明 細 書 ヒートシンク及ぴその製造方法 技術分野
本発明は、 ヒートシンクおよびその製造方法に関する。 詳しくは、 高熱伝導 性窒化アルミニウム基体に高熱伝導性ダイャモンドが積層された構造を有する ヒートシンクおよびその製造方法に関する。 背景技術
情報密度の増大とともに電子部品の処理能力は著しい向上を遂げている。そ のため、各々の部品からは多量の熱が発生しているのが現状である。 これらの 電子部品を安定的に動作させるためには一定温度に保つことが好ましく、その 冷却のために様々な工夫が成されている。 通常、高温となる電子部品は、 ヒー トシンクと呼ばれる "熱を吸収できる材料、 または構成部品あるいはシステム を熱的に保護するためにそのような材料を使用している装置"、すなわち放熱 部品上に、 マウントされ用いられるのが一般的である。
ヒートシンク材料として早くから実用化されている材料としては C u、 C u —W等の熱伝導性の良い金属、金属合金、 或いは S i C、 A 1 N等の半導体性 或いは絶縁性の高熱伝導性セラミックス材料が挙げられる。 しかし、電子部品 の集積化の結果、発熱量が増大し、上記材料のみからなるヒートシンクを用い て冷却するには限界となりつつある。 このため、放熱特性向上のための新たな ヒートシンク材料として既存物質中で最高の熱伝導率 (約 2 0 0 O W/mK) を有するダイヤモンドを用いたものが開発されている。このようなヒートシン クで一般的なものとしては、銅などで構成された基体上に所謂サブマゥントと して板状又は膜状の単結晶ダイヤモンドをロウ付けしたものがある。 しかし、 このヒートシンクにおいては、単結晶ダイヤモンドは非常に高価であるために
大きな形状のものを用いることができず、また上記ロウ材が熱伝導に対する抵 抗になるといった理由から、その放熱効率は必ずしも満足の行くものではなか つ 7こ。
そこで、基体上に多結晶ダイヤモンド膜を気相合成法により形成することが 試みられている。 たとえば特開平 5— 1 3 8 4 3号公報には、 半導体素子を載 置するための載置面を有する基体と、該載置面を覆う気相合成ダイヤモンド層 を備えた放熱部品が提案されている。 この放熱部品は、 半導体レーザー素子の 発熱による特性劣化を抑制するためのもので、基体上にマイク口波プラズマ C V D (Chemical Vapor Deposition) 法により 1 0〜5 0 0 μ ηιの厚さの多結 晶ダイヤモンド層を直接形成している。 この放熱部品は小型化することにより サブマウントとして使用することも可能と思われる。 発明が解決しょうとする課題
ところで、上記ヒートシンクにおいては多結晶ダイヤモンド膜を形成する基 体の材料は用途によって最適なものが異なる。種々の基体の中でも、 絶,禄性と 高熱伝導性を有する材料として、 窒化アルミニウム (A 1 N) 焼結体が知られ ている。 この A 1 N基体は、 基体上に回路を形成するような場合に、 特に有用 である。 すなわち、素子を載置する部分にのみ多結晶ダイヤモンド層を形成し 、基体の素子載置場所以外の部分に回路を形成するような場合には、 絶縁膜を 新たに形成する必要がなレ、という理由からセラミックのような絶縁体材料が好 ましく、 また放熱効率を低下させないために、換言すれば基板全体の熱導伝性 を高く保っために、 熱伝導率の高い材料が求められる。 したがって、 絶縁性と 高熱伝導性を有する基体材料として、 窒化アルミニウム (A 1 N)焼結体の使 用が検討されるべきである。
なお、基体に熱伝導性の高い金属を使用した場合にも、 S i 0 2等の絶縁膜 を蒸着等の方法により膜付けすることにより、絶縁性と高熱伝導性を達成する ことはできる。 し力 し、 この様な絶縁膜には耐電圧特性等の信頼性に問題があ
ることが多い。
このように、 窒化アルミニウム (A 1 N) 焼結体からなる基体上に多結晶ダ ィャモンド層を積層したヒートシンクは、高レ、有用性を有することが期待され る。
し力 しながら、 気相合成法により窒化アルミニウム (A 1 N) 焼結体からな る ί体上に高品質の多結晶ダイヤモンド層を直接形成するのは困難であり、実 用的な視点では高い熱伝導率を有する多結晶ダイヤモンド層を A 1 N基体上に 形成したヒートシンクは知られていなレ、。例えば上記特開平 5— 1 3 8 4 3号 公報には、 基体材料として、 C u、 C u—W合金、 C u— M o合金、 C u—W —M o合金、 W、 M o、 S i C焼結体、 S i 3 N 4焼結体、 A 1 N焼結体等が 使用できると記載されているが、実際に A 1 N焼結体からなる基体上に形成さ れた多結晶ダイヤモンドの熱伝導率は、 3 0 0 (W/m · K) と極めて低いも のとなつている。
そこで、 本発明は、 窒化アルミニウム (A 1 N) を主成分とするセラミック 基体上に高品質の多結晶ダイヤモンド層を形成する方法を提供し、延いては上 記基体上に多結晶ダイヤモンド膜が形成された基本構造を有し、放熱特性の優 れるヒートシンクを提供することを課題とする。 図面の簡単な説明
図 1は、 代表的な本発明のヒートシンクの断面図である。
図 2は、本発明の製造方法において接着部材層となる珪素膜を製造するため に好適に使用できる高周波プラズマ C V D装置の概略図である。
図 3は、本発明の製造方法においてダイヤモンド膜を製造するために好適に 使用できるマイクロ波 C V D装置の概略図である。 課題を解決するための手段
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。 その結果、 窒化アル
ミニゥムを主成分とするセラミック基体上に該基体およぴダイャモンド膜に対 して良好な接合性を有する特定の物質からなる層を形成し、その上に気相法に より多結晶ダイヤモンド膜を形成した場合には高い熱伝導性を有する高品位な 多結晶ダイャモンド膜を形成できることを見出し本発明を完成するに至った。 即ち、 本発明に係るヒートシンクは、 窒化アルミニウムを主成分とし、 少な くとも 1つの平面を有するセラミック基体と、該平面上に形成されたダイヤモ ンド膜層とからなり、前記セラミック基体と前記ダイヤモンド膜層とが接着部 材を介して接合されていることを特徴としている。
