JP5423869B2 - 接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置 - Google Patents

接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置に関するものである。
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、反射型液晶表示装置は、マトリクス状に配列された複数の画素電極を有している。反射型液晶表示装置では、この各画素電極に対して独立に駆動電圧を印加して、液晶の光学特性を制御することにより、液晶表示装置に入射した光を液晶表示装置内に設けられた反射板に反射させ、画像や文字等を表示することができる。
反射型液晶表示装置は、各画素電極に対して印加する駆動電圧の制御を、例えば、画素毎に設けたTFT(Thin Film Transistor)のようなスイッチング素子によって行うことにより、高いコントラストで高速応答の可能な液晶表示装置が実現できる。
このような反射型液晶表示装置では、画像や文字を表示させるため、装置外部から光を入射させる必要がある。液晶表示装置に入射した光の一部は、偏光板、液晶、反射板等に吸収され、これらを発熱される。このようにして発生した熱は、液晶表示装置の温度を上昇させ、偏光板や液晶の透過率等の光学特性を低下させたり、スイッチング素子の動作特性を低下させる。その結果、液晶表示装置の表示品位や信頼性が低下するという問題が知られている
かかる問題に対し、従来、反射型液晶表示装置に温度上昇を緩和する手段を設けることが行われている。
例えば、特許文献1には、反射型液晶表示装置の反射板にヒートシンク等の熱交換媒体を接着することにより、発生した熱を外部に放出し、表示品位の低下を防止する反射型液晶表示装置が開示されている。
このような反射板と熱交換媒体との接着は、一般に有機系接着剤を用いて行われる。しかしながら、有機系接着剤は、熱伝導性が低いため、反射板に発生した熱を熱交換媒体へ効率よく伝熱することが困難である。また、有機系接着剤は、耐熱性が低いため、反射板の温度が上がり過ぎた場合、接着剤が変質・劣化し、熱伝導性が低下するおそれがある。さらに、反射板と熱交換媒体との界面に均一に接着剤を塗布することは困難なため、反射板と熱交換媒体との離間距離が不均一になる。このため、反射板から熱交換媒体への熱伝導が不均一になり、表示ムラの発生を招くこととなる。
一方、特許文献2には、液晶プロジェクタ装置の偏光板に貼り付けられるサファイア板とその支持台とを、融着法によって固定することにより、これらの間の熱伝導性を高め、放熱効果を高めることのできる液晶プロジェクタ装置が開示されている。
しかしながら、融着法によって固定可能な支持台の構成材料は、融着可能な一部の材料に限定されるため、必然的に支持台の構成材料の選択幅が狭まってしまう。また、融着法を用いて固定する際に、サファイア板と支持台との離間距離を厳密に制御することは、技術的に極めて困難である。さらに、融着法では、被着体を高温に加熱する必要があるため、この熱の影響により、サファイア板や支持台の変質・劣化を招くおそれがある。
また、このような発熱に伴う問題は、液晶表示装置に限らず、半導体素子、電源装置等のデバイスにおいても同様に懸念されている。特に、LSIのような集積回路では、発熱による動作特性の低下が大きな問題とされている。したがって、発熱体から発生した熱を、効率よく放熱する方法が求められている。
特開平11−38409号公報 特開2002−72161号公報
本発明の目的は、被着体に対して、薄い接合膜を介して、高い寸法精度で強固にかつ低温下で効率よく接合することができ、これにより被着体が持つ熱を効率よく放熱させ得る接合膜付き放熱体、被着体が持つ熱が効率よく放熱されるように、被着体と放熱体とを接合する被着体と放熱体との接合方法、および、接合膜付き放熱体を備える信頼性の高い表示装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜付き放熱体は、放熱体と、
該放熱体の表面上に気相成膜法により成膜された接合膜とを有し、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属酸化物に脱離基が結合したものとなり、変形し難い強固な膜となる。その結果、被着体に対して、薄い接合膜を介して、高い寸法精度で強固にかつ低温下で効率よく接合することができ、これにより被着体が持つ熱を効率よく放熱させ得る接合膜付き放熱体が得られる。
本発明の接合膜付き放熱体では、前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
本発明の接合膜付き放熱体は、放熱体と、
該放熱体の表面上に気相成膜法により成膜された接合膜とを有し、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属原子と有機成分で構成される脱離基とを含むものとなり、変形し難い強固な膜となる。その結果、被着体に対して、薄い接合膜を介して、高い寸法精度で強固にかつ低温下で効率よく接合することができ、これにより被着体が持つ熱を効率よく放熱させ得る接合膜付き放熱体が得られる。
本発明の接合膜付き放熱体では、前記接合膜中の金属原子と炭素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
本発明の接合膜付き放熱体では、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、被着体から放熱体への高い熱伝導性を維持しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の被着体と放熱体との接合方法は、被着体と、本発明の接合膜付き放熱体とを用意する工程と、
前記接合膜付き放熱体の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与する工程と、
前記被着体と前記接合膜とが密着するように、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを貼り合わせて接合する工程と
を有することを特徴とする。
これにより、被着体が持つ熱が効率よく放熱するように、被着体と放熱体とを接合することができる。
本発明の被着体と放熱体との接合方法は、被着体と、本発明の接合膜付き放熱体とを用意する工程と、
前記被着体と前記接合膜とが密着するように、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
前記仮接合体中の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを接合する工程と
を有することを特徴とする。
これにより、被着体が持つ熱が効率よく放熱するように、被着体と放熱体とを接合することができる。また、仮接合体の状態では、接合膜付き放熱体と被着体との間は接合されていないので、接合膜付き放熱体の被着体に対する相対位置を調整することができる。その結果、接合膜付き放熱体と被着体とを重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができる。そして、接合膜の表面方向における位置精度を高めることができる。
発明の表示装置は、前記被着体と、本発明の接合膜付き放熱体と
を有し、
前記被着体が表示素子であることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い表示装置が得られる。
本発明の接合膜付き放熱体と被着体との接合体の第1実施形態を示す図(縦断面図)である。 本発明の接合膜付き放熱体と被着体とを接合する方法の第1実施形態を説明するための図である。 本発明の接合膜付き放熱体と被着体とを接合する方法の第1実施形態を説明するための図である。 本発明の接合膜付き放熱体が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合膜付き放熱体が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 放熱体上に接合膜を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜付き放熱体を用いて、接合膜付き放熱体と反射板とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜付き放熱体を用いて、接合膜付き放熱体と反射板とを接合する接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜付き放熱体の第4実施形態または第5実施形態が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合膜付き放熱体の第4実施形態または第5実施形態が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第4実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 図12に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。 第5実施形態において、接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の接合膜付き放熱体を半導体素子に接合してなる半導体装置を示す図である。
以下、本発明の接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の接合膜付き放熱体は、放熱体と、この放熱体の表面上に設けられた接合膜とを有しており、被着体(発熱体)に対して接合するのに用いられるものである。
この接合膜付き放熱体のうち、接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含む接合膜とを有するものである。
