WO2006014020A1

WO2006014020A1 - ソフトな風合、耐磨耗性及び深色効果に優れたポリエステル立毛布帛

Info

Publication number: WO2006014020A1
Application number: PCT/JP2005/014710
Authority: WO
Inventors: Migifumi Fukunaga; Hirokazu Hayashi
Original assignee: Teijin Fibers Limited
Priority date: 2004-08-06
Filing date: 2005-08-04
Publication date: 2006-02-09
Also published as: JP2006045731A; TW200609400A; KR20070039484A; US20080020173A1; CN1965118A

Abstract

ソフトな風合い、耐摩耗性、深色効果を兼備した立毛布帛は、ポリエステル繊維糸条からなり編織組織を有する地組織部と、前記地組織部に編み込まれ、または織り込まれたポリエステル繊維を含むパイル部とを有する立毛布帛であって、パイル部用ポリエステル繊維が、２～６の偏平率を有する偏平な断面形状と、0.5～1.5dtexの単繊維繊度を有し、前記偏平断面形状において、互に対向する２対以上のくびれ（谷部）が形成されている。

Description

明細書ソフトな風合、耐磨耗性及び深色効果に優れたポリエステル立毛布帛技術分野

本発明は、偏平なポリエステル繊維から形成されたカットパイル層を有し、ソフトな風合い、耐磨耗性及び深色効果に優れたポリエステル立毛布帛に関するものである。背景技術

従来、カーシ一ト用、家庭内装用、オフィス内装用、展示場内装用、衣料用などの用途で立毛布帛が大量に使用されている。特に近年においては、かかる立毛布帛に要求される特性も高度化されており、種々の立毛布帛が提案されている。

例えば、特開平 7 — 1 02445号公報（特許文献 1 ) では、パイル用原糸の艷消剤含有量を低くし、かつ繊度を特定の範囲内とすることにより、深色効果を向上させた立毛布帛が提案されている。また、実公平 7 — 40 54 1号公報（特許文献 1 ) 及び特開平 1 0— 1 5 89 5 3号公報（特許文献 3 ) では、パイル繊維としてくびれ付き扁平断面糸を用いることにより、深色性を向上させた立毛布帛が提案されている。しかしながら、これらの立毛布帛では、深色効果には優れるものの、ソフトな風合いの点で満足とはいえなかった。

一方、ソフトな風合いを有する布帛としては、極細繊維を用いて布帛を構成することが知られている（例えば特開平 7 — 7087 1号公報（特許文献 4 ) ) 力パイル繊維として通常の極細繊維を使用すると、繊維表面の面積の増大により、光の著しい乱反射が生じ、得られた染色布帛は白っぽく深みのない色になるという問題があった。さらには、パイル繊維の単糸繊度が小さいため、単糸が切れやすく耐摩耗性が低下するという問題があつた。

このように、ソフトな風合いと耐摩耗性を有し、深色効果の高い立毛布帛はこれまであまり提案されておらず、その提案が望まれていた。

〔特許文献 1〕特開平 7 — 102445号公報

〔特許文献 2〕実公平 7 — 4Q541号公報

〔特許文献 3〕特開平 10— 158953号公報

〔特許文献 4〕特開平 7 — 70871号公報発明の開示

本発明の目的はソフトな風合い、並びに優れた耐摩耗性、及び深色効果を兼備したポリエステル立毛布帛およびその繊維製品を提供することにある。

本発明者は上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、パイル繊維として、特定の単糸繊度を有するくびれ付き扁平断面ポリエステル繊維糸条を用いることにより、所望の立毛布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至つ ,こ。

本発明のポリエステル立毛布帛は、ポリエステル繊維糸条により構成された編織組織を有する地組織部と、前記地組織部に編み込まれ、又は織り込まれたポリエステル繊維糸条を含むパイル部とから構成され、

