JP4172230B2 - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置等に用いる基板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス表示装置等に用いる基板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は膜の剥離、ひび割れ等がなく、水分の封止性が高い有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の電子デバイス用基板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置用の基板として、或いはCCDやCMOSセンサーのような電子デバイス用の基板として、熱安定性や透明性の高さからガラスが用いられてきた。
【0003】
近年、携帯電話等の携帯情報端末機器の普及に伴い、これら端末機器に設けられる表示装置や電子光学デバイスにおいては、割れやすく重いガラスよりも、可撓性が高く割れにくく、軽いプラスチック基板の採用が検討されている。
【0004】
しかしながら、プラスチック基板は透湿性を有しているため、特に有機エレクトロルミネッセンス表示装置のように、水分や酸素の存在で破壊され、性能が低下してしまう用途には適用が難しく、如何に封止するかが問題になっていた。
【0005】
この問題を解決すべく例えば、特許文献1においては、アクリレートを含むモノマーあるいはオリゴマーを蒸着し、重合し、無機酸化物を堆積し、更にアクリレートを含むモノマーあるいはオリゴマーを蒸着して重合することにより、水分の透過性の低い無機酸化物をアクリル系ポリマーと共に用い複合的な膜を形成し、水分の封止性の高い膜を得ようとしているが、検討の結果では、取扱中にポリマー膜と無機物膜が剥がれやすく、剥がれた部分から水分の透過を許してしまうという問題があることが判り、膜の剥離等がなく、水分の透過性の低い、表示装置用或いは電子デバイス用の基板として用いることのできる材料を得ようという試みは完全に成功しているとは言い難い。特に有機エレクトロルミネッセンス素子においては、水分の存在で欠陥が生じやすく問題になっていた。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第00/36665号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、膜の剥離、ひび割れ等がなく、水分の封止性が高い表示装置用或いは電子デバイス用の基板を得ることにあり、また、それを用いて長寿命な有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下(1)〜(12)の手段によって達成される。
(1)基材上の少なくとも一方に炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を2層以上設けた基板であって、第1の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜、第2の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜が、この順に基材上に形成されており、かつ、第1の金属酸化物層、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の炭素含有率が、第2の金属酸化物層、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の炭素含有率よりも大きいことを特徴とする基板。
(2)金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層の炭素含有率が原子数濃度で1〜40%であることを特徴とする前記(1)に記載の基板。
(3)炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)がこれよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)上に、順次積層され、4層以上としたことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の基板。
(4)金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層が大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の基板。
(5)金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜が全て、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の基板。
(6)炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)とこれよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)は、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、異なる周波数または電力を対向する電極間に供給し放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記(3)に記載の基板。
(7)100Hzを越えた周波数で且つ、0.1W/cm 以上の電力を供給し放電させることを特徴とする前記(5)または(6)に記載の基板。
(8)最表面に、炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の基板。
(9)前記基材がプラスチック基材であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の基板。
(10)前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、セルロースエステル、ノルボルネン系樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂を含むことを特徴とする前記(9)に記載の基板。
(11)前記基材の厚さが10μm以上1cm以下であることを特徴とする前記(1)〜(10)に記載の基板。
(12)前記(1)〜(11)に記載の基板を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
なお、以下1〜12は参考とされる手段である。
【0009】
1.基材上の少なくとも一方に炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を2層以上設けたことを特徴とする基板。
【0010】
2.金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層の炭素含有率が原子数濃度で1〜40%であることを特徴とする前記1に記載の基板。
【0011】
3.炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)とこれよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)を順次積層し4層以上としたことを特徴とする前記1または2に記載の基板。
【0012】
4.金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層が大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の基板。
【0013】
5.金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜が全て、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の基板。
【0014】
6.炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)とこれよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、異なる周波数または電力を対向する電極間に供給し放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする前記3に記載の基板。
【0015】
7.100Hzを越えた周波数で且つ、0.1W/cm2以上の電力を供給し放電させることを特徴とする前記5または6に記載の基板。
【0016】
8.最表面に、炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の基板。
【0017】
9.前記基材がプラスチック基材であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の基板。
【0018】
10.前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、セルロースエステル、ノルボルネン系樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂を含むことを特徴とする前記9に記載の基板。
【0019】
11.前記基材の厚さが10μm以上1cm以下であることを特徴とする前記1〜10に記載の基板。