このような接合膜付き放熱体は、接合膜の平面視における少なくとも一部の領域、すなわち、平面視における接合膜の全面または一部の領域に対して、エネルギーを付与することにより、接合膜の少なくとも表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離するものである。そして、この接合膜は、脱離基の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、被着体との接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような特徴を有する接合膜付き放熱体は、被着体に対して、薄い接合膜を介して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合可能なものである。そして、かかる接合膜付き放熱体と被着体とを接合してなる接合体は、被着体が持つ熱を、放熱体を介して効率よく放熱することができるものとなる。これにより、被着体の温度上昇を確実に抑制することができる。その結果、熱によって、被着体に変質・劣化や特性の低下等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
<第1実施形態>
まず、本発明の接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置の各第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の接合膜付き放熱体と被着体との接合体の第1実施形態を示す図(縦断面図)、図2および図3は、本発明の接合膜付き放熱体と被着体とを接合する方法の第1実施形態を説明するための図、図4は、本発明の接合膜付き放熱体が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図5は、本発明の接合膜付き放熱体が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1ないし図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態では、接合膜付き放熱体1を接合する相手となる被着体を、反射型液晶表示装置10の反射板4とした場合について説明する。すなわち、接合膜付き放熱体1、反射板4、液晶層5および基板6により、図1に示す反射型液晶表示装置10(本発明の表示装置)が構成されている。
反射型液晶表示装置10は、装置外部から光を入射させ、入射光を反射板4に反射させることにより表示を行う。そして、画素ごとに液晶層5の光学特性を制御することにより、反射光を制御し、表示面に画像や文字等を表示する。
液晶層5は、液晶、カラーフィルター、マトリクス状に配列された複数の画素電極等を有している。この各画素電極に対して独立に駆動電圧を印加して、液晶の光学特性を制御することにより、入射光および入射光を反射板4で反射させた反射光を用いて、表示面に画像や文字等を表示する。
また、液晶層5には、各画素電極に対して印加する駆動電圧を制御するTFTのようなスイッチング素子が設けられている。このスイッチング素子により、画素ごとに反射光を独立して高速に制御することができる。これにより、反射型液晶表示装置10は、高いコントラストかつ速い応答速度で画像を表示することが可能となる。
また、基板6は、液晶層5を保護する保護機能を有する。また、偏光板としての機能を有していてもよい。
これらの反射板4、液晶層5および基板6により、液晶表示素子(表示素子)7を構成している。
このような反射型液晶表示装置10の製造方法は、接合膜付き放熱体1を用意する工程と、接合膜付き放熱体1の接合膜3に対してエネルギーを付与して、接合膜3中から脱離基を脱離させることにより、接合膜3を活性化させる工程と、液晶表示素子(被着体)7を用意し、接合膜付き放熱体1が備える接合膜3と液晶表示素子7とが密着するように、これらを貼り合わせ、反射型液晶表示装置10を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる反射型液晶表示装置10の製造方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜付き放熱体1(本発明の接合膜付き放熱体)を用意する。
接合膜付き放熱体1は、図2(a)に示すように、反射板4に接合され、反射板4が持つ熱を吸収する吸熱部21と、吸熱部21が吸収した熱を外部に放出する放熱部22とを有する板状の放熱体2と、放熱体2の吸熱部21の表面上に設けられた接合膜3とを有している。
このうち、放熱体2は、接合膜3を支持する程度の剛性を有するものであれば、いかなる材料で構成されたものであってもよい。
具体的には、放熱体2の構成材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
このうち、放熱体2の放熱性を考慮すると、放熱体2の構成材料は、金属系材料またはセラミックス系材料であるのが好ましい。これらの材料は熱伝導性が高いため、反射板4が持つ熱を特に効率よく放熱することができる。
また、放熱体2は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、放熱体2の形状は、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、板状のものに限定されない。すなわち、放熱体2の形状は、例えば、塊状(ブロック状)、棒状等であってもよい。
なお、本実施形態では、放熱体2が板状をなしていることから、放熱体2が撓み易くなり、放熱体2は、反射板4の形状に沿って十分に変形可能なものとなるため、これらの密着性がより高くなる。また、接合膜付き放熱体1において、放熱体2と接合膜3との密着性が高くなるとともに、放熱体2が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和することができる。
この場合、放熱体2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜50mm程度であるのが好ましく、0.1〜30mm程度であるのがより好ましい。なお、後述する反射板4の平均厚さも、前述した放熱体2の平均厚さと同様の範囲内であるのが好ましい。
なお、図2(a)に示す放熱体2は、接合膜3と反対側の部分、すなわち放熱部22に、フィン構造を有している。これにより、放熱部22が外気と接触する表面積が大きくなるため、放熱体2の放熱性をより高めることができる。
また、放熱部22の形状は、フィン構造以外に、平面状であってもよく、多孔質状であってもよい。
さらに、放熱部22には、その他の熱交換手段が設けられていてもよい。かかる熱交換手段としては、例えば、ペルチェ素子等が挙げられる。
一方、接合膜3は、放熱体2と後述する反射板4との間に位置し、これらの放熱体2と反射板4との接合を担うものである。
かかる接合膜3は、図4、5に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。
本発明の接合膜付き放熱体は、主にこの接合膜3に特徴を有する。なお、この接合膜3については、後に詳述する。
また、放熱体2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、放熱体2の構成材料に応じて、接合膜3を形成する前に、あらかじめ、放熱体2と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、放熱体2の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、接合膜3との密着性を阻害する物質を除去または改質することによって、該領域を活性化させることができる。これにより、放熱体2と反射板4との接合強度をより高めることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜3を形成するために、放熱体2の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す放熱体2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、放熱体2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる放熱体2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料、各種セラミックス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された放熱体2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された放熱体2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き放熱体1と反射板4とを強固に接合することができる。
なお、この場合、放熱体2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、放熱体2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して放熱体2上接合膜3を成膜することになり、信頼性の高い接合膜付き放熱体1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、放熱体2と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
[2]次に、接合膜付き放熱体1の接合膜3の表面35に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜3では、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜3の表面35および内部に活性手が生じる。これにより、接合膜3の表面35に、反射板4との接着性が発現する。
このような状態の接合膜付き放熱体1は、反射板4と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
また、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図2(b)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による放熱体2の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜付き放熱体1と反射板4との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面35および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図4に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜3にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図5に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
