明 細 書
ガスバリア積層体及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、新規の積層構造を有するガスバリア積層体とその製造方法に関する。
背景技術
[0002] 従来より、榭脂基材の表面に酸ィ匕アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の 金属酸ィ匕物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガス の遮断を必要とする物品の包装、食品や工業製品及び医薬品等の変質を防止する 目的の包装用途に広く用いられている。
[0003] また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクト口ルミネッセンス (EL) 基板等で使用されている。特に、液晶表示素子や有機 EL素子などへの適用が進ん でいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状 の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れ やすく大面積ィ匕が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が 採用され始めている。
[0004] し力しながら、透明プラスチック等のフィルム基材は、ガラスに対しガスノ リア性が劣 るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例 えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
[0005] この様な問題を解決するために、フィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガ スノ リア性フィルム基材とすることが知られている。包装材ゃ液晶表示素子に使用さ れるガスノ リア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸ィ匕珪素を蒸着したもの( 特許文献 1)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特許文献 2)が知られており、 V、ずれ も lgZm2Zday程度の水蒸気バリア性を有する。
[0006] 近年では、さらなるガスノ リア性が要求される有機 ELディスプレイや、液晶ディスプ レイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりフィルム基板へのガスノ リア性能 につ 、て水蒸気ノ リアで 0. lgZm2Zday程度まで要求が高まってきて 、る。
[0007] 更に、近年において、更に高度のガスノ リア性が要求される有機 ELディスプレイや
高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が急速に進み、これらの分野に適用可能 な透明性を維持しつつも、更なる高ガスノリア性、特に 0. lgZm2Zday未満の水蒸 気ノリア性を備えた積層体の開発が求められてきた。
[0008] 上記のような要求に対し、ポリマー層とガスノリア層を交互に積層した構造を有する ノリア性榭脂基材を作製する薄膜形成方法が提案されて ヽる (例えば、特許文献 3、 4参照。;)。しカゝしながら、これら提案されている薄膜形成方法は、均一組成のポリマ 一層とガスノリア層とを交互に積層した構造であるため、基材及びポリマー層、ある いはポリマー層とガスバリア層間での密着性、屈曲性、あるいは過酷な環境下で長時 間にわたり保存した際の環境耐性に問題を抱えており、早急な改良が求められてい る。
特許文献 1:特公昭 53— 12953号公報
特許文献 2:特開昭 58— 217344号公報
特許文献 3:国際公開第 00Z026973号パンフレット
特許文献 4:特開 2004— 9395号公報
発明の開示
[0009] 本発明の目的は、高いガスノリア性を備え、基材、ポリマー層及びガスバリア層間 の密着性が向上し、屈曲耐性及び環境耐性に優れたガスバリア積層体とその製造 方法を提供することにある。
[0010] 本発明の上記目的を達成するための態様の一つは、基材上に、少なくともガスバリ ァ層とポリマー層とを有し、該ポリマー層の少なくとも 1層が該ガスノ リア層の少なくと も 1層に隣接し、該ポリマー層の該ガスバリア層との接触界面における平均炭素含有 量が、該ポリマー層の平均炭素含有量より小さいことを特徴とするガスノリア積層体 にある。
図面の簡単な説明
[0011] [図 1]本発明のガスノリア積層体の構成及び炭素含有率のパターンの一例を示す模 式図である。
[図 2]本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した 概略図である。
[図 3]本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処 理装置の一例を示す概略図である。
[図 4]導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体を有するロール回転電 極の一例を示す斜視図である。
[図 5]角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の 一例を示す斜視図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1) 基材上に、少なくともガスノリア層とポリマー層とを有し、該ポリマー層の少なくと も 1層が該ガスノリア層の少なくとも 1層に隣接し、該ポリマー層の該ガスノリア層との 接触界面における平均炭素含有量が、該ポリマー層の平均炭素含有量より小さいこ とを特徴とするガスノリア積層体。
(2) 基材上に、少なくともガスノリア層とポリマー層とを有し、該ポリマー層の少なくと も 1層と該基材とが隣接し、該ポリマー層の該基材との接触界面における平均炭素含 有量が、該ポリマー層の該接触界面以外の領域の平均炭素含有量より大きいことを 特徴とするガスバリア積層体。
(3) 基材上に、少なくともガスノリア層とポリマー層とを有し、該ポリマー層の少なくと も 1層が該ガスノリア層の少なくとも 1層に隣接し、該ポリマー層の該ガスノリア層との 接触界面における平均炭素含有量が該ポリマー層の平均炭素含有量より小さぐか っ該ポリマー層の少なくとも 1層と該基材とが隣接し、該ポリマー層の該基材との接触 界面における平均炭素含有量が、該ポリマー層の該接触界面以外の領域の平均炭 素含有量より大きいことを特徴とするガスノリア積層体。
(4) 前記ガスノリア層と前記ポリマー層とが交互に積層されていることを特徴とする 前記(1)〜(3)の 、ずれか 1項に記載のガスバリア積層体。
(5) 前記ガスバリア層に隣接する前記ポリマー層の炭素含有層が、厚さ方向で連 続的に変化していることを特徴とする前記(1)、 (3)または (4)に記載のガスバリア積 層体。
(6) 前記基材に隣接する前記ポリマー層の炭素含有層が、厚さ方向で連続的に変
化して 、ることを特徴とする前記(2)または(3)に記載のガスノリア積層体。
(7) 前記(1)〜(6)の ヽずれか 1項に記載のガスバリア積層体を製造するガスバリ ァ積層体の製造方法であって、ポリマー層の少なくとも 1層をプラズマ CVD法で形成 することを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
(8) 前記(1)〜(6)の ヽずれか 1項に記載のガスバリア積層体を製造するガスバリ ァ積層体の製造方法であって、全てのポリマー層をプラズマ CVD法で形成すること を特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
(9) 前記プラズマ CVD法が、大気圧または大気圧近傍の圧力下において実施さ れることを特徴とする前記(7)または(8)に記載のガスバリア積層体の製造方法。
[0013] 以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
[0014] 本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、少なくともガスバ リア層とポリマー層とを有するガスノリア積層体において、 1)ポリマー層の少なくとも 1 層がガスノリア層の少なくとも 1層に隣接し、該ポリマー層の該ガスノリア層との接触 界面における平均炭素含有量が、該ポリマー層の平均炭素含有量より小さいことを 特徴とするガスバリア積層体、 2)ポリマー層の少なくとも 1層と基材とが隣接し、該ポリ マー層の該基材との接触界面における平均炭素含有量が、該ポリマー層の該接触 界面以外の領域の平均炭素含有量より大きいことを特徴とするガスノリア積層体、あ るいは 3)ポリマー層の少なくとも 1層がガスノリア層の少なくとも 1層に隣接し、該ポリ マー層の該ガスバリア層との接触界面における平均炭素含有量が該ポリマー層の平 均炭素含有量より小さぐかつ該ポリマー層の少なくとも 1層と該基材とが隣接し、該 ポリマー層の該基材との接触界面における平均炭素含有量力 S、該ポリマー層の該接 触界面以外の領域の平均炭素含有量より大きいことを特徴とするガスバリア積層体 により、高いガスノリア性を備え、基材、ポリマー層及びガスノリア層間の密着性が向 上し、屈曲耐性及び環境耐性に優れたガスノリア積層体を実現できることを見出し、 本発明に至った次第である。なお、本発明でいうポリマー層の基材との接触界面、あ るいはポリマー層のガスノリア層との接触界面とは、ポリマー層の膜厚を 100%とした 時、各表面力も 10%までの膜厚領域をそれぞれの接触界面と定義する。
[0015] 本発明の好ましい態様においては、基材上に、少なくともガスノ リア層とポリマー層
とを有するガスノリア積層体において、基材に隣接して配置されたポリマー層の基材 との接触界面における炭素含有量を最も多い条件に設定し、そのポリマー層上に配 置されているガスノリア層に向かって、炭素含有量を減少させ、逆に金属酸化物の 含有量を高くする構成とすることにより、基材とポリマー層の密着性及びポリマー層と ガスノリア層との密着性を飛躍的に高めることができた。
[0016] また、ポリマー層とガスノリア層とが隣接して配置した際、該両層の接触界面におけ るポリマー層における平均炭素含有量を最も少ない条件に設定し、ポリマー層の中 心部領域では、平均含有量を増加させることにより、ポリマー層とガスバリア層との密 着性が向上し、更にはポリマー層の折り曲げや長期間保存した際のクラック (亀裂)の 発生によるピンホール故障を効果的に抑制することができる。
[0017] 本発明のガスバリア積層体において、ポリマー層をそれぞれ配置される位置に従つ て、ポリマー層内の炭素含有量を特定の含有率パターンとすることを特徴とするが、 この様な炭素含有量を変化させてポリマー層を形成する好ましい方法としては、ブラ ズマ CVD法を用いて規定した炭素含有量パターンで形成することであり、更にブラ ズマ CVD法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下にお 、て実施することが好ま しぐ本発明に係るプラズマ CVD法を用いることにより精緻に制御された条件で、本 発明で規定する炭素含有量パターンを実現することができる。
[0018] 以下、本発明の詳細について説明する。
[0019] 本発明のガスノリア積層体は、少なくともガスノリア層とポリマー層とを有する。
[0020] 《ガスバリア層》
はじめに、本発明に係るガスノリア層につ 、て説明する。
[0021] 本発明に係るガスノリア層とは、水蒸気、酸素等のガスを遮断する効果を具備した 層であり、金属酸化物、金属窒化酸化物、金属窒化物等のセラミック成分を主成分と する薄膜で、その膜厚は、概ね 5〜: LOOnmで、後述するポリマー層に対し相対的な 硬度が高い層であり、層中の平均炭素含有量が 1%未満のそうであるものと定義する