【0020】
12.前記1〜11に記載の基板を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0021】
以下本発明を詳細に説明する。
近年、液晶或いは有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子光学デバイス等においては、割れやすく重いガラスよりも、フレキシブルで可撓性が高く割れにくく軽いためプラスチック基板の採用が検討されている。
【0022】
しかるに、通常生産されているプラスチック基板は、水分の透過性が比較的高く、又、その内部に水分を含んでおり、例えばこれを有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いた場合、その水分が徐々に表示装置内に拡散し、拡散した水分の影響により表示装置等の耐久性が低下するというような問題が発生する。
【0023】
これを避けるため、プラスチックシートにある加工を施して水分の透過性を低下させ又、含水率を下げることで、上記種々の電子デバイスに対応できる基板を得ようという試みがされている。例えば、プラスチックシート基材上に、水透過性の低い例えばシリカ、ガラス等の薄膜を形成させた複合材料を得る試み等がされている。しかしながら、薄い膜を形成しただけでは、膜の欠陥等が避けられず、水分の透過性を低下させ水蒸気を封止するにはある程度の厚み例えば100nm以上、好ましくは500nm以上というように厚みをもたせた膜とすることが必要である。
【0024】
しかしながら、これらシリカ或いは更に広く水分の透過性の低い無機材料例えば、金属酸化物或いは窒化物等を含有する(少なくとも膜の全構成成分中90質量%以上が金属酸化物或いは窒化物である)膜を基材上に上記の厚みをもたせ形成した場合、その硬さのために、基材を折り曲げたりできるというプラスチックシート自体の可撓性という特徴が薄れ、クラックを発生したり、剥離したりして、充分な水分の封止性が得られない。
【0025】
単一の膜を基材上に塗設するのではなく、複数の膜を基材上に順次設けて前記クラックや剥離を防止することもある程度効果があるが、工数がかかり製造コストが上がる、又、膜の物性自体の制御が必須となり、ただ積層すればよいというものではない。
【0026】
本発明においては、炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を2層以上有する基板により水分の透過性の低い折り曲げによる故障や剥離のない基板が得られることを見いだした。炭素含有率の差は0.3%以上が好ましい。特に構成させる層の1層に炭素含有率の高い、特に原子数濃度で炭素を1〜40%含有する金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する層が存在すると、その層が応力緩和層として機能し、特にクラックが発生しにくい、水分に対する封止性の高い基板が得られることがわかった。さらに、水分の封止性に優れる低炭素含有率の層と該炭素含有率の高い層をそれぞれ複数層設けることで、水の封止性を大きく向上しうることもわかった。
【0027】
本発明において炭素含有率を示す原子数濃度とは、後述する方法によって算出されるもので、以下に定義される。
【0028】
炭素原子の個数/全原子の個数×100=原子数濃度%(atomic concentration)
本発明において形成される金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜は、例えば、蒸着、スパッタリング,CVD法(化学蒸着)、プラズマCVD、大気圧プラズマCVD等のドライプロセスで形成されるのが好ましい。なかでもCVDが好ましく、プラズマCVDがより好ましく、特に大気圧あるいは大気圧近傍でのプラズマCVDによる方法、すなわち、有機金属化合物等を反応性ガスとして用い、対向する電極間でプラズマ状態とした反応性ガスに基材フィルムを曝すことで基材上に形成する大気圧プラズマCVD法が、緻密な膜を形成できることと、反応性ガスの選択、更にプラズマ発生条件によって、膜の物性等を制御できるため好ましい。ちなみに大気圧或いは大気圧近傍とは、大気圧に近い圧力をさし、20kPa〜110kPaの圧力下、好ましくは93kPa〜104kPaの圧力下である。
【0029】
本発明の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の製法はこれらに限定されないがゾルゲル法を含む塗布法を用いることも可能である。
【0030】
大気圧プラズマCVD法に用いる反応性ガスとしては有機金属化合物が好ましい。詳しくは後述するが、該有機金属化合物を反応性ガスとして用いて、プラズマ発生条件をコントロールすることにより金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の柔軟性を制御できる。即ち、プラズマの発生条件を制御し膜を形成することで、金属酸化物或いは窒化物を含有する膜中に炭素原子を含有させることが出来(炭素含有率を変化させることが出来)、炭素の含有率の値によって膜の柔軟性が変化する。
【0031】
真空プラズマ法、スパッタ法と比較して、大気圧プラズマCVD法では電極間に存在する反応性ガス由来のイオン等などの粒子が高い密度で存在することになるので、有機金属化合物由来の炭素が残りやすい。膜中の炭素は、膜に柔軟性を与え、耐傷性が向上することからわずかに含有することが必要であり、具体的には原子数濃度で1〜40%含有することが必要である。40%を越えて含有すると、膜の屈折率などの物性が経時的に変化することがあり好ましくない。
【0032】
この炭素含有率は、主に電源の周波数と供給電力に依存し、電極に印加する電圧の高周波の周波数が高いほど、及び供給電力が大きくなるほど少なくなる傾向があることがわかった。又、混合ガス中に水素ガスを注入すると炭素原子が消費されやすくなり、膜中の含有量は減る。一方、基板温度を下げることで炭素含有率は大きくなる。また、混合ガス中のテトラアルコキシシランをモノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランに置き換えた場合は後者の方が炭素含有率が大きくなる。
【0033】
従って、水蒸気の封止性を高めるために形成される炭素含有率の低い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜及び炭素含有率の高い柔軟性の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の組み合わせによる複合膜は、炭素含有率の高い柔軟性の高い金属酸化物或いは窒化物を含有する膜が応力緩和層として作用することにより、複合膜全体がひび割れを起こしたり層間が剥離するのを応力緩和によって防止する。これらの金属酸化物或いは窒化物を含有する膜は、この様に有機金属化合物を反応性ガスとして用いた大気圧プラズマCVD法によって形成するのが、条件により、すなわち、上記のように電源の周波数、供給電力等を制御し又、反応性ガスと共に水素ガスを混合することによって炭素の含有率を制御できるので好ましい。
【0034】
以下更に、反応性ガスとして有機金属化合物を用いた大気圧或いは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いた金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の形成について詳述する。
【0035】
本発明において樹脂基材としては、特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、有機無機ハイブリッド樹脂等をあげることが出来る。有機無機ハイブリッドとしては、例えば特開2000−22038に記載の有機樹脂とゾルゲル反応を組み合わせて得られるものが挙げられる。樹脂基材としては特にアートン(商品名JSR(株)製)或いはアペル(商品名三井化学(株)製)といったノルボルネン系(またはシクロオレフィン系)樹脂が好ましい。
【0036】
本発明において、樹脂基材の片面または両面に下引き層を有していてもよく、下引き層の具体例としてはゾル−ゲル法により形成されたシリカ層、ポリマーの塗布等により形成された有機層等があげられる。有機層としてはたとえば重合性基を有する有機材料膜に紫外線照射や加熱等の手段で後処理を施した膜を含む。
【0037】
本発明において前記金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜において、含有するとは、これを主成分、全構成成分中50質量%以上を金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物が占めるということである。
【0038】
金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物としては酸化珪素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、ITO(酸化インジウム錫)、アルミナ等の金属酸化物、窒化珪素等の金属窒化物、酸窒化珪素、酸窒化チタン等の金属酸窒化物等があげられる。
【0039】
珪素酸化物は透明性が高く、珪素窒化物は封止性が高く、酸窒化珪素は両方の性質を合わせもつ。ただし、製膜性や大気圧プラズマCVDのやりやすさから珪素酸化物の膜を複数有する層構成にするのが好ましい。
