JP4014857B2 - セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放熱性回路基板等の原料基板として有用な窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報密度の巨大化とともに半導体素子等の電子部品の処理能力は著しい向上を遂げており、これら電子部品に通電したときに発生する熱量も大きくなっている。これらの電子部品を安定的に動作させるためには一定温度に保つことが好ましく、その冷却のために様々な工夫が成されている。通常、高温となる電子部品はヒートシンクと呼ばれる“熱を吸収できる材料、構成部品あるいはシステムを熱的に保護するためにそのような材料を使用している装置”上にマウントされ用いられるのが一般的である。ヒートシンク材料として早くから実用化されている材料としてはCu、Cu−W等の熱伝導性の良い金属、金属合金、或いはSiC、AlN等の半導体性或いは絶縁性の高熱伝導性セラミックス材料が挙げられる。
【0003】
これらの高熱伝導性基板の中でもAlNを主成分とするセラミック体は熱伝導性だけでなく、絶縁性、誘電特性、熱膨張特性等の点ですぐれた特徴を示すことから、高機能放熱基板として急速に普及している。電子素子(電子部品)をマウントする回路基板としてAlNを用いるためには、AlN表面に金属層を形成することが必要となるが、従来、セラミック表面への金属の形成方法としては厚膜形成法と薄膜形成法が採用されている。厚膜形成法とは、メッキ等の湿式法や金属箔を接合する方法が代表的である。しかしながら、厚膜法はその名の通り形成される金属膜の厚みが100μm程度と厚くなることからファインパターンの形成が困難となるため、ファインパターンを有する回路基板を形成するためには薄膜法によって形成された金属層を有するセラミック基板が通常用いられている。薄膜法としては真空蒸着法、スパッタリング法等の気相合成法が一般的である。
【0004】
薄膜法を用いたAlN回路基板の製造は、従来以下のような方法で行われている。即ち、まず、AlN粉末を板状に成形して電気炉などを用いて焼成することによって焼結体とし、次に、該焼結体を研削、或いは研磨加工を施すことによって金属膜を形成する面を一定の面粗さとなるように加工する。そして、その上に、Ti,Cr,Ni−Cr,TaN,Al,Mo,W,Zrなどの材料より選ばれる層(第1薄膜層)、Ni,Ptなどの金属からなる層(第2薄膜層)、及びCo、Cu、Au、Ag、Pd等の金属からなる層(第3薄膜層)がこの順番で順次形成される。ここで第1薄膜層は接着層の役割を果たし、第2薄膜層は第1薄膜層と第3薄膜層間での材料の拡散を抑制するバリヤー層として機能する。また、第3薄膜層は抵抗が小さい材料が選択され導電層としての役割を果たしている。この様な積層構造とすることによって、基板と金属層とが引張り強度で表して2.5Kg/mm2程度の比較的良好な密着性で接合された薄膜回路基板が製造されている。
【0005】
また、AlN基板上に上記第1薄膜層のような活性金属層を形成することなく導電性膜となる金属層を形成する方法として、特許第2986948号公報には、AlN基板と導電性膜との間に該導電性膜を構成する元素、Al、及びNを含む非晶質層を介在させる方法が開示されている。該方法によれば、非晶質層及び導電性膜の形成条件によっては4Kg/mm2以上の接合強度でCu膜が接合したAlN基板を得ることも可能になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、第1〜第3薄膜層からなる金属層を有するAlN回路基板は広く普及しており、様々な用途において実用化されているが、近年の半導体素子の高機能化に伴い素子から発生する熱も増加し使用条件もより過酷になっていることから基板に要求される性能もより高くなっている。例えば、使用時における加熱冷却のヒートサイクルの負荷の増大により基板材と金属層との密着性が低下するという問題も起っており、このような問題の発生を防止するためにAlN基板と金属層との密着性を更に向上させることが望まれている。前記した特許第2986948号公報に開示されている方法を採用すれば、AlN基板と金属層との密着性を向上させることは可能と思われるが、該方法を採用する場合には、導伝膜層の種類に応じて非晶質層の組成を変えなければならず、また、該方法は上記したような積層タイプの金属層を形成する従来法とはその製造プロセスが大きく変わっているため従来法を採用している者にとってはプロセス転換に際し製造装置や前後工程の変更や調整といった様々な負担が生じる。