JP2006342423A - プラズマcvd法による蒸着膜 - Google Patents

プラズマcvd法による蒸着膜 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスバリア性及び基体に対する密着性に優れ、さらには耐熱性にも優れたプラズマCVD法による蒸着膜を提供する。
【解決手段】有機金属化合物と酸化性ガスとを用いてのプラズマCVD法による蒸着膜において、該蒸着膜は、基体側に位置する有機無機複合領域Yと、有機無機複合領域Yの上に形成された無機性領域Xとを有し、有機金属化合物に由来する金属元素(M)、酸素(O)及び炭素(C)の元素基準で表して、有機無機複合領域Yは、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が、0.2<C/M<1.8、及び1.5≦O/Mを満足し、且つ該金属元素(M)の結合エネルギーが無機性領域中で炭素濃度が5%未満の金属元素(M)の平均値よりも0.1eV〜0.7eV低い範囲にあり、無機性領域Xは、元素比(C/M)が、C/M≦0.2を満足している。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチックボトルなどの基体表面にプラズマCVD法によって形成される蒸着膜に関するものであり、より詳細には、プラスチック基体に対する密着性や耐熱性に優れた蒸着膜に関する。
従来、各種基体の特性を改善するために、その表面にプラズマCVD法による蒸着膜を形成することが行われている。例えば、包装材料の分野では、容器などのプラスチック基材に対して、プラズマCVD法により蒸着膜を形成させて、ガス遮断性を向上させることが公知である。例えば、有機ケイ素化合物と酸素もしくは酸化力を有するガスを用い、プラズマCVD法によりプラスチック容器の表面にケイ素酸化物からなる蒸着膜を形成することにより、ガスバリア性を向上させることができる。
しかしながら、ケイ素酸化物に代表される金属酸化物の蒸着膜は、高いガスバリア性を示すものの、柔軟性に欠け、該蒸着膜が形成される基体、特にプラスチック基体に対する密着性が低いという欠点がある。このため、プラスチック容器などに当該蒸着膜を形成したとき、膨張等により該容器が変形した場合、当該蒸着膜が容器の変形に追随できず、この結果、ガスバリア性が大きく低下してしまうという不都合を生じていた。
上記のような問題を回避するため、本出願人は、先に有機金属化合物を原料ガスとして用いるプラズマCVD法により金属酸化物の蒸着膜を形成するに際して、反応条件を調整して、予め基体表面側に有機性に富んだカーボン濃度の高い有機性層を形成し、この有機性層の上に連続的に金属濃度の高い無機性に富んだ金属酸化物層を形成することにより蒸着膜を成膜することを提案した(特許文献1参照)。このようにして形成された蒸着膜では、ガスバリア性の高い金属酸化物層の下側、即ち、基体表面側に有機性層が形成されているため、優れたガスバリア性を有しているばかりか、プラスチック等の基体に対して高い密着性を示し、しかも可撓性にも優れている。
特開2005−89859
しかしながら、特許文献1で示されている蒸着膜においても、未だ改善すべき問題が残されている。即ち、カーボン濃度の高い有機性層を基体表面側に形成し、このような有機性層の上にガスバリア性の高い無機金属酸化物層が形成された層状構造を有する蒸着膜では、耐熱性が低いという欠点があり、このため、この蒸着膜をプラスチック容器の表面に形成すると、特に容器内容液を高温で充填したとき、或いは比較的高い温度(50〜60℃)に容器が保存された場合では、蒸着膜から金属が内容液中に溶出し、膜厚が減少するという問題を生じていた。
従って、本発明の目的は、ガスバリア性や基体に対する密着性も良好であるばかりか、耐熱性にも優れたプラズマCVD法による蒸着膜を提供することにある。
本発明によれば、有機金属化合物と酸化性ガスとを反応ガスとして用いたプラズマCVD法により基体表面に形成した蒸着膜において、
該蒸着膜は、基体側に位置する有機無機複合領域と、該有機無機複合領域の上に形成された無機性領域とを有しており、
前記有機金属化合物に由来する金属元素(M)、酸素(O)及び炭素(C)の元素基準で表して、
前記有機無機複合領域は、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が下記条件:
0.2<C/M<1.8、好ましくは、1.0<C/M<1.8、
1.5≦O/M、好ましくは、2.0≦O/M、
を満足し、且つ該金属元素(M)の結合エネルギーが前記無機性領域中で炭素濃度が5%未満の金属元素(M)の平均値よりも0.1eV〜0.7eV低い範囲にあり、
前記無機性領域は、元素比(C/M)が下記条件:
C/M≦0.2
を満足していることを特徴とする蒸着膜が提供される。
本発明によればまた、前記蒸着膜が内面に形成されたプラスチックボトルが提供される。
本発明においては、
(1)前記有機無機複合領域は、金属元素(M)の結合エネルギーが基体側から前記無機性領域に向かって漸次増大しており、且つ金属元素(M)の結合エネルギーの最大値と最小値との差が0.1eV以上であること、
