【書類名】 明細書
【発明の名称】 新規糖鎖プライマ一
【技術分野】
【0 0 0 1】
本発明は医薬 ·医療 ·糖鎖チップ等に利用されるオリゴ糖鎖の生産法に関する。
【背景技術】
【0 0 0 2 J
細胞間の認識やウィルスの受容体等として重要な働きを担うオリゴ糖鎖は、 バイオテクノロジーや医 薬品への応用の可能性を秘めている。 特にあらゆる糖鎖を網羅した糖鎖ライブラリーの構築は、 バイオ テクノロジーや医薬品の発展に資すると目されている。 従来オリゴ糖鎖は、 ゥシ脳からの抽出のように 天然物を抽出して得たり、 有機化学合成により得たり、 リコンビナント糖鎖合成酵素を製造し、 酵素的 に合成して得ていた。 し力 し、 天然物の抽出は、 材料の入手が困難であった。 また、 有機化学合成は技 術的に困難であり、 多大な時間とコス トを要していた。 現在オリゴ糖鎮の合成方法として酵素的な合成 が広く行われているが、 この方法もコストがかかり、 安価に多種のオリゴ糖鎖を大量に得ることには必 ずしも適していなかった。
【0 0 0 3】
オリゴ糖鎖は生体内で、 糖脂質、 糖タンパク質、 多糖類として存在しており、 このうち糖タンパク質 には、 O-グリカン型糖鎖と N-グリカン型糖鎖がある。 これらのうち、 多糖類は、 従来より、 容易に入 手できた。 また、 糖タンパク質の糖鎖のうち、 N-グリカン型糖鎖は生体内'に多量に存在するので、 比較 的容易に入手できた。
【■0 0 0 4】
糖脂質の糖鎖の入手に関しては、 本発明者らは先に糖鎖プライマーを動物細胞に投与して、 細胞内で 糖鎖伸張させることでオリゴ糖鎖を生産させる方法を開発した。 また、 細胞に投与し細胞内でオリゴ糖 鎖を合成するための糖鎖プライマーについても報告した (特許文献 1および非特許文献 2を参照) 。
【0 0 0 5】
単糖又は二糖にドデシル基等のアルキル基が結合した (糖鎖-アルキル基) 糖鎖プライマーを培養細胞 に投与すると、 細胞内にある糖転移酵素により糖鎖プライマーの先に新たな糖鎖が伸長し、 細胞外に放 出される。 これを利用して現在までに約 50種類の糖脂質型糖鎖が得られており、 糖鎖ライブラリ一の 構築が行われてきた。
しかしながら、 糖タンパク質の糖鎖のうち、 O -ダリカン型糖鎖の入手はなお、 困難であった。
【0 0 0 6】
なお、 無細胞系で糖-アミノ酸の結合した構造を有する化合物を o -ダリカンの生合成に関わる糖転移 酵素の基質として利用したという報告はあった (非特許文献 2参照) 。 し力 し、 培養細胞を用いて大量 に 0-グリカン糖鎖を入手しょうとするものではなかった。
【0 0 0 7】
また、 Benzyl - GalNAcを細胞に投与して、 O—グリカン型糖鎖を得たという報告もある (非特許文献 3 およぴ非特許文献 4を参照) 。 しかしながら、 本報告によれば、 Benzyl-GalNAcは細胞中に取り込まれに くく、 また該化合物を溶解させるために、 培地中に有機溶媒を混ぜる必要があり、 細胞の培養には適切 な条件ではなかった。 さらに合成された O—グリカン型糖鎖は細胞内に蓄積され細胞外には放出されな かった。 従って、 Benzyl- GalNAcは糖鎖プライマーとしては有効ではなかった。
【特許文献 1】 特開 2000- 247992号公報
【非特許文献 1】 佐藤智典ら、 蛋白質核酸酵素 Vol. 48 No. 8 (2003) p. 1213 - 1219
【非特許文献 2 ί D. J. Moloney et al. , Nature, 406, 369 - 375 (2000)
【非特許文献 3】 J. P. Zanetta et al. , Glycobiology, 10, 565-575, 2000
Ϊ非特許文献 4 V. Gouyer, Frontiers in Bioscience 6, 1235-1244, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しょうとする課題】
Ϊ 0 0 0 8】
本発明は、 糖タンパク質型糖鎖のうち o -ダリカンを、 糖鎖プライマーを用いて細胞に合成させ、 o— ダリカン型糖鎖を製造することを目的とする。 · 【課題を解決するための手段】
【0 0 0 9】
これまでの糖鎖プライマーは、 単糖や二糖の糖鎖に一本鎖のアルキル基を結合した構造であり、 糖脂 質型のオリゴ糖鎖の伸張反応は見られたが糖鎖タンパク質型の糖鎖の伸張反応は起きていなかった。 糖 鎖ライプラリーの構築には糖脂質型と糖タンパク質型のオリゴ糖鎖を揃える必要があった。 糖タンパク 質は生合成経路の違いにより N-グリカンと O-グリカンに大別されるが、 N-グリカンは細胞に多く発現 しているので、 細胞から容易に抽出により得ることができる。 一方、 O-グリカンは発現量が少ないため、 細胞からの抽出は困難であった。 従って、 細胞中の糖タンパク質型の糖鎖のうち 0 -ダリカンは、 発現量 が少ないことから、 糖鎖プライマ 法を用いて細胞に作らせることが、 ライブラリーの構築に有効であ ると考えられた。 そこで、 本発明者らは O -ダリカンを作るための新たな糖鎖プライマーの設計を行った。 【0 0 1 0】
本研究では o -結合糖タンパク質型糖鎖の伸長を目的とした糖鎖プライマーを合成し、 培養細胞に投与 して得られた糖鎖の構造解析を行った。 N -ァセチルガラタトサミン (GalNAc)にスレオニン (Thr')、 更に ドデシル基を結合した糖-アミノ酸型プライマ一 (糖鎖 -アミノ酸-アルキル基) を化学的に合成し、 種々 の動物細胞に投与した。 一定時間後に培地画分から脂質成分を抽出し、 HPTLC及ぴ MALDI- T0F MS/MS を
用いて生成物の構造解析を行った。 その結果、 O-グリカンに特徴的なコア構造ゃシァリル Tn抗原などの オリゴ糖鎖の伸張が観察された。 このように、 上記の糖鎖プライマーにより Ο—ダリカン型糖鎖が合成 でき、 本発明を完成させるに至った。
【001 1】
すなわち、 本発明は以下の通りである。
[I] 糖鎖-アミノ酸-アルキル基もしくはアルキル基の誘導体で表される、 ο—グリカン型糖鎖を培養 細胞中で合成するための糖鎖ブライマ一、
[2] 糖鎖力 GalNAcである [1]の糖鎖プライマー、
[3] アミノ酸力 ¾erまたは Thrである、 [ 1 ]または [ 2 ]の糖鎖プライマー、
[ 4 ] アルキル基もしくはアルキル基の誘導体中の一部の CHrCH,が- S- S-もしくは- NHC0-で置換された、 糖鎖-ァミノ酸-アルキル基もしくはアルキル基の誘導体 - Xそ表 れる [ 1 ]から [ 3]のいずれかの糖鎖プ
