酸塩単結晶の製造方法 技術分野
本発明は、 放射線検出用シンチレータゃラマン結晶としてレーザ一ホ ストに有用なタングステン酸明塩単結晶の製造方法に関するものである。 背景技術 田
PET (Po s i t r on Emi s s i on Tomo gr ap h y) に代表される医療用機器は、 高性能化が日進月歩である。 PETな どに使用されるァ線等の放射線検出用シンチレ一タには、 空間分解能が すぐれた材料、 すなわち単位体積当たりの放射線の吸収能力を高める高 密度の材料が要求される。 一方、 測定器の感度の点からは、 光量 (P . e . /Me V) が大きい程有利となる (p. e. はフォトエレク トロン
) o
上記の要求を満たす材料として、 従来 B i 4 Ge3 012が使用されて いる。 しかし、 近年医療用機器の高性能化に対応するため、
従来の材料よりも ( 1 ) 高密度で、
( 2 ) 蛍光の減衰時間が短い
材料を求めて種々の物質の探索が行われてきた。
表 1に F ET用シンチレータ材料の特性比較を示すが、 これらシンチ レータ材料は通常単結晶で使用される。 単結晶は、 一般的に Ξ酸化タン グステン (W03 ) および二価金属酸化物、 または W03 、 一価金属酸 化物および三価金属酸化物を原料として、 大気雰囲気下、 白金坩堝中で 加熱溶融し、 回転引上げ法 (チヨクラルスキー法) で製造される。
表 1 ]
: Bi.GeaOi, =10とした時の相対値 現在、 B i 4 Ge3 012、 Gd2 S i 05 : C eあるいは L u2 S i 〇 : C e等を使用して PETが製造されているが、 B i 4 Ge 012 、 G d S i 05 : C eあるいは Lu2 S i 05 : C eは高い光量を示 す反面、 密度が未だ十分に高いとはいえず、 さらなる高密度に対する要 求がある。 CdW04 は、 光量が大きいにもかかわらず、 蛍光の減衰時 間が長く X線 CTには有用であるが、 F E T用には適していない。
タングステン酸塩の一つである P b WO 4 は高密度で蛍光の減衰時間 が短いが、 同じ強さの放射線が当たった時の光量は、 相対値で B i G e 0 , 2に対し 1 Z 25、 G d S i 05 : C eに対し 1 / 50、 さら に Lu2 S i 05 : C eに対し 1 / 1 88と極めて小さいため、 P E T 用に利用すること.ができなかった。 ところが近年、 光検出器としてフォ トダイオードの性能が飛躍的に向上したことによつて小さな光量でも検 出が可能になってきており、 検出可能な最低限の光量は表 1に示す従来 の PbWC の 2倍あれば良いとされている。
そこで、 PbW04 が高密度で蛍光の減衰時間が短いという利点を生 かしつつその光量を増大させるために、 種々の試みがなされている。 その方法の一例は、 Moの添加である。 ところが PbW04 に Moを 添加すると、 放射線の弱い領域では光量が増加したように見えるが、 放 射線の強い領域では無添加の結晶と同じ光量であり、 しかも M 0の添加
で蛍光の減衰時間を悪化させる。
また、 希土類の Tb、 Pr、 Eu、 Smを添加すると光量増加の効果 が認められるが、 減衰時間の遅い成分が増加し、 減衰時間の早い成分の 光量は増加しないという欠点がある。
また、 P bW04 に添加する C d量を、 分子式? b ,-x C dx W〇4 における Xの値が 0. 0 1以上、 0. 3 0以下となるようにすることで 、 光量を増加させる方法も開発されているが、 この Pb i— X C dx WO 4 は単結晶育成時および加工時にクラックが入りやすく歩留りが悪いと いう欠点がある。
このように、 蛍光の減衰時間が短く、 かつ大きな光量を示すような F bW04 単結晶の製造は未だに成功していない。
一方で、 PbW04 などのタングステン酸塩単結晶は、 ラマン結晶と して N d3 +など希土類イオンをド一プしてレーザ一ホストとしての応用 が期待されている。 半導体レーザ一などでレーザ一ホストを励起すると 、 ラマン変換の結果生じるストークス光および半スト一クス光を発振す る 2波長レーザー光が得られる。
