JP5454346B2 - 接合膜転写シートおよび接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、接合膜転写シートおよび接合方法に関するものである。
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
例えば、従来のインクジェットプリンタが備える液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)では、樹脂材料、金属材料、シリコン系材料等の異種材料からなる部材同士が、接着剤を用いて接着されている(例えば、特許文献1参照)。
このように接着剤を用いて部材を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化させることで接着が完了する。
ところが、部材の接着面に接着剤を塗布する際には、印刷法等の煩雑な方法を用いる必要がある。例えば、接着面の一部の領域に対して選択的に接着剤を塗布する場合、塗布の位置精度や厚さを厳密に制御することは極めて困難である。このため、このように接着剤を用いた接着方法では、前述の液滴吐出ヘッドの部材同士を高い寸法精度で接着することは困難である。その結果、プリンターの印字精度を十分に高めることも困難であった。
また、接着剤の硬化時間が非常に長くなるため、接着に長時間を要するととともに、硬化中に部材同士の位置がずれてしまったり、硬化中の加熱により熱膨張率差のある部材同士の接着界面に熱応力が残留し、液滴吐出ヘッドの変形、損傷を招くおそれがある。
さらに、部材の構成材料によっては、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程を複雑化している。
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
しかしながら、接合可能な構成材料に制約があるため、部材が限定されるという問題がある。一般に、接合可能な材料は、シリコン系材料や一部の金属材料に限られており、しかも、同種材料同士の接合しかできない。
また、固体接合を行う雰囲気が減圧雰囲気に限られる上、高温(700以上800℃以下程度)の熱処理を必要とするなど、接合プロセスにも制約がある。
さらに、固体接合では、2つの部材の各接合面のうち、互いに接触している面全体が接合するため、一部を選択的に接合することは困難である。このため、仮に異種材料からなる部材同士を接合することができたとしても、熱膨張率差に伴って接合界面に大きな応力が発生し、接合体の反りや剥離等の問題を引き起こすおそれがある。
このような問題を受け、2つの部材同士を、接合面の一部の領域において選択的に、高い寸法精度で強固に接合する方法が求められている。
そこで、特許文献2では、プラズマ重合により形成された接合膜を用いて部材同士を接合する方法が提案されている。
このような接合膜は、気相成膜法で成膜されているため、従来に比べて接合膜の位置精度や厚さを厳密に制御し易い。しかしながら、プラズマ重合により形成した接合膜をパターニングする際には、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて不要部分を除去する必要があり、製造工程の複雑化、高コスト化が懸念される。
また、特許文献2では、接合に供する部材の表面に接合膜を成膜する必要があるため、成膜装置と部材とは不可分であり、成膜装置がある場所に必ず部材を用意しなければならない。ところが、成膜装置は大型で重量も大きく、可搬性が著しく低いため、製品の製造プロセスでは、部材の動線に地理的制約を伴うことが懸念される。
特開2002−254660号公報 特開2008−307873号公報
本発明の目的は、部材表面に接合膜を簡単に転写することができるので、これにより接合膜を転写された部材と他の部材との簡単な接合を可能にする接合膜転写シート、およびかかる接合膜転写シートを用いて2つの部材同士を効率よく接合する接合方法を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜転写シートは、被着体に接合膜を転写するのに用いる接合膜転写シートであって、
基材と、
該基材の一方の面側に設けられた接合膜と、
前記基材と前記接合膜との間に設けられた剥離層とを有し、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含むものであり、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより前記接合膜に発現した接着性を利用して、前記被着体に接合し、前記剥離層との界面で剥離し得るものであることを特徴とする。
これにより、接合膜を転写された部材(第1の被着体)と他の部材(第2の被着体)との簡単な接合を可能にする接合膜転写シートが得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上90原子%以下であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜は、第1の被着体および第2の被着体に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上7:3以下であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の被着体と第2の被着体とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は特にランダムな原子構造を含むものとなる。そして、寸法精度および接着性に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、シロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の規則性が低下する。このようにして、接合膜中にSi−H結合が含まれることにより、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上0.2以下であることが好ましい。
これにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
これにより、耐候性および耐薬品性に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05以上0.45以下であることが好ましい。
これにより、メチル基の含有率が最適化され、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜に十分な接着性が生じる。また、接合膜には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られる。また、この接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような被着体の接合に際して、有効に用いられるものとなる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れた接合膜が得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜は、プラズマ重合により形成されたものであることが好ましい。
これにより、緻密で均質な接合膜を効率よく製造することができ、被着体に対して特に強固に接合可能な接合膜が得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記プラズマ重合において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01W/cm以上100W/cm以下であることが好ましい。
これにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格を確実に形成することができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜の平均厚さは、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。
これにより、第1の被着体と第2の被着体とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、接合膜転写シートを用いて得られた接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記基材は、可撓性を有するものであることが好ましい。
これにより、仮に第1の被着体の表面に凹凸があったとしても、接合膜転写シートをその凹凸形状に沿って変形させることができるので、接合膜転写シートを第1の被着体に積層する際に、積層界面の密着性を高めることができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記基材は、樹脂材料で構成されていることが好ましい。
これにより、基材は特に可撓性に優れたものとなるため、第1の被着体に対する密着性がより高い接合膜転写シートが得られる。特に小さな曲率半径で湾曲させた場合でも、破断するおそれが少なくなるため、剥離プロセスを容易かつ確実に行うことができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記基材は、表面の一部に凸部を有しており、前記接合膜は、前記表面を覆うように成膜されたものであることが好ましい。
これにより、可撓性を有する第1の被着体に対しても接合膜を転写することができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記剥離層は、その表面エネルギーが、前記被着体の表面エネルギーより小さいものであることが好ましい。
これにより、第1の被着体は、接合膜に対して相対的に高い密着性を示し、接合膜と強固に接合される一方、剥離層は接合膜に対して相対的に低い密着性を示すことになるから、接合膜は、第1の被着体に確実に転写されるものとなる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記剥離層の表面エネルギーは、5mN/m以上200mN/m以下であることが好ましい。
これにより、剥離層と接合膜との界面で意図しない剥離が生じるのを防止するとともに、適度な剥離力を加えることで、剥離層と接合膜との界面に剥離を生じさせることができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記剥離層は、樹脂材料を主材料とするものであることが好ましい。
これにより、基材の機械的特性(可撓性または剛性等)に影響を及ぼすことなく、剥離層を構成することができる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記剥離層は、フッ素原子を含有するカップリング剤で構成されていることが好ましい。
これにより、1分子または数分子程度の極薄い剥離層を形成することができる。このため、基材に対する剥離層の密着性が向上し、基材を湾曲させた際に、剥離層が基材から剥がれ難くなる。
本発明の接合膜転写シートでは、当該接合膜転写シートは、さらに、前記接合膜の表面を覆うカバーシートを有していることが好ましい。
これにより、接合膜の表面を保護し、異物の付着や損傷等を防止することができる。その結果、耐久性に優れ、長期の保存や流通に適した接合膜転写シートが得られる。
本発明の接合膜転写シートでは、前記カバーシートは、その表面エネルギーが、前記剥離層の表面エネルギーより小さいものであることが好ましい。
これにより、カバーシートは、接合膜に対して相対的に低い密着性を示す一方、剥離層は接合膜に対して相対的に高い密着性を示すことになるから、カバーシートと接合膜との間が接合してしまうのを防止して、確実に剥離可能なカバーシートが得られる。
本発明の接合方法は、本発明の接合膜転写シートを用いて、前記被着体と他の被着体とを接合する接合方法であって、
前記接合膜転写シートの前記接合膜の表面にエネルギーを付与し、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させ、前記接合膜の表面と前記被着体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを積層し、第1の仮接合体を得る第1の工程と、
前記第1の仮接合体から前記基材および前記剥離層を剥離して、前記被着体に前記接合膜を転写し、第2の仮接合体を得る第2の工程と、
前記第2の仮接合体の前記接合膜の剥離面にエネルギーを付与し、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させ、前記接合膜の剥離面と前記他の被着体とが密着するように、前記第2の仮接合体と前記他の被着体とを積層し、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、接合膜転写シートを用いて2つの部材同士を効率よく接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第1の工程におけるエネルギーの付与は、前記基材と前記被着体とが近づくように前記第1の仮接合体に押圧力を付与する方法により行われることが好ましい。
これにより、押圧力を付与する領域を適宜設定するのみで、接合膜を転写する領域を簡単に制御することができる。
本発明の接合方法では、前記押圧力は、0.2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。
これにより、接合膜において、その接着性を必要かつ十分に発現させることができる。また、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基材や第1の被着体の各構成材料によっては損傷等が生じるおそれがある。
本発明の接合方法では、前記被着体は、表面の一部に凸部を有しており、前記第1の工程において前記凸部と前記接合膜とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを積層することにより、前記第2の工程において、前記凸部と接した部分の前記接合膜が選択的に転写され、前記第3の工程において、前記被着体と前記他の被着体とを部分的に接合することが好ましい。
