JP2009139601A - アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置 - Google Patents

アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置 Download PDF

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Kenji Otsuka
賢治 大塚
Yasuhide Matsuo
泰秀 松尾
Kosuke Wakamatsu
康介 若松
Kazuhisa Higuchi
和央 樋口
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Abstract

【課題】接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、第1の構造体と第2の構造体との間隔が高い精度で保持された、信頼性の高いアクチュエータ、およびかかるアクチュエータを備えた光スキャナおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】アクチュエータ1は、2自由度振動系を有する基体2と、基体2を介して対向配置された支持体3、4と、基体2と支持体3との間隔および基体2と支持体4との間隔を保持する各スペーサ10、11とを有している。これらの各部の間は、各接合膜81〜84を介して接合されている。この各接合膜は、シロキサン結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものであり、これらの接合膜は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、各接合膜に発現した接着性によって、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の間を気密的に接合している。
【選択図】図2

Description

本発明は、アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置に関するものである。
例えば、レーザープリンタ等にて光走査により描画を行うための光スキャナとして、捩り振動子で構成されたアクチュエータを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1には、第1の振動系とこれに連結された第2の振動系とからなる2自由度振動系を有する基体と、この基体を支持する底部材および蓋部材と、2自由度振動系を駆動する圧電アクチュエータとを備えるアクチュエータが開示されている。
そして、第2の振動系には光反射部が設けられており、圧電アクチュエータの駆動力により第1の振動系を回動駆動させることにより、これに伴って、第2の振動系を回動駆動させて、光反射部で反射した光を走査する。これにより、光走査により描画を行うことができる。
このようなアクチュエータにあっては、底部材と蓋部材との間で気密空間を形成し、この気密空間内に、2自由度振動系および圧電アクチュエータを配している。
具体的には、基体がシリコンで構成され、また、底部材および蓋部材がガラスで構成されており、基体と底部材および蓋部材とが陽極接合により接合されている。
従来、このようなアクチュエータを製造するに際しては、圧電アクチュエータを基体上に接合した後に、基体と底部材および蓋部材とを陽極接合することにより、アクチュエータを得る。
そのため、この陽極接合時の熱により圧電アクチュエータが脱分極温度以上に達して脱分極し、圧電アクチュエータの駆動力の低下を招いてしまうという問題がある。
一方、圧電アクチュエータの脱分極を防止するために、基体と底部材または蓋部材との陽極接合の処理温度を抑えると、基体と底部材および蓋部材との接合強度の低下を招いてしまうおそれがある。
また、脱分極温度の比較的高い材料で構成された圧電アクチュエータを用いると、圧電アクチュエータの構成材料の選択の幅が狭くなり、アクチュエータの設計自由度が小さくなってしまったり、所望の特性が得られなかったりしてしまう。
さらに、陽極接合により各部を接合するためには、各部の構成材料に制約があり、選択の幅が狭くなるのに加え、接合面の平滑性が高くなければならない。すなわち、接合面の平滑性が低い場合には、気密空間の気密性が損なわれることとなる。気密性が必要なアクチュエータの場合、このように気密性が損なわれると、気密空間内に外気が侵入し、気密空間内に配された2自由度振動系および圧電アクチュエータ等が、外気やそれに含まれる水分等によって劣化してしまうおそれがある。
一方、接着剤を用いて、基体と底部材および蓋部材とを接着することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、接着剤を均一な厚さで供給することは極めて困難であるため、基体と底部材および蓋部材との各間隙(ギャップ)の寸法精度が低下する。このため、アクチュエータの特性が低下を招く。
また、接着剤は気密性が低いため、気密性が必要なアクチュエータの場合、気密空間の気密性が維持できないことも問題である。
特開2005−279863号公報 特開2006−41201号公報
本発明の目的は、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、第1の構造体と第2の構造体との間隔が高い精度で保持された、信頼性の高いアクチュエータ、およびかかるアクチュエータを備えた光スキャナおよび画像形成装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエータは、第1の構造体および第2の構造体と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とする。
これにより、スペーサの構成を適宜設定することにより、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、第1の構造体と第2の構造体との間隔が高い精度で保持された、信頼性の高いアクチュエータが得られる。また、本発明のアクチュエータによれば、従来のように、所定の深さでエッチングを停止させるような困難な作業を伴わないので、振動部を作製するにあたって、あらかじめ厚さが均一で平坦度や表面粗さが良好な基板を用いることにより、振動部として目的とする厚さのものを確実に得ることができる。その結果、このアクチュエータは、所望の振動特性を有する信頼性の高いものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、接合箇所の接合強度をより高めることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、各部をより強固に接合することができるようになる。
本発明のアクチュエータでは、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、化学的安定性、耐熱性等のSi骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものであることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、アクチュエータに気密性が必要な場合には、この接合膜は、接合される各部の間を特に強固に、かつ高い気密性を有しつつ接合することができる。また、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、接合される各部の間をより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。
本発明のアクチュエータでは、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合される各部の間の寸法精度や透明性(透光性)が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。また、接合膜の表面に生じる凹凸の高さを緩和することができ、被着体に対する密着性をより高めることができる。
本発明のアクチュエータは、第1の構造体および第2の構造体と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とする。
これにより、スペーサの構成を適宜設定することにより、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、第1の構造体と第2の構造体との間隔が高い精度で制御された、信頼性の高いアクチュエータが得られる。また、接合膜は、アクチュエータの内部に設けられた空間内に収納される可動板や駆動手段と、空間外部との間の導通を確保する機能を有するものとなる。これにより、接合膜を介して、空間内に電力や各種制御信号を供給することができる。その結果、アクチュエータの高集積化および小型化を実現することができる。
本発明のアクチュエータは、第1の構造体および第2の構造体と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とする。
これにより、スペーサの構成を適宜設定することにより、接合膜を介して接合される部材の構成材料によらず、第1の構造体と第2の構造体との間隔が高い精度で制御された、信頼性の高いアクチュエータが得られる。また、接合膜は、アクチュエータの内部に設けられた空間内に収納される可動板や駆動手段と、閉空間外部との間の導通を確保する機能を有するものとなる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高いアクチュエータが得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の構造体または前記第2の構造体は、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、シリコンを主材料として構成された構造体は、その表面が酸化膜でおおわれており、この酸化物の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような構造体は、表面処理を施すことなく、被着体に対して強固に密着させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記スペーサは、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、スペーサは、接合膜と親和性が高いものとなり、その結果、第1の構造体とスペーサとの間、および、第2の構造体とスペーサとの間の接合強度を特に高いものとすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の構造体として、前記振動部を囲うように設けられた、前記振動部を支持する枠状の支持部と、
前記第2の構造体として、前記枠状の支持部の一方の面側に第1の支持体と、
前記スペーサとして、前記枠状の支持部と前記第1の支持体との間に介挿された第1のスペーサとを有し、
さらに、前記枠状の支持部の前記第1の支持体と反対側に設けられた第2の支持体と、
前記枠状の支持部と前記第2の支持体との間に介挿され、前記枠状の支持部と前記第2の支持体との離間距離を保持する第2のスペーサとを有し、
前記第2の支持体と前記第2のスペーサとの間、および、前記枠状の支持部と前記第2のスペーサとの間が、それぞれ前記接合膜と同様の接合膜を介して接合されていることが好ましい。
これにより、支持部が第1の支持体および第2の支持体によって補強されることとなり、振動部が振動しても、支持部が撓んだり、捩れたりするのを確実に防止することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記可動板、前記軸部材および前記支持部は、一体的に形成されていることが好ましい。
これにより、前記可動板および前記軸部材が支持部によって確実に固定されることとなるため、軸部材の弾性体としての設計が容易となり、アクチュエータの振動特性や耐久性を優れたものとすることができる。
本発明のアクチュエータでは、さらに、前記軸部材の途中に設けられ、前記可動板を回動させる駆動部材を有することが好ましい。
これにより、駆動部材の設計を最適化すれば、可動板を直接駆動する場合に比べて、可動板の振動の振幅をより大きくとることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間は、閉空間であり、
該閉空間内は、減圧状態または不活性ガス充填状態に維持されていることが好ましい。
これにより、閉空間内に収納された可動板や駆動手段等を、長期にわたって減圧下または所定のガス存在下に置くことができる。その結果、可動板や駆動手段等が変質・劣化するのを確実に防止することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記減圧状態における圧力は、1×10−3〜1×10Paであることが好ましい。
これにより、減圧し過ぎによる閉空間の損傷等を確実に防止しつつ、可動板の回動駆動における空気抵抗を十分に低減することができる。また、気密空間内に酸素や水分等がほとんど存在しなくなるので、これによる可動板や駆動手段等の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、信頼性の高いアクチュエータを得ることができる。さらに、減圧による断熱作用により、可動板や駆動手段等の温度変化を緩和することができるため、外気温の急激な変化によって可動板や駆動手段等の温度特性が急激に変化してしまうのを防止することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記接合膜を介して接合された接合個所におけるリーク率は、1×10−8Pa・m/s以下であることが好ましい。
これにより、閉空間内の気密性を長期にわたって十分に保持することができ、信頼性に優れたアクチュエータが得られる。
本発明の光スキャナは、本発明のアクチュエータと、
前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い光スキャナが得られる。
本発明の画像形成装置は、本発明の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い画像形成装置が得られる。
以下、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のアクチュエータの第1実施形態を説明する。
図1は、本発明のアクチュエータの第1実施形態を示す平面図(内部透視図)、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1に示すアクチュエータの圧電体の配置を示す平面図、図4は、印加する交流電圧の一例を示す図、図5は、印加した交流電圧の周波数と、第1の質量部および第2の質量部の共振曲線を示すグラフである。なお、以下では、説明の便宜上、図1および図3中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
アクチュエータ1は、図1または図2に示すように、2自由度振動系を有する基体2と、この基体2を支持する第1の支持体3および第2の支持体4と、基体2と第1の支持体3との間に介挿される第1のスペーサ10と、基体2と第2の支持体4との間に介挿される第2のスペーサ11と、2自由度振動系を駆動するための圧電体32とを有している。
このようなアクチュエータ1においては、基体2と第1のスペーサ10との間が接合膜81を介して気密的に接合されており、基体2と第2のスペーサ11との間が接合膜82を介して気密的に接合されている。また、第1の支持体3と第1のスペーサ10との間が接合膜83を介して気密的に接合されており、第2の支持体4と第2のスペーサ11との間が接合膜84を介して気密的に接合されている。
また、基体2、第1の支持体3、第2の支持体4、第1のスペーサ10および第2のスペーサ11によって、可動部である2自由度振動系の駆動を許容するように空間が形成され、この空間内にて圧電体32が基体2、第1の支持体3および第2の支持体4のそれぞれに接合されている。このような基体2、第1の支持体3、第2の支持体4、第1のスペーサ10および第2のスペーサ11により、内部の気密空間(閉空間)内に2自由度振動系を収納する容器が構成されている。なお、以下では、第1の支持体3を省略して「支持体3」と言い、第2の支持体4を省略して「支持体4」と言う。また、第1のスペーサ10を省略して「スペーサ10」と言い、第2のスペーサ11を省略して「スペーサ11」と言う。
ここで、各接合膜81、82、83、84は、それぞれ、エネルギー付与前において、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、この各接合膜81、82、83、84は、それぞれ、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、これにより各接合膜81、82、83、84の表面に発現した接着性によって、基体2とスペーサ10との間、基体2とスペーサ11との間、支持体3とスペーサ10との間、および、支持体4とスペーサ11との間を接合している。