[5] アルキル基が- (CH, である、 [1]から [4]のいずれかの糖鎖プライマー、
【001 2】 2 12
[6] アルキル基にさらに、 -N、 — NH,、 -OH, - SH、 - C00H、 - 0C(0)CH=CH,および - CH=CH,からなる群から選 択される基が結合している、 糖敏-ァ ノ酸-アルキル基もしくはアルキレ基の誘導体 JXで表される [ 1] から [ 5 ]のいずれかの糖鎖プライマー、
[7] 式 (I) : (G,) , (G,) t (GJ -A -L-X 〔式中、 Gい 及ぴ G,は、 それぞれ独立して環 状構造の単糖残基又は1そわ誘 ¾tfであ jり、Z ((¾,) y (G,) s (GJ 直 |l状で っても分枝鎖状であって もよい; AJま、 1個から 5個のァミノ酸また》そ xの誘 の酉 έ歹 ifであり、 アミノ酸が複数の場合構成ァ ミノ酸は同"一でも異なるものでもよく Lは、 - 0- R -、 - S- R -、 -NH-R-及びそれらの誘導体からなる群か ら選択される連結基であり、 Rは炭素主鎖の炭素数力'; 6から 20であるアルキル基またはその誘導体であ り ; Xは、 存在しないか、 あるいは - N - NH,、 -OH, — SH、 - C00H、 - 0C(0)CH=CH9およひ' - CH=CH。からなる群 から選択される基であり ; x、 y、 及 jぴ z 、 それぞれ独立して 0〜10の S数である。 た'だし x、 y 及び zの全てが同時に 0であることはない〕 で示される化合物、
[8] (G,) Ύ (G,) „ (G,) 7が GalNAcである、 [7]の化合物、
[9] A„が ま^は ¾¾r^あ ¾、 [7]または [8]の化合物、
[10] ルキル基の誘導体が、 アルキル基中の一部の CH,-CH,が- S- S-または- NHC0-で置換された誘導体 である、 [7]から [9]のいずれかの化合物、 L 1
【0013】
[I I] Lカ O- (CH ,である、 [7]から [9]のいずれかの化合物、
[12] Xがー であ [7]から [1 1]のいずれかの化合物、
[ 1 3] GalNAc al-Ser-0-(CH,)„—N,または GalNAc al-Thr-O -(CH,)n— N, (ここで、 nは 4'から 20であ る)である化合物、 1 " i 1 " i
[14] nが 12である、 [1 3]の化合物、
[1 5] 糖鎖プライマーである、 [7]から [14]のいずれかの化合物、
【0014】
[1 6] [1]から [1 5]に記載の糖鎖プライマ一を、 培養細胞に添加することを含む、 O—ダリカン型 糖鎖を培養細胞中で合成する方法、
[17] 高密度培養法を用いて培養した細胞を用いる [16]の方法、
[18] ,細胞が動物細胞、 植物細胞、 昆虫細胞および酵母からなる群から選択される [16] または [1 7]の方法、
[19] 細胞が動物細胞である [ 18 ]の方法、
[20] 細胞がヒト細胞である [ 19 ]の方法、
【001 5】
[21] 細胞が糖転移酵素をコードする]) NAを組込んだベクターを含む細胞である [16]から [20]のい ずれかの方法、
[22] [16]から [21]のいずれかの方法により合成される、 糖鎖が O—グリカン型糖鎖-アミノ酸 - アルキル基もしくはアルキノレ基の誘導体- Xの構造を有し、 Xは- N,、 -冊,、 - 0H、 - SH、 -CO0H、 -0C(0)CH= CH,および- CH=CH9からなる群から選択される基である、 ィ匕合物、 J "
[23] 式 (ΐ ί) GC-A -L-X 〔式中、 GCは、 O—ダリカン型糖鎖であり ; A„は、 1個から 5 個のアミノ酸またはその誘 体の配列であり、 アミノ酸が複数の場合、 構成アミノ酸 ί 同一でも異なる ものでもよく ; Lは、 - 0- R -、 - S - R -、 -NH-R -及ぴそれらの誘導体からなる群から選択される連結基であ り、 Rは炭素主鎖の炭素数力 ;6から 24であるアルキル基またはその誘導体であり ; Xは、 存在しないか、 あるいは- N,、 -NH,、 -OH, -SH、 -C00H、 - 0C(0)CH=CH,および- CH=CH,からなる群かち選択される基であり ; x、 y、 Μ z それぞれ独立して 0〜: L 0の 数である。 た し x、 y及ぴ zの全てが同時に 0で あることはない〕.で示される化合物、
[24] A—が Serまたは Thrである、 [23]の化合物、
[25] ァ キル基の誘導体が、 アルキル基中の一部の CH9- CH,が- S- S-または- NflCO-で置換された誘導体 である、 [23]または [24]の化合物、 L L
【0016】
[26] Lカ O - (CH,)I9である、 [23]または [24]の化合物、
[27] Xがー N,であ [23]から [26]のいずれかの化合物、
[28] GC;a aij31—3GalNAc、 Gal j31-3 (GlcNAc β 1-6) GalNAc, GlcNAc 1 - 3GalNAcゝ GlcNAc β 1-3 (Glc NAcj31-6) GalNAc, GalNAc a l-3GalNAc, GlcNAc β l-6GalNAC GalNAc a l-6GalNAcぉょぴ Gal a 1 - 3GalNAc からなる群から選択される化合物またはその誘導体である [23]から [27]のいずれかの化合物、 なら ぴに
[29] [23]から [28]のいずれかの化合物を含む、 糖鎮チップ。
【発明の効果】
【0017】
本明細書記載の実施例が示すように、 本願の糖鎖プライマーを細胞に取り込ませることにより、 O— グリ力ン型糖鎖を細胞中で合成させることができた。 耱鎖プライマーと細胞の組み合わせを変えること により種々の O—グリカン型糖鎖を合成することができ、 糖鎖ライブラリ一を構築することが可能であ り、 得られた糖鎖ライブラリーを固相に固定化し、 種々の目的に応じた特徴的な糖鎖チップを製造する ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明は、 細胞内で糖鎖を生合成させるために用い得る糖鎖-アミノ酸-アルキル基またはアルキル基 誘導体構造を有する糖鎖プライマーであり、 式 (I) : (G,) v (G,) -A - L-X 〔式中、 G,, G,及び G,は、 それぞれ独立して環状構造の単糖残基又 の 導 ¾で 、 CG,) ^(G,) „ (G J ,は E鎖状で ¾>つても分枝鎖状であってもよい; AJま、 1個から 10個、 好ましくは '1個か 5y個、 ¾ bに好ましくは 1個もしくは 2個、 特に好ましくは 1個のアミノ酸またはその誘導体の配列であり、 アミノ酸が複数の場合構成アミノ酸は同一でも異なるものでもよく ; Lは、 一 O— R―、 — S— R―、 一 NH— R—及ぴそれらの誘導体からなる群から選択される連結基であり、 Rはアルキル基またはその 誘導体である ; Xは、 存在しないか、 あるいは一 N,、 一 NH,、 一 OH、 ― SH、 一 COOH、 一 OC (O) CH=CH,および— CH=CH,から選択される基で り ; x、 y、 及ぴ zは、 それぞれ独立し て 0〜10の整数 ある。 ただし x、 ¾ぴ2の全てが同時に 0であることはない〕 で示される。