【0040】
本発明において、金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の主成分としては水分の透過性と光透過性および大気圧プラズマCVD適性から、とくに酸化珪素、及び酸化錫が好ましい。
【0041】
又、これらの金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を形成するための大気圧プラズマCVD法においてもちいられる反応性ガスとしては、例えば有機金属化合物、金属水素化合物を用いることができ、該化合物は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わないが、気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール,エタノール,n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0042】
有機金属化合物として好ましい酸化珪素膜を形成するためには腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、例えば、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化1】
Figure 0004172230
【0044】
式中、R21からR26
は、水素原子または1価の基を表す。n1は自然数を表す。
【0045】
一般式(1)で表される化合物の例としては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン等が挙げられる。
【0046】
【化2】
Figure 0004172230
【0047】
式中、R31およびR32は、水素原子または1価の基を表す。n2は自然数を表す。
【0048】
一般式(2)で表される化合物の例としては、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0049】
一般式(3)
(R41nSi(R424-n
式中、R41およびR42は、水素原子または1価の基を表す。nは、0から3までの整数を表す。
【0050】
一般式(3)で表される、有機珪素化合物の例としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
【化3】
Figure 0004172230
【0052】
式中、Aは、単結合あるいは2価の基を表す。R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、アミノ基またはシリル基を表す。R51およびR52、R54およびR55は縮合して環を形成していてもよい。
【0053】
一般式(4)において、Aとして好ましくは単結合あるいは、炭素数1〜3の2価の基である。R54およびR55は縮合して環を形成していてもよく、形成される環としては例えばピロール環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾール環等を挙げることができる。R51〜R53は好ましくは水素原子、メチル基またはアミノ基である。
【0054】
一般式(4)で表される化合物の例としては、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等があげられる。
【0055】
一般式(4)において、特に好ましい化合物は一般式(5)で表されるものである。
【0056】
【化4】
Figure 0004172230
【0057】
式中、R61からR66はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基または芳香族複素環基を表す。
【0058】
一般式(5)においてR61からR66は気化の容易性の観点から好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくはR61からR63のうちすくなくとも2つおよびR64からR66のうち少なくとも2つがメチル基のものである。
【0059】
一般式(5)で表される化合物の例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0060】
又、酸化錫を形成するためには例えば、テトラブチル錫、トリアルキル錫アシレート、ジアルキル錫ジアシレート、テトラアルコキシ錫、錫−β−ジケトンキレート等があげられ、代表例としてジブチル錫ジアセテートがあげられる。
【0061】
又、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で上記有機金属化合物と組み合わせて、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれかと珪素或いは、錫等の金属原子を含有する膜を得ることが出来る。また金属酸化物は混合して使用してもよい。例えば、TEOSとジブチル錫ジアセテートの混合物を反応性ガス源として用いることもできる。
【0062】
更に、膜中の炭素含有率を調整するために前記の如く混合ガス中に水素ガス等を混合してもよく、これらの反応性ガスに対して、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等、特に、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられるが、不活性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。不活性ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、不活性ガスの割合を90.0〜99.9%として反応性ガスを供給する。
【0063】
珪素(Si)源としては、上記のような有機珪素化合物だけでなく、無機珪素化合物を用いてもよい。
【0064】
又、酸素源として酸素ガス以外にオゾン、二酸化炭素、水(水蒸気)等を用いてもよいし、窒素源としてシラザンや窒素ガス以外に、アンモニア、窒素酸化物等を用いてもよい。
【0065】
また、これらにより形成される複数の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物の膜は、必ずしも同一である必要はなく、例えば、酸化珪素の膜と酸化錫の膜を組み合わせるという様に異なっていても良い。
【0066】
金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物の膜は、最低2層以上積層され4層以上積層されるのが、好ましい。金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物の膜の厚みの合計が1cm以下だとしなやかさを保ち折り曲げに対する耐性を保つ点で好ましい。
【0067】
本発明の膜の形成方法で使用されるプラズマ製膜装置について、図1〜図6に基づいて説明する。図中、符号Fは基材の一例としての長尺フィルムである。
【0068】
本発明において好ましく用いられる放電プラズマ処理は大気圧又は大気圧近傍で行われる。大気圧近傍とは、前述のように20kPa〜110kPaの圧力を表し、更に好ましくは93kPA〜104kPaである。
【0069】
図1は、プラズマ製膜装置に備えられたプラズマ放電処理室の1例を示す。図1のプラズマ放電処理室10において、フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻き回されながら搬送される。ロール電極25の周囲に固定されている複数の固定電極26はそれぞれ円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。
【0070】
プラズマ放電処理室10を構成する放電容器11はパイレックス(R)ガラス製の処理容器が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製のものを用いることも可能である。例えば、アルミニウム又はステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0071】
ロール電極25に巻き回された基材Fは、ニップローラ15、15、16で押圧され、ガイドローラ24で規制されて放電容器11内部に確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ニップローラ16、ガイドローラ27を介して次工程に搬送される。本発明では、真空系ではなくほぼ大気圧に近い圧力下で放電処理により製膜できることから、このような連続工程が可能となり、高い生産性をあげることができる。
【0072】
尚、仕切板14、14は前記ニップローラ15、15、16に近接して配置され基材Fに同伴する空気が放電容器11内に進入するのを抑制する。この同伴される空気は、放電容器11内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ15及び16により、それを達成することが可能である。
【0073】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガスは、給気口12から放電容器11に導入され、処理後のガスは排気口13から排気される。
【0074】