このような各接合膜81、82、83、84は、それぞれ、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このような構造の各接合膜81、82、83、84は、その厚さを薄くしても十分な接合強度が得られる。また、各接合膜81、82、83、84によれば、基体2や支持体3、4、スペーサ10、11の各構成材料によらず、これらの間を優れた気密性を維持しつつ、確実に接合することができる。その結果、外気や異物の侵入を確実に防止する信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
なお、各接合膜81、82、83、84については、後に詳述する。
以下、アクチュエータ1を構成する各部を順次詳細に説明する。
基体2は、1対の第1の質量部21、22と、これらの間に設けられた第2の質量部23と、これらの質量部を囲む枠状の支持部(第1の構造体に相当)24とを備えている。
具体的には、基体2は、第2の質量部23を中心として、その一端側(図1および図2中、左側)に第1の質量部21が設けられ、他端側(図1および図2中、右側)に第1の質量部22が設けられて構成されている。
また、本実施形態では、第1の質量部21、22は、互いにほぼ同一形状かつほぼ同一寸法をなし、第2の質量部23を介して、ほぼ対称に設けられている。
第2の質量部23の上面(後述する支持体4側の面)には、光反射性を有する光反射部20が設けられている。これにより、アクチュエータ1を光スキャナ、光スイッチ、光アッテネータ等の光学デバイスに適用することができる。すなわち、低電圧駆動が可能で、かつ、高い信頼性を有する安価な光学デバイスを得ることができる。
さらに、基体2は、図1および図2に示すように、第1の質量部21、22と支持部24とを連結する一対の第1の弾性連結部(軸部材)25、25と、第1の質量部21、22と第2の質量部23とを連結する一対の第2の弾性連結部(軸部材)26、26とを備えている。
各第1の弾性連結部25、25および各第2の弾性連結部26、26は、同軸的に設けられており、これらを回動中心軸(回転軸)27として、第1の質量部21、22が支持部24に対して、また、第2の質量部23が第1の質量部21、22に対して回動可能となっている。
このように、基体2は、第1の質量部21、22と第1の弾性連結部25、25とからなる第1の振動系と、第2の質量部23と第2の弾性連結部26、26とからなる第2の振動系とを有する2自由度振動系(振動部)を構成する。そして、支持部24は、この2自由度振動系を囲うように枠状をなしている。
このような2自由度振動系は、板状の基体2に異形孔が形成されることにより、第1の質量部21、22と第2の質量部23と第1の弾性連結部25、25と第2の弾性連結部26、26とが一体的に形成されている。
また、本実施形態では、支持部24と、第1の質量部21、22と第2の質量部23と第1の弾性連結部25、25と第2の弾性連結部26、26とが、ほぼ同じ厚さであり、板状の基体2は、両面がほぼ面一となっている。
また、基体2の下方には、基体2と後述するスペーサ10および支持体3とで、空間29が画成されている。一方、基体2の上方には、基体2と後述するスペーサ11および支持体4とで、空間28が画成されている。
なお、本実施形態では、スペーサ10の厚さとスペーサ11の厚さは、ほぼ同じになっている。これにより、空間28の深さ(厚さ)と空間29の深さ(厚さ)も、各スペーサ10、11の厚さによって規定されるため、ほぼ同じになっている。
具体的には、各スペーサ10、11の厚さ(高さ)は、第1の質量部21、22や第2の質量部23の寸法等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、50〜1000μm程度であるのがより好ましい。これにより、アクチュエータ1が著しく大型化するのを防止しつつ、各質量部21、22、23の振れ角(変位角)を大きく設定することができる。その結果、小型であるにもかかわらず、設計自由度の高いアクチュエータ1が得られる。
ここで、仮に、基体2の厚さと各スペーサ10、11の厚さの総和の厚さを有する基板から、エッチング法により、空間28および空間29に相当する凹部を形成してなる従来のアクチュエータについて触れる。
かかる従来のアクチュエータでは、基板の両面側からそれぞれ凹部を形成することにより、薄肉部が形成されている。そして、薄肉部に異形孔を形成することにより、アクチュエータ1の各質量部21、22、23および各弾性連結部25、26に相当する部位が形成されている。
このようにして基板に凹部を形成する工程では、エッチングを所定の深さで停止させることが必要となる。しかし、エッチング加工では、エッチングを所定の深さで精度よく停止させるのは難しく、また、エッチング面(凹部の底面に相当する面)に平坦度、表面粗さの良好な表面を露出させるのが困難である。このため、このような構成の基体2は、各質量部21、22、23の厚さや光反射部20の法線方向に誤差が生じ易く、所望の振動特性および光学特性を得るのが難しい。
これに対し、本実施形態にかかる基体2は、支持部24の厚さと、各質量部21、22、23および各弾性連結部25、26の厚さがほぼ同じになっている。このような基体2は、後述するように、基体2の厚さと同じ厚さの基板に対してエッチングにより異形孔を形成することにより作製することができる。すなわち、かかるエッチングでは、エッチングされる深さを制御する必要がないため、従来のような困難を伴うことなく、簡単に基体2を作製することができる。そして、このような基体2を作製するにあたって、あらかじめ厚さが均一で平坦度や表面粗さが良好な基板を用いることにより、各質量部21、22、23として、目的とする厚さのものを確実に得ることができる。その結果、所望の振動特性を有する信頼性の高いアクチュエータ1を得ることができる。
このような基体2は、その構成材料が特に限定されないが、シリコンを主材料として構成されていて、第1の質量部21、22と、第2の質量部23と、支持部24と、第1の弾性連結部25、25と、第2の弾性連結部26、26とが一体的に形成されているのが好ましい。これにより、(1)製作工程が少なくてすむので安価となる、(2)一体型なので亀裂などの故障を回避できる、(3)弾性体としての設計が容易となる、という効果を得る。すなわち、基体2の構成材料をシリコンとすることで、得られるアクチュエータ1の振動特性や耐久性を優れたものとすることができる。さらに、(4)シリコンは、接合膜81、82との親和性が高いことから、基体2とスペーサ10、11との接合強度を特に高いものとすることができる。
このような基体2の下方には、基体2の下面と対向するように支持体(第2の構造体に相当)3が設けられている。
支持体3の上面には、図2および図3に示すように、第2の質量部23に対応する部分に凹部31が形成されている。
この凹部31は、第2の質量部23が回動(振動)する際に、支持体3に接触するのを防止する逃げ部を構成する。凹部(逃げ部)31を設けることにより、アクチュエータ1全体の大型化を防止しつつ、第2の質量部23の振れ角(振幅)をより大きく設定することができる。なお、凹部31の深さが第2の質量部23の振れ角(振幅)に対し大きい場合などには、凹部31を設けなくともよい。
支持体3の構成材料は、特に限定されないが、例えば、金属、シリコンまたはガラスを主材料とするものであるが、基体2と同様にシリコンであるのが好ましい。これにより、支持体3が十分な剛性を有し、支持体3は撓み難く、優れた寸法精度を保持し得るものとなる。
基体2と支持体3との間には、基体2と支持体3との間隔を規定するスペーサ10が設けられている。
スペーサ10は、平面視で、基体2の支持部24とほぼ等しい形状をなし、支持体3や基体2の外周に合わせて設けられている。これにより、スペーサ10の厚さが、基体2と支持体3との間隔に相当し、スペーサ10の内側には、その厚さに相当する高さの空間29が形成されることとなる。したがって、スペーサ10の厚さを適宜選択することにより、基体2と支持体3との間隔を容易に制御することができる。
このようなスペーサ10の上面は、接合膜81を介して基体2の支持部24に気密的に接合されている。一方、スペーサ10の下面は、接合膜83を介して支持体3の上面に気密的に接合されている。
スペーサ10の構成材料としては、例えば、シリコン、各種ガラス材料、各種金属材料、各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、スペーサ10は、シリコンを主材料として構成されているのが好ましい。シリコンは、スペーサ10に隣接する接合膜81、83との親和性が高いことから、基体2とスペーサ10との間、および、支持体3とスペーサ10との間の接合強度を特に高いものとすることができる。
また、支持体3の上面には、図3に示すように、第1の質量部21に対応する部分に、平面視にて回動中心軸27に対してほぼ対称となるように一対の圧電体32が設けられ、また、第1の質量部22に対応する部分に、平面視にて回動中心軸27に対してほぼ対称となるように一対の圧電体32が設けられている。すなわち、本実施形態では、一対の圧電体32が2組(合計4個)設けられている。そして、このような一対の圧電体32により、各第1の質量部21、22が駆動される。すなわち、一対の圧電体32と各第1の質量部21、22とにより、駆動部材が構成される。
各圧電体32は、その厚さ方向(図2にて上下方向)に伸縮するように構成されているとともに、その伸縮方向での両端のうち、一端が支持体3に、他端が第1の質量部21、22に接合されて(または突きあてられて)いる。このように、各圧電体32が基体2と支持体3とに挟持されていると、圧電体32の駆動力をその損失を低減しつつ第1の質量部21、22に効率よく伝達することができる。その結果、アクチュエータ1の駆動電圧の低減化を図ることができる。
このような圧電体32の構成材料(すなわち、後述する強誘電体材料)としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、その他、各種のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛のうちの少なくとも1種を主とするものが好ましい。また、圧電体32の構成材料としては、例えば、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンとの共重合体(P(VDF/TrFE))、フッ化ビニリデン重合体(PVDF)などの有機強誘電体材料を用いることもできる。
また、各圧電体32は、図示しない電源に接続されており、各圧電体32には、交流電圧(駆動電圧)が印加される。
一方、基体2の支持部24の上面には、支持体4が接合されており、基体2は、支持体4にも支持されている。
本実施形態では、支持体4は、外部光を光反射部20に入射させ、光反射部20による反射光を外部に導出させる機能を有する。このため、支持体4としては、平坦性に優れ、かつ、光透過性に優れた基板を用いるのが好ましい。
また、支持体4の構成材料としては、前記機能を有するという観点から、前述した支持体3の構成材料のうち、光透過性を有する材料(例えば、ガラス材料等)で構成されている。
基体2と支持体4との間には、基体2と支持体4との間隔を規定するスペーサ11が設けられている。
スペーサ11は、平面視で、基体2の支持部24とほぼ等しい形状をなし、支持体4や基体2の外周に合わせて設けられている。これにより、スペーサ11の厚さが、基体2と支持体4との間隔に相当している。
このようなスペーサ11の下面は、接合膜82を介して基体2の支持部24に気密的に接合されている。一方、スペーサ10の上面は、接合膜84を介して支持体4の下面に気密的に接合されている。
スペーサ11の構成材料としては、前述のスペーサ10と同様のものを用いることができる。
本実施形態のアクチュエータ1にあっては、前述したように、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11が気密空間を形成している。具体的には、凹部31、空間28、29が互いに連通しているとともに、これらが気密空間をなしている。このような気密空間内に、前述の第1の質量部21、22、第2の質量部23、第1の弾性連結部25、25、第2の弾性連結部26、26が配されている。すなわち、支持体3、4は、可動部である第2の質量部23等の駆動を許容しつつ基体2を狭持するように1対設けられ、1対の支持体3、4間に、可動部を収容する気密空間を形成している。
このような構成により、アクチュエータ1の信頼性をより高めることができる。
より具体的には、I:第1の質量部21、22や第2の質量部23の振動し得るスペースの確保が容易となる。
また、II:アクチュエータ1の内部(前記気密空間内)へゴミ等の異物が侵入するのを防止することができる。III:2自由度振動系や圧電体32が外気と接触して、変質・劣化するのを防止することができる。IV:アクチュエータ1の内部(前記気密空間内)を減圧状態とすることにより、第1の質量部21、22や第2の質量部23が振動(回動)する際に生じる空気抵抗を低減して、低エネルギーで、より大きな角度での振動(回動)が可能となる。
さらに、V:スペーサ10、11を用いることにより、基体2となる基板をエッチング加工して、第1の質量部21、22や第2の質量部23が振動し得るスペースを確保することを要しないので、アクチュエータ1内に平坦度や表面粗さが不良の面を含むことがなくなる。このため、所望の振動特性および光学特性を有するアクチュエータ1が得られる。
これらにより、アクチュエータ1を信頼性の高いものとすることができる。
以上のような構成のアクチュエータ1は、次のようにして駆動する。
各圧電体32との間に、例えば、正弦波(交流電圧)等を印加する。具体的には、例えば、図3中上側の2つの圧電体32に、図4(a)に示すような波形の電圧を印加し、図3中下側の2つの圧電体32に、図4(b)に示すような波形の電圧を印加する。
すると、第1の質量部21、22が、回動中心軸27(第1の弾性連結部25)を軸に、基体2の板面(図1における紙面)に対して傾斜するように振動(回動)する。
そして、この第1の質量部21、22の振動(駆動)に伴って、第2の弾性連結部26を介して連結されている第2の質量部23も、回動中心軸27(第2の弾性連結部26)を軸に、基体2の板面(図1における紙面)に対して傾斜するように振動(回動)する。このように、第2の質量部23を直接駆動するのではなく、第1の質量部21、22を駆動することによって間接的に第2の質量部23を駆動することにより、第1の質量部21、22(駆動部材)の設計を最適化すれば、第2の質量部23の振動の振幅をより大きくとることができる。
ここで、このアクチュエータ1では、前述したように、支持体3における、第2の質量部23に対応する部分に、凹部31が形成され、また、支持体3と基体2との間、および、支持体4と基体2との間に、スペーサ10およびスペーサ11が設けられている。そして、図2にて基体2の下面に空間29、上面に空間28が形成され、かつ、平面視で第1の質量部21、22が空間28、29内に位置するように設けられている。
このような構成により、第2の質量部23が振動し得るスペース、および、第1の質量部21、22が振動し得るスペースとして、大きなスペースが確保されている。したがって、第1の質量部21、22の質量を比較的小さく設定すること等により、第1の質量部21、22を大きな振れ角で振動させた場合や、さらに第2の質量部23が共振によって大きな振れ角で振動した場合でも、各質量部21、22、23(2自由度振動系)が支持体3および支持体4に接触することを好適に防止することができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えば光スキャナに適用した場合には、より解像度の高いスキャニングを行うことが可能となる。
また、本実施形態では、基体2(支持部24)が、支持体3および支持体4で挟み込まれるようにして各接合膜81、82、83、84を介して接合されていることから、各支持体3、4が支持部24を強固に補強することとなり、支持部24の剛性を高めることができる。これにより、2自由度振動系が振動しても、支持部24が撓んだり、捩れたりするのを確実に防止することができる。
ここで、第1の質量部21の回動中心軸27に対して、ほぼ垂直な方向(長手方向)の端部21aとの間の距離(長さ)をLとし、第1の質量部22の回動中心軸27に対して、ほぼ垂直な方向(長手方向)の端部22aとの間の距離(長さ)をLとし、第2の質量部23の回動中心軸27に対して、ほぼ垂直な方向の端部23aとの間の距離(長さ)をLとしたとき、本実施形態では、第1の質量部21、22が、それぞれ独立して設けられているため、第1の質量部21、22と、第2の質量部23とが干渉せず、第2の質量部23の大きさ(長さL)にかかわらず、LおよびLを小さくすることができる。これにより、第1の質量部21、22の回動角度(振れ角)を大きくすることができ、第2の質量部23の回動角度を大きくすることができる。
また、LおよびLを小さくすることにより、各圧電体32の変位量に対する第1の質量部21、22の振れ角(回動角度)を大きくすることができる。これにより、駆動電圧を抑えつつ、第1の質量部21、22の振れ角を大きくし、ひいては、第2の質量部23の振れ角を大きくすることができる。
