WO2010013541A1

WO2010013541A1 - ダンパ装置及びダンパスプリング

Info

Publication number: WO2010013541A1
Application number: PCT/JP2009/060032
Authority: WO
Inventors: 寿雄磯部
Original assignee: 株式会社東郷製作所
Priority date: 2008-07-28
Filing date: 2009-06-02
Publication date: 2010-02-04
Also published as: JP2010031933A; JP5143658B2

Abstract

作動部材（２５）と、作動部材（２５）に対して相対回転可能なクラッチピストン（２１）と、作動部材（２５）及びクラッチピストン（２１）の相対回転により圧縮され且つ第１および第２の端部を有する少なくとも一つのダンパスプリング（３５）と、作動部材（２５）およびクラッチピストン（２１）に対して回転可能且つダンパスプリング（３５）の第１の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリング（３５）の第１の端部を受容する少なくとも一つの第１の収容凹部（３１ｃ）を有する第１の回転部材（３１）と、作動部材（２５）およびクラッチピストン（２１）に対して回転可能且つダンパスプリング（３５）の第２の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリング（３５）の第２の端部を受容する少なくとも一つの第２の収容凹部（３２ｃ）を有する第２の回転部材（３２）と、を備えているダンパ装置（３０）。

Description

ダンパ装置及びダンパスプリング

　本発明は、ダンパ装置及びダンパスプリングに関する。

　ダンパ装置を備えたロックアップクラッチとしては、特開２００７－２９２２２３号公報に記載されたロックアップクラッチが知られている。図１９は当該ロックアップクラッチを示す断面図である。
　図１９に示すように、ロックアップクラッチ１１０は、トルコンカバー１０５に対する連結位置と非連結位置とで移動可能なクラッチピストン１１１と、クラッチピストン１１１の収容凹部に収容されたダンパスプリング１１２と、トルコンカバー１０５内のタービン（図示しない）に設けられた作動部材１１６とを備えている。更に、ロックアップクラッチ１１０は、ダンパスプリング１１２の外側面と対向する収容凹部の外周壁部１１７ａを形成するとともにクラッチピストン１１１とは別体とされ、当該クラッチピストン１１１に対して相対的に移動可能とされた別体部材１１７を備えている。

　前記ロックアップクラッチ１１０にあっては、クラッチピストン１１１が遠心力により別体部材１１７の外周壁部１１７ａに押付けられた状態で、ダンパスプリング１１２がクラッチピストン１１１および作動部材１１６の相対回転により圧縮されると、別体部材１１７がダンパスプリング１１２によって移動される。ダンパスプリング１１２の圧縮においては、ダンパスプリング１１２の一方の端部は移動せず、他方の端部のみが移動する。しかしながら、ダンパスプリング１１２が別体部材１１７の外周壁部１１７ａにダンパスプリング１１２の全スプリング長さに亘って接触するため、ダンパスプリング１１２の移動端部が、別体部材１１７の外周壁部１１７ａに対して不動端部よりも長い距離に亘って摺動する。別体部材１１７の外周壁部１１７ａに対するこのダンパスプリング１１２の移動端部の摺動は、ダンパスプリング１１２と別体部材１１７との間に摩擦を生じる。このため、ヒステリシスの低減が十分でなく、トルク変動の吸収性能が十分に向上されていないという問題がある。

　したがって、トルク変動の吸収性能を十分に向上できる改良されたダンパ装置およびダンパスプリングに対する需要がある。

　本発明の第１の側面によると、ダンパ装置は、第１部材と、第１部材に対して相対回転可能な第２部材と、第１部材及び第２部材の相対回転により圧縮され且つ第１および第２の端部を有する少なくとも一つのダンパスプリングと、第１部材および第２部材に対して回転可能且つダンパスプリングの第１の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリングの第１の端部を受容する少なくとも一つの第１の収容凹部を有する第１の回転部材と、第１部材および第２部材に対して回転可能且つダンパスプリングの第２の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリングの第２の端部を受容する少なくとも一つの第２の収容凹部を有する第２の回転部材と有する。
　第１部材および第２部材の相対回転によりダンパスプリングが圧縮される際に、ダンパスプリングの一方の端部は停止したままであり、他方の端部のみが移動する。移動する端部を受容する収容凹部を有する回転部材は、当該端部と共に移動される。このため、ダンパスプリングの移動する端部の、その端部と共に移動される収容凹部の壁面に対する摺動により生じる摩擦を低減することができる。したがって、ヒステリシスを低減して且つトルク変動の吸収性能を向上することができる。