ここで、接合膜3を「活性化させる」とは、接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、反射板4に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
また、本実施形態では、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせる前に、あらかじめ、接合膜付き放熱体1の接合膜3に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせる(重ね合わせる)際、または貼り合わせた(重ね合わせた)後に行われるようにしてもよい。このような場合については、後述する第2実施形態において説明する。
[3]接合膜付き放熱体1を貼り付ける相手となる反射板4を用意する。なお、本実施形態では、図2(c)に示すように、反射板4と、それに設けられた液晶層5および基板6とにより構成された液晶表示素子7に対して、接合膜付き放熱体1を接合する。これにより、図3(d)に示すような接合体、すなわち反射型液晶表示装置10を得る。
このようにして得られた反射型液晶表示装置10では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜付き放熱体1と反射板4とが接合されている。このため、放熱体2と反射板4との密着性が高くなり、これらの間の熱伝導性も高くなる。
ここで、反射型液晶表示装置10では、画像や文字を表示させるため、図1に示すように、装置外部から光を入射させる必要がある。入射した光の一部は、基板6、液晶層5および反射板4に吸収され、これらを発熱させる。このようにして発生した熱は、反射型液晶表示装置10の温度を上昇させ、基板6や液晶層5の透過率等の光学特性を低下させたり、液晶層5に設けられたスイッチング素子の動作特性を低下させることとなる。従来の反射型液晶表示装置では、このような表示品位や信頼性が低下するという問題があった。
これに対し、図1に示す反射型液晶表示装置10では、放熱体2と反射板4との密着性が高く、これらの間の熱伝導性が高いために、反射板4が持つ熱を効率よく放熱することができる。その結果、反射板4や、それに接する液晶層5、さらに基板6の温度上昇を抑制することができる。
また、放熱体2を用いて反射型液晶表示装置10を構成することにより、反射型液晶表示装置10を短時間で構築することができ、かつ、放熱体2と反射板4との間が極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合膜付き放熱体1を用いて反射型液晶表示装置10を得る方法によれば、従来の融着法を用いた方法のように、高温での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された放熱体2および反射板4をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して放熱体2と反射板4とを接合しているため、放熱体2や反射板4の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、放熱体2および反射板4の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、固体接合では、接合層を介していないため、放熱体2と反射板4との間の熱膨張率に大きな差がある場合、その差に基づく応力が接合界面に集中し易く、剥離等が生じるおそれがあったが、反射型液晶表示装置10では、接合膜3によって応力の集中が緩和され、剥離を防止することができる。
反射板4は、反射型液晶表示装置10に入射した光を、表示面に向けて反射させるものである。
かかる反射板4の構成材料は、例えば、可視光を反射し得る光学特性を有する材料であれば、いかなる材料であってもよく、例えば、前述したような各種金属系材料、シリコン系材料等が挙げられる。
また、各種樹脂系材料、各種セラミックス系材料、各種ガラス系材料のような材料に、金属層を成膜した複合材料が好ましく用いられる。
また、反射板4の形状も、放熱体2と同様、接合膜3が密着する面を有する形状であれば、特に限定されず、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
ところで、反射板4の構成材料は、放熱体2と異なっていても同じでもよい。
また、放熱体2と反射板4の各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。放熱体2と反射板4の熱膨張率がほぼ等しければ、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張差に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、後に詳述するが、放熱体2および反射板4の各熱膨張率が互いに異なる場合でも、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化することにより、接合膜付き放熱体1と反射板4とを高い寸法精度で強固に接合することができる。
すなわち、放熱体2と反射板4の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、放熱体2と反射板4との熱膨張率差にもよるが、放熱体2および反射板4の温度が25〜50℃程度である状態下で、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、放熱体2と反射板4の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、反射型液晶表示装置10における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
また、この場合、放熱体2と反射板4との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
このような反射板4の接合膜付き放熱体1との接合に供される領域には、反射板4の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、反射板4と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜付き放熱体1と反射板4との接合強度をより高めることができる。
なお、表面処理としては、放熱体2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、反射板4の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き放熱体1と反射板4との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる反射板4の構成材料には、前述した放熱体2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を用いることができる。
さらに、反射板4の接合膜付き放熱体1との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き放熱体1と反射板4との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。このような基または物質を有する表面は、反射板4の接合膜3に対する接合強度のさらなる向上を実現し得るものとなる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜付き放熱体1と特に強固に接合可能な反射板4が得られる。
また、表面処理に代えて、反射板4の接合膜付き放熱体1との接合に供される領域には、あらかじめ、接合膜3との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、かかる中間層を介して接合膜付き放熱体1と反射板4とを接合することになり、より接合強度の高い反射型液晶表示装置10が得られる。
かかる中間層の構成材料には、前述の放熱体2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本工程において、接合膜付き放熱体1と反射板4とが接合されるメカニズムについて説明する。
例えば、反射板4の接合膜付き放熱体1との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜付き放熱体1の接合膜3と反射板4とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜付き放熱体1の接合膜3の表面35に存在する水酸基と、反射板4の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜付き放熱体1と反射板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜付き放熱体1と反射板4との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜付き放熱体1と反射板4とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、Si骨格301を有する接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた放熱体2を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、反射型液晶表示装置10の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図3(d)に示す反射型液晶表示装置10を得ることができる。
なお、図3(d)では、接合膜付き放熱体1の接合膜3の全面を覆うように反射板4を重ね合わせているが、これらの相対的な位置は、互いにずれていてもよい。すなわち、接合膜3から反射板4がはみ出るように、接合膜付き放熱体1と反射板4とが重ね合わされていてもよい。