そこで、本発明は、一般的に普及している前記第1〜第3薄膜層を形成する従来法のプロセスを大きく変更することなく、AlN基板と金属層との密着性を向上させる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、AlN基板上に第1薄膜層を形成する前にAlN基板表面を窒素プラズマ処理又はレーザー照射処理した場合には基板と金属膜との接着強度が増すことがあることに気づいた。そして上記処理後のAlN基板表面状態と接着強度との関係を詳しく解析したところ、AlN表面のAlとNとの化学組成比が特定の範囲のときに接着強度が高くなっていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、第一の本発明は、窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックからなる基板の表面にAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55〜80 N 45〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層が形成されてなるセラミック基板を製造する方法であって、窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基板の表面を窒素プラズマ処理又はレーザー照射処理をして、それぞれAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55〜80 N 45〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層を形成することを特徴とする方法である。該本発明の方法により得られるセラミック基板(以下、本発明のセラミック基板とも言う)は、その上に従来方法と同様にして第1薄膜層、第2薄膜層、及び第3薄膜層を積層して金属層を形成した場合、上記のような窒化物からなる層を有しない窒化アルミニウム基板を用いた時と比べて金属層とセラミック基板との密着強度が高くなるという特徴を有する。
【0009】
また、第二の本発明は、上記第一の本発明の方法により窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックからなる基板の表面にAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55〜80 N 45〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層が形成されてなるセラミック基板を製造した後に、得られたセラミック基板の前記アルミニウム窒化物からなる層上にTi、Cr、Ni−Cr、TaN、Al、Mo、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる金属又は化合物からなる層、及びこれら金属又は化合物以外の金属からなる層を順次形成することを特徴とする表面メタライズセラミック基板の製造方法である。該方法で得られる表面メタライズセラミック基板(以下、本発明の表面メタライズセラミック基板とも言う)は、AlNセラミック基板上に金属膜が密着性良く接合されており、載置される素子等からの発熱が大きくなってもその接合力が低下し難く、例えばサブマウントやヒートシンクを兼ねた放熱性基板として使用した時の信頼性や耐久性が高いという特徴を有している。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックからなる基板(以下、AlNベース基板とも言う。)は特に限定されず、例えば窒化アルミニウム粉末に焼結助剤を添加し加圧等により成形したのちに焼結することにより製造される板状体、又は多結晶窒化アルミニウムを板状に加工したもの等が好適に使用できる。これら板状体の形状は特に限定されないが、加工時に切断が容易であるという観点からその厚さは50μm〜3cm、特に100μm〜1cmであるのが好適である。
【0011】
