JP2009142045A - アクチュエータおよび画像形成装置 - Google Patents

アクチュエータおよび画像形成装置 Download PDF

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Yasuhide Matsuo
泰秀 松尾
Kenji Otsuka
賢治 大塚
Kazuhisa Higuchi
和央 樋口
Kosuke Wakamatsu
康介 若松
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Abstract

【課題】製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができるアクチュエータおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のアクチュエータは、可動板22と、可動板22を回動可能とするように可動板22に連結された1対の連結部23,24とを備える振動部と、振動部を支持する支持部21と、可動板22を回動させる駆動手段とを有し、振動部は、可動板22の回動中心軸Xに沿った方向での1箇所で第1の部材2Aと第2の部材2Bとに分割され、第1の部材2Aと第2の部材2Bとが接合膜を介して接合されており、接合膜6は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータおよび画像形成装置に関するものである。
例えば、レーザープリンタやプロジェクタ等にて光走査により描画を行うための光スキャナとして、捩り振動子で構成された構造体を有するアクチュエータを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、反射ミラーと、反射ミラーを支持するための固定枠部と、反射ミラーを固定枠部に対して回動可能に連結する1対のバネ部とを有し、各バネ部がその途中で2本に分岐した分岐部を備える構造体を有するアクチュエータが開示されている。
かかるアクチュエータでは、各分岐部は、長手形状をなしていて、各分岐部には、その長手方向に伸縮する圧電素子が接合されている。この圧電素子を伸縮させることで、1対の分岐部を互いに反対方向に曲げ変形させて、1対の分岐部全体を捩れ変形させ、それに伴い、反射ミラーを回動させ、光を反射し走査する。これにより、光走査により描画を行うことができる。
しかしながら、特許文献1にかかるアクチュエータでは、前述した構造体がシリコン基板をエッチングにより加工することで一括形成されているため、反射ミラーの回動中心軸方向における構造体の中心の位置と重心の位置とのずれを小さくするのが難しい。そのため、意図しない振動モードが発生する場合があった。
特開2004−191953号公報
本発明の目的は、製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができるアクチュエータおよび画像形成装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエータは、可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
前記振動部を支持する支持部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする。
これにより、可動板の回動中心軸方向における振動部の中心の位置と振動部の重心の位置とのずれを抑えることができる。したがって、製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができる。しかも、本発明にかかる接合膜は、薄くかつ強固な接合強度を有するため、長期に亘り優れた振動特性を発揮することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、第1の部材および第2の部材のそれぞれに対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができるようになる。
本発明のアクチュエータでは、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、Si骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものであることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、第1の部材と第2の部材とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、アクチュエータの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。さらに、接合膜が優れた撥液性を示す。
本発明のアクチュエータでは、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、第1の部材と第2の部材との間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高いアクチュエータが得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の部材の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、第1の部材と接合膜との間の接合強度をより高めることができ、ひいては、第1の部材と第2の部材との接合強度を高めることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第2の部材の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、第2の部材と接合膜との間の接合強度をより高めることができ、ひいては、第1の部材と第2の部材との接合強度を高めることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、第1の部材または第2の部材の表面を特に最適化することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の部材と前記接合膜との間に、中間層を有することが好ましい。
これにより、第1の部材と接合膜との間の接合強度を高め、アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第2の部材と前記接合膜との間に、中間層を有することが好ましい。
これにより、第2の部材と接合膜との間の接合強度を高め、アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、第1の部材と接合膜との間、および、第2の部材と接合膜との間において、それぞれ接合強度を高めることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中のSi骨格が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格と脱離基との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、第1の部材または第2の部材等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜を確実に活性化させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、第1の部材または第2の部材に損傷等が生じるのを避けつつ、単に圧縮するのみで、接合膜に十分な接着性を発現させることができる。
本発明のアクチュエータは、可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
前記振動部を支持する支持部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属酸化物に脱離基が結合したものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いたアクチュエータによっても、製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができる。
本発明のアクチュエータは、可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
前記振動部を支持する支持部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属原子と有機成分で構成される脱離基とを含むものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いたアクチュエータによっても、製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記振動部は、前記可動板を平面視したときに前記可動板の回動中心軸に対し直角で前記可動板の中心を通る線分に沿って前記第1の部材および前記第2の部材に分割されており、前記第1の部材および前記第2の部材は、それぞれ、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、同一寸法の第1の部材と第2の部材とを薄い接合膜を介して接合することにより、可動板の回動中心軸方向における振動部の中心位置と振動部の中心位置とのずれを抑えることができる。また、可動板および/または各連結部をシリコンを主材料として構成することができる。この場合、可動板および/または各連結部の寸法精度を優れたものとするとともに、可動板や各連結部の疲労を抑制することができる。そのため、本発明のアクチュエータは、所望の振動特性を長期にわたり発揮することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記振動部は、前記各連結部の途中または端部付近で分割され、前記第1の部材が前記第2の部材よりも前記可動板側に設けられていることが好ましい。
これにより、第1の部材の構成材料と、第2の部材の構成材料とを異ならせることができる。そのため、アクチュエータの設計自由度を向上させることができる。この場合、第2の部材を第1の部材を介して対向するように1対とし、1対の第2の部材同士を同寸法で作成し、これらをそれぞれ第1の部材に薄い接合膜を介して接合することで、可動板の中心軸方向における振動部の中心位置と振動部の重心位置とのずれを抑えることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の部材は、前記第2の部材の構成材料よりも比重の大きい材料で構成され、かつ、前記第2の部材は、前記第1の部材の構成材料よりも剛性の低い材料で構成されていることが好ましい。
これにより、低速駆動に適したアクチュエータを得ることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の部材は、前記第2の部材の構成材料よりも比重の小さい材料で構成され、かつ、前記第2の部材は、前記第1の部材の構成材料よりも剛性の高い材料で構成されていることが好ましい。
これにより、高速駆動に適したアクチュエータを得ることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記各連結部は、駆動部材と、前記駆動部材を回動可能に支持する弾性部と、前記可動板を前記駆動部材に対し回動可能となるように前記可動板と前記駆動部材とを連結する軸部材とを有し、前記各弾性部の捩れ変形を伴って前記各駆動部材を回動させることにより、前記各軸部材の捩れ変形を伴って前記可動板を回動させるように構成されていることが好ましい。
これにより、振動部は、1対の弾性部および1対の駆動部材からなる第1の振動系と、可動板および1対の軸部材からなる第2の振動系とで構成された2自由度振動系となる。
本発明のアクチュエータでは、前記各弾性部は、前記可動板の回動中心軸を介して対向する1対の弾性部材を備え、前記駆動手段は、前記各弾性部材上に設けられた圧電素子を備え、前記各圧電素子を作動させることにより、前記1対の弾性部材を互いに反対方向へ曲げ変形させることにより、前記各弾性部全体を捩れ変形させて前記各駆動部材を回動させるように構成されていることが好ましい。
この場合、各弾性部材の形状、大きさ、配置などのバラツキを防止することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記可動板の一方の面には、光反射性を有する光反射部が設けられていることが好ましい。
これにより、本発明のアクチュエータを光スキャナ、光スイッチ、光アッテネータ等の光学デバイスに適用することができる。
本発明の画像形成装置は、本発明のアクチュエータを備えることを特徴とする。
これにより、高品位な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明のアクチュエータおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のアクチュエータの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示すアクチュエータの平面図、図3は、図2中のA−A線断面図、図4は、図1に示すアクチュエータに備えられた接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図5は、図1に示すアクチュエータに備えられた接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
なお、以下では、説明の便宜上、図2中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図3中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
図1に示すアクチュエータ1は、2自由度振動系を有する基体2と、中間層4を介して基体2に接合された支持体3と、基体2の2自由度振動系を駆動するための圧電素子51、52、53、54とを有している。
基体2は、図1および図2に示すように、枠状をなす支持部21と、この支持部21の内側に設けられた可動板22と、支持部21と可動板22とを連結する1対の連結部23、24とを有している。ここで、可動板22および1対の連結部23、24が後述するように2自由度振動系からなる振動部を構成している。
支持部21は、枠状(より具体的には四角環状)をなしている。
なお、支持部21の形状は、アクチュエータ1の設計などに応じて決定されるものであり、前述したものに限定されない。また、支持部21は、連結部23を支持する支持部材と、連結部24を支持する支持部材とが互いに分離して構成されていてもよい。
このような枠状の支持部21の内側には、支持部21に対し離間した状態で、可動板22が設けられている。
可動板22は、板状をなし、その一方の板面(上面)には、光反射性を有する光反射部221Aが設けられている。
本実施形態では、可動板22の平面視形状が長方形である。なお、可動板22の平面視形状は、アクチュエータ1の設計などに応じて決定されるものであり、前述したものに限定されず、例えば、正方形であってもよいし、5角形、6角形などの他の多角形状や、円形、楕円形状、長円形状などであってもよい。
このような可動板22は、1対の連結部23、24を介して支持部21Aに支持されている。
そして、連結部23は、支持部21と可動板22との間に設けられた駆動部材231と、駆動部材231と支持部21とを連結する1対の弾性部材232、233と、可動板22と駆動部材231とを連結する軸部材234とで構成されている。
また、連結部24は、支持部21と可動板22との間に設けられた駆動部材241と、駆動部材241と支持部21とを連結する1対の弾性部材242、243と、可動板22と駆動部材241とを連結する軸部材244とで構成されている。
1対の駆動部材231、241は、可動板22を介して互いに間隔を隔てて設けられている。本実施形態では、各駆動部材231、241は、板状をなし、平面視形状が長方形である。なお、各駆動部材231、241の平面視形状は、アクチュエータ1の設計などに応じて決定されるものであり、前述したものに限定されず、例えば、正方形であってもよいし、5角形、6角形などの他の多角形状や、円形、楕円形状、長円形状などであってもよい。
1対の弾性部材232、233は、可動板22の回動中心軸Xを介して互いに対向し、それぞれ、回動中心軸Xに沿って(本実施形態では平行)設けられた弾性変形可能な長尺体で構成されている。このような1対の弾性部材232、233は、駆動部材231の厚さ方向で互いに反対方向に曲げ変形させることで、1対の弾性部材232、233全体を回動中心軸Xまわりに捩れ変形させることができる。したがって、このような1対の弾性部材232、233全体の捩れ変形を伴って駆動部材231を支持部21に対して回動させることができる。
