JP4797318B2 - 透明導電膜積層体及びその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略する)、電子ペーパー、タッチパネルや太陽電池等の各種エレクトロニクス素子に好適に用いられる透明導電膜積層体とその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、透明導電膜は液晶表示素子、有機EL素子、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等に広く使用されている。透明導電膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属薄膜、SnO2、In2O3、CdO、ZnO、SnO2:Sb、SnO2:F、ZnO:Al、In2O3:Snなどの酸化物及びドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物がある。中でも錫をドープした酸化インジウム膜(以下、ITOという)が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さからもっとも広く使用されている。これらは真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空プラズマCVD法、スプレーパイロリシス法、熱CVD法、ゾルゲル法等により形成されている。
【0003】
透明導電膜の形成方法の中で真空蒸着法やスパッタリング法は、低抵抗な透明導電膜を得ることができる。工業的にはDCマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより比抵抗値で10-4Ω・cmオーダーの優れた導電性を有するITO膜を得ることが出来る。
【0004】
しかしながら、これらの物理的製作法(PVD法)では気相中で目的物質を基板に堆積させて膜を成長させるものであり、真空容器を使用する。そのため装置が大がかりで高価なうえ原料の使用効率が悪くて生産性が低い。また大面積の成膜も困難であった。さらに、低抵抗品を得るためには製膜時に200〜300℃に加熱する必要があり、プラスチックフィルムへの低抵抗な透明導電膜の製膜は困難である。
【0005】
ゾルゲル法(塗布法)は分散調液、塗布、乾燥といった多くのプロセスが必要なだけでなく、被処理基材との接着性が低いためにバインダー樹脂が必要となり透明性が悪くなる。また、得られた透明導電膜の電気特性もPVD法に比較すると劣る。
【0006】
熱CVD法は、スピンコート法やディップコート法、印刷法などにより基材に目的物質の前駆物質を塗布し、これを焼成(熱分解)することで膜を形成するものであり、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易であるという利点があるが、通常焼成時に400℃から500℃の高温処理を必要とするため基材が限られてしまうという問題点を有していた。特に、プラスチックフィルム基板への成膜は困難である。
【0007】
上記、ゾルゲル法(塗布法)による高機能な薄膜が得にくいデメリット、および、真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法(以下、大気圧プラズマCVD法という)が提案されている。大気圧プラズマCVD法により透明導電膜を形成する技術が開示されて(例えば、特許文献1参照。)いる。しかしながら、得られる透明導電膜の抵抗は比抵抗値で〜10-2Ω・cmと高く、比抵抗値1×10-3Ω・cm以下の優れた電気特性が要求される液晶素子、有機EL素子、PDP、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用透明導電膜としては不十分である。更に、CVD原料にトリエチルインジウムを用いており、この化合物は常温、大気中で発火、爆発の危険性があるなど、安全性にも問題がある。また、赤外線及び電磁波防止機能を有し、ハードコート層/透明導電層/反射防止層とを高い密着性を有する、耐擦傷性、表面硬度に優れたPDP又はFED用反射防止フィルム及びその製造方法として透明導電層の例が開示されている(例えば、特許文献2参照。)が、該特許に記載の透明導電層ではより低抵抗な透明導電膜という要求に到底応えることはできない。
【0008】
特に透明樹脂フィルム上に形成する場合、透明樹脂フィルムはガスバリヤ、水蒸気バリヤ性に劣り、例えば有機EL素子などは透明樹脂フィルムを通過してくる水分により、その寿命が著しく短くなり、商品価値を大幅に減ずることになる。このため、例えば、有機EL表示装置において、スパッタ法により基板表面に酸化窒化ケイ素膜を形成することにより水蒸気バリヤ性を向上させる試みが提案されて(例えば、非特許文献1参照。)いる。しかし、更なる水蒸気バリヤ性の向上が求められている。
【0009】
一方、酸化窒化ケイ素膜は樹脂基板との密着性が悪いことから膜はがれがおきやすい。これを防ぎ、基板との密着性を高めるために、スパッタ法や、真空CVD法など真空系における製膜法において製膜時、基材を加熱する方法をとることがあるが、樹脂基板を用いる場合、加熱することは適当ではない。更に、真空プロセス、あるいは塗布プロセスを用いた場合、先に記した透明導電膜と同様に生産性、環境負荷の問題がある。
【0010】
上記の如く、現状では透明導電膜には高い水蒸気、ガスバリヤ性、特に膜の密着性が高くかつ水蒸気バリヤ性の高い透明導電膜積層体が求められている。しかし、このような場合、スパッタリングなどの真空プロセスを取らざるを得ず、生産性を上げるのが困難である。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−303175号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【0012】
【特許文献2】
特開2001−74906号公報 (実施例1)
【0013】
【非特許文献1】
Proceedings of the 10th
International Workshop on
Inorganic and Organic
Electroluminescence,p365(2001)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、透過率、比抵抗、限界曲率直径、及び、保存性に優れた透明導電膜積層体の提供と、かつその形成方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0016】
1.透明樹脂フィルムからなる基材上に酸素原子と窒素原子のうち少なくともいずれか一方と、金属原子とを含んで構成される金属化合物層を有し、かつ透明導電層を有する透明導電膜積層体の、前記金属化合物層あるいは透明導電層のうち、少なくとも1層を形成する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、窒素又は窒素を含む不活性ガスと、少なくとも1種類以上の有機金属化合物とを含有する反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする透明導電膜積層体の形成方法。