これにより、凸部の形状を適宜選択することのみで、接合膜を効率よく簡単にパターニングし、これにより得られた接合膜を介して第1の被着体と第2の被着体とを部分的に効率よく接合することができる。
本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 剥離層が成膜された基材上に接合膜を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の接合方法の第1実施形態において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第2実施形態において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
以下、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図3は、本発明の接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図4は、本発明の接合膜転写シートが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」という。
図1に示す接合膜転写シート1aは、基材2aと、基材2a上に成膜された剥離層4と、剥離層4上に成膜された接合膜3とを有するものであり、任意の第1の被着体5aに対して接合膜3を転写するように用いられるものである。
接合膜3は、例えばプラズマ重合により成膜されたものであり、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
このような接合膜3は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、接合膜3に存在する脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜3のエネルギーを付与した領域に接着性が発現するという特徴を有する。
接合膜転写シート1aは、以下のような本発明の接合方法において用いられる。
本実施形態に係る接合方法は、接合膜転写シート1aの接合膜3の上面(表面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜3と第1の被着体5aとが密着するように、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層し、第1の仮接合体7を得る第1の工程と、第1の仮接合体7から基材2aおよび剥離層4を剥離することにより、第1の被着体5aに接合膜3を転写して第2の仮接合体8を得る第2の工程と、第2の仮接合体8の接合膜3の上面(剥離面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜3と第2の被着体6とが密着するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層し、接合体10を得る第3の工程とを有する。
第2の工程では、接合膜3において発現した接着性を利用して接合膜3が第1の被着体5aに転写される。この転写は、接合膜3と第1の被着体5aとを接合した後、接合膜3と剥離層4との界面を剥離させることにより行われる。これにより、接合膜3の一部(接合膜33)が第1の被着体5aへ移動することとなる。接合膜33が転写された第1の被着体5aは、第3の工程において接合膜33の剥離面に再度エネルギーを付与することにより、接着性が発現し、第2の被着体(他の被着体)6に対して接合可能になる。これにより、接合膜33を介して第1の被着体5aと第2の被着体6とを接合してなる接合体10が得られる。
このようにして得られた接合体10は、低温下であっても、第1の被着体5aと第2の被着体6とを高い寸法精度で強固に接合したものとなる。
(接合膜転写シート)
まず、本発明の接合膜転写シートについて説明する。
図1に示す接合膜転写シート1aは、前述したように、基材2aと、剥離層4と、接合膜3とを有するものである。以下、各部の構成について詳述する。
基材2aは、剥離層4および接合膜3を支持するものである。図1に示す基材2aは、両面が平坦面である基板状(シート状)のものであり、その厚さは全体で均一である。
基材2aの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、紙、布、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
このうち、基材2aは、可撓性を有するものが好ましい。これにより接合膜転写シート1aは、第1の被着体5aに積層する際に、積層界面の密着性を高めることができる。これは、基材2aが可撓性を有しているため、仮に第1の被着体5aの表面に凹凸があったとしても、接合膜転写シート1aがその凹凸形状に沿って変形し得るため、両者の密着性が向上するからである。したがって、基材2aが可撓性を有することにより、第1の仮接合体7において、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとの積層ムラを抑制し、接合膜3を確実に転写することができる。
また、第1の被着体5aに積層した接合膜転写シート1aから基材2aおよび剥離層4を剥離する際に、基材2aは容易に湾曲し得るものとなる。このため、剥離作業が容易になるとともに、剥離の際に基材2aが接合膜3に損傷を与えるなどの不具合が防止される。
さらに、基材2aが可撓性を有することにより、接合膜転写シート1a自体も可撓性を有するものとなる。このような接合膜転写シート1aは、ロール状に巻き取ることができるので、保管時および搬送時に省スペース化が図られる。さらに、ロール状に巻き取られた接合膜転写シート1aは、順次繰り出されることにより必要な長さを容易に供給可能である。このため、本発明の接合方法を、接合装置により行う場合、接合膜転写シート1aは装置への親和性に優れたものとなる。
また、基材2aは、樹脂系材料を主材料とするものが好ましい。このような基材2aは、特に可撓性に優れたものとなるため、上述したような効果がより顕著になる。特に小さな曲率半径で湾曲させた場合でも、破断するおそれが少ないため、前述した剥離プロセスを容易かつ確実に行うことができる。
さらに、樹脂系材料は軽量であるため、大量の接合膜転写シート1aをロール状に巻き取ったとしても、そのロールは比較的軽量で可搬性に優れたものとなるため、取り扱いが容易になる。
なお、接合膜転写シート1aでは、剥離層4と接合膜3との界面において積極的に剥離を生じさせるものの、基材2aと剥離層4との界面は、できるだけ強固に密着している必要がある。このため、基材2aの上面には、剥離層4の成膜前に、剥離層4との密着力を高める表面処理が施されているのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、基材2aの上面を清浄化するとともに、活性化させることができる。その結果、剥離層4の基材2aに対する密着強度を確実に高めることができる。
また、物理的表面処理では、基材2aの上面の表面粗さを高めることによって、基材2aと剥離層4との界面にアンカー効果を生じさせ、密着強度の向上を図ることができる。
このような基材2aの平均厚さは、構成材料や目的とする可撓性に応じて適宜設定されるが、一例として0.01mm以上10mm以下程度であるのが好ましく、0.1mm以上3mm以下程度であるのがより好ましい。
以上のような基材2aの上面には剥離層4が設けられる。剥離層4は、基材2aの上面に成膜され、接合膜3の下地層となるものである。
剥離層4は、前述したように基材2aに対して強固に密着する一方、接合膜3との間では密着強度が低くなることが求められる。このため、剥離層4の構成材料は、基材2aとの密着性および接合膜3との密着性のバランスに基づいて選択されることとなる。
剥離層4の構成材料としては、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。樹脂材料によれば、基材2aの機械的特性(可撓性または剛性等)に影響を及ぼすことなく、剥離層4を構成することができる。
このうち、フッ素系樹脂が好ましく用いられる。フッ素系樹脂は、接合膜3に対して特に優れた剥離性を有しているため、円滑な剥離が可能になる。このため、接合膜3をムラなく転写することができる。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂に代えて、フッ化チタン酸カリウム、ケイフッ化カリウム、フッ化ジルコン酸カリウムおよびケイフッ酸等のフッ素系無機材料を用いるようにしてもよい。
このような材料で構成された剥離層4は、例えば、液状材料を塗布または印刷することにより液状被膜を得た後、乾燥により被膜を形成する各種液相成膜法、CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法等の各種気相成膜法、電界めっき法、無電解めっき法等の各種めっき法等により成膜される。
また、剥離層4は、接合膜3に対して親和性の低い官能基を有するカップリング剤を基材2aの上面に供給することによっても成膜可能である。このようなカップリング剤によれば、1分子または数分子程度の極薄い剥離層4を形成することができる。このため、基材2aに対する剥離層4の密着性が向上し、基材2aを湾曲させた際に、剥離層4が基材2aから剥がれ難くなる。
また、カップリング剤を用いて形成された剥離層4では、上述した接合膜3に対して親和性の低い官能基の存在密度が高くなる。このため、剥離層4の表面にはこの官能基が隙間なく並ぶこととなり、剥離層4と接合膜3との界面の接合強度をムラなく抑えることができる。
接合膜3に対して親和性の低い(剥離性を示す)官能基としては、例えば、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルキニル基、フルオロアリール基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリールオキシ基、フルオロアルキルチオ基、フルオロアリールチオ基のようなフルオロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基等が挙げられる。
また、フルオロ基を含有するカップリング剤としては、例えば、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
このような剥離層4は、その表面エネルギー(表面自由エネルギー)が、第1の被着体5aの表面エネルギーより小さいものであるのが好ましい。これにより第1の被着体5aは、接合膜3に対して相対的に高い密着性を示し、接合膜3と強固に接合される一方、剥離層4は、接合膜3に対して相対的に低い密着性を示す。すなわち、第1の被着体5aと接合膜3との界面は相対的に強固に接合される一方、剥離層4と接合膜3との界面の接合強度は相対的に低くなる。これにより、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層し、得られた第1の仮接合体7から基材2aおよび剥離層4を剥離する際には、第1の被着体5aと接合膜3との界面で剥離を生じさせることなく、剥離層4と接合膜3との界面で確実に剥離を生じさせることができる。その結果、接合膜3を第1の被着体5aに確実に転写することができる。
具体的な剥離層4の表面エネルギーは、5mN/m以上200mN/m以下であるのが好ましく、10mN/m以上100mN/m以下であるのがより好ましい。剥離層4の表面エネルギーが前記範囲内であれば、剥離層4は、接合膜転写シート1aとして製造され流通する際に、意図しないときに剥離層4と接合膜3との界面で剥離してしまうことが防止されるとともに、第1の被着体5aに接合膜3を転写する際には、適度な剥離力を加えることで剥離層4と接合膜3との界面で容易かつ確実に剥離させることができる。
一方、第1の被着体5aの表面エネルギーは、剥離層4の表面エネルギーより高ければよいが、好ましくは1.1倍以上とされ、より好ましくは1.5倍以上とされ、さらに好ましくは2倍以上とされる。この程度の差があれば、剥離層4や第1の被着体5aの表面エネルギーのバラツキが十分に吸収されるため、両者の密着強度の大小関係が部分的に逆転してしまうのを防止することができる。
なお、このような大きな表面エネルギーを有する第1の被着体5aの構成材料としては、後に詳述するが、無機材料が好ましく用いられる。
また、剥離層4の表面エネルギーは、前述したように第1の被着体5aの表面エネルギーより小さいことが好ましいが、何らかの表面処理等により、第1の被着体5aと接合膜3との接合強度を強制的に高めた場合には、必ずしも小さくなくてもよい。かかる表面処理としては、前述した基材2aに施す表面処理と同等のものが挙げられる。
剥離層4の平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上1000μm以下程度、より好ましくは1μm以上500μm以下程度とされる。これにより、基材2aに対する剥離層4の密着性と、剥離層4の剥離性が良好になる。また、剥離層4の厚さが前記範囲内であれば、基材2aの表面の平滑性が低い場合でも、剥離層4の表面の平滑性を比較的高めることができる。これにより、剥離層4と接合膜3との界面に生じる隙間が抑制されることとなり、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層し、さらに押圧した際に、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとをムラなく密着させることができる。その結果、接合膜3を確実に転写することができる。