上記本発明のヒ一トシンクは、絶縁特性及び放熱特性に優れる窒化アルミ二 ゥムを主成分とするセラミック基体を用いているため、 ヒートシンク全体とし ての吸熱特性あるいは放熱特性が良好である。 さらに、 ダイヤモンド膜で基体 全体を覆わない構造とした場合、特に絶縁膜を形成することなく該基体上に金 属などにより電子回路を描画することが可能である。
本発明のヒートシンクにおいては、 前記接着部材が珪素、 炭化珪素、 タンダ ステン、 炭化タングステン、 C u W、 C u— M o合金、 C u—M o—W合金、 非晶質炭素、 窒化ホウ素、 窒化炭素、 及びチタンからなる群より選ばれる少な くとも一種の材料で構成されることが好ましい。 この場合、接着部材上に形成 されるダイヤモンド膜にクラック等が発生することが防止され、放熱性が高く 、 またダイヤモンド膜の耐久性が向上する。
また前記接着部材は、特定の結晶面に配向した結晶性物質から形成されてい てもよく、 この場合、 (1 1 1 ) 結晶面、 (2 2 0 ) 結晶面、 又は (4 0 0 ) 結晶面に優先配向した多結晶珪素からなることが好ましい。接着部材を結晶性 物質から形成すると、その上に形成される多結晶ダイヤモンド膜中の結晶粒が 大きくなり、 また結晶性も高いので、 ダイヤモンド膜の熱伝導率が特に高いと いう特徴を有する。
また、 必要に応じ、 上記多結晶珪素には、 ドーパントが含まれていてもよい 。 ドーパントを添加することで、 多結晶珪素の配向性を向上でき、 また珪素膜
に導電性を付与することもできる。
本発明に係るヒートシンクにおいては、前記ダイャモンド膜層の熱伝導率が
、好ましくは 8 0 O WZmK以上となり、基体上に直接ダイャモンド膜層を形 成した場合に比べて、 優れた熱伝導性が達成される。
本発明に係るヒートシンクの製造方法は、 窒ィ匕アルミニウムを主成分とし、 少なくとも 1つの平面を有するセラミック基体の該平面の少なくとも一部に接 着部材層を形成し、該接着部材層上にダイヤモンド膜を形成することを特徴と している。
上記本発明の製造方法によれば、ダイヤモンド膜の形成過程において 7 0 0 °C〜 1 1 0 o°c程度の温度に数時間〜数十時間保持されても冷却過程でダイヤ モンド膜が剥れたり膜にクラックが発生することがないので効率よく安定して 高品質な本発明のヒートシンクを製造することができる。特に、前記接着部材 層として特定の結晶面に配向した結晶性物質からなる層を形成した場合には、 結晶粒が大きく結晶性の高いダイャモンド膜を容易に形成することができる。 また、前記接着部材層として珪素を主成分とする層を形成した場合には、 ダイ ャモンド核発生を促進して、より効率良くダイャモンド膜を製造することが可 能となる。 さらに、 ドーパントを含む多結晶珪素のように導電性物質からなる 接着部材層を形成し、該接着部材層に直流電圧を印加しながら該接着部材層上 にマイクロ波 C VD法、又は熱フィラメント C VD法によりダイヤモンド薄膜 を形成した場合には、ダイャモンド膜合成のために有効な前駆体を基体表面に 効果的に付着させることができ、結晶性及び配向性が高く熱伝導率の高いダイ ャモンド膜を容易に形成することができる。 発明の実施の形態
本発明のヒートシンクは、窒ィ匕アルミニウムを主成分とする少なくとも 1つ の平面を有するセラミック基体の平面上に、接着部材層を介して形成されたダ 膜層が形成された積層体からなる。 ここで、 ヒートシンクとは、 上
記のような素子で発生した熱を吸収できる材料、または構成部品あるいはシス テムを熱的に保護するためにそのような材料を使用している装置を意味し、所 謂サブマゥントを含む概念である。
ダイヤモンド膜上には、 半導体素子、抵抗、 キャパシタ等の各種素子を載置 して使用する。
本発明のヒートシンクは、絶縁性を示すにもかかわらず高い熱伝導率をもつ 材料である窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基体を基体として使用 するので、ダイヤモンド膜と積層体を形成した場合においてもトータルの熱伝 導性が低下するのを抑制することができる。 また、 ダイヤモンド膜を基体の全 面に設けず、部分的に設けた場合には、 ダイヤモンド膜が形成されていない部 分に、金等の配線材料を蒸着することにより簡単に配線のための回路を描くこ とも可能である。
本発明で使用する上記基体 (以下、 単に A 1 N基体ともいう。 ) は、 窒化ァ ルミ二ゥムを主成分とするセラミックからなり、素子が载置されるダイヤモン ド膜が形成される平面を少なくとも 1つ有する形状のものであれば特に限定さ れず、例えば窒化アルミニウム粉末に焼結助剤を添カ卩し加圧等により成形した のちに焼結することにより製造される板状体であってもよく、又は多結晶窒化 アルミニウムを板状に加工したものであってもよい。
また、 上記ダイャモンド膜は、 多結晶体あるいは単結晶体の何れでもよく、 また天然ダイヤモンドあるいは合成ダイヤモンドのいずれでもよい。 しかしな がら、 コストおよび膜形成の容易さの観点から、気相法に'よつて合成される多 結晶ダイヤモンドからなるのが好適である。 その面積、 形状、 厚さ等は、 載置 する素子や所望の放熱特性、製造に要する時間やコストに応じて適宜決定され る。 一般には、 放熱特性はダイヤモンド膜の厚さが厚い方が高く、逆に製造に 要する時間ゃコストは膜厚が薄いほど低下するので、両者のバランスから膜厚 は 1 0 ;ζ πι〜3 0 0 /z m、 特に 2 0 ^ π!〜 2 5 0 mとするのが好適である。 また、 ダイヤモンド膜の熱伝導率は高ければ高い方が望ましいが、後で詳述す
