明 細 書
合わせガラス
技術分野
[0001] 本発明は、車両用窓ガラス、建築用窓ガラス等に用いられる赤外線 (熱線)反射性、 電波透過性に優れる合わせガラスに関する。
発明の背景
[0002] 近年、建築用ガラス又は車輛用ガラスにおいて室内或いは車内に通入する太陽輻 射エネルギーを遮蔽し、室内或いは車内の温度上昇、冷房負荷を低減させる目的か ら熱線 (赤外線)遮蔽性を有する断熱ガラスが、さらに車輛用ガラスにおいては人的、 物的両面や環境に優しくするため紫外線遮蔽を付加したものが採用されている。
[0003] なかでも、最近、導電性超微粒子を合わせガラス用中間膜中に分散した断熱合わせ ガラスは、前記断熱性、紫外線遮蔽性とともに可視光線透過性、電波透過性等にも 優れるために、それらに関する特許出願がなされつつある。
[0004] 例えば、特許文献 1には、 2枚の透明ガラス板状体の間に中間層を有する合わせガ ラスにおいて、該中間膜層中に 0. 2 m以下の導電性等の機能性を有する微粒子 を分散させた合わせガラスが開示されており、特許文献 2には、一対のガラスと該ガラ スの間に設けた軟質樹脂からなる合わせガラスにおいて、該軟質榭脂層は熱線遮断 性金属酸ィ匕物を含有してなる合わせガラスが開示されている。
[0005] また、特許文献 3には、少なくとも 2枚の透明ガラス板状体の間に 3層からなる合わせ 中間膜を設けた合わせガラスにおいて、該 3層中の第 2層の中間膜中に粒径が 0. 2 μ m以下の機能性超微粒子を分散させてなる合わせガラスが、特許文献 4には、粒 径 0. 1 μ m以下の熱線遮蔽性無機化合物が分散した可塑剤を透明樹脂に添加し、 この透明榭脂を成形することを特徴とする透明榭脂成形体の製造方法が開示されて いる。
[0006] 太陽光線の中でも、 780nm以上の波長をもつ赤外線(特に、波長 780nmから 2100 nmの近赤外線)は、熱的作用が大きく物質に吸収されると熱として放出され温度上 昇をもたらすことから熱線 (赤外線)と呼ばれ、窓ガラスカゝら入る赤外線を遮断すれば
車輛や建築物の温度上昇を抑えることによって断熱性を高めることができる事が知ら れている。
[0007] 特許文献 1:特開平 8— 259279号公報
特許文献 2 :特開平 8— 217500号公報
特許文献 3:特開平 10— 297945号公報
特許文献 4:特許第 3040681号公報
発明の概要
[0008] 本発明の目的は、電波を透過し、高 ヽ熱線遮蔽性能を有する合わせガラスを提供 することである。
[0009] 本発明に依れば、少なくとも 2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合わ せガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が 0. 2 m以下の機能性超微粒子を分 散せしめ、該機能性超微粒子は、 Sn、 Ti、 Si、 Zn、 Zr、 Fe、 Al、 Cr、 Co、 Ce、 In、 N i、 Ag、 Cu、 Pt、 Mn、 Ta、 W、 V、 Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物または Sbや Fのドープ物の各単独物、もしくはこれらの中力も少なくとも 2種以上を選択してなる 複合物、あるいは当該各単独物もしくは複合物に有機榭脂物を含む混合物、あるい は当該各単独物もしくは複合物を被覆した被膜物、あるいはアンチモンド一プ錫酸 化物および Zまたは錫ドープインジウム酸ィヒ物でなり、中間膜の少なくとも一つの表 面に、近赤外線を選択的に反射する、シート抵抗値が lkQZロー lOGQZ口の範 囲にある赤外線反射膜が形成されてなることを特徴とする合わせガラスが提供される さらに、本発明に依れば、少なくとも 2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有 する合わせガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が 0. 以下の機能性超微 粒子を分散せしめ、合わせガラスを構成する少なくとも 1枚の透明ガラス板状体に、 近赤外線を選択的に反射する、シート抵抗値が lkQZロー lOGQZ口の範囲にあ る赤外線反射膜が形成されてなり、該機能性超微粒子は、 Sn、 Ti、 Si、 Zn、 Zr、 Fe 、 Al、 Cr、 Co、 Ce、 In, Ni、 Ag、 Cu、 Pt、 Mn、 Ta、 W、 V、 Moの金属、酸ィ匕物、窒 化物、硫化物または Sbや Fのドープ物の各単独物、もしくはこれらの中力 少なくとも 2種以上を選択してなる複合物、あるいは当該各単独物もしくは複合物に有機榭脂