以上のような剥離層4の上面には接合膜3が設けられる。接合膜3は、前述したように、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、その領域に接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような接合膜3は、例えばプラズマ重合により形成されたものであり、図3に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造(アモルファス構造)を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。このような接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなる(非晶質化する)ため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、接合膜3自体が接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合体10においても、接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3にエネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図4に示すように、接合膜3の表面35および内部に、活性手304が生じる。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3は、第1の被着体5aに対して強固に効率よく接合可能なものとなる。
なお、脱離基303とSi骨格301との結合エネルギーは、Si骨格301中のシロキサン結合302の結合エネルギーよりも小さい。このため、接合膜3は、エネルギーの付与により、Si骨格301が破壊されるのを防止しつつ、脱離基303とSi骨格301との結合を選択的に切断し、脱離基303を脱離させることができる。
また、このような接合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合体10の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間での接合が可能となる。
また、製造後の接合膜転写シート1aを流通させる場合には、接合膜3が固体状であるため、流通または保管途中で接合膜3が流れ出す等の不具合が防止される。
なお、接合膜3においては、特に接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上90原子%以下程度であるのが好ましく、20原子%以上80原子%以下程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、第1の被着体5aに対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上7:3以下程度であるのが好ましく、4:6以上6:4以下程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、第1の被着体5aに対してより強固に接合することができるようになる。
また、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなり、より非晶質的な特性を示す。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
なお、Si骨格301の結晶化度は、一般的な結晶化度測定方法により測定することができ、具体的には、結晶部分における散乱X線の強度に基づいて測定する方法(X線法)、赤外線吸収の結晶化バンドの強度から求める方法(赤外線法)、核磁気共鳴吸収の微分曲線の下の面積に基づいて求める方法(核磁気共鳴吸収法)、結晶部分には化学試薬が浸透し難いことを利用した化学的方法等により測定することができる。
このうち、簡便性等の観点からX線法が好ましく用いられる。
また、Si骨格301の結晶化度を測定する際には、接合膜3に対して上述の測定方法を適用すればよいが、あらかじめ接合膜3に前処理を施しておくのが好ましい。この前処理としては、後述する接合膜3にエネルギーを付与する処理(例えば、紫外線照射処理等)が挙げられる。エネルギーの付与により、接合膜3中の脱離基が脱離し、Si骨格301の結晶化度をより正確に測定することが可能になる。
また、接合膜3は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合等の気相成膜法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合等の気相成膜法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
一方、接合膜3中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001以上0.2以下程度であるのが好ましく、0.002以上0.05以下程度であるのがより好ましく、0.005以上0.02以下程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜3中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜3は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
なお、プラズマ重合等の気相成膜法による成膜の際には、原料ガスの成分が重合して、シロキサン結合を含むSi骨格301と、それに結合した残基とを生成するが、例えばこの残基が脱離基303となり得る。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特に有機基であるのが好ましく、アルキル基であるのがより好ましい。有機基およびアルキル基は化学的な安定性が高いため、有機基およびアルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
ここで、脱離基303が特にメチル基(−CH)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。
すなわち、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05以上0.45以下程度であるのが好ましく、0.1以上0.4以下程度であるのがより好ましく、0.2以上0.3以下程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合が前記範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜3中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜3に十分な接着性が生じる。また、接合膜3には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合とそれに結合した脱離基303となり得る有機基とを含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、基材2aに対して特に強固に被着するとともに、第1の被着体5aに対しても特に強い被着力を示し、その結果として、基材2aと第1の被着体5aとを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれた有機基(例えばアルキル基)による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、エネルギーを付与されることにより、表面35に接着性が発現するとともに、表面35以外の部分においては、前述した有機基による作用・効果が得られるという利点も有する。したがって、このような接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような光学素子や液滴吐出ヘッドの組み立てに際して、有効に用いられるものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
このような接合膜3の平均厚さは、1nm以上1000nm以下程度であるのが好ましく、2nm以上800nm以下程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合体10の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、基材2aと第1の被着体5aとをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体10の寸法精度が低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が保たれる。このため、例えば、剥離層4の上面に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを貼り合わせた際に、両者の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上、接合膜3について詳述したが、このような接合膜3は、例えばプラズマ重合等の気相成膜法により作製されたものである。このうちプラズマ重合法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく作製することができる。これにより、接合膜3は、第1の被着体5aに対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合体10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。なお、接合膜3は、プラズマ重合法以外に、CVD法(特にプラズマCVD法)、PVD法のような各種気相成膜法の他、各種液相成膜法により作製することができる。
以上のような接合膜転写シート1aは、必要に応じて、接合膜3の上面を覆うように設けられたカバーシートを有していてもよい。かかるカバーシートは、接合膜3の上面を保護し、異物の付着や接合膜3の損傷等を防止する。これにより、接合膜転写シート1aは、耐久性に優れたものとなり、長期の保存や流通に適したものとなる。
このカバーシートは、接合膜転写シート1aを使用する前に剥離される。この際、接合膜3とカバーシートとの界面で確実に剥離が生じる必要があることから、この界面の密着強度は、剥離層4と接合膜3との密着強度より小さいことが好ましい。
かかる観点から、カバーシートは、その表面エネルギーが、剥離層4の表面エネルギーより小さいものであるのが好ましい。これにより剥離層4は、接合膜3に対して相対的に高い密着性を示し、接合膜3と比較的強く密着する一方、カバーシートは、接合膜3に対して相対的に低い密着性を示すこととなる。その結果、仮に接合膜転写シート1aに意図せずエネルギーが付与されたとしても、カバーシートと接合膜3との間が接合してしまうのを防止し、接合膜3との界面で確実に剥離可能なカバーシートが得られる。
具体的には、カバーシートの表面エネルギーは、剥離層4の表面エネルギーの0.3倍以上0.95倍以下程度であるのが好ましく、0.4倍以上0.9倍以下程度であるのがより好ましい。
カバーシートの構成材料としては、前述した基材2aと同様の構成材料が挙げられる。
また、接合膜転写シート1aは、ロール状に巻き取られた状態で保管または流通することもあるため、カバーシートには基材2aと同様、可撓性を有するものが好ましく用いられる。
以下、接合膜3を作製する方法について説明する。
まず、接合膜3の作製方法を説明するのに先立って、プラズマ重合法により接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図5は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図5に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基材2aを支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図5に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は板状をなしており、剥離層4(図5には図示せず)が成膜された基材2aを支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図5に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130の基材2aを支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図5に示すように、基材2aを鉛直方向に沿って支持することができる。また、基材2aに多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基材2aをプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、基材2aを介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図5に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基材2aの表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基材2aの汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、上記のプラズマ重合装置100を用いて、剥離層4が成膜された基材2a上に接合膜3を作製する方法について説明する。
図6は、剥離層4が成膜された基材2a上に接合膜3を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を剥離層4上に堆積させることにより得ることができる。以下、詳細に説明する。
まず、剥離層4が成膜された基材2aを用意する。