る本発明の製造方法を採用することにより、本発明のヒートシンクでは 8 0 0 WZmK以上、特に 1 0 0 O W/mK以上の熱伝導率を有する多結晶ダイヤモ ンド膜を用いることが好ましい。 ここで、 ダイヤモンド膜は極めて薄いので、 その熱伝導率を直接測定することはできない。 したがって、 ヒートシンク全体 の熱伝導率を測定した後、基体および接着部材を構成する既知材料の熱伝導率 と厚み、及びヒートシンク全体の熱伝導率を基に理論的に求められる値をダイ ャモンド膜の熱伝導率とする。
本発明のヒートシンクにおいては、上記 A 1 N基体とダイヤモンド膜とが両 者に接合可能な接着部材からなる接着部材層を介して接合されていることを最 大の特徴とする。 このような接着部材層を介在させることにより、製造過程で ダイャモンド薄膜が剥離したり、膜にクラックが発生することなく高品質のダ ィャモンド膜を形成することができ、更に製造後においても使用中に加熱一冷 却といったヒートサイクルによりダイャモンド膜が破損したり剥離したりする のを防止することができる。
この接着部材層は A 1 N基体およびダイヤモンド膜の両方に対して良好な接 合性を有する材料からなる層であれば特に限定されないが、両者に対する接合 強度 (あるいは接着強度) が高いという観点から、 珪素、 炭化珪素、 タンダス テン、 炭化タングステン、 C uW、 C u— M o合金、 〇11ー1^ 0— 合金、 非 晶質炭素、 窒化ホウ素、 窒化炭素、及びチタンからなる群より選ばれる少なく とも一種の材料で構成されるのが好適である。
また、 前記接着部材が特定の結晶面に配向した結晶性物質からなるものは、 その上部に形成される多結晶ダイャモンド膜中の結晶粒が大きく結晶性も高く なるので該ダイヤモンド膜の熱伝導率がより高くなる。 このため、接着性部材 はこのような結晶' I·生物質からなるのがより好適である。このような結晶性物質 としては、 (1 1 1 ) 結晶面、 (2 2 0 ) 結晶面、 又は (4 0 0 ) 結晶面に優 先配向した多結晶珪素;及ぴホゥ素、燐等のドーパントを含む上記面に優先的 に配向した多結晶珪素等が例示される。特に上記のドーパントを含む配向した
多結晶珪素は、導電性を有するため、後述するようにダイヤモンド膜を形成す る際に直流電圧を印加することができるので特に好適である。
上記接着部材層の厚みは特に限定されないが、接合効果、高品質のダイヤモ ンド膜が得られやすいという効果、接着部材層を形成するのに要する時間、 お よび接着部材層を設けることによる熱伝導性の低下等のバランスから 5 η π!〜 3 μ ms 特に 1 0 n m〜2 ^u mであるのが好ましい。
本発明のヒートシンク Aの代表的な断面図を図 1に示すが、該ヒートシンク Aでは、板状の窒化アルミニウム基体 1 0 0の平面上に接着部材 1 1 0および ダイヤモンド膜 1 2 0がこの順で積層された構造を有している。 なお、 図 1で は窒化アルミニウム基体 1 0 0の上面全面を接着部材 1 1 0およびダイヤモン ド膜 1 2 0で覆うような態様を示したが、充分な接合強度が得られれば、 上記 接着部材層は必ずしも上層となるダイャモンド膜の下面の全面と密着している 必要はなく、 一部に密着していてもよい。
本発明のヒートシンクの製造方法は特に限定されず、例えば A 1 N基体の平 面上に、前記接着部材層を該平面の少なくとも一部に形成した後、 当該接着部 材層が形成された面上にダイヤモンド膜を当該接着部材層の少なくとも一部を 覆うように形成することにより好適に製造することができる。 なお、該製造法 において形成される接着部材層は、最終的にその一部又は全部が A 1 N基体と ダイャモンド膜との間に介在するようにして形成されればよく、ダイヤモンド 膜の面積より広い面積を有する膜状に形成しても、ダイヤモンド膜の面積より も小さい面積を有する膜状に形成してもよレ、。 さらに、 その形状も膜状である 必要は必ずしもなく、例えば格子状や互いにある間隔をおいて分散した複数の スポット状であってもよい。 また、接着部材層の厚みは、 効果と生産性とのパ ランスから 5 n m〜3; u mであるのが好ましい。
上記接着部材層を形成する方法としては、基体上に膜を成形する方法として 知られている公知の製膜方法の中から接着部材層の材質に応じて適用可能な方 法が制限なく採用できる。 このような製膜方法としては、 印刷法、 メツキ法、
蒸着法、 化学気相蒸着 (C V D ) 法、 スパッタリング法、 レーザーアブレーシ ョン法などが挙げられる。これらの中でも蒸着法及び化学気相蒸着法は高純度 の物質を膜厚精度よく形成可能であるため特に有効な方法である。
たとえば、 電子ビームを用いた真空蒸着法により、 珪素、 炭化珪素、 W、 W C、 C u W、 C u— M o合金、 C u— M o— W合金、 チタン、 及び B Nからな る群より選ばれる少なくとも 1種の材料からなる接着部材層を好適に形成する ことができる。 該方法では、接着部材層を構成する物質と同種類の物質からな る材料を真空層内のハースに入れ、この材料に電子ビームを照射することによ り溶融して蒸発させ、 該真空容器内に設置した基体表面に付着 (蒸着) させる ことにより接着部材層の形成を行なう。 この時、水晶振動子を用いた膜厚モニ ターで蒸着物質の膜厚を測定することで正確に付着膜厚を管理することが可能 である。 なお、 蒸着に際して、 基体温度は室温であってもよく、加熱して行つ てもよい。
また、 接着部材層が珪素や非晶質炭素、 窒化炭素、 チタン、 炭化珪素、 wの ようにガス状の原料から C V D法により形成できる場合には、 C V D法が好適 に採用できる。 化学気相蒸着法による接着部材層の形成は、 平行平板型プラズ マ C V D装置を用いて好適に行なうことができる。 この方法では、真空排気し た反応容器内に S i H4等の原料ガスを必要に応じて水素等の希釈ガスにより 希釈して導入し、対向する 1組の平行平板電極の片側に高周波電力を印加する ことにより高周波ガスプラズマを発生して、該電極と対向する電極上に設置し た基体上に珪素、 非晶質炭素、 窒化炭素、 チタン、 炭化珪素、 又は Wからなる 膜を形成することができる。基体は膜の成長条件によって異なるが一般的に 5 0 ° ( 〜 5 0 0 °C程度に加熱される。 また、 予め、形成条件毎の製膜スピードを 測定しておくことにより、製膜時間を制御して膜厚を正確に見積もることがで きる。 なお、 希釈ガスとしては水素の他にヘリウム、 窒素、 アルゴン、 キセノ ン、 ネオン、 クリプトンなどの非堆積·生ガスを用いることができる。
