JP7223611B2 - ガスバリア性容器およびガスバリア性容器の製造方法 - Google Patents
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プラスチックボトルにガスバリア性を付与することを目的として、プラスチックボトルの表面に、酸化珪素膜(SiO膜)、炭素含有ケイ素酸化物薄膜(SiOC膜)といったガスバリア膜を成膜する技術が開発されている(特許文献1、2)。
また、容器ではなく、フィルム又はシートの形態ではあるが、酸化窒化珪素薄膜(SiON膜)を形成したガスバリアフィルムが開発されている(特許文献3)。
前記ガスバリア層(a)が、珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、および炭素(C)を含む基材に隣接した層であり、前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)のSiの元素組成比を1.0とした場合のNの元素組成比が0.10未満、Cの元素組成比が0.01以上0.50以下であり、
前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)の厚みが20nm以上であることを特徴とするガスバリア性容器を開示する。
前記ガスバリア層(a)の厚みの胴部中央部に対する首部及び/又は底部の比が0.2以上2.0以下であることが好ましい。
ガスバリア層(a)が、珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、および炭素(C)を含む層であり、
前記ガス供給管が、ガス供給孔をガス供給管の垂直方向に複数有し、
該複数のガス供給孔からガスを噴出することにより、ガスバリア層(a)を形成することを特徴とする、ガスバリア性容器の製造方法を開示する。
また、本願のガスバリア性容器の製造方法によれば、上記性能のガスバリア膜を容器内部に形成することができる。
本開示のガスバリア性容器100は、熱可塑性樹脂容器からなる基材20上にガスバリア層(a)30を備える。図1に本開示のガスバリア性容器100の一実施形態の正面図を示す。図2に、図1のIIで示した箇所の断面拡大図を示す。
ガスバリア性容器100は、例えば、図1に示したようなボトル形状をしており、開口部72、首部74、肩部75、胴部76、底部78を有している。ただし、本開示のガスバリア性容器100の形状はこれに限定されず、目的の用途に合わせて適宜形成することができる。また、後述するようにガスバリア層(a)30の成膜追従性、可撓性が良いことから、容器にリブ、加飾、耐圧向上のための細かい凹凸部を付すこともできる。
なお、ガスバリア性容器100を封止する蓋、キャップ、封止材も、その形状、構成を工夫して、内容物に対するガスバリア性を保つ形状とすることが望まれる。
熱可塑性樹脂容器からなる基材20は、ガスバリア層(a)が形成される容器形状の基材であり、熱可塑性樹脂を主成分としてなる。ここで、「主成分」とは、容器全体を基準(100質量%)として、好ましくは90質量%以上の割合で該成分を含んでいることを意味し、公知の添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、着色剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等を挙げることができる。
本開示のガスバリア性容器100は、熱可塑性樹脂容器からなる基材20上に、ガスバリア層(a)30を備え、これにより、ガスバリア性を有する。ガスバリア性を有することにより、外気が容器の内容物側へ透過したり、内容物中の炭酸ガスや香味成分が容器外へ移行したりすることを防ぐことができる。
ガスバリア層(a)30は、図2に示すように、基材20の内側(内容物側)に形成してもよいし、基材20の外側(内容物側とは反対側)に形成してもよいし、または、内側と外側の両方に形成してもよい。内側にガスバリア層(a)30を形成した場合は、熱可塑性樹脂容器からなる基材20中の微量成分や水分が内容物へ移行することが抑制できるので、その点から、基材20の内側に、ガスバリア層(a)を形成することが好ましい。
「基材20に隣接した層」とは、ガスバリア層(a)30と基材20との間に、他の層を介在させずに、ガスバリア層(a)30が直接基材20上に形成されていることを意味する。
ガスバリア層(a)の組成を、ガスバリア性容器100全体において、上記所定の範囲とすることにより、ガスバリア性容器100全体において、ガスバリア層(a)30と基材20との密着性を向上させることができ、ガスバリア性容器100のガスバリア性を良好にできる、また、保管後ガスバリア性も良好に維持することができる。
