JP6466321B2 - 活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体 - Google Patents

活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体 Download PDF

Info

Publication number
JP6466321B2
JP6466321B2 JP2015512523A JP2015512523A JP6466321B2 JP 6466321 B2 JP6466321 B2 JP 6466321B2 JP 2015512523 A JP2015512523 A JP 2015512523A JP 2015512523 A JP2015512523 A JP 2015512523A JP 6466321 B2 JP6466321 B2 JP 6466321B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sugar chain
compound
asparagine
group
represented
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015512523A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014171514A1 (ja
Inventor
健文 村瀬
健文 村瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Glytech Inc
Original Assignee
Glytech Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Glytech Inc filed Critical Glytech Inc
Publication of JPWO2014171514A1 publication Critical patent/JPWO2014171514A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6466321B2 publication Critical patent/JP6466321B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B37/00Preparation of polysaccharides not provided for in groups C08B1/00 - C08B35/00; Derivatives thereof
    • C08B37/006Heteroglycans, i.e. polysaccharides having more than one sugar residue in the main chain in either alternating or less regular sequence; Gellans; Succinoglycans; Arabinogalactans; Tragacanth or gum tragacanth or traganth from Astragalus; Gum Karaya from Sterculia urens; Gum Ghatti from Anogeissus latifolia; Derivatives thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B37/00Preparation of polysaccharides not provided for in groups C08B1/00 - C08B35/00; Derivatives thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07HSUGARS; DERIVATIVES THEREOF; NUCLEOSIDES; NUCLEOTIDES; NUCLEIC ACIDS
    • C07H15/00Compounds containing hydrocarbon or substituted hydrocarbon radicals directly attached to hetero atoms of saccharide radicals
    • C07H15/02Acyclic radicals, not substituted by cyclic structures
    • C07H15/12Acyclic radicals, not substituted by cyclic structures attached to a nitrogen atom of the saccharide radical
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/78Hydrolases (3) acting on carbon to nitrogen bonds other than peptide bonds (3.5)
    • C12N9/80Hydrolases (3) acting on carbon to nitrogen bonds other than peptide bonds (3.5) acting on amide bonds in linear amides (3.5.1)
    • C12N9/82Asparaginase (3.5.1.1)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/04Polysaccharides, i.e. compounds containing more than five saccharide radicals attached to each other by glycosidic bonds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/26Preparation of nitrogen-containing carbohydrates

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Description

本発明は、活性化糖鎖誘導体の製造方法、及び、活性化糖鎖誘導体化合物に関する。
糖鎖は、一般に、単糖と単糖とがグリコシル結合という結合を介して鎖状に結合したものである。生体内においては、種々の糖鎖が重要な役割を果たしていることが知られている。生体内においては、糖鎖は、ペプチド、蛋白質、脂質等に結合した複合糖質として存在することも多い。
特に、生体内に存在する糖ペプチドや糖蛋白質においては、ペプチドの特定のアミノ酸に特定の構造を有する糖鎖が結合していることが知られている。これらの糖鎖は、その構造の違いによって、ペプチド(蛋白質)の活性や、体内動態等に様々な影響をもたらすことが知られている。
このような糖鎖や、糖鎖付加ペプチドを、医薬品として使用することも行われているが、糖鎖付加ペプチドを細胞系によって調製すると、糖鎖の構造が不均一となることが知られている。糖鎖の構造が不均一であると、薬効にもばらつきが生じうるため、分離精製または化学合成された構造の均一な糖鎖をペプチドに付加する必要性は高い。しかしながら、分離精製または化学合成された糖鎖をペプチド等の他の物質と結合させるためには、必要に応じ、結合に必要な官能基を糖鎖に付加する必要がある。
糖鎖に対して、他の物質との結合に必要な官能基(本発明において、活性化基ともいう)を付加する方法としては、例えば、天然の卵黄等から、糖鎖の還元末端に−OH基を有する糖鎖を分離精製し、炭酸アンモニウム法により糖鎖の還元末端にアミノ基を導入し、当該アミノ基に対して活性化基を付加する方法が行われてきた(例えば、特許文献1、2、非特許文献1、2を参照)。しかしながら、このような方法では、天然に存在する糖ペプチドは、糖鎖とペプチドとの結合における立体配置はβ型であるにもかかわらず、糖鎖にアミノ基を導入する過程において、糖鎖の還元末端に位置する単位糖が開環閉環を経てアミノ基が導入される為、αアノマーとβアノマーの混合物が生じるという問題が生じていた。
国際公開第2005/010053号 EP0413675A2
Biochemistry(1992)、Vol.31、10724−10732頁 Biochemical J.(1993)、Vol.296、817−825頁
活性化基を有する糖鎖化合物を製造する際、従来技術としての炭酸アンモニウム法では糖鎖の還元末端にアミノ基を導入する過程において、糖鎖の還元末端に位置する単位糖が開環し、αアノマーとβアノマーの混合物が生じるという課題が生じていた。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、糖鎖の還元末端に活性化基を有する糖鎖化合物をβ選択的に製造する方法について鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、糖鎖アスパラギン構造を有する化合物を原料として、糖鎖の還元末端にアスパラギン側鎖由来の窒素原子が結合した状態を保持するように糖鎖を糖鎖ペプチドから切断し、前記糖鎖の還元末端と前記窒素原子との間の共有結合のみならず、β立体配置をも保持したまま、前記窒素原子に活性化基を導入し、βアノマーとしての、活性化基を有する糖鎖化合物を製造する方法を見出した。また、本発明者らは、上記製造方法について鋭意検討を行った結果、本発明の化合物として、βアノマーである、新規の、活性化基を有する糖鎖化合物を見出した。
すなわち、本発明は、以下の式(1a)で表される化合物
G−NH−CO−CH−Y (1a)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
の製造方法に関する。
本発明の製造方法は、上記の式(1a)で表される化合物の製造方法であって、以下の工程(a)〜(b)を含むものであってよい。
本発明の製造方法において、工程(a)は、以下のように表される工程、
(a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
G−Asn (2)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
下記式(3)で表される化合物
G−NH (3)
(ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
を得る工程であってよい。
本発明の製造方法において、工程(b)は、以下のように表される工程、
(b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(4)で表される化合物
−CO−CH−Y (4)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
とを反応させる工程であってよい。
また、本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様においては、以下の式(1b)で表される化合物
G−NH−CO−CH−Y (1b)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
の製造方法に関する。
本発明の製造方法において、上記の式(1b)で表される化合物の製造方法は、
以下の工程(a)〜(c)を含むものであってよい。
本発明の式(1b)で表される化合物の製造方法において、工程(a)は、以下のように表される工程、
(a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
G−Asn (2)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
下記式(3)で表される化合物
G−NH (3)
(ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
を得る工程であってよい。
本発明の式(1b)で表される化合物の製造方法において、工程(b)は、以下のように表される工程、
(b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(5)で表される化合物
−CO−CH−Z (5)
(ここで、Lは脱離基であり、Zは、ハロゲン原子である)
とを反応させる工程であってよい。
本発明の式(1b)で表される化合物の製造方法において、工程(c)は、以下のように表される工程、
(c)工程(b)で得られた化合物と、
以下の式(6a)または式(6b)で表される化合物
−Y (6a)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
(6b)
(ここで、Lは陽イオンであり、Yは、前記活性化基Yの陰イオンであり、LはLとYの塩である)
とを反応させる工程であってよい。
本発明の上記式(1a)で表される化合物の製造方法の一実施態様において、Yは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択されるものであってよい。
本発明の上記式(1a)で表される化合物の製造方法の一実施態様において、Yは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、及び、CH(OMe)からなる群から選択されるものであってよい。
本発明の上記式(1b)で表される化合物の製造方法の一実施態様において、Zは、臭素原子であり、Yは、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、及び、SHCHCHNH、からなる群から選択されるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素は、グリコシルアスパラギナーゼ(GA)、及び/または、ペプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)であってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素は、担体に固定されているものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素が、担体に固定されており、さらに、前記工程(a)の後及び前記工程(b)の前に、以下の工程(d);
(d)担体に固定された前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素を反応系から分離する工程;
を含むものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記工程(a)が0℃から40℃の温度条件下において行われるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記工程(a)が0℃から10℃の温度条件下において行われるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記糖鎖は、N−結合型糖鎖であってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記糖鎖は、N−結合型の複合型糖鎖であってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記糖鎖は、ジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、及び、DiGlcNAc糖鎖からなる群から選択される糖鎖であってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記糖鎖が、以下の式(7)により表される
(7)
(ここで、R及びR’は、それぞれ独立して、以下の式(8a)から式(8f)で表される糖鎖

