JP4158265B2 - プラスチック容器の製造方法及び容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスバリアー膜を設けたプラスチック容器の製造方法に係わり、ガスバリアー性、透明性、対衝撃性に優れたガスバリアー性プラスチック容器の製造方法及び容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プラスチック容器は、その成形の容易性や軽量性、さらには低コストである点等の種々の特性から、食品分野や医薬品分野等の様々な分野において、包装容器として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、プラスチックは、よく知られているように、酸素や二酸化炭素、水蒸気のような低分子ガスを透過する性質を有し、さらに低分子有機化合物が内部に吸着してしまうという性質を有しているため、プラスチック容器はガラス等の他の容器に比べて、その使用対象や使用形態が様々な制約を受ける。
【0004】
たとえば、ビール等の炭酸飲料をプラスチック容器に充填した場合、プラスチックを透過して容器の内部に浸透する酸素によって、内容物である飲料が経時的に酸化を起こして劣化してしまったり、また、炭酸飲料の炭酸ガスがプラスチックを透過し容器の外部に放出されてしまうため、炭酸飲料が気の抜けた飲料になってしまう。
【0005】
また、オレンジジュース等の香気成分を有する飲料をプラスチック容器に充填した場合、飲料に含まれる低分子有機化合物である香気成分(たとえばオレンジジュースのリモネン等)がプラスチックに吸着されるため、飲料の香気成分の組成がバランスを崩して、飲料の品質が劣化してしまうおそれがある。
【0006】
さらに、インスタントコーヒー等の粉末をプラスチック容器中で保存する際にも、プラスチックを透過して容器内部に浸透した水蒸気により、内容物の品質が劣化してしまうおそれがある。
【0007】
また、プラスチック容器については、その組成中に含まれる低分子化合物の溶出が問題になる場合がある。すなわち、プラスチック容器に純度が要求される内容物(特に液体)を充填した場合、プラスチック組成中に含まれている可塑剤や残留モノマー、その他添加剤が内容物中に溶出し、内容物の純度を損なったりする可能性がある。
【0008】
一方、使用済み容器の回収が、現在、社会問題化しており資源のリサイクル化が進められているが、プラスチック容器を再充填容器として使用しようとしても、ガラス容器の場合と異なり、使用後、回収まで環境中に放置されていると、その間にカビ臭など種々の低分子有機化合物がプラスチック容器に吸着する。
【0009】
この吸着した低分子有機化合物は、洗浄後もプラスチック中に残存する。このためプラスチック容器を再充填容器として使用した場合、吸着した低分子有機化合物が異成分として充填された内容物中に徐々に溶けだしてしまい、内容物の品質低下や衛生上の問題が生じる。
【0010】
このため、プラスチック容器は、リターナブル容器として使用されている例はほとんどない。
【0011】
上記のようなプラスチック容器の低分子ガスを透過する性質や低分子有機化合物が内部に吸着してしまうという性質を抑制するために、プラスチックを配向させ結晶化度を向上させたり、より吸着性の低いプラスチックやアルミの薄膜等を積層する方法も使用されているが、いずれも透明性、易廃棄性というようなプラスチック容器の特質を維持したままで、ガスバリアー性や吸着の問題を完全に解決することができていない。
【0012】
ここで、近年プラスチック容器にプラズマCVD法を用いてコーティングを行う技術が知られてきているが、ボトルの外面に成膜する方法では容器内面に吸着する低分子有機化合物の問題に対しては効力がないため、特にボトルの内面に成膜することが望ましい。
【0013】
ボトル内面へのプラズマCVD法でのコーティング例としてDLC膜によるものが報告されている(特開平8−53117号公報)。このDLC膜は、炭素間のSP3、SP2結合を主体としたアモルファスな炭素で、非常に硬く、高屈折率で非常になめらかなモルフォロジを有する硬質炭素膜である。
【0014】
さらにプラスチック容器の内面コーティング例として珪素酸化物膜によるものも報告されている。(特開平8−175528号公報)この例では有機重合膜と珪素酸化物膜の2層構造にすることも述べられている。
【0015】
そこで我々は、DLC膜で問題となる透明性、珪素酸化物膜で問題となるフレキシビリティーの問題を克服するために、プラスチック容器のコーティング例として珪素酸化物と、炭素、水素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を含有する膜による物をすでに報告している。(特願平10−186393)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、プラズマCVD法では原料を大量に供給し、大量に排気する事が求められるが、排気系を強化するには多くのコストが必要となる。
【0018】
