JP2011201977A - 接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2つの部材同士を、接合膜転写シートが備える接合膜を所定形状にパターニングした後、この接合膜を介して接合することができる接合方法を提供する。
【解決手段】基材2aと接合膜3とを有する接合膜転写シート1aを用意し、接合膜の表面に接着性を発現させる工程と、転写体5aを用意し、接合膜転写シートと転写体とを貼り合わせることにより仮接合体(c)を得る工程と、仮接合体から基材を剥離することで転写体に接合膜の一部を転写させて、パターニングされた接合膜が基材に残存した接合膜転写シートを得る工程(d)と、接合膜転写シートのパターニングされた接合膜の表面に接着性を再び発現させる工程と、被着体を用意し接合膜と被着体とが密着するように、接合膜転写シートと被着体とを貼り合わせることにより、基材と被着体とがパターニングされた接合膜を介して接合された接合体を得る工程。
【選択図】図6

Description

本発明は、接合方法に関するものである。
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
例えば、従来のインクジェットプリンタが備える液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)では、樹脂材料、金属材料、シリコン系材料等の異種材料からなる部材同士が、接着剤を用いて接着されている(例えば、特許文献1参照)。
このように接着剤を用いて部材を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化させることで接着が完了する。
ところが、部材の接着面に接着剤を塗布する際には、印刷法等の煩雑な方法を用いる必要がある。例えば、接着面の一部の領域に対して選択的に接着剤を塗布する場合、塗布の位置精度や厚さを厳密に制御することは極めて困難である。このため、このように接着剤を用いた接着方法では、前述の液滴吐出ヘッドの部材同士を高い寸法精度で接着することは困難である。その結果、プリンターの印字精度を十分に高めることも困難であった。
また、接着剤の硬化時間が非常に長くなるため、接着に長時間を要するととともに、硬化中に部材同士の位置がずれてしまったり、硬化中の加熱により熱膨張率差のある部材同士の接着界面に熱応力が残留し、液滴吐出ヘッドの変形、損傷を招くおそれがある。
さらに、部材の構成材料によっては、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程を複雑化している。
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
しかしながら、接合可能な構成材料に制約があるため、部材が限定されるという問題がある。一般に、接合可能な材料は、シリコン系材料や一部の金属材料に限られており、しかも、同種材料同士の接合しかできない。
また、固体接合を行う雰囲気が減圧雰囲気に限られる上、高温(700以上800℃以下程度)の熱処理を必要とするなど、接合プロセスにも制約がある。
さらに、固体接合では、2つの部材の各接合面のうち、互いに接触している面全体が接合するため、一部を選択的に接合することは困難である。このため、仮に異種材料からなる部材同士を接合することができたとしても、熱膨張率差に伴って接合界面に大きな応力が発生し、接合体の反りや剥離等の問題を引き起こすおそれがある。
このような問題を受け、2つの部材同士を、接合面の一部の領域において選択的に、高い寸法精度で強固に接合する方法が求められている。
そこで、特許文献2では、プラズマ重合法により形成された接合膜を用いて部材同士を接合する方法が提案されている。
このような接合膜は、気相成膜法で成膜されているため、従来に比べて接合膜の位置精度や厚さを厳密に制御し易い。しかしながら、プラズマ重合法により形成した接合膜をパターニングする際には、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて不要部分を除去する必要があり、製造工程の複雑化、高コスト化が避けられない。
また、特許文献2では、接合に供する部材の表面に接合膜を成膜する必要があるため、成膜装置と部材とは不可分であり、成膜装置がある場所に必ず部材を用意しなければならない。ところが、成膜装置は大型で重量も大きく、可搬性が著しく低いため、製品の製造プロセスでは、部材の動線に地理的制約を伴うことが避けられない。
特開2002−254660号公報 特開2008−307873号公報
本発明の目的は、2つの部材同士(基材および被着体)を、接合膜転写シートが備える接合膜を所定形状にパターニングした後、この接合膜を介して接合することができる接合方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、基材と被着体とを所定形状にパターニングされた接合膜を介して接合する接合方法であって、
前記基材と、該基材の一方の面に設けられ、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含むプラズマ重合により形成された前記接合膜とを有する接合膜転写シートを用意し、該接合膜転写シートの前記接合膜の表面にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させて、前記接合膜の表面に接着性を発現させる第1の工程と、
前記接合膜の一部を転写させる転写体を用意し、前記接合膜と前記転写体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記転写体とを貼り合わせることにより仮接合体を得る第2の工程と、
前記仮接合体から前記基材を剥離することにより、前記転写体に前記接合膜の一部を転写させて、所定形状にパターニングされた前記接合膜が前記基材に残存した前記接合膜転写シートを得る第3の工程と、
前記接合膜転写シートの所定形状にパターニングされた前記接合膜の表面にエネルギーを付与することにより、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、前記接合膜の表面に接着性を再び発現させる第4の工程と、
前記被着体を用意し、前記接合膜と前記被着体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを貼り合わせることにより、前記基材と前記被着体とが所定形状にパターニングされた前記接合膜を介して接合された接合体を得る第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、接合膜転写シートが備える接合膜を所定形状にパターニングした後、基材と被着体とを、この接合膜を介して接合することができる。
本発明の接合方法では、前記転写体は、表面の一部に凹部を有しており、前記第2の工程において、前記接合膜転写シートと前記転写体とを貼り合わせる際に、前記凹部に対応する位置で前記接合膜と前記転写体とが接合しないことにより、前記第3の工程において、前記凹部の形状に対応した前記接合膜が選択的に前記基材に残存し、これにより前記第5の工程において、前記基材と前記被着体とが前記凹部の形状に対応した前記接合膜により部分的に接合されることが好ましい。
かかる方法によれば、転写体が備える凹部の形状を適宜選択することのみで、接合膜を効率よく簡単に、所定形状を有する接合膜にパターニングすることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記接合膜転写シートと前記転写体との貼り合わせは、前記接合膜転写シートと前記転写体とが近づくように圧縮力を付与することにより行われることが好ましい。
これにより、接合膜転写シートが備える接合膜と、転写体とが密着することとなり、その結果、接合膜転写シートと転写体とを確実に貼り合わせることができる。
本発明の接合方法では、前記圧縮力は、0.2MPa以上100MPa以下であることが好ましい。
これにより、凹部が対応しない領域において、接合膜と転写体とを確実に接合させることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の工程の後に、前記仮接合体が有する前記接合膜を加熱することが好ましい。
これにより、第1の被着体と接合膜とが接合している領域に位置する接合膜の接合強度を向上させるとともに、この領域以外の領域で発現している接合膜の表面における接着性を失活化させることができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜を加熱する温度は、60℃以上、200℃以下であることが好ましい。
これにより、第1の被着体と接合膜とが接合している領域に位置する接合膜の接合強度をより向上させることができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、このものを構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上、90原子%以下のものであることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜は、第1の被着体および第2の被着体に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明の接合方法では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上、7:3以下であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の被着体と第2の被着体とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の接合方法では、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は特にランダムな原子構造を含むものとなる。そして、寸法精度および接着性に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、シロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の規則性が低下する。このようにして、接合膜中にSi−H結合が含まれることにより、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
本発明の接合方法では、前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上、0.2以下であることが好ましい。
これにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
これにより、耐候性および耐薬品性に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合方法では、前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05以上、0.45以下であることが好ましい。