2波長レーザー光を蛍光顕微鏡に適応し色素発光の非線形性を利用す ることで見かけの空間分離性を向上させる試みが行われている。 従来、
2波長レーザー光を同時に得るためには、 異なった波長を有する 2台の レ一ザ一装置が必要で、 それによつて蛍光顕微鏡は装置全体が大きくな り、 コストも上昇する原因となっていた。
一台のレーザ一装置で 2波長レーザ一光が得られる波長可変レーザー も実用化されているが、 このレーザ一装置は波長変換を行う回折格子や 屈曲板を機械的に動かすため、 装置が複雑で大きくなり、 仮に波長可変 レーザ一装置を使用しても 1台の装置で同時に 2波長のレーザー発振を 得ることはできない。
レーザ一ホストとして使用可能と予想されているラマン結晶には、 F bW04 の他、 KGd (WO4 ) 2 、 C dW04 、 C aW04 など多く のタングステン酸塩単結晶がある。
しかし、 レーザーホストとして応用するためには熱伝導率の向上が必 要である。 その理由はレーザ一発振する際に結晶内に熱が蓄積すると結 晶格子に歪が加わり、 その結果発振波長の変化や光損傷のため連続発振 ができないからである。 さらに当然のことながら熱伝導率が悪いため高 出力化が難しい。 発明の開示
上記のごとく、 PbW04 単結晶は、 放射線検出用シンチレ一タとし て光量の増加が要求されている。 光量は、 従来の F bW04 単結晶と比 較して少なくとも 2倍以上必要である。 一方、 PbW04 などのタング ステン酸塩単結晶は、 レーザ一ホストとしては熱伝導率の向上が必要で ある。
本発明は、 上記問題を解決するものであって、 蛍光の減衰時間を犠牲 にすることなしに光量が改善され、 P E T等の医療用の放射線検出用シ ンチレ一夕として応用可能なタングステン酸塩単結晶を得ることができ 、 また、 熱伝導率を改善して 2波長レ一ザ一装置のレーザ一ホストとし て有用なタンダステン酸塩単結晶を得ることのできるタンダステン酸塩 単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のタングステン酸塩単結晶の製造方法は、 三酸化タングステン および二価金属酸化物または二価金属炭酸塩、 三酸化夕ングステンおよ び一価金属酸化物または一価金属炭酸塩並びに三価金属酸化物、 あるい はこれら酸化物もしくは炭酸塩を加熱して得られる分子式 XHW04 あ るいは X, Xll, (WO4 ) 2 (ただし X! は一価金属元素、 XHは二
価金属元素、 は三価金属元素) で表されるタングステン酸塩を原 料としてタングステン酸塩単結晶を育成し、 このタングステン酸塩単結 晶を酸素分圧が大気よりも負に調整された雰囲気において 600〜1 5 50°Cで加熱することを特徴としている。
例えば、 PbW04 単結晶の場合、 通常大気中で育成される。 分子式 から明らかなように酸素 (0) が結晶構造を構成する主元素であるため 、 単結晶中の格子欠陥の発生に対しては雰囲気中の 02 濃度が大きな影 響を与える。 FbOは、 単結晶製造時に融液からその一部が蒸発し、 固 化した結晶中では、 減少した Pb2 +を電荷補償するため、 大気中の 02 を再び取り込みながら Pb4 +が発生し、 結果的に陽イオンと陰イオンの バランス、 すなわち W〇4 あるいは (W04 2— + 02— ) に対する (P b 2 + +P b + ) が電荷的に等価となるようにバランスがとられ、 PbW 〇 4 単結晶中の 0/P bおよび W/F bの原子比は化学量論比から正に ずれが生じ、 それによつて多数の格子欠陥を含むものと考えられる。 本発明者は、 蛍光の減衰時間が短く、 かつ大きな光量を発する PbW 04 単結晶ならびに熱伝導率の大きなレーザ一ホストとしての単結晶を 求めて鋭意研究した結果、 光量が小さく、 また熱伝導率が小さい原因は 、 〇 / F bおよび W/ P bの化学量論比からのずれによつて発生する多 数の格子欠陥と捉え、 PbW04 単結晶を酸素分圧が大気よりも負に調 整された雰囲気で加熱処理することを見出した。
