JP6009243B2 - 炭酸飲料用ボトル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭酸飲料用ボトル及びそれに充填された炭酸飲料に関し、特に、耐クリープ性及びガスバリア性に優れた炭酸飲料用ボトル及びそれに充填された炭酸飲料に関する。
従来、ガスバリア性を有する薄膜(以降、ガスバリア薄膜ということもある。)を形成する技術として、プラズマ化学蒸着(CVD)法がある(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1には、有機珪素化合物を原料として、プラスチック製容器の内表面に、無機酸化物を主体とするガスバリア薄膜を積層する方法が開示されている。しかし、プラズマCVD法によって薄膜を形成する方法は、薄膜形成時にプラズマが膜表面に損傷を与え、膜の緻密さが損なわれやすく、ガスバリア性の向上又は薄膜の密着性確保の障害となりうる。また、プラズマCVD法は、原料ガスをプラズマで分解してイオン化し、プラスチック容器の表面に電界で加速させたイオンを衝突させて薄膜を形成するため、必ず高周波電源及び高周波電力整合装置を必要とし、装置のコストが高額にならざるを得ないという問題を有する。
この問題を解決するために、本出願人は、発熱させた発熱体に原料ガスを接触させて分解し、生成した化学種を直接又は気相中で反応過程を経た後に、基材上に薄膜として堆積させる方法、すなわち、発熱体CVD法、Cat‐CVD法又はホットワイヤーCVD法と呼ばれるCVD法(以降、本明細書では、発熱体CVD法という。)を用いて、プラスチック容器の表面にガスバリア薄膜を形成する技術を開示している(例えば、特許文献2又は3を参照。)。特許文献2では、原料ガスとして非自然発火性原料とオゾンとの混合ガスを用いることで、酸化物薄膜としてAlOx薄膜又はSiOx薄膜を形成する技術を開示している。特許文献3では、原料ガスとして複数のガスを組み合わせることで、例えば、水素含有SiNx薄膜、水素含有DLC薄膜、水素含有SiOx薄膜又は水素含有SiCxNy薄膜を形成することができる発熱体CVD法に関する技術を提案している。
ガスバリア薄膜を形成する方法として、他に、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に発熱体CVD法によって、原料ガスとして、窒素含有ガスとシラン系ガスとを用いて、SiN(窒化珪素)又はSiON(酸化窒化珪素)薄膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。また、ガスバリア薄膜ではないが、発熱体CVD法を用いて薄膜を形成する方法として、例えば、800〜2000℃に加熱した発熱体に原料ガスを接触させて発生させた化学種を、150〜400℃に加熱した基板上に熱CVD法によって薄膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。特許文献5には、複数のガスを混合したガスを用いて、薄膜を堆積する方法が開示されている。また、シラザン系の原料ガスを用いてSiCN膜によるガスバリア性向上技術が開示されている(例えば、特許文献7を参照。)。
ところで、炭酸飲料用ボトルには、炭酸飲料に溶解している炭酸ガスが温度又は振動によって気化したとき、内圧上昇による胴部の膨れを抑制することが求められる。すなわち、耐クリープ性を有することが求められる。飲料分野では、環境に対する意識の高まり及び経済性の観点から、容器の軽量化が世界的な趨勢となっている。炭酸飲料用プラスチックボトルにおいても、同様に、容器の軽量化が試みられてきたが、軽量化した際の耐クリープ性の低下及び容器壁の薄肉化に伴うガスバリア性の低下によって、非炭酸飲料用プラスチックボトルに比べ、容器を軽量化できていない。日本国内の500mlPETボトルの事例では、通常の炭酸飲料用ボトルの質量は30g前後であり、軽量化されたボトルでも24gである。一方、非炭酸飲料用ボトルの重量は、18g〜24gが多く、さらに軽量化されたボトルの場合は、10g〜15gである。そこで、内表面にプラズマCVDでガスバリア被膜を形成した炭酸飲料用プラスチックボトルにおいて、室温より高温の環境下における体積増加率を8.0%以下にする技術が提案されている(例えば、特許文献8を参照。)。また、熱可塑性合成樹脂性のボトル容器において、胴部の径方向配向度を80%以上に設定する技術が提案されている(例えば、特許文献9を参照。)。
特開2005−200043号公報 特開2008−127053号公報 WO2006/126677号公報 特開2008−208404号公報 特開昭63−40314号公報 特開平08−53116号公報 特開2010−235979号公報 特開2006−315697号公報 特開2008−56305号公報
特許文献8,9では、いずれも耐クリープ性を向上させる手段は、薄膜の形成対象となるプラスチックボトルの製造条件を適切に設定することであり、使用可能なプラスチックボトルの種類が制限される。また、特許文献8のガスバリア薄膜はプラズマCVD法によって形成されたものである。本発明者らが試験したところ、プラスチックボトル市場で実用化されているガスバリア性薄膜の形成に用いられる原料ガスを用いて、プラズマCVD法で薄膜を形成した場合と発熱体CVD法で薄膜を形成した場合を比較すると、プラズマCVD法を用いた方が高いガスバリア性及び/又は耐クリープ性の薄膜を形成できることがわかった。しかし、本発明者らがさらに試験したところ、発熱体CVD法に適した原料ガスを選択した場合には、発熱体CVD法を用いることで、プラズマCVD法を用いた場合よりも高いガスバリア性及び耐クリープ性を有する薄膜をプラスチックボトルに形成することに成功した。なお、この場合に、同一の原料ガスを用いて、プラズマCVD法で薄膜を形成した場合と発熱体CVD法で薄膜を形成した場合とを比較すると、発熱体CVD法の方が高いガスバリア性及び耐クリープ性を有する薄膜が得られた。結果、本発明に係る発熱体CVD法による薄膜と比較すると、従来のプラズマCVD法で薄膜を形成した場合ではボトルの耐クリープ性が劣ることがわかった。さらに、炭酸飲料を充填、密封し、保存後のガスバリア性が大きく低下することがわかった。特許文献9の実施例によれば、4.0vol%炭酸水を充填して温度38℃、湿度60%RHで24時間保持後の体積変化量は26.5mlである。ガスバリア薄膜の形成によって、耐クリープ性を更に向上できると記載されているものの、炭酸飲料用ボトルとして使用するには、更なる耐クリープ性の向上が求められる。さらに、炭酸飲料を充填、密封し、保存後のガスバリア性を保持できるか否かについては検討されていない。