(8a)
(8b)
(8c)
(8d)
(8e)
(8f)
からなる群から選択される)
であってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、前記糖鎖は、ジシアロ糖鎖であって、前記ジシアロ糖鎖を構成するシアル酸の側鎖カルボン酸がエステル化またはアミド化により保護されているものであってよい。
本発明の別の実施態様において、本発明は、活性化基を有する糖鎖化合物として、以下の式(1c)で表される化合物
(1c)
(ここで、Yは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、それぞれ独立して、以下の式(8a)から式(8f)で表される糖鎖
(8a)
(8b)
(8c)
(8d)
(8e)
(8f)
からなる群から選択される)
に関する。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、それぞれ独立して、前記式(8a)から式(8f)で表される糖鎖から選択されるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、それぞれ独立して、前記式(8a)から式(8f)で表される糖鎖から選択されるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、それぞれ独立して、前記式(8a)から式(8f)で表される糖鎖から選択されるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、同一であり、前記式(8a)から式(8e)で表される糖鎖から選択されるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、いずれも前記式(8b)で表される糖鎖であるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、前記式(1c)で表される化合物であって、式中、Yは、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択され、R及びR’は、いずれも前記式(8c)で表される糖鎖であるものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法の一実施態様において、各工程を行う際の塩基性条件、反応温度、反応時間、反応させる化合物、等は、上記に示されたものの任意の組み合わせとするものであってよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物の一実施態様において、式中のY、R及びR’は、上記に示されたものから選択されるものの任意の組み合わせとするものであってよい。
本発明は、活性化基を有する糖鎖誘導体の製造方法として、従来技術としての炭酸アンモニウム法と比較して、糖鎖の還元末端について、β型の立体配置を保持したまま活性化基の導入を可能とする効果、すなわち、優れたβ選択性を有するという効果を有する。
また、本発明は、実施態様により、活性化基を有する糖鎖誘導体の製造方法として、従来の炭酸アンモニウム法と比較して、より短時間に、よりβアノマー純度の高い糖鎖誘導体の製造を可能とするという効果を有する。
また、本発明は、活性化基を有する糖鎖誘導体の製造方法として、低温条件を用いることで、より収率が高く、βアノマー純度の高い糖鎖誘導体の製造を可能とするという効果を有する。
また、本発明は、酵素を固相に固定化しておくことで、より簡便に、より高い収率で、βアノマー純度の高い糖鎖誘導体の製造を可能とするという効果を有する。
さらに、本発明の、活性化基を有する糖鎖誘導体を用いて、ペプチド等の側鎖に存在する、または、ペプチド等の側鎖に導入された官能基と反応させることにより、ペプチドに対して、βアノマーである均一な構造の糖鎖を有する糖ペプチド及び/または糖タンパク質を製造することができる。
図1は、従来技術の合成スキームを示す反応式である。 図2は、本発明の合成スキームを示す反応式である。 図3は、従来技術の方法で合成したアシアロ糖鎖−NH−AcBrのH−NMRスペクトルである。 図4は、本発明の方法で合成したアシアロ糖鎖−NH−AcBrのH−NMRスペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法に関する。
本発明において、活性化基を有する糖鎖化合物は、糖鎖の還元末端に、アミノ基を有し、当該アミノ基に対してさらに活性化基を結合させたものである。本発明において、糖鎖化合物に対して活性化基を結合させることを、糖鎖化合物に活性化基を導入する、ともいうことがある。活性化基とは、糖鎖を、ペプチド、タンパク質、脂質等の他の物質に結合させるために使用することができる、反応性の高い官能基を有する置換基をいう。本発明において、活性化基を有する糖鎖化合物は、糖鎖を他の物質に結合させるために誘導体化したもの、という意味において、活性化糖鎖誘導体、または、単に糖鎖誘導体ともいうことができる。
本発明における、活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法は、工程(a)と工程(b)を含む。
工程(a)は、糖鎖アスパラギンまたは糖鎖アスパラギンを含む糖鎖ペプチドに対して、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させて、糖鎖の還元末端にアスパラギン側鎖由来のアミノ基が結合した糖鎖アミン化合物を得る工程である。
工程(b)は、工程(a)で得られた糖鎖アミン化合物と、活性化基を有する化合物とを反応させて、糖鎖の還元末端に存在するアミノ基の窒素原子に、活性化基を導入する工程である。
工程(a)においては、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いることを特徴とする。
従来技術においても、糖ペプチドから糖鎖を分離精製する際に酵素を用いて糖鎖を糖鎖アスパラギンから切断して分離することはあったが(例えば、上記特許文献1参照)、このような従来の方法では、糖鎖アスパラギン加水分解酵素によって、糖鎖の還元末端にアミノ基ではなく、水酸基を有する糖鎖が得られていた。そして、その還元末端に水酸基を有する糖鎖とは、α立体配置の−OH基を有する糖鎖(すなわち、α−アノマーである)と、β立体配置の−OHを有する糖鎖(すなわち、β−アノマーである)の混合物が得られることが知られていた。
そして、このような還元末端に−OH基を有する糖鎖のαアノマー及びβアノマーの混合物としての糖鎖に対して、炭酸アンモニウム法により還元末端の水酸基をアミノ基に置換する方法が行われていた。そして、炭酸アンモニウム法では、炭酸アンモニウムと作用させるために、ある程度高温で、ある程度の長時間の反応を行うことが知られていた。そして、その結果として得られる糖鎖化合物も、β型のアノマーの純度が十分に高いものではなかった。
そこで、本発明者らは、β選択性の高い、活性化基を有する糖鎖化合物の製造方法について鋭意検討した結果、驚くべきことに、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いる際に塩基性条件を用いることにより、糖鎖の還元末端にアスパラギンの側鎖窒素原子由来のアミノ基を保持し、優れたβ選択性を実現できることを見出した。
すなわち、本発明者らは、本発明の一態様として、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いる際に塩基性条件を用い、かつ、低温で反応を行うことにより、さらに顕著なβ選択性を実現できることを見出した。
また、本発明者らは、本発明の一態様として、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いる際に塩基性条件を用い、かつ、短時間で反応を行うことにより、さらに顕著なβ選択性を実現できることを見出した。
また、本発明者らは、本発明の一態様として、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いる際に塩基性条件を用い、低温で、かつ、短時間で反応を行うことにより、さらに顕著なβ選択性を実現できることを見出した。
本発明らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の製造方法によって、後の実施例において説明するように、β選択性が94%を超えるほどの、より好ましくは99%を超えるほどの非常に高いβ選択的反応の実現を可能にしたものである。
また、本発明の製造方法によれば、糖鎖を分離精製した後に糖鎖をアミノ化する工程が不要となるので、従来方法におけるアミノ化に必要であったコストと時間とを削減することが可能である。
さらに、本発明の製造方法によれば、糖鎖アスパラギンまたは糖鎖ペプチドから糖鎖アミン化合物を得るまでの時間を大幅に短縮することが可能である。
その上、従来の炭酸アンモニウム法では、30℃〜50℃という高温で長時間の反応において、糖鎖の分解反応や、糖鎖の保護基の脱保護反応が生じ、収率が低下してしまうところ、本発明の製造方法によれば、このような糖鎖の分解や脱保護を防ぎ、より収率の高い製造方法とすることが可能である。
本発明の製造方法において、目的化合物としての、活性化基を有する糖鎖化合物は、式(1a)で表される化合物、式(1b)で表される化合物、式(1c)で表される化合物等として示すことができる。
例えば、式(1a)で表される化合物は、以下のとおりである。
G−NH−CO−CH−Y (1a)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
これらの化合物は、糖鎖の還元末端に−NH−CO−CH−を介して活性化基(Y、Y、または、Y)が結合したもの、ということができる。
本発明の製造方法に用いられる原料化合物としては、「式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物」等を示すことができる。
G−Asn (2)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している。)
ここで、「式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造」とは、糖鎖の還元末端にアスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合しているものをいい、これを本明細書において、「糖鎖アスパラギン構造」ということがある。「式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物」は、糖鎖とアスパラギンから構成される糖鎖アスパラギンの他、糖鎖アスパラギンの両端にさらに別のアミノ酸がペプチド結合した、糖鎖アスパラギン含有ペプチドをも含む。
すなわち、「式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物」は、以下の式(2a)として表すこともできる。
(Aa)n−Asn(G)−(Aa)m
(2a)
(ここで、Aaは任意のアミノ酸を表し、(Aa)nは、独立して選択される任意のアミノ酸がn個ペプチド結合していることを表し、(Aa)mは、独立して選択される任意のアミノ酸がm個ペプチド結合していることを表し、n、mはそれぞれ独立して、0〜100の整数であり、Asn(G)は、式(2)と同様に、糖鎖の還元末端に、アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合していることを表す。)
ここで、nとmが同時に0である場合には、糖鎖アスパラギンの両端に別のアミノ酸はペプチド結合しておらず、糖鎖1分子とアスパラギン1分子とが結合した、糖鎖アスパラギンを意味する。
ここで、nやmが0の場合には、式(2a)中のアスパラギンのC末端のカルボキシル基やN末端のアミノ基は、別のアミノ酸とペプチド結合をしておらず、遊離のカルボキシル基や遊離のアミノ基であることを意味する。
本発明の一態様において、nは、0〜100の整数であり、好ましくは、0〜10の整数であり、より好ましくは、0〜5の整数である。
本発明の一態様において、mは、0〜100の整数であり、好ましくは、0〜10の整数であり、より好ましくは、0〜5の整数である。
本発明の一態様において、式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物は、糖蛋白質または糖ペプチドをそのまま用いることができる他、糖蛋白質または糖ペプチドを原料として、あらかじめ、ペプチド加水分解酵素によってある程度断片化したものを用いることができる。また、市販の糖ペプチドまたは糖鎖アスパラギン、またはその誘導体等を用いてもよい。
本発明の製造方法における中間体としては、式(3)で表される化合物等を示すことができる。
G−NH (3)
(ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
式(3)で表される化合物は、糖鎖の還元末端にアスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合しており、糖鎖アミン化合物ともいうことができる。
本発明の製造方法における活性化剤としては、式(4)で表される化合物を示すことができる。
−CO−CH−Y (4)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
式(4)で表される化合物は、−CO−CH−Yの部分を上記式(3)で表される化合物の窒素原子に結合させるための活性化剤、または、単に活性化剤ともいうことができる。
本発明の製造方法は、工程(a)と工程(b)を含む。工程(a)と工程(b)について、以下、より詳細に説明する。
工程(a)は、以下のように表すことができる。
(a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
G−Asn (2)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
下記式(3)で表される化合物
G−NH (3)
(ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
を得る工程。
工程(a)は、上記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物に対して、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させて、上記式(3)で表される化合物(糖鎖アミン化合物ともいう)を得る工程である。
本発明の製造方法における糖鎖アスパラギン加水分解酵素は、糖鎖の還元末端とアスパラギン側鎖の窒素原子との結合を切断せずに、アスパラギン側鎖における窒素原子と当該窒素原子に隣接するカルボニル炭素原子との間の結合を加水分解する酵素であれば、特に制限されない。この反応により、糖鎖アスパラギンから、糖鎖アミン化合物とアスパラギン酸とが生成される。
本発明の糖鎖アスパラギン加水分解酵素の例としては、グリコシルアスパラギナーゼ(GA)やぺプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)を挙げることができる。PNGaseは、その由来により、例えば、PNGase−F、PNGase−Aなどが知られている。グリコシルアスパラギナーゼ(GA)やぺプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)は、これらの酵素を発現させて精製する方法などにより製造することができる他、BioLabs Inc.等から入手することができる。
本発明の一態様において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素として、グリコシルアスパラギナーゼ(GA)を用いる場合には、基質として、式(2a)において、n及びmが0である糖鎖アスパラギンを用いることが好ましい。
本発明の一態様において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素として、ぺプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)を用いる場合には、基質として、式(2a)において、n及びmが0でない糖鎖アスパラギン含有ペプチドを用いることが好ましい。ぺプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)を用いる場合、基質としては、シアリルグリコぺプチド(SGP)と呼ばれる糖ペプチドを用いることができる。
シアリルグリコぺプチド(SGP)は、糖鎖アスパラギンのN末端側に3残基、C末端側に2残基のアミノ酸が結合した計6残基の糖ペプチドであり、配列はLys−Val−Ala−Asn(糖鎖)−Lys−Thrとして示すことができる。シアリルグリコぺプチド(SGP)は、株式会社伏見製薬所から購入することができる他、ペプチド部分がより長い糖タンパク質や糖ペプチドから、ペプチド部分を切断することにより製造することができる。
本発明の製造方法において、工程(a)は、塩基性条件下において行う。ここで、塩基性条件とは、式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物から、式(3)で表される化合物(糖鎖アミン化合物)を得る工程において、高いβ選択性を実現することができる程度の塩基性であることをいう。本明細書を見た当業者であれば、本発明としての高いβ選択性を実現するために必要なpHの程度を理解することができるであろう。本発明の一態様においては、塩基性条件は、弱塩基性条件とすることができる。本発明の一態様においては、塩基性条件とは、pH8〜11をいい、好ましくは、pH8〜10、より好ましくは、pH8〜9とすることができる。このような塩基性条件は、上記pHを示す溶媒、上記pHとなるように調製した溶媒を用いて実現することができる。具体例としては、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)緩衝溶液等、一般的な緩衝溶液を用いることができる。上記塩基性条件は、反応開始前に調整しておく他、反応中にpHのモニタリング等をしてさらに調整をしてもよい。本発明において、pHは、一般に用いられるpHメーター(株式会社 堀場製作所 pH測定器 D−51S)などにより測定することができる。例えば、本発明の実施例では、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いており、これを上記pHメーターで測定したところ、pHは約8.5であった。本発明の一実施態様において、塩基性条件は、上記塩基性条件を実現するような量の塩基性物質(炭酸水素ナトリウム等)を反応系に加えて攪拌する方法等により実現してもよく、必然的に上記塩基性条件が実現できる限り、pHメーター等を用いて塩基性条件を調整する工程を必ずしも必要とするものではない。
本発明の製造方法の一態様において、工程(a)は、塩基性条件下において、かつ、短時間で行うことが好ましい。「短時間で」行うとは、従来法としての炭酸アンモニウム法よりも短時間で行うことを意味することができる。従来法としての炭酸アンモニウム法では、通常、一週間程度反応させることが知られていた。本発明者らは、糖鎖アスパラギン加水分解酵素によるβ選択的な加水分解反応の条件を鋭意検討した結果、反応条件を塩基性条件とし、さらに、反応時間を短時間にすることにより、糖鎖の還元末端に位置する糖の開環反応を抑制し、さらにβ選択性を高めることができることを見出した。
本発明の製造方法における工程(a)は、塩基性条件下において、式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物から、式(3)で表される化合物(糖鎖アミン化合物)を効率よく得ることができ、反応時間をより短時間にすることができる。
ここで、短時間で、とは、上記の従来方法よりも短時間であるという意味の他、10分〜3時間をいい、好ましくは、10分〜2時間、より好ましくは、10分〜1時間をいう。ただし、本発明の製造方法における優れたβ選択性を実現できる限り、上記の反応時間以上に反応を続けることを本発明の範囲から除外するものではない。
本発明の製造方法の一態様において、工程(a)は、塩基性条件下において、かつ、低温で行うことが好ましい。従来法としての炭酸アンモニウム法では、通常、30〜50℃で反応させることが知られていた。本発明者らは、糖鎖アミン化合物を得る為に糖鎖アスパラギン加水分解酵素による加水分解反応の条件を鋭意検討した結果、工程(a)を低温で行うことにより、糖鎖の還元末端に位置する糖の開環反応を抑制し、さらにβ選択性を高めることができることを見出した。
本発明の製造方法における工程(a)は、酵素反応であるから、37℃程度が適温であるとも予測されうるところ、本発明者らは、鋭意検討した結果、驚くべきことに、通常の酵素に好適な37℃程度の温度に限らず、さらに、4℃など、通常の酵素反応よりもあえて低温の温度をも用い、β選択性に優れ、かつ、十分な反応性を有する実験条件を見出すことに成功した。
さらには、本発明者らは、低温では、酵素の反応速度が低下することが予想されるにもかかわらず、低温でありながら、さらに、例えば1時間以内という短時間でも充分な反応性を実現できることを見出した。
ここで、低温で、とは、上記の従来方法よりも低温であるという意味の他、0℃〜40℃をいい、本発明の一態様において、好ましくは、0〜20℃、より好ましくは、0℃〜10℃をいう。本発明の一態様において、さらに好ましくは、2℃〜6℃とすることが好ましい。
低温を実現するための温度調節方法は、上記温度に調節することができる方法であれば、特に制限されない。温度調節方法としては、通常の生化学実験において用いられる方法を用いて実現することができ、例えば、恒温槽、氷冷等の方法を用いて行うことができる。本発明において、温度は、一般に用いられる温度計(赤液棒状温度計など)などにより測定することができる。
本発明の製造方法において、工程(b)は、以下のように表すことができる。
(b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(4)で表される化合物
−CO−CH−Y (4)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
とを反応させる工程。
本発明の製造方法において、工程(b)は、工程(a)で得られた、式(3)で表される化合物と、式(4)で表される化合物とを反応させる工程である。
式(3)で表される化合物に、式(4)で表される化合物を反応させると、式(3)中のNHの窒素原子が、式(4)中のカルボニル炭素を求核攻撃すると考えられる。その結果、式(3)中のNHから水素原子が、式(4)の化合物からLが脱離し、式(3)中の窒素原子と式(4)中のカルボニル炭素との間に共有結合が形成されると考えられる。
この工程(b)において、糖鎖の還元末端における、糖鎖の還元末端に結合している窒素原子の立体配置は、β型の立体配置であることを特徴とする。
ここで、式(4)で表される化合物は、工程(b)において脱離可能な脱離基Lと、活性化基Yとを有する化合物である。