【0018】
2.有機金属化合物が前記一般式(1)又は(2)で表される有機金属化合物であることを特徴とする前記1に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0019】
3.反応性ガスとして、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする前記1又は2に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0020】
4.反応性ガスとして、水、還元性ガス、酸化性ガスを同時に含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0022】
5.放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力を供給して放電させることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0023】
6.高周波電圧が、150MHz以下であることを特徴とする前記5に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0024】
7.電力が、50W/cm2以下であることを特徴とする前記5又は6に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0025】
8.高周波電圧が、連続したサイン波であることを特徴とする前記5〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0026】
9.前記プラズマ状態を形成する大気圧プラズマ放電処理装置の電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0027】
10.前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物であることを特徴とする前記9に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0028】
11.前記電極の表面粗さRmaxが0.1〜10μmであることを特徴とする前記9又は10に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0029】
12.透明導電膜を形成する基材の表面温度が、50〜300℃であることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0030】
13.透明導電膜の製膜後、熱処理を行うことを特徴とする前記1〜12のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
【0031】
14.前記1〜13のいずれか1項に記載の形成方法で製造されたことを特徴とする透明導電膜積層体。
【0032】
15.金属化合物層に含まれる金属原子が珪素原子であり、該珪素原子の数に対する、該金属化合物層に含まれる酸素原子、窒素原子数の比を、それぞれx、yとした場合に、xは0以上2以下であり、yは0以上4/3以下であることを特徴とする前記14に記載の透明導電膜積層体。
【0033】
16.透明導電膜の炭素含有量が0.1〜5.0原子数濃度の範囲であることを特徴とする前記14又は15に記載の透明導電膜積層体。
【0034】
17.金属化合物層の炭素含有量が0.1〜10原子数濃度の範囲であることを特徴とする前記14〜16のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【0035】
18.透明導電膜が酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、Fドープ酸化錫、Alドープ酸化亜鉛、Sbドープ酸化錫、ITO、In2O3−ZnO系アモルファス透明導電膜のうち、いずれかを主成分とすることを特徴とする前記14〜17のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【0037】
19.透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基板、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板、PDP用電磁遮蔽フィルム基板、電子ペーパー用フィルム基板から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記18に記載の透明導電膜積層体。
【0038】
本発明を更に詳しく説明する。本発明において、透明導電膜とは、光学的に透明で導電性を有する薄膜を指し、古くから研究開発が行われている。
【0039】
代表的な透明導電膜は、金属薄膜、酸化物(SnO2、ZnO、In2O3)、複合酸化物(ITO、IZO、FTO、ATO)、非酸化物(カルコゲナイド、TiN)などをあげることができる。本発明の透明導電膜としてはこれら一般的な透明導電膜に共通なものである。特に好ましくはITO、IZOが用いられる。
【0040】
本発明において透明導電膜の形成方法は大気圧プラズマ法を用いる事が好ましい。大気圧プラズマ法によれば、スパッタリング法のように特別なターゲットを必要とする事なく、容易に所望の組成をもつ透明導電膜を形成する事が可能である。例えば、特開2002−322558号あるいは特願2001−131663号に記載されている処理方法及び装置により行うことが出来る。特に、図1に示す対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置等を用い、放電条件は、放電空間に、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳し、第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、第1の高周波電界の強さV1、第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2 を満たし、
第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm2以上にすることが好ましい。
【0041】
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
重畳する高周波電界が、ともにサイン波である場合、第1の高周波電界の周波数ω1と該周波数ω1より高い第2の高周波電界の周波数ω2とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重なった鋸歯状の波形となる。
【0042】
本発明において、放電開始電界の強さとは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電界強度のことを指す。放電開始電界強度は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種または電極間距離などによって多少変動するが、同じ放電空間においては、放電ガスの放電開始電界強度に支配される。