本発明の目的は、優れた耐クリープ性を有し、かつ、炭酸飲料を充填、密封して保存した後においても高いガスバリア性を保持できる炭酸飲料用ボトル及びそれに充填された炭酸飲料を提供することである。
本発明に係る炭酸飲料用ボトルは、プラスチックボトルと該プラスチックボトルの表面に設けたガスバリア薄膜とを備える炭酸飲料用ボトルにおいて、前記ガスバリア薄膜は、発熱体CVD膜であり、かつ、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有し、前記ガスバリア薄膜の膜厚が、5nm以上であり、ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の体積増加率が、3.40%未満であることを特徴とする。
(数1)Si含有率[%]={(Si含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
数1において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
本発明に係る炭酸飲料用ボトルでは、前記炭酸飲料用ボトルの高さをhとしたとき、1/2hにおける胴部の平均肉厚が0.33mm以下であることが好ましい。
本発明に係る炭酸飲料用ボトルの製造方法は、プラスチックボトルと該プラスチックボトルの表面に設けたガスバリア薄膜とを備える炭酸飲料用ボトルの製造方法において、発熱体CVD法によって、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有し、かつ、膜厚が5nm以上の前記ガスバリア薄膜を前記プラスチックボトルの表面に形成する形成工程を含み、前記ガスバリア薄膜を備える前記炭酸飲料用ボトルにガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の当該炭酸飲料用ボトルの体積増加率が、3.40%未満であることを特徴とする。
(数1)Si含有率[%]={(Si含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
数1において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
本発明に係る炭酸飲料用ボトルの製造方法では、前記炭酸飲料用ボトルの高さをhとしたとき、1/2hにおける胴部の平均肉厚が0.33mm以下であることが好ましい。
本発明は、優れた耐クリープ性を有し、かつ、炭酸飲料を充填、密封して保存した後においても高いガスバリア性を保持できる炭酸飲料用ボトル及びそれに充填された炭酸飲料を提供することができる。
本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルの一例を示す正面図である。 本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルの基本的な断面構造を示す断面図である。 成膜装置の一形態を示す概略図である。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
図1は、本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルの一例を示す正面図である。炭酸飲料用ボトル90は、図1に示すように、上方から順に、口部93と、肩部94と、胴部95と、底部96とを備える。口部93は、円筒状であり、内容物の充填口及び注ぎ口として機能する。肩部94は、円錐台筒形状を有し、口部93と胴部95とをつなげる部分である。胴部95は、筒状であり、主として使用者が把持する部分である。胴部95の横断面形状は、耐圧性の観点から、円形であることが好ましい。底部96は、ボトルの底面となる部分である。
図2は、本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルの基本的な断面構造を示す断面図である。本実施形態に係る炭酸飲料用ボトル90は、図2に示すように、プラスチックボトル91とプラスチックボトル91の表面に設けたガスバリア薄膜92とを備える炭酸飲料用ボトルにおいて、ガスバリア薄膜92は、発熱体CVD法で形成され、かつ、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有し、ガスバリア薄膜92の膜厚t2が、5nm以上であり、ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の体積増加率が、3.40%未満である。
(数1)Si含有率[%]={(Si含有量[atomic%(at.%、原子%)])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
数1において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
プラスチックボトル91を構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマー樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン‐1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂である。これらは、1種を単層で、又は2種以上を積層して用いることができるが、生産性の点で、単層であることが好ましい。また、樹脂の種類は、PETであることがより好ましい。本発明は、プラスチックボトル91の製造方法に制限されない。