物を含む混合物、あるいは当該各単独物もしくは複合物を被覆した被膜物、あるい はアンチモンドープ錫酸ィ匕物および zまたは錫ドープインジウム酸ィ匕物でなることを 特徴とする合わせガラスが提供される。
図面の簡単な説明
[0010] [図 1]本発明の例示的な合わせガラスの断面図である。
詳細な説明
[0011] 本発明は、導電性超微粒子を合わせ中間膜中に分散させた中間膜 (以後機能性合 わせ中間膜と呼ぶ)を用いることによって、さらに、近赤外線の特定領域の波長を選 択的に反射する赤外線反射膜を機能性合わせ中間膜に設けることによって、電波透 過性能を有する、非常に高性能な断熱合わせガラスを提供できる。すなわち、本発 明は、電波を透過し、高い熱線遮蔽性能を有する合わせガラス (高断熱合わせガラス )を提供できる。
[0012] 本発明による高断熱合わせガラスは電波透過性能を有し、 AM電波、 FM電波、 TV 電波帯等の放送における受信障害などの低減をすることができ、フロートガラスと同 等の電波透過性能を有するので、車輛用のテレビ、ラジオ、携帯電話等のためのガ ラスアンテナの受信性能を低下させることなぐあるいはゴースト現象等の電波障害を 低減することができ、本来のガラスアンテナ性能を発揮させ、車輛内外での快適な環 境を確保することができる。
[0013] さら〖こ、ガラスとガラス、ガラスと合成樹脂板、ノィレヤー等の合わせガラスとして使用 可能であり、色調も無色力も各種色調を選択することができ、建築、自動車あるいは 飛行機などの開口部に用いられる窓ガラスに、電波透過型の高断熱合わせガラスを 提供できる。
[0014] 以下に、本発明の合わせガラスを例示的に詳述する。
[0015] 本発明は、機能性超微粒子が分散させられている機能性合わせ中間膜を用いて、 少なくとも 2枚の透明ガラス板状体が積層され合わせガラスであり、しカゝも、電波透過 性能を有する赤外線反射膜が、該中間膜ある ゝは該透明ガラス板状体の少なくとも 1 つの面に形成されたものである。図 1は、本発明の合わせガラスの簡単な構成例であ る。赤外線反射膜 4は、透明ガラス板状体 2あるいは機能性合わせ中間膜 3に形成す
る。
[0016] 中間膜に分散させる機能性超微粒子の粒径を 0. 2 m以下とするのは、可視光城 の散乱反射を抑制しながら赤外線 (熱線)を遮蔽する等の超微粒子の機能特性を充 分発揮しつつ、超低ヘーズ値、電波透過性能、透明性を確保するためと、超微粒子 を含有せしめても従来の合わせ中間膜として、例えば、接着性、透明性、耐久性等 の物性を維持し、通常の合わせガラス製造ラインの通常作業で合わせガラス化処理 ができるようにするためである。
[0017] なお、粒径は 0. 15 μ m以下が好ましぐより好ましくは約 0. 10-0. 001 μ mである 。なお粒径分布の範囲については、例えば 0. 03-0. 01 mと均一化されているこ とがよい。
[0018] また、合わせ中間膜への機能性超微粒子の混合割合は 10. 0重量%以下であること が好ましい。 10. 0重量%以下とすることにより、超微粒子の粒径と同様に、可視光域 の散乱反射を抑制しながら熱線を遮蔽するという機能特性を充分発揮させ、さらに、 超低ヘーズ値、電波透過性能、透明性であるようにし、しカゝも、超微粒子を含有せし めても従来の合わせ中間膜として、例えば、接着性、透明性、耐久性等の物性を維 持し、通常の合わせガラス製造ラインによる通常作業で合わせガラス化処理ができる ようにするためである。