なお、以下において説明するガスバリア層(a)や、ガスバリア層(b)の元素組成比は、上記と同様にSiの元素組成比を1.0として算出している。
上記ように、Cの元素組成比を容器100全体において、所定の範囲内に均一化することにより、ガスバリア層(a)30の可撓性を容器全体において均一なものとして、容器100全体においてガスバリア層(a)30の密着性を良好にし、高いガスバリア性および保管後ガスバリア性を付与できる。また、容器の一部が着色するのを防止できる。
ガスバリア性容器100は、基材20に隣接して形成されたガスバリア層(a)30の表面上に、別のガスバリア層(b)40を備えていてもよく、複数のガスバリア層を有する形態であってもよい。ガスバリア層(a)およびガスバリア層(b)を有するガスバリア性容器100の拡大断面図を図3に示す。ガスバリア層(b)を有することにより、ガスバリア性、および、保管後ガスバリア性をさらに向上させることができる。
ここで、ガスバリア層(a)30の表面とは、ガスバリア層(a)の基材20と隣接している側とは反対側の表面を意味する。
Oの元素組成比は0.1以上2.0以下であることが好ましく、下限は0.2以上がより好ましい。上限は1.9以下がより好ましい。より高度なガスバリア性を有するガスバリア層(b)を形成する観点で、Si、O、N、Cを含むガスバリア層においてOの元素組成比が2.0以下であると好適であり、且つ適度な可撓性も付与される。
Cの元素組成比は0.01以上2.0以下であることが好ましく、下限は0.2以上がより好ましい。上限は1.7以下がより好ましく、1.6以下が更に好ましい。
よって、ガスバリア層(a)を備えることで、基材20との密着性が向上して、ガスバリア性、特に、保管後ガスバリア性が向上する。また、さらに、ガスバリア層(b)を備えることで、さらに高いガスバリア性を付与できる。
ガスバリア層は、上記したように、基材20に隣接してガスバリア層(a)30のみを有していてもよいし、さらに、ガスバリア層(a)の表面上にガスバリア層(b)40を有していてもよい。また各ガスバリア層は、互に組成が異なる複数の層から構成されていてもよい。以下、ガスバリア層(a)をa、ガスバリア層(b)をbと省略記載する。
ガスバリア層の積層構成としては、例えば、以下が挙げられる。
(1)a
(2)a/a
(3)a/a・・・
(4)a/b
(5)a/a/b
(6)a/b/b
(7)a/a/b/b
(8)a/a・・・/b/b・・・
(9)a/b/a
(10)a/b/a/b
また、ガスバリア層(a)が所定の組成の範囲内にて、連続的に組成が変化している形態も、上記した所定の組成の範囲内である限り、1層のガスバリア層(a)として把握される。なお、この場合は、ガスバリア層(a)の層さ方向中央部の値を該層の組成とする。
ガスバリア層30、40の元素組成比は、X線光電子分光分析(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定することができる。
詳しくは次のとおりである。
なお、成膜後に外気に曝されるガスバリア層の最表面は、酸化が生じて酸素原子比率が高くなる。そこで、本願ではこれを考慮して、最表層の分析値を除いた分析値を用いる。また、層界面付近も正確な値を示さないため、分析値から除外する(接する層同士が混じり合うため。)。
ガスバリア層(a)30の厚みは、前記ガスバリア性容器100の首部74、胴部76および底部78のいずれの箇所においても20nm以上である必要がある。これにより、ガスバリア層(a)30の密着性を良好にすることができ、保管後ガスバリア性を良好にすることができる。
また、本開示のガスバリア性容器100の断面の超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡で観察すると、層の境界の判別に有効であり、各層の膜厚計測にも用いることができる。
膜厚分布は、容器形状を考慮して、以下に示すように、所定のガス供給孔を有するガス供給管を用いてガス導入位置を調整することにより上記の好ましい形態に調整することが可能である。また、補足的に、ガス流量、電極位置、プラズマ印加電力などを調整して、均等化を図ることもできる。なお、胴部76中央部の解釈は、上記したガスバリア層(a)のCの元素組成比の比率における場合と同様である。
膜密度が大きいと膜が緻密であり、ガスバリア性が良好となる。なお、本願のガスバリア層(a)30は、膜密度が大きくとも、可撓性に優れることが特徴であり、内容物の充填加工や、保管及び搬送時に多少の外圧が加わってもガスバリア性の劣化が起き難い。
膜の密度を高めるには、炭素組成比の低減や、プラズマ反応したガス分子が基材20へ密集して緻密に堆積することにより為される。