前記パイル部が、前記地組織部の一面上に形成され、かつ前記ポリエステル繊維を含むカツトパイル層を有し、

前記パイル部を形成しているポリエステル繊維が、 0. 5〜 1. 5dtex の単繊維繊度、及び偏平な断面形状を有し、

前記偏平な断面形状の、その最大幅 Bの、この最大幅方向に直角をなす方向における最大厚さ C 1に対する比 B Z C 1により表される偏平率が、 2〜 6の範囲内にあり、前記偏平断面形状において前記最大幅 Bに沿って互に対向する 2辺から、偏平断面の内側に向って、互に対向して伸び出ている 2対以上のくびれが形成されていて、それによって、ソフトな風合、高い耐摩耗性、及び深色効果を示すことを特徵とするものである。

本発明のポリエステル立毛布帛において、前記パイル部用偏平なポリエステル繊維の単繊維繊度が、 0. 6〜1. 4d t exの範囲内にあることが好ましい。

本発明のポリエステル立毛布帛の前記パイル部用偏平なポリエステル繊維の偏平な断面形状において、前記最大厚さ値 C 1の最小厚さの値 C2に対する比 C 1 / C2が、 1. 05〜 4. 00の範囲内にあることが好ましい。

本発明のポリエステル立毛布帛において、前記パイル部用偏平ポリエステル繊維がその質量に対して、 2. 5質量％以下の艷消し剤を含むことが好ましい。

本発明のポリエステル立毛布帛において、前記パイル部用偏平ポリエステル繊維糸条が無撚りであることが好ましい。

本発明のポリエステル立毛布帛において、前記カットパイル層中の前記偏平ポリエステル繊維パイルの密度が、 5 X 10⁴〜20 X 10⁴ d t exZ cm²の範囲内にあり、かつ下記式により定義されるパイル密度カバ一ファクタ一：

PDF = PN X

ί D

PDF ：パイル密度カバ一ファクタ一 PN ：パイル層の面積 1 cm²中に存在するパイル繊維の数 D ：パイル単繊維の繊度（d t ex)

が 2 X 10⁴の範囲内にあることが好ましい。

本発明のポリエステル立毛布帛において、少なくとも前記パイル部を構成する偏平ポリエステル繊維糸条に染色が施されていることが好ましい。

本発明の自動車内装用又はインテリア用繊維製品は、前記本発明のポリエステル立毛布帛を含むものである。

本発明により、ソフトな風合、耐摩耗性及び深色効果に優れたポリエステル立毛布帛及びそれを含む自動車用装用又はインテリア用繊維製品が得られる。図面の簡単な説明

図 1 は、本発明のポリエステル立毛布帛の断面説明図であり、図 2は、本発明のポリエステル立毛布帛に含まれるパイル部用偏平ポリエステル単繊維の断面形状の一例を示す断面説明図であり、図 3は、本発明のポリエステル立毛布帛に含まれるパイル部用偏平ポリエステル単繊維の断面形状の他の例を示す断面説明図であり図 4は、本発明のポリエステル立毛布帛に含まれるパイル部用偏平ポリエステル単繊維の断面形状の更に他の例を示す断面説明図であり、

図 5は、本発明のポリエステル立毛布帛の風合方式反応に用いられる接触子の斜視説明図である。発明を実施するための最良の形態

図 1 において本発明のポリエステル立毛布帛 1は、ポリエステル繊維糸条により構成された編織組織を有する地組織部 2 と、この地組織部 2に編み込まれ、或は織り込まれたポリエステル繊維糸条 3 aから形成されたパイル部 3 とから構成されている。前記パイル部 3は、前記地組織部 2の一面上に形成され、かつ前記ポリエステル繊維、から形成された、カットパイル層 3 aを有している。

前記パイル部 3を形成し、かつ前記カツトパイル層 3 aを形成しているポリエステル繊維は、 0.5〜 1.5dtexの、好ましくは 0.6〜1.4 dt exの単繊維繊度を有し、かつ偏平な断面形状を有するものである前記パイル部用偏平ポリエステル単繊維の断面形状において、その最大幅 Bの、この最大幅 Bの方向に直角をなす方向における最大厚さ C1に対する比 B /C1により表される偏平率は、 2〜 6の範囲内にあり、好ましくは 3〜 5の範囲内にある。