PbW04 単結晶を酸素分圧が大気よりも負に調整された雰囲気にお いて加熱すると、 PbW04 単結晶中に含まれる過剰の 0および Wが 0 2 および W03 として結晶外に放出され、 それに伴って Pb4 +は Pb2 + に戻り、 格子欠陥の少ない単結晶へ純化するものと考えられる。 この処 理によって、 FbW04 単結晶は黄色透明から無色透明へと変化し、 特 に 32 5〜 600 nmの光の透過率が格段に上昇し、 4 00 nm以上の
光を検出するフォトダイォ一ドにとつて光電変換効率の向上に著しい効 果をもたらす。 また、 格子欠陥が減少することにより、 フオノンの散乱 に起因する熱伝導率の低下が抑制され、 レーザ一ホストとして優れたラ マン結晶となる。
酸素分圧が大気よりも負に調整された雰囲気は、 一般的な概念からす ると地上 Omの場所では酸素分圧が 2 1 2 0 7 P a未満に調整された雰 囲気であるが、 目的とする性能を迅速かつ確実に得ることが可能な〇 2 濃度としては 2 8 P a以下の酸素分圧が最適である。 2 8 P aよりも大 きい酸素分圧でも当然効果は見込まれるが、 酸素分圧が 28 P aより大 きいと結晶内部において◦および Wの拡散速度が極めて遅く、 02 およ ぴ W03 が結晶外へ放出されるのに長時間を要するため生産性が低く実 用的でない。
酸素分圧が大気よりも負に調整された雰囲気は、 アルゴン (Ar) 、 窒素 (N2 ) 、 ヘリウム (H e) または二酸化炭素 (C 02 ) を常圧で 系内に導入する他、 真空ポンプで系内を減圧することで得られる。 C〇 2 は 6 0 0〜1 5 5 0 °Cに加熱されると一部 C Oと 02 に分解するが、 その時の平衡酸素分圧は 0. 00 0 5 9〜4 1 6 F aであり、 2 8 P a 以下の酸素分圧を維持できるのは 6 0 0〜 1 2 0 0 °Cの範囲である。 また大排気量の真空ポンプを使用し減圧する場合は圧力調整ガスが必 要で、 その圧力調整ガスとしては A r、 N2 、 116ぉょび( 02 以外に 大気を使用しても真空度を 1 3 0 P a以下に制御することにより 2 8 P a以下の酸素分圧が達成される。
Ar、 N2 、 116ぉょぴ(:02 以外のガスとして水素 (H2 ) を使用 した場合は、 PbW04 が還元され単結晶は崩壊する。
Ar、 N2 、 HeぉょぴC◦2 を常圧で系内に導入する場合は、 減圧 する場合と比較して結晶内部からの 0および Wの拡散速度が遅く、 〇2
および WO 3 が結晶外へ放出されるのに長時間を要するだけでなく、 雰 囲気ガスの使用量も多くなりコスト上昇を引き起こす。 したがって雰囲 気の酸素分圧を低下させるためには、 真空度が 1 3 0 P a以下の減圧を 利用するのが最も効果的である。 ただし 1 X 1 0— 2P aよりも減圧にす ると PbW04 の蒸発損失が大きくなるため、 歩留りを考慮し圧力を設 定しなければならない。
加熱温度は、 目的とするタングステン酸塩単結晶の融点および沸点を 考慮に入れ 6 0 0〜 1 5 5 0 °Cの範囲で決定しなければならない。 加熱温度が 6 00 °C未満では、 結晶内部において 0および Wの拡散速 度が遅く、 02 および W03 が結晶外へ放出されるのに長時間を要する 。 一方、 1 5 5 0 °Cより高温では、 例えば C dWC の融点 1 2 72 °C 、 B i G e Oi2の融点 1 0 5 0 ΐ:、 Ρ bW04 の融点 1 1 2 3 °C、 G d2 S i 0 : C eの融点 1 9 0 0 T;、 Lu2 S i 05 : C eの融点 2 1 5 0°C. C aW04 の融点 1 5 8 0 °Cなどからわかるように、 ほと んどのタングステン酸塩が融解またはその融点に近づくため融解の危険 性が伴う上に蒸発損失量が増加する。