本発明のセラミック基板においては、AlNベース基板の表面にAl20〜45N80〜55又はAl55〜80N45〜20で示される組成からなるアルミニウム窒化物からなる層が形成されていることが、当該AlNベース基板上に形成される金属膜との密着性を高くするために必須である。基板表面がストイキオメトリックな窒化アルミニウム(AlN)のままであったり、化学量論比よりずれた組成を有するアルミニウム窒化物であってもその組成が上記範囲外である場合にはセラミックと金属層との密着性が低下する。上記アルミニウム窒化物からなる層の厚さは特に限定されないが、効率的な工業生産と言う理由から5nm〜10μm、特に10nm〜5μmであるのが好適である。なお、セラミックと金属層との密着性の観点から上記AlNベース基板表面に形成されるアルミニウム窒化物からなる層の組成は、Al30N70〜Al45N55又はAl55N45〜Al70N30であるのが好適である。なお、上記アルミニウム窒化物からなる層の組成は、2次イオン検出質量分析装置及びX線回折装置を併用した評価によって確認することができ、その厚さは、2次イオン検出質量分析装置によって確認することができる。
【0012】
本発明のセラミック基板の製造方法では、AlNベース基板の表面を窒素プラズマ処理又はレーザー照射処理する方法が採用される。窒素プラズマ処理とは、AlNベース基板の表面を各種方法で発生させた窒素プラズマと接触させることを意味するが、このような接触は通常プラズマ法で使用される装置内で行われる。プラズマ法としては高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、ECRプラズマ等様々なプラズマが使用可能である。これらの中でも電子密度が大きい誘導結合高周波プラズマやマイクロ波を用いた高密度プラズマ法が特にAlNベース基板の表面層を窒素リッチな層に改質し、Al20〜45N80〜55で示される層(窒素リッチ層ともいう)を形成するのに有効である。
【0013】
例えば、誘導結合型高周波プラズマ法を用いて処理を行なう場合には、次のような手順で処理を行なうことができる。即ち、まず、処理するAlNベース基板をプラズマ発生装置内の基材ホルダー部にセットして装置内に窒素を導入して減圧窒素雰囲気とする。そして、装置内或いは誘電体を介して装置の外部にセットされた高周波を印加するための一巻き或いは複数巻きの金属製コイルにチューナーを介して高周波を印加して装置内で高周波誘導結合プラズマを発生させて基板を窒素プラズマ処理する。なお、この処理において、基板は室温でも加熱されていてもよい。また、窒素化の度合い(組成や窒素リッチ層の厚み)は条件によって制御することが可能であり、プラズマ強度を大きくしたり、基板加熱温度を高くしたり、処理時間を長くしたりすることによってAlNベース基板表面の窒素化が促進され、窒素含有量を多くしたり窒素リッチ層の厚さを厚くすることができる。例えば処理条件として、高周波出力500W、基板温度30℃、反応圧力30mTorr、窒素流量10sccm、アルゴン流量50sccm、処理時間10分を採用した場合には、約300オングストロームのAl40N60のアルミニウム窒化物層が形成される。
【0014】
また、レーザー照射処理はレーザーアブレーション法等により行なうことが出来、該方法を用いたレーザー照射処理はAlNベース基板の表面層を改質し、Al55〜80N45〜20で示される組成の層(アルミニウムリッチ層ともいう)を形成するのに有効である。この場合、処理には上記のプラズマ法で用いた反応容器においてプラズマ発生装置の代わりにレーザー照射装置が配設された反応容器を用いればよい。レーザーの種類は特に限定されることはなく、セラミックを加工できる能力を有するものであれば特に制限無く用いることができる。例えば、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザーなどが用いられる。これらのレーザーを基材表面に連続的にスキャンさせることによって、基板表面のAlとNとの化学結合を切断することでAlを露出させ、アルミニウムリッチ層を形成することができる。
【0015】
レーザー処理方法としては、レーザー発振器によって発生させたレーザービームを光学系駆動制御装置によってAlNベース基板表面の全面を一様に走査することによって基板表面全体にレーザーが照射されるようにするのが好適である。なお、レーザーのエネルギーとしては0.01mJ/パルス〜10mJ/パルスが好適である。繰返し周波数としては1〜300Hz、ビーム径としては10μm〜2mmが好適である。
【0016】