プラスチックボトル91では、図1に示すように炭酸飲料用ボトルの高さをhとしたとき、1/2hにおける胴部95の平均肉厚t1が0.33mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.25mm以下であり、さらに好ましくは0.22mm以下である。一般的なプラスチックボトルの1/2hにおける胴部の平均肉厚である0.36〜0.48mmに対して、肉厚を薄くし、軽量化を図ることができる。また、1/2hにおける胴部の平均肉厚t1の下限値は、ボトルの容量及び材質によって異なるが、例えば、容量が300〜500mlのPET製のプラスチックボトルでは、0.20mmであることが好ましく、0.22mmであることがより好ましく、0.30mmであることがさらに好ましい。
ガスバリア薄膜92は、プラスチックボトル91の内壁面若しくは外壁面のいずれか一方又は両方に設ける。
ガスバリア薄膜92は、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有する。Si含有層のSi含有率は、より好ましくは、40.7%以上である。Si含有層のSi含有率の上限は、57.7%とすることが好ましい。より好ましくは、55.7%である。Si含有層のSi含有率が40.1%未満では、ガスバリア性が不足する場合がある。ガスバリア薄膜92は、Si含有率が40.1%以上であるSi含有層を有していれば、当該Si含有層の上層若しくは下層又はその両方に低Si含有層などの他の層を有していてもよい。また、ガスバリア薄膜92の全体が、当該Si含有層であってもよい。
Si含有層の(数2)で表されるC含有率は、22.8〜45.5%であることが好ましい。より好ましくは、24.8〜45.4%である。
(数2)C含有率[%]={(C含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
数2において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
Si含有層の(数3)で表されるO含有率は、2.0〜35.8%であることが好ましい。より好ましくは、6.0〜33.8%である。
(数3)O含有率[%]={(O含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
数3において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
Si含有率、C含有率又はO含有率は、例えば、ガスバリア薄膜92をXPS分析することによって測定することができる。
Si含有層の水素含有率は、21〜46at.%であることが好ましい。より好ましくは、25〜42at.%である。水素含有率は、ラザフォード後方散乱分析(以降、RBS分析という。)で測定することができる。水素含有量を比較的大きくすることで、プラスチックボトルの変形に追従することが容易となる。逆に水素含有量を小さく抑えると膜質が硬質化するため、プラスチックボトル91の変形時に顕著にクラックが生じやすくなる。また、RBS分析によるガスバリア薄膜92のケイ素含有率は、20〜38at.%であることが好ましい。より好ましくは、22〜36at.%である。RBS分析によるガスバリア薄膜92の炭素含有率は、15〜25at.%であることが好ましい。より好ましくは、18〜22at.%である。RBS分析によるガスバリア薄膜92の酸素含有率は、12〜26at.%であることが好ましい。より好ましくは、15〜21at.%である。なお、ガスバリア薄膜92は、Si,C,O及びH以外に、その他の元素を含んでもよい。その他の元素は、例えば、Mo(モリブデン)などの発熱体由来の金属元素、N(窒素)である。
ガスバリア薄膜92の密度は、1.30〜1.47g/cmであることが好ましい。より好ましくは、1.33〜1.46g/cmであり、特に好ましくは、1.35〜1.40g/mである。
ガスバリア薄膜92のバリア性改良率(Barrier Improvement Factor,以降、BIFという。)は6以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。BIFは、(数4)で求める。
(数4)BIF=[薄膜未形成のプラスチックボトルの酸素透過度]/[薄膜を形成した炭酸飲料用ボトルの酸素透過度]
Si含有層を条件(1)でXPS分析すると、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に、メインピークが観察される(以降、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置で観察されるピークを、Siピークということもある。)領域を含有することが好ましい。
条件(1)測定範囲を95〜105eVとする。
条件(1)でXPS分析すると、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に、メインピークが観察される。ここで、本明細書において、メインピークとは、条件(1)において、ピーク分離して観察されるピークの中で、最も強度の高いピークを意味する。SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に出現するピークから想定される結合状態は、Si‐Si結合又はSi‐H結合である。本実施形態では、Siピークの主要な結合が、Si‐H結合であることが好ましい。ガスバリア薄膜92が含有する化合物の結合の態様は、Si‐Si結合又はSi‐H結合の他に、例えば、Si‐C結合、Si‐O結合、C‐H結合、C‐C結合、C‐O結合、Si‐O‐C結合、C‐O‐C結合、O‐C‐O結合である。
Si含有層を条件(2)でXPS分析すると、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に、ピークが観察されないことが好ましい。