また、膜密度の測定方法は、例えば、X線反射率測定から解析する方法、ガスバリア性容器100を溶剤で十分溶解させて膜を単離させ比重法で測定する方法等が挙げられる。
ガスバリア性容器100は、内容物の視認性、容器美観性、衛生的印象の点から、無色透明であることが好ましい。一般に、熱可塑性樹脂容器からなる基材20は無色透明に成形されたものが用いられるので、ガスバリア性容器100の透明性や色目は、ガスバリア層(a)30の透明性や色目(色味)が大きく影響する。
イエローインデックスYI値が小さいほど色目が薄く無色性が高い。また、同様に、b*が小さいほど色目が薄く無色性が高い。
ガスバリア性容器100の温度23℃、相対湿度50%における酸素透過率(OTR:Oxygen Transmission Rate)は、0.010cc/pkg/24h/atm・air以下が好ましい。より好ましくは0.008cc/pkg/24h/atm・air以下であり、さらに好ましくは0.005cc/pkg/24h/atm・air以下である。例えば、炭酸飲料やアルコール飲料等の用途には、より低い酸素透過率、すなわちより高いガスバリア性が適している。
ガスバリア性容器100の酸素透過率が0.010cc/pkg/24h/atm・air以下であることにより、内容物の酸化、腐食、及び腐敗、内容物の炭酸ガス抜け、並びに香味抜けの抑制に有効である。
また、本開示のガスバリア性容器100では、特に、飲料等の内容物を充填し、所定期間保管後した後のガスバリア性(保管後ガスバリア性)を良好に維持できる。例えば、ガスバリア性容器100にワインを液温50℃充填圧力70kPaの条件で充填後、23℃下で6時間静置保管した後にガスバリア性容器100からワインを注ぎ出し、次いでガスバリア性容器100の内部をイオン交換水で濯ぎ洗いを2回行って乾燥させた後に、ガスバリア性容器100の温度23℃、相対湿度50%におけるOTR(以下、「保管後OTR」という場合がある。)は、0.010cc/pkg/24h/atm・air以下が好ましい。保管後OTRは、より好ましくは0.008cc/pkg/24h/atm・air以下であり、さらに好ましくは0.006cc/pkg/24h/atm・air以下である。すなわち、一般に、充填時の加温加圧および充填後の温度低下により、熱可塑性樹脂容器およびガスバリア層はその内圧変化を受け、ガスバリア層の損傷や密着性低下が起き易くなるところ、本開示のガスバリア性容器は膜密着性が強いため、良好なガスバリア性を維持できるものである。
また、充填前OTRに対する保管後OTRの比率(保管後OTR/充填前OTR)は、基材20に対するガスバリア層(a)30の密着性の評価基準(密着性試験値)となり得る。すなわち、保管後OTR/充填前OTRが1.0に近いほど、ガスバリア層(a)30が基材20に密着していたことを示し、他方、当該値が大きいほど密着性が悪かったことの表れである。また、肉眼で観察できない微小な密着性も、当該値により判別し得る。該密着性基準値は、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。
次に、ガスバリア性容器100の製造方法について説明する。
国際公開第2006/126677号パンフレットには、水素含有SiNx膜をはじめ水素含有DLC膜、水素含有SiOx膜、水素含有SiCxNy膜をプラスチック容器に成膜する製法が開示されている。しかしながら、当該開示されている方法は熱触媒体を用いて化学蒸着する製法であり、汎用の高周波プラズマやマイクロ波プラズマを用いた装置ではなく熱触媒体を備えた新たな設備が必要であった。
一方で、本開示のガスバリア層(a)およびガスバリア層(b)は、DLC蒸着、及び酸化珪素蒸着を行う際に使用する公知の高周波電源やマイクロ波電源を用いて成膜することができることを特徴としている。よって、新たに熱触媒体を有する設備を用意する必要がないため、本願の製造方法によれば、簡易にガスバリア層を成膜することができる。
なお、化学蒸着は、プラズマ化学蒸着であることが好ましい。
ここで、「前後2方向」とは、図4に示した状態での前後2方向という意味であり、ガス供給管50の垂直方向において、孔の向きが前後2方向に揃っているという意味である。また、方向は、見る角度によっては、前後ではなく、左右や斜めにもなり得るが、ある一方向からみて前後2方向であればよい。
このような形態とすることで、容器100内部へのガスの供給がより均一となる。
また、下端に形成されたガス供給孔52は、孔径(直径)が、2~6mmであることが好ましく、3~5mmであることがより好ましい。
孔径を上記のように調整することで、容器内部にガスをより均一に行き渡らせることができる。
