JP2009139600A - アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクチュエータ1は、2自由度振動系を有する基体2と、支持体3、4とを有している。そして、基体2と支持体3とが接合膜81を介して、また、基体2と支持体4とが接合膜82を介して、それぞれ気密的に接合されている。これにより、2自由度振動系が閉空間内に封入されている。各接合膜81、82は、シロキサン結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものであり、これらの接合膜81、82は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、各接合膜81、82に発現した接着性によって基体2と支持体3および基体2と支持体4を気密的に接合している。
【選択図】図2
Description
特許文献1には、第1の振動系とこれに連結された第2の振動系とからなる2自由度振動系を有する基体と、この基体を支持する底部材および蓋部材と、2自由度振動系を駆動する圧電アクチュエータとを備えるアクチュエータが開示されている。
このようなアクチュエータにあっては、底部材と蓋部材との間で気密空間を形成し、この気密空間内に、2自由度振動系および圧電アクチュエータを配している。
従来、このようなアクチュエータを製造するに際しては、圧電アクチュエータを基体上に接合した後に、基体と底部材および蓋部材とを陽極接合することにより、アクチュエータを得る。
そのため、この陽極接合時の熱により圧電アクチュエータが脱分極温度以上に達して脱分極し、圧電アクチュエータの駆動力の低下を招いてしまうという問題がある。
また、脱分極温度の比較的高い材料で構成された圧電アクチュエータを用いると、圧電アクチュエータの構成材料の選択の幅が狭くなり、アクチュエータの設計自由度が小さくなってしまったり、所望の特性が得られなかったりしてしまう。
しかしながら、接着剤を均一な厚さで供給することは極めて困難であるため、基体と底部材および蓋部材との各間隙(ギャップ)の寸法精度が低下する。このため、アクチュエータの特性が低下を招く。
また、接着剤は気密性が低いため、気密空間の気密性が維持できないことも問題である。
本発明のアクチュエータは、複数の構造体であって、それらを接合することにより、内部に閉空間を形成し得る複数の構造体と、
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、気密性に優れた閉空間に可動板を収納してなり、外気との接触を確実に防止し得る信頼性の高いアクチュエータが得られる。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、接合箇所の接合強度をより高めることができる。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、各部をより強固に接合することができるようになる。
本発明のアクチュエータでは、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、化学的安定性、耐熱性等のSi骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、接合膜は、接合される各部の間を特に強固に、かつ高い気密性を有しつつ接合することができる。また、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜は、エネルギーが付与された活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、接合される各部の間をより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合される各部の間の寸法精度や透明性(透光性)が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。また、接合膜の表面に生じる凹凸の高さを緩和することができ、被着体に対する密着性をより高めることができる。
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とする。
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、気密性に優れた閉空間に可動板を収納してなり、外気との接触を確実に防止し得る信頼性の高いアクチュエータが得られる。また、接合膜は、アクチュエータの内部に設けられた閉空間内に収納される可動板や駆動手段と、閉空間外部との間の導通を確保する機能を有するものとなる。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高いアクチュエータが得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明のアクチュエータでは、前記複数の構造体の少なくとも1つは、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、シリコンを主材料として構成された構造体は、その表面が酸化膜でおおわれており、この酸化物の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような構造体は、表面処理を施すことなく、被着体に対して強固に密着させることができる。
該支持部の一方の面側に設けられた第1の支持体と、
前記支持部を介して前記第1の支持体と対向配置された第2の支持体とを有することが好ましい。
これにより、支持部が第1の支持体および第2の支持体によって補強されることとなり、振動部が振動しても、支持部が撓んだり、捩れたりするのを確実に防止することができる。
これにより、前記可動板および前記軸部材が支持部によって確実に固定されることとなるため、軸部材の弾性体としての設計が容易となり、アクチュエータの振動特性や耐久性を優れたものとすることができる。
これにより、駆動部材の設計を最適化すれば、可動板を直接駆動する場合に比べて、可動板の振動の振幅をより大きくとることができる。また、閉空間内に収納された駆動部材の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、信頼性の高いアクチュエータを得ることができる。
これにより、閉空間内に収納された可動板や駆動手段等を、長期にわたって減圧下または所定のガス存在下に置くことができる。その結果、可動板や駆動手段等が変質・劣化するのを確実に防止することができる。
これにより、減圧し過ぎによる閉空間の損傷等を確実に防止しつつ、可動板の回動駆動における空気抵抗を十分に低減することができる。また、気密空間内に酸素や水分等がほとんど存在しなくなるので、これによる可動板や駆動手段等の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、信頼性の高いアクチュエータを得ることができる。さらに、減圧による断熱作用により、可動板や駆動手段等の温度変化を緩和することができるため、外気温の急激な変化によって可動板や駆動手段等の温度特性が急激に変化してしまうのを防止することができる。
これにより、閉空間内の気密性を長期にわたって十分に保持することができ、信頼性に優れたアクチュエータが得られる。
本発明の光スキャナは、本発明のアクチュエータと、
前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い光スキャナが得られる。