前記偏平断面形状において、前記最大幅 Bに沿って、互に対向する 2辺から、偏平断面の内側に向って互に対向して伸び出ている 2 対以上、好ましくは 3〜 5対、のくびれ（谷部）が形成されている図 2において、パイル部用ポリエステル単繊維の断面 4において、その最大長さ Bに沿って、互に対向する 2辺 4 a及び 4 bから、断面 4の内側に向って、互に対向して伸びる 3対のくびれ（谷部）、すなわち 5 aと 5 bの 1対、 6 aと 6 bの 1対及び 7 aと 7 bの 1対が形成されており、図 2 において、各くびれ（谷部）の両側には膨出部（山部）が形成されている。対向して対をなすがくびれ 5 aと 5 b、 6 aと 6 b並びに 7 aと 7 bは、それぞれ断面 4の幅方向中心線 8に関して実質的に対称をなしているが、必ずしも厳密に対称である必要はない。それぞれ対をなすくぴれ部の間隔の最小値 C2に対する断面の最大幅 C1の比 C1ZC2は、 1.05〜4.00であることが好ましく、 1. 10〜2· 50であることが好ましい。

上記のような偏平断面形状を有するポリエステル単繊維は、偏平であって、その横方向中心線の両側に対向する 1対の偏平面には、それぞれの面から互に対向して内側に向って伸び出ている 2対以上の溝が、偏平単繊維の長手方向に沿って伸びているものである。つまり、本発明の立毛布帛において、そのカットパイル層を形成するポリエステル単繊維は偏平断面形状を有し、その 1対の偏平面には、単繊維の長手方向に沿って伸びかつ、互に対向している 2対以上の溝が形成されているものである。

本発明に用いられるパイル部用偏平ポリエステル単繊維の断面形状において、互に対向して対をなす 2個の谷部からなるくびれの数が、 1個以上であると、カットパイルを形成する偏平ポリエステル単繊維の図面の摩擦係数が大きくなり、耐摩耗性が不十分になる。また、偏平ポリエステル単繊維の断面偏平部（B / C 1 ) が、 2未満であると、単繊維の曲げ剛性が高くなり、所望のソフトな風合が得られない、また、それが 6 を超えると、摩耗などの外力の作用により偏平形態が変形し、或は分割し、外観品位が損われる。

また、カットパイルを形成する偏平ポリエステル単繊維の比 C 1 / C2は、くびれ（谷部）の深さに関係するパラメ一夕であって、この比 C 1/ C2の値が、 1. 02未満であると（つまりくびれの深さが過少であると）得られる偏平ポリエステル単繊維の摩擦係数が大きくなりその耐摩耗性が不十分になる。また、比 C 1Z C2の値が 4. 00を超えると（つまりくびれの深さが過大になると）、くびれによる耐摩耗性向上効果が飽和し、却って、紡糸工程が不安定になり、単繊維に、そのくびれ部に沿って、割れが発生したり、或は単繊維の形状、性能の均一性が低下する。

図 3 に示されている単繊維の偏平な断面形状において、くびれ（谷）部 5 a , 5 b , 6 a , 6 b , 7 a , 7 bの深さが比較的浅く、くびれ（谷）部の両側の山部は比較的なだらかな曲線をなしている。このような断面形状を有する偏平ポリエステル繊維には、やわらかく、かつ光沢が強いという特徴を有する。

図 4に示されている単繊維の偏平な断面形状において、 3対のくびれ（谷部）と、それぞれの両側に山部が形成されているが、くびれ 6 a及び 7 aの間の山部及びくびれ 6 bと 7 bとの間の山部の幅及び高さは、他の山部のそれらにくらベて小さく形成されている。本発明に用いられるパイル部用偏平ポリエステル単繊維は、 0. 5 〜し 5d t ex、好ましくは 0. 6〜1. 4d t ex、単繊維繊度を有する。この単繊維繊度が 1. 5d t exより太くなると得られるカツトパイル層の柔軟度が不十分になる。また、この単繊維繊度が 0. 5d t ex未満であると、得られるカットパイル層のソフトな風合は十分であるが、カツトパイル繊維の機械的強度が不十分になり、カットパイル層の耐摩耗性が不十分になる。