次に、剥離層4が成膜された基材2aをプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図6(a)参照)。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20%以上70%以下程度に設定するのが好ましく、30%以上60%以下程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1ccm以上100ccm以下程度に設定するのが好ましく、10ccm以上60ccm以下程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図6(b)に示すように、重合物が剥離層4上に付着・堆積する。これにより、プラズマ重合膜からなる接合膜3が形成される(図6(c)参照)。
また、プラズマの作用により、剥離層4の表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物が剥離層4の表面に堆積し易くなり、接合膜3の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合によれば、剥離層4の構成材料によらず、剥離層4上に接合膜3を確実に成膜することができる。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz以上100MHz以下程度であるのが好ましく、10MHz以上60MHz以下程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01W/cm以上100W/cm以下程度であるのが好ましく、0.1W/cm以上50W/cm以下程度であるのがより好ましく、1W/cm以上40W/cm以下程度であるのがさらに好ましい。高周波の出力密度を前記範囲内とすることにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格301を確実に形成することができる。すなわち、高周波の出力密度が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、接合膜3を形成することができないおそれがある。一方、高周波の出力密度が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜3において脱離基303の含有率が低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下する(規則性が高くなる)おそれがある。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5Pa以上1333Pa以下(1×10−5Torr以上10Torr以下)程度であるのが好ましく、133.3×10−4Pa以上133.3Pa以下(1×10−4Torr以上1Torr以下)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5sccm以上200sccm以下程度であるのが好ましく、1sccm以上100sccm以下程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5sccm以上750sccm以下程度であるのが好ましく、10sccm以上500sccm以下程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1分以上10分以下程度であるのが好ましく、4分以上7分以下程度であるのがより好ましい。
また、基材2aの温度は、25℃以上であるのが好ましく、25℃以上100℃以下程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜3を得る。
なお、接合膜3は、その厚さにもよるが比較的高い透光性を有したものとなる。そして、接合膜3の形成条件(プラズマ重合の際の条件や原料ガスの組成等)を適宜設定することにより、接合膜3の屈折率を調整することができる。具体的には、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を高めることにより、接合膜3の屈折率を高めることができ、反対に、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を低くすることにより、接合膜3の屈折率を低くすることができる。
具体的には、シラン系ガスを原料とするプラズマ重合法によれば、屈折率の範囲が1.35以上1.6以下程度の接合膜3が得られる。このような接合膜3は、その屈折率が、水晶や石英ガラスの屈折率に近いため、例えば接合膜3を光路が貫通するような構造の光学部品を製造する際に好適に用いられる。また、接合膜3の屈折率を調整することができるので、所望の屈折率の接合膜3を作製することができる。
また、接合膜3は、水晶や石英ガラスの熱膨張率に近いため、接合膜3と光学部品との熱膨張率差が小さくなり、接合体10の接合後の変形を抑制することができる。
(接合方法)
次に、本発明の接合方法について図1、2を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る接合方法は、前述したように、接合膜転写シート1aの接合膜3の上面(表面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜3と第1の被着体5aとが密着するように、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層し、第1の仮接合体7を得る第1の工程と、第1の仮接合体7から基材2aおよび剥離層4を剥離することにより、第1の被着体5aに接合膜3の一部(接合膜33)を転写して第2の仮接合体8を得る第2の工程と、第2の仮接合体8の接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜33と第2の被着体6とが密着するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層し、接合体10を得る第3の工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜転写シート1aを用意する(図1(a)参照)。
次いで、接合膜転写シート1aの接合膜3の上面31にエネルギーを付与する。エネルギーを付与すると、接合膜3の上面31に接着性が発現する。
接合膜3の上面31にエネルギーを付与する方法としては、上面31を活性化し得る方法であれば、いかなる方法であってもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、加熱する方法、押圧力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
このうち、エネルギーを付与する方法としては、押圧力を付与する方法が好ましく用いられる。かかる方法によれば、単に接合すべき領域を押圧しさえすれば、接合膜3の目的とする領域のみを第1の被着体5aに対して選択的に接合することができる。その結果、接合膜3の一部のみを第1の被着体5aに転写することができる。このため、特殊な装置等を用いる必要がなく、接合プロセスを容易に行うことができる。
例えば、接合膜3のうち、図1(b)に示す領域32のみを転写する場合には、領域32に対応する領域に凸部51を有する第1の被着体5aを用いる。
次いで、接合膜3と凸部51とが接するように、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層する。そして、得られた積層体を厚さ方向(基材2aと第1の被着体5aとが近づく方向)に押圧する(第1の工程)。これにより、凸部51が接合膜3の一部を選択的に押圧することになり、接合膜3の領域32に対して選択的に押圧力が付与される。その結果、領域32が部分的に接合されてなる第1の仮接合体7が得られる(図1(c)参照)。
このような方法によれば、転写すべき領域32の形状(平面視形状)に応じて凸部51の形状を適宜変更するのみで、転写する領域を簡単に変更することができる。
なお、図1(b)における凸部51の下面は平坦面であるのが好ましく、また、凸部51の断面形状は、台形または矩形であるのが好ましい。これにより、凸部51は、接合膜3の一部を均一かつ正確に押圧することができる。
また、凸部51の高さは、特に限定されないが、50μm以上5mm以下程度であるのが好ましく、100μm以上3mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、凸部51は、欠損等を確実に防止するとともに、押圧に伴って接合膜転写シート1aが波打ったりしても、目的外の領域を押圧することなく、目的とする領域のみを確実に押圧することができる。
また、第1の被着体5aは、剛性を有するものであるのが好ましい。これにより、積層体の押圧に際して、凸部51が変形してしまうことが防止される。その結果、前記転写すべき領域32の形状が変形してしまうのを確実に防止して、正確な接合を可能にする。
ここで、第1の被着体5aのうち、接合膜3と接触する面には、水酸基(OH基)が結合している状態になっているのが好ましい。第1の被着体5aの表面がこのような状態になっていると、第1の被着体5aと接合膜3との接合強度が向上することとなり、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとをより強固に接合することができる。なお、かかる効果は、以下のような現象によるものと推察される。
本工程において、接合膜3と第1の被着体5aとを接触(密着)させたときに、第1の被着体5aの表面に存在する水酸基と、接合膜3の活性化させた表面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、接合膜3と第1の被着体5aとの接触界面では、脱離したOH基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、接合膜3と第1の被着体5aとが化学的に強固に接合される。
なお、第1の被着体5aのうち、接合膜3を密着させるべき領域の表面に水酸基が結合している状態を形成するためには、例えば、第1の被着体5aに酸素プラズマ等のプラズマ処理を施す方法、エッチング処理を施す方法、電子線を照射する方法、紫外光を照射する方法、オゾンに曝す方法、またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。このような方法を用いることにより、第1の被着体5aの表面を清浄化するとともに、表面付近の結合の一部を切断して、表面を活性化することができる。このような状態の表面には、周囲の水分が接触することにより、水酸基(OH基)が自然に結合する。このようにして、水酸基が結合している状態を形成することができる。
また、第1の被着体5aの構成材料によっては、上記のような処理を施さなくても、表面に水酸基が結合しているものもある。かかる構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムのような各種金属材料、シリコン、石英ガラスのようなシリコン系材料、アルミナのような酸化物系セラミックス材料(無機系材料)等が挙げられる。なお、第1の被着体5aは、その全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
このような材料で構成された第1の被着体5aは、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された第1の被着体5aを用いると、水酸基を露出させる処理を施さなくても、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを強固に接合することができる。
また、第1の被着体5aの表面および内部には、終端化されていない活性な結合手(ダングリングボンド)が含まれていてもよい。さらに、水酸基とダングリングボンドとが混在した状態であってもよい。第1の被着体5aの表面および内部にダングリングボンドが含まれていると、接合膜3の表面に露出したダングリングボンドとの間で、ネットワーク状に構築された共有結合に由来するより強固な接合がなされる。その結果、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとをより強固に接合することができる。
また、第1の被着体5aは、その表面に、接合膜3と同様の接合膜を有するものでもよい。これにより、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとの間では、接合膜同士が接合することとなるため、1層の接合膜3を介した接合に比べて、接合強度を高めることができる。また、第1の被着体5aの構成材料によらず、強固な接合が可能になる。
なお、第1の被着体5aの表面にあらかじめ設けられた接合膜にも、接合に先立ってエネルギーを付与する必要がある。
また、エネルギーが付与された活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、接合膜転写シート1aは、エネルギーの付与後、できるだけ早く第1の被着体5aに積層されるのが好ましい。具体的には、エネルギーの付与後、60分以内に積層するのが好ましく、5分以内に積層するのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、貼り合せたときに十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、化学的に安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものである。したがって、接合膜転写シート1aを多量に製造または購入して保管しておき、第1の被着体5aとの積層を行う直前にエネルギーを付与するようにすれば、第1の仮接合体7および接合体10の製造効率の観点から有効である。
なお、従来のシリコン直接接合やオプティカルコンタクトのような固体接合では、表面を活性化させても、その活性状態は、大気中では数秒以上数十秒以下程度の極めて短時間しか維持されない。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの部材を貼り合わせる等の作業を行う時間を十分に確保することができないという問題があった。
