WO2005108812A1 - 自動変速機のクラッチ装置 - Google Patents

Abstract

　　　クラッチドラム１６と、クラッチドラム１６に支持される第１および第２摩擦係合要素１２、１４と、クラッチドラム１６の外周側において軸方向に移動可能に配置され、第１摩擦係合要素１２を係合させるための第１ピストン１８と、クラッチドラム１６の内周側において軸方向に移動可能に配置され、第２摩擦係合要素１４を係合させるための第２ピストン２０とを備えた自動変速機のクラッチ装置１０において、クラッチドラム１６を、入力軸２２に溶接されるインナドラム部２６と、インナドラム部２６に溶接され第１摩擦係合要素１２および第２摩擦係合要素１４を支持するアウタドラム部３０とから構成し、第１ピストン１８をインナドラム部２６に対して軸方向に摺動可能とし、第２ピストン２０を入力軸２２に対して軸方向に摺動可能とする。これにより、クラッチ装置１０の小型化を図ることができる。

Description

明細書 自動変速機のクラッチ装置 技術分野

本発明は、 自動変速機に備えられるクラッチ装置に関し、 特に、 そのクラッチ 装置を小型化することができる技術に関する。 背景技術

クラッチ装置の小型化を図るために、 1つのクラッチドラムに 2組の摩擦係合 要素を支持させたクラッチ装置が知られている。 かかるクラッチ装置の場合、 ク ラッチドラムの内側に、 一方の摩擦係合要素を係合させるためのビストンを配置 し、 クラッチドラムの外側に、 他方の摩擦係合要素を係合させるためのピストン を配置することが考えられ、 そのような構成において、 一方のピストンを、 所謂 、 引きピストンとしたものが知られている。

たとえば、 特許文献 1 (特開 2 0 0 3 - 1 0 6 3 4 1号公報） に記載の自動変 速機のクラッチ装置がそれである。

この特許文献 1に記載の自動変速機のクラッチ装置では、 外周側のビストンを 引きピストンとしており、 そのビストンがクラッチドラムから離隔する方向に移 動させられたときに、 一方の摩擦係合要素が係合させられる。

ところで、 上記特許文献 1のクラッチ装置は、 回転軸に、 クラッチドラムと一 体回転し、 クラッチドラムのィンナドラム部と考えることもできる軸状部材をス プラインにより結合し、 その軸状部材に、 両方のピストンを摺動可能としている 。 そのため、 その軸状部材は 2つのピストンが摺動可能な長さが必要であり、 軸 長が比較的長くなつてしまい、 ひいては、 クラッチ装置全体が大きくなつてしま うという問題があった。

本発明は、 以上の事情を背景として為されたものであり、 その目的とするとこ ろは、 小型化を図ることができるクラッチ装置を提供することにある。 発明の開示

上記第 1目的を達成するための第 1発明は、 （a) クラッチドラムと、 （b) その クラッチドラムに支持される第 1および第 2摩擦係合要素と、 （c) そのクラッチ ドラムの外周側において軸方向に移動可能に配置され、前記第 1摩擦係合要素を 係合させるための第 1 ピストンと、 （d) そのクラッチドラムの内周側において軸 方向に移動可能に配置され、前記第 2摩擦係合要素を係合させるための第 2ビス トンとを備えた自動変速機のクラッチ装置であって、 （e) 前記クラッチドラムは 、 回転軸に溶接されるインナドラム部と、 そのインナドラム部に溶接され前記第 1摩擦係合要素および前記第 2摩擦係合要素を支持するァウタドラム部とからな り、 ω 前記第 1ビストンが前記ィンナドラム部に対して軸方向に摺動可能とさ れ、 （g) 前記第 2ピストンが前記回転軸に対して軸方向に摺動可能とされている ことを特徴とする。

このように構成された第 1発明によれば、 第 1 ピストンをインナドラム部に摺 動可能とし、 第 2ピストンを回転軸に摺動可能としているので、 両方のビス卜ン をィンナドラム部に摺動可能に構成するよりもィンナドラム部を短くすることが でき、 また、 インナドラム部と回転軸との間は溶接により結合されているので、 前記特許文献 1のように、 スプラインにより結合する場合に比較して結合部分の 軸方向寸法が短くなるので、 このことによつてもインナドラム部を短くすること ができる。 従って、 クラッチ装置全体を小型化することができる。