本発明の立毛布帛に用いられるパイル部用偏平ポリエステル繊維には、艷消し剤が、繊維質量に対し 2. 5質量％以下の含有量で含まれていることが好ましく、 0〜1. 5質量％の含有量で含まれてぃることがさらに好ましい。艷消し剤の含有量が、 2. 5質量％より大になると、得られる偏平ポリエステル繊維の深色効果が不十分になることがある。本発明の偏平ポリエステル繊維に用いられる艷消し剤は、通常のポリエステル繊維用艷消し剤から選ぶことができるが、 T i 0₂， S i 0₂， BaS0₄などのように高い屈折率を有し、かつ、 0. 1〜 1 m程度の平均粒流を有するものを用いることが好ましく、 T i 0₂含有艷消し剤を用いることがより好ましい。

本発明に用いられるカツトパイル層用ポリエステル繊維糸条は、無撚であることが好ましい。撚りがかけられていると、単繊維の曲げ剛性が高くなり、所望のソフトな風合いが得られないことがある。また、カットパイル層用ポリエステル繊維には、捲縮が付与されていてもよいし、捲縮が付与されてなくてもよい。捲縮を付与法としては、通常の仮撚捲縮加工、空気ジェット捲縮法、圧縮捲縮法などを使用することができる。なお、捲縮を付与する場合、捲縮率としては 1 %以上（より好ましくは 1〜 10 % ) であることが好ましいカツトパイル層のポリエステルのパイルの高さには、特に制限はないが、 0.5〜 1.5mmの範囲内であることが好ましい。パイル高さが 0.5mmよりも小さいと、ソフトな風合いが損なわれるおそれがある。また、それが 1.5匪よりも大きいと、パイル繊維が倒伏して、力ットパイル層のソフトな風合を低下させることがある。

また、カットパイル層の前記ポリエステル繊維パイルの密度は 5 X 10⁴〜20X 10⁴ dtex/cm²であることが好ましく、より好ましくは 6 X 10⁴〜 12X 10⁴dtex/cm²であり、かつパイル密度カバーファクターが 2 X 10⁴以上（より好ましくは 6 X 10⁴〜2. 5X 10⁵であることが好ましい。かかるパイル密度、パイル密度カバーファクタ一は深色性に影響し、パイル密度が高いほど深色効果が向上するが、パイル密度が 1. 2X 10⁵dtexZcm²よりも大きいと、ソフトな風合いが損なわれるおそれがある。またパイル密度カバーファクターが 2 X 10 ⁴未満であれば、パイル繊維が倒伏するおそれがある。

なお、パイル密度は、 1 cm²あたりの単繊維の本数を数え、それに単糸繊度をかけ算して算出してもよいが、例えば、本発明の立毛布帛が経編物である場合、コース数（本/ cm) Xゥエール数（本/ cm) Xパイル用糸条の総繊度（dtex) X 2で算出してもよい。ただし、総繊度とは、パイル用糸条の単繊維繊度（dtex) と 1糸条内の単繊維数との積である。また、パイル密度カバーファクタ一は、直接 1 cm²あたりの単繊維の本数を数え、それに単糸繊度の平方根の逆数をかけ算してもよいが、例えば、本発明の立毛布帛が経編物である場合、コース数（本/ cm) Xゥェ一ル数（本/ cm) Xパイル用糸条の単繊維繊度（d t e x) の平方根の逆数 X 1糸条内の単繊維数 X 2で算出してもよい。ただし、総繊度とは、パイル用糸条の単繊維繊度（d t ex) X 1糸条内の単繊維数である。

