JP4558772B2 - トルクダンパ - Google Patents

Description

本発明は、カバーに入力されたトルクをクラッチピストン及び連結部を介してタービンに伝達するためのトルクダンパに関するものである。

自動車（主にＡＴ車）等に配設されるトルクコンバータ（流体継手）には、通常、液体（作動油）を略液密状態で収容するトルコンカバー内に、当該トルコンカバーと共に回転するポンプと、該ポンプと対峙したタービンと、一方向クラッチに接続されたステータとが配設されており、ポンプの回転が液体を介してタービンに伝達されるとともに、その伝達トルクが増幅され得るよう構成されている。これにより、エンジンの駆動力が液体を介して増幅され、ミッション及び駆動輪へ伝達され得るようになっている。

トルクダンパは、上記トルクコンバータのトルコンカバー内に配設され、任意タイミングでトルコンカバーとタービンとを直結することにより、液体によるトルク伝達に比べ、トルクの伝達ロスの低減を図るためのものである。即ち、トルクダンパは、タービンと連結されたクラッチピストンを有しており、かかるクラッチピストンがトルコンカバーの内周壁に当接した連結位置と、離間した非連結位置との間で移動可能とされ、連結位置のとき、トルコンカバーとタービンとがクラッチピストンを介して直結されるのである。

然るに、直結された状態において、エンジンからのトルク変動を吸収すべく、クラッチピストンにはダンパスプリングが配設されている。かかるダンパスプリングは、例えば特許文献１にて開示されているように、クラッチピストンの外周縁に沿って円弧状に配設されたものであり、クラッチピストンが連結位置にあるとき、エンジンから伝達されるトルクの変動を吸収すべく変位（伸縮変位）し得るよう構成されている。

この特許文献１においては、ダンパスプリングが伸縮する際、クラッチピストンの周縁上を摺動することによる摩耗を抑制すべく耐摩耗性を有したガイドシートを配設することも提案されている。かかるガイドシートは、クラッチピストンの周縁とダンパスプリングとの間に介在され、その一部がクラッチピストンと係止されて、周方向へずれてしまうのを回避している。具体的には、クラッチピストンの周縁には、その軸方向に立ち上がった壁部が形成されており、当該壁部に切欠きを設けるとともに、ガイドシートの一部をクラッチピストンの径方向外側に折り曲げて、壁部の切欠きに係止させることにより、ガイドシートのクラッチピストン周方向に対する動きを規制していた。
特開平９−１２６２９８号公報

しかしながら、上記従来のトルクダンパにおいては、クラッチピストンは、その壁部にガイドシートを係止するための切欠きを有しているため、ダンパスプリングの遠心力によるクラッチピストンの回転強度が低下してしまう虞があった。即ち、ガイド係止のための切欠きが必要とされることから、その分だけクラッチピストンの剛性が低下し、回転時の強度が低下してしまうのである。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、クラッチピストンにおけるガイドシート係止のための切欠きを不要とすることができ、回転強度の低下を回避することができるトルクダンパを提供することにある。

請求項１記載の発明は、流体継手のカバー内に配設され、当該カバーに対して連結位置と非連結位置とで移動可能なクラッチピストンと、該クラッチピストンの周縁に沿って配設されたダンパスプリングと、該ダンパスプリングの一端と当接して配設され、当該ダンパスプリングを介して前記カバー内に配設されたタービンと前記クラッチピストンとを連結する連結部と、前記クラッチピストンの所定部位に固定されるとともに、前記ダンパスプリングの他端と当接して配設され、前記連結部から当該ダンパスプリングに対して付与された圧縮力に抗して保持し得るダンパホルダと、前記クラッチピストンの周縁と前記ダンパスプリングとの間に介在され、耐摩耗性を有しつつ前記ダンパスプリングを案内するガイドシートとを具備し、前記クラッチピストンが連結位置にあるとき、当該カバーに入力されたトルクを前記クラッチピストン及びダンパスプリングを介してタービンに伝達するためのトルクダンパにおいて、前記ガイドシートは、その一端のみに形成された所定部位を前記ダンパホルダに対して前記クラッチピストンの周方向に当接させることにより同方向に係止されて前記クラッチピストンの周方向に対して固定されたことを特徴とする。

請求項２記載の発明は、請求項１記載のトルクダンパにおいて、前記クラッチピストンの周端から軸方向に立上がった壁部と、前記ダンパホルダに形成され、前記壁部に沿って形成された立上り部と、該立上り部に形成された切欠き部と、前記ガイドシートに形成され、前記クラッチピストンの径方向内側に延びて前記切欠き部に係止し得る爪部とを具備したことを特徴とする。