同様に、1対の弾性部材242、243は、可動板22の回動中心軸Xを介して互いに対向し、それぞれ、回動中心軸Xに沿って(本実施形態では平行)設けられた弾性変形可能な長尺体で構成されている。このような1対の弾性部材242、243は、駆動部材241の厚さ方向で互いに反対方向に曲げ変形させることで、1対の弾性部材242、243全体を回動中心軸Xまわりに捩れ変形させることができる。したがって、このような1対の弾性部材242、243全体の捩れ変形を伴って駆動部材241を支持部21に対して回動させることができる。
ここで、1対の弾性部材232、233は、駆動部材231を回動可能に支持する弾性部を構成し、また、1対の弾性部材242、243は、駆動部材241を回動可能に支持する弾性部を構成している。
一方、1対の軸部材234、244は、可動板22の回動中心軸Xに沿って同軸的に設けられ、それぞれ、弾性変形可能な棒状をなす軸部材(トーションバー)で構成されている。
このような軸部材234は、可動板22を駆動部材231に対して回動中心軸Xまわりに回動可能に支持している。また、軸部材244は、可動板22を駆動部材241に対して回動中心軸Xまわりに回動可能に支持している。
このように構成された基体2は、駆動部材231および1対の弾性部材232、233と駆動部材241および1対の弾性部材242、243とで構成された第1の振動系と、可動板22および1対の軸部材234、244で構成された第2の振動系とからなる振動部、すなわち2自由度振動系を有するものである。
このような振動部は、可動板22を平面視したときに(以下、単に「平面視」とも言う。)可動板22の回動中心軸Xに対し直角で可動板22の中心を通る線分に沿って第1の部材2Aおよび第2の部材2Bに分割されている。そして、第1の部材2Aと第2の部材2Bとが接合膜6を介して接合されている。
ここで、基体2は平面視にて可動板22の回動中心軸Xに直角で可動板22の中心を通る線分を介して対称に形成されている。したがって、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bを互いに同寸法である。
このように分割された第1の部材2Aと第2の部材2Bとが接合膜6を介して接合されているため、可動板22の回動中心軸Xに沿った方向における振動部の中心の位置と振動部の重心の位置とのずれを抑えることができる。したがって、製造を比較的簡単なものとしつつ、優れた振動特性を発揮することができる。しかも、本発明にかかる接合膜6は、薄くかつ強固な接合強度を有するため、長期に亘り優れた振動特性を発揮することができる。なお、接合膜6については、後に詳述する。
本実施形態において、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bは、それぞれ、シリコンを主材料として構成されている。これにより、例えば、1つのシリコン基板をエッチング等により加工することで、第1の部材2Aや第2の部材2Bを一括形成することができる。また、第1の部材2Aや第2の部材2Bの寸法精度を優れたものとすることができる。また、可動板22および各連結部23、24をシリコンを主材料として構成することができる。そのため、可動板22および各連結部23、24の寸法精度を優れたものとするとともに、可動板22や各連結部23、24の疲労を抑制することができる。そのため、本発明のアクチュエータ1は、優れた振動特性を長期にわたり発揮することができる。
また、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの境界部を可動板22の途中とすることで、接合膜6のための接合面積を比較的大きくすることができ、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合強度を高めることができる。
本実施形態では、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bは、それぞれ、SOI基板の一方のSi層を加工することにより形成されている。
なお、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bのそれぞれの構成材料としては、前述したような振動系を構成することができるものであれば、シリコンに限定されず、例えば、ガラス材料、金属材料、樹脂材料等を用いてもよい。
このような基体2の上面には、前述したような可動板22を回動中心軸Xまわりに回動させるための圧電素子51、52、53、54が接合されている。
より具体的に説明すると、弾性部材232上には圧電素子51、弾性部材233上には圧電素子52が接合されている。圧電素子51、52は、それぞれ、回動中心Xに平行な方向に伸縮するように設けられている。このような圧電素子51、52を交互に作動させること(一方を伸張させ、他方を収縮させること)により、1対の弾性部材232、233を駆動部材231の厚さ方向で互いに反対方向に曲げ変形させることができる。
圧電素子51は、図3に示すように、圧電材料を主材料として構成された圧電体層511と、この圧電体層511を挟持する1対の電極512、513とを有している。なお、圧電素子52(後述する圧電素子53、54も同様)については、圧電素子51と同様であるので、その説明を省略する。
圧電体層511を構成するための圧電材料としては、例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、その他、各種のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛のうちの少なくとも1種を主とするものが好ましい。このような材料で圧電体層511を構成することにより、より高い周波数でアクチュエータ1を駆動することができる。
電極512は、圧電体層511の下面の全域を覆うように形成されている。一方、電極513は、圧電体層511の上面の全域を覆うように形成されている。
このような電極512、513の構成材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。これらの中でも、電極512、513を構成するための材料としては、Al、Au、Cr、Ni、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。これらの金属材料を用いると、電解あるいは無電解メッキ法を用いて、容易かつ安価に電極512、513を形成することができる。
これと同様に、弾性部材242上には圧電素子53、弾性部材243上には圧電素子54が接合されている。圧電素子53、54は、それぞれ、回動中心Xに平行な方向に伸縮するように設けられている。このような圧電素子53、54を交互に作動させること(一方を伸張させ、他方を収縮させること)により、1対の弾性部材242、243を駆動部材241の厚さ方向で互いに反対方向に曲げ変形させることができる。
このような圧電素子51、52、53、54は、それぞれ、図示しない電源回路に接続され、この電源回路からの通電により、前述したように各弾性部材232、233、242、243を曲げ変形させて、駆動部材231、241を回動させ、これに伴って、各軸部材234、244を捩れ変形させて可動板22を回動させることができる。ここで、圧電素子51、52、53、54は、可動板22を回動させる駆動手段を構成している。
一方、基体2の下面には、中間層4を介して支持体3が接合されている。
支持体3は、枠状をなし、平面視にて、支持部21とほぼ同一形状をなしている。このような支持体3は、その内側に形成された空間(開口部31)が、可動板22および駆動部材231、241が回動する際に、支持体3に接触するのを防止する逃げ部を構成する。
なお、支持体3の形状については、これに限定されず、例えば、支持体3の下面(基体2と反対側の面)で開口していなくてもよい。また、支持部21の形状などによっては、支持体3を省略してもよい。
本実施形態では、支持体3は、図1に示すように、前述した基体2と同様、平面視したときに、可動板22の回動中心軸Xに直角で可動板22の中心を通る線分に沿って分割された部材3A、3B同士が接合膜6を介して互いに接合されている。
同様に、中間層4は、図1に示すように、平面視したときに、可動板22の回動中心軸Xに直角で可動板22の中心を通る線分に沿って分割された部材4A、4B同士が接合膜6を介して互いに接合されている。
後述するように、支持体3の分割された2つの部材3A、3Bは、それぞれ、SOI基板のSi層(前述した基体2を形成する側のSi層とは反対側のSi層)を加工することにより形成されたものであり、シリコンを主材料として構成されている。また、中間層4の分割された2つの部材4A、4Bは、それぞれ、SOI基板のSiO層を加工することにより形成されたものであり、SiOを主材料として構成されている。
以上のような構成のアクチュエータ1は、次のようにして駆動する。
例えば、周期的に変化する電圧を圧電素子51、53と圧電素子52、54とに互いに180°位相をずらすようにして印加する。すると、圧電素子51、53を伸長状態とするとともに、圧電素子52、54を収縮状態とする状態(第1の状態)と、圧電素子51、53を収縮状態とするとともに、圧電素子52、54を伸長状態とする状態(第2の状態)とを交互に繰り返す。
第1の状態では、圧電素子51、53の伸長により弾性部材232、242が下側(圧電素子51、53と反対側)に曲げ変形するとともに、圧電素子52、54の収縮により弾性部材233、243が上側(圧電素子52、54側)に曲げ変形する。
一方、第2の状態では、圧電素子51、53の収縮により弾性部材232、242が上側(圧電素子51、53側)に曲げ変形するとともに、圧電素子52、54の伸長により弾性部材233、243が下側(圧電素子52、54と反対側)に曲げ変形する。
このように、弾性部材232、242と弾性部材233、243とを互いに反対方向に曲げ変形させることにより、駆動部材231、241を回動させ、これに伴い、1対の軸部材234、244を捩り変形させて、可動板22を回動中心軸Xまわりに回動させる。
(接合膜)
ここで、前述した接合膜6を詳細に説明する。
接合膜6は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜6は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜6の表面に発現した接着性によって、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合している。
より具体的に説明すると、接合膜6は、エネルギーが付与される前に、図4に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むものである。
そして、この接合膜6にエネルギーが付与されると、図5に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、活性手304が生じる。これにより、接合膜6の第1の部材2A側の面61に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜6により、第1の部材2Aと第2の部材2Bとが接合されている。なお、第1の部材2Aに接合膜6を形成し、その接合膜6の第2の部材2B側の面にエネルギー付与により活性手304を生じさせ、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合してもよい。
このような接合膜6は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このため、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの間の距離を高い寸法精度で一定に保持することができる。その結果、アクチュエータ1全体の寸法精度を優れたものとすることができる。
また、接合膜6の厚さが極めて薄くかつ均一であるため、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合膜6を介して接合して得られた基体2が第1の部材2Aと第2の部材2Bとを一体で形成したものに近い機械的特性を発揮することができる。
また、前述したような接合膜6を用いると、直接接合や陽極接合のような固体接合法を用いた場合とは異なり、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bのそれぞれの材質が限られることがない。例えば、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bのそれぞれの構成材料を必要な機械的特性に応じて最適化することができる。さらに、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接触部分のうちの一部の領域のみを部分的に接合することができる。そのため、アクチュエータ1の設計自由度を高めることができる。
また、比較的低温で第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合することができるため、アクチュエータ1の各部に熱的な悪影響を及ぼすおそれもない。
また、接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られないため、アクチュエータ1の低コスト化を図ることができる。
また、接合膜6を用いて第1の第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合したことにより、接着剤がはみ出すといったエポキシ系接着剤などの接着剤のような問題が生じることがない。したがって、はみ出した接着剤が振動系の振動を阻害することがなく、アクチュエータ1の製造において歩留まりを向上させることができる。また、はみ出した接着剤を除去する手間も必要ないため、アクチュエータ1の生産効率を向上させることもできる。
また、接合膜6は、前述したような強固なSi骨格301の作用により、耐光性や耐オゾン性に優れる。このため、例えば紫外線を使用する電子機器内にアクチュエータ1を組み込んだ場合など、紫外線やオゾン下に曝されても、長期にわたって接合膜6の変質・劣化を防止し、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合(接着)を長期にわたって維持することができる。これにより、接合膜6は、アクチュエータ1の信頼性を高めることができる。
さらに、接合膜6は、化学的に安定なSi骨格301の作用により、耐熱性に優れている。このため、アクチュエータ1が高温下に曝されたとしても、接合膜6の変質・劣化を確実に防止することができる。また、接合膜6は接着剤に比べ放熱性にも優れている。そのため、可動板22に入射した光の一部が熱となっても、速やかに放熱して、熱膨張による特性の変化を防止し、安定した駆動を行うことができる。
また、このような接合膜6は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜6)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜6を用いて製造されたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にする。
このような接合膜6としては、特に、接合膜6を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜6は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜6自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜6は、第1の部材2Aおよび第2の部材2Bに対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜6中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜6の安定性が高くなり、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜6中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜6の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜6に活性手304を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303は、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合している必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜6の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜6は、耐光性、耐オゾン性、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜6の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜6は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜6は、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜6は、エネルギーを付与された領域に接着性が発現するとともに、エネルギーを付与しなかった領域においては、前述したアルキル基による優れた撥液性が得られるという利点も有する。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜6は、接着性に特に優れることから、本発明のアクチュエータ1に対して特に好適である。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