本発明の画像形成装置は、本発明の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い画像形成装置が得られる。
<第1実施形態>
まず、本発明のアクチュエータの第1実施形態を説明する。
このようなアクチュエータ1においては、基体2と第1の支持体(構造体)3とが、接合膜81を介して接合されており、基体2と第2の支持体(構造体)4とが、接合膜82を介して接合されている。また、基体2と第1の支持体3および第2の支持体4との間には、可動部である2自由度振動系の駆動を許容するように空間が形成され、この空間内にて圧電体32が基体2および第1の支持体3に接合されている。このような接合膜81、82を介して接合された基体2、第1の支持体3および第2の支持体4により、2自由度振動系を内部の気密空間に収納する容器が構成されている。なお、以下では、第1の支持体3を省略して「支持体3」と言い、第2の支持体4を省略して「支持体4」と言う。
そして、この各接合膜81、82は、それぞれ、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、これにより接合膜81の表面に発現した接着性によって、基体2と支持体3との間および基体2と支持体4との間を接合している。
以下、アクチュエータ1を構成する各部を順次詳細に説明する。
基体2は、1対の第1の質量部21、22と、これらの間に設けられた第2の質量部23と、これらの質量部を囲む枠状の支持部(構造体)24とを備えている。
具体的には、基体2は、第2の質量部23を中心として、その一端側(図1および図2中、左側)に第1の質量部21が設けられ、他端側(図1および図2中、右側)に第1の質量部22が設けられて構成されている。
第2の質量部23の上面(後述する支持体4側の面)には、光反射性を有する光反射部20が設けられている。これにより、アクチュエータ1を光スキャナ、光スイッチ、光アッテネータ等の光学デバイスに適用することができる。すなわち、低電圧駆動が可能で、かつ、高い信頼性を有する安価な光学デバイスを得ることができる。
各第1の弾性連結部25、25および各第2の弾性連結部26、26は、同軸的に設けられており、これらを回動中心軸(回転軸)27として、第1の質量部21、22が支持部24に対して、また、第2の質量部23が第1の質量部21、22に対して回動可能となっている。
このような2自由度振動系は、基体2の全体の厚さよりも薄く形成されているとともに、図2にて上下方向で基体2の中心に位置している。換言すれば、基体2には、基体2の全体の厚さよりも薄い部分(以下、薄肉部という)が形成されており、この薄肉部に異形孔が形成されることにより、第1の質量部21、22と第2の質量部23と第1の弾性連結部25、25と第2の弾性連結部26、26とが形成されている。
支持体3の上面には、図2および図3に示すように、第2の質量部23に対応する部分に凹部31が形成されている。
この凹部31は、第2の質量部23が回動(振動)する際に、支持体3に接触するのを防止する逃げ部を構成する。凹部(逃げ部)31を設けることにより、アクチュエータ1全体の大型化を防止しつつ、第2の質量部23の振れ角(振幅)をより大きく設定することができる。なお、凹部29の深さが第2の質量部23の振れ角(振幅)に対し大きい場合などには、凹部31を設けなくともよい。
また、支持体3の上面には、図3に示すように、第1の質量部21に対応する部分に、平面視にて回動中心軸27に対してほぼ対称となるように一対の圧電体32が設けられ、また、第1の質量部22に対応する部分に、平面視にて回動中心軸27に対してほぼ対称となるように一対の圧電体32が設けられている。すなわち、本実施形態では、一対の圧電体32が2組(合計4個)設けられている。そして、このような一対の圧電体32により、各第1の質量部21、22が駆動される。すなわち、一対の圧電体32と各第1の質量部21、22とにより、駆動部材が構成される。
また、各圧電体32は、図示しない電源に接続されており、各圧電体32には、交流電圧(駆動電圧)が印加される。
本実施形態では、支持体4は、外部光を光反射部20に入射させ、光反射部20による反射光を外部に導出させる機能を有する。このため、支持体4としては、平坦性に優れ、かつ、光透過性に優れた基板を用いるのが好ましい。
本実施形態のアクチュエータ1にあっては、前述したように、基体2、支持体3、支持体4が気密空間を形成している。具体的には、凹部31、凹部28、29が互いに連通しているとともに、これらが気密空間をなしている。このような気密空間内に、前述の第1の質量部21、22、第2の質量部23、第1の弾性連結部25、25、第2の弾性連結部26、26が配されている。すなわち、支持体3、4は、可動部である第2の質量部23等の駆動を許容しつつ基体2を狭持するように1対設けられ、1対の支持体3、4間に、可動部を収容する気密空間を形成している。
より具体的には、I:第1の質量部21、22や第2の質量部23の振動し得るスペースの確保が容易となる。
また、II:アクチュエータ1の内部(前記気密空間内)へゴミ等の異物が侵入するのを防止することができる。III:2自由度振動系や圧電体32が外気と接触して、変質・劣化するのを防止することができる。IV:アクチュエータ1の内部(前記気密空間内)を減圧状態とすることにより、第1の質量部21、22や第2の質量部23が振動(回動)する際に生じる空気抵抗を低減して、低エネルギーで、より大きな角度での振動(回動)が可能となる。
以上のような構成のアクチュエータ1は、次のようにして駆動する。
各圧電体32との間に、例えば、正弦波(交流電圧)等を印加する。具体的には、例えば、図3中上側の2つの圧電体32に、図4(a)に示すような波形の電圧を印加し、図3中下側の2つの圧電体32に、図4(b)に示すような波形の電圧を印加する。
そして、この第1の質量部21、22の振動(駆動)に伴って、第2の弾性連結部26を介して連結されている第2の質量部23も、回動中心軸27(第2の弾性連結部26)を軸に、基体2の板面(図1における紙面)に対して傾斜するように振動(回動)する。このように、第2の質量部23を直接駆動するのではなく、第1の質量部21、22を駆動することによって間接的に第2の質量部23を駆動することにより、第1の質量部21、22(駆動部材)の設計を最適化すれば、第2の質量部23の振動の振幅をより大きくとることができる。
このような構成により、第2の質量部23が振動し得るスペース、および、第1の質量部21、22が振動し得るスペースとして、大きなスペースが確保されている。したがって、第1の質量部21、22の質量を比較的小さく設定すること等により、第1の質量部21、22を大きな振れ角で振動させた場合や、さらに第2の質量部23が共振によって大きな振れ角で振動した場合でも、各質量部21、22、23(2自由度振動系)が支持体3および支持体4に接触することを好適に防止することができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えば光スキャナに適用した場合には、より解像度の高いスキャニングを行うことが可能となる。
また、L1およびL2を小さくすることにより、各圧電体32の変位量に対する第1の質量部21、22の振れ角(回動角度)を大きくすることができる。これにより、駆動電圧を抑えつつ、第1の質量部21、22の振れ角を大きくし、ひいては、第2の質量部23の振れ角を大きくすることができる。
前記関係を満たすことにより、L1およびL2をより小さくすることができ、第1の質量部21、22の回動角度をより大きくすることができ、第2の質量部23の回動角度をさらに大きくすることができる。
