収する。
以上のようにすれば、 試料液中の対象物質を分離精製することができる。 ま た、 この際、 生体物質として対象物質と特異的に相互作用するものを用いてお り、 しかも、 本発明の生体物質構造体は活性を保った生体物質を非常に多量に 含有するものであるために、 非特異的吸着を抑制して、 高効率な分離精製を容 易に行なうことが可能である。
さらに、 これを利用して、 ある所定の相互作用を上記の生体物質との間に生 じさせる作用物質が不明である場合に、 どのような物質が上記生体物資と相互 作用するかをスクリーニングする場合にも、 本実施形態の技術を適用すること ができる。 即ち、 例えば、 上記実施形態において、 何らかの相互作用を生じせ しめる物質を含有した試料液を用いるようにすれば、 試料液中の他の物質とは 分離精製して得られた物質 (対象物質) は上記の相互作用を生じさせる作用物 質であるから、 上記のスクリーユングを適切に行なうことができる。
なお、 本実施形態の構成において生体物質構造体 2を容器本体 1に固定して いない場合には、 試料液の排出前に遠心分離機を用いて生体物質構造体 2を集 めておくと、 作業効率や回収効率が向上するため、 好ましい。
[ 1 - 6 - 6 - 2 . 第 2実施形態]
本実施形態は、液中に対象物質(解析対象物質)を含有する試料液において、 その対象物質を分離精製することにより、対象物質の解析を行なうものである。 なお、 本実施形態も第 1実施形態と同様に図 5を用いて説明するが、 本実施 形態において、 第 1実施形態と同様の部位は、 同様の符号を用いて示す。
この実施形態において用いるァフィ二ティー用容器 3は、 生体物質構造体 2 が有する生体物質として、 ある特定の構造 (分子構造) を有する物質 (作用物 質) と特異的に相互作用することにより、 当該物質を特異的に吸着させるもの を用いているものとする。
また、 これ以外の構成は、 第 1実施形態と同様である。
このァフィ-ティ一用容器 3を用いて試料液中の対象物質の解析を行なう場 合、 第 1実施形態と同様に、 ァフィ二ティ一容器 3内に試料液を注入して生体 物質構造体と試料液とを接触させ、 次いで、 生体物質構造体 2と試料液とを分
離すべく試料液をァフィユティー用容器 3の外へ排出する。 これにより、 対象 物質が、生体物質と特異的に相互作用しうる特定の構造を有している場合には、 対象物質は生体物質構造体 2の生体物質に吸着されることにより、 ァフィニテ ィー用容器 3内に保持される。 また、 逆に、 対象物質が上記の特定の構造を有 していない場合には、 対象物質は試料液とともにァフィ二ティー容器 3の外部 に排出される。
したがって、 生体物質に対象物質が吸着しているか否か、 即ち、 ァフィニテ ィ一用容器 3内に対象物質が残留しているか否かを調べることにより、 対象物 質が上記の特定の構造を有しているか否かが判明する。
上記の生体物質に対象物質が吸着しているか否かという点を調べるには、 具 体的には、 生体物質に吸着している対象物質の量を測定すればよい。 例えば、 第 1実施形態と同様に、 対象物質と生体物質との相互作用を弱めうる所定の p Hに調製した回収用溶液をァフイエティー用容器 3に注入することなどにより 対象物質を生体物質構造体 2から遊離させ、 その回収用溶液を回収し、 回収し た回収用溶液中に含まれる対象物質の量を上述した測定法等により測定すれば よい。
以上のようにすれば、 試料液中の対象物質が、 少なくとも生体物質に対応し た特定の構造を有しているか否か、 という解析を行なうことが可能である。 さらに、 これを利用して、 生体物質と相互作用をするために作用物質が有し ているべき分子構造を調べる場合にも、 本実施形態の技術を適用することがで きる。即ち、例えば、生体物質と相互作用することにより、 ある一群の物質(対 象物質) が他の物質から分離された場合には、 当該一群の物質が共通の分子構 造を有していれば、 その分子構造が生体物質との相互作用をするために作用物 質が有しているべき分子構造であると推測することができる。
また、 本発明の生体物質構造体は、 第 1実施形態と同様に、 非特異的吸着を 抑制して高効率な分離精製を容易に行なうことが可能なものであるために、 対 象物質の解析を正確に且つ高感度に行なうことが可能である。
なお、 本実施形態は、 第 1実施形態と同様に変形することも可能である。
[ 1 - 6 - 6 - 3 . 第 3実施形態]
本実施形態は、 液中に、 対象物質 (精製対象物質) と、 その他の物質とが共 存する試料液から、 対象物質を分離精製するものである。
また、 図 6は、 本実施形態に用いるァフィ二ティークロマトグラフィー装置 の概要を模式的に示す図である。
この実施形態においては、 図 6に示すようなァフィユティークロマトグラフ ィー装置 (以下適宜、 「ァフィ-ティーク口マト装置」 という) 1 0を用いる。 このァフィ二ティークロマト装置 1 0は、 タンク 1 1と、 ポンプ 1 2と、 ォー トインジェクタ 1 3と、 ァフィ二ティ一分離用チップ 1 4と、 流路切替弁 1 5 と、 回収瓶 1 6 , 1 7と、 制御部 1 8とを備えている。
タンク 1 1は、 移動相となるキヤリァ液を貯蔵してあるものである。
また、 ポンプ 1 2は、 制御部 1 8の制御にしたがって、 タンク 1 1に貯蔵さ れたキヤリァ液を所定の流速で流すためのものである。
さらに、 オートインジェクタ 1 3は、 制御部 1 8の制御にしたがって、 試料 液をキヤリァ液の流れに注入するものである。
したがって、 タンク 1 1に貯蔵されたキヤリァ液は、 ポンプ 1 2によってォ ートインジェクタ 1 3を経てァフイエティ一分離用チップ 1 4へと所定の速度 で供給され、 また、 このキャリア液には、 オートインジェクタ 1 3によって試 料液が注入されるようになっている。 よって、 タンク 1 1、 ポンプ 1 2及びォ 一トインジェクタ 1 3によって、 試料液をァフィ二ティー分離用チップ 1 4の 流路 1 4 Bに流通させる試料液供給部 1 9が構成されていることになる。
また、 ァフィユティー分離用チップ 1 4は、 基板 1 4 Aに流路 1 4 Bが形成 されたものであり、 この流路 1 4 Bには、 生体物質構造体 (図示省略) が充填 されている。 ここで、 本実施形態で用いる生体物質構造体の生体物質と、 精製 の対象である対象物質とは、 特異的に相互作用することにより、 流路 1 4 Bを 流通する対象物質のリテンションタイムを変化するようになっているものとす る。 なお、 流路 1 4 Bの下流端部には生体物質構造体の流出を防止するための フィルタ (図示省略) が形成されていて、 これにより、 生体物質構造体は流路 1 4 B内に確実に保持されるようになっている。
したがって、 供給されたキャリア液 (試料液を注入されたものを含む) は、
生体物質構造体が充填された流路 1 4 Bを流通するようになっている。 また、 この流路 1 4 Bから溶出したキャリア液 (以下適宜、 流路 1 4 Bから流出する 液体は 「溶出液」 という) は、 下流の流路切替弁 1 5へと送られるようになつ ている。
ところで、 本実施形態では、 ァフィユティー分離用チップ 1 4はァフイエテ ィークロマト装置 1 0に対して着脱可能になっているものとする。具体的には、 ァフィ二ティークロマト装置 1 0がァフイエティー分離用チップ 1 4を装着す るチップ装着部 1 4 Cを備えていて、 使用時にはチップ装着部 1 4 Cにァフィ ユティー分離用チップ 1 4を装着して、 分離を行なうようになっている。
流路切替弁 1 5は、 制御部 1 8の制御にしたがって流路を切り替えて、 ァフ ィユティー分離用チップ 1 4から送られてきた溶出液を、 回収瓶 1 6及び回収 瓶 1 7のいずれに回収させるか切り替えるものである。 したがって、 ァフィ二 ティー分離用チップ 1 4の流路 1 4 B力 らの溶出液は、 流路切替弁 1 5により 分画されて、 回収瓶 1 6, 1 7のいずれかに回収されるようになっている。 また、 本実施形態では、 対象物質を含むキャリア液は回収瓶 1 6に回収し、 含まないキャリア液は回収瓶 1 7に回収されるようになっているものとする。 また、 制御部 1 8は、 ポンプ 1 2、 オートインジェクタ 1 3及ぴ流路切替弁 1 5の制御を行なうものであり、 本実施形態においては、 コンピュータに制御 用のプログラムを読み込ませて構成されている。
さらに、 この制御部 1 8には、 本実施形態で用いた生体物質構造体が有する 生体物質と対象物質との相互作用によるリテンションタイムの情報が記録され ていて、 この情報に基づいて、 オートインジェクタ 1 3から試料液を注入した 後の、 供給したキャリア液の量や、 経過した時間などに応じて、 流路切替弁 1 5の切替時機を制御するようになっている。
なお、 図 6において、 制御部 1 8による制御は、 一点鎖線の矢印で示す。 このァフィ二ティーク口マト装置 1 0を用いて試料液から対象物質を分離す る場合、 まず、 チップ装着部 1 4 Cにァフイエティー分離用チップ 1 4を装着 し、 そして、 制御部 1 8がポンプ 1 2を稼動させる。 ただし、 流路切替弁 1 5 は、 当初は溶出液を回収瓶 1 7に回収するように切り替えてあるものとする。
この場合、 タンク 1 1内のキヤリァ液は下流に向けて流れ出し、 オートインジ ェクタ 1 3、 ァフィ二ティー分離用チップ 1 4の流路 1 4 B、 及び、 流路切替 弁 1 5を通り、 回収瓶 1 7に回収される。
その後、 制御部 1 8は、 オートインジェクタ 1 3を制御して、 オートインジ ェクタ 1 3に試料液をキャリア液中に注入させる。 また、 制御部 1 8は、 注入 と同時に時間のカウントを開始する。
注入された試料液は、流路 1 4 Bに流入し、流路 1 4 Bを流通する。この際、 試料液は、 流路 1 4 B内の生体物質構造体と接触し、 生体物質と対象物質とが 相互作用して、 対象物質の流通速度が低下する。 したがって、 試料液中の対象 物質以外の成分はキャリア液と共にそのまま流路 1 4 Bを流通するが、 対象物 質は相互作用によるリテンションタイムの変化分だけ遅れて流路 1 4 Bから流 出する。 このため、 流路 1 4 Bから流出する溶出液のうち、 対象物質以外の成 分が流路切替弁 1 5を通過する時刻よりも後の、 対象物質のリテンションタイ ムに対応した分画には、 キャリア液と、 対象物質とが含まれ、 分離の対象とし ないその他の成分は含まれない。
そこで、 制御部 1 8は、 カウントしている時間によって、 対象物質以外の成 分が流路切替弁 1 5を通過する時刻よりも上記の相互作用によるリテンション タイムの変化分だけ後に、 流路切替弁 1 5を切り替えて対象物質を含有する分 画を回収瓶 1 6に回収するようにする。
その後、 連続して分離精製を行なう場合には、 制御部 1 8は、 対象物質を含 有しない溶出液の分画を回収瓶 1 7に回収させるように流路切替弁 1 5を再度 切り替え、 上記と同様の操作を行なう。 また、 分離精製を停止する場合には、 制御部 1 8はポンプ 1 2を停止させ、 キャリア液の供給を止める。
以上のようにすれば、 試料液中の対象物質を分離精製することができる。 ま た、 この際、 生体物質として対象物質と特異的に相互作用するものを用いてお り、 しかも、 本発明の生体物質構造体は活性を保った生体物質を非常に多量に 含有するものであるために、 非特異的相互作用を抑制して、 高効率な分離精製 を容易に行なうことが可能である。
さらに、 これを利用して、 第 1実施形態と同様に、 ある所定の相互作用を上
記の生体物質との間に生じさせる作用物質が不明である場合に、 どのような物 質が上記生体物質と相互作用するかをスクリーニングすることもできる。
なお、 本実施形態の構成においても、 第 1実施形態のようにァフィ二ティー 分離用チップ 1 4に生体物質構造体を固定するようにしてもよい。
また、 上記のァフィユティークロマト装置 1 0においては、 ァフィ二ティー 分離用チップ 1 4をァフィ二ティーク口マト装置 1 0に対して着脱可能に構成 したが、 適宜、 ァフイエティー分離用チップ 1 4をァフィユティークロマト装 置 1 0と一体に組み込んで構成するようにしてもよい。
[ I - 6 - 6 - 4 . 第 4実施形態]
本実施形態は、液中に対象物質(解析対象物質)を含有する試料液において、 その対象物質を分離精製することにより、対象物質の解析を行なうものである。 また、 図 7は、 本実施形態に用いるァフィ二ティークロマトグラフィー装置 の概要を模式的に示す図である。ただし、図 7において、図 6と同様の部位は、 図 6と同様の符号で示す。
この実施形態においては、 図 7に示すようなァフィ二ティーク口マト装置 2
0を用いる。 このァフィ二ティーク口マト装置 2 0は、 タンク 1 1と、 ポンプ 1 2と.、 オートインジェクタ 1 3と、 ァフィ二ティ一分離用チップ 1 4と、 制 御部 1 8と、 測定部 2 1とを備えている。
試料液供給部 1 9、 即ち、 タンク 1 1、 ポンプ 1 2及びオートインジェクタ 1 3は、 それぞれ第 3実施形態と同様である。
また、 ァフイエティー分離用チップ 1 4は、 生体物質構造体が有する生体物 質として、 ある特定の構造 (分子構造) を有する物質 (作用物質) と特異的に 相互作用することにより、 流路 1 4 Bを流通する対象物質のリテンションタイ ムを変化させるものを用いている以外は、 第 3実施形態と同様である。
さらに、 制御部 1 8は、 本実施形態のァフイエティーク口マト装置 2 0が切 替弁を有していないために、 切替弁の制御を行なわない以外は、 第 3実施形態 と同様である。
さらに、 ァフィ二ティーク口マト装置 2 0は、 ァフイエティー分離用チップ 1 4の下流に、 流路 1 4 Bからの溶出液の分画中の検出対象物質の量を測定す
る測定部 2 1を備えている。 具体的には、 この測定部 2 1は、 溶出液中の対象 物質の量を時間を追って測定することにより、 各時刻において測定部 2 1へ流 入する溶出液をそれぞれ分画として、 各分画に含まれる対象物質の量を測定す るようになっている。 なお、 測定部 2 1の具体例としては、 上述したものと同 様のものが挙げられる。
このァフィ二ティーク口マト装置 2 0を用いて試料液中の対象物質の解析を 行なう場合、 第 3実施形態と同様に、 チップ装着部 1 4 Cにァフィ二ティー分 離用チップ 1 4を装着し、 そして、 制御部 1 8がポンプ 1 2を稼動させてタン ク 1 1内のキャリア液を流れさせる。 この際、 測定部 2 1も、 溶出液中の対象 物質の測定を始める。
その後、 制御部 1 8は、 第 3実施形態と同様、 オートインジェクタ 1 3に試 料液をキャリア液中へ注入させる。 注入された試料液は、 キ.ャリア液と共に流 路 1 4 Bに流入し、 流路 1 4 Bを流通する。 この際、 試料液は、 流路 1 4 B内 の生体物質構造体と接触する。
そして、流路 1 4 Bから流出する溶出液は、測定部 2 1に流入する。そして、 測定部 2 1において、 溶出液の各時刻の分画に含まれる対象物質の量が測定さ れる。 .
ここで、 生体物質構造体と試料液とが接触した場合、 対象物質が上記の特定 の構造を有していれば、 流路 1 4 B内において対象物質のリテンションタイム は変化し、 これに伴い、 流路 1 4 Bから対象物質が流出する時刻は遅れること になる。 一方、 対象物質が上記の特定の構造を有していなければ、 対象物質の リテンションタイムは変化しない。
したがって、 溶出液の分画のうち、 どの分画で対象物質がどれだけの量だけ 検出されたかによって、 対象物質が特定の構造を有しているか否か、 及び、 そ の量がどれだけあるかを解析することができる。
即ち、 リテンションタイムに変化が生じない場合に観測されるべき時刻の分 画において対象物質が測定されれば、 対象物質は上記の特定の構造を有してい ないものと判定することができる。
また、 リテンションタイムに変化が生じない場合に観測されるべき時刻より
も後の分画において対象物質が測定されれば、 対象物質は上記の特定の構造を 有しているものと判定することができる。 さらに、 リテンションタイムの変化 がどれだけ大きかったか (即ち、 どれだけ後になって測定されたか) を測定す ることにより、 上記の相互作用の大きさを感知し、 対象物質が有する上記の特 定の構造の数も解析可能である。 これに加えて、 対象物質が 2以上の種類のも のを含む場合、 分画毎に含まれる対象物質の量を測定すれば、 どの対象物質が どれだけの特定の構造を有しているかを判定することも可能となる。
以上のように、 本実施形態のァフィユティークロマト装置 2 0によれば、 試 料液中の対象物質が、 生体物質に対応した特定の構造を有しているか否か、 と いう解析を行なうことが可能である。 また、 本発明の生体物質構造体は、 第 3 実施形態と同様に、 非特異的相互作用を抑制して高効率な分離精製を容易に行 なうことが可能なものであるために、 対象物質の解析を正確に且つ高感度に行 なうことが可能である。
さらに、 これを利用して、 第 2実施形態と同様に、 生体物質を相互作用をす るために作用物質が有しているべき分子構造を調べることも可能である。 また、上記の測定部 2 1の測定結果を、上記の解析を行なう解析部に出力し、 当該解析部において対象物質の解析を行なわせることも可能である。 例えば、 測定部 2 1から出力された測定結果を解析部が読み込み、 解析部が、 上述した ような、 リテンションタイムに変化が生じない場合に観測されるべき時刻の分 画において対象物質が測定されたか否かによって対象物質が特定の構造を有し ているか否か判定するように構成することが可能である。 ただし、 この場合、 ' 解析部には生体物質構造体の種類、 それに対応した特定の構造、 並びに判定に 用いるリテンションタイムの情報などを記憶した記憶部を設けることが好まし い。 なお、 解析部は、 ハードウェアとしては、 例えば、 コンピュータに当該コ ンピュータを解析部として機能させるプログラムを読み込ませることなどによ つて構成することができる。
なお、 本実施形態は、 第 3実施形態と同様に変形することも可能である。
[II. 生体物質担持体]
本発明の生体物質担持体(「生体物質が固定化された固相担体」、 「生体物質固
定担体」 ともいう) は、 固相担体に本発明の生体物質構造体が固定されてなる ものである。 即ち、 固相担体表面に、 本発明の生体物質構造体を有するもので ある。 上記の第 1〜第 4実施形態で用いたァフィ二ティー用容器ゃァフィニテ ィ一分離用チップなどのようなものがこれに該当する。
なお、 ァフィユティー精製用若しくは医薬作用機構解析用のツールとして、 上述した本発明の生体物質構造体を用いる場合、 条件によっては固相担体に固 定して、 生体物質担持体として用いることが望ましい。 - [II一 1. 生体物質担持体が有する生体物質構造体]
本発明の生体物質担持体が有する生体物質構造体、 及び、 その構成要素であ る生体物質及び結合用化合物については、 上述したものと同様である。
上述した通り、 本発明の生体物質構造体は、 生体物質及び結合用化合物の両 方によって形成されたマトリックス骨格を有しているため、 生体物質の比率を 高めることが可能である。 このため、 本発明の生体物質担持体でも、 従来より も多量の生体物質を固定化することができる。 即ち、 固相担体に対して大きい 濃度 (固相担体の単位表面当たりの量; s u r f a c e c o n c e n t r a t i o n) で生体物質を固定化することができる。 なお、 従来技術による高分 子膜では、 予め固相担体上に形成された高分子鎖によつて主鎖が形成されてい て、 その主鎖に対して生体物質が枝状 (グラフト状) に結合した構造となって いる。 したがって、 従来は、 生体物質の固定化量は所定の上限値で制限され、 多量の生体物質の固定化を行なうことはできなかった。
また、 生体物質構造体の厚さ (膜厚) は任意であるが、 生体物質構造体が乾 燥した状態において、 通常 5 nm以上、 好ましくは 10 nm以上、 より好まし くは 1 5 nm以上、 さらに好ましくは 20 nm以上である。 なお、 上限に特に 制限は無いが、 通常 10 cm以下である。 膜厚が小さすぎると、 生体物質構造 体が剥がれやすくなる虞があると共に、 生体物質構造体の膜厚を均一にするこ とが難しく、 さらに、 さらに再現性良く生体物質の固定化を行なうことが困難 になる場合があり、 十分に皮膜形成できない可能性がある。 なお、 上記の厚さ は、 SEM、 T EM, A FMなどの測定することができる。
[II一 2. 生体物質担持体が有する固相担体]
固相担体は、 表面に本発明の生体物質構造体を形成するための基体となるも のであり、 固相担体の表面に本発明の生体物質構造体を形成したものが、 本発 明の生体物質担持体である。 本発明で用いる固相担体に制限は無く、 本発明の 生体物質構造体を形成する対象となるものであれば、 任意の材質、 形状、 寸法 · のものを用いることができる。
固相担体の材質の例を挙げると、 ポリオレフイン、 ポリスチレン、 ポリェチ レン、 ポリカーボネート、 ポリアミ ド、 アクリル系樹脂等の各種樹脂材料、 ガ ラス、 アルミナ、 炭素、 金属等の無機材料などが挙げられる。 なお、 固相担体 の材質は 1種を単独で用いたものでもよく、 2種以上を任意の組み合わせ及び 比率で併用したものであっても良い。
また、 固相担体の形状の例を挙げると、 平板状、 粒子状、 繊維状、 膜状、 シ ート状などが挙げられる。 具体例としては、 多数の生体物質を配列させること ができるチップ(基板)、クロマトグラフィー担体やラテックス診断薬としての ビーズ、分離膜として利用されている中空糸繊維や多孔質膜などが挙げられる。 中でも、 上記の第 3、 第 4実施形態のような流路を有するチップを固相担体と して用いる場合には、 流路の形状や寸法なども用途に応じて任意に形成するこ とができる。 ただし、 生体物質構造体を基板等に固定化する場合は別段不要で あるが、 単に流路 1 4 B内に生体物質構造体を充填して保持させるようにした 場合などにおいては、 流路 1 4 B内から生体物質構造体が流出することを防止 するべく、 流路 1 4 Bにフィルタ等の流出防止手段を設けることが好ましい。 さらに、 上記固相担体は、 そのまま使用してもよいが、 何らかの表面処理を • 施してから表面に生体物質構造体を形成するようにしても良い。 例えば、 金属 や金属酸化物などの被覆材料で表面を被覆してから生体物質構造体を形成する ようにしても良い。
このような被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、 金属被覆 チップ、 スライドガラス、 ファイバースライド、 シート、 ピン、 マイクロタイ タープレート、 キヤビラリ一チューブ、 ビーズ等が挙げられる。
また、 例えば、 固相担体と生体物質構造体とを結合させるために、 表面処理 として官能基を固相担体に導入しても良い。 その官能基は任意であるが、 例え
ば、 ヒ ドロキシル基、 カルボキシル基、 チオール基、 ァミノアルデヒ ド基、 ヒ ドラジド基、 カルボニル基、 エポキシ基、 ビエル基、 アミノ基、 スクシンイミ ド基等の、 化学結合により固相担体と生体物質構造とを結合させる官能基が挙 げられる。
また、 本発明の生体物質担持体の製造時に溶媒や分散媒等の媒質として水を 用いる場合には、 アルキル基、 フエ-ル基等の疎液相互作用による物理吸着に よつて固相担体と生体物質構造体とを結合させる官能基を用いることもできる。 なお、 導入する官能基は 1種であってもよく、 2種以上を任意の組み合わせ 及び比率で併用してもよい。
表面処理の具体例を挙げると、 例えば、 固相担体表面に対して、 金で被覆す る表面処理を行なつた場合には、
HS-(-GH2)-COOH などを金表面に固定する処理が挙げられる。 ただし、'上記の構造式において、 n 1; n 2はそれぞれ独立に 2以上の整数を表わす。
[II一 .3 . 生体物質担持体の製造方法]
本発明の生体物質担持体の製造方法は任意である。 例えば、 あらかじめ生体 物質構造体を用意して、 それを固相担体と結合させてもよいが、 通常は、 本発 明の生体物質担持体は、 媒質 (通常は、 溶媒) の存在下、 生体物質と結合用化 合物とを共存させた混合物を固相担体に供給し、 上記固相担体表面に、 上記生 ·体物質及び上記結合用化合物からなる主鎖を有する生体物質構造体を形成させ る工程を経て製造される。 以下、 この方法について説明する。
[II一 3一 1 .生体物質担持体の製造に用いる生体物質及び結合用化合物など] 生体物質、 結合用化合物などは、 生体物質構造体の製造方法の説明において 上述したものと同様である。 また、 本発明の生体物質担持体の製造時には、 生 体物質や結合用化合物に、 適宜添加剤を共存させてもよい。
[II一 3— 2 . 生体物質担持体の製造に用いる媒質]
本発明の生体物質担持体を製造する際に使用する媒質は、 生体物質構造体の
製造方法の説明において上述した媒質と同様である。 したがって、 媒質として は、 生体物質及び結合用化合物の活性や構造の安定性などを考慮して選択する ことが好ましい。
また、 生体物質構造体の製造時と同様、 本発明の生体物質担持体を製造する 際にも、 通常は、 媒質として水を用いる。 ここで、 媒質として水を使用できる こと、 即ち、 水中で上述した生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物を 固相担体に供給し、 生体物質担持体を製造できることは、 本発明の優れた利点 の一つである。 即ち、 従来は有機溶媒中で生体物質を固定化する技術はあった (特許文献 5等参照) 力 水を媒質 (溶媒) として固定化を行なうことはでき なかった。 しかし、 本発明により水の存在下で固定化を行なうことが出来るよ うになれば、 生体物質の活性を保つことが可能となるほか、 生体物質及び結合 用化合物それぞれの選択の幅が広がり、 適用範囲の拡大が期待できる。
[II - 3 - 3 . 生体物質担持体の製造に用いる混合物]
生体物質担持体の製造に用いる混合物は、 媒質の存在下、 少なくとも、 生体 物質及び結合用化合物を共存させたものである。 この混合物は、 生体物質構造 体の製造時に調製される混合物と同様のものである。
[II - 3 - 4 . 固相担体への混合物の供給]
本発明の生体物質担持体を製造する際には、 上述した混合物を、 固相担体に 供給する。 即ち、 上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。 その具 体的な操作は任意であるが、 例えば、 あらかじめ混合物を用意してその混合物 を固相担体に接触させてもよいし、 混合物の各成分を別々に用意し、 固相担体 • 上でそれらを混合させて混合物を調製し、 固相担体に混合物を接触させるよう にしてもよい。 具体的には、 例えば、 生体物質を含む溶液 (水溶液等) と結合 用化合物を含む溶液 (水溶液等) とを固相担体上に各々供給した後に、 固相担 体上で両溶液を混合する等により行なうことができる。 また、 予め混合物を用 意しておく場合、 供給前の混合物中で前述したコンジュゲート (その一形態で ある粒子状塊を含む) 又は生体物質構造体を作製しておき、 その後、 混合物を 固相担体に供給するようにしても良い。
[II - 3 - 5 . 固相担体表面への生体物質構造体の形成]
次いで、 固相担体表面に、 生体物質及び結合用化合物からなる主鎖を有する 生体物質構造体を形成する。 混合物中には、 上記のようにコンジュゲート (そ の一形態である粒子状塊を含む)又は生体物質構造体などが含まれているので、 混合物を固相担体に接触させることにより、 例えば混合物中のコンジユゲート (その一形態である粒子状塊を含む) 又は生体物質構造体が固相担体表面に集 積されたり、 混合物中でコンジュゲート (その一形態である粒子状塊を含む) 同士が結合して生成した生体物質構造体が固相担体に結合したり、 混合物中の 生体物質及び結合用化合物が固相担体表面に結合することにより生体物質構造 体が生成したりすることで、 固相担体表面に生体物質構造体を形成することが できる。
また、 適宜、 生体物質構造体の製造時と同様に、 濃縮工程及び乾燥工程を行 うようにしてもよい。
さらに、 生体物質構造体を固相担体に結合させる際の条件は任意であるが、 生体物質の変性等を避ける観点から、 温度条件は、 通常 2 5 °C以下、 好ましく は 1 0 °C以下で行なうことが望ましい。
また、 固相担体への固定後の混合物を乾燥、 濃縮する場合、 その際の圧力条 件も任意であるが、 通常は、 常圧以下が望ましい。
さらに、 生体物質構造体を固相担体に固定するには、 混合物の供給後、 所定 の時間だけ固相担体を静置することが望ましい。 静置の時間は任意であるが、 通常 2 4時間以下、 好ましくは 1 2時間以下が望ましい。
[II一 3— 6 . 生体物質担持体の製造時のその他の工程]
以上のように、 上記の方法は、 媒質 (通常は溶媒) 中に生体物質と結合用化 合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、 固相担体表面に生体 物質構造体を形成させることができ、 これにより、 本発明の生体物質担持体を 製造することができる、 即ち、 固相担体上に生体物質を固定化することができ るという、 非常に簡便な方法である。
ところで、 本発明の生体物質担持体を製造する際には、 上記の工程のほかの 工程を行なってもよレ、。
例えば、 生体物質構造体中の生体物質に、 さらに異なる生体物質を結合させ
るようにしても良い。 これを利用すれば、 生体物質担持体の製造後、 生体物質 構造体中の生体物質に特定的に結合するように修飾した別の生体物質を後から 結合させ、 結果として、 固相担体に上記の別の生体物質を高密度に固定化する ことができる。 具体例を挙げると、 生体物質としてアビジンを用いて、 このァ ビジンと結合用化合物とを結合させて生体物質構造体を形成し、 生体物質担持 体を製造する。 その後、 ビォチンで修飾した別の生体物質を用いて、 アビジン -ピオチン相互作用により上記の別の生体物質を固定化することができる。 ま た、 同様にヒスチジンタグもしくはダルタチオン一 S—トランスフェラーゼを 介して、 生体物質を固定することも可能である。
[II一 4 . 従来技術との対比]
本発明の生体物質担持体を用いれば、 生体物質を従来よりも多量に固定化す ることができる。 例えば特許文献 4〜 6のような従来技術では、 固相担体表面 に形成された高分子膜 (ポリマー膜) に生体物質を結合させていた。 しかし、 この場合、 ポリマー鎖で形成された主鎖に対して、 生体物質が高分子鎖の先端 に結合したり高分子鎖にグラフト状に結合したりすることで、 生体物質を固相 担体に結合させていたため、 主鎖としてポリマー鎖を形成させる必要があり、 固定化する生体物質に対して一定以上のポリマーを使用しなくてはならず、 生 体物質の固定化量に限界があった。
これに対し、 本発明においては、 生体物質と高分子 (結合用化合物に相当) との両方によって形成された生体物質構造体骨格 (上記の主鎖に相当) を有す る生体物質構造体を形成させ、 この生体物質構造体を利用して固相担体に生体 ' 物質を固定化できるため、 生体物質構造体中における生体物質の比率を高める ことができる (即ち、結合用化合物の比率を小さくすることができる)。 したが つて、 生体物質を固定化するに際して、 従来のような限界は無く、 生体物質を 従来よりも多く、 即ち、 固相担体表面に対して高密度に固定化することが可能 である。
また、 本発明の生体物質担持体は、 簡単な方法で製造できることも利点のひ とつである。 従来の方法では、 生体物質を高密度に固定化するためには多くの 手間を要していた。 具体的には、 従来は、 固相担体上にあらかじめ高分子膜を
形成し、 その高分子膜に生体物質を固定化して固相担体上にリガンドを含んだ 生体物質構造体を構築していた。 しかし、 これらの方法では、 固相上に高分子 膜を作製する際に、 高分子の分子量や固相担体への導入密度を適切にコント口 ールする必要があり、 操作が非常に煩雑であり再現性良く固定化を行なうこと が困難であった。 特に、 特許文献 6の方法では、 固相担体表面からブラシ状に 高分子鎖を構築することが技術的に難しく、 大量生産には不向きであった。 これに対し、 本発明の生体物質担持体は、 媒質 (通常は溶媒) 中に生体物質 と結合用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、 固相担体 状に生体物質構造体を形成させること、 即ち、 生体物質を固定化することがで きる、 非常に簡単に製造可能なものである。 また、 特許文献 5記載の技術のよ うに、 生体物質担持体の製造に用いる溶媒を有機溶媒に限定され、 それにより 使用できる生体物質を制限されることがないため、 固定化する生体物質の選択 範囲を広げることが可能となる。
さらに、 本発明の生体物質担持体に形成された生体物質構造体では、 生体物 質を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定することができる。 したが つて、 生体物質と、 それと特異的に相互作用する作用物質との相互作用等に最 適な反応場を構築することができる。 これにより、 例えば本発明の生体物質担 持体を上記の相互作用を利用したセンサに用いた場合、 そのセンサの検出感度 を高めることができる。
上記の最適な反応場を構築することができる理由は、 本発明の発明者らか推 察するところ、 以下のとおりである。 即ち、 従来の高分子膜で表面処理した固 相担体に後から生体物質を固定化する方法では、 膜の表面に生体物質が偏って しまい、高分子膜中に作用物質が進入できる空隙がなくなってしまう。さらに、 主鎖が親水性ポリマーのみで構築される従来の技術では、 親水性ポリマー鎖が 排除体積効果及びポリマー鎖の運動により、 生体物質への作用物質の接近を妨 げることが推測される (生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法 _ B I A C O R Eを中心に, 編集 永田和宏 '半田宏, 発行所 シュプリンガー ' フエ アラーク東京株式会社, 第 2 5 8頁、 医療用高分子材料の開発と応用, シーェ ムシ一, 第 1 9頁)。 し力、しながら、本発明の生体物質担持体に形成された生体
物質構造体では、 生体物質を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定す ることができ、 さらに、 本発明の技術を用いることにより、 生体物質構造体の 構造は高分子膜中で作用物質が充分反応できる空隙が形成されていると推察さ れ、 これにより、 最適な反応場を構築できるようになっていると考えられる。 また、 本発明の生体物質担持体に形成された生体物質構造体は、 膜厚を任意 に制御することができる。 従来技術では、 通常は、 生体物質構造体の膜厚をサ ブミクロンレベルから数ミクロンレベルまで、 任意にコント口ールすることが 難しかった。 しカゝし、 本発明によれば生体物質構造体の膜厚を上記のような精 密なレベルで制御することが可能であり、 生体物質構造体構造の設計の自由度 を高めることができる。
例えば、 S P Rによる相互作用観察を行なう場合には、 観察対象を固定する ために用いる膜の膜厚は 2 0 0 n m〜3 0 0 n m程度が最適であると考えられ る。 また、 例えば、 医療用器具、 再生医療担体の表面処理を行なう場合、 充分 な強度及び被覆を実現させるためには、 その表面処理に用いる膜にはミクロォ ーダ一の膜厚が要求される。 さらに、 例えば D D S '(ドラッグデリバリーシス テム) のための薬剤の表面処理を行なう場合には、 ドラッグリリースの制御の ためには、その表面処理に用いる膜を任意に膜厚を制御することが要求される。 このように、 生体物質の固定化に何らかの膜を利用する場合には、 その膜厚制 御が重要な点のひとつであつたが、 従来は膜厚制御が困難であった。 しかし、 本発明によれば、 その用途に応じた膜厚を、 混合物の濃度、 量、 反応条件 (温 度や時間等) などを調製することにより、 任意に制御することができる。
さらに、 本発明の生体物質担持体では、 生体物質と作用物質とを相互作用さ せるべく本発明の生体物質担持体を使用した場合に、 生体物質以外の生体物質 構造体構成要素に起因する非特異的相互作用を抑制することができる。 生体物 質構造体中における生体物質の比率を高め、 非特異的相互作用の要因となる生 体物質以外の物質の比率を抑制することができるからである。
また、 特に、 結合用化合物として無電荷のものを用いた場合には、 電荷によ り生じる非特異的相互作用をより一層抑制することも可能となる。 即ち、 例え ば特許文献 4記載の方法においては、 高分子膜が電荷を有しているために、 用
いる緩衝溶液の P Hやイオン強度が生体物質の反応に大きく影響し、 さらに、 電荷を有するタンパク質は静電気的相互作用による非特異吸着を避けられなか つた (ナノテクノロジ一基礎シリーズ バイオナノテクノロジー 堀池靖浩 · 片岡一則 (共編) 第 1 8 6頁を参照)。 しかし、結合用化合物として無電荷のも のを用いれば、 そのようなことはなく、 特定の相互作用を選択的に生じさせる ことが可能となる。
[II - 5 . 生体物質固定化キット]
上述した生体物質担持体を製造するため、 生体物質を固相担体に固定化する ために用いるもの、 即ち、 上述した結合用化合物や、 生体物質及び結合用化合 物を混和させうる溶媒や分散媒等の媒質を、 キット化した生体物質固定化キッ トを用いても良い。 即ち、 生体物質担持体を製造するため、 結合用化合物と、 生体物質及び結合用化合物を混和させうる媒質とを備える生体物質固定化キッ トを用意するようにしてもよい。 生体物質固定化キットを用いれば、 生体物質 担持体を簡単に製造できる、 即ち、 固相担体上に上記生体物質構造体を簡単に 作製できるため、 生体物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化することが可 能となる。
生体物質固定化キットに備えられる結合用化合物は、 上述したものと同様で ある。 また、 生体物質固定化キットにおいて、 結合用化合物はどのような状態 で備えられていても良く、 例えば、 任意の溶媒に溶解した溶液、 任意の分散媒 に分散した分散液、 粉末状や塊状の固体など、 その存在状態は任意である。 また、 生体物質固定化キットに備えられる媒質も、 生体物質担持体の製造に 用いる媒質として上述した媒質と同様である。 さらに、 生体物質固定化キット において、 この媒質は、 上記結合用化合物と別に備えられていても良く、 結合 用化合物の溶媒や分散媒等として結合用化合物と一体に備えられていても良い。 さらに、 生体物質固定化キットには、 必要に応じて他の要素が備えられてい ても良い。
例えば、 生体物質構造体の製造を促進する試薬などをさらに備えていても良 い。 具体例としては、 結合用化合物としてポリアクリル酸を用いる場合には、 ポリアクリル酸のカルボエル基を活性させるために 1ーェチルー 3 - ( 3—ジ
メチルァミノプロピル) —カルポジイミ ド塩酸塩 (略称: E D C ) を試薬とし て備えるようにしてもよい。
[II一 6 . 生体物質担持体の用途]
本発明の生体物質担持体は、 産業上の広い範囲において用いることが可能で ある。 具体的な用途に制限は無く、 任意の用途に用いることができるが、 通常 は、 生体物質と、 その生体物質と特異的に相互作用する作用物質との 「相互作 用」 を利用した用途に用いて好適である。
例えば、 本発明の生体物質担持体は、 生体物質と相互作用する作用物質を検 出するバイオセンサ一として好適に使用できる。 上記のバイオセンサーは、 例 えば、 いわゆる D N Aアレイ若しくは D N Aチップ、 または、 プロテインァレ ィ若しくはプロティンチップ等と呼ばれる、 D N Aまたはタンパク質を固定化 したセンサーチップを用いて、 相互作用を解析するものであるが、 本発明の生 体物質担持体は、 このセンサーチップに適用することができる。 即ち、 センサ ーチップに生体物質を固定化する場合に、 .上述した方法によりセンサーチップ 本体に生体物質構造体を形成して、 センサーチップを本発明の生体物質担持体 として用いることができる。
このように、 本発明の生体物質担持体を適用することができるバイオセンサ 一の具体例としては、 蛍光法、 化学発光法、 R I法、 S P R (表面プラズモン 共鳴) 法、 Q C M (水晶発振子マイクロバランス) 法、 ピエゾ方式カンチレバ 一法、 レーザー方式カンチレバー法、 質量分析法、 電気化学的方法によるセン サー、 電極法、 電界効果トランジスタ (F E T ) 法、 カーボンナノチューブを 用いた F E T及び Z又は単一電子トランジスタ法などが挙げられる。 この中で も、 S P R法および Q CM法による検出は、 簡便に検体を無標識で分析するこ とができるため、 好適に用いられる。
S P R法は、 表面プラズモン波を誘起させるために、 センサーチップの表面 は、 金属で被覆されているのが好ましい。 金属としては、 表面プラズモン波を 誘起しうるものであればよく、 金、 銀、 銅、 アルミニウムおよびこれらを含む 合金などが挙げられる。 なかでも、 感度や安価な点では銀が好ましく、 安定性 の面では金が好ましい。 金属層は、 蒸着、 スパッタリング、 メツキ、 その他の
コーティングなどによって形成され、 その厚さは、 通常 2 0 n m以上、 好まし くは 3 0 n m以上、 また、 通常 3 0 0 n m以下、 好ましくは 1 6 0 n m以下程 度である。
これら S P R法や Q C M法に本発明の生体物質担持体を適用する場合、 セン サーチップ本体の表面に生体物質構造体を強固に結合するためには、 センサー チップ本体の表面が官能基を有していることが好ましい。 この場合、 官能基は 任意であるが、 例としては、 ヒ ドロキシル基、 カルボキシル基、 チオール基、 ァミノアルデヒ ド基、 ヒ ドラジド基、 カルボ-ル基、 エポキシ基、 ビュル基、 アミノ基、 スクシンィミ ド基等が挙げられる。
さらに、 本発明の生体物質担持体は、 D D S (ドラッグデリバリーシステム) のための薬剤の表面処理、 再生医療担体の表面処理、 人工臓器の表面処理、 力 テーテルなどの表面処理等に適用可能である。
[II一 7 . 粒子状塊を有さなくてもよい生体物質担持体]
ところで、 生体物質担持体において、 固相担体に固定化された生体物質構造 体は、 生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を有していれば、 上述したよう な粒子状塊を有さない構造体であっても、 生体物質構造体 (マトリ ックス) と して甩いることができる。 以下、 このような生体物質担持体について詳しく説 明する。 なお、 以下に説明する生体物質担持体は、 生体物質構造体が粒子状塊 を有していなくてもよいことの他は上述した生体物質構造体と同様の構成とな つている。 このため、 実質的に同様の構成も登場するが、 そのような構成につ いても、 適宜、 再度説明を行なう。
この生体物質担持体 (生体物質が固定化された固相担体) は、 固相担体表面 に、 マトリックス (生体物質構造体;以下適宜、 「本発明のマトリックス」 とい う) を有する。 ここで、 本発明のマトリックスは、 生体物質、 及び、 上記生体 物質と結合可能な結合用化合物 (固定化用化合物) からなる主鎖を有するマト リックスである。 [ I .生体物質構造体]で説明した本発明の生体物質構造体も、 ここでいう本発明のマトリッタスの一形態である。 ただし、 [ I . 生体物質構造 体] で説明した本発明の生体物質構造体とは異なり、 本欄において説明する生 体物質担持体が有する本発明のマトリックスは、 粒子状塊を有していなくても
よい。 即ち、 本発明のマトリ ックスは、 図 3 ( a ) 〜図 3 ( c ) に模式的に示 すように、 生体物質と結合用化合物とを含み、 その骨格が、 生体物質と結合用 化合物とが結合し、 鎖状及び Z又は網目状に結合した構造を有するマトリック スである。 なお、 図 3 ( a ) 〜図 3 ( c ) は、 本発明のマトリ ックスの構造を 説明するため、 本発明の生体物質担持体の一例の表面近傍を拡大して示す模式 図である。 また、 図 3 ( a ) 〜図 3 ( c ) において、 円形部分が生体物質を表 わし、 線状部分が固定化用化合物を表わす。 ただし、 図 3 ( a ) 〜図 3 ( c ) は生体物質と結合用化合物とカゝらなる主鎖の構成を説明するべく、 粒子状塊を 構成しているか否かに係わらず主鎖の構造を 2次元的に描画したものである。
[I I - 7 - 1 . 固相担体]
本発明のマトリックスを有する生体物質担持体が備える固相担体は、 [Π—
2 . 生体物質担持体が有する固相担体] で説明した固相担体と実質的に同様で ある。 即ち、 固相担体は、 表面に本発明のマトリ ックスを形成するための基体 となるものであり、固相担体の表面に本発明のマトリックスを形成したものが、 本発明の生体物質担持体である。 本発明で用いる固相担体に制限は無く、 本発 明のマトリ ックスを形成する対象となるものであれば、 任意の材質、 形状、 寸 法のものを用いることができる。
固相担体の材質の例を挙げると、 ポリオレフイン、 .ポリスチレン、 ポリェチ レン、 ポリカーボネート、 ポリアミド、 アクリル系樹脂等の各種樹脂材^、 ガ ラス、 アルミナ、 炭素、 金属等の無機材料などが挙げられる。 なお、 固相担体 の材質は 1種を単独で用いたものでもよく、 2種以上を任意の組み合わせ及び • 比率で併用したものであっても良い。
また、 固相担体の形状の例を挙げると、 平板状、 粒子状、 繊維状、 膜状、 シ ート状などが挙げられる。 具体例としては、 多数の生体物質を配列させること ができるチップ(基板)、クロマトグラフィ担体やラテックス診断薬としてのビ ーズ、 分離膜として利用されている中空糸繊維や多孔質膜などが挙げられる。 さらに、 上記固相担体は、 そのまま使用してもよいが、 何らかの表面処理を 施してから表面にマトリックスを形成するようにしても良い。 例えば、 金属や 金属酸化物などの被覆材料で表面を被覆してからマトリックスを形成するよう
にしても良い。 さらに、 固相担体とマトリックスとを結合させるために、 官能 基を固相担体に導入しても良い。 その官能基は任意であるが、 例えば、 ヒ ドロ キシル基、カルボキシル基、チオール基、アミノアルデヒド基、 ヒ ドラジド基、 カルボニル基、 エポキシヒポキシ基、 ビエル基、 アミノ基、 スクシンイミ ド基 等の、 化学結合により固相担体とマトリックスとを結合させる官能基が挙げら れる。 また、 本発明の生体分子物質固相担体製造時に溶媒として水を用いる場 合には、 アルキル基、 フエエル基等の疎液相互作用による物理吸着によって固 相担体とマトリッタスとを結合させる官能基を用いることもできる。
表面処理の具体例を挙げると、 例えば固相担体表面に対して、 金で被覆する 表面処理を行なった場合には、
HS+CH2 ~COOH などを金表面に固定する処理が挙げられる。 ただし、 上記の構造式において、 η ι , n 2はそれぞれ独立に 2以上の整数を表わす。 ·
また、 被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、 金属被覆チッ プ、 スライ ドガラス、 ファイバースライ ド、 シート、 ピン、 マイクロタイター プレート、 キヤビラリ一チューブ、 ビーズ等が挙げられる。
[II - 7 - 2 . 生体物質]
本発明のマトリックスを有する生体物質担持体が備える生体物質は、 [ I一 1 . 生体物質]で説明した生体物質と実質的に同様である。即ち、生体物質は、 固相担体に固定化する物質であり、 その目的に応じて、 任意の物質を用いるこ とができる。 具体例を挙げれば、 酵素、 抗体、 レクチン、 レセプター、 プロテ イン A、 プロテイン G、 プロテイン AZG、 アビジン、 ストレプトアビジン、 ニュートラアビジン、 ダルタチオン一S—トランスフェラーゼ、 糖タンパク質 等のタンパク質、ペプチド、 アミノ酸、 ホルモン、核酸、糖、 オリゴ糖、 多糖、 シアル酸誘導体、 シアル化糖鎖等の糖鎖、 脂質、 低分子化合物、 上述以外の高 分子有機物質、 無機物質、 若しくはこれらの融合体、 または、 ウィルス、 若し くは細胞を構成する分子などの生体分子が挙げられる。 また、 このほか、 例え
ば細胞等の生体分子以外の物質を生体物質として用いることもできる。 なお、 本発明の生体物質担持体を分析に用いた場合には、 これら生体物質は、 検体中 の検出対象物質と生体物質との相互作用 (結合性等) を測定する際の標的物質 となる。
なお、 上記の検出対象物質は、 通常、 生体物質と特異的に相互作用する作用 物質である。 ここで、 生体物質と作用物質との 「相互作用」 とは、 特に限定さ れるものではないが、 通常は、 共有結合、 イオン結合、 キレート結合、 配位結 合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルワールス結合、 及び静電力による結合の うち少なくとも 1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。 ただし、 本 明細書に言う 「相互作用」 との用語は最も広義に解釈すべきであり、 いかなる 意味においても限定的に解釈してはならない。 共有結合としては、 配位結合を 含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。 また、 上記作用の結果生じる結合反応、 合成反応、 分解反応も相互作用に含有 される。
相互作用の具体例としては、 抗原と抗体との間の結合及び解離、 タンパク質 レセプターとリガンドとの間の結合及び解離、 接着分子と相手方分子との間の 結合及び解離、 酵素と基質との間の結合及び解離、 アポ酵素と補酵素との間の 結合及び解離、 核酸とそれに結合する核酸又はタンパク質との間の結合及び解 離、 情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合及び解離、 糖タンパク質と タンパク質との間の結合及び解離、 糖鎖とタンパク質との間の結合及び解離な どが挙げられるが、 この範囲に限定されるものではない。 さらに、 例えば、 ィ ムノグロブリンやその派生物である F ( a b ' ) 2、 F a b ' 、 F a b、 レセ プターや酵素とその派生物、 核酸、 天然あるいは人工のペプチド、 人工ポリマ 一、 糖質、 脂質、 無機物質あるいは有機配位子、 ウィルス、 細胞、 薬物等が挙 げられる。
また、 上記の生体物質の例の中でも、 タンパク質としては、 タンパク質の全 長であっても、 結合活性部位を含む部分ペプチドであってもよい。 また、 アミ ノ酸配列、及ぴその機能が既知のタンパク質でも、未知のタンパク質でもよい。 これらは、 合成されたペプチド鎖、 生体より精製されたタンパク質、 あるいは
c D N Aライブラリ一等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、 精製したタンパク 質等でも標的物質として用いることができる。 合成されたペプチド鎖は、 これ に糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。 これらのうち好ましくは、 精 製されたタンパク質である。
さらに、 核酸としては、 特に制限はなく、 D N A、 R N Aの他、 ァプタマ一 等の核酸塩基、 P N A等のペプチド核酸を用いることもできる。 また、 塩基配 列あるいは機能が、 既知の核酸でも、 未知の核酸でもよい。 好ましくは、 タン パク質に結合能力を有する、 核酸としての機能及び塩基配列が既知のものか、 あるいは、 ゲノムライブラリ一等から制限酵素等を用いて切断単離してきたも のを用いることができる。
また、 糖鎖としては、 その糖配列あるいは機能が、 既知の糖鎖でも未知の糖 鎖でもよい。 好ましくは、 既に分離解析され、 糖配列あるいは機能が既知の糖 鎖が用いられる。
また、 低分子化合物としては、 相互作用する能力を有する限り、 特に制限は ない。 機能が未知のものでも、 あるいはタンパク質に結合する能力が既に知ら れているものでも用いることができるが、 医薬候補化合物等が好適に用いられ る。 .