[0022] 本発明に係るガスノリア層は、後述する原材料をスパッタリング法、塗布法、イオン アシスト法、後述するプラズマ CVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下
でのプラズマ CVD法等を適用して形成されることが好ましぐ更に好ましくは、プラズ マ CVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマ CVD法である力 特に 好ましくは、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマ CVD法を用いて形成さ れる。尚、プラズマ CVD法の層形成条件の詳細については、後述する。
[0023] プラズマ CVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマ CVD法により 得られるガスノ リア層は、原材料 (原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、 分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸ィ匕 物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、またこれらの混合物 (金属酸窒化物、金属酸化 ハロゲンィ匕物、金属窒化炭化物など)も作り分けることができるため好ましい。
[0024] たとえば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素 酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに-硫ィ匕 炭素を用いれば、硫ィ匕亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷 電粒子 ·活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学 反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定 な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
[0025] このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温 常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはその まま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、パブリング、減圧、超音 波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよ ぐ溶媒は、メタノール,エタノール, n キサンなどの有機溶媒及びこれらの混合 溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子 状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
[0026] このような有機金属化合物としては、
ケィ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ n—プ ロボキシシラン、テトライソプロボキシシラン、テトラ n—ブトキシシラン、テトラ tーブトキ シシラン、ジメチノレジメトキシシラン、ジメチノレジェトキシシラン、ジェチノレジメトキシシ ラン、ジフエ二ルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ェチルトリメトキシシラン、 フエニルトリエトキシシラン、(3, 3, 3—トリフルォロプロピル)トリメトキシシラン、へキ
サメチルジシロキサン、ビス(ジメチルァミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルァミノ)メチ ルビ-ルシラン、ビス(ェチルァミノ)ジメチルシラン、 N, O ビス(トリメチルシリル)ァ セトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルポジイミド、ジェチルアミノトリメチルシラン、ジメ チルアミノジメチルシラン、へキサメチルジシラザン、へキサメチルシクロトリシラザン、 ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オタタメチルシクロテトラシラザン、テ トラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナ一トシラン、テトラメチルジシラザン、トリ ス(ジメチルァミノ)シラン、トリエトキシフルォロシラン、ァリルジメチルシラン、ァリルトリ メチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、 1, 4 ビ ストリメチルシリル 1, 3 ブタジイン、ジ tーブチルシラン、 1, 3 ジシラブタン、ビ ス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジェニルトリメチルシラン、フエ二ルジメチルシ ラン、フエニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリ メチルシリルアセチレン、 1 (トリメチルシリル) 1 プロピン、トリス(トリメチルシリル )メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビュルトリメチルシラン、へキサメチルジシラン 、オタタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、へキサメチ ルシクロテトラシロキサン、 Mシリケート 51等が挙げられる。
[0027] チタンィ匕合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロ ポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタン n—ブトキシド、チタンジイソプロポキシ ド(ビス 2, 4 ペンタンジォネート)、チタンジイソプロボキシド(ビス 2, 4 ェチ ルァセトアセテート)、チタンジ一 n—ブトキシド(ビス一 2, 4 ペンタンジォネート)、 チタンァセチルァセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
[0028] ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム n—プロポキシド、ジルコニウム n—ブトキ シド、ジルコニウム t—ブトキシド、ジルコニウムトリ— n—ブトキシドアセチルァセトネー ト、ジルコニウムジー n—ブトキシドビスァセチルァセトネート、ジルコニウムァセチルァ セトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムへキサフルォロペンタンジォネート 等が挙げられる。
[0029] アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシ ド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム n—ブトキシド、アルミニウム s ブトキ シド、アルミニウム t—ブトキシド、アルミニウムァセチルァセトナート、トリェチルジアル
ミニゥムトリー s—ブトキシド等が挙げられる。
[0030] 硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボ ラン—ジェチルエーテル錯体、ボラン— THF錯体、ボラン—ジメチルスルフイド錯体 、三フッ化硼素ジェチルエーテル錯体、トリェチルボラン、トリメトキシボラン、トリェトキ シボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリェチルボ ラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
[0031] 錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジー n ブチル錫、テト ラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジェチノレジェ トキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジェチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジ ブチル錫、ジェトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチ ラート、錫ジァセトァセトナート、ェチル錫ァセトァセトナート、エトキシ錫ァセトァセト ナート、ジメチル錫ジァセトァセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、 二塩化錫、四塩ィヒ錫等が挙げられる。
[0032] また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエ トキシド、ノ リウム 2, 2, 6, 6—テトラメチルヘプタンジォネート、ベリリウムァセチルァ セトナート、ビスマスへキサフルォロペンタンジォネート、ジメチルカドミウム、カルシゥ ム 2, 2, 6, 6—テトラメチルヘプタンジォネート、クロムトリフルォロペンタンジォネート 、コバルトァセチルァセトナート、銅へキサフルォロペンタンジォネート、マグネシウム へキサフルォロペンタンジォネートージメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テト ラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウム t ブドキシド、ハフニウムエト キシド、インジウムァセチルァセトナート、インジウム 2, 6 ジメチルァミノヘプタンジ ォネート、フエ口セン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジゥム ァセチルァセトナート、白金へキサフルォロペンタンジォネート、トリメチルシクロペン タジェ-ル白金、ロジウムジカルボ-ルァセチルァセトナート、ストロンチウム 2, 2, 6 , 6—テトラメチルヘプタンジォネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルォロェトキ シド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドォキシ ド、マグネシウムへキサフルォロアセチルァセトナート、亜鉛ァセチルァセトナート、ジ ェチル亜鉛、などが挙げられる。
[0033] また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスと しては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、 窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素 ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルォロアルコール、トリフルォロトルエン
、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス、などが挙げられる。
[0034] 金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、 金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫ィ匕物を得ることができる。