(2)前記有機金属化合物が有機ケイ素化合物であり、金属(M)がケイ素(Si)であること、
(3)前記基体がプラスチックであること、
が好ましい。
本発明のプラズマCVD法による蒸着膜は、無機性に富んだ無機性領域と基板との間に、所定の条件を満足する有機無機複合領域が形成されているため、高いガスバリア性や柔軟性を示し、基体に対して優れた密着性を示すばかりか、優れた耐熱性を示す。例えばかかる蒸着膜をプラスチックボトルの内面に形成したとき、該ボトルを高温に長時間保持したり、或いは内容液を熱間充填したりした場合においても、内容液中への金属元素の溶出をほとんど生じることがなく、膜厚減少やそれに伴うガスバリア性の低下を有効に回避することができる。従って、このような蒸着膜を内面に備えたプラスチックボトルは、お茶などの加温販売用の容器として実用に供することができる。
添付図面の図1を参照されたい。図1は、X線光電子分光分析によって測定される本発明の蒸着膜(特に後述する実施例で作製されたもの)の元素組成(M,O,C)及び金属元素(M)の結合エネルギーを示すものである。
図1から理解されるように、この蒸着膜は、外面側に無機性領域Xが形成され、基板表面側には、有機無機複合領域Yが形成されている。即ち、本発明の蒸着膜は、有機金属化合物あるいは有機金属化合物と酸化性ガスとを反応ガスとして用いてのプラズマCVD法により所定の基体表面に形成されるものであるが、この蒸着膜は、前記有機金属化合物に由来する金属元素(M)、酸素(O)及び炭素(C)が、図1に示すように厚み方向に分布している。
図1において、外面側に形成されている無機性領域Xは、特にC/M≦1.0となっており、金属元素(M)が炭素(C)以上に多く含まれており、無機性に富んだ領域である。従って、この領域Xでは金属酸化物が支配的となり、特に酸素に対するバリア性が高い。
本発明において、かかる無機性領域Xでは、膜の外面側に近づくにつれて炭素(C)濃度が低下し、C,M及びOの三元素基準で、特に炭素(C)濃度が5元素%以下となり、金属元素(M)と酸素(O)との合計濃度(M+O)が95元素%以上となっていることが好適である。このように無機性に著しく富んだ領域(無機性領域X中のかかる領域をガスバリア層領域と呼び、図1ではX’で示した)を含むことにより、酸素等に対するバリア性を著しく高めることができる。例えば、有機金属化合物としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)などの有機ケイ素化合物を用いたときには、ガスバリア層領域X’は、ケイ素酸化物を主体とするものとなる。従って、本発明の蒸着膜は、特に酸素、炭酸ガス等のガスに対するバリア性が要求されるプラスチック容器などの包装材料の分野に有用である。
さらに、このような無機性領域Xでは、高いガスバリア性を確保するためには、金属元素(M)の酸化度に相当する元素比(O/M)は、1.8〜2.4の範囲にあり、特に無機性領域X中に存在するガスバリア層領域X’での元素比(O/M)は、2.0以上であるのがよい。また、このような無機性領域Xは、おおよそ4.0nm以上の厚みを有しているのがよい。
一方、蒸着膜の基板側に形成されている有機無機複合領域Yは、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が下記式(1)及び(2)の条件:
0.2<C/M<1.8 …(1)
1.5≦O/M …(2)
を満足しているものであり、前述した無機性領域Xと比較すると、金属元素(M)の酸化度(O/M)は、多少低くともよいが、金属元素(M)に対する炭素(C)の量(C/M)が多い。即ち、この有機無機複合領域Yは、カーボンを主体とする領域ほどではないが、無機性領域Xよりも有機性に富んだ領域であり、有機性と無機性とを示す。
また、かかる領域Yでは、金属元素(M)の結合エネルギーが、無機性領域X中で炭素濃度が5%未満の領域、すなわちガスバリア層領域X’の金属元素(M)結合エネルギーの平均値よりも0.1eV〜0.7eV低い範囲にある。ちなみに、このガスバリア層領域X’の金属元素(M)結合エネルギーの平均値から、有機無機複合領域Yの金属元素(M)結合エネルギーを差し引いた値(範囲)を「ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲」と呼ぶ。このガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が、0.1eV〜0.7eVであることから、即ち、金属元素(M)と酸素(O)との結合エネルギーは、金属元素(M)と炭素(C)との結合エネルギーよりも高い。従って、無機性領域Xに比して炭素(C)を多く含む有機無機複合領域Yでは、金属元素(M)結合エネルギーが無機性領域Xに比して低い値となるのであるが、結合エネルギー差が上記範囲内に収まる程度で、酸化度の高い金属酸化物を含んでいる。