これにより、メチル基の含有率が最適化され、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜に十分な接着性が生じる。また、接合膜には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られる。また、この接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような被着体の接合に際して、有効に用いられるものとなる。
本発明の接合方法では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合方法では、前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01W/cm以上、100W/cm以下であることが好ましい。
これにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格を確実に形成することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、1nm以上、1000nm以下であることが好ましい。
これにより、第1の被着体と第2の被着体とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、接合膜転写シートを用いて得られた接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の接合方法では、前記基材は、可撓性を有するものであることが好ましい。
これにより、基材は特に可撓性に優れたものとなるため、第1の被着体に対する密着性がより高い接合膜転写シートが得られる。特に小さな曲率半径で湾曲させた場合でも、破断するおそれが少なくなるため、剥離プロセスを容易かつ確実に行うことができる。
本発明の接合方法に用いられる接合膜転写シートを説明するための図(縦断面図)である。 図1に示した接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 図1に示した接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 基材上に接合膜を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の接合方法において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明の接合方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
(接合膜転写シート)
まず、本発明の接合方法を説明するのに先立って、本発明の接合方法に用いられる接合膜転写シートについて説明する。
図1は、本発明の接合方法に用いられる接合膜転写シートを説明するための図(縦断面図)、図2は、図1に示した接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図3は、図1に示した接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」という。
図1に示す接合膜転写シート1aは、基材2aと、基材2a上に成膜された接合膜3とを有するものであり、転写体5aに対して接合膜3を所定形状に転写し、この接合膜転写シート1aに所定形状にパターニングされた接合膜3を残存させるために用いられるものである。
この接合膜3は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含む、プラズマ重合により成膜されたものである。このような接合膜3は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、接合膜3に存在する脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜3のエネルギーを付与した領域に接着性が発現するという特徴を有する。
以下、接合膜転写シート1aの各部の構成について詳述する。
基材2aは、接合膜3を支持するものであるとともに、後述する被着体6に対して所定形状にパターニングされた接合膜33を介して接合させるためのものである。
基材2aは、本実施形態では、図1に示すように、両面が平坦面である基板状(シート状)をなし、その厚さは全体でほぼ均一になっている。
基材2aの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、紙、布、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
このうち、基材2aは、可撓性を有するものが好ましい。これにより接合膜転写シート1aは、転写体5aに積層する際に、積層界面の密着性を高めることができる。これは、基材2aが可撓性を有しているため、仮に転写体5aの表面に凹凸があったとしても、接合膜転写シート1aがその凹凸形状に沿って変形し得るため、両者の密着性が向上するからである。したがって、基材2aが可撓性を有することにより、後述する、仮接合体7において、接合膜転写シート1aと転写体5aとの積層ムラを抑制し、接合膜3を確実に転写体5a側に転写することができる。
また、転写体5aに積層した接合膜転写シート1aから基材2aを剥離する際に、基材2aは容易に湾曲し得るものとなる。このため、剥離作業が容易になるとともに、剥離の際に基材2aが接合膜3に損傷を与えるなどの不具合が防止される。
さらに、基材2aが可撓性を有することにより、接合膜転写シート1a自体も可撓性を有するものとなる。このような接合膜転写シート1aは、ロール状に巻き取ることができるので、保管時および搬送時に省スペース化が図られる。さらに、ロール状に巻き取られた接合膜転写シート1aは、順次繰り出されることにより必要な長さを容易に供給可能である。このため、後述する本発明の接合方法を、接合装置により行う場合、接合膜転写シート1aは装置への親和性に優れたものとなる。
また、基材2aは、樹脂系材料を主材料とするものが好ましい。このような基材2aは、特に可撓性に優れたものとなるため、上述したような効果がより顕著になる。特に小さな曲率半径で湾曲させた場合でも、破断するおそれが少ないため、前述した剥離プロセスを容易かつ確実に行うことができる。
さらに、樹脂系材料は軽量であるため、大量の接合膜転写シート1aをロール状に巻き取ったとしても、そのロールは比較的軽量で可搬性に優れたものとなるため、取り扱いが容易になる。
なお、接合膜転写シート1aでは、接合膜3の基材2a対する接合強度が、転写体5aに対する接合強度よりも劣るものの、基材2aと接合膜3との界面は、できるだけ強固に密着している必要がある。このため、基材2aの上面には、接合膜3の成膜前に、接合膜3との密着力を高める表面処理が施されているのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、基材2aの上面を清浄化するとともに、活性化させることができる。その結果、接合膜3の基材2aに対する密着強度を確実に高めることができる。
また、物理的表面処理では、基材2aの上面の表面粗さを高めることによって、基材2aと接合膜3との界面にアンカー効果を生じさせ、密着強度の向上を図ることができる。
上記のような接合強度の関係を、基材2aおよび転写体5aの表面エネルギーの大きさの関係で規定すると以下に示すような関係となっている。
すなわち、基材2aは、その表面エネルギー(表面自由エネルギー)が、転写体5aの表面エネルギーより小さくなっている。これにより転写体5aは、接合膜3に対して基材2aよりも相対的に高い密着性を示し、接合膜3と強固に接合される。一方、基材2aは、接合膜3に対して転写体5aよりも相対的に低い密着性を示す。すなわち、転写体5aと接合膜3との界面は相対的に強固に接合される。これに対して、基材2aと接合膜3との界面の接合強度は相対的に低くなる。これにより、接合膜転写シート1aに転写体5aを積層し、得られた仮接合体7から基材2aを剥離する際には、転写体5aと接合膜3との界面で剥離を生じさせることなく、基材2aすなわち基材2aと接合膜3との界面で確実に剥離を生じさせることができる。その結果、接合膜3を転写体5aに確実に転写することができる。
具体的な基材2aの表面エネルギーは、5mN/m以上200mN/m以下であるのが好ましく、10mN/m以上100mN/m以下であるのがより好ましい。基材2aの表面エネルギーが前記範囲内であれば、基材2aは、接合膜転写シート1aとして製造され流通する際に、意図しないときに基材2aと接合膜3との界面で剥離してしまうことが防止されるとともに、転写体5aに接合膜3を転写する際には、適度な剥離力を加えることで基材2aと接合膜3との界面で容易かつ確実に剥離させることができる。
一方、転写体5aの表面エネルギーは、基材2aの表面エネルギーより高ければよいが、好ましくは1.1倍以上とされ、より好ましくは1.5倍以上とされ、さらに好ましくは2倍以上とされる。この程度の差があれば、基材2aや転写体5aの表面エネルギーのバラツキが十分に吸収されるため、両者の密着強度の大小関係が部分的に逆転してしまうのを防止することができる。
なお、このような大きな表面エネルギーを有する転写体5aの構成材料としては、後に詳述するが、無機材料が好ましく用いられる。
このような基材2aの平均厚さは、構成材料や目的とする可撓性に応じて適宜設定されるが、一例として0.001mm以上10mm以下程度であるのが好ましく、0.01mm以上3mm以下程度であるのがより好ましい。
接合膜3は、以上のような基材2a上のほぼ全面に、ほぼ均一な厚さで設けられている。
この接合膜3は、前述したように、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、その領域に接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような接合膜3は、プラズマ重合により形成されたものであり、図2に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造(アモルファス構造)を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。このような接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなる(非晶質化する)ため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、接合膜3自体が接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合体10においても、接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3にエネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図3に示すように、接合膜3の上面(表面)31および内部に、活性手304が生じる。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3は、転写体5aに対して強固に効率よく接合可能なものとなる。