ここで、脱離基は、工程(b)において、糖鎖還元末端のβ型の立体構造を保持可能な条件において脱離可能な脱離基である限り、特に限定されない。本発明において、脱離基としては、カルボニル炭素に対する求核攻撃において、脱離する脱離基を用いることができる。このような脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子など)、などが挙げられる。また、例えば、式(4)で表される化合物として、対称酸無水物(Y−CH−CO−O−CO−CH−Y)を用いることができ、その場合には、脱離基は、Y−CH−CO−Oで表される基となる。また、例えば、式(4)で表される化合物として、ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いることもでき、その場合には、脱離基は、ヒドロキシスクシンイミド部分(スクシンイミドの窒素原子に酸素原子が結合した部分)となる。本発明の1態様において、脱離基は、好ましくは、ハロゲン原子、Y−CH−CO−Oで表される基であり、より好ましくは、臭素原子、塩素原子である。
本発明の製造方法において、活性化基は、本発明の式(1a)、式(1b)で表される化合物を、さらに、他の物質に結合させるための反応基として用いることができるものであれば、特に制限されない。本発明の一態様において、他の物質とは、生体内において複合糖質を形成する生体内物質が好ましい。本発明において、活性化基としては、例えば、ペプチドや脂質等の生体物質に存在する、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基等の官能基と反応し得る基であればよく、活性化基とこれらの官能基との間で結合を形成するものが挙げられる。また、活性化基としては、上記の結合形成に用いられる基の他、式(4)において、活性化基に隣接する−CH−の炭素原子と、上記のような他の物質の官能基との間で結合を形成し、活性化基自体は、結合の際に脱離する置換基であってもよい。
本発明の製造方法の一態様において、工程(b)において用いられる活性化基は、前記式(3)で表される化合物と反応させるための官能基部分以外の部分において、保護基により保護されているものを用いてもよい。この場合には、工程(b)または、その後適宜の工程を経た後に、前記保護基部分を脱保護する工程を含むことが好ましい。例えば、前記式(1a)で表される化合物として、YがSHである化合物を製造したい場合、工程(b)においては、式(4)で表される化合物において、YとしてSHに代えてチオアセチル基であるものを用いてチオアセチル基を導入し、後にアセチル基を脱保護することにより製造してもよい。
本発明の製造方法において、このような活性化基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、アジド基、ヒドラジノ基、ジメトキシメチル基などが挙げられる。本発明の一態様において、好ましくは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、及び、CH(OMe)であり、より好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子である。
本明細書を見た当業者であれば、実施例に記載の化合物の活性化基の他、これに多少の改変を加えた活性化基であっても、本発明の製造方法により製造できることを理解できるであろう。
工程(b)は、弱塩基性溶媒中において行うことができる。本発明の一態様において、溶媒としては、好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)緩衝溶液等、一般的な緩衝溶液を用いることができ、より好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いることができる。
工程(b)のpHは、工程(b)において、優れたβ選択性を実現できる限り、特に制限されない。本発明の一態様において、好ましくは、pH8〜11であり、より好ましくは、pH8〜10、より好ましくは、pH8〜9である。
工程(b)の反応時間は、工程(b)において、優れたβ選択性を実現できる限り、特に制限されない。本発明の一態様において、好ましくは、10分〜20時間であり、より好ましくは、10分〜1時間である。
工程(b)の反応温度は、工程(b)において、優れたβ選択性を実現できる限り、特に制限されない。本発明の一態様において、好ましくは、0〜40℃であり、より好ましくは、0〜10℃である。
本発明の一態様において、工程(b)は、好ましくは、氷冷下、または、それと同等の温度条件下において、1時間以内に完了することができる。
本発明の一態様において、工程(a)、及び、(b)を含む製造方法を用いる場合、Yが、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH及び、CH(OMe)からなる群から選択されることが好ましい。
本発明の一態様において、工程(a)、及び、(b)を含む製造方法を用いる場合、Yが、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、及び、CH(OMe)からなる群から選択されることが好ましい。
本発明の一態様において、本発明の、活性化基を有する糖鎖化合物は、上記の工程(a)及び工程(b)の方法により合成することができる他、活性化基の種類に応じ、上記の工程(a)及び工程(b)の後に、以下の工程(c)を含む方法によっても製造することができる。
すなわち、工程(a)〜(c)を含む方法は、以下のように記載することができる。
下記式(1b)で表される化合物
G−NH−CO−CH−Y (1b)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c):
(a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
G−Asn (2)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
下記式(3)で表される化合物
G−NH (3)
(ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
を得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(5)で表される化合物
−CO−CH−Z (5)
(ここで、Lは脱離基であり、Zは、ハロゲン原子である)
とを反応させる工程;
(c)工程(b)で得られた化合物と、以下の式(6a)または式(6b)で表される化合物
−Y (6a)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
(6b)
(ここで、Lは陽イオンであり、Yは、前記活性化基Yの陰イオンであり、LはLとYの塩である)
とを反応させる工程;
を含む、製造方法。
すなわち、工程(a)、(b)、及び(c)を含む製造方法は、工程(b)において、式(3)で表される化合物に対し、活性化基がZ(ハロゲン原子)である式(5)で表される化合物を活性化剤として反応させ、さらに、工程(c)として、活性化基Yを有する化合物を反応させることにより、前記ハロゲン原子をYに置換する反応である。
この方法を用いる場合、工程(b)の反応により、式(1a)で表される化合物において、活性化基Yがハロゲン原子である化合物が得られる。この化合物を式で表すならば、以下の式(1d)として表すことができる。
G−NH−CO−CH−Z (1d)
(ここで、Gは糖鎖を表し、Zはハロゲン原子を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している。)
この式(1d)で表される化合物もまた、本発明の製造方法における目的化合物として用いることが可能であるが、この化合物を中間体として、さらに工程(c)を行うことにより、式(1b)で表される化合物を得ることができる。
工程(c)においては、工程(b)により得られた化合物と、式(6a)または式(6b)で表される化合物とを反応させる。
ここで、式(6a)で表される化合物は、以下のとおりである。
−Y (6a)
(ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である。)
ここで、Lは、工程(c)において脱離可能な基であればよい。本発明の一態様において、Lは、水素原子などが好ましい。本明細書を見た当業者であれば、本明細書に記載の活性化基を導入するため、実施例に記載の脱離基の他、同様に用いることのできる脱離基について、適宜検討することができるであろう。
ここで、Yは、すでに述べた活性化基Yのうち、工程(c)において、工程(b)により得られた化合物におけるZ(ハロゲン原子)と置換可能な活性化基であればよい。本発明の一態様において、Yは、Yの活性化基からZで示されるハロゲン原子を除いたものであるがことが好ましい。本発明の一態様において、Zがハロゲン原子のうちの特に臭素原子である場合には、Yは、臭素原子以外のハロゲン原子であってもよく、Yの活性化基から臭素原子を除いたものであることが好ましい。
式(6a)で示される化合物としては、ヒドラジン、チオ酢酸、システアミンなどが挙げられる。本明細書を見た当業者であれば、本明細書に記載の活性化基を導入するため、実施例に記載の化合物の他、同様に用いることのできる活性化剤について、適宜検討することができるであろう。
ここで、式(6b)で表される化合物は、以下のとおりである。
(6b)
(ここで、Lは陽イオンであり、Yは、前記活性化基Yの陰イオンであり、LはLとYの塩である。)
すなわち、活性化基がハロゲン原子等である場合には、ハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)と陽イオンの塩を式(6b)として用いることができる。また、ハロゲン原子以外に、アジドイオン(N3)のような有機化合物イオンと陽イオンの塩なども使用することができる。
ここで陽イオンとしては、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)等を挙げることができる。
式(6b)で示される化合物としては、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、アジ化ナトリウム、チオ酢酸カリウムなどが挙げられる。
この工程(a)、工程(b)、及び、工程(c)を含む製造方法を用いることにより、活性化基がハロゲン原子、例えば、臭素原子である化合物を製造することにより、この化合物を中間体として、種々の活性化基を有する糖鎖化合物を製造することができる。この方法により、糖鎖と活性基との間の結合をβ配座に固定したまま種々の反応性を有する活性基に誘導化できる、という利点がある。活性化基が臭素原子である化合物は、単離が容易であるため、中間体として有利に用いることができる。
本発明の一態様において、工程(a)、(b)、及び(c)を含む製造方法を用いる場合、Zが、臭素原子であり、Yが、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、及び、SHCHCHNHからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の製造方法の一態様において、工程(c)において用いられる活性化基は、前記式(3)で表される化合物と反応させるための官能基部分以外の部分において、保護基により保護されているものを用いてもよい。この場合には、工程(c)または、その後適宜の工程を経た後に、前記保護基部分を脱保護する工程を含むことが好ましい。例えば、式前記式(1b)で表される化合物として、YがSHである化合物を製造したい場合、工程(c)においては、式(6a)で表される化合物において、YとしてSHに代えてチオアセチル基であるものを用いてチオアセチル基を導入し、後にアセチル基を脱保護することにより製造してもよい。
さらに、本発明者らは、鋭意検討を重ね、本発明の製造方法に関し、上記工程(a)の後、工程(b)を行う前に、以下の工程(d)、
(d)担体に固定された前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素を反応系から分離する工程;
を行うことにより、さらに収率を高めることができることを見出した。
ここで、反応系から分離するとは、反応系と糖鎖アスパラギン加水分解酵素とを実質的に分離することをいい、糖鎖アスパラギン加水分解酵素の大部分を分離できればよく、完全に分離することのみを意味するものではない。また、分離するとは、反応系から糖鎖アスパラギン加水分解酵素を取り除く、という意味の他、反応系から糖鎖アスパラギン加水分解酵素以外のものを取り出す、という意味でもよく、両者を実質的に分離することができる方法であれば制限されない。
さらに、本発明者らは、鋭意検討を重ね、本発明の製造方法に関し、上記工程(a)の後、短時間のうちに、工程(b)を行うことにより、さらにβ選択性を高めることができることを見出した。
ここで、短時間のうちに、とは、1時間以内をいい、より好ましくは、10分以内をいう。
本発明者らは、鋭意検討を重ね、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を反応系から分離する方法として、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を担体に結合させることにより、工程(d)を簡便に行うことができ、さらに、工程(a)から短時間のうちに工程(b)を行うことを可能とすることを見出した。
すなわち、本発明の一態様において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素は、担体に固定されたものを用いることが好ましい。
担体に固定されているとは、担体に対して、共有結合等を形成することにより、固定することを言い、担体とともに、担体を扱うのと同様に扱うことができるものであれば、結合様式等は特に限定されない。本発明の一態様において、担体とは、固相樹脂であることが好ましい。酵素の固定化に用いる固相樹脂は、AminoLink(登録商標)Plus Coupling resin(Thermo社製、アガロース樹脂)、TOYOPEARL−AF−Tresyl−650M、TOYOPEARL−AF−Formyl−650M(東ソー社製、メタクリルポリマー樹脂)等が挙げられるが、酵素活性を維持することができる固定化担体であれば、樹脂の種類、固定化の原理にかかわらず市販の樹脂を用いることができる。また、担体に糖鎖アスパラギン加水分解酵素を固定する方法としては、担体と酵素の間で共有結合を形成する方法、イオン対を形成する方法、酵素を包括する方法などを用いることができる。本明細書を見た当業者であれば、本発明の実施例で用いた固相樹脂の他、同種の固相樹脂について検討することができるであろう。
本発明の製造方法において、担体に固定された糖鎖アスパラギン加水分解酵素を用いることにより、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を濾過等の簡便な方法により、反応系から分離することができる。反応系から分離する方法は、特に制限されないが、例えば、担体の構造、性質に応じ、濾過、遠沈操作、などを用いることができる。
本発明の製造方法によれば、種々の活性化基を有する糖鎖化合物を得ることができ、このような糖鎖化合物は、ペプチドやタンパク質や脂質等の生体内物質等に糖鎖を結合させるための糖鎖誘導体として、好適に用いることができる。
さらに、本発明者らは、本発明の一態様として、βアノマーであり、新規の、活性化基を有する糖鎖誘導体を提供する。本発明者らは、活性化基を有する糖鎖化合物として、目的とする生体内物質等に糖鎖を結合させるために好適な反応性を有する活性化基について鋭意検討した結果、少なくとも、式(1c)で表される化合物が特に好適なものであることを見出した。
特に、本発明に関して、式(1c)として具体的に示された化合物は、糖鎖付加ペプチドを製造するための糖鎖誘導体として好適な糖鎖構造を有し、かつ、ペプチドの天然の側鎖またはペプチドに導入された側鎖に対する好適な選択性、反応性を有するように、本発明者らにより鋭意検討され得られたものである。
また、式(1c)として具体的に示された化合物は、すでに述べた、工程(a)及び工程(b)を含む製造方法により好適に製造することが可能な化合物でもある。また、式(1c)として具体的に示された化合物は、すでに述べた、工程(a)、工程(b)及び工程(c)を含む製造方法により好適に製造することが可能な化合物でもある。
しかしながら、本発明において、式(1c)で表される化合物の発明は、上記製造方法により製造されるものに限られない。
本明細書を見た当業者であれば、本発明の製造方法は、特に還元末端付近の構造が、本発明の製造方法のβ選択性に強く影響することを理解するため、式(1c)に具体的に例示された化合物に限らず、式(1a)や式(1b)で表されるような、糖鎖部分の構造や、活性化基の部分の構造が多少異なる化合物であっても、本発明の製造方法によって同様に製造可能であることを理解するであろう。
本発明における、活性化基を有する糖鎖化合物を、糖鎖を生体内物質等の標的化合物に結合させるための誘導体として用いる場合、式(1c)で表される化合物は、目的とする糖鎖のR及びR’と、好適な活性化基Yとを、式(1c)に記載の選択肢の中から任意に組み合わせたものとすることができる。
なお、生体内物質等の標的化合物において、糖鎖を結合させる標的となる官能基は、目的とする生体内物質等が天然の状態で本来有する官能基に限らず、本発明の活性化基を有する糖鎖化合物と反応させるために導入されたものでもよい。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物において、例えば、活性化基が、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、または、SHである場合には、目的とする生体内物質等におけるチオール基を標的として、導入することができる。例えば、活性化基がNである場合には、目的とする生体内物質等におけるアルキン基を標的として導入することができる。例えば、活性化基がNHNHである場合には、目的とする生体内物質等における、活性化されたエステル基またはアルデヒド基を標的として、導入することができる。例えば、活性化基がCH(OMe)である場合には、目的とする生体内物質等におけるアミノ基を標的として、導入することができる。このような活性化基と標的官能基との関係は、例示であり、本明細書を見た当業者であれば、上記の活性化基と反応し得るその他の官能基を同様に標的官能基とすることを適宜検討することができるであろう。
本明細書中において、「糖鎖」とは、単位糖(単糖及び/又はその誘導体)が2つ以上連なってできた化合物の他、1つの単位糖(単糖及び/又はその誘導体)からなる化合物をも含む。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される単糖類及び多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれらの複合体及び誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解又は誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。
本明細書中において、「糖鎖」には糖鎖の誘導体も含まれ、糖鎖の誘導体としては、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸))、アミノ基又はアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基及びカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書中において、「糖鎖」は、生体内に存在する複合糖質(糖ペプチド(又は糖タンパク質)、プロテオグリカン、糖脂質等)を化学的に合成する観点からすれば、糖鎖は、生体内で複合糖質(糖ペプチド(又は糖タンパク質)、プロテオグリカン、糖脂質等)として存在する糖鎖であることが好ましい。
本発明の一態様において、生体内に存在する糖ペプチドまたは糖タンパク質を化学的に合成する、という観点においては、アスパラギンに結合している糖鎖として知られている、N−結合型の糖鎖(アスパラギン結合型糖鎖、N型糖鎖ともいう。)が好ましい。
N−結合型糖鎖は、ペプチドのアスパラギン(Asn)の側鎖に対して結合しているものとして知られる糖鎖であって、以下の式で表される5糖を基本構造として有することが知られている。
(Man)−Man−GlcNAc−GlcNac−
(ここで、「Man」はマンノース、「GlcNAc」は、N−アセチルグルコサミンを示し、左端が非還元末端、右端が還元末端であり、還元末端においてアスパラギン側鎖の窒素原子と結合する。)
N−結合型糖鎖は、上記の5糖の非還元末端にさらに結合する糖鎖の構造に応じて類型化されたものが知られており、例えば、高マンノース(ハイマンノース)型、複合(コンプレックス)型、混成(ハイブリッド)型を挙げることができる。本発明の一態様においては、糖鎖は、N−結合型の複合型糖鎖が好ましい。
本発明の製造方法を、糖ペプチドまたは糖タンパク質としての医薬品等を化学的に合成するという観点からすれば、好ましい糖鎖としては、例えば、ヒト体内において、タンパク質と結合した糖タンパク質として存在する糖鎖(例えば、FEBS LETTERS Vol.50, No.3, Feb. 1975に記載の糖鎖)と、同一の構造を有する糖鎖(構成糖の種類及びそれらの結合様式が同一の糖鎖)又はこれの非還元末端から1又は複数の糖を失った糖鎖を挙げることができる。
N−結合型糖鎖の複合型糖鎖としては、2分岐型、3分岐型、4分岐型のもの等が知られており、分岐数は特に制限されない。
本発明の一態様において、N−結合型糖鎖の複合型糖鎖としては、例えば、2分岐型のものとして、以下の式(7)により表される糖鎖とすることができる。
(7)
(ここで、R及びR’は、それぞれ独立して、以下の式(8a)から式(8f)で表される糖鎖
(8a)
(8b)
(8c)
(8d)
(8e)
(8f)
からなる群から選択される)
本発明において、N−結合型糖鎖や、複合型糖鎖としては、その種類の糖鎖として一般的に知られている糖鎖の基本骨格を有するものであれば、その結合様式、フコースの有無、側鎖の置換基に対する修飾の有無等が異なるものであっても含まれる。
本発明において、ジシアロ糖鎖とは、N−結合型糖鎖、二分岐型の複合型糖鎖として知られている糖鎖の基本構造を有し、二分岐型の2つの非還元末端の両方にシアル酸が結合している糖鎖をいう。本発明の一態様において、ジシアロ糖鎖としては、上記式(7)の化合物において、R及びR’が、いずれも式(8a)で表される糖鎖である化合物、を用いることが好ましい。すなわち、この化合物を1つの化学式で表すならば、以下の式(9)で表すことができる。
(9)
上記の化合物は、シアル酸が、α2−6結合により結合しているジシアロ糖鎖の例である。本発明の一態様においては、シアル酸が、α2−3結合により結合しているジシアロ糖鎖である、以下の式(10)で表される糖鎖を用いることもできる。