また、膜形成後にエッチングをしたり、膜形成時に基体にマスキングを行な
つたりすることにより接着部材層の形状を任意に変えることもできる。
本発明の製造方法において、前記接着部材層の形成はその上部に形成される ダイャモンド層の剥離やひび割れを防止する上で重要であるばかりでなく、形 成されるダイヤモンド膜の品質を向上させる上でも極めて重要である。
したがって、本発明の好ましい一態様では、接着部材層は特定の結晶面に配 向した結晶性物質で形成される。特定の結晶面に配向した結晶性物質で接着部 材層を形成することにより、その上に気相法により多結晶ダイャモンド形成す る際に下地層の配向性を維持して配向性の高い多結晶ダイャモンド膜を成長さ せることができ、 結果として結晶性の高いダイヤモンド膜を得ることができる c また、本発明の他の好ましい態様では、接着部材層を導電性物質で形成して もよレ、。導電性物質で接着部材層を形成した場合には、該層を電極として利用 し、気相法によりダイヤモンド膜を形成する際に該層に直流電圧を印加するこ とにより、ダイヤモンド形成に有効な前駆体が優先的に該層上に堆積するよう になり、結晶粒が大きく結晶性の良好な多結晶ダイャモンド膜を得ることがで きる。多結晶ダイャモンド膜の結晶性や結晶粒の増大は、 ダイャモンド膜の熱 伝導性を向上させるので、結果として放熱特性の優れたヒートシンクを得るこ とができる。
接着部材層を特定の結晶面に配向した結晶性物質で形成する方法は特に限定 されないが、上記 C VD法で珪素を主成分とする接着部材層を形成する場合に は、形成条件を調整することにより珪素膜の配向性の制御が可能であり、 X線 回折測定を行なった場合に (1 1 1.) 、 (2 2 0 ) 、 又は (4 0 0 ) 面に由来 する回折ピークが優先的に現れる多結晶珪素膜を形成することができる。例え ば、 (1 1 1 ) 面に優先的に配向した (X線回折測定を行なった場合に該面に 由来するピーク強度が他の面に由来する回折ピーク強度よりも有意に強い)珪 素膜を得る場合には、 作製温度が高い条件で製膜を行なえばよい。 (2 2 0 ) 面に優先的に配向した珪素膜を得る場合には、反応圧力が高い条件で製膜を行 なえばよい。 (4 0 0 ) 面に優先的に配向した珪素膜を得る場合には、 ハロゲ
ン化シランガスと水素化シランガスとを適当な割合で混合するという条件で製 膜を行なえばよい。 また、 この場合に、 原料ガスにジボラン、 ホスフィン等周 期律表第 III族或いは第 V族元素からなるドーパントとなる元素を含有するガス 化可能な化合物と上記のガスを混合して膜の合成を行なレ、、 P型、或いは N型 の導電性を示す珪素膜を合成することもできる。接着部材層をこのような珪素 膜で構成した場合には、上記配向効果おょぴ電圧印加効果の両方の効果を得る ことができる。 したがって、接着部材層としては、 X線回折測定を行なった場 合に (1 1 1 ) 、 (2 2 0 ) 、 又は (4 0 0 ) 面が優先的に現れる、 ドーパン トを含む (すなわち、 P型又は N型の) 、 多結晶珪素膜を形成するのが最も好 ましい。
本発明の製造方法では、上記の様にして形成した接着部材層上にダイャモン ド膜を形成する。 前記したように形成するダイヤモンド膜の面積、 形状、厚さ 等は、载置する素子や所望の放熱特性、製造に要する時間ゃコストに応じて適 宜決定すればよいが、 ダイヤモンド膜の厚さは 1 0 i n!〜 3 0 0 ii m、得に 2 0 μ ηι〜2 5 0 μ πιとするのが好適である。
上記ダイヤモンド膜の形成方法は特に限定されないが、製膜が容易であると いう観点から気相法によって製膜するのが好適である。気相法としては、化学 気相蒸着法、 レーザーアブレーション法等ダイヤモンド膜を製造可能な公知の 気相法が制限無く用いられる。 これらの中でも化学気相蒸着法が現状の技術の 中でも結晶^の良好なダイヤモンド膜を再現良く安定的に製造することが可能 であるため好適である。 化学気相蒸着法にはその製法により、 高周波、 マイク 口波、熱フィラメント等を用いる方法に分類されるが、 これらの中でもマイク 口波を用いた方法 (マイクロ波 C VD法) 及び熱フィラメントを用いた方法 ( 熱フィラメント C VD法) がより好ましい。以下にこれら製造方法について説 明する。
これら方法におけるダイヤモンド膜の原料としては通常、 メタン、 ァセチレ ン、 二酸化炭素、 一酸化炭素等、 炭素を含むガス化可能な物質が用いられる。
これらの堆積性ガスは水素、 酸素、 窒素、 アルゴン、 キセノン、 ネオン、 クリ プトンなどの非堆積性ガスで希釈されてもよい。
また、 ジボラン、 ホスフィン等周期律表第 III族或いは第 V族元素を含有する ガス化可能な化合物と上記のガスを混合してダイヤモンドの合成を行うことも 可能である。 この様なガスを同伴させてダイヤモンド膜の合成を行った場合、 P型、 或いは N型の導電型を示すダイャモンド膜が合成される。
