明 細 書
アミノ酸含有茶飲料
技術分野
[0001] 本発明はカテキンを多く含む茶飲料に関する。より詳細には、本発明は容器に収 容して加温販売されるカテキンを多く含む茶飲料にお!、て、加温劣化によって発生 する独特の苦味、渋味等を抑制する方法及び該方法で呈味を改善した茶飲料に関 する。
背景技術
[0002] カテキン類は、コレステロール上昇抑制作用剤(特開昭 60-156614)や α—アミラー ゼ活性阻害作用(特開平 3-133928)等において、その生理的な有益性が示されてい る。またそれ以外にも、抗酸化作用、殺菌作用、抗がん作用、高血圧低下作用、血 糖値上昇抑制など多様な生理作用が知られており、力テキン類を効果的に摂取でき る飲料が望まれている。
[0003] 茶は、日常的に摂取され、し力も元来力テキン類を含んでいるので、そのカテキン 類の量を高めれば、力テキン類を効果的に摂取する飲料として最適である。茶を容 器に充填して市販される茶飲料は、店頭あるいは自動販売機等で販売に供される際 に加温されることがあるが、加温によりその品質が著しく劣化する場合がある。問題と なる品質劣化としては、風味劣化が主として挙げられ、加温によって独特の渋味や苦 味が発生し、顧客の満足が十分に得られない場合がある。カテキンを多く含む配合 の茶飲料においては特にその傾向が大きぐ販売時に加温状態であるとその傾向は さらに顕著である。
[0004] 出願人が室温な ヽし冷蔵状態で販売して!/ヽる緑茶飲料「健康系 カテキン式 (商標 登録出願中)」には、 100mlあたりカテキンを 60mg含有し、グルタミン酸は 5mg含有す ると表示されて 、るが、苦味あるいはその抑制方法に関する表示はされて 、な 、。
[0005] また、特開 2004-73057には、加温による品質劣化をサイクロデキストリン等を添加し て抑制する技術が開示されている。また、特開 2000-197449には、テアニン添加によ り苦味と渋味の少ない半発酵茶が開示されている。し力しながら、いずれも、高力テキ
ン含量の茶飲料における加温劣化により発生する苦味抑制に関しての記載はない。
[0006] [特許文献]
特許文献 1:特開昭 60-156614
特許文献 2:特開平 3-133928
特許文献 3:特開 2004-73057
特許文献 4:特開 2000-197449
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、カテキンを多く含み、かつ加温販売においても劣化による渋味、苦味が 少なぐ飲みやすい茶飲料を提供することを目的とする。
[0008] 本発明はまた、カテキンを多く含む茶飲料に生じる可能性がある渋味、苦味を防止 する方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、茶飲料にグルタミン酸を配合することにより、力テキン類を多く含み
、かつ加温販売においても劣化による渋味、苦味が少なぐ飲みやすさを有する茶飲 料を製造することに成功した。
[0010] 本明細書において、茶とは、不発酵茶 (緑茶)、半発酵茶(ウーロン茶)、発酵茶 (紅 茶)等を含む茶一般を意味し、緑茶としては煎茶、番茶、玉露、碾茶、釜炒り茶等が 挙げられる。本発明において、好ましい茶は緑茶である。また本発明において、茶飲 料とは、上記原料茶から得られた抽出液を容器詰したものであり、例えば、金属缶の ような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌 条件で製造される。ペットボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについて は、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で殺菌後、一定温度まで冷却して容器に充填 する等の方法が採用される。
[0011] 本発明においては、茶飲料中のカテキン類の好ましい濃度は 40〜100mg/100mlで ある。
カテキン類の濃度が 40mg/100mlに満たない場合は渋味に留意する必要性は薄れ、 また、 lOOmg/lOOml以上の場合には、本発明の技術を用いて、渋味を低減したとして
も飲み難くなるからである。
[0012] 葉抽出液のカテキン類が当該濃度以下である場合には、力テキン類を高含量で含 む緑茶抽出物の濃縮物および精製物を配合することができる。緑茶抽出物の濃縮物 や精製物としては市販の三井農林 (株)「ポリフエノン」、伊藤園 (株)「テアフラン」、太陽 化学 (株)「サンフエノン」などが挙げられる。また、形態としては、固体、水溶液、スラリ 一状など種々のものが挙げられる。