また、 生体物質は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わ せ及び比率で併用しても良い。
[II - 7 - 3 . 結合用化合物]
本発明のマトリックスを有する生体物質担持体が備える結合用化合物は、 [ 1 - 2 . 結合用化合物 (固定化用化合物) ]で説明した結合用化合物と実質的 に同様である。 即ち、 結合用化合物は、 上記生体物質と結合しうる化合物であ れば、 任意の化合物を用いることができる。 したがって、 結合用化合物として は、 上記生体物質と結合可能な官能基 (即ち、 「結合官能基」) を有する化合物 を任意に用いることができる。 ここで、 結合官能基としては、 上記の生体物質 に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、 任意の官能基を用いることがで きる。 通常は、 生体物質の種類や本発明の生体物質担持体の用途などに応じて 適当なものを選択することが好ましい。 なお、 結合官能基は、 1種を単独で用
いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
ただし、本発明の生体物質担持体に含まれるマトリッタスが、上記の主鎮を形 成するためには、結合用化合物同士の結合が無く、生体物質と結合用化合物との 結合が主であることが好ましい。.結合用化合物同士の結合が存在すると、結合用 化合物同士の集合塊が形成され、 効率よく生体物質を結合させられず、 さらに、 検体を本発明の生体物質担持体と反応させる際に、望ましい反応効率が得られな い虞がある。
また、結合用化合物同士の結合があるときに、高分子を結合用化合物に用いた 場合、結合用化合物の内部架橋が起こってしまい、 さらに生体物質を固定化しに くくなる。 ここで、 結合用化合物同士の結合とは、 分子間引力、 疎液相互作用、 電気的相互作用を除く結合を示す。
このように結合用化合物同士の結合が無いマトリックスを形成させるために は、結合用化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、 さらに、結合用 化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は具体 的には後述するように、 スクシンィミド基、 エポキシ基、 アルデヒド基、 マレイ ミド基、 ボロン酸基、 ビォチン基などが挙げられる。 結合用官能基同士が結合す る状況とは、 過度の熱を加えることや、 強力な紫外線を照射することを示す。 また、マトリックス中に含まれる結合用化合物同士の結合を調べる方法として は、マトリックス中の生体物質を後述の方法で分解した時に、不溶物が形成され る力、若しくは、基板等の固相担体に結合用化合物の凝集塊が残ることで判断さ れる。若しくは、マトリ ックスを熱分解性ガスクロマトグラフィ一で分析するこ とにより、結合用化合物同士の結合を示唆する化合物を検出することで判断され る。 具体的には、 ウレタン結語を示唆する化合物などが挙げられる。
さらに、生体物質の活性を維持するためには、生体物質が失活しにくいよう後 述する生体物質の官能基及び結合用化合物の官能基を選択することが好ましい。 例えば、タンパク質を固定化するとき、タンパク質の活性部分にチオール基を有 している場合には、 チオール基以外の基 (例えば、 アミノ基) を生体物質の結合 官能基として選択し、 このアミノ基と結合するために、結合用化合物の結合官能 基は、 スクシンイミ ド基、 エポキシ基が選択される。
結合官能基は、 通常、 反応性基として共有結合を介して生体物質と結合する ものと、 非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。 共有結 合により結合する場合、 結合官能基の具体例としては、 スクシンイミ ド基、 ェ ポキシ基、 アルデヒ ド基、 マレイミ ド基等が挙げられる。
以下、 生体物質との結合について具体的に説明する。 結合官能基と結合する 生体物質としては、 例えば、 タンパク質、 核酸、 糖等が挙げられる。
生体物質がタンパク質である場合、 タンパク質の表層に存在するァミノ基、 ヒ ドロキシル基、 チオール基等と結合用化合物の結合官能基とが結合する。 こ の際、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはス クシンイミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基等が挙げられる。 また、 ヒ ドロキ シル基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはエポキシ基 等が挙げられる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能 基の具体例としてはマレイミ ド基等が挙げられる。
また、 生体物質が核酸である場合、 核酸の末端に導入されるァミノ基、 ヒ ド 口キシル基、チオール基等と結合用化合物の結合官能'基とが結合する。この際、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはスクシン イミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基等が挙げられる。 また、 ヒ ドロキシル基 が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙 げられる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具 体例としてはマレイミ ド基等が挙げられる。
また、 生体物質が糖である場合、 糖の側鎖に存在するァミノ基、 ヒ ドロキシ ' ル基、 チオール基等と結合用化合物の結合官能基とが結合する。 この際、 アミ ノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはスクシンィミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基等が挙げられる。 また、 ヒ ドロキシル基が結 合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げら れる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例 としてはマレイミ ド基等が挙げられる。
一方、 非共有結合により結合する場合、 例えば錯体を形成させて結合させる 場合には、 結合官能基の具体例としてはボロン酸基などが挙げられる。 また、
例えば生体物質間相互作用により結合させる場合には、 アビジン一ピオチン相 互作用などを用いることができ、 その時に用いる結合官能基の具体例としては ビォチン基が挙げられる。 また、 例えば生体物質としてウィルスを結合させる 場合、 結合官能基の具体例としては糖や多糖が挙げられる。 さらに、 例えば生 体物質が疎液領域を有している場合には、 疎液相互作用による物理吸着により 結合させるようにしても良い。
ボ口ン酸基 ピオチン基 また、 結合用化合物が結合官能基を有する場合、 結合用化合物は、 1分子中 に通常 2点以上、 好ましくは 3点以上の結合官能基を有しているものを少なく とも 1種以上含むことが好ましい。 本発明のマトリッタスの構造を形成しやす くするためである。 具体例を挙げると、 1分子中に 2点以上の結合官能基を有 していれば、 濃縮を行なった場合などにマトリックスを容易に形成することが できるようになる。
さらに、 結合用化合物としては、 通常は、 水と混和しうるものを用いること が望ましい。 マトリックス作製時に用いる溶媒は任意であるが、 通常は、 溶媒 としては水を用いる。 この際、 水の存在下で結合用化合物を生体物質と混合し た場合などに結合用化合物は生体物質に結合するが、 そのような場合に生体物 質と結合用化合物とを均一に混合し、 結合反応をスムーズに行なわせるためで ある。 なお、 本明細書においては、 混和の形態としては、 溶解していても良い し分散していても良い。
また、 結合用化合物は、 少なくとも 1種の有機溶媒に混和しうることが好ま しい。 これにより、 結合用化合物の合成時に用いる溶媒の選択の幅を広げるこ とができ、 マトリ ックスの構造を様々に設計することができる。 例えば、 結合
用化合物が有機溶媒に混和できれば、 結合用化合物の合成時に結合官能基を保 護することを目的として合成を有機溶媒中で行なうことができるようになる。
さらに、 結合用化合物が水と有機溶媒との両方に混和できれば、 本発明の生 体物質担持体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合に、 その用いることが できる溶媒の種類を増やすことができるため、 用途を広げることができる。 また、 結合用化合物は無電荷であることが望ましい。 結合用化合物が生体物 質と同じ電荷 (同符号の電荷) を有していると、 静電的反発力により、 結合用 化合物と生体物質との結合が妨げられる虞がある。 一方、 結合用化合物が生体 物質と反対の電荷 (逆符号の電荷) を有していると、 生体物質と結合用化合物 内の電荷を有する部分とが静電的引力により結合してしまい、 結合用化合物が 有している結合官能基に生体物質が効果的に結合することを妨げる虞がある。 結合用化合物と生体物質との静電的引力による結合は、 本発明の生体物質担持 体の使用時に用いる溶液の p Hや塩などの添加物により、 容易に結合が壊れて しまうことが予想され、 好ましくない。 また、 本発明の生体物質担持体を用い て、 選択的生体物質間相互作用を検出しょうとする時、 アナライトである作用 物質が結合用化合物と同じ電荷を有している場合には、 リガンドである生体物 質との特異的な相互作用が妨げられる虞があり、 また、 アナライトと結合用化 合物とが反対の電荷を有していた場合、 アナライトと結合用化合物とが非特異 吸着等の非特異的相互作用を生じることが推測されるためである。
なお、 結合用化合物が無電荷であるとは、 当該結合用化合物が、 少なくとも 構造式上、 非イオン性であれば、 当該結合用化合物は無電荷である。 ただし、 本発明の生体物質複合体の製造過程において、結合官能基の加水分解等により、 結合用化合物が電荷をもったとしても、 本発明の効果を損なわない限り、 この ような結合用化合物は好適に用いることができる。
結合用化合物の例としては、 例えば、 有機化合物、 無機化合物、 有機無機ハ イブリツド材料などが挙げられる。 また、 結合用化合物は、 1種を単独で用い ても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
結合用化合物として用いられる有機化合物は、 低分子化合物でも、 高分子化 合物でもよいが、 好ましくは高分子化合物である。 低分子化合物の具体例とし
ては、 グルタルアルデヒ ド、 ジエポキシブタン、 ジエポキシへキサン、 ジェポ キシオクタン、ビスマレイミ ドへキサン、ビススルホスクシミジルスべレイ ト、 ジスクシミジノレグノレタレイ ド、 ェチレングリコ一ノレビススクシミジノレスクシネ イ ト、 スノレホエチレングリコールビススクシミジノレスクシネイト、 スクシミジ /レ 4一 N—マレイミ ドメチノレシクロへキサン 1一力 ポキシレイ ト、 スクシミ ジル 4一 Ν—マレイミ ドメチルシク口へキサン 1—力ノレボキシレイト、 スルホ スノレホスクシミジノレ 4一 ρ—マレイミ ドフエエノレブチレィ ト、 スクシミジノレ 4 ― 一マレイミ ドフエニノレブチレイ ト、 スノレホ m _マレイミ ドベンゾイノレー N ーヒ ドロキシスノレホスクシミ ドエステノレなどが挙げられる。
一方、 結合用化合物として高分子化合物を用いる場合、 高分子化合物は合成 高分子化合物であっても良く、 天然高分子化合物であっても良い。
結合用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、 上記の条件を満たす合 成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。 ただし、 通常は、 生体物質と結合することのできるモノマーを有していることが望ましい。また、 通常は、 合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、 親水性モノマ 一を有していることが好ましい。 さらに、 好ましくは、 上記の生体物質と結合 することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合 物を用いることが望ましい。 即ち、 合成高分子化合物の合成には、 少なくとも モノマー種として、 生体物質と反応してできるコンジュゲートを形成すること ができ、 且つコンジュゲート間で結合し、 鎖状及び/又は網目状に結合した構 造を構築するための結合官能基を有するモノマーと、 親水性又は両親媒性の官 能基を有するモノマーとを用いて共重合させることが好ましい。 さらに、 合成 高分子化合物の溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的 で疎水性モノマーを共重合してもよい。
合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、 ラジカル重合に おいて用いられるモノマーとしては、 スチレン、 クロルスチレン、 α—メチル スチレン、 ジビュルベンゼン、 ビュルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メ タ) アクリル酸、 ィタコン酸、 マレイン酸、 フタル酸等の重合性不飽和カルボ ン酸;スチレンスルホン酸、 スチレンスルホン酸ナトリゥム等の重合性不飽和
スルホン酸;(メタ) ァクリル酸メチル、 (メタ) アクリル酸ェチル、 (メタ) ァ クリル酸 _ n—ブチル、 (メタ) アクリル酸 _ 2—ヒ ドロキシェチル、 (メタ) アクリル酸ヒ ドロキシプロピル、 (メタ) アクリル酸グリシジル、 N - (メタ) アタリロイロキシスクシンイミ ド、 エチレングリコール一ジー (メタ) アタリ ル酸エステル、 (メタ) アクリル酸トリブロモフエエル、 2 - (メタ) アクリル 酸グリコシロキシェチノレ、 2—メタタリロイロキシェチノレホスホリノレコリン、 等の重合性カルボン酸エステル; (メタ) アクリロニトリル、 (メタ) ァクロレ イン、 (メタ) ァクリルアミ ド、 N , N—ジメチルァクリルアミ ド、 N—ィソプ 口ピル (メタ) アクリルアミド、 N—ビュルホルムアミ ド、 3—アクリルアミ ドフエ-ルポロン酸、 N—ァクリロイルー N' —ピオチュル一 3, 6—ジォキ サオクタン _ 1 , 9ージァミン、 ブタジエン、 ィソプレン、 酢酸ビュル、 ビ- ルビリジン、 N—ビュルピロリ ドン、 N— (メタ)アタリロイルモルファリン、 塩化ビュル、 塩化ビニリデン、 臭化ビュル等の不飽和カルボン酸アミド類、 重 合性不飽和二トリル類、 ハ口ゲン化ビエル類、 共役ジェン類、 ポリエチレング リコールモノ (メタ) アタリレート、 ポリプロピレングリコールモノ (メタ) ァクリレート等のマク口モノマー類、 などが挙げられる。
また、 合成高分子化合物のモノマーとしては、 付加重合で用いられるような モノマーも使用できる。 付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、 ジ フエニルメタンジィソシアナ一ト、 ナフタレンジィソシアナ一ト、 トリレンジ ィソシアナ一ト、 テトラメチルキシレンジィソシアナ一ト、 キシレンジィソシ アナート、 ジシク口へキサンジィソシアナ一ト、 ジシク口へキシルメタンジィ ソシアナート、 へキサメチレンジイソシアナート、 イソホロンジイソシアナ一 ト等の脂肪族又は芳香族イソシアナ一ト類、 ケテン類、 エポキシ基含有化合物 類、 ビニル基含有化合物類などが挙げられる。 また、 上記化合物群と反応させ るモノマーとしては、 活性化水素を有する官能基、 具体例としては水酸基又は アミノ基を有する化合物などが挙げられ、 具体的には、 エチレングリコール、 ジエチレングリコー/レ、プロピレングリコーノレ、 1 , 4ーブタンジォ一ノレ、 1, 6一へキサンジォーノレ、 グリセリン、 トリメチローノレプロパン、 ペンタエリス リ トール、 ソルビトール、 メチレングリコシド、 しょ糖、 ビス (ヒ ドロキシェ
チル) ベンゼンのようなポリオール類;エチレンジァミン、 へキサメチレンジ ァミン、 Ν, Ν' —ジイソプロピルメチレンジァミン、 Ν , Ν' ージー s e c —ブチルー p—フエ二レンジァミン、 1, 3, 5—トリアミノベンゼン等のポ リアミン類;ォキシム類などが挙げられる。
さらに、 合成高分子化合物には、 上記モノマーの他、 架橋剤となり うる多官 能性化合物を共存させても良い。 多官能性化合物としては、 例えば、 N—メチ ロールアクリルアミ ド、 N—エタノールァクリルァミ ド、 N—プロパノールァ ク リノレアミ ド、 N—メチローノレマレイミ ド、 N—ェチローノレマレイミ ド、 N— メチロールマレインァミ ド酸、 N—メチ口一ノレマレインアミ ド酸エステル、 ビ エル芳香族酸の N—アルキロ一ルアミ ド (例えば N—メチロール— p—ビュル ベンズァミ ド等)、 N—(ィソブトキシメチノレ)ァクリルアミ ド等が挙げられる。 さらに、 上述したモノマーのうち、 ジビエルベンゼン、 ジビニルナフタレン、 ジビニノレシクロへキサン、 1, 3—ジプロぺェノレベンゼン、 エチレングリ コー ルジ (メタ) アタリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) アタリ レート、 ブチレンダリコール、 トリメ チロールェタントリ (メタ) アタリレート、 ペンタエリスリ トールテトラ (メ タ) アタリレート等の多官能性モノマー類は、 架橋剤としても使用することが 出来る。
また、 前述の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマーとしては、 スクシンイミド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基、 マレイミ ド基等を有するモノ マーの例として、 N - (メタ) ァクリロイロキシスクシンィミ ド、 (メタ) ァク リル酸グリシジル、 ァクロレイン、 マレイミ ドアタリレート等が挙げられる。 また、 結合官能基としてボロン酸基を有するモノマーの例としては、 3—ァク リルアミ ドフエ二ルポロン酸等が挙げられる。 さらに、 結合官能基としてビォ チン基を有するモノマーの例としては、 N—アタリロイル一N' —ビォチェル 一 3, 6—ジォキサオクタン _ 1, 9ージァミン等が挙げられる。 また、 結合 官能基として糖や多糖を有するモノマーの例としては、 2— (メタ) アクリル 酸グリコシロキシェチル等が挙げられる。
さらに、親水性モノマーの具体例としては、 (メタ)ァクリル酸、ィタコン酸、
(メタ) ァクリル酸 2—ヒ ドロキシェチル、 (メタ) ァクリル酸 2—ヒ ドロキシ プロピル、 マレイン酸、 スルホン酸、 スルホン酸ソーダ、 (メタ) アクリルアミ ド、 N , N—ジメチル (メタ) アクリルアミ ド、 N—イソプロピルアクリルァ ミ ド、 N—ビュルホルムアミ ド、 (メタ) アタリロニトリル、 N— (メタ) ァク リロイルモルフアリン、 N—ビュルピロリ ドン、 N—ビュルァセトアミ ド、 N —ビュル一 N—ァセトアミ ド、 ポリエチレングリコールモノー (メタ) アタリ レート、 (メタ) アクリル酸グリシジル、 2—メタクリロォキシェチルホスホリ ルコリン等が挙げられる。
また、結合用化合物は、前述のとおり無電荷のものが好ましい。 したがって、 結合用化合物として用いる合成高分子化合物を無電荷にする場合、 この無電荷 の合成高分子化合物に使用するモノマーは無電荷であれば特に限定されないが、 具体例を挙げると、 (メタ) アクリル酸 2—ヒ ドロキシェチル、 (メタ) アタリ ノレ酸 2—ヒ ドロキシプロピル、 メタ) アクリルアミ ド、 N , N—ジメチル (メ タ) アクリルアミ ド、 N—イソプロピルアクリルアミド、 N—ビュルホルムァ ミ ド、 (メタ) アタリ口-トリル、 N— (メタ) ァクリロイルモルファリン、 N —ビュルピロリ ドン、 N—ビュルァセトアミ ド、 N—ビニルー N—ァセトアミ ド、 ポリエチレングリコールモノ一 (メタ) ァクリレート、 (メタ) ァクリル酸 グリシジル等が挙げられる。
また、 モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、 通 常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、 ここで用 いるラジカル系重合開始剤の例としては、 2, 2 ' —ァゾビスイソプチ口エト リノレ、 2 , 2 ' ーァゾビス一 (2—メチルプロパン二トリル)、 2, 2 ' ーァゾ ビス一 (2, 4 _ジメチルペンタン二トリル)、 2 , 2 ' ーァゾビス一 (2—メ チルブタン二トリノレ)、 1 , 1 ' ーァゾビス一(シクロへキサンカルボ二トリル)、 2 , 2 ' ーァゾビス一(2, 4一ジメチルー 4ーメ トキシバレロ二トリル:)、 2,
2 ' —ァゾビス一 (2, 4ージメチルバレロニトリル)、 2 , 2 ' —ァゾビス一 ( 2—アミジノプロパン) ヒ ドロクロリ ド等のァゾ (ァゾビス二トリル) タイ プの開始剤、 過酸化べンゾィル、 タメンヒドロペルォキシド、 過酸化水素、 過 酸化ァセチル、 過酸化ラウロイル、 過硫酸塩 (例えば過硫酸アンモニゥム)、過
酸エステル (例えば t—ブチルペルオタテート、 α—クミルペルォキシピバレ 一ト及び t—プチルベルォクテ一ト) 等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げ られる。
さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。 レドックス系開始剤としては、 例えば、 ァスコルビン酸/硫酸鉄 (II) /ペル ォキシ二硫酸ナトリゥム、 第三プチルヒ ドロペルォキシド /二亜硫酸ナトリウ ム、 第三ブチルヒドロペルォキシド N aヒドロキシメタンスルフィン酸が挙 げられる。 なお、 個々の成分、 例えば還元成分は、 混合物、 例えばヒドロキシ メタンスルフィン酸のナトリゥム塩と二亜硫酸ナトリゥムとの混合物であって もよい。
また、 合成高分子化合物は、 開環重合等で合成される高分子を使用してもよ い。 その具体例としては、 ポリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、 高分子化合物は加水分解等により合成される高分子を使用しても良 い。 その具体例としては、 ポリ酢酸ビュルを加水分解等することにより合成さ れるポリビエルアルコールなどが挙げられる。
また、 上述した合成高分子化合物は、 化学修飾により、 前述の生体物質と結 合する官能基を修飾することにより合成してもよい。
さらに、 この他、 結合用化合物として、 市販の合成高分子化合物を用いるこ とができる。 その具体例を挙げると、 日本油脂社製の SUNBR I Tシリーズ DE— 030AS、 DE— 030 CS、 DE_030GS、 PTE— 1 00
GS、 PTE— 200GS、 HGEO— 100GS、 HGEO—200GSな どが挙げられる。
一方、 結合用化合物として天然高分子化合物を用いる場合、 その具体例とし ては、 デキストラン、 カルボキシメチル一デキストラン、 でんぷん、 セルロー ス等の多糖類、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク質、 DNA、 RNA、 核酸などが挙げられる。 これらの天然化合物は、 そのまま使用しても 良いし、 また、 化学修飾してから使用しても良い。
なお、 合成高分子化合物及び天然高分子化合物などの高分子化合物を結合用 化合物として用いる場合、 その高分子化合物の形態は任意である。 例えば、 水
溶液中で溶解していても良いし、 ミセルゃエマルシヨンのような会合体や高分 子ラテックスのような微粒子状のものでもかまわない。
また、 結合用化合物として用いられる無機化合物としては、 例えば、 金コロ イド等の金属粒子、 シリカ等の無機微粒子などが挙げられる。 さらに、 これら の無機化合物を化学修飾することによって、 生体物質と結合する官能基を有す る結合用化合物としても良い。
さらに、 結合用化合物として用いられる有機無機ハイプリッドとしては、 例 えば、 コロイダルシリカに高分子を被覆したもの、 金属コロイドを高分子で被 覆したもの (例えば、 金、 銀、 白金等の粒子を保護コロイドで被覆したもの)、 クレイに高分子を吸着させたものなどが挙げられる。 なお、 これらの有機無機 ハイプリッドは公知の方法で合成することが可能である (ポリマー系ナノコン ポジット, 工業調査会, 中條 澄 著などを参照)。
さらに、 これらの有機無機ハイプリッドに生体物質を結合官能基を修飾する ことによって、 結合用化合物として用いることもできる。
また、 結合用化合物の分子量や構造等は特に制限は無く任意であり、 例えば 低分子量の化合物を用いても良いが、 その場合、 固定化しようとする一つの生 体物質内で架橋してしまい、 マトリックス構造を形成できなくなる虞がある。 これを防止する観点からは、 結合用化合物の分子量としては、 通常 1 0 0 0以 上、 好ましくは 1 0 0 0 0以上、 また、 通常 1 0 0万以下、 好ましくは 5 0万 以下が望ましい。 なお、 結合用化合物として合成又は天然の高分子化合物を用 いる場合、 重量平均分子量が上記範囲に収まることが好ましい。 この範囲を下 回ると効果的にマトリッタスが形成でき¾くなる虞があるためである。
さらに、 結合用化合物が有する結合官能基の量は、 特に限定されず、 また、 結合用化合物の種類によって一概には規定できないが、 例えば、 結合用化合物 として高分子を用いた場合、 結合用化合物に対して、 モル%で、 通常 0 . 1 % 以上、好ましくは 0 . 5 °/0以上、より好ましくは 1 %以上、更に好ましくは 5 % 以上、 また、 通常 9 0 %以下、 好ましくは 8 0 %以下、 より好ましくは 7 0 % 以下である。 この範囲を下回ると結合用化合物が生体物質と効率よく結合でき ない虞があり、. 上回ると溶媒に混和できなくなる虞があるためである。
[II一 7— 4 . 生体物質担持体の構造]
本発明の生体物質担持体は、 上記の通り、 固相担体と、 この固相担体表面に 形成された本発明のマトリックスとを有する。 また、 本発明の生体物質担持体 が有するマトリックスは、 生体物質と結合用化合物とが結合したコンジユゲー トが多数結合して構成されたものであり、 通常は、 生体物質と結合用化合物と が鎖状及び/又は網目状に結合したゲル状構造体である(図 3 ( a )〜図 3 ( c ) , 図 4参照)。
さらに、 本発明のマトリックスは、 上記の生体物質及び結合用化合物からな る主鎖を有する構造体である。 なお、 ここで本発明のマトリックスの主鎖はマ トリックスの骨格を構成するもので、 具体的には生体物質と結合用化合物とが 互いに結合してなるものであり、 詳しくは、 生体物質に対して結合用化合物が 結合官能基によつて結合し、 その構造の繰り返しによつて鎖状及び/又は網目 状の構造を形成されたものである。
よって、 本発明のマトリックスは、 通常、 下記式 (A) で表わされる部分構 造を 2以上有する。 '
R 1 - R 2 式 (A)
{上記式 (A) において、 R 1は生体物質を表わし、 R 2は固相担体に直接結 合していない結合用化合物を表わし、各 R 1 , R 2はそれぞれ同じであっても異 なっていても良い。 }
即ち、 本発明のマトリックスは、 上記式 (A) のように生体物質と結合用化 合物とが結合した部分構造が、 直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体であ る。 具体的には、 上記式 (A) の R 1はそれぞれ独立に他の 1又は 2以上の R 2 に結合し、 R 2はそれぞれ独立に他の 1又は 2以上の R 1に結合している。 ただ し、 本発明のマトリックスは、 例えば生体物質 R 1同士や結合用化合物 R 2同士 が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。
したがって、 本発明のマトリックスは、 結合用化合物同士の間には生体物質 が存在し、 また、 生体物質同士の間には結合用化合物が存在する橋架け構造を 少なくとも一部に有しており、 生体物質及び化合物の両方によって、 マトリツ タスの主鎖が構成されている。 よって、 本発明のマトリックスは、 その作製時
に系内に生体物質及び結合用化合物の両方が存在する際に形成される。
このように、 本発明のマトリックスは、 生体物質及び結合用化合物の両方に よって形成されたマトリックス骨格を有しているため、 生体物質の比率を高め ることが可能であり、 したがって、 本発明の生体物質担持体では、 従来よりも 多量の生体物質を固定化することができる。 なお、 従来技術による高分子膜で は、 予め固相担体上に形成された高分子鎖によって主鎖が形成されていて、 そ の主鎖に対して生体物質が枝状 (グラフト状) に結合した構造となっている。 したがって、 生体物質の固定化量は所定の上限値で制限され、 多量の生体物質 の固定化を行なうことはできなかった。
マトリッタスが生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を有していることは、 例えば、 以下の方法により確認することができる。
本発明のマトリックスは、 上述したような生体物質と結合用化合物とからな る主鎖を有しているため、 その構成要素である生体物質の結合を分解すること により構造が崩壌する。 これを利用し、 マトリ ックスの生体物質のみを分解す るようにすれば、 生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を確認することがで きる。 即ち、 結合用化合物の少なくとも一部は生体物質を介して固相担体に固 定化されているため、 結合用化合物を分解しないようにしながら生体物質を分 解した場合、 本発明のマトリックスでは、 結合用化合物のうち、 固相担体に対 して生体物質を介して固定化されていた部分は固相担体から脱離する。
したがって、 具体的には、 結合用化合物が分解されず生体物質のみが分解を 受ける酵素やその他の薬品により生体物質を分解し、 この処理により固相担体 から脱離した物質を調べること、 又は、 固相担体表面に残留している物質を調 ベることにより、 生体物質構成要素以外のマトリックスを構成する化合物を特 定できる。 マトリッタスが生体物質と結合用化合物とからなる主鎖を有してい れば、 脱離した物質のなかに結合用化合物が検出される。 また、 固相担体表面 には、 結合用化合物は検出されないか、 検出されたとしてもその量は減少して いる。
—方、 マトリックスが従来の方法による高分子膜を利用したものであれば、 主鎖が高分子鎖であるため、生体物質が分解されても高分子膜(即ち高分子鎖)
は全て固相担体に残り、 脱離した物質のなかには生体物質構成要素は検出され るが、 結合用化合物に相当する高分子鎖は検出されないことになる。 この違い により、生体物質と結合用化合物とからなる主鎖の有無を確認することができ、 本発明のマトリックスであるか否かを特定することができる。
上記の方法で用いる、 生体物質を分解するための酵素や薬品は、 用いた生体 物質や結合用化合物の種類に応じて任意のものを適当に用いればよい。 その具 体例を挙げると、 生体物質が核酸である場合、 例えば、 リボヌクレア一ゼ、 デ ォキシリボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素などが挙げられる。
また、 生体物質がタンパク質である場合、 例えば、 微生物プロテアーゼ、 ト リプシン、 キモトリブシン、 パパイン、 レンネッ ト、 V 8プロテアーゼ等のタ ンパク質分解酵素、臭化シアン、 2—二トロ— 5—チオシアン安息香酸、塩酸、 硫酸、 水酸化ナトリゥム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げら れる。
さらに、 生体物質が脂質である場合、 例えば、 リパーゼ、 ホスホリパーゼ A 2等の脂質分解酵素などが挙げられる。
また、 生体物質が糖である場合、 —アミラーゼ、 ]3—アミラーゼ、 ダルコ アミラーゼ、 プルラナーゼ、 セルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。 なお、生体物質を分解するための酵素や薬品は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、 例示物の中でも、 生体物質だけでなく結合用化合物も分解する虞が あるものは、 上記の主鎖の確認が正確に行なえなくなる虞があるため、 使用は ' 避けるべきである。
また、 生体物質の分解、 及び、 分解後に固相担体上に残留している物質を確 認する場合、 その具体的な確認方法は任意であるが、 例えば、 表面プラズモン 共鳴 (S P R )、 水晶振動子マイクロバランス (Q C M)、 電子顕微鏡、 エリプ ソメ トリーなどによる測定によって確認することができる。
さらに、 生体物質分解後に固相担体から脱離した物質を分析する場合、 その 具体的な分析方法は任意であるが、 例えば、 液体ク口マトグラフィ一、 ガスク 口マトグラフィー、 質量分析 (M S )、 赤外分光法、 核磁気共鳴法 (NMR )、
高速液体クロマトグラフィー (H P L C )、 ゲル電気泳動、 キヤビラリ一電気泳 動、 吸光度測定、 蛍光測定などが挙げられる。 また、 分析に際しては、 各測定 手法を単独で用いても良く、 2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。 マトリッタスの膜厚は任意であるが、マトリッタスが乾燥した状態において、 S E M又は T E Mで測定した膜厚が、 通常 5 n m以上、 好ましくは 1 0 n m以 上、 より好ましくは 2 0 n m以上である。 膜厚が小さすぎると、 マトリ ックス が剥がれやすくなる虞があると共に、 マトリックスの膜厚を均一にすることが 難しく、 さらに、 さらに再現性良く生体物質の固定化を行なうことが困難にな る場合があるためである。 なお、 上限に特に制限は無いが、 通常 1 0 c m以下 である。
さらに、 マトリ ックス中において、 含有される生体物質の比率に制限は無い 力 通常は、 より多量の生体物質が含有されていることが望ましい。 具体的に は、 「 (生体物質の重量) / (マトリ ックスの重量)」 で表される、 マトリック スの重量に対する生体物質の重量の比率は、 通常 0 . 1以上、 好ましくは 0 . 3以上、 より好ましくは 0 . 5以上、 さらに好ましくは 0 . 7以上、 特に好ま しくは 0 . 9以上である。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 0 . 9 9 9以 下である。 生体物質の比率がこの範囲を下回る場合、 構成されるマトリ ックス 中の結合用化合物を十分に生体物質で覆うことができなくなり、 結合用化合物 への非特異吸着を起こす虞がある。
なお、上記の生体物質の比率を測定する方法は特に限定されないが、例えば、 マトリッタスに含まれる生体物質を酵素や薬品等を用いて分解し、 生体物質及 び結合用化合物由来の物質をそれぞれ各種の方法で定量すればよい。 生体物質 の分解及び測定方法は、 上述したのと同様の方法を用いることができる。
また、 通常は、 固定化した生体物質が活性を失っていないことが望ましレ、。 具体的には、 マトリックスに、 生体物質に対して特異的に相互作用することが できる作用物質を含む溶液を接触させたときに、 マトリックス中の生体物質の 数に対する、生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比(即ち、 「反応数比 率」 という) 力 通常 0 . 5以上、好ましくは 0 . 6以上、 より好ましくは 0 . 7以上であることが望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 1 . 0以
下である。 上述したように、 本発明のマトリ ックスを用いれば固相担体に対し て大きい濃度 (固相担体の単位表面当たりの量; s u r f a c e c o n c e n t r a t i o n) で生体物質を固定化することができるが、 反応数比率を前 記範囲のように高くすることにより、 固定化した生体物質を有効に用いること ができる。 なお、 この反応数比率は、 生体物質及び作用物質がそれぞれ生体分 子及び作用分子等の分子である場合、 それぞれの分子数の比として求めること ができる。 また、 反応数比率は、 例えば S PR (表面プラズモン共鳴) 法ある いは QCM (水晶発振子マイクロバランス) 法などにより測定することができ る。
[II- 7 -5. 生体物質担持体の製造方法]
本発明のマトリックスを有する生体物質担持体の製造方法は、 [II一 3.生体 物質担持体の製造方法] で説明した製造方法と実質的に同様である。 即ち、 本 発明の生体物質構造体の製造方法に制限は無く、 本発明の生体物質構造体を得 ることができれば任意の方法により製造することができる。 ただし、 通常は、 本発明の生体物質担持体は、 溶媒の存在下、 生体物質と結合用化合物とを共存 させた混合物を固相担体に供給し、 上記固相担体表面に、 上記生体物質及び上 記化合物からなる主鎖を有するマトリックスを形成させる工程を経て製造され る。
(1. 生体物質)
生体物質担持体の製造に用いる生体物質は、 上記と同様である。 ただし、 生 体物質担持体の製造時に生体物質を用意する際、 通常は何らかの溶媒に生体物 質を溶解又は分散させた溶液や分散液として生体物質を用意するが、 この場合 に生体物質を希釈させる溶媒や分散媒は、 生体物質の活性や構造の安定性等を 考慮して調整することが好ましい。
(2. 結合用化合物)
また、 生体物質担持体の製造に用いる結合用化合物も、 上記と同様である。 (3. 溶媒)
上記の通り、 通常は、 本発明の生体物質担持体を製造する際には、 溶媒の存 在下、 上述した生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供
給する。 この際、 固相担体に供給される混合物は、 溶媒中に、 少なくとも生体 物質と結合用化合物とを含むものである。
溶媒中において、 生体物質及び結合用化合物は溶媒に混和できればその混和 状態は任意であり、 溶解していても分散していてもよいが、 生体物質と結合用 化合物とが安定して結合するためには、 生体物質及び結合用化合物は溶解して いることが好ましい。
溶媒は、 生体物質と結合用化合物とが結合する反応媒となるものであり、 前 記生体物質と結合用化合物とが混和しうるものであれば他に制限はなく、 任意 の液体を用いることができる。 生体物質及び結合用化合物の活性や構造の安定 性などを考慮して選択することが好ましいが、通常は、溶媒として水を用いる。 ここで、 溶媒として水を使用できること、 即ち、 水中で上述した生体物質と結 合用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給し、 生体物質担持体を製造 できることは、 本発明の優れた利点の一つである。 即ち、 従来は有機溶媒中で 生体物質を固定化する技術はあった (特許文献 5等参照) 1 水を溶媒として 固定化を行なうことはできなかった。 しかし、 本発明により水の存在下で固定 化を行なうことが出来るようになれば、 生体物質の活性を保つことが可能とな るほか、 生体物質及ぴ結合用化合物それぞれの選択の幅が広がり、 適用範囲の 拡大が期待できる。
また、 溶媒としては、 水以外の溶媒を用いても良く、 例えば、 有機溶媒を用 いることができる。 さらに、 有機溶媒の中でも、 両親媒性溶媒、 即ち、 水に混 和しうる有機溶媒が好ましい。
水のほかの溶媒の具体例としては、 例えば、 メタノール、 エタノール、 1 一 ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、 T H F (テトラヒドロフラン)、 D M F (N , N—ジメチルホルムアミ ド)、 NM P (N—メチルピロリ ドン)、 D M S O (ジメチルスルホォキシド)、 ジォキサン、 ァセトニトリル、 ピリジン、 アセトン、 グリセリンなどが挙げられる。
また、 これら溶媒に塩を加えても良い。 塩の種類は任意であるが、 具体例と しては、 N a C 1、 K C 1、 リン酸ナトリゥム、 酢酸ナトリゥム、 塩化カルシ ゥム、 炭酸水素ナトリウム、 炭酸アンモニゥムなどが挙げられる。 また、 用い
る塩の量に制限は無く、 用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。 さらに、 溶媒に水を用いる場合、 水としては、 純水のほか、 生体物質や結合 用化合物以外の媒質を溶解した水溶液を用いることもできる。 その例としては 各種緩衝液を挙げることができ、 その具体例としては、 炭酸バッファー、 リン 酸バッファー、 酢酸バッファー、 H E P E Sバッファーなどが挙げられる。 なお、 溶媒は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及 ぴ比率で併用しても良い。
( 4 . 混合物)
混合物は、 溶媒の存在下、 生体物質、 及び、 上記生体物質と結合可能な官能 基を有する化合物を共存させたものである。 具体的には、 上述した溶媒中に、 生体物質と、 結合用化合物とが共存している混合物である。 また、 混合物中に おいて生体物質及び結合用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。 前記の混合物中において、 生体物質と結合用化合物との比率は任意である。 ただし、 「生体物質の重量 Z (結合用化合物の重量 +生体物質の重量) jの値は、 通常 0 . 1以上、 好ましくは 0 . 3以上、 より好まじくは 0 . 5以上、 さらに 好ましくは 0 . 7以上、 特に好ましくは 0 . 9以上が望ましい。 また、 上限に 特に制服は無いが、 通常 0 . 9 9 9以下である。 生体物質の混合比率が高い場 合、 図 3 ( a ) に示したような結合用化合物が結合点となった主鎖を有するマ トリックスが形成され、 逆に、 結合用化合物の混合比率が高い場合には、 図 4 に示すように、 生体物質が結合点となった主鎖を有するマトリッタスが形成さ れる。 この際、 生体物質の比率を上記範囲のように大きくすることにより、 結 '合用化合物への非特異吸着を抑制することが可能となる。 なお、 図 2は、 本発 明のマトリッタスの構造を説明するため、 本発明の生体物質担持体の一例の表 面近傍を拡大して示す模式図である。 また、 図 4において、 円形部分が生体物 質を表わし、 線状部分が結合用化合物を表わす。 ただし、 図 4は生体物質と結 合用化合物とからなる主鎖の構成を説明するべく、 粒子状塊を構成しているか 否かに係わらず主鎖の構造を 2次元的に描画したものである。