ここで、第1の質量部21、22および第2の質量部23の寸法は、それぞれ、L<LかつL<Lなる関係を満足するよう設定されるのが好ましい。
前記関係を満たすことにより、LおよびLをより小さくすることができ、第1の質量部21、22の回動角度をより大きくすることができ、第2の質量部23の回動角度をさらに大きくすることができる。
この場合、第2の質量部23の最大回動角度が、20°以上となるように構成されるのが好ましい。
これらによって、第1の質量部21、22の低電圧駆動と、第2の質量部23の大回動角度での振動(回動)とを実現することができる。
このため、このようなアクチュエータ1を、例えばレーザープリンタや、走査型共焦点レーザー顕微鏡等の装置に用いられる光スキャナに適用した場合には、より容易に装置を小型化することができる。
なお、前述したように、本実施形態では、LとLとはほぼ等しく設定されているが、LとLとが異なっていてもよいことは言うまでもない。
ところで、このような質量部21、22、23よりなる振動系(2自由度振動系)では、第1の質量部21、22および第2の質量部23の振幅(振れ角)と、印加する交流電圧の周波数との間に、図5に示すような周波数特性が存在している。
すなわち、かかる振動系は、第1の質量部21、22の振幅と、第2の質量部23の振幅とが大きくなる2つの共振周波数fm[kHz]、fm[kHz](ただし、fm<fm)と、第1の質量部21、22の振幅がほぼ0となる、1つの反共振周波数fm[kHz]とを有している。
この振動系では、圧電体32に印加する交流電圧の周波数Fが、2つの共振周波数のうち低いもの、すなわち、fmとほぼ等しくなるように設定するのが好ましい。これにより、第1の質量部21、22の振幅を抑制しつつ、第2の質量部23の振れ角(回動角度)を大きくすることができる。
なお、本明細書中では、F[kHz]とfm[kHz]とがほぼ等しいとは、(fm−1)≦F≦(fm+1)の条件を満足することを意味する。
ここで、各接合膜81、82、83、84について説明する。なお、本実施形態では、接合膜83の構成と各接合膜81、82、84の構成は共通であるため、以下では、接合膜83を代表に説明する。
図6は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図7は、本実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
接合膜83のエネルギーを付与する前の状態は、図6に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むものである。
そして、この接合膜83にエネルギーを付与すると、図7に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が生じる。これにより、接合膜83の表面に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜83により、支持体3とスペーサ10との間が接合されている。
このような接合膜83は、薄くても十分な接合強度が得られるので、接合される各部の間に剥離等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
また、接合膜83は、気相成膜法のような方法で作製することができるので、厚さを厳密に制御することができ、接合される各部(支持体3とスペーサ10)の間隙(ギャップ)の寸法精度を高めることができる。
また、接合膜83は、通気性が低く、接合される各部に対する密着性も高い。このため、接合膜83を介して接合された接合箇所は、優れた気密性を有することとなり、凹部31および空間28、29で構成される気密空間の気密性を高めることができる。したがって、気密空間内への外気や異物の侵入が防止されることとなり、外気やそれに含まれる水分等によって、気密空間内に配された2自由度振動系や圧電アクチュエータが変質・劣化したり、異物によって、2自由度振動系の振動が妨げられたりするのを防止することができる。
したがって、気密空間内を減圧したり、所定のガスを充填したことにより、これらの減圧状態やガス充填状態を、長期にわたって安定的に保持することができる。
また、接合膜83は、化学的に安定なSi骨格301の作用により、耐熱性に優れている。このため、アクチュエータ1が高温下に曝されたとしても、接合膜83に変質・劣化が生じ難い。したがって、接合箇所に剥離等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
また、このような接合膜83は、流動性を有しない固体状のものである。このため、従来の流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜83)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜83を用いて製造されたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。これにより、例えば、支持体3とスペーサ10との間の平行度を長期にわたって一定に維持することができ、長期信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
また、はみ出した接着剤を除去するといった手間を省略することができる。
さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。
このような接合膜83としては、特に、接合膜83を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜83は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜83自体がより強固なものとなる。したがって、かかる接合膜83によれば、接合箇所の接合強度をより高めることができる。
また、接合膜83中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜83の安定性が高くなり、各部をより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜83中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述した化学的安定性、耐熱性等のSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜83の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜83に活性手304を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜83の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜83は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜83の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜83は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜83は、接合される各部の間をより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜83は、接着性に特に優れることから、本発明のアクチュエータに対して特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
また、接合膜83の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜83の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合される各部の間の寸法精度や透明性(透光性)が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜83の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜83の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度や透光性(透明性)が著しく低下するおそれがある。その結果、特に図2に示す接合膜84のように、それ自体を光が透過するような構成のアクチュエータでは、接合膜84によって光が吸収されてしまうおそれがある。
さらに、接合膜83の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜83にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、支持体3の接合面(接合膜83に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜83を被着させることができる。その結果、接合膜83は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接合膜83を備える支持体3に対してスペーサ10を貼り合わせた際に、これらの密着性をより高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜83の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜83の厚さをできるだけ厚くすればよい。
次に、本発明のアクチュエータを製造する方法を、図8ないし図14に基づいて説明する。
図8〜図14は、それぞれ、第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図8〜図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるアクチュエータ1の製造方法は、[1]基体2を製造する工程と、[2]スペーサ10、11を製造する工程と、[3]支持体3を製造する工程と、[4]基体2および支持体3、4に各接合膜81、82、83、84を形成する工程と、[5]基体2、支持体3、4、スペーサ10、11および圧電体32を接合する工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]基体2を製造する工程
まず、図8(a)に示すように、基体2を形成するための基板5を用意する。
基板5の構成材料は、前述した基体2の構成材料と同様である。
そして、基板5の一方の面に、図8(b)に示すように、支持部24と各質量部21、22、23との形状に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスク7を形成する。
次に、金属マスク7を介して、基板5の一方の面側を、金属マスク7で覆われていない領域が貫通するまでエッチングする。
そして、金属マスク7を除去した場合、この後、第2の質量部23上に金属膜を成膜し、光反射部20を形成する。
なお、ここで、基板5をエッチングした後、金属マスク7は除去してもよく、除去せずに残存させてもよい。金属マスク7を除去しない場合、第2の質量部23上に残存した金属マスク7は光反射部20として用いることができる。
金属マスク7の形成方法(金属膜の成膜方法)としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における金属膜の成膜においても、同様の方法を用いることができる。
エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
以上の工程により、図8(c)に示すように、各質量部21、22、23および支持部24が一体的に形成された構造体、すなわち基体2が得られる。このようにして得られた基体2は、各質量部21、22、23が基板5の厚さおよび平坦度を反映して、ほぼ等しい厚さを有している。
[2]スペーサを製造する工程
次に、図9(a)に示すように、スペーサ10、11を形成するための基板16、17を用意する。
基板16、17の構成材料は、前述したスペーサ10、11の構成材料と同様である。
そして、図9(b)に示すように、基板16、17の一方の面に、スペーサ10、11の形状に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスク18、19を形成する。
次に、この金属マスク18、19を介して、基板16、17の一方の面側を、金属マスクで覆われていない領域が貫通するまでエッチングする。その後、金属マスク18、19を除去する。これにより、図9(c)に示すように、スペーサ10、11が得られる。
[3]支持体3を製造する工程
次に、図10(a)に示すように、支持体3を形成するためのシリコン基板である基板9を用意する。なお、基板9として、ガラス基板を用いることもできる。
そして、基板9の一方の面に、凹部31を形成する領域を除いた部分に対応するように、例えば、アルミニウム等により金属マスクを形成する。
次に、この金属マスクを介して、基板9の一方の面側をエッチングした後、金属マスクを除去する。これにより、図10(b)に示すように、凹部31が形成された支持体3が得られる。
[4]基体2および支持体3、4に各接合膜81、82、83、84を形成する工程
次に、基体2の支持部24の下面に接合膜81を形成し、上面に接合膜82を形成する。また、支持体3の上面に接合膜83を形成し、支持体4の下面に接合膜84を形成する。
ここでは、代表して、支持体3の上面に接合膜83を形成する方法について説明する。
接合膜83は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、プラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜83を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜83は、接合される各部の間を特に強固に、かつ高い気密性を有しつつ接合することができる。また、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜83は、エネルギーが付与されて活性化された状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
ここでは、接合膜83をプラズマ重合法にて形成する方法について詳述するが、接合膜83の形成方法を説明するのに先立って、接合膜83を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明し、その後、接合膜83の形成方法について説明する。
図15は、プラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図15中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図15に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、支持体3を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図15に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は、板状をなしており、支持体3を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図15に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130の支持体3を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図15に示すように、支持体3を鉛直方向に沿って支持することができる。また、支持体3に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で支持体3をプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、支持体3を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図15に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して支持体3の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による支持体3の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、支持体3上に、このようなプラズマ重合装置100を用いて接合膜83を形成する方法について説明する。
まず、支持体3をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が支持体3上に付着・堆積する。これにより、図10(c)に示すように、支持体3上にプラズマ重合膜で構成された接合膜83が形成される。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜83は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜83の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜83の厚さを容易に調整することができる。このため、支持体3とスペーサ10との間の距離を厳密に制御することができる。