【0043】
上記で述べたような高周波電界を放電空間に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することが出来ると推定される。
【0044】
ここで重要なのは、このような高周波電界が対向する電極に印加され、すなわち、同じ放電空間に印加されることである。特開平11−16696号公報のように、印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる高周波電界を印加する方法では、本発明の薄膜形成は達成出来ない。
【0045】
上記でサイン波等の連続波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方が連続波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、更に第3の電界を有していてもよい。
【0046】
上記本発明の高周波電界を、同一放電空間に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電界強度V1である第1の高周波電界を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電界強度V2である第2の高周波電界を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いることである。
【0047】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0048】
また、第1電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルタを、また第2電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルタを接続することが好ましく、第1フィルタは第1電源から第1電極への第1の高周波電界の電流を通過しやすくし、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくする。また、第2フィルタはその逆で、第2電源から第2電極への第2の高周波電界の電流を通過しやすくし、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0049】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より高い高周波電界強度を印加出来る能力を有していることが好ましい。
【0050】
ここで、本発明でいう高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0051】
高周波電界強度V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部に高周波電圧プローブ(P6015A)を設置し、該高周波電圧プローブの出力信号をオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電界強度を測定する。
【0052】
放電開始電界強度IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義する。測定器は上記高周波電界強度測定と同じである。
【0053】
本発明で規定する放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来るのである。
【0054】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp-p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0055】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0056】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0057】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数および高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することが本発明の重要な点である。
【0058】
また、第1の高周波電界の出力密度を高くすることで、放電の均一性を維持したまま、第2の高周波電界の出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマが生成でき、更なる製膜速度の向上と、膜質の向上が両立出来る。
【0059】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置において、前記第1フィルタは、第1電源から第1電極への第1の高周波電界の電流を通過しやすくし、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくする。また、第2フィルタはその逆で、第2電源から第2電極への第2の高周波電界の電流を通過しやすくし、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする。本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば制限無く使用出来る。
【0060】
例えば、第1フィルタとしては、第2電源の周波数に応じて数10pF〜数万pFのコンデンサ、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルタとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサを介してアース接地することでフィルタとして使用出来る。
【0061】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、前記対向電極間に導入したガスをプラズマ状態とし、前記対向電極間に静置あるいは電極間を移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基材の上に薄膜を形成させるジェット方式の装置がある。
【0062】
図1は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0063】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0064】