このようにして得られた反射型液晶表示装置10は、放熱体2と反射板4との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する反射型液晶表示装置10は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
また、本発明によれば、Si骨格301を有する接合膜3を用いて接合を行っているため、数分以上の比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。このため、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。
なお、反射型液晶表示装置10を得た後、この反射型液晶表示装置10に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([4A]、[4B]および[4C])のうちの少なくとも1つの工程(反射型液晶表示装置10の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、反射型液晶表示装置10の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
[4A]図3(e)に示すように、得られた反射型液晶表示装置10を、放熱体2と反射板4とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、放熱体2の表面および反射板4の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、反射型液晶表示装置10における接合強度をより高めることができる。
また、反射型液晶表示装置10を加圧することにより、反射型液晶表示装置10中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、反射型液晶表示装置10における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、反射型液晶表示装置10を加圧する際の圧力は、反射型液晶表示装置10が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して反射型液晶表示装置10における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、放熱体2および反射板4の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、放熱体2および反射板4の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、反射型液晶表示装置10の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、放熱体2および反射板4の各構成材料によっては、放熱体2および反射板4に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、反射型液晶表示装置10を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[4B]図3(e)に示すように、得られた反射型液晶表示装置10を加熱する。
これにより、反射型液晶表示装置10における接合強度をより高めることができる。
このとき、反射型液晶表示装置10を加熱する際の温度は、室温より高く、反射型液晶表示装置10の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、反射型液晶表示装置10が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図3(e)に示すように、反射型液晶表示装置10を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、反射型液晶表示装置10の接合強度を特に高めることができる。
[4C]得られた反射型液晶表示装置10に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と放熱体2および反射板4との間に形成される化学結合を増加させ、放熱体2および反射板4と接合膜3との間の接合強度をそれぞれ高めることができる。その結果、反射型液晶表示装置10の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[2]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
なお、本工程[4C]を行う場合、放熱体2および反射板4のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基板側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、反射型液晶表示装置10における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
ここで、前述したように、本発明の接合膜付き放熱体は、接合膜3に特徴を有している。以下、接合膜3について詳述する。
前述したように、接合膜3は、図4に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。このような接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる放熱体2と反射板4との接合体においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図5に示すように、接合膜3の表面35および内部に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。
かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた接合膜付き放熱体1は、反射板4に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、このような接合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合膜付き放熱体1を用いて得られた反射型液晶表示装置10の寸法精度、特に、放熱体2と反射板4との離間距離の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
このような接合膜3としては、特に、接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、放熱体2および反射板4に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、接合膜付き放熱体1と反射板4とをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜付き放熱体1の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、放熱体2に対して特に強固に被着するとともに、反射板4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、放熱体2と反射板4とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れることから、本発明の接合膜付き放熱体に対して特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
また、接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、反射板4から放熱体2への高い熱伝導性を維持しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜3の熱伝導性が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、放熱体2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせた際に、接合膜3の反射板4に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
このような接合膜3は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製することができるが、これらの中でも、プラズマ重合法により作製されたものが好ましい。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく作製することができる。これにより、接合膜3の熱伝導性が特に高くなり、反射板4が持つ熱を、放熱体2を介して特に効率よく放熱することができる。
また、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、反射板4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、反射型液晶表示装置10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
以下、一例として、プラズマ重合法により接合膜3を作製する方法について説明する。
まず、接合膜3の作製方法を説明するのに先立って、放熱体2上にプラズマ重合法を行いて接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図6は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図6に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、放熱体2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図6に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は、板状をなしており、放熱体2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図6に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130の放熱体2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図6に示すように、放熱体2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、放熱体2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で放熱体2をプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、放熱体2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図6に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して放熱体2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による放熱体2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部160の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、上記のプラズマ重合装置100を用いて、放熱体2の表面上に接合膜3を作製する方法について説明する。