また、支持体3の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜83を得ることができる。
なお、接合膜83と同様にして、図11(a)および図13(a)に示すように、接合膜81、82、84を形成することができる。
また、支持体3の上面のうち、部分的に接合膜83を形成する場合、例えば、その領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜83を成膜するようにすればよい。
[5]基体2、支持体3、4、スペーサ10、11および圧電体32を接合する工程
次に、基体2および支持体3、4上に形成した各接合膜81、82、83、84に対してそれぞれエネルギーを付与する。
[5−1]
ここでは、代表して、支持体3上に形成した接合膜83に対してエネルギーを付与し、支持体3とスペーサ10とを接合する場合について説明する。
エネルギーが付与されると、接合膜83では、図6に示す脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、図7に示すように、接合膜83の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜83の表面に、スペーサ10の下面との接着性が発現する。
ここで、接合膜83に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、(I)接合膜83にエネルギー線を照射する方法、(II)接合膜83を加熱する方法、(III)接合膜83に圧縮力を付与する(物理的エネルギーを付与する)方法が代表的に挙げられ、この他、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
このうち、接合膜83にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜83に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
以下、上記(I)、(II)、(III)の各方法について詳述する。
(I)接合膜83にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図10(d)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜83中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜83の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜83に接着性を発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜83の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜83との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜83の表面付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜83の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜83の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜83に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜83に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による支持体3の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜83から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜83とスペーサ10の間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜83の表面および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜83に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜83の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜83に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
(II)接合膜83を加熱する場合(図示せず)、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、支持体3等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜83を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜83の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜83は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種加熱方法で加熱することができる。
なお、接合される部材間の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜83を加熱すればよいが、これらの熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
(III)本実施形態では、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせる前に、接合膜83に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、支持体3とスペーサ10とを重ね合わせた後に行われるようにしてもよい。すなわち、支持体3上に接合膜83を形成した後、エネルギーを付与する前に、接合膜83とスペーサ10の下面とが密着するように、支持体3とスペーサ10とを重ね合わせて、仮接合体とする。そして、この仮接合体中の接合膜83に対してエネルギーを付与することにより、接合膜83に接着性が発現し、接合膜83を介して支持体3とスペーサ10とが接合(接着)される。
この場合、仮接合体中の接合膜83に対するエネルギーの付与は、前述した(I)、(II)の方法でもよいが、接合膜83に圧縮力を付与する方法を用いてもよい。
この場合、支持体3とスペーサ10とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜83に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜83に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、支持体3とスペーサ10の各構成材料によっては、支持体3やスペーサ10に損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
なお、仮接合体の状態では、支持体3とスペーサ10との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、支持体3とスペーサ10との相対位置を微調整することにより、最終的に得られるアクチュエータ1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
以上のような(I)、(II)、(III)の各方法により、接合膜83にエネルギーを付与することができる。
なお、接合膜83の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜83の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、接合される部材間の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
ここで、前述したように、エネルギーが付与される前の状態の接合膜83は、図6に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜83にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図7に示すように、接合膜83の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜83の表面に接着性が発現する。
ここで、接合膜83を「活性化させる」とは、接合膜83の表面35および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、被着体に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜83に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
次に、支持体3に形成された接合膜83上に、強誘電体材料を主材料として構成された圧電体32を形成する。
この圧電体32は、支持体3の凹部31が形成された面側に、強誘電体材料を主材料として構成された強誘電体膜を成膜し、この強誘電体膜に対し、圧電体32の形状に対応するマスクを介してエッチングを行った後、マスクを除去することにより形成することができる。
強誘電体膜の形成方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等のような物理的気相堆積法(PVD法)、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法のような化学気相堆積法(CVD法)、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、スピンコート法、溶液霧化堆積法(LSMCD法)などの溶液塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの各種印刷法、膜の接合等により形成することができる。
なお、圧電体32は、支持体3上に載置するだけでも構わない。
また、圧電体32は、図10(e)に示すように、接合膜83を介して支持体3に接合されていてもよい。これにより、圧電体32と支持体3とを強固に接合することができる。また、接合膜83は、その厚さを厳密に制御することができるため、圧電体32と支持体3との間の離間距離の精度をより高めることができる。その結果、圧電体32を第1の質量部21、22に対して設計通りに作用させることができる。
次に、接合膜83と同様にして、図11(b)および図13(b)に示すように、接合膜81、82、84に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜81の表面にスペーサ10の上面との接着性が、接合膜82の表面にスペーサ11の下面との接着性が、接合膜84の表面にスペーサ11の上面との接着性が、それぞれ発現する。
[5−2]
次に、図11(c)に示すように、接合膜83とスペーサ10の下面とが密着するように、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせる。これにより、図11(d)に示すように、接合膜83を介して支持体3とスペーサ10とが接合される。
続いて、図12(a)に示すように、接合膜81とスペーサ10の上面とが密着するように、基体2とスペーサ10とを貼り合わせる。これにより、図12(b)に示すように、接合膜81を介して基体2とスペーサ10とが接合される。
また、図12(c)に示すように、接合膜82とスペーサ11の下面とが密着するように、基体2とスペーサ11とを貼り合わせる。これにより、図12(d)に示すように、接合膜82を介して基体2とスペーサ11とが接合される。
さらに、図13(c)に示すように、接合膜84とスペーサ11の上面とが密着するように、支持体4とスペーサ11とを貼り合わせる。これにより、図14(a)に示すように、接合膜84を介して支持体4とスペーサ11とが接合され、アクチュエータ1が得られる。
また、このようにして、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11により、内部に閉空間を有する容器が構成される。また、それとともに、圧電体32が支持体3と基体2とにより狭持される。
ここで、上記のようにして接合される基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの各熱膨張率がほぼ等しければ、これらを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られるアクチュエータ1において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の各熱膨張率が互いに異なる場合でも、これらを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化することにより、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の各熱膨張率を高い寸法精度で強固に接合することができる。
すなわち、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の各熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の熱膨張率差にもよるが、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の温度が25〜50℃程度である状態下で、これらを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の間の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、アクチュエータ1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
また、この場合、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、各接合膜81、82、83、84を用いることにより、上述したような低温下でも、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11を強固に接合することができる。
また、基体2とスペーサ10、11、支持体3とスペーサ10、および支持体4とスペーサ11は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、これらをより強固に接合することができる。
なお、基体2および支持体3、4のうち、各接合膜81、82、83、84を成膜する領域には、あらかじめ、接合膜との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、基体2と各接合膜81、82との間、支持体3と接合膜83との間、および支持体4と接合膜84との間の接合強度をより高めることができ、最終的には、アクチュエータ1の各部の接合強度を高めることができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、基体2および支持体3、4の接合膜を成膜する領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、各接合膜81、82、83、84を形成するために、基体2および支持体3、4の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す基体2および支持体3、4が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、基体2および支持体3、4の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、各接合膜81、82、83、84の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基体2および支持体3、4の構成材料としては、例えば、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された基体2および支持体3、4は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基体2および支持体3、4を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、基体2と各接合膜81、82、支持体3と接合膜83、および支持体4と接合膜84を特に強固に密着させることができる。