ロール電極25はアース電極であり、印加電極である複数の固定電極26との間で放電させ、当該電極間に前述したような反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極25に巻き回しされた長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに曝すことによって、反応性ガス由来の膜を形成する。
【0075】
前記電極間には、高いプラズマ密度を得て製膜速度を大きくし、更に炭素含有率を所定割合内に制御するため、高周波電圧で、ある程度大きな電力を供給することが好ましい。具体的には、100Hz以上150MHz以下の高周波の電圧を印加することが好ましく、100kHz以上であればより一層好ましい。又、電極間に供給する電力の下限値は、0.1W/cm2以上50W/cm2以下であることが好ましく、0.5W/cm2以上であればより一層好ましい。
【0076】
尚、電極における電圧の印加面積(cm2)は放電が起こる範囲の面積のことである。
【0077】
又、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であってもよいが、製膜速度が大きくなることから、サイン波であることが好ましい。
【0078】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも固定電極26とロール電極25のいずれか一方に誘電体を被覆すること、好ましくは、両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、非誘電率が6〜45の無機物であることが好ましい。
【0079】
電極25、26の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から、0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。この電極間の距離は、電極周囲の誘電体の厚さ、印加電圧の大きさを考慮して決定される。
【0080】
又、基材を電極間に載置或いは電極間を搬送してプラズマに曝す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B 0601)を10μm以下にすることで誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ放電状態を安定化出来る。更に、誘電体の熱収縮差や残留応力による歪みやひび割れをなくし、且つ、ノンポーラスな高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができる。
【0081】
又、金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、前記のように、誘電体を研磨仕上げすることや、電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であるので、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングすることが好ましい。特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることがよく、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密且つひび割れ等の発生しない良好な電極ができる。
【0082】
又、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10vol%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことがあげられる。ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化がよく、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
【0083】
図2(a)及び図2(b)はロール電極25の一例としてロール電極25c、25Cを示したものである。
【0084】
アース電極であるロール電極25cは、図2(a)に示すように、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体を1mm被覆し、ロール径を被覆後200φとなるように製作し、アースに接地する。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、更に好ましく用いられる。
【0085】
或いは、図2(b)に示すロール電極25Cの様に、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせから構成してもよい。ライニング材としては、珪酸塩系ガラス、硼酸塩系ガラス、リ酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩系ガラス、バナジン酸塩ガラスが好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工しやすいので、更に好ましく用いられる。
【0086】
金属等の導電性母材25a、25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
【0087】
又、尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材は冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0088】
更に、ロール電極25c、25C(ロール電極25も同様)は、図示しないドライブ機構により軸部25d、25Dを中心として回転駆動される様に構成されている。
【0089】
図3(a)には固定電極26の概略斜視図を示した。又、固定電極は、円筒形状に限らず、図3(b)の固定電極36の様に角柱型でもよい。円柱型の電極26に比べて、角柱型の電極は放電範囲を広げる効果があるので、形成する膜の性質などに応じて好ましく用いられる。
【0090】
固定電極26、36いずれであっても上記記載のロール電極25c、ロール電極25Cと同様な構造を有する。すなわち、中空のステンレスパイプ26a、36aの周囲を、ロール電極25(25c、25C)同様に、誘電体26b、36bで被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。誘電体26b、36bは、セラミック被覆処理誘電体及びライニング処理誘電体のいずれでもよい。
【0091】
尚、固定電極は誘電体の被覆後12φ又は15φとなるように製作され、当該電極の数は、例えば上記ロール電極の円周上に沿って14本設置している。
【0092】
図4には、図3(b)の角型の固定電極36をロール電極25の周りに配設したプラズマ放電処理室30を示した。図4において、図1と同じ部材については同符号を伏して説明を省略する。
【0093】
図5には、図4のプラズマ放電処理室30が設けられたプラズマ製膜装置50を示した。図5において、プラズマ放電処理室30の他に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット55等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット55は、冷却剤の入ったタンク57とポンプ56とからなる。冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0094】
図5、図4のプラズマ放電処理室30内の電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0095】
プラズマ放電処理室30内にロール電極25、固定電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口12より供給し、放電容器11内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し不要分については排気口より排気する。
【0096】
次に電源41により固定電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材FFからロール54、54、54を介して基材が供給され、ガイドロール24を介して、プラズマ放電処理室30内の電極間をロール電極25に片面接触した状態で搬送される。このとき放電プラズマにより基材Fの表面が放電処理され、その後にガイドロール27を介して次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極25に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0097】
又、放電時の高温による悪影響を抑制するため、基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満、更に好ましくは常温〜100℃内で抑えられるように必要に応じて電極冷却ユニット55で冷却する。
【0098】
又、図6は、本発明の膜の形成方法で用いることができるプラズマ製膜装置60であり、電極間に載置できない様な性状、例えば厚みのある基材61上に膜を形成する場合に、予めプラズマ状態にした反応性ガスを基材上に噴射して薄膜を形成するためのものである。
【0099】