また、接合膜6の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜6の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜6の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜6の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜6の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜6にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第2の部材2Bの接合面(接合膜6に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜6を被着させることができる。その結果、接合膜6は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第2の部材2B上に形成した接合膜6を第1の部材2Aに貼り合わせた際に、接合膜6の第1の部材2Aに対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜6の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜6の厚さをできるだけ厚くすればよい。
このような接合膜6は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、後述するようなプラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜6を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜6は、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜6は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
(アクチュエータの製造方法)
次に、アクチュエータ1の本発明にかかる製造方法の一例について詳述する。
図6ないし図9は、それぞれ、本実施形態のアクチュエータ1の製造方法を説明するための図、図10は、図7(b)に示す接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
なお、図6および図9では、図1中A−A線縦断面図に対応する図を示しており、図7および図8では、平面図を示している。また、以下では、説明の便宜上、図6および図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
アクチュエータ1の製造方法は、[A]第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体、および、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体を形成する工程と、[B]2つの構造体同士を接合して、基体2と支持体3と中間層4とを形成する工程と、[C]光反射部221を形成するとともに圧電素子51、52、53、54を基体2に接合する工程とを有する。
特に、工程Bは、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接合膜6を介して接合する工程とを有する。
以下、各工程A〜Cを順次詳細に説明する。
[A]
−A1−
まず、図6(a)に示すように、2つのSOI基板7を用意する。
SOI基板7は、Si層71と、SiO層72と、Si層73とがこの順で積層した積層構造をなしている。
ここで、2つのSOI基板7のうちの一方の基板は、第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体を形成するためのものであり、他方の基板は、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体を形成するためのものである。
なお、以下の説明では、第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体と、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体とは同一形状であり、また、これらの構造体の製造工程は同様である。したがって、以下では、第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体の製造工程を代表して説明し、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体の製造工程についてはその説明を省略する。また、図6(a)〜(d)では、第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体の製造工程のみを図示し、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体の製造工程の図示を省略している。
−A2−
そして、図6(b)に示すように、SOI基板7のSi層71の上面に、第1の部材2Aの平面視形状に対応する形状をなすレジストマスク81を形成するとともに、SOI基板7のSi層73の下面に、部材3Aの平面視形状に対応する形状をなすレジストマスク82を形成する。
−A3−
次に、レジストマスク81を介してSi層71をエッチングするとともに、レジストマスク82を介してSi層73をエッチングした後、レジストマスク81、82を除去する。これにより、図6(c)に示すように、第1の部材2Aおよび部材3Aが得られる。
本工程におけるエッチングの際、SiO層72は、エッチングのストップ層として機能する。このようなエッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
−A4−
次いで、図6(d)に示すように、SiO層72の一部をウェットエッチング等により除去して、部材4Aを得る。これにより、第1の部材2Aと部材3Aと部材4Aとからなる構造体7Aを得る。
一方、構造体7Aと同様に、第2の部材2Bと部材3Bと部材4Bとからなる構造体7Bを製造する。
このようにして、図7(a)に示すように、構造体7Aと構造体7Bが得られる。
[B]
−B1−
次に、図7(b)に示すように、構造体7Bの接合面(構造体7Aに対向する面)上に接合膜6を形成する。
すなわち、第2の部材2Bの接合面(第1の部材2Aに対向する面)上と、部材3Bの接合面(部材3Aに対向する面)上と、部材4Bの接合面(部材4Aに対向する面)上とのそれぞれに接合膜6を形成する。
本工程B1では、第2の部材2Bの接合面と、部材3Bの接合面と、部材4Bの接合面上とに接合膜6を一括形成するが、以下の説明では、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合を主に説明する。
接合膜6(エネルギー付与前の接合膜6)の形成方法としては、例えばプラズマ重合法を用いることができる。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を第2の部材2B上に堆積させ、膜を得る方法である。
以下、接合膜6をプラズマ重合法にて形成する方法について詳述する。
かかるプラズマ重合法には、例えば、図10に示すようなプラズマ重合装置1100を用いる。
図10に示すプラズマ重合装置1100は、チャンバー1101と、第2の部材2B(本実施形態では構造体7B。以下同じ。)を支持する第1の電極1130と、第2の電極1140と、各電極1130、1140間に高周波電圧を印加する電源回路1180と、チャンバー1101内にガスを供給するガス供給部1190と、チャンバー1101内のガスを排気する排気ポンプ1170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極1130および第2の電極1140がチャンバー1101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー1101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図10に示すチャンバー1101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー1101の上方には供給口1103が、下方には排気口1104が、それぞれ設けられている。そして、供給口1103にはガス供給部1190が接続され、排気口1104には排気ポンプ1170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー1101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線1102を介して電気的に接地されている。
第1の電極1130は、板状をなしており、第2の部材2Bを支持している。
この第1の電極1130は、チャンバー1101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極1130は、チャンバー1101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極1130は、図10に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極1130の第2の部材2Bを支持する面には、静電チャック(吸着機構)1139が設けられている。
この静電チャック1139により、図10に示すように、第2の部材2Bを鉛直方向に沿って支持することができる。また、第2の部材2Bに多少の反りがあっても、静電チャック1139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で第2の部材2Bをプラズマ処理に供することができる。
第2の電極1140は、第2の部材2Bを介して、第1の電極1130と対向して設けられている。なお、第2の電極1140は、チャンバー1101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極1140には、配線1184を介して高周波電源1182が接続されている。また、配線1184の途中には、マッチングボックス(整合器)1183が設けられている。これらの配線1184、高周波電源1182およびマッチングボックス1183により、電源回路1180が構成されている。
このような電源回路1180によれば、第1の電極1130は接地されているので、第1の電極1130と第2の電極1140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極1130と第2の電極1140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部1190は、チャンバー1101内に所定のガスを供給するものである。
図10に示すガス供給部1190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部1191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置1192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ1193とを有している。また、これらの各部とチャンバー1101の供給口1103とが、それぞれ配管1194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口1103からチャンバー1101内に供給するように構成されている。
貯液部1191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置1100により、重合して第2の部材2Bの表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置1192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー1101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ1193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー1101内の供給口1103の近傍には、拡散板1195が設けられている。
拡散板1195は、チャンバー1101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー1101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ1170は、チャンバー1101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー1101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による第2の部材2Bの汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー1101内から効果的に除去することができる。
また、排気口1104には、チャンバー1101内の圧力を調整する圧力制御機構1171が設けられている。これにより、チャンバー1101内の圧力が、ガス供給部1160の動作状況に応じて、適宜設定される。
以上説明したように構成されたプラズマ重合装置1100を用いて、第2の部材2B上に接合膜6を形成するに際しては、まず、第2の部材2Bをプラズマ重合装置1100のチャンバー1101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ1170の作動により、チャンバー1101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部1190を作動させ、チャンバー1101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー1101内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路1180を作動させ、一対の電極1130、1140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極1130、1140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が第2の部材2B上に付着・堆積する。これにより、図7(b)に示すように、第2の部材2B上にプラズマ重合膜で構成された接合膜6が形成される。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜6は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極1130、1140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー1101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜6の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜6の厚さを容易に調整することができる。このため、接着剤を用いて第1の部材2Aと第2の部材2Bとを接着した場合、接着剤の厚さを厳密に制御することができないが、接合膜6を用いた本発明では、接合膜6の厚さを厳密に制御することができるので、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの距離を厳密に制御することができる。
また、第2の部材2Bの温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜6を得ることができる。