ダイヤモンド膜製造時の基体温度は特に限定されないが 600°C〜 1200 °C、 特に、 700° ( 〜 1 100°Cであるのが好適である。 600°Cより低温で は非晶質のカーボンを多く含むダイヤモンド膜が形成される'ため、熱伝導性が 低下し本発明の効果を十分に発揮することができない。 また、 基体温度が 12 00°Cを超える場合には接着部材層に損傷を与えることがある。 また、低温時 の製膜と同様に、非晶質の力一ボンをダイヤモンド中に含有することがあるた め好ましくない。基体の加熱方法は上記温度範囲に設定できる方法であれば特 に制限無く採用される。 例えば、 基体を設置するホルダー中にヒーターを埋め 込み加熱する方法、 高周波誘導加熱により基体を加熱する方法、 或いは、 マイ ク口波プラズマ CVD法の場合、プラズマ形成のために投入するマイクロ波に より加熱する方法等が挙げられる。 ダイヤモンド合成のための圧力は、 通常 0 . lmTo r r〜300To r r、 特にマイクロ波プラズマ CVD法の場合に は 5 OmT o r r〜200To r rの範囲である。 また、 マイクロ波プラズマ C VD法の場合、プラズマ発生電源出力は形成するダイャモンド膜の特性によ つて適宜選択されるが、 通常、 300W〜10 kWである。 なお、 膜形成後に ェツチングをしたり、膜形成時に基体にマスキングを行なったりすることによ りダイヤモンド膜の形状を任意に変えることもできる。
以下、接着部材層が珪素からなる図 1に示すような本発明のヒートシンク A の製造に関して、図 2に示すような平行平板型高周波プラズマ CVD装置 Bお よび図 3に示すマイク口波プラズマ CVD装置 Cを用いて製造する場合を例に 更に詳しく説明する。
図 2に示す装置 Bは接着部材層 1 1 0を製造するために好適に使用できる代 表的な装置であり、 例えば S U S 3 0 4などのステンレス鋼等から構成され、 真空状態に維持される反応容器 2 0 1を備えており、反応チャンバ一側壁に形 成された排気口 2 0 3 a、 2 0 3 bを介して真空ポンプなどの真空源に接続さ れることにより一定の真空状態に維持されるようになっている。 なお、 図中 2 0 5および 2 0 7 aはそれぞれターボ分子ポンプ、 油回転ポンプであり、 これ らのポンプによつてお^気することにより反応容器内を高真空にすることができ るようになっている。 また、 2 0 6はメカニカルブースターポンプ、 2 0 7 b は油回転ポンプであり、 これらのポンプは珪素膜合成時に使用する。 また、排 気量を調整するための真空バルブ 2 0 4 a、 2 0 4 bが配設されている。 また 、該装置 Bの反応容器 2 0 1の内部には、基体 2 1 3を設置するための試料台 2 0 2 aが配置されている。 この試料台の中には基体を加熱するためのヒータ - 2 1 4が埋め込まれており、基体の温度調節ができるような機構になってい る。 またこの試料台は、反応容器 2 0 1の底壁を貫通して図示しない駆動機構 によって上下に摺動可能に構成され、位置調整可能になっている。 なお、 図示 しないが試料台 2 0 2 aと反応容器 2 0 1底壁との間の摺動部分には、反応容 器 2 0 1の真空度を確保するために、シーリングなどのシール部材が配設され ている。一方、基板を設置する試料台 2 0 2 aに対向して高周波印加電極 2 0 2 bが配置され、 高周波発振器 2 1 2から発振された高周波を、 チューニング 装置 2 1 1を介して、 反応容器 2 0 1内へ導くことができようになっている。 さらに、反応容器上方には反応ガス供給口 2 0 8 a、 2 0 8 bが配設されてお り、反応ガス流量調節器 2 0 9を通して反応容器内にガスを導入できるように なっている。反応ガスと高周波を同時に供給することにより反応容器内の平行 平板電極間 (2 0 2 a— 2 0 2 b ) に高周波ガスプラズマを形成して、 反応ガ スを分解することにより基体 2 1 3上に珪素膜を形成することができる。 また、図 3に示す装置 Cはダイヤモンド膜 1 2 0を製造するために好適に使 用できる代表的な装置であり、例えば S U S 3 0 4などのステンレス鋼等から
構成され、真空状態に維持される反応容器 3 0 1を備えており、反応- 一側壁に形成された排気口 3 0 3 a、 3 0 3 bを介して真空ポンプなどの真空 源に接続されることにより一定の真空状態に維持されるようになっている。図 中 3 0 5および 3 0 7 aはそれぞれターボ分子ポンプおょぴ油回転ポンプであ り、これらのポンプによって反応容器 3 0 1内を高真空排気することができる 。 また、 3 0 6はメカニカルブースターポンプ、 3 0 7 bは油回転ポンプであ り、 これらのポンプはダイヤモンド膜合成時に使用する。 また、排気量を調整 するための真空バルブ 3 0 4 a、 3 0 4 bが配設されている。該装置 Cの反応 容器 3 0 1の内部には、基体 3 1 3を設置するための試料台 3 0 2が配置され ている。 この試料台の中には基体を加熱するためのヒーター 3 1 4が埋め込ま れており、基体の温度調節ができるような機構になっている。 また、 この試料 台は、反応容器 3 0 1の底壁を貫通して図示しない駆動機構によって上下に摺 動可能に構成され、位置調整可能になっている。 なお、 図示しないが試料台 3 0 2と反応容器 3 0 1底壁との間の搢動部分には、反応容器 3 0 1の真空度を 確保するために、 シーリングなどのシール部材が配設されている。 一方、反応 容器 3 0 1の上方には、石英、 アルミナ等の誘電体からなるマイクロ波透過窓 3 1 5が配置され、マイクロ波発振器 3 1 2から発振されたマイクロ波を、 チ ユーニング装置 3 1 1を介してマイクロ波導波管を伝播させ反応容器 3 0 1内 へ導くことができようになっている。 さらに、反応容器上方には反応ガス供給 口 3 0 8 a、 3 0 8 bが配設されており、反応ガス流量調節器 3 0 9を通して 反応容器内にガスを導入できるようになっている。反応ガスとマイクロ波を同 時に供給することにより反応容器内の基体設置台上方にマイク口波ガスプラズ マを形成して、反応ガスを分解することにより基体 3 1 3上にダイヤモンド膜 を形成することができる。 この際、接着部材層である珪素膜に電圧を印加させ ながらダイヤモンド膜の形成を行うことができる。