　一実施例において、ダンパ装置は少なくとも一つの第３の回転部材を更に有する。第３の回転部材は、作動部材およびクラッチピストンに対して回転可能且つダンパスプリングの中央部と共に移動可能に設置されており、ダンパスプリングの中央部を受容する少なくとも一つの第３の収容凹部を有する。
　ダンパスプリングが圧縮されると、第３の回転部材がダンパスプリングの中央部によって移動される。このため、ダンパスプリングの中央部と第３の回転部材の収容凹部の壁面との間の摩擦を低減することができる。

　本発明の第２の側面によると、相互に相対回転可能な第１部材および第２部材と、第１部材および第２部材に対して相対回転可能であり且つそれぞれ第１および第２の収容凹部を有する第１および第２の回転部材とを有するダンパ装置用のダンパスプリングは、それぞれ第１および第２の収容凹部に受容される両端と、両端の間に位置する中央部と、を有している。ダンパスプリングは第１部材および第２部材の相対回転によって圧縮される。ダンパスプリングの両端は中央部よりも大きなコイル外径を有する。
　大きなコイル外径を有するダンパスプリングの両端は、回転部材の収容凹部の壁面と接触しやすく、一方、小さなコイル外径を有する中央部は回転部材の収容凹部の壁面と接触しにくい。したがって、回転部材の収容凹部の壁面に対する摺動により生じる摩擦を低減することができるダンパスプリングを提供することができる。

第１の実施形態に係るトルクコンバータの側断面図である。ロックアップクラッチの部分断面図。図２のIII－III線断面図である。図２のIV－IV線断面図である。図２のV－V線断面図である。図４のVI－VI線断面図である。ロックアップクラッチの分解斜視図である。ダンパスプリングの正面図である。ダンパ装置のダンパスプリングの圧縮状態を示す部分断面図である。ダンパ装置の捩り角度とトルクとの関係を示すグラフである。第２の実施形態に係るロックアップクラッチの部分断面図である。第１のプレート及び第２のプレートのスプリングシート部の斜視図である。第３の実施形態に係るロックアップクラッチの部分断面図である。図１３のXIV－XIV線断面図である。図１４のXV－XV線断面図である。ロックアップクラッチの分解斜視図である。第４の実施形態に係るロックアップクラッチの部分断面図である。ダンパスプリングの正面図である。従来のロックアップクラッチの断面図である。

　以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。

　図１から１０を参照して本発明の第１の実施形態を説明する。本実施形態では、トルクコンバータ用のロックアップクラッチに適用されたダンパ装置が例示される。説明の都合上、トルクコンバータを説明した後、ロックアップクラッチを説明する。図１において、右側および左側をそれぞれ「前側」および「後側」とする。また、ダンパ装置が複数の同じ部材を有する場合、通常一つの部材について説明する。

　最初に、トルクコンバータを説明する。図１に示すように、トルクコンバータ１０は、自動車（主にＡＴ車）等に設けられ、エンジン（図示しない）からのトルクを増幅してオートマチックトランスミッションに伝達する。トルクコンバータ１０は、エンジンから伝達された駆動力によって軸回りに回転可能であり且つ液体（作動油）を液密状態で収容したトルコンカバー１１と、該トルコンカバー１１の前側壁（図１において右側に位置する壁）１１ａ近くに形成されており当該トルコンカバー１１と共に回転するポンプ１２と、該ポンプ１２と対向しておりトルコンカバー１１内に回転可能に配設されたタービン１３と、一方向クラッチ１４を介してステータ軸１５と連結されたステータ１６と、ロックアップクラッチ２０とを具備している。