条件(2)測定範囲を120〜150eVとする。
Siピークが、Si‐Si結合又はSi‐H結合のいずれが主要であるかは、条件(1)及び条件(2)でXPS分析を行うことで確認することができる。すなわち、条件(1)では、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に、ピークを有し、条件(2)では、SiとSiとの結合エネルギーのピーク出現位置に、ピークを有さないことで、SiピークがSi‐H結合を示すと確認できる。これによって、BIFを、例えば6以上とすることができる。
本発明者らの検討によると、より高いガスバリア性を発現するためには、ガスバリア薄膜92が、薄膜の表面にSiとHとの結合(Si‐H結合)を偏在させた傾斜組成を有することが好ましい。ガスバリア薄膜92が傾斜組成を有することは、条件(1)でのXPS分析においてアルゴンイオンエッチングを行うことで確認できる。この分析結果によると、ガスバリア薄膜92の表面では、Siピークがメインピークであり、プラスチックボトルに向かうにつれて、メインピークが高結合エネルギー側にシフトする。これにより、表面では、Si‐H結合が多いが、プラスチックボトルの方向に向かうにつれて、次第にSiC、そして、酸素よりも炭素が多いSiOCから炭素よりも酸素が多いSiOCへと組成が変化し、プラスチックボトルの界面では、SiOxになることと推測される。このような傾斜組成を有する理由については不明であるが、成膜過程においてプラスチックボトルの界面では、プラスチックボトル由来の酸素の影響で、SiO又はSiOxなどのSiO系の化合物が堆積するが、プラスチックボトルの界面から5nm付近から、プラスチックボトルの影響が小さくなって、Oの含有率が減少していき、堆積する化合物がSiOCからSiCへというようにSiC系の化合物となり、薄膜の表面では、Si‐H結合を多く含むようになると推測される。
ガスバリア薄膜92の膜厚t2は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。5nm未満では、ガスバリア性の向上効果及びクリープ抑制効果に乏しい場合がある。また、100nmを超えると、容器がクリープした際にクラックが生じやすくなり、ガスバリア性の向上効果及びクリープ抑制効果が低下するだけでなく、容器外観に影響を及ぼす場合がある。また、ガスバリア薄膜92の膜厚t2は、10nm以上で80nm以下であることがより好ましく、この範囲にある膜厚t2が、少なくとも容器の口部(典型的なPETボトルの場合、ネックサポートの下部)又は底部に形成されていることが更に好ましい。膜厚t2が10nm以上80nm以下の範囲では、ガスバリア性の向上及びクリープ抑制の効果のバランスが良く、特に容器口部や底部などの容器成形時に延伸がわずかな部分に形成されることで、効果的にクリープ抑制効果を発揮することができる。
ガスバリア薄膜92は、発熱体CVD法によって形成される。発熱体CVD法は、真空チャンバ内で通電加熱によって発熱した発熱体に原料ガスを接触させて分解し、生成した化学種を直接又は気相中で反応過程を経た後に、基材上に薄膜として堆積させる方法である。発熱体は、その軟化温度によって異なるが、一般に、200〜2200℃に発熱させるが、基材と発熱体との間隔をあけることで、基材の温度を常温から200℃程度の低温に保つことが可能で、プラスチックのように熱に弱い基材にダメージを与えることなく、薄膜を形成することができる。また、プラズマCVD法など他の化学蒸着法又は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着(PVD)法と比べて、装置が単純で、装置自体のコストを抑えることができる。発熱体CVD法では、化学種の堆積によってガスバリア薄膜が形成されるため、湿式法と比較して、かさ密度の高い緻密な膜が得られる。
本実施形態に係る炭酸飲料用ボトル90では、ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の体積増加率が、3.40%未満である。体積増加率は、3.0%以下であることがより好ましい。体積増加率は、炭酸水を充填前の炭酸飲料用ボトルの満注容量をV1とし、ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後、炭酸水を排出して乾燥させた炭酸飲料用ボトルの満注容量をV2としたとき、数5から求める。ここで、満注容量とは、23℃の水を炭酸飲料用ボトル90の口部93の上限まで注いだときの容量である。体積増加率が3.40%以上では、一般にボトルの寸法変化による流通適性及び容器外観品質の観点から、耐クリープ性が不十分である。また、ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後のガスバリア性が不足する。また、本実施形態では、ガスバリア薄膜92がプラスチックボトル91の膨張を抑制するため、プラスチックボトル91として胴部95の肉厚t1を薄くした軽量化ボトルを用いても、優れた耐クリープ性を発揮することができる。ガスボリュームは、例えば、クエン酸重曹法で調整し、炭酸ガス圧測定器で測定することができる。
(数5)体積増加率[%]={(V2−V1)/V1}×100
本実施形態に係る炭酸飲料は、本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルに充填されたものである。炭酸飲料は、例えば、ビール、ソーダ水、コーラ飲料、果汁炭酸水、スパークリングワインである。本実施形態に係る炭酸飲料は、本実施形態に係る炭酸飲料用ボトルに充填されているため、例えば、夏季に高温で保管された場合に、内圧が上昇しても、炭酸ガスの含有量を保持でき、かつ、酸化劣化を防止して、商品価値の低下を防止できる。また、これらの飲料を、薄肉の軽量ボトルで提供することができる。
図3は、成膜装置の一形態を示す概略図である。図3は、プラスチックボトル11の内表面にガスバリア薄膜を形成する成膜装置100である。次に、図3を参照しながら、プラスチックボトル11の内表面にガスバリア薄膜を形成する方法について説明する。