これらによって、第1の質量部21、22の低電圧駆動と、第2の質量部23の大回動角度での振動(回動)とを実現することができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えばレーザープリンタや、走査型共焦点レーザー顕微鏡等の装置に用いられる光スキャナに適用した場合には、より容易に装置を小型化することができる。
ところで、このような質量部21、22、23よりなる振動系(2自由度振動系)では、第1の質量部21、22および第2の質量部23の振幅(振れ角)と、印加する交流電圧の周波数との間に、図5に示すような周波数特性が存在している。
この振動系では、圧電体32に印加する交流電圧の周波数Fが、2つの共振周波数のうち低いもの、すなわち、fm1とほぼ等しくなるように設定するのが好ましい。これにより、第1の質量部21、22の振幅を抑制しつつ、第2の質量部23の振れ角(回動角度)を大きくすることができる。
なお、本明細書中では、F[kHz]とfm1[kHz]とがほぼ等しいとは、(fm1−1)≦F≦(fm1+1)の条件を満足することを意味する。
図6は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図7は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
そして、この接合膜81にエネルギーを付与すると、図7に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が生じる。これにより、接合膜81の表面に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜81により、基体2の支持部24と支持体3との間が接合されている。
また、接合膜81は、気相成膜法のような方法で作製することができるので、厚さを厳密に制御することができ、接合される各部(基体2と支持体3)の間隙(ギャップ)の寸法精度を高めることができる。
また、接合膜81は、化学的に安定なSi骨格301の作用により、耐熱性に優れている。このため、アクチュエータ1が高温下に曝されたとしても、接合膜81に変質・劣化が生じ難い。したがって、接合箇所に剥離等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。
このような接合膜81としては、特に、接合膜81を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜81は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜81自体がより強固なものとなる。したがって、かかる接合膜81によれば、接合箇所の接合強度をより高めることができる。
なお、接合膜81中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述した化学的安定性、耐熱性等のSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜81の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜81の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
すなわち、接合膜81の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜81の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度や透光性(透明性)が著しく低下するおそれがある。その結果、特に図2に示す接合膜82のように、それ自体を光が透過するような構成のアクチュエータでは、接合膜82によって光が吸収されてしまうおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜81の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜81の厚さをできるだけ厚くすればよい。
図8〜図11は、それぞれ、第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図8〜図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1−1]基体2の製造
まず、図8(a)に示すように、基体2を形成するための基板5を用意する。
基板5の構成材料は、前述した基体2の構成材料と同様である。
そして、図8(b)に示すように、基板5の両方の面に、フォトレジストを塗布し、露光、現像を行う。これにより、図8(b)に示すように、支持部24の形状に対応するように、レジストマスク6を形成する。
次に、金属マスク7を介して、基板5の一方の面側を、前記凹部51に対応する部分が貫通するまでエッチングする。
なお、ここで、基板5をエッチングした後、金属マスク7は除去してもよく、除去せずに残存させてもよい。金属マスク7を除去しない場合、第2の質量部23上に残存した金属マスク7は光反射部20として用いることができる。
以上の工程により、図8(e)に示すように、各質量部21、22、23および支持部24が一体的に形成された構造体、すなわち基体2が得られる。
次に、図9(a)に示すように、支持体3を形成するためのガラス基板である基板9を用意する。なお、基板9として、シリコン基板または金属基板を用いることもできる。
そして、基板9の一方の面に、凹部31を形成する領域を除いた部分に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスク(図示せず)を形成する。
次に、この金属マスクを介して、基板9の一方の面側をエッチングした後、金属マスクを除去する。これにより、図9(b)に示すように、凹部31が形成された支持体3が得られる。
次に、支持体3上に、図9(c)に示すように、接合膜81を形成する。
以下、支持体3上に接合膜81を形成する方法について説明する。
このような接合膜81は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、プラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜81を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜81は、接合される各部の間を特に強固に、かつ高い気密性を有しつつ接合することができる。また、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜81は、エネルギーが付与されて活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
図12は、プラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図12に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図12に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
この静電チャック139により、図12に示すように、支持体3を鉛直方向に沿って支持することができる。また、支持体3に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で支持体3をプラズマ処理に供することができる。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