即ち、前述した蒸着膜中の無機性領域Xは、高いガスバリア性を示すものの、柔軟性に欠けるという欠点がある。このため、このような無機性領域Xが基体表面に直接形成されていると、基体に対する密着性を確保することができない。例えば、膨張等により基体が多少変形した場合、このような無機性領域Xは基体の変化に追随することができず、この結果、基体との密着性が損なわれ、ガスバリア性の低下を生じてしまう。しかるに、本発明では、基体表面側に、上記のような有機無機複合領域Yが形成されており、かかる有機無機複合領域Yでは、所定量の炭素(C)を含んでいるため、柔軟性を示し、この結果として、基体に対する密着性を確保することができるのである。
また、本発明においては、上記のような有機無機複合領域Yを基体側に形成することにより、驚くべきことに、蒸着膜の耐熱性が向上するという予想外の利点が達成される。
例えば、特許文献1に開示されているような蒸着膜では、基板側表面に形成されている領域は、炭素濃度が極めて高く、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が、0.7eVを超える範囲にあり、無機性を示さない。このため、柔軟性が高く、基体に対する密着性は優れているのであるが、かかる蒸着膜は耐熱性が低いという問題がある。即ち、後述する比較例1に示されているように、PETボトルの内面にこのような蒸着膜を形成した場合、ボトル内に内容液を熱間充填したときには、室温で内容液を充填した場合に比して、内容液への金属元素(ケイ素)の溶出量が著しく増大してしまう。これに対して、上述した条件を満足する有機無機複合領域Yが基板側に形成されている本発明の蒸着膜がPETボトル内面に設けられている場合には(実施例1)、耐熱性が著しく高く、内容液を熱間充填した場合においても、金属元素(ケイ素)の溶出量は、室温で充填したときと略同等であり、極めて少ないことが理解される。
このように、上記のような有機無機複合領域Yを基板側に形成することにより、耐熱性を向上させることができるのであるが、この理由について、本発明者等は次のように推定している。即ち、特許文献1のように炭素含量の多い有機性領域が基板側に形成されている蒸着膜では、熱間充填や高温での保持により有機性領域が活発に動いている。この結果、高温状態では、有機性領域の上に形成された無機性領域の金属元素(M)が容易に遊離し、例えばボトルの内容液中に溶出してしまうものと考えられる。しかるに、本発明の蒸着膜において、基板側に形成されている有機無機複合領域Yでは、ある程度の量の金属元素(M)が酸化度の高い形で存在しているため、無機性領域Xと比較すれば低いものの、高温での有機無機複合領域Yの動きは、上述した有機性領域と比較すればかなり小さい。このため、高温状態でも金属元素(M)が離脱しにくく、この結果、優れた耐熱性を示すものと考えられる。
上述した本発明の蒸着膜においては、図1に示されているように、有機無機複合領域Yでは、金属元素(M)の結合エネルギーが基体側から無機性領域Xに向かって漸次増大しており、且つ金属元素(M)の結合エネルギーの最大値と最小値との差が0.1eV以上であることが好ましい。このような条件を満足させることにより、有機無機複合領域Yに適度な厚み(例えば0.2〜10nm程度)を確保することができ、その柔軟性により、基体との間に高い密着性を確保することができる。また、この場合には、領域X及びYとの間に明確な界面が形成されず、従って、両者の界面で剥離を生じるようなことはなく、極めて耐久性に優れ、酸素等のガスや水分に対して、長期間にわたって安定したバリア性を示すのである。
また、上述した有機無機複合領域Yにおいては、特に、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が下記式(1a)及び(2a)の条件:
1.0<C/M<1.8 …(1a)
2.0≦O/M …(2a)
を満足していること、換言すると、かかる領域Yでは、炭素(C)を金属元素(M)よりもやや多く含み、且つ金属元素(M)の酸化度(O/M)が高い領域にあることが好ましい。即ち、有機性を比較的高いレベルとし且つ酸化度の高い金属酸化物を存在させることにより、上記のような柔軟性による密着性保持効果を高めると同時に耐熱性向上効果を高めることができる。特に、領域Yの厚みを0.2〜5.0nm程度に薄くした時にも、所定の密着性保持効果や耐熱性向上効果を発現させ得る点で、上記のような条件を満足させることは極めて好適である。
また、本発明においては、上述した無機性領域Xの上にカーボンリッチの領域(表面保護領域)を形成することもできる。このような表面保護領域は、例えば、炭素(C)、金属元素(M)及び酸素(O)の3元素基準で、炭素元素(C)濃度が15元素%以上の領域であり、例えば無機性領域Xから炭素元素(C)濃度を漸次増大させていくことにより形成される。従って、このようにして形成される表面保護領域は、無機性領域Xから直接移行するのではなく、両者の間に、中間の炭素(C)濃度を有する領域が介在することとなる。このような表面保護領域は、耐水性が良好であり、これにより、アルカリ性溶液等への金属元素(M)の溶出を有効に抑制でき、例えば、アルカリ性のミネラルウオーターを内容物とするPETボトルなどに蒸着膜を形成する場合には、特に有効である。
また、本発明においては、水分に対するバリア性を向上させるために、外表面を粗面に形成しておくことが好ましい。例えば、この平均表面粗さRa(JIS