図6のプラズマ製膜装置において、35aは誘電体、35bは金属母材、65は電源である。金属母材35bに誘電体35aを被覆したスリット状の放電空間に、上部から不活性ガス及び反応性ガスからなる混合ガスを導入し、電源65により高周波電圧を印加することにより反応性ガスをプラズマ状態とし、該プラズマ状態の反応性ガスを基材61上に噴射することにより基材61表面に膜を形成する。
【0100】
図5の電源41、図6の電源65などの本発明の膜の形成に用いるプラズマ製膜装置の電源としては、特に限定はないが、ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モードで使用100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来る。
【0101】
この様なプラズマ製膜装置を用い、大気圧プラズマCVD法により、本発明に係わる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を形成できる。
【0102】
本発明に係わる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の膜厚は、プラズマ処理の時間を増やしたり、処理回数を重ねること、或いは、混合ガス中の有機金属化合物の分圧を高めることによって調整することができる。
【0103】
大気圧プラズマCVD法により、炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を2層以上設ける方法としては、例えば図1のプラズマ放電処理室の中を基板を搬送させ金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を設け、巻き取った後、さらに上記プラズマ放電処理装置の条件を替えて製膜することを必要な回数だけ繰り返す方法、図1のプラズマ放電処理室を複数台用意し、基板を搬送させそれぞれを通過するごとに1層ずつ複数層を設ける方法、基板を複数台のプラズマ放電処理装置に通し、基板の先頭と後尾をつなげ、搬送することにより各プラズマ放電処理装置で層を設けることを複数回行う方法等が挙げられる。
【0104】
本発明の好ましい態様として、基材上の少なくとも一方に炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)とAよりも炭素含有率が高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)を順次積層し、4層以上とした基板があげられる。
【0105】
本発明の好ましい態様において、樹脂基材上に基材側から炭素含有率が原子数濃度で1〜40%の金属酸化物または窒化物を含有する柔軟性の高い層、炭素含有率が原子数濃度で1%未満の実質的に水の透過を防ぎ、水の封止性を付与する層を順次積層することで、水に対する封止性を付与する層と、柔軟性が高く樹脂基材と該水に対する封止性の高い層との接着(密着)性を向上させる層を有し、また、とくに最外層が炭素含有率の低い、それ故硬度が高い層をであることによって、摩擦や、ブラッシングに対する耐性に優れ、傷を受けにくいという優れた特性を併せもつ基板が得られる。
【0106】
図7に本発明に係わる基板の好ましい1例を示す。
図7は、100で表される基材、例えばポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムからなる基材100上に前記炭素含有率が原子数濃度で1〜40%の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する柔軟性の高い層101、さらに該層上に炭素含有率が原子数濃度で1%未満の実質的に水の透過を防ぎ、水の封止性を付与する層102を積層した例を示している。
【0107】
図8は更に、該層を前記の順序で更に2層積層した全4層構成の積層膜を有する本発明に係わる基板の例である。また、更に4層以上の膜を積層してもよい。
【0108】
本発明に係わる基板は、樹脂基材の特徴である可撓性を維持しつつ、金属酸化物を含有する膜が有する水の封止性により、樹脂基材中の水分や樹脂基材を透過して浸透する水蒸気等の水分を封止できるため、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子自体をこれらの基板に形成し、且つ、水の透過性の低いフィルム等のやはり可撓性の材料、好ましくは同じ基板で封止して、フレキシブルな表示装置として形成することで、湿気に対し敏感な有機エレクトロルミネッセンス素子が封止材料や基板等に含有される水分により徐々に特性が劣化してしまうという問題を、封止された内部空間を低湿度に保つことにより回避でき、有機エレクトロルミネッセンス素子としての寿命を非常に高めることが出来る。
【0109】
次いで、本発明にかかわる有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
【0110】
本発明において有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子とも表記する)は、陽極と陰極の一対の電極の間に発光層を挾持する構造をとる。本明細書でいう発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指す。具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層のことを指す。本発明に係わる有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層を有していてもよく、陰極と陽極で狭持された構造をとる。また、保護層を有していても良い。
【0111】
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極などの構造がある。
【0112】
さらに、電子注入層と陰極との間に、陰極バッファー層(例えば、フッ化リチウム、等)を挿入しても良い。また、陽極と正孔注入層との間に、陽極バッファー層(例えば、銅フタロシアニン、等)を挿入しても良い。
【0113】
上記電子輸送層は、ホールブロック層ともよばれ、とくに発光層にドーパントとしてオルトメタル錯体を用いるいわゆる「燐光発光素子」においては(v)の様にホールブロック層を有することが好ましく、その例としてWO00/70655、特開2001−313178があげられる。
【0114】
上記発光層は、発光層自体に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層等を設けてもよい。即ち、発光層に(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能、のうちの少なくとも1つ以上の機能を有してもよく、この場合は、発光層とは別に正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層の少なくとも1つ以上は設ける必要がなくなることになる。また、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層等に発光する化合物を含有させることで、発光層としての機能を付与させてもよい。尚、発光層は、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。
【0115】
この発光層に用いられる発光材料の種類については特に制限はなく、従来有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17頁から26頁に記載の化合物が挙げられる。
【0116】
発光材料は発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていても良く、正孔注入材料や電子注入材料の殆どが発光材料としても使用できる。
【0117】
発光材料はp−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0118】
また、発光層にはドーパント(ゲスト物質)を併用してもよく、EL素子のドーパントとして使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0119】
ドーパントの具体例としては、例えばキナクリドン、DCM、クマリン誘導体、ローダミン、ルブレン、デカシクレン、ピラゾリン誘導体、スクアリリウム誘導体、ユーロピウム錯体等がその代表例として挙げられる。また、イリジウム錯体(例えば特開2001−247859号明細書に挙げられるもの、あるいはWO0070655号明細書16〜18ページに挙げられるような式で表される例えばトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等)やオスミウム錯体、あるいは2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金錯体のような白金錯体もドーパントとして挙げられる。
【0120】
上記材料を用いて発光層を形成するには、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、LB法などの公知の方法により薄膜化することにより形成する方法があるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0121】
また、この発光層は、特開昭57−51781号に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0122】
