JP4352665B2 - 透明導電膜及びその形成方法並びに物品 - Google Patents

透明導電膜及びその形成方法並びに物品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と言う)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記)、電子ペーパー、タッチパネルや太陽電池等の各種エレクトロニクス素子に好適に用いられる透明導電膜及びその形成方法並びに該透明導電膜を有する物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、透明導電膜は液晶表示素子、有機EL素子、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等に広く使用されている。透明導電膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属薄膜、SnO2、In23、CdO、ZnO、SnO2:Sb、SnO2:F、ZnO:AL、In23:Sn等の酸化物及びドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物がある。中でも錫をドープした酸化インジウム膜(以下、ITOと言う)が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さから最も広く使用されている。これらは真空蒸着法やスパッタリング法,イオンプレーティング法、真空プラズマCVD法、スプレーパイロリシス法、熱CVD法、ゾルゲル法等により形成されている。
【0003】
透明導電膜の形成方法の中で真空蒸着法やスパッタリング法は、低抵抗な透明導電膜を得ることができる。工業的にはDCマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより比抵抗値で10-4Ω・cmオーダーの優れた導電性を有するITO膜を得ることが出来る。
【0004】
しかしながら、これらの物理的製作法(PVD法)では気相中で目的物質を基板に堆積させて膜を成長させるものであり、真空容器を使用する。そのため装置が大掛かりで高価な上、原料の使用効率が悪くて生産性が低い。又、大面積の成膜も困難であった。更に、低抵抗品を得るためには製膜時に200〜300℃に加熱する必要があり、プラスチックフィルムへの低抵抗な透明導電膜の製膜は困難である。
【0005】
ゾルゲル法(塗布法)は分散調液、塗布、乾燥といった多くのプロセスが必要なだけでなく、被処理基材との接着性が低いためにバインダー樹脂が必要となり透明性が悪くなる。又、得られた透明導電膜膜の電気特性もPVD法に比較すると劣る。
【0006】
熱CVD法は、スピンコート法やディップコート法、印刷法などにより基材に目的物質の前駆物質を塗布し、これを焼成(熱分解)することで膜を形成するものであり、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易であるという利点があるが、通常、焼成時に400〜500℃の高温処理を必要とするため基材が限られてしまうという問題点を有していた。特に、プラスチックフィルム基板への成膜は困難である。
【0007】
上記、ゾルゲル法(塗布法)による高機能な薄膜が得にくいデメリット、及び、真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法(以下、大気圧プラズマCVD法と言う)が提案されている。特開2000−303175に大気圧プラズマCVD法により透明導電膜を形成する技術が開示されている。しかしながら、得られる透明導電膜の抵抗は比抵抗値で〜10-2Ω・cmと高く、比抵抗値1×10-3Ω・cm以下の優れた電気特性が要求される液晶素子、有機EL素子、PDP、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用透明導電膜としては不十分である。更に、CVD原料にトリエチルインジウムを用いており、この化合物は常温、大気中で発火、爆発の危険性があるなど、安全性にも問題がある。又、特開2001−74906には赤外線及び電磁波防止機能を有し、ハードコート層/透明導電層/反射防止層とを高い密着性を有する、耐擦傷性、表面硬度に優れたPDP又はFED用反射防止フィルム及びその製造方法として透明導電層の例が開示されているが、該透明導電層では、より低抵抗な透明導電膜という要求に到底応えることは出来ない。
【0008】
特に透明樹脂フィルム上に形成する場合、フィルムの反りや変形などにより導電層に微細なひび割れが生じ、抵抗の上昇を起こすことが多い。又、今後、所謂ユビキタス情報社会を迎えるに当たり、表示素子も自由に収納できるフレキシビリティーが必要である。
【0009】
上記課題を解決するために、特開平8−290515号で基板両面に無機系バリヤ膜、片面に透明導電膜を形成することで、欠陥、導電性、透明性を向上させる試みが為されているのを初め、耐久性に関しても特開平6−349338号、同10−104608号などで検討されているが十分ではない。
【0010】
上記の如く、現状では高い導電性を得る場合、スパッタリング等の真空プロセスを取らざるを得ず、生産性を上げるのが困難であり、所望の電気特性及びフレキシビリティー、耐久性を持つ透明導電膜に対する要求に応える技術の開発が要望されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、透過率特性が良好であり、所望の電気特性、エッチング速度を有する透明導電膜を提供することにあり、かつ安全に、生産性高く、上記透明導電膜を製造する手段を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々検討した結果、透明導電膜中をダイナミックSIMS(二次イオン質量分析)で測定した際の透明導電膜を構成する主たる金属元素由来のイオンをMとした時、前記透明導電膜のダイナミックSIMS測定におけるMSiO3とMのピーク強度比(MSiO3/M)を適切に調整することにより、電気特性を犠牲にすることなく、高いエッチング速度を持つ透明導電膜が得られることを見い出した。更に、上記透明導電膜は、大気圧プラズマCVD法により透明導電膜を形成することで透過率が高く、優れた電気特性を有する透明導電膜を高い生産性で得ることができることを見い出し、本発明を為すに到った。即ち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0013】