図7は、放熱体2上に接合膜3を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を放熱体2上に堆積させることにより得ることができる。以下、詳細に説明する。
まず、放熱体2を用意し、必要に応じて、放熱体2の上面25に前述したような表面処理を施す。
次に、放熱体2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図7(a)参照)。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図7(b)に示すように、重合物が放熱体2に付着・堆積する。これにより、放熱体2上にプラズマ重合膜で構成された接合膜3が形成される(図7(c)参照)。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
また、放熱体2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜3を得るとともに、接合膜付き放熱体1を得ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の接合膜付き放熱体、この接合膜付き放熱体と液晶表示素子とを接合する接合方法(本発明の被着体と放熱体との接合方法)、および本発明の接合膜付き放熱体を備える表示装置の各第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の接合膜付き放熱体を用いて、接合膜付き放熱体と反射板とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き放熱体1と反射板4とを重ね合わせた後に、接合膜3にエネルギーを付与するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き放熱体1を用意する工程と、反射板4、液晶層5および基板6の液晶表示素子7を用意し、接合膜3と反射板4とが密着するように、接合膜付き放熱体1と液晶表示素子7とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、仮接合体中の接合膜3に対してエネルギーを付与して、接合膜3を活性化させ、これにより、接合膜付き放熱体1と反射板4とを接合してなる反射型液晶表示装置10を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、接合膜付き放熱体1を用意する(図8(a)参照)。
[2]次に、図8(b)に示すように、液晶表示素子7を用意し、接合膜3の表面35と反射板4とが密着するように、接合膜付き放熱体1と液晶表示素子7とを重ね合わせて、仮接合体を得る。なお、この仮接合体の状態では、接合膜付き放熱体1と反射板4との間は接合されていないので、接合膜付き放熱体1の反射板4に対する相対位置を調整することができる。これにより、接合膜付き放熱体1と反射板4とを重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができる。その結果、接合膜3の表面35方向における位置精度を高めることができる。
[3]次に、図8(c)に示すように、仮接合体中の接合膜3に対してエネルギーを付与する。接合膜3にエネルギーが付与されると、接合膜3に、反射板4との接着性が発現する。これにより、接合膜付き放熱体1と反射板4とが接合され、図1に示す反射型液晶表示装置10が得られる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
また、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、および接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
このうち、接合膜3にエネルギー線を照射する方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
なお、この場合、エネルギー線は、放熱体2または反射板4を透過して接合膜3に照射されることとなる。したがって、放熱体2または反射板4は、透光性を有するものであるのが好ましい。
一方、接合膜3を加熱することにより、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、放熱体2が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜3の脱離基303を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜3は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、放熱体2または反射板4は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された放熱体2または反射板4は、効率よく発熱する。その結果、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、放熱体2または反射板4は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、放熱体2または反射板4を介して、接合膜3に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、接合膜3に圧縮力を付与することにより、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、接合膜付き放熱体1と反射板4とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜3に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜3に、反射板4との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、放熱体2と反射板4の各構成材料によっては、放熱体2および反射板4に損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のようにして反射型液晶表示装置10を得ることができる。
なお、反射型液晶表示装置10を得た後、この反射型液晶表示装置10に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の接合膜付き放熱体、この接合膜付き放熱体と液晶表示素子とを接合する接合方法(本発明の接合方法)、および本発明の接合膜付き放熱体を備える表示装置の各第3実施形態について説明する。
図9は、本発明の接合膜付き放熱体を用いて、接合膜付き放熱体と反射板とを接合する接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態および前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き放熱体1と、接合膜31を備えた反射板4とを接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、放熱体2と接合膜3とを備える接合膜付き放熱体1と、接合膜3と同様の接合膜31を備える反射板4とを用意する工程と、接合膜3と接合膜31とにそれぞれエネルギーを付与して、各接合膜3、31を活性化させる工程と、各接合膜3、31同士が密着するように、接合膜付き放熱体1と、反射板4、液晶層5および基板6で構成される液晶表示素子7とを貼り合わせる工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、接合膜付き放熱体1を用意する。また、接合膜3と同様の接合膜31を備える液晶表示素子7とを用意する。
[2]次に、接合膜3と接合膜31に対して、それぞれエネルギーを付与する。各接合膜3、31にエネルギーが付与されると、各接合膜3、31では、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、各接合膜3、31の表面35および内部に活性手304が生じ、各接合膜3、31が活性化される。これにより、各接合膜3、31にそれぞれ接着性が発現する。
このような状態の接合膜3と接合膜31とは、それぞれ互いに接着可能なものとなる。
なお、エネルギー付与方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
ここで、各接合膜3、31を「活性化させる」とは、前述したように、各接合膜3、31の表面および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301に終端化されていない結合手(未結合手)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。
[3]次に、図9(a)に示すように、接着性が発現した各接合膜3、31同士が密着するように、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせる。これにより、図9(b)に示す反射型液晶表示装置10を得る。
ここで、本工程において、各接合膜3、31同士を接合するが、この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推察される。