[0013] 本明細書で言うカテキン類は、非重合カテキンあるいは単量体の茶カテキンのこと であり、カテキン、ガロカテキン、力テキンガレート、ガロカテキンガレート、ェピカテキ ン、ェピガロカテキン、ェピカテキンガレート、ェピガロカテキンガレートの 8種類を指 す。
[0014] 飲料中あるいは緑茶抽出物中のカテキン類は、フィルター(0.45 μ m )で濾過した 液を高速液体クロマトグラム法 (HPLC法)を用いることで、それぞれ個別のピークとし て測定することができる。
[0015] 本発明は、力テキン類を多く含む茶飲料を、加熱滅菌したとき及び Z又は消費前に 加温保存したときに発生した渋味苦味を、茶飲料の製造工程で該飲料にグルタミン 酸を添加して抑制する。
[0016] グルタミン酸は、ナトリウム塩として都合よく使用できる力 食用に適する他の塩基と の塩または遊離のグルタミン酸を用いてもよい。または、それらを多く含む食品素材、 例えば、コンブ抽出物などを用いてもよい。グルタミン酸の添力卩量は茶飲料中のカテ キン類の量にもよる力 カテキン類が 40〜100mg/100mlの場合、遊離グルタミン酸とし て 4〜20mg/100mlである。茶飲料を販売時に加温保存する場合には、室温以下で販 売される場合に比べてグルタミン酸の添加量は若干多ぐ遊離グルタミン酸量として 6 〜20mg/100mlとするのが好ましい。力べして、 55〜70°C、 1日〜 4週間の加温保存後 にも、渋味、苦味を感じることなぐ茶飲料を摂取することができる。グルタミン酸の添 加は、茶飲料製造の加熱滅菌工程より前であれば限定されないが、例えば調合工程 での加水操作の直前に添加することができる。
[0017] 本発明の茶飲料には、グルタミン酸に加えて、飲食品に通常使用される添加成分 が含まれてもよぐそのような成分の例として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、
有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存 料、アミノ酸などの調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜ェ キス類、 pH調整剤、品質安定剤などが挙げられる。
[0018] 例えば、グルタミン酸以外のアミノ酸の添カ卩により、その組み合わせまたは添加量に よっては相乗効果が期待できる。
発明の効果
[0019] 力テキン類を 40〜100mg/100mlと比較的多く含む茶飲料は、加熱滅菌工程及び Z 又は加温保存中に渋味や苦味による風味劣化を生じやすいが、本発明の茶飲料は 加熱滅菌後においても渋味は抑制され、おいしく飲むことができる。さらに、本発明 の茶飲料において、グルタミン酸を 6mg〜20mgZl00ml添加した態様では、加温保 存後にも望ましくない渋味を感じることなく摂取することができる。したがって、本発明 の茶飲料は、カテキン類のコレステロール上昇抑制作用剤、 a アミラーゼ活性阻 害作用、抗酸化作用、殺菌作用、杭がん作用、高血圧低下作用、血糖値上昇抑制 など多様な生理作用を期待して、日常的においしく摂取することができる。
[0020] さらに、本発明によれば、室温以下で販売される茶飲料および加温状態で販売さ れる茶飲料のいずれにおいても、茶本来の味、風味を損なうことなく上記カテキン類 の生理作用を期待して日常的においしく摂取できる茶飲料を提供することができる。 発明を実施するための最良の形態
[0021]
実施例
[0022] 以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を限定す るものではない。
[実施例 1]
緑茶茶葉 8gを 80°Cの純水 300mlで 6分間抽出'ろ過し、炭酸水素ナトリウム 0. 3g 、 Lーァスコルビン酸 0. 4g、カテキン源として市販の緑茶抽出物(三井農林 (株)、ポ リフエノン)を表 1のカテキン含量になるよう添カ卩して 1000mlとし、加熱殺菌(130°C、 1分間)し、ペット容器充填を行い、カテキン含量の異なる緑茶飲料 T1〜T5を得た。 それらを 5°C及び 60°Cで 1週間保管し、渋味の評価を行った (表 1)。渋味の評価は、
評価は専門パネラー 5名により、 4 (強く感じる) · 3 (感じる) · 2 (やや感じる) · 1 (わず 力に感じる) ·0 (感じない)を基準として 0. 1点きざみで評価した。