1)基材上に、インジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主に含有する透明導電膜で、前記金属酸化物の金属元素イオンをMとした時、前記透明導電膜のダイナミックSIMS測定におけるMSiOとMのピーク強度比(MSiO/M)が0.5〜20である透明導電膜であって、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種以上の不活性ガスと、少なくとも1種以上の有機金属化合物を含有する反応性ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって薄膜を形成し、炭素含有率が0.01〜3原子数濃度の範囲にあることを特徴とする透明導電膜。
2) 前記ピーク強度比が0.8〜20であることを特徴とする1)記載の透明導電膜。
3) 前記ピーク強度比が2〜15であることを特徴とする1)記載の透明導電膜。
4) 有機金属化合物が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする1)記載の透明導電膜の形成方法。
一般式(I) R MR
〔式中、Mはインジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種の金属原子、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を表す。x、y及びzは各々0又は正の整数であり、x+y+z=m、x=0〜m又はx=0〜m−1、y=0〜m、z=0〜mである。〕
5) 反応性ガスとして、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする1)記載の透明導電膜の形成方法。
6) 反応性ガスとして、水、還元性ガス、酸化性ガスを同時に含有することを特徴とする1)記載の透明導電膜の形成方法。
7) 放電空間には反応性ガスと少なくとも1種の不活性ガスを導入し、該不活性ガスがアルゴン又はヘリウムを含有することを特徴とする)〜6)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
8) 放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを超えた高周波電圧で、かつ1W/cm以上の電力を供給して放電させることを特徴とする)〜7)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
9) 高周波電圧が150MHz以下であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
10) 高周波電圧が200kHz以上であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
11) 高周波電圧が800kHz以上であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
12) 電力が1.2W/cm以上であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
13) 電力が50W/cm以下であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
14) 電力が20W/cm以下であることを特徴とする8)記載の透明導電膜の形成方法。
15) 高周波電圧が連続したサイン波であることを特徴とする8)〜14)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
16) 高周波電圧を印加する電極の少なくとも一方が誘電体で被覆されていることを特徴とする8)〜15)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
17) 誘電体が比誘電率6〜45の無機物であることを特徴とする16)記載の透明導電膜の形成方法。
18) 電極の表面粗さRmaxが10μm以下であることを特徴とする16)又は17)記載の透明導電膜の形成方法。
19) 基材の表面温度が300℃以下であることを特徴とする)〜18)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
20) 製膜後、熱処理を行うことを特徴とする)〜19)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
21) 熱処理を空気雰囲気下で行うことを特徴とする20)記載の透明導電膜の形成方法。
22) 熱処理を還元雰囲気下で行うことを特徴とする20)記載の透明導電膜の形成方法。
23) 熱処理を酸化雰囲気下で行うことを特徴とする20)記載の透明導電膜の形成方法。
24) 熱処理を真空雰囲気下で行うことを特徴とする20)記載の透明導電膜の形成方法。
25) 熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする20)記載の透明導電膜の形成方法。
26) 熱処理の温度が50〜300℃であることを特徴とする20)〜25)の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
27) 透明導電膜がITO膜であって、該ITO膜がIn/Sn原子数比で100/0.1〜100/15の範囲にあることを特徴とする1)〜3)の何れか1項記載の透明導電膜。
28) 基材が透明樹脂フィルムであることを特徴とする1)〜3)の何れか1項記載の透明導電膜。
29) 4)〜26)の何れか1項記載の形成方法によって作製された透明導電膜を有する物品。
30) 基材の透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基材、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板、PDP用電磁遮蔽フィルム、電子ペーパー用フィルム基板であることを特徴とする29)記載の物品。
31) 透明導電膜がパターニングされた電極であることを特徴とする29)記載の物品。
【0042】
本発明の様態によれば、所望の電気特性、耐久性を有した透明導電膜を得ることが可能であり、かつ、それを高い生産性で得ることができる。
【0043】
透明導電膜とは、光学的に透明で導電性を有する薄膜を指す。この透明導電膜に関しては古くから研究開発が行われている。
【0044】
代表的な透明導電膜は、金属薄膜、酸化物(SnO2、ZnO2、In23)、複合酸化物(ITO、IZO、FTO、ATO)、非酸化物(カルコゲナイド、TiN)等を挙げることができる。本発明の透明導電膜としては、これら一般的な透明導電膜に共通なものであり、特に好ましくはITO、IZOが用いられる。