酸素分圧が大気よりも負に調整された雰囲気において、 6 0 0〜 1 5 5 0°Cで加熱した後に、 引き続き、 酸素分圧が大気よりも負に調整され た雰囲気において、 最低 2 2 0°Cまで冷却すると、 冷却過程で PbW〇 の Fb2 +が酸化し、 再び Pb4+へ変化するのを抑制することができる 。 たとえば酸素分圧が、 約 2 1 0 0 0 P aでは約 3 50 °Cまで、 1 0 1 3 P aでは約 3 0 0 °Cまで、 1 3 0 P aであれば約 2 5 0 °Cまで、 さら に 2 8 P aでは約 2 2 0 °Cまでの冷却過程で P b 2 +が P b 4+へ変化する のを抑制できる。 1 2 0°C未満では Pb2 +の酸化速度が遅いため酸素分 圧の影響を受け難く、 大気開放することも可能であるが、 好ましくは酸 素分圧が大気より負に調整された雰囲気で常温まで冷却するのが良い。
この冷却条件は、 タンダステン酸塩単結晶の違いによって異なるが、 前記条件下であればほとんどのタングステン酸塩単結晶に重大な欠陥を 生じさせるような悪影響は及ぼさない。 なお、 冷却速度は、 熱歪を除去 するのに重要な条件の一つであり、 一般的に炉冷程度のゆつく りした冷 却速度が好ましいが、 各々単結晶の種類に対応して任意に変更しなけれ ばならない。
酸素分圧が大気より負に調整された雰囲気で加熱すると単結晶表面は わずかに白濁するが、 研磨によって表面を研削すれば無色透明な平滑面 が現れる。
従来の PbW04 単結晶は光量が約 3 0 p. e. /MeVであるのに 対し、 酸素分圧が大気より負に調整された雰囲気において、 6 0 0〜 1 1 0 0°Cで加熱することで従来の単結晶の 2倍以上の 6 O p. e. /M e V以上を示し、 蛍光の減衰時間が従来の単結晶と変わらない FbWO 4 単結晶となる。 また、 PbW04.単結晶の熱伝導率は、 に 5〜 1. 6 W/m · Kまで向上し、 高性能な 2波長レーザー装置の作製が可能と なる。
PbW04 単結晶以外の場合、 例えば C dW04 単結晶は、 PbWO 4 単結晶と同様に O/C dおよび W/C dの原子比は化学量論比から正 にずれが生じるが、 比較的沸点の高い一価金属、 二価金属あるいは三価 金属酸化物によって生成する KG d (W04 ) 2 の 0/ (K + Gd) お よび W/ (K + Gd) は化学量論比から負に、 また、 C aW04 の〇/ C aおよび W/C aも化学量論比から負にずれ、 それによつて多数の格 子欠陥が発生しているものと考えられる。
KG d (WO4 ) 2 または C aW04 は、 沸点が K2 0、 G d 2 〇3 あるいは C a 0の沸点より低いため、 酸素分圧が大気よりも負に調整さ れた雰囲気において加熱することで過剰成分の除去はできず、 組成に関
連した格子欠陥の除去は期待できないが、 単結晶中に残留している熱応 力に関連した格子欠陥は除去される。 発明を実施するための最良の形態
例えば、 PbW04 単結晶を製造するためには、 W03 および PbO 、 または PbW04 を出発原料とし、 大気雰囲気下、 白金坩堝中で加熱 溶融し、 チヨクラルスキー法で製造する。 大気雰囲気以外にも、 Ar、 N2 、 Heまたは C02 雰囲気あるいはこれらと大気の混合ガス雰囲気 でも PbW04 単結晶は製造可能であるが、 PbW04 単結晶と 02 の 熱力学的平衡関係、 製造設備の簡素化および低コスト化の観点から大気 雰囲気が好ましいと考えられる。
良質な PbW04 単結晶を製造するために、 出発原料である W03 お よび PbOは、 W02 や Pb02 など原子価の異なる酸化物を極力低下 させたものを使用する必要がある。 また、 それらを使用して調製した P bW04 を使用する必要がある。 不純物の総量は PbW04 1モルに対 して 1 X 1 0— 2モル以下にするのが良く、 1 X 1 0— 4モル以下であれば 最適である。 出発原料はこれら酸化物が最適であるが、 目的とする Pb W04 単結晶が製造できれば他の原料の使用も可能である。
製造された PbW04 単結晶は、 淡黄色透明で非常に脆い円柱状イン ゴッ トである。 この PbW04 単結晶は、 28 P a以下の酸素分圧にな るように Ar、 N2 、 Heまたは C02 雰囲気下あるいは真空度 1 30 P a以下の減圧状態に制御しながら 600〜 1 1 00°Cで加熱する。
Ar、 N2 、 Heまたは C02 は特に高純度を必要としないが、 分析 表で示される 02 濃度はなるべく低いものを使用することが好ましい。 減圧においては、 その真空度を 1 30 Pa以下にするのが良く、 できる ならば 5 X 1 0— 2P a以下が最適である。 Ar、 N2 、 Heまたは C〇