[0035] これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、 プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガスおよ び Zまたは周期表の第 18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、タリブト ン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが 好ましく用いられる。
[0036] 上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置 (ブラズ マ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得よう とする膜の性質によって異なる力 混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を 50%以 上として反応性ガスを供給する。
[0037] 《ポリマー層》
次 、で、本発明に係るポリマー層につ 、て説明する。
[0038] 本発明に係るポリマー層とは、無機ポリマー、有機ポリマー、有機無機ハイブリッド ポリマー等を主成分とする薄膜で、その膜厚は、概ね 5〜500nmで、前述のガスバリ ァ層に対し相対的な硬度が低い層で、層中の平均炭素含有量が 5%以上のもので あり、応力緩和層とも呼ばれる。
[0039] 本発明で適用できる無機ポリマーは、無機骨格を主構造とし、かつ有機成分を含 有する膜であり、有機金属化合物を重合したものも含む。
[0040] これら無機ポリマーとしては、特に限定は無いが、例えば、シリコーンやポリシラザン などのケィ素化合物や、チタン化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物、燐化合物 、錫化合物を用いることができる。
[0041] 本発明で用いることのできるケィ素化合物としては、特に限定はないが、好ましいも
のとして、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチ ルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジェトキシシラン、メチルトリエ トキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、へキサメチノレジシロキサン、 へキサメチルジシラザン、 1, 1—ジメチル一 1—シラシクロブタン、トリメチルビニルシ ラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビュルシラン、ェチルトリメトキシシラン 、ジメチノレジビニノレシラン、ジメチノレエトキシェチニノレシラン、ジァセトキシジメチノレシ ラン、ジメトキシメチル— 3, 3, 3—トリフルォロプロビルシラン、 3, 3, 3—トリフルォロ プロピルトリメトキシシラン、ァリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、 ァリールアミノトリメトキシシラン、 N—メチル N トリメチルシリルァセトアミド、 3—ァ ミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジァセトキシメチルビ二ルシラ ン、メチルトリァセトキシシラン、ァリールォキシジメチルビ-ルシラン、ジェチルビ-ル シラン、ブチルトリメトキシシラン、 3—ァミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビ二 ルシラン、トリァセトキシビニルシラン、テトラァセトキシシラン、 3—トリフルォロアセトキ シプロピノレトリメトキシシラン、ジァリーノレジメトキシシラン、ブチノレジメトキシビニノレシラ ン、トリメチル 3—ビニルチオプロビルシラン、フエニルトリメチルシラン、ジメトキシメ チルフエニルシラン、フエニルトリメトキシシラン、 3—アタリロキシプロピルジメトキシメ チルシラン、 3—アタリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチ口キシビ二 ルシラン、 2 ァリールォキシェチルチオメトキシトリメチルシラン、 3 グリシドキシプ 口ピルトリメトキシシラン、 3—ァリールァミノプロピルトリメトキシシラン、へキシルトリメト キシシラン、ヘプタデカフルォロデシルトリメトキシシラン、ジメチルェチキシフエ-ル シラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、 3—メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシ ラン、 3—メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、 3—イソシァネートプロピルトリェトキ シシラン、ジメチノレエトキシー 3—グリシドキシプロピノレシラン、ジブトキシジメチノレシラ ン、 3—ブチルァミノプロピルトリメチルシラン、 3—ジメチルァミノプロピルジェトキシメ チルシラン、 2— (2—アミノエチルチオェチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルァミノ) ジメチルシラン、ジビニルメチルフエニルシラン、ジァセトキシメチルフエニルシラン、 ジメチル一 p トリルビニルシラン、 p—スチリルトリメトキシシラン、ジェチルメチルフエ ニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフエニルシラン、デシ
ルメチルジメトキシシラン、ジェトキシー 3—グリシドキシプロピルメチルシラン、ォクチ 口キシトリメチルシラン、フエニルトリビニルシラン、テトラァリールォキシシラン、ドデシ ルトリメチルシラン、ジァリールメチルフエニルシラン、ジフエ二ルメチルビニルシラン、 ジフエニルエトキシメチルシラン、ジァセトキシジフエニルシラン、ジベンジルジメチル シラン、ジァリールジフエ-ルシラン、ォクタデシルトリメチルシラン、メチルォクタデシ ルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、 1, 3 ジビニルー 1, 1, 3, 3—テト ラメチルジシロキサン、 1, 3 ジビュル 1, 1, 3, 3—テトラメチルジシラザン、 1, 4 —ビス(ジメチルビ-ルシリル)ベンゼン、 1, 3 ビス(3 ァセトキシプロピル)テトラメ チルジシロキサン、 1, 3, 5 トリメチル—1, 3, 5 トリビュルシクロトリシロキサン、 1 , 3, 5 トリス(3, 3, 3 トリフルォロプロピル)— 1, 3, 5 トリメチルシクロトリシロキ サン、オタタメチルシクロテトラシロキサン、 1, 3, 5, 7—テトラエトキシー 1, 3, 5, 7— テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げるこが できる。
[0042] また、有機ポリマーとしては、公知の重合性有機化合物を用いることができる力 そ の中でも、分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合可能なエチレン性不飽和 結合含有化合物が好ましぐまた、一般的なラジカル重合性のモノマー類、光、熱、 紫外線等により硬化する榭脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なェチ レン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や多官能オリゴマー類を用いること ができる。
[0043] これらの重合可能なエチレン性二重結合含有ィ匕合物に特に限定は無いが、好まし いものとして、例えば、 2—ェチルへキシルアタリレート、 2—ヒドロキシプロピルアタリ レート、グリセロールアタリレート、テトラヒドロフルフリルアタリレート、フエノキシェチル アタリレート、ノユルフェノキシェチルアタリレート、テトラヒドロフルフリルォキシェチル アタリレート、テトラヒドロフルフリルォキシへキサノリドアタリレート、 1, 3 ジォキサン アルコールの ε一力プロラタトン付カ卩物のアタリレート、 1, 3 ジォキソランアタリレー ト等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアタリレートをメタタリレート、イタ コネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、ィタコン酸、クロトン酸、マレイ ン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアタリレート、トリエチレンダルコールジ
アタリレート、ペンタエリスリトールジアタリレート、ハイド口キノンジアタリレート、レゾル シンジアタリレート、へキサンジオールジアタリレート、ネオペンチルグリコールジアタリ レート、トリプロピレングリコールジアタリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリ コーノレのジアタリレート、ネオペンチルグリコーノレアジペートのジアタリレート、ヒドロキ シピバリン酸ネオペンチルグリコールの ε一力プロラタトン付カ卩物のジアタリレート、 2 - (2—ヒドロキシ一 1, 1—ジメチルェチル) 5 ヒドロキシメチル一 5 ェチル 1, 3—ジォキサンジアタリレート、トリシクロデカンジメチロールアタリレート、トリシクロデカ ンジメチロールアタリレートの ε—力プロラタトン付カ卩物、 1, 6 へキサンジオールの ジグリシジルエーテルのジアタリレート等の 2官能アクリル酸エステル類、或いはこれ らのアタリレートをメタタリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタタリ ル酸、ィタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリ アタリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアタリレート、トリメチロールェタントリアタリ レート、ペンタエリスリトールトリアタリレート、ペンタエリスリトールテトラアタリレート、ジ ペンタエリスリトールテトラアタリレート、ジペンタエリスリトールペンタアタリレート、ジぺ ンタエリスリトールへキサアタリレート、ジペンタエリスリトールへキサアタリレートの ε 力プロラタトン付加物、ピロガロールトリアタリレート、プロピオン酸 'ジペンタエリスリト ールトリアタリレート、プロピオン酸 'ジペンタエリスリトールテトラアタリレート、ヒドロキ シピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアタリレート等の多官能アクリル酸 エステル酸、或いはこれらのアタリレートをメタタリレート、イタコネート、クロトネート、マ レエートに代えたメタクリル酸、ィタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げる ことができる。
[0044] また、プレボリマーも上記同様に使用することができる。プレボリマーは、 1種又は 2 種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び Ζ又はオリゴマーと混合して用いても よい。
[0045] プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレ フタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、ィタコン酸、ピロメリット酸 、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸 等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレンダルコール、ジエチレングリコール、