【0045】
本発明において金属酸化物を主に含有するとは、該金属酸化物を構成する金属元素が、透明導電膜に含有される全金属元素の60原子%以上を占めることを意味する。好ましくは、前記金属酸化物を構成する金属元素が、透明導電膜に含有される全金属元素の90原子%以上であることである。
【0046】
本発明において金属酸化物を構成する金属元素Mとは、例えばITOであればインジウムを指し、透明導電膜業界において所謂ドープ(透明導電膜中において、化学組成比からの「ずれ」を生じさせ、キャリアを発生させるために用いる主たる金属元素とは異なる成分。ITOであれば錫、FTOであれば弗素)以外の主たる構成を成す元素を言う。
【0047】
本発明においては、透明導電膜をダイナミックSIMSで測定した際、前記透明導電膜に主として含有される金属酸化物の金属由来の金属元素イオンMとMSiO3のピーク強度比が、特定の値であることを特徴とする。ダイナミックSIMS測定に関しては日本表面科学会編:表面分析実技シリーズ二次イオン質量分析法(丸善,2000年)を参照すればよい。
【0048】
本発明におけるダイナミックSIMS測定は以下の方法により行うのが好ましい。
【0049】
装置:Phisical Electronics社製ADEPT1010
一次イオン:Cs
一次イオン加速電圧:5kV
一次イオン電流:100nA
一次イオン照射面積:400μm
一次イオン入射角:60°
取り込み範囲:49%
負イオン検出
試料は測定チャンバー内で8時間保存後測定する。
【0050】
上記条件にて膜厚の約1/3をエッチングした後、そこから膜厚の1/3分のスパッタ時間分、水素と主たる金属酸化物の信号を積算し、この積算値からイオンのピーク強度比を求める。この方法によって得られたイオン強度比、即ち金属をMとした場合、MSiO3イオンの強度をMイオンの強度で除した値が0.8〜20である。より好ましくは2〜15、更に好ましくは2〜10の範囲にあることで、電気特性に優れ、かつ耐久性、フレキシビリティーに優れた透明導電膜を得ることができる。
【0051】
本発明において透明導電膜の形成方法は特に限定されない。一般的なマグネトロンスパッタ法やゾルゲル法を用いることも可能である。より安全に生産性良く、かつ制御し易い生産方式として大気圧プラズマ法が挙げられる。大気圧プラズマ法によれば、スパッタリング法のように特別なターゲットを必要とすることなく、容易に所望の組成を持つ透明導電膜を形成することが可能である。
【0052】
大気圧プラズマ法とは、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種以上の不活性ガスと、少なくとも1種以上の反応性ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成する方法である。
【0053】
本発明の透明導電膜形成方法を実施するに当たり使用するガスは、基材上に設けたい透明導電膜の種類によって異なるが、基本的に、不活性ガスと、透明導電膜を形成するためにプラズマ状態となる反応性ガスである。
【0054】
ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的にはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、更には窒素ガス等が挙げられるが、本発明の効果を得るためには、アルゴン又はヘリウムが特に好ましい。
【0055】
反応性ガスは複数用いることが可能だが、少なくとも1種は、放電空間でプラズマ状態となり、透明導電膜を形成する成分を含有するものである。このような反応性ガスとしては特に制限はないが、有機金属化合物が好ましく用いられる。
【0056】
有機金属化合物の種類は問わないが、分子内に酸素を有する有機金属化合物が好ましく、特にβジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、前記一般式(I)で表される有機金属化合物(以下に再掲)から選ばれる。
【0057】
一般式(I) R1 xMR2 y3 z
Mで表される金属原子としては、インジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0058】
1のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル基等を挙げることが出来る。
【0059】
2のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。又、アルキル基の水素原子を弗素原子に置換したものでもよい。
【0060】
3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン又はアセトアセトンとも言う)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、ケトオキシとして、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリロキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記の有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。又、例示にもあるように、直鎖又は分岐のもの、水素原子を弗素原子に置換したものもよい。
【0061】
本発明においては、取扱い上の問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0062】
透明導電膜を形成する好ましい有機金属化合物の金属は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0063】
本発明において好ましい有機金属化合物の具体例は、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(ヘキサフルオロペンタンジオナート)、インジウムトリアセトアセタート、トリアセトキシインジウム、ジエトキシアセトキシインジウム、トリイソポロポキシインジウム、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビス(アセトメチルアセタート)、ジブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジブチルジアセトキシ錫、ジ−t−ブチルジアセトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−i−ブトキシ錫、ビス(2,4−ペンタンジオナート)亜鉛等を挙げることが出来る。