(成膜装置へのプラスチックボトルの装着)
まず、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放する。反応室12には、上部チャンバ15を外した状態で、下部チャンバ13の上部開口部からプラスチックボトル11が差し込まれて、収容される。この後、位置決めされた上部チャンバ15が降下し、上部チャンバ15につけられた原料ガス供給管23とそれに固定された発熱体18がプラスチックボトルの口部21からプラスチックボトル11内に挿入される。そして、上部チャンバ15が下部チャンバ13にOリング14を介して当接することで、反応室12が密閉空間とされる。このとき、下部チャンバ13の内壁面とプラスチックボトル11の外壁面との間隔は、ほぼ均一に保たれており、かつ、プラスチックボトル11の内壁面と発熱体18との間の間隔も、ほぼ均一に保たれている。
(圧力調整工程)
次いでベント(不図示)を閉じたのち、排気ポンプ(不図示)を作動させ、真空バルブ8を開とすることにより、反応室12内の空気が排気される。このとき、プラスチックボトル11の内部空間のみならずプラスチックボトル11の外壁面と下部チャンバ13の内壁面との間の空間も排気されて、真空にされる。すなわち、反応室12全体が排気される。そして反応室12内が必要な圧力、例えば1.0〜100Paに到達するまで減圧することが好ましい。より好ましくは、1.4〜50Paである。1.0Pa未満では、排気時間がかかる場合がある。また、100Paを超えると、プラスチックボトル11内に不純物が多くなり、バリア性の高い容器を得ることができない場合がある。大気圧から、1.4〜50Paに到達するように減圧すると、適度な真空圧とともに、大気、装置及び容器に由来する適度な残留水蒸気圧を得ることができ、簡易にバリア性のある薄膜を形成できる。
(成膜工程‐発熱体への通電)
次に発熱体18を、例えば通電することで発熱させる。図3に示す装置では、発熱体18には、接続部26a,26b及び配線19を介して、ヒータ電源20が接続されている。ヒータ電源20によって発熱体18に電気を流すことで、発熱体18が発熱する。なお、本発明は、発熱体18の発熱方法に限定されない。発熱体18は、原料ガス供給管23の側面に沿って配置され、ガス吹き出し孔17xに設けた絶縁セラミックス部材35で支持される。発熱体18の材料は、例えば、Mo(モリブデン),W(タングステン),Zr(ジルコニウム),Ta(タンタル),V(バナジウム),Nb(ニオブ),Hf(ハフニウム)の群の中から選ばれる一つ又は二つ以上の金属元素を含む材料である。より好ましくは、Mo,W,Zr,Taの群の中から選ばれる一つ又は二つ以上の金属元素を含む材料である。発熱体18の発熱温度は、1550〜2400℃とする。より好ましくは、1700〜2100℃である。1550℃未満では、原料ガスを効率的に分解することができず、成膜に時間がかかり作業効率に劣る。2400℃を超えると、発熱温度が過剰となり、不経済である。また、発熱体18の材料によっては変形する場合がある。プラスチックボトルへの熱ダメージが懸念される。
発熱体18に用いる金属元素を含む材料は、純金属、合金又は金属の炭化物であることが好ましい。発熱体18として、Mo,W,Zr,Ta,V,Nb又はHfを主成分とする合金を用いる場合、当該合金では、主成分となる金属以外の成分の含有量が25質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、発熱体18として炭化タンタル(TaC)を用いる場合、炭化タンタル(TaC)中の炭素原子の比率は質量比で0質量%を超え6.2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3.2質量%以上6.2質量%以下である。発熱体18として炭化ハフニウム(HfC)を用いる場合、炭化ハフニウム(HfC)中の炭素原子の比率は質量比で0質量%を超え6.3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3.2質量%以上6.3質量%以下である。発熱体18として炭化タングステン(WC)を用いる場合、炭化タングステン(WC)中の炭素原子の比率は質量比で0質量%を超え6.1質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0質量%以上6.1質量%以下である。発熱体18として炭化モリブデン(MoC)を用いる場合、炭化モリブデン(MoC)中の炭素原子の比率は質量比で0質量%を超え5.9質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、2.9質量%以上5.9質量%以下である。
(成膜工程‐原料ガスの導入)
この後、原料ガス33として、例えば、一般式(化1)で表される有機シラン系化合物を供給する。化1において、Cnに相当する炭化水素構造における炭素間の結合は、単結合、二重結合又は三重結合のいずれでもよい。より好ましくは直鎖状の構造である。また、水素含有量の少ない二重結合又は三重結合を有することが好ましい。例えば、n=2のときは、Cnの態様例は、C‐C間が単結合である態様(C),C‐C間が二重結合である態様(C),C‐C間が三重結合である態様(C)である。n=3のときは、Cnの態様例は、C‐C間が単結合である態様(C),C‐C間が単結合及び二重結合である態様(C),C‐C間が単結合及び三重結合である態様(C)である。具体的には、一般式(化1)で表される有機シラン系化合物は、例えば、ビニルシラン(HSiC)、ジシラブタン(HSiCSiH)、ジシリルアセチレン(HSiCSiH)、2‐アミノエチルシラン(HSiCNH)である。この中で、ビニルシラン、ジシラブタン又はジシリルアセチレンであることが好ましい。
(化1)HSi‐Cn‐X
化1において、nは2又は3であり、XはSiH,H又はNHである。