原料ガスを有機珪素化合物、酸素に分けて供給する方法もあるが、これでは成膜時間の増加をまねくという欠点がある。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バリアー性、透明性、対衝撃性、フレキシビリティーに優れたガスバリアー性プラスチック容器の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するために、本発明のガスバリアー性プラスチック容器の製造方法及び容器は成膜中のガス濃度を変化させることにより排気系への負担、成膜時間の減少を目的とする物である。
【0022】
すなわち、本発明によるガスバリアープラスチック容器の製造方法は、気化させた有機珪素化合物を有するガスと酸素あるいはプラズマ中で酸化力を有するガス用い、プラズマCVD法によりプラスチック容器に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を含有する膜を成膜し、ガス濃度を変化させることにより膜中の炭素含有量等を1度の成膜中に変化させたバリアー層を形成する物である。
【0023】
具体的には、請求項1の発明では、少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法によりプラスチック容器の少なくとも片側上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の濃度が成膜中に減少、増加を繰り返し変化することを特徴とするプラスチック容器の製造方法を提供するものである。
【0027】
請求項2の発明では、少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の供給を成膜途中で止め、再度供給を開始することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法を提供するものである。
【0028】
請求項3の発明では、少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の供給を成膜途中で止め、再度供給を開始することを繰り返すことを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法を提供するものである。
【0029】
請求項4の発明では、少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の流量及び酸素もしくは酸化力を有するガスの流量がともに変化することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法を提供するものである。
【0030】
請求項5の発明では、請求項1から4の何れかのバリアー層をボトル内面へ設けることを特徴とするプラスチック容器の製造方法を提供するものである。
【0031】
請求項6の発明では、少なくとも片側上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有する、有機珪素化合物の濃度が膜中に減少、増加を繰り返し変化するプラズマCVDバリアー層を有することを特徴とするプラスチック容器を提供するものである。
【0034】
請求項7の発明では、有機珪素化合物の濃度及び酸素濃度がともに厚さ方向に変化することを特徴とする請求項6に記載のプラスチック容器を提供するものである。
【0035】
請求項8の発明では、請求項6または7の何れかのバリアー層をボトル内面へ設けることを特徴とするプラスチック容器を提供するものである。
【0036】
珪素酸化物層を構成する有機珪素化合物は1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシランプロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の中から選択することができる。
【0037】
特に1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0038】
ただし、これらに限定されるものではなくアミノシラン、シラザン等も用いられる。
【0039】
いずれも液体である上記有機珪素化合物を気化させ、酸素もしくは酸化力を有するガス(例えばN2O、CO2等)と混合したガス、又は、上記の混合ガスに不活性ガスであるヘリウム及び/又はアルゴンを混合した原料ガス、もしくはこれに窒素、弗化炭素等を加え、プラスチック容器が設置されているプラズマ化学的気相蒸着機に導入して、厚さ30−5000Åの珪素酸化物層を形成する。望ましくはバリアー性、柔軟性の面から100−500Åの膜厚が望ましい。
【0040】
【発明の実施の形態】
一例を図を用いて以下示す。図2に示す様に、プラスチック容器1を覆うような外部電極2内に容器をセットし、アース5となるガス導入管3と排気口4をセットする。次に図3に示す様に真空ポンプを用いてボトルの内外を真空に引く。ガス導入管3から有機珪素化合物と酸化力を有するガス等を流し、外部電極に高周波を印可することによりプラスチック容器1内部にプラズマを発生させ、内面に成膜を行う。この際にガスの濃度を変化させる。
【0041】
最後にプラスチック容器1を外部電極2から取り出し、図1に示す物が出来あがった。
【0042】
以上のような方法によりプラスチック容器に成膜を行うが、電極は一枚構造でも複数枚の組み合わせでもかまわないものとする。また、導入する有機珪素化合物と酸化力を有するガスの混合比、および時間、高周波出力を変化させることにより膜中の炭素含有量を調整できる。