また、 溶媒中における生体物質及び結合用化合物の割合 (濃度) も任意であ るが、 通常 0 . 1 g / L以上、 好ましくは 1 g / L以上、 より好ましくは 1 0
g / L以上である。 この範囲を下回るとコンジユゲート及びマトリッタスが生 成しにくくなる虞があるためである。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 9 5 0 g / L以下である。
さらに、 この混合物を調製する方法に制限は無く、 任意である。 例えば、 生 体物質の溶液 (水溶液など) 又は分散液と結合用化合物の溶液 (水溶液など) 又は分散液とを混合したものでもよく、 生体物質の溶液又は分散液と固体状の 結合用化合物とを混合したものでも良く、 固体状の生体物質と結合用化合物の 溶液又は分散液とを混合したものでも良く、 固体状の生体物質及び結合用化合 物と溶媒とを混合したものでもよい。
なお、 上記の混合物には、 生体物質、 結合用化合物及び溶媒の他、 任意の添 加剤を共存させても良い。 添加剤の例としては、 例えば、 塩、 酸、 塩基、 バッ ファー、 グリセリン等の保湿剤、 生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属ィォ ン、 消泡剤、 変性剤などを挙げることができる。
( 5 . 供給)
本発明の生体物質担持体を製造する際には、 上述した混合物を、 固相担体に 供給する。 即ち、 上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。 その具 体的な操作は任意であるが、 例えば、 あらかじめ混合物を用意してその混合物 を固相担体に接触させてもよいし、 混合物の各成分を別々に用意し、 固相担体 上でそれらを混合させて混合物を調製し、 固相担体に混合物を接触させるよう にしてもよい。 具体的には、 例えば、 生体物質を含む溶液 (水溶液等) と化合 物を含む溶液 (水溶液等) とを固相担体上に各々供給した後に固相担体上で両 溶液を混合する等により行なうことができる。 また、 予め混合物を用意してお く場合、 供給前の混合物中で後述するコンジユゲート及び z又はマトリックス を作製しておき、 その後、 混合物を固相担体に供給するようにしても良い。
( 6 . マトリックスの形成)
次いで、 固相担体表面に、 生体物質及び化合物からなる主鎖を有するマトリ ックスを形成させる。 混合物を調製すると、 混合物中において生体物質と結合 用化合物とが結合し、 コンジユゲー卜が生成される。 このコンジユゲートは、 生体物質と結合用化合物とが結合したもので、 生体物質と結合用化合物とを溶
媒中で混合し、 互いの分子を接触させるだけで作製することができる。 したが つて、 固相担体に供給された混合物内には、 通常、 コンジュゲートが存在して レヽる。
コンジュゲートは、 コンジュゲート同士が集合し、 互いが有する生体物質及 び結合用化合物が結合することにより、 鎖状及び Z又は網目状に結合した構造 を有するマトリックスを構成する。 したがって、 固相担体に供給された混合物 を固相担体に接触させることにより、 例えば混合物中のコンジュゲートが固相 担体表面に集積されたり、 混合物中でコンジュゲート同士が結合して生成した マトリックスが固相担体に結合したり、 混合物中の生体物質及び結合用化合物 が固相担体表面に結合することによりコンジユゲート及び/又はマトリックス が生成したりすることで、 固相担体表面にマトリックスを形成することができ る。
ところで、 混合物中の溶媒の量が多い場合などにおいては、 混合物中にコン ジュゲートやマトリックスが生成しにくい、 又は、 生成しない場合がある。 こ の場合には、 混合物を漉縮することで、 コンジュゲートを効率的に形成させる ことができる。 もちろん、 上記のように固相担体に供給された混合物がコンジ ュゲ ト及び/又はマトリックスを含んでいる場合においても、 濃縮によりコ ンジュゲート及び/又はマトリックスを更に生成させるため、 濃縮を行なって あよい。
ただし、 均一なマトリックスを形成するためには、 混合物調製の初期の段階 においては、 溶媒中で生体物質と結合用化合物とを均一に混合することが好ま しい。 したがって、 一旦比較的大量の溶媒中に生体物質及び結合用化合物を共 存させ、 それを濃縮することによりコンジュゲートを生成させることが好まし い。
また、 マトリックスの形成後、 溶媒を乾燥除去してもよい。 なお、 通常は、 混合物を乾燥させる過程において混合物は濃縮されるので、 濃縮と乾燥とは一 連の操作として行なうことができる。
混合物を乾燥、 濃縮する方法は任意であるが、 例えば、 限外濾過、 減圧乾燥 などが挙げられる。 また、 このほか、 単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を
行な,うようにしてもかまわない。
混合物を乾燥、 濃縮する際の温度条件は任意であるが、 生体物質の変性等を 避ける観点から、 通常 2 5 °C以下、 好ましくは 1 0 °C以下で行なうことが望ま しい。
また、 混合物を乾燥、 濃縮する際の圧力条件も任意であるが、 通常常圧以下 が望ましい。
さらに、 マトリックスを固相担体に固定するには、 混合物の供給後、 所定の 時間だけ固相担体を静置することが望ましい。 静置の時間は任意であるが、 通 常 2 4時間以下、 好ましくは 1 2時間以下が望ましい。
( 7 . その他の工程)
以上のように、 上記の方法は、 溶媒中に生体物質と結合用化合物とが共存し た混合物を固相担体に接触させるだけで、 固相担体表面にマトリックスを形成 させることができ、 これにより、 本発明の生体物質担持体を製造することがで きる、 即ち、 固相担体上に生体物質を固定化することができるという、 非常に 簡便な方法である。
ところで、 本発明の生体物質担持体を製造する際には、 上記の工程のほかの 工程を行なってもよい。
例えば、 マトリックス中の生体物質に、 さらに異なる生体物質や後述する特 定物質を結合させるようにしても良い。 これを利用すれば、 生体物質担持体の 製造後、 マトリックス中の生体物質に特定的に結合するように修飾した別の生 体物質を後から結合させ、 結果として、 固相担体に上記の別の生体物質を高密 度に固定化することができる。 具体例を挙げると、 生体物質としてアビジンを 用いて、 このアビジンと結合用化合物とを結合させてマトリックスを形成し、 生体物質担持体を製造する。 その後、 ピオチンで修飾した別の生体物質を用い て、 アビジン一ピオチン相互作用により上記の別の生体物質を固定化すること ができる。 また、 同様にヒスチジンタグもしくはダルタチオン一 S—トランス フェラーゼを介して、 生体物質を固定することも可能である。
[II - 7 - 6 . 効果]
本発明のマトリックスを有する生体物質担持体を有する生体物質担持体を用
いれば、 生体物質を従来よりも多量に固定化することができる。 例えば特許文 献 4〜 6のような従来技術では、 固相担体表面に形成された高分子膜 (ポリマ 一膜) に生体物質を結合させていた。 しかし、 この場合、 ポリマー鎖で形成さ れた主鎖に対して、 生体物質が高分子鎖の先端に結合したり高分子鎖にグラフ ト状に結合したりすることで、 生体物質を固相担体に結合させていたため、 主 鎖としてポリマー鎖を形成させる必要があり、 固定化する生体物質に対して一 定以上のポリマーを使用しなくてはならず、 生体物質の固定化量に限界があつ た。 '
これに対し、 本発明においては、 生体物質と高分子との両方によって形成さ れたマトリックス骨格(上記の主鎖に相当)を有するマトリックスを形成させ、 このマトリックスを利用して固相担体に生体物質を固定化したため、 マトリツ タス中における生体物質の比率を高めることができる (即ち、 結合用化合物の 比率を小さくすることができる)。したがって、生体物質を固定化するに際して、 従来のような限界は無く、 生体物質を従来よりも多く、 即ち、 固相担体表面に 対して高密度に固定化することが可能である。
また、 本発明の生体物質担持体は、 簡単な方法で製造できることも利点のひ とつである。 従来の方法では、 生体物質を高密度に固定化するためには多くの 手間を要していた。 具体的には、 従来は、 固相担体上にあらかじめ高分子膜を 形成し、 その高分子膜に生体物質を固定化して固相担体上にリガンドを含んだ マトリ ックスを構築していた。 しかし、 これらの方法では、 固相上に高分子膜 を作製する際に、 高分子の分子量や固相担体への導入密度を適切にコントロー ' ルする必要があり、 操作が非常に煩雑であり再現性良く固定化を行なうことが 困難であった。 特に、 特許文献 6の方法では、 固相担体表面からブラシ状に高 分子鎖を構築することが技術的に難しく、 大量生産には不向きであった。
これに対し、 本発明の生体物質担持体は、 溶媒中に生体物質と結合用化合物 とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、 固相担体状にマトリック スを形成させること、 即ち、 生体物質を固定化することができる、 非常に簡単 に製造可能なものである。 また、 特許文献 5記載の技術のように、 生体物質担 持体の製造に用いる溶媒を有機溶媒に限定され、 それにより使用できる生体物
質を制限されることがないため、 固定化する生体物質の選択範囲を広げること が可能となる。
さらに、 本発明の生体物質担持体に形成されたマトリックスでは、 生体物質 を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定することができる。 したがつ て、 生体物質と、 それと特異的に相互作用する作用物質との相互作用等に最適 な反応場を構築することができる。 これにより、 例えば本発明の生体物質担持 体を上記の相互作用を利用したセンサに用いた場合、 そのセンサの検出感度を 高めることができる。
上記の最適な反応場を構築することができる理由は、 本発明の発明者らか推 察するところ、 以下のとおりである。 即ち、 従来の高分子膜で表面処理した固 相担体に後から生体物質を固定化する方法では、 膜の表面に生体物質が偏って しまい、高分子膜中に作用物質が進入できる空隙がなくなってしまう。さらに、 主鎖が親水性ポリマーのみで構築される従来の技術では、 親水性ポリマー鎖が 排除体積効果及びポリマー鎖の運動により、 生体物質への作用物質の接近を妨 げることが推測される (生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法一B I A C O R Eを中心に, 編集 永田和宏 '半田宏, 発行所 シュプリンガー . フエ アラーク東京株式会社, 第 2 5 8頁、 医療用高分子材料の開発と応用, シーェ ムシ一, 第 1 9頁)。 しかしながら、本発明の生体物質担持体に形成されたマト リックスでは、 生体物質を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定する ことができ、 さらに、 本発明の技術を用いることにより、 マトリックスの構造 は高分子膜中で作用物質が充分反応できる空隙が形成されていると推察され、 これにより、 最適な反応場を構築できるようになっていると考えられる。 また、 本発明の生体物質担持体に形成されたマトリックスは、 膜厚を任意に 制御することができる。 従来技術では、 通常は、 マトリックスの膜厚をサブミ クロンレベルから数ミクロンレベルまで、 任意にコントロールすることが難し かった。 しかし、 本発明によればマトリックスの膜厚を上記のような精密なレ ベルで制御することが可能であり、 マトリックス構造の設計の自由度を高める ことができる。
例えば、 S P Rによる相互作用観察を行なう場合には、 観察対象を固定する
ために用いる膜の膜厚は 2 0 0 n m〜3 0 0 n m程度が最適であると考えられ る。 また、 例えば、 医療用器具、 再生医療担体の表面処理を行なう場合、 充分 な強度及ぴ被覆を実現させるためには、 その表面処理に用いる膜にはミクロォ ーダ一の膜厚が要求される。 さらに、 例えば D D S (ドラッグデリバリーシス テム) のための薬剤の表面処理を行なう場合には、 ドラッグリリースの制御の ためには、その表面処理に用いる膜を任意に膜厚を制御することが要求される。 このように、 生体物質の固定化に何らかの膜を利用する場合には、 その膜厚制 御が重要な点のひとつであつたが、 従来は膜厚制御が困難であった。 しかし、 本発明によれば、 その用途に応じた膜厚を、 混合物の濃度、 量、 反応条件 (温 度や時間等) などを調製することにより、 任意に制御することができる。
さらに、 本発明の生体物質担持体では、 生体物質と作用物質とを相互作用さ せるべく本発明の—生体物質担持体を使用した場合に、 生体物質以外のマトリツ タス構成要素に起因する非特異的相互作用を抑制することができる。 マトリツ タス中における生体物質の比率を高め、 非特異的相互作用の要因となる生体物 質以外の物質の比率を抑制することができるからである。
また、 特に、 結合用化合物として無電荷のものを用いた場合には、 電荷によ り生じる非特異的相互作用をより一層抑制することも可能となる。 即ち、 例え ば特許文献 4記載の方法においては、 高分子膜が電荷を有しているために、 用 いる緩衝溶液の p Hやイオン強度が生体物質の反応に大きく影響し、 さらに、 電荷を有するタンパク質は静電気的相互作用による非特異吸着を避けられなか つた (ナノテクノロジー基礎シリーズ バイオナノテクノロジー 堀池靖浩 ' 片岡一則 (共編) 第 1 8 6頁を参照)。 しカゝし、結合用化合物として無電荷のも のを用いれば、 そのようなことはなく、 特定の相互作用を選択的に生じさせる ことが可能となる。
[II— 7— 7 . 生体物質固定化キット]
上述した本発明のマトリックスを有する生体物質担持体を製造するため、 生 体物質を固相担体に固定化するために用いるもの、 即ち、 上述した結合用化合 物や、 生体物質及び結合用化合物を混和させうる溶媒を、 キット化した生体物 質固定化キットを用いても良い。 即ち、 生体物質担持体を製造するため、 結合
用化合物と、 生体物質及び結合用化合物を混和させうる溶媒とを備える生体物 質固定化キットを用意するようにしてもよい。 生体物質固定化キットを用いれ ば、 生体物質担持体を簡単に製造できる、 即ち、 固相担体上に上記マトリック スを簡単に作製できるため、 生体物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化す ることが可能となる。
生体物質固定化キットに備えられる結合用化合物は、 上述したものと同様で ある。 また、 生体物質固定化キットにおいて、 結合用化合物はどのような状態 で備えられていても良く、 例えば、 任意の溶媒に溶解した溶液、 任意の分散媒 に分散した分散液、 粉末状や塊状の固体など、 その存在状態は任意である。 また、 生体物質固定化キットに備えられる溶媒も、 生体物質担持体の製造に 用いる溶媒として上述した溶媒と同様である。 さらに、 生体物質固定化キット において、 この溶媒は、 上記結合用化合物と別に備えられていても良く、 結合 用化合物の溶媒や分散媒等として結合用化合物と一体に備えられていても良い。 さらに、 生体物質固定化キットには、 必要に応じて他の要素が備えられてい ても良い。
例えば、マトリッタスの製造を促進する試薬などをさらに備えていても良い。 具体例としては、 結合用化合物としてポリアクリル酸を用いる場合には、 ポリ ァクリル酸のカルボ二ル基を活性させるために 1ーェチル一 3— (3一ジメチ ルァミノプロピル) 一カルポジイミ ド塩酸塩 (略称: E D C ) を試薬として備 えるようにしてもよい。
[II— 6— 8 . 用途]
本発明のマトリックスを有する本発明の生体物質担持体は、 産業上の広い範 囲において用いることが可能である。 具体的な用途に制限は無く、 任意の用途 に用いることができるが、 通常は、 生体物質と、 その生体物質と特異的に相互 作用する作用物質との 「相互作用」 を利用した用途に用いて好適である。
例えば、 本発明の生体物質担持体は、 生体物質と相互作用する作用物質を検 出するバイオセンサーとして好適に使用できる。 上記のバイオセンサーは、 例 えば、 いわゆる D N Aアレイ若しくは D N Aチップ、 または、 プロティンァレ ィ若しくはプロテインチップ等と呼ばれる、 D N Aまたはタンパク質を固定化
したセンサーチップを用いて、 相互作用を解析するものであるが、 本発明の生 体物質担持体は、 このセンサーチップに適用することができる。 即ち、 センサ 一チップに生体物質を固定化する場合に、 上述した方法によりセンサーチップ 本体にマトリックスを形成して、 センサーチップを本発明の生体物質担持体と して用いることができる。
このように、 本発明の生体物質担持体を適用することができるバイオセンサ 一の具体例としては、 蛍光法、 化学発光法、 R I法、 S P R (表面プラズモン 共鳴) 法、 Q C M (水晶発振子マイクロバランス) 法、 ピエゾ方式カンチレバ 一法、 レーザー方式カンチレバー法、 質量分析法、 電気化学的方法、 電極法、 電界効果トランジスタ ( F E T ) 法、 カーボンナノチューブを利用した F E T 及び/又は単一電子トランジスタ法によるセンサーなどが挙げられる。 この中 でも、 S P R法および Q C M法による検出は、 簡便に検体を無標識で分析する ことができるため、 好適に用いられる。
S P R法は、 表面プラズモン波を誘起させるために、 センサーチップの表面 は、 金属で被覆されているのが好ましい。 金属としては、 表面プラズモン波を 誘起しうるものであればよく、 金、 銀、 銅、 アルミニウムおよびこれらを含む 合金な.どが挙げられる。 なかでも、 感度や安価な点では銀が好ましく、 安定性 の面では金が好ましい。 金属層は、 蒸着、 スパッタリング、 メツキ、 その他の コーティングなどによって形成され、 その厚さは、 通常 2 0 n m以上、 好まし くは 3 0 n m以上、 また、 通常 3 0 0 n m以下、 好ましくは 1 6 0 n m以下程 度である。
これら S P R法や Q C M法に本発明の生体物質担持体を適用する場合、 セン サーチップ本体の表面にマトリックスを強固に結合するためには、 センサーチ ップ本体の表面が官能基を有していることが好ましい。 この場合、 官能基は任 意であるが、 例としては、 ヒ ドロキシル基、 カルボキシル基、 チオール基、 ァ ミノアルデヒ ド基、 ヒ ドラジド基、 カルボ-ル基、 エポキシ基、 ビュル基、 ァ ミノ基、 スクシンイミ ド基等が挙げられる。
さらに、本発明の生体物質担持体は、 D D S (ドラッグデリバリーシステム) のための薬剤の表面処理、 再生医療担体の表面処理、 人工臓器の表面処理、 力
テーテルなどの表面処理等に適用可能である。
[III. 生体物質複合体]
本発明の生体物質複合体は、特定物質が生体物質構造体に結合したものである また、生体物質複合体は、特定物質が結合した生体物質及び Z又は結合用化合物 ' を用いて構成された生体物質構造体ということもできる。
生体物質構造体は、 上述したように、 生体物質、及び、 この生体物質と結合可 能な化合物 (即ち、 「結合用化合物」) から構成される構造体である。 そして、 生 体物質複合体においては、特定物質は、 この生体物質構造体の生体物質及び 又 は結合用化合物に結合している。 即ち、特定物質は、生体物質及び結合用化合物 の一方にのみ結合していてもよく、 両方に結合していてもよい。 なお、 生体物質 構造体には、通常、結合用化合物よりも生体物質のほうが多く存在するため、特 定物質をより多量に生体物質複合体に結合させる観点からは、特定物質は少なく とも生体物質には結合するようにしておくことが好ましい。
[III- 1 . 特定物質]
特定物質は、本発明の生体物質複合体を構成する要素であり、当該特定物質が 結合している生体物質構造体を構成する生体物質及び結合用化合物以外の物質 であれば、その目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質 を用いることができる。
中でも、 本発明の生体物質複合体を対象物質の精製や解析用途に用いる場合 には、 通常は、 特定物質は、 所定の物質 (作用物質;以下適宜、 生体物質と相 互作用する 「作用物質」 と区別するため、 特定物質と相互作用する物質を 「特 ' 定作用物質」という) と相互作用しうるものを用いるようにする。これにより、 本発明の生体物質構造体において生体物質が対応する作用物質と相互作用して いたのと同様に、 本発明の生体物質複合体において特定物質が特定作用物質と 相互作用できるようになつている。 即ち、 生体物質の代わりに特定物質が対象 物質と相互作用をするようになっている。
例えば、生体物質複合体を対象物質の精製などの用途で用いる場合には、特定 物質として特定作用物質と相互作用できるものを用いるようにし、また、 当該特 定作用物質に該当する物質 (即ち、特定物質と相互作用しうる物質) を対象物質
として用いる。 そして、 上記の相互作用を利用して、 対象物質の分離精製を行な うようにする。 - また、 例えば、 生体物質複合体を対象物質の解析用途に用いる場合にも、 特定 物質としては上記の特定作用物質と相互作用できるものを用いる。そして、対象 物質と特定物質とが相互作用するかどうかを試し、対象物質と特定物質とが相互 作用を生じるようであれば、上記の対象物質は特定作用物質のうちの 1種に該当 する。即ち、対象物質が特定物質と相互作用を生じるような特定の構造を有して いる、 と解析することができる。 これを利用し、 対象物質の構造や、 特定作用物 質の構造を解析することが可能である。
ここで、 特定物質と特定作用物質との 「相互作用」 とは、 特に限定されるもの ではないが、 通常は、 生体物質と作用物質との相互作用と同様のものである。 特定物質の具体例としては、 金属キレート、 ダルタチオン、 糖、 ビタミン、 ボロン酸、 タンパク質、 抗原、 核酸、 生理活性物質、 脂質、 ホルモン、 環境ホ ルモン、 キレート形成基などが挙げられる。
なお、 特定物質は 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組合せ及び 比率で併用してもよいが、 特定の対象物質を分離する場合には通常は 1種のみ を用いる。
このうち、 金属キレート、 ダルタチオン、 糖などは、 例えば、 ァフィ二ティ 一タグ融合タンパク質の分離の際に用いて好適である。
ァフィユティータグ融合タンパク質の発現および精製は、 組み換えタンパク 質を大量に得るための一つの方法である。 その具体例について簡単に説明する と、 タンパク質をァフィ二ティータグとなるアミノ酸配列で修飾し、 このァフ ィユティータグに対して特異的に相互作用する特定物質を用いて分離を行なう ことにより、 目的とするタンパク質の精製等を行なう手法などが挙げられる。 このようなァフイエティータグとしては、 例えば、 ポリヒスチジン (H i s— タグ)、 グルタチオン一 S—トランスフェラーゼ (G S T )、 マルトース結合タ ンパク質、 カルモジュリンなどが挙げられる。 この中で好ましいァフィ二ティ 一タグは H i s 一タグ、 G S Tであり、 特に好ましくは H i s —タグである。 具体例を挙げると、 本発明の生体物質複合体を用いて、 ポリヒスチジンを有
する検体、 例えば H i s—タグを有する組み替えタンパク質などを精製する場 合には、 特定物質としては金属キレートを使用することができる。 この場合、 ヒスチジンと金属キレートとのァフイエティー相互作用を利用することになる, この相互作用は、 ポリヒスチジン内のイミダゾール環に存在する片方の窒素が 金属の不飽和な配位座に配位するために生じるものと考えられている。
上記の H i s一タグを用いるときに特定物質として金属キレートを用いる場 合には、 特定物質とする金属キレートに含まれる金属イオンの具体的な種類は 任意であるが、 一般的には遷移金属のイオンが好ましい。 中でも、 周期律表の 第 4周期元素である鉄、 コバルト、 ニッケル、 銅、 亜鉛の各イオンは、 製造価 格の点及び分離精製工程において漏出しにくい点で好ましい。 特に好ましくは ニッケルである。
金属キレートを形成させるためのキレート試薬としては、 金属キレートを形 成できれば、 使用するキレート試薬に制限は無い。 キレート試薬の具体例とし ては、 ィミノジニ酢酸及びその誘導体、 エトリロトリ酢酸及びその誘導体など が挙げられる。 また、 市販されている試薬としては、 例えば、 AB-NTA、 Maleimido-C3-NTA, Maleimido-C7-NTA (同仁化学研究所製) などが挙げら れる。 なお、 キレート試薬は 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組 み合わせ及ぴ比率で併用してもよい。
さらに、 キレート試薬を用いず、 生体物質が有する官能基を修飾する方法も ある。 例えば、 生体物質が有するアミノ基に対して、 モノクロ口酢酸、 モノブ ロモ酢酸、 モノクロ口プロピオン酸、 モノプロモプロピオン酸、 又はこれらの 金属塩等で修飾し、 これに金属イオンを結合させ、 特定物質である金属キレー トとすることも可能である。
また、 ァフィユティータグとして G S T、 マルトース結合たんばく質などを 用いた場合は、 特定物質としては、 例えば、 ダルタチオン;マルトース等の糖 などを、 それぞれ用いることができる。
さらに、 本発明の生体物質複合体を用いて抗体抗原反応を生ぜしめる場合に は、 特定物質として、 抗体もしくは抗原を用いることができる。 ここで用いら れる抗体、 抗原は任意であるが、 例えば、 ィムノグロブリンやその派生物であ
る F ( a b ' ) 2、 F a b \ F a bなどが挙げられる。
また、 本発明の生体物質複合体を遺伝子解析に用いることもできる。 この場 合、 特定物質としては、例えば、 ヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド、核酸 (D N A , R N A , P N A) などを用いることができる。 なお、 この時の核酸は二 本鎖でも一本鎖でもよい。
さらに、本発明の生体物質複合体を医薬の作用機構を明らかにするために用い る場合は、 特定物質としては、 生理活性物質、 例えば、 生理活性能を有する化合 物を用いることができる。
また、医薬候補剤として生理活性物質を選択する場合に、本発明の生体物質複 合体を用いる場合には、特定物質として、疾患に寄与するレセプターなどのタン パク質を特定物質として用いることができる。
また、本発明の生体物質複合体を、 ウィルスを検知するためのセンサーとする 場合は、 特定物質として、 糖を用いることができる。
さらに、 本発明の生体物質複合体を、 糖を有する化合物、 例えば、 糖鎖含有タ ンパク質などの分離'精製に用いる場合には、 特定物質としては、 ボロン酸を用 いることができる。
また、 特定物質としてタンパク質を用いる場合、 そのタンパク質の例として は、 上述した抗体やレセプターなどの他、 酵素などを挙げることができる。 特 定物質として酵素を用いることにより、 高効率な固定化酵素を提供することが できる。 この場合、 酵素を繰り返し使用することが可能となる。
さらに、 特定物質として脂質を用いることにより、 本発明の生体物質複合体 を用いて、 脂質結合タンパク質などのスクリーニング若しくは分離 '精製を行 なうことができる。
また、 ホルモンや環境ホルモンの作業機構を調べるために、 特定物質として ホルモンや環境ホルモンを用いることもできる。 その場合、 本発明の生体物質 複合体を用いて、 ホルモンや環境ホルモンに結合する生体分子をスクリーニン グすることが可能となる。
さらに、 特定物質としてビタミンを用いる場合、 例えば、 ビォチンなどを用 いることができる。
また、本発明の生体物質複合体を金属イオンの分離又は除去に用いる場合には 特定物質と.しては、キレート形成基を用いることができる。 このキレート形成基 を形成するには、例えば上述のキレート試薬を用いることができる。 さらに、例 えば、キレート試薬を用いずに生体物質が有する官能基を修飾する方法において 例示した化学種も、キレート形成基として挙げられる。具体的なキレート形成基 の例としては、イミノジカルボン酸基、 ィミノプロピオン酸基、エチレンジアミ ン三酢酸基、エチレンジァミン四酢酸基、 ヒドロキシェチルイミノジ酢酸基、 ヒ ドロキシェチルイミノ三酢酸基などが挙げられる。
なお、特定物質構造体をァフィ二ティー精製や解析などのァフィ二ティー分離 技術を利用した分離精製に用いた場合、上記の特定物質が、分離精製対象である 対象物質の標的物質となる。
上述したものの中でも、 特定物質としては、 金属キレート、 ビォチン、 糖、 グ ルタチオン、 ボロン酸、 抗体、 抗原、 レセプター、 生理活性物質及びキレート形 成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることがより好ましい。
[III- 2 . リンカー]
本発明の生体物質複合体においては、特定物質は生体物質及び Z又は結合用化 合物に結合しているのであるが、特定物質と生体物質及び/又は結合用化合物と は直接に結合する以外にも、何らかのリンカ一を介して結合していてもよい。通 常は、 リンカーを用いることにより、特定物質と対象物質との相互作用を高める ことが可能となるため、リンカーを使用して特定物質と生体物質及び Z又は結合 用化合物とを間接的に結合させることが好ましい。
リンカ一に制限は無く、 本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、 中でも、親水性を有する分子 (親水性分子) をリンカ一として用いることが好ま しい。 即ち、 リンカ一が親水性であることが好ましい。
リンカ一が親水性であるためには、 リンカ一を構成する分子中に、 例えば、 アミノ基、 カルボン酸基、 水酸基、 スルフォン酸基、 グリシジル基、 二トリル 基、 エチレンォキサイド等の親水性の原子団が含まれるようにすることが望ま しい。 中でも、 ポリエチレンオキサイド鎖は、 タンパク質の非特異吸着を抑制 することが知られているため、 生体物質や対象物質としてタンパク質を用いる
場合には、エチレンォキサイド鎖を含有するリンカーを用いることが望ましい。 なお、 リンカ一は、 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組合せ及 び比率で併用してもよい。
[III- 3 · 生体物質複合体における生体物質構造体]
本発明の生体物質複合体における生体物質構造体は、本発明の生体物質構造体 と同様のものである。
[III- 3 - 1 . 生体物質複合体における生体物質]
生体物質複合体における生体物質としては、本発明の生体物質構造体の生体物 質と同様のものを用いることができる。生体物質は、生体物質構造体を構成する 要素であり、 また、 生体物質複合体を構成する要素でもある。
ただし、生体物質複合体では、生体物質構造体に特定物質を固定化させて生体 物質複合体を構成する観点からは、 特定物質を生体物質に結合させる場合には、 生体物質として特定物質と結合しうるものを用いる。また、生体物質が特定物質 に対してリンカーを介して結合するようにする場合には、生体物質として当該リ ンカーと結合しうるものを用いる。 ■
生体物質と特定物質又はリンカ一との結合は、生体物質複合体の種類や用途な どに応じて、 どのような結合であってもよい。
生体物質と特定物質又はリンカ一との結合の具体例を挙げると、共有結合、ィ オン結合、 キレート結合、 配位結合、 球水結合、 水素結合、 ファンデルワールス 結合、及び静電力による結合などが挙げられるが、 これらの分類に当てはまらな い別の結合であってもよい。
一方、特定物質を結合用化合物に結合させて生体物質には結合させないように する場合には、生体物質としては用途に応じて任意のものを用いることができる, 例えば、特定物質と何らかの特定作用物質との間で所定の相互作用を生じさせよ うとする場合には、生体物質としては、当該特定作用物質との間で非特異的な相 互作用を生じないものを使用するようにすることが好ましい。
[III一 3 - 2 . 生体物質複合体における結合用化合物]
生体物質複合体における結合用化合物としては、本発明の生体物質構造体の結 合用化合物と同様のものを用いることができる。 したがって、本発明の生体物質
構造体と同様、結合用化合物は、通常は、生体物質の種類や本発明の生体物質複 合体の用途などに応じて適当な結合官能基を有することが好ましい。
ただし、 特定物質を結合用化合物に結合させようとする場合には、 結合用化 合物としては、 特定物質又はリンカ一と結合しうるものを用いるようにする。 この際、 結合用化合物と特定物質又はリンカ一との結合の具体例を挙げると、 共有結合、 イオン結合、 キレート結合、 配位結合、 疎水結合、 水素結合、 ファ ンデルワールス結合、 及び静電力による結合などが挙げられるが、 これらの分 類に当てはまらない別の結合であってもよい。
したがって、 この場合、 結合用化合物としては、 上記の結合官能基以外に、 上 記特定物質又はリンカ一と結合可能な官能基を有するものを用いるようにする ことが望ましい。 このような官能基に制限はなく、任意の官能基を用いることが でき、 例えば、 結合官能基と同様のものが挙げられる。 また、 具体的な種類は、 特定物質の種類や本発明の生体物質複合体の用途などに応じて選択することが できる。
なお、上記の特定物質又はリンカ一と結合しうる官能基も、 1種を単独で用い ても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
また、本発明の生体物質複合体においても、生体物質構造体と同様、 上記の粒 子状塊を形成させやすくなるためには、結合用化合物同士の結合が無く、生体物 質と結合用化合物との結合が主であることが好ましい。 生体物質構造体と同様、 結合用化合物同士の結合がある場合、結合用化合物同士の凝集が形成されやすく、 粒子状塊の粒径が大きくなる傾向があり、粒子状塊の粒径を制御し難くなるため である。 したがって、生体物質構造体の場合と同様、結合用化合物同士が結合し ないような結合官能基を選択して結合用化合物同士が結合する状況を排除する ことが好ましく、 また、生体物質の特定を生かすべく、生体物質の活性を維持す るために、生体物質が失活しないよう生体物質の官能基及び結合用化合物の官能 基を選択することが好ましい。
さらに、結合用化合物として水と混和しうるものを用いることは、生体物質構 造体の製造時だけでなく、生体物質複合体の製造時にも溶媒や分散媒等の媒質と して水を用いるために、 同様に好ましい。
また、結合用化合物として少なくとも 1種の有機溶媒に混和しうるものを用い ることは、生体物質構造体だけでなく、生体物質複合体の構造を様々に設計する ことができるようになることからも、 同様に好ましい。
さらに、結合用化合物として、水と有機溶媒との両方に混和できるものを用い ることは、生体物質構造体だけでなく、生体物質複合体を使用する際にも使用で きる溶媒の種類を増やすことができるため、 同様により好ましい。
また、結合用化合物が無電荷であることは、生体物質構造体だけでなく、 生体 物質複合体を対象物質の分離に用いる場合などにおいても、同様に好ましい。 こ れは、生体物質複合体を用いて対象物質の分離を行なおうとした時に、対象物質 が結合用化合物と同じ電荷を有している場合には、生体物質複合体に含まれる特 定物質との特異的な相互作用が妨げられる虞があり、また、対象物質と結合用化 合物とが反対の電荷を有していた場合には、対象物質と結合用化合物とが電気的 引力により非特異吸着を生じることが推測されることからも、 好ましい。
また、結合用化合物として高分子化合物、特に合成高分子化合物を用いる場合 であって、特定物質が結合用化合物に結合する場合は、 当該高分子化合物は、特 定物質又はリンカーと結合できるモノマーを有していることが望ましい。
即ち、 本発明の生体物質構造体の結合用化合物と同様のモノマーに加えて、 生体物質複合体の結合用化合物としては、 特定物質と結合用化合物とを結合さ せる場合、 特定物質を結合用化合物に結合させることを目的として、 上記特定 物質又はリンカ一と結合可能な官能基を有するモノマーを含有させるようにす ることが望ましい。
なお、 上記特定物質又はリンカ一と結合可能な官能基を有するモノマーの例 としては、 上記の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマーと同様の ものが挙げられる。
[III- 4 . 生体物質複合体の構造]
本発明の生体物質複合体は、 本発明の生体物質構造体の、 生体物質及び 又 は結合用化合物に、 特定物質が結合しているものである。 さらに、 本発明の生 体物質複合体においては、 粒子状塊は本発明の生体物質構造体と同様のもので あり、 通常、 上記の粒子状塊の粒径は 1 0 μ πι以下となっている。
生体物質構造体は、 上述したように、 生体物質及び結合用化合物の両方によ つて形成された粒子状塊が集合及び/または結合することによつて形成する構 造を有しており、 したがって、 生体物質複合体も同様に粒子状塊が集合及び/ 又は結合した構造を有している。 このため、 生体物質構造体に特定物質が結合 したものである本発明の生体物質複合体においては、 生体物質の比率を高める ことが可能であり、 これに伴い、 生体物質に結合する特定物質の比率を高める ことが可能となる。 したがって、 本発明の生体物質複合体では、 従来よりも多 量の特定物質を保持することができる。 さらに、 生体物質に加えて特定物質が 結合用化合物にも結合しうる場合は、より多量の特定物質の保持が可能となる。 また、多量の特定物質を保持できるようになるため、本発明の生体物質複合体 によれば、 本発明の生体物質構造体と同様に、 結合用化合物 (及び、 後述する固 相担体等)が生じる非特異的な相互作用を抑制できるという利点を得ることがで きる。 したがって、非特異的相互作用の影響を排除しながら、特定物質と特定作 用物質との相互作用を用いた分析やァフィニティ一分離を実施することができ るようになる。
一方、特定物質が結合用化合物に結合して生体物質に結合しない場合にも、生 体物質構造体が 3次元的な構造を有しているため、特定物質を従来よりも多量に 保持することが可能である。また、非特異的相互作用を抑制できるという上記の 利点は、 結合用化合物と特定物質とが結合する場合においても得られる。
また、 本発明の生体物質構造体の説明で上述したように、 従来の生体物質を 固相担体等に固定する技術では、 ァフィユティー精製などに用いられる場合、 '樹脂微粒子などの固相担体の表面に結合させるために、 生体物質の固定化量は 所定の上限値で制限され (通常、 タンパク質の単層吸着は、 せいぜい 0 . 3〜 1 . 0 μ g / c m 2 )、 多量の生体物質を保持することができなかった。 したが つて、 この生体物質に特定物質を結合させたとしても、 特定物質の量は十分な ものではなかった。
さらに、本発明の生体物質複合体においても、粒子状塊の粒径は、本発明の生 体物質構造体と同様である。 また、 粒子状塊の粒径を個別に測定する場合には、 生体物質構造体の場合と同様、生体物質複合体中の粒子状塊のうち、少なくとも
一部の粒子状塊が上記の範囲の粒径を有していればよい力 できるだけ多くの粒 子状塊が上記範囲の粒径を有していることが好ましく、全ての粒子状塊が上記範 囲の粒径を有していることがより好ましい。
なお、本発明の生体物質複合体の粒子状塊の粒径の測定方法も、本発明の生体 物質構造体と同様である。
さらに、上述したように生体物質構造体において粒子状塊同士の間に空間(空 隙) が形成されているため、本発明の生体物質複合体でも、通常は粒子状塊同士 は完全に密着せず、各粒子状塊同士の間には空間 (空隙) が形成される。 生体物 質構造体の空間と同様、 この空間には、生体物質複合体を用いてアブイ-ティー 分離などを行なう際に、特定物質と相互作用させる対象物質が侵入することが可 能であり、通常はこの空間において特定物質と対象物質との相互作用が生じるこ とになる。 したがって、 3次元的な構造を有する本発明の生体物質複合体であつ ても、その中 (内部) に含まれる特定物質は対象物質等と相互作用することが可 能である。 即ち、本発明の生体物質複合体は、 3次元的に多くの特定物質を備え ることができるにもかかわらず、その特定物質は活性を失わず相互作用をするこ とが可能であり、 このため、本発明の生体物質複合体は、 特定物質の反応性を保 つたまま、 従来よりも多量の特定物質を含有させることが可能となっている。 なお、 本発明の生体物質複合体が、 粒子状塊同士の間に空間を有しているか を調べる方法は、 本発明の生体物質構造体と同様である。
また、本発明の生体物質複合体の大きさは、本発明の生体物質構造体と同様で ある。 また、 その測定方法も、 本発明の生体物質構造体と同様である。
さらに、本発明の生体物質複合体も、生体物質構造体と同様に、 固相担体に固 定して、ァフィ二ティー精製や医薬機能解析ツールとして用いることもでき、 さ らに、 D D S (ドラッグデリバリーシステム) のための薬剤の表面処理、 再生医 療担体の表面処理、人工臓器の表面処理、カテーテルなどの表面処理等に適用可 能である。 これら表面処理などに本発明の生体物質複合体を使用する場合、所望 の固相担体に、任意の手法によって本発明の生体物質複合体を固定した生体物質 複合体担持体を形成し、 それを用いることになる。
[III一 5 . 生体物質複合体の組成]
[III- 5 - 1 . 特定物質の含有比率]
本発明の生体物質複合体において、含有される特定物質の比率に制限は無いが、 通常は、より多量の特定物質が含有されていることが望ましい。具体的には、「(特 定物質の重量) / (生体物質複合体の重量)」 で表される生体物質複合体の重量 に対する特定物質の重量の比率が、 通常 0 . 0 0 1重量%以上、 好ましくは 0 .