すなわち、パイル密度カバーファクタ一は、下記式により算出することができる。

PDF = PN X 但し、 PDF ：パイル密度カバ一ファクター

PN ：パイル層の面積 1 cm²中に分布しているパイル繊維の数

D ：パイル単繊維の繊度（d t ex)

本発明において、パイル部用偏平ポリエステル繊維を形成するポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とジグリコール成分とから製造される通常のポリエステルを用いることができる。ジカルボン酸成分としては、主としてテレフタル酸が用いられることが好ましく、ジグリコール成分としては主としてエチレングリコール、トリメチレングリコール及びテトラメチレングリコールから選ばれた 1種以上のアルキレングリコールを用いることが好ましい。また、ポリエステル樹脂には、前記ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に、第 3成分を含んでいてもよい。第 3成分としては、カチオン染料可染性ァ二オン成分、例えば、ナトリウムスルホイソフタル酸；テレフタル酸以外のジカルボン酸、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸；及びアルキレングリコール以外のグリコール化合物、例えばジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフエノール A、ビスフエノールスルフォンの 1種以上を用いることができる。また、必要に応じて、前記の艷消し剤以外に、微細孔形成剤（有機スルホン酸金属塩）、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤（三酸化二アンチモン）、蛍光増白剤、着色顔料、帯電防止剤（スルホン酸金属塩）、吸湿剤（ポリオキシアルキレングリコール）、抗菌剤、その他の無機粒子の 1種以上を含有させてもよい。

なお、本発明の立毛布帛において、カットパイル層は、前記ポリエステル力ットパイル繊維だけで構成されることが好ましいが、力ットパィル層に、 30重量％未満であれば、他のカツトパイル繊維が含まれていてもさしつかえない。

本発明の立毛布帛において、地組織部はポリエステル繊維糸条からなる編織組織を有するものである。地組織用ポリェステル繊維を形成するポリエステル樹脂としては、前述のものでよく、艷消し剤の含有量も特に限定されない。また、地組織用ポリエステル繊維糸条の単糸繊維繊度および総繊度は、布帛の風合いを損なわない上で

、単糸繊維繊度 0. 5〜5. Od t ex、総繊度 30〜 300d t exであることが好ましい。また、単糸繊維の断面形状には制限はなく、通常の丸型断面のほかに三角、扁平、くびれ付扁平、十字形、六様形、あるいは中空形の断面形状であってもよい。さらに、かかるポリエステル繊維糸条は、仮撚捲縮加工糸や 2種以上の構成糸条を空気混繊加工や複合仮撚加工させた複合糸、さらには芯部に弾性糸、鞘部に非弾性糸が位置するカバリング糸であってもよい。

本発明の立毛布帛において、編織組織に制限はなく、例えば経パィル織物、緯パイル織物、シンカーパイル編物、ラッセルパイル編物、トリコットパイル編物などのループパイルを力ットしたパイル布帛ゃモケット（二重織）織機によるパイル織物をセンターカットしたパイル布帛を包含する。

本発明の立毛布帛は、例えば下記の製造方法により製造することができる。

まず、例えば、特開昭 5 6— 1 07044号公報第 5ページ第 2図 Cなどのような吐出孔を有する口金を用いてポリエステル樹脂を紡糸することにより、 2個以上のくびれ部を有する断面扁平率 2〜 6の扁平断面を有し、かつその単糸繊度が 1. 5 d t e x以下であるパイル部用ポリエステル繊維用糸条を製造する。一方、通常の口金を用いてポリエステル樹脂を紡糸することにより、地組織部用ポリエステル繊維糸条を製造する。次いで、両糸条を用いて、パイル布帛を製造するその際、編物組織を有するパイル部を形成するのは、地組織を製編し、その上に伸び出るシンカーパイル、ポールトリコットパイル、ダブルラッセルパイルなどのループパイル組織を形成し、このル —プパイルをカツ卜することによってカツトパイル層を形成する。ポールトリコットパイルは、トリコット編組織のパイル編み部分を、起毛機を用いてループパイルに形成することによって得られる。一方、織物組織を有するパイル部を形成するには、経パイル織物又は緯パイル織物を製織し、そのループパイルをカットするか、あるいはモケット織物を製織し、そのパイル糸をセン夕一カツ卜することによってカツトパイル層を形成する。