プロピレンオキサイド、 1, 4 ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレン グリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリス リトール、ソルビトール、 1, 6 へキサンジオール、 1, 2, 6 へキサントリオール等の 多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに (メタ)アクリル酸を導入したポリエ ステルアタリレート類、例えば、ビスフエノール A ·ェピクロルヒドリン'(メタ)アクリル酸、 フエノールノボラック ·ェピクロルヒドリン ·(メタ)アクリル酸のようにエポキシ榭脂に (メタ )アクリル酸を導入したエポキシアタリレート類、例えば、エチレングリコール 'アジピン 酸'トリレンジイソシァネート · 2—ヒドロキシェチルアタリレート、ポリエチレングリコール 'トリレンジイソシァネート · 2—ヒドロキシェチルアタリレート、ヒドロキシェチルフタリル メタタリレート ·キシレンジイソシァネート、 l t 2—ポリブタジエングリコール 'トリレンジィ ソシァネート · 2—ヒドロキシェチルアタリレート、トリメチロールプロパン 'プロピレングリ コール'トリレンジイソシァネート · 2—ヒドロキシェチルアタリレートのように、ウレタン榭 脂に (メタ)アクリル酸を導入したウレタンアタリレート、例えば、ポリシロキサンアタリレ ート、ポリシロキサン'ジイソシァネート · 2—ヒドロキシェチルアタリレート等のシリコー ン榭脂アタリレート類、その他、油変性アルキッド榭脂に (メタ)アタリロイル基を導入し たアルキッド変性アタリレート類、スピラン榭脂アタリレート類等のプレボリマーが挙げ られる。
[0046] また、本発明に係るポリマー層に適用可能な有機ポリマーとしては、薄膜形成性ガ スとしてプラズマ重合可能な有機物を用いることでも容易に形成できる。プラズマ重 合可能な有機物としては、炭化水素、ビニル化合物、含ハロゲンィ匕合物、含窒素化 合物を挙げることが出来る。
[0047] 炭化水素としては、例えば、ェタン、エチレン、メタン、アセチレン、シクロへキサン、 ベンゼン、キシレン、フエ-ルアセチレン、ナフタレン、プロピレン、カンフォー、メント ール、トルエン、イソブチレン等を挙げることができる。
[0048] ビュル化合物としては、例えば、アクリル酸、メチルアタリレート、ェチルアタリレート
、メチルメタタリレート、ァリルメタタリレート、アクリルアミド、スチレン、 (Xーメチルスチ レン、ビュルピリジン、酢酸ビュル、ビュルメチルエーテル等を挙げることが出来る。
[0049] 含ハロゲン化合物としては、四フッ化メタン、四フッ化工チレン、六フッ化プロピレン
、フロロアルキルメタタリレート等を挙げることが出来る。
[0050] 含窒素化合物としては、例えば、ピリジン、ァリルァミン、ブチルァミン、アタリロニトリ ル、ァセトニトリル、ベンゾ-トリル、メタタリ口-トリル、ァミノベンゼン等を挙げることが 出来る。
[0051] 本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーとしては、有機 (無機)ポリマーに無機 ( 有機)物を分散させた膜や、無機骨格と有機骨格をともに主構造とする膜を挙げるこ とができる。本発明に適用できる有機無機ハイブリッドポリマーは、特に限定は無い 力 好ましくは、前述した無機ポリマーと有機ポリマーを適宜組み合わせたものを用 いることがでさる。
[0052] 本発明に係るポリマー膜においては、基材に隣接して配置されたポリマー層の基 材との接触界面における炭素含有量を最も多い条件に設定し、また、ポリマー層とガ スノリア層とが隣接して配置した際、該両層の接触界面におけるポリマー層における 平均炭素含有量を最も少ない条件に設定することを特徴とする。
[0053] 前述のごとぐ本発明でいう接触界面とは、ポリマー層の総膜厚を 100%とした時の それぞれの表面力も厚さ方向に 10%までの領域を 、、この領域に含まれる炭素含 有量の平均値である。また、本発明でいうポリマー層の平均炭素含有量とは、ポリマ 一層の全域 (総膜厚)の炭素含有量の平均値のことである。平均炭素含有量とは、後 述の XPSによる測定で求めた原子数濃度%のことである。
[0054] ポリマー層の平均炭素含有量と、該ポリマー層の接触界面の平均炭素含有量との 差は、 2%以上が好ましぐ 6%以上であることがより好ましい。
[0055] 図 1は、本発明のガスノ リア積層体の構成及び炭素含有率のパターンの一例を示 す模式図である。
[0056] 図 1は、基材 F上に、 2層のガズバリア層 G—l、 G— 2と 3層のポリマー層 P— 1、 P
- 2、 P— 3が積層された構成力らなるガスノリア積層体を示してある。
[0057] すなわち、基材 F上にポリマー層 P— 1を設け、その上にガズバリア層 G— 1を設け、 更に順次ポリマー層 P— 2、ガズバリア層 G— 2を積層し、最表層としてポリマー層 P— 3を設けた構成である。
[0058] 本発明では、基材に隣接して配置されたポリマー層の基材との接触界面における
炭素含有量を最も多い条件に設定することを特徴の一つとするが、図 1において、基 材 Fに隣接するポリマー層 P— 1の界面領域 C— 1 (ポリマー層 P— 1の総膜厚を tとし た時、 0. Itで表される界面領域)における平均炭素含有量が、ポリマー層 P— 1の界 面領域 C 1を除くその他の領域の平均炭素含有量より高いことを特徴とする。すな わち、断面図の右側に示す平均炭素含有量プロファイルからなる。
[0059] 同様に、ポリマー層とガスノリア層とが隣接して配置した際、それぞれの接触界面 におけるポリマー層の平均炭素含有量を最も少な 、ことを特徴とする力 図 1にお ヽ ては、ポリマー層 P— 1における界面領域 C 2、両面をガスバリア層 G— 1、 G— 2で 狭持されたポリマー層 P— 2における界面領域 C 3、 C 4、あるいはポリマー層 P— 3における界面領域 C 5の平均炭素含有率力 それぞれのポリマー層における平 均炭素含有率よりも低いことを特徴としており、断面図の右側に示すそれぞれの平均 炭素含有量プロファイルをとることとなる。
[0060] なお、最表層であるポリマー層 P— 3における炭素含有率のプロファイルとしては、 ガスバリア層 G— 2との界面領域が最も低い平均炭素含有率であれば、例えば、 a)で 示すように両表面が最も炭素含有率が低 、パターンでも、ある 、は b)で示すように界 面領域 G— 5が最も低 、平均炭素含有率で、表面の!/、くに従って平均炭素含有率が 高くなるパターンでもよい。
[0061] 本発明において炭素含有率を示す原子数濃度とは、下記の XPS法によって算出さ れるもので、以下に定義される。
[0062] 原子数濃度% (atomic concentration) =炭素原子の個数 Z全原子の個数 X 1 00
(XPSによるポリマー層の組成分析)
本発明に係るポリマー層の元素分析には、 XPS (X線光電子分光)表面分析装置 を用いてその値を測定することができる。 XPS表面分析装置は、本発明では、 VGサ イエンティフィックス社製 ESCALAB - 200Rを用 V、た。
[0063] 具体的には、 X線アノードには Mgを用い、出力 600W (加速電圧 15kV、エミッショ ン電流 40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄な Ag3d5Z2ピークの半値 幅で規定したとき、 1. 5eV〜: L 7eVとなるように設定した。
[0064] 測定は、はじめにポリマー層表面の組成分析を行った後、順次ポリマー層の膜厚 の 10%厚さに相当する層をエッチング除去しながら測定した。ポリマー層の除去に は、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましぐイオン種としては、 He 、 Ne、 Ar、 Xe、 Krなどが利用できる。本測定では、 Arイオンエッチングを用いて、順 次ポリマー層を除去した。
[0065] 測定としては、先ず、結合エネルギ OeV〜: L lOOeVの範囲を、データ取り込み間隔 1. OeVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
[0066] 次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込 み間隔を 0. 2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキヤ ンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。
[0067] 得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出 結果の違 、を生じせしめなくするために、 VAMAS - SCA— JAPAN製の COMM ON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver. 2. 3以降が好ましい)上に転送 した後、同ソフトで処理をおこない、各分析ターゲットの元素 (炭素、酸素、ケィ素、チ タン等)の含有率の値を原子数濃度 (atomic concentration: at%)として求めた。
[0068] 定量処理をおこなう前に、各元素について Count Scaleのキャリブレーションをお こない、 5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンド を除去したピークエリア強度(cps * eV)を用いた。ノ ックグラウンド処理には、 Shirle yによる方法を用いた。また、 Shirley法については、 D. A. Shirley, Phys. Rev. , Β5, 4709 (1972)を参考にすること力 Sできる。
[0069] 一般に、本発明に係るポリマー層の形成としては、蒸着、スパッタリング, CVD法( 化学蒸着)、プラズマ CVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下において実施され るプラズマ CVD法等のドライプロセスで形成することができる力 本発明のガズバリア 榭脂基材の製造方法にぉ 、ては、上記で規定する特定の炭素含有率プロファイル を有するポリマー層を形成するには、ポリマー層の少なくとも 1層、好ましくは全ての ポリマー層をプラズマ CVD法で形成することを特徴とし、更には、大気圧または大気 圧近傍の圧力下にお!/ヽて実施されるプラズマ CVD法 (以下、大気圧プラズマ CVD 法ともいう)を用いることが好ましい。なお、大気圧プラズマ CVD法の詳細については
、後述する。
[0070] CVD法では、混合する原料となるガスを任意の割合で混合することができるため、 複合薄膜を形成することが出来、更に、 CVD法では、複数の原料ガスの供給比率を 製膜中に連続的に変化させることにより、ポリマー層の炭素比率を連続的に変化させ ることが可能であり、好ましい。
[0071] プラズマ CVD法、大気圧プラズマ CVD法により得られる本発明に係るポリマー層 は、原材料 (原料ともいう)である無機ポリマー (含む有機金属化合物)、有機ポリマー あるいは無機有機ハイブリッドポリマーの種類、比率や、分解ガス、分解温度、投入 電力、電源の周波数などの条件を適宜選択することにより、極めて高い精度で炭素 含有率を制御することができる。本発明では、原料としてノリア層と同じ金属元素を 有する有機金属化合物を使用することで、特に高!ヽ密着性 ·屈曲耐性 ·環境耐性を 得ることができるため、好ましい。
[0072] これらの反応性ガスには、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、ブラ ズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガス (不活性ガス)としては、窒素 ガスおよび Zまたは周期表の第 18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン
、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、ァ ルゴンが好ましく用 、られる。