なお、第2の部材2Bの面のうち、第1の部材2Aを接合する領域のみに部分的に接合膜6を形成する場合、例えば、この領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜6を成膜するようにすればよい。また、構造体7Bの面のうち、構造体7Aを接合する領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜6を成膜するようにすればよい。
−B2−
次に、図7(c)に示すように、第2の部材2B上に形成した接合膜6に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜6では、図5に示すように、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜6の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜6の表面に、第1の部材2Aとの接着性が発現する。
ここで、接合膜6に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、(I)接合膜6にエネルギー線を照射する方法、(II)接合膜6を加熱する方法、(III)接合膜6に圧縮力を付与する(物理的エネルギーを付与する)方法が代表的に挙げられ、この他、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
このうち、接合膜6にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜6に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
以下、上記(I)、(II)、(III)の各方法について詳述する。
(I)接合膜6にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図7(c)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜6中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜6の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜6に接着性を発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜6の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜6との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜6の表面61付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜6の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜6の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜6に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜6に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第2の部材2Bの変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜6から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜6と第1の部材2Aとの間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜6の表面および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜6に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜6の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜6に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
(II)接合膜6を加熱する場合(図示せず)、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、第2の部材2B等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜6を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜6の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜6は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種加熱方法で加熱することができる。
なお、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの互いの熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜6を加熱すればよいが、第1の部材2Aと第2の部材2Bの熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
(III)本実施形態では、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせる前に、接合膜6に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを重ね合わせ(接触させ)た後に行われるようにしてもよい。すなわち、第2の部材2B上に接合膜6を形成した後、エネルギーを付与する前に、接合膜6と第1の部材2Aとが密着するように、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを重ね合わせて、仮接合体とする。そして、この仮接合体中の接合膜6に対してエネルギーを付与することにより、接合膜6に接着性が発現し、接合膜6を介して第1の部材2Aと第2の部材2Bとが接合(接着)される。
この場合、仮接合体中の接合膜6に対するエネルギーの付与は、前述した(I)、(II)の方法でもよいが、接合膜6に圧縮力を付与する方法を用いてもよい。
この場合、第1の部材2Aと第2の部材2Bとが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜6に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜6に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の部材2Aと第2の部材2Bの各構成材料によっては、第1の部材2Aや第2の部材2Bに損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
なお、仮接合体の状態では、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの相対位置を微調整することにより、最終的に得られるアクチュエータ1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
以上のような(I)、(II)、(III)の各方法により、接合膜6にエネルギーを付与することができる。
なお、接合膜6の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜6の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の部材2Aと第2の部材2Bの熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
ここで、前述したように、エネルギーが付与される前の状態の接合膜6は、図4に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜6にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図5に示すように、接合膜6の第1の部材2A側の面61に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜6の表面に接着性が発現する。
ここで、接合膜6を「活性化させる」とは、接合膜6の第1の部材2A側の面61および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、第1の部材2Aに対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜6に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
−B3−
次に、図8(a)に示すように、接着性が発現してなる接合膜6と第1の部材2Aとが密着するように、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせる。その結果、第1の部材2Aと第2の部材2Bとが、図8(b)に示すように、接合膜6を介して接合(接着)される。これにより、図8(b)および図9(a)に示すように、基体2が得られる。
このとき、部材3Aと部材3Bとが接合膜6を介して接合され、支持体3が得られる。また、部材4Aと部材4Bとが接合膜6を介して接合され、中間層4が得られる。
ここで、上記のようにして接合される第1の部材2Aと第2の部材2Bの各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。第1の部材2Aと第2の部材2Bの熱膨張率がほぼ等しければ、これらを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られるアクチュエータ1において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、第1の部材2Aと第2の部材2Bの各熱膨張率が互いに異なる場合でも、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化することにより、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを高い寸法精度で強固に接合することができる。
すなわち、第1の部材2Aと第2の部材2Bの熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの熱膨張率差にもよるが、第1の部材2Aと第2の部材2Bの温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の部材2Aと第2の部材2Bの熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、アクチュエータ1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
また、この場合、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、接合膜6を用いることにより、上述したような低温下でも、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを強固に接合することができる。
また、第1の部材2Aと第2の部材2Bは、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、第1の部材2Aと各第2の部材2Bとをより強固に接合することができる。
なお、第2の部材2Bの接合膜6を成膜する領域には、あらかじめ、接合膜6との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、第2の部材2Bと接合膜6との間の接合強度をより高めることができ、最終的に得られるアクチュエータ1において、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合強度を高めることができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、第2の部材2Bのうちの接合膜6を成膜する領域を清浄化するとともに、当該領域を活性化させることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜6を形成するために、第2の部材2Bの表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す第2の部材2Bが、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、第2の部材2Bの構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜6の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の部材2Bの構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された第2の部材2Bは、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された第2の部材2Bを用いると、上記のような表面処理を施さなくても、第2の部材2Bと接合膜6とを強固に密着させることができる。
なお、この場合、第2の部材2Bの全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜6を成膜する領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
さらに、第2の部材2Bのうちの接合膜6を成膜する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の部材2Bと接合膜6との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
また、表面処理に代えて、第2の部材2Bの少なくとも接合膜6を成膜する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜6との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して第2の部材2B上に接合膜6を成膜することにより、第2の部材2Bと接合膜6との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわちアクチュエータ1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第2の部材2Bと接合膜6との間の接合強度を特に高めることができる。
一方、第1の部材2Aのうちの接合膜6と接触する領域にも、あらかじめ、接合膜6との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、第1の部材2Aと接合膜6との間の接合強度をより高めることができる。
なお、この表面処理には、第2の部材2Bに対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、表面処理に代えて、第1の部材2Aのうちの接合膜6と接触する領域に、あらかじめ、接合膜6との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、第1の部材2Aと接合膜6との間の接合強度をより高めることができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の第2の部材2Bに形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本工程において、第2の部材2B上に設けられた接合膜6が第1の部材2Aと接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第1の部材2Aのうちの第2の部材2Bとの接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜6と第1の部材2Aとが接触するように、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせたとき、接合膜6の第1の部材2A側の面61に存在する水酸基と、第1の部材2Aの前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜6を備える第2の部材2Bと第1の部材2Aとが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜6と第1の部材2Aとの接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜6を介して第1の部材2Aと第2の部材2Bとがより強固に接合されると推察される。
