JP2009134030A - アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のアクチュエータは、光反射部29を有し、回動可能に設けられた第2の質量部23を有し、第2の質量部23を回動させることにより、光反射部29で反射した光を対象物に走査するものであって、接合膜15を介して支持部24に接合された発光部11と受光部とからなる光学センサを有する。この接合膜15は、エネルギー付与前において、シロキサン結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含み、エネルギーを付与することにより、一部の脱離基がSi骨格から脱離し、代わりに活性手が生じる。これにより、接合膜15に接着性が発現し、支持部24と発光部11とが接合されている。
【選択図】図3
Description
例えば、特許文献1にかかるアクチュエータ(光スキャナ)は、1自由度振動系の捩り振動子で構成されている。すなわち、かかるアクチュエータは、質量部(可動板)を捩りバネを介して支持部に対し回動可能に支持して構成されている。
そして、質量部上には光反射部が設けられており、捩りバネを捩れ変形させながら質量部を回動駆動させることにより、光反射部で反射した光を走査する。これにより、光走査により描画を行うことができる。
従来、かかるアクチュエータにあっては、一般に、質量部に対し反射式の光学センサを対向させ、その光学センサの検知結果に基づいて、質量部の挙動を検知するようになっている。
また、接着剤の硬化に長時間を要するため、アクチュエータの製造効率が低いという問題もある。
本発明のアクチュエータは、可動板と、該可動板を支持する支持部とを有し、前記可動板が前記支持部に対して回動可能に設けられた基体と、
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とする。
これにより、センサの取り付け精度を高めることによって、可動板の挙動の検出精度を高く、安定した駆動を行うことができ、かつ製造効率の高いアクチュエータを得ることができる。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、基体およびセンサに対して、特に高い接合強度を示すとともに、熱伝導性に優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、基体とセンサをより強固に接合することができる。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、化学的安定性、耐熱性等のSi骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、基体とセンサとの間を特に強固に接合するとともに、これらの間の熱抵抗をより低減することができる。また、プラズマ重合法で作製された接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、基体とセンサとをより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。
本発明のアクチュエータでは、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
これにより、基体とセンサとの間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。また、接合膜の表面に生じる凹凸の高さを緩和することができ、被着体に対する密着性をより高めることができる。
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とする。
これにより、センサの取り付け精度を高めることによって、可動板の挙動の検出精度を高く、安定した駆動を行うことができ、かつ製造効率の高いアクチュエータを得ることができる。また、接合膜が、電力線や信号線としての機能を併せ持つことができる。また、金属原子を適宜選択することにより、接合膜は、透光性を有するものが得られる。
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とする。
これにより、センサの取り付け精度を高めることによって、可動板の挙動の検出精度を高く、安定した駆動を行うことができ、かつ製造効率の高いアクチュエータを得ることができる。また、接合膜が、電力線や信号線としての機能を併せ持つことができる。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高いアクチュエータが得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明のアクチュエータでは、さらに、前記センサからの信号を受信して、前記可動板の挙動として、前記可動板の振動の振幅、振動数および変位量のうちの少なくとも1つを検知する挙動検知手段を有することが好ましい。
これにより、検知手段の検知結果に基づいて、可動板の振幅、振動数、位相を所望のものとし、より確実に、可動板を安定的に駆動することができる。
前記挙動検知手段は、前記受光部によって受光された光の強度に基づいて、前記可動板の挙動を光学的に検知するように構成されていることが好ましい。
これにより、発光部と受光部とで透過式または反射式の光学センサを構成し、可動板の挙動をより正確に検知することができる。
前記接合膜を介して、前記光導波路が前記支持部に接合されていることが好ましい。
これにより、可動板が薄くても、比較的簡単に、発光部からの光の径を可動板の厚さ以下とすることができる。その結果、アクチュエータの設計自由度をより向上させるとともに、光学センサの検知精度を向上することができる。
前記接合膜を介して、前記光導波路が前記支持部に接合されていることが好ましい。
これにより、可動板が薄くても、比較的簡単に、受光部の径を可動板の厚さ以下とすることができる。その結果、アクチュエータの設計自由度をより向上させるとともに、光学センサの検知精度を向上することができる。
これにより、光導波路は、優れた特性を示す光伝送経路を構成するとともに、接合膜との親和性に優れていることから、支持部に対して強固に接合される。
本発明のアクチュエータでは、前記支持部は、シリコン材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、シリコン材料が接合膜との親和性に優れた材料であることにより、支持部と光導波路とがより確実に接合される。
前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする。
これにより、優れた走査特性を有する光スキャナを提供することができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする。
これにより、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
<第1実施形態>
まず、本発明のアクチュエータの第1実施形態を説明する。
図1は、本発明のアクチュエータの第1実施形態を示す平面図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1中のB−B線断面図、図4は、図1に示すアクチュエータの電極の配置を示す平面図、図5は、図1に示すアクチュエータの制御系を示すブロック図、図6は、図1に示すアクチュエータの駆動電圧の一例(交流電圧)を示す図、図7は、印加した交流電圧の周波数と、第1の質量部および第2の質量部の振幅との関係を示すグラフ、図8は、図1に示すアクチュエータに備えられた光学センサを説明するための斜視図、図9は、図1に示すアクチュエータに備えられた光学センサの動作を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1および図4中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図3中の上側を「上」、下側を「下」、紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」と言う。