図1は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0065】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0066】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1フィルタ43が設置されており、第1フィルタ43は第1電源41から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源42からの電流をアースして、第2電源42から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2フィルタ44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源41からの電流をアースして、第1電源41から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0067】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0068】
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0069】
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
【0070】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0071】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0072】
本発明の透明導電膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい透明導電膜の種類によって異なるが、基本的に、不活性ガスと、透明導電膜を形成するためにプラズマ状態となる反応性ガスの混合ガスである。ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。窒素又は窒素を含む不活性ガスと、少なくとも1種類以上の有機金属化合物とを含有する反応性ガスからなる混合ガスである。本発明に記載の効果を得るためには、不活性ガスとしてアルゴン、ヘリウムが特に好ましく用いられる。本発明で用いる反応性ガスは複数用いることが可能であるが、少なくとも1種類は、放電空間でプラズマ状態となり、透明導電膜を形成する成分を含有するものである。このような反応性ガスとしては、有機金属化合物が用いられる。有機金属化合物の種類は問わないが、分子内に酸素を有する有機金属化合物が好ましく、特にβジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物が好ましく用いられる。より好ましくは上記一般式(1)および(2)で表される化合物から選ばれる反応ガスである。一般式(1)および(2)で表される化合物の中で好ましい例は、インジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、インジウムメチル(トリメチル)アセチルアセテート、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソポロポキシド、インジウムトリフルオロペンタンジオネート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、ジンクアセチルアセトナート等を挙げることが出来る。
【0073】
この中で特に好ましいのは、インジウムアセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジンクアセチルアセトナート、ジ−n−ブチルジアセトキシスズである。これらの有機金属化合物は一般に市販されており、たとえばインジウムアセチルアセトナートであれば東京化成工業(株)から容易に入手することができる。
【0074】
本発明においてはこれら分子内に少なくとも1つ以上の酸素原子を含有する有機金属化合物のほかに導電性を向上させるために行われるドーピング用のガスを用いることができる。ドーピングに用いられる反応性ガスとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、ニッケルアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、ボロンイソプロポキシド、n−ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラブチルスズ、ジンクアセチルアセトナート、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン、4フッ化メタン等を挙げることができる
さらに本発明においては、透明導電膜の構成元素を含む反応ガスの他に水を反応ガスとして用いることで、高い電導性と大きなエッチング速度を有する透明導電膜の製造が可能となった。反応ガス中に混入する水の量は反応性ガスと不活性ガスの混合気体中0.0001から10%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.001から1%の範囲にあることが好ましい。
【0075】
本発明における反応ガスとしては透明導電膜を構成する元素を含む有機金属化合物及び水の他、酸素などの酸化性を有するガス、水素などの還元性を有するガスその他、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などを適宜用いることも可能である。
【0076】
透明導電膜主成分として用いられる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスの量比は、成膜する透明導電膜の種類により異なる。例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては得られるITO膜のIn:Snの原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように反応性ガス量を調整する。好ましくは、100:0.5〜100:10の範囲になるよう調整する。In:Snの原子数比はXPS測定により求めることができる。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。Sn:Fの原子数比はXPS測定により求めることが出来る。In2O3−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。In:Znの原子数比はXPS測定で求めることが出来る。
【0077】
更に、反応性ガスには透明導電膜主成分となる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスがある。更に、本発明においては透明導電膜を構成する主たる金属元素、ドーピングとなる金属元素の他、ケイ素を導入する。ケイ素の導入方法には制限はないが、透明導電膜を形成する際、反応ガスとして透明導電膜の抵抗値を調整する為に反応性ガスを追加することも可能である。透明導電膜の抵抗値を調整する為に用いる反応性ガスとしては、有機金属化合物、特にβジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物が好ましく用いられる。具体的には以下のものをあげることができる。ケイ素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。この中でもテトラエトキシシランが安定性、蒸気圧の点で好ましい。