(10)
本発明において、アシアロ糖鎖とは、N−結合型糖鎖、二分岐型の複合型糖鎖として知られている糖鎖の基本構造を有し、上記のジシアロ糖鎖から、二分岐型の2つの非還元末端の両方のシアル酸が脱離した構造を有する糖鎖をいう。本発明の一態様において、アシアロ糖鎖としては、上記式(7)の化合物において、R及びR’が、いずれも式(8d)で表される糖鎖である化合物、を用いることが好ましい。
本発明において、DiGlcNAc糖鎖とは、N−結合型糖鎖、二分岐型の複合型糖鎖として知られている糖鎖の基本構造を有し、上記のジシアロ糖鎖から、二分岐型の2つの非還元末端の両方のシアル酸、及び当該シアル酸の還元末端側に結合していたガラクトースが脱離した構造を有する糖鎖をいう。本発明の一態様において、DiGlcNAc糖鎖としては、上記式(7)の化合物において、R及びR’が、いずれも式(8e)で表される糖鎖である化合物、を用いることが好ましい。
本発明において、式(7)で表される糖鎖は、上記で具体的に例示したジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、DiGlcNAc糖鎖の他、R及びR’を独立に選択することにより表される種々の糖鎖を含む。
本発明の一態様においては、生体内糖タンパクの認識性や血中滞留性等において重要な役割を果たしている糖鎖の活性化体を提供するという観点からは、糖鎖は、ジシアロ糖鎖であることが好ましい。
本発明の一態様においては、ジシアロ糖鎖のシアル酸に含まれるカルボン酸は、本発明の製造方法の工程において、他の物質と反応してしまう可能性があるため、ジシアロ糖鎖のカルボン酸を保護しておくことが好ましい。
本発明の一態様においては、ジシアロ糖鎖のカルボン酸の保護としては、カルボン酸をエステル化すること、または、アミド化することが、好ましい。
エステル化については、例えば、ベンジルエステル化、フェナシルエステル化、メチルエステル化、アリルエステル化等が挙げられる。
本発明の一態様において、ジシアロ糖鎖のカルボン酸をエステル化により保護した例としては、例えば、ベンジルエステル化したジシアロ糖鎖を挙げることができる。本発明において、このような糖鎖をジベンジルジシアロ糖鎖、または、ジBnジシアロ糖鎖ともいうことができる。ジベンジルジシアロ糖鎖は、上記式(7)において、R及びR’が、いずれも式(8b)で表される化合物として示すことができる。
本発明の一態様において、ジシアロ糖鎖のカルボン酸をエステル化により保護した別の例としては、例えば、フェナシルエステル化したジシアロ糖鎖を挙げることができる。
ジシアロ糖鎖のシアル酸中のカルボキシル基をエステル化する方法としては、例えば、ジシアロ糖鎖またはその誘導体(ジシアロ糖鎖−Fmocなど)と、ベンジルブロマイドまたはフェナシルブロマイド等とを反応させることにより製造することができる。または、ベンジルジアゾメタンとの反応等の方法により製造することができる。また、メチルエステル化、アリルエステル化も、目的とするエステル化の構造に応じてベンジルエステル化やフェナシルエステル化と同様の手法により製造することができる。
本発明の一態様において、ジシアロ糖鎖のカルボン酸をアミド化により保護した例としては、例えば、アミド化したジシアロ糖鎖として、上記式(7)において、R及びR’が、いずれも式(8c)で表される化合物を挙げることができる。本発明の一態様においては、アミド化としては、上記式(8c)で表される一級アミド基の他、ジシアロ糖鎖のカルボン酸(−COOHで示される部分)を、−CONRとした化合物とすることもできる(R、Rは、アルキル基等の、二級アミド基や三級アミド基を形成し得る基を示す)。
ジシアロ糖鎖のシアル酸中のカルボキシル基をアミド化する方法としては、例えば、ジシアロ糖鎖またはその誘導体(ジシアロ糖鎖−Fmocなど)をエステル化した化合物と炭酸水素アンモニウム水溶液、アンモニア水等とを反応させることにより製造することができる。または、上記炭酸水素アンモニウム水溶液等に代えて、一級または二級アミンを含む有機溶媒と反応させ、それらをアミド基として導入する方法等によっても製造することができる。
シアル酸のカルボン酸の保護に関しては、従来技術としても、シアル酸をエステル化等により保護した糖鎖を用いようとする試みはあった。しかしながら、従来用いられていた炭酸アンモニウム法を用いて還元末端のアミノ化を実施する際には、その反応中に保護基であるエステル基が一部加水分解、あるいはアミド化を受けるため、シアル酸のカルボン酸がエステル化により保護されており、かつ、糖鎖の還元末端に活性化基を有するジシアロ糖鎖誘導体を調製することは困難であった。それに対して、本発明の方法によれば、炭酸アンモニウムによるアミノ化を経由せず、低温下、炭酸水素ナトリウム水溶液中で酵素処理を行うのみで還元末端のアミノ体が得られるため、カルボン酸がエステル化により保護されたジシアロ糖鎖誘導体を調製することが可能である、という優れた効果を有する。
本発明の製造方法によれば、β選択性に優れた糖鎖誘導体の製造方法を提供することができる。
製造方法の発明において、β選択性に優れるとは、製造方法における生成物を糖鎖化合物の分子の集合として見た場合に、生成物としての糖鎖の還元末端の立体配置に関し、αアノマーとβアノマーを足した糖鎖化合物の総数に対する、βアノマーの割合(存在率)が高いことをいう。逆の方向から表現するならば、糖鎖化合物の総数に対する、αアノマーの存在率が小さいこと、としても表現することができる。また、βアノマーの存在率が高いことを、βアノマーの純度が高いということもできる。
β選択性や、αアノマー及び/またはβアノマーの存在率は、生成物としての糖鎖化合物をH−NMRにより分析して、求めることができる。H−NMRの分析条件としては、例えば、本明細書の実施例に記載の条件を用いることができる。また、当業者であれば、H−NMRの分析条件を適宜検討することができるであろう。また、β選択性は、その他、HPLC等によって求めることもできる。
本発明の一態様において、高いβ選択性を有する、または、β選択性に優れる、という場合、製造方法により得られる化合物において、αアノマー存在率が、6%以下であることをいう。本発明の一態様において、好ましくは、2%以下であり、より好ましくは、1%以下である。
本発明において、収率も高いことが好ましい。本発明の一態様において、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、90%以上である。
本発明の製造方法によれば、β選択性が高いため、βアノマーとしての糖鎖誘導体の収率が高い、ともいうことができる。
従来方法において、β選択性の低い製造方法により糖鎖誘導体を得た場合には、αアノマーとβアノマーとが分離精製可能である場合には、βアノマーのみを分離精製することも考えられたが、本発明の方法によれば、そのような分離精製工程を得る方法よりも、βアノマーである糖鎖誘導体を収率よく製造することができる。
さらに、糖鎖化合物のαアノマーとβアノマーとが分離精製が困難な場合にも、本発明の方法によれば、βアノマー率の極めて高い糖鎖誘導体を製造することが可能である。
本発明の活性化基を有する糖鎖化合物を、複合糖質を製造するための、生体内物質と反応させる糖鎖誘導体である中間体として、すなわち、複数分子の集合体としての中間体組成物として用いる場合、本発明の製造方法を用いて製造すれば、糖鎖の構造が均一であり、βアノマー率が極めて高い組成物として得ることができる。ここで、複数分子の集合体において、糖鎖の構造が均一であるとは、糖鎖誘導体間で比較した場合に、糖鎖を構成する各糖の種類、結合順序、及び糖間の結合様式が同一であることをいい、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の糖鎖の構造が均一であることを言う。また、βアノマー率が極めて高いとは、βアノマー存在率が、94%以上、好ましくは、99%以上であることを言う。糖鎖が均一であり、βアノマー率が極めて高い糖鎖誘導体は、品質が一定であり、特に医薬品の製造や、アッセイなどの分野において好ましい。
本明細書に明示的に開示されていない任意の構成要素が存在しなくても、本明細書中に例示として開示される本発明の態様は実施し得る。
本明細書において特定されたすべての特許および他の刊行物は、参照により、それらの全体が、明確に本明細書に援用される。これらの文書は、本出願の出願日前の関連技術の開示のみを目的として提供され、本発明者らが、先行発明または任意の他の理由によって、かかる開示に先行する権利を持たないことを自認するものとして解釈されてはならない。これらの文書の内容に関する日付および表示に関する全ての記述は、出願人が入手可能であった情報に基づいており、これらの文書の日付および内容が正確であるという自認を何ら構成しない。
本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
本明細書において用いられる「含有する」又は「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除しない。前記それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除してもよい場合、「からなる(consist of)」という用語があてられてよい。用語「含有する」又は「含む」の概念は、用語「からなる」の概念を包含する。
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
第1の、第2の等の用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第1の要素を第2の要素と記し、同様に、第2の要素は第1の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
本明細書において、成分含有量や数値範囲等を示すのに用いられる数値は、特に明示がない限り、用語「約」で修飾されているものと理解されるべきである。例えば、「30mL」とは、特に明示がない限り、「約30mL」を意味するものと理解される。
文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形で表される各態様は、技術的に矛盾しない限り、複数形であってもよいことが理解され、逆もまた真である。
本明細書中に引用される文献は、それらのすべての開示が、本明細書中に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、それらの先行技術文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用して理解する。
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。関連分野の当業者は、本発明の精神または範囲を変更させることなく、様々な改変、付加、欠失、置換等を伴って本発明を実施できる。
以下の実施例においては、「ジシアロ糖鎖」化合物については、以下の式(7)において、
(7)
R及びR’がいずれも、以下の式(8a)
(8a)
で表される糖鎖を用いたものであり、
「アシアロ糖鎖」化合物については、上記式(7)において、R及びR’がいずれも、以下の式(8d)
(8d)
で表される糖鎖を用いたものであり、
「DiGlcNAc糖鎖」化合物については、上記式(7)において、
R及びR’がいずれも、以下の式(8e)
(8e)
で表される糖鎖を用いたものである。
ただし、本明細書を見た当業者であれば、これらの糖鎖を用いた場合に加え、本発明のその他の糖鎖を用いた場合にも、以下の実施例と同様に、必要に応じて適宜検討を加え、製造可能であることを理解できるであろう。また、以下の実施例において、「−NH−AC−」とは、「−NH−CO−CH−」を意味する。
[参考例]
(参考例1)ジシアロ糖鎖アスパラギン混合物の合成
エタノール(EtOH,67mL)を撹拌しているところに、卵黄1個を割り入れた。約5時間撹拌した後に濾過を行い、さらにEtOH(30mL)で洗浄を行った。得られた結晶に、再度EtOH(83mL)を加えて1晩撹拌を行った後に濾過を行い、次いで、EtOH(30mL)で洗浄した。次いで、結晶を乾燥させると、脱脂卵黄(Delipidated Egg Yolk)が約3g得られた。
得られた脱脂卵黄を、リン酸緩衝液(pH=7.0,30mL)に溶解させた後、NaN(10mg)を加えた。さらに、オリエンターゼONS(HBI社製、1.0g)を加え、50℃で約24時間静置させた。反応の終了を薄層クロマトグラフィー(TLC)にて確認した後、反応液をセライト(登録商標)(Celite Corporation)を用いて濾過した。濾液を濃縮により減じてから、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G−25,2.5×100cm,水)で精製した。目的とする糖が含まれる分画を回収して濃縮し、次いで、凍結乾燥を行った。
得られた残留物(約430mg)に、Tris−HCl・塩化カルシウム緩衝溶液(pH=7.5,43mL)、アジ化ナトリウム(NaN,21mg)を加えて、当該残留物を溶解させた。さらに、アクチナーゼE(43mg)を加え、12時間毎にpHをチェックしながら24時間静置させた。24時間静置後、反応液に再度アクチナーゼE(21.5mg)を加え、再びpHをチェックしながら約48時間反応させた。反応の終了をTLCで確認した後、セライト濾過を行った。濾液を濃縮により減じてから、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G−25,2.5×100cm,水)で精製した。目的とするジシアロ糖鎖アスパラギンが含まれる分画を回収して濃縮し、次いで凍結乾燥を行って、ジシアロ糖鎖アスパラギンを含む混合物を得た。
(参考例2)Fmoc基でアスパラギンのアミノ基窒素が保護されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocの合成
参考例1で得られたジシアロ糖鎖アスパラギン混合物(約120mg)を、水(1.5mL)に溶かし、炭酸水素ナトリウム(26mg)を加えた。さらに、Fmoc−Osu〔N−(9−Fluorenylmethyloxycarbonyl)oxysuccinimide〕(68mg)を溶かしたジメチルホルムアミド(DMF,2.5mL)を加えた後、室温で2時間反応させた。原料消失をTLCで確認後、エバポレーターを用いて濃縮した。残渣に、水(15mL)、ジエチルエーテル(25mL)を加えて10分間撹拌した。次いで、分液操作を行った後、水層を、ジエチルエーテル(15mL)で洗浄し、さらに、濃縮、凍結乾燥を行った。次いで、得られた残留物を、ODSカラム(ワコーゲル100C18)を用い、グラジエントをかけて精製した。糖鎖が含まれている分画を回収し、濃縮後、凍結乾燥を行った。得られた残留物をHPLC分取カラムにて精製した(YMC−Pack R&D ODS,D−ODS−5−A,20×250mm,AN/25mM AcONH buffer=20/80,7.5ml/min)。約15分後に出てくるメインピークを分取後、濃縮した。次いで、ODSカラムにて脱塩処理を行った。凍結乾燥すると、目的とする、Fmoc基でアスパラギンのアミノ基窒素が保護された糖鎖アスパラギン化合物である、ジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocが、約13.3mg得られた。
(参考例3)シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocの合成
4℃に冷却したDowex−50Wx8(H)のカラム(φ0.5cm×5cm)に、参考例2で得られたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(20mg,7.8μmol)の冷水溶液を流し、溶出した水溶液を凍結乾燥した。
得られたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocを4℃の冷水に溶かし、これにCsCO水溶液(2.5mg/1mL)を加えて、水溶液のpHが5〜6になるよう調整した。その後、この糖鎖水溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥後のジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc試料を乾燥DMF(1.3mL)に溶かし、ベンジルブロマイド(5.1μL)を加えて、アルゴン気流下、室温で45時間攪拌した。TLCで反応終了を確認後、反応溶液を、0℃に冷却したジエチルエーテル(10mL)に加え目的物を析出させた。これを、濾紙を用いて濾過した。残った目的物に蒸留水を加え、濾液として溶出させた後、続いて、これを減圧濃縮した。得られた残渣をODSカラムにかけて精製し、目的化合物としての、シアル酸中のカルボン酸をベンジルエステル化したジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(18.2mg,6.6μmol,収率85%)を得た。
(参考例4)シアル酸中のカルボン酸がフェナシルエステル基で保護されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocの合成
参考例2で得られたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(153mg,59.8μmol)をDMF(1.9mL)に溶かし、これにLiBr(51.9mg,598.0μmol)、フェナシルブロマイド(119.0mg,598.0μmol)を加えて37℃で18時間撹拌した。HPLCで反応の終了を確認した後、トルエン(20mL)中に反応溶液を加えて、糖鎖成分をスラリーとして析出させた。このスラリーに対して、遠心分離機による遠沈操作を行い、目的の糖鎖を含む残渣を回収した。回収した残渣をODSカラムにかけて精製し、目的化合物として、シアル酸中のカルボン酸がフェナシルエステル化されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(100.4mg,35.9μmol,収率60%)を得た。
(参考例5)固定化GA酵素の調製
グラム陰性桿菌Elizabethkingia meningosepticaのゲノムDNAからグリコシルアスパラギナーゼ(GA)をコードする領域をPCRにより取得した。GA酵素の精製を簡便にするため、GA遺伝子のC末端にHis x 6タグ遺伝子を付加し、タンパク質発現用ベクターpET24a(Novagen)を用いて、C末端Hisタグ融合GA発現ベクターを構築した。C末端Hisタグ融合GA発現ベクターにより宿主大腸菌株Rosetta2(DE3)pLysS(Novagen)を形質転換した。この菌を2xYT培地で培養して、目的タンパク質を菌体内可溶性タンパク質として発現させた。菌体を超音波破砕して目的タンパク質を溶出させ、Ni2+カラム(GE Healthcare)を用いて目的タンパク質を精製した。
精製後のタンパク質溶液(100mL,タンパク質濃度:17.5mg/mL,比活性:69.6 unit/mL)を、予め0.1M リン酸緩衝液(pH=7.4)で洗浄した固相樹脂(TOYOPEARL AF−Tresyl、30g)に加えて、20℃で4時間撹拌した。4時間後、濾過操作を行い、回収した固相樹脂を1M NaClで洗浄した。固相樹脂上の残存活性基をキャッピングするために、0.5M NaCl,0.5M Tris−HCl緩衝液(pH=7.4,200mL)を加えて、20℃で1時間撹拌した。1時間後、濾過を行い、回収した固相樹脂を1M NaCl水溶液、次いで、水で洗浄し、樹脂表面にGA酵素が固定化された固相樹脂(固定化GA酵素含有固相樹脂。以下、固定化GA酵素ともいう。)(120mL,比活性5.8unit/mL)を得た。
[実施例]
(実施例1)工程(a)を37℃の温度条件下で行った、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NH−AcBrの合成
参考例3で得られた、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(1.0g、0.4mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(10.0mL)に溶かした後、ピペリジン(144.2μL,1.5mmol)を加え、室温で反応させた。30分後、HPLC分析(下記分析条件(1))において20分に溶出する原料ピークの消失、及び13分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖アスパラギンであると考えられた。反応終了を確認後、反応溶液をジクロロメタン(DCM、50mL)に加えて糖鎖化合物を沈殿させた。DCM中に沈殿している糖鎖化合物を溶解する為に4.6%ブロモ酢酸水溶液(10mL)を加えて、DCMを分相して除去し、水相をDCMで洗浄後、回収した。回収した水相にNaHCO(874.0mg)、参考例5で調製した固定化GA酵素(約10mL)を加えて37℃の温度条件下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLC分析(分析条件(2))において14分に溶出する原料ピークの消失、及び16分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NHであると考えられた。得られた濾液にNaHCO(537.6mg,6.4mmol)を加えた後に、アセトニトリル(10mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(1.1mL,12.7mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。HPLC分析(分析条件(2))において16分に溶出する原料ピークの消失、及び27分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NH−AcBrであると考えられた。反応終了確認後、5%HBr水溶液(30mL)で反応溶液を希釈し、ODS担体を用いて精製を行うことで(Nacalaitesque,ODS−140C18OPN,水、5%アセトニトリル水溶液、50%アセトニトリル水溶液の順に溶媒を置換して糖鎖を溶出させる)ベンジルエステル化したジシアロ糖鎖ブロモアセトアミドを収量816.0mg,収率89%で得た。得られた糖鎖を分析した結果、α異性体存在比は5.1%であった。なお、α異性体存在比は、以下のH−NMR条件においてH−NMRを用いて分析し、H−NMRでの面積百分率により算出した。なお、実施例及び比較例において、α異性体存在比の分析方法については、以下同様である。
HPLC分析条件(1):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒A:25mM酢酸アンモニア水溶液,B:アセトニトリル グラジエントA90% 0.70mL/min→A40% 0.70ml/min,30分)
HPLC分析条件(2):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒25mM酢酸アンモニア水溶液:アセトニトリル=86:14,0.70ml/min,0.70ml/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.42(m,10H,Ar),5.68(d,GlcNAc1−H−1(α異性体))5.31(d,1H,Bn−C ),5.24(d,1H,Bn−C ),5.05(s,1H,Man4−H−1),5.00(d,1H,GlcNAc1−H−1(β異性体)),4.87(s,1H,Man4’−H−1),4.53(m,3H,GlcNAc2,5,5’−H−1),4.26(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.18(bs,1H,Man3−H−2),4.12(bd,1H,Man4−H−2),4.04(bd,1H,Man4’−H−2),2.61(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),2.01,1.97,1.95,1.94(m,18H,Ac×6),1.77(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C100152BrN62[M+Na]2544.804,found2544.470
(実施例2)工程(a)を4℃以下の温度条件下で行った、シアル酸のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NH−AcBrの合成