基体2は、一対の第1の質量部(駆動部材)21、22と、上面(後述する対向基板3とは反対側の面)に光反射部29が設けられた第2の質量部(可動板)23と、これらを支持するための支持部24とを備えている。
具体的には、基体2は、第2の質量部23を中心として、その一端側(図1および図2中、左側)に第1の質量部21が設けられ、他端側(図1および図2中、右側)に第1の質量部22が設けられて構成されている。
また、第2の質量部23上には、光反射部29が設けられている。これにより、アクチュエータ1を、光スキャナ、光スイッチ、光アッテネータなどの光学デバイスに適用することができる。
さらに、基体2は、図1および図2に示すように、第1の質量部21、22と支持部24とを連結する一対の第1の弾性連結部25、25と、第1の質量部21、22と第2の質量部23とを連結する一対の第2の弾性連結部26、26とを備えている。
このように、基体2は、第1の質量部21、22と第1の弾性連結部25、25とからなる第1の振動系と、第2の質量部23と第2の弾性連結部26、26とからなる第2の振動系とで構成された2自由度振動系を有している。
また、本実施形態では、前記薄肉部の上面が支持部24の上面と同一面上に位置することにより、前記薄肉部の下方には、各質量部21、22、23の回動のための空間(凹部)28が形成される。
なお、基体2は、SOI基板等の積層構造の基板から、第1の質量部21、22と、第2の質量部23と、支持部24と、第1の弾性連結部25、25と、第2の弾性連結部26、26を形成したものであってもよい。
対向基板3は、例えば、シリコンまたはガラスを主材料として構成されている。
対向基板3の上面には、図2および図4に示すように、第2の質量部23に対応する部分に開口部31が形成されている。
この開口部31は、第2の質量部23が回動(振動)する際に、対向基板3に接触するのを防止する逃げ部を構成する。開口部(逃げ部)31を設けることにより、アクチュエータ1全体の大型化を防止しつつ、第2の質量部23の振れ角(振幅)をより大きく設定することができる。アクチュエータ1において、対向基板3がシリコンを主材料として構成されている場合、ガラス材料などで対向基板が構成されている場合に比し、前述のような開口部などの逃げ部を簡単にそして高精度(高アスペクト比)に形成することができる。
なお、第1の質量部21、22は、各電極32と対向する面に、それぞれ、絶縁膜(図示せず)が設けられている。これにより、第1の質量部21、22と各電極32との間での短絡が発生するのが好適に防止される。
また、前述した基体2の上面には、前述した第2の質量部23の側面の通過を検知する透過式の光学センサ10が設けられている。
また、前述した基体2の上面には、前述した第2の質量部23の側面の通過を検知する透過式の光学センサ10が設けられている。
発光部11は、第2の質量部23の側方(図1にて右側)からその回動空間に向け光を発光するものであり、光導波路111と、発光素子112とを有している。
光導波路111は、光伝送経路である線状のコア部113と、このコア部113の外周を覆うクラッド部114と有している。
このようなコア部113の外周を覆うクラッド部114は、前述した基体2の支持部24上に接合膜15を介して接合されており、このクラッド部114によりコア部113が支持されている。
また、線状のコア部113の両端面のうち、一端面115は第2の質量部23の回動空間に対向し、他端面116は発光素子112に接続されている。これにより、コア部113を通じて、発光素子112の光を第2の質量部23の回動空間へ照射することができる。
一方、受光部12は、前述した発光部11からの光を受光するものであり、光導波路121と、受光素子122とを有している。
光導波路121は、前述した光導波路111と同様に、光伝送経路である線状のコア部123と、このコア部123の外周を覆うクラッド部124と有している。
このようなコア部123の外周を覆うクラッド部124は、前述した基体2の支持部24上に接合膜15を介して接合されており、このクラッド部124によりコア部123が支持されている。
そして、これらの接合膜15は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、これにより接合膜15の表面に発現した接着性によって、支持部24とクラッド部114、および、支持部24とクラッド部124とを接合している。
なお、接合膜15については、後に詳述する。
また、線状のコア部123の両端面のうち、一端面125は第2の質量部23の回動空間に対向し、他端面126は受光素子122に接続されている。これにより、コア部123を通じて、発光素子112から第2の質量部23の回動空間を通過した光を受光素子122で受光することができる。
このような光学センサ10は、前述した駆動手段の駆動(具体的には通電回路13の駆動)を制御する制御回路14に接続されている。これにより、光学センサ10の検知結果に基づき、アクチュエータ1の駆動を制御することができる。
図5に示すように、本実施形態のアクチュエータ1において、前述した電極32は、通電回路13に接続されている。この通電回路13は、各電極32と第1の質量部21、22との間に電圧を選択的に印加する(電位差を生じさせる)ものである。
そして、この通電回路13は、通電回路13の駆動を制御する機能を有する制御回路14に接続されている。
すなわち、制御回路14は、受光部12によって受光された光の強度に基づいて第2の質量部23の挙動を検知する機能と、その検知結果に基づいて駆動手段の駆動(通電回路13の駆動)を制御する機能とを有している。
より具体的に説明すると、制御回路14は、図5に示すように、CPU141、AD変換回路142、ROM143、RAM144を有している。
そして、CPU141は、通電回路13に接続されているとともに、AD変換回路142を介して受光素子122に接続されている。
ROM143は、受光素子122の検知強度に基づいて第2の質量部23の挙動を算出するためのプログラムや、算出された挙動に基づいて通電回路13を制御するためのプログラムなどが格納されている。
RAM144は、プログラムにより算出された値等を記憶する機能を有する。
CPU141は、ROM143に格納されたプログラムに従い、AD変換回路142でデジタル化された検知強度に基づき、第2の質量部23の挙動を検知する。また、CPU141は、ROM143に格納されたプログラムに従い、検知した挙動に基づき、第2の質量部23の挙動を所望のものとするように、通電回路13を制御する。
これにより、挙動検知のための領域を第2の質量部23の板面に別途設けることなく、第2の質量部23の挙動を検知し、これに基づき、第2の質量部23を安定的に駆動することができる。特に、挙動検知のための領域を第2の質量部23の板面に別途設ける必要がないので、第2の質量部23の小型化、ひいてはアクチュエータ1の小型化を図ることができ、また、アクチュエータ1の設計自由度を向上させることができる。
すなわち、第1の質量部21、22と各電極32との間に、例えば、正弦波(交流電圧)等を印加する。具体的には、例えば、第1の質量部21、22をアースしておき、図4中上側の2つの電極32に、図6(a)に示すような波形の電圧を印加し、図4中下側の2つの電極32に、図6(b)に示すような波形の電圧を印加する。すると、第1の質量部21、22と各電極32との間に静電気力(クーロン力)が生じる。
そして、この第1の質量部21、22の振動(駆動)に伴って、第2の弾性連結部26を介して連結されている第2の質量部23も、回動中心軸27(第2の弾性連結部26)を軸に、基体2の板面(図1における紙面)に対して傾斜するように振動(回動)する。
したがって、第2の質量部23の回動に伴い、光反射部29も回動し、光反射部29に照射された光を走査することができる。