B0601)を0.1乃至10.0nm程度に調整しておくことにより、水分に対するバリアー性がさらに高められる。このような粗面の形成は、例えば蒸着膜の形成に際して、グロー放電のための減圧度を調整し、比較的高い圧力下でグロー放電させることにより行うことができる。
[基体]
本発明において、上記の蒸着膜を形成すべき基体としては、ガラス、各種金属等からなるものを使用することもできるが、最も好適には、プラスチック基材が使用される。このようなプラスチックとしては、それ自体公知の熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等や、ポリ乳酸など生分解性樹脂、あるいはそれらの混合物のいずれかの樹脂であってもよい。
これらの基体は、フィルム乃至シートの形で用いることができるし、またボトル、カップ、チューブ等の容器やその他の成形品の形で使用することができる。特に、ボトルとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルから形成された二軸延伸ブロー成形ボトルが挙げられる。勿論、本発明は上記ポリエステルのカップや二軸延伸フィルムにも同様に適用することができる。本発明の効果を最も効果的に発揮させるには、特に基体としてプラスチックボトルを用いるのがよい。
また、プラスチック基体は、前述した熱可塑性樹脂を内外層とし、これらの内外層の間に酸素吸収性層を有するガスバリア性の多層構造物であってもよく、このような多層構造物の内層及び/または外層表面に、本発明の蒸着膜を形成することにより、酸素バリア性を著しく向上させることができる。
[反応ガス]
本発明では、有機金属化合物及び酸化性ガスを反応ガスとして使用するが、必要により、これらとともに、炭素源となる炭化水素も併用することができる。
本発明において、有機金属化合物としては、有機ケイ素化合物が好適に使用されるが、酸化性ガスと反応して金属酸化物を形成するものであれば、有機ケイ素化合物に限定されるものではなく、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、その他、有機チタン化合物など、種々のものを使用することができる。有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これらの材料以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
上述した有機金属は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。また、上述した有機ケイ素化合物とともに、シラン(SiH)や四塩化ケイ素を併用することができる。
酸化性ガスとしては、酸素やNOが使用され、キャリアーガスとしては、アルゴンやヘリウムなどが使用される。
また炭素源としては有機ケイ素化合物、有機金属化合物のほかCH,C,C,C等の炭化水素を使用しても良い。
[蒸着膜の形成]
本発明においては、上述した反応ガスを含む雰囲気中で、基体の表面に、プラズマCVD法により蒸着膜を形成させる。
尚、プラズマCVD法とは、気体プラズマを利用して薄膜成長を行うものであり、基本的には、減圧下において原料ガスを含むガスを高電界による電気的エネルギーで放電させ、分解させ、生成する物質を気相中或いは基体上での化学反応を経て、基体上に堆積させるプロセスから成る。プラズマ状態は、グロー放電によって実現されるものであり、このグロー放電の方式によって、直流グロー放電を利用する方法、高周波グロー放電を利用する方法、マイクロ波放電を利用する方法などが知られている。
低温プラズマCVD法は、
a.高速電子によるガス分子の直接分解を利用しているため、生成エネルギーの大きな原料ガスを容易に解離できる、
b.電子温度とガスイオン温度が異なり、電子温度は化学反応を遂行するに必要なエネルギーを有する高温であるが、イオン温度は低温である熱的非平衡状態にあり、低温プロセスが可能となる、
c.基板温度が低くても比較的均一なアモルファス膜を形成できる、
という利点を有するものであり、プラスチック基体への蒸着膜の形成にも容易に適用できるものである。
本発明においては、前述した図1に示すような領域が形成されるように蒸着膜を形成しなければならない。このような手段として、反応ガス及びグロー放電の出力調整を採用することができる。
反応ガスによる場合には、例えば有機金属化合物に比して、酸化性ガスの供給量が少ない場合には、有機金属化合物の酸化分解のレベルが低く、重合物が形成され、カーボン量の多い領域を形成することができる。また、有機金属化合物に比して、酸化性ガスの供給量を多くすることにより、有機金属化合物の酸化分解が高いレベルにまで進行するため、ほぼ完全な金属酸化物が形成され、カーボン量の少ない領域を形成することができる。さらに、カーボン量の多い領域を形成するためには、炭素源となる炭化水素を供給することも有効である。
また、グロー放電の出力調整による場合には、例えばグロー放電を低出力で発生させると、カーボン量の多い領域を形成することができ、高出力でグロー放電を行うと、カーボン量の少ない領域を形成することができる。