参考例3で得られた、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(29.8 g, 10.9mmol)をジメチルホルムアミド(DMF、297.5mL)に溶かしピペリジン(4.3mL,43.4mmol)を加え、室温で反応させた。30分後、HPLC分析(分析条件(1))において20分に溶出する原料ピークの消失、及び13分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖アスパラギンであると考えられた。反応終了を確認後、反応溶液をDCM(900mL)に加えて糖鎖を沈殿させた。DCM中に沈殿している糖鎖を溶解する為に4.6%ブロモ酢酸水溶液(312mL)を加えて、DCMを分相して除去し、水相をDCMで洗浄後、回収した。回収した水相にNaHCO(26.0g)を加えて1時間4℃で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約100mL)を加えて4℃の温度条件下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLC分析(分析条件(2))において14分に溶出する原料ピークの消失、及び16分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NHであると考えられた。得られた濾液にNaHCO(63.8g,760.0mmol)を加えた後に、アセトニトリル(110mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(32.9mL,380.0mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。HPLC分析(分析条件(2))において16分に溶出する原料ピークの消失、及び27分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、シアル酸中のカルボン酸がベンジルエステル化されたジシアロ糖鎖−NH−AcBrであると考えられた。反応終了確認後、5%HBr水溶液(450mL)で反応溶液を希釈し、ODS担体を用いて精製を行うことで(Nacalaitesque,ODS−140C18OPN,水、5%アセトニトリル水溶液、50%アセトニトリル水溶液の順に溶媒を置換して糖鎖を溶出させる)ベンジルエステル化したジシアロ糖鎖ブロモアセトアミド(以下、「ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr」ともいう)を収量26.6g,収率97%で得た。得られた糖鎖の分析を行った結果、そのα異性体存在比は(n=2で実験を行ったところ、いずれも)0.8%以下であった。
HPLC分析条件(1):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒A:25mM酢酸アンモニア水溶液,B:アセトニトリル グラジエントA90% 0.70mL/min→A40% 0.70ml/min,30分)
HPLC分析条件(2):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒25mM酢酸アンモニア水溶液:アセトニトリル=86:14,0.70ml/min,0.70ml/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.39(m,10H,Ar),5.29(d,1H,Bn−C ),5.22(d,1H,Bn−C ),5.03(s,1H,Man4−H−1),4.98(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.68(s,1H,Man3−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.24(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.16(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.59(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.98,1.95,1.92,1.91(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C100152BrN62[M+Na]2544.804,found2545.509
(実施例3)ジシアロ糖鎖アスパラギンの合成
参考例2で得られた、ジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(15.5g,6.1mmol)を水(100mL)に溶解し、25%アンモニア水(125mL)を加えて37℃で撹拌した。4時間後、HPLC分析において7分に溶出する原料ピークの消失を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、反応中に生じた不溶物を濾過によって除去し、濾液を凍結乾燥することによってジシアロ糖鎖アスパラギンを収量14.1g,収率99%で得た。
HPLC分析条件:(UG−120(250×4.6mm),展開溶媒:25mM酢酸アンモニア水溶液:アセトニトリル=80:20,0.70mL/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.04(s,1H,Man4−H−1),4.98(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.86(s,1H,Man4’−H−1),4.52(m,3H,GlcNAc2,5,5’−H−1),4.35(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.16(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.03(bd,1H,Man4’−H−2),2.83(dd,1H,Asn(C )),2.74(dd,1H,Asn(C )),2.58(bdd,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.99,1.98,1.97,1.94,1.92(m,12H,Ac×3)1.63(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C88141BrNNa64[M+Na]2425.762,found2425.480
(実施例4)ジシアロ糖鎖−NH−AcBrの合成
実施例3で合成したジシアロ糖鎖アスパラギン(0.9g,0.4mmol)を1M NaHCO水溶液(10mL)に溶解し、1時間4℃で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約4mL)を加えて4℃の温度条件下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLC分析において13分に溶出する原料ピークの消失、及び16分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、ジシアロ糖鎖−NHであると考えられた。得られた濾液にNaHCO(3.1g,37.0mmol)を加えた後に、ジクロロメタン(DCM、5.6mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(1.6mL,18.5mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。HPLC分析において16分に溶出する原料ピークの消失、及び20分に溶出する新しいピークの確認を以て反応を終了した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。ここで、新しいピークとして確認された化合物は、ジシアロ糖鎖−NH−AcBrであると考えられた。次いで、分相によってDCM相を除去し、水相をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,2.3cm×100cm,水,流速1.0ml/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮後、凍結乾燥を行い、ジシアロ糖鎖ブロモアセトアミド(ジシアロ糖鎖−NH−AcBr)を収量0.4g,収率46%で得た。得られた糖鎖を分析した結果、そのα異性体存在比は0.2%であった。
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.04(s,1H,Man4−H−1),4.98(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.85(s,1H,Man4’−H−1),4.52(m,3H,GlcNAc2,5,5’−H−1),4.35(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.16(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.57(bdd,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.99,1.98,1.93,1.91(m,12H,Ac×3)1.65(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C86138BrNNa62[M+Na]2408.674,found2408.620
(実施例5)アシアロ糖鎖アスパラギンの合成
アシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(Glytech.Inc.製,7.2g,3.6mmol)を水(36mL)に溶解し、25%アンモニア水(60mL)を加えて37℃で撹拌した。4時間後、HPLC分析において12分に溶出する原料ピークの消失を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、反応中に生じた不溶物を濾過によって除去し、濾液を凍結乾燥することによってアシアロ糖鎖アスパラギンを収量6.2g,収率97%で得た。
HPLC分析条件:(Kromasil(250×4.6mm),展開溶媒:25mM酢酸アンモニア水溶液:アセトニトリル=80:20,0.70mL/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 5.04(s,1H,Man4−H−1),4.99(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.52(m,3H,GlcNAc2,5,5’−H−1),4.39(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.17(bs,1H,Man3−H−2),4.11(bd,1H,Man4−H−2),4.03(bd,1H,Man4’−H−2),2.81(dd,1H,Asn(CH)),2.70(dd,1H,Asn(CH))2.00,1.97,1.96,1.93(m,12H,Ac×3)
MALDI−MS:Calcd for C6611048[M+Na]1777.625,found1777.675
(実施例6)アシアロ糖鎖−NH−AcBrの合成
実施例5で合成したアシアロ糖鎖アスパラギン(2.5g,1.4mmol)を0.5M NaHCO水溶液(31.5mL)に溶解し、1時間4℃で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約12mL)を加えて4℃下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLC分析において13分に溶出する原料ピークの消失、及び21分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。得られた濾液にNaHCO(8.5g,98.0mmol)を加えた後に、DCM(16.7mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(4.4mL,49.0mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。HPLC分析において21分に溶出する原料ピークの消失、及び24分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。反応終了確認後、分相によってDCM相を除去し、水相をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,2.3cm×100cm,水,流速1.0ml/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、アシアロ糖鎖ブロモアセトアミド(アシアロ糖鎖−NH−AcBr)を収量2.0g,収率80%で得た。得られた糖鎖を分析した結果、そのα異性体存在比は1.0%であった。このH−NMRスペクトルを、図4に示す。図4に示されるように、本発明の方法によれば、主生成物であるβアノマー以外、原料由来の不純物等のシグナルは、ほぼ全く確認されなかった。
HPLC分析条件:(Hydrosphere 250×4.6mm 展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 100% 0.70ml/min→A 90% 0.70ml/min 30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.03(s,1H,Man4−H−1),4.97(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.38(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.17(bs,1H,Man3−H−2),4.11(bd,1H,Man4−H−2),4.03(bd,1H,Man4’−H−2),1.99,1.97,1.96,1.92(m,18H,Ac×6)
MALDI−MS:Calcd for C64106BrN46[M+Na]1782.519,found1782.462
(実施例7)DiGlcNAc糖鎖アスパラギンの合成
DiGlcNAc糖鎖アスパラギン−Fmoc(Glytech.Inc.製,1.0g,0.6mmol)を水(5.1mL)に溶解し、25%アンモニア水(8.5mL)を加えて37℃で撹拌した。4時間後、HPLC分析において17分に溶出する原料ピークの消失を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、反応中に生じた不溶物を濾過によって除去し、濾液を凍結乾燥することによってDiGlcNAc糖鎖アスパラギンを収量0.8g,収率95%で得た。
HPLC分析条件:(UG−120(250×4.6mm),展開溶媒:25mM酢酸アンモニア水溶液:アセトニトリル=78:22,0.70mL/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 5.03(s,1H,Man4−H−1),4.99(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.53(d,1H,GlcNAc2−H−1),4.47(d,2H,GlcNAc5,5’−H−1),4.16(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.83(dd,1H,Asn(CH)),2.75(dd,1H,Asn(CH))1.99,1.97,1.93(s,12H,Ac×4)
MALDI−MS:Calcd for C549038[M+Na]1453.519,found1453.384
(実施例8)DiGlcNAc糖鎖−NH−AcBrの合成
実施例7で合成したDiGlcNAc糖鎖アスパラギン(0.7g,0.5mmol)を0.5M NaHCO水溶液(17.4mL)に溶解し、1時間4℃で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約5mL)を加えて4℃下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLC分析において12分に溶出する原料ピークの消失、及び21分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。得られた濾液にNaHCO(2.0g,33.4mmol)を加えた後に、DCM(16.7mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(1.1mL,16.7mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。HPLC分析において21分に溶出する原料ピークの消失、及び29分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。反応終了確認後、分相によってDCM相を除去し、水相をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,2.3cm×100cm,水,流速1.0ml/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、DiGlcNAc糖鎖ブロモアセトアミドを収量0.6g,収率88%で得た。得られた糖鎖化合物を分析した結果、そのα異性体存在比は(n=2で実験を行ったところ、いずれも)1.0%以下であった。
HPLC分析条件:(Hydrosphere 250×4.6mm 展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 100% 0.70ml/min→A 90% 0.70ml/min 30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.03(s,1H,Man4−H−1),4.99(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.83(s,1H,Man4’−H−1),4.53(d,1H,GlcNAc2−H−1),4.47(d,2H,GlcNAc5,5’−H−1),4.17(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),1.99,1.97,1.92(s,18H,Ac×6)
MALDI−MS:Calcd for C5286BrN36[M+Na]1458.413,found1458.575
(実施例9)シアル酸のカルボン酸をアミド化したジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocの合成
参考例4で合成したシアル酸のカルボン酸がフェナシルエステル基で保護されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(3.0g,1.1mmol)を飽和炭酸水素アンモニウム水溶液(30mL)に溶解し、3時間撹拌した。反応中に生じた沈殿を遠沈操作で除き、上澄みをゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,2.3cm×100cm,水,流速1.0ml/min)で脱塩し、糖鎖が含まれる分画を集め濃縮、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後の糖鎖化合物を水(60mL)に溶解し、NaHCO(900mg)、DMF(30mL)に溶解したFmoc−OSu(1.8g)を氷冷下で加え、室温で撹拌した。反応開始から12時間後、反応溶液をアセトン(500mL)に加えて糖鎖を沈殿させた。沈殿を遠沈操作によって回収し、常温、常圧で乾燥させた。乾燥後、得られた残渣を水に溶解し、HPLCで精製し、シアル酸のカルボン酸をアミド化した(「−COOH」を「−CONH」にした)ジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmocを収量1.1g、収率40.0%で得た。
(Hipersep LC200 Kromasil 13C18 200×250mm 展開溶媒 25mM NHOAc水溶液:アセトニトリル=85:15 1.883L/min)
MALDI−MS:Calcd for C1031561064[M+Na]2579.916,found2580.103
なお、実施例9で用いた、シアル酸のカルボン酸がフェナシルエステル基で保護された場合のシアル酸部分の化学構造は、以下のような式で表すことができる(以下の式は、保護されたシアル酸の部分のみを示す。)。
(実施例10)シアル酸のカルボン酸がアミド化されたジシアロ糖鎖−NH−AcBrの合成
実施例9で得られた、シアル酸のカルボン酸がアミド化されたジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(1.0g,0.4mmol)を25%アンモニア水(15mL)に溶解し、37℃で撹拌した。4時間後、HPLC分析において11分に溶出する原料ピークの消失を以て反応の終了を確認した。反応中に生じた不溶物を濾過によって除去し、濾液を凍結乾燥した。凍結乾燥後、0.5M NaHCO水溶液に溶解し、1時間4℃で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約5.0mL)を加えて4℃下で撹拌した。反応開始から1時間後、HPLCで反応の終了を確認し、固定化酵素を濾過によって除去した。得られた濾液にNaHCO(3.6g,41.6mmol)を加えた後に、DCM(6.5mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(1.8mL,20.8mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。なお、このブロモアセチルブロマイドとの反応は、1時間以内に完了した。反応終了確認後、分相によってDCM相を除去し、水相をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,2.3cm×100cm,水,流速1.0ml/min)で精製し、濃縮、凍結乾燥を行い、シアル酸のカルボン酸をアミド化したジシアロ糖鎖ブロモアセトアミド(シアル酸のカルボン酸をアミド化したジシアロ糖鎖−NH−AcBr)を収量0.5g,収率52%で得た。得られた糖鎖を分析した結果、そのα異性体存在比は0.8%であった。
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.07(s,1H,Man4−H−1),5.01(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.88(s,1H,Man4’−H−1),4.55(m,3H,GlcNAc2,5,5’−H−1),4.39(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.20(bs,1H,Man3−H−2),4.14(bd,1H,Man4−H−2),4.06(bd,1H,Man4’−H−2),2.62((bdd,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),2.04,2.04,2.00,1.98,1.95(m,18H,Ac×6),1.78(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C86142BrN60[M+Na]2362.742,found2362.484
次に、実施例2にて合成した、ベンジルエステル化したジシアロ糖鎖ブロモアセトアミド(ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr)、実施例4にて合成したジシアロ糖鎖−NH−AcBrを原料として、様々な誘導体の合成を行った。
(実施例11)ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcClの合成