このような構成により、第2の質量部23が振動し得るスペース、および、第1の質量部21、22が振動し得るスペースとして、大きなスペースが確保されている。したがって、第1の質量部21、22の質量を比較的小さく設定すること等により、第1の質量部21、22を大きな振れ角で振動させた場合や、さらに第2の質量部23が共振によって大きな振れ角で振動した場合でも、各質量部21、22、23(2自由度振動系)が対向基板3に接触することを好適に防止することができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えば光スキャナに適用した場合には、より解像度の高いスキャニングを行うことが可能となる。
また、L1およびL2を小さくすることにより、第1の質量部21、22と各電極32との間の距離を小さくすることができ、これにより、静電気力が大きくなり、第1の質量部21、22と各電極32に印加する交流電圧を小さくすることができる。
この場合、第2の質量部23の最大回転角度が、20°以上となるように構成されるのが好ましい。
また、このように、L1およびL2を小さくすることにより、第1の質量部21、22と各電極32との間の距離をより小さくすることができ、第1の質量部21、22と各電極32に印加する交流電圧をさらに小さくすることができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えばレーザープリンタや、走査型共焦点レーザー顕微鏡等の装置に用いられる光スキャナに適用した場合には、より容易に装置の小型化を図ることができる。
なお、前述したように、本実施形態では、L1とL2とはほぼ等しく設定されているが、L1とL2とが異なっていてもよいことは言うまでもない。
すなわち、かかる振動系は、第1の質量部21、22の振幅と、第2の質量部23の振幅とが大きくなる2つの共振周波数fm1[kHz]、fm3[kHz](ただし、fm1<fm3)と、第1の質量部21、22の振幅がほぼ0となる、1つの反共振周波数fm2[kHz]とを有している。
なお、本明細書中では、F[kHz]とfm1[kHz]とがほぼ等しいとは、(fm1−1)≦F≦(fm1+1)の条件を満足することを意味する。
第2の質量部23の平均厚さは、1〜1500μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
第1の弾性連結部25のばね定数k1は、1×10−4〜1×104Nm/radであるのが好ましく、1×10−2〜1×103Nm/radであるのがより好ましく、1×10−1〜1×102Nm/radであるのがさらに好ましい。これにより、第2の質量部23の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
また、第1の弾性連結部25のばね定数k1と第2の弾性連結部26のばね定数をk2とは、k1>k2なる関係を満足するのが好ましい。これにより、第1の質量部21、22の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部23の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
このようにして求められる第1の振動系の固有振動数ω1と第2の振動系の固有振動数ω2とは、ω1>ω2なる関係を満足するのが好ましい。これにより、第1の質量部21、22の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部23の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
第2の質量部23は、非駆動状態(ホームポジション)にあるとき、図8および図9(a)に示すように、発光部11のコア部113の一端面115と受光部12のコア部123の一端面125とのそれぞれよりも下方に位置している。すなわち、発光部11および受光部12は、その対象(光学センサ10の検知対象)とする非駆動状態の第2の質量部23に対しその板厚方向にずれて配置されている。これにより、単振動を起こしている第2の質量部23の回動中心軸27から一定の距離を隔てた部位の通過を光学センサ10が検知することにより、その通過時刻に基づいて、第2の質量部23の回動方向や回動速度を知ることができる。すなわち、第2の質量部23の挙動(位相、振動数、絶対変位)を光学センサ10の検知結果から直接的に(第2の質量部23が単振動を起こしているところから推定することなく)求めることができる。
そして、アクチュエータ1が駆動状態となると、第2の質量部23が、図9(b)に示すように、発光部11から受光部12への光を一時的に遮った後、図9(c)に示すように、振れ角が最大となる位置へ至る。
前述したように第2の質量部23は単振動し、かつ、光学センサ10は固定配置されているので、発光部11から受光部12への光が遮られるタイミングや時間長さを計測に基づいて、第2の質量部23の挙動を検知することができる。
また、発光部11および受光部12は、その対象とする非駆動状態の第2の質量部23に対しその板厚方向にずれて配置されているので、これにより、単振動を起こしている第2の質量部23の回動中心軸27から一定の距離を隔てた部位の通過を光学センサ10が検知することにより、その通過時刻に基づいて、第2の質量部23の回動方向や回動速度を知ることができる。すなわち、第2の質量部23の挙動(位相、振動数、絶対変位)を光学センサ10の検知結果から直接的に(第2の質量部23が単振動を起こしているところから推定することなく)求めることができる。
また、受光素子122が光導波路121を介して受光するように構成されているので、第2の質量部23が薄くても、比較的簡単に、受光部12の径を第2の質量部23の厚さ以下とすることができる。その結果、アクチュエータ1の設計自由度をより向上させるとともに、光学センサ10の検知精度を向上することができる。
図13は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図14は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
接合膜15のエネルギーを付与する前の状態は、図13に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むものである。
そして、この接合膜15にエネルギーを付与すると、図14に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が生じる。これにより、接合膜15の表面に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜15により、支持部24と各クラッド部114、124との間がそれぞれ接合されている。
また、このような接合膜15は、流動性を有しない固体状のものである。このため、従来の流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜15)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜15を用いて製造されたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。これにより、クラッド部114、124の位置精度のさらなる向上を図ることができる。
さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。したがって、アクチュエータ1は、製造効率に優れたものとなる。
なお、接合膜15中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜15の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜15の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