この出力変化による方法は、以下の原理に基づくものである。
例えば、有機ケイ素酸化物を例にとって説明すると、有機ケイ素化合物と酸化性ガスにより、次の反応経路を経てケイ素酸化膜が形成するものと考えられる。
(a)水素の引き抜き:SiCH→SiCH
(b)酸化:SiCH→SiOH
(c)脱水縮合:SiOH→SiO
即ち、高出力でグロー放電を実行すると、有機ケイ素化合物が(c)の段階まで一挙に反応し、この結果、酸化分解レベルが高く、カーボン量の少ない領域が形成される。一方、低出力でグロー放電を行うと、(a)の段階で生成したSiCHのラジカル同士の反応が生じ、有機ケイ素化合物重合体が生成し、この結果、カーボン量の多い領域が形成されることとなる。
また、グロー放電の出力調整により、各領域を形成する場合、各元素濃度が連続的に変化し、各領域間に界面が生成しないように、グロー放電の出力調整を連続的に変化させることが必要である。
従って、本発明では、上記の反応ガスの供給量による手段とグロー放電出力による手段とを組み合わせることにより、前述した有機無機複合領域Yを基板側に形成し、その上に無機性領域Xを形成することができる。
例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いて蒸着膜を形成する場合を例にとると、HMDSOと酸化性ガスとを、O/HMDSO(モル比)が8〜12程度の量比で供給しながら低出力でプラズマ反応による蒸着膜の形成を開始し、徐々に出力を高めていくことにより、有機無機複合領域Y及び無機性領域Xを備えた蒸着膜を形成することができる。この場合、マイクロ波による場合には、30W程度でグロー放電を開始し、徐々に出力を高め、90W以上の出力としたとき、無機性領域Xには、金属元素(Si)の酸化度が最も高く、炭素(C)含量が実質上ゼロであるガスバリア層領域X’が形成される。また、高周波による場合は、電極間距離などによって最適条件は異なり、一概に規定できないが、一般には、40W程度でグロー放電を開始し、出力を徐々に高めていくことにより、最終的に100W以上の出力とすることにより、無機性領域Xにガスバリア層領域X’を形成することができる。
マイクロ波及び高周波による何れの場合においても、出力の勾配や製膜時間を調整することにより、有機無機複合領域Yを前述した式(1)及び(2)を満足するか或いは式(1a)及び(2a)を満足するものとすることができる。例えば、出力勾配を比較的緩やかにしたり、製膜時間を長くしたりすることにより、有機無機複合領域Yを前述した式(1)及び(2)を満足するものとすることができ、その厚みを0.2〜10nm程度とすることができる。また、出力勾配を比較的急にしたり、製膜時間を短くしたりすることにより、有機無機複合領域Yを前述した式(1a)及び(2a)を満足するものとすることができ、この領域Yの厚みを0.2〜5.0nm程度とすることができる。但し、出力勾配を必要以上に急にしたり、製膜時間を極度に短くしたりすると、有機無機複合領域Yの厚みが小さく、直ちに無機性領域Xに移行するようになってしまうので、領域Yの厚みが少なくとも0.2nm程度となるように、出力の勾配や製膜時間を調整すべきである。
また、上記のようにして蒸着膜を形成する場合、始めに酸化性ガスを供給せず、HMDSOのみを供給してグロー放電を開始すると、基板側の表面にはカーボンが著しくリッチであり且つ金属元素(Si)の酸化度も低い領域が形成され、かかる領域では、金属元素(Si)の結合エネルギーが低く、この結果、耐熱性が低下してしまうこととなる。さらに、蒸着膜の表面(外面)に前述したカーボンリッチの表面保護層を形成する場合には、最後に、酸化性ガスの供給量を徐々に低減させて最終的にゼロとし、同時にグロー放電出力も徐々に低下させていけばよい。
[処理装置]
本発明において、上述した蒸着膜の形成に用いる装置は、処理すべき基体を含むプラズマ処理室と、プラズマ処理室を減圧状態に保持するための排気系と、プラズマ処理室内に処理用ガスを導入するための処理用ガス導入系と、プラズマ処理室内にプラズマを発生させるための電磁波導入系とを含んでなる。かかる装置の一例を、マイクロ波プラズマ処理装置を例にとって、その構造を図2に示した。
図2において、全体として10で示すプラズマ処理室は、環状の基台12と、筒状側壁14と、筒状側壁14の上部を閉じている天蓋16とから構成されている。
環状の基台12の中心部分には、第1の排気孔20が形成され、さらに、基台12の上面には、第1の排気孔20を取り囲むようにして環状の凹部22が形成され、さらに環状の凹部22の周囲には、環状溝24が形成され、環状溝24は、第2の排気孔26に通じている。
上記の環状の凹部22には、ボトル28を倒立状態に保持しているボトルホルダー30が収容されている。ボトルホルダー30は、図2から明らかな通り、倒立状態のボトル28の首部が嵌め込まれており、該ホルダーに保持されているボトル28の首部は、第1の排気孔20に通じており、第1の排気孔20からボトル28の首部を介して、ボトル28の内部にガス供給管32が挿入されている。