正孔注入層の材料である正孔注入材料は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。この正孔注入材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。正孔注入材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0123】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0124】
また、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。この正孔注入層は、上記正孔注入材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔注入層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0125】
電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。この電子注入層に用いられる材料(以下、電子注入材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子注入材料として用いうることが分かった。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子注入材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子注入材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も電子注入材料として用いることができるし、正孔注入層と同様にn型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
【0126】
この電子注入層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。電子注入層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子注入層は、これらの電子注入材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0127】
さらに、陽極と発光層または正孔注入層の間、および、陰極4と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0128】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0129】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0130】
陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0131】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0132】
さらに上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号、同11−204359号、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
【0133】
バッファー層は、陰極バッファー層または陽極バッファー層の少なくとも何れか1つの層内に本発明の化合物の少なくとも1種が存在して、発光層として機能してもよい。
【0134】
有機EL素子における陽極は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0135】
上記陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0136】
有機EL層の陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光効率が向上し好都合である。
【0137】
以下に、本発明の前記金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する複数の膜を有する基板上に形成された本発明に係わる陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を封止する好適な例を説明する。
【0138】
図9は本発明に係わる基板を用いた本発明のEL素子積層体の一例を示す断面図である。このEL素子積層体は透明な基板1および対向する基板5を備えており、基板1は、大気圧プラズマ放電処理によって、上記のポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルケトン等の樹脂からなるプラスチックシート基材100上に形成した、金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する複数の膜を有する図8に示した本発明の基板である。
【0139】
基板1上に有機EL層が形成されており、先ず、該基板1の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜からなる層101,102を有する側に、複数のアノード(陽極)2が互いに平行して設けられる。所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陽極(アノード)2を作製する。有機EL素子における陽極2としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物、具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、インジウムジンクオキシド(IZO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が用いられる。
【0140】
次に、この上に有機EL層3を形成する。即ち、ここで図示していないが、正孔注入層、発光層、電子注入層等の前記各材料からなる薄膜を形成させる。
【0141】
次いで、上記有機EL層3上には、前述のような物質から選ばれる陰極(カソード)4が、蒸着やスパッタリングなどの方法により薄膜を形成させることにより作製される。なお、前述の如く、発光を透過させるためには、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光効率が向上し好都合である。
【0142】
有機EL層3の各層の作製方法としては、任意の方法を選択できるが、前記の如くスピンコート法、キャスト法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0143】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質、(例えばアルミニウムからなる)薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。
【0144】
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧3〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0145】
又、カソード電極4を含む有機EL層3の表面全体には、保護膜を設けてもよい。無機保護膜は、保護膜の形成方法に特に制限はないが、例えば、CeO2中にSiO2を分散したものからなっている。無機保護膜の形成法は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法等によって行い、膜厚は1〜100000Å(0.1nm〜10000nm)好ましくは50nm〜10000nm程度が一般的である。この場合、無機保護膜の形成は、カソード電極4を形成した後、大気中に戻すことなく真空中で連続して形成するか、或いは窒素ガスまたは不活性ガス雰囲気中での搬送が可能な搬送系で搬送して再度真空中において形成することができる。
【0146】
カソード電極4を含む有機EL層3の上面には、対向基板5を設けても設けなくてもよいが設ける場合は、やはり金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜をポリエチレンテレフタレート等のプラスチックシート上に形成した本発明に係わる前記図8で示される基板が重ねられ、封止される。
【0147】
封止は、対向基板5の下面(透明な基板1と向き合う面)の周辺部に塗布法や転写法等によって設けられたほぼ枠状のシール材6を介して対向基板と透明な基板Aとが互いに貼り合わされることで行われる。シール材6は、熱硬化型エポキシ系樹脂、紫外線硬化型エポキシ系樹脂、または反応開始剤をマイクロカプセル化して加圧することにより反応が開始する常温硬化型エポキシ系樹脂等からなっている。この場合、シール材6の所定の箇所には空気逃げ用開口部等を設け(図省略)封止を完全にする。空気逃げ用開口部は、真空装置内において減圧雰囲気(真空度1.33×10-2MPa以下が好ましい)或いは窒素ガスまたは不活性ガス雰囲気中において、上記硬化型エポキシ系樹脂のいずれか、或いは紫外線硬化型樹脂等で封止される。
【0148】