0 0 3重量%以上、 より好ましくは 0 . 0 0 5重量%以上が望ましい。 特定物質 の比率がこの範囲を下回る場合、生体物質複合体を用いて分離精製を行なうとき にその分離精製の効率が低下する虞がある。 また、上限に特に制限は無いが、通 常 7 0重量%以下である。
[III- 5 - 2 . 特定物質の含有比率の測定法]
上記の特定物質の含有比率は、例えば、元素分析やアミノ酸分析などにより測 定することができる。
[III- 5 - 3 . 生体物質複合体における生体物質の含有比率]
本発明の生体物質複合体においては、含有される生体物質の比率にも制限は無 いが、通常は、 より多量の生体物質が含有されていることが望ましい。 具体的に は、 「(生体物質の重量) / (生体物質複合体の重量)」 で表される生体物質構造 体の重量に対する生体物質の重量の比率が、通常 0 . 1以上、 好ましくは 0 . 3 以上、 より好ましくは 0 . 5以上が望ましい。 また、 上限に特に制限は無いが、 通常 0 . 9 9 9以下である。 生体物質の比率がこの範囲を下回る場合、構成され る生体物質複合体中の結合用化合物を十分に生体物質で覆うことができなくな り、結合用化合物への非特異吸着を起こす虞がある。 また、特定物質を生体物質 にのみ結合させるようにする場合には、特定物質を十分多く結合させることがで きなくなり、 この生体物質複合体を用いて分離精製を行なう場合に、その分離精 製の効率が低下する虞もある。
[III- 5 - 4 . 生体物質複合体における生体物質の含有比率の測定法] 上記の生体物質複合体における生体物質の比率を測定する方法は特に限定さ れないが、例えば、本発明の生体物質複合体に含まれる生体物質を酵素や薬品等 を用いて分解し、生体物質、結合用化合物及び特定物質由来の物質をそれぞれ各 種の方法で定量すればよい。
この際の生体物質の分解方法、 並びに、 生体物質、 結合用化合物及び特定物 質由来の物質の定量方法は、 生体物質構造体の生体物質の含有比率の測定法に おいて説明したものと同様である。
[III一 6 . 生体物質複合体の製造方法]
生体物質複合体の製造方法に制限は無いが、 通常は、 生体物質構造体の製造 時の少なくとも何れかの工程の前、 最中又は後において、 生体物質に特定物質 を結合させるようにする。 したがって、 生体物質複合体は、 例えば、 生体物質 及び/又は結合用化合物に予め特定物質を結合させておき、 その後に生体物質 構造体を形成することによって作製するようにしてもよく、 また、 生体物質と 結合用化合物とから生体物質構造体を作製した後に、 生体物質構造体中の生体 物質及び Z又は結合用化合物に特定物質を結合させて作製するようにしてもよ い。
[III- 6 - 1 . 生体物質複合体製造時の生体物質構造体の製造方法]
生体物質構造体の製造方法は、 上述したものと同様である。
なお、 生体物質構造体の形成メカニズムに関して言えば、 予め特定物質を結 合させた生体物質及び Z又は結合用化合物を用いて上記の方法により生体物質 構造体を作製する場合、 作製されるものは本発明の生体物質複合体となるので あるが、 この場合も生体物質構造体と同様のメカニズムで生体物質複合体が形 成されるものと思料される。
また、 生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物の調製の初期の段階に おいて、 媒質中で生体物質と結合用化合物とを均一に混合することは、 均一な 生体物質構造体を形成するためだけでなく、 均一な生体物質複合体を得るため にも、 好ましい。
[III- 6 - 2 . 特定物質の結合]
生体物質構造体の製造方法における各工程のうち、 即ち、 例えば混合工程、 濃縮工程、 乾燥工程及びその他の工程のうち、 少なくともいずれか 1つの工程 の工程前、 工程中または工程後において、 生体物質及び Z又は結合用化合物に 特定物質を結合させることにより、 本発明の生体物質複合体が得られる。
生体物質及び 又は結合用化合物に特定物質を結合させる方法に制限は無く、
任意である。
通常は、 生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を接触させることによ り、 結合させることができる。 また、 リンカ一を用いる場合には、 まずリンカ 一を生体物質及び/又は結合用化合物に接触させてから、 当該リンカーが結合 した生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を接触さたり、 逆に、 リンカ 一を特定物質と接触させてから、 当該リンカーが接触した特定物質を生体物質 及び Z又は結合用化合物に接触させたりする。
リンカー又は特定物質と、 生体物質及び/又は結合用化合物とを接触させる 場合の具体的な操作としては、 通常は、 適切な媒質中に生体物質若しくは結合 用化合物並びに特定物質若しくは適宜用いるリンカーを共存させるようにする。 この際、 温度条件、 反応時間、 使用装置などは、 特定物質を生体物質に結合さ せることができる限り任意である。 通常は、 これらの条件は特定物質、 生体物 質、 結合用化合物、 リンカ一等の種類に応じて設定される。 ただし、 出来る限 り、 生体物質が失活しない条件で行なうことが好ましい。
例えば、 結合時の温度条件は、 通常は室温以下で行なうことが好ましい。 具 体的には、 通常 2 5 °C以下、 好ましくは 1 0 °C以下で行なうことが望ましい。 しかしながら、 特定物質又はリンカーの生体物質及び 又は結合用化合物への 結合が上記の望ましい温度範囲では進行しない場合には、 結合が進行しやすい 温度領域で行なうようにしてもよい。
また、 結合時の媒質としては、 生体物質の失活を抑えるためには、 水を主体 とすることが好ましい。 しかしながら、 特別物質やリンカ一などが水に溶けに くいかまたは分散しにくいなどの特定を有している場合には、 媒質として水溶 性有機溶媒を用いるようにしてもよい。 その際、 水溶性有機溶媒の比率は任意 であるが、 通常 8 0重量%以下、 好ましくは 7 0重量%以下、 より好ましくは 5 0重量%以下である。
水溶性有機溶媒の具体例としては、 メチルアルコール、 エチルアルコール、 n—プロピルアルコーノレ、 イソプロピノレアノレコール、 n一ブチルアルコール、 s e c一プチノレアルコール、 t e r t—ブチノレアルコール、 イソブチノレアノレコ ール、 nーァミルアルコール等の炭素数 1〜 5のアルキルアルコール類、 ジメ
チルホルムァミ ド、 ジメチルァセトアミ ド類のァミ ド類、 ァセトン、 ジァセト ンアルコーノレ等のケトンまたはケトァノレコール類、 テトラヒ ドロフラン、 ジォ キサン等のエーテル類、 ポリエチレングリコール、 ポリプロピレングリコール 等のポリァ /レキレングリコール類、 エチレングリコーノレ、 ジエチレングリコー ル、 プロピレングリコーノレ、 ブチレングリコーノレ、 トリエチレングリコーノレ、 1, 2 ' 6一へキサント リオール、 チォジグリ コーノレ、 へキシレングリ コーノレ 等のアルキレン基が 2〜6個の炭素原子を含むアルキレンダリコール類、 ェチ レングリ コーノレモノメチノレエーテノレ、エチレングリコーノレモノエチノレエーテノレ、 ジエチレングリコールモノメチルエーテノレ、 ジエチレングリコ一/レモノエチノレ エーテル、 トリエチレングリコールモノメチノレエーテル、 トリエチレングリコ ールモノエチルェ一テル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、 トリ エチレングリ コールジメチノレエ一テノレ、 トリエチレングリコーノレジェチノレエ一 テル等の多価アルコールの低級ジエルキルエーテル類、 グリセリン、 スルホラ ン、 N—メチル一 2—ピロリ ドン、 1 , 3ージメチル一 2 _イミダゾリジノン などが挙げられる。この中で好ましくは、ジメチルホルムアミ ドである。なお、 結合時の媒質は、 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組み合わせ及 び比率で併用してもよい。
'また、 生体物質複合体の作製後、 媒質を除去してもよい。
以下、 特定物質として金属キレートを生体物質に結合させる場合を例に挙げ て、 具体的な方法を説明する。
特定物質として金属キレートを生体物質に結合させる場合には、 例えば、 ま ' ず生体物質にキレート試薬 (キレート形成基) を結合させ、 そのキレート形成 基に所望の金属ィオンを結合させることにより、 生体物質に特定物質を結合さ せることができる。 ,
さらに、 生体物質に対するキレート試薬の結合や、 キレート試薬を結合させ た生体物質への特定物質の結合などは、 通常は媒質内で行なうが、 使用する媒 質は任意であり、 例えば、 生体物質構造体の製造時に使用する媒質の例として 例示したものと同様のものや、例示した水性有機溶媒などが挙げられる。なお、 この場合の溶媒も、 1種を単独で用いてもよく、 2種以上を任意の組合せ及び
比率で併用してもよい。
また、 結合時の反応条件も、 本発明の効果を著しく損なわない限り任意であ る。
[III一 7 . 生体物質複合体を用いたァフィ二ティー分離の説明]
本発明の生体物質複合体は、 ァフィ二ティー分離に用いて好適である。 した がって、 本発明の生体物質複合体は、 例えば、 ァフィ二ティー精製や医薬機能 解析ツールとして用いることができる。
本発明の生体物質複合体を用いたァフィ二ティー分離は、 生体物質構造体の 代わりに生体物質複合体を用い、 対象物質として作用物質の代わりに特定作用 物質を用い、 対象物質と相互作用させるものとして生体物質の代わりに特定物 質を用いるようにする他は、 本発明の生体物質構造体を用いたァフィユティー 分離の説明として述べたのと同様である。
また、 その実施形態としても、 生体物質構造体の代わりに生体物質複合体を 用い、 対象物質として作用物質に代わりに特定作用物質を用い、 対象物質と相 互作用させるものとして生体物質の代わりに特定物質を用いるようにする他は、 本発明の生体物質構造体を用いたァフィ二ティ一分離の実施形態として説明し たものと同様のものが挙げられる。 なお、 図 5〜図 7を参照して、 生体物質複 '合体を用いたものとして第 1〜第 4実施形態を把握しようとする場合には、 符 号 2が生体物質複合体を表わす他は、 本発明の生体物質構造体を用いたァフィ ニティ一分離の説明と同様に図 5〜図 7を認識すればよい。
[III— 8 . 生体物質複合体を用いたセンサ]
本発明の生体物質複合体を用いたセンサーは、 生体物質構造体の代わりに、 生体物質複合体を用いることができる。 この場合、 通常は、 特定物質と相互作 用する特定作用物質を検出するセンサーとして使用される。 その他は、 本発明 の 「II一 6 . 生体物質担持体の用途」 と同様の用いることができる。
[IV. 生体物質複合体担持体]
本発明の生体物質複合体は、本発明の生体物質複合体が、固相担体に固定され てなるものである。上記の第 1〜第 4実施形態で用いたァフィユティー用容器や ァフィ二ティー分離用チップなどのようなものがこれに該当する。
なお、ァフィ二ティー精製用若しくは医薬作用機構解析用のツールとして、上 述した本発明の生体物質複合体を用いる場合、条件によっては固相担体に固定し て、 生体物質複合体担持体として用いることが望ましい。
[IV- 1 . 生体物質複合体担持体が有する生体物質複合体]
本発明の生体物質担持体が有する生体物質構造体、 及び、 その構成要素であ る生体物質、 結合用化合物、 特定物質などについては、 上述したものと同様で ある。
なお、 生体物質複合体担持体が有する生体物質複合体の厚さ (膜厚) は任意 であるが、 乾燥状態で、 通常 5 n m以上、 好ましくは 1 0 n m以上、 より好ま しくは 1 5 n m以上、 さらに好ましくは 2 0 n m以上である。 これを下回る膜 厚では、 十分に皮膜形成できない可能性がある。 また、 上限に特に制限は無い 力 通常 1 0 c m以下である。 なお、 上記の厚さは、 S E M、 T E M、 A F M などの測定することができる。
[IV- 2 . 生体物質複合体担持体が有する固相担体] ,
固相担体は、 表面に本発明の生体物質複合体を固定化するための基体となる ものである。 生体物質複合体担持体の固相担体としては、 生体物質担持体が有 する固相担体と同様のものを用いることができる。
なお、上記の第 3、第 4実施形態のような流路を有するチップを形成する場合 には、生体物質担持体の場合と同様、流路 1 4 B内に生体物質複合体を充填して 保持させるようにした場合などにおいては、流路 1 4 B内から生体物質複合体が 流出することを防止するべく、フィルタ等の流出防止手段を設けることが好まし い。
さらに、上記固相担体は、 そのまま使用してもよいが、 生体物質担持体が有す る固相担体と同様に、表面処理を施してから表面に生体物質複合体を形成するよ うにしても良い。
[IV- 3 · 生体物質複合体担持体の製造方法]
本発明の生体物質複合体担持体の製造方法は任意であり、通常は、生体物質担 持体と同様にして製造することができる。 したがって、 例えば、 あらかじめ生体 物質複合体を用意して、 それを固相担体と結合させてもよいし、 特定物質、 生体
物質、結合用化合物等の生体物質複合体の各成分を別々に用意し、固相担体上で それらを混合させて生体物質複合体を製造しながら、同時に固相担体に結合させ ても良い。 具体的には、 例えば、 特定物質を含む溶液 (水溶液等) と、 リンカ一 を含む溶液と、生体物質を含む溶液(水溶液等) と、結合用化合物を含む溶液(水 溶液等) とを固相担体上に各々供給した後に、固相担体上で両溶液を混合する等 により行なうことができる。 また、予め混合物を用意しておく場合、供給前の混 合物中で前述したコンジュゲート (その一形態である粒子状塊を含む)又は生体 物質複合体を作製しておき、その後、混合物を固相担体に供給するようにしても 良い。
また、 生体物質複合体を固相担体に結合させる方法や条件(温度条件、圧力条 件、 静置時間など) も、 生体物質担持体の製造方法と同様である。
[V . 生体関連物質固定担体]
本発明の生体関連物質固定担体(生体関連物質が固定化された固相担体)は、 生体関連物質、 生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物 (上記の結 合用化合物のうち、支持体と結合可能なもの。以下適宜、 「担持固定化用化合物」 という)、 並びに、 支持体を含むマトリックス (以下適宜、 「所定のマトリック ス J という) を表面に形成された固相担体である。 ここで、 所定のマトリック スは、 支持体に上述した生体物質構造体及び Z又は生体物質複合体が固定され たものである。 以下、 詳細に説明する。
本発明の生体関連物質固定担体は、 生体関連物質が固定化された固相担体で あって、 固相担体表面に、 所定のマトリックスを有する。 ここで、 所定のマト リックスは、 生体関連物質、 上記生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な 化合物 (即ち、 「担持固定化用化合物」 ) 、 及び、 支持体を含むマトリックス である。 即ち、 所定のマトリックスは、 図 8に模式的に示すように、 生体関連 物質と担持固定化用化合物と支持体とを含み、 その骨格が、 支持体を核として 生体関連物質と担持固定化用化合物とが支持体に結合し、 鎖状、 網目状、 及び /又は、 ブロック状等の形状で結合した構造を有するマトリックスである。 な お、 図 8は、 所定のマトリックスの構造を説明するため、 本発明の生体関連物 質固定担体の一例の断面を拡大して示す模式図である。 また、 図 8において、
塗りつぶされた円形部分が生体関連物質を表わし、 線状部分が担持固定化用化 合物を表わし、 白抜きの円形部分が支持体を表し、 それ以外の空白部が空隙層 を表す。
また、本発明のアレイは、上記所定のマトリックス力 少なくとも 2種以上、 固相担体上の別々の領域に配置されることにより作製されていることを特徴と する。該アレイは、少なくとも約 1 0個の該所定のマトリックスを含むアレイ、 少なくとも約 1 0 0個の該所定のマトリックスを含むアレイ、 少なくとも約 1 0 3個の該所定のマ.トリックスを含むアレイ、少なくとも約 1 0 4個の該所定の マトリックスを含むアレイを含み、 またこれらの所定のマトリッタスの集積度 1 該所定のマトリ ックスの各々によって被覆された生体関連物質固定担体の 領域が、 約 2 5 mm 2以下であるアレイ、 該所定のマトリ ックスの各々によつ て被覆された生体関連物質固定担体の領域が、約 1 0 0 μ πι 2と約 4 mm 2との 間であるアレイ、 該所定のマトリッタスの各々によって被覆された生体関連物 質固定担体の領域が約 2 0 c m 2以下の領域内に含まれるアレイであることを 含む。
このようなアレイの表面においては、 混合溶液が供給される別々の領域の周 囲を疎液性 (周囲疎液性) 表面にしても良く、 また、 該領域が凹凸構造の凹部 であるゥエル状 (図 9 ( a ) ) であっても凸部であるパイル状 (図 9 ( b ) ) であっても良い。
[V— 1 . 製造方法]
本発明の生体関連物質固定担体は、 溶媒の存在下、 支持体、 生体関連物質、 及ぴ該生体関連物質及び 又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物 を固相担体表面に供給した後、 該溶媒を除去することにより所定のマトリック スを形成させる工程を経て製造される。
[V— 1 _ 1 . 固相担体]
固相担体は、 表面に所定のマトリ ックスを形成するための基体となるもので あり、 固相担体の表面に所定のマトリ ックスを形成したものが、 本発明の生体 関連物質固定担体である。 本発明で用いる固相担体に制限は無く、 所定のマト
リ ックスを形成する対象となるものであれば、 任意の材質、 形状、 寸法のもの を用いることができる。
固相担体の材質の例を挙げると、 ポリオレフイン、 ポリスチレン、 ポリェチ レン、 ポリカーボネート、 ポリアミ ド、 アクリル系樹脂等の各種樹脂材料、 ガ ラス、 アルミナ、 炭素、 金属等の無機材料などが挙げられる。 なお、 固相担体 の材質は 1種を単独で用いたものでもよく、 2種以上を任意の組み合わせ及び 比率で併用したものであっても良い。 また、 測定に蛍光法を用いる場合には自 己蛍光が少ない材質を選択する等、 用いる測定法や装置等に適したものを適宜 選択すればよい。
また、 固相担体の形状の例を挙げると、 平板状、 ビーズ状、 繊維状、 フィル ター状、 膜状、 シート状、 ゥ ル状などが挙げられる。 具体例としては、 多数 の生体関連物質を配列させることができるチップ (基板) 、 ウエルチップ (ゥ エル基板) 、 パイルチップ (パイル基板) 、 周囲疎水性チップ (周囲疎水性基 板) あるいはクロマトグラフィ担体や診断薬としてのビーズ、 表面積を増加さ せることを目的として利用されている中空糸繊維や-トロセルロース膜等の多 孔質構造体などが挙げられる。
さらに、 上記固相担体は、 そのまま使用してもよいが、 何らかの表面処理を 施してから表面に所定のマトリックスを形成するようにしても良い。 例えば、 金属や金属酸化物などの被覆材料で表面を被覆してから所定のマトリックスを 形成するようにしても良い。 さらに、 固相担体と所定のマトリックスとを結合 させるために、 固相担体に官能基を導入しても良い。 その官能基は任意である 力 例えば、 ヒドロキシル基、 カルボキシル基、 チオール基、 アミノアルデヒ ド基、 ヒ ドラジド基、 カルボニル基、 エポキシ基、 ビュル基、 アミノ基、 スク シンイミ ド基、 マレイミ ド等の、 化学結合により固相担体と所定のマトリック スとを結合させる官能基が挙げられる。 また、 本発明の生体関連物質固相担体 製造時に溶媒として水を用いる場合には、 アルキル'基、 フエニル基等の疎.水相 互作用による物理吸着によって固相担体と所定のマトリックスとを結合させる 官能基を用いることもできる。
また、 これらの固相担体表面において、 混合溶液が供給される該固相担体表 面の別々の既知の領域の周囲を疎液性 (周囲疎液性) 表面にしても良い。
表面処理の具体例を挙げると、 例えば固相担体表面に対して、 金で被覆する 表面処理を行なった場合には、
HS CH^OH HS"(CH2 2COOH
などを金表面に固定する処理が挙げられる。 ただし、 上記の構造式において、 n 1 ; η 2はそれぞれ独立に 2以上の整数を表わす。
また、 被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、 金属被覆チッ プ、 スライ ドガラス、 ファイバースライ ド、 シート、 ピン、 マイクロタイター プレート、 キヤビラリ一チューブ、 ビーズ等が挙げられる。
[V - 1 - 2 . 支持体] ' 支持体は、表面に所定のマトリックスを形成するだめの核となるものであり、 固相担体の表面に所定のマトリックスを形成したものが、 本発明の生体関連物 質固定担体である。 本発明で用いる支持体に制限は無く、 所定のマトリックス を形成する対象となるものであれば、 任意の材質、 形状、 寸法のものを用いる ことができる。
このとき、該生体関連物質と該支持体と該化合物との結合は、鎖状、網目状、 プロック状等の形状で結合してなるものであり、 これらの複数の構造を併せ持 • つものでもよい。 例えば、 該生体関連物質に対して該化合物が結合部位によつ て結合することで形成されたものが更に該支持体に結合したもの、 該化合物が 支持体及び生体関連物質に結合することにより結合されたもの、 もしくは、 予 め支持体に結合された生体関連物質に化合物が結合することにより形成された もの等である。 したがって、 所定のマトリックスは該支持体の周りを該化合物 によって橋架け構造にある該生体関連物質が取り囲み、 これらが更に 1つ以上 の集合体を形成することにより、 形成される。
支持体の材質の例を挙げると、 ポリオレフイン、 ポリスチレン、 ポリエチレ ン、 ポリカーボネート、 ポリアミ ド、 アクリル系樹脂等の各種樹脂材料、 ガラ ス、 アルミナ、 炭素、 金属等の無機材料などが挙げられる。 また、 支持体は蛍 光エネルギー移動 (F R E T ) を起こすことが知られている物質を含有してい ても良く、 フェライ ト、 グラフアイ ト、 カーボンナノチューブ等導電性物質を 含有していても、 金、 銀等電磁気共鳴を与えることが知られている金属を含有 していても良い。 なお、 支持体の材質は 1種を単独で用いたものでもよく、 2 種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用したものであっても良い。
また、 支持体の形状の例を挙げると、 粒子状、 繊維状などが挙げられる。 ま た、形成された所定のマトリッタスに十分な空隙と膜厚を与えるものであれば、 異形性のものでもよい。 具体例としては、 クロマトグラフィ担体やラテックス 診断薬としてのラテックス粒子、 金コロイ ドなどが挙げられる。
この中でも、 特に好ましくはラテックス粒子が用いられる。 ラテックス粒子 は、 材質や粒径等は任意であって、 用いる目的に応じて適宜選択することがで きる。 例えば、 ポリスチレンラテックス、 スチレンとジビエルベンゼンの共重 合体、 アクリル酸とスチレンの共重合体、 スチレンとマレイン酸の共重合体、 スチレンとメタクリル酸の共重合体、 スチレンとァクリル酸とアルキルァクリ レートなどの共重合体、 酢酸ビュルとァクリル酸の共重合体等のラテックスが 挙げられる。 粒径としては、 所定のマトリックスが形成されるものであればい かなる大きさでもよいが、 粒径が小さすぎると十分な空隙や膜厚が得られず、 大きすぎると十分な膜の強度が得られなくなることがある等の支障をきたすの で、 用いる条件等に応じて適当なものを選択する。 例えば、 1 0 n m〜1 0 0 μ πι程度であって、 好ましくは 1 0 0 n m~ 1 0 ^ mである。 また、 異なる粒 径を有するラテックス粒子を混合して用いることもできる。 このようにして条 件を調整することにより、 形成される所定のマトリックスの空隙率、 膜厚等を 最適化することができる。
さらに、 上記支持体は、 そのまま使用してもよいが、 何らかの表面処理を施 してから使用しても良い。 例えば、 ポリエチレングリコール等の親水性高分子 や牛血清アルブミン等のタンパク質等で表面を親水性化しても良い。 適当な表
面処理を選択することにより、 該支持体と、 生体関連物質及び/又は化合物と の結合の程度を調整することができ、 該支持体への非特異吸着反応等の副反応 を抑制することもできる。
また、 所定のマトリ ックスを強固に形成させるために、 官能基を支持体表面 に導入しても良い。 その官能基は任意であるが、 例えば、 ヒドロキシル基、 力 ルボキシル基、 チオール基、 ァミノアルデヒ ド基、 ヒ ドラジド基、 カルボニル 基、エポキシ基、 ビュル基、アミノ基、 スクシンイミ ド基、マレイミ ド基等の、 化学結合により所定のマトリックスを形成させる官能基が挙げられる。
さらに、 上記支持体に予め、 生体関連物質及び Z又は担持固定化用化合物を 固定化したものを用いても良く、 例えば、 ラテックス粒子に生体関連物質を固 定化した粒子を支持体として用いる場合、 ラテックス粒子表面に存在するカル ボキシル基、 アミノ基、 ヒドロキシル基、 チオール基等と生体関連物質の結合 官能基とを結合させればよい。 この内、 カルボキシル基が結合官能基と結合す る場合、 生体関連物質の結合官能基の具体例としてはァミノ基等が挙げられ、 カルボジィミ ド等を用いてアミ ド結合を形成させればよい。 一方、 例えば、 ラ テックス粒子と生体関連物質との間に疎液相互作用や静電的相互作用等が存在 する場合は、 これらの物理的相互作用によって生体関連物質をラテックス粒子 表面に固定させることができる。
また、 支持体は無電荷であることが望ましい。 本発明の生体関連物質固定担 体を用いて、 選択的生体関連物質間相互作用を検出しょうとする時、 検体中の 検出対象物質が支持体及び Z又は担持固定化用化合物と同じ電荷を有していて 静電的反発力が過度に強い場合には、 生体関連物質との間の特異的な相互作用 が妨げられる虞がある。 また、 検出対象物質と支持体及び 又は担持固定化用 化合物とが反対の電荷を有していた場合、 検出対象物質と支持体及び/又は担 持固定化用化合物とが非特異吸着等の非特異的相互作用を生じることが推測さ れるためである。
[V - 1 - 3 . 生体関連物質]
生体関連物質は、 固相担体に固定化する物質であり、 その目的に応じて、 任 意の物質を用いることができる。例えば、生体物質構造体に用いた生体物質や、
当該生体物質に特定物質が結合したものなどを挙げるとことができる。 具体例 を挙げれば、 酵素、 抗体、 レクチン、 レセプター、 プロテイン A、 プロテイン G、プロテイン A/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、 グルタチオン一 S—トランスフェラーゼ、 糖タンパク質等のタンパク質、 ぺプ チド、 アミノ酸、 ホルモン、 核酸、 糖、 オリゴ糖、 多糖、 シアル酸誘導体、 シ アル化糖鎖等の糖鎖、 脂質、 低分子化合物、 上述以外の高分子有機物質、 無機 物質、 若しくはこれらの融合体、 または、 ゥイノレス、 若しくは細胞を構成する 分子などの生体分子が挙げられる。 また、 このほか、 例えば細胞等の生体分子 以外の物質を生体関連物質として用いることもできる。
なお、 本発明の生体関連物質固定担体を分析に用いた場合には、 これら生体 関連物質は、検体中の検出対象物質 (分析物) と生体関連物質との相互作用(結 合性等) を測定する際の標的物質となる。
分析物は、 通常、 生体関連物質と特異的に相互作用する物質 (作用物質;以 下適宜、生体物質と相互作用する 「作用物質」や、特定物質と相互作用する 「特 定作用物質」 と区別するため、 「関連作用物質」 という) である。 ここで、 生 体関連物質と関連作用物質との 「相互作用」 とは、 特に限定されるものではな いが、.通常は、 共有結合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルワールス結合、 及 び静電力による結合のうち少なくとも 1つから生じる物質間に働く力による作 用を示す。 ただし、 本明細書に言う 「相互作用」 との用語は最も広義に解釈す べきであり、 いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。 共有結合 としては、 配位結合を含有する。 また静電力による結合とは、 静電結合の他、 電気的反発も含有する。 また、 上記作用の結果生じる結合反応、 合成反応、 分 解反応も相互作用に含有される。 .
相互作用の具体例としては、 抗原と抗体との間の結合及び解離、 タンパク質 レセプターとリガンドとの間の結合及び解離、 接着分子と相手方分子との間の 結合及び解離、 酵素と基質との間の結合及び解離、 アポ酵素と補酵素との間の 結合及び解離、 核酸とそれに結合する核酸又はタンパク質との間の結合及び解 離、 情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合及び解離、 糖タンパク質と タンパク質との間の結合及び解離、 糖鎖とタンパク質との間の結合及び解離な
どが挙げられるが、 この範囲に限定されるものではない。 さらに、 例えば、 ィ ムノグロブリンやその派生物である F ( a b , ) 2、 F a b ' 、 F a b、 レセ プターや酵素とその派生物、 核酸、 天然あるいは人工のペプチド、 人工ポリマ 一、 糖質、 脂質、 無機物質あるいは有機配位子、 ウィルス、 細胞、 薬物等が挙 げられる。
また、 上記の生体関連物質の例の中でも、 タンパク質としては、 タンパク質 の全長であっても、 結合活性部位を含む部分ペプチドであってもよい。 また、 アミノ酸配列、 及びその機能が既知のタンパク質でも、 未知のタンパク質でも よい。 これらは、 合成されたペプチド鎖、 生体より精製されたタンパク質、 あ るいは c D N Aライブラリ一等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、 精製したタ ンパク質等でも標的物質として用いることができる。合成されたペプチド鎖は、 これに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよレ、。これらのうち好ましくは、 精製されたタンパク質である。
さらに、 核酸としては、 特に制限はなく、 D N A、 R NAの他、 ァプタマ一 等の核酸塩基、 P N A等のペプチド核酸を用いることもできる。 また、 塩基配 列あるいは機能が、 既知の核酸でも、 未知の核酸でもよい。 好ましくは、 タン パク質に結合能力を有する、 核酸としての機能及び塩基配列が既知のものか、 あるいは、 ゲノムライブラリ一等から制限酵素等を用いて切断単離してきたも のを用いることができる。
また、 糖鎖としては、 その糖配列あるいは機能が、 既知の糖鎖でも未知の糖 鎖でもよい。 好ましくは、 既に分離解析され、 糖配列あるいは機能が既知の糖 鎖が用いられる。
また、 低分子化合物としては、 相互作用する能力を有する限り、 特に制限は ない。 機能が未知のものでも、 あるいはタンパク質に結合する能力が既に知ら れているものでも用いることができるが、 医薬候補化合物等が好適に用いられ る。
なお、 生体関連物質を用意する際、 通常は何らかの溶媒に生体関連物質を溶 解又は分散させた溶液や分散液として生体関連物質を用意するが、 この場合に
生体関連物質を希釈させる溶媒や分散媒は、 生体関連物質の活性や構造の安定 性等を考慮して調整することが好ましい。
また、 生体関連物質は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み 合わせ及ぴ比率で併用しても良い。 .