なお、前述した工程B2(エネルギー付与工程)で活性化された接合膜6の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、工程B2の終了後、できるだけ早く本工程B3(貼り合わせ工程)に移行するのが好ましい。具体的には、工程B2の終了後、60分以内に本工程B3を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜6の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程B3で第1の部材2Aと第2の部材2B(接合膜6の面61)とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された第1の部材2Aと第2の部材2Bとの間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
[C]
−C1−
次に、図9(b)に示すように、光反射部221を形成するとともに圧電素子51、52、53、54を基体2に接合する。これにより、アクチュエータ1が得られる。
光反射部221は、例えば、金属膜により形成することができる。
このような金属膜の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。
なお、前述した製造方法では、第2の部材2B上に成膜された接合膜6と第1の部材2Aとが密着するように、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせる場合について説明しているが、第1の部材2Aに成膜された接合膜6と第2の部材2Bとが密着するように、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせるようにしてもよい。
また、接合膜6は、第1の部材2Aと第2の部材2Bの双方に成膜されていてもよい。この場合、各部の界面をさらに強固に接合することができる。また、被着体(具体的には、第1の部材2A、第2の部材2B)の材質が接合強度に影響を及ぼし難いため、被着体の材質によらず、各部が強固に接合された信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。また、この場合、例えば、接合膜6に対するエネルギーの付与は、第1の部材2Aに成膜された接合膜6と、第2の部材2Bに成膜された接合膜6のそれぞれに対して行うようにすればよい。
また、前述した工程C1の後、基体2またはアクチュエータ1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程C2およびC3のうちの少なくとも1つの工程(アクチュエータ1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合強度のさらなる向上を図ることができる。
−C2−
アクチュエータ1(または基体2。以下同じ。)をその厚さ方向(図2、図8にて上下方向)に圧縮するように、すなわち第1の部材2Aと第2の部材2Bとが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合強度をより高めることができる。
また、アクチュエータ1を加圧することにより、アクチュエータ1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、アクチュエータ1における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、アクチュエータ1を加圧する際の圧力は、アクチュエータ1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例してアクチュエータ1における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、アクチュエータ1の各部の構成材料や形状、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、上記条件に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、アクチュエータ1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、アクチュエータ1の各部の構成材料によっては、アクチュエータ1に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、アクチュエータ1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
−C3−
得られたアクチュエータ1を加熱する。
これにより、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
このとき、アクチュエータ1を加熱する際の温度は、室温より高く、アクチュエータ1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、アクチュエータ1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、以上説明したような工程C2、C3の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、アクチュエータ1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、アクチュエータ1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、アクチュエータ1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図11は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図12は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図11および図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜6がエネルギー付与前の状態で、図11に示すように、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである。換言すれば、エネルギー付与前の接合膜6は、それぞれ、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入した膜である。
このような接合膜6は、エネルギーが付与されると、図12に示すように、脱離基303が金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離し、接合膜6の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜6の表面に、前述した第1実施形態と同様の接着性が発現する。
第2実施形態において、接合膜6は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜6自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
さらに、接合膜6は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜6)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜6を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、接合膜6は、必要に応じて、導電性を有するものとすることができる。これにより、アクチュエータ1の配線の引き回し等の設計自由度を向上させることができる。また、振動系上に電気的な素子や回路を有する場合、これらに通電するための配線として接合膜6を用いることができる。この場合、接合膜42の抵抗率は、接合膜6の構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜6の第1の部材2A側の面61付近に存在していればよく、接合膜6のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜6の第1の部材2A側の面61付近に偏在していてもよい。なお、脱離基303が第1の部材2A側の面61付近に偏在する構成とすることにより、接合膜6に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜6に、接合を担う機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基303が、接合膜6の導電性や透光性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
以上のような接合膜6としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜6を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜6は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、接合膜6中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜6の安定性が高くなり、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜6に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜6に確実に結合しているものが好適に選択される。
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜6は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜6としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜6は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜6は、第2の部材2Bに対して特に強固に接着するとともに、第1の部材2Aに対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを強固に接合することができる。
また、接合膜6の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜6の平均厚さを前記範囲内とすることにより、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜6の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜6の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜6の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜6にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第2の部材2Bの接合面(接合膜6を成膜する側の面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜6を被着させることができる。その結果、接合膜6は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせた際に、第1の部材2Aに対する接合膜6の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜6の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜6の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような第2実施形態にかかる接合膜6は、接合膜6のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、脱離基303を接合膜6の第1の部材2A側の面61付近に偏在させる場合には、例えば、B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
以下、AおよびBの方法を用いて、第2の部材2B上に接合膜6を成膜する場合について、詳述する。
<A> Aの方法では、接合膜6は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いると、金属酸化物材料を第2の部材2Bに向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜6のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
また、PVD法と用いると、緻密で均質な接合膜6を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜6は、第2の部材2Bに対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜6は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
以下、PVD法により接合膜6を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜6を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜6の成膜方法を説明するのに先立って、第2の部材2B上にイオンビームスパッタリング法により接合膜6を成膜する際に用いられる成膜装置1200について説明する。
図13は、本実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図14は、図13に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、図13中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図13に示す成膜装置1200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜6の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置1200は、チャンバー(真空チャンバー)1211と、このチャンバー1211内に設置され、第2の部材2B(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)1212と、チャンバー1211内に設置され、チャンバー1211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)1215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)1216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)1217とを有している。
また、チャンバー1211には、チャンバー1211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段1260と、チャンバー1211内の排気をして圧力を制御する排気手段1230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー1212は、チャンバー1211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー1212は、回動可能となっている。これにより、第2の部材2B上に接合膜6を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
イオン源(イオン銃)1215は、図14に示すように、開口(照射口)1250が形成されたイオン発生室1256と、イオン発生室1256内に設けられたフィラメント1257と、グリッド1253、1254と、イオン発生室1256の外側に設置された磁石1255とを有している。
また、イオン発生室1256には、図13に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源1219が接続されている。