実施例2にて合成したジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr(30.8mg,12.2μmol)を水(950μL)に溶解し、塩化ナトリウム(NaCl,60.0mg,1.0mmol)を加えて室温で撹拌した。96時間後、HPLC分析において28分に溶出する原料ピークの消失、及び26分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、反応溶液をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.7mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、ジBn−ジシアロ−AcClを収量22.3mg,収率74%で得た。
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.40(m,10H,Ar),5.28(d,1H,Bn−C ),5.21(d,1H,Bn−C ),5.02(s,1H,Man4−H−1),4.99(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.67(s,1H,Man3−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.23(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.15(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.59(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.98,1.94,1.92,1.91(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C100152ClN62[M+Na]2502.729,found2501.034
(実施例12)ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcIの合成
実施例2にて合成したジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr(30.9mg,12.2μmol)を水(900μL)に溶解し、ヨウ化ナトリウム(NaI,150.0mg,1.0mmol)を加えて室温で撹拌した。2時間後、HPLC分析において28分に溶出する原料ピークの消失、及び31分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、反応溶液をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.7mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、ジBn−ジシアロ糖鎖−NH−AcIを収量28.5mg,収率91%で得た。
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.41(m,10H,Ar),5.29(d,1H,Bn−C ),5.22(d,1H,Bn−C ),5.04(s,1H,Man4−H−1),4.96(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.85(s,1H,Man4’−H−1),4.68(s,1H,Man3−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.24(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.16(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.59(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.99,1.95,1.93,(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C100152ClN62[M+Na]2592.790,found2592.929
(実施例13)ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcN
実施例2にて合成したジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr(51.9mg,20.6μmol)をDMF(1mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(NaN,64.4mg,990.4μmol)を加えて37℃で撹拌した。6時間後、HPLC分析において26分に溶出する原料ピークの消失、及び28分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、酢酸エチル(EtOAc,4mL)中に反応溶液を加えて、糖鎖成分を沈殿させた。沈殿物を遠心分離器による遠沈操作で回収し、回収した残渣をHPLCで分取することによって、ジBnジシアロ糖鎖−NH−AcNを収量35.3mg、収率69%で得た。
HPLC分析条件:(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒 水:アセトニトリル=86:14,0.70mL/min)
HPLC分取条件:(UG−120 250×20mm 展開溶媒 水:アセトニトリル=86:14,7.0mL/min)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.40(m,10H,Ar),5.28(d,1H,Bn−C ),5.21(d,1H,Bn−C ),5.03(s,1H,Man4−H−1),4.99(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.67(s,1H,Man3−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.23(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.15(bs,1H,Man3−H−2),4.10(bd,1H,Man4−H−2),4.02(bd,1H,Man4’−H−2),2.58(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.98,1.94,1.92,1.91(m,18H,Ac×6),1.79(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C1001521062[M+Na]2507.895,found2507.702
(実施例14)ジシアロ糖鎖−NH−AcNHNH
実施例4にて合成したジシアロ糖鎖−AcBr(90.9mg,38.8μmol)を0.1Mリン酸緩衝溶液(pH=7.4)に溶解し、ヒドラジン一水和物(10μL)を加えて室温で撹拌した。7時間後、HPLC分析において12分に溶出する原料ピークの消失、及び10分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後酢酸(20μL)を加えて中和し、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.7mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、ジシアロ糖鎖−NH−AcNHNHを収量82.5mg,収率93%で得た。
HPLC分析条件:(Hydrosphere 250×4.6mm 展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 98% 0.70ml/min→A 65% 0.70ml/min 30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ5.06(s,1H,Man4−H−1),5.03(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.88(s,1H,Man4’−H−1),4.54(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.38(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.18(bs,1H,Man3−H−2),4.12(bd,1H,Man4−H−2),4.05(bd,1H,Man4’−H−2),2.60(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),2.01,2.00、1.96,1.93(m,18H,Ac×6),1.66(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
ESI−MS:Calcd for C8614362[M+2H]2+1147.916,[M+3H]3+765.610,found1147.930,765.620
(実施例15)ジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−SH
実施例2にて合成したジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr(97.2mg,38.5μmol)を0.1Mリン酸緩衝溶液(pH=7.4,2mL)に溶解し、チオ酢酸(5μL,61.4μmol)を加えて室温で撹拌した。1時間後、HPLC分析において23分に溶出する原料ピークの消失、及び24分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。続いて、2−メルカプトエタンスルフォン酸ナトリウム(MESNA,162.0mg,986.7μmol)を反応溶液に加えて室温で撹拌した。44時間後、HPLC分析において24分に溶出する原料ピークの減衰、及び22分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、HPLCで分取し、目的糖鎖が含まれる分画の脱塩をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.4mL/min)によって行い、糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥することでジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−SHを収量48mg,収率50%で得た。
HPLC分析条件:(UG−120 250×4.6mm展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 90% 0.70mL/min→A 70% 0.70mL/min 30分)
HPLC分取条件:(UG−120 250×4.6mm展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 90% 0.70mL/min→A 70% 7.00mL/min 30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.40(m,10H,Ar),5.29(d,1H,Bn−C ),5.22(d,1H,Bn−C ),5.03(s,1H,Man4−H−1),4.96(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.51(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.24(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.15(bs,1H,Man3−H−2),4.09(bd,1H,Man4−H−2),4.01(bd,1H,Man4’−H−2),3.13(dd,2H,−COCH SH)2.58(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.98,1.94,1.92,1.91(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C10015362S[M+Na]2498.865,found2499.051
(実施例16)ジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−SCH CH NH
実施例2にて合成したジBnジシアロ糖鎖−NH−AcBr(106.4mg,42.2μmol)を61mMシステアミン、20mMトリス−2−カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)を含む0.1Mリン酸緩衝溶液(pH=7.0,4mL)に溶解し、室温で撹拌した。20時間後、HPLC分析において23分に溶出する原料ピークの消失、及び19分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、HPLCで分取し、目的糖鎖が含まれる分画の脱塩をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.4mL/min)によって行い、糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥することでジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−SCHCHNHを収量63mg,収率59%で得た。
HPLC分析条件:(UG−120 250×4.6mm展開溶媒 A:25mM酢酸アンモニア水溶液 B:アセトニトリル,グラジエントA 90% 0.70mL/min→A 70% 0.70mL/min 30分)
HPLC分取条件:(UG−120 250×4.6mm展開溶媒25mM酢酸アンモニア水溶液 :アセトニトリル=85:15,7.00mL/min 30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.40(m,10H,Ar),5.29(d,1H,Bn−C ),5.22(d,1H,Bn−C ),5.03(s,1H,Man4−H−1),4.98(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.50(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.24(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.15(bs,1H,Man3−H−2),4.09(bd,1H,Man4−H−2),4.01(bd,1H,Man4’−H−2),3.23(bs,2H,−COCH S−),3.12(m,2H,−SCH CHNH−),2.78(m,2H,−SCH CH NH−)2.58(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),1.98,1.94,1.92,1.91(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C10215862S[M+Na]2541.907,found2542.020
(実施例17)ジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−CH(OMe)
参考例3のベンジルエステル化したジシアロ糖鎖アスパラギン−Fmoc(109.6m g, 40.0μmol)をジメチルホルムアミド(DMF、1.1mL)に溶かしピペリジン(16μL,160.1μmol)を加え、室温で反応させた。30分後、HPLC分析(分析条件(1))において20分に溶出する原料ピークの消失、及び13分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了を確認後、反応溶液を酢酸エチル(10.0mL)に加えて糖鎖を沈殿させた。遠沈操作によって沈殿した糖鎖成分を回収した。得られた残渣を常温常圧で乾燥後、1M酢酸ナトリウム水溶液(pH=5.0,3mL)に溶解し、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.4mL/min)によって精製し、糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥することでジBnジシアロ糖鎖−Asnを収量100.8mg,収率100%で得た。得られたジBnジシアロ糖鎖−Asnを0.5M NaHCO水溶液(1mL)に溶解して1時間氷冷下で冷却した。1時間後、固定化GA酵素(約500μL)を加えて氷冷下で撹拌した。反応開始から1時間半後、HPLC分析(分析条件(2))において11分に溶出する原料ピークの消失、及び13分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した後、固定化酵素を濾過によって除去した。得られた濾液にNaHCO(38.0mg,452.4μmol)を加えた後に、DMF(1.5mL)に溶解した3,3ジメトキシプロピオン酸−ヒドロキシスクシンイミドエステル(200.5mg,867.2μmol)を加えて氷冷下で撹拌した。30分後、室温まで昇温して撹拌を続けた。20時間後、HPLC分析(分析条件(2))において13分に溶出する原料ピークの消失、及び20分に溶出する新しいピークの確認を以て反応の終了を確認した。反応終了確認後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×45cm,水,流速0.4mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行いジBnジシアロ糖鎖−NH−Ac−CH(OMe)を収量79mg,収率79%で得た。得られた糖鎖の分析を行った結果、そのα異性体存在比は0.1%以下であった。
HPLC分析条件(1):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒A:25mM酢酸アンモニア水溶液,B:アセトニトリル グラジエントA90% 0.70mL/min→A40% 0.70ml/min,30分)
HPLC分析条件(2):(UG−120 250×4.6mm 展開溶媒A:25mM酢酸アンモニア水溶液,B:アセトニトリル グラジエントA90% 0.70mL/min→A70% 0.70ml/min,30分)
H−NMR(400MHz,DO,外部標準:アセトン(H :2.61 ppm)
δ 7.40(m,10H,Ar),5.28(d,1H,Bn−C ),5.22(d,1H,Bn−C ),5.03(s,1H,Man4−H−1),4.97(d,1H,GlcNAc1−H−1),4.84(s,1H,Man4’−H−1),4.50(m,3H,GlcNAc2,5,5’ −H−1),4.23(d,2H,Gal6,6’−H−1),4.15(bs,1H,Man3−H−2),4.09(bd,1H,Man4−H−2),4.01(bd,1H,Man4’−H−2),2.58(m,2H,NeuAc7,7’−H−3eq),2.55(m,2H,C (OMe)),1.98,1.94,1.92(m,18H,Ac×6),1.75(dd,2H,NeuAc7,7’−H−3ax)
MALDI−MS:Calcd for C10315964[M+Na]2540.930,found2541.123
[比較例]
(比較例1)従来法による活性化糖鎖の調製
シアリルグリコペプチド(SGP)(100mg)を50mMリン酸緩衝液pH7.0に溶かしPNGase F(BioLabs Inc.1U)を加えた。37℃で24時間インキュベートし、TLCで反応終了を確認後、凍結乾燥した。凍結乾燥品をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×30cm,水,流速1.0mL/min)で精製しジシアロ糖鎖−OHを収量74mg得た。
得られたジシアロ糖鎖−OH(10mg)を飽和炭酸水素アンモニウム水溶液に溶かし30mMに調製した。室温で反応させ常に飽和している状態を維持した。7日間反応させTLCで反応がほぼ終了した後、反応溶液をそのまま凍結乾燥した。炭酸水素アンモニウムを除くために、凍結乾燥を3回繰り返し、アミノ化したジシアロ糖鎖が含まれる粉末を9mg得た。
得られたアミノ化したジシアロ糖鎖が含まれる粉末(5mg)を水(100μL)に溶かし炭酸水素ナトリウム(2mg)を加えた。そこに、ジクロロメタン(DCM、100μL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(8.0μL,92.5μmol)を加えて氷冷下で撹拌した。1.5時間後、TLCで反応終了を確認し、炭酸水素ナトリウムで中和し、ろ過後、減圧濃縮した。続いて、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×30cm,水,流速1.0mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、ジシアロ糖鎖ブロモアセトアミドを収量4mg、収率77%で得た。得られた糖鎖を分析した結果、そのα異性体存在比は9.1%であった。なお、この反応において、原料も残存しているものと推察されたが、原料の残存量は算出が困難であった。
(比較例2)従来法による活性化糖鎖の調製
アシアロ糖鎖−OH(Glytech.Inc.製,500.0mg,304.6μmol)を水(5mL)に溶解し、飽和水溶液となる様に炭酸水素アンモニウムを加え、30℃で撹拌した。6日間反応させTLCで反応がほぼ終了したことを確認した後、反応溶液を濃縮、共沸、凍結乾燥によって、余剰な炭酸水素アンモニウムを除去した。凍結乾燥後、得られたアミノ化したアシアロ糖鎖が含まれる粉末(250mg,152.1μmol)を水(2mL)に溶解し、NaHCO(269.6mg,3.2mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。20分後、DCM(1.5mL)に溶解したブロモアセチルブロマイド(140.2μL,1.6mmol)を加えて氷冷下で撹拌した。2時間後、HPLC分析において14分付近に溶出する原料ピークの消失、及び21分付近に溶出する新しいピークの確認を以て、反応の終了を確認した。反応終了確認後、分相によってDCM相を除去し、水層のみをゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex G25,1.5cm×30cm,水,流速0.4mL/min)で精製した。糖鎖を含む分画を濃縮、凍結乾燥を行い、アシアロ糖鎖ブロモアセトアミドを含む混合物を収量235.0mg、収率88%で得た。得られた混合物についてH−NMRで分析した結果、目的糖鎖であるアシアロ糖鎖ブロモアセトアミドが68.5%、そのα異性体存在比が6.5%、原料が約25%混在していた。このH−NMRスペクトルを、図3に示す。図3に示されるように、従来法を用いた場合には、主生成物であるβアノマーのほかにαアノマー、原料由来のシグナルが確認された。
このように、従来法で合成した場合は原料の残存が確認されたが、すでに実施例6において説明したように、本発明の合成法においては原料の混在は確認されなかった(図4参照)。
この対比により、本発明の方法は、従来法よりも、短時間において、β選択性のみならず、収率においても優れる製造方法であることが示された。
(比較例3)従来法によるジBnジシアロ糖鎖−NH の調製
ジBnジシアロ糖鎖−OH(Glytech.Inc.製,98.7mg,41.1μmol)を水(1.0mL)に溶解し、飽和水溶液となる様に炭酸水素アンモニウムを加えて、30℃で撹拌した。TLCで反応を追跡したところ、22時間後に複数の生成物が生じていることが確認できた。そこで、濃縮、共沸、凍結乾燥によって余剰な炭酸水素アンモニウムを除去した。凍結乾燥後、NMR、ESI−MSによってベンジルエステルの脱保護が確認できた。NMRの積分強度比により、30%程度のベンジルエステル基が脱保護されたことが示唆された。以上の結果から、従来法を用いてジBnジシアロ−NHを効率よく合成することは困難であると考えられる。従って、それを中間体として用いて、ベンジルエステル化したジシアロ糖鎖ブロモアセトアミドを合成することもまた困難であると考えられる。
ESI−MS:
ジBnジシアロ−OH;Calcd for C9815062[M+2H]1202.44,found1201.96
モノBnジシアロ−OH;Calcd for C9114462[M+2H]1157.42,found1156.95