【0078】
透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0079】
本発明においては、大気圧近傍の圧力下で透明導電膜を形成するが、その際の基材の温度は特に制限はない。基材として高分子を用い200℃以下が好ましい。
【0080】
更に本発明においては大気圧近傍の圧力下で透明導電膜を形成した後、熱を加え、透明導電膜の特性を調整することも可能である。この熱処理によっても膜中の水素の量を変える事ができる。熱処理の温度としては50〜300℃の範囲が好ましい。好ましくは100から200℃の範囲である。加熱の雰囲気も特に制限はない。空気雰囲気、水素などの還元性ガスを含む還元雰囲気、酸素などの酸化性ガスを含有するような酸化雰囲気、あるいは真空、不活性ガス雰囲気下のうちから適宜選択することが可能である。還元、酸化雰囲気をとる場合、還元性ガス、酸化性ガスを希ガスや窒素などの不活性ガスで希釈して用いることが好ましい。このような場合、還元性ガス、酸化性ガスの濃度は0.01から5%が好ましく、より好ましくは0.1から3%である。
【0081】
また、本発明の透明導電膜の形成方法によって得られる透明導電膜は、反応性ガスとして有機金属化合物を用いるため、微量の炭素を含有する場合がある。その場合の炭素含有量は、0〜5.0原子数濃度であることが好ましい。特に好ましくは0.01〜3原子数濃度の範囲内にあることが好ましい。
【0082】
本発明の透明導電膜積層体は透明導電膜の他、酸素原子(O)と窒素原子(N)のうちの少なくともいずれか一方と金属原子とを含んで構成される金属化合物層が設けられている。
【0083】
ここで、「酸素原子(O)と窒素原子(N)のうちの少なくともいずれか一方と金属原子とを含んで構成される金属化合物層」は、金属酸化物、金属酸窒化物、金属窒化物、これらのうちの二つ以上を混合した混合物、のいずれでも良い。
【0084】
金属化合物層は、薄すぎると効果に乏しく、厚すぎると割れ、クラック等の問題が発生するため、その膜厚は、0.005〜1μm程度であるのが好ましく、特に0.1μmよりも大きく、かつ、0.8μm以下であるのが好ましく、さらには0.5μm以下であるのがより好ましく、0.2μm以下であるのが特に好ましい。
【0085】
金属化合物層に含まれる金属原子としては、例えば、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ゲルマニウム(Ge)などが挙げられるが、特に珪素原子(Si)が好ましい。金属化合物層に含まれる金属原子が珪素原子である場合には、金属化合物層において、珪素原子の数に対する酸素原子、窒素原子の数の比をそれぞれx、yとした場合、xは0以上2以下であり、yは0以上4/3以下である。
【0086】
また、金属化合物層には、所定量の炭素原子(C)が含まれるのが好ましい。これにより、膜の柔軟性と、積層時の密着性を得ることができる。ここで、金属化合物層の炭素含有量は、0.1〜10原子濃度%であるのが好ましく、さらに0.2〜8原子濃度%であればより好ましく、0.2〜5原子濃度%であるのが特に好ましい。炭素含有量が0.1原子濃度%よりも小さいと、膜の柔軟性が不足する傾向があり、10原子濃度%よりも大きいと、金属化合物層を設けることによる改善効果が低下し、金属化合物層に必要な膜厚が厚くなるので、好ましくない。
【0087】
金属化合物層は、蒸着、スパッタ、プラズマCVD、真空プラズマ等の各種方法により形成することができるが、透明導電層同様、特に、大気圧プラズマ処理によって形成するのが好ましい。金属化合物層の大気圧プラズマ処理も透明導電膜と同様の様態で実施することができる。
【0088】
透明導電層形成時と同様、金属化合物ガスとして珪素化合物を用い、これを含む反応ガスを供給しながら大気圧プラズマ処理を行うことにより、珪素原子を含む金属化合物層を形成することができる。
【0089】
ここで、上記珪素化合物としては、例えば、一般式Si(OR11)4(R11はアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。)や、一般式(R12)nSi(OR13)4-n(R12及びR13はアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。また、nは1〜3の整数である。)で表される有機珪素化合物や、シラン(SiH4)などが挙げられる。
【0090】
具体的には、テトラエトキシシラン(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、デカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0091】
また、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトルメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシランなども用いることができる。
【0092】
また、メチルトリメトキシシランとTEOSを比率1:1で混合したもの、エチルトリエトキシシランとTEOSを比率1:2で混合したものなど、上記の珪素化合物を所定比率で混合して用いることもできる。
【0093】
これらの有機珪素化合物に、さらに、酸素ガスや窒素ガスなどを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む金属化合物層を形成することができる。
【0094】
これらの有機珪素化合物に、さらに、酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
【0095】
なお、SiO2は透明性が高いもののガスバリア性が少し低めで水分をやや通すことから、N原子を含んだ方がより好ましい。すなわち、酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合に、x/(x+y)は0.95以下、さらに0.80以下であればより一層好ましい。なお、N原子の割合が多いと光透過性が低下し、x=0であるSiNではほとんど光を通さない。そこで、具体的な酸素原子と窒素原子の割合は用途に応じて決めればよい。
【0096】
例えば、表示装置においてより光透過性を要する用途であれば、x/(x+y)が0.4以上0.95であれば、光透過性と防水性のバランスをとることができるので好ましい。また、表示装置の発光素子の後面に設けられる映り込み防止膜のように光を吸収あるいは遮光した方が好ましい用途であればx/(x+y)は0以上0.4未満であることが好ましい。
【0097】
また、上記のように有機珪素化合物を反応ガスとして大気圧プラズマ法で製膜することで、膜中に炭素を含有させることができる。これは、真空プラズマ法と比較して、大気圧プラズマ法では電極間に存在する反応ガス由来のイオン等などの粒子が高い密度で存在することになるので、有機珪素化合物由来の炭素が残りやすいのである。本発明においては、膜中の炭素は、膜に柔軟性を与え基材との密着性が向上することからわずかに含有することが好ましく、具体的には0.2〜5質量%含有することが好ましい。5質量%を超えて含有すると、膜の屈折率などの物性が経時的に変化することがあり、好ましくない。