　エンジンから伝達される駆動力によりトルコンカバー１１及びポンプ１２が回転すると、その回転トルクが増幅されて液体（作動油）を介してタービン１３に伝達される。タービン１３が回転すると、該タービン１３とスプライン連結された出力軸１７が回転され、それ故に車両等が具備するオートマチックトランスミッション（図示しない）にトルクが伝達される。また、前記ロックアップクラッチ２０は、任意にトルコンカバー１１をタービン１３と直結することにより、液体によるトルク伝達と比べて、トルクの伝達ロスを低減することができる。図１において、参照番号１８はトランスミッションケースを示している。

　次に、ロックアップクラッチ２０を説明する。図１に示すように、ロックアップクラッチ２０は、前記トルコンカバー１１の後側壁（図１において左側の壁）１１ｂの前に設けられた円板状のクラッチピストン２１と、タービン１３の後部（図１において左側）の外周から突出しており且つ周方向に等間隔で配置された所定数（本実施形態では３個、図１ではその内の１個を示す）の作動部材２５と、クラッチピストン２１とタービン１３との間に設けられたダンパ装置３０とを備えている。

　前記クラッチピストン２１は、軸方向すなわち前後方向（図１において水平方向）に移動可能に設けられている。クラッチピストン２１の後面（図１において左側面）の外周には、円環状のライニング（図示しない）が設けられている。また、クラッチピストン２１の前面（図１において右側面）の外周縁には、前方へ延びる円筒状の外周壁２１ａが形成されている。クラッチピストン２１とトルコンカバー１１の後側壁１１ｂとの間の流体（作動油）が陰圧とされると、クラッチピストン２１がトルコンカバー１１の後側壁１１ｂに当接し、両者間の摩擦によってクラッチピストン２１および後側壁１１ｂは相互に係合する（この位置を連結位置と呼ぶ）。一方、陰圧状態の解除によってクラッチピストン２１がトルコンカバー１１の後側壁１１ｂから離間すると、クラッチピストン２１と後側壁１１ｂとの間の連結が解除される（この位置を非連結位置と呼ぶ）。

　図７に示すように、前記クラッチピストン２１の前面の外周には、所定数（本実施形態では３個）の係合部材２３が周方向に等間隔で配置されている。これらの係合部材２３は同じ構造であるので、一つの係合部材２３についてのみ以下において説明する。図４に示すように、係合部材２３は帯板から形成されており、係合部材２３のクラッチピストン２１に関しての半径方向内端がクラッチピストン２１にリベット等により固定されている。係合部材２３は、クラッチピストン２１の半径方向においてＵ字型の断面を有する屈曲部２３ａを有している。前記屈曲部２３ａは、Ｕ字の開口側が前方（図４において上方）を向くように形成されている。また、作動部材２５が、係合部材２３の屈曲部２３ａ内に、クラッチピストン２１の周方向において相対的に移動可能に係合されている（図２、図４及び図６参照）。

　図７に示すように、前記ダンパ装置３０は、一対の円環状のプレート３１，３２と、両プレート３１，３２の前側に周方向に等間隔で配置された所定数（本実施形態では３本）のダンパスプリング３５とを備えている。説明の都合上、前側に位置するプレート３１を「第１のプレート３１」といい、一方、後側に位置するプレート３２を「第２のプレート３２」という。

　前記第１のプレート３１は、リング状部３１ａを主体として有する。所定数（本実施形態では３個）のばね保持片３１ｂが周方向に等間隔にリング状部３１ａの外周部に配置されており、半径方向外方に突出している。図３に示すように、それぞれのばね保持片３１ｂは、リング状部３１ａの外周部から半径方向外方へ延出しかつ前方に開口する凹溝を形成する受壁部３１ｂ１と、受壁部３１ｂ１の外周縁から前方へ延びる外周側壁部３１ｂ２とを有する。収容凹部３１ｃは、受壁部３１ｂ１と外周側壁部３１ｂ２とによって形成されている。外周側壁部３１ｂ２の前縁部（図３において上縁部）には、当該プレート３１，３２の半径方向内方へ屈曲する円弧状の保持壁部３１ｂ３が形成されている。保持壁部３１ｂ３は、ダンパスプリング３５が前方（図３において上方）へ移動して第１のプレート３１から外れることを防止する。