本発明の立毛布帛は、通常、プレセット乾熱処理された後、通常の染色加工、ファイナル乾熱処理される。その際、プレセット乾熱処理の温度としては 1 5 0〜200 °C、染色加工の温度としては 1 30〜 1 3 5 °C、ファイナル乾熱処理の温度としては 140〜1 60 °Cの範囲内であることが好ましい。

なお、本発明の立毛布帛の地組織部において、カットパイル層と反対側の面には、公知のバックコーティング層やパイル層などの他の層が形成されていてもよい。さらには、常法のエッチングによる模様づけ、エンボス加工、アルカリ減量加工、着色プリント、撥水加工、紫外線遮蔽剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。

かくして得られた本発明の立毛布帛において、カツトパイル層ポリエステル繊維が扁平断面を有しており、かつその単糸繊度が 1. 5d t ex以下と小さいので、曲げ剛性が小さくソフ卜な風合いが得られる。また、この扁平断面はくびれ部が形成されているので、他の物体と接触した際、接触面積が小さくなるので、摩擦抵抗が小さく優れた耐摩耗性が得られる。同時に、かかるくびれ部の凹凸効果により深色性が得られる。実施例

本発明を下記実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。

( 1 ) 風合い

カトーテック（株）製 KES- F4表面特性試験により、被試験布を 20 cm X 20cniの大きさにカットし、 0. 5ιηιη径のピアノ線 10本が図 5に示されるように曲げられた接触子の底面に 98mN ( l Ogf ) の荷重で試料を圧着し、試料を移動速度 0. l cm/ s e c、測定張力 196mN ( 20gf ) / c mにおいて経方向および緯方向の表面摩擦係数各々測定した。なお n数は 5 としその平均値を求めた。

( 2 ) 耐摩耗性 1

J I S L 1096- 1990 6. 32 4 D法（マーチンデール法）により、 2 万回回転させた後、変退色用ダレ一スケールで摩耗変退色を評価した。なお n数は 5 としその平均値を求めた。

( 3 ) 耐摩耗性 2

JIS L 0894 学振試験機法にて、被試験布を 20CE1X 3 cmの大きさにカットし、 9.8N ( 1. Okgf) の荷重をかけ、 1万回回転させた後、摩耗パイル脱落性を評価した。なお n数は 5 としその平均値を求めた。

( 4 ) 表面外観

パイル繊維の倒伏状態を目視観察し、〇：倒伏がなく良好である。 △ : 普通である。 X ：倒伏があり不良である。の 3段階評価を行つた。

( 5 ) 深色効果

マクベスカラ一アイ（Macbeth color-Eye) モデル M— 2020 (米国、コルモ一ゲン社製）を使用して、光源 D 65、 10度視野で被試験布の L値を測定した。なお n数は 5 としその平均値を求めた。

実施例 1

艷消し剤（酸化チタン）を含有しないポリエチレンテレフタレ一卜樹脂を、紡糸口金に穿孔され、かつ図 1 に示されているフィラメント断面形状に対応する形状を有する 72個の溶融紡糸孔（長手中心線の両側に、片側 4個の円弧状膨出部と、その間に形成された 3個のくびれ部を有する）を通して、紡糸温度 300°Cで押し出し、通常の方法により延伸することにより、ヤーンカウントが 88dtex/72フイラメント（単糸繊度 1.2dtex) の延伸マルチフィラメント糸条を作製し、パイル糸用糸条とした。このパイル糸用糸条は、図 2に示されているような断面形状を有するフィラメント（単繊維）からなり、その断面形状の断面扁平率（B /C1) は 3.2であり、扁平断面において、その幅の最大値（C1) の、最小値（C2) に対する比（C1 /C2) が 1.2であつた。