【0019】
本発明の式 (I) の化合物において、 G!、 G9及び は、 それぞれ独立して環状構造の単糖残基又は その誘導体である。 単糖としては、 いかな 単; を使 j ^することもできるが、 N -ァセチルガラクトサミ ン (GalNAc) 、 N-ァセチノレグルコサミン (GlcNAc) 、 キシロース (Xyl) 、 ガラクトース、 グルコース、 ァラビノース、 マンノース、 L-フコース (Fuc) 、 シアル酸 (Sia) 等が挙げれらる、 このうち (^として は、 N-ァセチルガラクトサミン (GalNAc) 、 D-キシロース、 D-または L-ガラタト一ス、 D-グル: ^一ス、 D -または L -ァラビノース、 D-マンノース、 L-フコース (Fuc) 等が望ま'しい。 その中でも特に N-ァセチル ガラクトサミン、 フコース、 あるいはキシロースが望ましい。
【0020】
(G,) (G,) (G,) として、 GalNAc, Fuc、 Xyl, Gal l-3GalNAcs Gal β 1-3 (GlcNAc β 1-6) GalNAc, GlcNAc'iS r-3GalNAc, GlcMAc j31-3 (GlcNAc β.1-6) GalNAc, GalNAc a l-3GalNAcs GlcNAc j3 l-6GalNAc、 GalN Ac a 1- 6GalNAc、 Gal a 1- 3GalNAc等が例示されるがこれらには限定されない。
【0021 J
アミノ酸も、 限定されないが、 いずれのアミノ酸も用いることができ、 さらにその誘導体も用いるこ とができる。 好ましくは、 スレオニン、 セリンヒドロキシリジン、 ヒドロキシプロリンまたはヒ ドロキ シリジンであり、 この中でも、 スレオニンまたはセリンが好ましい。 アミノ酸の爵導体は、 限定されな, いが、 例えば RCH( H,)C00Hで表されるアミノ酸に対して、 RCH(NH,)C0-、 RCH (ΝΗ,) CO,1", RCH (ΝΗ,) CONH,, RC H(NH,)CH,0H, RCH(NH)CH0, RCH(C0,H)NH-で表される誘導体がある L L L L
【Ό 022】 L L
式 (I) の化合物において、 Lは、 — O— R—、 _S— R―、 —NH— R—及ぴそれらの誘導体から なる群から選択される連結基であり、 一 L一は、 好ましくは一 O— R—である。 ここで、 Rは (CH5) „ で表されるアルキル基、 Hの一部が置換された該アルキル基の誘導体もしくはアルキル基中に- S- S - >Nll CO -等の結合が含まれる、 すなわちアルキル基中の一部の CH,- CH,が- S- S -や- NHC0-等で置換されたァ ルキル基の誘導体、 またはアルキル基と同様の疎水性を有す 疎水' 基またはその誘導体であり、 炭素 主鎖の炭素数 nは、 4〜24の整数であり、 好ましくは 6〜18、 特に好ましくは 12 (尺が (CH„) n で表されるアルキル基である場合、 ドデシル基) である。 nが、 6未満である場合、 又は 24を越える11 場合には、 式 (I) の化合物を糖鎖プライマーとして細胞に与えても、 糖鎖プライマ一に対する細胞の 糖付加能は低い。 本発明の糖鎖プライマーが細胞に取り込まれ糖付加されるかどうかは、 糖鎖プライマ 一の親水性基と疎水性基とのパランスによる。 従って、 糖鎖プライマーの親水性基と疎水性基のバラン スが、 尺が (CH,) „で表されるアルキル基の場合と大きく隔たらない限り、 Rはその一部の Hが一 N¾、 — NH,、 -OH, -SH, _COOH、 — OC (O) CH=CH9およぴー CH = CH,等で置換され アルキレ基の誘導体であってもよい。 また、 前述のように、 Rはその一部の CH,CH, - S- S-や- NHC0- 等で置換されていてもよい。 さらに、 アルキル基と同様の疎水性を有する限り、 te鎖 rライマー全体の 親水性と疎水性のバランスは大きく変わらないので、 Rは (CH2) „で表されるアルキル基と同様の疎水 性を有する任意の疎水性基であつてもよレヽ。 分子の親水性と疎水 tt<bバランスは、 例えば ChemDraw (Carab ridgeSoft 社)を用いれば糖鎖プライマ一の糖鎖を除いた部分の log P値が 3〜 8程度の値を示すものと して予測可能である。
【0023】
式 (I) の化合物において、 Xは、 ― N 一 NH、 一 OH、 _SH、 ― COOH、 一 OC (O) CH = CH,および一 CH = CH,から選択され 基であも。 なかでも Xは、 一 N。又は一NH,であるのが好ま しく、 であるのがさら i 好ましい。 Xは、 糖鎖を固相に固定化する際 (^固定用官^基となる。 さら に、 Xが結 j合することにより、 糖鎖プライマーが細胞内で分解を受けにくくなり、 Xが存在しない場合 よりも効率的に糖鎖を合成することができる。
【 002·4】
本発明の糖鎖プライマーの例として、 GalNAc α 1 - Ser- (CH,) „-N„ GalNAc a 1-Thr- (CH,) — N¾が挙 げられるが、 これらに限定はされない。 " 3 i i
本発明は、 上記一般式 (I ) で表される糖鎖プライマーの製造方法をも包含する。
【0 0 2 5】
本発明の瑭鎮ブライマーは以下のようにして合成することができる。
一般式 (I ) で示される精鎖プライマーの (G!) ( ( G,) „ (G») 7で表される糖鎖は、 以下の文献に記 載の方法で合成することができる。 1 X 1 1 i l
T. Murata, Τ. し sui, Trends in Glycoscience and Glycotechnology, 12, No 65, 161-174 (2000) . J. Tamura, Trends in Glycoscience and tjiycotechnology, 13, No 69, 65-68 (2001) .