[0073] 上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置 (ブラズ マ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得よう とする膜の性質によって異なる力 混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を 50%以 上として反応性ガスを供給する。
[0074] ポリマー層の炭素含有率をコントロールする方法は、特に限定されないが、プラズ マ CVDで形成する場合は、その投入電力、反応性ガスの供給量、電源周波数等を 適宜変化させることによって可能である。投入電力は、大きい程炭素含有量は少なく なり、小さい程多くなる。反応ガス供給量は、大きい程炭素含有量は多くなり、小さい 程少なくなる。電源周波数は、大きい程炭素含有量は少なくなり、小さい程多くなる。
[0075] 《基材》
次いで、本発明に係る基材について説明する。
[0076] 本発明のガスノ リア積層体で用いる基材としては、特に制限はないが、透明の榭脂 基材であることが好ましぐセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セル口 ースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロー スエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステ ル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフイン、ポリ塩化ビ-リデン、ポリ塩 ィ匕ビュル、ポリビュルアルコール、エチレンビュルアルコールコポリマー、シンジォタ タティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン榭脂、ポリメチルペンテン、ポ リエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルィ ミド、ポリアミド、フッ素榭脂、ポリメチルアタリレート、アタリレートコポリマー等を挙げる ことが出来る。
[0077] これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼォ ネックスゃゼォノア(日本ゼオン (株)製)、非晶質シクロポリオレフイン榭脂フィルムの ARTON (ジヱイエスアール (株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人 (株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコ-カタック KC4UX、 KC8UX (コ-力 ミノルタォプト (株)製)などの市販品を好ましく使用することが出来る。
[0078] また、本発明に用いられる基材は、上記の記載に限定されな 、。フィルム形状のも のの膜厚としては 10〜: LOOO μ mが好ましぐより好ましくは 40〜500 μ mである。
[0079] 本発明のガスノ リア積層体の水蒸気透過度としては、有機 ELディスプレイや高精 彩カラー液晶ディスプレイ等の高度の水蒸気バリア性を必要とする用途に用いる場 合、 JIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過度が 0. lgZm2Zday未満であ ることが好ましい。
[0080] 《プラズマ CVD法》
次いで、本発明のガスノ リア積層体の製造方法において、本発明に係るポリマー 層あるいはガスノ リア層の形成に好適に用 、ることのできるプラズマ CVD法及び大 気圧プラズマ CVD法について、更に詳細に説明する。
[0081] 本発明に係るプラズマ CVD法にっ ヽて説明する。
[0082] プラズマ CVD法は、プラズマ助成式化学的気相成長法、 PECVD法とも称され、 各種の無機物を、立体的な形状でも被覆性 ·密着性良ぐ且つ、基材温度をあまり高
くすることなしに製膜することができる手法である。
[0083] 通常の CVD法 (ィ匕学的気相成長法)では、揮発 *昇華した有機金属化合物が高温 の基材表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成 されるというものである。このような通常の CVD法 (熱 CVD法とも称する)では、通常 5 00°C以上の基板温度が必要であるため、プラスチック基材への製膜には使用するこ とができない。
[0084] 一方、プラズマ CVD法は、基材近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった 気体が存在する空間 (プラズマ空間)を発生させ、揮発 '昇華した有機金属化合物が このプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に基材上に吹きつけられること により、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い 割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子 温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン'ラジカ ルなどの励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低 温でも分解することができる。したがって、無機物を製膜する基材についても低温ィ匕 することができ、プラスチック基材上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
[0085] しかしながら、プラズマ CVD法にお!、ては、ガスに電界を印加して電離させ、プラ ズマ状態とする必要があるため、通常は、 0. 101kPa〜10. lkPa程度の減圧空間 で製膜していたため、大面積のフィルムを製膜する際には設備が大きく操作が複雑 であり、生産性の課題を抱えている方法である。
[0086] これに対し、大気圧近傍でのプラズマ CVD法では、真空下のプラズマ CVD法に比 ベ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなぐプラズマ密度が高密度であるた めに製膜速度が速ぐ更には CVD法の通常の条件に比較して、大気圧下という高圧 力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて平坦な膜が得られ、そ のような平坦な膜は、光学特性、ガスノリア性共に良好である。以上のことから、本発 明においては、大気圧プラズマ CVD法を適用すること力 真空下のプラズマ CVD法 よりも好まし ヽ。
[0087] 以下、大気圧或!、は大気圧近傍でのプラズマ CVD法を用いたポリマー層あるいは ガスノリア層を形成する装置について詳述する。
[0088] 本発明のガスバリア積層体の製造方法において、ポリマー層あるいはガスバリア層 の形成に使用されるプラズマ製膜装置の一例について、図 2〜図 5に基づいて説明 する。図中、符号 Fは基材の一例としての長尺フィルムである。
[0089] 図 2は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示し た概略図である。
[0090] ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの 電源を有する電界印加手段の他に、図 2では図示してない (後述の図 3に図示してあ る)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
[0091] プラズマ放電処理装置 10は、第 1電極 11と第 2電極 12から構成されている対向電 極を有しており、該対向電極間に、第 1電極 11からは第 1電源 21からの周波数 ω 、
1 電界強度 V、電流 Iの第 1の高周波電界が印加され、また第 2電極 12からは第 2電
1 1
源 22からの周波数 ω、電界強度 V、電流 Iの第 2の高周波電界が印加されるように
2 2 2
なっている。第 1電源 21は第 2電源 22より高い高周波電界強度 (V >V )を印加出
1 2 来、また第 1電源 21の第 1の周波数 ωは第 2電源 22の第 2の周波数 ωより低い周
1 2 波数を印加出来る。
[0092] 第 1電極 11と第 1電源 21との間には、第 1フィルタ 23が設置されており、第 1電源 2 1力 第 1電極 11への電流を通過しやすくし、第 2電源 22からの電流をアースして、 第 2電源 22から第 1電源 21への電流が通過しに《なるように設計されている。
[0093] また、第 2電極 12と第 2電源 22との間には、第 2フィルター 24が設置されており、第 2電源 22から第 2電極への電流を通過しやすくし、第 1電源 21からの電流をアースし て、第 1電源 21から第 2電源への電流を通過しにくくするように設計されて!、る。
[0094] 第 1電極 11と第 2電極 12との対向電極間(放電空間) 13に、後述の図 3に図示して あるようなガス供給手段カゝらガス Gを導入し、第 1電極 11と第 2電極 12から高周波電 界を印加して放電を発生させ、ガス Gをプラズマ状態にしながら対向電極の下側 (紙 面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材 Fとで作る処理空間をブラ ズマ状態のガス G° で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻き ほぐされて搬送して来る力、あるいは前工程力も搬送して来る基材 Fの上に、処理位 置 14付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、後述の図 3に図示してあるような電極
温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処 理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあ り、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油 等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは 長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の内部の温度を均等 に調節することが望まれる。
[0095] ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に 同じプラズマ状態のガスを放電させることが出来るので、何回も処理され高速で処理 することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、 異なった層の積層薄膜を形成することも出来る。
[0096] 図 3は、本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電 処理装置の一例を示す概略図である。
[0097] 本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置
30、二つの電源を有する電界印加手段 40、ガス供給手段 50、電極温度調節手段 6
0を有して!/、る装置である。
[0098] 図 3は、ロール回転電極 (第 1電極) 35と角筒型固定電極群 (第 2電極) 36との対向 電極間 (放電空間) 32で、基材 Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである
[0099] ロール回転電極 (第 1電極) 35と角筒型固定電極群 (第 2電極) 36との間の放電空 間(対向電極間) 32に、ロール回転電極 (第 1電極) 35には第 1電源 41から周波数 ω、電界強度 V、電流 Iの第 1の高周波電界を、また角筒型固定電極群 (第 2電極)