これに対し、本発明によれば、プラズマ重合膜の作用により、エネルギーを付与した後でも数分以上の比較的長時間にわたってその活性状態を維持することができる。このため、作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を図ることができる。
また、積層体に付与される押圧力は、0.2MPa以上10MPa以下程度であるのが好ましく、1MPa以上5MPa以下程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3において、その接着性を必要かつ十分に発現させることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基材2aや第1の被着体5aの各構成材料によっては損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒以上30分以下程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、積層体を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、十分な接着性を発現させることができる。
なお、積層体の押圧は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよいが、大気雰囲気中で行われるのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、活性化処理をより簡単に行うことができる。
また、押圧力を付与する方法以外では、エネルギー線を照射する方法またはプラズマに曝す方法(プラズマ処理)が好ましい。かかる方法によれば、接合膜3の上面31を効率よく活性化させる。また、この方法によれば、接合膜3中の分子構造を必要以上に(例えば、基材2aとの界面に至るまで)切断しないので、接合膜3の特性が低下してしまうのを避けることができる。さらに、例えばプラズマ処理を施した後、押圧力を付与する方法のように、複数の方法を組み合わせるようにしてもよい。
エネルギー線としては、例えば、紫外光、レーザー光のような光、電子線、粒子線等が挙げられる。
また、エネルギー線には、特に紫外線(例えば波長126nm以上300nm以下程度)を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる紫外線によれば、接合膜3の特性の著しい低下を防止しつつ、広い範囲をムラなく、より短時間に処理することができる。このため、接合膜3の上面31の活性化をより効率よく行うことができる。また、紫外線には、紫外ランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160nm以上200nm以下程度とされる。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の上面31付近の化学結合を切断し得る程度の時間であればよく、特に限定されないが、0.5分以上30分以下程度であるのが好ましく、1分以上10分以下程度であるのがより好ましい。
なお、接合膜3の全面ではなく、一部の領域に対してエネルギー線を照射するようにしてもよい。この場合、レーザー光、電子線のような指向性の高いエネルギー線であれば、目的の方向に向けて照射することにより、所定領域に対してエネルギー線を選択的にかつ簡単に照射することができる。
また、指向性の低いエネルギー線であっても、所定領域以外の領域を覆うようにして照射すれば、所定領域に対してエネルギー線を選択的に照射することができる。
一方、接合膜3に曝すプラズマには、大気圧プラズマが好ましく用いられる。大気圧プラズマによれば、減圧手段等の高価な設備を用いることなく、容易にプラズマ処理を行うことができる。また、このプラズマ処理には、接合膜3の近傍でプラズマを発生させるダイレクトプラズマ方式の他、被処理物とプラズマ発生部とが離間したリモートプラズマ方式またはダウンフロープラズマ方式による処理も好ましく用いられる。ダイレクトプラズマ方式によれば、接合膜3の近傍でプラズマを発生させるため、プラズマ処理を効率よくかつ均一に行うことができる。また、リモートプラズマ方式やダウンフロープラズマ方式のように被処理物とプラズマ発生部とが離間している場合、被処理物とプラズマ発生部とが干渉しないため、被処理物(接合膜3)をイオン損傷から避けることができる。
また、減圧雰囲気中でプラズマ処理を行った場合、接合膜3の内部に意図せず閉じ込められたガスや経時的に発生したガス等が、接合膜3の外部に強制的に引き出されるおそれがある。このような現象が起こると、接合膜3に損傷が生じ、接着性の低下を招くとともに、屈折率の上昇幅が意図せず変化してしまうこととなる。
これに対し、大気圧下でプラズマ処理を行うことにより、損傷を与えることなく接合膜3に接着性を発現させることができる。
このようにしてエネルギーが付与され、活性化された接合膜3の上面31には、終端化されていない結合手(ダングリングボンド)や、この結合手に周囲の水分が接触してなる水酸基(OH基)等が露出する。なお、前述の「活性化させる」とは、上面31付近および内部の結合が切断されて、終端化されていない結合手が生じた状態や、その結合手に水酸基が結合した状態のいずれか一方、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
以上のようにして第1の仮接合体7を得ることができる。
このようにして得られた第1の仮接合体7では、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとの接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する第1の仮接合体7は、後述する工程において、接合膜転写シート1aから基材2aおよび剥離層4を剥離した際に、接合膜3と第1の被着体5aとの界面で剥離が生じるのを確実に防止し得るものとなる。
また、接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとの積層には、各種ラミネート装置、各種プレス装置が用いられる。
[2]次に、図1(d)に示すように、第1の仮接合体7から基材2aおよび剥離層4を剥離する。この剥離は、剥離層4と接合膜3との界面を広げるように、基材2aおよび剥離層4を第1の仮接合体7から引き剥がすことにより行われる(第2の工程)。これにより、接合膜3の一部を第1の被着体5aに転写してなる第2の仮接合体8が得られる(図2(e)参照)。
この剥離では、接合膜3のうち、第1の被着体5aの凸部51に対向する部分(接合膜33)が第1の被着体5aに転写され、残る部分の接合膜3は、転写されることなく基材2aおよび剥離層4とともに引き剥がされる。このため、第2の仮接合体8は、第1の被着体5aと、その凸部51の上面に部分的に設けられた接合膜33とを有するものとなる。このようにして接合膜転写シート1aを用いることにより、凸部51の形状を適宜選択することのみで、接合膜3を効率よく簡単にパターニングすることができる。
なお、得られた第2の仮接合体8に転写された接合膜33の上面は、剥離層4から剥離した剥離面となる。
[3]次に、第2の仮接合体8の接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与する。
接合膜33にエネルギーを付与する方法としては、前述した接合膜3にエネルギーを付与する方法と同様である。本実施形態では、押圧力を付与する方法について説明する。
まず、第2の仮接合体8と接合する第2の被着体6を用意する。第2の被着体6の形状は、特に限定されず、平板状、ブロック状のいずれでもよいが、ここでは、平板状のものを例に説明する。
また、第2の被着体6の構成材料は、基材2aの構成材料と同様とされる。
次いで、図2(f)に示すように、接合膜33と第2の被着体6とが接するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層する。そして、得られた積層体を厚さ方向(第2の仮接合体8と第2の被着体6とが近づく方向)に押圧する(第3の工程)。これにより、凸部51が接合膜33を押圧することになり、接合膜33に対して押圧力が付与される。その結果、接合膜33を介して第1の被着体5aと第2の被着体6とが接合され、接合体10が得られる(図2(g)参照)。
積層体を押圧する際の押圧力は、前述した接合膜転写シート1aと第1の被着体5aとを積層してなる積層体に付与する押圧力と同様とされる。
また、積層体の押圧には、前述したように、各種ラミネート装置、各種プレス装置等を用いることができる。
このようにして、接合膜33は、エネルギーを付与する領域を選択することにより、接着性を発現させる領域を自在に制御することができる。例えば、凸部51の形状に応じて接合膜3をパターニングすることができるため、従来のパターニング方法に比べて、より微細なパターンの接合膜33を得ることができる。具体的には、隙間を介して隣接するライン状の接合膜33を形成する場合、その隙間の幅を1μm以下の微小なものとすることができる。
また、このような効果は、接着剤や固体接合といった従来の接合方法では得られないものであり、接合プロセスの効率化の観点から極めて有用である。すなわち、エネルギーを付与する領域を選択することにより、接合強度の容易な調整が可能になるため、接合膜33の形状や面積を最適化することで、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、第1の被着体5aと第2の被着体6との間に生じる熱膨張差を緩和することができる。
また、接合膜転写シート1aは、取扱いが容易で流通や保存にも適したシート状の形態をとり、単に物理的あるいは化学的なエネルギーを付与するのみで、強固な接着性を自在に発現し得る。このため、接合膜転写シート1aは、各種製品の量産プロセスに対して優れた親和性を有するものとなる。
具体的には、プラズマ重合法により形成される接合膜は、従来、接合に供される部材の表面に直接成膜される必要があったため、成膜装置が設定されている場所に部材を用意する必要があった。これは、成膜装置が大型で重量も大きく、容易に移動することは不可能であるためである。ところが、このように成膜装置と部材とが不可分であるという地理的制約があると、部材の動線が限定されてしまうこととなり、製品の製造プロセスの自由度が低下するという問題があった。
これに対し、本発明によれば、接合膜を形成するプロセスと、部材を接合するプロセスとを、異なる場所で行うことができる。このため、接合膜転写シート1aを大量に製造しておけば、この接合膜転写シート1aを所望の場所に運搬し、所望の場所で部材の接合を行うことができる。その結果、製品の製造プロセスの自由度が飛躍的に増大し、量産効率を高めることができる。
また、接合膜33は、接合強度、耐薬品性および寸法精度に優れていることから、得られた接合体10も、接合強度、耐薬品性および寸法精度に優れたものとなる。
特に、接合体10は、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、アンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のように短時間で起こる強固な化学的結合に基づいて接合している。このため、接合体10は、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、本発明の接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(700℃以上800℃以下程度)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基材をも、接合に供することができる。これにより、基材の構成材料の選択の幅を広げることができる。
また、本発明によれば、第1の被着体5aと第2の被着体6との接合において、接合膜33の剥離面が接合界面となる。このため、この剥離面は、剥離の直前まで剥離層4に接していて異物の付着や損傷等から保護された状態になっているため、良好な接合に適した状態にある。さらに、第1の工程で接合膜3にエネルギーを付与した際にも、この剥離面近傍では脱離基が脱離し難いため、成膜直後の状態が維持され易く、接着性を十分に潜在させ得るという利点もある。よって、この剥離面にエネルギーを付与することにより、剥離面は第2の被着体6に対して強固に接合されることとなる。このように接合膜転写シート1aを用いれば、気相成膜法で成膜され、接着性の発現を自在に制御し得る接合膜3を、両面テープが如く取り扱うことができるので、第1の被着体5aと第2の被着体6とを簡単にかつ強固に接合することができる。
また、得られた接合体10における接合界面は、いずれも気密性および液密性に優れたものとなる。これは、接合膜33がそれ自体高密度で通気性の低いものであり、また接合メカニズムも前述したような化学結合に基づくものであるため、小さな分子の通過も制限するためである。したがって、閉空間ができるように接合領域を設定して接合体10を製造した場合、得られた閉空間(例えば図2の閉空間34)の気密性は、ヘリウムガスを用いたリーク量(リークレート)で、1×10−9Pa・m/sec以下となることが期待できる。このようなリーク量であれば、長期にわたって閉空間の気密性を維持することができるので、閉空間を減圧状態で維持したり、所定のガスで置換したりする場合に、本発明は有効に用いられる。
なお、接合体10を得た後、この接合体10に対して、必要に応じ、以下の2つの工程[4A]、[4B]のうちのいずれか一方または双方を行うようにしてもよい。
[4A]得られた接合体10を、第1の被着体5aと第2の被着体6とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の被着体5aや第2の被着体6の表面に接合膜33の表面がより接近し、接合体10における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体10を加圧する際の圧力はできるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合体10における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、第1の被着体5aや第2の被着体6の構成材料や厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、1MPa以上10MPa以下程度であるのが好ましく、1MPa以上5MPa以下程度であるのがより好ましい。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒以上30分以下程度であるのが好ましい。