この場合のエポキシ系樹脂は、ビスフェノールA形、ビスフェノールF形、ビスフェノールAD形、ビスフェノールS形、キシレノール形、フェノールノボラック形、クレゾールノボラック形、多官能形、テトラフェニロールメタン形、ポリエチレングリコール形、ポリプロピレングリコール形、ヘキサンジオール形、トリメチロールプロパン形、プロピレンオキサイドビスフェノールA形、水添ビスフェノールA形、またはこれらの混合物を主剤としたものである。シール材6を転写法により形成する場合には、フィルム化されたものが好ましい。
【0149】
該対向基板5については、ガラス、樹脂、セラミック、金属、金属化合物、またはこれらの複合体等で形成してもよい。JIS Z−0208に準拠した試験において、その厚さが1μm以上で水蒸気透過率が1g/m2・1atm・24hr(25℃)以下であることが望ましく、これらの基材から選択してもよい。
【0150】
又、本発明において、素子内に水分を吸収する、或いは水分と反応する材料(例えば酸化バリウム等)を上記基板に層形成して封入することもできる。
【0151】
以上のように構成された有機EL素子では、透明な基板1と対向する基板5とを枠状のシール材6を介して互いに貼り合わせているので、基板5およびシール材6によって基板1上に設けられた有機EL素子、カソード電極4等を封止することができ、内部が低湿度の状態で素子を封止出来ると同時に、基板を通しての水分の浸透が抑えられ、有機EL表示装置の耐湿性がより一層向上し、ダークスポットの発生、成長をより一層抑制することができる。
【0152】
尚、本発明の基材及び上記有機EL素子による前記構成は本発明の1つの態様であり、有機EL素子構成及び本発明の基材を含めた構成はこれらに限られるものではない。
【0153】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0154】
実施例1
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、基材上に酸化珪素膜を形成し、表1に示した各基板を、以下に示す方法により作製した。大気圧プラズマCVDによる酸化珪素膜の形成は、それぞれ図4に示すプラズマ放電処理室30を用い、プラズマ発生には、日本電子(株)製高周波電源JRF−10000を電源に用いて行い、
各基板の作製において、炭素含有率が原子数濃度で3%の酸化珪素膜形成には、反応性ガスとして以下の組成のガスを用い、
不活性ガス:アルゴン 98.25体積%
反応性ガス1:水素ガス 1.5体積%
反応性ガス2:テトラエトキシシラン蒸気(アルゴンガスにてバブリング)0.25体積%
13.56kHz、1W/cm2の条件(条件A)で、
又、炭素含有率が原子数濃度で0.01%の酸化珪素膜の形成には、同じく日本電子(株)製高周波電源JRF−10000を電源として、前記組成のガスをもちい、13.56kHz、10W/cm2の条件(条件B)で形成した。
【0155】
(基板A)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、酸化珪素をスパッタリングターゲットとするRFスパッタリング法(周波数13.56MHz)を用いて酸化珪素膜を膜厚800nmを示すまで成膜し比較の基板Aを得た。
【0156】
尚、RFスパッタリング法により形成された酸化珪素膜の炭素含有率は後述する方法の検出限界未満であった。
【0157】
(基板B)
同じく、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、大気圧プラズマCVDにより、前記条件Aをもちいて酸化珪素の膜を厚みが800nmになるまで形成し基板Bとした。
【0158】
(基板C)
同じく、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、前記条件Bによって、酸化珪素の膜を膜厚が800nmを示すまで形成し基板Cを得た。
【0159】
(基板D)
同じく、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、前記条件Aによって、酸化珪素の膜を200nmの厚みで形成したのち、今度は条件Bにより、同じく酸化珪素の膜をやはり200nmの厚みで形成した。更に、条件Aにより、また条件Bによりそれぞれ酸化珪素の膜をこの順にそれぞれ200nmの厚みで積層して計4層の酸化珪素膜の積層膜を有するポリエチレンテレフタレートフィルムである基板Dを得た。
【0160】
(基板E)
基板4において条件Aで形成した酸化珪素膜の厚みを250nmとした以外は同様に4層の酸化珪素膜を有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に、更に、条件Aで250nmの厚みの酸化珪素膜、次いで、条件Bで200nmの厚みの酸化珪素膜を形成して、炭素含有率の異なる膜を交互に合計6層積層した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基板Eを作製した。
【0161】
(基板F)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、WO00/36665に記載された方法に従って真空蒸着装置内に導入ノズルからポリメチルメタクリレートオリゴマーを導入して、これを蒸着したのち、真空蒸着装置から取り出し、乾燥窒素気流下で紫外線を照射して重合させ、PMMA膜を形成した。PMMA膜の厚みは200nmに調整した。この膜上に、酸化珪素をスパッタリングターゲットとするRFスパッタリング法(周波数13.56MHz)を用いて酸化珪素膜を膜厚200nmまで成膜した。更に、上記PMMA膜、酸化珪素膜をそれぞれ200nmの厚みで形成して全4層の積層膜をポリエチレンテレフタレートフィルム上に有する基板Fを得た。
【0162】
上記の各基板の酸化珪素膜、及び酸化錫膜の炭素含有率は、それぞれ膜を形成した段階でそれぞれ、動的2次イオン質量分析法(以下、ダイナミックSIMSということもある)を用いて測定した。動的2次イオン質量分析法測定(ダイナミックSIMS)の詳細は表面科学会編実用表面分析二次イオン質量分析(2001年、丸善)を参照すればよく、ダイナミックSIMSにより具体的には以下の条件にて測定を行った。
装置:Physical Electronics社製ADEPT1010あるいは6300型2次イオン質量分析装置
一次イオン:Cs
一次イオンエネルギー:5.0keV
一次イオン電流:200nA
一次イオン照射面積:600μm角
二次イオン取り込み割合:25%
二次イオン極性:Negative
検出二次イオン種:C-
上記条件にて酸化珪素膜中の炭素濃度を測定する。実際にはまず、基準となる酸化珪素膜中の炭素濃度をラザフォード後方散乱分光法により求め、この基準品のダイナミックSIMS測定を行い、検出される炭素イオンの強度を基に相対感度係数を決定し、ついで実際に用いる酸化珪素膜についてダイナミックSIMS測定を行い、その測定から得られた信号強度と先に求めた相対感度係数を用いて、試料中の炭素濃度を算出する。尚、本発明における炭素濃度は酸化珪素膜の厚さ方向にわたって、炭素濃度をもとめる、いわゆるデプスプロファイルを行い、酸化珪素膜の15〜85%深さの炭素濃度の平均を炭素濃度と規定した。
【0163】
この様にして炭素含有率を原子数濃度%で求める。
即ち、炭素原子の個数/全原子の個数×100=原子数濃度%(atomic concentration(%))
基板A〜Fについて以下の試験を行った。
【0164】
《碁盤目試験》
JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90度の切り込みを1mm間隔で縦横に11本ずつ入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜の剥がされた面積の割合を以下のランクで評価した。
【0165】
A:全く剥がされなかった。
B:剥離された面積割合が10%未満であった。
【0166】
C:剥離された面積割合が10%以上であった。
《耐傷性の測定》
1×1cmの面にスチールウールを貼り付けたプローブを、各基板の薄膜面に250gの荷重をかけて押し付け10回往復運動させた後、スリ傷のはいる本数を測定した。
【0167】
基板A〜Fの層構成およびそれぞれについての評価結果を表1に示す。
【0168】
【表1】
Figure 0004172230
【0169】
比較の基板である基板Fにおいて膜付きが悪いことが明らかである。また、特に大気圧下でのプラズマCVD法で作製した低炭素含有率の酸化珪素膜を最表面に有する基板は、耐傷性が特に良好な結果であった。
【0170】
また、基板AおよびCはいずれも基材フィルムとして折り曲げに弱く45度に折り曲げる試験を繰り返すと他の基板よりもいずれもクラックが入りやすく目視によっても明らかに観察された。
【0171】
実施例2
有機EL表示装置OLED−6(比較)の作製
図10に作製した有機EL表示装置の構成を断面図で示す。先ず、透明な基板1として前記で作製した基板Fを用いて、酸化珪素膜を有する面側にスパッタリングターゲットとして酸化インジウムと酸化亜鉛との混合物(Inの原子比In/(In+Zn)=0.80)からなる焼結体をもちい、DCマグネトロンスパッタリング法にて透明導電膜であるIZO(Indium Zinc Oxide)膜を形成した。即ち、スパッタリング装置の真空装置内を1×10-3Pa以下にまで減圧し、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比で1000:2.8の混合ガスを真空装置内が1×10-1Paになるまで真空装置内に導入した後、ターゲット印加電圧420V、基板温度60℃でDCマグネトロン法にて透明導電膜であるIZO膜を厚さ250nm形成した。このIZO膜に、パターニングを行いアノード(陽極)2とした後、この透明導電膜を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0172】