(i)例えば、各接合膜3、31の表面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、各接合膜3、31同士が密着するように、接合膜付き放熱体1と反射板4とを貼り合わせたとき、各接合膜3、31の表面に存在する水酸基同士が、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、放熱体2と反射板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、各接合膜3、31同士の間では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、放熱体2と反射板4とがより強固に接合されると推察される。
(ii)各接合膜3、31同士を貼り合わせると、各接合膜3、31の表面や内部に生じた終端化されていない結合手(未結合手)同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各接合膜3、31を構成するそれぞれの母材(Si骨格301)同士が直接接合して、各接合膜3、31同士が一体化する。
以上のような(i)または(ii)のメカニズムにより、図9(b)に示すような反射型液晶表示装置10が得られる。
なお、反射型液晶表示装置10を得た後、この反射型液晶表示装置10に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、反射型液晶表示装置10を加圧しつつ、加熱することにより、反射型液晶表示装置10の放熱体2と反射板4とがより近接する。これにより、各接合膜3、31の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。そして、各接合膜3、31同士の一体化がより進行する。その結果、各接合膜3、31同士がほぼ完全に一体化された接合膜を有する反射型液晶表示装置10が得られる。
<第4実施形態>
次に、本発明の接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置の各第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の接合膜付き放熱体の第4実施形態が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図11は、本発明の接合膜付き放熱体の第4実施形態が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図10および図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、表示装置の第4実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態にかかる表示装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合膜付き放熱体および表示装置は、接合膜の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる表示装置は、接合膜3がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである。換言すれば、エネルギー付与前の接合膜3は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入した膜であると言うことができる。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離し、接合膜3の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
以下、本実施形態にかかる接合膜3について説明する。
また、接合膜3は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、熱伝導性の高いものとなる。このため、接合膜3は、反射板4が持つ熱を、放熱体2へと効率よく伝えることができる。
また、接合膜3は、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる反射型液晶表示装置10においても、寸法精度が高いものが得られる。
さらに、接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜3の寸法精度がより高いものとなる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
なお、脱離基303は、図10に示すように、少なくとも接合膜3の表面35付近に存在していればよく、接合膜3のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜3の表面35付近に偏在していてもよい。このように脱離基303が表面35付近に偏在する構成とすることにより、接合膜3に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜3に、接合を担う機能の他に、熱伝導性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基303が、接合膜3の熱伝導性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜3を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜3は、優れた熱伝導性を発揮するものとなる。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、接合膜3中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、放熱体2と反射板4とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、放熱体2と反射板4との接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜3としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜3は、放熱体2に対して特に強固に接着するとともに、反射板4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、放熱体2と反射板4とを強固に接合することができる。
また、接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合膜3の熱伝導性を十分に確保しつつ、放熱体2と反射板4とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜3の熱伝導性が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、放熱体2の接合面(接合膜3を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、放熱体2と反射板4とを貼り合わせた際に、接合膜3の反射板4に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、接合膜3のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、脱離基303を接合膜3の表面35付近に偏在させる場合には、例えば、B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
以下、AおよびBの方法を用いて、放熱体2の表面上に接合膜3を成膜する場合について、詳述する。
<A> Aの方法では、接合膜3は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を放熱体2に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜3のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
また、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜3は、反射板4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合膜付き放熱体1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
以下、PVD法により接合膜3を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜3を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、放熱体2上にイオンビームスパッタリング法により接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図12は、本実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図13は、図12に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図12に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜3の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、放熱体2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、放熱体2上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
イオン源(イオン銃)215は、図13に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図12に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜3の成膜速度をより速くすることができる。
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、放熱体2および接合膜3が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして接合膜3が形成される。