[4B]得られた接合体10を加熱する。
これにより、接合体10における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体10を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体10の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25℃以上100℃以下程度とされ、より好ましくは50℃以上100℃以下程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体10が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1分以上30分以下程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、接合体10を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体10の接合強度を特に高めることができる。
なお、2つの被着体の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のようにして接合体10を加熱するのが好ましいが、2つの被着体の熱膨張率が互いに大きく異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、熱膨張率差にもよるが、25℃以上50℃以下程度で加熱するのが好ましく、25℃以上40℃以下程度で加熱するのがより好ましい。このような温度範囲であれば、熱膨張率差がある程度大きくても(例えば、5×10−5/K以上)、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体10における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
以上のような工程[4A]、[4B]を行うことにより、接合体10における接合強度のさらなる向上を図ることができる。
(接合装置)
ところで、上述したような本発明の接合方法は、以下のような接合装置を用いて行うことができる。
図7、8は、それぞれ本発明の接合方法の第1実施形態において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。なお、以下の説明では、図7、8中の上側を「上」、下側を「下」という。
図7に示す接合装置500は、平板状のステージ501と、ステージ501の両端にそれぞれ設けられたローラー502およびローラー503とを有している。
また、ステージ501の左側上方には、接合膜転写シート1aをロール状に巻き取ったシートロール510が回転自在に設けられている。シートロール510からは、接合膜転写シート1aが順次繰り出されるようになっており、繰り出された接合膜転写シート1aは、ステージ501上の左端から右端へと通過し、ステージ501の右側下方に設けられた巻き取りロール511で巻き取られるよう構成されている。
また、シートロール510では、接合膜3が設けられた面が上方を向くように接合膜転写シート1aが巻き取られている。
また、シートロール510の右側、および、巻き取りロール511の左側には、それぞれガイドロール512およびガイドロール513が設けられている。このうち、ガイドロール512は、ステージ501の左側上方から右側下方に向けて繰り出された接合膜転写シート1aの進行方向を、水平方向に変更する。一方、ガイドロール513は、ステージ501上を左側から右側へと進行する接合膜転写シート1aの進行方向を、巻き取りロール511に向くように変更する。
以上のようなシートロール510、巻き取りロール511、ガイドロール512およびガイドロール513により、ステージ501の上面に沿って接合膜転写シート1aを左側から右側へと搬送されるようになっている。
また、ガイドロール512とガイドロール513との間には、左側からプラズマ処理機構520、第1の被着体供給機構530、押圧機構540、および剥離機構550が順次設けられている。
プラズマ処理機構520は、ステージ501の上方に設けられ、接合膜転写シート1aの接合膜3に向けてプラズマPを供給し得る機構である。かかる機構としては、前述したようなダイレクトプラズマ方式、リモートプラズマ方式、ダウンフロープラズマ方式等の各種大気圧プラズマ装置が挙げられる。このようなプラズマ処理機構520とステージ501との間を接合膜転写シート1aが通過すると、通過の際に接合膜3にエネルギーが付与され、接着性が発現する。
プラズマ処理機構520を通過した接合膜転写シート1aは、その右側に設けられた第1の被着体供給機構530に搬送される。第1の被着体供給機構530は、第1の被着体5aを把持し、上方から接合膜転写シート1a上に載置するマニピュレーター(図示せず)等を有している。接合膜転写シート1a上に載置された第1の被着体5aは、接合膜3に発現した接着性により接合膜転写シート1aと接合される。
接合膜転写シート1aに接合された第1の被着体5aは、接合膜転写シート1aの移動とともに、その右側に設けられた押圧機構540に搬送される。押圧機構540は、ステージ501を挟んで上下それぞれに設けられた押圧ローラー541および押圧ローラー542を有している。この2つの押圧ローラー541、542の間には、ステージ501および接合膜転写シート1aが位置しており、2つの押圧ローラー541、542の離間距離は、第1の被着体5aを接合膜転写シート1aに押圧可能な距離に調整されている。かかる押圧機構540により第1の被着体5aと接合膜転写シート1aとがより強固に接合され、第1の仮接合体7が得られる。
得られた第1の仮接合体7は、接合膜転写シート1aの移動とともに、その右側に設けられた剥離機構550に搬送される。剥離機構550は、接合膜転写シート1aの進行方向を下方に変更するガイドロール513を有している。この剥離機構550により、第1の仮接合体7から基材2aおよび剥離層4が強制的に剥離されることとなる。その結果、一部の接合膜3が第1の被着体5aに転写され、第2の仮接合体8が得られるとともに、残る接合膜3は、基材2aおよび剥離層4とともに巻き取りロール511に巻き取られる。
得られた第2の仮接合体8は、図示しない把持部により把持され、図8に示す接合装置600において、第2の被着体6との接合工程に供される。
図8に示す接合装置600は、左側から順次設けられたプラズマ処理機構610、第2の被着体供給機構620、および押圧機構630を有している。
プラズマ処理機構610は、上面に第2の仮接合体8を載置し得る基台611と、第2の仮接合体8にプラズマ処理を施すプラズマ源612とを有している。プラズマ源612からプラズマPが発生すると、第2の仮接合体8の接合膜33に対してプラズマ処理が施される。これにより接合膜33にエネルギーが付与され、接着性が発現する。
プラズマ処理が施された第2の仮接合体8は、その右側に設けられた第2の被着体供給機構620に搬送される。第2の被着体供給機構620は、第2の被着体6を把持し、上方から第2の仮接合体8の接合膜33上に載置するマニピュレーター(図示せず)と、上面にマニピュレーターを載置可能な基台621とを有している。第2の仮接合体8上に載置された第2の被着体6は、接合膜33に発現した接着性により第2の仮接合体8と接合される。その結果、接合膜33を介して第1の被着体5aと第2の被着体6とが接合され、接合体10が得られる。
得られた接合体10は、押圧機構630に搬送される。押圧機構630は、基台631と、基台631上に設けられ、接合体10を押圧する荷重発生器(図示せず)とを有している。押圧機構630により接合体10に押圧力が付与され、接合体10の接合がより強固なものとなる。
<第2実施形態>
次に、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第2実施形態について説明する。
図9、10は、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図9および図10中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、接合膜転写シートおよび接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、接合膜転写シートの形状が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
図9に示す接合膜転写シート1bは、基材2bと、基材2b上に成膜された剥離層4と、剥離層4上に成膜された接合膜3とを有するものであり、第1の被着体5bに対して接合膜3を転写するように用いられるものである。
基材2bは、その上面に凸部21を有するものである。この凸部21は、前記第1実施形態における凸部51と同様、接合膜3の一部の領域32に対して選択的に押圧力を付与するためのものである。
凸部21の上面は平坦面であるのが好ましく、また、凸部21の断面形状は、台形または矩形であるのが好ましい。これにより、凸部21は、接合膜3の一部を均一かつ正確に押圧することができる。また、凸部21の高さは、特に限定されず、前述した凸部51の高さと同様に設定される。
また、剥離層4および接合膜3は、このような凸部21を有する基材2bの上面を覆うように設けられている。これにより、剥離層4および接合膜3は、凸部21を含む凹凸形状に沿って設けられることになるので、接合膜3の上面には凸部21の形状を反映した段差が生じている。
このような基材2bは、剛性を有するものであるのが好ましい。これにより、接合膜転写シート1bと第1の被着体5bとを積層してなる積層体の押圧に際して、凸部21が変形してしまうことが防止される。その結果、転写される接合膜33の形状が変形してしまうのを確実に防止して、正確な接合を可能にする。
次に、かかる接合膜転写シート1bを用いて、第1の被着体5bと第2の被着体6とを接合してなる接合体10を製造する方法について説明する。
本実施形態に係る接合方法は、前記第1実施形態と同様、接合膜転写シート1bの接合膜3の上面(表面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜3と第1の被着体5bとが密着するように、接合膜転写シート1bと第1の被着体5bとを積層し、第1の仮接合体7を得る第1の工程と、第1の仮接合体7から基材2bおよび剥離層4を剥離することにより、第1の被着体5bに接合膜3の一部を転写して第2の仮接合体8を得る第2の工程と、第2の仮接合体8の接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜33と第2の被着体6とが密着するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層し、接合体10を得る第3の工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜転写シート1bを用意する(図9(a)参照)。
次いで、接合膜転写シート1bの接合膜3の上面31にエネルギーを付与する。これにより、接合膜3の上面31に接着性が発現する。
ここでは、接合膜3のうち、凸部21が設けられた領域32に押圧力を付与する場合について説明する。
具体的には、第1の被着体5bを用意し、図9(b)に示すように、接合膜3と第1の被着体5bとが接するように、接合膜転写シート1bと第1の被着体5bとを積層する。そして、得られた積層体を厚さ方向(基材2bと第1の被着体5bとが近づく方向)に押圧する(第1の工程)。これにより、凸部21が接合膜3の一部を選択的に押圧することになり、接合膜3の領域32に対して選択的に押圧力が付与される。その結果、領域32が部分的に接合されてなる第1の仮接合体7が得られる(図9(c)参照)。
なお、図9(b)に示す第1の被着体5bは、平板状をなしているが、接合膜3に当接する平面を有するものであれば、その形状は特に限定されない。
また、第1の被着体5bは、可撓性を有するものであるのが好ましい。これにより、積層体の押圧に際して、第1の被着体5bの形状追従性が向上するので、接合膜転写シート1bと第1の被着体5bとの密着性をより高めることができる。
[2]次に、図9(d)に示すように、第1の仮接合体7から第1の被着体5bを引き剥がす(第2の工程)。これにより、接合膜3の一部と剥離層4との界面が剥離し、接合膜33を第1の被着体5bに転写してなる第2の仮接合体8が得られる(図10(e)参照)。
この剥離では、接合膜3のうち、基材2bの凸部21に対応する部分が第1の被着体5bに転写され、残る部分の接合膜3は、転写されることなく基材2bおよび剥離層4とともに残存する。このため、第2の仮接合体8は、第1の被着体5bと、部分的に転写された接合膜33とを有するものとなる。このようにして接合膜転写シート1bを用いることにより、基材2bの凸部21の形状を適宜選択することのみで、接合膜3を効率よく簡単にパターニングすることができる。
なお、得られた接合膜33の上面は、剥離層4から剥離した剥離面となる。
[3]次に、第2の仮接合体8の接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与する。
具体的には、まず、第2の被着体6を用意する。
次いで、前記第1実施形態と同様にして接合膜33の上面にエネルギーを付与する。