また、側面に形成したガス供給孔52同士は、所定の間隔を隔てて形成されることが好ましく、容器の全長を100%とした場合、10%~25%の長さを隔てて形成することが好ましく、12%~20%の長さを隔てて形成されることがより好ましい。
熱可塑性樹脂容器からなる基材20は、上記した熱可塑性樹脂を用いて目的の形状に合わせて公知の方法により成形することができ、好ましくは延伸ブロー成形で成形することである。延伸ブロー成形で熱可塑性樹脂容器からなる基材20を成形することにより、ガスバリア層(a)30の成膜性、引いてはガスバリア性が向上する。
まず、Si、O、N、及びCを含むガスバリア層(a)30を形成するガスについて説明する。
原料ガス、または原料ガス及び添加ガスをプラズマ化学蒸着装置へ導入し、これらのガスがプラズマ下で反応して、基材20の上に堆積することでガスバリア層(a)30が成膜される。
また、ガスバリア性と色目の観点から、ガスバリア層(a)30のCの元素組成比を低減させることが好ましい。ここで、アミノシランのN-C結合の結合解離エネルギーと有機シラザンのSi-C結合の結合解離エネルギーとを比較すると、一般的にアミノシランのN-C結合の結合解離エネルギーの方が小さく解離し易い。よって、アミノシランを用いることでSiに対するCの結合価数および元素組成比が低減するため、プラズマ中の化学反応や成膜後の膜処理に有利である。そのため、アミノシランガスを用いることにより、より低い反応エネルギーで望ましい元素組成比のガスバリア層(a)30を形成できる。また、熱可塑性樹脂容器からなる基材20を加温せずとも、好適な窒素含有珪素系膜を成膜し易いので、ガスバリア性容器100の熱変形等の不具合を防ぐことができる。さらにアミノシランガスを用いることにより、プラズマ化学反応において緻密な、すなわち密度の高い、優れたガスバリア性を有するガスバリア層(a)30を形成できる。
なお、原料ガスは何れか1つを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
反応ガスは、原料ガスと反応して、ガスバリア層に適する元素組成のガスを生成させる目的で使用する。
反応ガスとしては、酸素、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、水素、アンモニア、アミン、炭化水素、水蒸気、空気などが挙げられる(本願の方法では、真空チャンバー中に残存している水蒸気、酸素、空気等や、基材に付着及び/又は含有している水分等も反応に関係することが考えられる。)。
中でも、酸素、窒素、水素が好ましく、原料ガス成分に対してプラズマ下で酸化、窒化、水素化、脱炭素化の反応を行い、ガスバリア性と無色化を両立させるための膜組成と為すことができる。反応ガスは、何れか1つを単独で用いても良いし、2種以上を同時に用いても良い。
例えば、酸化度の高い膜を形成するには酸素、窒化度の高い膜を形成するには窒素、水素、アンモニアを用いると好ましい。
当該方法は、公知の高周波電源又はマイクロ波電源を用いたプラズマ化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)装置を用いて行うことができる。装置の真空チャンバーに熱可塑性樹脂容器からなる基材20を装填し減圧真空引きし、原料ガス、又は原料ガス及び添加ガスを導入して、高周波又はマイクロ波によりこれらのガスをプラズマ化及び反応させ、熱可塑性樹脂容器からなる基材20の上にガスバリア層(a)30を堆積させる。
電極の表面積における高周波電源の供給出力は0.5~2.5W/cm2が好ましい。
(熱可塑性樹脂容器からなる基材の作製)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、一般ボトルグレード、極限粘度0.83dl/g、融点240℃、結晶化温度172℃)製の有底円筒状のパリソンを用い、2ステップブロー成形法(コールドパリソン法)で、図1に示すような形状を有する、ガスバリア層を成膜するための未成膜容器(基材)を成形した。基材の形状は、略半球状に内容物側へ窪んでいる底部、円筒状の胴部、胴部から徐々に縮径した肩部、首部を有し、全高280mm、胴部外径70mm、口部外径28mm、胴部厚み0.35mmであり、容積720mlであった。
図5で概略的に示すように、基材の形状に合わせた外部電極と、ボトル口部上方のチャンバー壁に排気口を有するプラズマ化学蒸着(CVD)装置に、得られた基材を装填し、ガス供給管(側面のガス供給孔は省略している。)を兼ねた内径4.0mm、外径6.4mmの内部電極をボトル内部に配設した。