ここでは、放熱体2上に接合膜3を成膜する方法について説明する。
まず、放熱体2を用意し、この放熱体2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が放熱体2上に堆積することにより、接合膜3が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜3を成膜することができる。
<B> 一方、Bの方法では、接合膜3は、上記のように、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、放熱体2上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニーリング)する方法、B2:イオン・インプランテーション等が挙げられるが、中でも、特に、B1の方法を用いるのが好ましい。B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理(アニーリング)することにより、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
なお、Bの方法を用いて接合膜3の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[i] まず、放熱体2を用意する。そして、この放熱体2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
[iii] 次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、放熱体2上に堆積して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
[iv] 次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、放熱体2および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
[v] 次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜3が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程[ii]において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜3を成膜することができる。
以上のような第4実施形態にかかる接合膜付き放熱体1および反射型液晶表示装置10においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
<第5実施形態>
次に、本発明の接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置の各第5実施形態について説明する。
以下、表示装置の第5実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第4実施形態にかかる表示装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合膜付き放熱体および表示装置は、各接合膜の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる表示装置は、接合膜3がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3から脱離し、接合膜3の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
以下、本実施形態にかかる接合膜3について説明する。
接合膜3は、図10に示すように、放熱体2の表面上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303の結合手が切れて接合膜3の少なくとも表面35付近から脱離し、図11に示すように、接合膜3の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面35に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた放熱体2は、反射板4に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜3は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、熱伝導性の高いものとなる。このため、接合膜3は、反射板4が持つ熱を、放熱体2へと効率よく伝えることができる。
また、接合膜3は、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる反射型液晶表示装置10においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の熱伝導性をより高めることができる。
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜3は、特に優れた熱伝導性を発揮するものとなる。また、接合膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜3を成膜することができる。
また、脱離基303は、前述したように、接合膜3から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
具体的には、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、かかる構成の接合膜3において、金属原子と炭素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、放熱体2と反射板4とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜3に優れた熱伝導性を発揮させることができる。
また、接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、50〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合膜3の熱伝導性を十分に確保しつつ、放熱体2と反射板4とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜3の熱伝導性が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、放熱体2の接合面(接合膜3を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、放熱体2と反射板4とを貼り合わせた際に、接合膜3の反射板4に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、IIa:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体または表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜3を形成する方法、IIb:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法(積層させる方法あるいは、単原子層からなる接合層を形成)、IIc:金属原子と脱離基303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として適切な溶媒に溶解させスピンコート法などを用いて接合膜を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、IIbの方法により接合膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜3を形成することができる。
以下、IIbの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法により、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図14は、本実施形態において、接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図14に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜3の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置400は、チャンバー(真空チャンバー)411と、このチャンバー411内に設置され、放熱体2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)412と、チャンバー411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段460と、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段470と、チャンバー411内の排気をして圧力を制御する排気手段430と、基板ホルダー412を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
基板ホルダー412は、本実施形態では、チャンバー411の底部に取り付けられている。この基板ホルダー412は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、放熱体2上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、放熱体2および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