また、 第 2発明は、 第 1発明のクラッチ装置において、 前記回転軸と前記イン ナドラム部との溶接部、 および前記インナドラム部と前記ァゥ夕ドラム部との溶 接部は、 径方向に並設されていることを特徴とする。

このように構成された第 2発明によれば、 前記回転軸と前記ィンナドラム部、 および前記インナドラム部と前記ァゥ夕ドラム部を、 同時に溶接することが可能 となるので、 溶接コストを削減することができる。

また、 第 3発明は、 第 2発明のクラッチ装置において、 前記インナドラム部に 溶接される内周側端部が、 前記溶接部の深さ方向に形成されていることを特徴と する。

このように構成された第 3発明によれば、 ァウタドラム部の内周側端部が溶接 部の深さ方向に形成されていることから、 ァウタドラム部の内周側端部の径方向 外側から、 ァウタドラム部とインナドラム部との溶接部、 およびインナドラム部 と回 軸との溶接部の探傷を亍うことができる。

また、 第 4発明は、 第 3発明のクラッチ装置において、 前記ァウタドラム部は 、 前記内周側端部よりもさらに前記溶接部の深さ方向に凹んだ環状凸曲部或いは 環状折曲部を有することを特徴とする。

このように構成された第 4発明によれば、 ァウタドラム咅 とィンナドラム咅 と の溶接部、 およびィンナドラム部と回転軸との溶接部の探傷を行うための探傷用 プロ一ブの先端部が超音波出力部よりも先端側に突き出していても、 その先端部 を環状凸曲部に収容することができるので、 その先端部がァウタドラム部の内周 側端部の径方向外側に配置される場合に比較して、 ァウタドラム部の内周側端部 を短くすることができる。

また、 第 5発明は、 第 1発明乃至第 4発明のいずれかのクラッチ装置において

、 前記ァウタドラム部には、 前記第 1 ビストンとの間をシールするリップシール が設けられていることを特徴とする。

このように構成された第 5発明によれば、 ァゥ夕ドラム咅に設けられたリップ シールにより第 1ピストンとァウタドラム部との間がシールされている。 これに 対して、 前記特許文献 1のように、 第 1 ピストンとァゥ夕ドラム部との間を〇リ ングによりシールする場合には、 0リングを収容するためにその収容部分を肉厚 にする必要があり、 その肉厚とされた部分のために軸方向寸法が長くなってしま うが、 第 5発明の場合には、 そのような肉厚な部分が必要なくなるので、 ァゥ夕 ドラム部の軸寸法を短くでき、 ひいては、 クラッチ装置をより小型化することが できる。

また、 第 6発明は、 第 1発明乃至第 5発明のいずれかのクラッチ装置において 、 前記第 2ビストンには、 前記ァウタドラム部との間をシールするリップシール 、 および前記回転軸との間をシールするリップシールが設けられていることを特 徴とする。

このように構成された第 6発明によれば、 リップシールにより、 ァウタドラム 部と第 2ビストンとの間、 および回転軸と第 2ビストンとの間がシールされるの で、 第 2ピストンの軸寸法を短くでき、 ひいては、 クラッチ装置をより小型化す ることができる。

また、 第 7発明は、 第 4発明のクラッチ装置において、 前記第 1ピストンは、 前記ァウタドラム部の環状凸曲部の外周面に摺動可能に嵌合し、前記第 2ビスト ンは、前記ァウタドラム部の環状凸曲部の内周面に摺動可能に嵌合するものであ る。

このように構成された第 7発明によれば、 第 1 ピストンおよび第 ビストンは 、前記クラッチドラムの両面に直接的に摺動可能に嵌合するので、 クラッチ装置 が小型となる。

また第 8発明は、 第 1発明乃至第 7発明のいずれかのクラッチ装置において、 前記第 1摩擦係合要素および第 1摩擦係合要素は、前記クラッチドラム内におい て前記軸心方向に所定距離を隔てて配置され、 前記第 1 ビス卜ンは、 前記軸心方 向において前記第 2ビストンから離隔する方向に駆動されたときに前記第係合要 素を押圧し、 前記第 2ビストンは、前記軸心方向において前記第 1 ビストンから 離隔する方向に駆動されたときに前記第 1係合要素を押圧するものである。 このように構成された第 8発明によれば、 前記クラッチドラムの両面にすなわ ち軸心方向の両側に設けられた第 1ピストンおよび第 2ピストンを用いて、 クラ ツチドラム内において前記軸心方向に所定距離を隔てて配置された第 1摩擦係合 要素および第 2摩擦係合要素をそれぞれ係合作動させることが可能となる。 図面の簡単な説明