　図７に示すように、前記第２のプレート３２は、前記第１のプレート３１と同一の基本構造を有しており、リング状部３２ａ、ばね保持片３２ｂを同様に有している。また、図５に示すように、各々のばね保持片３２ｂは、受壁部３２ｂ１、外周側壁部３２ｂ２、保持壁部３２ｂ３、および収容凹部３２を備えている。第２のプレート３２のリング状部３２ａは、第１のプレート３１のリング状部３１ａの後側（図３及び図５において下側）に同心状に重ねられている。図２に示すように、第１のプレート３１のばね保持片３１ｂと第２のプレート３２のばね保持片３２ｂは、周方向に交互に配置されている。各ダンパスプリング３５の一方の端部は第１のプレート３１のばね保持片３１ｂの収容凹部３１ｃの一つに受容されており、他方の端部はこのばね保持片３１ｂと周方向に隣合う第２のプレート３２のばね保持片３２ｂの収容凹部３２ｃの一つに受容されている（図６参照）。プレート３１，３２の隣り合うばね保持片３１ｂ，３２ｂの間には、プレート３１，３２の相対回転を可能とする所定角度の間隙３４が設けられている（図２参照）。また、プレート３１，３２のばね保持片３１ｂ，３２ｂは、相互に円周方向に整列するよう形成されている。プレート３１，３２は、前記クラッチピストン２１及び前記タービン１３の作動部材２５に対してそれぞれ相対回転可能である。本明細書中において、「端部」は、端を含む端近傍の領域を意味する。

　前記ダンパスプリング３５は、アーク状の圧縮コイルばねからなる（図８参照）。ダンパスプリング３５は、前記プレート３１，３２のばね保持片３１ｂ，３２ｂによる収容凹部３１ｃ、３２ｃ内に、ダンパスプリング３５がプレート３１、３２の周方向の円弧をなすように配置されている（図２参照）。ダンパスプリング３５のコイル外径３５ｄ（図８参照）は、ダンパスプリング３５の全長に亘って一定である。ダンパスプリング３５の両端部には、それぞれスプリングシート３６が装着されている（図７参照）。図６に示すように、スプリングシート３６は、ピン部３６ａとフランジ部３６ｂとを有するフランジ付ピン状に形成されている。ピン部３６ａはダンパスプリング３５内に嵌め込まれており、フランジ部３６ｂはダンパスプリング３５の当該端部に当接している。

　図２に示すように、周方向に相互に隣り合う一対のスプリングシート３６の間に、前記係合部材２３及び前記作動部材２５がそれぞれ配置されている。詳しくは、係合部材２３及び作動部材２５は、両プレート３１，３２の前側から見て、第１のプレート３１のばね保持片３１ｂと、反時計回り方向においてばね保持片３１ｂの前に位置する第２のプレート３２のばね保持片３２ｂとの間に配置されている。図６に示すように、ダンパスプリング３５の一端部が第１のプレート３１のばね保持片３１ｂの収容凹部３１ｃ内に受容されている。一方、ダンパスプリング３５の他端部が第２のプレート３２のばね保持片３２ｂの収容凹部３２ｃ内に受容されている。説明の都合上、収容凹部３１ｃ及び３２ｃ内に受容されている端部をそれぞれ「第１の端部」および「第２の端部」と呼ぶ。また、係合部材２３及び作動部材２５には、スプリングシート３６がダンパスプリング３５の弾性をもってそれぞれ当接されている。図示しないが、第１のプレート３１のリング状部３１ａの前側には、各ダンパスプリング３５が前方（図６において上方）およびリング状部３１ａの回転中心方向へ移動することを規制するガイド部材が設けられている。

　次に、前記ロックアップクラッチ２０の作用について説明する。クラッチピストン２１が非連結位置から連結位置に移動すると、流体を介するトルクの伝達経路は、トルコンカバー１１に入力されたトルクをクラッチピストン２１及び作動部材２５を介してタービン１３に伝達する機械的トルクの伝達経路に切り替わる。ロックアップクラッチ２０を介してトルク伝達経路が直結された状態においては、トルク変動は流体によって吸収されず、エンジンのトルク変動がダンパ装置３０のダンパスプリング３５の弾性変形により吸収される。