M. Ujita, M. Fukuda, Trends in Glycoscience and Glycotechnology, 13, 70, 177-191 (2001) .
【0 0 2 6】
また、 該糖鎖とアミノ酸の結合は、 以下の文献に記載の方法によって行うことができる。
H-. K. Ishida, H. Ishida, M. Kiso and A. hasegawa, Tetrahedron Asymmetry, 5, 2493-2512 (1994) T. Inazu, Hide—ki 丄 shida, R. Nagano, K. ranaka, K. Haneda, Peptide Science 1999 : Proceedings of the 36th Japanese Peptide Symposium" ed. by H. Aoyagi, The Japanese Peptide Society, pp. 1 21-124 (2000) ,
T. Inazu, M. izuno, T. Yamazaki, and K. Haneda, " Peptide Science 1998 : Proceedings of the 35 th Symposium on Peptide Science, ed. by M. Kondo, Protein Research Foundation Osaka, pp. 15 3-156 (1999)
【0 0 2 7】
本発明の糖鎖プライマーを用いてオリゴ糖鎖の生産に用い得る細胞として、 糖鎖合成に関与する遺伝 子を有する真核細胞が挙げられ、 哺乳類細胞、 昆虫細胞、 植物細胞、 酵母等が含まれる。 動物細胞とし ては、 各種動物由来細胞、 動物組織由来正常細胞、 動物癌細胞、 動物 2倍体線維芽細胞、 動物血管内皮 細胞等が挙げられ、 ヒ ト由来細胞が望ましい。 糖鎖を大量に合成するためには経代培養が可能な株化細 胞である必要がある。 株化細胞は、 それぞれ特徴的な糖鎖合成経路を発現しており、 細胞を適宜選択す ることによりその細胞が発現している O—グリカン糖鎖のセットを得ることができる。 また、 多数の細 胞を用いることにより、 ほとんど全ての糖鎖合成経路を網羅することができ完全な糖鎖ライブラリーを 構築することが可能になる。 例えば、 ヒト胃癌細胞である MKN45細胞、 ヒト肝癌細胞である HuH7細胞等が 挙げられる。
【0 0 2 8】
糖鎖プライマーの種類と細胞の種類の組合わせにより、 いろいろな種類の糖鎖を得ることができる。 また、 これらの細胞について特定の糖鎖合成経路を活性化するか、 または阻害することにより任意の 糖鎖合成経路を発現する細胞を得ることができ、 所望の糖鎖を合成させることができる。 例えば、 細胞 に特定の糖鎖合成経路に関与する糖転移酵素をコードする DNAを導入しあるいは欠失させることにより、 任意の糖鎖合成経路を発現する細胞を作出することができる。 または、 細胞に特定の糖鎖合成経路に関 与する酵素の阻害剤を投与してもよい。 これらの遺伝子操作は、 J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Man iatis (1989): Molecular Cloning, a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor Labo ratory Press及ぴ Ed Harlow and David Lane (1988): Antibodies, a laboratory manual, Cold Sprin g Harbor Laboratory Press等の当業者に良く知られた文献に記載された方法に従って行うことができる。 '遺伝子工学技術に基づいて行うことができ、 例えば適当な発現ベクターに糖転移酵素をコードする DNAを 組込み、 該発現べクタ一を細胞に導入すればよい。
【0 0 2 9 Ϊ
さらに、 糖鎖合成経路を有していない原核細胞に遺伝子工学の手法により、 真核細胞の糖鎖合成経路 に関与する糖転移酵素をコードする DNAを導入することにより、 原核細胞で O—グリカン型の糖鎖を合成 させることができる。 この方法により大腸菌、 枯草菌等の広く遺伝子工学で用いられている細胞を用い て糖鎖を合成させることができる。
【0 0 3 0】
本発明の糖鎖プライマーを用いて大量の糖鎖を合成するためには、 細胞は大量培養する必要がある。 大量培養は細胞を高密度で培養する高密度培養により達成することができる。 高密度培養には、 マイク 口キヤリァ一培養法、 細胞固定用ディスクを用いた培養層による培養、 中空糸モジュールを用いた培養 システム、 浮遊細胞のサスペンションカルチヤ一、 多段式培養装置、 ローラ一ボトルなどを用いる方法 又はマイクロカプセルに細胞を固定化培養する方法などがあるが、 マイクロキャリア一培養法、 細胞固 定用ディスクを用いた培養装置、 中空糸モジュールを用いた培養システム又は浮遊細胞のサスペンショ ンカルチャーを用いる方法が好適に用いられる。
【0 0 3 1】
マイクロキャリア一としては、 マトリックス素材はコラーゲン、 ゼラチン、 セルロース、 架橋デキス トラン又はポリスチレンのような合成樹脂からなり、 荷電基としてジメチルァミノプロピル、 ジメチル アミノエチル、 トリメチルハイドロキシァミノプロピル又は負電荷が付加されているものが好適に用い られる。 また、 マトリックス素材をコラーゲンやゼラチンでコートしたものも使用される。 市販品とし ては、 架橋デキストランにジメチルアミノエチルを付加した I Cytodex - 1、 フアルマシア社」 、 fCytode x-3,フアルマシア社」 がある。 中空糸としては、 修飾セルロースを使用したものがある( 「Vitafiber_) 、 アミコン社)。
【0 0 3 2】
マイクロカプセルは水透過性のあるゲルを形成するコラーゲンやアルギン酸ソーダを用いて、 内部に 細胞を包埋して作製する方法が知られている(A. lausner, Bio/Technol. , 1, 736, 1983)。
【0 0 3 3】