Claims (12)

  1. 下記式(1a)で表される化合物
    G−NH−CO−CH−Y (1a)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    の製造方法であって、
    以下の工程(a)〜(b):
    (a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
    G−Asn (2)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
    下記式(3)で表される化合物
    G−NH (3)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    を得る工程;
    (b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(4)で表される化合物
    −CO−CH−Y (4)
    (ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
    とを反応させる工程;
    を含み、
    前記工程(a)が0℃から10℃の温度条件下において行われる、
    製造方法。
  2. 下記式(1b)で表される化合物
    G−NH−CO−CH−Y (1b)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、Yは活性化基を表し、GとNHとは、前記糖鎖の還元末端にNHの窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    の製造方法であって、
    以下の工程(a)〜(c):
    (a)下記式(2)で表される糖鎖アスパラギン構造を有する化合物
    G−Asn (2)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、Asnはアスパラギンを表し、GとAsnとは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    に対して、塩基性条件下において、糖鎖アスパラギン加水分解酵素を作用させ、
    下記式(3)で表される化合物
    G−NH (3)
    (ここで、Gは糖鎖を表し、NHはアミノ基を表し、GとNHは、前記糖鎖の還元末端に前記アスパラギンの側鎖の窒素原子由来の窒素原子がβ型の立体配置であるように結合している)
    を得る工程;
    (b)工程(a)で得られた前記式(3)で表される化合物と、以下の式(5)で表される化合物
    −CO−CH−Z (5)
    (ここで、Lは脱離基であり、Zは、ハロゲン原子である)
    とを反応させる工程;
    (c)工程(b)で得られた化合物と、
    以下の式(6a)または式(6b)で表される化合物
    −Y (6a)
    (ここで、Lは脱離基であり、Yは、活性化基である)
    (6b)
    (ここで、Lは陽イオンであり、Yは、前記活性化基Yの陰イオンであり、LはLとYの塩である)
    とを反応させる工程;
    を含み、
    前記工程(a)が0℃から10℃の温度条件下において行われる、
    製造方法。
  3. 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
    が、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、SHCHCHNH、及び、CH(OMe)からなる群から選択されることを特徴とする、
    製造方法。
  4. 請求項2に記載の化合物の製造方法であって、
    Zが、臭素原子であり、
    が、塩素原子、ヨウ素原子、SH、N、NHNH、及び、SHCHCHNHからなる群から選択されることを特徴とする、
    製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素が、グリコシルアスパラギナーゼ(GA)、及び/または、ペプチド:N−グリカナーゼ(PNGase)であることを特徴とする、
    製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素が、担体に固定されていることを特徴とする、
    製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記工程(a)における前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素が、担体に固定されており、
    さらに、前記工程(a)の後及び前記工程(b)の前に、以下の工程(d);
    (d)担体に固定された前記糖鎖アスパラギン加水分解酵素を反応系から分離する工程;
    を含むことを特徴とする、
    製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記糖鎖が、N−結合型糖鎖であることを特徴とする、
    製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記糖鎖が、N−結合型の複合型糖鎖であることを特徴とする、
    製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記糖鎖が、ジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、及び、DiGlcNAc糖鎖からなる群から選択される糖鎖であることを特徴とする、
    製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記糖鎖が、以下の式(7)により表される
    (7)
    (ここで、R及びR’は、それぞれ独立して、以下の式(8a)から式(8f)で表される糖鎖
    (8a)
    (8b)
    (8c)
    (8d)
    (8e)
    (8f)
    からなる群から選択される)
    ことを特徴とする、
    製造方法。
  12. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記糖鎖が、ジシアロ糖鎖であって、前記ジシアロ糖鎖を構成するシアル酸の側鎖カルボン酸がエステル化またはアミド化により保護されていることを特徴とする、
    製造方法。
JP2015512523A 2013-04-19 2014-04-17 活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体 Active JP6466321B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013088902 2013-04-19
JP2013088902 2013-04-19
PCT/JP2014/060946 WO2014171514A1 (ja) 2013-04-19 2014-04-17 活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014171514A1 JPWO2014171514A1 (ja) 2017-02-23
JP6466321B2 true JP6466321B2 (ja) 2019-02-06