【0064】
本発明においては、上記分子内に少なくとも一つの酸素原子を有する有機金属化合物の他に、該有機金属化合物から形成された透明導電膜の導電性を更に高めるために該透明導電膜をドーピングすることが好ましく、反応性ガスとしての該有機金属化合物とドーピング用有機金属化合物ガスを同時に混合して用いることが好ましい。ドーピングに用いられる有機金属化合物又は弗素化合物の反応性ガスとしては、例えばトリ−i−プロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、i−プロポキシボロン、トリブトキシアンチモン、トリブチルアンチモン、ジブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジブチルジアセトキシ錫、ジ−t−ブチルジアセトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛ジ(2,4−ペンタンジオナート)、六弗化プロピレン、八弗化シクロブタン、四弗化メタン等を挙げることが出来る。
【0065】
これらの中で特に好ましいのは、インジウムアセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、亜鉛アセチルアセトナート、ジブチルジアセトキシ錫である。これらの有機金属化合物は一般に市販されており、例えばインジウムアセチルアセトナートは、東京化成工業社から容易に入手することが出来る。
【0066】
本発明においては、これら分子内に少なくとも一つ以上の酸素原子を含有する有機金属化合物の他に、導電性を向上させるために行われるドーピング用のガスを用いることができる。
【0067】
ドーピングに用いられる反応性ガスとしては、例えばアルミニウム−i−プロポキシド、ニッケルアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、ボロン−i−プロポキシド、ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジブチルジアセトキシ錫、ジ−t−ブチルジアセトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、ジンクアセチルアセトナート、6弗化プロピレン、8弗化シクロブタン、4弗化メタン等を挙げることができる
更に本発明においては、透明導電膜の構成元素を含む反応性ガスの他に水を反応性ガスとして用いることで、高い電導性と大きなエッチング速度を有する透明導電膜の製造が可能となった。反応性ガス中に混入する水の量は反応性ガスと不活性ガスの全量中0.0001〜10体積%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.001〜1体積%の範囲である。
【0068】
本発明における反応性ガスとしては、透明導電膜を構成する元素を含む有機金属化合物及び水の他、酸素などの酸化性を有するガス、水素などの還元性を有するガス、その他、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などを適宜用いることも可能である。
【0069】
透明導電膜主成分として用いられる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスの量比は、成膜する透明導電膜の種類により異なる。例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、得られるITO膜のIn/Snの原子数比が100/0.1〜100/15の範囲になるように反応性ガス量を調整する。好ましくは、100/0.5〜100/10の範囲になるよう調整する。In/Snの原子数比はXPS測定により求めることができる。酸化錫に弗素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜)においては、得られたFTO膜のSn/Fの原子数比が100/0.01〜100/50の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。Sn/Fの原子数比はXPS測定により求める。In23−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、In/Znの原子数比が100/50〜100/5の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。In/Znの原子数比はXPS測定で求める。
【0070】
更に、反応性ガスには、透明導電膜主成分となる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスがある。更に、本発明においては、透明導電膜を構成する主たる金属元素、ドーピングとなる金属元素の他、珪素を導入する。珪素の導入方法には制限はないが、透明導電膜を形成する際、反応性ガスとして透明導電膜の抵抗値を調整する為に反応性ガスを追加することも可能である。
【0071】
透明導電膜の抵抗値を調整する為に用いる反応性ガスとしては、有機金属化合物、特にβ−ジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物が好ましく用いられる。具体的には以下の珪素化合物を挙げることができる。
【0072】
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−i−プロポキシシラン、テトラペンタプロポキシシラン、テトラペンタブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−t−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン等。この中でも、テトラエトキシシランが安定性、蒸気圧の点で好ましい。
【0073】
透明導電膜の膜厚としては0.1〜1000nmの範囲のものが得られる。
本発明においては、大気圧近傍の圧力下で透明導電膜を形成するが、その際の基材の温度は特に制限はない。基材としてガラスを用いる場合は300℃以下、後述の高分子を用いる場合は200℃以下が好ましい。
【0074】