筒状側壁14には、マイクロ波導入口34が設けられており、導波管や同軸ケーブル等のマイクロ波伝送部材36がマイクロ波導入口34に接続されている。即ち、所定のマイクロ波発振器からマイクロ波伝送部材36を介してプラズマ処理室10内にマイクロ波が導入されるようになっている。
天蓋16には、冷却用ガス供給孔40が設けられており、これにより、蒸着膜の形成終了後、或いは蒸着膜の形成中に冷却用ガスが、プラズマ処理室10内で倒立状態に保持されているボトル28の底部に吹き付けられ、冷却が行われるようになっている。
また、プラズマ処理室10の密閉性を確保するために、基台12と筒状側壁14との界面及び筒状側壁14と天蓋16との界面には、それぞれO−リング42が設けられている。また、ボトルホルダー30にも、ボトル28の内部と外部とを遮断するためのO−リング42が設けられている。
さらに、基台12に形成されている第1の排気孔20及び第2の排気孔26には、それぞれ、マイクロ波閉じ込め用のシールド44が設けられている。また、マイクロ波閉じ込めのため、基台12、筒状側壁14及び天蓋16は、何れも金属製である。
プラズマ処理による蒸着膜の形成に際しては、先ず、倒立状態にボトル28を保持しているボトルホルダー30を基台12の環状凹部22に載置し、この状態で基台12を適当な昇降動装置で上昇させ、筒状側壁14に接着させ、図2に示されているように、密閉され且つ倒立状態のボトル28が収容されているプラズマ処理室10を構成させる。
次いで、ガス供給管32を第1の排気孔20からボトル28の内部に挿入するとともに、真空ポンプを駆動し、第1の排気孔20からの排気により、ボトル28の内部を真空状態に維持する。この際、ボトル28の外圧による変形を防止するために、ボトル28の外部のプラズマ処理室10内を、真空ポンプにより、第2の排気孔26から減圧状態にする。
ボトル28内の減圧の程度は、ガス供給管32から処理用ガスが導入され且つマイクロ波が導入されてグロー放電が発生するような減圧の程度が高いものであり、例えば1〜500Pa、特に好適には5〜50Paの範囲がよい。一方、ボトル28の外部のプラズマ処理室10内の減圧の程度は、マイクロ波が導入されてもグロー放電が発生しないような減圧の程度である。
この減圧状態に達した後、ガス供給管32によりボトル28内に反応ガスを導入し、マイクロ波伝送部材36を通してプラズマ処理室10内にマイクロ波を導入し、グロー放電によるプラズマを発生させる。このプラズマ中での電子温度は数万Kであり、ガス粒子の温度は数100Kであるのに比して約2桁ほど高く、熱的に非平衡の状態であり、耐熱性の低いプラスチック基体に対しても有効にプラズマ処理を行うことができる。
上記の反応ガス或いはグロー放電のためのマイクロ波出力は、先に述べたように調整され、ボトル内面から順に、有機無機複合領域Y、無機性領域X(好適にはガスバリア層領域X’を含む)が形成され、その元素組成を、X線光電子分析法により測定すると、図1に示されたようなものとなる。
所定のプラズマ処理を行った後、処理用ガスの導入及びマイクロ波の導入を停止すると共に、冷却用ガス供給孔40から冷却用ガスを導入し、ボトル28の内外を常圧に復帰させ、プラズマ処理されたボトル28をプラズマ処理室10外に取り出すことにより、目的とする蒸着膜が形成されたプラスチックボトルを得ることができる。
プラズマ処理の時間は、処理すべきボトルの内表面積、形成させる薄膜の厚さ及び処理用ガスの種類等によっても相違し、一概に規定できないが、2リットルのプラスチックボトルでは、1個当たり、1秒以上がプラズマ処理の安定性から必要であり、コスト面から短時間化が要求されるが、必要であれば分のオーダーでも良い。
1.膜中の組成分析法
蒸着膜を内面に被覆したPETボトル胴部の内面を、PHI社製、X線光電子分光装置(Quantum2000)により、膜の深さ方向のケイ素、酸素、炭素のそれぞれの組成分布及びケイ素の結合エネルギーを測定した。測定した炭素、ケイ素の組成から、炭素とケイ素の元素比(C/Si)を求めた。さらに、ケイ素濃度及び酸素濃度は溶融石英(SiO2)を基準として補正し、膜厚に関しては、本蒸着膜は便宜上溶融石英(SiO2)と同様のスパッタ速度で推測した。
2.耐熱性の評価
蒸着膜を内面に被覆したPETボトル内に23℃と87℃の蒸留水500mLをそれぞれ充填し、55℃の環境下に28日間保管した後、誘導結合プラズマ質量分析装置により、PETボトル溶液内のケイ素量を測定し、ケイ素の高温溶液中への溶出量を以って耐熱性の評価とした。
3.密着性の評価
蒸着膜を内面に被覆したPETボトル内にドライアイスを2.5g入れ、プラスチック性のキャップを閉め、55℃の環境下で2日間保管した。保管前のPETボトルの体積(V1)と保管後のPETボトルの体積(V2)から、PETボトルの膨張率(V2/V1×100)を求めた結果、保管により102%に膨張した。そして、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN)により、PETボトルの膨張前と膨張後の酸素透過量(37℃―100%RHの雰囲気下)を測定し、PETボトル膨張による酸素透過量の変化を密着性の評価とした。
[実施例1]