なお、この場合、基体2および支持体3、4の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも各接合膜81、82、83、84を成膜する領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
さらに、基体2および支持体3、4の接合膜を成膜する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、基体2と各接合膜81、82との間、支持体3と接合膜83との間、および支持体4と接合膜84との間の接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
また、表面処理に代えて、基体2および支持体3、4の少なくとも各接合膜81、82、83、84を成膜する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基体2および支持体3、4上に、各接合膜81、82、83、84を成膜することにより、基体2と各接合膜81、82との間、支持体3と接合膜83との間、および支持体4と接合膜84との間の接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわちアクチュエータ1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基体2と各接合膜81、82との間、支持体3と接合膜83との間、および支持体4と接合膜84との間の接合強度を特に高めることができる。
一方、スペーサ10、11の各接合膜81、82、83、84と接触する領域にも、あらかじめ、各接合膜との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、スペーサ10、11と、各接合膜81、82、83、84との間の接合強度をより高めることができる。
なお、この表面処理には、基体2および支持体3、4に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、表面処理に代えて、スペーサ10、11の各接合膜81、82、83、84と接触する領域に、あらかじめ、各接合膜との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、スペーサ10、11と、各接合膜81、82、83、84との間の接合強度をより高めることができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の基体2および支持体3、4に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本工程において、接合膜83を備える支持体3とスペーサ10とが接合されるメカニズムについて説明する。なお、このメカニズムは、接合膜81を備える基体2とスペーサ10との接合、接合膜82を備える基体2とスペーサ11との接合、および接合膜84を備える支持体4とスペーサ11との接合においても同様である。
例えば、スペーサ10の支持体3との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜83とスペーサ10の下面とが接触するように、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせたとき、接合膜83の表面35に存在する水酸基と、スペーサ10の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜83を備える支持体3とスペーサ10とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜83とスペーサ10との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜83を介して支持体3とスペーサ10とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[5−1]で活性化された接合膜81の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[5−1]の終了後、できるだけ早く本工程[5−2]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[5−1]の終了後、60分以内に本工程[5−2]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜83の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜83を備える支持体3とスペーサ10とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された支持体3とスペーサ10との間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
以上のようにして、支持体3、スペーサ10、基体2、スペーサ11および支持体4をこの順で積層すると、前述した2自由度振動系と各圧電体32は、支持体3、スペーサ10、基体2、スペーサ11および支持体4で構成される容器(ケース)の閉空間内に収納される。
したがって、本接合工程を、減圧下または所定のガス存在下で行うことにより、2自由度振動系と各圧電体32とを収納する閉空間を、減圧状態または所定のガスで充填した状態で気密封止することができる。これにより、2自由度振動系および各圧電体32を、長期にわたって減圧下または所定のガス存在下に置くことができる。
なお、減圧下における圧力(気圧)は、特に限定されないが、1×10−3〜1×10Pa程度であるのが好ましく、1×10−2〜1×10Pa程度であるのがより好ましい。このような圧力であれば、減圧し過ぎによる容器の損傷等を確実に防止しつつ、第1の質量部21、22および第2の質量部23の回動駆動における空気抵抗を十分に低減することができる。また、気密空間内に酸素や水分等がほとんど存在しなくなるので、これによる2自由度振動系や各圧電体32の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、信頼性の高いアクチュエータ1を得ることができる。さらに、減圧による断熱作用により、2自由度振動系や各圧電体32の温度変化を緩和することができるため、外気温の急激な変化によって2自由度振動系や各圧電体32の温度特性が急激に変化してしまうのを防止することができる。
一方、前述の所定のガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス、水素のような還元性ガス、空気(大気)等が挙げられるが、酸素を含まないガス(不活性ガス、還元性ガス等)が好ましく用いられ、特に不活性ガスが好ましく用いられる。不活性ガス存在下であれば、ガスの活性が低いため、2自由度振動系や各圧電体32が変質・劣化するのを確実に防止することができる。さらに、封入するガスの圧力を大気圧に等しくすることにより、容器に加わる気圧差による負荷が小さくなる。その結果、容器の信頼性が向上し、アクチュエータ1の信頼性を高めることができる。
以上のようにして、支持体3、スペーサ10、基体2、スペーサ11および支持体4をこの順で積層してなるアクチュエータ1が得られる。
以上説明したようなアクチュエータ1の製造方法によれば、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11を簡単かつ強固に接合して、得られるアクチュエータ1の信頼性を高いものとすることができる。
また、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11で構成される気密空間内を減圧した状態または所定のガスで置換した状態を、長期にわたって安定的に維持し得るアクチュエータ1が得られる。これにより、気密空間内に収納したデバイスが外気等に曝され難くなり、信頼性の特に高いアクチュエータ1が得られる。
また、このような気密空間を有するアクチュエータ1において、各接合膜81、82、83、84を介して接合された接合箇所におけるリーク率は、1×10−8Pa・m/s以下であるのが好ましく、1×10−9Pa・m/s以下であるのがより好ましい。かかるリーク率のアクチュエータ1は、気密空間内の気密性を長期にわたって十分に保持し得るものとなり、信頼性に優れたアクチュエータ1が得られる。
また、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の構成材料によらず、また、接合面の平滑性が特に高くなくても、これらを接合することができるため、基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11の各構成材料の選択の幅を広げることができる。
また、接合される各部の間の寸法精度を高めることができるので、アクチュエータ1をより設計通りに組み立てることができる。これにより、アクチュエータ1の動作特性も、設計値により近づけることができる。
なお、アクチュエータ1を得た後、このアクチュエータ1に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([6A]、[6B]および[6C])のうちの少なくとも1つの工程(アクチュエータ1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、アクチュエータ1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
[6A]得られたアクチュエータ1を、支持体3と基体2および支持体4と基体2とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、例えば、支持体3の表面とスペーサ10の表面に、それぞれ接合膜83の表面がさらに近接することとなり、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
また、アクチュエータ1を加圧することにより、アクチュエータ1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、アクチュエータ1における接合強度をさらに高めることができる。
なお、アクチュエータ1を加圧する際の圧力は、接合される各部材の構成材料や厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、接合される各部材の構成材料や厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、アクチュエータ1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、接合される各部材の構成材料によっては、接合される各部材に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、アクチュエータ1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[6B]得られたアクチュエータ1を加熱する。
これにより、アクチュエータ1における接合強度をより高めることができる。
このとき、アクチュエータ1を加熱する際の温度は、室温より高く、アクチュエータ1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、アクチュエータ1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[6A]、[6B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図14(b)に示すように、アクチュエータ1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、アクチュエータ1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、アクチュエータ1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、本実施形態では、基体2とスペーサ10との間、基体2とスペーサ11との間、支持体3とスペーサ10との間、および支持体4とスペーサ11との間が、各接合膜81、82、83、84を介して接合されているが、これらの接合膜81、82、83、84のうちの1ないし3箇所は、接着剤のような接着機能を有する膜で代替されていてもよく、また、接合されているのではなく、一体的に形成されていてもよい。
また、上記では、支持体3上に成膜された接合膜83とスペーサ10の下面とが密着するように、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせる場合について説明しているが、接合膜83は、スペーサ10の下面に設けられていてもよい。すなわち、スペーサ10の下面に設けられた接合膜83と、支持体3の上面とが密着するように、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせるようにしてもよい。
なお、各接合膜81、82、84についても、接合膜83と同様である。
また、接合膜83は、支持体3側とスペーサ10側の双方に成膜されていてもよい。
図16は、本実施形態にかかるアクチュエータの他の構成例を示す図である。なお、以下の説明では、図16中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図16に示すアクチュエータ1では、支持体3上に成膜された接合膜831と、スペーサ10の下面に成膜された接合膜832とが密着するように、支持体3とスペーサ10とが接合されている。
また、これと同様に、スペーサ10上に成膜された接合膜811と、基体2の下面に成膜された接合膜812とが密着するように、基体2とスペーサ10とが接合されている。
また、これと同様に、基体2上に成膜された接合膜821と、スペーサ11の下面に成膜された接合膜822とが密着するように、基体2とスペーサ11とが接合されている。
さらに、これと同様に、スペーサ11上に成膜された接合膜841と、支持体4の下面に成膜された接合膜842とが密着するように、支持体4とスペーサ11とが接合されている。
このような構成のアクチュエータ1によれば、各接合膜811、812、821、822、831、832、841、842を介して接合される各部の間を、特に強固に接合することができる。また、このようなアクチュエータ1では、被着体(基体2、支持体3、4およびスペーサ10、11)の構成材料が接合強度に影響を及ぼし難いため、被着体の構成材料によらず、各部が強固に接合された信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
なお、この場合、接合膜に対するエネルギーの付与は、各接合膜811、812、821、822、831、832、841、842のそれぞれに対して行うようにすればよい。
ここで、図16に示すアクチュエータ1において、接合膜831と接合膜832とが接合されるメカニズムについて説明する。この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の一方または双方に基づくものであると推察される。
(i)各接合膜831、832にそれぞれエネルギーを付与すると、各接合膜831、832の表面35に水酸基が生じる。このような水酸基を有する接合膜831と接合膜832とを貼り合わせると、これらの水酸基は水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜831と接合膜832とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って各接合膜831、832から切断される。その結果、接合膜831と接合膜832との間では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜831と接合膜832とがより強固に接合される。
(ii)各接合膜831、832にそれぞれエネルギーを付与すると、各接合膜831、832の表面35や内部に未結合手(ダングリングボンド)が生じる。このような未結合手を有する接合膜831と接合膜832とを貼り合わせると、隣接した未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、各接合膜831、832の接合界面には、ネットワーク状の結合が形成される。これにより、接合膜831と接合膜832の母材同士が直接接合して、接合膜831と接合膜832とが一体化し、これらが特に強固に接合される。
<第2実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第2実施形態について説明する。