なお、脱離基303とSi骨格301との結合エネルギーは、Si骨格301中のシロキサン結合302の結合エネルギーよりも小さい。このため、接合膜3は、エネルギーの付与により、Si骨格301が破壊されるのを防止しつつ、脱離基303とSi骨格301との結合を選択的に切断し、脱離基303を脱離させることができる。
また、このような接合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合体10の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間での接合が可能となる。
また、製造後の接合膜転写シート1aを流通させる場合には、接合膜3が固体状であるため、流通または保管途中で接合膜3が流れ出す等の不具合が防止される。
なお、接合膜3においては、特に接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上90原子%以下程度であるのが好ましく、20原子%以上80原子%以下程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、転写体5aおよび被着体6に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上7:3以下程度であるのが好ましく、4:6以上6:4以下程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、転写体5aおよび被着体6に対してより強固に接合することができるようになる。
また、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなり、より非晶質的な特性を示す。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
なお、Si骨格301の結晶化度は、一般的な結晶化度測定方法により測定することができ、具体的には、結晶部分における散乱X線の強度に基づいて測定する方法(X線法)、赤外線吸収の結晶化バンドの強度から求める方法(赤外線法)、核磁気共鳴吸収の微分曲線の下の面積に基づいて求める方法(核磁気共鳴吸収法)、結晶部分には化学試薬が浸透し難いことを利用した化学的方法等により測定することができる。
このうち、簡便性等の観点からX線法が好ましく用いられる。
また、Si骨格301の結晶化度を測定する際には、接合膜3に対して上述の測定方法を適用すればよいが、あらかじめ接合膜3に前処理を施しておくのが好ましい。この前処理としては、後述する接合膜3にエネルギーを付与する処理(例えば、紫外線照射処理等)が挙げられる。エネルギーの付与により、接合膜3中の脱離基が脱離し、Si骨格301の結晶化度をより正確に測定することが可能になる。
また、接合膜3は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
一方、接合膜3中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001以上0.2以下程度であるのが好ましく、0.002以上0.05以下程度であるのがより好ましく、0.005以上0.02以下程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜3中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜3は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
なお、プラズマ重合法による成膜の際には、原料ガスの成分が重合して、シロキサン結合を含むSi骨格301と、それに結合した残基とを生成するが、例えばこの残基が脱離基303となり得る。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特に有機基であるのが好ましく、アルキル基であるのがより好ましい。有機基およびアルキル基は化学的な安定性が高いため、有機基およびアルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
ここで、脱離基303が特にメチル基(−CH)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。
すなわち、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05以上0.45以下程度であるのが好ましく、0.1以上0.4以下程度であるのがより好ましく、0.2以上0.3以下程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合が前記範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜3中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜3に十分な接着性が生じる。また、接合膜3には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合とそれに結合した脱離基303となり得る有機基とを含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、基材2aに対して特に強固に被着するとともに、転写体5aおよび被着体6に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、基材2aと転写体5aまたは被着体6とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれた有機基(例えばアルキル基)による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、エネルギーを付与されることにより、上面(表面)31に接着性が発現するとともに、上面(表面)31以外の部分においては、前述した有機基による作用・効果が得られるという利点も有する。したがって、このような接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような光学素子や液滴吐出ヘッドの組み立てに際して、有効に用いられるものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
このような接合膜3の平均厚さは、1nm以上1000nm以下程度であるのが好ましく、2nm以上800nm以下程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合体10の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、基材2aと転写体5aまたは被着体6とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体10の寸法精度が低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が保たれる。このため、例えば、基材2aの接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接合膜転写シート1aと転写体5aとを貼り合わせた際に、両者の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上、接合膜3について詳述したが、このような接合膜3は、プラズマ重合法により基材2a上に作製されたものである。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく作製することができる。これにより、接合膜3は、転写体5aまたは被着体6に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合体10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
以上のような接合膜3は、以下のようにしてプラズマ重合法を用いて基材2a上に成膜(形成)される。
まず、プラズマ重合法を用いた接合膜3の作製方法を説明するのに先立って、プラズマ重合法により接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図4は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図4に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基材2aを支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図4に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は板状をなしており、基材2aを支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図4に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130の基材2aを支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図4に示すように、基材2aを鉛直方向に沿って支持することができる。また、基材2aに多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基材2aをプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、基材2aを介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図4に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基材2aの表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基材2aの汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、上記のプラズマ重合装置100を用いて、基材2a上に接合膜3を作製する方法について説明する。
図5は、基材2a上に接合膜3を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を基材2a上に堆積させることにより得ることができる。以下、かかる方法について詳細に説明する。
まず、用意した基材2aをプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図5(a)参照)。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20%以上70%以下程度に設定するのが好ましく、30%以上60%以下程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1ccm以上100ccm以下程度に設定するのが好ましく、10ccm以上60ccm以下程度に設定するのがより好ましい。