本発明のヒートシンク Aを製造するには、 まず、基体 2 1 3を装置 B内部の 基材設置部 2 0 2 aにセットし、反応容器 2 0 1内を真空排気する。反応容器
内が 5 X 10— 6 To r r以下となるまで真空引きしたのち、反応ガス供給口 力 ら反応ガス流量調整器により流量を調整したガスを反応容器 201内へ供給 するとともに、反応容器 201外部に設けられた高周波発振器 212から高周 波をチューナー 211により反射損失を最小にして高周波印加電極 202 へ 投入する。 これにより、高周波ガスプラズマを形成して、 基体 213上に珪素 膜を形成する。 なお、 この際の反応容器内の圧力は、 好ましくは 0. lmTo r r〜100T o r r、より好ましくは 50mTo r r〜50To r rの範囲 で珪素膜が合成される。 この様な圧力とすることにより、結晶性が高く均一且 つ均質な珪素膜が効率よく形成される。本発明の製造方法において、 珪素膜の 製造時の基体温度は特に限定されないが 50° (:〜 500°C、特に、 80°C〜3 50°Cであるのが好適である。 高周波プラズマ CVD法の場合、プラズマ発生 電源出力は形成する珪素膜の特性によって適宜選択される力 通常、 5W〜2 kWである。高周波の発振周波数としては 1ΜΗζ〜200MHzが好ましく 、 より好ましくは 5MHz〜l 50MHzとするのが望ましレ、。 しかしながら 、 これらの条件は合成に用いる装置の容量や形状により変化するため、一義的 に決定されるものではない。
反応容器 201の中に導入する堆積性の反応ガスとしては、通常、 S i H4 、 S i 2 Hい S i HC l 3 、 S i H2 C l 2 、 S i C l 4 、 S i F4 、 S i F2 H2 、 等、珪素を含むガス化可能な物質が用いられる。 これらの堆積性ガ スは水素、 窒素、 ヘリウム、 アルゴン、 キセノン、 ネオン、 クリプトン、 など の非堆積性ガスで希釈されてもよい。
また、 ジポラン、 ホスフィン等周期律表第 III族或いは第 V族元素を含有する ガス化可能な化合物と上記のガスを混合して珪素膜の合成を行うことも可能で ある。 この様なガスを同伴させて珪素膜の合成を行った場合、 P型、 或いは N 型の導電型を示す珪素膜が合成される。
反応ガス及び希釈ガスの導入量としては、製造条件によって異なる力 結晶 性の良い膜を得ようとする場合、 通常、 総導入量としては、 50 c (:/分〜1
000 c 分となるようにするのが好ましレ、。 また、反応ガスと希釈ガスと の混合比率は特に限定されるものではないが、反応ガスに対する希釈ガスの混 合比率(希釈ガス Z反応ガス) が大きいほど結晶性の高い珪素膜が得られる傾 向にある。 また、 作製温度、 反応圧力、 原料ガス混合比率を制御することによ り珪素膜の配向を制御することも可能である。
接着部材層となる珪素膜形成後、基体を反応容器 201から取出して、 ダイ ャモンド膜を製造するための装置 Cの基体設置台 302にセットして、上記と 同様に反応容器 301を真空ポンプにより真空排気する。 そして、上記と同様 に反応容器内の圧力を 5 X 10- 6 To r r以下として、反応ガス供給口から 反応ガス流量調整器により流量を調整したガスを反応容器 301内へ供給する とともに、反応容器 301外部に設けられだマイクロ波電源 312からマイク 口波をチューナー 31 1により反射損失を最小にしてマイクロ波導波管 310 を介して反応容器 301内へ投入する。 これにより、 マイクロ波ガスプラズマ を基体設置台 302上方に形成して、接着部材がすでに形成された基体 31 3 上にダイヤモンド膜を形成する。 ダイヤモンド膜を形成する際、接着部材層で ある珪素膜に、成長初期から 1時間程度直流電圧を印加して製膜することが結 晶性の高いダイヤモンド膜を形成するために特に有効である。 この時印加する 電圧は、 + 500V〜一 500Vとするのが好適である。 なお、 この際の反応 容器内の圧力は、好ましくは 0. lmTo r r〜300To r rより好ましく は、 5 OmT o r r〜200 T o r rの範囲でダイヤモンド膜が合成される。 この様な圧力とすることにより、結晶性が高く均一且つ均質なダイヤモンド膜 が効率よく形成される。本発明の製造方法において、 ダイヤモンド膜の製造時 の基体温度は特に限定されないが 600°C〜1200°C、特に、 700°C〜1 100。Cであるのが好適である。 マイクロ波プラズマ CVD法の場合、プラズ マ発生電源出力は形成するダイヤモンド膜の特性によって適宜選択されるが、 通常、 300W〜10 kWである。 マイクロ波の発振周波数としては 50 OM Hz〜5GHzが好ましく、より好ましくは 1 GHz〜4 GHzとするのが望
ましい。 しかしながら、 これらの条件は合成に用いる装置の容量や形状により 変化するため、 一義的に決定されるものではない。
反応容器 3 0 1の中に導入する反応ガスとしては、 通常、 メタンガス、 ァセ チレンガス、 二酸化炭素、 一酸化炭素等、 カーボンを含むガス化可能な物質が 用いられる。 これらの堆積性ガスは水素、 窒素、 ヘリウム、 アルゴン、 キセノ ン、 ネオン、 クリプトン、 酸素などの非堆積性ガスで希釈されてもよい。 また、 ジボラン、 ホスフィン等周期律表第 III族或いは第 IV族元素を含有す るガス化可能な化合物と上記のガスを混合してダイヤモンドの合成を行うこと も可能である。この様なガスを同伴させてダイヤモンド膜の合成を行った場合 、 P型、 或いは N型の導電型を示すダイヤモンド膜が合成される。
反応ガス及ぴ希釈ガスの導入量としては、製造条件によって異なるが、熱伝 導率の高いダイヤモンド膜を得ようとする場合、通常、総導入量としては、 5
0 c c /分〜 6 0 0 0 c c Z分となるようにするのが好ましい。 また、反応ガ スと希釈ガスとの混合比率は特に限定されるものではないが、反応ガスに対す る希釈ガスの混合比率(希釈ガスノ反応ガス) が大きいほど結晶性の高いダイ ャモンド膜が得られる傾向にある。 実施例