[表 1] 表 1
[0024] その結果、カテキン含有量が 20mgZlOOmlの場合、両保存温度とも渋味の程度 は小さ力つた。一方、カテキンの含有量力 S40〜100mg/100mlの範囲においては 5 °Cに比較して 60°C保存の渋味が強くなつた。一方、カテキンの含有量が lOOmg/ 100mlを超えると、加温しない場合でも渋味が強くいずれの保存条件でも飲みにく いものであった。
[0025] 以上より、カテキン濃度が 40-100mgZgの範囲では、加温保存時の渋味対策の必 要性が示された。
[実施例 2]
カテキン含量を 60mgZ 1 OOmlとし、実施例 1と同様の方法で緑茶飲料を調製した 。その際、グルタミン酸ナトリウムを調合工程の加水操作前に添加'溶解させ、遊離の グルタミン酸量として 0〜40mg/lOOmlなるように緑茶飲料を得た。各濃度のグルタ ミン酸ナトリウムの緑茶飲料について、加熱殺菌前サンプル (A)、加熱殺菌後サンプ ル (B)、および 60°C1週間加温したサンプル (C)を得て、渋味、飲みやすさについて 官能評価を行った (表 2及び表 3)。
[0026] 渋味の評価方法は実施例 1に準じた。飲みやすさの評価は、専門パネラー 5名によ り、 4 (とても飲みやすい) · 3 (飲みやすい) · 2 (やや飲みやすい) · 1 (やや飲みにくい ) ·0 (飲みにくい)を基準として、 0. 1点きざみで評価した。
[0027] [表 2]
表 2 渋味
[0028] [表 3] 表 3 飲みやすさ
[0029] 渋味について、グルタミン酸 0または 2 mgZlOOmlの試料では、 B、 Cのいずれで も強力つた。 4mgZlOOmlの試料では、加熱殺菌の試料 (B)の渋味は目標である 3. 0未満に抑えた力 60°C1週間加温試料 (C)では、渋味が強くなつた。一方ダルタミ ン酸 6〜401118 1001111の試料では 、 B、 Cいずれも渋味は弱く抑えることができた
[0030] 飲みやすさについては、グルタミン酸が 40mgZlOOmlの試料では、 A、 B、 Cいず れも目標(2点以上)を下回った。これは香味のバランスや後味が悪くなつたことが原 因であった。
[0031] それ以外の飲料では、飲み易さは良好であり、特に、グルタミン酸が 6および 20mg ZlOOmlの試料では A、 B、 Cいずれも 3点以上であって、良好な飲みやすさを有して いた。
[0032] 以上より、グルタミン酸力 S4〜20mgZl00 mlの場合には、加熱処理による渋味が抑 制され且つ飲みやすい茶飲料が得られ、なかでも、 6〜20mgZl00 mlの場合には、 長期加温保存可能な程度に渋味が抑制できることが分力つた。
[実施例 3]
緑茶茶葉 2.5kgを 80°Cの純水 75Lで 6分間抽出、濾過した後、炭酸水素ナトリウム 80 g、 L-ァスコルビン酸 100g、 L-リジン塩酸塩 30g、 L-ァスパラギン酸ナトリウム 15g、 L- グルタミン酸ナトリウム 15g、 L-アルギニン 5g、プロリン lg、緑茶抽出物 10g、および香 料を添カ卩し、 250Lとなるように加水調合した。続いて得られた調合液を 130°C1分間 U HT殺菌し、 350mlの缶に充填'密封し、力テキン類を 40mg/100mlとして緑茶飲料を製 造した。同様に、緑茶抽出物の添力卩量を調整し、カテキン類 60mg/100ml及び lOOmg /100mlとして缶飲料を得た。
[0033] これらの渋味および飲みやすさを実施例 2と同様の方法で評価したところ、いずれ の場合にも、良好であった。
[0034] また、このうちカテキン類 60mg/100mlの緑茶飲料について、 55°Cまたは 70°Cにて、 1日または 4週間保存した。各試料について、渋味および飲みやすさを評価したところ 、いずれの場合にも良好であった。
産業上の利用可能性
[0035] 本発明では、力テキン類を 40〜100mg/100mlと比較的多く含む力 加熱滅菌後に おいても渋味や苦みが抑制され、おいしく飲むことができる茶飲料を提供する。さら に、本発明の茶飲料は、グルタミン酸を 6mg〜20mg/100ml添カ卩した態様では、加温 保存後にも望ましくない渋味を感じることなく摂取することができる。
[0036] したがって、本発明によれば、室温以下で販売される茶飲料および加温状態で販 売される茶飲料のいずれにおいても、茶本来の味、風味を損なうことなくカテキン類 の優れた生理作用を期待して日常的においしく摂取できる茶飲料を提供することが できる。