　すなわち、クラッチピストン２１からダンパ装置３０を介してタービン１３にトルクを伝達する過程で、当該トルクの変動が生じると、クラッチピストン２１は作動部材２５に対して相対回転する。すると、前に述べたように、クラッチピストン２１の係合部材２３と作動部材２５との間でダンパスプリング３５が圧縮されることにより、当該トルクの変動が吸収される。変動が吸収されたトルクは、タービン１３から出力軸１７を介して変速操作をするためのオートマチックトランスミッションへ伝達される。

　前記ダンパスプリング３５の圧縮形態について図９を参照して説明する。ダンパスプリング３５が圧縮されるときは、そのダンパスプリング３５の一方の端部（例えば、第１のプレート３１の収容凹部３１ｃ内に受容されている第１の端部）のスプリングシート３６はクラッチピストン２１の係合部材２３と係合しており、クラッチピストン２１に対して周方向に移動しない。したがって、当該端部を有する側は不動側と呼ばれる。この状態で、ダンパスプリング３５の他方の端部のスプリングシート３６が作動部材２５によりダンパスプリング３５の弾性に抗して押されることにより、当該端部がクラッチピストン２１に対して周方向に移動可能である。したがって、不動側に対向し且つ前記移動可能な端部を有する側は移動側と呼ばれる。

　エンジンの駆動力によりロックアップクラッチ２０が回転すると、ダンパスプリング３５に遠心力が作用し、その遠心力によるダンパスプリング３５のロックアップクラッチ２０の半径方向における外方への変位、変形いわゆる撓み、あるいは、圧縮変形のうちの少なくとも１つによって、当該第１および第２の端部が当該収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２に押付けられる。なお、ダンパスプリング３５は、当該第１および第２の端部が当該収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２に押付けられるように、そのスプリング長さ及びコイルの外径並びに重量が設定されている。

　ダンパスプリング３５の第１および第２の端部が収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２に押付けられた状態で、移動側の第２の端部が作動部材２５によって押されると、ダンパスプリング３５の第２の端部を受容する収容凹部３２ｃを有する回転部材すなわち第２のプレート３２が第２の端部と共に移動される。このため、第２のプレート３２の収容凹部３２ｃの壁面すなわち外周側壁部３２ｂ２に対するダンパスプリング３５の第２の端部の摺動を低減することができる。一方、前記圧縮時のダンパスプリング３５の不動側の第１の端部を受容する収容凹部３１ｃを有する回転部材、すなわち第１のプレート３１は、クラッチピストン２１に対して停止したままである。

　反対に、ダンパスプリング３５の移動側の端部を受容する収容凹部３１ｃを有する回転部材、すなわち第１のプレート３１がその端部と共に移動される際には、第１のプレート３１の収容凹部３１ｃの外周側壁部３１ｂ２に対するダンパスプリング３５の移動側の端部の摺動を抑制することができる。また、ダンパスプリング３５の不動側の端部を受容する収容凹部３２ｃを有する回転部材すなわち第２のプレート３２は、その端部と係合部材２３との間の係合によりクラッチピストン２１に対して停止したままである。
　また、ダンパスプリング３５の弾性復元にともなって移動側のプレートは、当該プレートの元の位置に戻される。

　前記ダンパ装置３０によると、前に述べたように、クラッチピストン２１と作動部材２５との相対回転によりダンパスプリング３５が圧縮されるときは、そのスプリング３５の一方の端部は不動側として停止したままであり、他方の端部が移動側として移動される。ダンパスプリング３５の移動側の端部を受容する収容凹部を有するプレート３１又は３２は、その端部と共に連れ回される。このため、ダンパスプリング３５の移動側の端部と、その端部と共に移動する回転部材の収容凹部の壁（外周壁部）との間の摺動により生じる摩擦を低減することができる。したがって、ヒステリシスを低減してトルク変動の吸収性能を向上することができる。

　次に、前記第１の実施形態のダンパ装置３０に係る捩り特性をＦＥＭ（有限要素法）によって解析したところ、図１０に示すグラフ線図が得られた。
　図１０において、横軸は捩り角度（rad）を示し、縦軸はトルク（Nm）を示している。また、実線Ａは本実施形態の解析結果を示し、破線Ｂは両プレート３１，３２を有さない比較例の解析結果を示している。
　図１０に明らかに示されているように、本実施形態（実線Ａ参照）のヒステリシスは、立ち上がりで比較例（破線Ｂ参照）と比べて顕著に低減されており、除荷状態でも２－３割程度のヒステリシスが低減されていることが認められる。したがって、本実施形態によれば、ダンパスプリング３５のヒステリシスは低減され、トルク変動の吸収性能が向上される。