すなわち、接合膜15の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜15の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜15の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜15の厚さをできるだけ厚くすればよい。
図10ないし図12は、それぞれ、第1実施形態のアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図10ないし図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
次に、シリコン基板5の一方の面に、図10(b)に示すように、支持部24と各質量部21、22、23との形状に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスク6を形成する。
そして、図10(c)に示すように、シリコン基板5の他方の面に、フォトレジストを塗布し、露光、現像を行う。これにより、図10(c)に示すように、支持部24の形状に対応するように、レジストマスク7を形成する。なお、レジストマスク7の形成は、金属マスク6の形成よりも先に行ってもよい。
金属マスク6の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における金属膜の成膜においても、同様の方法を用いることができる。
エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
そして、金属マスク6を除去した後、図10(e)に示すように、第2の質量部23上に金属膜を成膜して、光反射部29を形成する。
なお、ここで、シリコン基板5のエッチングを行った後、金属マスク6は除去してもよく、除去せずに残存させてもよい。金属マスク6を除去しない場合、第2の質量部23上に残存した金属マスク6は光反射部29として用いることができる。
以上の工程により、図10(e)に示すように、各質量部21、22、23および支持部24が一体的に形成された基体2が得られる。
そして、シリコン基板9の一方の面に、開口部31を形成する領域を除いた部分に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスクを形成する。
次に、この金属マスクを介して、シリコン基板9の一方の面側をエッチングした後、金属マスクを除去する。これにより、開口部31が形成された対向基板3が得られる。
しかる後に、例えば可動イオンを含むガラスで対向基板3の一方の面に成膜して、図11(b)に示すように、対向基板3上に接合膜4を形成する。
電極32は、接合膜4に金属膜を成膜し、電極32の形状に対応するマスクを介して金属膜のエッチングを行った後、マスクを除去することにより形成することができる。
次に、図11(d)に示すように、前記工程[1]で得られた構造体と、前記工程[2]で接合膜4が成膜された対向基板3とを、例えば陽極接合により接合する。
光導波路111、121は、公知の光導波路の形成技術を用いて作製することができる。例えば、クラッド部の構成材料で支持部24上に第1の層を形成し、次いで、その第1の層上にコア部をパターンニングした後に、再度、クラッド部の構成材料でコア部を覆うように第2の層を形成することにより、クラッド部を形成して、光導波路を得ることができる。
このような接合膜15は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、プラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜15を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜15は、支持部24と各クラッド部114、124との間をそれぞれ特に強固に接合することができる。また、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜15は、エネルギーが付与されて活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
図15は、プラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図15中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図15に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図15に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
この静電チャック139により、図15に示すように、基体2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、基体2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基体2をプラズマ処理に供することができる。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
図15に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部160の動作状況に応じて、適宜設定される。
[3−1]まず、基体2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜15は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm2程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜15の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜15の厚さを容易に調整することができる。このため、支持部24と各クラッド部114、124との間の距離をそれぞれ厳密に制御することができる。
また、基体2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜15を得ることができる。
なお、基体2の上面のうち、部分的に接合膜15を形成する場合、例えば、その領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜15を成膜するようにすればよい。
エネルギーが付与されると、接合膜15では、図13に示す脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、図14に示すように、接合膜15の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜15の表面に、各クラッド部114、124との接着性が発現する。
このうち、接合膜15にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜15に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