まず、支持体3をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜81は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm2程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
また、支持体3の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜81を得ることができる。
なお、支持体3の上面のうち、部分的に接合膜81を形成する場合、例えば、その領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜81を成膜するようにすればよい。
次に、ガラス基板で構成された支持体4を準備する。
[1−4]接合膜82の製造
次に、図10(a)に示すように、支持体4の下面に、接合膜81と同様にして接合膜82を形成する。
[2−1]次に、支持体3上に形成した接合膜81に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜81では、図6に示す脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、図7に示すように、接合膜81の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜81の表面に、基体2の下面との接着性が発現する。また、接合膜82においても同様に、基体2の上面との接着性が発現する。
このうち、接合膜81にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜81に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
(I)接合膜81にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図9(d)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜81中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜81の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜81に接着性を発現させることができる。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜81の面積に応じて異なるが、1mW/cm2〜1W/cm2程度であるのが好ましく、5mW/cm2〜50mW/cm2程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜81との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
また、接合膜81に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜81から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜81と基体2の間の接合強度を容易に制御することができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
また、加熱時間は、接合膜81の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、接合される部材間の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜81を加熱すればよいが、これらの熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
この場合、支持体3と基体2とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜81に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜81に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、支持体3と基体2の各構成材料によっては、支持体3や基体2に損傷等が生じるおそれがある。
なお、仮接合体の状態では、支持体3と基体2との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、支持体3と基体2との相対位置を微調整することにより、最終的に得られるアクチュエータ1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
なお、接合膜81の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜81の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、接合される部材間の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜81に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
この圧電体32は、支持体3の凹部31が形成された面側に、強誘電体材料を主材料として構成された強誘電体膜を成膜し、この強誘電体膜に対し、圧電体32の形状に対応するマスクを介してエッチングを行った後、マスクを除去することにより形成することができる。
また、圧電体32は、図9(e)に示すように、接合膜81を介して支持体3に接合されていてもよい。これにより、圧電体32と支持体3とを強固に接合することができる。また、接合膜81は、その厚さを厳密に制御することができるため、圧電体32と支持体3との間の離間距離の精度をより高めることができる。その結果、圧電体32を第1の質量部21、22に対して設計通りに作用させることができる。
エネルギーが付与されると、接合膜82の表面に、基体2との接着性が発現する。
[3]接合工程
[3−1]次に、前記準備工程で作製した基体2を用意する。そして、図10(c)に示すように、接着性が発現してなる接合膜81と基体2とが密着するように、支持体3と基体2とを貼り合わせる。これにより、図10(d)に示すように、支持体3と基体2とが、接合膜81を介して接合(接着)される。
また、基体2と支持体3の各熱膨張率が互いに異なる場合でも、これらを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化することにより、基体2と支持体3とを高い寸法精度で強固に接合することができる。
具体的には、基体2と支持体3との熱膨張率差にもよるが、基体2と支持体3の温度が25〜50℃程度である状態下で、これらを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基体2と支持体3との熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、アクチュエータ1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
また、基体2と支持体3は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、基体2と支持体3とをより強固に接合することができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、支持体3の接合膜81を成膜する領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。