本発明のセラミック基板の窒素リッチ層やアルミニウムリッチ層(以下、総称して改質層ともいう。)上にTi(チタン)、Cr(クロム)、Ni−Cr(ニッケルークロム合金)、TiN(窒化タンタル)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、及びW(タングステン)からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の金属又は化合物からなる層(活性層ともいう)、及びこれら金属又は化合物以外の金属からなる層(上部金属層ともいう)を順次形成したときにこれら層からなるメタライズ層とセラミック基板との接着力は、改質層を表面に有しないAlNベース基板の表面に直接これら層を形成した時と比べて有意に高くなる。したがって、本発明のセラミック基板は上記のようなメタライズ層を有し、セラミック基板とメタライズ層の接着性が良好であるという特徴を有する本発明の表面メタライズセラミック基板の原料基板として好適に使用することができる。
【0017】
本発明の表面メタライズセラミック基板における活性層は、従来のメタライズ基板における第1薄膜層に相当するものである。また、その上に形成される上部金属層は、従来のメタライズ基板における第2薄膜層、又は第2薄膜層及び第3薄膜層に相当するものであり、第2薄膜層に相当する部分についてはNi,Ptなどの金属が、また第3薄膜層に相当する部分についてはCo、Cu、Au、Ag、Pd等の金属が使用される。これら層は従来の第1〜第3薄膜層と特に変わることはないが、上記密着性保持効果及び製膜効率の観点から、活性層の厚さは0.03〜5μm、特に0.05〜3μmであるのが好適である。なお、上部金属層の上には、素子等をハンダ付けする際にハンダの濡れ性や密着性を向上させたり、配線や電極として機能させたりするための金属膜、またはリフローハンダ付けを行なうために予め所定の位置に設けられたハンダ材からなる膜が形成されていてもよい。これらの層は必ずしも単一層からなる必要はなく、複数の層が積層された構造であってもよい。また、複数の層が積層される場合、各層間で原子が拡散現象により混在した場合、その部分の密着性が低下する場合がある。このようなことを防止するために、原子の拡散を防止するような金属層を設けることによって対応することができる。
【0018】
以下、図1に示すような本発明のセラミック基板A及び本発明の表面メタライズセラミック基板Bを、図2に示すような誘導結合型プラズマ処理装置C、又は図3に示すレーザーアブレーション装置Dを用いて製造する場合を例にその製造方法について更に詳しく説明する。なお、図1における本発明のセラミック基板Aは窒化アルミニウム基板110の表面が窒素プラズマ処理によって改質されて窒素リッチ層120が形成されており、また図1における本発明の表面メタライズセラミック基板Bにおいては窒素リッチ層120上に活性層130、上部金属層140が形成されている。
【0019】
図2に示した誘導結合型プラズマ装置Cは、例えば、SUS304などのステンレス鋼などから構成され、真空状態に維持される円筒形の反応チャンバー12を備えており、反応チャンバー12の底壁16に形成された排気口13を介して、真空ポンプなどの真空源に接続することによって、一定の真空状態に維持されるようになっている。また、その内部には、プラズマ処理するAlNベース基板10を設置する基材設置部を構成するステージ14が配置されている。このステージ14は、反応チャンバー12の底壁16を貫通して、図示しない駆動機構によって上下に摺動可能に構成され、位置調整可能となっているとともに、図示しない、例えばシーズヒータなどの加熱機構によって、AlNベース基板を加熱することができるようになっている。なお、図示しないが、ステージ14と底壁16との間の摺動部分には、反応チャンバー12内の真空度を確保するために、シールリングなどのシール部材が配設されている。一方、反応チャンバー12の上方には、高周波印加コイル18が設けられており、その基端部分20(a)、20(b)が、反応チャンバー12の頂壁を貫通して、反応チャンバー12外部に設けられた高周波電源24に接続されている。この高周波印加コイル18と高周波電源24の間にはマッチング回路25が配設されており、高周波電源24により発生した高周波を損失なく高周波印加コイル18へ伝播できるようになっている。この高周波印加コイル18の径は通常3〜30cm、好適には5〜20cmである。このようなコイル径であれば、均一に基材のプラズマ処理を行うことができる。高周波印加コイルの設置数は複数でもよく、その場合の配置の仕方は、並列に配置する以外は特に限定されないが、効果の点から、隣り合った高周波印加コイルどうしの間隔は廣くない方が好ましく、出来るだけ密に配置するのが望ましい。また、高周波印加コイル自体をプラズマ発生ガスが供給できるガス配管の役割を担った構造としても良い。なお、この高周波コイル18の材質としては、金属製、例えば、SUS304などのステンレス鋼、銅、アルミニウムなどの加工しやすい材質から選択すれば良く、特に限定されるものではない。また、高周波コイル18の表面は、アルミナ、窒化アルミニウム等の絶縁体で被覆されていてもよい。さらに、反応チャンバー12の側部には、図示しないゲートバルブがあり、これを介して、処理すべき基板10を出し入れするための圧力調整室(図示していない)に接続されている。