マイクロキヤリァ一の小スケール培養は、 スピナ一フラスコにマイクロキヤリァ一を含む PBS (-)を入 れ、 高圧蒸気滅菌したあと、 培養液に培地交換し、 細胞を接種して培養を開始する。 適度な間隔を置い て培地交換し、 細胞がマイクロキャリアー上にコンフルェントに増殖してから糖鎖プライマ一投与を行
う。 ヒ ト血管内皮細胞など増殖生存に増殖因子を必要とする細胞は、 内皮細胞増殖因子(VEGF)や線維芽 細胞増植因子 (FGF)などを培養液に添加する。
【0 0 3 4】
マイクロキヤリァー培養では、 200mLスケールの培養瓶 1本で内径 100mmのシャーレの 100枚分に相当す る細胞数が得られ、 しかも単位液量当たりの細胞数は約 4倍の高密度培養であるために、 オリゴ糖ブラ イマ一の投与量も少なく、 またシャーレの細胞では確認出来ない新規なオリゴ糖鎖が検出できる利点が ある。
【0 0 3 5】
培養細胞に O—グルカン型糖鎖を合成させるには、 コンフルェントに増殖した細胞に、 無血清あるい は低血清培地を用いて 1〜数百/ i M、 好ましくは 10〜100 μ Μの本発明の糖鎖プライマ^を投与し、 37°Cで 1〜5日間培養する。 細胞は糖鎖プライマ一を取り込み、 細胞内のゴルジ体において、 細胞が有する糖 鎖合成経路により、 糖鎖プライマーの糖鎖部分に更に糖を付加し、 耱付加生成物を細胞外に分泌する。 このようにして、 伸長した糖鎖を含む産生原液を得ることができる。 培養上清をハ一^ iストし、 濃縮、 分離、 構造解析を行い、 多種類のオリゴ糖鎖のライブラリーを得ることが出来る。 細胞の種類によって 糖鎖プライマーの種類と投与量 .培養液、 培養日数が異なるので、 細胞毎に培養の最適条件を見出すこ とは、 オリゴ糖鎖の効率的な生産に繋がる。
【0 0 3 6】
ハーべスト液に含まれるオリゴ糖鎖は、 ァフィ二ティーク口マトグラフ、 限外濾過、 あるいは硫安沈 殿などを用いて濃縮分離し、 高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)、 MALDI- TOF MS、 NMR等で構造解析を 行う。 未知物質については高速薄層クロマトグラフィーにプロッティング後、 酵素処理を行い、 得られ た物質の組成分析から構造の推定を行えばょ 、。
【0 0 3 7】
本発明は、 このようにして得られた、 糖鎖プライマーに糖が付加したもの、 すなわち伸長した糖鎖-ァ ミノ酸 -アルキル基で表される化合物も包含する。 該化合物は一般式 ( I I ) G C—A„—L— X 〔式中、 G Cは、 用いた耱鎖プライマーに糖が付加されて伸長した O—ダリカン型糖鎖であり ;"A„、 L、 Rおよ び Xは、 上記で定義したのと同じである。 :] で示される。 B
【0 0 3 8】
ここで、 G Cは自然界に見出されるあらゆる O—グリカン型糖鎖を含み、 GalNAc残基から伸長してい る糖鎖構造により、 以下のようにコア 1型からコア 8型まで分類される。
コア 1型 Gal 1— 3GalNAc、 コア 2型 Gal 1— 3 (GlcNAc 1 - 6) GalNAc、 コア 3型 GlcNAc l—3GalNAc、 コア 4型 GlcNAc 1 - 3 (GlcNAc 1-6) GalNAc、 コア 5型 GalNAc a l-3GalNAc、 コア 6型 GlcNAc i3 1-6G alNAc、 コア 7型 GalNAc o -6GalNAc、 コア 8型 Gal α l-3GalNAc。
【0 0 3 9】
上記一般式中の G Cは、 これらのコァ型の糖の 3位または 6位にさらに他の糖が結合した構造を有し ている誘導体である。
得られた糖鎖は、 付加された糖鎖に応じて、 各種の用途に使用することができる。
【0 0 4 0】
本発明の糖鎖プライマーを用いて製造した o—グリ力ン型糖鎖ならぴに/または他の方法で入手した 糖脂質の糖鎖、 多糖の糖鎖および N—グリカン型の糖鎖を揃えることにより糖鎖ライプラリーのセット が得られる。 糖鎖ライブラリーのセットは、 ある細胞由来のものであっても、 ある動物種由来のもので あっても、 あるいは、 自然界に存在するあらゆる糖鎖を含んでいてもよく、 これらの一部糖鎖の任意の 組合わせであってもよい。 これらの糖鎖ライブラリーのセットを、 固相に固定化することにより必要な 糖鎖を含む糖鎖チップを得ることができる。 糖鎖チップは、 細胞中に微量にしか存在しないタンパク質 や遺伝子と糖鎖との相互作用を網羅的に解析することを可能にする。
【0 0 4 1】
糖鎖チップの製造は、 固定化用固相上に上記一般式 (I I ) G C— A„— L— Xで表される糖鎖を有す る化合物を整列化して結合させる。 この際、 固相上に Xと共有結合し得 Bるアミノ基ゃカルボキシル基等 の官能基を導入しておくことにより、 カップリング反応等により容易に結合させることができる。 固相 としては、 ニトロセルロース膜、 ナイロン膜、 ガラス板、 ポリスチレン、 ポリカーボネート等の樹脂製 プレート等を用いることができる。
【0 0 4 2】
整列化の方法も限られず、 固相上に上記化合物を高密度に整列化できる方法ならばいかなる方法も用 い得る。 例えば、 固相上に上記化合物溶液をスポットするアレイヤーを用いればよい。 スポッ トするァ レイヤーには、 ピン、 羽ペン、 インクジェット、 キヤビラリ一、 ピン &リング等種々の方法があり、 い ずれの方法を用いてもよい。 また、 ピッキング口ポットを用いて行ってもよい。
【0 0 4 3】
本発明は、 このようにして得られた、 一般式 (I I ) G C— Am— L— Xで表される O—ダリカン型糖 鎖を有する化合物が固定化された糖鎖チップをも包含する。
【0 0 4 4】
さらに、 上記一般式 (I I ) G C— A„— L— X中、 Xが存在しなくてもよい。 用いる糖鎖プライマー に Xを存在させなければ、 G C— A,— !!で表される化合物が得られる。 また、 Xが— N,、 — N H,、 - O H、 —S Hゝ _ C O O H、 一 O C B (0) C H = C H ,および一 C H = C H ,から選択さ: ftる基でおる化 合物から公知の方法により、 Xを切断除去することも^ Γ能である。 1 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、 本発明はこれらの実施例によって限定されるも のではない。 '