次に、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図5(b)に示すように、重合物が基材2a上に付着・堆積する。これにより、プラズマ重合膜からなる接合膜3が基材2aに形成される(図5(c)参照)。
また、プラズマの作用により、基材2aの表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物が基材2aの表面に堆積し易くなり、接合膜3の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合法によれば、基材2aの構成材料によらず、基材2a上に接合膜3を確実に成膜することができる。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz以上100MHz以下程度であるのが好ましく、10MHz以上60MHz以下程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01W/cm以上100W/cm以下程度であるのが好ましく、0.1W/cm以上50W/cm以下程度であるのがより好ましく、0.5W/cm以上40W/cm以下程度であるのがさらに好ましい。高周波の出力密度を前記範囲内とすることにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格301を確実に形成することができる。すなわち、高周波の出力密度が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、接合膜3を形成することができないおそれがある。一方、高周波の出力密度が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜3において脱離基303の含有率が低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下する(規則性が高くなる)おそれがある。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5Pa以上1333Pa以下(1×10−5Torr以上10Torr以下)程度であるのが好ましく、133.3×10−4Pa以上133.3Pa以下(1×10−4Torr以上1Torr以下)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5sccm以上200sccm以下程度であるのが好ましく、1sccm以上100sccm以下程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5sccm以上750sccm以下程度であるのが好ましく、10sccm以上500sccm以下程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1分以上10分以下程度であるのが好ましく、2分以上7分以下程度であるのがより好ましい。
また、基材2aの温度は、25℃以上であるのが好ましく、25℃以上100℃以下程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、基材2a上に接合膜3が形成される。
なお、接合膜3は、その厚さにもよるが比較的高い透光性を有したものとなる。そして、接合膜3の形成条件(プラズマ重合の際の条件や原料ガスの組成等)を適宜設定することにより、接合膜3の屈折率を調整することができる。具体的には、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を高めることにより、接合膜3の屈折率を高めることができ、反対に、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を低くすることにより、接合膜3の屈折率を低くすることができる。
具体的には、シラン系ガスを原料とするプラズマ重合法によれば、屈折率の範囲が1.35以上1.6以下程度の接合膜3が得られる。このような接合膜3は、その屈折率が、水晶や石英ガラスの屈折率に近いため、例えば接合膜3を光路が貫通するような構造の光学部品を製造する際に好適に用いられる。また、接合膜3の屈折率を調整することができるので、所望の屈折率の接合膜3を作製することができる。
また、接合膜3は、水晶や石英ガラスの熱膨張率に近いため、接合膜3と光学部品との熱膨張率差が小さくなり、後述する接合体10の接合後の変形を抑制することができる。
以上のような接合膜転写シート1aは、必要に応じて、接合膜3の上面を覆うように設けられたカバーシートを有していてもよい。かかるカバーシートは、接合膜3の上面を保護し、異物の付着や接合膜3の損傷等を防止する。これにより、接合膜転写シート1aは、耐久性に優れたものとなり、長期の保存や流通に適したものとなる。
このカバーシートは、接合膜転写シート1aを使用する前に剥離される。この際、接合膜3とカバーシートとの界面で確実に剥離が生じる必要があることから、この界面の密着強度は、基材2aと接合膜3との密着強度より小さいことが好ましい。
かかる観点から、カバーシートは、その表面エネルギーが、基材2aの表面エネルギーより小さいものであるのが好ましい。これにより基材2aは、接合膜3に対して相対的に高い密着性を示し、接合膜3と比較的強く密着する一方、カバーシートは、接合膜3に対して相対的に低い密着性を示すこととなる。その結果、仮に接合膜転写シート1aに意図せずエネルギーが付与されたとしても、カバーシートと接合膜3との間が接合してしまうのを防止し、接合膜3との界面で確実に剥離可能なカバーシートが得られる。
具体的には、カバーシートの表面エネルギーは、基材2aの表面エネルギーの0.3倍以上0.95倍以下程度であるのが好ましく、0.4倍以上0.9倍以下程度であるのがより好ましい。
カバーシートの構成材料としては、前述した基材2aと同様の構成材料が挙げられる。
また、接合膜転写シート1aは、ロール状に巻き取られた状態で保管または流通することもあるため、カバーシートには基材2aと同様、可撓性を有するものが好ましく用いられる。
(接合方法)
次いで、上述したような接合膜転写シート1aを用いた本発明の接合方法について説明する。
図6および図7は、本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6および図7中の上側を「上」、下側を「下」という。
本発明の接合方法は、上述した接合膜転写シート1aを用意し、この接合膜転写シート1aの接合膜3の表面にエネルギーを付与することにより接着性を発現させる第1の工程と、接合膜3の一部を転写させる転写体5aを用意し、接合膜3と転写体5aとが密着するように、接合膜転写シート1aと転写体5aとを貼り合わせることにより仮接合体7を得る第2の工程と、仮接合体7から基材2aを剥離することにより、転写体5aに接合膜3の一部を転写させて、所定形状にパターニングされた接合膜33が基材2aに残存した接合膜転写シート1aを得る第3の工程と、接合膜転写シート1aの接合膜33の表面にエネルギーを付与することにより接着性を再び発現させる第4の工程と、被着体6を用意し、接合膜33と被着体6とが密着するように、接合膜転写シート1aと被着体6とを貼り合わせることにより、基材2aと被着体6とが接合膜33を介して接合された接合体10を得る第5の工程とを有する。
第3の工程では、接合膜3において発現した接着性を利用して接合膜3が転写体5aに転写される。この転写は、接合膜3と転写体5aとを接合した後、接合膜3と基材2aとの界面を剥離させることにより行われる。これにより、接合膜3の一部が転写体5aへ移動するため、所定形状にパターニングされた接合膜33が基材2aに残存することとなる。接合膜33が残存した接合膜転写シート1aは、第4の工程において接合膜33の上面にエネルギーを付与することにより、接着性が再び発現し、被着体6に対して接合可能になる。これにより、所定形状にパターニングされた接合膜33を介して基材2aと被着体6とを接合してなる接合体10が得られる。
このようにして得られた接合体10は、低温下であっても、基材2aと被着体6とを高い寸法精度で強固に接合したものとなる。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、上述したような接合膜転写シート1aを用意する(図6(a)参照)。
次いで、接合膜転写シート1aの接合膜3の上面31にエネルギーを付与する。これにより、接合膜3の上面31に接着性を発現させる(第1の工程)。
接合膜3の上面31にエネルギーを付与する方法としては、上面31を活性化し得る方法であれば、いかなる方法であってもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これらの中でも、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、本実施形態では、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、または、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いるのが好ましい。これらの内、エネルギー線を照射する方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができることから、また、プラズマに曝す方法は、接合膜3の表面付近を選択的に活性化させることができ、接合膜3の収縮がないか極めて少ないため、エネルギー付与方法として好適に用いられる。
これらのうち、エネルギー線を照射する方法を用いる場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150nm以上、300nm以下の紫外線を用いるのが好ましい。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3の上面31に接着性を発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の上面31付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基材2aの変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜3と転写体5aとの間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の上面31および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
また、エネルギーを付与する方法として、プラズマに曝す方法を用いる場合、接合膜3に対するプラズマの接触は、例えば、前述したプラズマ重合装置100を用いて行うことができる。かかる装置を用いれば、接合膜3の形成と、接合膜3へのエネルギー付与とを同一の装置内で行うことができるので、接合体10を得るための時間の短縮化を図ることができる。
プラズマに曝すことによるエネルギー付与は、ガス供給部190からチャンバー101内に供給するガスの種類を、原料ガスとキャリアガスの混合ガスに代えて、処理ガスを用いることにより行うことができる。