図 1は、本発明が適用されたクラッチ装置を含む自動変速機の一部を示す断面 図である。

図 2は、 第 1溶接部および第 2溶接部の探傷検査を行うために、探傷用プロ一 ブをァウタドラム部の内周側筒部の外周側に配置した状態を示す図である。 図 3は、 ィンナドラム部を溝を含むように径方向に切断した断面図である 符号の説明

1 0 ： クラッチ装置

1 2 ：第 1摩擦係合要素

1 4 ：第 2摩擦係合要素

1 6 ： クラッチドラム

1 8 ：第 1ピストン

2 0 ：第 2ピストン

2 2 ：入力軸 （回転軸）

2 4 ：第 1溶接部

2 6 ：インナドラム部

2 8 ：第 2溶接部

3 0 ：ァゥ夕ドラム咅

3 0 a :内周側筒部 （内周側端部）

3 0 d：環状凸曲部

5 0 ： リップシール

5 4 ：第 1油圧室

6 0 ：バランサ壁

6 6 ： リップシール、 7 4 ： リップシール

6 8 ：第 2油圧室 （キャンセル油室）

7 0 ：溝

7 2 ：油孔 （供給油孔）

7 6 ： リップシール 発明を実施するための最良の形態

以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。 図 1は、 本発明が 適用されたクラッチ装置 1 0を含む自動変速機の一部すなわち 1点鎖線で表され W る軸心の上半分を示す断面図である。

クラッチ装置 1 0は、 第 1摩擦係合要素 1 2および第 2摩擦係合要素 1 4を軸 心方向に所定距離離隔して位置する状態でそれぞれ支持する有底円筒状のクラッ' チドラム 1 6のタ M則にそのクラッチドラム 1 6を覆うように第 1 ピストン 1 8が 配置され、 そのクラッチドラム 1 6の内側に第 2ビストン 1 0が配置された構造 を有している。

クラッチドラム 1 6は、 回転軸である入力軸 2 2に第 1溶接部 2 4において互 いに溶接されるインナドラム部 2 6と、 そのインナドラム部 2 6と第 2溶接部 2 8において互いに溶接されるァゥ夕ドラム咅 β 3 0とからなる。 なお、 上記入力軸 2 2は、 エンジン等の走行用駆動源によって回転駆動されるトルクコンパ一夕の タービン軸である。

上記ィンナドラム部 6は円筒状部材であり、 第 1 ピストン 1 8の内周側に配 置され、 第 2ピストン 2 0側の端面が、 入力軸 2 2において径方向外側に突き出 す縛部 2 2 aの第 2ビストン 2 0側の面と一致させられている。 そして、 その鍔 部 2 2 aの第 2ビストン 2 0側の面の外周縁とィンナドラム咅 P 2 6の第 2ビスト ン 2 0側の面の内周縁に前記第 1溶接部 2 4が形成されている。

一方、 ァウタドラム部 3 0は、軸方向の一方に開口するように鋼板からプレス 成形された前記軸心と同心の有底円筒状部材であり、 内周側端部となる内周側筒 部 3 0 aと、 その内周側筒部 3 0 aに内周縁が連結される環状の底部 3 0 bと、 その底部 3 0 bの外周縁に連結される外周側筒部 3 0 cとから構成されている。 上記内周側筒部 3 0 aおよび外周側筒部 3 0 cは軸心を中心線とする円筒状を成 している。

上記内周側筒部 3 0 aは、 インナドラム部 2 6の外周に嵌合するように配置さ れ、 第 2ピストン 2 0側の端面が前記ィンナドラム部 2 6の第 2ピストン 2 0側 の端面と一致させられており、 その端面の内周縁に前記第 2溶接部 2 8が形成さ れている。 従って、 第 1溶接部 2 4および第 2溶接部 2 8は、 径方向において重 なるように並設されている。 なお、 第 1溶接部 2 4および第 2溶接部 2 8は、 た とえばレーザビーム溶接によりその溶接深さが軸心と平行な方向となるように形 成されている。 内周側筒部 3 0 aの軸方向長さは、 第 1溶接部 2 4および第 2溶 接部 2 8の溶接深さよりも長くされている。