【0098】
この炭素含有量は、主に電源の周波数と供給電力に依存し、電極に印加する電圧の高周波数が高いほど、及び供給電力が大きくなるほど少なくなる。また、混合ガス中に水素ガスを注入すると炭素原子が消費されやすくなり、膜中の含有量を減らすことができ、これによっても制御できる。
【0099】
上記のような、Si、O、N、さらにCを所定の割合いで含有する膜を形成するための混合ガスについて以下に具体的に例示する。
【0100】
x/(x+y)が0.95以下であって、さらに炭素を0.2〜5質量%含有するSiON膜を、シラザンと酸素ガスの反応ガスから形成する場合について説明する。この場合、膜中のSiとNは、全てシラザン由来である。
【0101】
酸素ガスは、混合ガス全体に対する比が大きくなると大部分SiO2膜になってしまうので、混合ガスのうち0.01〜5体積%が好ましく、より好ましくは0.05〜1体積%である。また、酸素とシラザンの反応効率から、シラザンに対する酸素ガスのモル比が、得たい膜の組成比(モル比)の1〜4倍になるような体積で混合することが好ましい。このようにして酸素ガスの混合ガス全体に対する割合と、シラザンに対する割合が設定される。
【0102】
また、酸素ガスを導入せず、SiN膜をシラザンから形成する場合、気化させたシラザンは混合ガス全体に対し、0.2〜1.5体積%でよい。このままであると、炭素がかなり膜中に残ってしまうので、最大でも混合ガスの2体積%以下の水素ガスを混合し炭素を飛ばす。
【0103】
Si源としては、上記のような有機珪素化合物だけでなく、無機珪素化合物を用いてもよい。
【0104】
また、酸素源として酸素ガス以外に、オゾン、二酸化炭素、水(水蒸気)等を用いてもよいし、窒素源としてシラザンや窒素ガス以外に、アンモニア、窒素酸化物等を用いてもよい。
【0105】
また、上記記載の化合物は、常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できる。
【0106】
液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。また、溶媒によって希釈して使用しても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解される為、影響は殆ど無視することが出来る。
【0107】
又、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水素、窒素から選択される成分を好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは0.1〜5体積%含有させることにより、反応が促進され、かつ、薄膜の硬度を著しく向上させたり、緻密で良質な薄膜を形成したりすることが出来る。特に、酸素または水素を添加することが好ましい。
【0108】
本発明に用いることができる基材としては、フィルム状のもの、シート状のもの、レンズ状等の立体形状のもの等、透明導電膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が電極間に載置できるものであれば、電極間に載置することによって、基材が電極間に載置できないものであれば、発生したプラズマを当該基材に吹き付けることによって透明導電膜を形成すればよい。
【0109】
基材を構成する材料も特に限定はない。大気圧または大気圧近傍の圧力下であることと、低温のグロー放電であることから、樹脂フィルムを用いる。特に好ましいのは透過率75%以上の透明な樹脂基材である。
【0110】
例えば、フィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、更にこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0111】
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0112】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0113】
本発明において、透明導電膜はプラスチックフィルム基材上に形成されるが、必要に応じて基材と透明導電性膜の間に接着性を向上させるために接着層を設けてもよい。また、光学特性を改良するために、透明導電膜を設けた面の反対の面に反射防止膜を設けることも可能である。さらに、フィルムの最外層に防汚層を設けることも可能である。その他、必要に応じて耐溶剤性を付与するための層等を設けることも可能である。
【0114】
これらの層の形成方法は特に限定はなく、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、大気圧プラズマCVD法等を用いることができる。特に好ましいのは大気圧プラズマCVD法である。
【0115】
これらの層の大気圧プラズマCVDによる形成方法としては例えば反射防止膜の形成方法としては特開2002−228803号等に開示された方法を用いることができる。
【0116】
本発明においては、上記記載のような基材面に対して本発明に係わる金属化合物膜、透明導電膜を設ける場合、平均膜厚に対する膜厚偏差を±10%になるように設けることが好ましく、更に好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内になるように設けることが好ましい。
【0117】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0118】
実施例1
(ガスバリヤ性及び水蒸気バリヤ性を有する基材の作製)
透光性を有するPES(ポリエーテルスルホン)フィルム(住友ベークライト(株)製スミライトFS−1300)を用意した。
【0119】
プラズマ放電装置には、電極が平行平板型のものを用い、この電極間にガラス基板を載置し、且つ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
【0120】
尚、電極は、以下の物を用いた。200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このように電極を作製し、アース(接地)した。
【0121】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作製し、対向する電極群とした。
【0122】
また、プラズマ発生に用いる使用電源は日本電子(株)製高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で且つ5W/cm2の電力を供給した。
【0123】
基材101〜106の作製
電極間に以下の組成の反応性ガスを流した。
不活性ガス アルゴン
反応性ガス1 酸素
反応性ガス2 ヘキサメチルジシラザン蒸気
(125℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリングして蒸発させる)