[0019] 機能性超微粒子の混合割合が 10. 0重量%を超えるようになると、透明性、電波透 過性、接着性などを、特に自動車用窓ガラスはもちろん建築用窓ガラスとしても実現 し難くなるためである。例えば、建築用の高断熱合わせガラスの場合は、混合割合が 10-0. 1重量%必要であり、より好ましくは 8. 0-0. 05重量%であり、自動車用の 場合には、好ましい混合割合としては約 2. 0-0. 01重量%、より好ましくは 1. 5— 0 . 05重量%、さらに好ましくは 1. 0-0. 1重量%である。いずれにしても、合わせガ ラスとしての性能保持とめざす機能性能との兼ね合!、でその混合割合 (含有量)は適 宜決定することが望ましい。
[0020] 機能性合わせ中間膜用の榭脂としては、ポリビュルプチラール系榭脂膜 (PVB系)、 あるいはエチレン一酢酸ビニル共重合体系榭脂膜 (EVA系)を用いることが出来、こ れらが合わせ中間膜として汎用性のものであるから好ましぐ合わせガラスとしての品
質をニーズに整合し得るような合わせ中間膜となるものであれば特に限定するもので はない。具体的には可塑性 PVB [積水化学工業社製、三菱モンサント社製等]、 EV A [デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン]、変性 EVA [東ソ一社製、メルセ ン G]等である。なお、紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充 填剤、着色、接着調製剤等を適宜添加配合する。特に、紫外線吸収剤を合わせ中 間膜用榭脂に添加すると、赤外線とともに紫外線をもカットできるので人的、物的両 面や環境に優しくなりより好まし 、。
[0021] なお、合わせ中間膜として、超微粒子入り機能性合わせ中間膜と従来の合わせ中間 膜とを、例えば両者を重ね合わせる、或いは超微粒子入り機能性合わせ中間膜を従 来の合わせ中間膜でサンドイッチする等の構成とするものとしてもよい。
[0022] 機能性超微粒子には、 Sn、 Ti、 Si、 Zn、 Zr、 Fe、 Al、 Cr、 Co、 Ce、 In、 Ni、 Ag、 Cu 、 Pt、 Mn、 Ta、 W、 V、 Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいは Sbや Fのドー プ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも 2種以上を選択してなる複合物、 さらに当該各単独物もしくは複合物に有機榭脂物を含む混合物または有機榭脂物 を被覆した被膜物から選ばれるか、あるいはアンチモンドープ錫酸ィ匕物および Zまた は錫ドープインジウム酸ィ匕物等、導電性を有する超微粒子を用いることが望ま 、。
[0023] 特に、可視光領域では透明であり、赤外領域の光に対しては高反射性を有する錫ド ープ酸化インジウム (ITO)、アンチモンドープ酸化錫 (ATO)力 建築用ゃ自動車用 に求められる種々の機能性および性能を合わせガラスとして発現するので特に好ま しい。
[0024] PVB (ポリビュルブチラール)系または EVA (エチレン 酢酸ビュル共重合体)系合 わせ中間膜の場合には、機能性超微粒子を可塑剤中に分散せしめて超微粒子分散 可塑剤とし、次 、で該超微粒子分散可塑剤を PVB系または EVA系榭脂溶液中に 添加し、適宜その他の添加剤を加え、混合混練して膜用原料樹脂から得るようにす ると、可塑剤溶液中に前記機能性超微粒子を均一に分散せしめることができる。
[0025] 可塑剤としては、例えば、ジォクチルフタレート(DOP)ジイソデシルフタレート(DID P)、ジトリデシルフタレート(DTDP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル 酸エステル、また、トリクレシルホスフェート(TCP)、トリオクチルホスフェート(TOP)
などのリン酸エステル、また、トリブチルシトレート、メチルァセチルリシノレート(MAR )などの脂肪酸エステル、また、トリエチレングリコール'ジー 2—ェチルブチレート(3G H)、テトラエチレングリコール *ジへキサノールなどのポリエーテルエステルなど、また 、さらにこれらの混合物が挙げられる。