底部 3 0 bは、 入力軸 2 2の径方向に略垂直に設けられ、 内周側筒部 3 0 aの 第 1 ピストン 1 8側の端部に連結されている。 また、 その底部 3 0 bには、 径方 向中間点よりもやや外周よりの位置に、 内周側筒部 3 0 aの第 1 ピストン 1 8側 の端部よりもさらに第 1 ピストン 1 8側で軸心方向の凸となり第 2ピストン 2 0 側で軸心方向の凹となる断面 U字状の環状凸曲部 3 0 dが局部的に形成されてい る。

図 2は、 上記第 1溶接部 2 4および第 2溶接部 2 8の探傷検査を行うために、 探傷用プローブ 1 0 0をァゥ夕ドラム部 3 0の内周側筒部 3 0 aの外周側に配置 した状態を示す図である。 図 2の場合には、探傷用プローブ 1 0 0は、 超音波出 カ咅 P 1 0 2よりも先端側の先端部 1 0 4がァウタドラム部 3 0の底部 3 0 bに形 成されている環状凸曲部 3 0 dに収容されるように配置されており、 その状態で 上記超音波出力部 1 0 2から溶接部 2 4、 2 8に向けて超音波が照射されること によつて、 溶接部 4 . 2 8の探傷が行われる。

図 1に戻って、 ァゥ夕ドラム部 3 0の外周側筒部 3 0 cは、 底部 3 0 bから第 2ピストン 2 0側に延びており、 開口部付近の内周面に、 第 1摩擦係合要素 1 2 の複数の内向摩擦板 3 2が相対回転不能にスプライン嵌合されている。 第 1摩擦 係合要素 1 2は、 上記複数の内向摩擦板 3 2およびその複数の内向摩擦板 3 2の 間に介在させられる複数の外向摩擦板 3 4から構成される。 この複数の外向摩擦 板 3 4は、 クラッチハブとして機能するリングギヤ 3 6の外周面に相対回転不能 にスプライン嵌合している。

ァウタドラム部 3 0の外周側筒部 3 0 cの内周面には、 さらに、 上記第 1摩擦 係合要素 1 を支持している部分よりも底部 3 0 b側に、 第 2摩擦係合要素 1 4 の内向摩擦板 3 8が相対回転不能にスプライン嵌合されている。 第 2摩擦係合要 素 1 4は、 上記複数の内向摩擦板 3 8およびその複数の内向摩擦板 3 8の間に介 在させられる複数の外向摩擦板 4 0から構成される。 この複数の外向摩擦板 4 0 は、 入力軸 2 2に対して略垂直とされたクラッチハブ 4 2の外周面に相対回転不 能にスプライン嵌合されている。 このクラッチハブ 4 2の内周縁はサンギヤ 4 4 に固定されているので、 クラッチハブ 4 2は、 サンギヤ 4 4と一体回転させられ る。

前記第 1 ピストン 1 8は、 鋼板からプレス成形されたプレス成形品であって、 円環状の底部 1 8 aと、 その底部 1 8 aの外周縁に連結されてァゥ夕ドラム咅 0の外周を覆う円筒部 1 8 bと、 その円筒部 1 8 bに連結され、 ァウタドラム部 3 0よりも軸方向に突き出す筒状の突出部 1 8 cとからなる。 この突出部 1 8 c は、 全周にわたりスプライン形状とされており、 内周面のスプラインの歯先が円 筒部 1 8 cの内周面と一致するように構成されている。

上記第 1 ピストン 1 8の突出部 1 8 cには、 円環板状の押圧部材 4 6の外周緣 がスプライン嵌合されている。 その押圧部材 4 6の外周縁の一方の面は、 第 1ピ ストン 1 8の円筒部 1 8 bの端面に当接され、 他方の面は、 突出部 1 8 cの内側 に固定されたスナップリング 4 8に当接されているので、 押圧部材 4 6は、 第 1 ビストン 1 8に対して周方向および軸方向に相対移動不能となっている。