酸素ガスとヘキサメチルジシラザン蒸気の比率を変えて、酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合のx/(x+y)の値が、1.0、0.80、0.50、0.20である膜を作製(AGP製膜法)した。なお、予め、酸素ガスとヘキサメチルジシラザンの混合割合に対して得られるx/(x+y)値に関して、検量線等の知見を得ておき、この知見に基づいて、これらの各割合になるように調整した。これらを基材101〜104とする。また電極間に以下の組成の反応性ガスを流した。
不活性ガス アルゴン
反応性ガス1 水素
反応性ガス2 ヘキサメチルジシラザン蒸気
(125℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリングして蒸発させる)
上記条件により同じPES上に、x/(x+y)が0、つまり窒化珪素膜を形成した。この基材を105とする。
【0124】
基材101の不活性ガスをアルゴンから窒素に代え、図1に示す装置を用い、x/(x+y)の値が、0.80の酸化窒化珪素膜を形成した。この時の出力密度は、第1電極側を1W/cm2、第2電極側を5W/cm2とした。この基材を106とする。
【0125】
基材101と同じPES表面に、ターゲットとして窒化珪素(SiN)を用い、アルゴンガス及び酸素ガスの雰囲気下でRF(Radio Frequency)スパッタリング法(真空状態、周波数13.56MHz)によって所定の組成のSiON膜を形成した。酸素ガスの分圧を変えて、x/(x+y)の値が、0、0.2、0.5、0.8、1.0となるように膜を作製した。これらを基材201から205とする。
【0126】
基材101と同じPES表面にポリシラザンコーティング液[東燃(株)製]を塗布し、乾燥を行なった。乾燥後、酸素雰囲気を調整し、120℃で30分間加熱し、x/(x+y)が0.5の酸化窒化ケイ素膜を得た。これを301とする。
【0127】
基材101と同じPES表面にスパッタリング法により酸化けい素膜を形成した。これを302とする。
【0128】
基材101と同じPES表面に以下の組成からなる液を塗布した。
を50℃にて撹はん溶解して均一な溶液を得た後ディップ法により塗布し、80℃、10分の条件で加熱した後紫外線を照射をした。これを303とする。
【0129】
実施例1において、形成した膜の膜厚は、約200nmである。得られた基材について以下の評価をし結果を表1に示す。
【0130】
<炭素含有量の測定>
膜組成、炭素含有量は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定する。XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定をおこなう前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0131】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
【0132】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素含有量の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0133】
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps×eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
【0134】
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0135】
<ガスバリヤ性>
酸素透過度をもってガスバリヤ性の指標とした。酸素透過度は、透明導電層を積層する前の、プライマー層とガスバリヤ層が積層された高分子フィルムについて測定した。測定は、MOCON社製オキシトラン2/20型を用いて、40℃90%RHの環境下で測定した。
【0136】
尚、1ml/m2・24hr・atmは9.869×10-6ml/m2・24hr/Paである。
【0137】
<水蒸気バリヤ性>
MOCON社製、パーマトランW1Aを用いて40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過度を測定した。
【0138】
尚、1g/m2・24hr・atmは9.869×10-6g/m2・24hr/Paである。
【0139】
【表1】
【0140】
(透明導電膜の作製)
透明導電膜の形成方法
透光性を有するPES(ポリエーテルスルホン)フィルム(住友ベークライト(株)製スミライトFS−1300)の上に透明導電膜を形成し、透明導電膜積層体を形成した。透明導電膜の形成法は以下に依った。
【0141】
透明導電膜A1の形成方法
反応ガスとして以下の組成のガスを用いて基材101を作製した場合と同様な大気圧プラズマ製膜装置にて基材上に透明導電膜積層体を作製した。プラズマ発生に用いる使用電源は日本電子(株)製高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で且つ5W/cm2の電力を供給した。
透明導電膜A2の形成方法
透明導電膜A1の作製において、反応性ガスを0.5体積%にし、周波数10kHzの電圧で且つ5W/cm2の電力を供給したこと以外はA1と同様にして基材上に透明導電膜積層体を作製した。
【0142】
透明導電膜A3の形成方法
透明導電膜A1の作製において、特開2001−74906の実施例1と同様にして波高値10kV、放電電流密度100mA/cm2、周波数6kHzのパルス電界を印加し、且つ5W/cm2の電力を供給したこと以外はA1と同様にしてA1と同様にして基材上に透明導電膜積層体を作製した。
【0143】
透明導電膜A4の形成方法
透明導電膜A1の作製において、投入する電力を0.1W/cm2とすること以外はA1の作製と同様にして基板上に透明導電膜積層体を作製した。
【0144】
透明導電膜A5の作製方法
透明導電膜A1の作製において、投入する電力を10W/cm2とすること以外はA1の作製と同様にして基板上に透明導電膜積層体を作製した。
【0145】
透明導電膜A6の作製方法
透明導電膜A1の作製において、不活性ガスをヘリウムから窒素に代え、反応性ガス1、2、3はA1と同様にして、図1の装置を用い、第1電界の周波数ω1を50kHz、電界強度V1を10kV/mm、出力密度を1W/cm2とし、第2電界の周波数ω2を13.56MHz、電界強度V2を0.8kV/mm、出力密度を10W/cm2として基板上に透明導電膜積層体を作製した。得られた透明導電膜A6の炭素含有量は0.2at%、Sn/Inは7.5%であった。
【0146】
透明導電膜Bの形成方法
基材をDCマグネトロンスパッタ装置に装着し、真空槽内を1.33322×10-3Pa以下まで減圧した。尚、スパッタリングターゲットは酸化インジウム:酸化錫95:5の組成のものを用いた。この後、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを(Ar:O2=1000:3)を1×10-3Paとなるまで導入し、スパッタ出力100W、基板温度100℃にて透明導電膜積層体を形成した。