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する力 本発明はこれらの 実施例に限定されるものではない。
尚、以下の各実施例及ぴ比較例において、珪素膜は図 2に示す様な構造の装 置を用い、またダイヤモンド膜は図 3に示す様な構造の装置を用いて形成した 。 また、 以下の実施例及び比較例において接着部材層、 ダイヤモンド膜、 及び 最終的に得られたヒートシンクの評価は以下の (1 ) 〜 (4 ) に示す方法によ つて行った。
( 1 ) 膜厚測定
接着部材層の厚みは、予め、石英基体上に珪素又はタングステン膜を形成し
た厚みを触針式膜厚計で求めて該厚みを製造時間で除して、 まず、膜厚製造速 度を求め、該製膜速度に接着部材層を形成する際の製造時間を乗ずることによ り厚みを求めた。 また、 ダイヤモンド膜の厚みは、 走査型電子顕微鏡により断 面形状を観察して求めた。
(2) 配向性
X線回折測定により珪素膜およびダイャモンド膜の配向性を確認した。珪素 膜については (1 1 1) 、 (220) 、 (31 1) 、 (400) 面に関するピ ークはそれぞれ、 2 8. 4° (20Z° ) 、 47. 3° (2 θ/° ) 、 5 6. 1° (2 0ノ° ) 、 6 9. 1° (20Ζ° ) に現れ、 ダイヤモンド膜について は (1 1 1) 、 (2 20) 、 (3 1 1) 、 ( 400 ) 面に関するピークはそれ ぞれ、 43. 9 5° (2 ΘΖ° ) 、 7 5. 40° (2 Θ_ ° ) 、 9 1. 60°
(2 0ノ° ) 、 1 1 9. 7° ( 2 θ , ) に現れるため、 その強度を比較する ことによって、 配向性の評価を行った。
(3) 結晶性
ラマン散乱分光法によって約 1 33 3 cm— 1 に現れる散乱波形の半値幅を 求めることにより結晶性の評価を行つた。 該半値幅が小さいほど結晶性が高レヽ c
(4) 熱伝導率
以下の算出式を用いて熱伝導率を計算した。
熱伝導率 (W/mK) =密度 (g/cm3 ) X比熱 ( J / g K) X熱拡散率 ( cm2 /s) X 1 00 (定数)
ここで、密度は水中密度法により求め、熱拡散率は 2次元リング法によって 非線形回帰分析により決定した。
実施例 1
窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基体(2 5mmX 2 5mmX 0 . 5 mm t) を高周波プラズマ CVD装置内の基体設置台へセットして、反応 容器内を真空引きすると同時に基体設置台を 1 20°Cに加熱した。基体の温度 が安定するまで約 3 0分間保持するとともに、反応容器内の圧力が 5 X 1 0—
6 T o r r以下となったのを確認し、反応容器内にモノシランガスを 3 c cノ 分、水素を 1 0 0 c c Z分の流量で導入し、排気パルプを調節することによつ て反応容器内の圧力を 1 . 5 T o r rに設定した。 次に、 高周波電源から 5 0 Wの出力で反射損失が最小となるようにチューナーでチューニングして高周波 を高周波印加電極へ供給した。得られる珪素膜の膜厚が 1 0 0 n mとなるよう に約 2 0 0 0秒間高周波電力を供給して珪素膜を基体上へ析出させた。反応終 了後、反応容器内の残留ガスを排気するとともに、基体の温度が 1 0 0 °C以下 となるのを確認した後、反応容器を大気開放して珪素膜が形成された基体を高 周波プラズマ C V D装置から取出した。得られた珪素膜の配向性を調べたとこ ろ特定の面方向に強く配向する結果は見られなかった。 また、珪素膜が析出し た基体の熱伝導率を調べたところ、 約 2 0 0 W/mKであった。
次に、ダイヤモンド膜を形成するために上記基体をマイク口波プラズマ C V D装置内の基体設置台へセットして、反応容器内を真空引きすると同時に基体 設置台を 1 0 0 0 °Cに加熱した。基体の温度が安定するまで約 1時間保持する とともに、反応容器内の圧力が 5 X 1 0— 6 T o r r以下となったのを確認し 、反応容器内にメタンガスを 1 2 c c /分、水素を 3 0 0 c cノ分の流量で導 入し、排気バルブを調節することによって反応容器内の圧力を 1 0 O T o r r とした。 次に、マイクロ波電源から 5 k Wの出力で反射損失が最小となるよう にチューナーでチューユングしてマイクロ波を石英製の窓を通して反応容器内 へ供給した。得られるダイャモンド膜の膜厚が 5 0 mとなるように約 1 0時 間マイク口波電力を供給してダイヤモンド膜を基体上へ析出させた。反応終了 後、基体温度が 1 0 o °c以下となったのを確認してから、反応容器を大気開放 してダイヤモンドが形成された基体を取出した。基体上に形成されたダイヤモ ンド膜を目視により観測したところ、 端部までダイャモンドは付着しており、 膜剥れは見られなかった。 また断面を顕微鏡で観察して、 ダイヤモンド膜の厚 みを観測したところ、約 5 0 であることが確認された。 次に、 基体上に形 成されたダイヤモンドの結晶性をラマン散乱スぺクトル測定により見積もった
結果、約 1 3 3 3 c m- 1 に現れるダイヤモンド構造に起因するピークの半値 幅が約 8 . 5 c m— 1 であることを確認した。 またダイャモンド層の配向性を 調べたところ接着部材層と同様に、特定の面方向に強く配向する結果は観測さ れなかった。 さらに得られた積層体 (ヒートシンク) の熱伝導率の測定を実施 したところ約 3 5 OW/mKであった。 したがって、 ダイヤモンド膜の熱伝導 率は、 1 8 5 O WZmKと求められる。
実施例 2