請求項３記載の発明は、請求項１又は請求項２記載のトルクダンパにおいて、前記ガイドシートは、少なくとも表面が耐摩耗性を有する薄鋼板から成ることを特徴とする。

請求項１の発明によれば、ガイドシートは、ダンパホルダに係止されてクラッチピストンの周方向に対して固定されたので、クラッチピストンにおけるガイドシート係止のための切欠きを不要とすることができ、回転強度の低下を回避することができる。

請求項２の発明によれば、ダンパホルダの立上り部にガイドシートの爪部を係止し得る切欠き部が形成されているので、ガイドシートの爪部をそれほど長く延設させることなくガイドシートの係止を行わせることができる。

請求項３の発明によれば、ガイドシートは、少なくとも表面が耐摩耗性を有する薄鋼板から成るので、ダンパスプリングが伸縮する際、クラッチピストンの周縁上を摺動することによる摩耗を確実に抑制することができる。

以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るトルクダンパは、クラッチピストンが連結位置にあるとき、トルコンカバーなどのカバーに入力されたトルクをクラッチピストン及び連結部を介してタービンに伝達するためのロックアップクラッチから成るものである。以下に、本トルクダンパが適用されるトルクコンバータ（流体継手）について、図１に基づき説明する。

トルクコンバータ１は、自動車（主にＡＴ車）等に配設され、エンジン（不図示）からのトルクを増幅してミッションに伝達するための流体継手であり、当該エンジンの駆動力が伝達されて軸回りに回転可能とされるとともに液体（作動油）を液密状態で収容したトルコンカバー５と、該トルコンカバー５の同図右側壁５ｂ側に形成されて当該トルコンカバー５と共に回転するポンプ２と、該ポンプ２と対峙しつつトルコンカバー５内における同図左側壁５ａ側に回転可能に配設されたタービン３と、一方向クラッチ９を介してステータ軸８と連結されたステータ４と、ロックアップクラッチ１０とを主に具備している。

そして、エンジンの駆動力にてトルコンカバー５及びポンプ２が回転すると、その回転トルクが液体（作動油）を介してタービン３側にトルク増幅されつつ伝達される。しかして、トルク増幅されてタービン３が回転すると、該タービン３とスプライン嵌合した出力軸６が回転し、車両等が具備するミッション（不図示）に当該トルクが伝達される。尚、同図中符号７は、ミッションケースを示している。

ロックアップクラッチ１０は、任意タイミングでトルコンカバー５とタービン３とを直結することにより、液体によるトルク伝達に比べ、トルクの伝達ロスの低減を図るためのものであり、図２〜図８で示すように、略円板形状の部材から成るクラッチピストン１１と、変位方向（伸縮方向）に対して円弧状に屈曲したアーク形状のコイルスプリングから成るダンパスプリング１２と、ダンパホルダ１５と、クラッチピストン１１とタービンとを連結する連結部材１６とから主に構成されている。

クラッチピストン１１は、トルコンカバー５の左側壁５ａとの間における流体（作動油）を陰圧とし、又は陰圧を解除することにより、図１中左右方向へ移動可能とされるとともに、その背面側外周縁部において略円環状にライニング１１ａ（図３、４参照）が形成されている。しかして、当該部位において流体が陰圧とされると、クラッチピストン１１がライニング１１ａを介してトルコンカバー５の内壁面に当接し、その摩擦係合によって両者が連結される（この位置を連結位置と呼ぶ）一方、陰圧が解除されて、クラッチピストン１１がトルコンカバー５の内壁面から離間すると、両者の連結が解かれる（この位置を非連結位置と呼ぶ）。

かかるクラッチピストン１１の正面側（ライニング１１ａが形成された面とは反対の面側）には、その周縁に沿って凹部が形成されている。かかる凹部は、ダンパスプリング１２を収容するための円弧状の溝形状から成り、図３、４に示すように、クラッチピストン１１の外周縁を折り曲げて加工して形成された段面１１ｂ、底壁部１１ｃ、壁部１１ｄにて構成されている。即ち、壁部１１ｄは、クラッチピストン１１の周端から軸方向（図３、４における右方向）に立上がった部位とされる。