このイオン源1215では、イオン発生室1256内に、ガス供給源1219からガスを供給した状態で、フィラメント1257を通電加熱すると、フィラメント1257から電子が放出され、放出された電子が磁石1255の磁場によって運動し、イオン発生室1256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド1253とグリッド1254との間の電圧勾配により、イオン発生室1256内から引き出されるとともに加速され、開口1250を介してイオンビームBとしてイオン源1215から放出(照射)される。
イオン源1215から照射されたイオンビームBは、ターゲット1216の表面に衝突し、ターゲット1216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット1216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置1200では、イオン源1215は、その開口1250がチャンバー1211内に位置するように、チャンバー1211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源1215は、チャンバー1211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー1211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置1200の小型化を図ることができる。
また、イオン源1215は、その開口1250が、基板ホルダー1212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー1211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源1215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源1215を複数設置することにより、接合膜6の成膜速度をより速くすることができる。
また、ターゲットホルダー1217および基板ホルダー1212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター1220および第2のシャッター1221が配設されている。
これらシャッター1220、1221は、それぞれ、ターゲット1216、第2の部材2Bおよび接合膜6が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段1230は、ポンプ1232と、ポンプ1232とチャンバー1211とを連通する排気ライン1231と、排気ライン1231の途中に設けられたバルブ1233とで構成されており、チャンバー1211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段1260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ1264と、ガスボンベ1264からこのガスをチャンバー1211に導くガス供給ライン1261と、ガス供給ライン1261の途中に設けられたポンプ1262およびバルブ1263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー1211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置1200を用いて、以下のようにして接合膜6が形成される。
ここでは、第2の部材2B上に接合膜6を成膜する方法について説明する。
まず、第2の部材2Bを用意し、第2の部材2Bを成膜装置1200のチャンバー1211内に搬入し、基板ホルダー1212に装着(セット)する。
次に、排気手段1230を動作させ、すなわちポンプ1232を作動させた状態でバルブ1233を開くことにより、チャンバー1211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段1260を動作させ、すなわちポンプ1262を作動させた状態でバルブ1263を開くことにより、チャンバー1211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー1211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
次に、第2のシャッター1221を開き、さらに第1のシャッター1220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源1215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント1257に通電して加熱する。これにより、フィラメント1257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド1253とグリッド1254とにより加速されて、イオン源1215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット1216に衝突する。これにより、ターゲット1216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー1211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー1211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が第2の部材2B上に堆積することにより、接合膜6が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源1215のイオン発生室1256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド1253により遮蔽され、チャンバー1211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源1215の開口1250)がターゲット1216(チャンバー1211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室1256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜6に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜6の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜6を成膜することができる。
<B> 一方、Bの方法では、接合膜6は、上記のように、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法を用いることにより、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜6を形成することができる。
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、第2の部材2B上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニーリング)する方法、B2:イオン・インプランテーション等が挙げられるが、中でも、特に、B1の方法を用いるのが好ましい。B1の方法を用いることにより、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理(アニーリング)することにより、接合膜6を得る場合を代表に説明する。
なお、Bの方法を用いて接合膜6の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜6を成膜する際に用いられる成膜装置1200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[i] まず、第2の部材2Bを用意する。そして、第2の部材2Bを成膜装置1200のチャンバー1211内に搬入し、基板ホルダー1212に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段1230を動作させ、すなわちポンプ1232を作動させた状態でバルブ1233を開くことにより、チャンバー1211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー1211内を加熱する。チャンバー1211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
[iii] 次に、第2のシャッター1221を開き、さらに第1のシャッター1220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源1215のイオン発生室1256内にガスを導入するとともに、フィラメント1257に通電して加熱する。これにより、フィラメント1257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド1253とグリッド1254とにより加速されて、イオン源1215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット1216に衝突する。これにより、ターゲット1216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、第2の部材2B上に堆積して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源1215のイオン発生室1256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド1253により遮蔽され、チャンバー1211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源1215の開口1250)がターゲット1216(チャンバー1211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室1256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜6に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜6の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
[iv] 次に、第2のシャッター1221を開いた状態で、第1のシャッター1220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー1211内をさらに加熱する。チャンバー1211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、第2の部材2Bおよび金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
[v] 次に、ガス供給手段1260を動作させ、すなわちポンプ1262を作動させた状態でバルブ1263を開くことにより、チャンバー1211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー1211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー1211内が加熱された状態で、チャンバー1211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜6が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー1211内は、前記工程[ii]において、排気手段1230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー1211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー1211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、第1の部材2A側の面61付近に脱離基303が偏在する接合膜6を成膜することができる。
以上のような第2実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態や第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜6がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜6は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜6から脱離し、接合膜6の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜6の表面に、前述した第3実施形態と同様の接着性が発現する。
接合膜6は、第2の部材2B上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜6は、エネルギーが付与されると、脱離基303の結合手が切れて接合膜6の少なくとも第1の部材2A側の面61付近から脱離し、図12に示すように、接合膜6の少なくとも第1の部材2A側の面61付近に、活性手304が生じるものである。これにより、接合膜6の第1の部材2A側の面61に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜6が設けられた第2の部材2Bは、第1の部材2Aに対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜6は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜6自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜6は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜6)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜6を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、接合膜6は、必要に応じて、導電性を有するものとすることができる。これにより、アクチュエータ1の配線の引き回し等の設計自由度を向上させることができる。また、振動系上に電気的な素子や回路を有する場合、これらに通電するための配線として接合膜6を用いることができる。
以上のような接合膜6としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜6に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜6の導電性をより高めることができる。
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜6は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜6を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜6を成膜することができる。
また、脱離基303は、前述したように、接合膜6から脱離することにより、接合膜6に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜6に確実に結合しているものが好適に選択される。
具体的には、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜6の接着性をより高度なものとすることができる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜6は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、かかる構成の接合膜6において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜6の安定性が高くなり、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜6を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