2 雰囲気下で加熱する場合、 これらのガス流量は 0. 5〜5 L_ m i n が良いが、 単結晶の大きさなどを考慮し、 任意に変更する。 加熱温度は 1 1 0 0°Cを超えると融解の危険性があるので注意が必要である。
PbW04 単結晶は、 円柱状インゴットのまま加熱しても良いが、 結 晶内部において過剰の 0および Wが結晶表面まで拡散する距離を短く し 、 結晶外へ 02 および W03 の形で短時間で放出させるためには、 用途 に合わせた寸法に切断後、 加熱することが好ましい。 切断には、 切断面 の欠けや割れが少ない内周刃スライシングマシンやブレードソーなどを 使用すると良い。
PbW04 単結晶は白金ポートに乗せ加熱するが、 その加熱時間は雰 囲気の種類と結晶の大きさによって異なり、 通常 1 2〜9 6 hが適当で ある。 6 0 0〜 1 1 0 0°Cで加熱後、 同じ雰囲気を維持したまま常温ま で 6〜2 4 hで冷却する。
加熱後の PbW04 単結晶をさらに所定の大きさに切断し、 鏡面研磨 した後に6。 C 0源のァ線を照射した時の光量は、 6 O p. e. /Me V 以上、 また蛍光の減衰時間は 1 0ナノ秒を維持し、 シンチレ一夕として 極めて良好な特性を示す。 また、 レ一ザ一フラッシュ法で 2 0°Cにおけ る熱伝導率を測定すると 1. 5〜 1. 6W/m · Kが得られ、 励起光に よつて発生した熱は速やかに熱移動される。
以下、 本発明の実施例について説明する。
〔実施例 1〕
純度 9 9. 9 9 %の W03 粉末および Fb◦粉末を等モル計量し、 混 合した後、 これを直径 7 Omm、 高さ Ί Ommの白金坩堝に入れ、 大気 雰囲気で高周波加熱により混合粉末原料を溶融し、 その融液からチヨク ラルスキー法で直径 3 5 mm. 長さ 6 5mmの PbW04 単結晶を製造 した。
次に、 この PbW04 単結晶を白金ポートに乗せ、 真空加熱炉を使用 し、 真空度 5 X 1 0 F aにおいて 9 5 0 °Cで 72 h加熱し、 同じ雰囲 気下で常温まで 1 2 hで冷却した。
加熱処理後の PbW04 単結晶を 1 cmx 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6flC 0源のァ線を照 射した時の光量およぴ蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の P b W 04 単結晶の約 2. 3倍の 6 9 p. e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 6 W/m · Kであった
〔実施例 2〕
チヨクラルスキー法で製造した PbW04 単結晶を白金ボートに乗せ 、 真空加熱炉を使用し、 真空度 5 X 1 0— 2P aにおいて 1 1 0 0°Cで 4 8 h加熱した。 それ以外は実施例 1と同様に処理した。
加熱処理後の PbW04 単結晶を 1 cmx 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から S°C 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の P b W 〇 4 単結晶の約 2. 4倍の 7 2 p. e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 6W/m · Kであった
〔実施例 3〕
チヨクラルスキー法で製造した FbWO 4 単結晶を白金ボートに乗せ 、 真空加熱炉を使用し、 大気を圧力調整ガスとして使用した圧力調整装 置で真空度を 1 3 0 P aに制御しながら 1 0 0 0 °Cで 9 6 h加熱した。 それ以外は実施例 1 と同様に処理した。