原料ガス33は、ガス流量調整器24aで流量制御して供給する。さらに、必要に応じてキャリアガスをガス流量調整器24bで流量制御しながら、バルブ25cの手前で原料ガス33に混合する。キャリアガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスである。すると、原料ガス33は、ガス流量調整器24aで流量制御された状態で、又はキャリアガスによって流量が制御された状態で、所定の圧力に減圧されたプラスチックボトル11内において、原料ガス供給管23のガス吹き出し孔17xから発熱した発熱体18に向けて吹き出される。このように発熱体18を昇温完了後、原料ガス33の吹き付けを開始することが好ましい。成膜初期から、発熱体18によって十分に活性化された化学種34を生成させることができ、ガスバリア性の高い膜を得ることができる。原料ガス供給管23は、図3に示すように、原料ガス流路17の外側に冷却水流路27を配置した二重管構造としてもよい。
原料ガス33が、液体である場合には、バブリング法で供給することができる。バブリング法に用いるバブリングガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであり、窒素ガスがより好ましい。すなわち、原料タンク40a内の出発原料41aを、バブリングガスを用いてガス流量調整器24aで流量制御しながらバブリングすると、出発原料41aが気化してバブル中に取り込まれる。こうして、原料ガス33は、バブリングガスと混合した状態で供給される。さらに、キャリアガスをガス流量調整器24bで流量制御しながら、バルブ25cの手前で原料ガス33に混合する。すると、原料ガス33は、キャリアガスによって流量が制御された状態で、所定の圧力に減圧されたプラスチックボトル11内において、原料ガス供給管23のガス吹き出し孔17xから発熱した発熱体18に向けて吹き出される。ここで、バブリングガスの流量は、3〜50sccmであることが好ましく、より好ましくは、5〜15sccmである。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0〜80sccmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50sccmである。キャリアガスの流量によって、プラスチックボトル11内の圧力を20〜80Paに調整することができる。
(成膜工程‐成膜)
原料ガス33が発熱体18と接触すると化学種34が生成される。この化学種34が、プラスチックボトル11の内壁に到達することで、ガスバリア薄膜を堆積することになる。成膜工程において発熱体18を発熱させて原料ガスを発熱体18に吹き付ける時間(以降、成膜時間ということもある。)は、1.0〜20秒であることが好ましく、より好ましくは、1.0〜8.5秒である。成膜時の真空チャンバ内の圧力は、例えば1.0〜100Paに到達するまで減圧することが好ましい。より好ましくは、1.4〜50Paである。
(成膜の終了)
薄膜が所定の厚さに達したところで、原料ガス33の供給を止め、反応室12内を再度排気した後、図示していないリークガスを導入して、反応室12を大気圧にする。この後、上部チャンバ15を開けてプラスチックボトル11を取り出す。
ガスバリア薄膜をプラスチックボトルの内表面に形成する方法について説明してきたが、ガスバリア薄膜をプラスチックボトルの外表面に形成するには、例えば、特許文献4の図3に示す成膜装置を用いて行うことができる。また、成膜装置は、図3に示す装置に限定されず、例えば、特許文献2又は3に示すように種々の変形をすることができる。
原料ガスとして一般式(化1)で表される有機シラン系化合物を用いて、薄膜を形成する場合、プラズマCVD法を用いると、500mlのPET製のプラスチックボトルの酸素透過率を2分の1程度にまでしか抑制できず、実用性能として不十分である。プラズマCVD法によって、DLC又はSiOxからなる薄膜を形成すると、500mlのPET製のプラスチックボトルの酸素透過率を10分の1以下にできることが知られているが、炭酸飲料を充填した場合には、ボトルの膨張に伴いガスバリア性が低下していく。具体的には、プラズマCVD法で膜厚20nmのDLC膜又はSiOx膜を成膜した、500mlのPET製のプラスチックボトル(樹脂量22.8g)に、クリープ試験として4GV(ガスボリューム)の炭酸水を充填して、38℃の条件下で5日間保持する試験を実施したところ、クリープ試験後、炭酸水を排出して洗浄・乾燥したボトルの容量は、クリープ試験前のボトルの容積と比較して16〜21cmも増加した(成膜されていないPET製のプラスチックボトルの場合は、17〜26cm)。そして、クリープ試験後、炭酸水を排出して洗浄・乾燥したボトルでは、酸素透過率は1.5〜2.9倍に増加した。これは、PET製のプラスチックボトルの膨張及び膨張による薄膜のダメージが総合的に現れた結果である。これに対して、発熱体CVD法で、原料ガスとして上記の一般式(化1)で表される有機シラン系化合物を用いて、膜厚10nmの薄膜を成膜した、500mlのPET製のプラスチックボトル(樹脂量22.8g)について、同様にクリープ試験を実施すると、クリープ試験後、炭酸水を排出して洗浄・乾燥したボトルの容量は、クリープ試験前のボトルの容積と比較して13〜17cmしか増加しなかった。そして、クリープ試験後、炭酸水を排出して洗浄・乾燥したボトルでは、酸素透過率は1.2〜1.3倍の増加に留まる。この理由は定かではないが、発熱体CVD法で、原料ガスとして一般式(化1)で表される有機シラン系化合物を用いて形成した薄膜は、剛性が高く、ボトルの膨張を抑制し、かつ、ボトルの変形に対する追従性が良好で微細なクラックが入りにくいことに起因すると本発明者らは推測する。
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
(実施例1)