更に、本発明においては、大気圧近傍の圧力下で透明導電膜を形成した後、熱を加え、透明導電膜の特性を調整することも可能である。この熱処理によっても膜中の水素の量を変えることができる。熱処理の温度としては50〜300℃の範囲が好ましい。より好ましくは100〜200℃の範囲である。加熱の雰囲気も特に制限はない。空気雰囲気、水素などの還元性ガスを含む還元雰囲気、酸素などの酸化性ガスを含有するような酸化雰囲気、あるいは真空、不活性ガス雰囲気下の中から適宜選択することが可能である。還元、酸化雰囲気を採る場合、還元性ガス、酸化性ガスを希ガスや窒素などの不活性ガスで希釈して用いることが好ましい。このような場合、還元性ガス、酸化性ガスの濃度は0.01〜5体積%が好ましく、より好ましくは0.1〜3体積%である。
【0075】
又、本発明の透明導電膜の形成方法によって得られる透明導電膜は、反応性ガスとして有機金属化合物を用いるため、微量の炭素を含有する場合がある。その場合の炭素含有率は、0〜5.0原子数濃度であることが好ましい。特に好ましくは0.01〜3原子数濃度の範囲内にあることが好ましい。
【0076】
本発明に用いることができる基材としては、フィルム状のもの、シート状のもの、レンズ状等の立体形状のもの等、透明導電膜をその表面に形成できるものであれば特に限定されない。基材が電極間に載置できるものであれば、電極間に載置することによって、基材が電極間に載置できないものであれば、発生したプラズマを当該基材に吹き付けることによって透明導電膜を形成すればよい。
【0077】
基材を構成する材料も特に限定はない。ガラスを用いることも可能であるが、大気圧又は大気圧近傍の圧力下であることと、低温のグロー放電であることから、樹脂フィルムを好ましく用いることができる。例えば、フィルム状のセルローストリアセテート(TAC)等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、更にこれらの上に、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。又、これら基材は、支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0078】
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン(sPS)系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、弗素樹脂フィルム、ナイロン(Ny)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、アクリルフィルム又はポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0079】
これらの素材は単独で、又は適宜混合されて使用することもできる。中でも、ゼオネックス(日本ゼオン社製)、ARTON(日本合成ゴム社製)等の市販品を好ましく使用できる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン及びポリエーテルスルホン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより得ることが出来る。又、本発明に使用する支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0080】
透明導電膜は、ガラス、プラスチックフィルム等の基材上に形成されるが、必要に応じて基材と透明導電性膜の間に接着性を向上させるために接着層を設けてもよい。又、光学特性を改良する為に、透明導電膜を設けた面の反対の面に反射防止膜を設けることも可能である。更に、フィルムの最外層に防汚層を設けることも可能である。その他、必要に応じて、ガスバリア性、耐溶剤性を付与するための層などを設けることも可能である。
【0081】
これらの層の形成方法は特に限定はなく、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、大気圧プラズマCVD法等を用いることができる。特に好ましいのは大気圧プラズマCVD法である。この大気圧プラズマCVDによる形成方法としては、例えば反射防止膜の形成には特願2000−021573等に開示された方法を用いることができる。
【0082】
本発明においては、上記記載のような基材面に対して本発明に係る透明導電膜を設ける場合、平均膜厚に対する膜厚偏差を±10%になるように設けることが好ましく、更に好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内になるように設けることが好ましい。
【0083】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
次のように、実施例及び比較例の透明導電膜を作製した。
〈実施例101〉
基材として膜厚175μmのPETフィルムを用意した。基材両面に有機珪素化合物のブタノール・i−プロパノール混合アルコール水溶液(濃度0.6質量%)をバーコーターで塗布し、120℃で60分間乾燥した。乾燥後の有機珪素膜の厚さは30nmであった。
【0085】
プラズマ放電装置には、図1に示すような電極が平行平板型のものを用い、この電極間に上記ガラス基板を載置し、かつ混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
【0086】
尚、電極は、以下のものを用いた。200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布・乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax(表面最大平滑度)5μmとなるように加工した。このように電極を作製しアース(接地)した。
【0087】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作製し、対向する電極群とした。
【0088】
又、プラズマ発生に用いる使用電源として、日本電子社製:高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で、かつ5W/cm2の電力を供給した。
【0089】
電極間に下記組成(体積%で示す、以下同様)の反応性ガスを流した。
不活性ガス:ヘリウム 98.69%
反応性ガス1:水素 0.05%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナト 1.2%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05%
反応性ガス4:テトラエトキシシラン 0.01%
基材上に上記反応性ガス、反応条件により大気圧プラズマ処理を行い、錫ドープ酸化インジウム膜を作製した。
【0090】
得られた導電膜の各特性を以下のように評価した。
《透過率》