加熱処理後の Pb WO 4 単結晶を 1 cmx 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6QC 0源のァ線を照 射した時の光量およぴ蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の F b W 〇4 単結晶の約 2. 0倍の 6 O p. e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 6W/m * Kであった
〔実施例 4〕
チヨクラルスキー法で製造した FbW04 単結晶を白金ボートに乗せ 、 真空加熱炉を使用し、 真空度を 5 X 1 0一4 F aに制御しながら 60 0 °Cで.9 6 h加熱した。 それ以外は実施例 1と同様に処理した。
加熱処理後の P b WO 4 単結晶を l cmX l cmX 2 c mの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6°C 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の P b W 04 単結晶の約 2. 0倍の 6 O p. e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 5W/m · Kであった
〔実施例 5〕
チヨクラルスキー法で製造した PbW04 単結晶を白金ポートに乗せ 、 雰囲気炉を使用し、 〇2 濃度く 1 V 0 1 p pm (酸素分圧 0. 1 P a ) の Arを 1 L/m i n流しながら 1 1 0 0 °Cで 9 6 h加熱した。 それ 以外は実施例 1 と同様に処理した。
加熱処理後の PbW04 単結晶を 1 c m X 1 c m X 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6QC 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の PbW
〇4 単結晶の約 2. 0倍の 6 O p. e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザーフラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 5W/m ' Kであった 〔実施例 6〕
チヨクラルスキー法で製造した PbWO 4 単結晶を白金ボートに乗せ 、 雰囲気炉を使用し、 02 濃度く 1 V 0 1 p p m (酸素分圧 0. 1 P a ) の N2 を 1 L/m i n流しながら 1 1 0 0 °Cで 9 6 h加熱した。 それ 以外は実施例 1 と同様に処理した。
加熱処理後の F b WO 4 単結晶を 1 cmx 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6°C 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の P b W 〇 4 単結晶の約 · 0倍の 6 0 p . e . /M e Vとなり、 蛍光の減衰時 間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 5W/m ' Kであった
〔実施例 7〕
チヨクラルスキー法で製造した FbWO 4 単結晶を白金ボートに乗せ 、 雰囲気炉を使用し、 N2 と大気の混合ガスをマスフローコントローラ —で酸素濃度 2 76 V 0 1 p pm (酸素分圧 2 8 P a) となるように炉 内に導入しながら 1 1 0 0°Cで 9 6 h加熱した。 それ以外は実施例 1 と 同様に処理した。
加熱処理後の FbW04 単結晶を 1 cmx 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6°C 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の PbW 〇 4 単結晶の約 2. 0倍の 6 0 t). e. /Me Vとなり、 蛍光の減衰時
間は、 1 0ナノ秒を維持していた。 また、 レ一ザ"フラッシュ法で 2 0 °Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 1. 5W/m ' Kであった