この処理ガスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガスのような希ガス、酸素ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、処理ガスには、希ガスを主成分とするガスを用いるのが好ましく、特にヘリウムガスを主成分とするガスを用いるのが好ましい。
すなわち、処理に用いるプラズマは、ヘリウムガスを主成分とするガスをプラズマ化したものであるのが好ましい。ヘリウムガスを主成分とする処理ガスは、プラズマ化の際にオゾンを発生させ難く、このため、接合膜3の上面31のオゾンによる変質(酸化)を防止することができる。その結果、接合膜3の活性化の程度が低下するのを抑制すること、すなわち、接合膜3を確実に活性化させることができる。
この場合、アルゴンガスを主成分とする処理ガスのガス供給部190からチャンバー101への供給速度は、1000以上、20000sccm以下であるのが好ましく、5000以上、15000sccm以下であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の活性化の程度を制御し易くなる。
また、この処理ガス中のヘリウムガスの含有量は、85vol%以上が好ましく、90vol%以上(100%も含む)がより好ましい。これにより、前述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図2に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜3にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図3に示すように、接合膜3の上面31に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
ここで、接合膜3を「活性化させる」とは、接合膜3の上面31および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、転写体5aに対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
また、後述するように、本発明では、接合膜3にエネルギーを付与する際の雰囲気の温度よりも高温で、後工程[4]において、仮接合体7を加熱する。すなわち、本工程[1]において、接合膜3にエネルギーを付与する際に、その雰囲気の温度を、後工程[4]において、仮接合体7を加熱する温度より低く設定する。
具体的には、接合膜3にエネルギーを付与する際の雰囲気の温度は、25℃以上、80℃未満であるのが好ましく、40℃以上、60℃以下であるのがより好ましい。
接合膜3にエネルギーを付与する際の雰囲気の温度をかかる範囲に設定することにより、接合膜3の上面31に活性化させることにより生じた活性手304が、膜中に存在するもの同士で結合し、失活化してしまうことに起因して、接合膜3の表面に発現した接着性が消失するのを的確に防止または抑制することができる。
なお、従来のシリコン直接接合やオプティカルコンタクトのような固体接合では、表面を活性化させても、その活性状態は、大気中では数秒以上数十秒以下程度の極めて短時間しか維持されない。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの部材を貼り合わせる等の作業を行う時間を十分に確保することができないという問題があった。
これに対し、本発明によれば、プラズマ重合膜の作用により、エネルギーを付与した後でも比較的長時間にわたってその活性状態を維持することができる。このため、作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を図ることができる。
[2]次に、接合膜3のうち、所定の領域を選択的に後述する転写体5aに転写するに際し、例えば、図6(b)に示すような、転写領域34に位置する接合膜3を選択的に転写体5aに転写し、非転写領域32に位置する接合膜3を選択的に接合膜転写シート1aに残存させる場合には、非転写領域32に対応する位置に凹部51を有する転写体5aを用意する。
そして、非転写領域32に位置する接合膜3に凹部51が対応するように、接合膜転写シート1aの接合膜3側の面に転写体5aを重ね合わせることにより、積層体を得る。
なお、この積層体では、接合膜3と転写体5aとは、互いに接触しているだけで、これら同士の間では実質的に化学的な結合は形成されておらず、転写体5aから接合膜3すなわち接合膜転写シート1aを剥離し得る状態となっている。
また、本工程で用意する転写体5aとしては、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、具体的には、前述した基材2aの構成材料と同様の材料が挙げられ、転写体5aの構成材料は、基材2aと異なっていても同じでもよい。
さらに、転写体5aの形状は、接合膜3が密着する面を有する形状であれば、特に限定されず、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
[3]次に、この積層体が有する接合膜3と転写体5aとが密着するように、接合膜転写シート1aと転写体5aとを貼り合わせる(第2の工程)。
すなわち、本実施形態では、この積層体の厚さ方向(接合膜転写シート1aと転写体5aとが近づく方向)に積層体を圧縮する。
このとき、凹部51が形成されていない領域、すなわち非転写領域32以外の領域である転写領域34に位置する接合膜3が転写体5aと選択的に接触していることから、積層体の厚さ方向に圧縮すると、転写領域34に位置する接合膜3が選択的に転写体5aに対して圧縮されることとなる。そのため、積層体をその厚さ方向に圧縮すると、積層体における転写領域34において、接合膜3を介して基材2aと転写体5aとが部分的に接合された(貼り合わされた)仮接合体7が得られる(図6(c)参照)。
また、仮接合体7に付与する圧縮力は、0.2MPa以上100MPa以下程度であるのが好ましく、1MPa以上50MPa以下程度であるのがより好ましい。これにより、転写領域34において、接合膜3と転写体5aとを確実に接合することができる。なお、この圧縮力が前記上限値を上回っても構わないが、基材2aや転写体5aの各構成材料によっては、これらの損傷等が生じるおそれがある。
さらに、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、1秒以上30分以下程度であるのが好ましい。
ここで、転写体5aのうち、接合膜3と接触する面には、水酸基(OH基)が結合している状態になっているのが好ましい。転写体5aの表面がこのような状態になっていると、転写体5aと接合膜3との接合強度が向上することとなり、接合膜転写シート1aと転写体5aとをより強固に接合することができる。なお、かかる効果は、以下のような現象によるものと推察される。
本工程[3]において、接合膜3と転写体5aとを前記厚さ方向に圧縮させたときに、転写体5aの表面に存在する水酸基と、接合膜3の活性化させた表面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、接合膜3と転写体5aとの接触界面では、脱離したOH基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、接合膜3と転写体5aとが化学的に強固に接合される。
なお、転写体5aのうち、接合膜3を密着させるべき領域の表面に水酸基が結合している状態を形成するためには、例えば、転写体5aに酸素プラズマ等のプラズマ処理を施す方法、エッチング処理を施す方法、電子線を照射する方法、紫外光を照射する方法、オゾンに曝す方法、またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。このような方法を用いることにより、転写体5aの表面を清浄化するとともに、表面付近の結合の一部を切断して、表面を活性化することができる。このような状態の表面には、周囲の水分が接触することにより、水酸基(OH基)が自然に結合する。このようにして、水酸基が結合している状態を形成することができる。
したがって、転写体5aを、接合膜3を密着させるべき領域の表面に水酸基が結合している状態とする場合には、前記工程[2]で積層体を得るのに先立って、転写体5aに対して、上記のプラズマ処理を施す方法等により転写体5aの表面を活性化させるようにすればよい。
また、転写体5aの構成材料によっては、上記のような処理を施さなくても、表面に水酸基が結合しているものもある。かかる構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムのような各種金属材料、シリコン、石英ガラスのようなシリコン系材料、アルミナのような酸化物系セラミックス材料(無機系材料)等が挙げられる。なお、転写体5aは、その全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
このような材料で構成された転写体5aは、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された転写体5aを用いると、水酸基を露出させる処理を施さなくても、接合膜転写シート1aと転写体5aとを転写領域34において強固に接合することができる。
また、転写体5aの表面および内部には、終端化されていない活性な結合手(ダングリングボンド)が含まれていてもよい。さらに、水酸基とダングリングボンドとが混在した状態であってもよい。転写体5aの表面および内部にダングリングボンドが含まれていると、接合膜3の表面に露出したダングリングボンドとの間で、ネットワーク状に構築された共有結合に由来するより強固な接合がなされる。その結果、接合膜転写シート1aと転写体5aとを転写領域34においてより強固に接合することができる。
[4]次に、転写領域34において接合膜3と転写体5aとが部分的に接合された仮接合体7を加熱することにより、かかる転写領域34に位置する接合膜3の接合強度を向上させる。
ここで、加熱される前の転写領域34に位置する接合膜3は、図3に示すように、接合膜3の上面31に活性手304が生じた状態となっている。このような状態で、接合膜転写シート1aと転写体5aとを厚さ方向に圧縮すると、前述したように、例えば、かかる転写領域34において、接合膜3と転写体5aの表面とに存在する水酸基が、水素結合によって互いに引き合うこととなるが、本工程[4]のように、仮接合体7を加熱する構成とすることにより、接合膜3および転写体5a中における分子の運動エネルギーが向上するため、水酸基同士が互いに接触する接触機会が増大することから、これら接合膜3と転写体5aとの間においてより多くの水素結合を生じさせることができる。さらに、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士を、より早期に脱水縮合させることができるため、仮接合体7の加熱により、転写領域34における接合膜3と転写体5aとの接合強度を短時間により向上させることができるものと推察される。