また、生体関連物質、該生体関連物質及び Z又は支持体と結合可能な化合物、 及び支持体を含む所定のマトリッタスが、 少なくとも 2種以上、 固相担体上の 別々の領域に配置されることにより作製されることを特徴とする生体関連物質 のアレイの場合、 配置されている生体関連物質の全てが機能的に関連している 関連作用物質と相互作用する生体関連物質のアレイであっても、 構造的に関連 している関連作用物質と相互作用する生体関連物質のアレイであっても、 同じ フアミリーのメンバーである関連作用物質と相互作用する生体関連物質のァレ ィであっても良い。
なお、 上記機能的に関連している関連作用物質の具体例としては疾患別作用 物質が挙げられ、例えば、代謝機能、内科領域疾患、消化器領域、循環器領域、 内分泌領域、 腫瘍領域、 感染症領域、 アレルギー領域のマーカーの組み合わせ 等が挙げられる。 このような特定の疾患に関連する関連作用物質の組み合わせ との相互作用を並行してァッセィすることは、 疾患との関連付けを総合的に行 う 「パネル検査」 や 「プロファイル検査」 等において非常に有用である。 上記ファミリーの具体例としては、 例えば、 成長因子レセプター、 ホルモン レセプター、 神経伝達物質レセプター、 カテコールアミンレセプター、 ァミノ 酸誘導体レセプター、 サイ ト力インレセプター、 細胞外マトリックスレセプタ 一、 抗体、 レシチン、 サイトカイン、 セルピン、 プロテアーゼ、 キナーゼ、 ホ スファターゼ、 r a s—様 G T P a s e、 ヒドロラーゼ、 ステロイドホノレモン レセプター、 転写因子、 熱ショック転写因子、 D N A結合タンパク質、 ジンク フィンガータンパク質、 ロイシンジッパータンパク質、 ホメォドメインタンパ ク質、 細胞内シグナル伝達モジュレーターおよびエフェクター、 アポトーシス 関連因子、 D N A合成因子、 D N A修復因子、 D N A組換え因子、 細胞表面抗 原、 C型肝炎ウィルス (H C V ) プロテアーゼ、 ならびに H I Vプロテアーゼ からなる群等が挙げられる。
[V - 1 - 4 . 担持固定化用化合物]
生体関連物質及び Z又は支持体と結合可能な化合物 (即ち、 担持固定化用化 合物) は、 上記生体関連物質及び/又は支持体と結合しうる化合物であれば、 任意の化合物を用いることができる。 したがって、 担持固定化用化合物として は、 上記生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な官能基 (以下適宜、 「結 合官能基」 ) を有する化合物を任意に用いることができる。 ここで、 結合官能 基としては、 上記の生体関連物質や支持体に結合可能な官能基であれば他に制 限はなく、 任意の官能基を用いることができる。 通常は、 生体関連物質の種類 や本発明の生体関連物質固定担体の用途などに応じて適当なものを選択するこ とが好ましい。 なお、 結合官能基は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を 任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
結合官能基は、 通常、 反応性基として共有結合を介して生体関連物質及び Z 又は支持体と結合するものと、 非共有結合を介して生体関連物質及び 7又は支 持体と結合するものとに大別される。 共有結合により結合する場合、 結合官能 基の具体例としては、 スクシンイミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基、 マレイ ミ ド基等が挙げられる。
以下、 生体関連物質との結合について具体的に説明する。 結合官能基と結合 する生体関連物質としては、 例えば、 タンパク質、 核酸、 糖等が挙げられる。 生体関連物質がタンパク質である場合、 タンパク質の表層に存在するァミノ 基、 ヒドロキシル基、 チオール基等と担持固定化用化合物の結合官能基とが結 合する。 この際、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例 としてはスクシンイミド基、 エポキシ基等が挙げられる。 また、 ヒドロキシル 基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が 挙げられる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の 具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
また、 生体関連物質が核酸である場合、 核酸の末端に導入されるァミノ基、 ヒドロキシル基、 チオール基等と担持固定化用化合物の結合官能基とが結合す る。 この際、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例とし てはスクシンイミド基、 エポキシ基等が挙げられる。 また、 ヒドロキシル基が
結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げ られる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体 例としてはマレイミ ド基等が挙げられる。
また、 生体関連物質が糖である場合、 糖の側鎖に存在するァミノ基、 ヒ ドロ キシル基、 チオール基等と担持固定化用化合物の結合官能基とが結合する。 こ の際、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはス クシンイミ ド基、 エポキシ基等が挙げられる。 また、 ヒ ドロキシル基が結合官 能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例として はマレイミ ド基等が挙げられる。
一方、 非共有結合により結合する場合、 例えば錯体を形成させて結合させる 場合には、 結合官能基の具体例としてはボロン酸基などが挙げられる。 また、 例えば生体関連物質間相互作用により結合させる場合には、 アビジン一ビォチ ン相互作用などを用いることができ、 その時に用いる結合官能基の具体例とし てはビォチン基が挙げられる。 また、 例えば生体物質としてウィルスを結合さ せる場合、 結合官能基の具体例としては糖や多糖が挙げられる。 さらに、 例え ば生体関連物質が疎液領域を有している場合には、 疎液相互作用による結合も 可能である。
また、 支持体との結合について具体的に説明する。 なお、 支持体に予め上記 生体関連物質が固定されている場合は、 支持体は生体関連物質を介して上記と 同様に担持固定化用化合物に結合する。
例えば、 支持体がラテックス粒子である場合、 ラテックス粒子表面に存在す るァミノ基、 ヒ ドロキシル基、 チオール基等と担持固定化用化合物の結合官能 基とが結合する。 このとき、 ァミノ基が結合官能基と結合する場合、 結合官能 基の具体例としては、 スクシンイミ ド基、 エポキシ基等が挙げられる。 また、 ヒ ドロキシル基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはェ ポキシ基等が挙げられる。 さらに、 チオール基が結合官能基と結合する場合、 結合官能基の具体例としてはマレイミ ド基等が挙げられる。
また、 例えば、 支持体と担持固定化用化合物間に疎液相互作用や静電的相互 作用等が存在する場合には、 これらの相互作用によって結合させることができ る。
担持固定化用化合物が結合官能基を有する場合、 担持固定化用化合物は、 1 分子中に通常 2箇所以上、 好ましくは 3箇所以上、 生体関連物質及び Z又は支 持体との結合官能基を有しているものが好ましい。 また、 該化合物は複数種を 混合して用いることもできるが、 前記のような複数の結合箇所を有するものを 少なくとも 1種以上含むことが好ましい。 このような構成とすれば、 所定のマ トリックスの構造を形成しやすくするためである。 具体例を挙げると、 1分子 中に 2箇所以上の結合官能基を有する化合物を用いることにより、 濃縮を行な つた場合等に所定のマトリツクスを確実に形成させることができるようになる。 さらに、 担持固定化用化合物としては、 通常は、 水と混和しうるものを用い ることが望ましい。 所定のマトリックス作製時に用いる溶媒は任意であるが、 通常は、 溶媒として水を用いる。 この際、 水の存在下で担持固定化用化合物を 支持体及び Z又は生体関連物質と混合することにより該化合物を支持体及び Z 又は生体関連物質に結合させるので、 そのような場合に支持体及び/又は生体 関連物質と担持固定化用化合物とを均一に混合し、 結合反応をスムーズに行な わせるためである。 なお、 本明細書においては、 混和の形態としては、 溶解し ていても良いし分散していても良い。
また、 担持固定化用化合物は、 少なくとも 1種の有機溶媒 混和しうること が好ましい。 これにより、 担持固定化用化合物の合成時に用いる溶媒の選択の ' 幅を広げることができ、 所定のマトリックスの構造を様々に設計することがで きる。 例えば、 担持固定化用化合物が有機溶媒に混和できれば、 担持固定化用 化合物の合成時に結合官能基を保護することを目的として合成を有機溶媒中で 行なうことができるようになる。
さらに、 担持固定化用化合物が水と有機溶媒との両方に混和できれば、 本発 明の生体関連物質固定担体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合に、 その 用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、 用途を広げること ができる。
また、 担持固定化用化合物は無電荷であることが望ましい。 本発明の生体関 連物質固定担体を用いて、 選択的生体関連物質間相互作用を検出しようとする 時、 検体中の検出対象物質が支持体及び 又は担持固定化用化合物と同じ電荷 を有していて静電的反発力が過度に強い場合には、 生体関連物質との間の特異 的な相互作用が妨げられる虞がある。 また、 検出対象物質と支持体及び Z又は 担持固定化用化合物とが反対の電荷を有していた場合、 検出対象物質と支持体 及び z又は担持固定化用化合物とが非特異吸着等の非特異的相互作用を生じる ことが推測されるためである。
なお、担持固定化用化合物が無電荷であるとは、当該担持固定化用化合物が、 少なくとも構造式上、 非イオン性であれば、 当該担持固定化用化合物は無電荷 である。 ただし、 本発明の生体関連物質固定担体の製造過程において、 結合官 能基の加水分解等により、 担持固定化用化合物が電荷をもったとしても、 本発 明の効果を損なわない限り、 このような担持固定化用化合物は好適に用いるこ とができる。
担持固定化用化合物の例としては、 例えば、 有機化合物、 無機化合物、 有機 無機ハイブリッド材料などが挙げられる。 また、 担持固定化用化合物は、 1種 を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良 い。
担持固定化用化合物として用いられる有機化合物は、 低分子化合物でも、 高 分子化合物でもよい。 低分子化合物の具体例としては、 ダルタルアルデヒ ド、 ジエポキシブタン、 ジエポキシへキサン、 ジエポキシオクタン、 ビスマレイミ ドへキサン、 ビススノレホスクシミジノレスべレイ ト、 ジスクシミジノレグノレタレィ ド、 エチレングリコーノレビススクシミジノレスクシネイト、 スノレホエチレングリ コーノレビススクシミジノレスクシネィト、 スクシミジル 4一 N—マレイミ ドメチ ルシクロへキサン 1一力ルポキシレイ ト、 スクシミジル 4一 N—マレイミ ドメ チルシクロへキサン 1一力ルポキシレイト、 スルホスルホスクシミジル 4一; ρ —マレイミ ドフエエノレブチレィ ト、 スクシミジノレ 4一 ρ一マレイミ ドフエ二ノレ プチレイト、 スノレホ ni—マレイミ ドベンゾィノレ一N—ヒ ドロキシスノレホスクシ ミ ドエステルなどが挙げられる。
一方、 担持固定化用化合物として高分子化合物を用いる場合、 高分子化合物 は合成高分子化合物であっても良く、 天然高分子化合物であっても良い。
担持固定化用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、 上記の条件を満 たす合成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。 ただし、 通 常は、 生体関連物質及び/又は支持体と結合することのできるモノマーを有し ていることが望ましい。 また、 通常は、 合成高分子化合物が水に混和できるよ うにするために、 親水性モノマーを有していることが好ましい。 さらに、 好ま しくは、 上記の生体関連物質及び/又は支持体と結合することができるモノマ 一と親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合物を用いることが望まし レ、。 即ち、 合成高分子化合物の合成には、 少なくともモノマー種として、 生体 関連物質及び Z又は支持体と反応してできるコンジュゲートを形成することが でき、 且つコンジュゲート間で結合し、 鎖状及び Z又は網目状、 ブロック状等 に結合した構造を構築するための結合官能基を有するモノマーと、 親水性又は 両親媒性の官能基を有するモノマーとを用いて共重合させることが好ましい。 さらに、 合成高分子化合物の溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを 制御する目的で疎水性モノマーを共重合してもよい。
合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、 ラジカル重合に おいて用いられるモノマーとしては、 スチレン、 クロノレスチレン、 ひーメチノレ スチレン、ジビュルベンゼン、 ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類; (メ タ) アクリル酸、 ィタコン酸、 マレイン酸、 フタル酸等の重合性不飽和カルボ ン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸等の重合性不飽和スルホン酸; (メタ) アクリル酸メチル、 (メタ) アクリル酸ェチル、 (メタ) アクリル酸 一 n _プチル、 (メタ) アクリル酸一 2—ヒドロキシェチル、 (メタ) アタリ ル酸ヒ ドロキシプロピル、 (メタ) アクリル酸グリシジル、 N— (メタ) ァク リロイロキシスクシンイミ ド、 エチレングリコールージー (メタ) アクリル酸 エステル、 (メタ) アクリル酸トリブロモフエニル、 2— (メタ) アクリル酸 グリコシロキシェチル、 2—メタクリロイロキシェチルホスホリルコリン、 等 の重合性カルボン酸エステル; (メタ) アクリロニトリル、 (メタ) ァクロレ イン、 (メタ) アクリルアミ ド、 N, N—ジメチルアクリルアミ ド、 N—イソ
プロピル (メタ) アクリルアミ ド、 N—ビニルホルムァミ ド、 3—アクリルァ ミ ドフエ二ノレボロン酸、 N—アタリロイルー —ビォチ二ルー 3, 6—ジォ キサオクタン一 1 , 9ージァミン、 ブタジエン、 イソプレン、 酢酸ビュル、 ビ 二ルビリジン、 Ν—ビエルピロリ ドン、 Ν— (メタ) アタリロイルモルフ了リ ン、塩化ビュル、塩化ビ-リデン、臭化ビュル等の不飽和カルボン酸ァミド類、 重合性不飽和-トリル類、 ハロゲン化ビュル類、 共役ジェン類、 ポリエチレン グリコールモノ (メタ) ァクリレート、 ポリプロピレンダリコールモノ (メタ) アタリレート等のマクロモノマー類、 などが挙げられる。
また、 合成高分子化合物のモノマーとしては、 付加重合で用いられるような モノマーも使用できる。 付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、 ジ フエニルメタンジィソシアナ一ト、 ナフタレンジィソシアナ一ト、 トリレンジ ィソシアナ一ト、 テトラメチルキシレンジイソシアナート、 キシレンジィソシ アナート、 ジシクロへキサンジイソシアナート、 ジシクロへキシルメタンジィ ソシアナート、 へキサメチレンジイソシアナート、 イソホロンジイソシアナ一 ト等の脂肪族又は芳香族イソシアナ一ト類、 ケテン類、 エポキシ基含有化合物 類、 ビニル基含有化合物類などが挙げられる。 また、 上記化合物群と反応させ るモスマーとしては、 活性化水素を有する官能基、 具体例としては水酸基又は アミノ基を有する化合物などが挙げられ、 具体的には、 エチレングリコール、 ジエチレングリコーノレ、プロピレングリコーノレ、 1, 4一ブタンジォーノレ、 1, 6一へキサンジオール、 グリセリン、 トリメチロールプロパン、 ペンタエリス リ トール、 ソルビトール、 メチレングリコシド、 しょ糖、 ビス (ヒ ドロキシェ チノレ) ベンゼンのようなポリオール類;エチレンジァミン、 へキサメチレンジ ァミン、 Ν , Ν' —ジイソプロピルメチレンジァミン、 Ν, Ν' —ジ一 s e c —プチルー ί>—フエ二レンジァミン、 1 , 3, 5—トリアミノベンゼン等のポ リアミン類;ォキシム類などが挙げられる。
さらに、 合成高分子化合物には、 上記モノマーの他、 架橋剤となりうる多官 能性化合物を共存させても良い。 多官能性化合物としては、 例えば、 Ν—メチ 口一ノレアクリルアミ ド、 Ν—ェタノ一ルァクリルァミ ド、 Ν—プロパノールァ クリノレアミ ド、 Ν—メチローノレマレイミ ド、 Ν—ェチロールマレイミ ド、 Ν—
メチロールマレインアミ ド酸、 N—メチロールマレインアミ ド酸エステル、 ビ エル芳香族酸の N—アルキロールアミ ド (例えば N—メチロール一 : _ビュル ベンズアミ ド等) 、 N— (ィソブトキシメチル) アクリルアミ ド等が挙げられ る。 さらに、 上述したモノマーのうち、 ジビュルベンゼン、 ジビエルナフタレ ン、 ジビニノレシクロへキサン、 1, 3—ジプロぺニノレベンゼン、 エチレングリ コールジ (メタ) アタリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) アタリレー ト、 ジエチレングリコールジ (メタ) アタリレート、 ブチレングリコール、 ト リメチロールエタントリ (メタ) アタリレート、 ペンタエリスリ トールテトラ (メタ) アタリレート等の多官能性モノマー類は、 架橋剤としても使用するこ とが出来る。
また、 前述の支持体及び/又は生体関連物質と結合しうる結合官能基を有す るモノマーとしては、 スクシンイミ ド基、 エポキシ基、 アルデヒ ド基、 マレイ ミ ド基等を有するモノマーの例として、 N— (メタ) アタリロイロキシスクシ ンイミ ド、 (メタ) ァクリル酸グリシジル、 ァクロレイン、 マレイミ ドアタリ レート等が挙げられる。 また、 結合官能基としてボ ン酸基を有するモノマー の例としては、 3—アクリルアミ ドフエ二ルポロン酸等が挙げられる。さらに、 結合官能基としてビォチン基を有するモノマーの例としては、 N—ァクリロイ ルー N' —ビォチェル一 3 , 6—ジォキサオクタン _ 1, 9—ジァミン等が挙 げられる。 また、 結合官能基として糖や多糖を有するモノマーの例としては、 2― (メタ) ァクリル酸ダリコシロキシェチル等が挙げられる。
さらに、 親水性モノマーの具体例としては、 (メタ) アクリル酸、 ィタコン 酸、 (メタ) アクリル酸 2—ヒ ドロキシェチル、 (メタ) アクリル酸 2—ヒ ド ロキシプロピル、 マレイン酸、 スルホン酸、 スルホン酸ソーダ、 (メタ) ァク リルアミ ド、 N, N—ジメチル (メタ) アクリルアミ ド、 N—イソプロピルァ クリルアミ ド、 N—ビエルホルムアミ ド、 (メタ) アクリロニトリル、 N— (メ タ) アタリロイルモルフアリン、 N—ビュルピロリ ドン、 N—ビュルァセトァ ミ ド、 N—ビエル一 N—ァセトアミ ド、 ポリエチレングリコールモノー (メタ) アタリレート、 (メタ) アクリル酸グリシジル、 2—メタクリロォキシェチル ホスホリルコリン等が挙げられる。
また、 担持固定化用化合物は、 前述のとおり無電荷のものが好ましい。 した がって、 担持固定化用化合物として用いる合成高分子化合物を無電荷にする場 合、 この無電荷の合成高分子化合物に使用するモノマーは無電荷であれば特に 限定されないが、 具体例を挙げると、 (メタ) アクリル酸 2—ヒ ドロキシェチ ノレ、 (メタ) アクリル酸 2—ヒ ドロキシプロピル、 メタ) アクリルアミ ド、 N , N—ジメチル (メタ) ァクリルアミ ド、 N—ィソプロピルァクリルァミ ド、 N 一ビニルホルムァミ ド、 (メタ) アクリロニトリル、 N— (メタ) アタリ ロイ ノレモノレフアリ ン、 N—ビニノレピロリ ドン、 N—ビ-ノレァセ トアミ ド、 N—ビニ ルー N—ァセトアミ ド、ポリエチレングリコールモノー(メタ) ァクリ レート、 (メタ) アタリル酸グリシジル等が挙げられる。
また、 モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、 通 常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、 ここで用 いるラジカル系重合開始剤の例としては、 2, 2 ' ーァゾビスイソプチロニト リル、 2 , 2 ' ーァゾビス一 (2—メチルプロパン二トリル) 、 2, 2 ' —ァ ゾビス一 ( 2 , 4—ジメチルペンタンニトリル) 、 2 , 2 ' ーァゾビス一 ( 2
—メチルブタン二トリル) 、 1, 1 ' —ァゾビス一 (シクロへキサンカルボ二 トリノレ) 、 2, 2 ' ーァゾビス一 (2, 4一ジメチルー 4ーメ トキシバレロ二 トリル) 、 2 , 2 ' —ァゾビス一 (2, 4—ジメチルバレロニトリル) 、 2, 2 ' —ァゾビス一 (2—アミジノプロパン) ヒ ドロクロリ ド等のァゾ (ァゾビ ス-トリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾィル、タメンヒ ドロペルォキシド、 過酸化水素、 過酸化ァセチル、 過酸化ラウロイル、 過硫酸塩 (例えば過硫酸ァ ンモェゥム) 、 過酸エステル (例えば t一プチルペルオタテート、 ひ一クミノレ ペルォキシピバレート及び t一ブチルペルォクテ一ト) 等の過酸化物タイプの 開始剤などが挙げられる。
さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。 レドックス系開始剤としては、 例えば、 ァスコルビン酸 Z硫酸鉄 (Π) Zペル ォキシ二硫酸ナトリウム、 第三プチルヒ ドロペルォキシド Z二亜硫酸ナトリウ ム、 第三プチルヒ ドロペルォキシド/ N aヒ ドロキシメタンスルフィン酸が挙 げられる。 なお、 個々の成分、 例えば還元成分は、 混合物、 例えばヒ ドロキシ
メタンスルフィン酸のナトリゥム塩と二亜硫酸ナトリゥムとの混合物であって もよい。
また、 合成高分子化合物は、 開環重合等で合成される高分子を使用してもよ レ、。 その具体例としては、 ポリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、 高分子化合物は加水分解等により合成される高分子を使用しても良 い。 その具体例としては、 ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成さ れるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
また、 高分子化合物には、 光反応性高分子を使用しても良い。 その具体例と しては、 例えば、 光反応性ポリアリルァミン (B i o c o n j . Ch em. , 9, 277 (1 9 98) 等) 、 光反応性ポリアタリル酸 ( L a n g m u i r,
14, 66 10, (1 9 98)等) などが挙げられ、 これらを用いる場合は、 支持体、 生体関連物質との所定のマトリッタスの形成において、 紫外線等の光 を照射することにより所定のマトリックスを形成させればよい。
上述した合成高分子化合物は、 化学修飾により、 前述の生体関連物質及び Z 又は支持体と結合する官能基を修飾することにより合成してもよい。
さらに、 この他、 担持固定化用化合 として、 市販の合成高分子化合物を用 いることができる。 その具体例を挙げると、 日本油脂社製の SUNBR I Tシ リーズ DE_030AS、 DE_030 CS、 DE_030GS、 PTE— 100GS、 PTE— 200GS、 HGEO— 100GS、 HGEO— 200 GSなどが挙げられる。
一方、 担持固定化用化合物として天然高分子化合物を用いる場合、 その具体 + 例としては、 デキストラン、 カルボキシメチルーデキストラン、 でんぷん、 セ ルロース、 ァガロース、 アラビアゴム、 アルギン酸等の多糖類、 ぺクチン、 了 ブミン、 コラーゲン、 ゼラチンなどのタンパク質、 DNA、 RNA、 核酸な どが挙げられる。 これらの天然化合物は、 そのまま使用しても良いし、 また、 化学修飾してから使用しても良い。
上記した化合物のうち、 本発明においては、 生体関連物質を架橋する能力を 有する化合物が好ましく用いられる。 具体的には、 例えば、 側鎖に架橋性官能 基を持つモノマーと両親媒性モノマーの組み合わせで合成される合成高分子等
が好ましく用いられる。 その中でも、 例えば、 N—アタリロイロキシスクシン イミ ドと N—アタリロイルモルフオリン、 N—ァク リロイ口キシスクシンィミ ドとジメチルァクリルアミ ド等の組み合わせで合成される合成高分子等が好ま しく用いられる。
なお、 合成高分子化合物及び天然高分子化合物などの高分子化合物を担持固 定化用化合物として用いる場合、 その高分子化合物の形態は任意である。 例え ば、 水溶液中で溶解していても良いし、 ミセルゃエマルシヨンのような会合体 でもかまわない。
さらに、 担持固定化用化合物として用いられる有機無機ハイプリッドとして は、 例えば、 金属コロイドを高分子で被覆したもの (例えば、 金、 銀、 白金等 の粒子を保護コロイドで被覆したもの) 、 クレイに高分子を吸着させたものな どが挙げられる。 なお、 これらの有機無機ハイブリッドは公知の方法で合成す ることが可能である (ポリマー系ナノコンポジット、 工業調査会、 中條澄著な どを参照) 。
さらに、 これらの有機無機ハイプリッドに生体関連物質を結合官能基を修飾 することによって、 担持固定化用化合物として用いることもできる。
また、 担持固定化用化合物の分子量や構造等は特に制限は無く任意であり、 例えば低分子量の化合物を用いても良いが、 その場合、 固定化しようとする一 つの生体物質内で架橋してしまい、 所定のマトリックス構造を形成できなくな る虞がある。 これを防止する観点からは、 担持固定化用化合物の分子量として は、通常 1 0 0 0以上、好ましくは 1 0 0 0 0以上、また、通常 1 0 0万以下、 好ましくは 5 0万以下が望ましい。 なお、 担持固定化用化合物として合成又は 天然の高分子化合物を用いる場合、 重量平均分子量が上記範囲に収まることが 好ましい。 この範囲を下回ると効果的に所定のマトリッタスが形成できなくな る虞があるためである。
さらに、 担持固定化用化合物が有する結合官能基の量は、 担持固定化用化合 物に対して、 重量%で、 通常 0 . 1 %以上、 好ましくは 1 %以上、 より好まし くは 5 %以上、 また、 通常 9 0 %以下、 好ましくは 8 0 %以下、 より好ましく は 7 0 %以下である。 この範囲を下回ると担持固定化用化合物が支持体や生体
関連物質と効率よく結合できない虞があり、 上回ると溶媒に混和できなくなる 虞があるためである。
[V— 1— 5 . 溶媒]
本発明の生体関連物質固定担体を製造する際には、 溶媒の存在下、 少なくと も上述した支持体、 生体関連物質、 及び担持固定化用化合物を共存させた混合 物を固相担体に供給する。
溶媒中において、 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物は溶媒に混和 できればその混和状態は任意であり、 溶解していても分散していてもよいが、 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物とが安定して結合するためには、 生体関連物質及び担持固定化用化合物は溶解していることが好ましい。 支持体 は十分に混和、 分散されていればよい。
溶媒は、 生体関連物質及び/又は支持体と担持固定化用化合物とが結合する 反応媒となるものであり、 前記支持体、 生体関連物質、 及び担持固定化用化合 物が混和しうるものであれば他に制限はなく、 任意の液体を用いることができ る。 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物の活性や構造の安定性、 機能 性などを考慮して選択することが好ましい力 通常は、溶媒として水を用いる。 水の存在下で固定化を行なうことにより、 生体関連物質の活性を十分に保つこ とが可能となるほか、 支持体、 生体関連物質、 及び担持固定化用化合物それぞ れの選択の幅が広がり、 適用範囲の拡大が期待できる。
また、 溶媒としては、 水以外の溶媒を用いても良く、 例えば、 有機溶媒を用 いることができる。 さらに、 有機溶媒の中でも、 両親媒性溶媒、 即ち、 水に混 和しうる有機溶媒が好ましい。
水のほかの溶媒の具体例としては、 例えば、 メタノール、 エタノール、 1 _ ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、 T H F、 D M F、 NM P、 D M S O、 ジォキサン、 ァセトニトリル、 ピリジン、 アセトン、 グリセリンなどが挙 げられる。
また、 これら溶媒には塩を加えても良い。 塩の種類は任意であるが、 具体例 としては、 N a C 1、 K C 1、 リン酸ナトリウム、 酢酸ナトリウム、 塩化カル
シゥム、 炭酸水素ナトリウム、 炭酸アンモェゥムなどが挙げられる。 また、 用 いる塩の量に制限は無く、 用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。 さらに、 溶媒に水を用いる場合、 水としては、 純水のほか、 生体物質や担持 固定化用化合物以外の媒質を溶解した水溶液を用いることもできる。 その例と しては各種緩衝液を挙げることができ、その具体例としては、炭酸バッファー、 リン酸バッファー、酢酸バッファー、 H E P E Sバッファーなどが挙げられる。 なお、 溶媒は、 1種を単独で用いても良く、 2種以上を任意の組み合わせ及 び比率で併用しても良い。
[V - 1 - 6 . 混合物]
混合物は、 溶媒の存在下、 支持体、 生体関連物質、 及び、 該生体関連物質及 び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させたものである。 具体的には、 上 述した溶媒中に、 支持体、 生体関連物質、 及び担持固定化用化合物が共存して いる混合物である。 また、 混合物中において支持体と生体関連物質及び担持固 定化用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。
前記の混合物中において、 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物との 比率は任意であって、 所定のマトリックスが形成される比率であれば良い。 た だし、 .上述のとおり、 生体関連物質と化合物は溶媒に溶解していることが好ま しく、 支持体は混和、 分散していることが好ましい。 例えば、 支持体として前 記ラテツクス粒子を用いる場合には、 混合物中に懸濁されているラテックス粒 子の濃度は、 0 . 5〜1 0 % [w/w] 程度である。
さらに、 この混合物を調製する方法に制限は無く、 任意である。 例えば、 支 持体の分散液と、 生体関連物質の溶液 (水溶液など) 又は分散液と、 担持固定 化用化合物の溶液 (水溶液など) 又は分散液とを混合すればよく、 予め、 これ らの溶液のうち 2種類を混合した溶液に他の溶液を加えても良い。
なお、 上記の混合物には、 支持体、 生体関連物質、 担持固定化用化合物、 及 び溶媒の他、任意の添加剤を共存させても良い。添加剤の例としては、例えば、 塩、 酸、 塩基、 バッファー、 グリセリン等の保湿剤、 生体関連物質の安定剤と しての亜鉛等の金属イオン、 消泡剤、 変性剤などを挙げることができる。
[V - 1 - 7 . 供給]
本発明の生体関連物質固定担体を製造する際には、 上述した混合物を、 固相 担体に供給する。 即ち、 上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。 その具体的な操作は任意であるが、 例えば、 あらかじめ混合物を用意してその 混合物を固相担体に接触させてもよいし、 混合物の各成分を別々に用意し、 固 相担体上でそれらを混合させて混合物を調製し、 固相担体に混合物を接触させ るようにしてもよい。 具体的には、 例えば、 支持体を含む分散液と生体関連物 質を含む溶液 (水溶液等) と化合物を含む溶液 (水溶液等) とを固相担体上に 各々供給した後に固相担体上で両溶液を混合する等により行なうことができる。 また、 予め混合物を用意しておく場合、 供給前の混合物中で後述するコンジュ ゲート及び/又は所定のマトリックスを作製しておき、 その後、 混合物を固相 担体に供給するようにしても良い。
[V - 1 - 8 . 所定のマトリックスの形成]
次いで、 固相担体表面に、 支持体と生体関連物質と化合物との結合が、 該支 持体を核として、 該生体関連物質及び Z又は該支持体に対して該化合物が結合 部位によつて結合することで形成させることにより、 鎖状、 網目状、 ブロック 状等の形状で結合してなる所定のマトリックスを形成させる。 混合物を調製す ると、.混合物中において支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物とが結合 し、 これら 3種類が任意の比率で含まれて構成されるコンジュゲートが生成さ れる。 このコンジュゲートは、 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物と が結合したもので、 支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物とを溶媒中で 混合し、 互いの分子を接触させるだけで作製することができる。 したがって、 固相担体に供給された混合物内には、 通常、 コンジュゲートが存在している。 コンジュゲートは、 乾燥等により溶媒の一部もしくは全部が除去される工程 において、コンジュゲート同士が集合し、互いが有する支持体、生体関連物質、 及び担持固定化用化合物が結合することにより、 鎖状、 網目状、 ブロック状等 の形状で結合した構造を有する所定のマトリックスを構成する。 したがって、 固相担体に供給された混合物を固相担体に接触させることにより、 例えば混合 物中のコンジュゲートが固相担体表面に集積されたり、 混合物中でコンジュゲ ート同士が結合して生成した所定のマトリッタスが固相担体に結合したり、 混
合物中の支持体、 生体関連物質、 及び担持固定化用化合物が固相担体表面に結 合することによりコンジユゲート及び Z又は所定のマトリックスが生成したり することで、 固相担体表面に所定のマトリックスを形成することができる。 混合物中の溶媒の量が多い場合などにおいては、.混合物中にコンジユゲート や所定のマトリックスが生成しにくい、 又は、 生成しない場合がある。 この場 合には、 混合物を濃縮することで、 コンジュゲートを効率的に形成させること ができる。 もちろん、 上記のように固相担体に供給された混合物がコンジュゲ ート及び/又は所定のマトリックスを含んでいる場合においても、 コンジュゲ 一ト及び/又は所定のマトリックスを更に生成させるため、 濃縮を行なっても よい。 ただし、 均一な所定のマトリックスを形成するためには、 混合物調製の 初期の段階においては、 溶媒中で支持体と生体関連物質と担持固定化用化合物 とを均一に混合することが好ましい。 したがって、 一旦比較的大量の溶媒中に 支持体と生体物質及び担持固定化用化合物を共存させ、 それを濃縮することに よりコンジユゲートを生成させることが好ましい。
なお、 通常は、 混合物を乾燥させる過程において混合物が濃縮されるので、 濃縮と乾燥とを一連の操作として行なうことができる。 混合物を乾燥、 濃縮す る方法は任意であるが、例えば、限外濾過、減圧乾燥などが挙げられる。また、 このほか、 単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を行なうようにしてもかまわ なレ、。
本発明の固相担体は、 好ましくは、 上述のように溶媒の一部もしくは全部を 除去することにより形成される空隙を所定のマトリックス中に有するものであ • る。 溶媒の除去は、 上述のとおり、 乾燥により行われることが好ましい。 この 乾燥の工程を経ることによって、 前記コンジユゲートが強固な所定のマトリツ タスを形成し、 さらに所定のマトリックス中に空隙が生成される。
例えば、 混合物を乾燥、 濃縮する際の温度条件は、 生体関連物質の変性等を 避ける観点から、 通常 3 7 °C以下、 好ましくは 2 5 °C以下で行なうことが望ま しい。
また、 混合物を乾燥、 濃縮する際の湿度、 圧力条件も、 所定のマトリ ックス の形成状態や所定のマトリックス中の空隙の形成状態に鑑みて適宜設定可能で める。
なお、 所定のマトリ ックスを固相担体に十分に固定化するために、 混合物の 供給後、 所定の時間だけ固相担体を静置することが望ましい。 静置の時間は任 意であるが、 通常 24時間以下、 好ましくは 1 2時間以下が望ましい。 すなわ ち、 固相担体に前記混合物を供給した後、 一定時間静置して十分にコンジュゲ ートの形成と担体表面への固定化を促進させてから、 乾燥等による溶媒の除去 を行えばよい。 このような工程を経ることにより、 十分な空隙と膜厚を有する 所定のマトリッタスが固相担体上に強固に形成された本発明の固相担体を作製 することができる。
上記記載の所定のマトリッタスの形成工程の一例を図 1 0 (a)〜図 1 0 (c ) に模式的に示す。 図 1 0 (a) 〜図 1 0 (c) に示すように、 生体関連物質と 担持固定化用化合物と支持体を含んだ混合物が固相担体に供給され (図 1 0 (a) )、 これら 3種類が任意の比率で構成されるコンジュゲートを形成し(図
1 0 (b) ) , その後、 溶媒が除去されることにより、 支持体を核として生体 関連物質と担持固定化用化合物とが支持体に結合し、 鎖状及びノ又は網目状及 びノ又はプロック状に結合した構造を有する空隙層を持った所定のマトリック スが形成される (図 1 0 (c) ) 。 なお、 図 1 0 (a) 〜図 1 0 (c) は、 所 定のマトリッタスの構造を説明するため、 本発明の生体関連物質固定担体の一 例の断面を拡大して示す模式図である。 また、 図 1 0 (a) 〜図 1 0 (c) に • おいて、 塗りつぶされた円形部分が生体関連物質を表わし、 線状部分が担持固 定化用化合物を表わし、 白抜きの円形部分が支持体を表し、'斜線部は溶媒を表 し、 空白部が空隙層を表す。
[V- 1 - 9. その他の工程] '
以上のように、 上記の方法は、 溶媒中に支持体と生体関連物質と担持固定化 用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、 固相担体表面に 所定のマトリックスを形成させることができ、 これにより、 本発明の生体物質
固定担体を製造することができる、 即ち、 固相担体上に生体関連物質を固定化 することができるという、 非常に簡便な方法である。
ところで、 本発明の生体物質固定担体を製造する際には、 上記の工程のほか の工程を行なってもよい。
例えば、 所定のマトリックス中の生体関連物質に、 さらに異なる生体関連物 質を結合させるようにしても良い。 これを利用すれば、 生体物質固定担体の製 造後、 所定のマトリックス中の生体関連物質に特定的に結合するように修飾し た別の生体関連物質を後から結合させ、 結果として、 固相担体に上記の別の生 体関連物質を高密度に固定化することができる。 具体例を挙げると、 生体関連 物質としてアビジンを用いて、 このアビジンと支持体と担持固定化用化合物と を結合させて所定のマトリックスを形成し、 生体物質固定担体を製造する。 そ の後、 ビォチンで修飾した別の生体関連物質を用いて、 アビジン一ビォチン相 互作用により上記の別の生体関連物質を固定化することができる。 また、 同様 にヒスチジンタグもしくはダルタチオン一 S—トランスフェラーゼ等を介して 生体関連物質を固定することも可能である。
[V - 2 . 生体関連物質固定担体]
本発明の生体関連物質固定担体は、 上述した方法により'製造されるものであ る。 また、 本発明の生体関連物質固定担体が有する所定のマトリックスは、 支 持体を核として上記のコンジユゲートが多数結合して構成されたものであり、 通常は、 図 8に示される様な、 生体関連物質と担持固定化用化合物とが鎖状及 ぴ Z又は網目状、 プロック状に結合した形状を有する構造体である。
さらに、 所定のマトリックスは、 上記の支持体を核として生体関連物質及ぴ 担持固定化用化合物からなる主鎖を有する構造体である。 なお、 ここで所定の マトリッタスの主鎖は所定のマトリッタスの骨格を構成するもので、 具体的に は支持体の周りを生体関連物質と担持固定化用化合物が取り囲み、 これらが更 に一つ以上の集合体を形成することにより形成されるものであり、 詳しくは、 支持体及び 又は生体関連物質に対して担持固定化用化合物が結合官能基等に よって結合して橋架け構造をとり、 その構造の繰り返しによって鎖状及び/又 は網目状、 プロック状の構造を形成されたものである。
したがって、 所定のマトリックスは、 担持固定化用化合物同士の間に生体関 連物質若しくは支持体が存在する橋架け構造を少なくとも一部に有しており、 生体関連物質及び化合物の両方によって、 支持体を核とした所定のマトリック スの主鎖が構成されている。 よって、 所定のマトリックスは、 その作製時に系 内に支持体、 生体関連物質及び担持固定化用化合物の全てが存在する際に形成 される。
さらに、 本発明の生体関連物質固定担体は、 好ましくは、 上述のように溶媒 の一部もしくは全部を除去することにより形成される空隙を所定のマトリック ス中に有するものである。 溶媒の除去は、 上述のとおり、 乾燥により行われる ことが好ましく、 この乾燥の工程を経ることによって、 前記コンジュゲートが 強固な所定のマ 1、リックスを形成し、 さらに所定のマトリックス中に空隙が生 成される。
所定のマトリッタスが支持体を核とした生体関連物質と担持固定化用化合物 とからなる主鎖を有していることは、 走查型電子顕微鏡 (S E M) 、 透過型電 子顕微鏡 (T E M) 等の電子顕微鏡による観察等の手法で確認することができ る。 また、 該所定のマトリックス中に形成されている空隙や膜厚についても、 同様に確認できる。
ここで、 空隙としては、 所定のマトリックス中に立体的に空間が形成されて いればよく、 所定のマトリックスが有する鎖状、 網目状、 もしくはプロック状 等の形状の間に空間を生じているものである。好ましくは、クラック(裂け目、 割れ目) 様の空隙、 多孔性物質等が有するマイクロポア様の空隙等であるが、 • これを用いたときに十分な反応性が確保できるものであればいかなるものでも 良い。 なお、 これらの空隙の形状は、 例えば、 電子顕微鏡等により確認するこ とができる。
空隙率とは、 所定のマトリックス中の空隙が占める割合を示す値である。 空 隙率を求める方法としては、 例えば、 電子顕微鏡写真を用いて画像解析を行う 方法、 ガス吸着法、 H gポロシティ一法等が挙げられる。
空隙率は目的に応じて任意であるが、 例えば、 所定のマトリックスが乾燥し た状態において、 S E M又は T E M像の断面図を画像解析することにより得ら
れる空隙率が、 5 %以上であることが好ましい。 画像解析の方法としては、 そ れ自体公知の画像処理方法を適宜選択して応用することができるが、 例えば、 取得した S E M写真をスキャナーで取り込み、 ノイズ除去を行った後に、 背景 画像を作成してシエーディング補正を行い、 粒子領域を設定して設定された閾 値において画像を二値化してこれらの面積比を求める方法等が挙げられる。 空隙率が低すぎると、 所定のマトリックス中への関連作用物質の拡散が抑え られたり、 固定化されている生体関連物質が表面に露出している度合いが低下 することにより、 生体関連物質と関連作用物質間の反応効率が低くなることが ある。また、洗浄効率が低下することによる非特異反応の上昇等の問題もある。 逆に、 空隙率が高すぎると、 十分な膜の強度を保持することができない等の問 題が生じることがある。 このような問題点も、 上述したように所定のマトリツ クスを形成させる条件を最適化することにより、 調整することができる。 所定のマトリックスの膜厚についても任意であるが、 例えば、 所定のマトリ ッタスが乾燥した状態において S E M又は T E Mで測定した膜厚が、 通常 5 n m以上、 好ましくは 1 0 n m以上、 より好ましくは 2 0 n m以上である。 膜厚 が小さすぎると、 所定のマトリックスの膜厚を均一にすることが難しく、 さら に、 さらに再現性良く多量の生体関連物質の固定化を行なうことが困難になる 場合があるためである。 なお、 所定のマトリックスの膜厚とは、 本発明の生体 関連物質固定担体の断面において、 固相担体との接触面から固定担体表面まで の厚さである。
所定のマトリックスの構造において、 上述したような空隙の形状、 空隙率、 ' 膜厚等は、 目的に応じて適切な生体関連物質と結合可能な化合物及び支持体を 選択し、 これらの構成比率、 固定化条件、 溶媒除去の条件等を適宜選択するこ とによつて最適化することができる。
[V— 3 . 効果]
本発明の生体関連物質固定担体は、 生体関連物質が従来よりも多量に精度良 く安価に固定化されているものである。
固定化量を増加させるための手法としては、 例えば、 高濃度の生体関連物質 を含む溶液を直接固相担体にスポッティングする方法が繁用されている。 しか
し、 この方法では、 滴下された溶液 (液滴) が乾燥する過程において、 液滴か らの蒸気 F 1 u Xが場所によつて一定ではなく、 液滴の外側からの F 1 u Xが 大きいことが知られている。 すなわち、 液滴の内部を考えたとき、 液滴の中心 から端部へ溶液の F 1 u xが生じており、 それに伴って溶質である生体関連物 質も中心から端部へと流れていくので、 溶媒の蒸発に伴って生体関連物質が液 滴の端部で析出し、 スポット周辺部に局在して高濃度の生体関連物質が固定化 され、 結果的にリング状のスポットを形成してしまうことが知られている。 こ のリング状のスポットは、 特に反応後の測定工程において大きな問題となり、 C V値を上昇させて測定精度を低下させる原因のひとつとなる。
特許文献 1〜 3のような従来技術では、 固相担体表面に形成された高分子膜
(ポリマー膜) に生体関連物質を結合させていた。 しかし、 この場合、 ポリマ 一鎖で形成された主鎖に対して、 生体関連物質が高分子鎖の先端に結合したり 高分子鎖にグラフト状に結合したりすることで、 生体関連物質を固相担体に結 合させていたため、 主鎖としてポリマー鎖を形成させる必要があり、 固定化す る生体関連物質に対して一定以上のポリマーを使用しなくてはならず、 生体関 連物質の固定化量に限界があった。
また、 膜の表面に生体関連物質が偏ってしまい、 高分子膜中に関連作用物質 が進入できる空隙がなくなって、 反応性が低下することがしばしばであった。 さらに、 主鎖が親水性ポリマーのみで構築される従来の技術では、 親水性ポリ マー鎖が排除体積効果及びポリマー鎖の運動により、 生体関連物質への関連作 用物質の接近を妨げることが推測される (生体物質相互作用のリアルタイム解 析実験法一 B I A C O R Eを中心に, 編集 永田和宏 '半田宏, 発行所 シ'ュ プリンガー ·フエアラーク東京株式会社, 第 2 5 8頁、 医療用高分子材料の開 発と応用, シーエムシー, 第 1 9頁) 。