また、 上記底部 1 8 aには、 ァウタドラム咅 3 0の環状凸曲部 3 0 dの外周面 に摺動可能に嵌合し且つそれを収容可能な環状凹部 1 8 dが形成されている。 そ して、 ァウタドラム部 3 0の環状凸曲部 3 0 dの外周側角部 3 0 eの外周面には 、 第 1ピストン 1 8の環状凹部 1 8 dとァゥ夕ドラム音 P 3 0の環状凸曲部 3 0 d との間をシールするゴム製のリップシール 5 0が加硫により固着されている。 また、 第 1ピストン 1 8の内周縁はィンナドラム部 2 6の外周面に対して摺動 可能とされており、 また、 その第 1 ピストン 1 8の内周縁とィンナドラム部 2 6 との間も第 1 ビストン 1 8の内周縁に固着されたゴム製のリップシール 5 2によ りシールされており、 第 1ピストン 1 8の底咅 P 1 8 aとァウタドラム咅 P 3 0の底 部 3 O bとの間に第 1油圧室 5 4が形成されている。 この第 1油圧室 5 4に、 ィ ンナドラム部 2 6に形成された油孔 5 6を経由して作動油が供給されると、 第 1 ビストン 1 8は、 その底部 1 8 aがァゥ夕ドラム部 3 0の底部 3 0 bから離隔す る方向に移動させられるので、 第 1 ピストン 1 8の突出部 1 8 cに固定された押 圧部材 4 6が第 1摩擦係合要素 1 2を押圧する。 また、 第 1摩擦係合要素 1 1の 押圧部材 4 6とは反対側には、 ァゥ夕ドラム部 3 0の外周側筒部 3 0 cに固定さ れて第 1摩擦係合要素 1 1が軸方向の第 1摩擦係合要素 1 4側へ移動することを 阻止するスナップリング 5 8が設けられているので、 押圧部材 4 6により第 1摩 擦係合要素 1 2が押圧されることにより、 その第 1摩擦係合要素 1 1を構成する 複数の内向摩擦板 3 2および外向摩擦板 3 4は互いに係合させられる。

第 1ピストン 1 8の第 1油圧室 5 4側とは反対の背面側には、 円板状のバラン サ壁 6 0がインナドラム部 2 6の外周に嵌合している。 このバランサ壁 6 0は、 インナドラム部 2 6の軸心に対して略垂直な円環板部 6 0 aと、 その円環板部 6 0 aの外周縁に連結されて、 第 1 ピストン 1 8側に向かう筒部 6 O bとからなる 。 上記円環板部 6 0 aと第 1ピストン 1 8の底部 1 8 aとの間には、 それらを互 いに離隔する方向に付勢するリターンスプリング 6 2が設けられている。 一方、 バランサ壁 6 0の内周縁の第 1ピストン 1 8とは反対側の面は、 ィンナドラム部 2 6の外周面に固設されたスナップリング 6 4に当接させられているので、 バラ ンサ壁 6 0は、 第 1 ビストン 1 8から離隔する方向への移動が禁止されている。 また、上記筒部 6 0 bの内周面の半径は、 第 1 ピストン 1 8の環状凹部 1 8 d の径方向外側面の半径よりも僅かに大きくなるように設定されており、 環状凹部 1 8 dの外周側角部 1 8 eの外周面に設けられたゴム製のリップシール 6 6によ り、 バランサ壁 6 0の筒部 6 0 dと第 1 ピストン 1 8の環状凹部 1 8 dとの間が シールされて、 バランサ壁 6 0と第 1ビス卜ン 1 8の底部 1 8 aとの間に第 2油 圧室 6 8が形成されている。

インナドラム部 2 6の前記バランサ壁 6 0が取り付けられている部分には、 上 記第 I油圧室 6 8とバランサ壁 6 0の背面側 （バランサ壁 6 0の第 2油圧室 6 8 とは反対側） の空間とを連通させる軸方向に延びる溝 7 0が周方向の複数箇所に 設けられている。 図 3は、 インナドラム部 2 6を溝 7 0を含むように径方向に切 断した断面図であり、 図 3に示すように、 溝 7 0は本実施例では周方向に等間隔 に 8箇所設けられている。