ガス供給管50は、先端部および側面にガス供給孔を有しており、それぞれのガス供給孔52の位置を、図4に示すように設定した。つまり、容器100の上端部を0%、容器100の下端部を100%として、79%の高さ位置にガス供給管50の先端部のガス供給孔52が位置しており、側面のガス供給孔52は、それぞれ、43%、57%、および、71%の三箇所の高さ位置に設けられている。側面のガス供給孔52は、それぞれの高さ位置において、図示前後二箇所に設けられている。よって、ガス供給孔52は、下端に一つ、側面に6つで、全体で7つ形成されている。
表1にガス供給孔の向き、位置、孔径を示す。
実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂容器からなる基材を作製した。ガスバリア層(a)の成膜においては、ガス供給管の57%の高さ位置におけるガス供給孔の形成位置を、図示左右方向に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア層を形成し、ガスバリア性容器を作製した。
表1にガス供給孔の向き、位置、孔径を示す。
比較例1では、実施例1と同様の基材を用いて、ガスバリア層を成膜せずに、ガスバリア性容器とした。
実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂容器からなる基材を作製した。ガスバリア層の成膜においては、側面にガス供給孔を有さず、下端のみにガス供給孔を有するガス供給管を使用し、該下端のガス供給孔が高さ位置50%となるように設置して、ガスバリア性容器を作製した。
表1にガス供給孔の向き、位置、孔径を示す。
上記により作製したガスバリア性容器に対して以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製XPS(X線光電子分光スペクトル)装置K-Alpha(X線源:Al Kαモノクロ線、エッチング:Ar)を用い、C1s、N1s、O1s、Si2pの各ナロースペクトル深さ分析を行った。
次いで、装置付属の解析ソフトにより、各スペクトルの感度係数補正、バックグラウンド除去を行い、ピーク面積比から各元素の原子%を解析した。
元素組成比の分析は、図4で分析位置として示したように、18%(首部)、43%(胴部上方)、61%(胴部中央)、75%(胴部下方)、96%(底部)の位置にてそれぞれ行った。表2に、ガスバリア層の厚さ方向(深さ方向)の中央部における元素組成SiOxNyCzについて、Siの原子%に対するO、N、及びCの原子%の比率、すなわち、Siを1.00としたときのO、N、及びCの元素組成比を示す。
また、表2に、胴部中央のC(z)に対するそれぞれの位置のC(z)の比率(分布度(C(z)))を併せて示す。
図4で分析位置として示したように、18%(首部)、43%(胴部上方)、61%(胴部中央)、75%(胴部下方)、96%(底部)の位置にてそれぞれの高さ位置から小片を切り出して、容器断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡で観察し、層厚を計測した。結果を表2に示す。
また、表2に、胴部中央の層厚に対するそれぞれの位置の層厚の比率(分布度(層厚))を併せて示す。
MOCON社製OX-TRAN2/61機を用い、各例で得られたガスバリア容器の開口部に当該装置用のアダプターヘッドを装着して、23℃相対湿度50%条件下で、容器個体当たりの酸素透過率を測定した。
結果を、表1に示す。
各例で得られたガスバリア性容器に、赤ワイン720mLを液温50℃充填圧力70kPaの条件で充填し、23℃下で6時間静置保管した後にガスバリア性容器からワインを注ぎ出し、次いでガスバリア性容器の内部をイオン交換水で濯ぎ洗いを2回行って乾燥させた。保管後のガスバリア性容器について、上記と同様の条件にて、OTRを測定した。
また、未蒸着の比較例1のOTRに対する各試験例の保管後OTRの比率(BIF)を算出した。
結果をそれぞれ表1に示す。
また、充填前のOTRに対する保管後のOTRの比率も表1に示す。
作製した各ガスバリア性容器の、底からの高さ、0mm、60mm、110mm、160mm、230mmの5箇所の位置から小片を切り出して、該小片を透過型電子顕微鏡で観察し、ガスバリア層の剥がれや割れの有無を確認し、以下の基準により評価した。
○:剥がれ、割れのいずれも無し、
×:剥がれ、割れのいずれか有り、
作製した各ガスバリア性容器について、目視により、ガスバリア層の透明性について評価した。
各バスバリア性容器におけるガスバリア層の密着性を、充填前OTRに対する保管後OTRの比率により、以下の基準にて評価した。
◎:1以下、
○:1超1.5以下、
△:1.5超2.0以下、
×:2.0超、