また、接合膜6の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、50〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜6の平均厚さを前記範囲内とすることにより、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の部材2Aと第2の部材2Bとをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜6の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜6の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜6の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜6にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第2の部材2Bの接合面(接合膜6を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜6を被着させることができる。その結果、接合膜6は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の部材2Aと第2の部材2Bとを貼り合わせた際に、第1の部材2Aに対する接合膜6の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜6の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜6の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜6は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、IIa:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体または表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜6を形成する方法、IIb:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜6を形成する方法(積層させる方法あるいは、単原子層からなる接合層を形成)、IIc:金属原子と脱離基303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として適切な溶媒に溶解させスピンコート法などを用いて接合膜を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、IIbの方法により接合膜6を成膜するのが好ましい。かかる方法を用いることにより、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜6を形成することができる。
以下、IIbの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜6を形成する方法により、接合膜6を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜6の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜6を成膜する際に用いられる成膜装置1400について説明する。
図15は、本発明の第3実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図15中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図15に示す成膜装置1400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜6の形成をチャンバー1411内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置1400は、チャンバー(真空チャンバー)1411と、このチャンバー1411内に設置され、第2の部材2B(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)1412と、チャンバー1411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段1460と、チャンバー1411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段1470と、チャンバー1411内の排気をして圧力を制御する排気手段1430と、基板ホルダー1412を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
基板ホルダー1412は、本実施形態では、チャンバー1411の底部に取り付けられている。この基板ホルダー1412は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、第2の部材2B上に接合膜6を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー1412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター1421が配設されている。このシャッター1421は、第2の部材2Bおよび接合膜6が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
有機金属材料供給手段1460は、チャンバー1411に接続されている。この有機金属材料供給手段1460は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽1462と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー1411内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ1465と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー1411内に導くガス供給ライン1461と、ガス供給ライン1461の途中に設けられたポンプ1464およびバルブ1463とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段1460では、貯留槽1462は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ1463を開放した状態で、ポンプ1464を作動させて、キャリアガスをガスボンベ1465から貯留槽1462に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン1461内を通過してチャンバー1411内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段1470がチャンバー1411に接続されている。ガス供給手段1470は、チャンバー1411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ1475と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー411内に導くガス供給ライン1471と、ガス供給ライン1471の途中に設けられたポンプ1474およびバルブ1473とで構成されている。かかる構成のガス供給手段1470では、バルブ1473を開放した状態で、ポンプ1474を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ1475から、供給ライン1471を介して、チャンバー1411内に供給されるようになっている。ガス供給手段1470をかかる構成とすることにより、チャンバー1411内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜6を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜6が成膜される。
チャンバー1411内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス、一酸化窒素、一酸化二窒素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜6に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜6を成膜することができる。その結果、この接合膜6は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段1430は、ポンプ1432と、ポンプ1432とチャンバー1411とを連通する排気ライン1431と、排気ライン1431の途中に設けられたバルブ1433とで構成されており、チャンバー1411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置1400を用いてMOCVD法により、以下のようにして第2の部材2B上に接合膜6が形成される。
[i] まず、第2の部材2Bを用意する。そして、第2の部材2Bを成膜装置1400のチャンバー1411内に搬入し、基板ホルダー1412に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段1430を動作させ、すなわちポンプ1432を作動させた状態でバルブ1433を開くことにより、チャンバー1411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段1470を動作させ、すなわちポンプ1474を作動させた状態でバルブ1473を開くことにより、チャンバー1411内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー1411内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段1470による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー1412を加熱する。基板ホルダー1412の温度は、形成する接合膜6の種類、すなわち、接合膜6を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜600℃程度であるのが好ましく、100〜450℃程度であるのがより好ましく、200〜300℃程度であるのがさらに好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜6を成膜することができる。
[iii] 次に、シャッター1421を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽1462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ1464を動作させるとともに、バルブ1463を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前述した工程[ii]で基板ホルダー1412が加熱された状態で、チャンバー1411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、第2の部材2B上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、第2の部材2B上に接合膜6を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜6を第2の部材2B上に形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜6を確実に形成することができる。
また、本実施形態では、ガス供給手段1470を動作させることにより、チャンバー1411内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、第2の部材2B上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜6を形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜6を成膜することができる。
以上のように、接合膜6を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜6を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜6に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、接合膜6を成膜することができる。
以上のような第3実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前述した第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図16は、本発明のアクチュエータの第4実施形態を示す平面図である。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、以下の説明では、図16中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
本実施形態にかかるアクチュエータは、第1の部材と第2の部材との境界部の位置が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
本実施形態では、図16に示すように、各連結部23、24の途中、より具体的には各駆動部材231、241の途中で振動部が、可動板22側に設けられた第1の部材2Cと、この第1の部材2Cを介して対向するように設けられた1対の第2の部材2Dとに分割されている。
そして、第1の部材2Cと各第2の部材2Dとは、前述した第1の実施形態の第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合と同様、接合膜6を介して接合されている。
このように振動部を各連結部23、24の途中で分割することで、第1の部材2Cの構成材料と各第2の部材2Dの構成材料とが異ならせることができる。その結果、本実施形態では、可動板22の主な構成材料と各駆動部材231、242の主な構成材料とを異ならせるとともに、各軸部材234、244の主な構成材料と各弾性部材232、233、242、243の主な構成材料とを異ならせることができる。そのため、アクチュエータ1の設計自由度を向上させることができる。
この場合、1対の第2の部材2D同士を同寸法で作成し、これらをそれぞれ第1の部材2Cに薄い接合膜6を介して接合することで、可動板22の回動中心軸Xに沿った方向における振動部の中心位置と振動部の重心位置とのずれを抑えることができる。
また、第1の部材2Cと各第2の部材2Dとの境界部を各駆動部材231、242の途中とすることで、接合膜6のための接合面積を比較的大きくすることができ、第1の部材2Cと各第2の部材2Dとの接合強度を高めることができる。
また、本実施形態では、第1の部材2Cを各第2の部材2Dの構成材料よりも比重の大きい材料で構成し、かつ、各第2の部材2Dを第1の部材2Cの構成材料よりも剛性の低い材料で構成することにより、低速駆動に適したアクチュエータ1を得ることができる。
また、第1の部材2Cを各第2の部材2Dの構成材料よりも比重の小さい材料で構成し、かつ、各第2の部材2Dを第1の部材2Cの構成材料よりも剛性の高い材料で構成することにより、高速駆動に適したアクチュエータ1を得ることができる。
また、本実施形態では、図示しないが、接合膜6は、可動板22の回動中心軸Xに直角な面に沿って形成されている。これにより、第1の部材2Cおよび各第2の部材2Dの製造を比較的容易なものとすることができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図17は、本発明のアクチュエータの第5実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態および第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、以下の説明では、図17中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
本実施形態にかかるアクチュエータは、第1の部材と第2の部材との境界部の位置が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
本実施形態では、図17に示すように、各連結部23、24の途中、より具体的には各駆動部材231、241付近で各駆動部材231、241の板面に沿って、振動部が、可動板22側に設けられた第1の部材2Eと、この第1の部材2Eを介して対向するように設けられた1対の第2の部材2Fとに分割されている。
そして、第1の部材2Eと各第2の部材2Fとは、前述した第1の実施形態の第1の部材2Aと第2の部材2Bとの接合と同様、接合膜6を介して接合されている。
また、本実施形態では、支持体3は、可動板22の回動中心軸Xに直角な面に沿って部材3Eと1対の部材3Fとの分割され、部材3Eと各部材3Fが接合膜6を介して接合されている。これと同様に、中間層4は、可動板22の回動中心軸Xに直角な面に沿って部材4Eと1対の部材4Fとの分割され、部材4Eと各部材4Fが接合膜6を介して接合されている。