　ダンパスプリング３５の遠心力による変位及び変形並びに圧縮による変形のうちの少なくとも１つにより、収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２にダンパスプリング３５の当該端部が押付けられることにより、圧縮時のダンパスプリング３５の移動側の端部と共に当該プレート３１，３２が移動される。したがって、ダンパスプリング３５の移動側の端部と共に当該プレート３１，３２を移動するために用いられる特別な部品を省略することができる。

　前記プレート３１，３２のばね各保持片３１ｂ，３２ｂは当該リング状部３１ａ，３２ａにより一体的に相互に接続されている。このため、ダンパスプリング３５の遠心力が作用しても、バネ保持片３１ｂ、３２ｂは前記プレート３１、３２の半径方向外方へ移動しない。従って、保持片３１ｂ、３２ｂにダンパスプリング３５を遠心力に抗して外方への移動を阻止する機能を与えることができる。

　図１１および１２を参照して本発明の第２の実施形態を説明する。本実施形態は、更なる変更を有する前記第１の実施形態に相当するため、変更部分について説明し、同一の構成は説明しない。同様に、以降の他の実施形態についても、変更部分について説明し、同一の構成は説明しない。
　図１１及び図１２に示すように、本実施形態においては、前記第１の実施形態のスプリングシート３６は省略され、プレート３１，３２のばね保持片３１ｂ，３２ｂに、ダンパスプリング３５の端部にそれぞれ当接可能なスプリングシート部３１ｄ，３２ｄが一体形成されている。スプリングシート部３１ｄ，３２ｄは、収容凹部３１ｃ，３２ｃの当該端部を閉鎖するように形成されている。このような構成によって、スプリングシート３６を省略することにより、部品点数及び組付工数を低減することができる。

　図１３から１６を参照して本発明の第３の実施形態を説明する。本実施形態は、更なる変更を有する前記第１の実施形態に相等する。
　図１３に示すように、本実施形態においては、両プレート３１，３２のばね保持片３１ｂ，３２ｂの周方向の長さすなわち角度が、第１の実施形態のそれらの２／３程度に小さくされている（図２および１６参照）。そして、クラッチピストン２１と第２のプレート３２との間に第３のプレート３３が追加されている。

　図１６に示すように、前記第３のプレート３３は、前記第１のプレート３１と同じ基本的構成を有し、リング状部３３ａ、および所定数のばね保持片３３ｂを有している。また、図１４に示すように、各ばね保持片３３ｂは、受壁部３３ｂ１、外周側壁部３３ｂ２、保持壁部３３ｂ３、および収容凹部３３ｃをそれぞれ備えている。第３のプレート３３のリング状部３３ａは、第２のプレート３２のリング状部３２ａの後側（図１４において下側）に同心状に重ねられている。図１３に示すように、第３のプレート３３のばね保持片３３ｂは、第１のプレート３１のばね保持片３１ｂと第２のプレート３２のばね保持片３２ｂとの間であり、ダンパスプリング３５の中央部近くにそれぞれ配置されている。ダンパスプリング３５の各中央部は第３のプレート３３のばね保持片３３ｂの対応する収容凹部３３ｃ内に収容されている（図１５参照）。両プレート３１，３２の相対回転を可能にする所定角度の間隙３７が、相互に隣り合うプレート３１，３３のばね保持片３１ｂ，３３ｂの間と、相互に隣り合うプレート３２，３３のばね保持片３２ｂ，３３ｂの間とに設定されている（図１３参照）。第３のプレート３３のばね保持片３３ｂは、両プレート３１，３２のばね保持片３１ｂ，３２ｂと相互に円周方向に整列するよう形成されている。第３のプレート３３は、前記クラッチピストン２１及び前記タービン１３に対して相対回転可能である。