また、 例えば非特許文献 1のような従来技術では、 固相担体が多孔性である ため表面積が大きく、 多くの生体関連物質を結合させることができるが、 直孔 フィルターや特別な固定化設備等を利用して固相担体に特殊な形状を持たせる 必要があり、 固相担体自体が高価かつ限定された担体になってしまうという問 題点があった。
さらに例えば、 生体関連物質と化合物のみを用いて所定のマトリックスを形 成させた場合は、 生体関連物質のみを担体に結合させるよりも多くの生体関連 物質を固定化可能ではあるが、 通常は十分な膜厚や空隙を形成することが難し く、 また、 スポッティングを行った場合にスポットがリング状になり、 十分な 精度を得ることが困難である。 たとえ多量の生体関連物質を固定化させて十分 な膜厚を確保できたとしても、 空隙が十分に形成されていないと、 膜中に含ま れる生体関連物質の反応性が損なわれたり、 これと反応すべき関連作用物質が 十分に拡散しなかったりして反応効率が低下することがある。 特に、 例えば、 生体関連物質と検出対象物質の組み合わせとして、 抗原と抗体、 タンパク質と リガンド等を用いる場合には、 これらの間に生じる抗原抗体反応等は微弱な生 物学的反応であるので、 固定化量が多量であって、 さらに固定化された物質の 生物学的活性が維持されおり、 かつ、 反応にあずかれるように表面に露出して いる必要がある。
本発明の生体関連物質固定担体はこれらの従来技術における問題点を解決し 得るものであって、 生体関連物質、 該生体関連物質と結合可能な化合物、 及び 支持体の 3つを含むことによって、 従来法に比べて強固で十分な膜厚を有する 所定のマトリックスを形成することができ、 十分な固定化量が得られる上に、 空隙も設けることができる点で、 非常に優位である。 すなわち、 生体関連物質 を、 固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で大量に固定することができる。 該空隙は、固定化された生体関連物質が反応するための反応場となり得るので、 本発明の生体関連物質固定担体をバイオセンサーや診断デバイス等に利用した ときに、 十分な反応性と感度を確保することができる。
また、 本発明の生体関連物質固定担体は、 混合物の濃度 (各構成要素の混合 比率) 、 所定のマトリ ックス形成時の温度、 湿度、 圧力等の条件を最適化する ことにより、 任意の性質の所定のマトリ ックスをムラなく精度良く形成させ、 簡便に作製することができる点においても優位である。 従来の方法では、 生体 物質を高密度に固定化するためには多くの工程を要していた。 具体的には、 従 来は、 固相担体上にあらかじめ高分子膜を形成し、 その高分子膜に生体物質を 固定化して固相担体上にリガンドを含んだ所定のマトリックスを構築したり、
多孔性担体の様な特別な構造を必要とした。 しかし、 これらの方法では、 固相 上に高分子膜を作製する際に、 高分子の分子量や固相担体への導入密度を適切 にコントロールする必要があり、 操作が非常に煩雑であり再現性良く固定化を 行なうことが困難であったり、 多孔性担体の場合は固定化の際に多孔性担体中 での生体関連物質の拡散による影響が生じたりする問題があった。 特に、 特許 文献 3の方法では、 固相担体表面からブラシ状に高分子鎖を構築することが技 術的に難しく、 大量生産には不向きであった。
これに対し、 本発明の生体関連物質固定担体は、 溶媒中に支持体と生体関連 物質と担持固定化用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで 固相担体状に所定のマトリックスを形成させること、 即ち、 生体関連物質を固 定化することができるという、 非常に簡単に製造可能なものである。 また、 特 許文献 2記載の技術のように、 生体関連物質固定担体の製造に用いる溶媒を有 機溶媒に限定され、 それにより使用できる生体物質を制限されることがないた め、 固定化する生体関連物質の選択範囲を広げることが可能となる。
また、 本発明の生体関連物質固定担体に形成された所定のマトリックスは、 管理された温度、 湿度、 圧力条件下で、 支持体と生体関連物質と固定化化合物 の量、.比率、 および または支持体の形状を変化させることにより、 所定のマ トリックスの形成状態、 膜厚や空隙率を任意に制御することができる。 従来技 術では、 通常は、 所定のマトリックスの膜厚をサブミクロンレベルから数ミク ロンレベルまで任意にコントロールすることは非常に困難であった。 しかし、 本発明によれば所定のマトリッタスの膜厚を上記のような精密なレベルで制御 することが可能であり、 所定のマトリックス構造の設計の自由度を高めること ができる。
例えば、 ィムノアツセィを行なう場合には、 固定するために用いる膜の膜厚 は、 生体関連物質が大量に固定化されかつ非特異的反応を抑制させる必要があ り、 その材質によって最適な膜厚が存在する。 また、 例えば、 医療用器具、 再 生医療担体の表面処理を行なう場合、 充分な強度及び被覆を実現させるために は、その表面処理に用いる膜にはミクロオーダーの膜厚が要求される。さらに、 例えば D D S (ドラッグデリバリーシステム) のための薬剤の表面処理を行な
う場合には、 ドラッグリリースの制御のためにその表面処理に用いる膜の膜厚 を厳密に制御することが要求される。 このように、 生体物質の固定化に何らか の膜を利用する場合には、 その膜厚制御が重要であることは知られていたが、 従来技術では非常に困難であった。 本発明によれば、 目的の用途に応じた膜厚 を、混合物の濃度、量、反応条件(温度や時間等) などを調製することにより、 任意に調製することができる。
さらに、 本発明の生体関連物質固定担体では、 生体関連物質と関連作用物質 とを相互作用させるべく本発明の生体関連物質固定担体を使用した場合に、 生 体関連物質以外の所定のマトリックス構成要素に起因する非特異的相互作用を 抑制することができる。 これは所定のマトリ ックス中における生体関連物質の 比率を高め、 生体関連物質以外の物質に非特異的相互作用を抑制する物質を使 用することにより達成できる。
また、 特に、 担持固定化用化合物として無電荷のものを用いた場合には、 電 荷により生じる非特異的相互作用をより一層抑制することも可能となる。即ち、 例えば特許文献 1記載の方法においては、高分子膜が荷電を有しているために、 用いる緩衝溶液の P Hゃィオン強度が生体物質の反応に大きく影響し、さらに、 荷電を有するタンパク質は静電気的相互作用による非特異吸着を避けられなか つた (ナノテクノロジー基礎シリーズ バイオナノテクノロジー 堀池靖浩 ' 片岡一則 (共編) 第 1 8 6頁を参照) 。 しかし、 担持固定化用化合物として無 電荷のものを用いれば、 そのような問題を回避可能であり、 特定の相互作用を 選択的に生じさせることが可能となる。 このことにより、 より一層測定の感度 を高めることができる。
[V - 4 . 生体関連物質固定化キット]
上述した生体関連物質固定担体を製造するためには、 少な.くとも支持体及び 担持固定化用化合物をキット化した生体関連物質固定化キットを用いても良い。 該生体関 物質固定化キットを用いれば、 固相担体上に上記所定のマトリック スを簡単に作製でき、本発明の生体関連物質固定担体を簡単に製造できるため、 生体関連物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化することが可能となる。
生体関連物質固定化キットに備えられる支持体は、 上述したものと同様であ る。 また、 生体物質固定化キットにおいて、 支持体はどのような状態で備えら れていても良く、 例えば、 任意の溶媒に溶解した溶液、 任意の分散媒に分散し た分散液、 粉末状や塊状の固体など、 その存在状態は任意である。
また、 生体関連物質固定化キットに備えられる担持固定化用化合物は、 上述 したものと同様である。 また、 生体物質固定化キットにおいて、 担持固定化用 化合物はどのような状態で備えられていても良く、 例えば、 任意の溶媒に溶解 した溶液、 任意の分散媒に分散した分散液、 粉末状や塊状の固体など、 その存 在状態は任意である。
さらに、 生体関連物質固定化キットには、 必要に応じて他の要素が備えられ ていても良い。
例えば、 溶媒をさらに備えていてもよい。 溶媒としては、 生体関連物質固定 担体の製造に用いる溶媒として上述した溶媒と同様である。 さらに、 生体関連 物質固定化キットにおいて、 この溶媒は、 上記支持体、 担持固定化用化合物と 別に備えられていても良く、 支持体や担持固定化用化合物の溶媒や分散媒等と して支持体や担持固定化用化合物と一体に備えられていても良い。
例えば、 所定のマトリッタスの製造を促進する試薬などをさらに備えていて も良い。 具体例としては、 担持固定化用化合物としてポリアクリル酸を用いる 場合には、 ポリアクリル酸のカルボエル基を活性させるために 1—ェチルー 3 一 (3—ジメチルァミノプロピル) 一カルポジイミド塩酸塩 (略称: E D C ) を試薬として備えるようにしてもよい。
[V - 5 . 用途]
本発明の生体関連物質固定担体は、 産業上の広い範囲において用いることが 可能である。具体的な用途に制限は無く、任意の用途に用いることができるが、 通常は、 生体関連物質と、 その生体関連物質と特異的に相互作用する関連作用 物質 (分析物) との 「相互作用」 を利用した用途に用いて好適である。
例えば、 本発明の生体関連物質固定担体は、 生体関連物質と相互作用する関 連作用物質を分析物として検出するバイオセンサーとして好適に使用できる。 上記のバイオセンサーは、 例えば、 いわゆる D N Aアレイもしくは D N Aチッ
プ、 または、 プロテインアレイもしくはプロテインチップ等と呼ばれる、 D N Aまたはタンパク質を固定化したセンサチップを用いて、 相互作用を解析する ものであるが、 本発明の生体関連物質固定担体は、 このセンサチップに適用す ることができる。 即ち、 センサチップに生体関連物質を固定化する場合に、 上 述した方法によりセンサチップ本体に所定のマトリックスを形成して、 センサ チップを本発明の生体関連物質固定担体として用いることができる。
このように、 本発明の生体関連物質固定担体を適用することができるバイオ センサーの具体例としては、 蛍光法、 化学発光法、 R I法、 F R E T法、 S P R (表面プラズモン共鳴) 法、 Q C M (水晶発振子マイクロバランス) 法、 ピ ェゾ方式力ンチレバー法、レーザー方式力ンチレバー法、質量分析法、電極法、 電界効果トランジスタ (F E T ) 法、 カーボンナノチューブを利用した F E T 及び Z又は単一電子トランジスタ法、 電気化学的方法によるセンサなどが挙げ られる。 この中でも、 化学発光法による検出は、 検体を高感度で分析すること ができるため、 好適に用いられる。
例えば、 化学発光法に本発明の生体関連物質固定担体を適用する場合、 セン サチップ本体の表面に所定のマトリックスを強固に結合するためには、 センサ チップ本体の表面が官能基を有していることが好ましい。 この場合、 官能基は 任意であるが、 例としては、 ヒ ドロキシル基、 カルボキシル基、 チオール基、 ァミノアルデヒド基、 ヒドラジド基、 カルボエル基、 エポキシ基、 ビニル基、 アミノ基、 スクシンイミド基等が挙げられる。
また、 例えば、 蛍光法に本発明の生体関連物質固定担体を適用する場合、 固 相担体、 支持体、 担持固定化用化合物は自己蛍光の影響が少ない材質を使用す ることが望ましく、 自己蛍光が生じる場合には時間分解蛍光法を採用すること が好ましい。
また、 例えば、 本発明の生体関連物質固定担体は、 上記バイオセンサーとし ての性質を利用して診断デバイス等に好適に用い得る。 診断デバイスの場合に は、 例えば、 抗体、 抗原、 酵素等のタンパク質や、 D N A、 R N A等の核酸、 薬物や抗生物質等の低分子化合物等を検出対象とすることが多く、 その測定方 法としては、 好ましくは化学発光法、 蛍光法、 R I法等が用いられる。
本発明の生体関連物質固定担体は、 例えば上記したようなバイオセンサー等 として、 検体中の分析物のアツセィに好適に用いられる。 本発明の分析物をァ ッセィする方法は、 検体中の少なくとも 1種の分析物についてアツセィする方 法であって、 (a ) 該検体を、 該分析物と反応し得る生体関連物質を少なくと も 1種含む本発明の固定担体及び Z又はアレイに送達し、 (b ) 該生体関連物 質と該分析物との相互作用、 又は、 該分析物と反応する標識物質を加えること により生じる反応を検出することにより、 該分析物の存在もしくは量について 検出することを特徴とする方法である。
ここで、 検体とは、 分析物を含むか又は含む可能性があるものであればよい ί 好ましくはヒ ト等の生体由来の試料である。 そのような試料としては、 例 えば、 血液、 血清、 血漿、 尿、 糞便、 鼻汁、 唾液などの体液、 細胞、 組織や、 それらの抽出液等が挙げられる。 分析物については、 前述のとおりである。 以下に、 化学発光法を用いて抗原抗体反応を検出する場合を例に挙げて、 本 発明の生体関連物質固定担体を用いたアツセィ方法についてさらに具体的に説 明する。
分析物である抗原に対する抗体 (1次抗体) が支持体及び担持固定化用化合 物と共に固定化された生体関連物質固定担体と、 検体中の該抗原とを、 一定時 間反応させる。 次に、 洗浄等により未反応の抗原及び抗原以外の共存物質を除 去し、 酵素により標識された該抗原に対する抗体 (標識 2次抗体) を一定時間 反応させて、さらに洗浄等により余剰な標識 2次抗体を除去する。これにより、 1次抗体、 抗原、 酵素標識 2次抗体間にサンドイッチを形成させる (サンドィ ツチ法) 。 なお、 抗原抗体反応を利用して検出対象物をアツセィする方法はサ ンドイツチ法に限られず、 インヒビッション法等広くィムノアッセィの領域で 用いられている方法を使用することができる。
反応後、 該酵素に対応する化学発光基質を加えることにより、 分析物である 抗原の存在または量に基づいて化学発光を生じさせ、 試験領域から発せられる 光信号を検出器により検出する。
このとき用いられる酵素としては、 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (H R P ) やアルカリ性ホスファターゼ (A L P ) 等が挙げられ、 基質としては、 H R P
を用いた場合にはルミノール、 A L Pを用いた場合には 1 , 2—ジォキセタン 等が用いられる。
また、 検出器としては、 電荷結合素子 (C C D ) カメラ、 光電子増倍管 (P MT ) 、 フォトダイオード (P D) 等が用いられ、 2種以上の生体関連物質が 1次元又は 2次元に固定されたアレイの場合、 検出器としては C C Dカメラ、 フォトダイォードアレイ、 スィツチング式 P M Tが好ましい。
また、 この様なアツセィ法は、 本発明の生体関連物質固定担体もしくはァレ ィへの検体等の送達をフローの条件下で行うこともできる。 このとき、 少なく とも検体が流体であることが好ましく、 さらに好ましくは、 他の試薬も流体の ものを用いる。 まず、 分析物である抗原に対する抗体 (1次抗体) が支持体及 び担持固定化用化合物と共に固定化された生体関連物質固定担体を含むセル (フローセル) を作製し、 該セルへ検体等をフローにて送達させて、 検体中の 該抗原を一定時間反応させる。 次に、 該フローセルに同じくフローにて洗浄液 を送達することにより、 未反応の抗原及び抗原以外の共存物質を除去する。 そ の後、 該フローセルに酵素により標識された該抗原に対する抗体 (標識 2次抗 体) を含む溶液を、 一定時間、 同じくフローにて送達することによって反応さ せる。 .再度、 該フローセルに洗浄液をフローにて送達し、 余剰な標識 2次抗体 を除去して、 1次抗体、 抗原、 酵素標識 2次抗体間にサンドイッチを形成させ る (サンドイッチ法) 。 用いられる方法、 酵素、 検出器等に関しては、 前記し たものと同様のものが用いられる。
なお、 いずれの場合においても、 予め本発明の生体関連物質固定担体上に参 • 照領域を設けておき、 この参照領域における反応を検出して、 比較することに より、 アツセィの成否を判定したり、 検出された分析物の存在又は量について の校正を行うことができる。 例えば、 予め既知濃度に調製された分析物である 抗原を、 生体関連物質が固定化された固相担体上の既知の領域 (参照領域) に 固定化させておき、 上記と同様の方法にてアツセィを行った後、 この参照領域 についても化学発光を生じさせ、 該参照領域から発せられる光信号を上記の検 出器により検出し、 これを検体中の分析物による反応から発せられる光信号と 比較することにより、 分析物の濃度の算出あるいは校正を行うことができる。
また、 この参照領域から発せられる光信号は予め期待される発光強度が把握で きるため、 この光信号の強度より、 アツセィの成否を判定することもできる。 また、 上記したような本発明のアツセィ.方法において 2種以上の分析物を並 行してアツセィする方法であって、 測定された分析物の存在もしくは量と、 特 定の症状とを関連づける方法も好ましく用いられる。 このような方法は、 例え ば、 「パネル検査」 や 「プロファイル検査」 等として非常に有用である。 パネ ル検査とは、 複数の検査マーカーを組み合わせることによって、 ある疾患や症 状についてより詳細な検查を行うことを意味する。 例えば、 癌の診断を行う場 合に、 ある一つの腫瘍マーカーの数値が高いということだけではどこの癌であ るかを特定するのは困難であるが、 複数の腫瘍マーカーを調べることにより、 腫瘍の種類や部位を絞り込んでいくことができる。また、 「プロファイル検査」 とは、 疾患治療における予後や治療効果の判定において、 従来の検査マーカー を含む複数の検査マーカーを測定し、 得られた結果の多変量解析等を用いて患 者ごとに異なる基準値を設定し、 その変動を詳細に解析するものである。 この ような解析結果は、些細な病態の変化も見逃すことなく適切な処置を施したり、 投薬の際に副作用等を回避するための知見として有用である。
このような検査の具体例として、 例えば、 心筋梗塞を診断する際に急性冠症 候群の患者の危険度の階層化のために行われる検査として、 独立に変動する 3 種類のマーカー、 すなわち、 神経ホルモンマーカーである B型ナトリウム利尿 ペプチド (B N P ) 、 虚血マーカーであるトロポェン T若しくは I、 炎症マー カーである C一反応性タンパク質 (C R P ) の全てを測定することにより、 予 • 後の判定に生かす手法が考えられている。 このほかにも種々の検査マーカーを 組み合わせた検査方法が提案されつつあり、 このような検査において、 本発明 の生体関連物質固定担体、 アレイ、 及びアツセィ方法は非常に好適に用いられ る。
さらに、 本発明の生体関連物質固定担体は、 D D S (ドラッグデリバリーシ ステム) のための薬剤の表面処理、 再生医療担体の表面処理、 人工臓器の表面 処理、 カテーテルなどの表面処理等に適用可能である。
[実施例]
以下、 本発明を実施例により更に具体的に説明するが、 本発明は以下の実施 例に限定されるものではなく、 本発明の要旨を逸脱しない範囲において、 任意 に変形して実施することができる。 なお、 実施例の説明において、 特に断らな い限り、 「%」 は 「重量%」 を表わす。
[1. 生体物質構造体及び生体物質担持体に関する実施例 (その 1)] 以下、 粒子状塊の構造に注目して、 生体物質構造体及び生体物質担持体につ いて検討した実施例を示す。
[実施例 1 _ 1. 固相担体に固定していない生体物質構造体を用いたァフィ二 ティー精製]
(1) 結合用化合物 (ポリマー A 1) の合成
モノマーである N—ァクリロイルモルファリン (NAM, KOH J I N社製) 1. 1 3重量部及び N_アタリロイロキシスクシンイミ ド (NAS、 ACRO S ORGAN I C S社製) 0. 3 3重量部と、溶媒である脱水ジォキサン(和 光純薬工業株式会社製) 1 8. 03重量部とをよく混合し、 50mLの四つ口 フラスコにそそぎ入れ、 室温で 30分間窒素にて脱気を行ない、 モノマー溶液 を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて 60°Cに昇温し、 重合開始剤ァゾビスィ ソブチロュトリル (A I B N、 キシダ化学株式会社製) 0. 0016重量部を 脱水ジォキサン 0.5 gに溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。 重合は窒素雰囲気下、 8時間行なった。
重合後、 ポリマーが生成した溶液は、 0. 5 Lのジェチルエーテル (国産化 学株式会社製) に滴下することにより再沈殿させた後、 溶媒を除去することに より粉末化し、 結合用化合物ポリマー A 1を得た。
■ 得られたポリマー A 1について、 標準ポリスチレンで校正された S EC (S i z e Ex c 1 u s i o nCh r oma t o g r a p h y) 測定を f丁なつ 7こ 結果、 ポリマー A 1の重量平均分子量 (Mw) が約 1 50000と見積もられ た。
また、 得られたポリマー A 1に含まれる NASと NAMとのモル比 (NAS /NAM) は、 一 NMR測定から NA S/NAM= 30Z70と見積もら
れた。
さらに、 ポリマー A 1を蒸留水にて 0. 2%、 0. 4%、 0. 6%の濃度に 調整し、 光子相関計 ALV 5000 (ALV社製) により、 測定角 30° 、 4 0° 、 50° 及び 60° にて、 動的光散乱法で測定したところ、 ポリマー A 1 の平均の流体力学的半径は 6. 8 nmと見積もられた。
(2) 生体物質構造体 Aの作製
エツペンドルフチューブ (以下適宜、 「エツペンチューブ」 という) 内に、 生 体物質であるマウス I gG (LAMP I REB I O LOG I CAL LABO RATOR I E S社製; Mw= 1 50 k D a) と結合用化合物ポリマー A 1と を、 両者の重量比率がマウス I gG:結合用化合物ポリマー A 1 = 10 : 1に なるように HE P E Sバッファー ( 10 mM、 p H 7. 4) で調製した液を 5 00 / Lいれ、 そのまま、 常温減圧乾燥により、 生体物質構造体を形成した。 なお、 ここで調製した液中におけるマウス I gG及び結合用化合物ポリマー A 1の合計濃度は 10mg/m であった。
その後、 生体物質構造体を濃縮 ·乾燥した。 この生体物質構造体に HEP E
Sバッファー 1 mLを加え、 遠心操作 (5000 r pm、 10分;以下、 遠心 操作は、 特に断りがない限り、 本条件で行なった) により、 浮遊している生体 物質構造体を沈殿させ、 上清を取り除いた。 ,
さらに、 HEPESバッファー lmL加え、同じ操作をさらに 2回行なった。 次に、 未反応のスクシンイミ ド基をブロッキングする目的で、 1Mのェタノ ールァミン (pH8. 5) lmLを加え、 1 5分間室温で浸漬し、 遠心操作に ' て、 上清を取り除いた。
さらに、ポリマー A1と共有結合していないマウス I gGを取り除く目的で、 1Mになるように KC 1を HE PE Sバッファー lmLで調製した溶液 (1M KC 1 -HEPES) を 1 5分間浸漬し、 上清を取り除き、 さらにグリシン バッファー (10mM、 p H 1. 7) を加え、 遠心操作により、 上清を取り除 いた。 最後に HE PE Sバッファー ( p H 7. 4) を 1 mL加え、 遠心操作に より、 上清を取り除き、 生体物質構造体 Aを得た。
(3) 生体物質構造体 Aを用いたァフィユティー精製
ゥサギ血清(NRS) (タンパク質濃度約 7 OmgZmL) に、 ゥサギ血清ァ ンチマウス一 F a b ' (マウス I g Gと特異的相互作用をする精製分離特定対 象物質 A) (ィムノプローブ社製、 Mw=約 50 kD a) の濃度が 100 μ gZ mLになるようにゥサギ血清アンチマウス _F a b ' (4. 3mg/mL) を加 えた液 (混合溶液 A) を、 前述 (2) の生体物質構造体 Aを入れたエツペンチ ユープに lmL加え、 30分間浸漬し、 遠心操作で上清を分離した (上清 A)。 さらに、 これに lmLの HE PE Sバッファーを加え、 遠心操作にて上清を 取り除いた。 これをさらに 4回繰り返した。
その後、 1M KC 1— HE PE S溶液を 1 mL加え、 遠心操作により洗浄 を行なった (洗浄 A)。
さらに、 特異的に結合した対象物質を回収するために、 グリシンバッファー (1 0mM、 p H 1. 7) 水溶液を lmL加え、 1 0分間浸漬した。 その後、 遠心操作により、 上清 (精製 A) を回収した。
その後、 これらの、 混合溶液 A、 対象物質 A、 上清 A、 洗浄 A、 精製 Aに対 して、 SD S— PAGEによる電気泳動を行ない、 その後、 銀染色法により、 電気泳動ゲルを染色した。 分子量マーカーとしては、 フルレンジレインボーマ 一力一 PRN800 (アマシャム社製) を用いた。 その結果を図 1 1に示す。 精製 Aにおいては、 対象物質である F a b' に対応するもののみが観測され ることから、 上記の精製操作により、 非特異吸着物質をほとんど混入すること なくなく、 分離精製することができたことが確認された。
[実施例 1一 2. 生体物質構造体の構造及び組成の分析]
(4) 生体物質構造体基板 1の作製
生体物質構造体を担持する固相担体として、 大きさが縦 2. 5 cmX横 2. 5。111 厚さ 1. 2 mmの平板状ポリカーボネート製の基体表面に、 厚さ約 8 0 nmで金を蒸着したものを用いた。 この基板を 10 mMの 16—メルカプト へキサデカン酸 (16— MERCAPTOHEXADECANO I C AC I D ; ALDR I C H社製) ェタノール溶液に浸漬させ、 室温で 1 2時間反応さ せ、 表面処理を行なった。 反応終了後、 基板をエタノールで洗浄した。 この表 面処理は、 基板表面に金一硫黄結合を介してカルボキシル基を導入するための
処理である。
次に、 0. 1MのN—ヒ ドロキシスクシイミ ド (NHS、 和光純薬工業社製) 水溶液 lmLと 0. 4Mの 1—ェチルー 3— ( 3—ジメチルァミノプロピル) 一カルポジイミ ド塩酸塩 (EDC、 同仁化学研究所製) 水溶液 lmLとを混合 し、 さらに脱塩水 1 8 gで希釈した溶液に、 上記のカルボキシル基を導入した 基板を浸漬させ、 1 5分間反応させた。 これは、 基板表面に、 基板と生体物質 構造体とを結合させることができるスクシンィミド基を導入するためである。 マウス I gGとポリマー A 1とを重量混合比 10 : 1 (生体物質:結合用化 合物) で混合した混合物を、 基板の表面に 20 / Lだけスポッティングした。 これを飽和蒸気圧下で 30分放置した後、 室温にて乾燥し、 未反応の活性エス テル基をエタノールァミンでブ口ッキングした。
その後、 基板を 1M—KC 1の HE P E Sバッファーに浸漬し ( 1 5分 X 2 回)、 さらにグリシンバッファー (1 OmM、 pH 1. 7) に浸漬し (1 5分 X 1回)、 未反応のタンパク質を洗浄した。
その後、 脱塩水でよく洗浄し、 乾燥して、 生体物質構造体基板 1を得た。
(5) 生体物質構造体基板 1を用いたァフィ二ティー精製
NRSに、アンチマウス F a b ' (対象物質 1)の濃度が 100 μ g /m Lに なるようにアンチマウス F a b' を添加した溶液 (混合溶液 1) を、 生体物質 構造体基板 1上に 1◦ 0 L滴下した。 飽和蒸気圧下で 30分間放置し、 サン プルを回収し(F l ow t h r o u g h l),その後生体物質構造体基板 1を 洗浄した。 洗浄は、 脱塩水によって予備洗浄し、 1M— KC 1の HE PE Sバ ッファーに浸漬した (1 5分 X 3回)。
さらに、 抗原抗体反応で結合したアンチマウス F a b ' を回収する目的で、 生体物質構造体基板 1をグリシンバッファー (10mM、 pHl. 7) に浸漬 し、 そのグリシンバッファーごとアンチマウス F a b' を回収した (精製 1)。 その後、 これらの、 混合溶液 1、 対象物質 1、 F l ow t h r o u g h l、 精製 1に対して、 SD S— P a g eによる電気泳動を行ない、 その後、 銀染色 法により、 電気泳動ゲルを染色した。 その結果を図 1 2に示す。 精製 1におい て、 分離対象物質である F a b' が非特異吸着物質が混入することなく、 分離
精製することができた。
( 6 ) 生体物質構造体基板 1の構造の観察
生体物質構造体基板 1の表面に形成されている生体物質構造体の、 断面を s
EM (走査型電子顕微鏡) で観察し、 表面を AFM (原子間力顕微鏡) で観察 した。 図 1 3に S EMによる観察結果を表わす図面代用写真を示し、 図 14に A F Mによる観察結果を表わす図面代用写真を示す。
図 1 3, 14より、 得られた生体物質構造体は、 生体物質と結合用化合物で 形成された粒径 1 00 nm以下の粒子状塊が連なって結合した構造となってい ることが確認された。
(7) 生体物質構造体基板 1の構造体の成分分析
基板に混合物を 1 μ Lずつ 40スポットした以外は前述(4)と同様にして、 成分分析用生体物質構造体基板を作製した。
そして、 成分分析用生体物質構造体基板上の生体物質構造体を塩酸で加水分 解し、 生じたアミノ酸量から I gGを定量した。 さらに、 加水分解物中のポリ アクリル酸量から、 結合用化合物ポリマー A 1を定量した。
具体的には、 成分分析用生体物質構造体基板上の生体物質構造体を、 6N塩 酸、 1.50°C、 l h rで加水分解した。 その後、 塩酸を減圧乾燥し、 加水分解 物を 1 %アンモニア水に溶かし、 遠心分離 (10000 r pm、 3分) で不溶 分を除いた。 この加水分解溶液を減圧乾燥後、 0. 1 %ァンモ-ァ水1111 に 溶かし、 100 Lをアミノ酸分析、 400 Lを P AA (ポリアクリル酸) 分析に用いた。
(アミノ酸分析試料)
上記の加水分解溶液 100 μ Lを減圧乾燥し、 0. 02 Ν塩酸 500 Lに 溶かした。 これを遠心式限外ろ過 (MWCO : 10000、 マイクロコン ΥΜ - 10) し、 ろ液 10 μ Lをアミノ酸分析した。
ァミノ酸分析は、 以下の表 1一 1の条件で行なった。
[表 1一 1 ]
装置 日立高速アミノ酸分析計 L一 8500
分析条件 生体アミノ酸分離条件一二ンヒドリン発色法(570nm、 440nm)
ネ 口。 和光純薬製標準アミノ酸混合液(各アミノ酸 200uM含有)
試料 加水分解試料 10〃 L
Proは 440nm、他のアミノ酸は 570nmのピ-ク面積から一点外部標準法にてアミノ酸含量を 疋 _¾a†算
算出。
(ポリアクリル酸分析試料)
上記の加水分解溶液 400 Lを遠心式限外ろ過 (MWCO : 10000) で濃縮し、 1 %アンモエア水 400 Ζ Lで希釈した。 この限外ろ過による希釈 一濃縮操作を 6回繰り返して低分子成分を除いた。 高分子成分を 1 %アンモ- ァ水で回収し、 減圧乾燥してからポリアクリル酸 (ΡΑΑ) 分析に供した。
ΡΑΑ分析 (反応熱分解 G CMS) は、 以下の表 1— 2の条件で行なった。
[表 1— 2]
その結果、 マウス I gGは 3 9 0 Ai g、 ポリマー A 1は 1 6. 9 μ g検出さ れ、 生体物質構造体中に含まれる生体物質の比率 [生体物質の重量 Z生体物質 構造体の重量] は 0. 958となり、 生体物質構造体に含まれる生体物質の重 量の比率が極めて高いことが示された。
[実施例 1 _ 3. 固相担体に固定した生体物質構造体を用いたァフィ二ティー 精製]
(8) 生体物質構造体基板 2の作製
マウス I g Gをプロティン A (シグマ社製)、 HE PE Sバッファーをリン酸 バッファー(pH 9)にそれぞれ変更した以外は前述の(4) と同様の方法で、 生体物質構造体基板 2を作製した。
(9) 生体物質構造体基板 2を用いたァフィユティー精製
NRS (混合溶液 2) を、 生体物質構造体基板 2上に 100 L滴下した。 飽和蒸気圧下で 30分間放置し、 サンプルを回収し (F l ow t h r o u g h 2)、その後生体物質構造体基板 2を洗浄した。洗浄は、脱塩水によって予備 洗浄し、 1 M-KC 1の HE P E Sバッファーに浸漬した ( 1 5分 X 3回)。 さ らに、 プロテイン Aに結合した I gGを回収する目的で、 生体物質構造体基板
2をダリシンバッファー ( 1 OmM p H 1. 7) に浸漬し、 その HC 1水溶 液ごとアンチマウス I gGを回収した (精製 2)。 これら、 混合溶液 2、 F 1 o w t h r o u g h 2、 精製 2に対して、 S D S— P a g eによる電気泳動を 行い、 その後、 銀染色法により、 電気泳動ゲルを染色した。 その結果を図 1 5 に示す。 精製 2において、 マーカーの分子量が約 1 5万であることから、 精製 2において得られた物質が I g Gであることがわかる。
以上より、対象物質である I g Gが非特異吸着による混入が生じることなく、 分離精製することができたことを確認した。
[実施例 1一 4. 生体物質構造体及び生体物質構造体と相互作用した対象物質 の量の測定]
(10) QCM測定
上記の (1) と同様にして、 結合用化合物としてポリマー (以下、 ポリマー B 1と呼ぶ) を合成した。 この時、 NAMは0. 564重量部、 NASは0. 1 6 9重量部、 ジォキサンは 8. 75重量部、 A I BNは 0. 008重量部だ け用いた。 得られたポリマー B 1の重量平均分子量 ' (Mw) を測定したところ 約 86000であり、 N A Sと NAMとのモノレ比は NA/NAM= 30/70 であった。
上記の (4) で作製した生体物質構造体基板 1と同様にして、 表面処理した QCM用センサーチップ (ィ -シアム社製) を用意した。
その Q CM用センサーチップに、 (4)で作製した場合と、スポット量を 2◦ μ から 3 μ Lに変更し、 結合用化合物としてポリマー Β 1を使用した以外は 同様にして、 生体物質としてマウス I gGを有する生体物質構造体を QCM用 センサーチップの上に固定した。
その後、 この Q CM用センサーチップを 10 μ gZmLのアンチマウス F a b ' の HE PESバッファー (10mM, p H 7. 4) に 1時間浸漬した。 こ の際、 上記の操作の各段階における吸着挙動を、 ィニシアム社製 QCM AF FN I X Qで測定した。 具体的には、 表面処理後 (即ち、 表面処理を行なつ た後、 生体物質構造体を形成する前)、 生体物質構造体固定後 (即ち、 アンチマ ウス F a b'水溶液に浸漬する前)、及びアンチマウス F a b' を反応させた後
(即ち、 アンチマウス F a b' 水溶液に浸漬した後) のそれぞれについて、 測 定を行なった。 なお、 測定はすべて空気中で水分を乾燥させたものを測定値と した。 その結果を表 1— 3に示す。
生体物質構造体固定後と表面処理後との間の振動数変化量は一 426 90 H zであり、 したがって、 生体物質構造体固定後の生体物質構造体の量は Q CM センサ一チップ上で約 25. 6 μ g/c m2と算出された。
また、 アンチマウス F a b' 反応後と生体物質構造体固定後との間の振動数 の変化量は一 9306 H zであり、 したがって、 アンチマウス F a b ' を反応 させた後の Q CMセンサ一チップ上におけるアンチマウス F a b ' の吸着量は 約 5. 6 μ g/cm2と算出された。
[実施例 1一 5. 生体物質構造体を形成させるための条件についての検討]
(1 1) 生体物質構造体基板 3の作製
生体物質をマウス I g Gからアルブミン (ALBUMI N, P I Gシグマ社 製) に変更した以外は、 前述の (8) と同様の方法で生体物質構造体基板 3を 作製した。
(1 2) 生体物質構造体基板 4の作製
生体物質をマウス I g Gからストレプトアビジン (P I ERC E社製) に変 更した以外は、前述の(8)と同様の方法で生体物質構造体基板 4を作製した。
(1 3) 参照例:ダルタルアルデヒドによる参照用基板の作製
ポリマー A 1に代えてダルタルアルデヒド (東京化成工業社製 分子量 10 0) を用いた以外は前述の (1 1) と同様にして、 参照用の生体物質を担持し た基板 (参照用基板) を作製した。
(14) A FM観察による対比
生体物質構造体基板 3, 4及び参照用基板をそれぞれ AFMによって観察し、 その構造を確認した。 その結果を表わす図面代用写真を図 1 6 (a) 〜図 1 6
(c) に示す。 なお、 図 1 6 (a) は生体物質構造体基板 3を観察したもので あり、図 1 6 ( b )は生体物質構造体基板 4を観察したものであり、図 1 6 (c) は参照用基板を観察したものである。
図 16 (a), 図 1 6 (b) ではタンパク質分子よりもはるかに大きい濃淡が 観察されている。 これにより、 図 16 (a)、 図 16 (b) のように、 適切な条 件で結合用化合物を用いた場合には粒子状塊が結合することによって生体物質 構造体が形成されることが確認された。
—方、図 1 6 (c)で観察される濃淡の大きさはおよそ 5〜1 O nmであり、 タンパク質 1分子の大きさと同じである。 したがって、 図 1 6 (c) で観察し た参照用基板では粒子状塊は見られず、 緻密にタンパク質分子がダルタルアル デヒドによって結合された構造となっていることが分かる。 これにより、 ダル タルアルデヒドのような低分子量体の結合用化合物を用いた場合、 ポリマー A 1のような高分子量の結合用化合物を用いた場合とは別の適切な条件で生体物 質構造体を調製するようにしなければ粒子状塊を形成することは難しく、 した がって、 結合用化合物の物性などの条件に応じ、 適切な条件で生体物質構造体 を調製すべきであることが確認された。
[実施例 1一 6. 膨潤による粒子状塊同士の間の空間の確認]
(1 5) 生体物質構造体基板 1の膨潤確認
上記の (7) と同様にして、 生体物質構造体基板 (以下、 生体物質構造体基 板 6という) を作製し、 その代表 1スポットに対して、 乾燥状態と溶媒による 膨潤状態とでの膜厚の測定を A FMにより行なった。 溶媒には HEP E Sバッ • ファー (10mM、 pH7. 4) を用い、溶媒浸漬 30分後に膜厚を測定した。
その結果、 乾燥状態では 3. 7 μ mであったものが、 溶媒浸漬後は 5. 2 μ mに膨潤した。 これにより、 生体物質構造体基板 6上の生体物資構造体におい ては、 粒子状塊の間に空間が形成されていることが確認された。
[ 2.生体物質構造体及び生体物質担持体に関する実施例及び比較例(その 2 ) ] 以下、 マトリックスの主鎖の構造に注目して、 生体物質構造体及び生体物質 担持体について検討した実施例を示す。
[ポリマー (結合用化合物) の合成]
[製造例 2— 1 :ポリマー A 2の合成]
モノマーである N—アタリロイルモルホリン (NAMヽ KOH J I N社製) 0. 564重量部と N—ァクリロイロキシスクシンィミ ド (NAS、 ACRO S ORGAN I CS社製) 0. 169重量部と、 溶 ¾である脱水ジォキサン (和光純薬工業株式会社製) 8. 75重量部とをよく混合し、 50mLの四つ 口フラスコにそそぎ入れ、 室温で 30分間窒素にて脱気を行ない、 モノマー溶 液を調製した。 このモノマー溶液をオイルバスにて 60°Cに昇温し、 重合開始 剤ァゾビスイソブチロニトリル (A I BN、 キシダ化学株式会社製) 0. 00 8重量部を脱水ジォキサン 0. 5 gに溶かした溶液を入れることにより、 重合 を開始した。 重合は窒素雰囲気下、 8時間行なった。
重合後、 ポリマーが生成した溶液は、 0. 5 Lのジェチルエーテル (国産化 学株式会社製) に滴下することにより再沈殿させた後、 溶媒を除去することに より粉末化し、 ポリマー A 2を得た。
得られたポリマー A 2について、 標準ポリスチレンで校正された S EC測定 を行なった結果、 重量平均分子量 (Mw) が約 86000と見積もられた。 また、 得られたポリマー A 2に含まれる NASと NAMとのモル比 (NAS/NAM) は、 NMR測定から NAS/NAM= 30Z70と見積もられた。
[製造例 2— 2 :ポリマー B 2の合成]
モノマーとして、 NAM及び N ASに代えてジメチルアクリルアミ ド (DM AA、 KOH J I N社製) 0. 793重量部、 及び、 N A S 0. 338重量 部を用い、 溶媒である脱水ジォキサンの使用量を 1 8. 37重量部とし、 重合 開始剤である A I BNの使用量を0. 00 164重量部とした以外は、 製造例 2- 1 (ポリマー A 2の合成) と同様にして、 ポリマー B 2を得た。
得られたポリマー B 2について、 標準ポリスチレンで校正された S EC測定 を行なった結果、 重量平均分子量 (Mw) が約 26000と見積もられた。 また、ポリマー B 2に含まれる N ASと NAMとのモル比(NAS/NAM) は、 NMR測定から NAS/NAM-43/5 7と見積もられた。
[製造例 2— 2, : ポリマー C 2の合成]
モノマーとして、 NAMを1. 1 3重量部、 NASを 0. 33重量部、 溶媒
である脱水ジォキサンを 1 8. 03重量部とし、 重合開始剤である A I BNの 使用量を 0. 00 1 6重量部とした以外は、 製造例 2— 1 (ポリマー A2の合 成) と同様にして、 ポリマー C 2を得た。
[センサチップの表面処理]
[製造例 2— 3 : S PRセンサチップ A]
S PR用センサチップには、大きさが縦 2. 5 cmX横 2. 5 cmX厚さ 1. 2mmの平板状ポリカーボネート製の基体表面に、 溝ピッチ約 870 nm、 溝 深さ約 40 nmの回折格子を有し、 さらにその基体表面に厚さ約 80 nmで金 を蒸着した金被覆センサチップを用いた。
この金被覆センサチップを、 1 OmMの 1 6 _メルカプトへキサデカン酸(1
6 -MERCAPTOHEXADECANO I C AC I D ; ALDR I CH 社製) エタノール溶液に浸漬させ、 室温で 1 2時間反応させ、 表面処理を行な つた。 反応終了後、 金被覆センサチップをエタノールで洗浄した。 この表面処 理は、 金被覆センサチップ表面に金—硫黄結合を介してカルボキシル基を導入 するものである。
次に、 0. 1Mの N—ヒ ドロキシスクシイミド (NHS、 和光純薬工業社製) 水溶液 1 m Lと 0. 4 Mの 1ーェチル一 3— ( 3—ジメチルァミノプロピル) 一カルポジイミド塩酸塩 (EDC、 同仁化学研究所製) 水溶液 lmLとを混合 し、 さらに脱塩水 1 8 gで希釈した溶液に、 カルボキシル基を導入した金被覆 センサチップを浸漬させ 1 5分間反応させた。 ここで得られた、 カルボキシル 基を導入された S PRセンサチップを S PRセンサチップ Aとした。
[製造例 2— 4 :平滑金被覆基板]
グレーティングが形成されていない以外は製造例 2— 3 (S PRセンサチッ プ Aの表面処理) で用いたものと同様に形成された金被覆基板に、 製造例 2— 3 (S P Rセンサチップ Aの表面処理) と同様の表面処理を行なった。 ここで 得られた平滑金被覆基板を、 平滑金被覆基板 Bとした。
[測定用センサチップの作製]
[製造例 2— 5 : S PRバイオセンサチップ 1]
上記ポリマー A 2 (結合用化合物) を 1 OmMの HE P E Sバッファー (p
H7. 4) を用いて 1 %に調製したポリマー A 2水溶液 1 0 μ Lと、 1 %マウ ス I g G ( L AM P I REB I OLOG I CAL LABORATOR I E S 社製, Mw= 1 5 0 k D a ;生体物質) 水溶液 1 0 0 Lとを混合し、 その混 合液 1 z Lを、 上記 S PRセンサチップ Aに滴下し、 飽和水蒸気圧下で 3 0分 間固定化させた。 その後、 溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、 1Mエタノー ルァミン塩酸塩 ( S I GMA社製, p H 8. 5) 水溶液に 1 5分間浸漬させて 未反応スクシンイミド基をブロッキングし、 さらに、 脱塩水を用いて基板を洗 浄した。 こうして作製された本発明の生体物質担持体としての S PRバイオセ ンサチップを、 S PRバイオセンサチップ 1とした。
[製造例 2— 6 : S PRバイオセンサチップ 2]
結合用化合物として、ポリマー A 2に代えて上記ポリマー B 2を用いた他は、 製造例 2— 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして、 S PRバ ィォセンサチップを作製した。 こうして作製された本発明の生体物質担持体と しての S P Rバイオセンサチップを、 S PRバイオセンサチップ 2とした。
[製造例 2— 7 : S PRバイオセンサチップ 3]
結合用化合物の水溶液であるポリマー A 2水溶液の濃度を 1 %とし、 生体物 質の水溶液としてマウス I g G水溶液の代わりに豚由来一アルブミン (p _S Aシグマ社製, 1^ =約6 0110 & ;生体物質) を上記の HE P E Sバッファ 一を用いて 5 %に調整した p— S A水溶液 1 00 μ Lを用いた他は、 製造例 2 一 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして、 S PRバイオセン サチップを作製した。 こうして作製された本発明の生体物質担持体としての S PRバイオセンサチップを、 S PRバイオセンサチップ 3とした。
[製造例 2— 8 :濃度依存 S PRバイオセンサチップ]
上記ポリマー A 2 (結合用化合物)を、 1 01111^の^1£ ? £ Sバッファー(p H7. 4) を用いて 0. 1 %、 0. 2%、 0. 5 %及び 1. 0%にそれぞれ調 製して、 マウス I g G (生体物質) を 1 OmMの HE P E Sバッファー (p H 7. 4) を用いて 0. 1%、 0. 2%、 0. 5%及び1. 0%にそれぞれ調製 し、 同じ濃度のポリマー A 2水溶液 1 0 / Lとマウス I g G水溶液 1 00 L とをそれぞれ混合し、 各混合液 l Lを、 上記 S PRセンサチップ Aにそれぞ
れ滴下し、飽和水蒸気圧下で 30分間固定化させた。その後、製造例 2— 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして自然乾燥、 ブロッキング及び 洗浄を行ない、 S PRバイオセンサチップを作製した。 こうして作製された本 発明の生体物質担持体としての S PRバイオセンサチップを、 濃度依存 S PR バイオセンサチップとした。
[製造例 2— 9 :電子顕微鏡観察用チップ]
縦 1 5 mm、 横 1 5 mm、 厚さ 2 mmのシリコンラバーに、 直径 1 0 mmの 貫通孔を形成し、 上記平滑金被覆基板 Bの上に密着させた。 また、 別途、 上記 ポリマー A 2を 1 OmMの HE P E Sバッファー (p H 7. 4) を用いて 1 % に調製したポリマ一 A 2水溶液 l O w Lと 1%マウス I g G水溶液 1 ◦ 0 L とを混合し、 シリコンラバーを密着させた電子顕微鏡観察用チップ Bの貫通孔 にこの混合液 100 Lを満たした。 その後、 飽和水蒸気圧下で 30分間固定 化させた。 その後、 溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、 シリコンラバーを取 り除き、 製造例 2— 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にしてブ ロッキング及び洗浄を行ない、 金被覆基板を作製した。 こうして作製された本 発明の生体物質担持体としての金被覆基板を、電子顕微鏡観察用チップとした。
[製造例 2— 10 :蛍光測定用バイォセンサチップ A] .