【0020】
このような装置Cを用いての窒素プラズマ処理は、次のような手順で行なうことができる。即ち、まず、真空ポンプなどの真空源を作動することによって、排気口13を介して排気することにより、反応チャンバー12内を真空状態に維持する。反応チャンバー12内を高真空にすることにより、不純物となる酸素、炭素等を除去することができる。この時の圧力は、1×10−6Torr以下とするのが好適である。次に、反応チャンバー12の側部に接続された圧力調整室内に、処理すべきAlNベース基板10を搬入した後、この圧力調整室内の圧力を反応チャンバー12内の圧力と同じ真空度になるように調整する。そして、ゲートバルブを開放して、AlNベース基板10を反応チャンバー12内のステージ14の上に載置する。そして、反応チャンバー12の外部に設けられた高周波電源24から高周波印加コイル18に高周波を印加するとともに、反応ガス供給源27から、高周波印加コイル18に形成された反応ガス供給経路32を介して、反応ガス供給口34より反応ガスを反応チャンバー12内に供給する。これにより、高周波印加コイル18に印加された高周波によって、誘導結合型プラズマを発生させて、ステージ14に載置されたAlNベース基板10の表面を処理できるようになっている。なお、この際の反応チャンバー12内の圧力(反応圧力)は、好ましくは0.3〜100mTorr、より好ましくは5〜30mTorrとするのが望ましい。このような圧力に制御することによって、均一でプラズマ処理を行うことができる。また、高周波電力としては、10W〜3KWであり、高周波の周波数としてはマッチング回路での調整を考慮すれば、5MHz〜200MHzの高周波とするのが好ましく、さらに好ましくは、10MHz〜100MHzとするのが望ましい。また、反応チャンバー12内に導入する反応ガスとしては、窒素及び窒素に水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン等の希釈用ガスを同伴したプラズマ処理ガスが使用可能である。プラズマ処理ガスの導入量としては、窒素ガスを単独で反応チャンバー内に導入する場合、及び、その他の希釈ガスと同伴させて反応チャンバー内へ導入する場合では異なるが、総導入量としては30cc/分〜3000cc/分となるようにするのが好ましい。また、窒素ガスとその他のガスとの混合は窒素ガスが含まれている条件であればいずれの混合比に設定しても構わない。しかしながら、プラズマ処理される窒化アルミニウム表面は、その他の処理条件、すなわち、高周波電力、基材温度などとも大きく関係するので、一義的に流量比のみで規定することは困難である。また、AlNベース基板と高周波コイル18との間の距離Lとしては、8cm〜30cmの範囲とするのが望ましく、ステージ14を上下に摺動させることによって位置調整すればよい。さらに、AlNベース基板は、ステージ14に設けられた加熱装置によって、室温〜約1000℃に加熱することができる。加熱することによって、高周波印加コイル18に印加された高周波によって発生した誘導結合型プラズマによって、ステージ14に載置されたAlNベース基板の表面処理が効果的に行われる。なお、このプラズマ処理時間は、すべての処理条件を勘案して設定されるが一般的に数十秒から数十分程度である。
【0021】
また、図3に示すレーザーアブレーション装置Dは、プラズマ発生手段の代わりにレーザー発生手段を具備する他は基本的に誘導結合型プラズマ装置Cにおけるのと同様な構造の反応チャンバー12を有している。なお、該反応チャンバー12の上方には光学窓42が設けられ、反応チャンバー12の頂壁を貫通して、反応チャンバー12外部に設けられたレーザー発振器40と接続されている。そして、この光学窓とレーザー発振器40との間には光学系43が配設されており、レーザー発振器40より発生したレーザーを効率よく処理すべきAlNベース基板10へ照射できるようになっている。ここで光学系43は駆動制御系41と接続され、レーザー照射の基材表面での走査を制御できるようになっている。また、レーザー発振器40も前記駆動制御系41と接続されており、出力や発振周波数、照射パルス数等が制御されるようになっている。