　前記ダンパ装置３０は、クラッチピストン２１と作動部材２５とに対して相対回転可能かつダンパスプリング３５の中央部と共に移動可能であり、該ダンパスプリング３５の中央部を受容する収容凹部３３ｃを有する第３のプレート３３を備えている。ダンパスプリング３５が圧縮されると、前記中央部を受容する収容凹部３３ｃを有する第３のプレート３３がダンパスプリング３５の中央部と共に移動する。このため、ダンパスプリング３５の中央部と、その中央部と共に移動する第３のプレート３３の収容凹部３３ｃの壁すなわち外周側壁部３３ｂ２との間の摺動により生じる摩擦を低減することができる。

　ダンパスプリング３５の遠心力による変位及び変形並びに圧縮変形（本実施形態の場合は座屈）のうちの少なくとも１つにより、収容凹部３３ｃの外周側壁部３３ｂ２にダンパスプリング３５の中央部が押付けられることにより、ダンパスプリング３５の移動可能な中央部と共に当該プレート３３が移動する。したがって、ダンパスプリング３５の移動可能な中央部と共に当該プレート３３を移動させるために用いられる特別な部品を省略することができる。

　第３のプレート３３のばね保持片３３ｂが当該リング状部３３ａにより一体的に接続されている。このため、ダンパスプリング３５の遠心力が作用しても、バネ保持片３３ｂは第３のプレート３３の半径方向外方へ移動しない。従って、保持片３３ｂにダンパスプリング３５の遠心力に抗して外方への移動を阻止する機能を与えることができる。

　図１７および１８を参照して本発明の第４の実施形態を説明する。本実施形態は、更なる変更を有する第１の実施形態に相当する。
　図１７に示すように、本実施形態においては、前記第１の実施形態のダンパスプリング３５は図１８に示すダンパスプリング４０に置換されている。各々のダンパスプリング４０は、プレート３１，３２の収容凹部３１ｃ，３２ｃにそれぞれ対応する両端部のコイル外径４０ｄ１（図１８参照）が、中央部のコイル外径４０ｄ２よりも大きい圧縮コイルばねからなる。ダンパスプリング４０の内側縁が単一の円弧Ｌに一致するように、両端部の軸４０Ｃ１が中央部の軸４０Ｃ２よりも半径方向においてより外方へ偏心配置されている。コイル外径４０ｄ１を有するダンパスプリング４０の両端部は、ダンパスプリング４０の所定の長さにわたって形成されている。

　本実施形態によると、ダンパスプリング４０の両端部が両プレート３１，３２の収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２に押圧しやすく、一方でその両端部以外の部分が両プレート３１，３２の収容凹部３１ｃ，３２ｃの外周側壁部３１ｂ２，３２ｂ２に接触しにくい（図３においてダンパスプリング３５を４０に読み替えて参照）。したがって、ダンパ装置３０に好適なダンパスプリング４０を提供することができる。

　本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱しなければあらゆる変更を加えることができる。例えば、本発明のダンパ装置は、オートマチックトランスミッションのロックアップクラッチと同様に、マニュアルトランスミッションのクラッチにも適用することができる。前記実施形態においては、ダンパスプリングの遠心力による変位及び変形並びに圧縮による変形のうちの少なくとも１つにより、プレートの収容凹部の外周側壁部にダンパスプリングの対応部分が押付けられた状態で、ダンパスプリングが圧縮されると、ダンパスプリングの可動部と共に当該プレートが移動する。しかしながら、当該プレートがダンパスプリングの当該部分と共に移動するように、ダンパスプリングの当該部分を特別な部品を用いてプレートの収容凹部に連結することもできる。第３のプレート３３の数は必要に応じて増やすことができる。ダンパスプリングの数は、３本に限らず、適宜変更することができる。また、ダンパスプリングは、異なるバネ定数及び／又はコイル外径を有する複数のコイルスプリングで構成することもできる。

　１０　トルクコンバータ
　２０　ロックアップクラッチ
　２１　クラッチピストン
　２５　作動部材
　３０　ダンパ装置
　３１　第１のプレート
　３１ｃ　収容凹部
　３２　第２のプレート
　３２ｃ　収容凹部
　３３　第３のプレート
　３３ｃ　収容凹部
　３５　ダンパスプリング
　３６　スプリングシート
　４０　ダンパスプリング