合成するダイヤモンドの厚みを 2 0 0〃niとする以外はすべて実施例 1と同 様にしてヒートシンクを作製した。基体上に形成されたダイャモンド膜を目視 により観測したところ、端部までダイャモンドは付着しており、膜剥れは見ら れなかつた。 また断面を顕微鏡で観察して、 ダイャモンド膜の厚みを観測した ところ、 約 2 0 0 μ πιであることが確認された。 次に、 実施例 1と同様にして 基体上に形成されたダイャモンドの結晶性を調べたところ、 半値幅は約 6 . 8 c m— 1 であった。 また、得られたダイヤモンド層の配向性を調べたところ特 定の面方向に強く配向する結果は見られなかった。 さらに、得られたヒートシ ンクの熱伝導率の測定を実施したところ、接着部材層を積層した基体の熱伝導 率は約 2 0 O W/mKであったのに対し、ダイヤモンドを付着させたものの熱 伝導率は約 7 2 OW/mKであった。 したがって、 ダイヤモンド膜の熱伝導率 は、 2 0 0 O WZmKと求められる。
実施例 3
接着部材層を Wとする以外はすべて実施例 1と同様にしてヒートシンクを作 製した。基体上に形成されたダイヤモンド膜を目視により観測したところ、端 部までダイャモンドは付着しており、膜剥れは見られなかつた。 また断面を顕 微鏡で観察して、 ダイヤモンド膜の厚みを観測したところ、約 5 0 μ mである ことが確認された。 次に、基体上に形成されたダイヤモンドの結晶性を調べた ところ、 半値幅が約 8 . O c m— 1 であった。 また、 ダイヤモンド層の配向性 を調べたところ特定の面方向に強く配向する結果は見られなかった。さらに得
られたヒートシンクの熱伝導率の測定を実施したところ、接着部材層を積層し た基体の熱伝導率は約 2 1 O W/mKであったのに対し、ダイヤモンドを付着 させたものの熱伝導率は約 3 6 OW/mKであった。 したがって、 ダイヤモン ド膜の熱伝導率は、 1 8 6 O WZmKと求められる。
比較例 1
接着部材層を揷入しな!/、こと以外は実施例 1と同様にヒートシンクを作製し た。基体上に形成されたダイヤモンド膜を目視により観測したところ、基体端 部近傍に膜剥れが生じていた。
比較例 2
接着部材層をニッケルに変更する以外は実施例 3と同様にヒートシンクを作 製しょうとしたが、所期の厚さの均一なダイヤモンド膜を得ることはできなか つた。 したがって、 ニッケルは接着部材として使用しえないことがわかった。 実施例 4
基体設置台の加熱温度を 3 0 0 °Cとし、高周波電源出力を 1 0 Wとする他は 実施例 1と同様にして膜厚 1 0 0 n mの珪素膜を基体上に析出させ、実施例 1 と同様にして得られた珪素膜の配向性を調べたところ (1 1 1 )配向であった 。 また、 珪素膜が析出した基体の熱伝導率を調べたところ、約 2 0 0 WZmK であった。
次に、上記珪素膜が析出した基体を用い、実施例 1と同様にして厚さ 5 0 mのダイヤモンド膜を形成し、 ヒートシンクを製造した。 基体上に形成された ダイヤモンドの結晶性を調べたところ、 半値幅が約 7 . 9 c m- 1 であった。 また、 ダイヤモンド層の配向性を調べたところ、 (1 1 1 ) 面に起因する回折 ピークがその他のピークより約 2 . 5倍程度大きい結果を得た。 さらに得られ たヒートシンクの熱伝導率の測定を実施したところ、約 3 7 O W/mKであつ た。 したがって、 ダイヤモンド膜の熱伝導率は、 2 0 7 O W/mKと求められ る。
実施例 5
実施例 4において、珪素膜の形成条件の中で基体加熱温度を 1 2 0 °Cとする 以外はすべて同様にしてヒートシンクを作製し、各種評価を行なった。 その結 果、基体上に形成されたダイヤモンドの結晶性は半値幅で約 7 . 7 c m— 1 で あり、 珪素膜おょぴダイヤモンド膜はいずれも (2 2 0 ) 面に起因する回折ピ ークがその他のピークより約 4倍程度大きい結果であり、珪素膜の析出した基 体およびヒートシンクの熱伝導率はそれぞれ 2 0 O W/mKおよび 3 8 0 W/ mKであった。 したがって、 ダイヤモンド膜の熱伝導率は、 2 1 8 0 WZmK と求められる。
実施例 6
実施例 5において接着部材層形成時にジボランを 5 c c Z分の流量で供給す るとともに、 ダイャモンド膜形成初期の 3 0分間、該接着部材層に一 1 0 0 V の直流電圧を印加すること以外はすべて同様な条件でヒートシンクを作製し、 各種評価を行った。 その結果、基体上に形成されたダイヤモンドの結晶性は半 値幅で約 7 . 3 c m— 1 であり、珪素膜およびダイャモンド膜はいずれも ( 2 2 0 )面に起因する回折ピークがその他のピークより約 4倍程度大きい結果で あり、珪素膜の析出した基体およびヒートシンクの熱伝導率はそれぞれ 2 0 0 WZmKおよび 4 0 O W/mKであった。 したがって、 ダイヤモンド膜の熱伝 導率は、 2 4 0 O WZmKと求められる。 発明の効果
本発明のヒートシンクは、ダイヤモンド膜が形成される基体として熱伝導率 の大きい窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基体(A 1 N基体) を用 いているので放熱効率が高い。 また、 基体が絶縁体であるため、 その一部をダ ィャモンド膜で覆い他の部分については回路を形成することもできる。 さらに 、本発明のヒートシンクにおいては基体とダイヤモンド膜の接合性が良好であ るため、使用時に加熱一冷却のヒートサイクルを繰り返してもダイャモンド膜 が剥離したりダイャモンド膜にクラックが発生することがなく、長期間安定し
て使用することができる。
また、本発明の製造方法によれば上記本発明のヒ一トシンクを効率よく製造 することができる。 また、 A 1 N基体上に直接気相法によりダイヤモンド膜を 形成した場合には、高品質のダイヤモンド膜を形成することができなかったの に対し、 本発明の製造方法によれば、 特定の物質からなる接着部材層を介在さ せることにより、間接的にではあるが A 1 N基体上に高品質のダイヤモンド膜 を形成することが可能となる。