さらに、 インナドラム部 2 6には、 上記溝 7 0の第 2油圧室 6 8と連通する側 に一端が開口する油孔 7 2が形成されている。 ただし、 この油孔 7 2は、 図 3に 示すように、 全ての溝 7 0に対して設けられているのではなく、 その一部 （図 3 では 4つ） に設けられている。 この油孔 7 2は、 第 2油圧室 6 8に対して作動油 を供給する供給油孔として機能し、 作動油に遠心力が作用すると、 作動油は、 油 孔 7 2および溝 7 0を介して入力軸 2 2側から第 2油圧室 6 8に供給される。 こ れにより、 第 2油圧室 6 8は、 第 1油圧室 5 4の遠心油圧をキャンセルするキヤ ンセル油室として機能する。 また、 上記油孔 7 2は、 作動油の排出孔としても機 能し、 第 1油圧室 5 4に作動油が供給されつつある状態では、 第 2油圧室 6 8内 の作動油が油孔 7 2から排出されていくが、溝 7 0も作動油の排出路として機能 し、 第 2油圧室 6 8内の作動油は溝 7 0を経由してバランサ壁 6 0の背面側へも 排出されるので、 第 2油圧室 6 8からの作動油の排油抵抗が低減されている。 第 2ピストン 2 0は、 プレス成形品であり、軸方向における位置が外周側ほど 第 2摩擦係合要素 1 4から段階的に離隔する内周部 2 0 aと、 その内周部 2 0 a の外周縁に連結されて外周側ほど段階的に第 2摩擦係合要素 1 4側に向かい、 最 外周部が第 2摩擦係合要素 1 4と対向する外周部 2 0 bと、 それら内周部 2 0 a および外周部 2 O bの間を接続する断面 U字状の接続部 2 0 cとを備えている。 上記内周部 0 aと外周部 2 0 bとの連結部分である接続部 2 0 cは環状凸曲部 3 0 dに摺動可能に嵌め入れられており、 その接続部 2 0 cの外周面 （ァゥ夕ド ラム部 3 0の底部 3 0 b側の面） にはゴム製のリップシール 7 4が固着されてお り、 そのリップシール 7 4により、 ァゥ夕ドラム部 3 0の底咅 0 bと第 2ビス トン 2 0との間がシールされている。 また、 第 2ピストン 2 0の内周縁は入力軸 2 2に対して摺動可能とされており、 また、 その第 2ピストン 2 0の内周縁と入 力軸 2 2との間も、 第 2ピストン 2 0の内周縁に固着されたゴム製の.リップシ一 ル 7 6によりシールされており、 第 2ピストン 2 0とァウタドラム部 3 0の底部 3 O bとの間に第 3油圧室 7 8が形成されている。

上記第 3油圧室 7 8に、 入力軸 1 2に形成された油孔 8 0を経由して作動油が 供給されると、 第 2ピストン 2 0はァゥ夕ドラム部 3 0の底部 3 O bから離隔す る方向に移動させられて第 2摩擦係合要素 1 4を押圧する。 また、 第 2摩擦係合 要素 1 4の第 2ピストン 2 0とは反対側には、 ァウタドラム部 3 0の外周側筒部 3 0 cに固定されて第 2摩擦係合要素 1 4が軸方向の第 1摩擦係合要素 1 1側へ 移動することを阻止するスナップリング 8 2が設けられているので、 第 2ピスト ン 2 0により第 2摩擦係合要素 1 4が押圧されることにより、 その第 2摩擦係合 要素 1 4を構成する複数の内向摩擦板 3 8および外向摩擦板 4 0は互いに係合さ せられる。

第 2ピストン 2 0のァウタドラム部 3 0の底部 3 0 bとは反対側には、 バラン サ壁 8 4が入力軸 2 2の外周に嵌合させられている。 このバランサ壁 8 4は、 入 力軸 2 2の軸心に対して略垂直に設けられた円環板状部材であり、 バランサ壁 8 4と第 2ビストン 2 0との間には、 それらを互いに離隔する方向に付勢するリ夕 ーンスプリング 8 6が設けられている。 一方、 バランサ壁 8 6の内周縁の第 2ピ ストン 2 0とは反対側の面は、 入力軸 2 2の外周面に固設されたスナップリング 8 8に当接させられているので、 バランサ壁 8 4は、 第 2ピストン 2 0から離隔 する方向への移動が禁止されている。

また、 バランサ壁 8 4の外周縁には、 第 2ピストン 2 0との間をシールするゴ ム製のリッブシール 9 0が設けられており、 バランサ壁 8 4と第 2ビストン 2 0 との間には、 第 3油圧室 7 8の遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室 として機能する第 4油圧室 9 2が形成されている。

以上、 説明したように、 本実施例によれば、 第 1 ピストン 1 8をインナドラム 部 2 6に摺動可能とし、 第 2ピストン 2 0を入力軸 2 2に摺動可能としているの で、 両方のビストン 1 8、 2 2をインナドラム咅 2 6に摺動可能に構成するより もインナドラム部 2 6を短くすることができ、 また、 インナドラム部 2 6と入力 軸 2 2との間は溶接により結合されているので、 前記特許文献 1のように、 スプ ラインにより結合する場合に比較して結合部分の軸方向寸法が短くなるので、 こ のことによってもインナドラム部 2 6を短くすることができる。 従って、 クラッ チ装置 1 0全体を小型化することができる。