なお、表面処理を施す支持体3が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、支持体3の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜81の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる支持体3の構成材料としては、例えば、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
なお、この場合、支持体3の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜81を成膜する領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、表面処理に代えて、支持体3の少なくとも接合膜81を成膜する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜81との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して支持体3上に接合膜81を成膜することにより、支持体3と接合膜81との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわちアクチュエータ1を得ることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、支持体3と接合膜81との間の接合強度を特に高めることができる。
なお、この表面処理には、支持体3に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
すなわち、このような材料で構成された基体2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた基体2を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、基体2の下面と接合膜81との接合強度を高めることができる。
また、基体2の下面に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、基体2の下面と接合膜81との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
また、基体2の下面が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、前記下面は、接合膜81に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜81の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、基体2の下面と接合膜81との間を短時間で強固に接合することができる。
このうち、基体2の下面には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような面には、水酸基が露出した接合膜81との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、支持体3と基体2とを特に強固に接合することができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の支持体3に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
例えば、基体2の支持体3との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜81と基体2の下面とが接触するように、支持体3と基体2の支持部24とを貼り合わせたとき、接合膜81の表面35に存在する水酸基と、基体2の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜81を備える支持体3と基体2の支持部24とが接合されると推察される。
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜81の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜81の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜81を備える支持体3と基体2とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された支持体3と基体2との間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm2)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm2)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
また、それとともに、圧電体32が支持体3と基体2とにより狭持される。
したがって、本接合工程を、減圧下または所定のガス存在下で行うことにより、2自由度振動系と各圧電体32とを収納する閉空間を、減圧状態または所定のガスで充填した状態で気密封止することができる。これにより、2自由度振動系および各圧電体32を、長期にわたって減圧下または所定のガス存在下に置くことができる。
以上説明したようなアクチュエータ1の製造方法によれば、基体2と支持体3、4とを簡単かつ強固に接合して、得られるアクチュエータ1の信頼性を高いものとすることができる。
また、このような気密空間を有するアクチュエータ1において、各接合膜81、82を介して接合された接合箇所におけるリーク率は、1×10−8Pa・m3/s以下であるのが好ましく、1×10−9Pa・m3/s以下であるのがより好ましい。かかるリーク率のアクチュエータ1は、気密空間内の気密性を長期にわたって十分に保持し得るものとなり、信頼性に優れたアクチュエータ1が得られる。
また、接合される各部の間の寸法精度を高めることができるので、アクチュエータ1をより設計通りに組み立てることができる。これにより、アクチュエータ1の動作特性も、設計値により近づけることができる。
なお、アクチュエータ1を得た後、このアクチュエータ1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([4A]および[4B])のうちの少なくとも1つの工程(アクチュエータ1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、アクチュエータ1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
これにより、例えば、支持体3の表面と基体2の表面に、それぞれ接合膜81の表面がさらに近接することとなり、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
なお、アクチュエータ1を加圧する際の圧力は、接合される各部材の構成材料や厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、接合される各部材の構成材料や厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、アクチュエータ1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、接合される各部材の構成材料によっては、接合される各部材に損傷等が生じるおそれがある。