この透明導電膜上に方形穴あきマスクを介して真空蒸着法により、図10における有機EL層3として、α−NPD層(膜厚25nm)、CBPとIr(ppy)3の蒸着速度の比が100:6の共蒸着層(膜厚35nm)、BC層(膜厚10nm)、Alq3層(膜厚40nm)、フッ化リチウム層(膜厚0.5nm)を順次積層した(図10には詳細に示していない)、更に別のパターンが形成されたマスクを介して、膜厚100nmのアルミニウムからなるカソード(陰極)4を形成した。
【0173】
【化5】
Figure 0004172230
【0174】
このように得られた積層体に、乾燥窒素気流下、図10の基板5として前記と同じ基板Fを酸化珪素膜側が合わさるように密着させ、周囲を光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)によって封止し、有機EL表示装置OLED−6を得た。尚、図10では示していないが透明電極及びアルミニウム陰極はそれぞれ端子として取り出せるようにした。
【0175】
同様の方法で、前記基板Fにかえて基板A、B、Cをそれぞれもちいて同じく比較の有機EL素子OLED−1、2および3を、また、基板D、Eをそれぞれ用いて本発明の有機EL素子OLED−4及び5を作製した。
【0176】
これらの有機EL素子の発光部について、以下の評価を行った。
《評価項目1》
封入直後に50倍の拡大写真を撮影した。80℃、300時間保存後50倍の拡大写真を撮影し観察されたダークスポットの面積増加率を評価した。
【0177】
《評価項目2》
封入直後に50倍の拡大写真を撮影した。素子を45°に折り曲げて元に戻す折り曲げ試験を1000回繰り返した後に、評価項目1と同様の保存試験を行いダークスポット面積の増加率を評価した。
【0178】
面積増加率は評価項目1及び2とも以下の基準で評価した。
ダークスポットの増加率がOLED−6を越える場合 ××
ダークスポットの増加率がOLED−6の80%以上100%以下 ×
ダークスポットの増加率がOLED−6の50%以上80%未満 △
ダークスポットの増加率がOLED−6の30%以上50%未満 △○
ダークスポットの増加率がOLED−6の15%以上30%未満 ○
ダークスポットの増加率がOLED−6の15%未満 ◎
【0179】
【表2】
Figure 0004172230
【0180】
これらの結果から、本発明の基板を用いて作製した有機EL表示装置OLED−4及び5は比較の基板を用いて作製した表示装置OLED−1、2、3及び6に比べて、ダークスポットの面積増加率が小さいことが明らかである。酸化珪素膜を厚く形成した比較の有機EL表示装置は、評価項目2において特にダークスポットの面積増加率が大きい。又、評価項目1においては、大気圧プラズマCVD法で形成したOLED−3、4、5の方が、スパッタリング法で厚い膜を水分のブロック層として形成したOLED−1よりもダークスポットの増加率が少なく、素子寿命が長いことがわかる。これは大気圧プラズマCVD法を用いて作製された膜の方がスパッタリング法により作製された膜よりも緻密に形成されているためと考えられる。
【0181】
本実施例には、素子内に水分を吸着或いは水分と反応する材料(例えば酸化バリウム)を封入しなかったが、これらの材料を素子内に封入することを妨げるものではない。
【0182】
【発明の効果】
水分の封止性が高く膜の剥離、ひび割れ等がなく、表示装置用或いは電子デバイス用の基板として有用性の高い基板及びそれを用いた長寿命な素子を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ放電処理室の一例を示す図である。
【図2】ロール電極の一例を示す図である。
【図3】固定電極の概略斜視図である。
【図4】角型の固定電極をロール電極25の周りに配設したプラズマ放電処理室を示す図である。
【図5】プラズマ放電処理室が設けられたプラズマ製膜装置を示す図である。
【図6】プラズマ製膜装置の別の一例を示す図である。
【図7】本発明の基板の構成の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の基板の構成の別の一例を示す断面図である。
【図9】本発明のEL素子積層体の一例を示す断面図である。
【図10】作製した有機EL表示装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1、5 基板
2 アノード
3 有機EL層
4 カソード
6 シール材
10、30 プラズマ放電処理室
25、25c、25C ロール電極
26、26c、26C、36、36c、36C 電極
25a、25A、26a、36a 金属等の導電性母材
25b、26b、36b セラミック被覆処理誘電体
25B ライニング処理誘電体
41 電源
51 ガス発生装置
12 給気口
13 排気口
55 電極冷却ユニット
FF 元巻き基材
15、16 ニップローラ
24、27 ガイドローラ
F 基材

Claims (12)

  1. 基材上の少なくとも一方に炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を2層以上設けた基板であって、第1の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜、第2の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜が、この順に基材上に形成されており、かつ、第1の金属酸化物層、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の炭素含有率が、第2の金属酸化物層、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の炭素含有率よりも大きいことを特徴とする基板。
  2. 金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層の炭素含有率が原子数濃度で1〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の基板。
  3. 炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)これよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)上に、順次積層され、4層以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載の基板。
  4. 金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜の少なくとも1層が大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板。
  5. 金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜が全て、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板。
  6. 炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(A)とこれよりも炭素含有率の高い金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜(B)は、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、異なる周波数または電力を対向する電極間に供給し放電させることでプラズマ状態とした反応性ガスに基材表面を曝すことにより形成されたことを特徴とする請求項3に記載の基板。
  7. 100Hzを越えた周波数で且つ、0.1W/cm以上の電力を供給し放電させることを特徴とする請求項5または6に記載の基板。
  8. 最表面に、炭素含有率が原子数濃度で1%未満の金属酸化物、金属酸窒化物もしくは金属窒化物を含有する膜を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板。
  9. 前記基材がプラスチック基材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の基板。
  10. 前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、セルロースエステル、ノルボルネン系樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂を含むことを特徴とする請求項9に記載の基板。
  11. 前記基材の厚さが10μm以上1cm以下であることを特徴とする請求項1〜10に記載の基板。
  12. 請求項1〜11に記載の基板を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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