具体的には、図10(f)に示すように、接合膜33と第2の被着体6とが接するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層する。そして、得られた積層体を厚さ方向(第2の仮接合体8と第2の被着体6とが近づく方向)に押圧する(第3の工程)。これにより、接合膜33に対して押圧力が付与され、接合膜33を介して第1の被着体5bと第2の被着体6とを接合してなる接合体10が得られる(図10(g)参照)。
以上のような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、本実施形態では、基材2bに凸部21が設けられているため、第1の被着体5bとして可撓性を有するものを用いることもできる。したがって可撓性を有する第1の被着体5bに対して接合膜33を転写する場合には、本実施形態が好適である。
ところで、上述したような本発明の接合方法は、図11に示す接合装置700および図8に示す接合装置600を用いて行うことができる。
図11は、本発明の接合方法の第2実施形態において用いる接合装置の構成を模式的に示す斜視図である。なお、以下の説明では、図11中の上側を「上」、下側を「下」という。
図11に示す接合装置700は、左側から順次設けられたプラズマ処理機構710、第1の被着体供給機構720、押圧機構730、および剥離機構740を有している。
プラズマ処理機構710は、上面に接合膜転写シート1bを載置し得る基台711と、接合膜転写シート1bにプラズマ処理を施すプラズマ源712とを有している。プラズマ源712からプラズマPが発生すると、接合膜転写シート1bの接合膜3に対してプラズマ処理が施される。これにより接合膜3にエネルギーが付与され、接着性が発現する。
プラズマ処理が施された接合膜転写シート1bは、その後、第1の被着体供給機構720に搬送される。第1の被着体供給機構720は、第1の被着体5bを把持し、上方から接合膜転写シート1bの接合膜3上に載置するマニピュレーター(図示せず)と、上面にマニピュレーターを載置可能な基台721とを有している。接合膜転写シート1b上に載置された第1の被着体5bは、接合膜3に発現した接着性により接合膜転写シート1bと接合される。その結果、接合膜3を介して第1の被着体5bと接合膜転写シート1bとが接合され、第1の仮接合体7が得られる。
得られた第1の仮接合体7は、押圧機構730に搬送される。押圧機構730は、基台731と、基台731上に設けられ、第1の仮接合体7を押圧する荷重発生器732とを有している。押圧機構730により第1の仮接合体7に押圧力が付与され、第1の仮接合体7の接合がより強固なものとなる。
その後、第1の仮接合体7は、剥離機構740に搬送される。剥離機構740は、基台741と、基台741上に設けられ、第1の仮接合体7から第1の被着体5bを上方に引き剥がすマニピュレーター(図示せず)とを有している。この剥離機構740により、第1の仮接合体7から第1の被着体5bが強制的に剥離されることとなる。その結果、一部の接合膜3が第1の被着体5bに転写され、第2の仮接合体8が得られるとともに、残る接合膜3は剥離層4上に残存することとなる。
得られた第2の仮接合体8は、図示しない把持部により把持され、前述した図8に示す接合装置600において、第2の被着体6との接合工程に供される。
<第3実施形態>
次に、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第3実施形態について説明する。
図12は、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、接合膜転写シートおよび接合方法の第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、接合膜転写シートの形状が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
図12に示す接合膜転写シート1cは、基材2cと、基材2c上の一部の領域32に成膜された剥離層4と、剥離層4を覆うように基材2cの上面全体を覆うように成膜された接合膜3とを有するものであり、第1の被着体5cに対して接合膜3を転写するように用いられるものである。
基材2cは、前記第1実施形態における基材2aと同様、平板状の基板である。
剥離層4は、基材2cの上面のうち、一部の領域32にのみ設けられる。
また、接合膜3は、このような剥離層4を覆うように、基材2cの上面全体に成膜されている。このため接合膜3のうち、剥離層4上に位置する部分は、その他の部分に比べて上方に突出した状態になっている。
次に、かかる接合膜転写シート1cを用いて、第1の被着体5cと第2の被着体6とを接合してなる接合体10を製造する方法について説明する。
本実施形態に係る接合方法は、前記第1実施形態と同様、接合膜転写シート1cの接合膜3の上面(表面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜3と第1の被着体5cとが密着するように、接合膜転写シート1cと第1の被着体5cとを積層し、第1の仮接合体7を得る第1の工程と、第1の仮接合体7から基材2cおよび剥離層4を剥離することにより、第1の被着体5cの接合膜3の一部を転写して第2の仮接合体8を得る第2の工程と、第2の仮接合体8の接合膜33の上面(剥離面)にエネルギーを付与するとともに、接合膜33と第2の被着体6とが密着するように、第2の仮接合体8と第2の被着体6とを積層し、接合体10を得る第3の工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜転写シート1cを用意する(図12(a)参照)。
次いで、接合膜転写シート1cの接合膜3の上面31に押圧力(エネルギー)を付与する。これにより、接合膜3の上面31に接着性が発現する。
具体的には、第1の被着体5cを用意し、図12(b)に示すように、接合膜3と第1の被着体5cとが接するように、接合膜転写シート1cと第1の被着体5cとを積層する。そして、得られた積層体を厚さ方向(基材2cと第1の被着体5cとが近づく方向)に押圧する(第1の工程)。これにより、剥離層4が接合膜3の一部を選択的に押圧することにより、接合膜3の領域32に対して選択的に押圧力が付与される。その結果、領域32が部分的に接合されてなる第1の仮接合体7が得られる(図12(c)参照)。
なお、図12(b)に示す第1の被着体5cは、平板状をなしているが、接合膜3に当接する平面を有するものであれば、その形状は特に限定されない。
また、第1の被着体5cは、可撓性を有するものであるのが好ましい。これにより、積層体の押圧に際して、第1の被着体5cの形状追従性が向上するので、接合膜転写シート1cと第1の被着体5cとの密着性をより高めることができる。
[2]次に、図12(d)に示すように、第1の仮接合体7から第1の被着体5cを引き剥がす(第2の工程)。これにより、接合膜3の一部(接合膜33)を第1の被着体5cに転写してなる第2の仮接合体8が得られる。
この剥離では、接合膜3のうち、剥離層4上に位置する部分が第1の被着体5cに転写され、残る部分の接合膜3は、転写されることなく基材2cおよび剥離層4とともに残存する。このため、第2の仮接合体8は、第1の被着体5cと、部分的に転写された接合膜33とを有するものとなる。このようにして接合膜転写シート1cを用いることにより、剥離層4の形状を適宜選択することのみで、接合膜3を効率よく簡単にパターニングすることができる。
なお、得られた接合膜33の上面は、剥離層4から剥離した剥離面となる。
[3]以下、図示しないが、前記第1実施形態と同様にして得られた第2の仮接合体8と第2の被着体6とを接合し、接合体10が得られる。
以上のような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。なお、本実施形態では、前記第1実施形態において説明した接合装置、および、前記第2実施形態において説明した接合装置のいずれをも用いることができる。
また、本実施形態では、剥離層4をパターニングして成膜しさえすれば、前記第1実施形態における凸部51や前記第2実施形態における凸部21を省略することができるので、基材2cや第1の被着体5cの形状を簡略化することができ、低コスト化を図ることができる。
以上のような本発明の接合方法は、種々の部材同士を接合するのに用いられる。
具体的には、トランジスター、ダイオード、メモリーのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクター、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサー、加速度センサーのようなセンサー部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等の接合に際して、本発明の接合方法が適用可能である。
以上、本発明の接合膜転写シートおよび接合方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合膜転写シートのうち、剥離層と接合膜との間以外の箇所には、任意の層が付加されていてもよい。
また、前記各実施形態では、基材の上面全体を覆うように接合膜を設けているが、接合膜は所定の形状にパターニングされていてもよい。
また、前記各実施形態では、接合膜転写シートの接合膜の一部を転写しているが、接合膜の全部を転写するようにしてもよい。
また、本発明の接合方法では、前記実施形態の構成に限定されず、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
(実施例1)
<1>まず、基材として、幅50mm×長さ100mm×平均厚さ0.12mmの紙テープを用意した。
また、第1の被着体として、縦20mm×横20mm×高さ5mmの枠状部材(OA10ガラス製)と、この枠状部材の一方の面を塞ぐ、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの基板(OA10ガラス製)とがあらかじめ接合されてなる部材を用意した。なお、枠状部材の枠の幅は、2mmであった。すなわち、第1の被着体は、一方の面側に、縦16mm×横16mmの開口を有する容器状の部材である。なお、OA10ガラスの表面エネルギーは、300mN/mである。
さらに、第2の被着体として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの板状部材(OA10ガラス製)を用意した。なお、第2の被着体には、その中央部を貫通するように、内径2mmの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、接合体の製造後、接合体内部のリーク量を評価する際に用いられるものである。
<2>次いで、基材の表面にプラズマ処理を施した後、この処理面に、真空蒸着法によりポリテトラフルオロエチレンを蒸着し、平均厚さ500nmの剥離層を得た。なお、ポリテトラフルオロエチレンの表面エネルギーは18mN/mである。
<3>次いで、図5に示すプラズマ重合装置100により、剥離層上に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・高周波出力密度 :25W/cm
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
これにより、剥離層上にプラズマ重合膜を成膜した。そして、基材、剥離層およびプラズマ重合膜の3層からなる接合膜転写シートを得た。
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものであった。また、Si骨格の結晶化度を測定するため、プラズマ重合膜の一部に波長405nmの紫外線を600秒間照射した後、X線回折法により結晶化度を測定した。その結果、プラズマ重合膜の結晶化度は30%以下であった。
<4>次に、得られた各プラズマ重合膜に以下に示す条件でプラズマ処理を施した。
<プラズマ処理条件>
・プラズマ処理方式:ダイレクトプラズマ方式
・処理ガスの組成 :ヘリウムガス
・雰囲気圧力 :大気圧(100kPa)
・電極間距離 :1mm
・印加電圧 :1kVp−p
・電圧周波数 :40MHz
<5>次に、プラズマ処理を施してから1分後に、プラズマ重合膜と枠状部材とが接するように、基材と第1の被着体とを積層した。そして得られた積層体を5MPaで押圧した。これにより、基材と第1の被着体とが接合され、第1の仮接合体を得た。
<6>次に、第1の仮接合体から基材を引き剥がした。これにより、第1の被着体が接していた部分のプラズマ重合膜が第1の被着体側に残存し、転写することができた。これにより、第1の被着体とこれに被着したプラズマ重合膜とからなる第2の仮接合体を得た。
<7>次いで、第2の仮接合体が有するプラズマ重合膜に、<4>と同様にしてプラズマ処理を施した。
<8>次に、プラズマ処理を施してから1分後に、プラズマ重合膜と第2の被着体とが接するように、第2の仮接合体と第2の被着体とを積層した。そして得られた積層体を5MPaで押圧した。これにより、第2の仮接合体と第2の被着体とが接合され、接合体を得た。
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして基材上にプラズマ重合膜を成膜した。
次いで、基材と同じサイズで、平均厚さ30μmのポリエチレンフィルム(カバーシート)を用意した。そして、プラズマ重合膜とカバーシートとが接するように、基材とカバーシートとを積層し、ラミネート装置で押圧した。これにより、基材、剥離層、プラズマ重合膜およびカバーシートの4層からなる接合膜転写シートを得た。なお、ポリエチレンの表面エネルギーは31mN/mである。
得られた接合膜転写シートを大気中で100時間放置した後、実施例1と同様にして第1の被着体と第2の被着体とを接合し、接合体を得た。
(実施例3)
基材を、縦50mm×横50mm×平均厚さ0.5mmのガラス基板(OA10ガラス製)に変更した以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例4)
剥離層を以下のようにして形成した以外は、実施例3と同様にして接合体を得た。
基材の表面にプラズマ処理を施した後、この処理面に、複合無電解Niめっき法により、Niめっき層にポリテトラフルオロエチレンの微粒子が共析してなる剥離層(平均厚さ5μm)を得た。