JIS−R−1635に従い、日立製作所製:分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0091】
《膜厚、製膜速度》
膜厚はPhotal社製FE−3000反射分光膜厚計により測定し、得られた膜厚をプラズマ処理時間で除したものを製膜速度とした。
【0092】
《抵抗率》
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。尚、測定には三菱化学製:ロレスターGP、MCP−T600を用いた。
【0093】
《炭素含有率の測定》
膜組成、炭素含有率は、XPS表面分析装置を用いて測定した。XPS表面分析装置としては特に限定なく、如何なる機種も使用することができるが、本実施例においては、VGサイエンティフィックス社製:ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定した時、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定を行う前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Kr等が利用できる。本測定においては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0094】
まず、結合エネルギー0〜1100eVの範囲を、データ取込み間隔1.0eVで測定し、如何なる元素が検出されるかを求めた。
【0095】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置あるいはコンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じさせなくするため、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、炭素含有率の値を原子数濃度(atomicconcentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0096】
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理にはShirleyによる方法を用いた。Shirley法については、D.A.Shirley:Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0097】
《二次イオン質量分析法》
明細書中に既述の方法で行った。
【0098】
《限界曲率半径の測定》
実施例101で得られた錫ドープ酸化インジウム付きのフィルムを縦横10cmの長さに切断した。このフィルムについて、室温25℃・相対湿度(RH)60%における表面抵抗を三菱化学製:ロレスターGP、MCP−T600を用いて測定した。この表面抵抗値をR0とする。
【0099】
このフィルムを、直径10mmφのステンレス丸棒に隙間が出来ないように巻き付けた。その状態で3分間保持した後、フィルムを丸棒より外し、再度、表面抵抗を測定した。この値をRとする。丸棒の直径を10mmφから1mmφずつ小さくし、同様の測定を繰り返した。R/R0の値が1を超えた丸棒の半径を限界曲率半径とした。
【0100】
《劣化試験》
透明導電膜積層体フィルムを10cm×10cmの大きさに切断した。このフィルムについて室温25℃・RH50%における表面抵抗を三菱化学製:ロレスターGP、MCP−T600を用いて測定した。この表面抵抗値をR0とする。このフィルムを温度80℃・RH40%の恒温恒湿漕で1週間処理し、再度表面抵抗値を測定した。この値をRとし、R/R0の比を求めた。この比は1に近い方が好ましい。
【0101】
〈実施例102〉
前記実施例101において、反応性ガスの濃度を以下にしたこと以外は101と同様にして、本発明に係る錫ドープ酸化インジウム膜を作製した。
【0102】
不活性ガス:ヘリウム 98.68%
反応性ガス1:水素 0.05%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナト 1.2%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05%
反応性ガス4:テトラエトキシシラン 0.02%
実施例102についても、実施例101と同様の評価を行った。
【0103】
〈実施例103〜106、比較例101〜103〉
不活性ガス及び反応性ガス1〜4の濃度を表1に示すように変えた以外は実施例101と同様にして、各実施例及び比較例の錫ドープ酸化インジウム膜を作製した。これらについても、実施例101と同様に評価を行った。
【0104】
〈比較例104〉
基材を実施例101と同じPETとし、この基材を直流式マグネトロンスパッタ装置内の基板保持装置に固定した。スパッタターゲットとしては、まず酸化インジウムを主成分とする焼結体(SnO2,5質量%)よりなるターゲットを設置した。更に、そのターゲット上には、5mm角の二酸化珪素のペレットも等間隔で配置した。そして、真空度2.7mPaまで真空槽内を排気した。その後、Ar/O2混合ガス(O2,1.5%)を槽内に導入し、真空度を0.67Paに保った後、スパッタリング法により基材上に製膜を行った。実施例101と同様に評価を行った。
【0105】
〈比較例105〉
実施例101で用いた基材上に、透明導電層を京都エレックス社製:有機ITOペーストニューフロコートEC−L及びテトラエトキシシランの0.5質量%エタノール溶液をディップコートした以外は実施例101と同様にして透明導電膜積層体を作製した。実施例101と同様に評価を行った。
【0106】
各透明導電膜の形成条件及び特性評価結果を表1、表2に示す。
【0107】
【表1】
Figure 0004352665
【0108】
【表2】
Figure 0004352665
【0109】
〈実施例201〉
実施例101において、プラズマ発生に用いる使用電源を、周波数10kHzの電圧で、かつ5W/cm2の電力を供給した以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0110】
〈実施例202〉
実施例101において、プラズマ発生に用いる使用電源を、周波数200kHzの電圧で、かつ5W/cm2の電力を供給した以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0111】
〈実施例203〉
実施例101において、プラズマ発生に用いる使用電源を、周波数800kHzの電圧で、かつ5W/cm2の電力を供給した以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0112】