これにより、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
このとき、アクチュエータ1を加熱する際の温度は、室温より高く、アクチュエータ1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、アクチュエータ1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図11(c)に示すように、アクチュエータ1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、アクチュエータ1の接合強度を特に高めることができる。
なお、本実施形態では、支持体3と基体2の支持部24との間が接合膜81を介して接合され、かつ、支持体4と基体2の支持部24との間が接合膜82を介して接合されているが、これらの接合膜81、82のいずれか一方は、接着剤のような接着機能を有する膜で代替されていてもよく、また、接合されているのではなく、一体的に形成されていてもよい。
さらに、これと同様に、接合膜82は、基体2の支持部24の上面に設けられていてもよい。すなわち、基体2の支持部24上に設けられた接合膜82と、支持体4の下面とが密着するように、支持体4と基体2とを貼り合わせるようにしてもよい。
また、接合膜は、支持体3側と基体2側の双方に成膜されていてもよい。
図13に示すアクチュエータ1では、支持体3上に成膜された接合膜811と、基体2の支持部24の下面に成膜された接合膜812とが密着するように、支持体3と基体2とが接合されている。また、これと同様に、支持体4の下面に成膜された接合膜821と、基体2の支持部24の上面に成膜された接合膜822とが密着するように、支持体4と基体2とが接合されている。
ここで、図13に示すアクチュエータ1において、接合膜811と接合膜812とが接合されるメカニズムについて説明する。この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の一方または双方に基づくものであると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って各接合膜811、812から切断される。その結果、接合膜811と接合膜812との間では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜811と接合膜812とがより強固に接合される。
次に、本発明のアクチュエータの第2実施形態について説明する。
図14は、第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図15は、第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図14および図15中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるアクチュエータは、各接合膜81、82の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。以下、接合膜81を代表に説明する。
このような接合膜81は、エネルギーが付与されると、脱離基303が金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離し、接合膜81の少なくとも表面付近に、図15に示す活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜81の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
接合膜81は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜81自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
さらに、接合膜81は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜81)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜81を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜81の表面35付近に存在していればよく、接合膜81のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜81の表面35付近に偏在していてもよい。脱離基303が表面35付近に偏在する構成とすることにより、接合膜81に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜81に、接合を担う機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基303が、接合膜81の導電性や透光性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜81を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜81は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜81に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜81に確実に結合しているものが好適に選択される。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜81は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
かかる構成の接合膜81は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜81は、支持体3に対して特に強固に接着するとともに、基体2に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、支持体3と基体2とを強固に接合することができる。
すなわち、接合膜81の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られなかったり、導電性が著しく低下するおそれがある。一方、接合膜81の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜81の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜81の厚さをできるだけ厚くすればよい。
<A> Aの方法では、接合膜81は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を支持体3に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜81のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