〔実施例 8〕
純度 9 9. 9 9 %の W03 粉末および C dO粉末を等モル計量し、 混 合した後、 これを直径 7 Omm、 高さ 7 O mmの白金坩堝に入れ、 大気 雰囲気下、 高周波加熱により混合粉末原料を溶融し、 その融液からチヨ クラルスキー法で直径 3 5mm. 長さ 6 5111111の。 01 04 単結晶を製 造した。
次に、 この C dW04 単結晶を白金ポートに乗せ、 真空加熱炉を使用 し、 真空度 0. 1 F aにおいて 1 1 5 0°Cで 7 2 h加熱し、 同じ雰囲気 下で常温まで 2 4 hで冷却した。
加熱処理後の C dW04 単結晶を 1 cmX 1 cmx 2 cmの大きさに 切断し、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から 6°C 0源のァ線を照 射した時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の C dW O 4 単結晶の約 1. 5倍の 4 2 7 5 p. e . /Me Vとなり、 蛍光の減 衰時間は、 5 0 0 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ 法で 2 0°Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 2. 9W/m - K であった。
〔実施例 9〕
純度 9 9. 9 9 %の 03 粉末 2モルに対して K 2 C 03 および G d 2 ◦ 3 粉末を各 1モル計量し、 混合した後、 これを直径 7 Omm、 高さ 7 Ommの白金坩堝に入れ、 大気雰囲気下、 高周波加熱により混合粉末 原料を溶融し、 その融液からチヨクラルスキー法で直径 3 Omm、 長さ 3 5 mmの KG d (W04 ) 2 単結晶を製造した。
次に、 この KGd (W04 ) 2 単結晶を白金ポートに乗せ、 真空加熱
炉を使用し、 真空度 5 X 1 0— 4P aにおいて 1 0 0 0。Cで 7 2 h加熱し 、 同じ雰囲気下で常温まで 2 4 hで冷却した。
KGd (W04 ) 2 単結晶は、 eDC 0源のァ線を照射した時の光量が 小さくシンチレ一タ材料としては優れていないため光量の測定は行わな かった。
加熱処理後の KG d (WO 4 ) 2 単結晶を l cmX l cmX 2 cmの 大きさに切断し、 レーザ一フラッシュ法で 2 0°Cにおける熱伝導率を測 定した。 熱伝導率は従来 1. 6 W/m · Kであったものが 1. 7 W/m • Kまで増加した。
〔実施例 1 0〕
純度 9 9. 9 9 %の 03 粉末および C a◦粉末を等モル計量し、 混 合した後、 これを直径 7 Omm、 高さ 7 0 mmの白金坩堝に入れ、 大気 雰囲気下、 高周波加熱により混合粉末原料を溶融し、 その融液からチヨ クラルスキー法で直径 3 Omm、 長さ 4 0111111のじ &¥04 単結晶を製 造した。
次に、 この C aW04 単結晶を白金ポートに乗せ、 真空加熱炉を使用 し、 真空度 0. 1 P aにおいて 1 5 5 0 °Cで 7 2 h加熱し、 同じ雰囲気 下で常温まで 2 4 hで冷却した。
加熱処理後の C aWC を 1 cmX 1 cmx 2 cmの大きさに切断し 、 鏡面研磨した後、 1 cmの厚さの方向から6。 C 0源のァ線を照射した 時の光量および蛍光の減衰時間を測定した。 光量は従来の C aW04 単 結晶の約 1. 1倍の 2 0 0 O p. e . /Me Vとなり、 蛍光の減衰時間 は、 5 0 0 0ナノ秒を維持していた。 また、 レーザ一フラッシュ法で 2 0°Cにおける熱伝導率を測定した。 熱伝導率は 2. 5W/m * Kであつ た。
産業上の利用の可能性
このように、 本発明のタングステン酸塩単結晶の製造方法によれば、
X線ゃァ線等の放射線検出用シンチレ一夕として有用な密度が高く、 光 量が改善されたタングステン酸塩単結晶、 ならびに熱伝導率が改善され ることにより 2波長レーザー装置のレーザ一ホストとして有用なタング ステン酸塩単結晶を得ることができる。