〔実施例 1〕 Cl9- Thr - GalNAcプライマーの合成
1 .試薬の調製 "
NMP
N - Methyl- 2- pyrrolidone (NMP) (国産化学) 500mlに活性化したモルキュラーシープ (4A、 ペレツト状)を 入れ室温で保存した。
【 0 0 4 6 j
1 Dimethylphosphinothyl chloride (Mpt-Cl)
5 mlメスフラスコに Mpt - CI (東京化成)を 5腿 ol入れ、 NMPでメスアップし、 蓋をして、 パラフィルムで 覆い、 4°Cで保存した。
【0 0 4 7】
Diraethylphosphinothioic mixed an hydride (Mpt-MA)
ナスフラスコに Fmoc- Thr (GalNAc) - OH 又は Laurie acid (Aldrich)を 0. 22mmolと NMP 3mlを入れ、 塩化 カルシウム管を取り付けた。 フラスコを氷浴につけ、 3分間スターラーで攪拌した。 攪拌 、 2. 0 N, N-DiisoproDvlethylamine/N-Methylpyrrolidone (DIEA) (Applied Biosystems)を 150 μ 1加 、 しばらく スターラーで攪拌した後、 調製した 1 M Mpt - C1を 300 μ 1加えた。 氷浴上で 30分間攪拌した後、 DIEAを 150 μ ΐ加えしばらく攪拌した。
【0 0 4 8】
Cleavage mixture (for 0. 1 - 1. 5 g peptide - resin)
ドラフト內で、 三角フラスコに超純水 500 μ 1と Tr:ifluoroaceticacid (TFA) (Applied Biosystems) 9. 5ml 入れよく振り混ぜた。
【0 0 4 9】
20% (v/v) Piperidine/N P
NMP 400mlと Piperidine (Wako) 100mlを遮光のガラス容器に入れ、 室温で保存した。
【0 0 5 0】
2 .合成
ペプチド固相合成用カラム(東京理科機器)に Rink Amide MBHA Resin (nova biochem) 0. 22mmolを入れ、 マルチ固相合成器(国産化学)に取り付けた。 これに NMP 6 mlを加え、 20分間振盪した後、 ァスピレータ 一で力ラム下部から NMPを取り除いた。
1 0 0 5 1】
カラムに20% ( 八)? 6:^ 116/ ?を6 1111注ぎ、 3分間振盪した後、 20% (v/v) Piperidine/NMPをァスピ レーターで取り除いた。 この操作をもう一度繰り返した。 次に 20% (v/v) Piperidine/NMPを 6 nil注ぎ、 20 分間振盪した後ァスピレーターで取り除いた。
【0 0 5 2】
次に、 カラムに NMPを 6 ml注ぎ、 1分間振盪し、 ァスピレーターで除く操作を 6回繰り返した。
カラムに調製した Mpt-MA (Fmoc-Thr (GalNAc) -0H)を加えて 1時間振盪した後、 パスッールピぺットで樹 脂を別の容器に数粒取り Reagents for Kaiser Test (国産化学)を用いて Kaiser testを行い、 反応効率 を調べた。
1 0 0 5 3】
高い効率でアミノ酸残基が導入できたことを確認したら、 ァスピレーターで反応溶液を除き、 カラム に NMPを 6 ml注ぎ、 1分間振盪し、 ァスピレーターで除く操作を 6回繰り返した。
同様に脱保護、 洗浄、 Mpt-MA (Laurie acid)とのカップリング反応、 洗浄の操作を行なった。
【0 0 5 4 j
カラムをマルチ固相合成器から取り外し、 2方コック(東京理科機器)を取り付けた。 Cleavage mixtur eを加え、 スターラ一で 3時間攪拌した後、 コックを開けて反応溶液をナスフラスコに移した。 カラムの 内壁に残った反応溶液等も TFAで洗い流してフラスコに移した。 カラムの 2方コックを閉じ、 TFAをカラ ムに少量に入れ、 スターラーで攪拌し、 コックを開けて溶液を前述のナスフラスコに移した(この操作を 全部で 3回行なった)。 ナスフラスコ内の TFAをエバポレーターで飛ばした。 残つた液体を 50ml遠心チュ —ブに移し凍結乾燥機で乾燥させた。 乾燥した試料に Ν, Ν - Dimethylformamide (Wako)を 10mg/mlとなるよ うに加えた後、 Membrane filter (0. 45 μ ηι)に通し、 これを試料として HPLCによる精製を行った。 17. 4mg (35 μ ηιοΐ)の目的物が得られた。 これを Dimethyl sulphoxide (DMSO) (Sigma)に 50mMとなるように溶解し、 プライマーストック溶液とした。
1 0 0 5' 5】
〔実施例 2〕
1 . MKN45 cellによるシアル酸付加生成物の構造解析
すべての細胞内糖鎖伸長反応はフヱノールレツドを含まな!/ヽ無血清培地中で行った。 MKN45細胞では、 糖鎖伸長反応用の無血清培地として RPMI 1640 (11835 - 030, Invitrogen)を選択し、 トランスフェリン(hoi 0 bovine, 和光純薬)5 mg/L, インシュリン(human, Sigma) 5 mg/L, 二酸化セレン 30 nMを加えて使用し た。
【0 0 5 6】
少量で糖鎖伸長を行なう場合には、 100 mmfディッシュを使用し、 大量に糖鎖伸長を行う場合には 200 mLスピナ一ポトルを使用し、 マグネチックスターラ一で撹拌しながら培養した。
【0 0 5 7】
糖鎖伸長反応は、 次のように行なった。 遠心分離によって培養液から細胞を回収し、 PBS (-) (日水製 薬)で洗 pた後、 糖鎖伸長反応に用いる無血清培地で再度洗った。 この細胞をトリパンブルー染色により 1. 5 X 10bcells/mLになるように調製した後、 プライマーを含んだ無血清 RPMI1640培地に再懸濁する ことで、 耱鎖プライマーと相互作用させた。