また、 本実施例によれば、 第 1溶接部 2 4および第 2溶接部 2 8が径方向に並 設されていることから、 入力軸 2 とインナドラム部 2 6、 およびィンナドラム 部 2 6とァウタドラム部 3 0を、 同時に溶接することが可能となるので、溶接コ ストを削減することができる。

また、 本実施例によれば、 ァゥ夕ドラム部 3 0の内周側筒部 3 0 aが溶接部 2 4、 2 8の深さ方向に形成されていることから、 ァゥ夕ドラム部 3 0の内周側筒 部 3 0 aの径方向外側から、 第 1溶接部 2 4および第 2溶接部 2 8の探傷を行う ことができる。

また、 本実施例によれば、 探傷用プローブ 1 0 0において超音波出力部 1 0 2 よりも先端側の先端部 1 0 4を、 底部 3 0 bに形成された環状凸曲部 3 0 dに収 容することができるので、 先端部 1 0 4がァゥ夕ドラム部 3 0の内周側筒部 3 0 aの径方向外側に配置される場合に比較して、 ァウタドラム部 3 0の内周側筒部 3 0 aを短くすることができる。

また、 本実施例によれば、 ァゥ夕ドラム部 3 0に設けられたリップシール 5 0 により第 1ピストン 1 8とァゥ夕ドラム部 3 0との間がシールされ第 1ビストン 2 0に設けられたリップシール 7 4、 7 6により、 ァウタドラム咅 0と第 2ピ ストン 2 0との間、 および入力軸 2 2と第 2ピストン 2 0との間がそれぞれシ一 ルされるので、 ァゥ夕ドラム部 3 0および第 2ビストン 1 0の軸寸法を短くでき 、 ひいては、 クラッチ装置 1 0をより小型化することができる。

また、 本実施例によれば、 第 1 ピストン 1 8は、 ァウタドラム部 3 0の環状凸 曲部 3 0 dの外周面に摺動可能に嵌合し、 第 2ピストン 2 0は、 ァウタドラム部 3 0の環状凸曲部 3 0 dの内周面に摺動可能に嵌合するものであることから、 第 1ピストン 1 8および第 2ピストン 2 0はクラッチドラム 3 0の両面に直接的に 摺動可能に嵌合するので、 クラッチ装置 1 0が小型となる。

また、本実施例によれば、 第 1摩擦係合要素 1 2および第 2摩擦係合要素 1 4 は、 クラッチドラム 3 0内において軸心方向に所定距離を隔てて配置され、 第 1 ビストン 1 8は、 軸心方向において第 2ピストン 2 0から離隔する方向に駆動さ れたときに第 1係合要素 1 2を押圧し、 第 2ピストン 2 0は、前記軸心方向にお いて第 1ピストン 1 8から離隔する方向に駆動されたときに第係合要素 1 4を押 圧するものであることから、 クラッチドラム 3 0の両面にすなわち軸心方向の両 側に設けられた第 1ピストン 1 8および第 2ピストン 2 0を用いて、 クラッチド ラム 3 0内において軸心方向に所定距離を隔てて配置された第 1摩擦係合要素 1 2および第 2摩擦係合要素 1 4をそれぞれ係合作動させることが可能となる。 また、本実施例によれば、 クラッチドラム 3 0のバランサ壁 6 0取り付け部に 軸方向に延びる溝 7 0が形成されており、 その溝 7 0から第 2油圧室 6 8の作動 油が排出されるので、 バランサ壁 6 0に第 2油圧室 6 8の作動油を排出するため の切り欠きを設ける必要がなくなる。 従って、 第 2油圧室 6 8からの作動油の排 油抵抗を低く しつつ、 バランサ壁 6 0の強度を確保することができる。

また、 本実施例によれば、 油孔 7 2が溝 7 0に開口しているので、 油孔 7 2の 開口を、 直接、 第 2油圧室 6 8に設ける場合よりもインナドラム部 2 6の軸方向 寸法が短くでき、 ひいては、 クラッチ装置 1 0を一層小型化することができる。 また、 本実施例によれば、 第 1ピストン 1 8に設けられたリップシール 6 6に より第 1ピストン 1 8とバランサ壁 6 0との間がシールされるので、 第 1 ピスト ン 1 8の軸寸法を短くでき、 ひいては、 クラッチ装置 1 0をより小型化すること ができる。