なお、非転写領域32に位置する接合膜3は、転写体5aと接触していないため、上述した水素結合や脱水縮合反応が接合膜3中において進行するため、本工程[4]により、その上面31で発現している接着性が失活(消失)することとなる。
転写領域34において接合膜3と転写体5aとが部分的に接合された仮接合体7を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、前記仮接合体7の雰囲気を加熱する方法、および、前記仮接合体7に伝熱板を接触させた状態で、この伝熱板を加熱する方法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、後者の方法を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、伝熱板を、伝熱ヒーター等を用いて加熱するという比較的簡単な操作で、伝熱板および基材2aを介して加熱エネルギーを伝達させて、接合膜3を確実に加熱することができる。
このとき、仮接合体7を加熱する際の温度は、前記工程[1]における接合膜3にエネルギーを付与する際の雰囲気の温度よりも高温に設定するのが好ましい。これにより、活性化された活性手304を消失させて、上述したような脱水縮合反応を短時間で進行させることができるため、仮接合体7の転写領域34において、接合膜3は、優れた接合強度を発揮するものとなる。
具体的には、仮接合体7を加熱する温度は、60℃以上、200℃以下であるのが好ましく、80℃以上、150℃以下であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1分以上、30分以下であるのが好ましく、5分以上、15分以下であるのがより好ましい。
接合膜3を加熱する際の条件をかかる範囲内に設定することにより、仮接合体7の転写領域34において、接合膜3の接合強度を確実に向上させることができる。
このような仮接合体7では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、転写領域34において、接合膜転写シート1aと転写体5aとが接合されている。このため、仮接合体7の転写領域34では、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合膜転写シート1aを用いて仮接合体7を得る方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された転写体5aや後述する被着体6をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して基材2aと転写体5aとを接合しているため、転写体5aの構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明の接合方法によれば、転写体5aの各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
さらに、接合膜転写シート1aの非転写領域32に対応する形状の凹部51を有する転写体5aを用意し、このものを接合膜転写シート1aに接合させるという比較的簡単な操作で、転写領域34に位置する接合膜3を位置選択的に転写体5aに接合させることができるようになる。
また、仮接合体7を加熱する構成とすることにより、転写領域34における接合膜3の接合強度を短時間により確実に向上させることができる。
以上のようにして、転写領域34において接合膜3と転写体5aとが選択的に接合された仮接合体7を得ることができる。
このような仮接合体7では、転写領域34において、接合膜転写シート1aと転写体5aとの接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する仮接合体7は、後述する工程において、接合膜転写シート1aから基材2aを剥離した際に、接合膜3と転写体5aとの界面で剥離が生じるのが的確に抑制または防止されたものとなる。
なお、積層体の転写体5aを用いた圧縮は、各種ラミネート装置、各種プレス装置を用いて容易に行うことができる。
また、本実施形態では、本工程[4]における仮接合体7の加熱は、前工程[3]における積層体の厚さ方向への圧縮の後に行うこと、すなわちこれら工程を別工程としたが、かかる場合に限らず、これら工程をほぼ同一に実施するようにしてもよい。すなわち、前工程[3]において、積層体をその厚さ方向へ圧縮しつつ、この積層体を加熱するようにしてもよい。
[5]次に、図6(d)に示すように、仮接合体7から基材2aを剥離する(第3の工程)。
この剥離は、基材2aの上面と接合膜3との界面を広げるように、基材2aを仮接合体7から引き剥がすことにより行われる。
このとき、転写領域34に位置する接合膜3が転写体5aに対して接合し、非転写領域32に位置する接合膜3が転写体5aに対して接合していないため、接合膜3のうち、転写領域34に位置する部分が転写体5aに転写され、非転写領域32に位置する部分(接合膜33)は、転写されることなく基材2aとともに引き剥がされる。
これにより、接合膜転写シート1aは、接合膜3の一部が基材2aに残存しているものとなる。すなわち、接合膜転写シート1aを、所定形状にパターニングされた接合膜33が基材2aに残存したものとなる(図7(a)参照)。
以上のようにして接合膜転写シート1aを用いることにより、転写体5aが備える凹部51の形状を適宜選択することのみで、接合膜3を効率よく簡単に、所定形状を有する接合膜33にパターニングすることができる。
[6]次に、接合膜転写シート1aに残存する接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与する(第4の工程)。
これにより、接合膜33の上面に再度、接着性が発現する。
接合膜33の上面にエネルギーを付与する方法としては、前記工程[1]で説明した接合膜3にエネルギーを付与する方法と同様のものが挙げられる。
[7]次に、接合膜転写シート1aに接合すべき被着体6を用意する。そして、図7(b)に示すように、接合膜33と被着体6とが接触するように、接合膜転写シート1aと被着体6とを重ね合わせ、その後、これらを厚さ方向(接合膜転写シート1aと被着体6とが近づく方向)に圧縮する(第5の工程)。
これにより、被着体6の上面と接合膜33の上面との距離が接近するため、接合膜33に発現した接着性により、被着体6と接合膜33とが接合される。その結果、接合膜33を介して基材2aと被着体6とが接合された接合体10が得られる(図7(c)参照)。
また、本工程で用意する被着体6としても、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、具体的には、前述した基材2aの構成材料と同様の材料が挙げられ、被着体6の構成材料は、転写体5aおよび基材2aと異なっていても同じでもよい。
さらに、被着体6の形状は、接合膜3が密着する面を有する形状であれば、特に限定されず、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
接合膜転写シート1aと被着体6とを圧縮する際に付与する圧縮力は、前記工程[3]において、仮接合体7に圧縮力を付与した際の圧縮力と同様とされる。
[8]次に、接合体10を加熱する。
これにより、接合膜33の接合強度をより向上させることができる。
本工程[8]において、接合体10を加熱する方法および加熱する際の条件等は、前記工程[4]において、前記仮接合体7を加熱する際に説明したのと同様とされる。
以上のような工程を経て接合体10を得ることができる。
上述したような本発明の接合方法によれば、接着性が発現した接合膜3において、転写体5aに接合させる領域を適宜設定することにより転写させる領域を自在に制御することができるため、所定形状にパターニングされた接合膜33を容易に形成することができる。さらに、上述したように、凹部51の形状に応じて接合膜3をパターニングすることができるため、従来のパターニング方法に比べて、より微細なパターンの接合膜33を得ることができる。具体的には、隙間を介して隣接するライン状の接合膜33を形成する場合、その隙間の幅を1μm以下の微小なものとすることができる。
また、このような効果は、接着剤や固体接合といった従来の接合方法では得られないものであり、接合プロセスの効率化の観点から極めて有用である。すなわち、接合膜33を形成する領域を選択することにより、接合強度の容易な調整が可能になるため、接合膜33の形状や面積を最適化することで、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、基材2aと被着体6との間に生じる熱膨張差を緩和することができる。
また、接合膜転写シート1aは、取扱いが容易で流通や保存にも適したシート状の形態をとり、単に物理的あるいは化学的なエネルギーを付与するのみで、強固な接着性を自在に発現し得る。このため、接合膜転写シート1aは、各種製品の量産プロセスに対して優れた親和性を有するものとなる。
具体的には、プラズマ重合法により形成される接合膜は、従来、接合に供される部材の表面に直接成膜される必要があったため、成膜装置が設定されている場所に部材を用意する必要があった。これは、成膜装置が大型で重量も大きく、容易に移動することは不可能であるためである。ところが、このように成膜装置と部材とが不可分であるという地理的制約があると、部材の動線が限定されてしまうこととなり、製品の製造プロセスの自由度が低下するという問題があった。
これに対し、本発明によれば、接合膜を形成するプロセスと、部材を接合するプロセスとを、異なる場所で行うことができる。このため、接合膜転写シート1aを大量に製造しておけば、この接合膜転写シート1aを所望の場所に運搬し、所望の場所で部材の接合を行うことができる。その結果、製品の製造プロセスの自由度が飛躍的に増大し、量産効率を高めることができる。
また、接合膜33は、接合強度、耐薬品性および寸法精度に優れていることから、得られた接合体10も、接合強度、耐薬品性および寸法精度に優れたものとなる。
特に、接合体10は、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、アンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のように短時間で起こる強固な化学的結合に基づいて接合している。このため、接合体10は、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、本発明の接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(700℃以上800℃以下程度)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基材をも、接合に供することができる。これにより、基材の構成材料の選択の幅を広げることができる。
また、本発明によれば、前記工程[1]で接合膜3にエネルギーを付与した際にも、この接合膜3の上面近傍では脱離基が脱離し難いため、成膜直後の状態が維持され易く、接着性を十分に潜在させ得るという利点もある。よって、この上面にエネルギーを付与することにより、上面は被着体6に対して強固に接合されることとなる。このように接合膜転写シート1aを用いれば、気相成膜法で成膜され、接着性の発現を自在に制御し得る接合膜3を、両面テープが如く取り扱うことができるので、基材2aと被着体6とを簡単にかつ強固に接合することができる。