以上説明した第5実施形態のように振動部を各連結部23、24の途中で分割することでも、前述した第4の実施形態と同様の効果を発揮することができる。
さらに、本実施形態では、第1の部材2Eと各第2の部材2Fとの境界部が駆動部材231、241付近で各駆動部材231、241の板面に沿って設けられているため、前述した第4実施形態よりも接合膜6のための接合面積を大きくすることができ、第1の部材2Eと各第2の部材2Fとの接合強度を極めて高いものとすることができる。
以上説明したようなアクチュエータ1は、例えば、レーザープリンタ、バーコードリーダー、走査型共焦点レーザー顕微鏡、イメージング用ディスプレイ等の画像形成装置に備える光スキャナに好適に適用することができる。
ここで、図18に基づき、画像形成装置の一例として、アクチュエータ1をイメージング用ディスプレイの光スキャナとして用いた場合を説明する。なお、説明の便宜上、図18中に示すスクリーンSの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
プロジェクタ(画像形成装置)9は、レーザーなどの光を照出する光源装置91と、クロスダイクロイックプリズム(Xプリズム)92と、1対のアクチュエータ1、1Aと、固定ミラー95とを有している。なお、アクチュエータ1Aは、アクチュエータ1と同様の構成である。
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
クロスダイクロイックプリズム92は、4つの直角プリズムを貼り合わせて構成され、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
このようなプロジェクタ9は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから、図示しないホストコンピュータからの画像情報に基づいて照出された光をクロスダイクロイックプリズム92で合成し、この合成された光を1対のアクチュエータ1、1Aによって2次元的に走査し、さらに固定ミラー95によって反射することで、スクリーンS上でカラー画像を形成するように構成されている。
クロスダイクロイックプリズム92で合成された光は、アクチュエータ1によって横方向に走査される(主走査)。そして、この横方向に走査された光は、アクチュエータ1Aによってさらに縦方向に走査される(副走査)。これにより、2次元カラー画像をスクリーンS上に形成することができる。
なお、アクチュエータ1、1Aのうちの少なくとも一方のアクチュエータを本発明のアクチュエータとすればよく、例えば、一方のアクチュエータに換えてガルバノミラーなどを用いて光走査を行ってもよい。
また、スクリーンSは、プロジェクタ9の本体に備えられたものであっても別体であってもよい。また、スクリーンSの表面(視認側の面)に光源装置91からの光を照射し表示してもよいし、スクリーンSの裏面(視認側の面とは反対側の面)に光源装置91からの光を照射し表面に透過させ表示してもよい。
以上、本発明のアクチュエータおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエータおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
前述した実施形態では、第1の部材および第2の部材が、平面視にて基体2全体を可動板22の回動中心軸に沿って分割するように形成されていたが、可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割されていれば、振動部のみを分割してもよく、第1の部材および第2の部材の形状はこれに限定されない。例えば、支持部と各連結部との境界部付近で振動部を分割するようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、駆動部材と支持部とを連結する弾性部が1対の弾性部材で構成されているものを説明したが、当該弾性部の形態はこれに限定されず、例えば、可動板の回動中心軸部に沿って設けられた棒状の部材で構成されていてもよい。
また、前述した実施形態では、駆動部材が1対設けられているものを説明した、駆動部材の形態は、これに限定されず、例えば、可動板を囲むように枠状をなしていてもよい。
また、前述した実施形態では、可動板と支持部とを連結する連結部が軸部材と駆動部材と弾性部とで構成されているもの、すなわち2自由度振動系について説明したが、当該連結部の形態は前述したものに限定されない。例えば、当該連結部が可動板の回動中心軸に沿って設けられた棒状の部材で構成されていてもよい。この場合、可動板と1対の連結部とが1自由度振動系を構成する。
また、前述した実施形態では、圧電素子により振動系を駆動するもの、すなわち圧電駆動方式を採用するアクチュエータについて説明したが、振動系の駆動方式としては、これに限定されず、例えば、電磁駆動方式であっても、静電駆動方式であってもよい。
また、前述した実施形態では、基体2と支持体3と中間層4をSOI基板を用いて形成した例を説明したが、これに限定されない。例えば、基体2と支持体3と中間層4とをそれぞれ別々の基板を用いて作成し、これらを接合してよい。この場合、各基板の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ガラス材料、樹脂材料、金属材料などで構成することができる。
また、前述した実施形態では、支持体3が分割され、その分割された部材同士が接合膜6を介して接合されていたが、当該分割された部材同士の接合は、アクチュエータの製造方法によっては、接着剤や固体接合等の他の接合方法を用いてもよい。また、支持体3は分割された構造を有さず予め一体で形成されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、中間層4が分割され、その分割された部材同士が接合膜6を介して接合されていたが、当該分割された部材同士の接合は、アクチュエータの製造方法によっては、接着剤や固体接合等の他の接合方法を用いてもよい。また、中間層4は分割された構造を有さず予め一体で形成されたものであってもよい。
本発明のアクチュエータの第1実施形態を示す斜視図である。 図1に示すアクチュエータの平面図である。 図2中のA−A線断面図である。 図1に示すアクチュエータに備えられた接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 図1に示すアクチュエータに備えられた接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 図1に示すアクチュエータの製造方法を説明するための図である。 図1に示すアクチュエータの製造方法を説明するための図である。 図1に示すアクチュエータの製造方法を説明するための図である。 図1に示すアクチュエータの製造方法を説明するための図である。 図7(b)に示す接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の第2実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 図13に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。 本発明の第3実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明のアクチュエータの第4実施形態を示す平面図である。 本発明のアクチュエータの第5実施形態を示す断面図である。 本発明の画像形成装置(イメージングディスプレイ)の一例を示す概略図である。
符号の説明
1、1A‥‥‥アクチュエータ 2‥‥‥基体 2A、2C、2E‥‥‥第1の部材 2B、2D、2F‥‥‥第2の部材 21‥‥‥支持部 22‥‥‥可動板 221‥‥‥光反射部 23、24‥‥‥連結部 231、241‥‥‥駆動部材 232、233、242、243‥‥‥弾性部材 234、244‥‥‥軸部材 3‥‥‥支持体 3A、3B、3E、3F‥‥‥部材 31‥‥‥空間(開口部) 4‥‥‥中間層 4A、4B‥‥‥部材 51〜54‥‥‥圧電素子 7‥‥‥SOI基板 71、73‥‥‥Si層 72‥‥‥SiO層 81、82‥‥‥レジストマスク 9‥‥‥プロジェクタ 91‥‥‥光源装置 911‥‥‥赤色光源装置 912‥‥‥青色光源装置 913‥‥‥緑色光源装置 92‥‥‥クロスダイクロイックプリズム(Xプリズム) 95‥‥‥固定ミラー 301‥‥‥Si骨格 302‥‥‥シロキサン結合 303‥‥‥脱離基 304‥‥‥活性手 511‥‥‥圧電体層 512、513‥‥‥電極 6‥‥‥接合膜 61‥‥‥表面 7A、7B‥‥‥構造体 1100‥‥‥プラズマ重合装置 1101‥‥‥チャンバー 1102‥‥‥接地線 1103‥‥‥供給口 1104‥‥‥排気口 1130‥‥‥第1の電極 1139(吸着機構)‥‥‥静電チャック 1140‥‥‥第2の電極 1170‥‥‥排気ポンプ 1171‥‥‥圧力制御機構 1180‥‥‥電源回路 1182‥‥‥高周波電源 1183‥‥‥マッチングボックス(整合器) 1184‥‥‥配線 1190‥‥‥ガス供給部 1191‥‥‥貯液部 1192‥‥‥気化装置 1193‥‥‥ガスボンベ 1194‥‥‥配管 1195‥‥‥拡散板 1200‥‥‥成膜装置 1211‥‥‥チャンバー(真空チャンバー) 1212‥‥‥基板ホルダー(成膜対象物保持部) 1215‥‥‥イオン源(イオン供給部) 1216‥‥‥ターゲット(金属酸化物材料) 1217‥‥‥ターゲットホルダー(ターゲット保持部) 1219‥‥‥ガス供給源 1220‥‥‥第1のシャッター 1221‥‥‥第2のシャッター 1230‥‥‥排気手段 1231‥‥‥排気ライン 1232‥‥‥ポンプ 1233‥‥‥バルブ 1250‥‥‥開口(照射口) 1253、1254‥‥‥グリッド 1255‥‥‥磁石 1256‥‥‥イオン発生室 1257‥‥‥フィラメント 1260‥‥‥ガス供給手段 1261‥‥‥ガス供給ライン 1262‥‥‥ポンプ 1263‥‥‥バルブ 1264‥‥‥ガスボンベ 1400‥‥‥成膜装置 1411‥‥‥チャンバー(真空チャンバー) 1412‥‥‥基板ホルダー(成膜対象物保持部) 1421‥‥‥シャッター 1430‥‥‥排気手段 1431‥‥‥排気ライン 1432‥‥‥ポンプ 1433‥‥‥バルブ 1460‥‥‥有機金属材料供給手段 1461‥‥‥ガス供給ライン 1462‥‥‥貯留槽 1463‥‥‥バルブ 1464‥‥‥ポンプ 1465‥‥‥ガスボンベ 1470‥‥‥ガス供給手段 1471‥‥‥ガス供給ライン 1473‥‥‥バルブ 1474‥‥‥ポンプ 1475‥‥‥ガスボンベ S‥‥‥スクリーン X‥‥‥回動中心軸

Claims (31)

  1. 可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
    前記振動部を支持する支持部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータ。
  5. 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエータ。
  6. 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載のアクチュエータ。
  7. 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載のアクチュエータ。
  8. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載のアクチュエータ。
  9. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載のアクチュエータ。
  10. 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載のアクチュエータ。
  11. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし10のいずれかに記載のアクチュエータ。
  12. 前記第1の部材の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし11のいずれかに記載のアクチュエータ。
  13. 前記第2の部材の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし12のいずれかに記載のアクチュエータ。
  14. 前記表面処理は、プラズマ処理である請求項12または13に記載のアクチュエータ。
  15. 前記第1の部材と前記接合膜との間に、中間層を有する請求項1ないし14のいずれかに記載のアクチュエータ。
  16. 前記第2の部材と前記接合膜との間に、中間層を有する請求項1ないし15のいずれかに記載のアクチュエータ。
  17. 前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されている請求項15または16に記載のアクチュエータ。
  18. 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし17のいずれかに記載のアクチュエータ。
  19. 前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外線である請求項18に記載のアクチュエータ。
  20. 前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項18または19に記載のアクチュエータ。
  21. 前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項18ないし20のいずれかに記載のアクチュエータ。
  22. 可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
    前記振動部を支持する支持部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  23. 可動板と、該可動板を回動可能とするように前記可動板に連結された1対の連結部とを備える振動部と、
    前記振動部を支持する支持部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記振動部は、前記可動板の回動中心軸に沿った方向での少なくとも1箇所で第1の部材と第2の部材とに分割され、前記第1の部材と前記第2の部材とが接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  24. 前記振動部は、前記可動板を平面視したときに前記可動板の回動中心軸に対し直角で前記可動板の中心を通る線分に沿って前記第1の部材および前記第2の部材に分割されており、前記第1の部材および前記第2の部材は、それぞれ、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし23のいずれかに記載のアクチュエータ。
  25. 前記振動部は、前記各連結部の途中または端部付近で分割され、前記第1の部材が前記第2の部材よりも前記可動板側に設けられている請求項1ないし23のいずれかに記載のアクチュエータ。
  26. 前記第1の部材は、前記第2の部材の構成材料よりも比重の大きい材料で構成され、かつ、前記第2の部材は、前記第1の部材の構成材料よりも剛性の低い材料で構成されている請求項25に記載のアクチュエータ。
  27. 前記第1の部材は、前記第2の部材の構成材料よりも比重の小さい材料で構成され、かつ、前記第2の部材は、前記第1の部材の構成材料よりも剛性の高い材料で構成されている請求項25に記載のアクチュエータ。
  28. 前記各連結部は、駆動部材と、前記駆動部材を回動可能に支持する弾性部と、前記可動板を前記駆動部材に対し回動可能となるように前記可動板と前記駆動部材とを連結する軸部材とを有し、前記各弾性部の捩れ変形を伴って前記各駆動部材を回動させることにより、前記各軸部材の捩れ変形を伴って前記可動板を回動させるように構成されている請求項1ないし27のいずれかに記載のアクチュエータ。
  29. 前記各弾性部は、前記可動板の回動中心軸を介して対向する1対の弾性部材を備え、前記駆動手段は、前記各弾性部材上に設けられた圧電素子を備え、前記各圧電素子を作動させることにより、前記1対の弾性部材を互いに反対方向へ曲げ変形させることにより、前記各弾性部全体を捩れ変形させて前記各駆動部材を回動させるように構成されている請求項28に記載のアクチュエータ。
  30. 前記可動板の一方の面には、光反射性を有する光反射部が設けられている請求項1ないし29のいずれかに記載のアクチュエータ。
  31. 請求項30に記載のアクチュエータを備えることを特徴とする画像形成装置。
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