1 1 1
36には第 2電源 42から周波数 ω、電界強度 V、電流 Iの第 2の高周波電界をかけ
2 2 2
るようになっている。
[0100] ロール回転電極 (第 1電極) 35と第 1電源 41との間には、第 1フィルタ 43が設置され ており、第 1フィルタ 43は第 1電源 41から第 1電極への電流を通過しやすくし、第 2電 源 42からの電流をアースして、第 2電源 42から第 1電源への電流を通過しに《する ように設計されている。また、角筒型固定電極群 (第 2電極) 36と第 2電源 42との間に は、第 2フィルタ 44が設置されており、第 2フィルター 44は、第 2電源 42から第 2電極
への電流を通過しやすくし、第 1電源 41からの電流をアースして、第 1電源 41から第 2電源への電流を通過しに《するように設計されて!、る。
[0101] なお、本発明においては、ロール回転電極 35を第 2電極、また角筒型固定電極群 36を第 1電極としてもよい。何れにしろ第 1電極には第 1電源力 また第 2電極には第 2電源が接続される。第 1電源は第 2電源より高い高周波電界強度 (V >V )を印加
1 2 することが好ましい。また、周波数は ω < ωとなる能力を有している。
1 2
[0102] また、電流は Iく Iとなることが好ましい。第 1の高周波電界の電流 Iは、好ましくは
1 2 1
0. 3mAZcm2〜20mAZcm2、さらに好ましくは 1. OmAZcm2〜20mAZcm2で ある。また、第 2の高周波電界の電流 Iは、好ましくは 10mAZcm2〜100mAZcm2
2
、さらに好ましくは 20mAZcm2〜 1 OOmAZcm2である。
[0103] ガス供給手段 50のガス発生装置 51で発生させたガス Gは、流量を制御して給気口 52よりプラズマ放電処理容器 31内に導入する。
[0104] 基材 Fを、図示されて ヽな ヽ元卷き力も巻きほぐして搬送されて来る力 または前ェ 程から搬送されて来て、ガイドロール 64を経て-ップロール 65で基材に同伴されて 来る空気等を遮断し、ロール回転電極 35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定 電極群 36との間に移送し、ロール回転電極 (第 1電極) 35と角筒型固定電極群 (第 2 電極) 36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間) 32で放電プラズマを発 生させる。基材 Fはロール回転電極 35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態 のガスにより薄膜を形成する。基材 Fは、 -ップロール 66、ガイドロール 67を経て、図 示してない巻き取り機で巻き取る力 次工程に移送する。
[0105] 放電処理済みの処理排ガス G' は排気口 53より排出する。
[0106] 薄膜形成中、ロール回転電極 (第 1電極) 35及び角筒型固定電極群 (第 2電極) 36 を加熱または冷却するために、電極温度調節手段 60で温度を調節した媒体を、送 液ポンプ Pで配管 61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、 68 及び 69はプラズマ放電処理容器 31と外界とを仕切る仕切板である。
[0107] 図 4は、図 3に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆され て 、る誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
[0108] 図 4において、ロール電極 35aは導電性の金属質母材 35Aとその上に誘電体 35B
が被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温 度調節用の媒体 (水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
[0109] 図 5は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構 造の一例を示す斜視図である。
[0110] 図 5において、角筒型電極 36aは、導電性の金属質母材 36Aに対し、図 4同様の 誘電体 36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、そ れがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになつている。
[0111] なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って 複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール回転電極 35に対向している 全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
[0112] 図 5に示した角筒型電極 36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電 極に比べて、放電範囲 (放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用い られる。
[0113] 図 4及び図 5において、ロール電極 35a及び角筒型電極 36aは、それぞれ導電性 の金属質母材 35A及び 36Aの上に誘電体 35B及び 36Bとしてのセラミックスを溶射 後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は 片肉で lmm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ '窒 化珪素等が好ましく用いられる力 この中でもアルミナが加工し易いので、特に好まし く用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理 誘電体であってもよい。
[0114] 導電性の金属質母材 35A及び 36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、 白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複 合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述 の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
[0115] 対向する第 1電極および第 2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設け た場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離 のことを言う。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距 離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加
電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場 合も均一な放電を行う観点力 0. l〜20mmが好ましぐ特に好ましくは 0. 2〜2m mである。
[0116] 本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体につ!、ての詳細につ 、ては後 述する。
[0117] プラズマ放電処理容器 31はパイレックス (登録商標)ガラス製の処理容器等が好ま しく用いられる力 電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば 、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド榭脂等を張 り付けても良ぐ該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとつてもよい。図 2 にお 、て、平行した両電極の両側面 (基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆 うことが好ましい。
[0118] 本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第 1電源 (高周波電源)としては 印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3 -4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5 -4500
A3 春日電機 15kHz AGI-023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50— 4500
A5 ハイデン研究所 100kHz * PHF-6k
A6 ノ ール工業 200kHz CF- 2000 - 200k
A7 ノール工業 400kHz CF— 2000— 400k等の市販のものを挙 げることが出来、何れも使用することが出来る。
[0119] また、第 2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 ノ ール工業 800kHz CF- 2000 -800k
B2 パール工業 2MHz CF— 2000— 2M
B3 ノ ール工業 13. 56MHz CF— 5000— 13M
B4 ノ ール工業 27MHz CF- 2000- 27M
B5 パール工業 150MHz CF—2000—150M等の市販のものを 挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
[0120] なお、上記電源のうち、 *印はハイデン研究所インパルス高周波電源 (連続モード で 100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
[0121] 本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つこと が出来る電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
[0122] 本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第 2電極 (第 2の高周波電 界)に lWZcm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発 生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第 2電極に供給する電 力の上限値としては、好ましくは 50WZcm2、より好ましくは 20W/cm2である。下限 値は、好ましくは 1. 2WZcm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電 が起こる範囲の面積のことを指す。
[0123] また、第 1電極 (第 1の高周波電界)にも、 lWZcm2以上の電力(出力密度)を供給 することにより、第 2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させるこ とが出来る。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる製膜速度の 向上と膜質の向上が両立出来る。好ましくは 5WZcm2以上である。第 1電極に供給 する電力の上限値は、好ましくは 50WZcm2である。