以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、 本発明はその他の 態様においても適用される。

たとえば、前述の実施例では、 回転軸は入力軸 2 2であったが、 出力軸やカウ ン夕軸が回転軸であってもよい。

また、 前述の実施例では、探傷用プローブ 1 0 0の先端部 1 0 4を収容するた めに、 ァウタドラム部 3 0の底部 3 0 bに環状凸曲部 3 0 dが形成されていたが 、先端部 1 0 4の長さ、 すなわち、超音波出力部 1 0 2よりも先端側の長さが十 分に短い場合など、 先端部 1 0 4をァゥ夕ドラム部 3 0の内周側筒部 3 0 aの径 方向外側に配置して探傷を行うようにしても内周側端部 3 0 aの長さがそれほど 長くならない場合には、 環状凸曲部 3 0 dが形成されていなくてもよい。

また、 前述の実施例では、 第 1乃至第 4油圧室 5 4、 6 8、 7 8、 9 2のシー ルはリップシール 5 0、 5 2、 6 6、 7 4、 7 6、 9 0により行われていたが、 第 5発明および第 6発明の実施以外の場合には、 リップシ一ル 5 0、 5 2、 6 6 、 7 4、 7 6、 9 0の一部または全部に代えて、 オイルシール等、他のシール部 材を用いても良い。

なお、 上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基 づいて種々の変更、 改良を加えた態様で実施することができる。

Claims

請求の範囲

1 . クラッチドラムと、

該クラッチドラムに支持される第 1および第 2摩擦係合要素と、

該クラッチドラムの外周側において軸心方向に移動可能に配置され、 前記第 1 摩擦係合要素を係合させるための第 1 ビストンと、

該クラッチドラムの内周側において軸方向に移動可能に配置され、 前記第 2摩 擦係合要素を係合させるための第 2ビストンと

を備えた自動変速機のクラッチ装置であつて、

前記クラッチドラムは、 回転軸に溶接されるインナドラム部と、 該インナドラ ム部に溶接され前記第 1摩擦係合要素および前記第 2摩擦係合要素を支持するァ ウタドラム部とからなり、

前記第 1ビストンが前記ィンナドラム部に対して軸方向に摺動可能とされ、 前記第 2ビストンが前記回転軸に対して軸方向に摺動可能とされていることを 特徴とするクラッチ装置。

2 . 前記回転軸と前記インナドラム部との溶接部、 および前記インナドラム部と 前記ァゥ夕ドラム部との溶接部は、 径方向に並設されていることを特徴とする請 求項 1に記載の自動変速機のクラッチ装置。

3 . 前記ァウタドラム部は、 前記インナドラム部に溶接される内周側端部が、 前 記軸心方向に形成されていることを特徴とする請求項 2に記載の自動変速機のク ラッチ装置。

4 . 前記ァウタドラム部は、 前記内周側端部よりもさらに前記軸心方向に凹んだ 環状凸曲部を有することを特徴とする請求項 3に記載の自動変速機のクラッチ装 置。

5 . 前記ァウタドラム部には、前記第 1ピストンとの間をシールするリップシ一 ' ルが設けられていることを特徴とする請求項 1乃至請求項 4のいずれかに記載の 自動変速機のクラッチ装置。

6 . 前記第 2ピストンには、 前記ァゥ夕ドラム部との間をシールするリップシ一 ル、 および前記回転軸との間をシールするリップシールが設けられていることを 特徴とする請求項 1乃至請求項 5のいずれかに記載の自動変速機のクラッチ装置

7 . 前記第 1 ビストンは、前記ァウタドラム部の環状凸曲部の外周面に摺動可能 に嵌合し、 前記第 2ビストンは、前記ァウタドラム部の環状凸曲部の内周面に摺 動可能に嵌合するものである請求項 4の自動変速機のクラッチ装置。

8 . 前記第 1摩擦係合要素および第 2摩擦係合要素は、前記クラッチドラム内に おレヽて前記軸心方向に所定距離を隔てて配置され、

前記第 1ビストンは、 前記軸心方向において前記第 2ビストンから離隔する方 向に駆動されたときに前記第 1係合要素を押圧し、

前記第 2ビストンは、前記軸心方向において前記第 1 ビス卜ンから離隔する方 向に駆動されたときに前記第係合要素を押圧するものである請求項 1乃至 7のい ずれかの自動変速機のクラッチ装置。