[0026] また、有機系紫外線吸収剤あるいは有機系赤外線吸収剤については、有機系紫外 線吸収剤としては、例えば、 2—(2,ーヒドロキシー 5,一メチルフエ-ル)ベンゾトリァゾー ル、 2—(2,—ヒドロキシー3,, 5,—ジ' tert ブチルフエ-ル)ベンゾトリァゾール、 2— (2 ,—ヒドロキシー3,—tert—ブチルー 5,一メチルフエニル)—5—クロ口べンゾトリァゾール、 2—(2,ーヒドロキシー 3,, 5,ージ' tert ブチルフエ-ル)—5 クロ口べンゾトリアゾール 、 2—(2,—ヒドロキシー 3,, 5,ージ' tert—ァミルフエ-ル)ベンゾトリアゾール等のベン ゾトリアゾール系誘導体、また、例えば、 2, 4ージヒドロキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキ シー 4ーメトキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキシー 4一才クトキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキ シー 4—ドデシルォキシベンゾフエノン、 2, 2,ージヒドロキシー 4ーメトキシベンゾフエノン 、 2, 2'—ジヒドロキシー 4, 4'ージメトキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキシー 4ーメトキシー 5 スルホベンゾフエノン等のベンゾフエノン系誘導体、また、 2—ェチルへキシルー 2— シァノ 3, 3,ージフエ-ルアタリレート、ェチルー 2 シァノ 3, 3,ージフエ-ルアタリレ ート等のシァノアクリレート系誘導体などが挙げられる。具体的には、例えば、 TINU
VIN327 [チバガイギ一社製]等である。
[0027] さらに、有機系赤外線吸収剤としては、例えば、 NIR— AMI [帝国化学産業社製]、 ことに、近赤外線吸収剤としては、 SIR— 114、 SIR— 128、 SIR— 130、 SIR— 132、 S IR— 169、 SIR— 103、 PA— 1001、 PA— 1005 [三井東圧化学社製]等が挙げられる 。特に、建築用や自動車用に求められる合わせガラスの品質を維持しつつ発揮する ものであれば、限定することなく使用できることは言うまでもない。
[0028] また、 PTFEなどのフッ素榭脂、シリコーンレジン、シリコーンゴムなどの有機樹脂の 微粒子を用いることもでき、これらは PVB中間膜とガラスなどの透明基板との接着強 度を低減するために適宜用いることができる。すなわち、 ATO、 ITOなどの金属酸化 物の超微粒子は、規格以上の接着強度を付与するようなことが起こりうるために、合 わせガラスの接着強度の評価規格であるパンメル値を規格値な 、に入るよう適宜調
製するために、例えば、前記ガラス基板表面へのプライマー塗布、前記フッ素榭脂、 シリコーンレジン、シリコーンゴム等の有機榭脂を被覆した被膜物などと同様の目的 で用いることができる。
[0029] 透明ガラス板状体あるいは中間膜には、赤外線反射膜を形成する。赤外線反射膜と しては、近赤外線の特定領域の波長を選択的に吸収,反射する単層膜、あるいは、 低屈折率層と高屈折率層とが周期的に積層された構成の膜を用いることができる。
[0030] 吸収'反射をする波長域は、機能性合わせ中間膜が遮蔽する赤外線の波長域と異 なるようにすると、熱線の遮蔽性能が向上するので望ま 、。
[0031] 赤外線反射膜を透明ガラス板状体に塗膜する場合は、塗膜された熱線反射膜を中 間膜側に配置するようにして積層し、合わせガラスとすることが、赤外線反射膜の耐 候性の問題を解消できるので好まし 、。
[0032] 限定するものではないが、金属としては、屈折率 4. 00-5. 00のケィ素、屈折率 3.
00—4. 00のステンレスま岡、屈折率 13. 00— 14. 00のクロム、窒ィ匕物としては、屈折 率 1. 50—2. 50の蜜ィ匕ゲイ素、屈折率 1. 50—2. 50の蜜ィ匕ク Pム、屈折率 0. 50— 1. 50の窒化チタン、屈折率 2. 00-3. 00の窒化ステンレス鋼等、酸化物としては、 屈折率 1. 20-2. 50の酸化ケィ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タンタ ル、 ITO、屈折率 0. 10—1. 00の酸化クロム、酸化ステンレス鋼、酸化-クロム等を 単層、あるいは、交互に積層したものを赤外線反射膜として、好適に用いることがで きる。