(I)接合膜15にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図12(b)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜15中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜15の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜15に接着性を発現させることができる。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜15の面積に応じて異なるが、1mW/cm2〜1W/cm2程度であるのが好ましく、5mW/cm2〜50mW/cm2程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜15との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、CO2レーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜15から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜15と各クラッド部114、124との間の接合強度を容易に制御することができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
また、加熱時間は、接合膜15の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、接合される部材間の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜15を加熱すればよいが、これらの熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
この場合、接合される部材同士が互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜15に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜15に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、接合される部材の各構成材料によっては、部材に損傷等が生じるおそれがある。
なお、仮接合体の状態では、接合される部材間は、まだ接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、接合される部材の相対位置を微調整することにより、最終的に得られるアクチュエータ1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
なお、接合膜15の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜15の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、接合される部材間の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜15に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
ここで、上記のようにして接合される基体2と各光導波路111、121の各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。基体2と各光導波路111、121の各熱膨張率がほぼ等しければ、これらを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られるアクチュエータ1において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
すなわち、基体2と各光導波路111、121の各熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
また、この場合、基体2と各光導波路111、121との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、接合膜15を用いることにより、上述したような低温下でも、基体2と各光導波路111、121とを強固に接合することができる。
なお、基体2の接合膜15を成膜する領域には、あらかじめ、接合膜15との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、基体2と接合膜15との間の接合強度をより高めることができ、最終的には、基体2と各光導波路111、121との接合強度を高めることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜15を形成するために、基体2の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す基体2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
このような材料で構成された基体2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基体2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、基体2と接合膜15とを強固に密着させることができる。
なお、この場合、基体2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜15を成膜する領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜15との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基体2上に接合膜15を成膜することにより、基体2と接合膜15との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわちアクチュエータ1を得ることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基体2と接合膜15との間の接合強度を特に高めることができる。
なお、この表面処理には、基体2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の基体2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
例えば、各光導波路111、121の基体2との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜15と各光導波路111、121とが接触するように、基体2と各光導波路111、121とを貼り合わせたとき、接合膜15の表面35に存在する水酸基と、各光導波路111、121の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜15を備える基体2と各光導波路111、121とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜15と各光導波路111、121との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜15を介して基体2と各光導波路111、121とがより強固に接合されると推察される。
なお、上記では、基体2上に成膜された接合膜15と各光導波路111、121とが密着するように貼り合わせる場合について説明しているが、各光導波路111、121の下面に成膜された接合膜15と基体2とが密着するように、基体2と各光導波路111、121とを貼り合わせるようにしてもよい。
また、アクチュエータ1を得た後、このアクチュエータ1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([4A]および[4B])のうちの少なくとも1つの工程(アクチュエータ1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、アクチュエータ1の各部の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
これにより、上記各部の表面と隣接する接合膜の表面とがより近接し、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