Claims

　第１部材と、
　第１部材に対して相対回転可能な第２部材と、
　第１部材及び第２部材の相対回転により圧縮され且つ第１および第２の端部を有する少なくとも一つのダンパスプリングと、
　第１部材および第２部材に対して回転可能且つダンパスプリングの第１の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリングの第１の端部を受容する少なくとも一つの第１の収容凹部を有する第１の回転部材と、
　第１部材および第２部材に対して回転可能且つダンパスプリングの第２の端部と共に移動可能であり、ダンパスプリングの第２の端部を受容する少なくとも一つの第２の収容凹部を有する第２の回転部材と、
　を備えているダンパ装置。
　第１および第２の収容凹部は、それぞれ第１および第２の外周側壁を有し、
　ダンパスプリングが、遠心力によって変位または変形する、又は圧縮によって変形すると、ダンパスプリングの第１の端部は第１の外周側壁に押付けられ、ダンパスプリングの第２の端部は第２の外周側壁に押付けられる、
　請求項１に記載のダンパ装置。
　第１部材および第２部材に対して回転可能且つダンパスプリングの中央部と共に移動可能であり、ダンパスプリングの中央部を受容する少なくとも一つの第３の収容凹部を有する少なくとも一つの第３の回転部材
　を更に有する請求項１に記載のダンパ装置。
　第１から第３の収容凹部はそれぞれ第１から第３の外周側壁を有し、
　ダンパスプリングが、遠心力によって変位又は変形する、又は圧縮によって変形すると、ダンパスプリングの第１および第２の端部は第１および第２の外周側壁に押付けられ、ダンパスプリングの中央部は第３の外周側壁に押付けられる、
　請求項３に記載のダンパ装置。
　ダンパスプリングの第１および第２の端部が、第１および第２の端部の間に位置するダンパスプリングの中央部よりも大きなコイル外径を有する、
　請求項２に記載のダンパ装置。
　ダンパスプリングの第１及び第２の端部は中央部に対して偏心しており、
　ダンパスプリングの内縁が単一の円弧に対応するようダンパスプリングが配置される、
　請求項５に記載のダンパ装置。
　相互に相対回転可能な第１部材および第２部材と、第１部材および第２部材に対して相対回転可能であり且つそれぞれ第１および第２の収容凹部を有する第１および第２の回転部材とを有するダンパ装置用のダンパスプリングであって、
　それぞれ第１および第２の収容凹部に受容される両端と、
　両端の間に位置する中央部と、
　を有し、
　ダンパスプリングは第１部材および第２部材の相対回転によって圧縮され、
　両端は中央部よりも大きなコイル外径を有する、
　ダンパスプリング。
　第１部材；
　第１部材に対して相対回転可能な第２部材；
　第１部材と第２部材との間に回転方向で介在されており、第１部材側の第１の端部と第２部材側の第２の端部とを有する少なくとも一つのダンパ部材、それにより、第１部材と第２部材との間の回転伝達がダンパ部材を介して行なわれる；
　ダンパ部材の第１の端部とともに第１および第２部材に対して相対回転可能な第３部材；及び
　ダンパ部材の第２の端部とともに第１および第２部材に対して相対回転可能な第４部材
　を有するダンパ装置。
　請求項８のダンパ装置であって、前記ダンパ部材に所定の圧縮負荷が加わったときに第３部材および第４部材はダンパ部材の第１の端部および第２の端部とともにそれぞれ回転可能である。
　請求項８のダンパ装置であって、ダンパ部材は遠心力により変位もしくは変形可能であり、ダンパ部材が変位或いは変形することで第１及び第２の端部が第３部材及び第４部材にそれぞれ摩擦接触する。
　請求項８－１０のいずれか一項のダンパ装置であって、ダンパ部材はコイルスプリングである。
　請求項１１のダンパ装置であって、第３及び第４部材はダンパ部材の第１の端部及び第２の端部をそれぞれ収容可能な収容凹部を有する。
　請求項１２のダンパ装置であって、第３部材及び第４部材はほぼリング形状を有しており、外周側には前記収容凹部を形成する保持片が一体形成されている。
　請求項８のダンパ装置であって、ダンパ部材の中央部とともに第１および第２部材に対して相対回転可能な第５部材を有するダンパ装置。