[0033] また、金属及び窒化物の膜は、成膜条件や膜厚により、導電性を有し、電波を反射し てしまうので、電波を反射しないように、膜厚や膜の成分を決定することが好ましい。
[0034] 例えば、クロム、ステンレス鋼等の金属膜については、膜厚を lOnm以下とするか、 1 0重量%以下の酸素や窒素を膜中に含有させたりすることが好ま 、。窒化ケィ素、 窒化クロム、窒化チタン、窒ィ匕ステンレス等の窒化物については、膜厚を 15nm以下 とするか、または、 5重量%以下の酸素を膜中に含有させることが好ましい。
[0035] これらの赤外線反射膜の成膜方法は、特に限定するものではないが、機能性合わせ 中間膜に成膜するときは、真空蒸着、スパッタ、プラズマ CVD等の真空関係の低温 成膜が好適である。
[0036] 赤外線反射膜は、機能性合わせ中間膜に成膜するのが好ましいが、機能性微粒子 が分散されて 、な 、通常の中間膜に赤外線反射膜を成膜し、機能性合わせ中間膜 と重ねて用いてもよい。このとき、赤外線反射膜は、中間膜の間に位置させても、ガラ ス面に位置させてもよい。
[0037] 中間膜に赤外線反射膜を形成する方法としては、例えばスパッタリング法で、次のよ うにして成膜することができる。
[0038] 機能性合わせ中間膜をロールに卷取り、スパッタリング設備内に搬入し、その後スパ ッタリング装置を用いて下記手順で被膜を形成した。先ず、スパッタリング装置に、成 膜に必要な金属ターゲットを取り付けたのち、成膜前に真空度が 10— 3Pa程度となるま でスパッタリング装置内を排気する。
[0039] 中間膜に成膜するとき、ガラス板などに成膜するのとは異なり、中間膜から発生する 水分あるいは残留モノマー等揮発物の管理を厳格に行う必要がある。
[0040] 成膜時の中間膜は、張力を与えて真空チャンバ一内に固定するが、張力を常に一 定にすると共に表面の平坦度や膜の伸縮率を十分考慮して固定する。
[0041] 赤外線反射膜は、中間膜ではなぐ透明ガラス板状体に形成してもよい。塗膜された 赤外線反射膜を中間膜側に配置するようにして積層し、合わせガラスとすることが、 赤外線反射膜の耐候性の問題を解消できるので好ましい。
[0042] 透明ガラス板状体としては、無機質ガラス、有機ガラスあるいはこれらの複合ガラス、 特に、所謂フロート法で製造された無機質で透明なクリアカゝら着色ガラス、強化ガラス やそれに類するガラス、プライマーや各種機能性膜等被覆膜付きガラスであって、好 ましくは、例えば、グリーン系ガラスやブロンズ系ガラスであり、さらに、例えば、グレー 系ガラスやブルー系ガラス等も採用可能である。
[0043] また、合わせガラスのほか複層ガラス、バイレヤーガラス等、さらに、平板あるいは曲 げ板等各種板ガラス製品として使用できることは言うまでもない。
[0044] また、透明ガラス板状体の板厚としては、例えば、 1. 0 mm以上 12mm以下であり、 建築用としては、 2. Omm以上 10mm以下が好ましぐ自動車用としては、 1. 5mm 以上 3. Omm以下が好ましぐより好ましくは 2. Omm以上 2. 5mm以下である。
[0045] 本発明の合わせガラスは、種々の建築用窓ガラス等として使用できることはもちろん
、特に、自動車用窓ガラスとして、例えば、フロントガラス、リアガラス、ことに、シェード バンド付きリアガラス、サイドガラスあるいはサンルーフガラスあるいは他の種々のガラ ス等に使用できるものである。
[0046] 本発明の合わせガラスの光学特性は、相対向する 2枚のガラス基板としてクリアーガ ラス (FL2)を用いた場合に換算して、可視光線透過率 (波長 380— 780nm)が 65 %以上、 日射透過率 (波長 300— 2100nm)が 65%以下であることが好ましい。なお 、特に自動車用窓ガラスの場合には、可視光線透過率が 70%以上で日射透過率が 60%以下であればより好ましい。また、日射反射率は 7. 0%以上であることが好まし い。また、 2枚のガラス基板としてグリーンガラス (MFL2)を用いた場合に換算すると 、可視光線透過率が 70%以上、日射透過率が 60%以下であることが好ましぐ 日射 反射率は 7. 0%以上であることがより好ましい。