プラスチックボトルとして、500mlのPET製のプラスチックボトル(高さ206mm、胴外径64mm、口部外径24.9mm、口部内径21.6mm、1/2hにおける胴部の平均肉厚290μm及び樹脂量22.8g)の内表面に、図3に示す成膜装置を用いてガスバリア薄膜を形成した。プラスチックボトルを真空チャンバ6内に収容し、1.0Paに到達するまで減圧した。次いで、発熱体18として、φ0.5mm、長さ44cmのモリブデンワイヤーを2本用い、発熱体18に直流電流を24V印加し、2000℃に発熱させた。その後、ガス流量調整器24aから原料ガスとしてビニルシランを、バルブ開度を調整しながら供給し、プラスチックボトルの内表面にガスバリア薄膜を、膜厚が10nmになるまで堆積させた。なお、膜厚は、触針式段差計(型式:α‐ステップ、ケーエルエーテン社製)を用いて測定した値である。
(実施例2)
実施例1において、ガスバリア薄膜の膜厚を5nmに変更した以外は、実施例1に準じて炭酸飲料用ボトルを得た。
(実施例3)
実施例1において、発熱体18に印加する直流電流を調整して発熱温度を1550℃とした以外は、実施例1に準じて炭酸飲料用ボトルを得た。
(実施例4)
実施例1において、発熱体18に印加する直流電流を調整して発熱温度を2200℃とした以外は、実施例1に準じて炭酸飲料用ボトルを得た。
(実施例5)
実施例1において、原料ガスとして、ビニルシランに替えて、1,4‐ジシラブタンとした以外は、実施例1に準じて炭酸飲料用ボトルを得た。
(比較例1)
プラスチックボトルとして、実施例1で使用したプラスチックボトルと同種のものを用い、その内表面に、特許文献6の図1に示したプラズマCVD法による製造装置を用いて13.56MHzの高周波電圧を印加させてプラズマを発生させることによって、DLC薄膜を形成した。膜厚は、20nmであった。
(比較例2)
実施例1において、ガスバリア薄膜の膜厚を2nmに変更した以外は、実施例1に準じて炭酸飲料用ボトルを得た。
(比較例3)
プラスチックボトルとして、実施例1で使用したプラスチックボトルと同種のものを用い、その内表面に、図3に示す成膜装置を用いてガスバリア薄膜として、AlOx薄膜を形成した。プラスチックボトルを真空チャンバ6内に収容し、1.0Paに到達するまで減圧した。次いで、発熱体18として、φ0.5mm、長さ43cmのモリブデンワイヤーを2本用い、発熱体18に直流電流を8.2V印加し、1100℃に発熱させた。その後、ガス流量調整器24aから原料ガスとしてジメチルアルミイソプロポキシド及びガス流量調整器24bからキャリアガスとして窒素ガスを、バルブ開度を調整しながら、バブリング法で供給し、プラスチックボトルの内表面にAlOx薄膜を、膜厚が10nmになるまで堆積させた。
(比較例4)
比較例3において、ガス流量調整器24aを1本増設し、ガス流量調整器24aから原料ガスとしてジメチルアルミイソプロポキシド及びテトラキスジメチルアミノチタニウムを用いた以外は、比較例3に準じて薄膜を形成した。薄膜は、AlOx−TiOx薄膜であり、膜厚は10nmであった。
(比較例5)
実施例1において、原料ガスとして、ビニルシランに替えて、モノメチルシランとした以外は、実施例1に準じて薄膜を形成した。
(参考例1)
薄膜未形成の実施例1で使用したプラスチックボトルと同種のプラスチックボトルを参考例1とした。
実施例及び比較例の炭酸飲料用ボトルについて、次の方法で評価を行った。評価項目及び評価方法は次のとおりである。
(XPS分析)
実施例1〜5、比較例5で形成した薄膜の表面をXPS装置(型式:QUANTERASXM、PHI社製)を用いて分析した。薄膜表面の構成元素の比率を表1に示す。XPS分析の条件は、次の通りである。
X線源:単色化Al(1486.6ev)
検出領域:100μmφ
スパッタ条件:Ar+1.0kv
Figure 0006009243
(クリープ試験)
実施例及び比較例の炭酸飲料用ボトル並びに参考例1のプラスチックボトルに、それぞれガスボリュームを4に調整した炭酸水500mlを充填、炭酸飲料用ボトルで使用するプラスチック製耐圧キャップで密封して38℃で5日間保存した。ガスボリュームの調整は、クエン酸重曹法で行った。ガスボリュームの測定は、炭酸ガス圧測定器(型式GVA500A、京都電子社製)で行った。
(体積増加率)
まず、クリープ試験に先行して、実施例及び比較例で得られたボトルの満注容量を測定し、炭酸水を充填前の炭酸飲料用ボトルの満注容量(V1)とした。次に、クリープ試験を行った後、炭酸水を排出して、洗浄及び乾燥したボトルの満注容量(V2)を測定した。そして、体積増加率を数5から求めた。各実施例及び比較例において、サンプル数(n)は3個とした。結果を表2に示す。参考例のボトルについても同様に体積増加率を求めた。
Figure 0006009243
(寸法変化量)
実施例及び比較例で得られたボトルについて、クリープ試験前後の次に示す各寸法の変化量をノギスで測定した。クリープ試験前のボトルの寸法は、炭酸水を充填する前の空の状態で測定した。クリープ試験後のボトルの寸法は、炭酸水を排出して、洗浄及び乾燥した空の状態で測定した。寸法の測定箇所は、底面から141mm地点(以降、A点という。)の胴部の外径、底面から87mm地点(以降、B点という。)の胴部の外径、底面から30mm地点(以降、C点という。)の胴部の外径及び高さhの4箇所とした。参考例のボトルについても同様に寸法変化量を求めた。結果を表3に示す。
Figure 0006009243
(酸素透過度)
各炭酸飲料用ボトルについて、クリープ試験前後の酸素透過度をそれぞれ測定した。クリープ試験前のボトルの酸素透過度は、炭酸水を充填する前の空の状態で測定した。クリープ試験後のボトルの酸素透過度は、炭酸水を排出して、洗浄及び乾燥した空の状態で測定した。酸素透過度は、酸素透過度測定装置(型式:Oxtran 2/20、Modern Control社製)を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、測定開始から24時間コンディショニングし、測定開始から72時間経過後の値とした。各実施例及び比較例において、サンプル数(n)は3個とした。参考例のボトルについても同様に酸素透過度を求めた。結果を表4に示す。
(BIF)