また、得られた接合体10における接合界面は、いずれも気密性および液密性に優れたものとなる。これは、接合膜33がそれ自体高密度で通気性の低いものであり、また接合メカニズムも前述したような化学結合に基づくものであるため、小さな分子の通過も制限するためである。したがって、閉空間ができるように接合領域を設定して接合体10を製造した場合、得られた閉空間(例えば図7(c)の閉空間35)の気密性は、ヘリウムガスを用いたリーク量(リークレート)で、1×10−9Pa・m/sec以下となることが期待できる。このようなリーク量であれば、長期にわたって閉空間の気密性を維持することができるので、閉空間を減圧状態で維持したり、所定のガスで置換したりする場合に、本発明は有効に用いられる。
(接合装置)
ところで、上述したような本発明の接合方法は、例えば、以下のような接合装置を用いて行うことができる。
図8、9は、それぞれ本発明の接合方法において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。なお、以下の説明では、図8、9中の上側を「上」、下側を「下」という。
図8に示す接合装置500は、平板状のステージ501と、ステージ501の両端にそれぞれ設けられたローラー502およびローラー503とを有している。
また、ステージ501の左側上方には、接合膜転写シート1aをロール状に巻き取ったシートロール510が回転自在に設けられている。シートロール510からは、接合膜転写シート1aが順次繰り出されるようになっており、繰り出された接合膜転写シート1aは、ステージ501上の左端から右端へと通過し、ステージ501の右側下方に設けられたガイドロール511で接合膜転写シート1aの進行方向を変更し得るよう構成されている。
また、シートロール510では、接合膜3が設けられた面が上方を向くように接合膜転写シート1aが巻き取られている。
また、シートロール510の右側、および、ガイドロール511の左側には、それぞれガイドロール512およびガイドロール513が設けられている。このうち、ガイドロール512は、ステージ501の左側上方から右側下方に向けて繰り出された接合膜転写シート1aの進行方向を、水平方向に変更する。一方、ガイドロール513は、ステージ501上を左側から右側へと進行する接合膜転写シート1aの進行方向を、ガイドロール511に向くように変更する。さらに、ガイドロール511は、ステージ501の左側上方から右側下方に向けて繰り出された接合膜転写シート1aの進行方向を、ステージ501の右側上方から左側下方に向くように変更する。
以上のようなシートロール510、ガイドロール511、ガイドロール512およびガイドロール513により、ステージ501の上面に沿って接合膜転写シート1aを左側から右側へと搬送されるようになっている。
また、ガイドロール512とガイドロール513との間には、左側からプラズマ処理機構520、転写体供給機構530、圧縮機構540、および剥離機構550が順次設けられている。
プラズマ処理機構520は、ステージ501の上方に設けられ、接合膜転写シート1aの接合膜3に向けてプラズマPを供給し得る機構である。かかる機構としては、ダイレクトプラズマ方式、リモートプラズマ方式、ダウンフロープラズマ方式等の各種大気圧プラズマ装置が挙げられる。このようなプラズマ処理機構520とステージ501との間を接合膜転写シート1aが通過すると、通過の際に接合膜3にエネルギーが付与され、接着性が発現する。
プラズマ処理機構520を通過した接合膜転写シート1aは、その右側に設けられた転写体供給機構530に搬送される。転写体供給機構530は、転写体5aを把持し、上方から接合膜転写シート1a上に載置するマニピュレーター(図示せず)等を有している。かかるマニピュレーターを用いて、接合膜転写シート1a上に転写体5aが載置される。なお、転写体5aのステージ501側の面には残存すべき接合膜33の形状に対応した凹部51が設けられている。
接合膜転写シート1aに載置された転写体5aは、接合膜転写シート1aの移動とともに、その右側に設けられた圧縮機構540に搬送される。
圧縮機構540は、ステージ501を挟んで上下それぞれに設けられた圧縮ローラー541および圧縮ローラー542を有している。これら2つの圧縮ローラー541、542の間には、ステージ501および接合膜転写シート1aが位置しており、2つの圧縮ローラー541、542の離間距離は、転写体5aを接合膜転写シート1aに圧縮可能な距離に調整されている。かかる圧縮機構540により、転写体5aと接合膜転写シート1aとが、凹部51の形状に対応した領域すなわち転写領域34において選択的に接合された仮接合体7が得られる。
なお、かかる接合装置500では、圧縮ローラー541、542に接続する図示しない加熱機構が設けられており、この加熱機構により圧縮ローラー541、542が加熱される。そのため、圧縮ローラー541、542により転写体5aを接合膜転写シート1aに対して圧縮する際に、転写体5aおよび接合膜転写シート1aが加熱されることとなる。すなわち、接合装置500では、転写体5aと接合膜転写シート1aとの厚さ方向の圧縮と加熱とが同一の工程内で実施される。これにより、得られる仮接合体7の接合強度をより強固なものとすることができる。
次に、仮接合体7は、接合膜転写シート1aの移動とともに、その右側に設けられた剥離機構550に搬送される。剥離機構550は、接合膜転写シート1aの進行方向を下方に変更するガイドロール513を有している。この剥離機構550により、仮接合体7から基材2aが強制的に剥離されることとなる。その結果、転写領域34に位置する一部の接合膜3が転写体5aに転写され、非転写領域32に位置する接合膜3が基材2aに残存し、これにより、所定形状にパターニングされた接合膜33を有する接合膜転写シート1aがガイドロール511に搬送される。そして、接合膜転写シート1aは、ガイドロール511により、その進行方向が、ステージ501の右側上方から左側下方に向くように変更されたのち、切断機構により、パターニングされた接合膜33の位置に応じて切断される。
切断された接合膜転写シート1aは、図示しない把持部により把持され、図9に示す接合装置600において、被着体6との接合工程に供される。
図9に示す接合装置600は、左側から順次設けられたプラズマ処理機構610、被着体供給機構620、および圧縮機構630を有している。
プラズマ処理機構610は、上面に接合膜転写シート1aを載置し得る基台611と、接合膜転写シート1aにプラズマ処理を施すプラズマ源612とを有している。プラズマ源612からプラズマPが発生すると、接合膜転写シート1aの接合膜33に対してプラズマ処理が施される。これにより接合膜33にエネルギーが付与され、接着性が発現する。
プラズマ処理が施された接合膜転写シート1aは、その右側に設けられた被着体供給機構620に搬送される。被着体供給機構620は、被着体6を把持し、上方から接合膜転写シート1aの接合膜33上に載置するマニピュレーター(図示せず)と、上面にマニピュレーターを載置可能な基台621とを有している。この基台621上において、被着体6は接合膜転写シート1a上に載置される。
被着体6を載置した状態の接合膜転写シート1aは、圧縮機構630に搬送される。圧縮機構630は、基台631と、基台631上に設けられ、被着体6を載置した状態の接合膜転写シート1aをその厚さ方向に圧縮する荷重発生器(図示せず)とを有している。圧縮機構630により、被着体6を載置した状態の接合膜転写シート1aに圧縮力が付与され、接合膜33に発現した接着性により接合膜33と接合膜転写シート1aとが接合される。その結果、接合膜33を介して転写体5aと被着体6とが接合され、接合体10が得られる。
なお、かかる接合装置600では、図示しない荷重発生器に接続する加熱機構が設けられており、この加熱機構により荷重発生器が加熱される。そのため、荷重発生器により被着体6を接合膜転写シート1aに対して圧縮する際に、被着体6および接合膜転写シート1aが加熱されることとなる。すなわち、接合装置600では、被着体6と接合膜転写シート1aとの厚さ方向の圧縮と加熱とが同一の工程内で実施される。これにより、得られる接合体10の接合強度をより強固なものとすることができる。
以上のような本発明の接合方法は、種々の部材同士を接合するのに用いられる。
具体的には、トランジスター、ダイオード、メモリーのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクター、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサー、加速度センサーのようなセンサー部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品、太陽電池用部品等の接合に際して、本発明の接合方法が適用可能である。
以上、本発明の接合方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法に用いる接合膜転写シートのうち、剥離層と接合膜との間以外の箇所には、任意の層が付加されていてもよい。
また、前記各実施形態では、基材の上面全体を覆うように接合膜を設けているが、接合膜は所定の形状にパターニングされていてもよい。
また、前記各実施形態では、接合膜転写シートの接合膜の一部を転写しているが、接合膜の全部を転写するようにしてもよい。
また、本発明の接合方法では、前記実施形態の構成に限定されず、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。
さらに、本発明の接合方法では、前記実施形態において、前記工程[4]および前記工程[8]を省略するようにしてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
(実施例1)
<1>まず、基材として、幅50mm×長さ100mm×平均厚さ100μmのポリプロピレンフィルムを用意した。なお、ポリプロピレンの表面エネルギーは29mN/mである。
また、OA10ガラスで構成された転写体として、縦20mm×横20mm×平均厚さ5mmの基板上に、横方向に伸びる幅5μm×長さ(横)20mm×高さ10μmの凹部を7mmの間隔で2つ設けられたものを用意した。
さらに、被着体として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのOA10ガラス基板を用意した。
なお、OA10ガラスの表面エネルギーは、300mN/mである。
<2>次に、図4に示すプラズマ重合装置100により、基材の一方の面上に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :30sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:30sccm
・高周波電力の出力 :250W
・高周波出力密度 :0.3W/cm
・チャンバー内圧力 :4Pa(低真空)
・チャンバー内温度 :60℃
・処理時間 :2分