ガイドシート１７は、少なくとも表面が耐摩耗性を有する薄鋼板から成るものであり、クラッチピストン１１の周縁（具体的には、底壁部１１ｃ及び壁部１１ｄの内周面）とダンパスプリング１２との間に介在され、当該ダンパスプリング１２を案内するためのものである。かかるガイドシート１７により、ダンパスプリング１２が伸縮する際、クラッチピストン１１の周縁上を摺動することによる摩耗を抑制することができる。

然るに、凹部にダンパスプリング１２が収容された状態では、これらスプリングの外側面（外径側の側面であって図３、４における上側側面）が壁部１１ｄ、底側面が底壁部１１ｃにて規制される。また、ダンパスプリング１２の上側と内径側への移動の規制は、クラッチピストン１１の正面側に固定されたガイド部材１４（図４参照）にてなされるとともに、当該ダンパスプリング１２の両端部には、連結部材１６と当接する受け部１３が設けられている。

また、隣り合うダンパスプリング１２の収容部位を隔成すべく、ダンパスプリング１２間に突出したダンパホルダ１５（例えば金属製のもの）がクラッチピストン１１に固定されている。かかるダンパホルダ１５は、ダンパスプリング１２の他端と受け部１３を介して当接しており、連結部１６から当該ダンパスプリング１２に対して付与された圧縮力に抗して保持し得るよう構成されている。

ダンパホルダ１５には、凹部側に屈曲した屈曲部１５ｂ（図３参照）が形成されており、該屈曲部１５ｂにタービン３から延設された連結部１６の突端が挿入されることにより、ダンパスプリング１２を介して当該タービン３とクラッチピストン１１との回転方向の連結が図られている。即ち、屈曲部１５ｂに挿入された連結部１６の突端側面は、図３に示すように、ダンパスプリング１２の受け部１３と当接可能とされており、クラッチピストン１１からタービン３にトルクの伝達が行われる際、ダンパスプリング１２が変位（伸縮）することにより、伝達トルクの変動が吸収され得るようになっているのである。

上記構成により、ダンパスプリング１２の一端は、受け部１３を介して連結部１６と当接し、当該ダンパスプリング１２を介してトルコンカバー５内に配設されたタービン３とクラッチピストン１１とを連結し得るとともに、ダンパスプリング１２の他端は、受け部１３を介してダンパホルダ１５と当接し、連結部１６から当該ダンパスプリング１２に対して付与された圧縮力に抗して保持し得るようになっている。

ここで、本実施形態においては、ダンパホルダ１５は、リベットＲにてクラッチピストン１１に固定されたもので、図５〜図８に示すように、クラッチピストン１１の壁部１１ｄに沿って形成された立上り部１５ａと、該立上り部１５ａに形成された切欠き部１５ａａとを有しているとともに、ガイドシート１７は、クラッチピストン１１の径方向内側（図３における下方向）に延びてダンパホルダ１５の切欠き部１５ａａに係止し得る爪部１７ａを有している。

即ち、ダンパホルダ１５の立上り部１５ａ先端には、中央が切り欠かれて凹んだ切欠き部１５ａａが形成されており、この切欠き部１５ａａに向かってガイドシート１７の爪部１７ａが延設されているのである。而して、爪部１７ａが切欠き部１５ａａに挿通されることにより、ガイドシート１７は、ダンパホルダ１５に係止されてクラッチピストン１１の周方向に対して固定される。

本実施形態によれば、ガイドシート１７は、ダンパホルダ１５に係止されてクラッチピストン１１の周方向に対して固定されたので、クラッチピストン１１におけるガイドシート係止のための切欠きを不要とすることができ、回転強度の低下を回避することができる。また、ダンパホルダ１５の立上り部１５ａにガイドシート１７の爪部１７ａを係止し得る切欠き部１５ａａが形成されているので、ガイドシート１７の爪部１７ａをそれほど長く延設させることなくガイドシート１７の係止を行わせることができる。

次に、上記ロックアップクラッチ１０の作用について説明する。
クラッチピストン１１が非連結位置から連結位置に移動すると、流体を介するトルクの伝達経路から、トルコンカバー５に入力されたトルクをクラッチピストン１１及び連結部１６を介してタービン３に伝達する機械的トルクの伝達経路に切り替わる。このように、ロックアップクラッチ１０を介してトルク伝達経路が直結された状態においては、流体によるトルク変動の吸収が期待できないことから、エンジンのトルク変動をダンパスプリング１２の変位にて吸収することとなる。