〈実施例204〉
実施例101において、特開20001−74906の実施例1と同様に波高値10kV、放電電流密度100mA/cm2、周波数6kHzのパルス電界を印加し、かつ5W/cm2の電力を供給した以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0113】
〈実施例205〉
実施例101において、投入する電力を0.1W/cm2とする以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0114】
〈実施例206〉
実施例101において投入する電力を1W/cm2とする以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0115】
〈実施例207〉
実施例101において、投入する電力を1.5W/cm2とする以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0116】
〈実施例208〉
実施例101において、投入する電力を10W/cm2とする以外は実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0117】
〈実施例301〉
実施例103において、製膜後、空気中150℃に保った熱風乾燥機により加熱処理を行った以外は実施例103と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、評価を行った。
【0118】
各透明導電膜の形成条件及び評価結果を表3、表4に示す。
【0119】
【表3】
Figure 0004352665
【0120】
【表4】
Figure 0004352665
【0121】
〈実施例401〉
実施例101において、プラズマ放電装置を図2に示したものとし、基材を非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム:厚さ100μm)とした以外は、実施例101と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製した。実施例101と同様に、得られた膜の製膜速度、透過率、比抵抗、更にエッチング速度を評価した。
【0122】
《エッチング速度》
透明導電膜にパターニングするための下記組成の30℃のエッチング液に基材上の透明導電膜を浸漬し、基材生地が完全に露出する迄の時間で膜厚を除した値(nm/min)をエッチング速度とし、下記3ランクで評価した。
【0123】
◯:75nm/min以上
△:74〜30nm/min
×:29nm/min以下
(エッチング液)
水:濃塩酸:40%塩化第二鉄水溶液の85:8:7混合液(質量比)。
【0124】
〈実施例402〉
実施例401において、基材を日本ゼオン社製ゼオノアZF16(厚さ100μmのシクロポリオレフィン)とした以外は実施例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った。
【0125】
〈実施例403〉
実施例401において、基材を流延法で形成したポリカーボネートフィルム(帝人社製ピュアエース:厚さ100μm)とした以外は実施例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った。
【0126】
〈実施例404〉
実施例401において、基材を流延法で形成したトリアセチルセルロースとした以外は実施例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った
〈比較例401〉
比較例103において、基材を実施例401で用いた非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム:厚さ100μm)とした以外は比較例103と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った。
【0127】
〈比較例402〉
比較例103において、基材を実施例402で用いた日本ゼオン社製ゼオノアZF16(厚さ100μm)とした以外は比較例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った
〈比較例403〉
比較例103において、基材を実施例403で用いたポリカーボネートフィルムとした以外は比較例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った。
【0128】
〈比較例404〉
比較例103において、基材を実施例404で用いたトリアセチルセルロースとした以外は比較例401と同様にして錫ドープ酸化インジウム膜を作製し、実施例401と同様に評価を行った。
【0129】
各透明導電膜の形成条件及び評価結果を表5、表6に示す。
【0130】
【表5】
Figure 0004352665
【0131】
【表6】
Figure 0004352665
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、透過率特性が良好で、所望の電気特性、エッチング速度を有する透明導電膜を、安全に、生産性高く製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明導電膜の形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置の一例(平行平板電極)を示す概略図。
【図2】本発明の透明導電膜の形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置の他の例(ロール電極型)を示す概略図。
【符号の説明】
1,11 プラズマ放電処理装置
2 ガス供給手段
3a 上側電極
3b 下側電極
3c 平板電極
4,14 電源
5 ガス流路部
12 ガス発生装置
13 給気管
15 排気管
16 排気口
17,18 ニップローラ
19 ガイドローラ
20 電極冷却ユニット
21 プラズマ放電処理容器
25 ロール電極
26 固定電極
1 基材
2 元巻き基材(フィルム)
F フィルム
P ポンプ

Claims (31)