【0022】
このような装置を用いたレーザー照射処理は、窒素プラズマ処理を行なう場合と同様にしてAlNベース基板10を真空状態の反応チャンバー内にセットし、この状態でレーザー発振器40からレーザーをAlNベース基板表面に照射することによって表面をレーザー処理することにより行われる。この時、レーザービームは光学系駆動制御装置によってAlNベース基板表面全面を一様に走査して基板表面全体にレーザーが照射されるようにする。なお、レーザーのエネルギーとしては0.01mJ/パルス〜10mJ/パルスが好適である。繰返し周波数としては1〜300Hz、ビーム径としては10μm〜2mmが好適である。これらの条件は処理するAlNベース基板の処理状況によって適宜変更される。
【0023】
以上示した2通りの方法で作製した本発明のセラミック基板は、用いた装置の構成上、処理装置から該基材を取出さずに連続してその窒素リッチ層又はアルミニウムリッチ層上に活性層及び上部金属層或いは金属化合物層を形成することができる。この様に、外気に晒すこと無く活性層等を形成した場合には、AlNベース基板とメタライズ層(活性層及び上部金属層)との密着性がより良好になるので、本発明の表面メタライズセラミック基板を製造する場合にはこのような方法を採用するのが好ましい。
【0024】
本発明においては、改質層上に活性層及び上部金属層を形成するが、これらの製造方法は特に制限されることは無く、公知の膜形成方法が制限なく採用可能である。その一例を示せば、印刷法、メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相蒸着法等が挙げられるが、これら方法の中でも蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相蒸着法は高純度の膜を膜厚精度よく形成可能であるため、これら方法を採用するのが特に好適である。
【0025】
スパッタリング法により、金属層或いは金属化合物層を形成するには、金属層或いは金属化合物層を構成する物質と同種類の物質からなるスパッタリングターゲット材を形成して、当該材料をスパッタリングすることによりセラミック基板上に所望の材料の薄膜を形成することができる。この時、水晶振動子を用いた膜厚モニターで蒸着物質の膜厚を測定することで正確に付着膜厚を管理することが可能である。なお、スパッタリングを行なう場合はセラミック基板を加熱せず室温のままとしても、加熱してもよい。また、金属層或いは金属化合物層がガス状の原料からCVD法により形成できる場合には、CVD法が好適に採用できる。化学気相蒸着法による金属層或いは金属化合物層の形成は、有機金属CVD装置を用いて好適に行なうことができる。この方法では、真空排気した反応容器内にTa(OC2H5)5等の原料ガスを窒素等の希釈ガスにより希釈して導入し、反応容器内で熱分解することにより加熱したセラミック基板上に膜形成を行なうものである。セラミック基板は膜の成長条件によって異なるが一般的に50℃〜1000℃程度に加熱される。また、予め、形成条件毎の製膜スピードを測定しておくことにより、製膜時間を制御して膜厚を正確に見積もることができる。なお、窒素とともに希釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトンなどの非堆積性ガスを用いることができる。これら方法においては、膜形成時にセラミック基板にマスキングを行なったりすることにより形状を任意に変えることもできる。また、製膜後にエッチングにより膜形状を変えることも可能である。
【0026】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
尚、以下の実施例及び比較例において、窒化アルミニウムの表面は図2又は図3に示す様な構造の装置を用い改質した。また、以下の実施例及び比較例において改質層、及び改質層上に形成された金属膜の評価は以下の(1)〜(2)に示す方法によって行った。
【0028】
(1)改質層厚み及び改質層の組成
改質層厚み及び改質層の組成は、2次イオン検出質量分析装置により、深さ方向測定を行うことによって調べた。
【0029】
(2)密着性