まず、接合膜81の成膜方法を説明するのに先立って、支持体3上にイオンビームスパッタリング法により接合膜81を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図16に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜81の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、支持体3上に接合膜81を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、イオン発生室256には、図16に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜81の成膜速度をより速くすることができる。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、支持体3および接合膜81が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
ここでは、支持体3上に接合膜81を成膜する方法について説明する。
まず、支持体3を用意し、この支持体3を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜81に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜81の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜81を成膜することができる。
なお、Bの方法を用いて接合膜81の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜81を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜81に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜81の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、支持体3および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜81が形成される。
なお、チャンバー211内は、前記工程[ii]において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜81を成膜することができる。
以上のような第2実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
次に、本発明のアクチュエータの第3実施形態について説明する。
以下、アクチュエータの第3実施形態について説明するが、前記第2実施形態にかかるアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜81がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜81は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜81から脱離し、接合膜81の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜81の表面に、前記第2実施形態と同様の接着性が発現する。
接合膜81は、支持体3上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜81は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜81の少なくとも表面35付近から脱離し、図15に示すように、接合膜81の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜81の表面35に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜81を備えた支持体3は、基体2に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
このような接合膜81は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜81)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜81を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、導電性を有する接合膜81は、前記第2実施形態と同様、電力線および信号線としての機能を併せ持つことができる。
具体的には、金属原子としては、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜81を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜81は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜81を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜81を成膜することができる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜81は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
すなわち、接合膜81の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜81の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜81の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜81の厚さをできるだけ厚くすればよい。
まず、接合膜81の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜81を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図18に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜81の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、支持体3および接合膜81が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、本実施形態では、有機金属材料供給手段460がチャンバー411に接続されている。ガス供給手段470は、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ475と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー411内に導くガス供給ライン471と、ガス供給ライン471の途中に設けられたポンプ474およびバルブ473とで構成されている。かかる構成のガス供給手段470では、バルブ473を開放した状態で、ポンプ474を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ475から、供給ライン471を介して、チャンバー411内に供給されるようになっている。
以上のような構成の成膜装置400を用いてMOCVD法により、以下のようにして支持体3上に接合膜81が形成される。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜81を支持体3上に形成することができる。
以上のように、接合膜81を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜81を成膜することができる。