【0 0 5 8】
プライマーと相互作用させた細胞は、 48時間培養した後、 氷上あるいは 4 °Cで静置することにより反 応を停止させた。 反応容器から培地を回収した後、 PBS (-)で洗浄しながら細胞を回収した。 回収した細 胞懸濁液を遠心分離し、 沈殿した細胞を細胞画分として、 上清を培地画分として回収した。 なお、 実験 の都合上タンパク質定量が必要な際は、 回収した細胞画分を 500 μ LPBS (-)に再懸濁し、 50 μ Lをタンパク 質定量用に分取した。 この際懸濁液は再度遠心分離を行うことで沈殿を細胞画分として回収し、 上清は 培地画分に加えた。
細胞画分は、 クロ口ホルム/メタノール(C/M) = 2/1 (v/v) 1 mLを加え、 30分間ソニケーシヨンを行う. ことにより抽出した。
【0 0 5 9】
培地画分は、 逆相力ラムクロマトグラフィ一にかけることにより、 脂質を担体に吸着させてから抽出 した。 小スケールの場合には Sep- Pak C18 plus (Waters)を用い、 大スケールで抽出する場合には Sep- Pak C18 plusの担体である Preparative C18 125A (Waters)を充填したオープンカラムを作製した。 培地画 分を吸着させたカラムは、 べッド体積の 10倍量の MilliQ水で洗浄したのち、 べッド体積の 5倍量のメタノ ール /水 混合溶媒を用いて溶出した (結果および考察に示す) 。 溶出後溶媒をエバポレートし、 4でで 保存した。 使用する際はク口口ホルム/メタノール /水 (C/ /W)混合溶媒に再度溶解した。
【0 0 6 0】
細胞画分および脂質画分から抽出した脂質は、 高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC) プレート(Sili cagel60, Merk)を用いて分離した。 展開系には、 実験系に応じたクロ口ホルム/メタノール /0. 2% CaCl, 水溶液(5 / 4 / 1 )の混合溶媒を用いた。 酸性糖脂質については、 レゾルシノール-塩酸試薬をスプレ J し、 95 °Cで加熱することによりバンドを青紫色に可視化した後、 デンシトメータ(CS - 9300PC, Shimazu) を用いて波長 580 nmで解析した。 中性糖脂質については、 オルシノール-硫酸試薬をスプレーし、 105 °C で加熱することによりバンドを赤紫色に可視化した後、 デンシトメータを用いて波長 540 nmで解析した。 その結果、 5本のシアル酸付加生成物のバンドが得られた(図 1;)。 5つのシアル酸付加生成物をそれぞ れ A 1力 ら A 5とした。
【0 0 6 1】
化合物 A2の分析
Negative ion mode で測定したところ m/z=1268. 47にピークが得られた(図 2 )。 次にこの分子を Precur sor ionとして MS/MS測定を行った(図 3および表 1 )。 PSDスぺクトルからこの分子はプライマーに Hex 1 個と NeuAc 2個が結合した構造であることがわかった。 これが O -結合型糖鎖であるとすると Hexは Galで あり、 GalNAcに Galが ΐ- 3 (Corel)で結合していると予想される(図 1 1 )。 また m/z=517. 44と 476. 35にピ ークが見られることから、 2個の NeuAcは Hexと Ga INAcに 1個ずつ結合していると考えられる。 Benzy 1- Ga INAcの実験においては NeuAc a 2→3Gal β l→3GalNAc (6 2 a NeuAc) a l→0-bnという構造の生成物が多く 得られているので(図 1 2 )、 同様の構造である可能性が高いと考えられる。
【0 0 6 2】
【表 1】
KN45 cell による生成物 A2のフラグメントイオン
Chemical species Observed Calculated
mass (mノ z) mass (m/z)
[M+Na]^ (Primer+Hex+2NeuAc) 1269.88 1270-56
[ -anNeuAc+Na (Primer+Hex+NeuAc) 979.52 979.47
[M-2anNeuAc+Na]+ (Primer+Hex) 688.54 688.37
[M-NeuAc-anNeuAc-anHex+Na]* (Primer) 526.48 526.32
[M-NeuAc-anNeuAc-anHex+NaJ* (anGalNAc+NeuAc) 517.44 518.18
[ -NeuAc-HexNAc-Thr-Cl2H„0+Na]+ (anHex+NeuAc 476.35 477.16
[M - 2anNeuAo- anTh「G,2H„0+Na] (GalNA^Hex) 406.20 406.14
[M-NeuAc-anHex - HexNAc- Thr"C12H240 - H+2Na; (NeuAc) 354.29 354.11
orDW-NeuAc-Hex-anHexNAc-Thr-C,2H240-H+2Nar
[M-NeuAc-Hex-HexNAc-Thr-Gl2H240-H+2Na]* (anNeuAc) 336.26 337.10
【0 0 6 3】
化合物 Alの分析
Negative ion modeで m/z=794. 32のピークが得られた(図 4 )。 PSDスぺクトル(図 5および表 2 )からこ の分子はプライマーに NeuAcが 1個結合した構造であることがわかった。 これは Sialyl Tn抗原 (NeuAc α 2 →6GalNAc)である可能性が考えられ、 Sialidaseを用いて NeuAcの結合様式を決定した。
【0 0 6 4】
【表 2】
8 w / « 5 δ
MKN45 cellに :よる生成物 A1 のフラグメントイオン
Chemical species Observed Calculated
mass (m/z) mass (m/z)