【0147】
透明導電膜Cの形成方法
透明導電層を京都エレックス(株)製有機ITOペーストニューフロコートEC−Lをディップコートして作製すること以外は透明導電膜A1の作製と同様にして透明導電膜積層体を作製した。
【0148】
得られた透明導電膜の性能を表2に示す。
【0149】
【表2】
【0150】
(透明導電膜積層体の作製)
前記、ガスバリヤ性及び水蒸気バリヤ性を有する基材の作製で得た基材101から105、201から205、301から303上に、前記、透明導電膜の形成方法により表3で示す透明導電層を積層し、透明導電膜積層体を作製した。
【0151】
得られた透明導電膜積層体の評価方法を以下に示す。
<透過率>
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0152】
<比抵抗>
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
【0153】
<限界曲率直径の測定>
得られた錫ドープ酸化インジウム付きのフィルムを縦横10cmの長さに切断した。このフィルムについて室温25℃、湿度60%における表面抵抗を三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いて測定した。この表面抵抗値をR0とする。このフィルムを直径10mmφのステンレス丸棒に隙間が出来ないように巻き付けた。その状態で3分間保持した後フィルムを丸棒よりとり、再度表面抵抗を測定した。この値をRとする。丸棒の直径を10mmφから1mmφずつ小さくし、同様の測定を繰り返した。R/R0の値が1を越えた丸棒の直径を限界曲率直径とした。
【0154】
<劣化試験>
透明導電膜積層体フィルムを縦横10cmの長さに切断した。このフィルムについて室温25℃相対湿度50%における表面抵抗を三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600をを用いて測定した。この表面抵抗値をR0とする。このフィルムを温度80℃相対湿度40%の恒温恒湿漕で1週間処理し、再度表面抵抗値を測定した。この値をRとし、R/R0の比を求めた。この比は1に近い方が好ましい。
【0155】
【表3】
【0156】
表3から本発明の試料は、透過率、比抵抗、限界曲率直径、及び、保存性に優れた透明導電膜積層体であることが判る。
【0157】
【発明の効果】
本発明により、透過率、比抵抗、限界曲率直径、及び、保存性に優れた透明導電膜積層体とその形成方法が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
30 プラズマ放電処理装置
35 第1電極
36 第2電極
40 電界印加手段
41 第1電源
42 第2電源
50 ガス供給手段
60 電極温度調節手段
Claims (19)
- 透明樹脂フィルムからなる基材上に酸素原子と窒素原子のうち少なくともいずれか一方と、金属原子とを含んで構成される金属化合物層を有し、かつ透明導電層を有する透明導電膜積層体の、前記金属化合物層あるいは透明導電層のうち、少なくとも1層を形成する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、窒素又は窒素を含む不活性ガスと、少なくとも1種類以上の有機金属化合物とを含有する反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする透明導電膜積層体の形成方法。
- 反応性ガスとして、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 反応性ガスとして、水、還元性ガス、酸化性ガスを同時に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力を供給して放電させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 高周波電圧が、150MHz以下であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 電力が、50W/cm2以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 高周波電圧が、連続したサイン波であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 前記プラズマ状態を形成する大気圧プラズマ放電処理装置の電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物であることを特徴とする請求項9に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 前記電極の表面粗さRmaxが0.1〜10μmであることを特徴とする請求項9又は10に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 透明導電膜を形成する基材の表面温度が、50〜300℃であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 透明導電膜の製膜後、熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の形成方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の形成方法で製造されたことを特徴とする透明導電膜積層体。
- 金属化合物層に含まれる金属原子が珪素原子であり、該珪素原子の数に対する、該金属化合物層に含まれる酸素原子、窒素原子数の比を、それぞれx、yとした場合に、xは0以上2以下であり、yは0以上4/3以下であることを特徴とする請求項14に記載の透明導電膜積層体。
- 透明導電膜の炭素含有量が0.1〜5.0原子数濃度の範囲であることを特徴とする請求項14又は15に記載の透明導電膜積層体。
- 金属化合物層の炭素含有量が0.1〜10原子数濃度の範囲であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
- 透明導電膜が酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、Fドープ酸化錫、Alドープ酸化亜鉛、Sbドープ酸化錫、ITO、In2O3−ZnO系アモルファス透明導電膜のうち、いずれかを主成分とすることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
- 透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基板、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板、PDP用電磁遮蔽フィルム基板、電子ペーパー用フィルム基板から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項18に記載の透明導電膜積層体。
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