周波数2.45GHz、最大出力1.2kWのマイクロ波電源、直径90mm、高さ500mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプ、マイクロ波を発振器からプラズマ処理室に導入する矩形導波管を有する図2に示す装置を用いた。
ガス供給管は、外形15mm、長さ150mmのポーラス構造を有する焼結体ステンレス製ガス供給管を用い、ボトルホルダーに、口径28mm、胴径64mm、高さ206mm、内容積520mlの円筒型ポリエチレンテレフタレート製のボトル(PETボトル)を設置し、処理室内のボトル外部の圧力を7kPa、ボトル内部の圧力を10Paとし、ヘキサメチルジシロキサン(以下HMDSOと記す)を2.7sccm、酸素を27sccm導入後、マイクロ波発振器よりパルスマイクロ波を発振させ、プラズマ処理をおこなった。そのプラズマ処理の際、マイクロ波の強度を変化させることにより、有機無機複合領域Y、無機性領域X(ガスバリア層領域X’)を作製した。各領域のマイクロ波強度およびプラズマ処理時間は、それぞれ、35Wで3秒(有機無機複合領域Y)、600Wで5秒(ガスバリア層領域X’)とした。
有機無機複合領域Y、無機性領域X(ガスバリア層領域X’)を形成後、大気開放し蒸着膜の製膜を終了させた。この時の前記膜中の組成分析法によるケイ素、酸素、炭素の膜の深さ方向における組成分布を図3に示した。そして、膜の深さ方向における炭素とケイ素の元素比(C/Si)を図4に示した。組成分析の結果、有機無機複合領域Yにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)が1.0〜1.8の範囲で、酸素とケイ素の元素比(O/Si)は2.2〜2.4の範囲であった。また、無機性領域Xにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)は0.2以下であった。
さらに、有機無機複合領域Yにおける前述のガスバリア膜との結合エネルギー差を図5に示した。また、膜の厚み方向における元素組成及び金属元素(Si)の結合エネルギー分布を図6に示した。
さらに、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲や耐熱性評価の結果を表1に示し、密着性の評価結果を表2に示した。
[実施例2]
実施例1と同じ図2に示す装置を用い、有機無機複合領域Y、無機性領域X(ガスバリア層領域X’)を作製した。各領域のマイクロ波強度およびプラズマ処理時間は、それぞれ、45Wで3秒(有機無機複合領域Y)、600Wで5秒(ガスバリア層領域X’)とした。組成分析の結果、有機無機複合領域Yにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)が1.0〜1.8の範囲で、酸素とケイ素の元素比(O/Si)は2.2〜2.5の範囲であった。また、無機性領域Xにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)は0.2以下であった。
さらに、有機無機複合領域Yにおける前述のガスバリア膜との結合エネルギー差を図5に示した。また、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲や耐熱性評価の結果を表1に示し、密着性の評価結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1と同じ図2に示す装置を用い、有機無機複合領域Y、無機性領域X(ガスバリア層領域X’)を作製した。その際、有機無機複合領域Yのプラズマ処理時間を実施例1よりも5秒長くした。
この時の前記膜中の組成分析法によるケイ素、酸素、炭素の膜の深さ方向における組成分布を図7に示し、深さ方向における元素組成及び金属元素(Si)の結合エネルギー分布を図1に示した。組成分析の結果、有機無機複合領域Yにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)が0.2〜1.8の範囲で、酸素とケイ素の元素比(O/Si)は1.9〜2.2の範囲であった。また、無機性領域Xにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)は0.2以下であった。
さらに、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲や耐熱性評価の結果を表1に示し、密着性の評価結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例1と同じ図2に示す装置を用い、原料ガスにHMDSOを2.7sccm導入し、マイクロ波強度35Wで0.5秒間プラズマ処理し、PETボトル基板の上に密着膜(有機性領域)を形成した。その後、酸素を27sccm導入しマイクロ波強度600Wで7.5秒間ガスバリア膜(無機性領域)を形成した。組成分析の結果、有機無機複合領域Yにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)が1.0〜1.8の範囲で、酸素とケイ素の元素比(O/Si)は1.9〜2.2の範囲であった。また、無機性領域Xにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)は0.2以下であった。