一方、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂を、通常の丸断面形状の溶融紡糸孔を通して、紡糸、延伸することにより、ヤーン力ゥン卜が 84dtexZ36フィラメントの延伸マルチフィラメント糸条を作製し、ミドル糸用糸条とした。また、通常のポリエチレンテレフ夕レート樹脂を、通常の丸断面形状の溶融紡糸孔を通して、紡糸、延伸した後、通常の仮撚捲縮加工を施すことにより、ヤーンカウントが 84dtexZ36フィラメントの仮撚マルチフィラメント糸条を作製し地糸用糸条とした。

次いで、カールマイヤ一社製のトリコット経編機を使用して、前記パイル糸用糸条を箴の振り表示： 1034、前記ミドル糸用糸条を箴の振り表示： 1023、地糸用糸条を簇の振り表示： 1012で、コース数： 86コース 2.54cm, ゥエール数： 28ゥエール Z 2.54cmの編地を編成した。そして、得られたループパイル布帛を染色工程に供し、下記組成の染料組成物

(染色浴）：

Teratop Blue HLB (商標、チバガイギ一社製） 0.4% (布帛質量に対して）

Irgasol DAM (商標、チバガイギ一社製） l g /リットル酢酸 0.5g/リットルにより、液流染色機（日阪製作所製）を用いて 130°C45分間の染色を施した。染色後の布帛をショートループドライヤー（ヒラノテクシード社製）に供し、乾燥を施した。起毛剤処理をパディング機（ヒラノテクシード社製）にて実施し、乾燥セッ夕一に供して、拡布状態において、温度： 170°C、' 時間： 1分間のプレセット乾燥熱処理を施した後、針布起毛機（日機（株）社製）にてループパイルの先端部分を起毛しカットし、その後、シャーリング機（日機（株）社製）に供して、ループパイルの先端部分を剪毛し、カットパイル

(パイル高さ l mm) を形成した。得られたカットパイル布帛を、乾燥セッター（ヒラノテクシード社製）に供してこれに 160C X 1分のファイナル乾熱処理を施し、コース数： 79コース /2.54cm、ゥェ —ル数： 43ゥエール / 2.54cmの立毛布帛を得た。

得られた立毛布帛において、パイル密度が 9.27 X 10⁴ dtex/cm² , パイル密度カバーファクターが 6.86 X 10⁴、ポリエステルカツトパィル繊維の単糸繊度が 1.2dtex、深色性が L値で 4.92、耐摩耗性 1

(マーチンデール法）で 3 — 4級、耐摩耗性 2 (学振試験機法）で 3級、経方向の表面摩擦係数^が 0.32、緯方向の表面摩擦係数 / が 0.297、表面外観が良好であって、ソフトな風合い、高い耐摩耗性、高い深色性を兼備するものであった。

比較例 1

実施例 1 と同様にして立毛布帛を製造した。但し、パイル糸用糸条を、通常のポリエチレンテレフ夕レート樹脂を、通常の丸断面形状の溶融紡糸孔を通して、紡糸、延伸することにより製造した、ャ —ンカウントが 56dtex/144フィラメントの延伸マルチフィラメント糸条を使用し、コース数： 90コース /2.54cm、ゥエール数： 28ゥエール /2.54cmの編地を編成した。コース数： 79コース/ 2.54cm, ゥエール数： 43ゥエール 2.54cmの立毛布帛を得た。

得られた立毛布帛において、パイル密度が 5.61X 10⁴dtex/cm² , パイル密度カバーファクターが 2.31 X 10⁵、ポリエステルカツトパィル繊維の単糸繊度が 0.39dtex、深色性が L値で 6.64、耐摩耗性 1 (マーチンデ—ル法）で ₃級、耐摩耗性 2 (学振試験機法）で 2級、経方向の表面摩擦が 0.313、緯方向の表面摩擦が 0.325、表面外観が〇と、耐摩耗性、深色効果に劣るものであった。