また、アクチュエータ1を加圧することにより、アクチュエータ1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、アクチュエータ1における接合強度をさらに高めることができる。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、アクチュエータ1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
これにより、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
このとき、アクチュエータ1を加熱する際の温度は、室温より高く、アクチュエータ1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、アクチュエータ1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
以上のような工程を行うことにより、アクチュエータ1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
次に、本発明のアクチュエータの第2実施形態について説明する。
図16は、本発明のアクチュエータの第2実施形態を示す平面図、図17は、図16に示すアクチュエータに備えられた光学センサを説明するための斜視図、図18は、図16に示すアクチュエータに備えられた光学センサの動作を説明するための図である。
本実施形態にかかるアクチュエータ1Aは、光学センサの構成が異なる以外は、前述した第1実施形態にかかるアクチュエータ1と同様である。
より具体的に説明すると、光学センサ10Aは、発光素子112からの光を光導波路111Aを介して第2の質量部23の回動空間に向け照射するとともに、第2の質量部23で反射した前記光を光導波路111Aを介して受光素子122で受光するようになっている。
そして、線状のコア部113Aの両端面のうち、一端面115Aは第2の質量部23の回動空間に対向し、他端面116Aは発光素子112に接続されている。これにより、コア部113Aを通じて、発光素子112の光を第2の質量部23の回動空間へ照射することができる。
線状のコア部123Aの両端面のうち、一端面125Aは第2の質量部23の回動空間に対向し、他端面126Aは受光素子122に接続されている。これにより、コア部123Aを通じて、第2の質量部23で反射した光を受光素子122で受光することができる。
そして、アクチュエータ1Aが駆動状態となると、第2の質量部23が、図18(b)に示すように、一端面115Aから射出した光が第2の質量部23の側面で反射して一端面125Aに一時的に入光した後、図18(c)に示すように、振れ角が最大となる位置へ至る。
その後、第2の質量部23が、図18(d)に示すように、一端面115Aから射出した光が第2の質量部23の側面で再度反射して一端面125Aに一時的に入光した後、図18(e)に示すように、ホームポジションへ至る。
このように、発光素子112(発光部)と受光素子122(受光部)が、ともに前記回動空間に対し一方の側に配設され、これらの対象とする第2の質量部23が所定の回動角となったときのみ、発光素子112からの光が第2の質量部23の側面にて反射して受光素子122で受光される。そして、受光素子122での受光の有無に基づいて、第2の質量部23の挙動を検知する。
以上説明したようなアクチュエータ1Aにあっても、前述した第1実施形態にかかるアクチュエータ1と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明のアクチュエータの第3実施形態について説明する。
図19は、本発明のアクチュエータの第3実施形態を示す平面図である。
本実施形態にかかるアクチュエータ1Bは、光学センサの検知対象が第1の質量部22である以外は、前述した第2実施形態にかかるアクチュエータ1Aと同様である。
より具体的に説明すると、本実施形態にかかるアクチュエータ1Bは、第1の質量部22の側面(図19における右側面)の通過を検知する反射式の光学センサ10Bを備え、この光学センサ10Bによって検知された光の強度に基づき、第2の質量部23の挙動を検知するようになっている。
さらに具体的に説明すると、光導波路111Bは、光伝送経路である線状のコア部113B、123Bと、これらのコア部113B、123Bのそれぞれの外周を覆うクラッド部114Bと有している。
以上説明したようなアクチュエータ1Aにあっても、前述した第1実施形態にかかるアクチュエータ1と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明のアクチュエータの第4実施形態について説明する。
図20は、第4実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図21は、第4実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図20および図21中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
このような接合膜15は、エネルギーが付与されると、脱離基303が金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離し、接合膜15の少なくとも表面付近に、図21に示す活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜15の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
接合膜15は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜15自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
また、接合膜15が導電性を有する場合、接合膜15の抵抗率は、構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜15を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜15は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜15に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜15に確実に結合しているものが好適に選択される。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のことを考慮すると、接合膜15としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO2)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
すなわち、接合膜15の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜15の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜15の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜15の厚さをできるだけ厚くすればよい。
<A> Aの方法では、接合膜15は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を基体2に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜15のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