[0124] ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続 サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれる ONZOFFを断続的に行う 断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第 2電極側 (第 2 の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好まし 、。
[0125] このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能 的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金 属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
[0126] 本発明に使用する誘電体被覆電極にお!ヽては、様々な金属質母材と誘電体との 間に特性が合うものが好ましぐその一つの特性として、金属質母材と誘電体との線 熱膨張係数の差が 10 X 10—6Z°C以下となる組み合わせのものである。好ましくは 8 X 10— 6Z°C以下、更に好ましくは 5 X 10— 6Z°C以下、更に好ましくは 2 X 10— 6Z°C以
下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
[0127] 線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わ せとしては、
1:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材力 Sステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被 膜
6:金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射 皮膜
8:金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング 等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記 1項または 2項および 5〜8項が 好ましぐ特に 1項が好ましい。
[0128] 本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特 に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記 とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなぐ過酷 な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
[0129] 本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明し以外に、 例えば、特開 2004— 68143号公報、同 2003— 49272号公報、国際特許第 02Z4 8428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げること ができる。
実施例
[0130] (実施例 1)
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定され るものではない。
[0131] 《ガスバリア積層体の作製》
〔ガスバリア榭脂材料 1の作製〕
基材として、厚さ 100 μ mのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人'デュポン社製 フィルム、以下、 PENと略記する)上に、下記の大気圧プラズマ放電処理装置及び 放電条件で、図 1に記載の構成である 2層のガスノリア層と 3層のポリマー層とをそれ ぞれ交互に積層したガスノリア榭脂材料 1を作製した。
[0132] (大気圧プラズマ放電処理装置)
図 3の大気圧プラズマ放電処理装置を用い、誘電体で被覆したロール電極及び複 数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
[0133] 第 1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金 T64製ジ ャケットロール金属質母材に対して、大気プラズマ法により高密度、高密着性のアル ミナ溶射膜を被覆し、ロール径 1000mm φとなるようにした。一方、第 2電極の角筒 型電極は、中空の角筒型のチタン合金 T64に対し、上記同様の誘電体を同条件に て被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。
[0134] この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を lmmとして 25本配 置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、 150cm (幅手方向の長さ) X 4cm (搬 送方向の長さ) X 25本(電極の数) = 15000cm2であった。なお、何れもフィルター は適切なものを設置した。
[0135] プラズマ放電中、第 1電極 (ロール回転電極)及び第 2電極 (角筒型固定電極群)が 80°Cになるように調節保温し、ロール回転電極はドライブで回転させて薄膜形成を 行った。
[0136] (第 1層:ポリマー層 P— 1の形成:大気圧プラズマ CVD法)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ 200nmのポリマー層 P— 1を形成した
[0137] 〈ガス条件〉
放電ガス:ヘリウム 98. 9体積0 /0
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン (以下、 TEOSと略記) 0. 1体積0 /0
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:水素ガス 1体積%
〈ポリマー層成膜条件:第 2電極側の電源のみを使用した〉
第 2電極側 電源種類 B3
周波数 13. 56MHz
出力密度 表 2に記載の平均炭素含有量となるように、 1. 5W/cm2 から 3. 5WZcm2の間で、ガス供給時の出力条件を適宜制御した
(第 2層:ガスノリア層 G—1の形成:大気圧プラズマ CVD法)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ 60nmのガスバリア層 G— 1を形成した
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素 98. 9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン 0. 1体積0 /0
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:酸素ガス 1体積%
〈ガスバリア層成膜条件〉
第 1電極側 電源種類 A5
電界強度 8kVZmm
周波数 100kHz
出力密度 lWZcm2
第 2電極側 電源種類 B3
電界強度 0. 8kV/mm
周波数 13. 56MHz
出力密度 3WZcm2
(第 3層:ポリマー層 P— 2の形成:大気圧プラズマ CVD法)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ 200nmのポリマー層 P— 2を形成した 〈ガス条件〉
放電ガス:アルゴン 98. 9体積0 /0
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン (以下、 TEOSと略記) 0. 1体積0 /0
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:水素ガス 1体積%
〈ポリマー層成膜条件:第 2電極側の電源のみを使用した〉
第 2電極側 電源種類 B3
周波数 13. 56MHz
出力密度 表 2に記載の平均炭素含有量となるように、 2WZcm2から
4WZcm2の間で、ガス供給時の出力条件を適宜制御した
(第 4層:ガスノリア層 G— 2の形成:大気圧プラズマ CVD法)
上記第 2層(ガスノリア層 G—1)と同様にして、厚さ 60nmのガスノリア層 G— 2を形 成した。
[0140] (第 5層:ポリマー層 P— 3の形成:大気圧プラズマ CVD法)
上記第 3層(ポリマー層 P— 2)と同様にして、厚さ 200nmのポリマー層 P— 3を形成 した。
[0141] 〔ガスノリア積層体 2〜4の作製〕
上記ガスノリア積層体 1の作製において、使用基材、各ガズバリア層及びポリマー 層の薄膜形成性ガスの種類を表 1に記載のように変更し、また、各ポリマー層の平均 炭素含有量が表 2に記載の条件となるように、テトラメチルシラン分圧を連続的に減 少させ、かわりに全圧が lOPaを維持するように窒素ガスを連続的に導入し、薄膜形 成性ガスの供給量を適宜調整した以外は同様にして、大気圧プラズマ CVD法により ガスノリア積層体 2〜4を作製した。
[0142] なお、各ポリマー層成膜時の条件は、以下の通りである。
[0143] 〈ガス条件〉
放電ガス:窒素 全ガス量が 100体積%となる量
薄膜形成性ガス:表 2に記載の条件となるように原料の供給量を適宜調整した (リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化)
具体的には、以下のように薄膜の堆積方向に、原料濃度を変化させた 試料2 ;?—1 ;0. 3 → 0. 1体積%
P- 2 ;0. 05 → 0. 25 → 0. 05体積0 /0
試料 3 ;P— 1 ;0. 5 → 0. 12体積0 /0
P- 2 ;0. 12 → 0. 5 → 0. 13堆積0 /0
試料 4 ;P— 1 ;0. 35 → 0. 05体積0 /0
P- 2 ;0. 1 → 0. 35 → 0. 1体積%
添加ガス:水素ガス 1体積%
〈ポリマー層成膜条件〉
第 1電極側 電源種類 A5
電界強度 8kVZmm
周波数 100kHz
出力密度 lWZcm2
第 2電極側 電源種類 B3
電界強度 0. 8kV/mm
周波数 13. 56MHz
出力密度 3WZcm2
〔ガスノ リア積層体 5の作製:真空プラズマ法〕
上記ガスノ リア積層体 1の層構成と同様にして、真空プラズマ法よりガスノ リア積層 体 5を作製した。
[0144] (第 1層:ポリマー層 P—1の形成)
真空蒸着装置の真空槽内に、基材として厚さ 125 /z mのクリアハードコート層を有 するポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、以下 PETと略記する)をセッ トし、 10— 4Paまで真空脱気した後、テトラエトキシシラン (TEOS)、水素ガス及びヘリ ゥムガスを用い、印加電圧 (RFパワー) 100W、基材温度 180°Cの条件で、表 2に記 載の平均炭素含有量となるように原料の供給量を適宜調製しながら、厚さ 200nmの ポリマー層 p— 1を形成した。
[0145] (第 2層:ガスバリア層 G—1の形成)
真空蒸着装置の真空槽内に、基材上にポリマー層 P— 1を設けた上記試料をセット し、 10—4Paまで真空脱気した後、へキサメチルジシロキサン(以下、 HMDSOと略記 する)、水素ガス、ヘリウムガスを用いて、印加電圧 (RFパワー) 300W、基材温度 18
0°Cの条件で、厚さ 60nmの各ガスバリア層を形成した。
[0146] (第 3層:ポリマー層 P— 2の形成)
真空蒸着装置の真空槽内に、基材上にポリマー層 P— 1、ガスノ リア層 G— 1を設 けた上記試料をセットし、 10— 4Paまで真空脱気した後、薄膜形成性ガスとしてテトラエ トキシシラン (TEOS)、放電ガスとして水素を用いて、印加電圧 (RFパワー) 100W、 基材温度 180°Cの条件で、表 2に記載の平均炭素含有量となるように原材料の供給 量を適宜調製しながら、厚さ 200nmのポリマー層 P— 2を形成した。
[0147] (第 4層:ガスバリア層 G— 2の形成)