図17は、第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図18は、第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図17および図18中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、アクチュエータの第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかるアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるアクチュエータは、各接合膜81、82、83、84の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。以下、接合膜83を代表に説明する。
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜83がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである。換言すれば、エネルギー付与前の接合膜83は、図17に示すように、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入した膜であると言うことができる。
このような接合膜83は、エネルギーが付与されると、脱離基303が金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離し、接合膜83の少なくとも表面付近に、図18に示す活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜83の表面に、前記第1実施形態と同様の接着性が発現する。
以下、本実施形態にかかる接合膜83について説明する。
接合膜83は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜83自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
また、接合膜83は、支持体3やスペーサ10の構成材料によらず、これらの間を優れた気密性を維持しつつ、確実に接合することができる。これにより、外気や異物の侵入を確実に防止する信頼性の高いアクチュエータ1が得られる。
さらに、接合膜83は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜83)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜83を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本発明によれば、導電性を有する接合膜83を簡単に形成することができる。このような接合膜83、後述するアクチュエータ1において、意図しない帯電を抑制または防止することができる。その結果、静電気力に伴うアクチュエータ1の不具合、具体的には、アクチュエータ1への異物吸着や、2自由度振動系(デバイス)の不本意な動作を防止することができる。
また、導電性を有する接合膜83は、電力線および信号線としての機能を併せ持つことができる。すなわち、接合膜83は、支持体3とスペーサ10との間を気密封止する機能を有するとともに、アクチュエータ1の内部空間に収納される2自由度振動系や圧電体32と外部との間の導通を確保する機能を有するものとなる。これにより、接合膜83を介して、2自由度振動系や圧電体32と外部との間で、電力や各種制御信号をやり取りすることができるので、別途電力線や信号線等を設ける必要がなくなる。このため、アクチュエータ1の構造をより簡単にして、アクチュエータ1の高集積化および小型化を実現するとともに、電力線や信号線の配設に伴う封止部のリークを防止することができる。
さらに、接合膜83のうち、平面視における一部を、前記第1実施形態に記載のSi骨格を含む接合膜とし、残部を、本実施形態に記載の金属酸化物を含む接合膜とすることにより、接合膜83の前記一部を導電部となり、残部が絶縁部となる。これにより、導電部を絶縁部によって保護するように形成すれば、接合膜83は、電力線および信号線として特に適したものとなる。
また、接合膜83が導電性を有する場合、接合膜83の抵抗率は、構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。これにより、接合膜83は、損失の少ない電力線や信号線として十分に機能するものとなる。
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜83の表面35付近に存在していればよく、接合膜83のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜83の表面35付近に偏在していてもよい。脱離基303が表面35付近に偏在する構成とすることにより、接合膜83に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜83に、接合を担う機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基303が、接合膜83の導電性や透光性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
以上のような接合膜83としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜83を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜83は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、接合膜83中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜83の安定性が高くなり、支持体3とスペーサ10とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜83に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜83に確実に結合しているものが好適に選択される。
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、支持体3とスペーサ10との接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜83は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜83としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜83は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜83は、支持体3に対して特に強固に接着するとともに、スペーサ10に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、支持体3とスペーサ10とを強固に接合することができる。
また、接合膜83の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜83の平均厚さを前記範囲内とすることにより、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、支持体3とスペーサ10とをより強固に接合するとともに、接合膜83は十分な導電性を有するものとなる。
すなわち、接合膜83の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られなかったり、導電性が著しく低下するおそれがある。一方、接合膜83の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜83の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜83にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、支持体3の接合面(接合膜83を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜83を被着させることができる。その結果、接合膜83は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせた際に、接合膜83のスペーサ10に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜83の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜83の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜83は、接合膜83のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、脱離基303を接合膜83の表面35付近に偏在させる場合には、例えば、B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
以下、AおよびBの方法を用いて、支持体3上に接合膜83を成膜する場合について、詳述する。
<A> Aの方法では、接合膜83は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を支持体3に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜83のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜83を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜83は、スペーサ10に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜83は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、アクチュエータ1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
以下、PVD法により接合膜83を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜83を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜83の成膜方法を説明するのに先立って、支持体3上にイオンビームスパッタリング法により接合膜83を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図19は、本実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図20は、図19に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、図19中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図19に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜83の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、支持体3(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、支持体3上に接合膜83を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
イオン源(イオン銃)215は、図20に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図19に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜83の成膜速度をより速くすることができる。
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、支持体3および接合膜83が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして接合膜83が形成される。
ここでは、支持体3上に接合膜83を成膜する方法について説明する。
まず、支持体3を用意し、この支持体3を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が支持体3上に堆積することにより、接合膜83が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜83に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜83の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜83を成膜することができる。
<B> 一方、Bの方法では、接合膜83は、上記のように、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜83を形成することができる。
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、支持体3上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニーリング)する方法、B2:イオン・インプランテーション等が挙げられるが、中でも、特に、B1の方法を用いるのが好ましい。B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理(アニーリング)することにより、接合膜83を得る場合を代表に説明する。
なお、Bの方法を用いて接合膜83の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜83を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[i] まず、支持体3を用意する。そして、この支持体3を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
[iii] 次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、支持体3上に堆積して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜83に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜83の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
[iv] 次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、支持体3および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
[v] 次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜83が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程[ii]において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜83を成膜することができる。
以上のような第2実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
<第3実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第3実施形態について説明する。
以下、アクチュエータの第3実施形態について説明するが、前記第2実施形態にかかるアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータは、接合膜83がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜83は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜83から脱離し、接合膜83の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜83の表面に、前記第2実施形態と同様の接着性が発現する。
以下、本実施形態にかかる接合膜83について説明する。
接合膜83は、支持体3上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである。