有機金属材料供給手段460は、チャンバー411に接続されている。この有機金属材料供給手段460は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽462と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー411内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ465と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー411内に導くガス供給ライン461と、ガス供給ライン461の途中に設けられたポンプ464およびバルブ463とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段460では、貯留槽462は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ463を開放した状態で、ポンプ464を作動させて、キャリアガスをガスボンベ465から貯留槽462に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン461内を通過してチャンバー411内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段470がチャンバー411に接続されている。ガス供給手段470は、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ475と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー411内に導くガス供給ライン471と、ガス供給ライン471の途中に設けられたポンプ474およびバルブ473とで構成されている。かかる構成のガス供給手段470では、バルブ473を開放した状態で、ポンプ474を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ475から、供給ライン471を介して、チャンバー411内に供給されるようになっている。ガス供給手段470をかかる構成とすることにより、チャンバー411内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜3が成膜される。
チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス、一酸化窒素、一酸化二窒素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜することができる。その結果、この接合膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置400を用いてMOCVD法により、以下のようにして放熱体2上に接合膜3が形成される。
[i] まず、放熱体2を用意する。そして、この放熱体2を成膜装置400のチャンバー411内に搬入し、基板ホルダー412に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段470を動作させ、すなわちポンプ474を作動させた状態でバルブ473を開くことにより、チャンバー411内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段470による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー412を加熱する。基板ホルダー412の温度は、形成する接合膜3の種類、すなわち、接合膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜600℃程度であるのが好ましく、100〜450℃程度であるのがより好ましく、200〜300℃程度であるのがさらに好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜3を成膜することができる。
[iii] 次に、シャッター421を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程[ii]で基板ホルダー412が加熱された状態で、チャンバー411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、放熱体2上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、放熱体2上に接合膜3を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜3を放熱体2上に形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜3を確実に形成することができる。
また、本実施形態では、ガス供給手段470を動作させることにより、チャンバー411内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、放熱体2上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜3を成膜することができる。
以上のように、接合膜3を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜3を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜3に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、接合膜3を成膜することができる。
以上のような第5実施形態にかかる接合膜付き放熱体1および反射型液晶表示装置10においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
以上、本発明の接合膜付き放熱体、被着体と放熱体との接合方法および表示装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の被着体と放熱体との接合方法は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の被着体と放熱体との接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態では、表示装置として反射型液晶表示装置を代表に説明しているが、本発明の表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、液晶プロジェクタ、有機EL表示装置、無機EL表示装置、電気泳動表示装置、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種表示装置にも適用できる。
また、本発明の接合膜付き放熱体は、例えば、半導体素子、電源装置等のデバイスに放熱体を設ける際にも適用できる。
具体的には、図15(a)に示すように、絶縁基板9上に搭載されたLSIのような半導体素子8の上面に、前記各実施形態と同様にして、本発明の接合膜付き放熱体1を貼り合わせる。これにより、図15(b)に示すように、半導体素子8と、その表面に接合膜3を介して接合された放熱体2とを有する半導体装置80が得られる。
かかる半導体装置80は、半導体素子8が持つ熱を、放熱体2に効率よく伝えることができる。これにより、この熱を放熱体2から効率よく放熱させることができ、半導体素子8の温度が高くなり過ぎるのを防止することができる。その結果、信頼性の高い半導体装置80を得ることができる。
1……接合膜付き放熱体 2……放熱体 21……吸熱部 22……放熱部 25……上面 3……接合膜 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 35……表面 4……反射板 5……液晶層 6……基板 7……液晶表示素子 8……半導体素子 80……半導体装置 9……絶縁基板 10……反射型液晶表示装置 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 400……成膜装置 411……チャンバー 412……基板ホルダー 421……シャッター 430……排気手段 431……排気ライン 432……ポンプ 433……バルブ 460……有機金属材料供給手段 461……ガス供給ライン 462……貯留槽 463……バルブ 464……ポンプ 465……ガスボンベ 470……ガス供給手段 471……ガス供給ライン 473……バルブ 474……ポンプ 475……ガスボンベ

Claims (8)

  1. 放熱体と、
    該放熱体の表面上に気相成膜法により成膜された接合膜とを有し、
    前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする接合膜付き放熱体。
  2. 前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1に記載の接合膜付き放熱体。
  3. 放熱体と、
    該放熱体の表面上に気相成膜法により成膜された接合膜とを有し、
    前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする接合膜付き放熱体。
  4. 前記接合膜中の金属原子と炭素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項3に記載の接合膜付き放熱体。
  5. 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないしのいずれかに記載の接合膜付き放熱体。
  6. 被着体と、請求項1ないしのいずれかに記載の接合膜付き放熱体とを用意する工程と、
    前記接合膜付き放熱体の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与する工程と、
    前記被着体と前記接合膜とが密着するように、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを貼り合わせて接合する工程と
    を有することを特徴とする被着体と放熱体との接合方法。
  7. 被着体と、請求項1ないしのいずれかに記載の接合膜付き放熱体とを用意する工程と、
    前記被着体と前記接合膜とが密着するように、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
    前記仮接合体中の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記被着体と前記接合膜付き放熱体とを接合する工程と
    を有することを特徴とする被着体と放熱体との接合方法。
  8. 前記被着体と、請求項1ないしのいずれかに記載の接合膜付き放熱体と、
    を有し、
    前記被着体が表示素子であることを特徴とする表示装置。
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