Family

ID=51731450

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015512523A Active JP6466321B2 (ja) 2013-04-19 2014-04-17 活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体

Country Status (6)

Country Link
US (1) US9879097B2 (ja)
EP (1) EP2987863A4 (ja)
JP (1) JP6466321B2 (ja)
KR (1) KR102295590B1 (ja)
CN (1) CN104334737B (ja)
WO (1) WO2014171514A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107384987A (zh) * 2017-06-19 2017-11-24 西北大学 利用Glycosylasparaginase酶释放及纯化制备还原性N‑糖链的方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01502266A (ja) * 1986-12-11 1989-08-10 ジェンジム・コーポレーション 1―アミノ―1―デオキシオリゴ糖とその誘導体の製造
DK0413675T3 (da) * 1989-08-16 1995-09-04 Oxford Glycosystems Ltd Fremgangsmåde til fremstilling af syntetiske N-bundne glycokonjugater
JP4121044B2 (ja) * 1996-08-30 2008-07-16 三菱化学株式会社 シアル酸誘導体の製造方法
FR2811987A1 (fr) * 2000-07-18 2002-01-25 Expansia Sa Procede de preparation du 2,2'-dithiobis(ethanesulfonate) de disodium
CA2533849C (en) 2003-07-28 2013-07-02 Otsuka Chemical Co., Ltd. Aminated complex-type sugar chain derivatives and process for the production thereof
JP2009508922A (ja) * 2005-09-22 2009-03-05 アストラゼネカ アクチボラグ 4−アミノピラゾール誘導体の製造方法
CA2759142A1 (en) 2009-04-24 2010-10-28 Tibotec Pharmaceuticals Diaryl ethers
US10202469B2 (en) * 2012-11-30 2019-02-12 Glytech, Inc. Sugar chain-attached linker, compound containing sugar chain-attached linker and physiologically active substance or salt thereof, and method for producing same
CA2908136C (en) * 2013-03-30 2021-06-29 Glytech, Inc. Sugar chain-polypeptide complex

Also Published As

Publication number Publication date
EP2987863A4 (en) 2017-04-19
CN104334737B (zh) 2019-02-22
WO2014171514A1 (ja) 2014-10-23
KR102295590B1 (ko) 2021-08-30
KR20160002597A (ko) 2016-01-08
EP2987863A1 (en) 2016-02-24
US9879097B2 (en) 2018-01-30
US20160075799A1 (en) 2016-03-17
CN104334737A (zh) 2015-02-04
JPWO2014171514A1 (ja) 2017-02-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Herzner et al. Synthesis of glycopeptides containing carbohydrate and peptide recognition motifs
Li et al. Efficient chemoenzymatic synthesis of an N-glycan isomer library
Dziadek et al. Biomimetic Synthesis of the Tumor‐Associated (2, 3)‐Sialyl‐T Antigen and Its Incorporation into Glycopeptide Antigens from the Mucins MUC1 and MUC4
KR100736510B1 (ko) 당사슬 아스파라긴 유도체, 당사슬 아스파라긴, 당사슬 및그들의 제조법
Vibhute et al. Advanced chemical methods for stereoselective sialylation and their applications in sialoglycan syntheses
Campo et al. Synthetic glycoconjugates inhibitors of tumor-related galectin-3: an update
de Paz et al. Synthesis of a Ley neoglycoconjugate and Ley-functionalized gold glyconanoparticles
US6444655B1 (en) Galactopyranosides and their use
JPH04507345A (ja) Molluscからのグリコシダーゼを用いてオリゴ糖化合物を製造するための方法
Maki et al. Semisynthesis of complex-type biantennary oligosaccharides containing lactosamine repeating units from a biantennary oligosaccharide isolated from a natural source
Yan et al. Simplifying oligosaccharide synthesis: efficient synthesis of lactosamine and siaylated lactosamine oligosaccharide donors
JP2006111618A (ja) O−結合型糖アミノ酸
JP6466321B2 (ja) 活性化糖鎖誘導体の製造方法及び活性化糖鎖誘導体
Herzner et al. Spacer-separated sialyl LewisX cyclopeptide conjugates as potential E-selectin ligands
Norberg et al. Reversible derivatization of sugars with carbobenzyloxy groups and use of the derivatives in solution-phase enzymatic oligosaccharide synthesis
Kunetskiy et al. Synthesis of blood group A and B (type 2) tetrasaccharides. A strategy with fucosylation at the last stage
US20200262940A1 (en) Methods of Releasing Glycans from Peptides and Other Conjugates
JP3553075B2 (ja) 新規オリゴシド誘導体、その調製方法およびその利用
Brito-Arias Glycoconjugates
Cudic et al. Preparation of glycosylated amino acids suitable for Fmoc solid-phase assembly
JP3847405B2 (ja) 天然糖鎖を側鎖に有するシクロデキストリン誘導体とその製造法、及び中間体
Jiao et al. Synthesis of Simple Multivalent β-D-GalNAc-(1→ 4)-β-D-Gal Oligomers as Probes for Investigating the Interactions of P. Aeruginosa Pili with Multivalent Receptors
Schorlemer Synthesis of glycopeptides for exploration of mucin‐type‐threonine and HexNAc‐tyrosine modifications
Brito-Arias et al. Glycoconjugates
Pham Synthesis, screening and use of parasitic O-glycans and mimetics for improved C-type lectin receptor targeting

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170405

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180528

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180719

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190109

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6466321

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250