上記ガスノ リア層 G— 1の形成条件と同様にして、上記試料のポリマー層 P— 2上に 、ガスノ リア層 G— 2を形成した。
[0148] (第 5層:ポリマー層 P— 3の形成)
上記ポリマー層 P— 2の形成条件と同様にして、上記試料のガスノ リア層 G— 2上に 、ポリマー層 P— 3を形成した。
[0149] 〔ガスバリア積層体 6の作製〕
上記ガスノ リア積層体 1の層構成と同様にして、基材として厚さ 100 mのポリカー ボネートフィルム (帝人化成社製、以下、 PCと略記する)を用いて、下記の方法に従 つてガスノ リア積層体 6を作製した。
[0150] (第 1層:ポリマー層 P— 1の形成:蒸着法)
真空蒸着装置の真空槽内に、原料 1として Siターゲットを蒸着源に入れ、上記基材 をセットした。次いで、真空槽内を 10— 4Paまで真空脱気した後、蒸着源の抵抗加熱を 開始し、不純物の蒸発が完了したところで原料 2として 1, 10—デカンジオールアタリ レートを真空槽に供給しながら、蒸着シャッターを開き、表 2に記載の平均炭素含有 量となるように 1, 10—デカンジオールアタリレートの供給量を適宜調整しながら、厚 さ 200nmのポリマー層を蒸着した。その後、 500mj/cm2の積算光量の紫外線を照 射した。
[0151] (第 2層:ガスバリア層 G— 1の形成:電子線蒸着法)
真空蒸着装置の真空槽内に、蒸着源として Siターゲットを装着し、基材上にポリマ 一層 P—1を設けた上記試料をセットし、 10— 4Paまで真空脱気した後、電子線蒸着法
により 60nmのノ リア膜を形成した。
[0152] (第 3層:ポリマー層 P— 2の形成)
上記ポリマー層 P—1の形成条件と同様にし、上記試料のガスバリア層 G— 1上に、 表 2に記載の平均炭素含有量となるように 1, 10—デカンジオールアタリレートの供 給量を適宜調整しながら、厚さ 200nmのポリマー層 P— 2を蒸着した。
[0153] (第 4層:ガスバリア層 G— 2の形成)
上記ガスノ リア層 G— 1の形成条件と同様にして、上記試料のポリマー層 P— 2上に 、ガスノ リア層 G— 2を形成した。
[0154] (第 5層:ポリマー層 P— 3の形成)
上記ポリマー層 P— 2の形成条件と同様にして、上記試料のガスノ リア層 G— 2上に 、ポリマー層 P— 3を形成した。
[0155] 〔ガスバリア積層体 7の作製〕
上記ガスノ リア積層体 1の層構成と同様にして、基材として厚さ 100 mのポリェチ レンナフタレートフィルム(PEN)を用いて、下記の方法に従ってガスノ リア積層体 7 を作製した。
[0156] (ポリマー層 P— 1、 P— 2、 P— 3の形成:真空プラズマ法)
ガスノ リア積層体 5の作製に用いたポリマー層 P—l、 P— 2、 P— 3の形成 (真空プ ラズマ法)において、薄膜形成性ガスとして TEOSとメタクリル酸メチルに変更し、更 に、平均炭素含有量が表 2に記載の条件となるように、出力条件を適宜調整した以 外は同様にして、ポリマー層 P—l、 P— 2、 P— 3を形成した。
[0157] (ガスバリア層 G—l、 G— 2の形成:スパッタ法)
各所定の試料をスパッタ装置の真空槽内に、上記ポリマー層を形成した側に成膜 するようにセットし、 10— 4Pa台まで真空脱気し、真空槽内温度を 150°Cにした後、放 電ガスとしてアルゴンを分圧で 0. IPa導入、反応ガスとして酸素を分圧で 0. 008Pa 導入した。雰囲気圧力、温度が安定したところでスパッタ電力 2WZcm2にて放電を 開始し、 Siターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プ 口セスが安定したところでシャッターを開き、ポリマー層上へのガスバリア層の形成を 開始した。 60nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。
[0158] 〔ガスバリア積層体 8の作製〕
上記ガスノ リア積層体 1の作製において、各ポリマー層の形成を下記の真空プラズ マ法に変更した以外同様にして、ガスノ リア積層体 8を作製した。
[0159] (第 1層、第 3層、第 5層の各ポリマー層の形成:真空プラズマ法)
前記ガスバリア積層体 5の第 1層(ポリマー層 P— 1)の形成で用いた真空プラズマ 法において、薄膜形成性ガスを、 HMDSOに変更し、更に成膜開始力 終了までの 薄膜形成条件を一定にして行った以外は同様にして、各ポリマー層を形成した。
[0160] 〔ガスバリア積層体 9の作製〕
上記ガスノ リア積層体 2の作製にぉ 、て、各ポリマー層の形成を下記の塗布方法 に変更した以外同様にして、ガスノ リア積層体 9を作製した。
[0161] (第 1層、第 3層、第 5層の各ポリマー層の形成:塗布方法)
トリプロピレングリコールジアタリレート、へキサメチルジシロキサンを平均炭素含有 率が 72% (第 1層)あるいは 71% (第 3層、第 5層)となるように混合し、これに酢酸ェ チルで希釈した塗布液を調製し、この塗布液を基材、あるいはガスノ リア層上に、ヮ ィヤーバーを用いて乾燥膜厚が 0. 2 mとなる条件で塗布した後、 80°Cで 10分間 加熱乾燥して酢酸ェチルを除去し、次 、で 500mjZcm2の積算光量の紫外線を照 射した。
[0162] 〔ガスバリア積層体 10の作製〕
上記ガスノ リア積層体 6の作製において、基材を厚さ 100 μ mのポリエーテルスル ホンフィルム (住友ベークライト (株)製スミライト FS— 1300、以下 PESと略記する)に 変更し、更に、各ポリマー層の形成 (蒸着法)において、薄膜形成性材料をネオペン チルダリコール変性トリメチロールプロパンジアタリレート(KAYARAD R— 604、 日 本化薬社製)に変更し、かつ成膜開始力 終了までの薄膜形成条件を一定にして行 つた以外は同様にして、各ポリマー層を形成した。
[0163] 以上のようにして作製した各ガスノ リア積層体の構成を、表 1に示す。
[0164] なお、表 1に略称で記載の基材、原料、薄膜形成性材料の詳細は、以下の通りで ある。
[0165] 〈基材〉
PEN:ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人 ·デュポン社製) 共重合 PC:共重合ポリカーボネートフィルム
ゼォノア:ゼォノア Z1420R、 日本ゼオン (株)製
PES:ポリエーテルスルホンフィルム(住友ベークライト(株)製スミライト FS— 1300) PET:クリアハードコート層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製) PC:ポリカーボネートフィルム
〈原料〉
TEOS:テトラエトキシシラン
HMDSO:へキサメチノレジシロキサン
HMDSN:へキサメチルジシラザン
ポリマー 1:トリプロピレングリコールジアタリレート
ポリマー 2 :メタクリル酸メチル
ポリマー 3 :ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアタリレート *A: 1, 10—デカンジオールアタリレート
〈成膜方法〉
AGP:大気圧プラズマ CVD
[表 1]
* 1 :平均炭素含有量の制御方法
[0167] AGP :大気圧プラズマ法
《ガスバリア積層体のポリマー層の平均炭素量の測定》
上記作製したガスバリア積層体の各ポリマー層(厚さ 200nm)における平均炭素含 有率を、前述の方法に従って XPS表面分析装置として VGサイエンティフィックス社 製 ESCALAB— 200Rを用いて測定した。測定した領域は、最下部領域が表面から 20nmまでの領域 (領域 1)とし、それから厚さ 20nmの領域毎に最表部(180〜表面 )までの計 10領域にっ 、て測定を行 、、得られた結果を表 2に示す。
[0168] また、各ポリマー層の全域の平均炭素含有量についても前述の XPS測定を行い、 得られた結果を同様に表に示す。
[0169] [表 2]
ガスバリア 第 1層 :ポリマー層 P - 1の平均炭素含有量
[0170] 《ガスバリア積層体の評価》
〔評価 1 :未処理試料の評価〕
上記作製した各ガスノリア積層体にっ 、て、下記の各評価を行った c
[0171] (水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、 JIS K 7129Bで規定の方法に準拠して測定を行った。
[0172] (酸素透過率の測定)
酸素透過率は、 JIS K 7126Bで規定の方法に準拠して測定を行った。
[0173] (密着性の評価)
JIS K 5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に、片刃の 力ミソリを用いて、面に対して 90度で lmm間隔で縦横に 11本ずつの切り込みを入 れ、 lmm角の碁盤目を 100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付 け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対 する薄膜の剥がされた面積の割合を測定し、下記の基準に従って密着性の評価を 行った。
[0174] ◎:全く剥離の発生が認められない
〇:剥離された面積割合が 0. 1%以上、 5%未満であった
△:剥離された面積割合が 5%以上、 10%未満であった
X:剥離された面積割合が 10%以上であった
〔評価 2:折り曲げ後試料の評価〕
上記作製した各ガスバリア積層体を、 300mm φの金属棒に、各構成層面が外側 になるように巻き付けた後、 5秒後に開放し、この操作を 10回繰り返して行った後、評 価 1と同様の方法で、水蒸気透過率、酸素透過率の測定と、密着性の評価を行った
[0175] 〔評価 3:保存性の評価 A〕
上記作製した各ガスバリア積層体を、 80°C、 90%RHの環境下で 1000時間保存 した後、評価 1と同様の方法で、水蒸気透過率、酸素透過率の測定と、密着性の評 価を行った。
[0176] 〔評価 4 :保存性の評価 B〕
上記作製した各ガスバリア積層体を、 90°C、 0%RHの環境下で 1000時間保存し た後、評価 1と同様の方法で、水蒸気透過率、酸素透過率の測定と、密着性の評価 を行った。
[0177] 以上により得られた結果を、表 3に示す。
[0178] [表 3]
* A:水蒸気透過率(gノ m /day)
* B:酸素透過率(mlZm . 24h · 1 at m)
[0179] 表 3に記載の結果より明らかなように、ポリマー層及びガスバリア層が積層され、本 発明で規定する平均炭素含有率プロファイルを有する本発明のガスバリア積層体は 、比較例に対し、折り曲げ試験後、あるいは過酷な環境下で長期間保存された後で も、水蒸気遮断効果、酸素遮断効果及び密着性に優れた性能が維持されていること が分かる。その中でも、ポリマー層及びガスノリア層を大気圧プラズマ CVD法で形成 したガスノリア積層体力 特に優れた効果を有して 、ることが分かる。
(実施例 2)
実施例 1で作製した各ガスノリア積層体をそれぞれ有機 EL用ディスプレイ基板とし て用い、その上に陽極電極を構成する透明電極、正孔輸送性を有する正孔輸送層、 発光層、電子注入層、および陰極となる背面電極が積層し、さらにこれら各層の上に エポキシ系封止材料 (スリーボンド (株)製エポキシ接着剤 3124C)で接着されたガラ ス缶で封止された OLEDを作製し (ガラス缶の内部にはジャパンゴァテックス製の乾 燥剤を入れた)、 60°C、 90%RH、 1000時間保存後の 50倍の拡大写真を撮影しダ ークスポットの発生を評価した。その結果、本発明の試料では、ダークスポットの発生 は認められな力つた力 比較の試料では、多数のダークスポットの発生が観察された 。以上のように本発明のガスバリア積層体は、水蒸気遮断効果、酸素遮断効果に優 れた性能が維持されて 、ることが分かる。
産業上の利用可能性
[0180] 本発明によれば、高いガスノリア性を備え、基材、ポリマー層及びガスノリア層間の
密着性が向上し、屈曲耐性及び環境耐性に優れたガスバリア積層体とその製造方 法を提供することができる。