シリコンラバーの寸法を縦 2. 5 cm、横 2. 5 cm、厚さ 0. 5mmとし、 貫通孔の直径を 0. 5mmとした他は、 製造例 2— 9 (電子顕微鏡観察用チッ プの作製) と同様にして、 金被覆基板を作製した。 こうして作製された本発明 の生体物質担持体としての金被覆基板を、 蛍光測定用バイオセンサチップ Aと した。
[製造例 2— 1 1 :マトリックス主鎖確認用チップ]
結合用化合物の水溶液であるポリマー A2水溶液の濃度を 0. 3%とし、 生 体物質の水溶液の濃度を 0. 3%とした他は製造例 2— 5と同様にして、 S P Rバイオセンサチップを作製した。 こうして作製された本発明の生体物質担持 体としての S PRバイオセンサチップを、 マトリックス主鎖確認用チップとし た。
[製造例 2— 1 2 :成分分析用チップ]
上上記記平平滑滑被被覆覆基基板板 BBのの上上にに、、 固固定定化化用用化化合合物物ととししててポポリリママーー CC 22をを用用いい、、 基基 板板にに混混合合物物をを 11 μμ LLずずつつ 4400ススポポッットトししたた以以外外はは製製造造例例 22—— 55とと同同様様ににししてて、、 成成分分分分析析用用チチッッププをを作作製製ししたた。。
[[製製造造例例 22—— 11 33 ::ププリリズズムム型型 SS PPRRババイイオオセセンンササチチッッププ]]
基基板板ととししてて、、 MMuu ll tt ii SS PPRR ii nn tt ee rr AAuu CChh ii ((TTOO YYOO BB OO 社社製製)) にに、、 製製造造例例 22—— 33とと同同様様のの表表面面処処理理をを行行ななっったた。。 ここここでで得得らられれたた基基板板をを ププリリズズムム型型 SS PPRRセセンンササチチッッププととししたた。。 ささららにに、、 ここのの平平滑滑ななププリリズズムム型型 SS PPRR セセンンササチチッッププのの上上にに、、ポポリリママーー AA 22のの濃濃度度及及びびママウウスス II gg GGのの濃濃度度をを各各 00.. 33%% ととししたた以以外外はは、、 製製造造例例 22—— 55とと同同様様ににししてて、、 本本発発明明のの生生体体物物質質固固定定担担体体をを作作製製 ししたた。。 ここれれををププリリズズムム型型 SS PPRRババイイオオセセンンササチチッッププととすするる。。
[[比比較較製製造造例例 22 __ 11 ::比比較較 SS PP
ポリマー A 2水溶液とマウス I g G水溶液との混合液の代わりに、 1%マウ ス I g G水溶液 (生体物質水溶液) 1 Lを用いた他は、 製造例 2— 5 (S P Rバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして S P Rバイオセンサチップを作 製した。 こうして作製した S PRバイオセンサチップを比較 S P Rバイオセン サチップ 2Dとした。
[比較製造例 2 _ 2 :濃度比較 S PRバイオセンサチップ]
マウス I g G (Mw=約 1 50 k D a ;生体物質) を 1 OmMの HE P E S バッファー (pH7. 4) を用いて、 0. 1%、 0. 2 %s 0. 5%及び1. 0%にそれぞれ調製し、 各 1 μ Lを上記 S PRセンサチップ Aに滴下し、 製造 例 2— 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして、 固定化、 自然 乾燥、 ブロッキング、 洗浄を行ない、 S P Rバイオセンサチップを作製した。 こうして作製した S PRバイオセンサチップを濃度比較 S PRバイオセンサチ ップとした。
[比較製造例 2— 3 :ポリアクリル酸 S P Rバイオセンサチップ] 製造例 2— 3で用いたのと同様の金被覆センサチップ (表面処理前のもの) を、 1 OmMの 2— MERCAPTOETHYLAMI NE (S I GMA社製) 水溶液に浸漬させ、 室温で 1 2時間反応させた。 反応終了後、 この金被覆セン サチップを脱塩水で洗浄した。 この表面処理は、 金被覆センサチップ表面に金
一硫黄結合を介してアミノ基を導入するものである。 ここで得られた、 ァミノ 基を導入された金被覆センサチップを S PRセンサチップ Bとした。
次に、
の脱塩水に1. 25 gのポリアクリル酸 (平均分子量 2 50 000 ポリサイエンス社製) と 24mgの EDCとを溶解させた溶液に、 S PRセンサチップ Bを浸漬させ 1時間反応させた。 反応終了後チップを脱塩水 で洗浄した。 この処理は、 金表面上のァミノ基とポリアクリル酸のカルボキシ ル基とを EDCにより縮合させることによりアミ ド結合を形成させ、 ポリアク リル酸を金表面 (センサチップの表面) に固定化するものである。 ここで得ら れた、 ポリアクリル酸で表面処理された金被覆センサチップを S PRセンサチ ップ Cとした。
1 %に調製したマウス I gG水溶液 (生体物質水溶液) を、 上記 S P Rセンサチップ Cに滴下し、 飽和水蒸気圧下で 30分間固定化させた。 固定化 後、 製造例 2— 5 (S PRバイオセンサチップ 1の作製) と同様にして、 プロ ッキング、 洗浄を行ない、 S PRバイオセンサチップを作製した。 こうして作 製した S P Rバイオセンサチップをポリァクリル酸 S P Rバイオセンサチップ とした。 なお、 この方法は、 固相担体を高分子膜で予め被覆し、 生体物質をそ の高分子膜に固定化するという従来技術に基づく手法である。
[比較製造例 2— 4 :蛍光測定用バイオセンサチップ B]
ポリマー A 2水溶液とマウス I g G水溶液との混合液の代わりに、 1 %マウ ス I gG水溶液 (生体物質水溶液) を用いた他は、 製造例 2_ 1 0 (蛍光測定 用バイオセンサチップ Aの作製) と同様にして、 金被覆基板を作製した。 こう して作製した金被覆基板を蛍光測定用バイオセンサチップ Bとした。
[比較製造例 2— 5 :比較プリズム型 S PRバイオセンサーチップ] ポリマー A2とマウス I gG水溶液との混合液の代わりに、 0. 3%マウス I g G水溶液を用いた他は、 製造例 2— 1 3 (プリズム型 S PRバイオセンサ チップの作製) と同様にして、 比較プリズム型 S PRバイオセンサーチップを 作製した。
[実施例 2— 1 :蛍光測定]
製造例 2— 10で作製した蛍光測定用バイオセンサチップ A及び比較製造例
2— 4で作製した蛍光測定用バイオセンサチップ Bを用いて、抗原抗体反応(相 互作用) の蛍光測定を行なった。
検体 (作用物質) には C y 5でラベル化したゥサギ血清アンチマウス一 F a b' (ィムノプローブ社製、 Mw =約 50 k D a ) を用いた。 この検体のラベ ル化は次のようにして行なった。 まず、 CyDy eTM C y 5 mo n o f u n o t i o n a l r e a c t i v e d y e 1 v i a l ( a m e r s h am p h a rma c i a b i o t e c h社製) に lmg/mLのゥサギ血 清アンチマウス一 F a b' lmLを加え、常温にて 30分間反応させた。また、 NAP— 0 し o l umn Am e r s h am B i o s c i e n c e社 ) を用いて、 ゲル濾過により未反応のラベル化試薬を除去し、 これにより、 検体 として C y 5ラベル化ゥサギ血淸ァンチマウス一 F a b' を得た。
上記のラベル化したゥサギ血清アンチマウス _F a b' を用いて調製した 1 0 μ g/mL C y 5 ラベル化ゥサギ血清アンチマウス _ F a b ' 溶液 2 m Lに、 金基板を浸し、 常温にて 10分間反応させ、 M i l l i Q水にて金基板 を洗浄後、 乾燥させた。 これを G e n e P i x 400 OA M i c r o a r r a y s c a n n e r (Am e r s h am
B i.o s c i e n c e社製) に装填し、 波長 650 nmの蛍光を測定した。 その結果、 蛍光測定用バイオセンサチップ Aの蛍光強度 (平均値) と蛍光測 定用バイオセンサチップ Bの蛍光強度との比は 1 1 9 1 9 : 250であった。 これにより、 本発明の実施例である蛍光測定用バイオセンサチップ Aを用いた 場合の蛍光は、 従来例である蛍光測定用バイオセンサチップ Bを用いた場合に 比べ、 およそ 48倍に向上することが確認された。
また、 図 1 7 (a), 図 1 7 (b) に、 蛍光測定時の蛍光観察写真を表わす図 面代用写真を示す。 図 1 7 (a) は蛍光測定用バイオセンサチップ Aを写した もの、 図 1 7 (b) は蛍光測定用バイオセンサチップ Bを映したものである。 なお、 図 1 7. (a), 図 1 7 (b) において、 白い部分が蛍光を発している部分 である。
[実施例 2— 2 : QCM測定]
製造例 2— 1で合成したポリマー A 2を 1 OmMの HE P E Sバッファー
(pH7. 4) を用いて 1%に調整したポリマー A 2 (結合用化合物) 水溶液 10 μ Lと、 製造例 2— 5で用いたのと同様のマウス I g Gを用いて 1 %に調 整したマウス I g G (生体物質) 水溶液 100 Lとを混合して混合液 (混合 物) を調製した。 また、 別途、 製造例 2— 5で S PRバイオセンサチップ 1を 作製したのと同様に表面処理した Q CM用チップを用意した。 この Q CM用チ ップの表面に、 上記の混合液を 3 μ L滴下し、 30分間固定化した。 その後自 然乾燥にて溶媒を除去し、 さらに 1 Μのエタノールァミンにてプロッキングを 施し、 Q CMバイォセンサチップを作製した。 その後、 Q CMバイオセンサチ ップを 1 0 μ gZmLのゥサギ血清アンチマウス _ F a b' (Mw =約 50 k D a ;作用物質) H E P E S 10 mM溶液に 1時間浸した。 この際、 上記の 操作の各段階における吸着挙動を、 I n i t i um社製QCM AF F I N I X Qで測定した。 具体的には、 表面処理後 (即ち、 表面処理を行なった後混 合液を滴下する前)、 生体物質構造体 (即ち、 マトリックス) の形成後 (即ち、 混合液の滴下後ゥサギ血清アンチマウス一 F a b' 溶液に浸す前)、及びアナラ ィ ト反応後 (即ち、 ゥサギ血清アンチマウス一 F a b7 溶液に浸した後) のそ れぞれについて測定を行なった。 なお、 測定はすべて空気中で水分を乾燥させ たものを測定値とした。 その結果を表 2— 1に示す。
[表 2— 1 J
生体物質構造体形成後と表面処理後との間の振動数の変化量は一 42690. 3Hzであり、 このことから、 QCMバイオセンサチップに固定化された生体 物質 (マウス I gG) の固定量は約 25. 6 μ gZ cm2と算出される。
また、 アナライト反応後と生体物質構造体形成後との振動数の変化量は一 9 306. 1 Hzであり、 このことから、 QCMバイオセンサチップにおける作 用物質の単位面積当たりの反応量は約 5. 6 μ g/cm2と算出される。
したがって、 反応数比率は、
反応数比率
= (5. 6/5 0 k D a ) / (2 5. 6/ 1 5 0 k D a )
= 0. 6 6
と見積もられる。 これにより、 Q CMバイオセンサチップにおいても、 生体物 質構造体に、 生体物質に対して検出液 (作用物質を含む溶液) を接触させたと きに、 生体物質構造体中の生体物質の数 (分子数) に対する生体物質と相互作 用した作用物質の数 (分子数) の比 (反応数比率) が 0. 5以上であることが 確認された。
[実施例 2— 3 : S P R測定]
製造例 2— 5で作製した上記 S P Rバイオセンサチップ 1、 及び、 製造例 2
_ 6で作製した上記 S P Rバイオセンサチップ 2に、 それぞれアナライ ト (検 体) として 1 0 μ g/mLゥサギ血清アンチマウス一 F a b' (ィムノプロ一 ブ社製、 Mw=約 5 0 kD a) を用い、 B u f f e rには 1 0 mM HE P E Sバッファーを用いて、 S PRにより、 抗体抗原反応 (相互作用) の測定を行 なった。 また、 実施例 2 _ 3に対する比較として、 比較製造例 2— 1で作製し た比較 S PRバイオセンサチップ 2Dを用い、 同様にして抗体抗原反応の測定 を行なった。
なお、 測定装置としては、 グレーティング型の S P R測定装置 F LEX C H I P S™ K i n e t i c An a l y s i s S y s t em (HT S B i o s y s t em s I n c .) を用いた。 また、 測定は、 測定開始から 2分間 は 1 0mM HE PE Sバッファー (p H7. 4) を送液し、 その後、 8分間 1 0 μ g /m L ゥサギ血清アンチマウス一 F a b' (アナライト)を送液し、 最後に 1 5分間 l OmM HE PE Sバッファー (pH 7. 4) を送液するこ とにより行なった。 さらに、 送液速度はすべて、 5 00 μ L/m i nとした。 測定結果を図 1 8, 図 1 9にそれぞれ示す。
図 1 8, 図 1 9から分かるように、 本発明の生体物質担持体である S PRバ ィォセンサチップ 1, 2を用いて S PR測定を行なった場合、 従来の方法によ り生体物質を固定化した比較 S PRバイオセンサチップ 2Dを用いた場合に比 ベ、 S PRシフト量が大きくなる。
また、 測定前の共鳴角、 及び、 検体を流し終えた時と測定初期との共鳴角の 差を、 表 2— 2に示す。
さらに、 上記 S P Rセンサチップ A (即ち、 生体物質を固定化する前のセン サチップ) を用いて同様の測定を行ない、 その S P Rセンサチップ Aの共鳴角 と、 S P Rバイオセンサチップ 1, 2及び比較バイオセンサチップ 2 Dそれぞ れの共鳴角との差を算出した。この共鳴角の差も、表 2— 2に示す。これから、 S P Rバイオセンサチップ 1 , 2には比較バイオセンサチップ 2 Dよりも多量 の生体物質が固定化されていることが分かる。
[表 2— 2 ]
ここで、 生体物質構造体 (マトリックス) が全て生体物質であると仮定する と、 生体物質構造体中の生体物質の数 (分子数) に対する、 生体物質と相互作 用した作用物質の数 (分子数) の比 (反応数比率) は、
反応数比率
と算出される。
なお、 ここでは生体物質構造体が全て生体物質であると仮定したが、 実際に は、生体物質構造体には生体物質のみで無く結合用化合物も含まれているので、 反応数比率は算出された値 (0 . 8 4 ) よりも大きくなると考えられる。 これ により、 生体物質構造体に、 生体物質に対して検体 (作用物質を含む溶液) を 接触させたときに、 生体物質構造体中の生体物質の数 (分子数) に対する生体 物質と相互作用した作用物質の数 (分子数) の比 (反応数比率) が 0 . 5以上 であることが確認された。
同様にして、 S P Rバイオセンサチップ 2では、 その反応数比率は 0 . 9 6
と算出される。 S PRバイオセンサチップ 1と同様、 実際の反応数比率は算出 された値 (0. 96) よりも大きくなると考えられ、 これにより、 S PRバイ ォセンサチップ 2においても、生体物質構造体に、生体物質に対して検出液(作 用物質を含む溶液)を接触させたときに、生体物質構造体中の生体物質の数(分 子数) に対する生体物質と相互作用した作用物質の数 (分子数) の比 (反応数 比率) が 0. 5以上であることが確認された。
[実施例 2— 4 :非特異的相互作用の検証]
製造例 2— 5で作製した S P Rバイォセンサチップ 1と製造例 2— 7で作製 した S PRバイオセンサチップ 3とが同じ基板上に設けられたセンサチップを 作製し、 このセンサチップを用いて、 検体として実施例 2— 1で用いたゥサギ 血清アンチマウス一 F a と、 ゥサギ血清アンチ豚— S A (ィムノプローブ 社製, Mw 約 1 50 kD a) とを用いて、 それぞれに対する特異吸着および 非特異吸着の検出を S PRにて測定した。
具体的には、 測定開始から 2分間は 1 0 mM HEPESバッファー (: p H 7. 4) を送液し、 その後、 8分間検体として、 1 0 μ gZmLゥサギ血清ァ ンチマウス一F a b' を送液し、 その後 1 5分間 1 OmM HE PE Sバッフ ァー . (pH7. 4) を送液し、 さらに 8分間検出液として、 100 gZmL ゥサギ血清アンチ豚一 S Aを送液し、 最後に 1 5分間 10mM HEPE Sバ ッファー (pH7. 4) を送液した。 なお、 送液速度はすべて、 500 LZ m i nとした。 また、 測定装置は、 実施例 2— 3と同様のものを用いた。 この 結果を図 20に示す。
S PRバイオセンサチップ 1にとつてはアンチ豚一 S Aとの相互作用は非特 異的相互作用となり、 S PRバイオセンサチップ 3にとつてはアンチマウス一 F a b' との相互作用は非特異的相互作用となる。 したがって、 非特異的相互 作用が生じ 場合には、 検体を流して測定を行なっている場合に、 それらの非 特異的相互作用による S PRシフトが測定されるはずである。 しかし、 図 20 によれば、 そのような非特異的相互作用による S PRシフトはほとんど測定さ れず、 これにより、 S PRバイオセンサチップ 1 , 3を用いた場合には非特異 的相互作用がほとんど生じていないことが確認された。
[実施例 2— 5 :生体物質構造体の膜厚についての検証]
製造例 2— 8で作製した濃度依存 S P Rバイォセンサチップの、 別々の濃度 の混合液を用いて生体物質構造体(マトリッタス)を形成した各部分における、 生体物質構造体の固定量を、 それぞれ S PRによって測定した。 測定される S PRシフト量が大きいほど、 固定量が大きいことを表わす。 なお、 測定装置と しては、 実施例 2— 3で用いたのと同様の S PR測定装置を用いた。 S PR測 定の結果得られた、 S PRシフト量と、 濃度依存 S PRバイオセンサチップの 作製に用いた混合液の濃度との関係を図 21に示す。
また、 比較のため、 比較製造例 2— 2で作製した濃度比較 S P Rバイオセン サチップについても同様に、 別々の濃度のマウス I gG水溶液を用いて固定化 した各部分における、 マウス I gGの固定量を、 それぞれ S PRにより測定し た。 測定される S PRシフト量が大きいほど、 固定量が大きいことを表わす。 この結果得られた、 S PRシフト量と、 濃度比較 S PRバイオセンサチップの 作製に用いたマウス I gG水溶液の濃度との関係についても、 図 21に示す。 図 21から、 生体物質 (マウス I gG) のみを固定化した濃度比較 S PRバ ィォセンサチップの場合、 その固定量は S PRシフト量としておよそ 200m d e g.程度で.飽和することが分かる。
これに対して、 本発明の生体物質担持体である濃度依存 S PRバイオセンサ チップでは、 生体物質構造体形成に用いた混合液の濃度の増加とともに、 線形 で S PRシフト量が増加している。 このことから、 生体物質構造体の形成に用 いる混合液 (混合物) の濃度によって、 生体物質構造体の膜厚の制御が可能で • あることが確認された。 このことは、 用途に応じて、 生体物質構造体の膜厚を 精密なレベルで制御し、 なおかつ自由に設計できることを示している。
[比較例 2— 1 :ポリアタリル酸被膜]
センサチップとして、 比較製造例 2— 3で作製したポリアクリル酸 S P Rバ ィォセンサチップを用いた他は、 実施例 2— 3と同様にして、 抗体抗原反応を S PR測定により検出した。
測定結果を図 22に示す。 図 22より、 ボリァクリル酸 S P Rバイオセンサ チップを用いた本比較例の S PR測定においては、 S PRシフト量は、 実施例
2— 3で測定した S P Rバイォセンサチップ 1 , 2を用いて測定したものより も小さい。 これは、 従来のような、 固相担体表面を被覆した親水性高分子化合 物の高分子鎖に生体物質を結合させる方法よりも、 本発明の生体物質固体担体 を用いた方が、 大きな相互作用が生じていることを表わす。 このことから、 S P Rバイオセンサチップ 1, 2には、 ポリアクリル酸 S PRバイオセンサチッ プょりも多量の生体物質が固定化されていることが分かる。
また、 測定前の共鳴角、 及び、 検体を流し終えた時と測定初期との共鳴角の 差を、 表 2— 3に示す。
さらに、 上記 S PRセンサチップ B, C (即ち、 生体物質を固定化する前の センサチップ) を用いて同様の測定を行ない、 その S PRセンサチップ Bの共 鳴角と、 S P Rセンサチップ C及びポリァクリル酸 S P Rバイオセンサチップ それぞれの共鳴角との差を算出した。 この共鳴角の差も、 表 2— 3に示す。
[表 2 _ 3 ]
したがって、 反応数比率は、 実施例 2— 3と同様に計算すると、
反応数比率
= (7 0. 7 5md e g/5 0 kD a) / {(740md e g - 2 6 0md
= 0. 44
と見積もられる。 これは、 実施例 2— 3の S PRバイオセンサチップ 1 , 2の 反応数比率 (0. 84, 0. 9 6) よりもはるかに小さい値であり、 これによ り、 本発明の生体物質担持体は、 従来技術よりも生体物質と作用物質との反応 性に優れることが確認された。
[実施例 2— 7]
製造例 2— 9で作製した電子顕微鏡観察用チップの断面を、 S EMにより観 察した。 観察された S EM断面写真を表わす図面代用写真を図 2 3に示す。
図 23からは、 乾燥状態での膜厚が約 3 μπιあることがわかる。
また、 図 23において、 白く見える部分がマトリ ックス骨格である。
[実施例 2— 8 ]
予め、 実施例 2— 3と同様の測定装置を用いて、 製造例 2— 1 1で作製した マトリ ックス主鎖確認用チップ、 及び、 マトリ ックス主鎖確認用チップのバッ クグラウンドである S P Rセンサチップ Αの S P R測定を行なった。
また、 生体物質のみを分解する酵素の水溶液として、 トリプシン (Wa k o 社製) 0. 5%、 炭酸アンモニア 1 %、 尿素 2 M、 塩化カルシウム 1 mMを溶 解した pH8. 0の酵素水溶液を調製した。 この酵素水溶液 5 μ Lをマトリツ タス主鎖確認用チップに接触させ、 飽和蒸気圧下 3 7°Cで 1 2時間静置し、 マ トリックス主鎖確認用チップを蒸留水で洗浄する、という操作を 2回繰り返し、 生体物質の分解を行なった。その後、実施例 2— 3と同様の測定装置を用いて、 S PR測定を行なった。
S P R測定の結果を図 24に示す。
図 24に表わされたように、 酵素分解前は共鳴角が約 20. 8 d e g r e e であったものが、 酵素分解後には共鳴角は約 1 8. 6 d e g r e eとなってい る。 生体物質構造体 (マトリ ックス) の形成前のバックグラウンドの共鳴角が 約 1 8. 5 d e g r e eであること、 及び、 バックグラウンドと酵素分解後と の測定結果がほぼ一致していることから、 酵素分解により、 生体物質構造体を 構成する生体物質及び結合用化合物の両方が固相担体である S P Rセンサチッ プ Aからほぼ全て脱離したことが分かる。 したがって、 形成されていた生体物 ' 質構造体は、 生体物質及び結合用化合物からなる主鎖を有する本発明の生体物 質構造体であったことが確認された。
[実施例 2— 9 ]
製造例 2— 1 2で作製した成分分析用チップ上のマトリックスを塩酸で加水 分解し、 生じたアミノ酸量から I g Gを定量した。 さらに、 加水分解物中のポ リアクリル酸量から、 ポリマー A 2を定量した。
具体的には、 成分分解用チップの生体物質構造体を、 6N塩酸、 1 50°C、 l h rで加水分解した。 その後、 塩酸を減圧乾燥し、 加水分解物を 1%アンモ
エア水に溶かし、 遠心分離 (10000 r pm、 3分) で不溶分を除いた。 こ の加水分解溶液を減圧乾燥後、 0. 1 %アンモニア水 1 m Lに溶かし、 1 00 ^u Lをアミノ酸分析、 400 / Lを PAA (ポリアクリル酸) 分析に用いた。
(アミノ酸分析試料)
上記の加水分解溶液 100 μ Lを減圧乾燥し、 0. 02 Ν塩酸 500 μ Lに 溶かした。 これを遠心式限外ろ過 (MWCO : 10000、 マイクロコン ΥΜ - 10) し、 ろ液 10 μ Lをアミノ酸分析した。
なお、 アミノ酸分析は、 以下の表 2— 4の条件で行なった。
[表 2 _ 4」
(ポリアタリル酸分析試料)
上記の加水分解溶液 40 0 μ Lを遠心式限外ろ過 (MWCO : 10000) で濃縮し、 1 %アンモニア水 400 μ Lで希釈した。 この限外ろ過による希釈 一濃縮操作を 6回繰り返して低分子成分を除いた。 高分子成分を 1%アンモニ ァ水で回収し、 減圧乾燥してからポリアクリル酸 (ΡΑΑ) 分析に供した。 なお、 ΡΑΑ分析 (反応熱分解 G CMS) は、 以下の表 2— 5の条件で行な つた。
[表 2— 5 ]
その結果、 マウス I g Gは 390 g、 ポリマー C 2は 1 6. 9 μ g検出さ れ、 生体物質構造体中に含まれる生体物質の比率 「生体物質の重量/ (固定化 用化合物の重量 +生体物質の重量)」 は 0. 958となり、マトリッタスに含ま れる生体物質の重量の比率が極めて高いことが示された。
[実施例 2— 1 0 ]
製造例 2 _ 1 3で作製した上記プリズム型 S P Rバイオセンサーチップにァ ナライト (検体) として 5 0 μ gZmLゥサギ血清アンチマウス F a b, を用 い、バッファーには 1 OmM HE P E Sバッファーを用いて、 S PRにより、 抗体抗原反応 (相互作用) の測定を行なった。 また、 実施例 2— 1 0に対する 比較として、 比較製造例 2— 5で作製した比較プリズム型バイォセンサーチッ プを用い、 同様にして抗体抗原反応の測定を行なった。
なお、 測定装置としてはプリズム型の S PR測定装置 Mu 1 t i S PR i n t e r TM (TOYOBO社製) を用いた。 また、 測定は、 測定開始から 3分 3 0秒間は 1 0 mM HE P E Sバッファー(pH 7. 4) を送液し、その後、
1 0分間 5 0 μ g/mLゥサギ血清アンチマウス F a b, (アナライト)を送液 し、 最後に 5分間 1 0 mM HE P E Sバッファー (p H7. 4) を送液する ことにより行なった。 さらに、 送液速度は全て 1 0 0 μ L/m i nとした。 測定結果を図 2 5に示す。 図 2 5から分かるように、 本発明の生体物質固定 担体であるプリズム型 S P Rバイオセンサ一チップは、 従来方法より、 生体物 質を固定化した比較プリズム型 S P Rバイォセンサーチップを用いた場合より も、 抗体抗原反応は約 7倍のシグナルを観測した。
[3. 生体物質複合体及び生体物質複合体担持体に関する実施例、 比較例及び 参考例]
以下、 生体物質複合体及び生体物質複合体担持体について検討した実施例を
[実施例 3— 1 : アルブミンを用いた生体物質複合体]
(1) 結合用化合物 (ポリマー A 3) の合成
モノマーである N—ァクリロイルモルファリン (NAM、 KOH J I N社製) 1. 1 3重量部及ぴ N—ァクリロイロキシスクシンィミ ド (NAS、 ACRO S ORGAN I C S社製) 0. 3 3重量部と、溶媒である脱水ジォキサン(和 光純薬工業株式会社製) 1 8. 0 3重量部とをよく混合し、 5 0mLの四つ口 フラスコにそそぎ入れ、 室温で 3 0分間窒素にて脱気を行ない、 モノマー溶液 を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて 60°Cに昇温し、 重合開始剤ァゾビスィ ソブチ口-トリル (A I BN、 キシダ化学株式会社製) 0. 0016重量部を 脱水ジォキサン 0.5 gに溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。 重合は窒素雰囲気下、 8時間行なった。
重合後、 ポリマーが生成した溶液は、 0. 5 Lのジェチルエーテル (国産化 学株式会社製) に滴下することにより再沈殿させた後、 溶媒を除去することに より粉末化し、 結合用化合物ポリマー A 3を得た。
得られたポリマー A 3について、標準ポリスチレンで校正された S E C (Size Exclusion Chromatography) 測定を行なった結果、 ポリマー A 3の重量平均分子 量 (Mw) が約 1 50000と見積もられた。
また、 得られたポリマー A 3に含まれる NASと NAMとのモル比 (NAS /NAM) は、 1 H— NMR測定から NA S/N AM= 30/70と見積もら れた。
さらに、 ポリマー A 3を蒸留水にて 0. 2重量%、 0. 4重量%、 0. 6重 量%の濃度に調整し、 光子相関計 ALV 5000 (ALV社製) により、 測定 角 30° 、 40° 、 50° 及び 60° にて、 動的光散乱法で測定したところ、 ポリマー A 3の平均の流体力学的半径は 6. 8 nmと見積もられた。
(2) Q CMセンサーチップ上への生体物質複合体の形成
(2- 1) Q CMセンサーチップの表面処理
金で被覆された Q CM (Quartz Crystal Micro Balance) (AFFINIX Q: ィ ニシアム社製) 用のセンサーチップ (ィ -シアム社製) を、 10mMの 16— メルカプトへキサデカン酸 ( 16-MERCAPTOHEXADEANOIC ACID : ALDRICH社製) エタノール溶液に浸漬させ、 室温で 12時間反応させ、 表面 処理を行なった。 反応終了後、 センサーチップをエタノールで洗浄した。 この 表面処理は、 金一硫黄結合を介してセンサーチップの表面にカルボキシル基を 導入するための処理である。
次に、 0. 1Mの N—ヒ ドロキシスクシイミ ド (NHS、 和光純薬工業社製) 水溶液 1 m Lと 0. 4 Mの 1—ェチル一3— (3—ジメチルアミノプロピル) 一カルポジイミド塩酸塩 (EDC、 同仁化学研究所製) 水溶液 lmLとを混合
し、 さらに脱塩水 18 gで希釈した溶液に、 上記のカルボキシル基を導入した 基板 (センサーチップ) を浸漬させ、 1 5分間反応させた。 これは、 基板表面 に、 基板と生体物質構造体とを結合させることができるスクシンイミ ド基を導 入するためである。
(2-2) 生体物質構造体の形成
次に 1 Omg mLのアルブミン (SIGMA社製) 水溶液 (リン酸バッファ 一 1 0 mM、 pH9. 0 ) とポリマー A 3とを重量混合比 10 : 1 (生体物質: 結合用化合物) で混合した混合物を、 センサーチップの表面に 3 Lスポッテ ィングした。 これを室温にて乾燥した後、 未反応の活性エステル基をブロッキ ングする目的で、 1 Mのェタノールァミン水溶液 (pH8. 5) 8mLに 1 5 分間浸漬した。 これにより、 センサーチップの表面にアルブミンとポリマー A 3とをそれぞれ生体物質及び結合用化合物とする生体物質構造体が形成された, その後、 センサーチップを、 脱塩水でよく洗浄し、 室温で乾燥して、 表面に 生体物質構造体を担持した生体物質構造体 Q CM用チップを得た。
(2— 3) 生体物質構造体へのキレート表面処理
1 00 mMの E G S (Ethylene glycol-bis (succinimidylsuccinate): PIERCE 社製) の DM S O (Dimethyl Sulfoxide:関東化学社製) 溶液 300 μ Lと 1 0 O mMの Α β — Ν Τ Α -(5-Aminoo-l-carboxypentyl)-iminodiacetic Acid:同仁化学研究所製) の DM S O溶液 450 Lとを混合し、 24時間室 温で静置した。 以下適宜、 得られた溶液を EGS/AB— NTA溶液という。 EG Sは両末端にスクシンイミ ド基をもっており、 上記の混合操作により、 そ の片末端と AB—NTAのァミノ基とを結合させ、 EGSと AB—NTAとが 結合した化合物を形成させた。
この EGSZAB— NTA溶液のー部をNMR測定した結果、 EG S/AB 一 NTA溶液における、 未反応の EGSと、 E G Sのスクシンイミド基の片末 端が AB— NTAと反応した化合物 (EGSZAB— NTA) と、 EGSのス クシンィミド基の両末端が反応した化合物 (AB— NT A/EG S/AB— N TA) との比 「未反応 EG S : EG S/AB— NT A: AB-NTA/EG S AB— NTA」 = 10 : 40 : 50 (m o 1比) であることがわかった。 こ
の結果、 得られた EG S/AB— NT A溶液は、 EGS A B— N T A化合物 を 1 7 mMだけ含む溶液であることが分かった。
さらに HE P E Sバッファー (1 OmM, p H 7. 4) 8mLの中に生体物 質構造体 Q CM用チップを浸し、 50 1^の£03/ ー1^丁 溶液を添加 し、 30分間浸漬した。
さらに、 生体物質構造体 Q CM用チップを HE P E Sバッファーから取り出 した後、 確実に EG S/AB— NT Aを生体物質であるアルブミン表面に導入 するために、 EGSZAB— NTA溶液を HEPESバッファーで 1 0倍希釈 したものを生体物質構造体 Q CM用チップに 3 Lスポットした。
その後、 生体物質構造体 QCM用チップを脱塩水で洗浄し、 1Mのエタノー ルァミン水溶液 (ρΗ8. 5) 8mLを用いて 1 5分間、 EGSの未反応スク シンイミ ドをブロッキングした。 その後、 脱塩水で再度洗浄した。
これらの操作は、 生体物質構造体 Q C M用チップに E G S /A B— N T Aを 結合させることを目的としている。 つまり EG SZAB— NTAが持つ、 片末 端のスクシンイミ ド基と生体物質構造体中のアルブミンの表面にあるアミノ基 とを結合させる。
' (2— 4) ニッケルイオンの導入
さ らに、 2 mMの硫酸ニッケル (II) 6水和物 ( Nickel(II)Sulfate Hexahydrate:和光純薬工業社製) 水溶液 8 mLに生体物質構造体 Q CM用チ ップを 1時間浸漬させ、 N i 2 +を生体物質構造体に導入した。 この時、 先に生 体物質構造体に導入した AB— NTAと N i 2 +から特定物質であるニッケル キレートを形成させる。 さらに、 生体物質構造体 Q CM用チップを脱塩水 8 m Lに 30分間浸漬し、未結合の N i 2 +を洗浄した。 この操作により得られた生 体物質複合体担持体としてのチップを QCM用チップ 3Dとする。
(3) QCM測定
作用物質 (対象物質) としてポリヒスチジンを用いた。 これは、 N i 2 +を導 入した QCM用チップ 3 Dの N i 2 +にヒスチジンが特異的に吸着する性質を 利用している。
また、 測定に用いた Q CMは、 AFF I N I X Q: (ィニシアム社製) であ
る。
具体的な操作としては、 まず、 QCM用チップ 3 Dを 8mLの HE P E Sバ ッファー (10mM pH7. 4) に浸漬し、 Q CMによる測定を開始して、 振動数が十分に安定したところで、 5 m g /m 1 のポリ ヒスチジン (POLY-L-HISTIDINE: SIGMA社製) 水溶液 ( p H 1. 7グリシン— H C 1 バッファー) を 80 μ 、 インジェクションした。
測定結果を、 図 26 (a), 図 26 (b) に示す。 なお、 図 26 (b) は、 図 26 (a) の要部を拡大して示したものである。
[比較例 3— 1 ]
金で形成された Q CM用センサーチップの表面に、実施例 3— 1の「(2— 1 )
Q CMセンサーチップの表面処理」と同様にしてスクシンィミ ド基を導入した。 次に、 HE PE Sバッファー (1 0mM, p H 7. 4) 8mLの中にこの Q
CM用センサーチップを浸し、 1 7mMの AB—NTAの DMS O溶液 50 μ
Lを添加し、 30分間浸漬した。
Q CM用センサーチップを HE P E Sバッファーから取り出し、 確実に金表 面に AB—NTAを結合させるために、 この AB— NTAの DMS O溶液を H
EPE.Sバッファーで 10倍希釈し、 スポットし、 1 5分間静置した。 この操作は、 AB—NTAの持つアミン基と金表面にあるスクシンイミ ド基と 結合させるためのものである。
その後、 実施例 3— 1の 「(2— 4) ニッケルイオンの導入」 と同様にして、
QCM用センサーチップの表面に N i 2 +を導入した。 この操作により得られた チップを Q CM用チップ 2Dとする。
この QCM用チップ 2Dを用いて、 実施例 3— 1の 「(3) QCM測定」 と同 様にして、 ポリヒスチジン (対象物質) とニッケルキレート (特定物質) とを 相互作用させた場合について Q CM測定を行なった。結果を図 2 (a), 図 2
6 (b) に示す。
[比較例 3- 2]
金で形成された QCM用センサーチップの表面に、実施例 3— 1の「(2— 1) Q CMセンサーチップの表面処理」と同様にしてスクシンィミ ド基を導入した。
次に、 1 OmgZm 1のアルブミン水溶液 (リン酸バッファー 1 OmM, p H 9. 0) を、 この QCM用センサーチップの表面に 3 Lスポッティングし た。
その後、 実施例 3— 1の 「(2— 3) 生体物質構造体へのキレート表面処理」 及び「(2— 4) ニッケルイオンの導入」 と同様にして、 QCM用センサーチッ プの表面に N i 2 +を導入した。 この操作により得られたチップを QCM用チッ プアルブミン 2 Dとする。
この QCM用チップアルブミン 2Dを用いて、実施例 3 _ 1の 「(3) QCM 測定」 と同様にして、 ポリヒスチジン (対象物質) とニッケルキレート (特定 物質) とを相互作用させた場合について QCM測定を行なった。 結果を図 26 ( a ) , 図 26 ( b ) に示す。
[実施例 3 _ 1及び比較例 3— 1, 3- 2についての考察]
図 26 (a), (b) から分かるように、 本発明の実施例である Q CM用チッ プ 3Dを用いた実施例 3— 1の結果では、 比較例 3— 1, 3— 2に比べて、 非 常に大きな周波数変化が生じている。 これは、 以下の理由によるものであると 推察される。
' まず、 比較例 3— 1で用いた QCM用チップ 2Dは、 金がむき出しとなった チップに特定物質であるニッケルキレートを固定したものである。したがって、 チップ表面の金と対象物質であるポリヒスチジンとの間に非特異的な相互作用 が生じ、 これにより周波数変化が小さくなつているものと考えられる。
また、 比較例 3— 2で用いた Q CM用チップアルブミン 2Dは、 チップ表面 ' をアルブミンで 2次元的に覆った後で、 特定物質であるニッケルキレートをチ ップに固定したものである。 これはアルブミンを単層で QCMチップの表面に 結合させることにより、 特定物質であるニッケルキレートが多く結合できるよ うになつたものと考えられる。 しかも、 EGSの導入により、 よりポリヒスチ ジンが結合しやすくなつたものと推測する。 しかしながら、 比較例 3— 2では 未だ周波数変化が未だ十分なものではない。
これに対し、 実施例 3— 1では、 3次元的な構造を有する生体物質複合体を 構成しているため、 比較例 3— 2よりも多量のアルブミンでチップ表面を覆う
ことができ、 そのため生体物質複合体によれば、 3次元的に配置されたアルブ ミンのアミノ基 (通常アルブミン 1分子に約 60箇所ある) に特定物質である N i 2 +を結合させるため、従来よりも多量に N i 2 +を固定化することができる。 さらに、 生体物質複合体がポーラス構造を有しているため、 ポリヒスチジンが 生体物質複合体の深いところまで十分に入り込め、 これにより、 検出するべき 相互作用の大きさを飛躍的に大きくすることが可能となり、 この結果、 図 26 (a) に示すように周波数変化が大きくなつているものと思料される。
[実施例 3— 2 : ピオチンを用いた生体物質複合体]