窒化アルミニウム基体上に形成された金属膜の表面にニッケルメッキしたピンを垂直に半田付けした。ピンは先端が平坦で、ピン径φ0.5mm、42−アロイ製のものを使用し、半田は錫60重量%、鉛40重量%の組成のものを使用した。これを株式会社東洋精機製作所製ストログラフM2にセットしてピンを垂直方向に引張った際の破壊強度を測定した。引張り速度は10mm/分とした。単位はKg/mm2である。また、剥離モードは試験後のは界面を実体顕微鏡、金属顕微鏡、またはX線マイクロアナライザーにより観測することにより調べた。
【0030】
実施例1
窒化アルミニウム基板(10mm×10mm×0.5mmt)を誘導結合型プラズマ処理装置の圧力調整室内の基材ホルダーにセットして装置を真空引きした。容器内が5×10−6Torrとなったのを確認して、プラズマ処理室と圧力調整室との間にあるゲートバルブを開け、基材をプラズマ処理室内へ搬送しゲートバルブを閉じた。そして、プラズマ処理室内に窒素を10cc/分、アルゴンガスを50cc/分の流量に制御して供給した。ここで、圧力調整弁を調節することによってプラズマ処理室内の圧力を30mTorrとして、高周波電源より500Wの出力で高周波を高周波電極へと印加した。約10分間プラズマ処理を行ったのち、高周波の印加を停止してプラズマ処理を終了した。基材は特に加熱せず室温で処理した。
【0031】
さらに、基材を誘導結合型プラズマ処理装置と連結したスパッタリング装置内へ真空を維持した状態で搬送して改質層上へそれぞれ約0.07μm、0.5μm、及び2μmの厚みでTi、Pt、及びAuからなる膜を順番に室温で積層して本発明の表面メタライズセラミック基板を得た。得られた表面メタライズセラミック基板に対して密着性評価を実施したところ引張り強度8.5Kg/mm2が得られた。剥離モードはセラミック破壊であった。なお、同様のプラズマ処理を施した窒化アルミニウム基板について2次イオン検出質量分析装置により解析を行なったところ、その表面の組成(改質層組成)はAl40N60となっていることが確認された。また、深さ方向の分析結果から上記組成の深さは(改質層厚さ)約0.03μmであることが確認された。
【0032】
実施例2
実施例1においてプラズマ処理のための高周波出力を1KW、処理時間を25分間とする以外はすべて実施例1と同じ条件で窒化アルミニウム基板にプラズマ処理を実施し、表面メタライズセラミック基板を得た。得られた表面メタライズセラミック基板について密着性評価を行なったところ引張り強度は7.8Kg/mm2であった。セラミック破壊であった。なお、実施例1と同様にして改質層について分析したところその組成はAl25N75であり、その厚さは約0.07μmであった。
【0033】
実施例3
窒化アルミニウム基板(10mm×10mm×0.5mmt)をレーザーアブレーション処理装置の圧力調整室内の基材ホルダーにセットして装置を真空引きした。容器内が5×10−6Torrとなったのを確認して、処理室と圧力調整室との間にあるゲートバルブを開け、基材をプラズマ処理室内へ搬送しゲートバルブを閉じた。反応容器内の真空度を1×10−6Torrとして、レーザー発振器より0.05mJ/パルスの強度でレーザーを基材表面へ照射した。レーザーを基板全体にスキャンさせる処理を行ったのち、レーザー照射を停止して処理を終了した。基材は特に加熱せず室温で処理した。さらに、基板を処理装置と連結したスパッタリング装置内へ真空を維持した状態で搬送して改質層上へそれぞれ約0.07μm、0.5μm、及び2μmの厚みでTi、Pt、及びAuからなる膜を順番に積層して本発の表面メタライズセラミック基板を得た。得られた表面メタライズセラミック基板について密着性評価を行なったところ引張り強度は6.8Kg/mm2であった。セラミック破壊であった。なお、実施例1と同様にして改質層について分析したところその組成はAl65N35であり、その厚さは約0.01μmであった。
【0034】
実施例4
実施例2においてレーザー処理のための出力を0.1mJ/パルスとする以外はすべて実施例3と同じ条件で窒化アルミニウム基板にレーザーアブレーション処理を実施し、表面メタライズセラミック基板を得た。得られた表面メタライズセラミック基板について密着性評価を行なったところ引張り強度は7.2Kg/mm2であった。セラミック破壊であった。なお、実施例1と同様にして改質層について分析したところその組成はAl30N70であり、その厚さは約0.02μmであった。
【0035】
比較例1