まず、接合膜15の成膜方法を説明するのに先立って、基体2上にイオンビームスパッタリング法により接合膜15を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図22に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜15の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、基体2上に接合膜15を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、イオン発生室256には、図22に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜15の成膜速度をより速くすることができる。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、基体2および接合膜15が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
ここでは、基体2上に接合膜15を成膜する方法について説明する。
まず、基体2を用意し、この基体2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜15に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜15の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜15を成膜することができる。
なお、Bの方法を用いて接合膜15の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜15を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子e−が発生するが、この電子e−は、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、基体2および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜15が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜15を成膜することができる。
以上のような第4実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
次に、本発明のアクチュエータの第5実施形態について説明する。
以下、アクチュエータの第5実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかるアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
このような接合膜15は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜15から脱離し、接合膜15の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜15の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
接合膜15は、基体2上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜15は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜15の少なくとも表面35付近から脱離し、図21に示すように、接合膜15の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜15の表面35に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜15を備えた基体2は、各光導波路111、121に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜15は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜15自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
具体的には、金属原子としては、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜15を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜15は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜15を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜15を成膜することができる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜15は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
すなわち、接合膜15の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜15の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜15の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜15の厚さをできるだけ厚くすればよい。
まず、接合膜15の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜15を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図24に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜15の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、基体2および接合膜15が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
[i] まず、基体2を用意する。そして、この基体2を成膜装置400のチャンバー411内に搬入し、基板ホルダー412に装着(セット)する。
また、ガス供給手段470を動作させ、すなわちポンプ474を作動させた状態でバルブ473を開くことにより、チャンバー411内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段470による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10ccm程度であるのが好ましく、1〜5ccm程度であるのがより好ましい。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程[ii]で基板ホルダー412が加熱された状態で、チャンバー411内に、気化した有機金属材料を供給すると、基体2上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、基体2上に接合膜15を形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq3)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq2)、銅フタロシアニン等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜15を確実に形成することができる。
気化した有機金属材料の流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜15を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜15に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、接合膜15を成膜することができる。