[0047] 特に、自動車用窓ガラスとしては、電波透過性能を透明ガラス板状体の電波透過性 能と同等な程度とし、かつ赤外線 (熱線)遮蔽性能を日射透過率が 50%以下と格段 に高め、居住性をさらに向上したなかで、運転者や搭乗者等が安全上等で必要であ る可視光透過率を 65%以上とした透視性、例えば、可視光透過率が 70%以上等を 確保し法規上もクリアできるようにでき、しカゝも、運転者や搭乗者等における透視性低 下、誤認あるいは目の疲労などの防止に必要である可視光反射率を従来の値よりさ らに低減せしめることができ、最適な電波透過型高断熱合わせガラスが得られる。な お、自動車用としては、好ましくは可視光透過率が 68— 70%以上、可視光反射率が 14%以下、しかも、日射透過率が 60%以下であり、建築用としては、好ましくは可視 光透過率が 30%以上、可視光反射率が 20%以下、しかも、日射透過率が 65%以 下である。
[0048] 赤外線反射膜のシート抵抗値は、電波を透過させるため、 500 Ω Zロー 10G Ω Z口 の範囲にあることが好ましぐ電波を十分に透過させるためには lk Ω Z口一 10G Ω /口の範囲とすることが好まし!/、。
[0049] また、自動車のフロントガラス、リア一ガラスあるいはサイドガラス等、自動車用のガラ スとして用いる場合は、 20kQZ口以上とすることが好ましぐガラスに通信用のアン テナが設けられて 、る場合は、 10M Ω Z口以上とすることが好まし 、。
[0050] 建物の窓ガラスに用いられる場合は、 AM電波、 FM電波等の放送における受信障 害あるいは TV映像でのゴースト現象等の電波障害などを発現しな 、ようにするため に、赤外線反射膜のシート抵抗値は lkQ /口以上とすることが望ましい。
[0051] 本発明の合わせガラスは、自動車や建築に通常用いられる合わせガラスと同様の方 法、すなわち、減圧下で常温から 120°Cまで昇温した後、 80— 120°Cの温度範囲で 20— 30分間加熱する、オートクレープ法による合わせ力卩ェで作製することができる。
[0052] 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は実施例によって 限定されるものではない。
[0053] 実施例 1
( 1 )機能性合わせ中間膜の作製
20重量%ITO超微粒子 (粒径 0. 02 μ m以下)を分散含有させた BBP (プチルベン ジルフタレート) 10gと通常の BBP90gを PVB (ポリビュルプチラール)榭脂 322gに 添加し、他の紫外線吸収剤等とともに 3本のロールのミキサーにより約 70°Cで約 15 分間練り込み混合した。得られた成膜用原料榭脂を型押出機にて 190°C前後で厚 み約 0. 8mmにフィルム化し、ロールに巻き取り機能性合わせ中間膜を作製した。な お、フィルム表面には均一な凹凸のしぼを設けた。
[0054] (2)赤外線反射膜の透明ガラス板状体への成膜
透明ガラス板状体に板厚が 2mmのフロート法によって製造された透明な板ガラスを 用いた。該板ガラスを中性洗剤と純水とによる洗浄を行った後に、スパッタリング装置 を用いて下記手順で赤外線反射膜を形成した。先ず、スパッタリング装置に、成膜に 必要な金属ターゲットを取り付けたのち、成膜前に真空度が約 10— 3Paとなるまでスパ ッタリング装置内を排気した。なお、本方法は、真空チャンバ一内のターゲットの下方 に搬送ロールが設置され、該搬送ロール上をガラス基板が往復動する時に電力が印 カロされたターゲットより所定の金属膜窒化膜、酸化物がガラス板上に成膜されるよう になっている。 1パス目として、成膜室の雰囲気を酸化性雰囲気 (O: Ar= 95 : 5)に
2
保持し、 Znターゲットにより第 1層誘電体層の 1層目としての ZnOを 14nm成膜した。 2パス目として成膜室の雰囲気をアルゴン雰囲気 (Ar= 100)に保持し、 SSTターゲ ットにより 2層目としての SSTを 8nm成膜した。 3パス目として成膜室の雰囲気を酸化
性雰囲気(O: Ar = 95: 5)に保持し、 Znターゲットにより 3層目としての ZnOを 14nm
2
成膜した。成膜後のガラスは真空チャンバ一力ゝら排出した。
[0055] (3)合わせガラスの作製
前記(1)で作製した機能性合わせ中間膜を用い、 (2)で作製した赤外線反射膜を表 面に成形した透明ガラス板状体と、厚みが 2mmのフロート法で製造された板ガラスと を合わせ加工して、合わせガラスを作製した。図 1に示すように、赤外線反射膜 4は、 機能性合わせ中間膜側 3に位置させた。