実施例1において高周波出力3kW、処理時間1時間とする以外はすべて実施例1と同様な条件でプラズマ処理し、表面メタライズセラミック基板を得た。得られた表面メタライズセラミック基板について密着性評価を行なったところ引張り強度は1.4Kg/mm2であった。剥離モードは膜剥れであった。なお、実施例1と同様にして改質層について分析したところその組成はAl15N85であった。また、処理後の基板表面がかなり荒れていることが確認された。
【0036】
比較例2
実施例1において改質層を設けないこと以外はすべて実施例と同じようにして表面メタライスセラミック基板を作製した。得られた表面メタライズセラミック基板について密着性評価を行なったところ引張り強度は3.8Kg/mm2であった。剥離モードは膜剥れであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明のセラミック基板は、従来の窒化アルミニウム系メタライズ基板を製造するのと同様な方法でメタライズした時に、従来のメタライズ基板と比べてセラミックとメタライズ層の接着力が高くなるという効果を有する。そして、この様にして製造される本発明の表面メタライズセラミック基板は、セラミックとメタライズ層の接着性が良好なため、高出力の半導体素子等の使用時における発熱量が大きい電子部品をマウントするための放熱基板として使用した場合に、ヒートサイクル等によって接着力が規格値よりも低くなり難く、高い耐久性・信頼性を示す。さらに、その製造においても、従来のプロセスに簡単な処理工程を付加するだけでよく、特殊な装置やプロセス全体の大幅な変更を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は本発のセラミック基板及び表面メタライズセラミック基板の断面図である。
【図2】 本図は誘導結合型プラズマ処理装置の該略図である。
【図3】 本図はレーザーアブレーション処理装置の該略図である。
【符号の説明】
A:本発明のセラミック基板
B:本発明の表面メタライズセラミック基板
C:誘導結合型プラズマ処理装置
D:レーザーアブレーション処理装置
110:窒化アルミニウム基板
120:改質層(窒素リッチ層)
130:活性層
140:上部金属層
10:基材
12:円筒型反応チャンバー
13:排気口
14:ステージ
16:底壁
18:高周波印加コイル
20(a):基端部
20(b):基端部
24:高周波電源
25:チューニング回路
27:反応ガス供給源
32:反応ガス経路
34;反応ガス供給口
40レーザー発振器
41:駆動制御系
42:窓
43:光学系
Claims (2)
- 窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックからなる基板の表面にAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55 〜80 N 45 〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層が形成されてなるセラミック基板を製造する方法であって、窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基板の表面を窒素プラズマ処理又はレーザー照射処理をして、それぞれAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55 〜80 N 45 〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層を形成することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法により窒化アルミニウム又は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックからなる基板の表面にAl 20〜45 N 80〜55 又はAl 55 〜80 N 45 〜20 で示される組成を有するアルミニウム窒化物からなる層が形成されてなるセラミック基板を製造した後に、得られたセラミック基板の前記アルミニウム窒化物からなる層上にTi、Cr、Ni−Cr、TaN、Al、Mo、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる金属又は化合物からなる層、及びこれら金属又は化合物以外の金属からなる層を順次形成することを特徴とする表面メタライズセラミック基板の製造方法。
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