S P R用センサーチップとして、 大きさが縦 2. 5 cmX横 2. 5 cmX厚 さ 1. 2mmの平板状ポリカーボネート製の基体表面に、 溝ピッチ約 870 n m、 溝深さ約 40 nmの回折格子を有し、 さらにその基体の表面に、 厚さ約 8 0 nmで金を蒸着したものを用意した。
この S PR用センサーチップに対して、実施例 3— 1の 「(2— 1) QCMセ ンサーチップの表面処理」 と同様にして表面処理を行ない、 S PR用センサー チップ表面にスクシンイミ ド基を導入した。
次に、 スポッティング時の滴下量を 1 μ Lに変更した他は実施例 3— 1の 「(2— 2. 生体物質構造体の形成)」 と同様にして、 S PR用センサーチップ 上に生体物質構造体を作製した。
生体物質構造体の表面に特定物質としてビォチンを結合させるために、 10 OmgZmLの EZ-Link NHS-PE04-Biotin (PIRCE社製) 水溶液を S P R用 センサーチップに 2 μ Lスポットし、 飽和蒸気圧下で 30分間静置し、 その後 室温で乾燥した。 この操作は、 生体物質構造体中のアルブミンが持つアミノ基 に EZ-Link NHS-PE04"Biotinが持つスクシンィミ ド基を反応させ、 結合させ ることにより、 ビォチンを生体物質構造体に担持させるためのものである。 こ の操作により得られたスポットを SPR 3Dとする。
測定装置として、 グレーティング型の S P R測定装置 FLEX CHIPS™ Kinetic Analysis System (HTS Biosystems 社製)を用いて、 以下のようにし て S P R 3 Dに接するように液体を流しながら S P R測定を行なった。 測定開 始から 2分間は HE P E Sバッファー (10mM、 pH 7. 4) を送液し、 そ
の後、 作用物質として 1 0 μ g /m 1のス トレプトァビジン (ImmunoPure Streptavidin: PIERCE社製) 水溶液 (HEPESバッファー, 1 0 mM, p H 7. 4) を送液した。 最後に 1 5分間 HE P E Sバッファー ( 10 mM、 p H7. 4) を送液した。 送液速度は全て、 500 L/m i nとした。
S PR測定の結果を図 27に示す。
[比較例 3— 3 ]
実施例 3 - 2と同一の S P R用センサーチップに、 1 Omg/mLのアルブ ミン水溶液 (リン酸バッファー, PH9) を 1 / Lスポットし、 その後、 当該 スポットに実施例 3 _ 2と同様にしてビォチンをアルブミンに対して結合させ た。 この操作により得られたスポッ トを S PR 2Dとする。
このスポット S P R 2 Dについて、 実施例 3 _ 2と同様にして、 S PR測定 を行なった。 S P R測定の結果を図 27に示す。
[実施例 3— 2及ぴ比較例 3— 3についての考察]
図 27から分かるように、 実施例 3 _ 2で作製したスポット S PR 3Dにお ける共鳴角シフト量の方が、 比較例 3— 3で作製したスポット S P R 2 Dにお ける共鳴角シフト量よりも大きくなつており、 スポット S PR 3Dがスポット S PR.2Dよりも高い反応性を有していることが分かる。 これは、 以下の理由 によるものと推察される。
即ち、 実施例 3 _ 2で作製したスポット S P R 3 Dでは生体物質複合体が構 成されているためにピオチンが 3次元的に大量に存在しているのに対し、 比較 例 3— 3で作製したスポット S PR 2Dではピオチンは 2次元的にしか存在し ていないためその存在量はスポット S PR 3Dに比べて少ない。 この S PR測 定におけるシフト量は、 いずれも各スポット S PR 3D, S PR 2Dに存在す るピオチンと作用物質 あるストレプトアビジンとが相互作用して生じるもの であることから、 上記のようにスポット S PR 3Dにはスポット S PR 2Dよ りも大量のビォチンが存在しているために、 スポット S PR 3Dにおける相互 作用がスポット S PR 2Dでの相互作用よりも大きくなり、 スポット S PR 3 Dにおける共鳴角シフト量がスポット S P R 2 Dにおける共鳴角シフト量より も大きくなつているものと思料される。 さらに、 生体物質複合体が粒子状塊の
集まったポーラス構造であることも、 高い反応性を示す一因になっていると思 料さ る。
[参考例 3— 1 ]
実施例 3 — 2 と 同一の S P R用センサーチ ップに、 EZ-Link NHS-PE04-Biotin (PIRCE社製) 水溶液をスポットしなかったこと以外は実 施例 3— 2と同様にして、 スポット S PR r e f 3 Dを形成した。
このスポット S PR r e f 3 Dについて、 実施例 3— 2と同様にして、 S P R測定を行なった。 S P R測定の結果を図 28に示す。
[参考例 3- 2]
実施例 3 — 2 と 同一の S P R用センサ一チ ッ プに、 EZ-Link
NHS-PEO4-Biotin (PIRCE社製) 水溶液をスポットしていない以外は、 比較 例 3— 3と同様にして、 スポッ ト S PR r e f 2Dを形成した。
このスポット S PR r e f 2Dについて、 実施例 3— 2と同様にして、 SP R測定を行なった。 S P R測定の結果を図 28に示す。
なお、 図 28には、 アルブミン処理を行なっていない S P R用センサーチッ プの部位について同様に S P R測定を行なった場合の測定結果についても示す (図 28中では 「金表面 (エタノールァミン処理)」 で表示する)。 アルブミン 処理を行なわない場合、 金表面のスクシンイミドがエタノールァミンで処理さ れた状態となっている。
[参考例 3— 1, 3— 2についての考察]
図 28から分かるように、 スポット S P R r e f 3 Dが最もシフト量が小さ く、 スポット S PR r e f 2Dが次にシフト量が小さく、 何ら処理を行なって いない部位のシフト量が最も大きい。 これは、 各測定部位 (スポット) におけ る非特異的な相互作用を抑制するアルブミンの量の違いによるものであると推 察される。
即ち、 何ら処理を行なっていない部位にはアルブミンが存在せずに金が露出 しているために非特異的な相互作用が生じ、 その非特異的な相互作用により共 鳴角が大きくシフトしている。
また、 スポット S PR r e f 2Dでは、 S P R用センサーチップ表面にアル
ブミンが 2次元的に存在し、 これによりチップ表面はアルブミンにより覆われ ることになるために、 非特異的な相互作用が抑制されて共鳴角のシフト量も小 さくなっている。
これに対して、 スポット S PR r e f 3Dでは、 生体物質構造体により S P R用センサーチップ表面にはアルブミンが 3次元的に大量に存在し、 これによ りチップ表面は大量のアルブミンにより覆われることになる。 したがって、 ス ポット S PR r e f 2 Dに比べて更に確実に非特異的な相互作用が抑制されて 共鳴角のシフト量はより小さくなったものと思料される。
[実施例 3— 3 :生体物質構造体の構造]
グレーティングがされていない以外は実施例 3 _ 2で用いた S PR用センサ 一チップと同様のチップに対して、 実施例 3— 2と同様にして、 生体物質複合 体を形成した。
このチップの表面を A F Mによつて観察した。 観察結果を表わす図面代用写 真を図 29に示す。 図 29から分かるように、 チップ表面に、 サブミクロンォ ーダ一の粒子状塊が確認された。
[4. 生体関連物質固定担体に関する実施例]
以下.、 生体関連物質固定担体について検討した実施例を示す。
[ポリマー (担持固定化用化合物) の合成]
まず最初に、 本発明の生体関連物質固定担体を作製するための、 生体関連物 質と結合可能な化合物として、 ポリマー A 4及び B 4の 2種類を合成した。
[製造例 4— 1 :ポリマー A4の合成]
モノマーである N—アタリロイルモルホリン (NAM、 KOHJ I N社製) 0. 564重量部と N—アタリロイロキシスクシンイミ ド (NAS、 ACRO S ORGAN I'CS社製) 0. 1 69重量部と、 溶媒である脱水ジォキサン (和光純薬工業株式会社製) 8. 75重量部とをよく混合し、 50mLの四つ 口フラスコにそそぎ入れ、 室温で 30分間窒素にて脱気を行ない、 モノマー溶 液を調製した。 このモノマー溶液をオイルバスにて 60°Cに昇温し、 重合開始 剤ァゾビスイソプチ口エトリル ( A I B N、 キシダ化学株式会社製) 0. 00
8重量部を脱水ジォキサン 0. 5 gに溶かした溶液を入れることにより、 重合 を開始した。 重合は窒素雰囲気下、 8時間行なった。
重合後、 ポリマーが生成した溶液は、 0. 5 Lのジェチルエーテル (国産化 学株式会社製) に滴下することにより再沈殿させた後、 溶媒を除去することに より粉末化し、 ポリマー A 4を得た。
得られたポリマー A4について、 標準ポリスチレンで校正された S EC測定 を行なった結果、 重量平均分子量 (Mw) が約 86000と見積もられた。 また、 得られたポリマー A4に含まれる NASと NAMとのモル比 (NAS /NAM) は、 NMR測定から NAS/NAM= 3 OZ70と見積もられた。
[製造例 4一 2 :ポリマー B 4の合成]
モノマーとして、 NAM及ぴ N A Sに代えてジメチルァクリルアミ ド (DM AA、 KOHJ I N社製) 0. 79 3重量部、 及び、 NAS 0. 3 38重量 部を用い、 溶媒である脱水ジォキサンの使用量を 1 8. 37重量部とし、 重合 開始剤である A I BNの使用量を0. 00164重量部とした以外は、 製造例 4- 1 (ポリマー A4の合成) と同様にして、 ポリマー B 4を得た。
得られたポリマー B 4について、 標準ポリスチレンで校正された S EC測定 を行なった結果、 重量平均分子量 (Mw) が約 26000と見積もられた。 また、 ポリマー B 4に含まれる NASと DMAAとのモル比 (NASZDM AA) は、 NMR測定から NASZDMAA=43/5 7と見積もられた。
[センサチップの表面処理]
次に、 本発明の生体関連物質固定担体の基体となる固相担体を調製した。
[製造例 4一 3 :センサチップ A]
測定用センサチップには、 大きさが縦 2. 5 cmX横 2. 5 cmX厚さ 1. 2mmの平滑、 平板状プラスチックの基体表面に、 厚さ約 8 O nmで金を蒸着 した金被覆センサチップを用いた。
この金被覆センサチップを、 1 OmMの 1 6 _メルカプトへキサデカン酸( 1 6 -MERCAP TOHEXADE CANO I C AC I D ; ALDR I CH 社製) エタノール溶液に浸漬させ、 60°Cで 2時間反応させ、 表面処理を行な つた。 反応終了後、 金被覆センサチップをエタノール及び脱塩水で洗浄した。
この表面処理は、 金被覆センサチップ表面に金ーチオール結合を介してカルボ キシル基を導入するものである。
次に、 Q . 1MのN—ヒドロキシスクシイミ ド (NH S、和光純薬工業社製) 水溶液 1 ni Lと 0. 4 Mの 1—ェチル— 3— ( 3—ジメチルァミノプロピル) 一カルポジイミド塩酸塩 (ED C、 同仁化学研究所製) 水溶液 l mLとを混合 し、 さらに脱塩水 1 8 gで希釈した溶液に、 カルボキシル基を導入した金被覆 センサチップを浸漬させ 1 5分間反応させた。 ここで得られた、 スクシイミ ド 基を導入された金被覆センサチップをセンサチップ Aとした。
[支持体の作製]
以下の方法により、 本発明の生体関連物質固定担体を作製するための支持体 を調製した。
[製造例 4 _ 4 :牛血清アルブミン固定化ラテックス]
1 0%ポリスチレンラテックス水溶液 (日本合成ゴム社製、 粒径 0. 1 0 1 μ χη) 2 0 0 Lと 0. 1 %牛血清アルブミン (S I GMA社製) 、 0. 1 5 M塩化ナトリウム含有 0. 1Mリン酸バッファー (ρ·Η 7. 4 :以下リン酸希 釈バッファー) 8 0 0 / Lとを混合し、 室温にて 3 0分間、 撹拌した後、 遠心 して上清を除去した後、沈殿物に 0. 1 %牛血清アルブミン(S I GMA社製)、 0. 1 5M塩化ナトリウム含有 0. 1Mリン酸バッファー (p H 7. 4) 2 0 0 μ Lを加え、 1 0 %牛血清アルブミン固定化ラテツクス溶液 (支持体) とし た。
[測定用センサチップの作製]
■ 以下に記載のとおり、 本発明の生体関連物質固定担体としてバイオセンサチ ップ 1〜 6を調製した。 また、 比較用バイオセンサチップ 1〜4を調製した。
[製造例 4一 5 :バイオセンサチップ 1 ]
バイオセンサチップ 1は、 前記センサチップ Αに、 ポリマー A 4 (生体関連 物質と結合可能な化合物) 、 1 %マウス I g G (生体関連物質) 、 及びラテツ タス (支持体) を混合したものを滴下して固定化させて作製した。
まず、 上記 1 0 %牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液 (粒径 0. 1 0 1 μπι :支持体) I O Lに、 上記ポリマー A 4 (担持固定化用化合物) を 0.
1Mのリン酸バッファー (ρΗ7. 2) を用いて、 1%に調製したポリマー A 4水溶液 Ι Ο i Lと、 1%マウス I gG (L AM P I REB I OLOG I CA L LABORATOR I ES社製;生体関連物質) 水溶液 l O O /^ Lとを混 合し、 その混合液 0. 5 Lを、 上記センサチップ Aに滴下し、 37°C、 飽和 水蒸気圧下で 30分間固定化させた。 その後、 溶媒を室温にて自然乾燥により 1 5時間乾燥させることにより、 所定のマトリックスを形成させた後、 3%牛 血清アルブミン (S I GMA社製) 含有 0. 5Mエタノールァミン塩酸塩 (S I GMA社製, p H 8. 5) 水溶液に 30分間振とう下、 浸漬させて未反応ス クシンイミド基をブロッキングし、 さらに、 脱塩水を用いて基板を洗浄後乾燥 し、 本発明の生体物質固定担体としてのバイオセンサチップ 1とした。
[製造例 4一 6 :バイオセンサチップ 2]
バイオセンサチップ 2は、 バイオセンサチップ 1と同様にして作製したが、 ラテックス濃度を 4段階に設定し、 バイオセンサチップ 2 (a) 〜 (d) の 4 種類を作製した。
まず、 上記牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液 (粒径 0. 10 1 m: 支持体) を上記リン酸希釈バッファーを用いて 0%、 2%、 10%、 40%に それぞれ調製した水溶液 10 μ Lと上記ポリマー A 4 (担持固定化用化合物) を上記リン酸バッファーを用いて 1%に調製した水溶液 10 μ Lとを、 上記マ ウス I g Gを上記のリン酸バッファーを用いて 1%にそれぞれ調製した水溶液 100 Lとそれぞれ混合し、 その混合液 0. 5 μ Lを、 上記センサチップ A に滴下し、 3 7°C、 飽和水蒸気圧下で 30分間固定化させた。 その後、 製造例 4- 5 (バイオセンサチップ 1の作製) と同様にして自然乾燥、 ブロッキング 及び洗浄を行ない、 バイオセンサチップを作製した。 こうして作製された本発 明の生体物質固定担体としてのバイオセンサチップを、 バイオセンサチップ 2 とした。
[製造例 4一 7 :バイオセンサチップ 3]
バイオセンサチップ 3は、 前記センサチップ Aに、 ポリマー A4、 マウス抗 体 F (a b ' ) 2 (生体関連物質) 、 及びラテックスを固定化させたものであ
る。 ポリマー A 4及びラテックスはそれぞれ 2種類の濃度を設定し、 バイオセ ンサチップ 3 (a ) 〜 (d) の 4種類を作製した。
まず、 上記牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液 (粒径 0. 1 0 1 m : 支持体) を上記リン酸希釈バッファーを用いて 0%、 1◦%にそれぞれ調製し た水溶液 1 0 Lと上記ポリマー A 4 (担持固定化用化合物) を上記リン酸バ ッファーを用いて 1 %に、 3. 8 %にそれぞれ調製した水溶液 1 0 μ Lとを、 マウス抗体 F (a b ' ) 2 (自社製, 生体関連物質) を上記のリン酸バッファ 一を用いて 1 %にそれぞれ調製した水溶液 1 0 0 μ Lにそれぞれ混合し、 その 混合液 0. を、 上記センサチップ Aに滴下し、 3 7°C、 飽和水蒸気圧下 で 3 0分間固定化させた。 その後、 製造例 4一 5 (バイオセンサチップ 1の作 製) と同様にして自然乾燥、 ブロッキング及び洗浄を行ない、 バイオセンサチ ップを作製した。 こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのバイ ォセンサチップを、 バイオセンサチップ 3とした。
[製造例 4— 8 :バイオセンサチップ 4]
バイオセンサチップ 4の作製は、 上記製造例 4一 δに記載のバイオチップ 1 の作製方法と同様にして行ったが、 支持体として用いるラテックスとして、 2 種類の粒径のものを混合して用いた。
ポリスチレンラテックス水溶液として、 2 0 °/0牛血清アルブミン固定化ラテ ックス溶液 (曰本合成ゴム社製、 粒径 0. 1 0 1 /2 m) 7. 5 μ ίと、 4 0 % 牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液 (日本合成ゴム社製、 粒径 3. 2 Q μ m) 2. 5 Lとの混合ラテックス溶液を用いた。 4 0 %牛血清アルブミン固 ' 定化ラテックス溶液 (粒径 3. 2 6 μ m) の作製は、 製造例 4 _ 4において 2 0 %牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液 (日本合成ゴム社製、 粒径 0. 1 0 1 μ πι) を作製した方法と同様にして行った。
その他は、 製造例 4一 5 (バイオセンサチップ 1の作製) と同様にして、 バ ィォセンサチップ 4を作製した。
[製造例 4一 9 :バイオセンサチップ 5 ]
バイオセンサチップ 5は、 上記製造例 4— 8に記載のバイォチップ 4の作製 と同様にして行ったが、 化合物としては、 ポリマー Β 4を用いた。
担持固定化用化合物として、 ポリマー A 4に代えて前記ポリマー B 4を用い た他は、 すべて製造例 4一 8 (バイオセンサチップ 4の作製) と同様にして、 バイオセンサチップ 5を作製した。
[製造例 4 _ 1 0 :バイオセンサチップ 6 ]
バイオセンサチップ 6は、 前記センサチップ Aに、 ポリマー A 4、 抗 H B s 抗原マウスモノクローナル抗体 F ( a b ' ) 2 (生体関連物質) 、 及びラテツ タスを混合したものを用いて作製した。
生体関連物質としては、 マウス I g G水溶液の代わりに抗 H B s抗原マウス モノクローナル抗体 F ( a b ' ) 2 (自製) を前記リン酸バッファーを用いて 1 %水溶液に調整して 1 0 0 L用いた。 また、 前記ポリマー A 4水溶液の濃 度を 1 %とした。 その他は、 製造例 4— 5 (バイオセンサチップ 1の作製) と 同様にして、 バイォセンサチップ 6を作製した。
[比較製造例 4一 1 :比較用バイオセンサチップ 1 ]
比較用バイオセンサチップ 1は、 化合物及び支持体を用いず、 1 %マウス I g G (生体関連物質)のみを直接前記センサチップ Aに固定化したものである。 牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液、 ポリマー A 4水溶液、 及びマゥス I g G水溶液の混合液の代わりに、 1 %マウス I g G水溶液 (生体関連物質水 溶液) 0 . 5 Lのみを用いた他は、 製造例 4 _ 5 (バイオセンサチップ 1の 作製) と同様にしてバイォセンサチップを作製した。 こうして作製したバイオ センサチップを比較用バイォセンサチップ 1とした。
[比較製造例 4 _ 2 :比較用バイオセンサチップ 2 ]
比較用バイオセンサチップ 2は、 支持体を用いず、 1 %マウス I g G (生体 関連物質) 及びポリマー A 4を混合して、 前記センサチップ Aに固定化して作 製した。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液、 ポリマー A 4水溶液、 及びマウス
I g G水溶液の混合液の代わりに、 1 %ポリマー A 4水溶液 1 0 μ Lと、 1 °/0 マウス I g G水溶液 1 0 0 Z Lとを混合し、 その混合液 0 . 5 μ Lを用いて、 製造例 4 _ 5 (バイオセンサチップ 1の作製) と同様にしてバイォセンサチッ
プを作製した。 こうして作製したバイオセンサチップを比較用バイオセンサチ ップ 2とした。
[比較製造例 4— 3 :比較用バイオセンサチップ 3 ]
比較用バイオセンサチップ 3は、 化合物を用いず、 1 %マウス I g G (生体 関連物質) 及びラテックス溶液 (支持体) を混合して、 前記センサチップ Aに 固定化して作製した。
1 0%ポリスチレンラテックス水溶液 (日本合成ゴム社製、 粒径 0. 1 0 1 μ χη.) 2 00 μ 0. 1 %マウス I g G (LAMP I REB I OLOG I C AL LAB ORATOR I E S社製;生体関連物質) 、 及び 0. 1 5 M塩化 ナトリウム含有 0. 1Mリン酸バッファー (p H7. 4 :以下リン酸希釈バッ ファー) 8 0 0 μ Lを混合し、 室温にて 3 0分間撹拌した後、 遠心して上清を 除去した。 得られた沈殿物に 0. 1 %牛血清アルブミン (S I GMA社製) 、 0. 1 5 M塩化ナトリウム含有 0. 1Mリン酸バッファー (p H 7. 4) 20
0 μ Lを加え、 1 0%マウス I g G固定化ラテックス溶液とした。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液、 ポリマー A 4水溶液、 及びマウス
1 g G水溶液の混合液の代わりに、 上記 1 0 °/0マウス I g G固定化ラテックス 溶液 1 0 しと、 0. 1Mリン酸バッファー (p H 7. 2) 1 00 / Lとを混 合し、 その混合液 0. 5 AJ Lを用いた他は、 製造例 4一 5 (バイオセンサチッ プ 1の作製) と同様にしてバイオセンサチップを作製した。 こうして作製した バイオセンサチップを比較用バイ^センサチップ 3とした。
[比較製造例 4— 4 :比較用バイオセンサチップ 4]
比較用バイオセンサチップ 4は、 支持体を用いず、 抗 HB s抗原マウスモノ クローナル抗体 F (a b ' ) 2 (生体関連物質)及びポリマー A 4を混合して、 前記センサチップ Aに固定化して作製した。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液とポリマー A 4水溶液と抗 HB s抗 原マウスモノクローナル抗体 F ( a b ' ) 2水溶液との混合液の代わりに、 1 % に調製したポリマー A 4水溶液 1 0 μ Lと、 1 %抗 HB s抗原マウスモノクロ —ナル抗体 F (a b ' ) 2水溶液 1 00 μ Lとを混合し、 その混合液 0. 5 μ Lを用いた他は、 製造例 4一 1 0に記載のバイオチップ 6の作製方法と同様に
してバイォセンサチップを作製した。 こうして作製したバイォセンサチップを 比較用バイオセンサチップ 4とした。
[実施例 4一 1 :化学発光法によるマウス I g Gの測定]
製造例 4一 5 (バイオセンサチップ 1 ) 〜8 (バイオセンサチップ 4) 、 及 び、 比較製造例 4— 1 (比較用バイオセンサチップ 1) 〜3 (比較用バイオセ ンサチップ 3) で作製したバイォセンサチップを用いて、 マウス I g G—抗マ ウス I g G間の抗原抗体反応を検出する化学発光測定を行った。
検体 (分析物、 作用物質) としては、 ピオチンでラベル化したゥサギ抗マゥ ス I gG (ィムノプローブ社製) を用いた。 ゥサギ抗マウス I g Gのビォチン 化は次のようにして行った。 まず、 EZ— L i n k™ S u 1 f o— NHS— L C— B i o t i n (P I ERC E社製) を M i 1 1 i Q水にて 1 m g Zm Lに 調製したビォチン水溶液 1 00 /z Lに、 0. 05M炭酸バッファー (p H 8. 5) にて lmg/mLに調製されたゥサギ抗マウス I g G lmLを加え、 氷水 中にて 2時間反応させた。 反応後、 この溶液に 1Mグリシンバッファー (pH 8. 0) を 1 0◦ μ L添加し、 氷水中にて 2時間反応させた後、 0. 1Mリン 酸バッファー (ρΗ7. 4) に対して 4 °Cでー晚透析を行うことにより、 未反 応のラベル化試薬を除去して、 ピオチン化ゥサギ抗マウス I gGを得た。
上記のピオチン化抗マウス I gGを上記リン酸希釈バッファーを用いて所定 の濃度に調製した溶液 4 m Lに、 それぞれのバイオセンサチップを浸し、 振と う下、 常温にて 30分間反応させた後、 0. 0 1 %Tw e e n 20含有 0. 0 1Mリン酸バッファー (ρΗ7. 4 :以下洗浄バッファー) 及び Mi 1 1 i Q 水にてバイオセンサチップを洗浄した。 このチップは、 リン酸希釈バッファー にて 50 n gZmLに調整された N e u t r a -Av i d i n-HRP (P I ERCE社製) 水溶液 4mLに浸し、 振とう下、 常温にて 30分間反応させた 後、 洗浄バッファー及び M i 1 1 i Q水にてバイオセンサチップを洗浄して、 乾燥させた。 これに S u p e r S i g n a l EL I SA F emt o Ma x i mum S e n s i t i v i t y S u b s t r a t e (P I ERCE社 製) を lmL加え、 CCDカメラ (ORG A I I _ E R:浜松ホト二タス社製) を用い積算時間 60秒にて、 撮像する事により化学発光量を測定した。
[実施例 4一 2 :化学発光法による HB s抗原の測定]
製造例 4一 10及び比較製造例 4— 4で作製したバイォセンサチップを用い て、 HB s抗原ー抗 HB S抗体間の抗原抗体反応を検出する化学発光測定を行 なった。
検体(分析物、作用物質) としては、組換え HB s抗原 (サブタイプ a d w : 自製) を用い、 HB s抗原測定用ラベル体としてビォチンでラベル化したゥサ ギ抗 HB s抗原 F (a b ' ) 2 (ィムノプローブ社製) を用いた。 ゥサギ抗 H B s抗原 F (a b ' ) 2のビォチン化は、 実施例 4一 1のゥサギ抗マウス I g Gの代わりにゥサギ抗 HB s抗原 F (a b ' ) 2を用いた以外は全て同様にし て作製した。
上記の組換え HB s抗原を上記リン酸希釈バッファーを用いて所定の濃度に 調製した溶液 4 m Lに、 それぞれのバイオセンサチップを浸し、 振とう下、 常 温にて 60分間反応させた後、 洗浄バッファー及び M i 1 1 i Q水にてバイオ センサを洗浄した。 これを前記ピオチン化ゥサギ抗 HB s抗原 F (a b ' ) 2 をリン酸希釈バッファ一にて 2 μ g /mLに調整された水溶液 4 m Lに浸し、 振とう下、 常温にて 30分間反応させた後、 洗浄バッファー及び M i 1 1 i Q 水にてバイオセンサチップを洗浄した。 次に、 N e u t r a— A v i d i n_ HR P (P I ERCE社製) をリン酸希釈バッファ一にて 50 n g Zm Lに調 整された水溶液 4mLに、 バイオセンサチップを浸し、 振とう下、 常温にて 3 0分間反応させた後、 洗浄バッファ一及び M i 1 1 i Q水にてバイオセンサチ ップを洗浄して、乾燥させた。これに S u p e r S i g n a 1 EL I SA F em t o Ma x i mum S e n s i t i v i t y S u b s t r a t e (P I ERCE社製) を lmL加え、 CCDカメラ (ORCA I I— ER :浜 松ホトニタス社製) を用い積算時間 60秒にて、 撮像する事により化学発光量 を測定した。
[化学発光測定結果 1 :化学発光法によるマウス I gGの測定:本発明のバイ ォセンサチップの解析]
バイオセンサチップ 1と比較用バイオセンサチップ 1〜3を用いて測定した 化学発光測定結果を表 4一 1に示す。 これらの結果より、 バイオセンサチップ
1は比較用バイオセンサチップ 1、 2、 3の何れのチップと比較しても、 発光 強度が高く、 再現性が高い (CV値が小さい) ことが確認された。
なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下した 8スポットの平均値であり、 CVは 8スポットの CVである。
[表 4一 1 ]
また、 図 3 0 (a) 、 図 30 (b) に、 ピオチン化抗マウス I g G濃度 1 n gZmLにおける化学究光測定時の CCDカメラの画像を示す。 図 3 0 (a) は化学発光測定時のバイオセンサチップ 1を写したもの、 図 30 (b) は化学 発光測定時の比較用バイオセンサチップ 2を映したものである。 なお、 図 3 0 (a)、図 3 0 (b) において、 白い部分が化学発光を発している部分である。 この図からも分かるように、 化学発光測定において比較用バイオセンサチップ 2はリング状の発光を示し、 発光にムラが見られるのに対し、 バイオセンサチ ップ 1はリング状の発光は見られず、 発光にムラが少ないことが分かる。 この ことからも本法によつて作製されたバイォチップは精度が高いことが分かる。
[化学発光測定結果 2 :化学発光法によるマウス I g Gの測定:本宪明のバイ ォセンサチップにおける支持体濃度依存性の解析]
製造例 4一 6で作製した支持体濃度が異なるバイオセンサチップ 2 (a ) 〜 (d) を用いて、 支持体濃度の変化による影響を調べた。 化学発光測定の結果 を表 4— 2に示す。
これらの結果より、 支持体の濃度が高くなるに従い、 発光強度が高く、 再現 性 (CV) が高くなることが確認されたが、 濃度が高すぎるとプランク値 (ビ ォチン化抗マウス I g G濃度が O n gZmLのときの発光強度) も上昇してし まうので、 最適な支持体濃度が存在することが分かった。
なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下した 8スポットの平均値であり、 CVは 8スポットの C Vである。
[表 4一 2]
[化学発光測定結果 3 :化学発光法によるマウス F (a b ' ) 2の測定:本発 明のバイォセンサチップにおける化合物濃度依存性の解析]
製造例 4一 7で作製したバイオセンサチップ 3 (a) 〜 (d) を用いて、 支 持体の有無及び担持固定化用化合物の濃度変化による影響を調べた。 その化学 発光測定の結果を表 4— 3に示す。
支持体が存在しない場合、 担持固定化用化合物濃度が高くなるに従い、 発光 強度が高くなるが、 再現性 (CV) が低いことが確 、された。 支持体が存在す る場合には、 担持固定化用化合物濃度が高くなるに従って発光強度は若干高く なり、 再現性 (CV) も良くなることが確認された。 これらの結果より、 最適 な支持体、 固定化化合物濃度が存在することが分かった。
なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下した 8スポッ トの平均値であり、 C Vは 8スポッ トの C Vである。
[表 4一 3]
[化学発光測定結果 4 :化学発光法によるマウス I gGの測定:支持体の粒径 による影響の解析]
製造例 4一 8で作製した粒径の異なるラテツクス粒子を用いたバイォセンサ チップ 4の化学発光測定結果を表 4一 4に示す。 この結果より、 バイオセンサ チップ 4は、 比較用バイオセンサチップ 1と比較して発光強度が高く、 再現性
(CV) が高いことが確認された。
なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下した 8スポットの平均値であり、 CVは 8スポットの CVである。
[表 4— 4 ]
[化学発光測定結果 5 :化学発光法によるマウス I gGの測定:異なるポリマ 一により作製されたバイォチップの解析]
製造例 4 _ 8で作製したバイォセンサチップ 4と製造例 4一 9で作製したバ ィォセンサチップ 5を用いて、 担持固定化用化合物がブランク値 (ピオチン化 抗マウス I g G濃度 0 n g/mLでの発光強度) に及ぼす影響を調べた。 バイ ォセンサチップ 4はポリマー A 4を用いて作製されたものであり、 バイオセン サチップ 5はポリマー B 4を用いて作製されたものである。 その化学発光測定 結果を表 4一 5に示す。
ポリマー B 4はポリマー A4に比べてブランク値が低く、 その結果、 SZN 比(=ビォチン化抗マウス I g G濃度 1 n gZmLでの発光強度/ブランク値) が高くなることがわかった。 これらの結果より、 適宜目的にあわせて化合物を 選択して用いることにより、 ブランク値を抑制したり、 S/N比を上昇させる ことができることが分かった。
なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液 それぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下したすポットの平均値であり、 CVは 8スポットの CVである。
[表 4 _ 5 ]
[化学発光測定結果 6 :化学発光法による H B s抗原の測定]
製造例 4 _ 1 0で作製したバイォセンサチップ 6と、 比較製造例 4一 4で作 製した比較用バイオセンサチップ 4を用いて、 H B s抗原に対する抗原抗体反 応 (相互作用) の化学発光測定を行なった。 その化学発光測定結果を表 4— 6 に示す。
これによると、 バイオセンサチップ 6は比較用バイオセンサチップ 4と比較 して発光強度が高く、 再現性 (C V ) も高いことが確認された。 このことによ り、 生体関連物質や測定系が異なっても本法が有効であることが確認された。 なお、 各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に 8 ケ所滴下したすポットの平均値であり、 C Vは 8スポットの C Vである。
[表 4 _ 6 ]
[実施例 4一 3 : SEMによる観察]
製造例 4一 5で作製したバイオセンサチップ 1と、 製造例 4 _ 7で作製した バイオセンサチップ 3 (b) 、 製造例 4一 8で作製したバイオセンサチップ 4 のマトリックス構造を、上記実施例における評価後に SEMを用いて観察した。 また、 得られた電子顕微鏡写真を用いて、 バイオセンサチップ 1の膜厚及び空 隙率を算出した。
S EMにより観察されたバイオセンサチップ 1の表面を表わす写真 (倍率 X 4000、 及ぴ、 X 60000) を図 3 1、 断面を表わす写真 (倍率 X 500 00、 及び、 X 5000) を図 32及び図 33に示す。 また、 バイオセンサチ ップ 4の断面写真 (倍率 X 5000) を図 34に、 バイオセンサチップ 3 (b) の断面写真 (倍率 X 50000) を図 35に示す。
これらの写真において、 白く見える部分がマトリックス骨格である。
(1) 膜厚の算出
図 33の断面図から、バイオセンサチップ 1の乾燥,状態での膜厚を算出した。 その結果、 バイオセンサチップ 1の膜厚は約 3 であった。 また、 2種類の 粒径のラテックスを混合して用いることにより膜厚を変化させたバイォセンサ チップ 4の断面図を図 34から算出したところ、 バイオセンサチップ 4の膜厚 は約 9 mであった。
このことから、 粒径の異なる粒子を支持体として用いるこどで、 膜厚が異な るバイォセンサチップを作製できることがわかり、 任意の膜厚を有するバイォ センサチップを作製できることが示された。
(2) 空隙率の算出
図 32のバイオセンサチップ 1の断面図、 及び、 図 3 5のバイオセンサチッ プ 3 (b) (支持体 1 0%、 担持固定化用化合物 3. 8%の場合) の断面図を 用いて、 イメージプログラマ (MED I A C YB ERNET I C S社製: I ma g e -P r o-P l u s v e r. 4. 0 )を用いた画像角军析を行った。 画像の濃淡情報に基づき、 それぞれのバイォセンサチップ乾燥状態での空隙率 の測定を行った。
(2- 1) 画像入力
上記 S EM写真をスキャナーより 240 D P Iで入力した。 画像の大きさは 10 1 9 X 764 P i x e l、較正値 は 2. 1 7 n m/ P i x e 1であった。 (2-2) 画像処理
メディアンフィルタ 3 X 3を 5回使用し、 ノイズ除去を行った。 背景画像を 作成 (背景画像作成条件: 「明るい」 「オブジェクト幅 ' 20」 ) し、 シエー デイング補正 (除算による補正) を行った。
(2-3) 面積比の計測
粒子領域を設定して、 固定閾値 (濃度 30%) により画像を二値化し、 その 後、 モルフォロジ一処理 (接続 5 X 5、 1回、 穴埋め) により穴の形状を修正 し、 面積比を計測した。 結果を表 4— 7に示す。
4— 7]
測定個数 面積比
バイオセンサチップ 1 93個 23.2% バイオセンサチップ 3 (b) 236個 16.3¾
この解析結果から、 バイォセンサチップ 1の空隙率は 2 3 . 2 %となつた。 また、担持固定化用化合物の濃度を 3 . 8倍にしたバイオセンサチップ 3 ( b ) (支持体 1 0 %、担持固定化用化合物 3 . 8 %の場合)の空隙率は約 1 6 . 3 % であることが分かった。
上記 (1 ) 及び (2 ) の結果から、 支持体、 担持固定化用化合物、 生体関連 物質の濃度を適宜変化させることにより、 膜厚や空隙率を適宜変更させること ができ、性質の異なるバイォセンサチップを任意に作製できることが示された。 産業上の利用可能性
本発明の生体物質構造体及び生体物質構造体の製造方法、 生体物質担持体、 対象物質の精製方法、 ァフィユティークロマトグラフィー用容器、 対象物質の 解析方法、生体物質固定担体、生体物質固定担体の製造方法、生体物質複合体、 生体物質複合体担持体、 対象物質の精製方法、 ァフイエティーク口マトグラフ ィ一用容器、分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置、 センサーチップ、 アレイ、 バイオセンサー、 診断デバイス、 並びに方法は、 産 業上の任意の分野に用いることができるが、 中でも、 例えば、 生体物質間相互 作用解析用センサーチップ、 生体適合性が求められる医療材料の表面処理、 バ ィォセンサー、 診断デバイスなどに好適に用いられる。 また、 例えば、 医療、 診断、 食品分析、 生体分析などの分野に用いて好適である。 具体例としては、 少量のサンプルで非特異的吸着を抑制したァフィユティー精製もしくは医薬作 用等の解析ツールに用いることができる。 さらに、 例えば、 生体物質担持体や 生体物質複合体担持体として、 流路などの表面に生体物質構造体や生体物質複 合体を形成したものを用い、 この流路に分離精製したい混合溶液を流すことに より、 自動化されたァフィ-ティ一精製装置もしくは医薬作用等の解析装置を 簡単に作製することができる。 本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れる ことなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
なお本出願は、 2 0 0 4年 9月 1 4日付で出願された日本特許出願 (特願 2
004- 26 7272) 、 2005年 7月 1 1日付で出願された日本特許出願 (特願 2005— 20 1 1 34) 、 及び、 2005年 7月 27日付で出願され た日本特許出願 (特願 2005-2 1 75 72) に基づいており、 その全体が 引用により援用される。