このような接合膜83は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜83の少なくとも表面35付近から脱離し、図18に示すように、接合膜83の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜83の表面35に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜83を備えた支持体3は、スペーサ10に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜83は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜83自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られるアクチュエータ1においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜83は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜83)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜83を用いて得られたアクチュエータ1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本発明では、接合膜83は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、後述するアクチュエータ1において、意図しない帯電を抑制または防止することができる。その結果、静電気力に伴うアクチュエータ1の不具合、具体的には、アクチュエータ1への異物吸着や、2自由度振動系の不本意な動作を防止することができる。
また、導電性を有する接合膜83は、前記第2実施形態と同様、電力線および信号線としての機能を併せ持つことができる。
以上のような接合膜83としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜83を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜83は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜83を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜83を成膜することができる。
また、脱離基303は、前述したように、接合膜83から脱離することにより、接合膜83に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜83に確実に結合しているものが好適に選択される。
具体的には、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜83の接着性をより高度なものとすることができる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜83は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、かかる構成の接合膜83において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜83の安定性が高くなり、支持体3とスペーサ10とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜83を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
また、接合膜83の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜83の平均厚さを前記範囲内とすることにより、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、支持体3とスペーサ10とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜83の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜83の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、アクチュエータ1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜83の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜83にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、支持体3の接合面(接合膜83を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜83を被着させることができる。その結果、接合膜83は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、支持体3とスペーサ10とを貼り合わせた際に、接合膜83のスペーサ10に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜83の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜83の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜83は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、IIa:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を導入して接合膜83を形成する方法、IIb:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜83を形成する方法(積層させる方法あるいは、単原子層からなる接合膜を形成)、IIc:金属原子と脱離基303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として適切な溶媒に溶解させスピンコート法などを用いて接合膜を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、IIbの方法により接合膜83を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜83を形成することができる。
以下、IIbの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜83を形成する方法により、接合膜83を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜83の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜83を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図21は、本実施形態において、接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図21中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図21に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜83の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置400は、チャンバー(真空チャンバー)411と、このチャンバー411内に設置され、支持体3(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)412と、チャンバー411内に、気化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段460と、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段470と、チャンバー411内の排気をして圧力を制御する排気手段430と、基板ホルダー412を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
基板ホルダー412は、本実施形態では、チャンバー411の底部に取り付けられている。この基板ホルダー412は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、支持体3上に接合膜83を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、支持体3および接合膜83が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
有機金属材料供給手段460は、チャンバー411に接続されている。この有機金属材料供給手段460は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽462と、気化した有機金属材料をチャンバー411内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ465と、キャリアガスと気化した有機金属材料をチャンバー411内に導くガス供給ライン461と、ガス供給ライン461の途中に設けられたポンプ464およびバルブ463とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段460では、貯留槽462は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ463を開放した状態で、ポンプ464を作動させて、キャリアガスをガスボンベ465から貯留槽462に供給すると、このキャリアガスとともに気化した有機金属材料が、供給ライン461内を通過してチャンバー411内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、有機金属材料供給手段460がチャンバー411に接続されている。ガス供給手段470は、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ475と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー411内に導くガス供給ライン471と、ガス供給ライン471の途中に設けられたポンプ474およびバルブ473とで構成されている。かかる構成のガス供給手段470では、バルブ473を開放した状態で、ポンプ474を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ475から、供給ライン471を介して、チャンバー411内に供給されるようになっている。
チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、一酸化窒素、一酸化二窒素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でも、特に、水素ガスが好適に用いられる。かかるガスとして水素ガスを用いれば、チャンバー411内を確実に低還元性雰囲気下とすることができる。このため、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜83を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜83を成膜することができる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置400を用いてMOCVD法により、以下のようにして支持体3上に接合膜83が形成される。
[i] まず、支持体3を用意する。そして、この支持体3を成膜装置400のチャンバー411内に搬入し、基板ホルダー412に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段470を動作させ、すなわちポンプ474を作動させた状態でバルブ473を開くことにより、チャンバー411内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段470による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10ccm程度であるのが好ましく、1〜5ccm程度であるのがより好ましい。
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー412を加熱する。基板ホルダー412の温度は、形成する接合膜83の種類、すなわち、接合膜83を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、200〜600℃程度であるのが好ましく、250〜450℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜83を成膜することができる。
[iii] 次に、シャッター421を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程[ii]で基板ホルダー412が加熱された状態で、チャンバー411内に、気化した有機金属材料を供給すると、支持体3上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、支持体3上に接合膜83を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜83を支持体3上に形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜83を確実に形成することができる。
また、本実施形態では、ガス供給手段470を動作させることにより、チャンバー411内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、支持体3上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜83を形成することができる。
気化した有機金属材料の流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜83を成膜することができる。
以上のように、接合膜83を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜83を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜83に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、接合膜83を成膜することができる。
以上のような第3実施形態にかかるアクチュエータ1においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
ここで、以上説明したようなアクチュエータ1を光スキャナとして用いた場合について説明する。
このような光スキャナは、例えば、レーザープリンタ、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。この場合、光反射部20で反射した光を主走査および/または副走査して、対象物上に画像を形成する。
以下、本発明の光スキャナを備えた画像形成装置の具体例を説明する。
まず、電子写真方式を採用するプリンタに本発明を適用した例を説明する。
図22は、本発明の光スキャナを備える画像形成装置(プリンタ)の一例を示す全体構成の模式的断面図、図23は、図22に示す画像形成装置に備えられた露光ユニットの概略構成を示す図である。
図22に示す画像形成装置510(プリンタ)は、露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスによって、トナーからなる画像を紙やOHPシートなどの記録媒体に記録するものである。このような画像形成装置510は、図22に示すように、図示矢印方向に回転する感光体511を有し、その回転方向に沿って順次、帯電ユニット512、露光ユニット513、現像ユニット514、転写ユニット515、クリーニングユニット516が配設されている。また、画像形成装置510は、図22にて、下部に、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ517が設けられ、上部に、定着装置518が設けられている。
このような画像形成装置510にあっては、まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体511、現像ユニット514に設けられた現像ローラ(図示せず)、および中間転写ベルト551が回転を開始する。そして、感光体511は、回転しながら、帯電ユニット512により順次帯電される。
感光体511の帯電された領域は、感光体511の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット513によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