[0056] 合わせガラスの作製は次のようにした。
[0057] 赤外線反射膜を形成した透明ガラス板状体 1と機能性合わせ中間膜 3とを重ね、次 いで機能性合わせ中間膜の上に透明ガラス板状体 2を重ねた。さらに、透明ガラス板 状体 1, 2のエッジ力もはみ出た機能性合わせ中間膜 3をエッジに沿って裁断した。 次いで、該重ね合わせた透明ガラス板状体 5をゴム製の真空袋に入れ、袋内を脱気 減圧し、 80— 110°Cで 20— 30分保持した後一且常温までし、袋力も取り出してォー トクレーブ装置に入れ、圧力約 10— 14kgZcm2、温度 110— 140°Cで 20分間、カロ 圧加熱して、合わせガラス加工し、本発明の合わせガラスを作製した。
[0058] 作製した合わせガラスについて、下記の測定および評価を行った。
[0059] [光学特性] :分光光度計 (340型自記、 日立製作所製)で波長 300— 2100nmの間 の透過率を測定し、 JIS Z 8722及び JIS R 3106又 ίお IS Z 8701によって可 視光線透過率、可視光線反射率(380— 780nm、D65光源)、 日射透過率、 日射反 射率(300— 2100nm)を求めた。
[0060] [電波透過性]: KEC法測定 (電界シールド効果測定器)によって、電波 10— 1000 MHzの範囲の反射損失値 (dB)を通常の板厚 3mmのクリアガラス (FL3)単板品と 対比し、その差の絶対値(AdB)が 2dB以内を合格とした。
[0061] [接着性] :— 18±0. 6°Cの温度で 16 ±4時間放置し調整後、ハンマー打ちでガラス の剥離での合わせ中間膜の露出程度を評価し、露出の少ないものを合格とした。
[0062] [耐熱性]: 100°Cの煮沸水中にて 2時間煮沸した後、周辺 10mmを除き、残りの部 分での泡の発生、くもり、ガラスのひび割れ等の異常がないものを合格とした。
[0063] [耐湿性]: 50± 2°C、相対湿度 95±4°Cの調製内に 2週間静置した後、泡の発生、
くもり、ガラスのひび割れ等の異常がないものを合格とした。
[0064] [電気的特性]:三菱油化製表面高低抗計 (HIRESTA HT— 210)によって測定し
、シート抵抗値 (M Ω Z口)が 0. 02M Ω Z口以上を合格とした。
[0065] なお、接着性、耐熱性および耐湿性の評価は、 JIS R 3212安全ガラスに準処した
[0066] 評価結果は表 2に示すように、可視光線透過率が 74. 8%、可視光線反射率が 11.
0%、 日射透過率が 59. 1%、日射反射率が 8. 8%を有する。
[0067] 高可視光線透過率、低日射透過率の赤外線遮蔽断熱合わせガラスが得られた。同 じ硝子構成である後述の比較例 1と比較すると、実施例 1のガラスは、可視光線透過 率が 65%以上を確保し、日射透過率については約 9. 0%も向上しており、赤外線反 射膜の効果の大き 、ことが判る。
[0068] また、電波透過性については、赤外線反射膜の抵抗値が 0. 2Μ Ω Ζ口と非常に高く
、通常の単板ガラスと同等の電波透過性を示した。
[0069] また、接着性と耐熱性ならびに耐湿性は、通常の合わせガラスと同等であった。
[0070] 実施例 2—実施例 11
実施例 2から実施例 11は、透明板状体に形成した赤外線反射膜のみが実施例 1と 異なるもので、そのほかは全て実施例 1と同様にして作製した合わせガラスである。
[0071] 各実施例の赤外線反射膜を構成する各層は、表 1に示すターゲット金属、ガス組成、 電力および圧力の条件で、実施例 1と同様の方法により成膜した。
[0072] 得られた高断熱合わせガラスを評価した結果、表 2に示すように、実施例 2から実施 例 11のいずれの合わせガラスも、比較例 1比べて日射透過率が低ぐ赤外線遮蔽断 熱性能の良い合わせガラスが得られた。また、各実施例の赤外線反射膜のシート抵 抗値は高抵抗であり、電波透過性のよ!、ものであった。
[0073] また接着性、耐熱性、耐湿性等の合わせガラスとしての性能も、実施例 1と同様に全 て合格であった。
[0074] 実施例 12—実施例 22