[M+Na]' (Primer+NeuAc 817.00 817.42
[M-NeuAc+Na]+ (Primer) 526.71 526.31
[M-HexNAc-Thr-G)2H240-H+2Na]+ (anNeuAc) 336.59 337.10
[M-NeuAc-Hex- HexNAc-Th「G12H„0+Na]' (anNeuAc) 314.17 315.10
[M-anNeuAc-anThr-G,2H240+Na]+ (GalNAc) 244.22 244.09
[M-anNeuAc-Thr-C,aH240+Na]* CanGalNAc) 226.24 227.09
【0 0 6 5】
2 . HuH7 cellによるシアル酸付加生成物の構造解析
HuH7 cell (ヒト肝癌細胞)に C12_Thr - GalNAcプライマーを投与した後、 培地画分を精製し、 HPTLCに展 開したところ 3本のシアル酸付加生成物のバンドが得られた(図 6 )。 実験としては M N45細胞と同様の手 法で行つた。 3つのシアル酸付加生成物をそれぞれ A 1カゝら A 3とした。
【0 0 6 6】
化合物 A1の分析
Negative ion modeで測定したところ m/z=1268. 56にピークが得られた(図 7 )。 PSDスぺク トル(図 8お よび表 3 )からこの分子は MKN45 cellの A2と同様プライマーに Hex 1個と NeuAc 2個が結合した構造である ことがわかった。 また m/z=517. 49と 475. 28にピークが見られることから、 NeuAcは Hexと GalNAcに 1個ず つ結合していると考えられる。
【0 0 6 7】
【表 3】
HuH7 cellによる生成物 A1 のフラグメントイオン
Chemical species Observed Calculated
mass (m/z) mass (m/z)
(Primer»-Hex+2NeuAc) 1269.87 1270.56
EM-anNeuAc+Na]* (Prime r+Hex+ euAc) 979.48 979.47
[M-2anNeuAo+Na]fr (Pnmer+Hex) 688.55 688.37
[M-NeuAc-anNeuAc-anHex+Wa]* (Primer) 526.58 526.32
[M-NeuAc-HexNAc-Thr-C^H^O+Na]4' (anHex+NeuAc) 475.2B 477.16
C -2anNeuAc-anThi-C12H240+Na3* (HexNAc+Hex) 406.28 406.14
[M— 2anNeuAc-Th C12H240+Na? (anHexNAc+Hex) 388.36 389.14
[M-NeuAc-Hex-HexNAc-Thr-G^H^O-H+aNa] - (anNeuAc) 336.29 337.10
【0 0 6 8】
化合物 A2の分析
Negative ion modeで m/z=1632. 82にピークが得られた(図 9 )。 PSDスぺクトル(図 1 0およぴ表 4 )から この分子は Hex l個と NeuAc 2個を含む構造であることがわかった。 また 891. 83- 526. 32 (Primer+Na)=365. 51で、 これは anHex+HexNAcまたは Hex+anHexNAcと分子量が一致するため、 プライマーに Hexが 2個、 HexN Acが 1個、 NeuAcが 2個結合した構造である可能性がある(Benzyl - GalNAcを用いた実験でもこのような構 造を持つ生成物が得られている)。
【0 0 6 9】
【表 4】
HuH7 cell による生成物 A2のフラグメントイオン
Chemical species Ooserved mass m/z) Calculated mass (m/z)
[M+Na]+ 1634.73 1635.70
[M-anNeuAc+Na]+ 1345.14 1344.60
[M-2anNeuAc+Na]+ 1054.05 1053.51
[ -NeuAc-anNeuAc-anHex+Naj+ 891.83 891.45
【図面の簡単な説明】
【0 0 7 0】
【図 1】 MM45細胞培地画分の HPTLCによる分析結果を示す図である。 Rsolsinol/HCl染色している。 【図 2】 MNK45細胞による生成物 A2の MSスぺク トルを示す図である。 MKN45細胞に C12 - Thr- GalNAcプ ラィマーを投与して得られたシアル酸付加生成物 A2を Negative ion modeで測定した結果である。
【図 3】 MKN45細胞による生成物 A2の MALDI - PSDスぺク トルを示す図である。
【図 4】 MNK45細胞による生成物 A1の MSスぺク トルを示す図である。 MKN45細胞に C12 - Thr - GalNAcプ ライマーを投与して得られたシアル酸付加生成物 A1を Negative ion modeで測定した結果である。
【図 5】 M N45細胞による生成物 A1の MALDI- PSDスぺクトルを示す図である。
【図 6】 HuH7細胞細胞培地画分の HPTLCによる分析結果を示す図である。 Rsolsinol/HCl染色してい る。
【図 7】 HuH7細胞による生成物 A1の MSスぺク トルを示す図である。 HuH7細胞に C12 - Thr- GalNAcプラ ィマーを投与して得られたシアル酸付加生成物 A1を Negative ion modeで測定した結果である。
【図 8】 HuH7細胞による生成物 A1の MALDI - PSDスぺクトルを示す図である。
【図 9】 HuH7細胞による生成物 A2の MSスぺク トルを示す図である。 HuH7細胞に 2- Thr- GalNAcプラ ィマーを投与して得られたシアル酸付加生成物 A2を Negative ion modeで測定した結果である。
【図 1 0】 HuH7細胞による生成物 A2の MALDI- PSDスぺク トルを示す図である。
【図 1 1】 O—結合型糖鎖のコア構造を示す図である。
【図 1 2】 Benzyl- GalNAcを HT- 29細胞に投与した場合の糖鎮伸長の経路を示す図である。