【0043】
【実施例】
(予備実験)
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、酸素それぞれのガスを流した際のチャンバー内の圧力を示す。条件1としてHMDSO濃度変化を行う場合の初期圧力、条件2としてHMDSO濃度変化を行わない場合の圧力、条件3として原料ガスを有機珪素化合物(1)、酸素(2)に分けて供給した場合の圧力も示す。圧力の測定は大亜真空製ピラニー真空計PT−DB1を用い、真空ポンプはEDWARDS社製ロータリーポンプE2M−18とULVAC社製メカニカルブースターポンプMBS−030を使用した。
【0044】
また、条件2で、排気系にULVAC社製クライオポンプU10PUを加えた物を条件4に示す。
【0045】
(実施例1)
酸素透過量0.020cc/pkg/day,水蒸気透過量0.030g/pkg/day以下になるまでの処理時間を示す。
【0046】
比較例1としてHMDSO1.0sccm、酸素100sccmにおいてHMDSO濃度変化を行わない場合の処理時間、比較例2としてHMDSO 1.0sccm、酸素20sccmにおいてHMDSO濃度変化を行わない場合の処理時間、比較例3として原料ガスを有機珪素化合物、酸素に分けて供給した場合の処理時間、比較例4として排気系にクライオポンプを加え、HMDSO1.0sccm、酸素100sccmにおいてHMDSO濃度変化を行わない場合の処理時間も示す。
【0047】
また、未処理PET容器の酸素透過量は0.100cc/pkg/day、水蒸気透過量は0.070g/pkg/dayであった。
【0048】
酸素透過度についてはMOCON社のOXTRANにより、水蒸気透過度についいてはMOCON社のPERMATRANによって測定を行った。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上に示したようにHMDSO濃度を変化させることによりHMDSO成膜後に酸素後処理を行うよりも成膜時間を短くすることが出来る。また、比較例1、比較例2については所定のガスバリアー性を示す物は作成できなかった。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば排気系に負担をかけずに短時間で高いガスバリアー性を有したプラスチック容器を作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明のガスバリア性プラスチック容器の概念断面図である。
【図2】本願発明のガスバリア性プラスチック容器の成膜前の状態の概念断面図である。
【図3】本願発明のガスバリア性プラスチック容器の成膜中の状態の概念断面図である。
【符号の説明】
1 プラスチック容器
2 外部電極
3 ガス導入管
4 排気口
5 アース
6 電源
Claims (8)
- 少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法によりプラスチック容器の少なくとも片側上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の濃度が成膜中に減少、増加を繰り返し変化することを特徴とするプラスチック容器の製造方法。
- 少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の供給を成膜途中で止め、再度供給を開始することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法。
- 少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の供給を成膜途中で止め、再度供給を開始することを繰り返すことを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法。
- 少なくとも有機珪素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法により基材上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有するバリアー層を形成する際に有機珪素化合物の流量及び酸素もしくは酸化力を有するガスの流量がともに変化することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器の製造方法。
- 請求項1から4の何れかのバリアー層をボトル内面へ設けることを特徴とするプラスチック容器の製造方法。
- 少なくとも片側上に珪素酸化物と、水素と、炭素、珪素及び酸素の中から少なくとも1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有する、有機珪素化合物の濃度が膜中に減少、増加を繰り返し変化するプラズマCVDバリアー層を有することを特徴とするプラスチック容器。
- 有機珪素化合物の濃度及び酸素濃度がともに厚さ方向に変化することを特徴とする請求項6に記載のプラスチック容器。
- 請求項6または7のバリアー層をボトル内面へ設けることを特徴とするプラスチック容器。
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