比較例 2 実施例 1 と同様にして立毛布帛を製造した。但し、パイル糸用糸条として、通常のポリエチレンテレフ夕レート樹脂を、通常の扁平断面形状の溶融紡糸孔を通して、紡糸、延伸することにより製造された、ヤーンカウントが 88dtex/72フィラメントのくびれのない扁平糸条を使用し、コース数： 90コース Z2.54cm、ゥエール数： 28ゥエール /2.54cmの編地を編成した。コース数： 79コース Z 2.54cm、ゥエール数： 43ゥェ一ル Z2.54cmの立毛布帛を得た。

得られた立毛布帛において、パイル密度が 9.26Xl0⁴dtex/cm², パイル密度カバーファクターが 6.86 X 10⁴、ポリエステルカツトパィル繊維の単糸繊度が 1.2dtex、深色性が L値で 5.64、耐摩耗性 1.

(マーチンデール法）で 3級、耐摩耗性 2 (学振試験機法）で 2級、経方向の表面摩擦が 0.313、緯方向の表面摩擦が 0.325、表面外観が〇と、耐摩耗性、深色効果に劣るものであった。産業上の利用可能性

本発明の立毛布帛は、ソフトな風合い、耐摩耗性、深色性を兼備しているため、カーシートや天井部材などの車両内装用、椅子張り、カーペットなどの家庭およびオフィス内装用、展示場内装用、衣料用などの繊維製品として使用することができ、その工業的価値は極めて大である。

Claims

1 . ポリエステル繊維糸条により構成された編織組織を有する地組織部と、前記地組織部に編み込まれ、又は織り込まれたポリエステル繊維糸条を含むパイル部とから構成され、

前記パイル部が、前記地組織部の一面上に形成され、かつ前記ポ請

リエステル繊維を含むカツトパイル層を有し、

前記パイル部を形成しているポリエステル繊維が、 0. 5〜1. 5 d t ex の単繊維繊度、及び偏平な断面形状を有し、

前記偏平な断面形状の、その最大幅 Bの、この最大幅方向に直角をなす方向における最大厚さ C 1に対する比囲 B Z C 1により表される偏平率が、 2〜 6の範囲内にあり、前記偏平断面形状において前記最大幅 Bに沿って互に対向する 2辺から、偏平断面の内側に向って、互に対向して伸び出ている 2対以上のくびれが形成されていて、それによって、ソフトな風合、高い耐摩耗性、及び深色効果を示すことを特徴とするポリエステル立毛布帛。

2 . 前記パイル部用偏平なポリエステル繊維の単繊維繊度が、 0. 6〜1. 4d t exの範囲内にある、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

3 . 前記パイル部用偏平なポリエステル繊維の偏平な断面形状において、前記最大厚さ.値 C 1の最小厚さの値 C 2に対する比 C 1 / C 2が、し 05〜 4. 00の範囲内にある、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

4 . 前記パイル部用偏平ポリエステル繊維がその質量に対して、 2. 5質量％以下の艷消し剤を含む、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

5 . 前記パイル部用偏平ポリエステル繊維糸条が無撚りである、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

6. 前記力ッ卜パイル層中の前記偏平ポリエステル繊維パイルの密度が、 5 xi0⁴〜20xi0⁴dtexZcm²の範囲内にあり、かつ下記式により定義されるパイル密度カバーファクター：

1

PDF = PN X

PDF ：パイル密度カバーファクター

PN ：パイル層の面積 1 cm²中に分布しているパイル繊維の数

D ：パイル単繊維の繊度（dtex)

が 2 X 10⁴の範囲内にある、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

7. 少なくとも前記パイル部を構成する偏平ポリエステル繊維糸条に染色が施されている、請求の範囲第 1項に記載のポリエステル立毛布帛。

8. 請求の範囲第 1〜 7項のいずれか 1項に記載のポリエステル立毛布帛を含む、自動車内装用又はインテリア用繊維製品。