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものである。
上記のように基材上にプラズマ重合膜を成膜して、基材およびプラズマ重合膜の2層からなる接合膜転写シートを得た。
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、Si骨格の結晶化度を測定するため、プラズマ重合膜の一部に波長405nmの紫外線を600秒間照射した後、X線回折法により結晶化度を測定した。その結果、プラズマ重合膜の結晶化度は30%以下であった。
<3>次に、得られた各プラズマ重合膜に、図4に示すプラズマ重合装置100を用いて、以下に示す条件でプラズマ処理を施した。これにより、プラズマ重合膜(接合膜)を活性化させて、その表面に活性手を生成させることにより接着性を発現させた。
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :酸素ガス
・ガス供給速度:20sccm
・高周波電力の出力 :50W
・高周波出力密度 :25W/cm
・チャンバー内圧力 :4Pa(低真空)
・チャンバー内温度 :60℃
・処理時間 :1分
<4>次に、プラズマ処理を施してから1分後に、接合膜転写シートが備えるプラズマ重合膜と転写体とが互いに接触するようにして、接合膜転写シートと転写体とを積層し積層体を得た。そして、この積層体を、プラズマ重合膜と転写体とが接近するようにその厚さ方向に、5MPaで圧縮した。これにより、基材と転写体とがプラズマ重合膜を介して接合された仮接合体を得た。
<5>次に、仮接合体から基材を引き剥がした。この際、積層体において、転写体が備える凹部に対応しない部分が、前記工程<4>で選択的にプラズマ重合膜と接触しているため、凹部に対応する領域では、プラズマ重合膜と転写体とは接合していない。そのため、本工程<5>において、仮接合体から基材を引き剥がすことにより、プラズマ重合膜の凹部に対応する部分が選択的に残存した接合膜転写シートを得ることができた。
<6>次に、接合膜転写シートに残存する凹部の形状に対応したプラズマ重合膜に対して、前記工程<3>で説明したのと同様のプラズマ処理を施した。
<7>次に、プラズマ処理を施してから1分後に、接合膜転写シートが備えるプラズマ重合膜と被着体とが接するように、接合膜転写シートと被着体とを重ね合わせ、その後、これらをその厚さ方向に5MPaで圧縮した。これにより、基材と被着体とが凹部の形状に対応したプラズマ重合膜を介して接合された接合体を得た。
(実施例2)
前記工程<2>に先立って、基材の一方の面上に剥離層を以下のようにして形成した以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
基材の表面にプラズマ処理を施した後、この処理面に、フッ素系シランカップリング剤(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)のエタノール溶液を塗布した。そして、塗布膜を室温下に5分間放置してエタノールを蒸発させた。これにより、平均厚さ5μmの剥離層を得た。
(実施例3)
前記工程<1>で用意する転写体として、凹部の形状が幅1μm×横20mm×高さ10μmのものを用意したこと以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
2.接合膜転写シートおよび接合体の評価
2.1 残存した接合膜の形状の評価
各実施例の接合体を得るのに先立って前記工程<5>において、接合膜転写シートに残存しているプラズマ重合膜について、それぞれ、その形状を、電子顕微鏡を用いて観察した。
その結果、各実施例に対応する接合膜転写シートでは、何れも、転写体が備える凹部の形状、すなわち幅および長さに対応して、プラズマ重合膜が基材に残存していることが判った。
2.2 接合強度の評価
各実施例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各接合体において基材と被着体とを強制的に引き剥がしたとき、剥がれる直前の引っ張り力を測定することにより行った。また、接合強度の測定は、接合直後と、接合後に−40℃から125℃の温度サイクルを50回繰り返した後のそれぞれにおいて行った。
その結果、各実施例で得られた接合体では、接合直後および温度サイクル後のいずれにおいても、十分な接合強度(10MPa以上)を有していた。
以上のことから、本発明の接合方法によれば、転写体が備える凹部の形状を適宜選択することのみで、プラズマ重合膜を効率よく簡単に、所定形状を有する接合膜にパターニング(転写)することができ、さらに、このプラズマ重合膜を用いて、第1の被着体と第2の被着体とを強固に接合し得ることが判った。
1a……接合膜転写シート 2a……基材 3、33……接合膜 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 31……上面 32……非転写領域 34……転写領域 35……閉空間 5a……転写体 51……凹部 6……被着体 7……仮接合体 10……接合体 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 500……接合装置 501……ステージ 502、503……ローラー 510……シートロール 511……ガイドロール 512、513……ガイドロール 520……プラズマ処理機構 530……転写体供給機構 540……圧縮機構 541、542……圧縮ローラー 550……剥離機構 600……接合装置 610……プラズマ処理機構 611……基台 612……プラズマ源 620……被着体供給機構 621……基台 630……圧縮機構 631……基台 P……プラズマ

Claims (19)

  1. 基材と被着体とを所定形状にパターニングされた接合膜を介して接合する接合方法であって、
    前記基材と、該基材の一方の面に設けられ、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含むプラズマ重合により形成された前記接合膜とを有する接合膜転写シートを用意し、該接合膜転写シートの前記接合膜の表面にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させて、前記接合膜の表面に接着性を発現させる第1の工程と、
    前記接合膜の一部を転写させる転写体を用意し、前記接合膜と前記転写体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記転写体とを貼り合わせることにより仮接合体を得る第2の工程と、
    前記仮接合体から前記基材を剥離することにより、前記転写体に前記接合膜の一部を転写させて、所定形状にパターニングされた前記接合膜が前記基材に残存した前記接合膜転写シートを得る第3の工程と、
    前記接合膜転写シートの所定形状にパターニングされた前記接合膜の表面にエネルギーを付与することにより、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、前記接合膜の表面に接着性を再び発現させる第4の工程と、
    前記被着体を用意し、前記接合膜と前記被着体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを貼り合わせることにより、前記基材と前記被着体とが所定形状にパターニングされた前記接合膜を介して接合された接合体を得る第5の工程とを有することを特徴とする接合方法。
  2. 前記転写体は、表面の一部に凹部を有しており、前記第2の工程において、前記接合膜転写シートと前記転写体とを貼り合わせる際に、前記凹部に対応する位置で前記接合膜と前記転写体とが接合しないことにより、前記第3の工程において、前記凹部の形状に対応した前記接合膜が選択的に前記基材に残存し、これにより前記第5の工程において、前記基材と前記被着体とが前記凹部の形状に対応した前記接合膜により部分的に接合される請求項1に記載の接合方法。
  3. 前記第2の工程において、前記接合膜転写シートと前記転写体との貼り合わせは、前記接合膜転写シートと前記転写体とが近づくように圧縮力を付与することにより行われる請求項1または2に記載の接合方法。
  4. 前記圧縮力は、0.2MPa以上100MPa以下である請求項3に記載の接合方法。
  5. 前記第2の工程の後に、前記仮接合体が有する前記接合膜を加熱する請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
  6. 前記接合膜を加熱する温度は、60℃以上、200℃以下である請求項5に記載の接合方法。
  7. 前記接合膜は、このものを構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上、90原子%以下のものである請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
  8. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上、7:3以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
  9. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
  10. 前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
  11. 前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上、0.2以下である請求項10に記載の接合方法。
  12. 前記脱離基は、アルキル基である請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
  13. 前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05以上、0.45以下である請求項12に記載の接合方法。
  14. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の接合方法。
  15. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項14に記載の接合方法。
  16. 前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01W/cm以上、100W/cm以下である請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
  17. 前記接合膜の平均厚さは、1nm以上、1000nm以下である請求項1ないし16のいずれかに記載の接合方法。
  18. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
  19. 前記基材は、可撓性を有するものである請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法。
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