各炭酸飲料用ボトルについて、BIFを数4から求めた。結果を表4に示す。
Figure 0006009243
表2より、実施例1〜5は、いずれもクリープ試験による体積増加率が3.40%未満であった。比較例1は、ガスバリア薄膜をプラズマCVD法で形成したため、体積増加率が3.40%以上となった。比較例2は、発熱体CVD法で、Si,O,C及びHを含有する薄膜を形成したが、膜厚が5nm未満であったため、体積増加率が3.40%以上となった。比較例3及び比較例4は、発熱体CVDで、膜厚が5nm以上の薄膜を形成したが、膜の種類がそれぞれAlOx薄膜又はAlOx−TiOx薄膜であったため、体積増加率が3.40%以上となった。比較例5は、Si含有層を有さないため、体積増加率が3.40%以上となった。
表3より、寸法変化量は、実施例、比較例及び参考例のいずれも、B点での変化量が顕著であった。そこで、B点での変化量に着目すると、実施例1〜5は、比較例1〜5及び参考例1と比較して、B点における胴膨れ変化量が小さかった。
表4より、実施例1〜5のクリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して1.0〜1.3倍の増加に留まった。これに対して、比較例1は、ガスバリア薄膜をプラズマCVD法で形成したため、クリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して2.6倍も増加した。比較例2では、クリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して1.1倍の増加に留まったが、クリープ前であってもBIFが1.1であり、薄膜形成による酸素透過度の向上がほとんどなかった。比較例3は、膜の種類がAlOx薄膜であったため、クリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して5.9〜10倍も増加した。比較例4は、膜の種類がAlOx−TiOx薄膜であったため、クリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して3.5〜4.6倍も増加した。比較例5は、Si含有層を有さないため、クリープ試験後の酸素透過度は、クリープ試験前の酸素透過度に対して1.0〜1.1倍の増加に留まったが、クリープ前であってもBIFが1.0〜1.1であり、薄膜形成による酸素透過度の向上がほとんどなかった。
以上より、ガスバリア薄膜が、(1)発熱体CVD法で形成された膜であること、(2)構成元素としてSi,C,O及びHを含有すること、及び(3)Si含有層を有すること、の少なくとも3つの要件を満たすことで、耐クリープ性に優れること及び炭酸飲料充填後のガスバリア性を保持することの両方を実現できることを確認できた。
6 真空チャンバ
8 真空バルブ
11 プラスチック容器
12 反応室
13 下部チャンバ
14 Oリング
15 上部チャンバ
16 ガス供給口
17 原料ガス流路
17x ガス吹き出し孔
18 発熱体
19 配線
20 ヒータ電源
21 プラスチック容器の口部
22 排気管
23 原料ガス供給管
24a,24b 流量調整器
25a,25b,25c バルブ
26a,26b 接続部
27 冷却水流路
33 原料ガス
34 化学種
35 絶縁セラミックス部材
40a,40b 原料タンク
41a,41b 出発原料
90 炭酸飲料用ボトル
91 プラスチックボトル
92 ガスバリア薄膜
100 成膜装置

Claims (4)

  1. プラスチックボトルと該プラスチックボトルの表面に設けたガスバリア薄膜とを備える炭酸飲料用ボトルにおいて、
    前記ガスバリア薄膜は、発熱体CVD膜であり、かつ、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有し、
    前記ガスバリア薄膜の膜厚が、5nm以上であり、
    ガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の体積増加率が、3.40%未満であることを特徴とする炭酸飲料用ボトル。
    (数1)Si含有率[%]={(Si含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
    数1において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
  2. 前記炭酸飲料用ボトルの高さをhとしたとき、1/2hにおける胴部の平均肉厚が0.33mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸飲料用ボトル。
  3. プラスチックボトルと該プラスチックボトルの表面に設けたガスバリア薄膜とを備える炭酸飲料用ボトルの製造方法において、
    発熱体CVD法によって、構成元素として珪素(Si),炭素(C),酸素(O)及び水素(H)を含有し、かつ、(数1)で表されるSi含有率が、40.1%以上であるSi含有層を有し、かつ、膜厚が5nm以上の前記ガスバリア薄膜を前記プラスチックボトルの表面に形成する形成工程を含み、
    前記ガスバリア薄膜を備える前記炭酸飲料用ボトルにガスボリュームを4に調整した炭酸水を充填、密封して38℃で5日間保存後の当該炭酸飲料用ボトルの体積増加率が、3.40%未満であることを特徴とする炭酸飲料用ボトルの製造方法。
    (数1)Si含有率[%]={(Si含有量[atomic%])/(Si,O及びCの合計含有量[atomic%])}×100
    数1において、Si,O又はCの含有量は、Si,O及びCの3元素の内訳における含有量である。
  4. 前記炭酸飲料用ボトルの高さをhとしたとき、1/2hにおける胴部の平均肉厚が0.33mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の炭酸飲料用ボトルの製造方法。
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