即ち、クラッチピストン１１から連結部材１６を介してタービン３側にトルクを伝達する過程で、当該トルクの変動が生じた際、連結部材１６（即ち、タービン３）とクラッチピストン１１との間で回転方向に相対的変位が生じ、ダンパスプリング１２が圧縮方向に変形されて変位（収縮）することにより、当該トルクの変動が吸収されるのである。変動が吸収されたトルクは、タービン３から出力軸６を介して変速操作がなされるミッション（不図示）等に伝達される。

ここで、本実施形態においては、ガイドシート１７は、ダンパホルダ１５に係止されてクラッチピストン１１の周方向に対して固定されたので、ダンパスプリング１２の伸縮時、当該クラッチピストン１１の周方向に動いてしまうのが回避されるとともに、クラッチピストン１１におけるガイドシート係止のための切欠きを不要とすることができることから、回転強度の低下を回避することができる。

以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。

上記実施形態の他、ガイドシート１７が薄鋼板から成るもの以外の材料で構成されていてもよく、例えば少なくとも表面が耐摩耗性を有するペーパー状部材から成るものとしてもよい。然るに、上記実施形態の如くガイドシート１７において、少なくとも表面が耐摩耗性を有する薄鋼板から成るようにすれば、ダンパスプリング１２が伸縮する際、クラッチピストン１１の周縁上を摺動することによる摩耗を確実に抑制することができる。

ガイドシートは、その一端のみに形成された所定部位をダンパホルダに対してクラッチピストンの周方向に当接させることにより同方向に係止されてクラッチピストンの周方向に対して固定されたトルクダンパであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。

本発明の実施形態に係るトルクダンパが適用されたトルクコンバータを示す断面模式図 図１におけるＩＩ−ＩＩ線断面を示す図であって、主に同トルクダンパにおけるクラッチピストンの正面を示す図 図２におけるＩＩＩ−ＩＩＩ線断面図 図２におけるＩＶ−ＩＶ線断面図 同トルクダンパにおけるダンパホルダを示す正面図 図５におけるＶＩ方向から見た図 同トルクダンパの正面であってガイド部材及びダンパスプリングを取り外した状態を示す図 図７におけるＶＩＩＩ−ＶＩＩＩ線断面図

符号の説明

１ トルクコンバータ（流体継手）
２ ポンプ
３ タービン
４ ステータ
５ トルコンカバー
６ 出力軸
７ ミッションケース
８ ステータ軸
９ 一方向クラッチ
１０ ロックアップクラッチ（トルクダンパ）
１１ クラッチピストン
１１ｄ 壁部
１２ ダンパスプリング
１３ 受け部
１４ ガイド部材
１５ ダンパホルダ
１５ａ 立上り部
１５ａａ 切欠き部
１６ 連結部
１７ ガイドシート
１７ａ 爪部

Claims (3)

1. 流体継手のカバー内に配設され、当該カバーに対して連結位置と非連結位置とで移動可能なクラッチピストンと、
   該クラッチピストンの周縁に沿って配設されたダンパスプリングと、
   該ダンパスプリングの一端と当接して配設され、当該ダンパスプリングを介して前記カバー内に配設されたタービンと前記クラッチピストンとを連結する連結部と、
   前記クラッチピストンの所定部位に固定されるとともに、前記ダンパスプリングの他端と当接して配設され、前記連結部から当該ダンパスプリングに対して付与された圧縮力に抗して保持し得るダンパホルダと、
   前記クラッチピストンの周縁と前記ダンパスプリングとの間に介在され、耐摩耗性を有しつつ前記ダンパスプリングを案内するガイドシートと、
   を具備し、前記クラッチピストンが連結位置にあるとき、当該カバーに入力されたトルクを前記クラッチピストン及びダンパスプリングを介してタービンに伝達するためのトルクダンパにおいて、
   前記ガイドシートは、その一端のみに形成された所定部位を前記ダンパホルダに対して前記クラッチピストンの周方向に当接させることにより同方向に係止されて前記クラッチピストンの周方向に対して固定されたことを特徴とするトルクダンパ。
2. 前記クラッチピストンの周端から軸方向に立上がった壁部と、
   前記ダンパホルダに形成され、前記壁部に沿って形成された立上り部と、
   該立上り部に形成された切欠き部と、
   前記ガイドシートに形成され、前記クラッチピストンの径方向内側に延びて前記切欠き部に係止し得る爪部と、
   を具備したことを特徴とする請求項１記載のトルクダンパ。
3. 前記ガイドシートは、少なくとも表面が耐摩耗性を有する薄鋼板から成ることを特徴とする請求項１又は請求項２記載のトルクダンパ。

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