さらに、有機無機複合領域Yにおける前述のガスバリア膜との結合エネルギー差を図5に示した。また、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲や耐熱性評価の結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1と同じ図2に示す装置を用い、マイクロ波強度を600Wとして密着膜(無機性領域)とガスバリア膜(無機性領域)を合わせて8秒間形成した。組成分析の結果、有機無機複合領域Yにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)が1.0〜1.8の範囲で、酸素とケイ素の元素比(O/Si)は2.2〜2.5の範囲であった。また、無機性領域Xにおける炭素とケイ素の元素比(C/Si)は0.2以下であった。
さらに、有機無機複合領域Yにおける前述のガスバリア膜との結合エネルギー差を図5に示した。また、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲や密着性評価の結果を表2に示した。
Figure 2006342423
上記の結果から、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が0.1〜0.7eVの範囲にあるとき、基板との密着膜は無機性と有機性の成分がバランス良く存在し、良好な耐熱性を示すことがわかる。しかし、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が0.1〜0.7eVの範囲より大きい場合は、基板との密着膜は有機性の成分が中心となり、耐熱性が劣ることがわかる。
Figure 2006342423
上記の結果から、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が0.1〜0.7eVの範囲にあるとき、基板との密着膜は無機性と有機性の成分がバランス良く存在し、良好な密着性を示すことがわかる。しかし、ガスバリア膜との結合エネルギー差の範囲が0.1〜0.7eVの範囲より小さい場合は、基板との密着膜は無機性の成分が中心となり、密着性が劣ることがわかる。
本発明の蒸着膜(実施例3)の厚み方向における元素組成及び金属元素(Si)の結合エネルギー分布を示す図。 本発明の蒸着膜を形成するためのプラズマ処理装置の構造を示す図。 実施例1の蒸着膜の厚み方向におけるケイ素、酸素、炭素の組成分布を示す図。 実施例1の蒸着膜の厚み方向における炭素とケイ素の元素比(C/Si)を示す図。 実施例1,2及び比較例1,2における蒸着膜について、炭素とケイ素の元素比(C/Si)が1.0〜1.8の範囲における、ガスバリア膜との結合エネルギー差を示す図。 本発明の蒸着膜(実施例1)の厚み方向における元素組成及び金属元素(Si)の結合エネルギー分布を示す図。 実施例3の蒸着膜の厚み方向におけるケイ素、酸素、炭素の組織分布図を示す図。

Claims (6)

  1. 有機金属化合物と酸化性ガスとを反応ガスとして用いたプラズマCVD法により基体表面に形成した蒸着膜において、
    該蒸着膜は、基体側に位置する有機無機複合領域と、該有機無機複合領域の上に形成された無機性領域とを有しており、
    前記有機金属化合物に由来する金属元素(M)、酸素(O)及び炭素(C)の元素基準で表して、
    前記有機無機複合領域は、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が下記条件:
    0.2<C/M<1.8
    1.5≦O/M
    を満足し、且つ該金属元素(M)の結合エネルギーが前記無機性領域中で炭素濃度が5%未満の金属元素(M)の平均値よりも0.1eV〜0.7eV低い範囲にあり、
    前記無機性領域は、元素比(C/M)が下記条件:
    C/M≦0.2
    を満足していることを特徴とする蒸着膜。
  2. 前記有機金属化合物に由来する金属元素(M)、酸素(O)及び炭素(C)の元素基準で表して、
    前記有機無機複合領域は、元素比(C/M)及び元素比(O/M)が下記条件:
    1.0<C/M<1.8
    2.0≦O/M
    を満足している請求項1記載の蒸着膜
  3. 前記有機無機複合領域は、金属元素(M)の結合エネルギーが基体側から前記無機性領域に向かって漸次増大しており、且つ金属元素(M)の結合エネルギーの最大値と最小値との差が0.1eV以上である請求項1または2に記載の蒸着膜。
  4. 前記有機金属化合物が有機ケイ素化合物であり、金属(M)がケイ素(Si)である請求項1乃至3の何れかに記載の蒸着膜。
  5. 前記基体がプラスチックである請求項1乃至4の何れかに記載の蒸着膜。
  6. 請求項1に記載の蒸着膜が内面に形成されているプラスチックボトル。
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