実施例 12— 22では、赤外線反射膜を機能性合わせ中間膜に成膜した。各実施例 の赤外線反射膜を構成する各層は、表 1に示すターゲット金属、ガス組成、電力およ
び圧力の条件で成膜した。
[0075] 実施例 12において、機能性合わせ中間膜への赤外線反射膜の成膜を、次のように して行った。
[0076] 機能性合わせ中間膜をロールに卷取り、スパッタリング設備内に搬入し、その後スパ ッタリング装置を用いて下記手順で被膜を形成した。先ず、スパッタリング装置に、成 膜に必要な金属ターゲットを取り付けたのち、成膜前に真空度が 10— 3Pa程度となるま でスパッタリング装置内を排気した。
[0077] 真空チャンバ一内のターゲットの下方にドラムロールを設け、該ドラムロール上を一 定張力に貼られた機能性合わせ中間膜が巻き付けられて移動する時に、電力が印 カロされたターゲットより所定の膜を機能性合わせ中間膜上に成膜した。
[0078] 成膜は、各ターゲットの成膜室のガス雰囲気が独立した状態で行った。最初の成膜 室では、成膜室の雰囲気を酸化性雰囲気 (O: Ar= 95 : 5)に保持し、 Znターゲット
2
により第 1層目として ZnOを 14nm成膜した。次の成膜室では、成膜室の雰囲気をァ ルゴン雰囲気(Ar= 100)に保持し、 SSTターゲットにより 2層目としての SSTを 8nm 成膜した。次の成膜室としては、成膜室の雰囲気を酸化性雰囲気 (O: Ar= 95 : 5)
2
に保持し、 Znターゲットにより 3層目としての ZnOを 14nm成膜した。成膜後の機能 性合わせ中間膜は真空中でロールに巻き取った。
[0079] 実施例 13から実施例 22においては、表 2に示す膜構成の赤外線反射膜を機能性 合わせ中間膜に、実施例 12と同様にして、各実施例の赤外線反射膜を構成する各 層を、表 1に示すターゲット金属、ガス組成、電力および圧力の条件で成膜した。
[0080] 実施例 12から実施例 22までについて、表 2に示す評価が得られ、赤外線遮蔽断熱 性能、電波透過性の良好な合わせガラスであった。
[0081] 比較例 1
赤外線反射膜を設けない他は全て実施例 1と同じにして合わせガラスを作製した。 評価結果は、表 1に示すように可視光線透過率は 87. 9%、可視光線反射率は 8. 5 %、 日射透過率は 68. 1%、 日射反射率は 5. 7%であった。
[0082] 比較例 2
赤外線反射膜として、 Ag膜を用いるいわゆる LOW— Eと呼ばれる膜を用い、実施例
1と同様にして合わせガラスを作製した。評価の結果、表 1に示すように可視光線透 過率は 74. 9%、可視光線反射率は 14. 1%、日射透過率は 52. 0%、日射反射率 は 27. 5%であり、 日射透過率は実施例 1から実施例 11に比較し低ぐ断熱性能に 優れている力 赤外線反射膜はシート抵抗値が 7 ΩΖ口であり、電波透過性能はほ とんどなかった。
[0083] [表 1]
[0084] [表 2]
実施例 1 5に用 、た赤外線反射膜および比較例 1の、 日射の中で比較的高エネ ルギ一である近赤外域(波長範囲 800— lOOOnm)の透過率を、表 3に示す。比較
例 1は、赤外線反射膜を形成していない、 ITOでなる機能性超微粒子を分散させた 中間膜のみによる赤外域の透過率であり、実施例 1一 5で用 ヽた赤外線反射膜は、 機能性超微粒子を分散させてなる中間膜のみでは達成できな、、近赤外域におけ る透過率を低下させるものである。従って、本発明により、機能性超微粒子を分散さ せてなる中間膜のみでは達成できない、熱線遮蔽性能と、電波透過性能を有する合 わせガラスが得られた。
[表 3] 近赤外域の波長透過率
800(nm) 850(nm) 900(nm) 950(nm) 1000(nm) 実施例 1、 実施例 1 2 78.0 78.3 78.5 79.0 79. I 実施例 2、 実施例 1 3 77.9 78.2 78.5 78.8 78.8 実施例 3、 実施例 1 4 80.7 81.5 82.4 83.2 83.9 実施例 4、 実施例 1 5 71.8 71.3 69.9 69.1 68.2 実施例 5、 実施例 1 6 71.2 70.8 69.4 68.7 67.9 比較例 1 95.1 95.0 94.8 95.0 94.8