(実施例5)
剥離層を以下のようにして形成した以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
基材の表面にプラズマ処理を施した後、この処理面に、フッ素系シランカップリング剤(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)のエタノール溶液を塗布した。そして、塗布膜を室温下に5分間放置してエタノールを蒸発させた。これにより、平均厚さ5μmの剥離層を得た。
(実施例6)
剥離層を以下のようにして形成するようにした以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
基材の表面にプラズマ処理を施した後、この処理面に、シリコーン変性アミノアルキド樹脂とメチルエチルケトン(溶剤)とを含む混合液を塗布し、乾燥させた。これにより、平均厚さ5μmの剥離層を得た。
(実施例7)
基材として、第1の被着体の枠状部材の高さが低くなっている部材を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
すなわち、基材として、高さを0.5mmに変更した枠状部材(OA10ガラス製)と、この枠状部材の一方の面を塞ぐ、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの基板(OA10ガラス製)とがあらかじめ接合されてなる部材を用いた。そして、枠状部材を覆うように剥離層および接合膜を形成した。これにより接合膜転写シートを得た。
(実施例8)
基材として縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの基板(OA10ガラス製)を用い、枠状部材と当接する領域に部分的に剥離層を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして接合体を得た。
(比較例1)
まず、剥離層の成膜を省略した以外は前記実施例1と同様にして、基材およびプラズマ重合膜からなる2層の接合膜転写シートを得た。
次いで、実施例1と同様にしてプラズマ重合膜にプラズマ処理を施し、プラズマ重合膜と枠状部材とが接するように、基材と第1の被着体とを積層した。そして得られた積層体を5MPaで押圧した。これにより、基材と第1の被着体とが接合され、第1の仮接合体を得た。
次いで、第1の仮接合体から基材を引き剥がしたところ、ほとんどのプラズマ重合膜が基材側に付いたまま剥がれてしまった。また、一部、第1の被着体側に点状のプラズマ重合膜が残留した。
以上のことから、比較例1では、接合膜転写シートから第1の被着体側にプラズマ重合膜を転写することができなかった。
(比較例2)
まず、剥離層の成膜を省略した以外は前記実施例3と同様にして、基材およびプラズマ重合膜からなる2層の接合膜転写シートを得た。
次いで、実施例3と同様にしてプラズマ重合膜にプラズマ処理を施し、プラズマ重合膜と枠状部材とが接するように、基材と第1の被着体とを積層した。そして得られた積層体を5MPaで押圧した。これにより、基材と第1の被着体とが接合され、第1の仮接合体を得た。
次いで、第1の仮接合体から基材を引き剥がしたところ、ほとんどのプラズマ重合膜が基材側に付いたまま剥がれてしまった。また、一部、第1の被着体側に点状のプラズマ重合膜が残留した。
以上のことから、比較例2では、接合膜転写シートから第1の被着体側にプラズマ重合膜を転写することができなかった。
(比較例3)
第1の被着体と第2の被着体との間をエポキシ系接着剤で接着し、接合体を得た。なお、エポキシ系接着剤の平均厚さは、200μmとした。
(比較例4)
第1の被着体と第2の被着体とを直接接合(オプティカルコンタクト)により接合し、接合体を得た。
2.接合体の評価
2.1 接合強度の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各接合体において第1の被着体と第2の被着体とを強制的に引き剥がしたとき、剥がれる直前の引っ張り力を測定することにより行った。また、接合強度の測定は、接合直後と、接合後に−40℃から125℃の温度サイクルを50回繰り返した後のそれぞれにおいて行った。
その結果、各実施例で得られた接合体では、接合直後および温度サイクル後のいずれにおいても、十分な接合強度(10MPa以上)を有していた。
一方、各比較例で得られた接合体のうち、比較例1、2については接合強度が測定できなかった。また、比較例3、4については、接合直後は十分な接合強度(10MPa以上)を有していたものの、温度サイクル後には接合強度が低下した。
2.2 リーク量の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれリーク量を測定した。
リーク量の測定は、リークディテクターを用いて真空法により行った。また、プローブガスとしてはヘリウムガスを用いた。
また、リーク量の測定は、接合直後と2.1の温度サイクル後のそれぞれにおいて行った。
その結果、各実施例で得られた接合体では、接合直後および温度サイクル後のいずれにおいても、リーク量は1×10−9Pa・m/sec未満であった。
一方、各比較例で得られた接合体のうち、比較例1、2についてはリーク量が測定できなかった。また、比較例3については、接合直後からリーク量が非常に大きく、1×10−6Pa・m/sec以上であった。さらに、比較例4については、接合直後は1×10−9Pa・m/sec未満であったものの、温度サイクル後には1×10−6Pa・m/sec以上に悪化した。
以上の評価結果から、各実施例で得られた接合体は、温度サイクルを経ても、接合強度および気密性に優れたものであることが明らかとなった。
1a、1b、1c……接合膜転写シート 2a、2b、2c……基材 21……凸部 3、33……接合膜 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 31……上面 32……領域 34……閉空間 35……表面 4……剥離層 5a、5b、5c……第1の被着体 51……凸部 6……第2の被着体 7……第1の仮接合体 8……第2の仮接合体 10……接合体 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 500……接合装置 501……ステージ 502、503……ローラー 510……シートロール 511……巻き取りロール 512、513……ガイドロール 520……プラズマ処理機構 530……第1の被着体供給機構 540……押圧機構 541、542……押圧ローラー 550……剥離機構 600……接合装置 610……プラズマ処理機構 611……基台 612……プラズマ源 620……第2の被着体供給機構 621……基台 630……押圧機構 631……基台 700……接合装置 710……プラズマ処理機構 711……基台 712……プラズマ源 720……第1の被着体供給機構 721……基台 730……押圧機構 731……基台 732……荷重発生器 740……剥離機構 741……基台 P……プラズマ

Claims (27)

  1. 被着体に接合膜を転写するのに用いる接合膜転写シートであって、
    基材と、
    該基材の一方の面側に設けられた接合膜と、
    前記基材と前記接合膜との間に設けられた剥離層とを有し、
    前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含むものであり、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより前記接合膜に発現した接着性を利用して、前記被着体に接合し、前記剥離層との界面で剥離し得るものであることを特徴とする接合膜転写シート。
  2. 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上90原子%以下である請求項1に記載の接合膜転写シート。
  3. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上7:3以下である請求項1または2に記載の接合膜転写シート。
  4. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  5. 前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし4のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  6. 前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上0.2以下である請求項5に記載の接合膜転写シート。
  7. 前記脱離基は、アルキル基である請求項1ないし6のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  8. 前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05以上0.45以下である請求項7に記載の接合膜転写シート。
  9. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを材料として構成されている請求項8に記載の接合膜転写シート。
  10. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を成分とするものである請求項9に記載の接合膜転写シート。
  11. 前記接合膜は、プラズマ重合により形成されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  12. 前記プラズマ重合において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01W/cm以上100W/cm以下である請求項11に記載の接合膜転写シート。
  13. 前記接合膜の平均厚さは、1nm以上1000nm以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  14. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし13のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  15. 前記基材は、可撓性を有するものである請求項1ないし14のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  16. 前記基材は、樹脂材料で構成されている請求項15に記載の接合膜転写シート。
  17. 前記基材は、表面の一部に凸部を有しており、前記接合膜は、前記表面を覆うように成膜されたものである請求項1ないし16のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  18. 前記剥離層は、その表面エネルギーが、前記被着体の表面エネルギーより小さいものである請求項1ないし17のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  19. 前記剥離層の表面エネルギーは、5mN/m以上200mN/m以下である請求項1ないし18のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  20. 前記剥離層は、樹脂材料を主材料とするものである請求項1ないし19のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  21. 前記剥離層は、フッ素原子を含有するカップリング剤で構成されている請求項1ないし20のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  22. 当該接合膜転写シートは、さらに、前記接合膜の表面を覆うカバーシートを有している請求項1ないし21のいずれかに記載の接合膜転写シート。
  23. 前記カバーシートは、その表面エネルギーが、前記剥離層の表面エネルギーより小さいものである請求項22に記載の接合膜転写シート。
  24. 請求項1ないし23のいずれかに記載の接合膜転写シートを用いて、前記被着体と他の被着体とを接合する接合方法であって、
    前記接合膜転写シートの前記接合膜の表面にエネルギーを付与し、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させ、前記接合膜の表面と前記被着体とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを積層し、第1の仮接合体を得る第1の工程と、
    前記第1の仮接合体から前記基材および前記剥離層を剥離して、前記被着体に前記接合膜を転写し、第2の仮接合体を得る第2の工程と、
    前記第2の仮接合体の前記接合膜の剥離面にエネルギーを付与し、前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させ、前記接合膜の剥離面と前記他の被着体とが密着するように、前記第2の仮接合体と前記他の被着体とを積層し、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする接合方法。
  25. 前記第1の工程におけるエネルギーの付与は、前記基材と前記被着体とが近づくように前記第1の仮接合体に押圧力を付与する方法により行われる請求項24に記載の接合方法。
  26. 前記押圧力は、0.2MPa以上10MPa以下である請求項25に記載の接合方法。
  27. 前記被着体は、表面の一部に凸部を有しており、前記第1の工程において前記凸部と前記接合膜とが密着するように、前記接合膜転写シートと前記被着体とを積層することにより、前記第2の工程において、前記凸部と接した部分の前記接合膜が選択的に転写され、前記第3の工程において、前記被着体と前記他の被着体とを部分的に接合する請求項24ないし26のいずれかに記載の接合方法。
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