  1. 基材上に、インジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主に含有する透明導電膜で、前記金属酸化物の金属元素イオンをMとした時、前記透明導電膜のダイナミックSIMS測定におけるMSiOとMのピーク強度比(MSiO/M)が0.5〜20である透明導電膜であって、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種以上の不活性ガスと、少なくとも1種以上の有機金属化合物を含有する反応性ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって薄膜を形成し、炭素含有率が0.01〜3原子数濃度の範囲にあることを特徴とする透明導電膜。
  2. 前記ピーク強度比が0.8〜20であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
  3. 前記ピーク強度比が2〜15であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
  4. 有機金属化合物が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の形成方法。
    一般式(I) R MR
    〔式中、Mはインジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種の金属原子、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を表す。x、y及びzは各々0又は正の整数であり、x+y+z=m、x=0〜m又はx=0〜m−1、y=0〜m、z=0〜mである。〕
  5. 反応性ガスとして、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の形成方法。
  6. 反応性ガスとして、水、還元性ガス、酸化性ガスを同時に含有することを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の形成方法。
  7. 放電空間には反応性ガスと少なくとも1種の不活性ガスを導入し、該不活性ガスがアルゴン又はヘリウムを含有することを特徴とする請求項〜6の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  8. 放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを超えた高周波電圧で、かつ1W/cm以上の電力を供給して放電させることを特徴とする請求項〜7の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  9. 高周波電圧が150MHz以下であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  10. 高周波電圧が200kHz以上であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  11. 高周波電圧が800kHz以上であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  12. 電力が1.2W/cm以上であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  13. 電力が50W/cm以下であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  14. 電力が20W/cm以下であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜の形成方法。
  15. 高周波電圧が連続したサイン波であることを特徴とする請求項8〜14の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  16. 高周波電圧を印加する電極の少なくとも一方が誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項8〜15の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  17. 誘電体が比誘電率6〜45の無機物であることを特徴とする請求項16記載の透明導電膜の形成方法。
  18. 電極の表面粗さRmaxが10μm以下であることを特徴とする請求項16又は17記載の透明導電膜の形成方法。
  19. 基材の表面温度が300℃以下であることを特徴とする請求項〜18の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  20. 製膜後、熱処理を行うことを特徴とする請求項〜19の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  21. 熱処理を空気雰囲気下で行うことを特徴とする請求項20記載の透明導電膜の形成方法。
  22. 熱処理を還元雰囲気下で行うことを特徴とする請求項20記載の透明導電膜の形成方法。
  23. 熱処理を酸化雰囲気下で行うことを特徴とする請求項20記載の透明導電膜の形成方法。
  24. 熱処理を真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項20記載の透明導電膜の形成方法。
  25. 熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項20記載の透明導電膜の形成方法。
  26. 熱処理の温度が50〜300℃であることを特徴とする請求項20〜25の何れか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  27. 透明導電膜がITO膜であって、該ITO膜がIn/Sn原子数比で100/0.1〜100/15の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の透明導電膜。
  28. 基材が透明樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の透明導電膜。
  29. 請求項4〜26の何れか1項記載の形成方法によって作製された透明導電膜を有する物品。
  30. 基材の透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基材、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板、PDP用電磁遮蔽フィルム、電子ペーパー用フィルム基板であることを特徴とする請求項29記載の物品。
  31. 透明導電膜がパターニングされた電極であることを特徴とする請求項29記載の物品。
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