これに対して、本開示のガスバリア性容器は、透明性に優れ、ワイン充填前のOTRが良好であり、かつ、ワインを充填し所定期間保管後のOTRについても良好な値を維持していた。
72:開口部、
74:首部、
75:肩部、
76:胴部、
78:底部、
20:熱可塑性樹脂容器からなる基材、
30:ガスバリア層(a)、
40:ガスバリア層(b)、
50:ガス供給管、
52:ガス供給孔、
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂容器からなる基材上にガスバリア層(a)を備えるガスバリア性容器であって、
前記ガスバリア層(a)が、珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、および炭素(C)を含む基材に隣接した層であり、前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)のSiの元素組成比を1.0とした場合のNの元素組成比が0.005以上0.10未満、Cの元素組成比が0.01以上0.50以下であり、
前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)の厚みが20nm以上であることを特徴とするガスバリア性容器。 - 前記ガスバリア性容器が首部を有し、胴部直径に対する容器全高の比が1.5以上5.0以下である、請求項1に記載のガスバリア性容器。
- 前記ガスバリア層(a)のSiの元素組成比を1.0とした場合のCの元素組成比の容器の胴部中央部に対する首部及び/又は底部の比が1.0以上6.0以下であり、
前記ガスバリア層(a)の厚みの胴部中央部に対する首部及び/又は底部の比が0.2以上2.0以下である、請求項1または2に記載のガスバリア性容器。 - 前記基材に対する前記ガスバリア層(a)の密着性試験値が2.0以下である、請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア性容器。
- 前記ガスバリア層(a)の表面にガスバリア層(b)を備える、請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性容器。
- 前記ガスバリア性容器にワインを充填後、23℃下で6時間保管後の酸素透過率が0.01cc/pkg/day/atm・air以下である、請求項1~5のいずれかに記載のガスバリア性容器。
- ガス供給管を、熱可塑性樹脂容器からなる基材の内部に挿入して、該ガス供給管からガスを導入して、前記熱可塑性樹脂容器からなる基材の内側に、化学蒸着により前記基材に隣接したガスバリア層(a)を形成する工程を含む、ガスバリア性容器の製造方法であって、
前記ガスバリア層(a)が、珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、および炭素(C)を含む層であり、
前記ガス供給管が、ガス供給孔をガス供給管の垂直方向に複数有し、
該複数のガス供給孔からガスを噴出することにより、前記ガスバリア層(a)を形成することを特徴とし、
前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)のSiの元素組成比を1.0とした場合のNの元素組成比が0.005以上0.10未満、Cの元素組成比が0.01以上0.50以下であり、
前記ガスバリア性容器の首部、胴部および底部のいずれの箇所においても、前記ガスバリア層(a)の厚みが20nm以上であることを特徴とする、
ガスバリア性容器の製造方法。 - 前記ガス供給管が、側面に形成されたガス供給孔を有し、該ガス供給孔から水平方向にガスを噴出する、請求項7に記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 前記水平方向が、前記ガス供給管が垂直方向となる面から見た前後二方向である、請求項8に記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 前記水平方向が、前記ガス供給管が垂直方向となる面から見た前後二方向と該同面から見た左右二方向の組み合わせであり、前記前後二方向にガスを噴出するガス供給孔と、前記左右二方向にガスを噴出するガス供給孔とが、垂直方向に交互に形成されている、請求項8に記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 前記ガス供給管が、さらに下端に形成されたガス供給孔を有し、該ガス供給孔から下方向にガスを噴出する、請求項7~10のいずれかに記載のガスバリア性容器の製造方法。
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