感光体511上に形成された潜像は、感光体511の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像のための現像装置544によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体511上にイエロートナー像が形成される。このとき、現像ユニット514は、現像装置544が選択的に前記現像位置にて感光体511と対向している。なお、この選択は、保持体545の軸546まわりの回転により、現像装置541〜544の相対位置関係を維持しつつそれぞれの位置を変えることで行う。
感光体511上に形成されたイエロートナー像は、感光体511の回転に伴って一次転写位置(すなわち、感光体511と一次転写ローラ552との対向部)に至り、一次転写ローラ552によって、中間転写ベルト551に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ552には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、この間、二次転写ローラ555は、中間転写ベルト551から離間している。
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト551に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト551上にはフルカラートナー像が形成される。
一方、記録媒体Pは、給紙トレイ517から、給紙ローラ571、レジローラ572によって二次転写位置(すなわち、二次転写ローラ555と駆動ローラ554との対向部)へ搬送される。
中間転写ベルト551上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト551の回転に伴って二次転写位置に至り、二次転写ローラ555によって記録媒体Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ555は中間転写ベルト551に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。また、中間転写ベルト551は、駆動ローラ554を回転させることで一次転写ローラ552および従動ローラ553を従動回転させながら回転する。
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置518によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。その後、片面プリントの場合には、記録媒体Pは、排紙ローラ対573によって画像形成装置510の外部へ排出される。
一方、感光体511は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット516のクリーニングブレード561によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット516内の残存トナー回収部に回収される。
両面プリントの場合には、定着装置518によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦排紙ローラ対573により挟持した後に、排紙ローラ対573を反転駆動するとともに、搬送ローラ対574、576を駆動して、当該記録媒体Pを搬送路575を通じて表裏反転して二次転写位置へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
このような画像形成装置に備えられた露光ユニット513は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体511上に、レーザーを選択的に照射することによって、静電的な潜像を形成する装置である。
より具体的に説明すると、露光ユニット513は、図23に示すように、光スキャナであるアクチュエータ1と、レーザー光源531と、コリメータレンズ532と、fθレンズ533とを有している。
露光ユニット513にあっては、レーザー光源531からコリメータレンズ532を介してアクチュエータ1(光反射部20)にレーザー光Lが照射される。そして、光反射部20で反射したレーザー光Lがfθレンズを介して感光体511上に照射される。
その際、アクチュエータ1の駆動(第2の質量部23の回動中心軸Xまわりの回動)により、光反射部20で反射した光(レーザーL)は、感光体511の軸線方向に走査(主走査)される。一方、感光体511の回転により、光反射部20で反射した光(レーザーL)は、感光体511の周方向に走査(副走査)される。また、レーザー光源531から出力されるレーザー光Lの強度は、図示しないホストコンピュータから受けた画像情報に応じて変化する。
このようにして露光ユニット513は、感光体511上を選択的に露光して画像形成(描画)を行う。
次に、イメージングディスプレイ(表示装置)に本発明を適用した例を説明する。
図24は、本発明の画像形成装置(イメージングディスプレイ)の一例を示す概略図である。
図24に示す画像形成装置519は、光スキャナであるアクチュエータ1と、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光源591、592、593と、クロスダイクロイックプリズム(Xプリズム)594と、ガルバノミラー595と、固定ミラー596と、スクリーン597とを備えている。
このような画像形成装置519にあっては、光源591、592、593からクロスダイクロイックプリズム594を介してアクチュエータ1(光反射部20)に各色の光が照射される。このとき、光源591からの赤色の光と、光源592からの緑色の光と、光源593からの青色の光とが、クロスダイクロイックプリズム594にて合成される。
そして、光反射部20で反射した光(3色の合成光)は、ガルバノミラー595で反射した後に、固定ミラー596で反射し、スクリーン597上に照射される。
その際、アクチュエータ1の駆動(第2の質量部23の回動中心軸Xまわりの回動)により、光反射部20で反射した光は、スクリーン597の横方向に走査(主走査)される。一方、ガルバノミラー595の軸線Yまわりの回転により、光反射部20で反射した光は、スクリーン597の縦方向に走査(副走査)される。また、各色の光源591、592、593から出力される光の強度は、図示しないホストコンピュータから受けた画像情報に応じて変化する。
このようにして画像形成装置519は、スクリーン597上に画像形成(描画)を行う。
以上、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のアクチュエータでは、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、例えば、本発明のアクチュエータは、第1ないし第3実施形態の任意の構成から任意のものを組み合わせるようにしてもよい。
また、前記第1〜3実施形態にかかるアクチュエータは、2自由度振動系を有するねじり振動子を用いたアクチュエータであるため、マイクロマシン技術を用いて製造することができ、小型化を図ることができる。特に、2自由度振動系を有するねじり振動子は、駆動電圧を低減しつつ、大きな振幅で可動部(第2の質量部23)を駆動することができる。
なお、本発明は2自由度振動系以外の振動系のアクチュエータにも適用することができる。例えば、前述した第1〜3実施形態において、第1の質量部および第1の弾性連結部を省略し、第2の弾性連結部により第2の質量部と支持部とを連結したような形態としてもよい。すなわち、本発明は、1自由度振動系を有するねじり振動子を用いたアクチュエータにも適用することができる。このようなねじり振動子を用いたアクチュエータにあっても、マイクロマシン技術を用いて製造することができるので、小型化を図ることができる。
また、前述した実施形態では、静電駆動により第1の質量部21、22を回動させ、これに伴い、第2の質量部23を回動させるもの、すなわち、可動部を駆動する駆動手段として静電駆動を用いたものを説明したが、駆動手段としては、これに限定されず、圧電駆動など他の駆動方式のものを採用することもできる。また、静電駆動を用いた駆動手段としては、前述したような平行平板型以外にも、櫛歯状電極を用いたものなど他の形態であってもよい。
本発明のアクチュエータの第1実施形態を示す平面図(内部透視図)である。 図1中のA−A線断面図である。 図1に示すアクチュエータの圧電体の配置を示す平面図である。 印加する交流電圧の一例を示す図である。 印加した交流電圧の周波数と、第1の質量部および第2の質量部の共振曲線を示すグラフである。 第1実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 第1実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 プラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 第1実施形態にかかるアクチュエータの他の構成例を示す図である。 第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 第2実施形態にかかるアクチュエータが備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第2実施形態にかかる接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 図19に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。 第3実施形態において、接合膜の作製に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の画像形成装置(プリンタ)の一例を示す全体構成の模式的断面図である。 図22に示す画像形成装置に備えられた露光ユニットの概略構成を示す図である。 本発明の画像形成装置(イメージングディスプレイ)の一例を示す概略図である。
符号の説明
1……アクチュエータ 2……基体 10、11……スペーサ 21、22……第1の質量部 21a、22a……端部 23……第2の質量部 20……光反射部 23a……端部 24……支持部 25……第1の弾性連結部 26……第2の弾性連結部 27……回転中心軸 28、29……空間 3……支持体 31……凹部 32……圧電体 35……表面 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 4……支持体 5……基板 7……金属マスク 81、82、83、84、811、812、821、822、831、832、841、842……接合膜 9……基板 L、L、L……距離 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 400……成膜装置 411……チャンバー 412……基板ホルダー 421……シャッター 430……排気手段 431……排気ライン 432……ポンプ 433……バルブ 460……有機金属材料供給手段 461……ガス供給ライン 462……貯留槽 463……バルブ 464……ポンプ 465……ガスボンベ 470……ガス供給手段 471……ガス供給ライン 473……バルブ 474……ポンプ 475……ガスボンベ 510……画像形成装置 511……感光体 512……帯電ユニット 513……露光ユニット 514……現像ユニット 515……転写ユニット 516……クリーニングユニット 517……給紙トレイ 518……定着装置 519……画像形成装置 531……レーザー光源 532……コリメータレンズ 533……fθレンズ 541〜544……現像装置 545……保持体 546……軸 551……中間転写ベルト 552……一次転写ローラ 553……従動ローラ 554……駆動ローラ 555……二次転写ローラ 561……クリーニングブレード 571……給紙ローラ 572……レジローラ 573……排紙ローラ対 574、576……搬送ローラ対 575……搬送路 591、592、593……光源 594……クロスダイクロイックプリズム 595……ガルバノミラー 596……固定ミラー 597……スクリーン P……記録媒体

Claims (23)

  1. 第1の構造体および第2の構造体と、
    前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
    前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータ。
  5. 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエータ。
  6. 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載のアクチュエータ。
  7. 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載のアクチュエータ。
  8. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載のアクチュエータ。
  9. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載のアクチュエータ。
  10. 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載のアクチュエータ。
  11. 第1の構造体および第2の構造体と、
    前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
    前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  12. 第1の構造体および第2の構造体と、
    前記第1の構造体と前記第2の構造体との間に介挿され、前記第1の構造体と前記第2の構造体との離間距離を保持するスペーサと、
    前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間に収納された、可動板と該可動板を支持する一対の軸部材とを備えた振動部と、
    前記可動板を回動させる駆動手段とを有し、
    前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間が、それぞれ接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の構造体と前記スペーサとの間、および、前記第2の構造体と前記スペーサとの間を、それぞれ接合していることを特徴とするアクチュエータ。
  13. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし12のいずれかに記載のアクチュエータ。
  14. 前記第1の構造体または前記第2の構造体は、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載のアクチュエータ。
  15. 前記スペーサは、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし14のいずれかに記載のアクチュエータ。
  16. 前記第1の構造体として、前記振動部を囲うように設けられた、前記振動部を支持する枠状の支持部と、
    前記第2の構造体として、前記枠状の支持部の一方の面側に第1の支持体と、
    前記スペーサとして、前記枠状の支持部と前記第1の支持体との間に介挿された第1のスペーサとを有し、
    さらに、前記枠状の支持部の前記第1の支持体と反対側に設けられた第2の支持体と、
    前記枠状の支持部と前記第2の支持体との間に介挿され、前記枠状の支持部と前記第2の支持体との離間距離を保持する第2のスペーサとを有し、
    前記第2の支持体と前記第2のスペーサとの間、および、前記枠状の支持部と前記第2のスペーサとの間が、それぞれ前記接合膜と同様の接合膜を介して接合されている請求項1ないし15のいずれかに記載のアクチュエータ。
  17. 前記可動板、前記軸部材および前記支持部は、一体的に形成されている請求項15に記載のアクチュエータ。
  18. さらに、前記軸部材の途中に設けられ、前記可動板を回動させる駆動部材を有する請求項1ないし16のいずれかに記載のアクチュエータ。
  19. 前記第1の構造体、前記第2の構造体および前記スペーサで囲まれる空間は、閉空間であり、
    該閉空間内は、減圧状態または不活性ガス充填状態に維持されている請求項1ないし18のいずれかに記載のアクチュエータ。
  20. 前記減圧状態における圧力は、1×10−3〜1×10Paである請求項19に記載のアクチュエータ。
  21. 前記接合膜を介して接合された接合個所におけるリーク率は、1×10−8Pa・m/s以下である請求項19または20に記載のアクチュエータ。
  22. 請求項1ないし21のいずれかに記載のアクチュエータと、
    前記可動板に設けられ、光反射性を有する光反射部とを有することを特徴とする光スキャナ。
  23. 請求項22に記載の光スキャナを備え、前記光反射部で反射した光を走査して、画像を形成するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
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