以上のような第5実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
このような光スキャナは、例えば、レーザープリンタ、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。この場合、光反射部29で反射した光を主走査および/または副走査して、対象物上に画像を形成する。
まず、電子写真方式を採用するプリンタに本発明を適用した例を説明する。
図25は、本発明の光スキャナを備える画像形成装置(プリンタ)の一例を示す全体構成の模式的断面図、図26は、図25に示す画像形成装置に備えられた露光ユニットの概略構成を示す図である。
このような画像形成装置510にあっては、まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体511、現像ユニット514に設けられた現像ローラ(図示せず)、および中間転写ベルト551が回転を開始する。そして、感光体511は、回転しながら、帯電ユニット512により順次帯電される。
感光体511上に形成された潜像は、感光体511の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像のための現像装置544によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体511上にイエロートナー像が形成される。このとき、現像ユニット514は、現像装置544が選択的に前記現像位置にて感光体511と対向している。なお、この選択は、保持体545の軸546まわりの回転により、現像装置541〜544の相対位置関係を維持しつつそれぞれの位置を変えることで行う。
一方、記録媒体Pは、給紙トレイ517から、給紙ローラ571、レジローラ572によって二次転写位置(すなわち、二次転写ローラ555と駆動ローラ554との対向部)へ搬送される。
一方、感光体511は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット516のクリーニングブレード561によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット516内の残存トナー回収部に回収される。
より具体的に説明すると、露光ユニット513は、図26に示すように、光スキャナであるアクチュエータ1と、レーザー光源531と、コリメータレンズ532と、fθレンズ533とを有している。
その際、アクチュエータ1の駆動(第2の質量部23の回動中心軸Xまわりの回動)により、光反射部29で反射した光(レーザーL)は、感光体511の軸線方向に走査(主走査)される。一方、感光体511の回転により、光反射部29で反射した光(レーザーL)は、感光体511の周方向に走査(副走査)される。また、レーザー光源531から出力されるレーザー光Lの強度は、図示しないホストコンピュータから受けた画像情報に応じて変化する。
このようにして露光ユニット513は、感光体511上を選択的に露光して画像形成(描画)を行う。
図27は、本発明の画像形成装置(イメージングディスプレイ)の一例を示す概略図である。
図27に示す画像形成装置519は、光スキャナであるアクチュエータ1と、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光源591、592、593と、クロスダイクロイックプリズム(Xプリズム)594と、ガルバノミラー595と、固定ミラー596と、スクリーン597とを備えている。
そして、光反射部29で反射した光(3色の合成光)は、ガルバノミラー595で反射した後に、固定ミラー596で反射し、スクリーン597上に照射される。
このようにして画像形成装置519は、スクリーン597上に画像形成(描画)を行う。
例えば、本発明のアクチュエータでは、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、例えば、本発明のアクチュエータは、第1ないし第4実施形態の任意の構成から任意のものを組み合わせるようにしてもよい。
また、前記第1〜5実施形態のアクチュエータは、2自由度振動系を有するねじり振動子を用いたアクチュエータであるため、マイクロマシン技術を用いて製造することができ、小型化を図ることができる。特に、2自由度振動系を有するねじり振動子は、駆動電圧を低減しつつ、大きな振幅で可動部(第2の質量部23)を駆動することができる。
Claims (21)
- 可動板と、該可動板を支持する支持部とを有し、前記可動板が前記支持部に対して回動可能に設けられた基体と、
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載のアクチュエータ。
- 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載のアクチュエータ。
- 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 可動板と、該可動板を支持する支持部とを有し、前記可動板が前記支持部に対して回動可能に設けられた基体と、
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 可動板と、該可動板を支持する支持部とを有し、前記可動板が前記支持部に対して回動可能に設けられた基体と、
前記可動板を回動させる駆動手段と、
前記可動板の挙動を検知するセンサとを有し、
前記基体と前記センサの少なくとも一部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記基体と前記センサとを接合していることを特徴とするアクチュエータ。 - 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし12のいずれかに記載のアクチュエータ。
- さらに、前記センサからの信号を受信して、前記可動板の挙動として、前記可動板の振動の振幅、振動数および変位量のうちの少なくとも1つを検知する挙動検知手段を有する請求項1ないし13のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 前記センサは、前記接合膜を介して前記支持部に接合された、前記可動板の側方からその回動空間に向け光を発光する発光部と、前記接合膜を介して前記支持部に接合された、前記発光部で発光された光を受光する受光部とを有しており、
前記挙動検知手段は、前記受光部によって受光された光の強度に基づいて、前記可動板の挙動を光学的に検知するように構成されている請求項14に記載のアクチュエータ。 - 前記発光部は、発光素子および光導波路を有し、前記発光素子が前記光導波路を介して前記回動空間へ光を照射するように構成されており、
前記接合膜を介して、前記光導波路が前記支持部に接合されている請求項15に記載のアクチュエータ。 - 前記受光部は、受光素子および光導波路を有し、前記受光素子が前記光導波路を介して受光するように構成されており、
前記接合膜を介して、前記光導波路が前記支持部に接合されている請求項15または16に記載のアクチュエータ。 - 前記光導波路は、ガラス材料を主材料として構成されている請求項16または17に記載のアクチュエータ。
- 前記支持部は、シリコン材料を主材料として構成されている請求項15ないし18のいずれかに記載のアクチュエータ。
- 請求項1ないし19のいずれかに記載のアクチュエータと、
前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする光スキャナ。 - 請求項20に記載の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
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