以上のようにして、接合膜81を成膜することができる。
以上のような第3実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
このような光スキャナは、例えば、レーザープリンタ、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。この場合、光反射部20で反射した光を主走査および/または副走査して、対象物上に画像を形成する。
まず、電子写真方式を採用するプリンタに本発明を適用した例を説明する。
図19は、本発明の光スキャナを備える画像形成装置(プリンタ)の一例を示す全体構成の模式的断面図、図20は、図19に示す画像形成装置に備えられた露光ユニットの概略構成を示す図である。
感光体511の帯電された領域は、感光体511の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット513によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト551に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト551上にはフルカラートナー像が形成される。
中間転写ベルト551上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト551の回転に伴って二次転写位置に至り、二次転写ローラ555によって記録媒体Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ555は中間転写ベルト551に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。また、中間転写ベルト551は、駆動ローラ554を回転させることで一次転写ローラ552および従動ローラ553を従動回転させながら回転する。
一方、感光体511は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット516のクリーニングブレード561によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット516内の残存トナー回収部に回収される。
より具体的に説明すると、露光ユニット513は、図20に示すように、光スキャナであるアクチュエータ1と、レーザー光源531と、コリメータレンズ532と、fθレンズ533とを有している。
その際、アクチュエータ1の駆動(第2の質量部23の回動中心軸Xまわりの回動)により、光反射部20で反射した光(レーザーL)は、感光体511の軸線方向に走査(主走査)される。一方、感光体511の回転により、光反射部20で反射した光(レーザーL)は、感光体511の周方向に走査(副走査)される。また、レーザー光源531から出力されるレーザー光Lの強度は、図示しないホストコンピュータから受けた画像情報に応じて変化する。
このようにして露光ユニット513は、感光体511上を選択的に露光して画像形成(描画)を行う。
図21は、本発明の画像形成装置(イメージングディスプレイ)の一例を示す概略図である。
図21に示す画像形成装置519は、光スキャナであるアクチュエータ1と、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光源591、592、593と、クロスダイクロイックプリズム(Xプリズム)594と、ガルバノミラー595と、固定ミラー596と、スクリーン597とを備えている。
そして、光反射部20で反射した光(3色の合成光)は、ガルバノミラー595で反射した後に、固定ミラー596で反射し、スクリーン597上に照射される。
以上、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のアクチュエータでは、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前記第1〜3実施形態にかかるアクチュエータは、2自由度振動系を有するねじり振動子を用いたアクチュエータであるため、マイクロマシン技術を用いて製造することができ、小型化を図ることができる。特に、2自由度振動系を有するねじり振動子は、駆動電圧を低減しつつ、大きな振幅で可動部(第2の質量部23)を駆動することができる。
Claims (22)
- 複数の構造体であって、それらを接合することにより、内部に閉空間を形成し得る複数の構造体と、
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載のアクチュエータ。
- 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 複数の構造体であって、それらを接合することにより、内部に閉空間を形成し得る複数の構造体と、
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 複数の構造体であって、それらを接合することにより、内部に閉空間を形成し得る複数の構造体と、
前記閉空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記複数の構造体が接合膜を介して気密的に接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記複数の構造体を気密的に接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし12のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記複数の構造体の少なくとも1つは、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記複数の構造体として、前記振動部を囲うように設けられた、前記振動部を支持する枠状の支持部と、
該支持部の一方の面側に設けられた第1の支持体と、
前記支持部を介して前記第1の支持体と対向配置された第2の支持体とを有する請求項1ないし14のいずれかに記載のアクチュエータ。 - 前記可動板、前記軸部材および前記支持部は、一体的に形成されている請求項15に記載のアクチュエータ。
- さらに、前記軸部材の途中に設けられ、前記可動板を回動させる駆動部材を有する請求項1ないし16のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記閉空間内は、減圧状態または不活性ガス充填状態に維持されている請求項1ないし17のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記減圧状態における圧力は、1×10−3〜1×103Paである請求項18に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜を介して接合された接合個所におけるリーク率は、1×10−8Pa・m3/s以下である請求項1ないし19のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 請求項1ないし20のいずれかに記載のアクチュエータと、
前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする光スキャナ。 - 請求項21に記載の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
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